薬物ディスペンサーおよびそのキャリアー
本明細書は、加圧された薬物容器を受け入れそこから治療用用量を吐出させるための薬物ディスペンサーを開示している。当該薬物ディスペンサーは、細長い管状本体部(11)を有し、キャビティーが管状本体部内に形成され、薬物容器を受け入れるように構成されている。側部開口(19)が管状本体部に形成され、キャビティーと連通している。当該薬物ディスペンサーの第一の端部の領域(13)には、スリーブ(12)が回転可能に取り付けられている。該スリーブ(12)はスリーブ開口(16)を有し、これは、スリーブの回転の間に移動して側部開口(19)との位置合せに入りかつそこから脱する。スリーブの回転とともにマウスピース(18)が吐出ポジションと格納ポジションとの間を移動する。管状本体部は、引き出されたマウスピースの位置から離れる方へ偏向する長手方向軸(22)を有し、この偏向は、第一の端部の領域(13)の外側で生じている。本発明は、薬物ディスペンサー(10)と共に用いるためのキャリアー(60)を包含してもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、加圧薬物容器(加圧された薬物の容器:pressurised medication container)を受け入れ、それらを安全かつ衛生的な状態で格納しながら、必要な際には作動を可能とするための薬物ディスペンサーに関する。本発明は、当該薬物ディスペンサー用のキャリアー(運搬器)に及び、好ましくは、該キャリアーは、ベルト、ストラップ、キャリーバッグ、使用者に接近可能な他の好適な場所など、個人のアイテム上の安全なポジションに固定するために適合化されたキャリアーを包含する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
自己治療(self-medication)のためのデバイスの進化は、様々な疾患および病気の患者に大きな利点をもたらしてきた。
【0003】
その主要な1つの例は、喘息である。過去において、喘息患者は、典型的には、自身の周囲に設けられた支援メカニズムに近接できるようにするために、多くの場合、生活を低レベルの身体活動や制限された範囲の旅行のもとで送ることによる不自由な一生を余儀なくされていた。喘息の深刻な発作は、多くの場合、医師などの専門医療従事者の注意およびそれら専門家により投与される薬物の使用を必要とするものであった。アミノフィリンおよびアドレナリンを含むこれらの薬物は、適当なレベルの有効性をもつ一方で、使用によるいくつかの重大な危険を伴うものであった。さらに、これらの薬物の使用は、回復をもたらすのみで、通常は、病態の管理や安定化の途上にある患者にとっては、継続する(ongoing)利点をもたらすものではなかった。
【0004】
コルチコステロイドの進展は、いくつかの疾病、特に喘息において大きな助力となるものであった。しかし、人体におけるコルチコステロイドの長期の経口的または非経口的投与による副作用が知られており、最も深刻な症例以外におけるこの療法の採用には制限が必要である。
【0005】
喘息患者の生活の質における劇的な改善は、部分的に、サルブタモール、気管支拡張薬、の自己投与のために設計された加圧投薬容器の開発と共にもたらされ、それは、喘息発作の気管支けいれんの緩和に関して非常に有効なものである。サルブタモールは、通常、最上部に押下げ作動弁を備えた加圧容器によって提供される。この弁は、プラスチック製の外側カラー、キャップ、または、マウスピース上に設けられた弁座にぴったり合うように構成されている。このカラーによって、弁棒に対してキャニスターを押し下げ、管理された用量の治療薬をカラーの吐出口内に放出することができる。患者は、このデバイスを使用する場合に、該キャニスターを押し下げて、用量分の治療薬を吐出させながら必要な程度息を吐き出し、そして息を吸う。
【0006】
サルブタモール吸入器は、呼吸困難の発作を処置する機能を提供するとともに、治療法を自己管理して臨床症状を最小化し呼吸発作のさらなる進行を鎮静化ないし防止する機能を提供してきた。
【0007】
サルブタモールは、自己投与に適した治療薬の優れた一例であるが、決して唯一単独ではない。喘息に関しては、他にも多くの形態の治療法が提供されている(例えば、ベコタイド(Becotide)(登録商標)、フレキシタイド(Flexitide)(登録商標)、アスモル(Asmol)(登録商標))。これらのうちいくつかは、有害な副作用が相対的に少なく、高い有効性で、少ない服用量のコルチコステロイドである。また、他の多くの疾病も、気道内、経消化管摂取、または中咽頭ないし鼻の粘膜を介した吸収による計量された用量での自己治療の対象となる。
【0008】
薬物の投与は、多くは定量噴霧吸入器またはMDIとして知られるデバイス内の圧縮加圧されたエアゾール製剤による既述のような形態であってもよい。代替的に、粉末や他の固形剤、液体または気体を加圧容器から一定用量で供給ないし投与してもよい。
【0009】
これらの開発は、実際に自己治療を行なっている疾病患者に大きな利便をもたらしてきたが、同時に、患者が薬物キャニスターを忘れるか、誤ってハンドバッグやスポーツバッグなどどこかに入っていると信じ込んでしまい、必要時にならないと薬物が利用不能であることが分からないという問題が依然としてある。これは、疾病の徴候または症状の激しい突発の場合に深刻な結果をもたらすものである。薬物キャニスターを有効かつ安全に保管することについての問題は、スポーツ活動において顕著であって、そこでは多くの場合、服装が、行なわれているスポーツの特定の必要に応じてデザインされているが、安全なポケットやポーチが設けられていない。ポケットが存在する場合でも、薬物ディスペンサーのキャリアーは衝撃または汚染物の混入による損傷を受けやすい。これらの問題は、シュノーケリング、スキューバダイビング、オリエンテーリング、登山などの屋外活動において、疾病患者がその活動に必要な用具以外をほとんど持たず支援拠点から相当程度離れている場合に顕著となる。
【0010】
雨や雪など苛酷な環境や条件での使用は、湿気、泥、塵、砂、植物性の物質の他、薬物デバイスの損傷または使用者に対する危険をもたらす可能性のあるその他の物質などの汚染物の侵入につながる場合がある。
【0011】
US4,130,116("カヴァッツァ(Cavazza)")は、スプレー缶を挿入可能なポケットデバイスを開示している。機械的手段が備えられており、当該デバイスは不使用時には閉止位置に保持されるが、スプレー缶のノズル部分を露出するように作動させると、缶を利用可能にすることができる。この開示は、2つの半分部分(two halves)を側壁の境界に沿って配置されたガイドに沿って相互に摺動させるものである。このデバイスが湿気に対してシールされているという開示はなく、その操作中には、広い開口が第1ノズル端部および第2作用端部の双方において環境に曝露される。従って、このデバイスの用途は、とりわけスポーツ活動の間にしばしば遭遇するような苛酷な環境、特に水上スポーツおよび持久型の活動においては、何らかの限定を受ける。
【0012】
CA2,379,137("ファーマソーティカル・ディスカバリー・コーポレーション(Pharmaceutical Discovery Corporation)")は、乾燥粉末吸入器を開示しており、該吸入器は、吸入部分と、混合部分と、回転可能なマウスピースとを有している。該デバイスは、予備の薬物カプセルを保持するための格納部分を備えているが、相対的に複雑である。該デバイスは、特に、空気流の流量を制御することに向けられており、テーパーとされたピストンロッドと、バネと、1以上の通気オリフィスを用いている。また、これは、適切な空気流の流量がいつ達成されたかを示す信号音を発生させるためのフィードバックモジュールをも含んでいてもよい。これもまた、該デバイスが環境に対してシールされるという開示はない。該デバイスは、相対的にかさばるとともに操作が複雑であり、異物の存在下では誤作動を起こしやすくなるであろう。さらに、ショック状態または呼吸困難状態の人間はデバイスを作動させるのに必要な吸入動作を行なえないという可能性がある。
【0013】
US5,497,764("リトソン(Ritson)")は、ポータブルな電池電源による手で持てる大きさのシステムに向けられており、該システムは、患者による吸入のため管理された用量のエアゾール薬剤を放出するためのものである。このデバイスは、丈夫な(durable)本体を有し、その丈夫な本体に挿入された薬物カセットとを有している。この開示は、電子式で相対的に複雑なデバイスに関するものであるが、該デバイス内に挿入されるカセットの形態を開示しており、それは、丈夫な本体から離れて、従来のように手動で作動する定量吸入デバイスとして使用できるように構成されている。しかし、このデバイスを機能させるには、本体から該デバイスを取り外す必要がある。丈夫な本体に収容されている場合、該デバイスの操作は比較的複雑である。薬物の剤形は、液体または粉末の剤形であってもよい。該デバイスは、環境に対して密封されていない。このデバイスは、相対的に複雑、かつ電子的な部分が多いと考えられる。
【0014】
BE905189("グラクソ・グループ社(Glaxo Group Ltd)")は、微細に分割した固体(ソリッド)の形態になった薬物を患者に投与するデバイスを対象としている。該デバイスは、ハウジングとトレイを備え、支持ディスクがトレイ上に設けられるとともに、該支持ディスクは、薬物を担持するキャリアーを受け入れるように構成されており、相対的に複雑である。容器をプランジャーと位置合せした後、該プランジャーは、容器を貫通するように操作され得る。空気が該デバイスに入って吸入される。
【0015】
DE4028387("ベヒター(Bechter)")は、カバーデバイスを開示しており、該デバイスは、鼻および顎を覆う自由空間を持った呼吸マスクを提供するように覆い隠す。そのため、これは相対的に大型である。1つの態様では、これは、吸入装置(inhalation apparatus)と共に使用される呼吸マスクとして設計されている。
【0016】
WO 01/00263("インヘール・セラピューティック・システム(Inhale Therapeutic System)")は、規定しきい値の真空が使用者によって得られるまで、肺への空気の進入が防止される構成を開示している。空気は突然に肺への流入を許可される。これはショックまたは呼吸困難の状態にある患者において矛盾となるかもしれない。
【0017】
WO 1995/028192("デュラ・ファーマソーティカルズ(Dura Pharmaceuticals)")は、ハウジングとマウスピースとを有する乾燥粉末薬物吸入器を開示している。エアゾール化チャンバー内で回転するインペラが、ピンに回転可能に取り付けられている。径方向の入口が、ハウジングを貫通して、かつ、実質的に接線方向にチャンバー内に進入している。操作においては、チャージを行うプランジャーが、バネの付勢に抗して押し下げられ、粉末薬剤の全用量がチャンバー内に押し出される。プランジャーは操作の間、バネ付勢に抗して保持され、チャンバー壁部の最上部を形成する。開放領域のペグ上に投薬カートリッジを配置してもよい。ホールドダウンレバーを回動させるとカートリッジが保持されマウスピースが動作位置にロックされる。多数回使用薬物収容カートリッジを使用してもよい。インペラは、モータにより高速で駆動される。インペラは、吸気口を介して空気を吸引する遠心空気ポンプとして作用し、1個または1対の電池に依存する高速電気モーターにより駆動される。やはり、このデバイスもバッテリー入力に依存している。しかし、このデバイスは、ユーザの吸入のみにより動作可能である。このデバイスは、特に湿気に対して環境的に密封されているとは考えられない。さらに、どちらの態様でも、このデバイスは、相対的に複雑であり、粉末の使用に限定されている。
【0018】
WO 2000/018455号("グラクソ(Glaxo)")は、呼吸器用薬物を投与するのに適した吸入デバイスを提供している。それは、マウスピース上の埃の蓄積を防止するためカバーを備えているが、水に対してはシールされていない。またそれは、操作中に使用される歯車駆動(geared)で相対的に複雑なアクチュエータを持っている。
【0019】
WO 2002/004043("ヴァポトロニクス(Vapotronics)")は、薬物または他の流体を液滴形状で吸入中に供給するための吸入器を開示している。この吸入器は、ハウジングを貫通して延びる空気流導管アセンブリを有し、その空気流導管アセンブリと流体的に相互接続可能なマウスピースを有し、液滴射出カートリッジハウジングを有している。液滴射出カートリッジが、カートリッジハウジング内に脱着可能に配置されている。空気流導管アセンブリは、空気が最初に吸引されるプレナムを備えてもよい。マウスピースはデバイス上で取り外し可能かつ収納可能である。液滴射出カートリッジは、配設薬物リザーバと、複数の液滴射出オリフィスと、少なくとも1つの液滴射出アクチュエータとを有している。該液滴射出カートリッジは、その側面の1つにPCBインタフェースを有しており、該PCBインタフェースは、吸入器の動作を制御するプリント配線回路とインタフェース接続するためのものである。このデバイスを動作させるため圧力センサが使用され、また複数の液滴射出オリフィスを備えるノズル領域が設けられる。各液滴射出オリフィスは自身の抵抗器を備えており、薬物の投与に関して1対1の関係が存在する。このようにこのデバイスは、複雑な電子的構成を備えており、使用の際に電力に依存する。このデバイスの苛酷な環境における用途は限られるかもしれない。
【0020】
UK特許GB2074454(「ソモバ(Somova)」)は、格納式マウスピースを有する吸入デバイスを開示している。このデバイスは、エアゾール容器に脱着可能に嵌合するように構成された管状本体を備えている。引込位置と引出位置との間で移動可能な吐出マウスピースが配設されている。マウスピースの引出しおよび引込みは、管状本体に回転可能に取り付けられたキャップによって、少なくとも部分的に実現され、該管状本体は、それに連結された作動手段を備えている。キャップと管状本体は、寸法が同様の開口を有している。キャップを回転させて開口を整合させると、作動手段がマウスピースを引出位置に向けて移動させる。キャップを逆回転させて開口の整合を解除すると、マウスピースが管状本体内の閉鎖位置まで引き込まれる。上記の構成は、定量噴霧吸入器を格納するための衛生的な構成を提供しようとするものであるが、多くの問題を有している。第1の問題は、マウスピースが引出位置まで移動する際に、管状本体の長軸に対して垂直方向に移動するという事実から生じる。このため、マウスピースの底縁部と管状本体の近接する縁部とが直角をなすように配置される。MDIの使用者は、通常、使用者が吸入する吸気を最良に調整するため、鼻の前方で管状本体を垂直に保持してマウスピースを口内に配置する。このデバイスでは、記載されている直角の配置によって、マウスピースを使用者の唇付近に配置する際に、該マウスピースが不可避的に傾斜し、吐出された薬物のフリューム(flume)の方向が使用者の口蓋に向かうことにより、薬物が吸気に流入するよりも粘膜を覆ってしまうことになる。
【0021】
ソモバ(Somova)における図5から8の実施形態より生じるさらなる問題は、マウスピースの引出しが、最初はマウスピースの後部に作用するカム手段に依存しており、その後、開口11の近接する側縁部の作用により完了するということである。これは、キャップの逆回転がマウスピースを引き込ませると予測される同様の様態で、キャップの回転がマウスピースを外向きに押し出すことを意味すると考えられる。これは開口が同じ寸法である場合に起こりそうもないと考えられる。従って、開口の近接する縁部を管状本体の開口と位置合せすると、マウスピースを引き出すさらなる摺動は行なわれない。このカム構成が機能するとは考えにくい。
【0022】
さらなる問題が生じるかもしれないのは、マウスピースの引込みが回転可能なキャップの移動に依存しており、該移動によってエッジ部に湾曲したマウスピースを越えて摺動させ、それにより展開力に打ち勝つという点である。すべての態様が、外壁の縁部近傍において外壁の開口と嵌合するマウスピースを示している。マウスピースと外壁開口とは同様の寸法でなければならない。このためマウスピースの引込みは固着する可能性が高く、また動作を確実にするためキャップには硬質の縁部が必要となる。開示された態様は、特に、引き込みの際に、不安定な動作を起こす可能性が非常に高く、また、硬質のキャップが必要となり、それは、この配置構成を十分にシールするには思わしくない。
【0023】
さらなる欠点は、マウスピースの底縁部と、弁の突出する弁棒に近接するMDI最上部との間に、相当な開放空間が存するという事実から生じる。これにより、特に使用者が激しい活動を行なっている際に使用者のポケット内で偶発的な吐出の危険性が生じる。さらに、この構成により、マウスピースの後縁とMDI吐出弁の出口との間には大きな空間が存する。これにより、使用者への供給よりもむしろデバイスの内壁上に意図しない噴霧が行なわれる危険性が生じる。
【0024】
マウスピースの引出しおよび引込みを行なう駆動手段には、移動の全行程で作用する能動的な単一の推進力源が欠けている。これにより、さらに多くの動作上の問題が生じるかもしれない。マウスピースの回転範囲が完全に展開されない場合、エアゾール容器の動作によりマウスピースの壁部に対する噴霧が生じるであろう。
【0025】
上記のように、苛酷な環境では汚染の危険が甚大である。特に必要な時に容易かつ効果的に使用するために設計されている場合、密閉された安全かつ堅牢な格納構成が有利となろう。
【0026】
緊急事態における治療法の実施は、きわめて深刻となりうる様々な危険をもたらすかもしれない。例えば、鎮痛剤の投与には、堅牢で信頼性が高く操作が容易な器具(arrangement)が必要である。これは、特に自己投与の場合であって、使用者が負傷によって少なくとも部分的に能力が失われているか、または、援助を行う人々が救急処置の経験を積んでいない場合である。
【0027】
堅牢で、実用的で、かつ効果的な薬物ディスペンサーを提供することは、使用者の生活の質に対して積極的に寄与するものとなろう。そのようなデバイスが小型でかつ流行に合ったもの(stylish)であれば、使用に関する当惑が限定または回避されるであろう。
【0028】
本明細書における従来技術への言及は、この従来技術がいかなる国においても共通の一般的知識の一部をなすという認識でもなく、また、いかなる形態の示唆でもなく、またそのように解釈すべきでもない。
【発明の開示】
【0029】
発明の概要
第1の態様、しかし必ずしも唯一ではない最も広範な態様では、本発明は、加圧された薬物容器を受け入れそこから治療の投与量を吐出させるための薬物ディスペンサーに属し、当該薬物ディスペンサーは、
長細い管状本体部を有し、該管状本体部は、第一の端部の領域に形成された側部開口を持っており、
キャビティーを有し、該キャビティーは、前記本体部に形成され、かつ、前記薬物容器を受け入れるように構成され、該キャビティーは前記側部開口と連通しており、
吐出器を有し、該吐出器は、治療の投与量を吐出するためのものであり、
第一の端部の領域に回転可能に取り付けられたスリーブを有し、該スリーブは、スリーブ開口を持っており、該スリーブ開口は、回転によって、側部開口との位置合わせに入りかつ該位置合せから脱する移動可能なものであり、
マウスピースを有し、該マウスピースは、位置合せされた時に側部開口とスリーブ開口とを通過して延伸する延びた吐出ポジションと、キャビティー内の引き込んだ格納ポジションとの間で、移動可能であり、
前記細長い本体部の長手方向軸が、延伸するマウスピースのポジションから離れる方へと進む方向が偏向しており、その偏向が、第一の端部の領域の外側で生じている。これは、長手方向軸が側部開口から離れる方に偏向しているのと同じである。管状本体は、実質的に円筒状であってもよい。
【0030】
加圧薬物容器は、定量噴霧吸入器などの適切な装置であってよい。この文脈における薬物は、使用者に有利な効果をもたらすいかなる作用物質をも含むものと了解すべきであり、薬用物質、治療用物質、または、栄養剤であってもよい。薬用物質は、疾病の治療または予防のためのものであってもよい。
【0031】
吐出器は、加圧された薬物容器にある吐出弁の吐出心棒を受け入れるための中空の弁座を含んでいてもよい。該中空の弁座は、第一の端部領域内に、または、その近く位置していてもよい。
【0032】
吐出器は、好ましくは、可撓性を有する端部カバーをさらに有しており、該端部カバーは、細長い本体部の第二の端部に付与され、押圧によって指による薬物ディスペンサーの作動を可能としている。回転して作動するカム式の構成といった代替的な構成を用いて、中空の弁座に対して容器を押圧し内容物を吐出させてもよい。第二の端部の閉鎖は、当該デバイスの環境的な汚染に抗して実質的にシールされるべきである。
【0033】
マウスピースは、引出吐出ポジションと引込格納ポジションとの間で、実質的に半径方向に移動することが好ましい。
【0034】
構成部品は、マウスピースが引込んだ格納ポジションにおいて薬物容器の下方への移動を阻止して、偶発的な吐出を防止するように寸法が決められいることが好ましい。
【0035】
回転可能なスリーブは、閉塞スリーブまたは端部キャップとして形成されることが好ましい。スリーブは、定位置に弾性的にはめ込まれる、柔軟でかつ弾性を有するゴムまたは同様の合成物で形成してもよい。これにより、薬物ディスペンサーを効果的にシールする、容易に使用可能でかつ堅牢な構成が提供される。スリーブに適した代替的材料の1つはシリコンまたはシリコン系ポリマーである。いくつかの実施形態における付加的な利点は、テフロンを組み込んだものなど自己潤滑材料の使用によって達成されてよい。スリーブ開口は、側部開口よりも格段に幅広であることが好ましく、25%から200%の範囲で幅広であってもよい。
【0036】
好ましくは、スリーブの回転がマウスピースを駆動して、吐出ポジションと格納ポジションとの間で前方へそして後方へ行かせる。これを行なうための好適な手段は、駆動器具(drive arrangement)を備えており、該駆動器具は、端部キャップの中心から半径方向に間隔をおいてマウスピースと係合しマウスピースを吐出ポジションと引込格納ポジションとの間で積極的に駆動するものである。この駆動装置は、協働する構成部品上の対応する座部に対し係合するピンを備えてもよい。
【0037】
代替的には、マウスピースが、弾性部材によって吐出ポジションへと動かされ、それに引き続き、端部キャップの回転によって、該マウスピースの湾曲した表面に対して該弾性部材が重なってもよい。弾性部材は、コイルばねまたはゴムバンドまたは他の適切な器具であってもよい。
【0038】
管状体の長手方向軸は、第一の端部領域のすぐ外側で、5°と20°との間で偏向することが好ましい。該長手方向軸は、マウスピースを伸張した際のポジションとは正反対の平面内で偏向することが好ましい。これは側部開口の正反対と同じである。
【0039】
当該デバイスは、管状体に端部カバーを固定するためのロック器具(ロックする器具、locking arrangement)を含んでいてもよい。該ロック器具は、ロックリング(ロックするリング)を備えてもよい。付加的または代替的に、当該デバイスは、薬物容器を管状本体部に対してロックするための第2ロック器具を備えてもよい。第2ロック器具は、ロックリング、好ましくは割りリングを備えてもよい。
【0040】
格納ポジションにある場合のシールを補助するため、側部開口の周囲に、隆起したリップ部(唇状部)を設けてもよい。
【0041】
当該薬物ディスペンサーは、マウスピースが移動の最大範囲にある場合に、可聴信号を発するように構成してもよい。
【0042】
当該薬物ディスペンサーは、薬物容器の脱落に抗するするための容器ロック器具をさらに備えてもよい。
【0043】
当該薬物ディスペンサーは、以下のうち1以上を実行するための電子システムをさらに有することが好ましい。
(a)薬物容器およびディスペンサーが操作された回数を数えること、
(b)容器に残っている分の投与回数を計算するか、または、安全に使用可能な投与回数の表示を与えること、
(c)最後に投与してから後の時間を計算すること、
(d)24時間といった設定された期間内に使用された回数を計算すること、
(e)容器の治療用内容物の経過時間を監視すること、
(f)合計または設定時間内の吐出薬量を計算すること、
(g)ディスペンサー内部の湿気または他の汚染物に関する警告を出すこと、
(h)適正な使用および操作の継続に関する可聴的な指示を出すこと、および、
(i)可視的かつ可聴的な過剰使用警告を出すこと。
【0044】
該電子システムは、プロセッサーと、電源と、該プロセッサーと連絡しているトリガーと、使用者に対し情報を表示するディスプレイとを備えてもよい。ディスプレイは、好ましくはスクリーン・ディスプレイである。
【0045】
当該薬物ディスペンサーは、スペーサーアダプターを含んでいてもよい。
【0046】
本発明は、上記のような薬物ディスペンサーのためのキャリアーへと拡張されてもよく、該キャリアーは、該薬物ディスペンサーを受け入れるためのディスペンサー座部を有し、薬物ディスペンサーを定位置にロック固定するためのロックブラケットを有するものである。該キャリアーは、ベルト、ストラップ、衣服の一部、または、他の個人用のアイテムに装着するための装着手段を備えることが好ましい。手足、胴部や腰部の周囲など、使用者の身体の一部にキャリアーを固定するように構成してもよい。
【0047】
装着手段は、ばねクリップ、ベルトクリップ、舌状部、鳩目、縫った「ベルクロ(Velcro)」(登録商標)のためのループ、または他の適切な装置であってもよい。
【0048】
ディスペンサー座部は、薬物ディスペンサーの長手方向軸の角度をなした偏向と近似しているか、または、それを正確に模倣した角度の偏向をもって形成されることが好ましい。
【0049】
ロックブラケットは、ロック位置へとクリップ留めされかつ1個以上の弾性的なタブにより定位置に保持される鞍状部(saddle)であってもよい。該タブを押圧により作動させて鞍状部を解放するようにしてもよい。
【0050】
ロックブラケットは、取付けアームを持って形成されるのが好ましく、該アームは座部に連結され、かつ、ロックポジションへ進入しかつロックポジションから脱出するように回転が可能なものである。スロットと解放可能に係合するように舌状部を設けてもよく、その各々はロックブラケットおよび座部のそれぞれ一方に配置される。
【0051】
当該キャリアーは、次のうちの1以上の付属品をさらに含んでいてもよい。
(a)簡易取付具、
(b)ホルダベルトクリップ取付具、
(c)カラビナ、
(d)固定ストラップまたは輪、
(e)フックとループのファスナー、
(f)ラニヤード、
(g)保護キャップ、および、
(h)自転車または他の装備のための取付具。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
好ましい態様の詳細な説明
図1を参照すると、薬物ディスペンサー10の第1の実施形態が、図1Aには格納形態(storage configuration)にて、図1Bには吐出形態(discharge configuration)にて示されている。この薬物ディスペンサーは、管状本体部11を有しており、該管状本体部は、第一の端部13に回転可能に取り付けられた閉塞スリーブすなわち端部キャップ12を備えている。該スリーブ12は、ランヤード(lanyard、つりひも)やそれに類するもの(例えば、リストストラップ、ネックストラップ、その他の留め具として使用されるもの)を受け入れる取付開口15を有している。該キャップ12は、スリーブ開口16を有しており、該開口は、格納形態では、第一の端部13における管状本体部の壁部と重なる。
【0053】
図1Bには、マウスピース18が、吐出すなわち引出ポジションにて示されており、該マウスピースは、スリーブ開口16と、管状本体部11の側部(lateral)開口19とを貫通して延びている。該スリーブ開口16は、側部開口19よりも長さ方向の寸法がかなり長く、それにより、2つの開口が重なった状態で、キャップ12をかなり回転させることができる。これにより、マウスピースを完全な吐出ポジションまで出し入れ移動させることができる。
【0054】
管状本体部11の第二の端部20は、変形可能なゴムキャップ21で閉じられており、該ゴムキャップは、使用者の指で押し下げられて管状本体部の内側に位置する薬物容器の吐出を作動させることができる。
【0055】
図2Bは、図2Aの線A−Aに沿った薬物ディスペンサー10の断面図を示している。この図面は、格納形態にあるマウスピース18の引き込みを強調表示している。同図は、管状本体部11の長手方向軸22をも示しており、該長手方向軸は、第一の端部13に隣接しかつすぐ外側に角度をなした偏向(deviation、方向を変えること)23を伴っている。この結果、該軸22には、わずかなドッグレッグ(くの字形の屈曲)が生じる。この偏向は、マウスピースの展開ポジションから遠ざかるものであり、かつ、側部開口19からも遠ざかるものであって、そのことは、図3により明瞭に示されており、かつそれによって、使用者は、管状本体部11を使用者の身体の中間線と実質的に位置合せし、かつ、マウスピースを口の中心に向けて、治療剤の供給をいっそう良くすることができる。この偏向により、薬物フリュームを口の天井に向けることなく、管状本体部を使用者の鼻に接しないようにすることができる。この構成により、マウスピースを第一の端部に対し側方へ実質的垂直に移動させることができ、それにより駆動器具(drive arrangement)が簡略化され、その信頼性が高まる。偏向の角度は、5〜20度の範囲にあることが好ましいが、他の角度が適切であってもよい。
【0056】
当該構成の別の利点が図2Bに示されており、マウスピース18を引き込むと、薬物容器に対して上方に角度をつけて曲げられた後方エッジ上部壁24が、マウスピースが引込まれている場合の薬物容器の下方移動を阻止するようになっている。これにより、容器25に対する不慮の下向き押圧による、弁26を通じた偶発的な吐出が防止される。該弁26は、管状本体部11内に形成された弁座27へと着座する。該弁座は、中空になっており、出口(outlet)28と連通しかつ該出口を通して吐出を行なうようになっている(図3に示す)。
【0057】
図3に示すように、マウスピース18が展開(develop)されている場合、後方エッジ上部壁24が移動して、容器25から離れていることが分かる。
【0058】
図4は、分解された構成部品を示しており、管状本体部11、キャップ21、マウスピース18、および、閉塞スリーブすなわち端部キャップ12を含んでいる。この図は、また、外周のスロット31を備えたプレート30を示しており、該スロットが、組み立てた際にマウスピース18上のピンすなわち駆動ピン32と係合する。キャップ12を回転させてプレート30を回転させると、回転方向に応じてピン32およびマウスピース18が内向きまたは外向きに駆動される。
【0059】
この実施形態は、また、隆起リング33を示しており、該隆起リングは、格納ポジションにある場合に、閉塞スリーブ12の内壁と管状本体部11との間の係合を強化する。この隆起リングは、不使用時には、収納されかつシールされた薬物容器を、さらに良好に保護する。この図は、また、取付開口15を示している。
【0060】
図4はまた、薬物容器の可視化を可能にする半透明窓38を示している。この窓は、内容のラベルを完全に認識できるように透明であってもよい。
【0061】
図5が示す実施形態は、ロック(locking)リング35を含んでおり、該ロックリングは、キャップ21と協働して該キャップ21を管状本体部11に固定し、かつ、それにより、不正操作(tampering)に抗している。該ロックリングは、間隔をおいた2つのリブ36、37を持っており、これらは、それぞれに、管状本体部11とキャップ21の対応する溝と係合して、分離に抗する。またそれは、当該投薬デバイス(薬物ディスペンサーを含む)を1回の使用サイクル全体の終了時において完全に処分するのが好ましいと考える場合には、該デバイスの再使用に対する障害として作用するものであってもよい。
【0062】
図6には、ロックする割りリング34が示されており、これを用いて薬物容器25を定位置にロックしてもよく、それにより、デバイスの複数回再使用が不必要な場合に、不正操作および/または差替えがし難くなる。割りリングは、肩部39を備えており、該肩部は、管状本体部11の対応する凹部内に着座し、かつそれから、薬物容器と当接してそれの上方移動に抵抗する。
【0063】
図7は、別の実施形態の薬物ディスペンサー40を示しており、図7Aおよび7Bは、吐出形態における側方および上方の断面図をそれぞれ示しており、図7Cおよび7Dは、格納形態における側方および上方の断面図を示している。この実施形態では、マウスピース41は、ピン42の周りを回転して、図7Cおよび7Dに示す格納ポジションまで約90度回転するか、同様に逆方向に回転する。キャップ43を回転させると、湾曲したガイド44に沿ってマウスピース41が自動的に引出ポジションまで外方へ摺動する。逆回転させるとマウスピースは引き込まれる。
【0064】
図8は、図7と同様の配置構成を示しているが、しかし、バネ46を含んでおり、該バネは、マウスピース41を外向きに推し進めるものである。当該デバイスの逆回転によってバネの抵抗が克服されると、マウスピースは湾曲ガイド44を周回して引き込まれる。
【0065】
図9は、図9Bに構成を示しており、駆動ピン47とスロット48との相互作用によって、カム駆動がもたらされている。湾曲ガイド44によって、マウスピース41が回転でき、かつ、引込形態では、管状本体部の内部にぴったりとはまり込むことができる。
【0066】
図8Bおよび9Bで示すのは、それぞれに、矢印H−HおよびI−Iに沿った、かつ、上向きに見た図である。プレート49もまた、これらの図に明示されている。
【0067】
図10は、薬物ディスペンサー50の一実施形態を示しており、図10Bは図10Aの実施形態の線J−Jに沿った断面図である。この実施形態は、マウスピースと重なる可撓性カバー51を付加したものを示しており、突出しまたは引込みにより、マウスピース52のエッジおよび外壁部が自動的に清掃され清浄度が向上するようになっている。
【0068】
図11は、当該薬物ディスペンサーのためのキャリアーの斜視図を示しており、図11Aは、ロック(locking)アームが閉じられたキャリアーを示し、図11Bは、当該薬物ディスペンサーを受け入れるためにロックアームが開かれたキャリアーを示している。該キャリアーは、薬物ディスペンサーを受け入れるディスペンサー座部61を備えている。該ディスペンサー座部61は、下方床部62と、半包囲する壁部63とを有している。該壁部63は、当該薬物ディスペンサーの本体の角度をなした偏向と適合するように、湾曲または屈曲しているのが好都合である。ロック(locking)ブラケットが、弓形(bail)アーム64として形成されており、これは、上部ヒンジ65においてヒンジ式に取り付けられ、かつ、図11Aに示すように、受入れスロット67にパチンと入る(snap into)するように構成されたロック舌状部66を有する。しかし、これは、ロックブラケットの非限定的な一例である。
【0069】
図12は、弓形アーム64が下ろされロックされたポジションにある薬物ディスペンサー77を示している。当該キャリアーは、弓形アーム64が薬物ディスペンサー77に対してわずかな圧縮力を及ぼすような寸法とされるのが好ましい。壁部63の形状をディスペンサー77の形状と適合させる1つの特別な利点は、端部キャップ68の側部開口を自然に該キャリアーの後部かつ壁部内に向けさせることにより整然と格納が行われ、環境からの汚染に対する付加的な保護層が設けられるということにある。さらに、適合した外形により、偏向のない単純な管状体の場合に起こりうるディスペンサーの垂直方向への浮き上がりに対する、より高い防止が得られるようになる。図面において明らかなように、当該キャリアーは、後方舌部69によって形成されたスロットを有しており、該スロットは、下向きに延びてベルトといったアイテム上への当該キャリアーの嵌め込みを可能とする。代替的には、ループが形成されていてもよく、または、衣服のアイテムに付けるための適切な取付け手段、または、人体に取り付けるためのストラップ、または、リュックサックの、雑嚢の、バックパックの、スポーツバッグの、または、当業者により予見される用途の、ストラップを形成してもよい。
【0070】
図13は、図12の構成の前面図を図13Aに示しており、線K−Kに沿ったその構成の断面図を図13Bに示している。壁部63が、後方部においてかつ舌部69より前方において、管状本体部71の壁部70と密に一致していることが明示されている。弓形アーム64は、管状本体部71に対してぴったりと嵌め合わされ、管状本体部を後方に付勢し、また、長手方向軸の偏向の角度と該キャリアーとが一致(マッチ)して、デバイスの外れる傾向を制限している。ロック舌部(locking tongue)66は、スロットに挿入されて、当該デバイスを定位置に保持する。
【0071】
この図のさらなる特徴は、2つの凹部75であって、これらは、回転可能なキャップ内のリング構造76を受け入れるように形成され、これら2つの構成部品同士の間の接合をより良好にシールしている。代替的な構成では、隆起した唇状部(リップ)を含んでいてもよく、また、段差であってもよく、スリーブ開口のエッジ部がその上を覆ってまたはその上に乗って、スライドし、それにしっかりと嵌まり込むことができるような寸法とされている。
【0072】
当然ながら、他のロック手段を用いてもよい。例えば、鞍状(saddle)ブラケットが管状本体部を渡った位置に挟み込み、ロックポジションへと弾性的にスナップ嵌めされる1以上のスプリングタブに対しロックを行なってもよい。そのような実施形態は、図14のキャリアーに示されている。該キャリアー81は、湾曲した側壁82および床部83を備えて形成されている。該キャリアー81は、ベルトなどを受け入れる舌状ループ84を備えている。鞍状ブラケット85は、ペアになったスロット86を、いずれかの側に有している。該スロットは、側壁82上に配置されたそれぞれの嵌め合いピン87で保持されるように構成されている。ブラケットは、タブ88を押し下げることによって解放され、デバイスの取り払い(clearance)および薬物ディスペンサーの取出しを行なうことができる。使用の際、鞍状ブラケットは、スロット86の長さに沿って内向きおよび外向きに移動する。
【0073】
角度をなした長手方向軸は、また、使用するためのデバイスのすばやくかつ自動的な方向付けを可能にし、該デバイスを低い照明の状況において信頼をもって使用することを可能にする。
【0074】
上記のように、本デバイスは、薬物容器の可視化とそこに印刷された情報の観察とを可能にするため透明窓を備えてもよい。
【0075】
当該薬物ディスペンサー、および/または、当該キャリアーは、ポリプロピレン、ポリエチレン、および/または、ナイロンによって少なくとも部分的に形成してもよい。他の材料を使用してもよく、実際には、金属および合金が適切であってもよい。とりわけ、堅牢で、耐久性があり、かつ、衛生的なデバイスを、ステレンス鋼によって形成してもよい。
【0076】
当該ディスペンサー、および、当該キャリアーは、射出成形法により形成することが好ましい。
【0077】
図15は、ディスペンサー110の組立分解図を示しており、当該ディスペンサーは、変形可能なゴムキャップ121と、管状本体部111と、マウスピース118と、スリーブ112とを備えている。ピン132を通じてマウスピース118を駆動するためのプレート130が設けられている。該プレート130は、拡大図にて示されており、駆動スロット131を有している。第2スロット133には、両端部に小さい変形可能な歯部134が配設されている。このスロットは、本体上に配置されたラグを受け入れるように構成されており、それが第2スロット内を移動する。どちらの端部においても、ラグは歯部を歪ませ、ラグがその許容可能な移動を終えると歯部がパチンと元に戻ることにより、いずれの方向の移動の終点においても可聴クリック音が発生する。ラグ(図示せず)は、マウスピースの移動に関する第2のストップ器具(stop arrangement)として作用してもよい。
【0078】
図16および17は、薬物容器を薬物ディスペンサー内の定位置にロックするための2つの代替的な構成を示している。これらは容器の位置ずれを防止するための安全装置(security arrangement)として使用してもよい。また衛生面および薬物の有効性のためにデバイスの定期的入れ換えが必要となる場合に、ディスペンサーの再利用を確実に防止するための単一回だけ使用する器具として用いてもよい。図16では、ディスペンサー210は定位置にある薬物容器225を持っており、引き込まれたマウスピース218を持っている。端部キャップまたはスリーブ212は、閉鎖ポジションまで回転させられる。受入れ溝251内には、外部のCクリップ250が配置されている。該Cクリップは、内向きに延びるリブ253と共に、外側壁部252を有しており、該リブは、内向きに角度をなしかつ該容器225に対し上方へ曲がって、容器225にある溝254と係合している。この配置および構成が、ディスペンサー210からの容器225の脱落に抗するか、または脱落を防止する。
【0079】
図17には、ロックする割りリング360が、薬物ディスペンサー310の内部に配置されている代替的な構成が示されている。該割りリング360は、容器325の壁部に近接して溝354内に配置されたベース部361を有している。該ベース部は、リブ353を支持しており、該リブが棚状部(ledge)356と係合している。管状本体部311の内壁。この配置により、ディスペンサー310から容器325がさらに脱落しにくくなる。
【0080】
図18および19は、本発明のキャリアーを受け入れるための様々な付属品を示しており、よってこれらは薬物ディスペンサーと共に用いるためのものである。それらの付属品は、ベルトといった別のアイテム上に配置されたデバイスのための受入れ舌部と係合する単純な取付具371を備えてもよい。そのようなデバイスの一例が、ホルダーベルトクリップ取付具372として図示されており、ここでは、クリップ373が取付具371と係合するように構成されている。デバイスの残りは、ベルトを受け入れるループであってもよい。カラビナ(carabiner)374を備える別の構成も図示されている。固定ベルト/ストラップ375を用いてもよい。ベルクロ(Velcro)(登録商標)バンド376を、ベルト377上に配置し、使用者の手足の周囲または他の位置に適合させてもよい。単体の取付具371と共にラニヤード378を使用することも可能である。図19には、保護キャップ379が示されており、キャリアー382の舌部381に固定された安全ラニヤード380を伴っている。保護キャップ379は、下部領域に配置され、キャリアーのロックアームの移動を防止することによって該キャリアーの閉止を確実なものとする。ディスペンサーおよびキャリアー387を受け入れるようにベース取付けプレート385を取付けブラケット386に装着した自転車用の取付器具(mounting arrangement)384も図示されている。該ベース取付けプレート385は、適切な寸法とされた舌部がすべり込んで接触するものであってよく、ブラケット386は、該キャリアーを固定しながら、該デバイスを支持する。
【0081】
本発明は、公知のスペーサーと共に用いることを可能にするためのスペーサーアダプターを備えてもよい。スペーサーは、使用者の体内へ送り込まれる薬物の移動を促進するために設けられる。スペーサーは、空気量を提供し、そこへ薬物が排出され、使用者による時間延長した吸入を可能とする。当該薬物ディスペンサーの、とりわけ、マウスピースの寸法は、効率的な格納および使用のため縮小してもよいので、スペーサーアダプターが必要となるかもしれない。図20は、薬物ディスペンサー410と共に用いられるスペーサーアダプター401を示しており、このスペーサーアダプターは、端部キャップ412の周囲への、2個のアーム402のスナップはめ込みによって、マウスピース418を覆って装着され、かつ、該スペーサーと係合する寸法とされた拡大された吐出口419を提供する。
【0082】
図21には、代替的構成が示されており、フック421を備えた弾性バンド420によって装着が実現されている。これは、端部キャップ412の裏面を越えて位置して、同じ効果を提供する。
【0083】
図22は、本発明の薬物ディスペンサーにおいて使用するための電子(electronics)システムの概略図である。機械的なトリガー入力501を有する電子システム500が提供されている。このトリガーは、耐水性であることが好ましく、薬物容器を押し下げると作動する。該トリガー501は、タイマーとカウンター(計数)機能とを含んだプロセッサー502に連絡している。該プロセッサーは、好ましくは、電池である電源503によって駆動される。
【0084】
該プロセッサーは、以下のうち1以上を含む好適な動作を実行するようにプログラムされている。
(a)薬物容器およびディスペンサーが操作された回数を数えること
(b)容器に残っている分の投与回数を計算するか、または安全に使用可能な投与回数を表示すること
(c)最終の投与以降の時間を計算すること
(d)例えば24時間の設定期間内に使用された回数を計算すること
(e)容器の治療用内容物の経過時間を監視すること
(f)合計または設定時間内の吐出薬量を計算すること
(g)ディスペンサー内部の湿気または他の汚染物に関する警告を出すこと
(h)適正な使用および操作の継続に関する可聴的な指示を出すこと
(i)可視的かつ可聴的な過剰使用の警告を出すこと
【0085】
プロセッサーは、出力インタフェース504上に結果を表示し、かつ、好適な情報のグラフィックな表示を含んでいてもよい。該好適な情報は、トータル使用カウントの図表(ダイアグラム)、最後に使用してからの時間、および、レベルが低い場合の警告を、他の情報と共に含んでいてもよい。もし当該デバイスが過剰に使用されたならば、または、最後の投与以降に所定時間が経過して交換の時期が来たならば、聴くことができかつ見ることができるアラームを発してもよい。電子システムによって他の情報およびプロセスを生成してもよい。
【0086】
図23は、プロセッサー、および、電源510、および、スイッチ501のポジションを示しており、端部キャップ521の押し下げおよび薬物容器525の変位による、手動操作のためのものである。容器525の肩部526がスイッチ501を押圧することにより、プロセッサー502による記録が開始される。スイッチは電子的に作用するものでもよい。
【0087】
図24は、使用者によるアクセスを容易にする薬物ディスペンサー内のスクリーン530のための代替的なポジションを示している。
【0088】
上記の詳細な説明は、好適な例示的実施形態を提示するものに過ぎず、本発明の範囲、適用可能性、または構成の限定を意図するものではない。逆に言えば、好適な例示的実施形態の詳細な説明は当業者に本発明の好適な例示的実施形態を具現化するための実際的な説明を提供するものである。本発明の精神および範囲から逸脱することなく要素および工程の機能および構成において様々な変更が可能であると了解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】図1は、本発明の薬物ディスペンサーの第1実施形態の格納形態および吐出形態の斜視図を示している。
【図2】図2は、図2Aの線A−Aに沿った薬物ディスペンサーの断面図を示している。
【図3】図3は、図3Aの線B−Bに沿った断面図を示している。
【図4】図4は、本発明の薬物ディスペンサーの好適な実施形態の組立分解図を示している。
【図5】図5は、図5Aの線C−Cに沿った断面図において示される、ロックリングを備えた実施形態を示している。
【図6】図6は、図6Aの線D−Dに沿った断面図において示される、薬物容器の脱落に抗するロック割りリングを備えた実施形態を示している。
【図7】図7は、本発明の別の実施形態の断面図を示しており、図7Bは、図7Aの線E−Eに沿った断面図を示し、図7Dは、図7Cの線F−Fに沿った断面図を示している。
【図8】図8は、さらに別の実施形態の断面図であり、図8Bは、図8Aの線H−Hに沿った断面図である。
【図9】図9は、さらに別の実施形態の断面図であり、図9Bは、図9Aの線I−Iに沿った断面図である。
【図10】図10は、可撓性カバーまたは端部キャップを備えた実施形態を示しており、図10Bは、図10Aの線J−Jに沿った断面図である。
【図11】図11は、薬物ホルダーのためのキャリアーのロック形態および開放形態における斜視図を示している。
【図12】図12は、組み合わされたキャリアーと薬物ディスペンサーの斜視図である。
【図13】図13は、図12の構成の断面図であり、図13Aの線K−Kに沿った断面図である。
【図14】図14は、キャリアーの別の実施形態を示す一連の図面である。
【図15】図15は、開放ポジションおよび閉鎖ポジションに関する可聴信号を発する薬物ディスペンサーのさらに別の実施形態の組立分解図である。
【図16】図16は、薬物容器のための外部ロック器具の断面図である。
【図17】図17は、薬物容器のための内部ロック器具の断面図である。
【図18】図18は、薬物ディスペンサーおよびキャリアーと共に用いるための様々な取付付属品を示している。
【図19】図19は、本発明の薬物ディスペンサーおよびキャリアーと共に用いるための2つのさらに別の取付付属品を示している。
【図20】図20は、スペーサーの第1実施形態を備えた本発明のディスペンサーの等角投影図を示している。
【図21】図21は、スペーサーの第2実施形態を備えた本発明の薬物ディスペンサーの等角投影図である。
【図22】図22は、電子システムを備えたディスペンサーの概略図である。
【図23】図23は、電子システムを備えたディスペンサーの断面図である。
【図24】図24は、電子システムに関する別のスクリーン位置を有する別の構成の等角投影図を示している。
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、加圧薬物容器(加圧された薬物の容器:pressurised medication container)を受け入れ、それらを安全かつ衛生的な状態で格納しながら、必要な際には作動を可能とするための薬物ディスペンサーに関する。本発明は、当該薬物ディスペンサー用のキャリアー(運搬器)に及び、好ましくは、該キャリアーは、ベルト、ストラップ、キャリーバッグ、使用者に接近可能な他の好適な場所など、個人のアイテム上の安全なポジションに固定するために適合化されたキャリアーを包含する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
自己治療(self-medication)のためのデバイスの進化は、様々な疾患および病気の患者に大きな利点をもたらしてきた。
【0003】
その主要な1つの例は、喘息である。過去において、喘息患者は、典型的には、自身の周囲に設けられた支援メカニズムに近接できるようにするために、多くの場合、生活を低レベルの身体活動や制限された範囲の旅行のもとで送ることによる不自由な一生を余儀なくされていた。喘息の深刻な発作は、多くの場合、医師などの専門医療従事者の注意およびそれら専門家により投与される薬物の使用を必要とするものであった。アミノフィリンおよびアドレナリンを含むこれらの薬物は、適当なレベルの有効性をもつ一方で、使用によるいくつかの重大な危険を伴うものであった。さらに、これらの薬物の使用は、回復をもたらすのみで、通常は、病態の管理や安定化の途上にある患者にとっては、継続する(ongoing)利点をもたらすものではなかった。
【0004】
コルチコステロイドの進展は、いくつかの疾病、特に喘息において大きな助力となるものであった。しかし、人体におけるコルチコステロイドの長期の経口的または非経口的投与による副作用が知られており、最も深刻な症例以外におけるこの療法の採用には制限が必要である。
【0005】
喘息患者の生活の質における劇的な改善は、部分的に、サルブタモール、気管支拡張薬、の自己投与のために設計された加圧投薬容器の開発と共にもたらされ、それは、喘息発作の気管支けいれんの緩和に関して非常に有効なものである。サルブタモールは、通常、最上部に押下げ作動弁を備えた加圧容器によって提供される。この弁は、プラスチック製の外側カラー、キャップ、または、マウスピース上に設けられた弁座にぴったり合うように構成されている。このカラーによって、弁棒に対してキャニスターを押し下げ、管理された用量の治療薬をカラーの吐出口内に放出することができる。患者は、このデバイスを使用する場合に、該キャニスターを押し下げて、用量分の治療薬を吐出させながら必要な程度息を吐き出し、そして息を吸う。
【0006】
サルブタモール吸入器は、呼吸困難の発作を処置する機能を提供するとともに、治療法を自己管理して臨床症状を最小化し呼吸発作のさらなる進行を鎮静化ないし防止する機能を提供してきた。
【0007】
サルブタモールは、自己投与に適した治療薬の優れた一例であるが、決して唯一単独ではない。喘息に関しては、他にも多くの形態の治療法が提供されている(例えば、ベコタイド(Becotide)(登録商標)、フレキシタイド(Flexitide)(登録商標)、アスモル(Asmol)(登録商標))。これらのうちいくつかは、有害な副作用が相対的に少なく、高い有効性で、少ない服用量のコルチコステロイドである。また、他の多くの疾病も、気道内、経消化管摂取、または中咽頭ないし鼻の粘膜を介した吸収による計量された用量での自己治療の対象となる。
【0008】
薬物の投与は、多くは定量噴霧吸入器またはMDIとして知られるデバイス内の圧縮加圧されたエアゾール製剤による既述のような形態であってもよい。代替的に、粉末や他の固形剤、液体または気体を加圧容器から一定用量で供給ないし投与してもよい。
【0009】
これらの開発は、実際に自己治療を行なっている疾病患者に大きな利便をもたらしてきたが、同時に、患者が薬物キャニスターを忘れるか、誤ってハンドバッグやスポーツバッグなどどこかに入っていると信じ込んでしまい、必要時にならないと薬物が利用不能であることが分からないという問題が依然としてある。これは、疾病の徴候または症状の激しい突発の場合に深刻な結果をもたらすものである。薬物キャニスターを有効かつ安全に保管することについての問題は、スポーツ活動において顕著であって、そこでは多くの場合、服装が、行なわれているスポーツの特定の必要に応じてデザインされているが、安全なポケットやポーチが設けられていない。ポケットが存在する場合でも、薬物ディスペンサーのキャリアーは衝撃または汚染物の混入による損傷を受けやすい。これらの問題は、シュノーケリング、スキューバダイビング、オリエンテーリング、登山などの屋外活動において、疾病患者がその活動に必要な用具以外をほとんど持たず支援拠点から相当程度離れている場合に顕著となる。
【0010】
雨や雪など苛酷な環境や条件での使用は、湿気、泥、塵、砂、植物性の物質の他、薬物デバイスの損傷または使用者に対する危険をもたらす可能性のあるその他の物質などの汚染物の侵入につながる場合がある。
【0011】
US4,130,116("カヴァッツァ(Cavazza)")は、スプレー缶を挿入可能なポケットデバイスを開示している。機械的手段が備えられており、当該デバイスは不使用時には閉止位置に保持されるが、スプレー缶のノズル部分を露出するように作動させると、缶を利用可能にすることができる。この開示は、2つの半分部分(two halves)を側壁の境界に沿って配置されたガイドに沿って相互に摺動させるものである。このデバイスが湿気に対してシールされているという開示はなく、その操作中には、広い開口が第1ノズル端部および第2作用端部の双方において環境に曝露される。従って、このデバイスの用途は、とりわけスポーツ活動の間にしばしば遭遇するような苛酷な環境、特に水上スポーツおよび持久型の活動においては、何らかの限定を受ける。
【0012】
CA2,379,137("ファーマソーティカル・ディスカバリー・コーポレーション(Pharmaceutical Discovery Corporation)")は、乾燥粉末吸入器を開示しており、該吸入器は、吸入部分と、混合部分と、回転可能なマウスピースとを有している。該デバイスは、予備の薬物カプセルを保持するための格納部分を備えているが、相対的に複雑である。該デバイスは、特に、空気流の流量を制御することに向けられており、テーパーとされたピストンロッドと、バネと、1以上の通気オリフィスを用いている。また、これは、適切な空気流の流量がいつ達成されたかを示す信号音を発生させるためのフィードバックモジュールをも含んでいてもよい。これもまた、該デバイスが環境に対してシールされるという開示はない。該デバイスは、相対的にかさばるとともに操作が複雑であり、異物の存在下では誤作動を起こしやすくなるであろう。さらに、ショック状態または呼吸困難状態の人間はデバイスを作動させるのに必要な吸入動作を行なえないという可能性がある。
【0013】
US5,497,764("リトソン(Ritson)")は、ポータブルな電池電源による手で持てる大きさのシステムに向けられており、該システムは、患者による吸入のため管理された用量のエアゾール薬剤を放出するためのものである。このデバイスは、丈夫な(durable)本体を有し、その丈夫な本体に挿入された薬物カセットとを有している。この開示は、電子式で相対的に複雑なデバイスに関するものであるが、該デバイス内に挿入されるカセットの形態を開示しており、それは、丈夫な本体から離れて、従来のように手動で作動する定量吸入デバイスとして使用できるように構成されている。しかし、このデバイスを機能させるには、本体から該デバイスを取り外す必要がある。丈夫な本体に収容されている場合、該デバイスの操作は比較的複雑である。薬物の剤形は、液体または粉末の剤形であってもよい。該デバイスは、環境に対して密封されていない。このデバイスは、相対的に複雑、かつ電子的な部分が多いと考えられる。
【0014】
BE905189("グラクソ・グループ社(Glaxo Group Ltd)")は、微細に分割した固体(ソリッド)の形態になった薬物を患者に投与するデバイスを対象としている。該デバイスは、ハウジングとトレイを備え、支持ディスクがトレイ上に設けられるとともに、該支持ディスクは、薬物を担持するキャリアーを受け入れるように構成されており、相対的に複雑である。容器をプランジャーと位置合せした後、該プランジャーは、容器を貫通するように操作され得る。空気が該デバイスに入って吸入される。
【0015】
DE4028387("ベヒター(Bechter)")は、カバーデバイスを開示しており、該デバイスは、鼻および顎を覆う自由空間を持った呼吸マスクを提供するように覆い隠す。そのため、これは相対的に大型である。1つの態様では、これは、吸入装置(inhalation apparatus)と共に使用される呼吸マスクとして設計されている。
【0016】
WO 01/00263("インヘール・セラピューティック・システム(Inhale Therapeutic System)")は、規定しきい値の真空が使用者によって得られるまで、肺への空気の進入が防止される構成を開示している。空気は突然に肺への流入を許可される。これはショックまたは呼吸困難の状態にある患者において矛盾となるかもしれない。
【0017】
WO 1995/028192("デュラ・ファーマソーティカルズ(Dura Pharmaceuticals)")は、ハウジングとマウスピースとを有する乾燥粉末薬物吸入器を開示している。エアゾール化チャンバー内で回転するインペラが、ピンに回転可能に取り付けられている。径方向の入口が、ハウジングを貫通して、かつ、実質的に接線方向にチャンバー内に進入している。操作においては、チャージを行うプランジャーが、バネの付勢に抗して押し下げられ、粉末薬剤の全用量がチャンバー内に押し出される。プランジャーは操作の間、バネ付勢に抗して保持され、チャンバー壁部の最上部を形成する。開放領域のペグ上に投薬カートリッジを配置してもよい。ホールドダウンレバーを回動させるとカートリッジが保持されマウスピースが動作位置にロックされる。多数回使用薬物収容カートリッジを使用してもよい。インペラは、モータにより高速で駆動される。インペラは、吸気口を介して空気を吸引する遠心空気ポンプとして作用し、1個または1対の電池に依存する高速電気モーターにより駆動される。やはり、このデバイスもバッテリー入力に依存している。しかし、このデバイスは、ユーザの吸入のみにより動作可能である。このデバイスは、特に湿気に対して環境的に密封されているとは考えられない。さらに、どちらの態様でも、このデバイスは、相対的に複雑であり、粉末の使用に限定されている。
【0018】
WO 2000/018455号("グラクソ(Glaxo)")は、呼吸器用薬物を投与するのに適した吸入デバイスを提供している。それは、マウスピース上の埃の蓄積を防止するためカバーを備えているが、水に対してはシールされていない。またそれは、操作中に使用される歯車駆動(geared)で相対的に複雑なアクチュエータを持っている。
【0019】
WO 2002/004043("ヴァポトロニクス(Vapotronics)")は、薬物または他の流体を液滴形状で吸入中に供給するための吸入器を開示している。この吸入器は、ハウジングを貫通して延びる空気流導管アセンブリを有し、その空気流導管アセンブリと流体的に相互接続可能なマウスピースを有し、液滴射出カートリッジハウジングを有している。液滴射出カートリッジが、カートリッジハウジング内に脱着可能に配置されている。空気流導管アセンブリは、空気が最初に吸引されるプレナムを備えてもよい。マウスピースはデバイス上で取り外し可能かつ収納可能である。液滴射出カートリッジは、配設薬物リザーバと、複数の液滴射出オリフィスと、少なくとも1つの液滴射出アクチュエータとを有している。該液滴射出カートリッジは、その側面の1つにPCBインタフェースを有しており、該PCBインタフェースは、吸入器の動作を制御するプリント配線回路とインタフェース接続するためのものである。このデバイスを動作させるため圧力センサが使用され、また複数の液滴射出オリフィスを備えるノズル領域が設けられる。各液滴射出オリフィスは自身の抵抗器を備えており、薬物の投与に関して1対1の関係が存在する。このようにこのデバイスは、複雑な電子的構成を備えており、使用の際に電力に依存する。このデバイスの苛酷な環境における用途は限られるかもしれない。
【0020】
UK特許GB2074454(「ソモバ(Somova)」)は、格納式マウスピースを有する吸入デバイスを開示している。このデバイスは、エアゾール容器に脱着可能に嵌合するように構成された管状本体を備えている。引込位置と引出位置との間で移動可能な吐出マウスピースが配設されている。マウスピースの引出しおよび引込みは、管状本体に回転可能に取り付けられたキャップによって、少なくとも部分的に実現され、該管状本体は、それに連結された作動手段を備えている。キャップと管状本体は、寸法が同様の開口を有している。キャップを回転させて開口を整合させると、作動手段がマウスピースを引出位置に向けて移動させる。キャップを逆回転させて開口の整合を解除すると、マウスピースが管状本体内の閉鎖位置まで引き込まれる。上記の構成は、定量噴霧吸入器を格納するための衛生的な構成を提供しようとするものであるが、多くの問題を有している。第1の問題は、マウスピースが引出位置まで移動する際に、管状本体の長軸に対して垂直方向に移動するという事実から生じる。このため、マウスピースの底縁部と管状本体の近接する縁部とが直角をなすように配置される。MDIの使用者は、通常、使用者が吸入する吸気を最良に調整するため、鼻の前方で管状本体を垂直に保持してマウスピースを口内に配置する。このデバイスでは、記載されている直角の配置によって、マウスピースを使用者の唇付近に配置する際に、該マウスピースが不可避的に傾斜し、吐出された薬物のフリューム(flume)の方向が使用者の口蓋に向かうことにより、薬物が吸気に流入するよりも粘膜を覆ってしまうことになる。
【0021】
ソモバ(Somova)における図5から8の実施形態より生じるさらなる問題は、マウスピースの引出しが、最初はマウスピースの後部に作用するカム手段に依存しており、その後、開口11の近接する側縁部の作用により完了するということである。これは、キャップの逆回転がマウスピースを引き込ませると予測される同様の様態で、キャップの回転がマウスピースを外向きに押し出すことを意味すると考えられる。これは開口が同じ寸法である場合に起こりそうもないと考えられる。従って、開口の近接する縁部を管状本体の開口と位置合せすると、マウスピースを引き出すさらなる摺動は行なわれない。このカム構成が機能するとは考えにくい。
【0022】
さらなる問題が生じるかもしれないのは、マウスピースの引込みが回転可能なキャップの移動に依存しており、該移動によってエッジ部に湾曲したマウスピースを越えて摺動させ、それにより展開力に打ち勝つという点である。すべての態様が、外壁の縁部近傍において外壁の開口と嵌合するマウスピースを示している。マウスピースと外壁開口とは同様の寸法でなければならない。このためマウスピースの引込みは固着する可能性が高く、また動作を確実にするためキャップには硬質の縁部が必要となる。開示された態様は、特に、引き込みの際に、不安定な動作を起こす可能性が非常に高く、また、硬質のキャップが必要となり、それは、この配置構成を十分にシールするには思わしくない。
【0023】
さらなる欠点は、マウスピースの底縁部と、弁の突出する弁棒に近接するMDI最上部との間に、相当な開放空間が存するという事実から生じる。これにより、特に使用者が激しい活動を行なっている際に使用者のポケット内で偶発的な吐出の危険性が生じる。さらに、この構成により、マウスピースの後縁とMDI吐出弁の出口との間には大きな空間が存する。これにより、使用者への供給よりもむしろデバイスの内壁上に意図しない噴霧が行なわれる危険性が生じる。
【0024】
マウスピースの引出しおよび引込みを行なう駆動手段には、移動の全行程で作用する能動的な単一の推進力源が欠けている。これにより、さらに多くの動作上の問題が生じるかもしれない。マウスピースの回転範囲が完全に展開されない場合、エアゾール容器の動作によりマウスピースの壁部に対する噴霧が生じるであろう。
【0025】
上記のように、苛酷な環境では汚染の危険が甚大である。特に必要な時に容易かつ効果的に使用するために設計されている場合、密閉された安全かつ堅牢な格納構成が有利となろう。
【0026】
緊急事態における治療法の実施は、きわめて深刻となりうる様々な危険をもたらすかもしれない。例えば、鎮痛剤の投与には、堅牢で信頼性が高く操作が容易な器具(arrangement)が必要である。これは、特に自己投与の場合であって、使用者が負傷によって少なくとも部分的に能力が失われているか、または、援助を行う人々が救急処置の経験を積んでいない場合である。
【0027】
堅牢で、実用的で、かつ効果的な薬物ディスペンサーを提供することは、使用者の生活の質に対して積極的に寄与するものとなろう。そのようなデバイスが小型でかつ流行に合ったもの(stylish)であれば、使用に関する当惑が限定または回避されるであろう。
【0028】
本明細書における従来技術への言及は、この従来技術がいかなる国においても共通の一般的知識の一部をなすという認識でもなく、また、いかなる形態の示唆でもなく、またそのように解釈すべきでもない。
【発明の開示】
【0029】
発明の概要
第1の態様、しかし必ずしも唯一ではない最も広範な態様では、本発明は、加圧された薬物容器を受け入れそこから治療の投与量を吐出させるための薬物ディスペンサーに属し、当該薬物ディスペンサーは、
長細い管状本体部を有し、該管状本体部は、第一の端部の領域に形成された側部開口を持っており、
キャビティーを有し、該キャビティーは、前記本体部に形成され、かつ、前記薬物容器を受け入れるように構成され、該キャビティーは前記側部開口と連通しており、
吐出器を有し、該吐出器は、治療の投与量を吐出するためのものであり、
第一の端部の領域に回転可能に取り付けられたスリーブを有し、該スリーブは、スリーブ開口を持っており、該スリーブ開口は、回転によって、側部開口との位置合わせに入りかつ該位置合せから脱する移動可能なものであり、
マウスピースを有し、該マウスピースは、位置合せされた時に側部開口とスリーブ開口とを通過して延伸する延びた吐出ポジションと、キャビティー内の引き込んだ格納ポジションとの間で、移動可能であり、
前記細長い本体部の長手方向軸が、延伸するマウスピースのポジションから離れる方へと進む方向が偏向しており、その偏向が、第一の端部の領域の外側で生じている。これは、長手方向軸が側部開口から離れる方に偏向しているのと同じである。管状本体は、実質的に円筒状であってもよい。
【0030】
加圧薬物容器は、定量噴霧吸入器などの適切な装置であってよい。この文脈における薬物は、使用者に有利な効果をもたらすいかなる作用物質をも含むものと了解すべきであり、薬用物質、治療用物質、または、栄養剤であってもよい。薬用物質は、疾病の治療または予防のためのものであってもよい。
【0031】
吐出器は、加圧された薬物容器にある吐出弁の吐出心棒を受け入れるための中空の弁座を含んでいてもよい。該中空の弁座は、第一の端部領域内に、または、その近く位置していてもよい。
【0032】
吐出器は、好ましくは、可撓性を有する端部カバーをさらに有しており、該端部カバーは、細長い本体部の第二の端部に付与され、押圧によって指による薬物ディスペンサーの作動を可能としている。回転して作動するカム式の構成といった代替的な構成を用いて、中空の弁座に対して容器を押圧し内容物を吐出させてもよい。第二の端部の閉鎖は、当該デバイスの環境的な汚染に抗して実質的にシールされるべきである。
【0033】
マウスピースは、引出吐出ポジションと引込格納ポジションとの間で、実質的に半径方向に移動することが好ましい。
【0034】
構成部品は、マウスピースが引込んだ格納ポジションにおいて薬物容器の下方への移動を阻止して、偶発的な吐出を防止するように寸法が決められいることが好ましい。
【0035】
回転可能なスリーブは、閉塞スリーブまたは端部キャップとして形成されることが好ましい。スリーブは、定位置に弾性的にはめ込まれる、柔軟でかつ弾性を有するゴムまたは同様の合成物で形成してもよい。これにより、薬物ディスペンサーを効果的にシールする、容易に使用可能でかつ堅牢な構成が提供される。スリーブに適した代替的材料の1つはシリコンまたはシリコン系ポリマーである。いくつかの実施形態における付加的な利点は、テフロンを組み込んだものなど自己潤滑材料の使用によって達成されてよい。スリーブ開口は、側部開口よりも格段に幅広であることが好ましく、25%から200%の範囲で幅広であってもよい。
【0036】
好ましくは、スリーブの回転がマウスピースを駆動して、吐出ポジションと格納ポジションとの間で前方へそして後方へ行かせる。これを行なうための好適な手段は、駆動器具(drive arrangement)を備えており、該駆動器具は、端部キャップの中心から半径方向に間隔をおいてマウスピースと係合しマウスピースを吐出ポジションと引込格納ポジションとの間で積極的に駆動するものである。この駆動装置は、協働する構成部品上の対応する座部に対し係合するピンを備えてもよい。
【0037】
代替的には、マウスピースが、弾性部材によって吐出ポジションへと動かされ、それに引き続き、端部キャップの回転によって、該マウスピースの湾曲した表面に対して該弾性部材が重なってもよい。弾性部材は、コイルばねまたはゴムバンドまたは他の適切な器具であってもよい。
【0038】
管状体の長手方向軸は、第一の端部領域のすぐ外側で、5°と20°との間で偏向することが好ましい。該長手方向軸は、マウスピースを伸張した際のポジションとは正反対の平面内で偏向することが好ましい。これは側部開口の正反対と同じである。
【0039】
当該デバイスは、管状体に端部カバーを固定するためのロック器具(ロックする器具、locking arrangement)を含んでいてもよい。該ロック器具は、ロックリング(ロックするリング)を備えてもよい。付加的または代替的に、当該デバイスは、薬物容器を管状本体部に対してロックするための第2ロック器具を備えてもよい。第2ロック器具は、ロックリング、好ましくは割りリングを備えてもよい。
【0040】
格納ポジションにある場合のシールを補助するため、側部開口の周囲に、隆起したリップ部(唇状部)を設けてもよい。
【0041】
当該薬物ディスペンサーは、マウスピースが移動の最大範囲にある場合に、可聴信号を発するように構成してもよい。
【0042】
当該薬物ディスペンサーは、薬物容器の脱落に抗するするための容器ロック器具をさらに備えてもよい。
【0043】
当該薬物ディスペンサーは、以下のうち1以上を実行するための電子システムをさらに有することが好ましい。
(a)薬物容器およびディスペンサーが操作された回数を数えること、
(b)容器に残っている分の投与回数を計算するか、または、安全に使用可能な投与回数の表示を与えること、
(c)最後に投与してから後の時間を計算すること、
(d)24時間といった設定された期間内に使用された回数を計算すること、
(e)容器の治療用内容物の経過時間を監視すること、
(f)合計または設定時間内の吐出薬量を計算すること、
(g)ディスペンサー内部の湿気または他の汚染物に関する警告を出すこと、
(h)適正な使用および操作の継続に関する可聴的な指示を出すこと、および、
(i)可視的かつ可聴的な過剰使用警告を出すこと。
【0044】
該電子システムは、プロセッサーと、電源と、該プロセッサーと連絡しているトリガーと、使用者に対し情報を表示するディスプレイとを備えてもよい。ディスプレイは、好ましくはスクリーン・ディスプレイである。
【0045】
当該薬物ディスペンサーは、スペーサーアダプターを含んでいてもよい。
【0046】
本発明は、上記のような薬物ディスペンサーのためのキャリアーへと拡張されてもよく、該キャリアーは、該薬物ディスペンサーを受け入れるためのディスペンサー座部を有し、薬物ディスペンサーを定位置にロック固定するためのロックブラケットを有するものである。該キャリアーは、ベルト、ストラップ、衣服の一部、または、他の個人用のアイテムに装着するための装着手段を備えることが好ましい。手足、胴部や腰部の周囲など、使用者の身体の一部にキャリアーを固定するように構成してもよい。
【0047】
装着手段は、ばねクリップ、ベルトクリップ、舌状部、鳩目、縫った「ベルクロ(Velcro)」(登録商標)のためのループ、または他の適切な装置であってもよい。
【0048】
ディスペンサー座部は、薬物ディスペンサーの長手方向軸の角度をなした偏向と近似しているか、または、それを正確に模倣した角度の偏向をもって形成されることが好ましい。
【0049】
ロックブラケットは、ロック位置へとクリップ留めされかつ1個以上の弾性的なタブにより定位置に保持される鞍状部(saddle)であってもよい。該タブを押圧により作動させて鞍状部を解放するようにしてもよい。
【0050】
ロックブラケットは、取付けアームを持って形成されるのが好ましく、該アームは座部に連結され、かつ、ロックポジションへ進入しかつロックポジションから脱出するように回転が可能なものである。スロットと解放可能に係合するように舌状部を設けてもよく、その各々はロックブラケットおよび座部のそれぞれ一方に配置される。
【0051】
当該キャリアーは、次のうちの1以上の付属品をさらに含んでいてもよい。
(a)簡易取付具、
(b)ホルダベルトクリップ取付具、
(c)カラビナ、
(d)固定ストラップまたは輪、
(e)フックとループのファスナー、
(f)ラニヤード、
(g)保護キャップ、および、
(h)自転車または他の装備のための取付具。
【発明を実施するための最良の形態】
【0052】
好ましい態様の詳細な説明
図1を参照すると、薬物ディスペンサー10の第1の実施形態が、図1Aには格納形態(storage configuration)にて、図1Bには吐出形態(discharge configuration)にて示されている。この薬物ディスペンサーは、管状本体部11を有しており、該管状本体部は、第一の端部13に回転可能に取り付けられた閉塞スリーブすなわち端部キャップ12を備えている。該スリーブ12は、ランヤード(lanyard、つりひも)やそれに類するもの(例えば、リストストラップ、ネックストラップ、その他の留め具として使用されるもの)を受け入れる取付開口15を有している。該キャップ12は、スリーブ開口16を有しており、該開口は、格納形態では、第一の端部13における管状本体部の壁部と重なる。
【0053】
図1Bには、マウスピース18が、吐出すなわち引出ポジションにて示されており、該マウスピースは、スリーブ開口16と、管状本体部11の側部(lateral)開口19とを貫通して延びている。該スリーブ開口16は、側部開口19よりも長さ方向の寸法がかなり長く、それにより、2つの開口が重なった状態で、キャップ12をかなり回転させることができる。これにより、マウスピースを完全な吐出ポジションまで出し入れ移動させることができる。
【0054】
管状本体部11の第二の端部20は、変形可能なゴムキャップ21で閉じられており、該ゴムキャップは、使用者の指で押し下げられて管状本体部の内側に位置する薬物容器の吐出を作動させることができる。
【0055】
図2Bは、図2Aの線A−Aに沿った薬物ディスペンサー10の断面図を示している。この図面は、格納形態にあるマウスピース18の引き込みを強調表示している。同図は、管状本体部11の長手方向軸22をも示しており、該長手方向軸は、第一の端部13に隣接しかつすぐ外側に角度をなした偏向(deviation、方向を変えること)23を伴っている。この結果、該軸22には、わずかなドッグレッグ(くの字形の屈曲)が生じる。この偏向は、マウスピースの展開ポジションから遠ざかるものであり、かつ、側部開口19からも遠ざかるものであって、そのことは、図3により明瞭に示されており、かつそれによって、使用者は、管状本体部11を使用者の身体の中間線と実質的に位置合せし、かつ、マウスピースを口の中心に向けて、治療剤の供給をいっそう良くすることができる。この偏向により、薬物フリュームを口の天井に向けることなく、管状本体部を使用者の鼻に接しないようにすることができる。この構成により、マウスピースを第一の端部に対し側方へ実質的垂直に移動させることができ、それにより駆動器具(drive arrangement)が簡略化され、その信頼性が高まる。偏向の角度は、5〜20度の範囲にあることが好ましいが、他の角度が適切であってもよい。
【0056】
当該構成の別の利点が図2Bに示されており、マウスピース18を引き込むと、薬物容器に対して上方に角度をつけて曲げられた後方エッジ上部壁24が、マウスピースが引込まれている場合の薬物容器の下方移動を阻止するようになっている。これにより、容器25に対する不慮の下向き押圧による、弁26を通じた偶発的な吐出が防止される。該弁26は、管状本体部11内に形成された弁座27へと着座する。該弁座は、中空になっており、出口(outlet)28と連通しかつ該出口を通して吐出を行なうようになっている(図3に示す)。
【0057】
図3に示すように、マウスピース18が展開(develop)されている場合、後方エッジ上部壁24が移動して、容器25から離れていることが分かる。
【0058】
図4は、分解された構成部品を示しており、管状本体部11、キャップ21、マウスピース18、および、閉塞スリーブすなわち端部キャップ12を含んでいる。この図は、また、外周のスロット31を備えたプレート30を示しており、該スロットが、組み立てた際にマウスピース18上のピンすなわち駆動ピン32と係合する。キャップ12を回転させてプレート30を回転させると、回転方向に応じてピン32およびマウスピース18が内向きまたは外向きに駆動される。
【0059】
この実施形態は、また、隆起リング33を示しており、該隆起リングは、格納ポジションにある場合に、閉塞スリーブ12の内壁と管状本体部11との間の係合を強化する。この隆起リングは、不使用時には、収納されかつシールされた薬物容器を、さらに良好に保護する。この図は、また、取付開口15を示している。
【0060】
図4はまた、薬物容器の可視化を可能にする半透明窓38を示している。この窓は、内容のラベルを完全に認識できるように透明であってもよい。
【0061】
図5が示す実施形態は、ロック(locking)リング35を含んでおり、該ロックリングは、キャップ21と協働して該キャップ21を管状本体部11に固定し、かつ、それにより、不正操作(tampering)に抗している。該ロックリングは、間隔をおいた2つのリブ36、37を持っており、これらは、それぞれに、管状本体部11とキャップ21の対応する溝と係合して、分離に抗する。またそれは、当該投薬デバイス(薬物ディスペンサーを含む)を1回の使用サイクル全体の終了時において完全に処分するのが好ましいと考える場合には、該デバイスの再使用に対する障害として作用するものであってもよい。
【0062】
図6には、ロックする割りリング34が示されており、これを用いて薬物容器25を定位置にロックしてもよく、それにより、デバイスの複数回再使用が不必要な場合に、不正操作および/または差替えがし難くなる。割りリングは、肩部39を備えており、該肩部は、管状本体部11の対応する凹部内に着座し、かつそれから、薬物容器と当接してそれの上方移動に抵抗する。
【0063】
図7は、別の実施形態の薬物ディスペンサー40を示しており、図7Aおよび7Bは、吐出形態における側方および上方の断面図をそれぞれ示しており、図7Cおよび7Dは、格納形態における側方および上方の断面図を示している。この実施形態では、マウスピース41は、ピン42の周りを回転して、図7Cおよび7Dに示す格納ポジションまで約90度回転するか、同様に逆方向に回転する。キャップ43を回転させると、湾曲したガイド44に沿ってマウスピース41が自動的に引出ポジションまで外方へ摺動する。逆回転させるとマウスピースは引き込まれる。
【0064】
図8は、図7と同様の配置構成を示しているが、しかし、バネ46を含んでおり、該バネは、マウスピース41を外向きに推し進めるものである。当該デバイスの逆回転によってバネの抵抗が克服されると、マウスピースは湾曲ガイド44を周回して引き込まれる。
【0065】
図9は、図9Bに構成を示しており、駆動ピン47とスロット48との相互作用によって、カム駆動がもたらされている。湾曲ガイド44によって、マウスピース41が回転でき、かつ、引込形態では、管状本体部の内部にぴったりとはまり込むことができる。
【0066】
図8Bおよび9Bで示すのは、それぞれに、矢印H−HおよびI−Iに沿った、かつ、上向きに見た図である。プレート49もまた、これらの図に明示されている。
【0067】
図10は、薬物ディスペンサー50の一実施形態を示しており、図10Bは図10Aの実施形態の線J−Jに沿った断面図である。この実施形態は、マウスピースと重なる可撓性カバー51を付加したものを示しており、突出しまたは引込みにより、マウスピース52のエッジおよび外壁部が自動的に清掃され清浄度が向上するようになっている。
【0068】
図11は、当該薬物ディスペンサーのためのキャリアーの斜視図を示しており、図11Aは、ロック(locking)アームが閉じられたキャリアーを示し、図11Bは、当該薬物ディスペンサーを受け入れるためにロックアームが開かれたキャリアーを示している。該キャリアーは、薬物ディスペンサーを受け入れるディスペンサー座部61を備えている。該ディスペンサー座部61は、下方床部62と、半包囲する壁部63とを有している。該壁部63は、当該薬物ディスペンサーの本体の角度をなした偏向と適合するように、湾曲または屈曲しているのが好都合である。ロック(locking)ブラケットが、弓形(bail)アーム64として形成されており、これは、上部ヒンジ65においてヒンジ式に取り付けられ、かつ、図11Aに示すように、受入れスロット67にパチンと入る(snap into)するように構成されたロック舌状部66を有する。しかし、これは、ロックブラケットの非限定的な一例である。
【0069】
図12は、弓形アーム64が下ろされロックされたポジションにある薬物ディスペンサー77を示している。当該キャリアーは、弓形アーム64が薬物ディスペンサー77に対してわずかな圧縮力を及ぼすような寸法とされるのが好ましい。壁部63の形状をディスペンサー77の形状と適合させる1つの特別な利点は、端部キャップ68の側部開口を自然に該キャリアーの後部かつ壁部内に向けさせることにより整然と格納が行われ、環境からの汚染に対する付加的な保護層が設けられるということにある。さらに、適合した外形により、偏向のない単純な管状体の場合に起こりうるディスペンサーの垂直方向への浮き上がりに対する、より高い防止が得られるようになる。図面において明らかなように、当該キャリアーは、後方舌部69によって形成されたスロットを有しており、該スロットは、下向きに延びてベルトといったアイテム上への当該キャリアーの嵌め込みを可能とする。代替的には、ループが形成されていてもよく、または、衣服のアイテムに付けるための適切な取付け手段、または、人体に取り付けるためのストラップ、または、リュックサックの、雑嚢の、バックパックの、スポーツバッグの、または、当業者により予見される用途の、ストラップを形成してもよい。
【0070】
図13は、図12の構成の前面図を図13Aに示しており、線K−Kに沿ったその構成の断面図を図13Bに示している。壁部63が、後方部においてかつ舌部69より前方において、管状本体部71の壁部70と密に一致していることが明示されている。弓形アーム64は、管状本体部71に対してぴったりと嵌め合わされ、管状本体部を後方に付勢し、また、長手方向軸の偏向の角度と該キャリアーとが一致(マッチ)して、デバイスの外れる傾向を制限している。ロック舌部(locking tongue)66は、スロットに挿入されて、当該デバイスを定位置に保持する。
【0071】
この図のさらなる特徴は、2つの凹部75であって、これらは、回転可能なキャップ内のリング構造76を受け入れるように形成され、これら2つの構成部品同士の間の接合をより良好にシールしている。代替的な構成では、隆起した唇状部(リップ)を含んでいてもよく、また、段差であってもよく、スリーブ開口のエッジ部がその上を覆ってまたはその上に乗って、スライドし、それにしっかりと嵌まり込むことができるような寸法とされている。
【0072】
当然ながら、他のロック手段を用いてもよい。例えば、鞍状(saddle)ブラケットが管状本体部を渡った位置に挟み込み、ロックポジションへと弾性的にスナップ嵌めされる1以上のスプリングタブに対しロックを行なってもよい。そのような実施形態は、図14のキャリアーに示されている。該キャリアー81は、湾曲した側壁82および床部83を備えて形成されている。該キャリアー81は、ベルトなどを受け入れる舌状ループ84を備えている。鞍状ブラケット85は、ペアになったスロット86を、いずれかの側に有している。該スロットは、側壁82上に配置されたそれぞれの嵌め合いピン87で保持されるように構成されている。ブラケットは、タブ88を押し下げることによって解放され、デバイスの取り払い(clearance)および薬物ディスペンサーの取出しを行なうことができる。使用の際、鞍状ブラケットは、スロット86の長さに沿って内向きおよび外向きに移動する。
【0073】
角度をなした長手方向軸は、また、使用するためのデバイスのすばやくかつ自動的な方向付けを可能にし、該デバイスを低い照明の状況において信頼をもって使用することを可能にする。
【0074】
上記のように、本デバイスは、薬物容器の可視化とそこに印刷された情報の観察とを可能にするため透明窓を備えてもよい。
【0075】
当該薬物ディスペンサー、および/または、当該キャリアーは、ポリプロピレン、ポリエチレン、および/または、ナイロンによって少なくとも部分的に形成してもよい。他の材料を使用してもよく、実際には、金属および合金が適切であってもよい。とりわけ、堅牢で、耐久性があり、かつ、衛生的なデバイスを、ステレンス鋼によって形成してもよい。
【0076】
当該ディスペンサー、および、当該キャリアーは、射出成形法により形成することが好ましい。
【0077】
図15は、ディスペンサー110の組立分解図を示しており、当該ディスペンサーは、変形可能なゴムキャップ121と、管状本体部111と、マウスピース118と、スリーブ112とを備えている。ピン132を通じてマウスピース118を駆動するためのプレート130が設けられている。該プレート130は、拡大図にて示されており、駆動スロット131を有している。第2スロット133には、両端部に小さい変形可能な歯部134が配設されている。このスロットは、本体上に配置されたラグを受け入れるように構成されており、それが第2スロット内を移動する。どちらの端部においても、ラグは歯部を歪ませ、ラグがその許容可能な移動を終えると歯部がパチンと元に戻ることにより、いずれの方向の移動の終点においても可聴クリック音が発生する。ラグ(図示せず)は、マウスピースの移動に関する第2のストップ器具(stop arrangement)として作用してもよい。
【0078】
図16および17は、薬物容器を薬物ディスペンサー内の定位置にロックするための2つの代替的な構成を示している。これらは容器の位置ずれを防止するための安全装置(security arrangement)として使用してもよい。また衛生面および薬物の有効性のためにデバイスの定期的入れ換えが必要となる場合に、ディスペンサーの再利用を確実に防止するための単一回だけ使用する器具として用いてもよい。図16では、ディスペンサー210は定位置にある薬物容器225を持っており、引き込まれたマウスピース218を持っている。端部キャップまたはスリーブ212は、閉鎖ポジションまで回転させられる。受入れ溝251内には、外部のCクリップ250が配置されている。該Cクリップは、内向きに延びるリブ253と共に、外側壁部252を有しており、該リブは、内向きに角度をなしかつ該容器225に対し上方へ曲がって、容器225にある溝254と係合している。この配置および構成が、ディスペンサー210からの容器225の脱落に抗するか、または脱落を防止する。
【0079】
図17には、ロックする割りリング360が、薬物ディスペンサー310の内部に配置されている代替的な構成が示されている。該割りリング360は、容器325の壁部に近接して溝354内に配置されたベース部361を有している。該ベース部は、リブ353を支持しており、該リブが棚状部(ledge)356と係合している。管状本体部311の内壁。この配置により、ディスペンサー310から容器325がさらに脱落しにくくなる。
【0080】
図18および19は、本発明のキャリアーを受け入れるための様々な付属品を示しており、よってこれらは薬物ディスペンサーと共に用いるためのものである。それらの付属品は、ベルトといった別のアイテム上に配置されたデバイスのための受入れ舌部と係合する単純な取付具371を備えてもよい。そのようなデバイスの一例が、ホルダーベルトクリップ取付具372として図示されており、ここでは、クリップ373が取付具371と係合するように構成されている。デバイスの残りは、ベルトを受け入れるループであってもよい。カラビナ(carabiner)374を備える別の構成も図示されている。固定ベルト/ストラップ375を用いてもよい。ベルクロ(Velcro)(登録商標)バンド376を、ベルト377上に配置し、使用者の手足の周囲または他の位置に適合させてもよい。単体の取付具371と共にラニヤード378を使用することも可能である。図19には、保護キャップ379が示されており、キャリアー382の舌部381に固定された安全ラニヤード380を伴っている。保護キャップ379は、下部領域に配置され、キャリアーのロックアームの移動を防止することによって該キャリアーの閉止を確実なものとする。ディスペンサーおよびキャリアー387を受け入れるようにベース取付けプレート385を取付けブラケット386に装着した自転車用の取付器具(mounting arrangement)384も図示されている。該ベース取付けプレート385は、適切な寸法とされた舌部がすべり込んで接触するものであってよく、ブラケット386は、該キャリアーを固定しながら、該デバイスを支持する。
【0081】
本発明は、公知のスペーサーと共に用いることを可能にするためのスペーサーアダプターを備えてもよい。スペーサーは、使用者の体内へ送り込まれる薬物の移動を促進するために設けられる。スペーサーは、空気量を提供し、そこへ薬物が排出され、使用者による時間延長した吸入を可能とする。当該薬物ディスペンサーの、とりわけ、マウスピースの寸法は、効率的な格納および使用のため縮小してもよいので、スペーサーアダプターが必要となるかもしれない。図20は、薬物ディスペンサー410と共に用いられるスペーサーアダプター401を示しており、このスペーサーアダプターは、端部キャップ412の周囲への、2個のアーム402のスナップはめ込みによって、マウスピース418を覆って装着され、かつ、該スペーサーと係合する寸法とされた拡大された吐出口419を提供する。
【0082】
図21には、代替的構成が示されており、フック421を備えた弾性バンド420によって装着が実現されている。これは、端部キャップ412の裏面を越えて位置して、同じ効果を提供する。
【0083】
図22は、本発明の薬物ディスペンサーにおいて使用するための電子(electronics)システムの概略図である。機械的なトリガー入力501を有する電子システム500が提供されている。このトリガーは、耐水性であることが好ましく、薬物容器を押し下げると作動する。該トリガー501は、タイマーとカウンター(計数)機能とを含んだプロセッサー502に連絡している。該プロセッサーは、好ましくは、電池である電源503によって駆動される。
【0084】
該プロセッサーは、以下のうち1以上を含む好適な動作を実行するようにプログラムされている。
(a)薬物容器およびディスペンサーが操作された回数を数えること
(b)容器に残っている分の投与回数を計算するか、または安全に使用可能な投与回数を表示すること
(c)最終の投与以降の時間を計算すること
(d)例えば24時間の設定期間内に使用された回数を計算すること
(e)容器の治療用内容物の経過時間を監視すること
(f)合計または設定時間内の吐出薬量を計算すること
(g)ディスペンサー内部の湿気または他の汚染物に関する警告を出すこと
(h)適正な使用および操作の継続に関する可聴的な指示を出すこと
(i)可視的かつ可聴的な過剰使用の警告を出すこと
【0085】
プロセッサーは、出力インタフェース504上に結果を表示し、かつ、好適な情報のグラフィックな表示を含んでいてもよい。該好適な情報は、トータル使用カウントの図表(ダイアグラム)、最後に使用してからの時間、および、レベルが低い場合の警告を、他の情報と共に含んでいてもよい。もし当該デバイスが過剰に使用されたならば、または、最後の投与以降に所定時間が経過して交換の時期が来たならば、聴くことができかつ見ることができるアラームを発してもよい。電子システムによって他の情報およびプロセスを生成してもよい。
【0086】
図23は、プロセッサー、および、電源510、および、スイッチ501のポジションを示しており、端部キャップ521の押し下げおよび薬物容器525の変位による、手動操作のためのものである。容器525の肩部526がスイッチ501を押圧することにより、プロセッサー502による記録が開始される。スイッチは電子的に作用するものでもよい。
【0087】
図24は、使用者によるアクセスを容易にする薬物ディスペンサー内のスクリーン530のための代替的なポジションを示している。
【0088】
上記の詳細な説明は、好適な例示的実施形態を提示するものに過ぎず、本発明の範囲、適用可能性、または構成の限定を意図するものではない。逆に言えば、好適な例示的実施形態の詳細な説明は当業者に本発明の好適な例示的実施形態を具現化するための実際的な説明を提供するものである。本発明の精神および範囲から逸脱することなく要素および工程の機能および構成において様々な変更が可能であると了解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】図1は、本発明の薬物ディスペンサーの第1実施形態の格納形態および吐出形態の斜視図を示している。
【図2】図2は、図2Aの線A−Aに沿った薬物ディスペンサーの断面図を示している。
【図3】図3は、図3Aの線B−Bに沿った断面図を示している。
【図4】図4は、本発明の薬物ディスペンサーの好適な実施形態の組立分解図を示している。
【図5】図5は、図5Aの線C−Cに沿った断面図において示される、ロックリングを備えた実施形態を示している。
【図6】図6は、図6Aの線D−Dに沿った断面図において示される、薬物容器の脱落に抗するロック割りリングを備えた実施形態を示している。
【図7】図7は、本発明の別の実施形態の断面図を示しており、図7Bは、図7Aの線E−Eに沿った断面図を示し、図7Dは、図7Cの線F−Fに沿った断面図を示している。
【図8】図8は、さらに別の実施形態の断面図であり、図8Bは、図8Aの線H−Hに沿った断面図である。
【図9】図9は、さらに別の実施形態の断面図であり、図9Bは、図9Aの線I−Iに沿った断面図である。
【図10】図10は、可撓性カバーまたは端部キャップを備えた実施形態を示しており、図10Bは、図10Aの線J−Jに沿った断面図である。
【図11】図11は、薬物ホルダーのためのキャリアーのロック形態および開放形態における斜視図を示している。
【図12】図12は、組み合わされたキャリアーと薬物ディスペンサーの斜視図である。
【図13】図13は、図12の構成の断面図であり、図13Aの線K−Kに沿った断面図である。
【図14】図14は、キャリアーの別の実施形態を示す一連の図面である。
【図15】図15は、開放ポジションおよび閉鎖ポジションに関する可聴信号を発する薬物ディスペンサーのさらに別の実施形態の組立分解図である。
【図16】図16は、薬物容器のための外部ロック器具の断面図である。
【図17】図17は、薬物容器のための内部ロック器具の断面図である。
【図18】図18は、薬物ディスペンサーおよびキャリアーと共に用いるための様々な取付付属品を示している。
【図19】図19は、本発明の薬物ディスペンサーおよびキャリアーと共に用いるための2つのさらに別の取付付属品を示している。
【図20】図20は、スペーサーの第1実施形態を備えた本発明のディスペンサーの等角投影図を示している。
【図21】図21は、スペーサーの第2実施形態を備えた本発明の薬物ディスペンサーの等角投影図である。
【図22】図22は、電子システムを備えたディスペンサーの概略図である。
【図23】図23は、電子システムを備えたディスペンサーの断面図である。
【図24】図24は、電子システムに関する別のスクリーン位置を有する別の構成の等角投影図を示している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧された薬物容器を受け入れそこから治療の投与量を吐出させるための薬物ディスペンサーであって、当該薬物ディスペンサーは、
長細い管状本体部を有し、該管状本体部は、第一の端部の領域に形成された側部開口を持っており、
キャビティーを有し、該キャビティーは、前記本体部に形成され、かつ、前記薬物容器を受け入れるように構成され、該キャビティーは前記側部開口と連通しており、
吐出器を有し、該吐出器は、治療の投与量を吐出するためのものであり、
第一の端部の領域に回転可能に取り付けられたスリーブを有し、該スリーブは、スリーブ開口を持っており、該スリーブ開口は、回転の間に、側部開口との位置合わせに入りかつ該位置合せから脱する移動可能なものであり、
マウスピースを有し、該マウスピースは、位置合せされた時に側部開口とスリーブ開口とを通過して延伸する吐出ポジションと、キャビティー内の格納ポジションとの間で、移動可能であり、
前記細長い本体部の長手方向軸が、吐出ポジションで延伸するマウスピースのポジションから離れる方へと進む方向が偏向しており、その偏向が、第一の端部の領域の外側で生じている、
前記薬物ディスペンサー。
【請求項2】
さらに、加圧された薬物容器を含んでいる、請求項1に記載の薬物ディスペンサー。
【請求項3】
吐出器が、
中空の弁座を含んでおり、該弁座は、加圧された薬物容器にある吐出弁の吐出心棒を受け入れるためのものであり、かつ、
可撓性を有する端部キャップを含んでおり、該端部キャップは、長細い本体部の第二の端部に付与され、当該薬物ディスペンサーの指の作動を可能にしているものである、
請求項2に記載の薬物ディスペンサー。
【請求項4】
管状本体部が実質的に円筒状であり、マウスピースが吐出ポジションと格納ポジションとの間で半径方向に移動する、請求項2に記載の薬物ディスペンサー。
【請求項5】
マウスピースが、格納ポジションにおいて、薬物容器の下方への移動を阻止する、請求項2に記載の薬物ディスペンサー。
【請求項6】
スリーブが、端部キャップとして形成されており、柔らかく弾性的な材料によって好ましく形成されている、請求項2に記載の薬物ディスペンサー。
【請求項7】
スリーブ開口が、側部開口よりも25から200%の範囲で幅が広い、請求項6に記載の薬物ディスペンサー。
【請求項8】
スリーブの回転が、吐出ポジションと格納ポジションとの間でマウスピースを駆動する、請求項2に記載の薬物ディスペンサー。
【請求項9】
マウスピースを駆動するための駆動器具が、対応する座部と係合するピンを有し、該ピンはマウスピース上に位置し、かつ、該座部は駆動プレート上に位置しかつ該駆動プレートの中心から半径方向に間隔をおいており、該端部キャップの回転が、駆動プレートの回転を生じさせてピンを推し進め、かつ、それによって、マウスピースを、回転の方向に応じて、内側向きにおよび外側向きに推し進めるものである、請求項8に記載の薬物ディスペンサー。
【請求項10】
マウスピースが、弾性部材によって吐出ポジションへと動かされ、それに引き続き、端部キャップの回転によって、該マウスピースの湾曲した表面に対して弾性部材が重なるものである、請求項2に記載の薬物ディスペンサー。
【請求項11】
管状本体部の長手方向軸が、5度と20度との間で偏向している、請求項1に記載の薬物ディスペンサー。
【請求項12】
長手方向軸が、吐出ポジションにある場合のマウスピースに対し正反対の側にある面で偏向している、請求項1に記載の薬物ディスペンサー。
【請求項13】
管状本体部に対し端部カバーを固定するためのロック器具を、さらに含んでいる、請求項1に記載の薬物ディスペンサー。
【請求項14】
側部開口の周囲をとりまく隆起したリップ部をさらに有し、該リップ部は、格納ポジションにある場合のシールを補助するためのものである、請求項1に記載の薬物ディスペンサー。
【請求項15】
マウスピースが移動の最大範囲にある場合に、可聴信号を発するように、さらに構成されている、請求項1に記載の薬物ディスペンサー。
【請求項16】
薬物容器の脱落に抗するための容器ロック器具をさらに含んでいる、請求項2に記載の薬物ディスペンサー。
【請求項17】
次のうちの1以上のことを実行するための電子システムをさらに有する、請求項1に記載の薬物ディスペンサー。
(a)薬物容器およびディスペンサーが操作された回数を数えること、
(b)容器に残っている分の投与回数を計算するか、または、安全に使用可能な投与回数の表示を与えること、
(c)最後に投与してから後の時間を計算すること、
(d)24時間といった設定された期間内に使用された回数を計算すること、
(e)容器の治療用内容物の経過時間を監視すること、
(f)合計または設定時間内の吐出薬量を計算すること、
(g)ディスペンサー内部の湿気または他の汚染物に関する警告を出すこと、
(h)適正な使用および操作の継続に関する可聴的な指示を出すこと、および、
(i)可視的かつ可聴的な過剰使用警告を出すこと。
【請求項18】
電子システムが、プロセッサーと、該プロセッサーに電力を供給する電源と、該プロセッサーと連絡しているトリガーと、該プロセッサーからの情報を使用者に表示するためのスクリーンとを有する、請求項17に記載の薬物ディスペンサー。
【請求項19】
スペーサーアダプターをさらに含んでいる、請求項1に記載の薬物ディスペンサー。
【請求項20】
請求項1に記載の薬物ディスペンサーであって、該薬物ディスペンサーのためのキャリアーと組み合わされている、該薬物ディスペンサー。
【請求項21】
キャリアーが、薬物ディスペンサーを受け入れるためのディスペンサー座部を有し、かつ、該薬物ディスペンサーを定位置にロックするためのロックブラケットを有する、請求項20に記載の薬物ディスペンサーおよびキャリアー。
【請求項22】
ディスペンサー座部が、薬物ディスペンサーの長手方向軸の角度の偏向と近似しているか、または、それを正確に模倣した角度の偏向をもって形成されている、請求項21に記載の薬物ディスペンサーおよびキャリアー。
【請求項23】
ロックブラケットが鞍状物であって、ロック位置へとクリップ留めされるように、かつ、1個以上の弾性的なタブと共に定位置に保持されるように構成されている、請求項21に記載の薬物ディスペンサーおよびキャリアー。
【請求項24】
ロックブラケットが、ロックポジションへと回転されるロックアームを持って形成され、ロックポジションでは、舌状部がスロットと解放可能に係合してアームを定位置にロック固定する、請求項21に記載の薬物ディスペンサーおよびキャリアー。
【請求項25】
キャリアーが、次のうちの1以上の付属品をさらに含んでいる、請求項21の薬物ディスペンサーおよびキャリアー。
(a)簡易取付具、
(b)ホルダベルトクリップ取付具、
(c)カラビナ、
(d)固定ストラップまたは輪、
(e)フックとループのファスナー、
(f)ラニヤード、
(g)保護キャップ、および、
(h)自転車または他の装備のための取付具。
【請求項1】
加圧された薬物容器を受け入れそこから治療の投与量を吐出させるための薬物ディスペンサーであって、当該薬物ディスペンサーは、
長細い管状本体部を有し、該管状本体部は、第一の端部の領域に形成された側部開口を持っており、
キャビティーを有し、該キャビティーは、前記本体部に形成され、かつ、前記薬物容器を受け入れるように構成され、該キャビティーは前記側部開口と連通しており、
吐出器を有し、該吐出器は、治療の投与量を吐出するためのものであり、
第一の端部の領域に回転可能に取り付けられたスリーブを有し、該スリーブは、スリーブ開口を持っており、該スリーブ開口は、回転の間に、側部開口との位置合わせに入りかつ該位置合せから脱する移動可能なものであり、
マウスピースを有し、該マウスピースは、位置合せされた時に側部開口とスリーブ開口とを通過して延伸する吐出ポジションと、キャビティー内の格納ポジションとの間で、移動可能であり、
前記細長い本体部の長手方向軸が、吐出ポジションで延伸するマウスピースのポジションから離れる方へと進む方向が偏向しており、その偏向が、第一の端部の領域の外側で生じている、
前記薬物ディスペンサー。
【請求項2】
さらに、加圧された薬物容器を含んでいる、請求項1に記載の薬物ディスペンサー。
【請求項3】
吐出器が、
中空の弁座を含んでおり、該弁座は、加圧された薬物容器にある吐出弁の吐出心棒を受け入れるためのものであり、かつ、
可撓性を有する端部キャップを含んでおり、該端部キャップは、長細い本体部の第二の端部に付与され、当該薬物ディスペンサーの指の作動を可能にしているものである、
請求項2に記載の薬物ディスペンサー。
【請求項4】
管状本体部が実質的に円筒状であり、マウスピースが吐出ポジションと格納ポジションとの間で半径方向に移動する、請求項2に記載の薬物ディスペンサー。
【請求項5】
マウスピースが、格納ポジションにおいて、薬物容器の下方への移動を阻止する、請求項2に記載の薬物ディスペンサー。
【請求項6】
スリーブが、端部キャップとして形成されており、柔らかく弾性的な材料によって好ましく形成されている、請求項2に記載の薬物ディスペンサー。
【請求項7】
スリーブ開口が、側部開口よりも25から200%の範囲で幅が広い、請求項6に記載の薬物ディスペンサー。
【請求項8】
スリーブの回転が、吐出ポジションと格納ポジションとの間でマウスピースを駆動する、請求項2に記載の薬物ディスペンサー。
【請求項9】
マウスピースを駆動するための駆動器具が、対応する座部と係合するピンを有し、該ピンはマウスピース上に位置し、かつ、該座部は駆動プレート上に位置しかつ該駆動プレートの中心から半径方向に間隔をおいており、該端部キャップの回転が、駆動プレートの回転を生じさせてピンを推し進め、かつ、それによって、マウスピースを、回転の方向に応じて、内側向きにおよび外側向きに推し進めるものである、請求項8に記載の薬物ディスペンサー。
【請求項10】
マウスピースが、弾性部材によって吐出ポジションへと動かされ、それに引き続き、端部キャップの回転によって、該マウスピースの湾曲した表面に対して弾性部材が重なるものである、請求項2に記載の薬物ディスペンサー。
【請求項11】
管状本体部の長手方向軸が、5度と20度との間で偏向している、請求項1に記載の薬物ディスペンサー。
【請求項12】
長手方向軸が、吐出ポジションにある場合のマウスピースに対し正反対の側にある面で偏向している、請求項1に記載の薬物ディスペンサー。
【請求項13】
管状本体部に対し端部カバーを固定するためのロック器具を、さらに含んでいる、請求項1に記載の薬物ディスペンサー。
【請求項14】
側部開口の周囲をとりまく隆起したリップ部をさらに有し、該リップ部は、格納ポジションにある場合のシールを補助するためのものである、請求項1に記載の薬物ディスペンサー。
【請求項15】
マウスピースが移動の最大範囲にある場合に、可聴信号を発するように、さらに構成されている、請求項1に記載の薬物ディスペンサー。
【請求項16】
薬物容器の脱落に抗するための容器ロック器具をさらに含んでいる、請求項2に記載の薬物ディスペンサー。
【請求項17】
次のうちの1以上のことを実行するための電子システムをさらに有する、請求項1に記載の薬物ディスペンサー。
(a)薬物容器およびディスペンサーが操作された回数を数えること、
(b)容器に残っている分の投与回数を計算するか、または、安全に使用可能な投与回数の表示を与えること、
(c)最後に投与してから後の時間を計算すること、
(d)24時間といった設定された期間内に使用された回数を計算すること、
(e)容器の治療用内容物の経過時間を監視すること、
(f)合計または設定時間内の吐出薬量を計算すること、
(g)ディスペンサー内部の湿気または他の汚染物に関する警告を出すこと、
(h)適正な使用および操作の継続に関する可聴的な指示を出すこと、および、
(i)可視的かつ可聴的な過剰使用警告を出すこと。
【請求項18】
電子システムが、プロセッサーと、該プロセッサーに電力を供給する電源と、該プロセッサーと連絡しているトリガーと、該プロセッサーからの情報を使用者に表示するためのスクリーンとを有する、請求項17に記載の薬物ディスペンサー。
【請求項19】
スペーサーアダプターをさらに含んでいる、請求項1に記載の薬物ディスペンサー。
【請求項20】
請求項1に記載の薬物ディスペンサーであって、該薬物ディスペンサーのためのキャリアーと組み合わされている、該薬物ディスペンサー。
【請求項21】
キャリアーが、薬物ディスペンサーを受け入れるためのディスペンサー座部を有し、かつ、該薬物ディスペンサーを定位置にロックするためのロックブラケットを有する、請求項20に記載の薬物ディスペンサーおよびキャリアー。
【請求項22】
ディスペンサー座部が、薬物ディスペンサーの長手方向軸の角度の偏向と近似しているか、または、それを正確に模倣した角度の偏向をもって形成されている、請求項21に記載の薬物ディスペンサーおよびキャリアー。
【請求項23】
ロックブラケットが鞍状物であって、ロック位置へとクリップ留めされるように、かつ、1個以上の弾性的なタブと共に定位置に保持されるように構成されている、請求項21に記載の薬物ディスペンサーおよびキャリアー。
【請求項24】
ロックブラケットが、ロックポジションへと回転されるロックアームを持って形成され、ロックポジションでは、舌状部がスロットと解放可能に係合してアームを定位置にロック固定する、請求項21に記載の薬物ディスペンサーおよびキャリアー。
【請求項25】
キャリアーが、次のうちの1以上の付属品をさらに含んでいる、請求項21の薬物ディスペンサーおよびキャリアー。
(a)簡易取付具、
(b)ホルダベルトクリップ取付具、
(c)カラビナ、
(d)固定ストラップまたは輪、
(e)フックとループのファスナー、
(f)ラニヤード、
(g)保護キャップ、および、
(h)自転車または他の装備のための取付具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【公表番号】特表2009−504355(P2009−504355A)
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−527265(P2008−527265)
【出願日】平成18年8月22日(2006.8.22)
【国際出願番号】PCT/AU2006/001212
【国際公開番号】WO2007/022573
【国際公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(506098594)メディ−ストリーム プロプライエタリィ リミティッド (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月22日(2006.8.22)
【国際出願番号】PCT/AU2006/001212
【国際公開番号】WO2007/022573
【国際公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(506098594)メディ−ストリーム プロプライエタリィ リミティッド (2)
【Fターム(参考)】
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