薬液用熱交換器
【課題】 複合板として構成する場合のディメリットを解消して熱交換効率を高めるとともに、コストダウン及び耐久性向上を図る。
【解決手段】 外面に形成した熱交換面Cuを冷却又は加熱することにより内部に流通する薬液Lに対して熱交換を行う薬液用熱交換器1を構成するに際して、内部に薬液Lを流通させる複数の薬液流通孔R…を形成し、かつ少なくとも外面となる上面及び下面を熱交換面Cu,Cdとして形成するとともに、所定の焼成素材M(アモルファスカーボン素材又は炭化珪素素材等)を焼結することにより全体を一体形成した熱交換ブロック2を備える。
【解決手段】 外面に形成した熱交換面Cuを冷却又は加熱することにより内部に流通する薬液Lに対して熱交換を行う薬液用熱交換器1を構成するに際して、内部に薬液Lを流通させる複数の薬液流通孔R…を形成し、かつ少なくとも外面となる上面及び下面を熱交換面Cu,Cdとして形成するとともに、所定の焼成素材M(アモルファスカーボン素材又は炭化珪素素材等)を焼結することにより全体を一体形成した熱交換ブロック2を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外面に形成した熱交換面を冷却又は加熱することにより内部に流通する薬液に対して熱交換を行う薬液用熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外面に形成した熱交換面を冷却又は加熱することにより内部に流通する薬液に対して熱交換を行う薬液用熱交換器としては、特開平9−229587号公報で開示される半導体処理液用冷却加熱装置が知られている。
【0003】
同公報で開示される半導体処理液用冷却加熱装置(薬液用熱交換器)は、一対の熱交換基板により側部壁体を挟むことにより冷却加熱室を形成し、この冷却加熱室に半導体処理液を流通させるとともに、各熱交換基板に、流通する半導体処理液を接触せしめて冷却または加熱する半導体処理液用冷却加熱装置であり、熱交換基板の少なくとも処理液接触面側をアモルファスカーボン層で被覆してなるグラファイト基材で構成、又は熱交換基板がアモルファスカーボンで構成されたものである。
【特許文献1】特開平9−229587号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した従来の薬液用熱交換器(半導体処理液用冷却加熱装置)は、次のような問題点があった。
【0005】
第一に、この種の熱交換基板は、熱交換効率を確保する必要があることから良好な熱伝導性が要求され、更に薬液に対して化学的及び物理的に強い耐薬品性や発生するガスの漏れを阻止するガスに対する非透過性などが要求されるが、アモルファスカーボンの場合、耐薬品性やガスに対する非透過性は非常に良好な特性を示すも、熱伝導性は必ずしも良好ではない。このため、熱交換基板に用いるアモルファスカーボンは、厚さを1〜3〔mm〕程度に抑えるとともに、グラファイト基材や補強板を組合わせた複合板とすることにより機械的強度を確保する必要があることから、異材質間の接触熱抵抗により熱伝達性能が低下し、熱交換効率を高めるにも限界があった。
【0006】
第二に、一対の熱交換基板により側部壁体を挟むことにより冷却加熱室を形成する必要があることに加え、アモルファスカーボンとグラファイト基材等を組合わせた複合板として構成する必要があることから、熱交換器全体の構造が複雑となり、部品点数の増加及び製造工程の煩雑化に伴うコスト上昇を招くとともに、異材質間での熱伸縮に伴う耐久性の低下を招きやすい。
【0007】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した薬液用熱交換器の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するため、外面に形成した熱交換面Cuを冷却又は加熱することにより内部に流通する薬液Lに対して熱交換を行う薬液用熱交換器1を構成するに際して、内部に薬液Lを流通させる複数の薬液流通孔R…を形成し、かつ少なくとも外面となる上面及び下面を熱交換面Cu,Cdとして形成するとともに、所定の焼成素材Mを焼結することにより全体を一体形成した熱交換ブロック2を備えてなることを特徴とする。
【0009】
この場合、発明の好適な態様により、焼成素材Mには、アモルファスカーボン素材又は炭化珪素素材(SiC)を用いることができる。また、薬液用熱交換器1には、熱交換ブロック2における薬液流通孔R…の出入口Rr…に接続する接続ブロック3a…、具体的には、薬液流通孔R…同士を接続する流通孔接続部4mを備える接続ブロック3a、或いは薬液流通孔R…に薬液Lを流入させる流入ポート部4i及び薬液流通孔R…から薬液Lを流出させる流出ポート部4oの少なくとも一方を備える接続ブロック3bを用いることができる。
【発明の効果】
【0010】
このような構成を有する本発明に係る薬液用熱交換器1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0011】
(1) 単一素材となる所定の焼成素材Mを焼結することにより、全体を一体形成した熱交換ブロック2を備えるため、複合板として構成する場合のディメリットを解消、即ち、異材質間の接触熱抵抗により熱伝達性能が低下するディメリットを解消でき、もって、熱交換器としての熱交換効率を高めることができる。
【0012】
(2) 内部に薬液Lを流通させる複数の薬液流通孔R…を形成し、かつ所定の焼成素材Mにより一体形成した熱交換ブロック2により主要基本部分を構成できるため、熱交換器全体の構造を単純化することができる。したがって、部品点数の大幅削減及び製造工程の簡略化に伴うコストダウンを図れるとともに、異材質間での熱伸縮が生じないことから長期使用における耐久性を高めることができる。
【0013】
(3) 好適な態様により、焼成素材Mとして、アモルファスカーボン素材又は炭化珪素素材を用いれば、少なくとも薬液に対して化学的及び物理的に強い耐薬品性、更には発生するガスの漏れを阻止するガスに対する非透過性に優れる熱交換ブロック2、即ち、薬液用熱交換器1を構成する最適な熱交換ブロック2を得ることができる。
【0014】
(4) 好適な態様により、熱交換ブロック2における薬液流通孔R…の出入口Rr…に接続する接続ブロック3a…、具体的には、薬液流通孔R…同士を接続する流通孔接続部4mを備える接続ブロック3a、或いは薬液流通孔R…に薬液Lを流入させる流入ポート部4i及び薬液流通孔R…から薬液Lを流出させる流出ポート部4oの少なくとも一方を備える接続ブロック3bを用いれば、結合具等を追加するのみで薬液用熱交換器1の主要部を容易に構成(実施)することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明に係る最良の実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0016】
まず、本実施形態に係る薬液用熱交換器1の構成部品(構成部材)について、図1〜図4を参照して具体的に説明する。
【0017】
2は熱交換ブロックを示す。熱交換ブロック2は、図3及び図4に示すように、全体を所定の焼成素材M、望ましくはアモルファスカーボン素材により一体に形成するとともに、全体形状を偏平な直方体状(プレート状)に形成する。熱交換ブロック2の外面となる上面及び下面は、平坦な熱交換面Cu,Cdとして形成し、熱交換ブロック2の内部には、薬液Lを流通させる複数の薬液流通孔R…を長手方向に沿って形成する。即ち、熱交換ブロック2の長手方向を前後方向とした場合、熱交換ブロック2の前端面2fと後端面2rに、それぞれ出入口Rr…が開口する薬液流通孔R…を形成する。例示の薬液流通孔R…は四つであり、それぞれ平行かつ一定間隔おきに形成するとともに、各薬液流通孔R…は断面円形に形成し、薬液流通孔Rと熱交換面Cu間、及び薬液流通孔Rと熱交換面Cd間における最も薄くなる部位の厚さDは、2〔mm〕以下に選定することが望ましい。また、熱交換ブロック2の前端面2fと後端面2rには、出入口Rr…を囲むように、閉ループ状(リング状)の凹溝によるシールリング収容部11,12をそれぞれ形成する。
【0018】
熱交換ブロック2の製造は、アモルファスカーボン素材に係わる公知の製法を利用できる。例えば、フェノール樹脂,ポリイミド樹脂,エポキシ樹脂,フラン樹脂等で代表される熱硬化性樹脂を、射出成形機或いは圧縮成形機などを用いて賦型するとともに、この後、不活性ガス雰囲気中において千数百℃の高温下で焼成することにより炭素化したアモルファスカーボン成形体としての熱交換ブロック2を得ることができる。
【0019】
焼成素材Mとしては、アモルファスカーボン素材以外に、炭化珪素素材(シリコンと炭化物の化合物:SiC)を用いても、当該アモルファスカーボン素材と同様に良好な結果を得ることができる。このように、焼成素材Mとして、アモルファスカーボン素材又は炭化珪素素材を用いれば、少なくとも薬液に対して化学的及び物理的に強い耐薬品性、更には発生するガスの漏れを阻止するガスに対する非透過性に優れる熱交換ブロック2、即ち、薬液用熱交換器1を構成する最適な熱交換ブロック2を得ることができる。
【0020】
3a,3bは、熱交換ブロック2における薬液流通孔R…の出入口Rr…に接続する接続ブロックを示す。接続ブロック3aは、図3及び図4に示すように、接続本体部21を備え、接続本体部21は、熱交換ブロック2の後端面2rに面接触できるように、例えば、フッソ系樹脂(PTFE,PFA等)により全体をブロック状(プレート状)に一体成形する。後端面2rに当接する接続ブロック3aの当接面3aiには、凹部による一対の流通孔接続部4m,4mを形成する。これにより、後端面2rに当接させた際には、各流通孔接続部4m…は、隣接する二つの薬液流通孔R…の出入口Rr…にそれぞれ跨がって接続される(図1参照)。また、接続ブロック3aの当接面3aiには、シールリング収容部11に対面するシールリング収容部22を形成する。シールリング収容部22もシールリング収容部11と同様に閉ループ状(リング状)の凹溝により形成する。さらに、接続ブロック3aは、熱交換ブロック2に対して横幅を長くし、両端付近に、結合具である結合ボルト31x,32xの挿通孔23p,23qを形成する。
【0021】
接続ブロック3bは、図4に示すように、接続本体部25とこの接続本体部25の外端面に取付けた筒状継手による流入ポート部4i及び流出ポート部4oを有する。接続本体部25は、熱交換ブロック2の前端面2fに面接触できるように、例えば、フッソ系樹脂(PTFE,PFA等)により全体をブロック状(プレート状)に一体成形する。この場合、接続ブロック3bには、前後方向に貫通する流入孔Hiと流出孔Hoを有し、流入孔Hiは流入ポート部4iに連通するとともに、流出孔Hoは流出ポート部4oに連通する。これにより、接続ブロック3bを熱交換ブロック2の前端面2fに当接させた際には、流入孔Hiが一方の端に設けた薬液流通孔Rの出入口Rrに接続されるとともに、流出孔Hoが他方の端に設けた薬液流通孔Rの出入口Rrに接続される。また、前端面2fに当接する接続ブロック3bの当接面3biにおける流入孔Hiと流出孔Ho間には、凹部による流通孔接続部4mを形成する。流通孔接続部4mは、接続ブロック3bを前端面2fに当接させた際に、中間に位置する二つの薬液流通孔R…の出入口Rr…に跨がって接続される。さらに、接続ブロック3bの当接面3biには、シールリング収容部12に対面するシールリング収容部26を形成する。シールリング収容部26もシールリング収容部12と同様に閉ループ状(リング状)の凹溝により形成する。接続ブロック3bも接続ブロック3aと同様に熱交換ブロック2よりも横幅を長くし、両端付近に、結合ボルト31x,32xの挿通孔27p,27qを形成する。流入ポート部4i及び流出ポート部4oも、例えば、フッソ系樹脂(PTFE,PFA等)により一体成形するとともに、接続本体部25に対してネジ込み式により取付けることができる。
【0022】
41aはシールリング収容部11及び22に跨がって収容するシールリング、41bはシールリング収容部12及び26に跨がって収容するシールリングを示す。各シールリング41a,41bは、例えば、フッソ系樹脂により一体成形する。また、31x,32xは、例えば、ステンレス素材により形成した結合ボルトを示すとともに、31y,32yは、結合ボルト31x,32xにそれぞれ螺着する、例えば、ステンレス素材により形成した固定ナットを示し、結合ボルト31x…及び固定ナット31y…は結合具を構成する。なお、結合ボルト31x…及び固定ナット31y…の形成素材は特に限定されず、接続ブロック3a…と同様のフッソ系樹脂等を用いてもよい。
【0023】
次に、このような構成部品(構成部材)を用いた本実施形態に係る薬液用熱交換器1の組立方法について、図1〜図5を参照して説明する。
【0024】
まず、図4に示すように、熱交換ブロック2のシールリング収容部11にシールリング41aを収容し、接続ブロック3aの当接面3aiを熱交換ブロック2の後端面2rに当接する。この際、接続ブロック3aのシールリング収容部22にシールリング41aの残部が収容される。また、熱交換ブロック2のシールリング収容部12にシールリング41bを収容し、接続ブロック3bの当接面3biを熱交換ブロック2の前端面2fに当接する。この際、接続ブロック3bのシールリング収容部26にシールリング41bの残部が収容される。
【0025】
そして、この状態で、結合ボルト31x,32xを挿通孔27p,27qにそれぞれ挿通させるとともに、さらに挿通孔23p,23qに挿通させた後、固定ナット31y,32yを結合ボルト31x,32xの先端にそれぞれ螺着する。これにより、固定ナット31y,32yを締めれば、熱交換ブロック2に接続ブロック3a,3bを結合し、一体化することができる。このように構成した熱交換ユニットUを図2に示す。
【0026】
また、図5に示すように、熱交換ブロック2の一方の熱交換面Cuに、ペルチェ素子を用いたサーモモジュール51u…を付設し、さらに、このサーモモジュール51u…の放熱面(吸熱面)に冷却部52uを付設する。同様に、熱交換ブロック2の他方の熱交換面Cdに、ペルチェ素子を用いたサーモモジュール51d…を付設し、さらに、このサーモモジュール51d…の放熱面(吸熱面)に冷却部52dを付設する。この場合、熱交換ブロック2内には直線状となる複数の薬液流通孔R…が平行に形成されるため、矩形状となる複数のサーモモジュール51u…,51d…を熱交換面Cu,Cdのほぼ全面に効率的に配することができるとともに、各サーモモジュール51u…,51d…に対して同寸法(同形状)の冷却部52u,52dを配することにより効率的な冷却を行うことができる。なお、冷却部52u,52dは、水冷式クーラを用いることができる。図5中、53u,53dは、冷却部52u,52dに冷却水を循環させる配水管を示す。これにより、図5(図1)に示す薬液用熱交換器1を得る。
【0027】
次に、本実施形態に係る薬液用熱交換器1の機能について、図1〜図5を参照して説明する。
【0028】
薬液用熱交換器1により薬液Lを冷却する場合には、図5に示すサーモモジュール51u…,51d…に通電して熱交換ブロック2の熱交換面Cu,Cdを冷却する。この際、サーモモジュール51u…,51d…の放熱面からの放熱は、冷却部52u,52dにより吸収される。
【0029】
一方、図1に示すように、薬液Lを流入ポート部4iに供給する。流入ポート部4iに供給された薬液Lは、流入孔Hiを介して一方の端の設けた一番目の薬液流通孔Rを流通し、接続ブロック3aにおける一方の流通孔接続部4mを通って、二番目の薬液流通孔Rを流通するとともに、さらに、接続ブロック3bにおける流通孔接続部4mを通って、三番目の薬液流通孔Rを流通し、接続ブロック3aにおける他方の流通孔接続部4mを通って、四番目の薬液流通孔Rを流通する。この後、四番目の薬液流通孔Rを流通した薬液Lは、流出孔Hoを介して流出ポート部4oに至り、流出ポート部4oから排出される。そして、四つの薬液流通孔R…を流れる薬液Lは、熱交換面Cu,Cdを介して熱交換、即ち、冷却される。
【0030】
次に、本発明の変更実施形態に係る薬液用熱交換器1について、図6〜図12を参照して説明する。
【0031】
図6は、熱交換ブロック2の変更例を示す。図1〜図5における熱交換ブロック2は、薬液流通孔Rを断面円形に形成した場合を示したが、薬液流通孔Rの断面形状は、円形に限定されるものではなく、図6に示すように、矩形に形成したり、或いは楕円形などに形成してもよい。この場合、熱交換面Cu,Cdの強度を確保するため、各薬液流通孔R…間のピッチを短くして薬液流通孔R…の数を多くすることができる。また、熱交換面Cu,Cdと薬液流通孔R…間の厚さを薄くし、かつシールリング収容部12(11)を形成する前端面2f(後端面2r)の面積を確保するため、図6に示すように、熱交換ブロック2の上面及び下面に段差を形成してもよい。
【0032】
図7及び図8は、接続ブロック3a,3bの変更例を示す。図7に示す接続ブロック3aは、接続本体部71を備え、当接面3aiには、凹部による一つの流通孔接続部4mを形成する。これにより、熱交換ブロック2の後端面2rに当接させた際には、流通孔接続部4mは、全て(例示は四つ)の薬液流通孔R…の出入口Rr…にそれぞれ跨がって接続される。また、接続本体部71の外端面には筒状継手によるポート部4o(4i)を取付ける。このような接続ブロック3a…は二つ用意し、一方を接続ブロック3aとして用いるとともに、他方を接続ブロック3bとして用いる。この場合、接続ブロック3aのポート部は流出ポート部4oとなり、接続ブロック3bのポート部は流入ポート部4iとなる。この薬液用熱交換器1は、一方の接続ブロック3bの流入ポート部4iに薬液Lを流入させれば、薬液Lは、流通孔接続部4mから全ての薬液流通孔R…に対して一側から流通(分流)した後、他方の接続ブロック3aの流通孔接続部4mに至る。そして、流通孔接続部4m内で合流した薬液Lは、流出ポート部4oから流出する。
【0033】
一方、図8に示す接続ブロック3aは、接続本体部72を備え、当接面3aiには、凹部による一つの流通孔接続部4mを形成する。これにより、熱交換ブロック2の後端面2rに当接させた際には、流通孔接続部4mは、全て(例示は四つ)の薬液流通孔R…の出入口Rr…にそれぞれ跨がって接続される。また、接続ブロック3bは、接続本体部73とこの接続本体部73の外端面に取付けた筒状継手による流入ポート部4i及び流出ポート部4oを有する。この場合、当接面3biには、凹部による一対の流通孔接続部4m,4mを形成し、一方の流通孔接続部4mを流入ポート部4iに連通させるとともに、他方の流通孔接続部4mを流出ポート部4oに連通させる。これにより、熱交換ブロック2の前端面2fに当接させた際には、各流通孔接続部4m…は、隣接する二つの薬液流通孔R…の出入口Rr…にそれぞれ跨がって接続される。この薬液用熱交換器1は、一方の接続ブロック3bの流入ポート部4iに薬液Lを流入させれば、流通孔接続部4mから隣接する二つの薬液流通孔R,Rに対して一側から流通した後、他方の接続ブロック3aの流通孔接続部4mに至るとともに、流通孔接続部4mで一旦合流した薬液Lは、隣接した残る二つの薬液流通孔R,Rに対して他側から流通した後、一方の接続ブロック3bの流通孔接続部4mに至る。そして、この流通孔接続部4mで合流した薬液Lは、流出ポート部4oから流出する。なお、図8は、接続ブロック3bにおける二つの流通孔接続部4m,4mに対してそれぞれシールリング41bp,41bpを設けるとともに、結合ボルト31x…の頭部側は、接続ブロック3bに対してネジ形式により結合した場合を示す。
【0034】
図9〜図11は、薬液用熱交換器1の全体構成の変更例を示す。図1〜図5に示した薬液用熱交換器1は、熱交換ブロック2の上下面における熱交換面Cu,Cdに、それぞれサーモモジュール51u…,51d…及び冷却部52u,52dを付設した場合を示したが、図9〜図11は、実際に製作する場合の薄型化を考慮した形態を示す。このため、図9〜図11に示す薬液用熱交換器1は、熱交換ブロック2(熱交換ユニットU)の一方(下面)の熱交換面Cd側に対してのみ、サーモモジュール51d…及び冷却部52dを付設した。また、例示の冷却部52dは、熱交換ユニットUと同一構成のユニットにより構成した。この場合、冷却水を用いる冷却部52dは、耐薬液性等を考慮する必要がないため、熱交換ブロック2及び接続ブロック3a,3bは、コスト面や製作性等を考慮して他の形成素材を用いることができ、例えば、熱交換ブロック2には、一般的なカーボン素材を用いることができる。なお、図9〜図11において、4iは流入ポート部、4oは流出ポート部を示す。例示の熱交換ブロック2及び接続ブロック3a,3bは薄型に形成したため、流入ポート部4i及び流出ポート部4oは、接続ブロック3bにおける厚さの範囲に収めることができない。したがって、流入ポート部4i及び流出ポート部4oの一部は接続ブロック3bの上面から突出する。また、75は過熱防止用のサーモスタットを示す。さらに、76…は、スプリング77…及びボルトナット78…を用いた複数の加圧部を示し、熱交換ブロック2と冷却部52dに挟まれるサーモモジュール51d…に対する圧力管理(圧力調節)を行う。その他、図9〜図11中、79,80は保持板、81…は各サーモモジュール51d…のリード線を示す。
【0035】
図12は、薬液用熱交換器1のサイズ変更例を示す。図9〜図11に示した薬液用熱交換器1では、薬液流通孔R…の形成方向に沿って五列のサーモモジュール51d…を配したサイズを示したが、図12(a)に示す薬液用熱交換器1は、薬液流通孔R…の形成方向に沿って三列のサーモモジュール51d…を配し、他方、図12(b)に示す薬液用熱交換器1は、薬液流通孔R…の形成方向に沿って七列のサーモモジュール51d…を配したサイズを示す。このように、本実施形態に係る熱交換ブロック2を用いれば、熱交換ブロック2における長手方向(薬液流通孔R…の形成方向)のサイズを変更するのみで薬液用熱交換器1の能力を容易に変更できる。特に、接続ブロック3a,3bは異なるサイズに兼用できるため、コストメリットを得ることができる。
【0036】
なお、図6〜図12において、他の構成及び機能等は、図1〜図5に示した実施形態に準じて実施することができる。このため、図6〜図12の実施形態において、図1〜図5に示した実施形態と同一部分には同一符号を付してその構成を明確にするとともに、その詳細な説明は省略する。
【0037】
よって、このような薬液用熱交換器1によれば、単一素材となる所定の焼成素材Mを焼結することにより、全体を一体形成した熱交換ブロック2を備えるため、複合板として構成する場合のディメリットを解消、即ち、異材質間の接触熱抵抗により熱伝達性能が低下するディメリットを解消でき、もって、熱交換器としての熱交換効率を高めることができる。また、内部に薬液Lを流通させる複数の薬液流通孔R…を形成し、かつ所定の焼成素材Mにより一体形成した熱交換ブロック2により主要基本部分を構成できるため、熱交換器全体の構造を単純化することができる。したがって、部品点数の大幅削減及び製造工程の簡略化に伴うコストダウンを図れるとともに、異材質間での熱伸縮が生じないことから長期使用における耐久性を高めることができる。しかも、薬液流通孔R…同士を接続する流通孔接続部4mを備える接続ブロック3a及び薬液流通孔R…に薬液Lを流入させる流入ポート部4i及び薬液流通孔R…から薬液Lを流出させる流出ポート部4oの少なくとも一方を備える接続ブロック3bを用いたため、結合具等を追加するのみで薬液用熱交換器1の主要部を容易に構成(実施)することができる。
【0038】
以上、各種実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。例えば、薬液流通孔R…は、数量を変更することにより、層流にしたり乱流にすることができるとともに、薬液流通孔R…の内面を粗すことにより、乱流効果を更に高めることができる。なお、薬液Lには、半導体処理液をはじめ、各種薬液を適用できるとともに、必要により水等の薬液以外の溶液にもそのまま利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の最良の実施形態に係る薬液用熱交換器の主要部の断面平面図、
【図2】同薬液用熱交換器における熱交換ユニットの外観平面図、
【図3】同薬液用熱交換器における熱交換ブロック,シールリング及び接続ブロックの外観斜視図、
【図4】同薬液用熱交換器における熱交換ユニットの分解断面平面図、
【図5】同薬液用熱交換器の全体を示す外観側面図、
【図6】本発明の変更実施形態に係る熱交換ブロックを示す正面図及び一部を示す側面断面図、
【図7】本発明の変更実施形態に係る薬液用熱交換器の主要部の断面平面図、
【図8】本発明の変更実施形態に係る薬液用熱交換器の主要部の断面平面図、
【図9】本発明の変更実施形態に係る薬液用熱交換器の分解側面図、
【図10】図9の薬液用熱交換器における組付後の側面図、
【図11】図10の薬液用熱交換器の平面図、
【図12】本発明の変更実施形態に係る薬液用熱交換器の平面図、
【符号の説明】
【0040】
1:薬液用熱交換器,2:熱交換ブロック,3a:接続ブロック,3b:接続ブロック,4m:流通孔接続部,4i:流入ポート部,4o:流出ポート部,Cu:熱交換面,Cd:熱交換面,L:薬液,R…:薬液流通孔,Rr…:薬液流通孔の出入口,M:焼成素材
【技術分野】
【0001】
本発明は、外面に形成した熱交換面を冷却又は加熱することにより内部に流通する薬液に対して熱交換を行う薬液用熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外面に形成した熱交換面を冷却又は加熱することにより内部に流通する薬液に対して熱交換を行う薬液用熱交換器としては、特開平9−229587号公報で開示される半導体処理液用冷却加熱装置が知られている。
【0003】
同公報で開示される半導体処理液用冷却加熱装置(薬液用熱交換器)は、一対の熱交換基板により側部壁体を挟むことにより冷却加熱室を形成し、この冷却加熱室に半導体処理液を流通させるとともに、各熱交換基板に、流通する半導体処理液を接触せしめて冷却または加熱する半導体処理液用冷却加熱装置であり、熱交換基板の少なくとも処理液接触面側をアモルファスカーボン層で被覆してなるグラファイト基材で構成、又は熱交換基板がアモルファスカーボンで構成されたものである。
【特許文献1】特開平9−229587号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した従来の薬液用熱交換器(半導体処理液用冷却加熱装置)は、次のような問題点があった。
【0005】
第一に、この種の熱交換基板は、熱交換効率を確保する必要があることから良好な熱伝導性が要求され、更に薬液に対して化学的及び物理的に強い耐薬品性や発生するガスの漏れを阻止するガスに対する非透過性などが要求されるが、アモルファスカーボンの場合、耐薬品性やガスに対する非透過性は非常に良好な特性を示すも、熱伝導性は必ずしも良好ではない。このため、熱交換基板に用いるアモルファスカーボンは、厚さを1〜3〔mm〕程度に抑えるとともに、グラファイト基材や補強板を組合わせた複合板とすることにより機械的強度を確保する必要があることから、異材質間の接触熱抵抗により熱伝達性能が低下し、熱交換効率を高めるにも限界があった。
【0006】
第二に、一対の熱交換基板により側部壁体を挟むことにより冷却加熱室を形成する必要があることに加え、アモルファスカーボンとグラファイト基材等を組合わせた複合板として構成する必要があることから、熱交換器全体の構造が複雑となり、部品点数の増加及び製造工程の煩雑化に伴うコスト上昇を招くとともに、異材質間での熱伸縮に伴う耐久性の低下を招きやすい。
【0007】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決した薬液用熱交換器の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するため、外面に形成した熱交換面Cuを冷却又は加熱することにより内部に流通する薬液Lに対して熱交換を行う薬液用熱交換器1を構成するに際して、内部に薬液Lを流通させる複数の薬液流通孔R…を形成し、かつ少なくとも外面となる上面及び下面を熱交換面Cu,Cdとして形成するとともに、所定の焼成素材Mを焼結することにより全体を一体形成した熱交換ブロック2を備えてなることを特徴とする。
【0009】
この場合、発明の好適な態様により、焼成素材Mには、アモルファスカーボン素材又は炭化珪素素材(SiC)を用いることができる。また、薬液用熱交換器1には、熱交換ブロック2における薬液流通孔R…の出入口Rr…に接続する接続ブロック3a…、具体的には、薬液流通孔R…同士を接続する流通孔接続部4mを備える接続ブロック3a、或いは薬液流通孔R…に薬液Lを流入させる流入ポート部4i及び薬液流通孔R…から薬液Lを流出させる流出ポート部4oの少なくとも一方を備える接続ブロック3bを用いることができる。
【発明の効果】
【0010】
このような構成を有する本発明に係る薬液用熱交換器1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0011】
(1) 単一素材となる所定の焼成素材Mを焼結することにより、全体を一体形成した熱交換ブロック2を備えるため、複合板として構成する場合のディメリットを解消、即ち、異材質間の接触熱抵抗により熱伝達性能が低下するディメリットを解消でき、もって、熱交換器としての熱交換効率を高めることができる。
【0012】
(2) 内部に薬液Lを流通させる複数の薬液流通孔R…を形成し、かつ所定の焼成素材Mにより一体形成した熱交換ブロック2により主要基本部分を構成できるため、熱交換器全体の構造を単純化することができる。したがって、部品点数の大幅削減及び製造工程の簡略化に伴うコストダウンを図れるとともに、異材質間での熱伸縮が生じないことから長期使用における耐久性を高めることができる。
【0013】
(3) 好適な態様により、焼成素材Mとして、アモルファスカーボン素材又は炭化珪素素材を用いれば、少なくとも薬液に対して化学的及び物理的に強い耐薬品性、更には発生するガスの漏れを阻止するガスに対する非透過性に優れる熱交換ブロック2、即ち、薬液用熱交換器1を構成する最適な熱交換ブロック2を得ることができる。
【0014】
(4) 好適な態様により、熱交換ブロック2における薬液流通孔R…の出入口Rr…に接続する接続ブロック3a…、具体的には、薬液流通孔R…同士を接続する流通孔接続部4mを備える接続ブロック3a、或いは薬液流通孔R…に薬液Lを流入させる流入ポート部4i及び薬液流通孔R…から薬液Lを流出させる流出ポート部4oの少なくとも一方を備える接続ブロック3bを用いれば、結合具等を追加するのみで薬液用熱交換器1の主要部を容易に構成(実施)することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に、本発明に係る最良の実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0016】
まず、本実施形態に係る薬液用熱交換器1の構成部品(構成部材)について、図1〜図4を参照して具体的に説明する。
【0017】
2は熱交換ブロックを示す。熱交換ブロック2は、図3及び図4に示すように、全体を所定の焼成素材M、望ましくはアモルファスカーボン素材により一体に形成するとともに、全体形状を偏平な直方体状(プレート状)に形成する。熱交換ブロック2の外面となる上面及び下面は、平坦な熱交換面Cu,Cdとして形成し、熱交換ブロック2の内部には、薬液Lを流通させる複数の薬液流通孔R…を長手方向に沿って形成する。即ち、熱交換ブロック2の長手方向を前後方向とした場合、熱交換ブロック2の前端面2fと後端面2rに、それぞれ出入口Rr…が開口する薬液流通孔R…を形成する。例示の薬液流通孔R…は四つであり、それぞれ平行かつ一定間隔おきに形成するとともに、各薬液流通孔R…は断面円形に形成し、薬液流通孔Rと熱交換面Cu間、及び薬液流通孔Rと熱交換面Cd間における最も薄くなる部位の厚さDは、2〔mm〕以下に選定することが望ましい。また、熱交換ブロック2の前端面2fと後端面2rには、出入口Rr…を囲むように、閉ループ状(リング状)の凹溝によるシールリング収容部11,12をそれぞれ形成する。
【0018】
熱交換ブロック2の製造は、アモルファスカーボン素材に係わる公知の製法を利用できる。例えば、フェノール樹脂,ポリイミド樹脂,エポキシ樹脂,フラン樹脂等で代表される熱硬化性樹脂を、射出成形機或いは圧縮成形機などを用いて賦型するとともに、この後、不活性ガス雰囲気中において千数百℃の高温下で焼成することにより炭素化したアモルファスカーボン成形体としての熱交換ブロック2を得ることができる。
【0019】
焼成素材Mとしては、アモルファスカーボン素材以外に、炭化珪素素材(シリコンと炭化物の化合物:SiC)を用いても、当該アモルファスカーボン素材と同様に良好な結果を得ることができる。このように、焼成素材Mとして、アモルファスカーボン素材又は炭化珪素素材を用いれば、少なくとも薬液に対して化学的及び物理的に強い耐薬品性、更には発生するガスの漏れを阻止するガスに対する非透過性に優れる熱交換ブロック2、即ち、薬液用熱交換器1を構成する最適な熱交換ブロック2を得ることができる。
【0020】
3a,3bは、熱交換ブロック2における薬液流通孔R…の出入口Rr…に接続する接続ブロックを示す。接続ブロック3aは、図3及び図4に示すように、接続本体部21を備え、接続本体部21は、熱交換ブロック2の後端面2rに面接触できるように、例えば、フッソ系樹脂(PTFE,PFA等)により全体をブロック状(プレート状)に一体成形する。後端面2rに当接する接続ブロック3aの当接面3aiには、凹部による一対の流通孔接続部4m,4mを形成する。これにより、後端面2rに当接させた際には、各流通孔接続部4m…は、隣接する二つの薬液流通孔R…の出入口Rr…にそれぞれ跨がって接続される(図1参照)。また、接続ブロック3aの当接面3aiには、シールリング収容部11に対面するシールリング収容部22を形成する。シールリング収容部22もシールリング収容部11と同様に閉ループ状(リング状)の凹溝により形成する。さらに、接続ブロック3aは、熱交換ブロック2に対して横幅を長くし、両端付近に、結合具である結合ボルト31x,32xの挿通孔23p,23qを形成する。
【0021】
接続ブロック3bは、図4に示すように、接続本体部25とこの接続本体部25の外端面に取付けた筒状継手による流入ポート部4i及び流出ポート部4oを有する。接続本体部25は、熱交換ブロック2の前端面2fに面接触できるように、例えば、フッソ系樹脂(PTFE,PFA等)により全体をブロック状(プレート状)に一体成形する。この場合、接続ブロック3bには、前後方向に貫通する流入孔Hiと流出孔Hoを有し、流入孔Hiは流入ポート部4iに連通するとともに、流出孔Hoは流出ポート部4oに連通する。これにより、接続ブロック3bを熱交換ブロック2の前端面2fに当接させた際には、流入孔Hiが一方の端に設けた薬液流通孔Rの出入口Rrに接続されるとともに、流出孔Hoが他方の端に設けた薬液流通孔Rの出入口Rrに接続される。また、前端面2fに当接する接続ブロック3bの当接面3biにおける流入孔Hiと流出孔Ho間には、凹部による流通孔接続部4mを形成する。流通孔接続部4mは、接続ブロック3bを前端面2fに当接させた際に、中間に位置する二つの薬液流通孔R…の出入口Rr…に跨がって接続される。さらに、接続ブロック3bの当接面3biには、シールリング収容部12に対面するシールリング収容部26を形成する。シールリング収容部26もシールリング収容部12と同様に閉ループ状(リング状)の凹溝により形成する。接続ブロック3bも接続ブロック3aと同様に熱交換ブロック2よりも横幅を長くし、両端付近に、結合ボルト31x,32xの挿通孔27p,27qを形成する。流入ポート部4i及び流出ポート部4oも、例えば、フッソ系樹脂(PTFE,PFA等)により一体成形するとともに、接続本体部25に対してネジ込み式により取付けることができる。
【0022】
41aはシールリング収容部11及び22に跨がって収容するシールリング、41bはシールリング収容部12及び26に跨がって収容するシールリングを示す。各シールリング41a,41bは、例えば、フッソ系樹脂により一体成形する。また、31x,32xは、例えば、ステンレス素材により形成した結合ボルトを示すとともに、31y,32yは、結合ボルト31x,32xにそれぞれ螺着する、例えば、ステンレス素材により形成した固定ナットを示し、結合ボルト31x…及び固定ナット31y…は結合具を構成する。なお、結合ボルト31x…及び固定ナット31y…の形成素材は特に限定されず、接続ブロック3a…と同様のフッソ系樹脂等を用いてもよい。
【0023】
次に、このような構成部品(構成部材)を用いた本実施形態に係る薬液用熱交換器1の組立方法について、図1〜図5を参照して説明する。
【0024】
まず、図4に示すように、熱交換ブロック2のシールリング収容部11にシールリング41aを収容し、接続ブロック3aの当接面3aiを熱交換ブロック2の後端面2rに当接する。この際、接続ブロック3aのシールリング収容部22にシールリング41aの残部が収容される。また、熱交換ブロック2のシールリング収容部12にシールリング41bを収容し、接続ブロック3bの当接面3biを熱交換ブロック2の前端面2fに当接する。この際、接続ブロック3bのシールリング収容部26にシールリング41bの残部が収容される。
【0025】
そして、この状態で、結合ボルト31x,32xを挿通孔27p,27qにそれぞれ挿通させるとともに、さらに挿通孔23p,23qに挿通させた後、固定ナット31y,32yを結合ボルト31x,32xの先端にそれぞれ螺着する。これにより、固定ナット31y,32yを締めれば、熱交換ブロック2に接続ブロック3a,3bを結合し、一体化することができる。このように構成した熱交換ユニットUを図2に示す。
【0026】
また、図5に示すように、熱交換ブロック2の一方の熱交換面Cuに、ペルチェ素子を用いたサーモモジュール51u…を付設し、さらに、このサーモモジュール51u…の放熱面(吸熱面)に冷却部52uを付設する。同様に、熱交換ブロック2の他方の熱交換面Cdに、ペルチェ素子を用いたサーモモジュール51d…を付設し、さらに、このサーモモジュール51d…の放熱面(吸熱面)に冷却部52dを付設する。この場合、熱交換ブロック2内には直線状となる複数の薬液流通孔R…が平行に形成されるため、矩形状となる複数のサーモモジュール51u…,51d…を熱交換面Cu,Cdのほぼ全面に効率的に配することができるとともに、各サーモモジュール51u…,51d…に対して同寸法(同形状)の冷却部52u,52dを配することにより効率的な冷却を行うことができる。なお、冷却部52u,52dは、水冷式クーラを用いることができる。図5中、53u,53dは、冷却部52u,52dに冷却水を循環させる配水管を示す。これにより、図5(図1)に示す薬液用熱交換器1を得る。
【0027】
次に、本実施形態に係る薬液用熱交換器1の機能について、図1〜図5を参照して説明する。
【0028】
薬液用熱交換器1により薬液Lを冷却する場合には、図5に示すサーモモジュール51u…,51d…に通電して熱交換ブロック2の熱交換面Cu,Cdを冷却する。この際、サーモモジュール51u…,51d…の放熱面からの放熱は、冷却部52u,52dにより吸収される。
【0029】
一方、図1に示すように、薬液Lを流入ポート部4iに供給する。流入ポート部4iに供給された薬液Lは、流入孔Hiを介して一方の端の設けた一番目の薬液流通孔Rを流通し、接続ブロック3aにおける一方の流通孔接続部4mを通って、二番目の薬液流通孔Rを流通するとともに、さらに、接続ブロック3bにおける流通孔接続部4mを通って、三番目の薬液流通孔Rを流通し、接続ブロック3aにおける他方の流通孔接続部4mを通って、四番目の薬液流通孔Rを流通する。この後、四番目の薬液流通孔Rを流通した薬液Lは、流出孔Hoを介して流出ポート部4oに至り、流出ポート部4oから排出される。そして、四つの薬液流通孔R…を流れる薬液Lは、熱交換面Cu,Cdを介して熱交換、即ち、冷却される。
【0030】
次に、本発明の変更実施形態に係る薬液用熱交換器1について、図6〜図12を参照して説明する。
【0031】
図6は、熱交換ブロック2の変更例を示す。図1〜図5における熱交換ブロック2は、薬液流通孔Rを断面円形に形成した場合を示したが、薬液流通孔Rの断面形状は、円形に限定されるものではなく、図6に示すように、矩形に形成したり、或いは楕円形などに形成してもよい。この場合、熱交換面Cu,Cdの強度を確保するため、各薬液流通孔R…間のピッチを短くして薬液流通孔R…の数を多くすることができる。また、熱交換面Cu,Cdと薬液流通孔R…間の厚さを薄くし、かつシールリング収容部12(11)を形成する前端面2f(後端面2r)の面積を確保するため、図6に示すように、熱交換ブロック2の上面及び下面に段差を形成してもよい。
【0032】
図7及び図8は、接続ブロック3a,3bの変更例を示す。図7に示す接続ブロック3aは、接続本体部71を備え、当接面3aiには、凹部による一つの流通孔接続部4mを形成する。これにより、熱交換ブロック2の後端面2rに当接させた際には、流通孔接続部4mは、全て(例示は四つ)の薬液流通孔R…の出入口Rr…にそれぞれ跨がって接続される。また、接続本体部71の外端面には筒状継手によるポート部4o(4i)を取付ける。このような接続ブロック3a…は二つ用意し、一方を接続ブロック3aとして用いるとともに、他方を接続ブロック3bとして用いる。この場合、接続ブロック3aのポート部は流出ポート部4oとなり、接続ブロック3bのポート部は流入ポート部4iとなる。この薬液用熱交換器1は、一方の接続ブロック3bの流入ポート部4iに薬液Lを流入させれば、薬液Lは、流通孔接続部4mから全ての薬液流通孔R…に対して一側から流通(分流)した後、他方の接続ブロック3aの流通孔接続部4mに至る。そして、流通孔接続部4m内で合流した薬液Lは、流出ポート部4oから流出する。
【0033】
一方、図8に示す接続ブロック3aは、接続本体部72を備え、当接面3aiには、凹部による一つの流通孔接続部4mを形成する。これにより、熱交換ブロック2の後端面2rに当接させた際には、流通孔接続部4mは、全て(例示は四つ)の薬液流通孔R…の出入口Rr…にそれぞれ跨がって接続される。また、接続ブロック3bは、接続本体部73とこの接続本体部73の外端面に取付けた筒状継手による流入ポート部4i及び流出ポート部4oを有する。この場合、当接面3biには、凹部による一対の流通孔接続部4m,4mを形成し、一方の流通孔接続部4mを流入ポート部4iに連通させるとともに、他方の流通孔接続部4mを流出ポート部4oに連通させる。これにより、熱交換ブロック2の前端面2fに当接させた際には、各流通孔接続部4m…は、隣接する二つの薬液流通孔R…の出入口Rr…にそれぞれ跨がって接続される。この薬液用熱交換器1は、一方の接続ブロック3bの流入ポート部4iに薬液Lを流入させれば、流通孔接続部4mから隣接する二つの薬液流通孔R,Rに対して一側から流通した後、他方の接続ブロック3aの流通孔接続部4mに至るとともに、流通孔接続部4mで一旦合流した薬液Lは、隣接した残る二つの薬液流通孔R,Rに対して他側から流通した後、一方の接続ブロック3bの流通孔接続部4mに至る。そして、この流通孔接続部4mで合流した薬液Lは、流出ポート部4oから流出する。なお、図8は、接続ブロック3bにおける二つの流通孔接続部4m,4mに対してそれぞれシールリング41bp,41bpを設けるとともに、結合ボルト31x…の頭部側は、接続ブロック3bに対してネジ形式により結合した場合を示す。
【0034】
図9〜図11は、薬液用熱交換器1の全体構成の変更例を示す。図1〜図5に示した薬液用熱交換器1は、熱交換ブロック2の上下面における熱交換面Cu,Cdに、それぞれサーモモジュール51u…,51d…及び冷却部52u,52dを付設した場合を示したが、図9〜図11は、実際に製作する場合の薄型化を考慮した形態を示す。このため、図9〜図11に示す薬液用熱交換器1は、熱交換ブロック2(熱交換ユニットU)の一方(下面)の熱交換面Cd側に対してのみ、サーモモジュール51d…及び冷却部52dを付設した。また、例示の冷却部52dは、熱交換ユニットUと同一構成のユニットにより構成した。この場合、冷却水を用いる冷却部52dは、耐薬液性等を考慮する必要がないため、熱交換ブロック2及び接続ブロック3a,3bは、コスト面や製作性等を考慮して他の形成素材を用いることができ、例えば、熱交換ブロック2には、一般的なカーボン素材を用いることができる。なお、図9〜図11において、4iは流入ポート部、4oは流出ポート部を示す。例示の熱交換ブロック2及び接続ブロック3a,3bは薄型に形成したため、流入ポート部4i及び流出ポート部4oは、接続ブロック3bにおける厚さの範囲に収めることができない。したがって、流入ポート部4i及び流出ポート部4oの一部は接続ブロック3bの上面から突出する。また、75は過熱防止用のサーモスタットを示す。さらに、76…は、スプリング77…及びボルトナット78…を用いた複数の加圧部を示し、熱交換ブロック2と冷却部52dに挟まれるサーモモジュール51d…に対する圧力管理(圧力調節)を行う。その他、図9〜図11中、79,80は保持板、81…は各サーモモジュール51d…のリード線を示す。
【0035】
図12は、薬液用熱交換器1のサイズ変更例を示す。図9〜図11に示した薬液用熱交換器1では、薬液流通孔R…の形成方向に沿って五列のサーモモジュール51d…を配したサイズを示したが、図12(a)に示す薬液用熱交換器1は、薬液流通孔R…の形成方向に沿って三列のサーモモジュール51d…を配し、他方、図12(b)に示す薬液用熱交換器1は、薬液流通孔R…の形成方向に沿って七列のサーモモジュール51d…を配したサイズを示す。このように、本実施形態に係る熱交換ブロック2を用いれば、熱交換ブロック2における長手方向(薬液流通孔R…の形成方向)のサイズを変更するのみで薬液用熱交換器1の能力を容易に変更できる。特に、接続ブロック3a,3bは異なるサイズに兼用できるため、コストメリットを得ることができる。
【0036】
なお、図6〜図12において、他の構成及び機能等は、図1〜図5に示した実施形態に準じて実施することができる。このため、図6〜図12の実施形態において、図1〜図5に示した実施形態と同一部分には同一符号を付してその構成を明確にするとともに、その詳細な説明は省略する。
【0037】
よって、このような薬液用熱交換器1によれば、単一素材となる所定の焼成素材Mを焼結することにより、全体を一体形成した熱交換ブロック2を備えるため、複合板として構成する場合のディメリットを解消、即ち、異材質間の接触熱抵抗により熱伝達性能が低下するディメリットを解消でき、もって、熱交換器としての熱交換効率を高めることができる。また、内部に薬液Lを流通させる複数の薬液流通孔R…を形成し、かつ所定の焼成素材Mにより一体形成した熱交換ブロック2により主要基本部分を構成できるため、熱交換器全体の構造を単純化することができる。したがって、部品点数の大幅削減及び製造工程の簡略化に伴うコストダウンを図れるとともに、異材質間での熱伸縮が生じないことから長期使用における耐久性を高めることができる。しかも、薬液流通孔R…同士を接続する流通孔接続部4mを備える接続ブロック3a及び薬液流通孔R…に薬液Lを流入させる流入ポート部4i及び薬液流通孔R…から薬液Lを流出させる流出ポート部4oの少なくとも一方を備える接続ブロック3bを用いたため、結合具等を追加するのみで薬液用熱交換器1の主要部を容易に構成(実施)することができる。
【0038】
以上、各種実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,数量,数値等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。例えば、薬液流通孔R…は、数量を変更することにより、層流にしたり乱流にすることができるとともに、薬液流通孔R…の内面を粗すことにより、乱流効果を更に高めることができる。なお、薬液Lには、半導体処理液をはじめ、各種薬液を適用できるとともに、必要により水等の薬液以外の溶液にもそのまま利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の最良の実施形態に係る薬液用熱交換器の主要部の断面平面図、
【図2】同薬液用熱交換器における熱交換ユニットの外観平面図、
【図3】同薬液用熱交換器における熱交換ブロック,シールリング及び接続ブロックの外観斜視図、
【図4】同薬液用熱交換器における熱交換ユニットの分解断面平面図、
【図5】同薬液用熱交換器の全体を示す外観側面図、
【図6】本発明の変更実施形態に係る熱交換ブロックを示す正面図及び一部を示す側面断面図、
【図7】本発明の変更実施形態に係る薬液用熱交換器の主要部の断面平面図、
【図8】本発明の変更実施形態に係る薬液用熱交換器の主要部の断面平面図、
【図9】本発明の変更実施形態に係る薬液用熱交換器の分解側面図、
【図10】図9の薬液用熱交換器における組付後の側面図、
【図11】図10の薬液用熱交換器の平面図、
【図12】本発明の変更実施形態に係る薬液用熱交換器の平面図、
【符号の説明】
【0040】
1:薬液用熱交換器,2:熱交換ブロック,3a:接続ブロック,3b:接続ブロック,4m:流通孔接続部,4i:流入ポート部,4o:流出ポート部,Cu:熱交換面,Cd:熱交換面,L:薬液,R…:薬液流通孔,Rr…:薬液流通孔の出入口,M:焼成素材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外面に形成した熱交換面を冷却又は加熱することにより内部に流通する薬液に対して熱交換を行う薬液用熱交換器において、内部に薬液を流通させる複数の薬液流通孔を形成し、かつ少なくとも外面となる上面及び下面を前記熱交換面として形成するとともに、所定の焼成素材を焼結することにより全体を一体形成した熱交換ブロックを備えることを特徴とする薬液用熱交換器。
【請求項2】
前記焼成素材は、アモルファスカーボン素材又は炭化珪素素材を用いることを特徴とする請求項1記載の薬液用熱交換器。
【請求項3】
前記熱交換ブロックにおける前記薬液流通孔の出入口に接続する接続ブロックを備えることを特徴とする請求項1記載の薬液用熱交換器。
【請求項4】
前記接続ブロックは、前記薬液流通孔同士を接続する流通孔接続部を備えることを特徴とする請求項3記載の薬液用熱交換器。
【請求項5】
前記接続ブロックは、前記薬液流通孔に薬液を流入させる流入ポート部及び前記薬液流通孔から薬液を流出させる流出ポート部の少なくとも一方を備えることを特徴とする請求項3記載の薬液用熱交換器。
【請求項1】
外面に形成した熱交換面を冷却又は加熱することにより内部に流通する薬液に対して熱交換を行う薬液用熱交換器において、内部に薬液を流通させる複数の薬液流通孔を形成し、かつ少なくとも外面となる上面及び下面を前記熱交換面として形成するとともに、所定の焼成素材を焼結することにより全体を一体形成した熱交換ブロックを備えることを特徴とする薬液用熱交換器。
【請求項2】
前記焼成素材は、アモルファスカーボン素材又は炭化珪素素材を用いることを特徴とする請求項1記載の薬液用熱交換器。
【請求項3】
前記熱交換ブロックにおける前記薬液流通孔の出入口に接続する接続ブロックを備えることを特徴とする請求項1記載の薬液用熱交換器。
【請求項4】
前記接続ブロックは、前記薬液流通孔同士を接続する流通孔接続部を備えることを特徴とする請求項3記載の薬液用熱交換器。
【請求項5】
前記接続ブロックは、前記薬液流通孔に薬液を流入させる流入ポート部及び前記薬液流通孔から薬液を流出させる流出ポート部の少なくとも一方を備えることを特徴とする請求項3記載の薬液用熱交換器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−64382(P2008−64382A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−242883(P2006−242883)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【出願人】(000103921)オリオン機械株式会社 (450)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【出願人】(000103921)オリオン機械株式会社 (450)
【Fターム(参考)】
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