説明

薬物デリバリー用ナノ粒子

ナノ粒子および該粒子に静電結合しているペプチド、多糖または糖タンパク質の1つと共に医薬的に許容され得る担体を含む医薬組成物。前記組成物の使用およびその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
この出願は、2003年10月31に出願された米国仮出願第60/516,324号の利益を主張するものであり、該出願の内容を本明細書の一部として援用する。
【0002】
本明細書中、種々の文献が括弧内に入れて参照されている。これらの文献開示は、その全体が、本発明が属する技術の水準をより詳しく説明するために、本明細書の一部として援用されるものとする。
【0003】
タンパク質およびペプチド薬物は、バイオテクノロジーの成果が利用可能になるに伴って、より一般的になりつつある。前記薬物をデリバリーするには注射しなければならない。前記薬物は経口バイオアベイラビリティーに欠けており、前記分子が胃腸(GI)管の酵素系によりかなり分解されることから、経口デリバリーすることができない。ペプチドおよびタンパク質は大きく、通常親水性の分子である。親水性分子は受動的拡散により余り吸収されない。疎水性分子は腸の細胞壁を透過するが、親水性分子は透過しない。細胞間の結合は緻密に閉じており(従って、“緻密接合”と呼ぶ)、比較的小さい親水性分子しか透過しない。小腸の回腸域は、大きい分子が進入できる特定の特殊化細胞(M細胞およびパイエル板)を有する。しかしながら、これらの細胞は溶液よりも粒子をより効率的に摂取する。経口−胃腸管の別の部分は口腔の舌下領域である。疎水性薬物(例えば、ニトログリセリン)の場合、溶液中の薬物は舌下吸収されることが判明したが、舌下膜は親水性化合物を透過させない。
【0004】
多くの研究グループが、タンパク質およびペプチド薬物の経口デリバリーの問題に取り組んできた。1つの提案された解決法は、ミクロエマルジョンおよび/またはナノ粒子を使用することである。ミクロエマルジョンは、油滴の平均粒子サイズが低い百ナノメーターの範囲(例えば、<200nm)である水中油型エマルジョンと定義される。ミクロエマルジョンは、例えば高速撹拌、超音波照射または高圧濾過のように適切にエネルギーを入力しながら、界面活性剤を用いて水中に油を乳化させることにより形成され得る。ノニオン性界面活性剤を含む幾つかの油または蝋組成物は、水と共に穏やかに混合したとき自然とミクロエマルジョンを形成する。ミクロエマルジョンは、比較的疎水性のペプチドまたはタンパク質を配合することができ、このペプチドまたはタンパク質のデリバリー方法を提供する。ペプチドを油滴内に導入するときには、ペプチドを少なくとも部分的に酵素分解から保護しなければならない。
【0005】
しかしながら、ミクロエマルジョンは、複数の理由でペプチド薬物をデリバリーするための一般的方法ではあり得ない。多くのペプチドは親水性であり、エマルジョンの油滴中に導入されず、むしろ水相中に残存する。よって、ペプチドまたはタンパク質は分解から保護されない。エマルジョン液滴(水相)は薬物をGI管の内腔に吸収させるための特殊メカニズムを与えず、エマルジョン中の液滴は不安定で、小滴が合体したり分裂するのでサイズ等が変化する傾向にある。
【0006】
ナノ粒子は、溶質(通常、ポリマー)を水中溶媒のミクロエマルジョンの油相内に取り込むことにより作成され得る。二重乳化方法(水/油/水)を用いることにより、親水性分子(例えば、多くのペプチド)をナノ粒子内に取り込むことができる。蒸発または抽出により溶媒を除去すると、ナノ粒子に取り込まれたペプチドが残る。ナノ粒子に取り込まれたペプチドは酵素分解から保護されることが判明しており(P.J.Lowe, C.S.Temple, Calcitonin and Insulin in isobutylcyanoacrylate Nanocapsules: Protection against Proteases and Effect on Intestinal Absorption in Rats, J.Pharm.Pharmacol., 46(7):547-552(1994);A.J.Almeida, S.Runge, R.H.Muller, Peptide-loaded Solid Lipid Nanospheres, Int.J.Pharm., 149(2):255-265(1997))、パイエル板等を介してデリバリーするために利用され得る。しかしながら、前記ナノ粒子は比較的徐放性を有する傾向がある。この特性はデポ注射剤の利点として使用されてきたが、経口デリバリーしたときには薬物のアベイラビリティーを損ねることがある。ペプチドはまた、疎水性ナノ粒子上に被覆されたポリマーの親水性鎖の中に取り込まれてきた(S.Sakumaら, Stabilization of Salmon Calcitonin by Polystyrene nanoparticles having Surface Hydrophilic polymer Chains, Against Enzymatic Degradation, Int.J.Pharmm., 159(2):181-189(1997))。
【0007】
Mumperらはナノ粒子を形成するためのエレガントな方法を開発したが、この方法は50℃を越える温度で溶融状態のときには自然にミクロエマルジョンを形成し、室温に冷却するとナノ粒子を形成する蝋/界面活性剤混合物を用いている。ラジオヌクレオチド(M.O.Oyewumi, R.Mumper, J.Engineering Tumor Targeted Gadolinium Hexanedione Nanoparticles for Potential Application in Neutron Capture Therapy, Bioconjug.Chen., 13(6):1328-35(2002);M.O.Oyewumi, R.J.Mumper, Gadolinium Loaded Nonoparticles Engineered from Microemulsion Templates, Drug Dev.Ind.Pharm., 28(3):317-28(2002))がナノ粒子に取り込まれている。加えて、溶融ミクロエマルジョンにカチオン性界面活性剤の臭化セチルトリメチルアンモニウムを配合し、その後ナノ粒子に固化することによりナノ粒子の外側にDNAを結合させることができ(Z.Cui, R.J.Mumper, Genetic Immunization using Nanoparticles Engineered from Microemulsion Precursors, Pharm.Res., 19(7):939-46(2002))、アニオン性界面活性剤のラウリル硫酸ナトリウムを使用したときにはカチオン化タンパク質(タンパク質表面にカチオン性基を付加するように特別に処理されたタンパク質)を結合できた(Z.Cui, R.J.Mumper, Coating of Cationized Protein on Engineered Nanoparticles Results in Enhanced Immune Responses, Int.J.Pharam.,238(1-2):229-39(2002))。タンパク質を静電力によりアニオン性ナノ粒子の表面に対して結合させるようにタンパク質はカチオン化された。この方法は非カチオン化タンパク質に対してうまくいき、タンパク質よりも短いペプチドに対してうまくいかないとは記載されていない。免疫化に向けられたMumperの研究は、粒子の外側に結合させたタンパク質またはDNAは認識に利用でき、分解にも利用できることを暗示している。
【0008】
室温以上で自然に形成されたミクロエマルジョンを冷却して形成した荷電ナノ粒子へのこの結合モードを研究してきたが、本発明者らは、驚くことに荷電界面活性剤を配合したミクロエマルジョンから形成したナノ粒子はその表面に非修飾ペプチドを結合させることができることを知見した。更に、前記システムの好ましくない面は薬物が分解過程から保護されないと予想されることであるが、本発明者らは、薬物提示を維持しながらナノ粒子との相互作用によりペプチドに酵素分解に対する安定性をも与えるという驚くべき知見を得た。この現象は、ペプチドの回腸、静脈内、皮下、動脈内または筋肉内注射を介するデリバリーの全ての形態に有用でなければならない。更に、本発明者らは、この種の直径の小さいナノ粒子は別の薬物デリバリーモードとなる舌下膜を介して吸収され得るという驚くべき知見を得た。
【発明の開示】
【0009】
本発明は、ナノ粒子および該粒子に静電結合しているペプチド、多糖または糖タンパク質の1つと共に医薬的に許容され得る担体を含む医薬組成物を提供する。
【0010】
本発明の実施態様は、i)モノ−,ジ−およびトリ−グリセリドと、遊離ポリエチレングリコールと、ポリエチレングリコールのモノ−およびジ−脂肪酸エステルとの混合物、ii)ドキュセートナトリウム、およびiii)酢酸グラチラマーのナノ粒子を含む医薬組成物である。
【0011】
また、i)水および蝋の混合物を50℃以上に加熱することにより自然にミクロエマルジョンを形成し、ii)前記ミクロエマルジョンを室温に冷却して、ナノ粒子を形成し、iii)前記ナノ粒子をペプチド、多糖または糖タンパク質と接触させて、医薬組成物を形成することを含む上記医薬組成物の製造方法を提供する。
【0012】
本発明はまた、被験者に対して上記医薬組成物を投与することを含む前記被験者に対するペプチド、多糖または糖タンパク質のデリバリー方法を提供する。投与は舌下、胃に対して経口的に、小腸に対して経口的に、筋肉内、皮下、動脈内または静脈内であり得る。
【0013】
従って、本発明は、経口摂取時のペプチド、多糖または糖タンパク質の酵素分解を抑制するように経口摂取前にナノ粒子にペプチド、多糖または糖タンパク質を静電結合させることを含む動物によるペプチド、多糖または糖タンパク質の経口摂取時のペプチド、多糖または糖タンパク質の酵素分解を抑制する一般的方法を提供する。
【0014】
更に、本発明は、被験者に対してナノ粒子に静電結合させたデオキシリボ核酸分子またはリボ核酸分子を医薬的に許容され得る担体と共に含む医薬組成物を経口または舌下投与することを含む被験者へのデオキシリボ核酸分子またはリボ核酸分子のデリバリー方法を提供する。この方法では、ナノ粒子は上記したように40〜60℃の融点を有する有機蝋からなり得る。しかしながら、イオン性界面活性剤を存在させるならば、該界面活性剤はカチオン性界面活性剤、例えば臭化セチルトリメチルアンモニウム、クロルヘキシジン塩、臭化ヘキサデシルトリアンモニウム、塩化ドデシルアンモニウムまたはアルキルピリジニウム塩である。
【発明の詳細な説明】
【0015】
本発明は、ナノ粒子および該粒子に静電結合しているペプチド、多糖または糖タンパク質の1つと共に医薬的に許容され得る担体を含む医薬組成物を提供する。
【0016】
前記ナノ粒子は40〜60℃の融点を有する有機蝋からなり得る。この有機蝋はステアリン酸;微粒化パルミトステアリン酸グリセリル;微粒化ベヘン酸グリセリル;40〜60℃の融点を有するパラフィン蝋;天然起源の脂肪酸をグリセロールでエステル化することにより得られ、40〜60℃の融点を有するモノ−,ジ−およびトリ−グリセリドの混合物;天然起源の脂肪酸をエステル交換して得られ、40〜60℃の融点を有するモノ−,ジ−およびトリ−グリセリドの混合物;または40〜60℃の融点を有するC12−C18脂肪酸のモノ−,ジ−およびトリ−グリセリドの混合物であり得る。
【0017】
有機蝋をノニオン性界面活性剤と混合してもよい。有機蝋とノニオン性界面活性剤の混合物は、セチルアルコールとポリソルベート60との混合物、ポリオキシ2ステアリルエーテルとポリソルベート80との混合物、またはモノ−,ジ−およびトリ−グリセリドと、遊離ポリエチレングリコールと、ポリエチレングリコールのモノ−およびジ−脂肪酸エステルとの混合物であってもよい。
【0018】
ナノ粒子はイオン性界面活性剤を含み得る。この界面活性剤は荷電ヘッドおよび疎水性テールを有し得、アニオン性界面活性剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム、コール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウムまたはドキュセートナトリウムであり得る。1実施態様では、界面活性剤はドキュセートナトリウムである。
【0019】
1実施態様では、ペプチド、多糖または糖タンパク質は正味正電荷を有し、前記ペプチド、多糖または糖タンパク質がナノ粒子に静電結合するようにナノ粒子は正味負電荷を有している。この実施態様では、ナノ粒子に結合するペプチド中のリシン基+アルギニン基の総数はアスパラギン酸基+グルタミン酸基の総数よりも多い。前記実施態様では、ペプチドは酢酸グラチラマーまたはインターフェロンであり得、多糖はゲンタマイシン、アミカシンまたはトブラマイシンであり得る。
【0020】
別の実施態様では、界面活性剤はカチオン性界面活性剤、例えば臭化セチルトリメチルアンモニウム、クロルヘキシジン塩、臭化ヘキサデシルトリアンモニウム、塩化ドデシルアンモニウムまたはアルキルピリジニウム塩であり得る。
【0021】
1実施態様では、ペプチド、多糖または糖タンパク質は正味負電荷を有し得、前記ペプチド、多糖または糖タンパク質がナノ粒子に静電結合されるようにナノ粒子は正味正電荷を有している。この実施態様では、ナノ粒子に結合するペプチド中のアスパラギン酸基+グルタミン酸基の総数はリシン基+アルギニン基の総数よりも多い。前記実施態様では、ナノ粒子に結合させる多糖はヘパリンであり得る。
【0022】
本発明の実施態様では、医薬組成物は、ナノ粒子に静電結合させたときのペプチド、多糖または糖タンパク質の酵素分解速度が溶液中のナノ粒子に結合していないときのペプチド、多糖または糖タンパク質の酵素分解速度よりも遅いことを特徴とする。
【0023】
本発明の更なる実施態様は、i)モノ−,ジ−およびトリ−グリセリドと、遊離ポリエチレングリコールと、ポリエチレングリコールのモノ−およびジ−脂肪酸エステルとの混合物、ii)ドキュセートナトリウム、およびiii)酢酸グラチラマーのナノ粒子を含む医薬組成物である。
【0024】
この実施態様では、上記混合物は組成物の60〜90重量%を占め、ドキュセートナトリウムは組成物の2〜30重量%を占め、酢酸グラチラマーは組成物の3〜20重量%を占め得る。或いは、この実施態様では、上記混合物は組成物の80〜85重量%を占め、ドキュセートナトリウムは組成物の5〜7重量%を占め、酢酸グラチラマーは組成物の8〜15重量%を占め得る。
【0025】
前記混合物は20%のモノ−,ジ−およびトリ−グリセリド、8%の遊離ポリエチレングリコールおよび72%のポリエチレングリコールのモノ−およびジ−脂肪酸エステルからなり得る。
【0026】
本発明の実施態様では、医薬組成物は、ナノ粒子に静電結合させたときの酢酸グラチラマーの酵素分解速度が溶液中のナノ粒子に結合していないときの酢酸グラチラマーの酵素分解速度よりも遅いことを特徴とする。
【0027】
本発明の実施態様では、ナノ粒子は1〜5000nmの平均直径を有し得る。特定実施態様では、ナノ粒子は200〜3000nmの平均直径、または500〜2000nmの平均直径、または1〜1000nmの平均直径、または1〜500nmの平均直径、または10〜300nmの平均直径、または20〜200nmの平均直径、または20〜150nmの平均直径、または100〜600nmの平均直径、または200〜500nmの平均直径を有する。
【0028】
本発明の別の実施態様は本明細書に記載されているいずれかの組成を有する凍結乾燥医薬組成物である。
【0029】
i)水および蝋の混合物を50℃以上に加熱することにより自然にミクロエマルジョンを形成し、ii)前記ミクロエマルジョンを室温に冷却して、ナノ粒子を形成し、
iii)前記ナノ粒子をペプチド、多糖または糖タンパク質と接触させて、医薬組成物を形成することを含む医薬組成物の製造方法も提供される。
【0030】
この方法において、蝋は40〜60℃の融点を有する有機蝋、例えばステアリン酸;微粒化パルミトステアリン酸グリセリル;微粒化ベヘン酸グリセリル;40〜60℃の融点を有するパラフィン蝋;天然起源の脂肪酸をグリセロールでエステル化することにより得られ、40〜60℃の融点を有するモノ−,ジ−およびトリ−グリセリドの混合物;天然起源の脂肪酸をエステル交換して得られ、40〜60℃の融点を有するモノ−,ジ−およびトリ−グリセリドの混合物;または40〜60℃の融点を有するC12−C18脂肪酸のモノ−,ジ−およびトリ−グリセリドの混合物である。
【0031】
組成物と同様に、方法においても蝋はノニオン性界面活性剤またはイオン性界面活性剤を含み得る。ノニオン性界面活性剤を含む蝋は、セチルアルコールとポリソルベート60との混合物、ポリオキシ2ステアリルエーテルとポリソルベート80との混合物、またはモノ−,ジ−およびトリ−グリセリドと、遊離ポリエチレングリコールと、ポリエチレングリコールのモノ−およびジ−脂肪酸エステルとの混合物であり得る。
【0032】
イオン性界面活性剤はアニオン性界面活性剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム、コール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウムまたはドキュセートナトリウムであり得る。
【0033】
イオン性界面活性剤はカチオン性界面活性剤、例えば臭化セチルトリメチルアンモニウム、クロルヘキシジン塩、臭化ヘキサデシルトリアンモニウム、塩化ドデシルアンモニウムまたはアルキルピリジニウム塩であり得る。
【0034】
上記方法において、ペプチド、多糖または糖タンパク質は組成物について記載した通りである。
【0035】
本発明によれば、被験者に対して本明細書に記載されている医薬組成物を投与することを含むペプチド、多糖または糖タンパク質を前記被験者にデリバリーする方法が提供される。投与は舌下、胃への経口的、小腸への経口的、大腸への経口的、筋肉内、皮下、動脈内または静脈内であり得る。
【0036】
また、経口摂取時のペプチド、多糖または糖タンパク質の酵素分解を抑制するように経口摂取前にナノ粒子にペプチド、多糖または糖タンパク質を静電結合させることを含む動物によるペプチド、多糖または糖タンパク質の経口摂取時のペプチド、多糖または糖タンパク質の酵素分解を抑制する一般的方法が提供される。ナノ粒子組成物、その形成、およびペプチド、多糖または糖タンパク質への結合は本明細書に記載されている通りである。例えば、1実施態様では、ペプチドは酢酸グラチラマーであり得る。別の実施態様では、ナノ粒子はi)モノ−,ジ−およびトリ−グリセリドと、遊離ポリエチレングリコールと、ポリエチレングリコールのモノ−およびジ−脂肪酸エステルとの混合物、およびii)ドキュセートナトリウムからなり得る。ペプチド、多糖または糖タンパク質は、i)水および蝋の混合物を50℃以上に加熱することにより自然にミクロエマルジョンを形成し、ii)前記ミクロエマルジョンを室温に冷却して、ナノ粒子を形成し、iii)前記ナノ粒子をペプチド、多糖または糖タンパク質と接触させて、ナノ粒子にペプチド、多糖または糖タンパク質を静電結合させることによりナノ粒子に結合され得る。
【0037】
更に、本発明は、被験者に対してナノ粒子に静電結合させたデオキシリボ核酸分子またはリボ核酸分子を医薬的に許容され得る担体と共に含む医薬組成物を経口または舌下投与することを含む被験者へのデオキシリボ核酸分子またはリボ核酸分子のデリバリー方法を提供する。この方法では、ナノ粒子は、上記したような40〜60℃の融点を有する有機蝋からなり得る。しかしながら、イオン性界面活性剤を存在させるならば、該界面活性剤はカチオン性界面活性剤、例えば臭化セチルトリメチルアンモニウム、クロルヘキシジン塩、臭化ヘキサデシルトリアンモニウム、塩化ドデシルアンモニウムまたはアルキルピリジニウム塩である。
【0038】
本発明は、本明細書に開示されている方法により製造される医薬組成物を提供する。
【0039】
本発明はまた、被験者において自己免疫性疾患または炎症性非自己疾患を治療するのに有効な量の酢酸グラチラマーを医薬的に許容され得る担体と共に含む開示医薬組成物の1つを提供する。
【0040】
1実施態様では、自己免疫性疾患は多発性硬化症である。
【0041】
本発明はまた、自己免疫性疾患または炎症性非自己疾患に苦しんでいる被験者に対して開示医薬組成物のいずれかを投与することを含む前記患者の治療方法を提供する。
【0042】
別の実施態様で、投与は静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、経口、鼻腔内、口腔内、経膣、経腸、眼球内、鞘内、局所、舌下、または皮内ルートを介する。
【0043】
更なる実施態様で、投与は経口である。
【0044】
本発明は更に、酢酸グラチラマーのナノ粒子組成物を経口投与することを含む再発性弛張性多発性硬化症に苦しんでいる被験者の治療方法を提供し、前記ナノ粒子組成物中の酢酸グラチラマーの量は被験者における再発性弛張性多発性硬化症の症状を緩和させるのに有効な量である。
【0045】
本発明はまた、自己免疫性疾患を治療するための酢酸グラチラマーを含む開示医薬組成物のいずれか1つの使用を提供する。
【0046】
更なる実施態様では、開示されている医薬組成物のいずれか1つを多発性硬化症の治療のために使用する。
【0047】
別の態様では、開示されている医薬組成物のいずれか1つを薬剤として使用する。
【0048】
本発明は更に、炎症性非自己免疫性疾患の治療用薬剤の製造における酢酸グラチラマーを含む開示医薬組成物のいずれか1つの使用を提供する。
【0049】
別の実施態様では、開示医薬組成物のいずれか1つを静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、経口、鼻腔内、口腔内、経膣、経腸、眼球内、鞘内、局所、舌下または皮内投与のために処方する。
【0050】
更に別の実施態様では、開示医薬組成物のいずれか1つを経口投与のために処方する。
【0051】
実施態様では、開示薬剤のいずれか1つを静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、経口、鼻腔内、口腔内、経膣、経腸、眼球内、鞘内、局所、舌下、または皮内投与のために処方する。
【0052】
別の実施態様では、開示薬剤のいずれか1つを経口投与のために処方する。
【0053】
別の実施形態で、本明細書に開示されている薬剤の1つは経口投与用に処方される。
【0054】
更に、本発明は、再発性弛張性多発性硬化症の治療における酢酸グラチラマーのナノ粒子組成物の使用を提供する。
【0055】
本発明は、薬剤における酢酸グラチラマーのナノ粒子組成物の使用を提供する。
【0056】
<定義>
本明細書中で使用される用語「ナノ粒子」は、1〜5000ナノメーター(nm)の平均サイズを有する粒子を指す。ナノ粒子の化学組成は本明細書に記載されているように変更可能である。
【0057】
本明細書中で使用される用語「ペプチド」は、正味電荷があるならば単に天然アミノ酸の組成に由来する正味電荷を有し、その正味電荷は非アミノ酸分子の共有添加により変更されないペプチドまたはタンパク質を指す。本明細書中で使用される用語「ペプチド」はその定義内にタンパク質を含む。
【0058】
本明細書中で使用される用語「多糖」は、正味電荷があるならば単に天然糖の組成に由来する正味電荷を有する多糖を指す。
【0059】
本明細書中で使用される用語「糖タンパク質」は、正味電荷があるならば単に天然アミノ酸および糖の組成に由来する正味電荷を有する糖タンパク質を指す。
【0060】
<ナノ粒子の作成>
ナノ粒子は、マクロ粒子またはミクロ粒子をナノ粒子が得られるように高エネルギーの特殊ミルを用いて粉砕することにより作成され得る。ナノ粒子は、下記するような乳化技術を用いても形成され得る。エマルジョンは2つの非混和性液体の準安定混合物であり、前記した2つの液体の一方は小滴に分解し、他方の液体中に分散している。水中油型エマルジョンは連続水相中に小さい油滴が分散しているものである。通常、油滴はエマルジョンに若干の安定性を与えるよう該油滴と結合して界面活性剤を有している。エマルジョン液滴のサイズはマイクロメーターからナノメーターの範囲であり得る。液滴サイズが約200nm(0.2ミクロン)未満であるエマルジョンはミクロエマルジョンと呼ばれている。水中油型エマルジョンは殆ど非水溶性液体から作成され得る。
【0061】
こうして形成されたナノ粒子は、薬物を分解に対して安定化させ且つ大きな親水性ペプチドまたはタンパク質薬物の吸収を高めるためにペプチド薬物またはタンパク質薬物と結合され得る。舌下デリバリーするための結合ペプチドまたはタンパク質薬物を含むナノ粒子は1〜100nm、好ましくは10〜300nm、最も好ましくは20〜200nmの平均直径を有していなければならない。経口デリバリーするための結合ペプチドまたはタンパク質薬物を含むナノ粒子は1〜5000nm、好ましくは200〜3000nm、最も好ましくは500〜2000nmの平均直径を有していなければならない。皮下または筋肉内デリバリーするための結合ペプチドまたはタンパク質薬物を含むナノ粒子は1〜1000nm、好ましくは100〜600nm、最も好ましくは200〜500nmの平均直径を有していなければならない。動脈内または静脈内デリバリーするための結合ペプチドまたはタンパク質薬物を含むナノ粒子は1〜500nm、好ましくは10〜300nm、最も好ましくは20〜150nmの平均直径を有していなければならない。
【0062】
エマルジョン液滴のサイズは幾つかの方法によりコントロールされ得る。小さい液滴を得るためには、水中油型混合物を非常に高速で撹拌したり、差圧を用いて混合物を非常に小さい孔を有するフィルターに通してもよい。油相の組成および存在する界面活性剤に応じて、殆ど任意のサイズ液滴および異なる安定性を有するエマルジョンを得ることができる。エマルジョ液滴はミクロ粒子またはナノ粒子を形成するために使用され得る。油滴中に溶解させた固体材料は、溶媒として作用する油を除去したときこの油滴と同程度のサイズの粒子に固化する。この油は油相は溶解するが溶質は溶解しない別の溶媒に抽出させることにより、揮発性油相の場合には蒸発により除去され得る。これらの方法は通常ポリマー材料(例えば、ポリ乳酸−グリコール酸コポリマー)からミクロ粒子およびミクロスフェアを形成する際に使用される。前記ポリマー材料を有機非水溶性溶媒(例えば、ジクロロメタンまたは酢酸エチル)中に溶解し、有機溶液のエマルジョンを(通常、ポリビニルアルコールのような界面活性剤を添加した)水相中で作成し、有機溶媒を蒸発または抽出により除去すると、水相中にミクロ粒子またはミクロスフェアの懸濁液が残る。乳化ステップ前に薬物を有機相中に配合すると、薬物を含有するミクロ粒子またはミクロスフェアが得られる。小さい液滴を有するエマルジョンを形成すると、その後粒子のサイズはナノ範囲に縮小され得る。
【0063】
ミクロ粒子またはナノ粒子を作成する別の方法では、室温以上で液体であり、室温では固体である有機蝋を油相として使用する。薬物を蝋相に溶解し、蝋を室温以上で乳化させ得る。冷却すると、溶媒を抽出または蒸発させる必要なくエマルジヨン中の油滴とほぼ同じサイズを有するミクロ粒子またはナノ粒子の懸濁液が得られる。この種のミクロ粒子またはナノ粒子は油溶性薬物をデリバリーさせるのに最高に適しており、長期間デリバリーデポ剤を形成するのに最良である。薬物を有機ポリマーまたは蝋中に埋め込み、マトリックスから拡散できるまでデリバリーのために直ぐに利用できない。通常、拡散は粒子マトリックスが分解された後のみ生ずる。水溶性薬物をこの種のミクロ粒子に充填させることができるが、通常少量の薬物しか充填されず、効率が悪い。水溶性薬物は油相に溶解しないので、まず油中水型エマルジョンを作成しなければならず、その後このエマルジョンを水中油型エマルジョンを作成するために使用して、このエマルジョンから水/油/水型二重エマルジョンが形成される。水溶解度が余り高くないペプチドおよびタンパク質薬物の場合、システムに配合できる薬物の量がかなり制限される。更に、薬物は非水溶性マトリックス内に埋め込められ、こうなると上記したように迅速放出のために直ぐに利用できない。
【0064】
より直ぐに使用するためのナノ粒子またはミクロ粒子の改良システムは、ペプチドまたタンパク質薬物をそのミクロ粒子またはナノ粒子の外表面に結合して有する。ナノ粒子は、単位重量あたりの表面積が大きく、よって薬物を多く充填できるので前記デリバリーシステムにとって特に有用でなければならない。このシステムの好ましくない面は薬物が分解過程から保護されないと予想された。本発明者らは、驚くことに界面活性剤が埋められている蝋からナノ粒子を作成し、その表面に荷電ペプチドまたはタンパク質を静電結合させると、ペプチドはデリバリーのために利用され、分解から保護されることを知見した。
【0065】
ペプチドまたはタンパク質薬物をナノ粒子の表面に結合させるためには、ナノ粒子は荷電表面を有して作成されなければならない。これは、イオン性基を含むポリマーからナノ粒子を作成することにより、またはナノ粒子を構成する材料に荷電分子を混合することにより電荷を加えることにより達成され得る。本発明の1実施態様では、40〜60℃の融点を有する蝋を使用する。この蝋を溶融し、蝋中にイオン性界面活性剤分子を溶解させる。次いで、蝋を温(50〜70℃)水を用いて乳化させるが、この乳化ステップにおいて場合によりノニオン性界面活性剤を用いてもよい。前記システムに使用するのに適した蝋はWitepsol(登録商標)E85、微結晶性蝋、ステアリン酸、Compritol(登録商標)888 ATOおよびPrecirol(登録商標)ATO 5であり、Compritol(登録商標)888 ATOがより好ましい。前記システムにとって適当なアニオン性界面活性剤はラウリル硫酸ナトリウム、コール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウムまたはドキュセートナトリウムであり、ドキュセートナトリウムが最も好ましい。界面活性剤としてドキュセートナトリウムを使用するときには、蝋に対して1〜30重量%、より好ましくは約5〜10重量%、好ましくは約7重量%の量を添加できる。
【0066】
温エマルジョン中の溶融蝋滴のサイズは混合物を均質化するために使用される高剪断ミキサーのスピードにより調節され、実験により決定できる。スピードが速ければ、溶融蝋が水相中により長く均質化され、蝋滴はより小さくなる。均質化が完了したら、混合物を蝋の凝固点以下に冷却する。こうして形成されたナノ粒子では、その中に界面活性剤の疎水性テールが埋もれており、よって荷電ヘッドを有する界面活性剤は水相と相互作用する表面上に固定化される。
【0067】
正味正電荷を有するタンパク質またはペプチド薬物は、ペプチドまたはタンパク質の水溶液をナノ粒子またはミクロ粒子の懸濁液を混合することにより荷電ナノ粒子に静電結合され得る。前記タンパク質およびペプチドの例は酢酸グラチラマー、硫酸プロタミン、カチオン性抗菌性ペプチド(例えば、クレクロピン、マガイニン、ジプテリシン、デフェンシンおよびガンビシン)、ポリリシン、ボリアルギニン、およびアスパラギン酸基+グルタミン酸基の総数に比してリシン基+アルギニン基の総数が非常に多い他のペプチドまたはタンパク質である。ペプチドまたはタンパク質分子の代わりにカチオン性糖薬物、例えばゲンタマイシン、アミカシンまたはトブラマイシンが使用され得る。酢酸グラチラマーが最も好ましい実施態様である。
【0068】
長期間保存のために、こうして形成されたナノ粒子に結合させたペプチドのナノ懸濁液は粉末に凍結乾燥され得る。凍結乾燥された粉末を緩衝液で再構成すると、薬物のナノ懸濁液を再び得ることができる。こうして得られた結合薬物のナノ懸濁液は経口デリバリーに特に適している。200nm以下の平均直径を有しているならば、ナノ粒子が舌下膜を横断できるのでナノ懸濁液は舌下デリバリーに適している。胃腸管に経口デリバリーするためには、パイエル板およびM細胞が最も容易に認識するサイズであるのでより大きなナノ粒子が最も好ましい。凍結乾燥粉末または再構成した懸濁液として経口デリバリーするためには、ナノ懸濁液は腸溶性コーティングを施したカプセルを用いて小腸にデリバリーされる。結合させたときナノ懸濁液組成物中のペプチドまたはタンパク質の安定性が高まると、胃腸管中の酵素により分解される前に腸に吸収されるペプチド薬物は多くなる。
【0069】
残留負電荷を有するタンパク質およびペプチドを結合させるためには、カチオン性ヘッド基を有する界面活性剤を製造時に使用しなければならない。その分子の例は臭化セチルトリメチルアンモニウム、クロルヘキシジン塩、臭化ヘキサデシルトリアンモニウム、塩化ドデシルアンモニウムまたはアルキルピリジニウム塩である。前記形成手順は、アニオン性荷電ヘッドを有する界面活性剤を用いるときと同じである。正味負電荷を有するペプチドおよびタンパク質の例はアニオン性抗菌性ペプチド(例えば、エンケリチン、ペプチドBおよびデルミシジン)、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、およびリシン基+アルギニン基の総数に比してアスパラギン酸基+グルタミン酸基の総数が非常に多い他のペプチドまたはタンパク質である。負に荷電した多糖薬物、例えばヘパリン、核酸オリゴマーまたはポリマー(例えば、DNA、RAN、並びにその断片およびアンチセンスアナログ)も使用され得る。
【0070】
本発明のより好ましい実施態様では、ナノ粒子を形成するために使用される蝋は自然にミクロエマルジョンを形成するように処方される蝋である。このような界面活性剤を含有する蝋組成物は、その融点以上で水と混合したときに自然にミクロエマルジョンを形成する(液滴サイズは200nm未満)。前記混合物中の界面活性剤は、ミクロエマルジョンを固化したときに荷電ナノ粒子を得るためにイオン性界面活性剤を蝋/界面活性剤組成物に添加しなければならないようにしばしばノニオン性のものである。本発明で使用するのに適した蝋/界面活性剤組成物は室温以上で溶融し、温水〜熱水中で液体として乳化され得るものである。蝋/界面活性剤組成物の例は、約20:1のモル比のセチルアルコールとポリソルベート60との混合物;ポリオキシ2ステアリルエーテル(Brij 72)とツイーン80との混合物;20%のモノ−,ジ−およびトリ−グリセリド、72%のPEG 1500のモノ−およびジ−脂肪酸エステルおよび8%の遊離PEG 1500との混合物である蝋のGelucire(登録商標)シリーズである“乳化性蝋”である。Gelucire(登録商標)シリーズが好ましく、公称融点が50℃であるGelucire(登録商標)50/13が最も好ましい。溶融Gelucire(登録商標)50/13は水と混合したとき自然に透明なミクロエマルジョンを形成する。荷電表面ナノ粒子を作成するためには、蝋溶融物に荷電界面活性剤を添加して界面活性剤基を取り込んだミクロエマルジョンを形成しなければならない。前記系に適したアニオン性界面活性剤はラウリル硫酸ナトリウム、コール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウムおよびドキュセートナトリウムである。ドキュセートナトリウムがアニオン性ヘッドを有する最も好ましい界面活性剤である。界面活性剤としてドキュセートナトリウムを使用するとき、その量は蝋組成物に対して1〜30重量%、より好ましくは約5〜10重量%、最も好ましくは約7重量%の量添加され得る。
【0071】
正味正電荷を有するタンパク質またはペプチド薬物は、ペプチドまたはタンパク質の水溶液をナノ粒子またはミクロ粒子の懸濁液と混合することにより形成される荷電ナノ粒子に静電結合され得る。前記タンパク質およびペプチドの例は酢酸グラチラマー、硫酸プロタミン、カチオン性抗菌性ペプチド(例えば、クレクロピン、マガイニン、ジプテリシン、デフェンシンおよびガンビシン)、ポリリシン、ポリアルギニン、およびアスパラギン酸基+グルタミン酸基の総数に比してリシン基+アルギニン基の総数が非常に多い他のペプチドまたはタンパク質である。ペプチドまたはタンパク質分子の代わりにカチオン性糖薬物、例えばゲンタマイシン、アミカシンまたはトブラマイシンが使用され得る。
【0072】
長期間保存のために、こうして形成されたナノ粒子に対して結合させたペプチドのナノ懸濁液を粉末に凍結乾燥してもよい。凍結乾燥させた粉末を緩衝液で再構成すると、薬物のナノ懸濁液を再び得ることができる。こうして得られた結合薬物のナノ懸濁液は上記したように経口デリバリーのために特に適している。200nm以下の平均直径を有しているならば、ナノ粒子が舌下膜を横断できるのでナノ懸濁液は舌下デリバリーに適している。これらのナノ懸濁液は、パイエル板およびM細胞を介して吸収させるべく胃腸管に経口デリバリーするためにも使用され得る。凍結乾燥粉末または再構成した懸濁液として経口デリバリーするためには、ナノ懸濁液は腸溶性コーティングを施したカプセルを用いて小腸にデリバリーする。結合させたときナノ懸濁液組成物中のペプチドまたはタンパク質の安定性が高まると、胃腸管中の酵素により分解される前に腸に吸収されるペプチド薬物が多くなる。
【0073】
実施態様では、60〜90%w/wのGelucire(登録商標)50/13を自己乳化性蝋として使用し、2〜30%w/wのドキュセートナトリウムをアニオン性界面活性剤として使用し、3〜20%w/wの酢酸グラチラマーをペプチド薬物として使用する。最も好ましい実施態様では、約80〜85%w/wのGelucire(登録商標)50/13を自己乳化性蝋として使用し、5〜7%w/wのドキュセートナトリウムをアニオン性界面活性剤として使用し、8〜15%w/wの酢酸グラチラマーをペプチド薬物として使用する。長期間保存のために、こうして形成されたナノ粒子に対して結合させたペプチドのナノ懸濁液を粉末に凍結乾燥してもよい。凍結乾燥させた粉末を緩衝液で再構成すると、薬物のナノ懸濁液を再び得ることができる。
【0074】
残留負電荷を有するタンパク質およびペプチドを結合させるためにミクロエマルジョンを形成する自己乳化性蝋を用いるときには、カチオン性ヘッド基を有する界面活性剤を製造時に使用しなければならない。前記分子の例は臭化セチルトリメチルアンモニウム、クロルヘキシジン塩、臭化ヘキサデシルトリアンモニウム、塩化ドデシルアンモニウムまたはアルキルピリジニウム塩である。この形成手順はアニオン性荷電ヘッドを有する界面活性剤を用いるときと同様である。正味負電荷を有するペプチドおよびタンパク質の例はアニオン性抗菌性ペプチド(例えば、エンケリチン、ペプチドBおよびデルミシジン)、ポリアスパラギン酸、ポリグルタミン酸、およびリシン基+アルギニン基の総数に比してアスパラギン酸基+グルタミン酸基の総数が非常に多い他のペプチドまたはタンパク質である。負に荷電した多糖薬物、例えばヘパリン、核酸オリゴマーまたはポリマー(例えば、DNA、RAN、並びにその断片およびアンチセンスアナログ)も使用され得る。
【0075】
<治療用途>
本発明は、酢酸グラチラマーを含むナノ粒子の医薬組成物を用いて酢酸グラチラマーと同じ自己免疫性疾患および炎症性非自己免疫性疾患を治療することを考えている(2002年5月9日に公開されたAharoniらの米国特許出願公開第2002/0055466号;2003年2月4日にGadらに付与された米国特許第6,514,938号;2001年8月23日に公開されたGilbertらの国際特許出願公開第01/60392号;2004年1月8日に公開されたStromingerらの米国特許出願公開第2004/0006022号;2002年6月20日に公開されたYoungらの米国特許出願公開第2002/0077278号;2002年3月28日に公開されたEisenbach−Schwartzの米国特許出願公開第2002/0037848号;2003年1月2日に公開されたEisenbach−Schwartzの米国特許出願公開第2003/0004099号;2001年12月27日に公開されたMosesらの国際特許出願公開第01/97846号)。
【実験の詳細】
【0076】
<材料>
Gelucire(登録商標)50/13は市販されている硬ゼラチンカプセル組成物用の半固体バイオアベイラビリティー強化剤および徐放剤である。この化学組成はステアロイルマクロゴール32グリセリドである。Gelucire(登録商標)50/13は、出発物質として水素化パーム油およびPEG1500を用いてアルコーリシス/エステル化により合成される。従って、Gelucire(登録商標)50/13はモノ−,ジ−およびトリ−グリセリドとポリエチレングリコール1500のモノ−およびジ−脂肪酸エステルと遊離ポリエチレングリコール1500の十分に規定された混合物である。主要脂肪酸はパルミトステアリン酸(C16−C18)である。Gelucire(登録商標)50/13はかすかな香り、46.0〜51.0℃の融点(滴点)および13の親水親油バランスを有する蝋状固体(ブロックまたはペレット)である。ヨーロッパ薬局方(4版):“ステアロイルマクロゴールグリセリド”モノグラフに従う。米国ドラッグ・マスター・ファイルNo.5253。
【0077】
ドキュセートナトリウム、すなわちスルホブタン二酸1,4−ビス(2−エチルヘキシル)エステルナトリウム塩は、式C2037NaOSを有し、分子量が444.57(メルクインデックス,12版)の医薬用界面活性剤または湿潤剤である。ドキュセートナトリウムは、例えばColaceとして市販されている。
【0078】
酢酸グラチラマー(GA)は、デリバリーのために経口代替法を開発することが著しい進歩となるであろうペプチド薬物の1つである。GA、すなわち4アミノ酸のランダム混合物の合成コポリマーの酢酸塩は多発性硬化症(MS)の再発性弛張性形態を治療するためにFDAが承認している薬物の1つである(Physician’s Desk Reference, 56版, p.3306-3310)。MSは、炎症、脱髄および軸索損害を特徴とする中枢神経系の慢性疾患である(B.W.van Oostonら, Choosing Drug Therapy for Multiple Sclerosis, An Update, Drugs, 56(4):555-569(1998))。
【実施例1】
【0079】
Gelucire(登録商標)50/13蝋(82.6部)を攪拌機を取り付けたジャケット付反応器に入れた。この蝋を撹拌しながら約70℃に加熱することにより溶融させた。ドキュセートナトリウム(5.8部)を添加し、溶融蝋中にドキュセートを含む溶液を得た。予熱した水(784部)を添加し、混合物を70℃で200rpmで15分間撹拌した。自然にミクロエマルジョンが形成した。次いで、塊を120分間かけて室温まで冷却すると、ミクロエマルジョンからナノ懸濁液が形成された。酢酸グラチラマー(GA)(11.6部)を水(100部)に溶解し、攪拌機付き反応器に添加した。混合物を30分間撹拌すると、GAは粒子に結合した。ナノ懸濁液を−20℃で12〜20時間冷凍させた後、72時間凍結乾燥させた。うまく形成されたケーキが得られた。凍結乾燥ケーキをQuadroComil粉砕機において0.8mmスクリーンを用いて粉砕すると、粉末が得られた。この粉末をリン酸緩衝液(0.05M,pH=6.8)中で再構成すると、薬物ナノ懸濁液が得られた。
【0080】
冷(14〜20℃)水中に粒子を分散させることにより、上記ナノ懸濁液の粒子サイズ分布をMastersizer2000(Malvern Instruments Ltd.,検出範囲0.02〜2000um)を用いて測定した。測定結果は以下の通りであった:
d(0.1)=76±5nm
d(0.5)=124±8nm
d(0.9)=224±4nm
粒子の10容量(または、重量)%は76nm未満の直径を有しており、粒子の50容量(または、重量)%は124nm未満の直径を有しており、粒子の90容量(または、重量)%は224nm未満の直径を有している。
【0081】
セファデックスカラムを用いて遊離GAを結合GAから分離することにより、ナノ粒子に結合したGAの%を測定した。カラムの空隙容量に相当する第1フラクション中にナノ粒子が現れ、遊離GAはカラムに保持させた後その後のフラクション中に現れる。この分離を達成するために、再構成ナノ粒子25mgをセファデックスG−75カラム(10×200mm)に充填し、0.5ml/分の流速の水を用いて溶離させた。5mlずつのフラクションを集めた。分離後、275nmでのUV吸収は、空隙容量での1つのピークは溶離物の最初の7フラクションに相当し、他はその後のフラクションに相当する材料の2つのピークを示した。これらの2つのピークはうまく分離された。各フラクション中のGAの量はSuperose 12 HR 10/30カラム(Pharmacia,10×30mm)において0.5ml/分の流速の酸性リン酸緩衝液(0.1M,pH=1.5)および208nmでのUV検出を用いるHPLC分析により測定した。酸性緩衝液により粒子からGAが除去され、フラクション中の全GAが測定できる。サンプル中の結合GAの%は、(空隙容量ピークに相当するフラクション中で測定されたGAの全量/全てのフラクション中で測定されたGAの全量)×100であった。結合%は50±5%(w/w)であった。
【実施例2】
【0082】
Gelucire(登録商標)50/13蝋(72.2部)を攪拌機を取り付けたジャケット付反応器に入れた。この蝋を撹拌しながら約70℃に加熱することにより溶融させた。ドキュセートナトリウム(5.4部)を添加し、溶融蝋中にドキュセートを含む溶液を得た。予熱した水(684部)を添加し、混合物を70℃で200rpmで15分間撹拌した。自然にミクロエマルジョンが形成した。次いで、塊を120分間かけて室温まで冷却すると、ミクロエマルジョンからナノ懸濁液が形成された。酢酸グラチラマー(GA)(10.9部)を水(100部)に溶解し、攪拌機付き反応器に添加した。混合物を30分間撹拌すると、GAは粒子に結合した。ポリビニルピロリドン(PVP k30,11.5部)を水(100部)に溶解し、ナノ懸濁液に添加した、このナノ懸濁液を−20℃で12〜20時間冷凍した後、72時間凍結乾燥させた。うまく形成されたケーキが得られた。凍結乾燥ケーキをQuadro Comil粉砕機において0.8mmスクリーンを用いて粉砕すると、粉末が得られた。この粉末をリン酸緩衝液(0.05M,pH=6.8)中で再構成すると、薬物ナノ懸濁液が得られた。
【0083】
実施例1と同様にして粒子サイズ分布を測定し、非常に類似した結果を得た:
d(0.1)=79±2nm
d(0.5)=121±1nm
d(0.9)=250±16nm
結合%もGA含量分析におけるUV検出を280nmとした以外は実施例1と同様にして測定したところ、結果は実施例1と同様に50±5%(w/w)であった。
【実施例3】
【0084】
酵素分解からの保護
溶液中の遊離GA対ナノ懸濁液中のGA(ナノ粒子に〜50%結合)対ナノ粒子に結合したGA(〜100%結合)の酵素分解をパンクレアチンを用いて調べた。ナノ粒子に結合したGAは、実施例1に記載したようにセファデックスカラムの空隙容量からフラクションを集め、サンプルをプールすることにより作成した。パンクレアチンはトリプシンおよびキモトリプシンからなる膵プロテアーゼの混合物である。
【0085】
パンクレアチン(3.5mg)を0.05M リン酸緩衝液(pH=6.8,10ml)中に溶解させた。GA 35mgとして、遊離GA、ナノ懸濁液中のGAまたは完全結合GAを0.05Mリン酸緩衝液(pH6.8,10ml)中に溶解または懸濁させた。パンクレアチン溶液(1ml)およびGA溶液または懸濁液(1ml)を混合し(GAに対するパンクレアチンの比は1:10に固定した)、37℃で保持した。一定時間後、1N HCl(0.4ml)を添加して酵素反応を中止した。混合物の残留GA含量を実施例1に記載されているHPLC方法により測定した。各時点での残留GA%の結果を表1に示す。
【表1】

【0086】
3分後、遊離GAの56%が残存していたが、ナノ懸濁液は81%の残存を示した。完全結合GAは91%の残存を示した。ナノ懸濁液は15分後56%の残存を示した。これは遊離GAよりも5倍長かった。ナノ懸濁液組成物中のGAの高い安定性は胃腸管のいろいろな部分で吸収できるのを助けるべきである。
【0087】
GAは多発性硬化症状の再発率を有意に低下させ、磁気共鳴映像法で見られるように病巣の範囲を有意に縮小させることが判明している(D.Simpsonら, Glatiramer Acetate: a Review of its use in Relapsing-Remitting Multiple Sclerosis, CNS-Drugs, 16(12):825-850(2002))。GAは4アミノ酸のランダム混合物の合成コポリマーの酢酸塩であり(Physician’s Desk Reference, 56版, p.3306-3310)、その作用メカニズムは十分に解明されていないが、プロ炎症性サイトカインを下方制御し、抗炎症性サイトカインを上方制御し、抗原提示を干渉し(J.Zhangら, A Comparison of Action of Interferon beta and Glatiramer Acetate in the Treatment of Multiple Sclerosis, Clin.Ther., 24(12):1998-2021(2002);A.Millerら, Treatment of Multiple Sclerosis with Copolymer-1(Copaxone): Implicating Mechanism of Th1 to Th2/Th3 Immune Deviation, J.Neurimmunol., 92(1-2):113-121(1998);S.Raghebら, Long-Term Therpy with Glatiramer Acetate in Multiple Sclerosis: Effect of T-cells, Mult.Scler., 7(1):43-47(2001);Y.Hussienら, Glatiramer Acetate and IFN-beta Act on Dendritic Cells in Multiple Sclerosis, J.Neuroimmunol., 121(1-2):102-110(2001))、軸索ミエリンの破壊を少なくすると考えられている。GAを毎日20mg皮下注射するとMS患者では持続的な臨床効果を示した(D.Simpsonら, Glatiramer Acetate: a
Review of its use in Relapsing-Remitting Multiple Sclerosis, CNS-Drugs, 16(12):825-850(2002);K.P.Johnsonら, Sustained Clinical Benefits of Glatiramer Acetate in Relapsing Multiple Sclerosis patients Observed for Six Years. Copolymer-1 Multiple Sclerosis Study Group, Mult.Scler., 6(4):255-266(2000))。GAは使用が認可されている他の免疫調節剤よりも温和な副作用プロフィールを有し、十分に耐性である(D.Simpsonら, Glatiramer Acetate: a Review of its use in Relapsing-Remitting Multiple Sclerosis, CNS-Drugs, 16(12):825-850(2002);D.A.Francis,Glatiramer Acetate, Int.J.Clin.Pract.,55(6):394-398(2001))。GAも他の物質もタンパク質またはペプチド薬物であり、注射でしか投与されない。この薬物をデリバリーするための経口代替法を開発すると、患者にとって好都合であり、患者が好んで選択するという点から治療上有意な改善をもたらす。
【0088】
ヒトに対してペプチドおよびタンパク質薬物を経口デリバリーする問題を解決するためには、薬物を胃腸管での分解から安定化できるのと同時に大きな親水性分子の吸収を向上させることができる方法を発見することが必要であった。本発明者らは、驚くことにペプチドまたはタンパク質薬物を表面に結合させたナノ粒子が上記した両機能を実施できることを知見した。
【実施例4】
【0089】
<ラット実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)における効果>
実験的自己免疫性脳脊髄炎(実験的アレルギー性脳脊髄炎またはEAEとも呼ばれる)は、多発性硬化症(MS)に似た中枢神経系の脱髄疾患である(S.S.Zamvil, L.Steinman, The T lymphocyte in experimental allergic encephalomyelitis, Annu.Rev.Immunol., 8:579-621(1990))。ラットおよびマウスを媒体(例えば、フロイントアジュバント)中のミエリン抗原および各種毒素を用いて免疫化することによりラットおよびマウスにおいてEAEを誘導させる(C.C.Bernard, P.R.Carnegie, Experimental autoimmune encephalomyelitis in mice: immunologic response to mouse spinal cord and myelin basic proteins, J.Immunol., 114(5):1537-40(1975年5月);F.W.Beck, M.W.Whitehouse, C.M.Pearson, Improvements for consistently inducing experimental allergic encephalomyelitis(EAE) in rats: I.without using mycobacerium. II.inoculating encephalitogen into the ear, Proc.Soc.Exp.Biol.Med., 151(3):615-22(1976年3月))、MS治療における薬物の効果を試験するためのモデルとして使用されている。
【0090】
この実験では、目的は、Lewisラットモデルにおいて実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)誘導の臨床兆候を減らすことであった。Lewis(LEW)ラットは、改良完全フロイントアジュバント(CAE)中に乳化させたモルモット脊髄ホモジネート(GPSCH)で誘導させたEAEに対して高感受性である。最も早くは免疫化から10〜12日後に臨床兆候が現れ始め、多くのラットは18〜20日までに回復する。研究中にラットに試験物質を経口投与するとラットにおいてEAEの兆候が減るのは実験設計に記載した保護効果と見なされる。
【0091】
1日目に両後肢にGPSHエマルジョンを皮下注入することにより動物に病気を誘導させた。9日目からEAE臨床兆候についてラットを採点し始めた。治療群は採点者にはブラインドとした。治療またはコントロール治療は1日目で始め、22日目まで毎日投与した。治療薬は経口ガバージュにより表2に示す用量および頻度で投与した。各群10匹のラットとした。
【表2】

【0092】
表3に記載されているようにEAE臨床兆候について動物を毎日評価した。
【表3】

【0093】
以下のパラメーターを計算した。
【0094】
<病気の発病率、死亡率、発病および病気期間の計算>
各群の病気の動物の数を調べた。発症した日、症状の継続日数および死亡した動物の数を記録し、%を計算した。
【0095】
<平均最大スコア(MMS)の計算>
各群の各動物の最大スコアを合計した。各群の平均最大スコアは次のように計算した:
Σ 各ラットの最大スコア/群のラット数。
【0096】
<群平均スコア(GMS)の計算>
群の各動物のスコアを合計し、1日あたりの平均スコアを計算した。群平均スコアは次のように計算した:
Σ 1日あたりの各ラットの総スコア/群のラット数。
【0097】
<結果>
試験動物の発病率についてのデータを表4に示す。
【表4】

【0098】
EAEは水治療コントロール群および蝋−PVPナノ粒子ビヒクルコントロール群の試験動物のすべてにおいて誘導されたのに対して、酢酸グラチラマー溶液経口群では9匹中8匹、酢酸グラチラマーナノ粒子治療群では10匹中9匹で病気が誘導された。研究中1匹の動物しか死亡しなかった。
【0099】
病気の期間および発病日を表5に示す。
【表5】

【0100】
2つの酢酸グラチラマー群(3.2日および3.4日)の病気の平均日数は2つのコントロール群(4.6日および4.2日)よりも短かった。2つのGA群の発病までの平均日数(13.0日および13.1日)は2つのビヒクル群(11.9日および11.8日)に比して遅れた。酢酸グラチラマーナノ粒子治療群では、酢酸グラチラマー溶液経口群に比して発病がわずかに遅れただけでなく、病気の期間もわずかに長かった。この差は多分統計上有意でなかった。
【0101】
表6に各群についての平均1日スコアを集め、病気の重篤度の尺度として用いる。
【表6】

【0102】
症状は11日目に発現し始め、13日目または14日目にピークとなった。病気の平均重篤度はビヒクルのみで治療したとき最高で、水治療で治療した場合には14日目に2.5に達し、蝋−PVPナノ粒子ビヒクルで治療した場合には13日目に2.1に達した。経口酢酸グラチラマーは蝋−PVPビヒクルよりも若干良く、蝋−PVPにコンジュケートさせた酢酸グラチラマー(GA−蝋−PVP)は14日目に最高1.6にしか達しないというかなり改善された結果を与えた。曲線下面積(AUC)は、GA−蝋−PVPの総重篤度は水ネガティブコントロールのほぼ半分であり、ナノ粒子にコンジュゲートされていないGAの経口投与よりも低いことを示している。経口GAの結果はいずれのビヒクル治療群よりも良好であった。これらの結果を図1にグラフで示す。平均群スコアを表7に示す。
【表7】

【0103】
これまでの表に示したように、ここに提示したデータは、各治療群の平均スコアに関して2つの酢酸グラチラマー治療の平均スコア(0.67および0.55)は2つのビヒクルコントロール治療の平均スコア(1.08および0.76)よりも優れており、酢酸グラチラマーナノ粒子が最高の結果を示したことを示している。各群の最大病気重篤度の平均も同様の傾向であり、酢酸グラチラマーナノ粒子が最低の平均スコア(1.9)を有していた。酢酸グラチラマー溶液経口の場合、そのコントロール治療のDDWに比して38%抑制という平均群スコアを示した。酢酸グラチラマーナノ粒子は群平均スコアでコントロールとしてのそのビヒクルに比して28%抑制、コントロールとしてのDDWに比して49%抑制を示した。
【0104】
結論
本実施例は、ラットにおいて酢酸グラチラマー溶液の経口投与またはナノ粒子に結合させた酢酸グラチラマーの経口投与がラットにおいてEAEの病気の重篤度を抑制することを示している。GAに結合したナノ粒子で治療することは多くの病気重篤度パラメーターにおいてより有効であることが判明した。
【実施例5】
【0105】
<GA−蝋−PVPの免疫活性の測定>
酢酸グラチラマー溶液と同様のサイトカインパターンを有する免疫応答を誘発させるGA−蝋−PVPの能力をマウスにおいてエキソビボモデルで試験した。この研究は10日間実施した。マウスには毎日GA標準物質(GA RS,250μg)、GA−蝋−PVP(250μgのGAと同等)、またはネガティブコントロールとしての蝋−PVP(GA−蝋−PVPと同じ粒子容量および重量)を与えた。試験中、各治療群の動物の一部を3日目、6日目および10日目に殺した。脾臓を切除し、一次培養物を作成した。治療の効果を脾細胞のGA RSによるインビトロ活性化により試験した。攻撃に対する細胞の応答がGAに以前に暴露した指標である。GA−蝋−PVPを摂取したマウスの応答とGA RSを摂取したマウスの応答の比較が各治療のGAに対する相対暴露の指標である。T細胞応答は、活性化細胞から分泌されたサイトカインをELISA分析により検出することによりモニターした。IL−2、TGF−β、IL−4、IL−5、IL−10およびIFN−γのレベルを試験した。
【0106】
<結果>
試験中に調べた全てのサイトカインのレベルは、GA RSを摂取したマウスおよびGA−蝋−PVPを摂取したマウスで同等であった。IL−2およびTGF−β測定の結果を以下に示す。図2は、蝋−PVPはIL−2応答を誘発しなかったが、GA−蝋−PVPはGA RSと同程度の応答を誘発したことを示している。図3も、GA RS攻撃に対するTGF−βの分泌の程度がマウスがGA RSまたはGA−蝋−PVPで治療されたかに関わらず同程度であったことを示している。ネガティブコントロールも、このマーカーで試験物質で誘発された応答よりも小さい応答を誘発した。
【0107】
<結論>
GA−蝋−PVP粒子は免疫学的に活性であり、GA−蝋−PVPおよびGA RSのサイトカインパターンは同様である。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】ラット実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)モデルにおける各治療群の1日平均スコア。
【図2】摂取の3、6および10日目の酢酸グラチラマー参照標準(GA RS)および酢酸グラチラマー(GA)組成物で経口治療したマウスの脾細胞からのIL−2分泌のカイネティックス。
【図3】摂取の3、6および10日目のGA RSおよびGA組成物で経口治療したマウスの脾細胞からのTGF−β分泌のカイネティックス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ粒子と、該粒子に静電結合したペプチド、多糖または糖タンパク質の1つと、医薬的に許容され得る担体とを含んでなる医薬組成物。
【請求項2】
前記ナノ粒子が、40〜60℃の融点を有する有機蝋からなる請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記有機蝋が、ステアリン酸;微粒化パルミトステアリン酸グリセリル;微粒化ベヘン酸グリセリル;40〜60℃の融点を有するパラフィン蝋;天然起源の脂肪酸をグリセロールでエステル化することにより得られ、40〜60℃の融点を有するモノ−,ジ−およびトリ−グリセリドの混合物;天然起源の脂肪酸をエステル交換して得られた40〜60℃の融点を有するモノ−,ジ−およびトリ−グリセリドの混合物;または40〜60℃の融点を有するC12−C18脂肪酸のモノ−,ジ−およびトリ−グリセリドの混合物である請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
有機蝋がノニオン性界面活性剤と混合されている、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項5】
有機蝋とノニオン性界面活性剤の混合物が、セチルアルコールとポリソルベート60との混合物、ポリオキシ2ステアリルエーテルとポリソルベート80との混合物、またはモノ−,ジ−およびトリ−グリセリドと、遊離ポリエチレングリコールと、ポリエチレングリコールのモノ−およびジ−脂肪酸エステルとの混合物である請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
ナノ粒子が、イオン性界面活性剤を含む請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項7】
界面活性剤が、荷電ヘッドおよび疎水性テールを有する請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
界面活性剤が、アニオン性界面活性剤である請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
アニオン性界面活性剤が、ラウリル硫酸ナトリウム、コール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウムまたはドキュセートナトリウムである請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
界面活性剤がドキュセートナトリウムである請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
ペプチド、多糖または糖タンパク質が正味正電荷を有し、前記ペプチド、多糖または糖タンパク質がナノ粒子に静電結合するように、ナノ粒子が正味負電荷を有している請求項1〜10の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
ペプチドがナノ粒子に結合しており、前記ペプチド中のリシン基+アルギニン基の総数が、アスパラギン酸基+グルタミン酸基の総数よりも多い請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
ペプチドが酢酸グラチラマーである請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項14】
ペプチドがインターフェロンである請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項15】
多糖がナノ粒子に結合しており、前記多糖がゲンタマイシン、アミカシンまたはトブラマイシンである請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項16】
界面活性剤がカチオン性界面活性剤である請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項17】
カチオン性界面活性剤が臭化セチルトリメチルアンモニウム、クロルヘキシジン塩、臭化ヘキサデシルトリアンモニウム、塩化ドデシルアンモニウムまたはアルキルピリジニウム塩である請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
ペプチド、多糖または糖タンパク質が正味負電荷を有し、前記ペプチド、多糖または糖タンパク質がナノ粒子に静電結合するようにナノ粒子は正味正電荷を有している請求項1〜7または16〜17の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
ペプチドがナノ粒子に結合しており、前記ペプチド中のアスパラギン酸基+グルタミン酸基の総数が、リシン基+アルギニン基よりも多い請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
多糖がナノ粒子に結合しており、前記多糖はヘパリンである請求項18に記載の医薬組成物。
【請求項21】
ナノ粒子に静電結合させたときのペプチド、多糖または糖タンパク質の酵素分解速度が、溶液中のナノ粒子に結合していないときのペプチド、多糖または糖タンパク質の酵素分解速度よりも遅い請求項1〜20の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
i)モノ−,ジ−およびトリ−グリセリドと、遊離ポリエチレングリコールと、ポリエチレングリコールのモノ−およびジ−脂肪酸エステルとの混合物、ii)ドキュセートナトリウム、およびiii)酢酸グラチラマーのナノ粒子を含む医薬組成物。
【請求項23】
前記混合物が組成物の60〜90重量%を占め、ドキュセートナトリウムが組成物の2〜30重量%を占め、酢酸グラチラマーが組成物の3〜20重量%を占める請求項22に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記混合物が組成物の80〜85重量%を占め、ドキュセートナトリウムが組成物の5〜7重量%を占め、酢酸グラチラマーが組成物の8〜15重量%を占める請求項23に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記混合物が20%のモノ−,ジ−およびトリ−グリセリドと、8%の遊離ポリエチレングリコールと、72%のポリエチレングリコールのモノ−およびジ−脂肪酸エステルとを含んでなる請求項22〜24の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項26】
ナノ粒子に静電結合させたときの酢酸グラチラマーの酵素分解速度が、溶液中のナノ粒子に結合していないときの酢酸グラチラマーの酵素分解速度よりも遅い請求項22〜25の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項27】
ナノ粒子が1〜5000nmの平均直径を有する請求項1〜26の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項28】
ナノ粒子が200〜3000nmの平均直径を有する請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
ナノ粒子が500〜2000nmの平均直径を有する請求項28に記載の医薬組成物。
【請求項30】
ナノ粒子が1〜1000nmの平均直径を有する請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項31】
ナノ粒子が1〜500nmの平均直径を有する請求項30に記載の医薬組成物。
【請求項32】
ナノ粒子が10〜3000nmの平均直径を有する請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項33】
ナノ粒子が20〜200nmの平均直径を有する請求項32に記載の医薬組成物。
【請求項34】
ナノ粒子が20〜150nmの平均直径を有する請求項33に記載の医薬組成物。
【請求項35】
ナノ粒子が100〜600nmの平均直径を有する請求項30に記載の医薬組成物。
【請求項36】
ナノ粒子が200〜500nmの平均直径を有する請求項35に記載の医薬組成物。
【請求項37】
請求項1〜36の何れか1項に記載の凍結乾燥医薬組成物。
【請求項38】
i)水および蝋の混合物を50℃以上に加熱することにより自然にミクロエマルジョンを形成することと、
ii)前記ミクロエマルジョンを室温に冷却して、ナノ粒子を形成することと、
iii)前記ナノ粒子をペプチド、多糖または糖タンパク質と接触させて、医薬組成物を形成すること
を含んでなる、請求項1に記載の医薬組成物の製造方法。
【請求項39】
蝋が40〜60℃の融点を有する有機蝋である請求項38に記載の方法。
【請求項40】
蝋が、ステアリン酸;微粒化パルミトステアリン酸グリセリル;微粒化ベヘン酸グリセリル;40〜60℃の融点を有するパラフィン蝋;天然起源の脂肪酸をグリセロールでエステル化することにより得られ、40〜60℃の融点を有するモノ−,ジ−およびトリ−グリセリドの混合物;天然起源の脂肪酸をエステル交換して得られ、40〜60℃の融点を有するモノ−,ジ−およびトリ−グリセリドの混合物;または40〜60℃の融点を有するC12−C18脂肪酸のモノ−,ジ−およびトリ−グリセリドの混合物である請求項39に記載の方法。
【請求項41】
蝋がノニオン性界面活性剤を含む請求項38〜40の何れか1項に記載の方法。
【請求項42】
蝋がイオン性界面活性剤を含む請求項38〜41の何れか1項に記載の方法。
【請求項43】
蝋とノニオン性界面活性剤の混合物が、セチルアルコールとポリソルベート60との混合物、ポリオキシ2ステアリルエーテルとポリソルベート80との混合物、またはモノ−,ジ−およびトリ−グリセリドと、遊離ポリエチレングリコールと、ポリエチレングリコールのモノ−およびジ−脂肪酸エステルとの混合物である請求項41に記載の方法。
【請求項44】
イオン性界面活性剤がアニオン性界面活性剤である、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
アニオン性界面活性剤がラウリル硫酸ナトリウム、コール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、またはドキュセートナトリウムである請求項44に記載の方法。
【請求項46】
アニオン性界面活性剤がドキュセートナトリウムである請求項45に記載の方法。
【請求項47】
イオン性界面活性剤がカチオン性界面活性剤である請求項42に記載の方法。
【請求項48】
カチオン性界面活性剤が、臭化セチルトリメチルアンモニウム、クロルヘキシジン塩、臭化ヘキサデシルトリアンモニウム、塩化ドデシルアンモニウムまたはアルキルピリジニウム塩である請求項47に記載の方法。
【請求項49】
ペプチド、多糖または糖タンパク質が正味正電荷を有し、前記ペプチド、多糖または糖タンパク質がナノ粒子に静電結合するようにナノ粒子は正味負電荷を有している請求項38〜46の何れか1項に記載の方法。
【請求項50】
ペプチドがナノ粒子に結合しており、前記ペプチド中のリシン基+アルギニン基の総数がアスパラギン酸基+グルタミン酸基の総数よりも多い請求項49に記載の方法。
【請求項51】
多糖がナノ粒子に結合しており、前記多糖はゲンタマイシン、アミカシンまたはトブラマイシンである請求項49に記載の方法。
【請求項52】
ペプチドが酢酸グラチラマーである請求項49に記載の方法。
【請求項53】
ペプチドがインターフェロンである請求項49に記載の方法。
【請求項54】
ペプチド、多糖または糖タンパク質が正味負電荷を有し、前記ペプチド、多糖または糖タンパク質がナノ粒子に静電結合するように、ナノ粒子は正味正電荷を有している請求項38〜43または47〜48の何れか1項に記載の方法。
【請求項55】
ペプチドがナノ粒子に結合しており、前記ペプチド中のアスパラギン酸基+グルタミン酸基の総数がリシン基+アルギニン基の総数よりも多い請求項54に記載の方法。
【請求項56】
多糖がナノ粒子に結合しており、前記多糖はヘパリンである請求項54に記載の方法。
【請求項57】
請求項1〜37の何れか1項に記載の医薬組成物を被験者に投与することを含んでなる、前記被験者へのペプチド、多糖または糖タンパク質のデリバリー方法。
【請求項58】
投与が舌下、胃への経口的、小腸への経口的、大腸への経口的、筋肉内、皮下、動脈内または静脈内の投与である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
経口摂取時のペプチド、多糖または糖タンパク質の酵素分解を抑制するように、経口摂取前に、ペプチド、多糖または糖タンパク質をナノ粒子に静電結合させることを含んでなる、動物によるペプチド、多糖または糖タンパク質の経口摂取時におけるペプチド、多糖または糖タンパク質の酵素分解の抑制方法。
【請求項60】
ペプチドが酢酸グラチラマーである、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
ナノ粒子が、i)モノ−,ジ−およびトリ−グリセリドと、遊離ポリエチレングリコールと、ポリエチレングリコールのモノ−およびジ−脂肪酸エステルとの混合物、およびii)ドキュセートナトリウムを含んでなる請求項59に記載の方法。
【請求項62】
ナノ粒子にペプチド、多糖または糖タンパク質を静電結合させるステップが、
i)水および蝋の混合物を50℃以上に加熱することにより自然にミクロエマルジョンを形成することと、
ii)前記ミクロエマルジョンを室温に冷却して、ナノ粒子を形成することと、
iii)前記ナノ粒子をペプチド、多糖または糖タンパク質と接触させて、ナノ粒子にペプチド、多糖または糖タンパク質を静電結合させること
とを含む請求項59に記載の方法。
【請求項63】
ナノ粒子に静電結合させたデオキシリボ核酸分子またはリボ核酸分子を医薬的に許容され得る担体と共に含む医薬組成物を、被験者に経口または舌下投与することを含んでなる、被験者へのデオキシリボ核酸分子またはリボ核酸分子のデリバリー方法。
【請求項64】
ナノ粒子が40〜60℃の融点を有する有機蝋からなる、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
有機蝋がステアリン酸;微粒化パルミトステアリン酸グリセリル;微粒化ベヘン酸グリセリル;40〜60℃の融点を有するパラフィン蝋;天然起源の脂肪酸をグリセロールでエステル化することにより得られ、40〜60℃の融点を有するモノ−,ジ−およびトリ−グリセリドの混合物;天然起源の脂肪酸をエステル交換して得られ、40〜60℃の融点を有するモノ−,ジ−およびトリ−グリセリドの混合物;または40〜60℃の融点を有するC12−C18脂肪酸のモノ−,ジ−およびトリ−グリセリドの混合物である、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
有機蝋がノニオン性界面活性剤と混合される、請求項64に記載の方法。
【請求項67】
有機蝋とノニオン性界面活性剤の混合物が、セチルアルコールとポリソルベート60との混合物、ポリオキシ2ステアリルエーテルとポリソルベート80との混合物、またはモノ−,ジ−およびトリ−グリセリドと、遊離ポリエチレングリコールと、ポリエチレングリコールのモノ−およびジ−脂肪酸エステルとの混合物である請求項66に記載の方法。
【請求項68】
ナノ粒子がカチオン性界面活性剤を含む、請求項63に記載の方法。
【請求項69】
カチオン性界面活性剤が臭化セチルトリメチルアンモニウム、クロルヘキシジン塩、臭化ヘキサデシルトリアンモニウム、塩化ドデシルアンモニウムまたはアルキルピリジニウム塩である、請求項68に記載の方法。
【請求項70】
請求項38〜56の何れか1項に記載の方法により製造される医薬組成物。
【請求項71】
請求項52に記載の方法により製造される医薬組成物。
【請求項72】
医薬的に許容され得る担体と共に、被験者において自己免疫性疾患または炎症性非自己免疫性疾患を治療するのに有効な量の酢酸グラチラマーを含んでなる、請求項13、22〜26、70または71の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項73】
医薬的に許容され得る担体と共に、被験者において多発性硬化症を治療するのに有効な量の酢酸グラチラマーを含んでなる、請求項13、22〜26、70または71の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項74】
自己免疫性疾患または炎症性非自己免疫性疾患に冒された被験者に対して、請求項72に記載の医薬組成物を投与することを含んでなる、前記被験者の治療方法。
【請求項75】
再発性弛張性多発性硬化症に冒された被験者に対して、請求項73に記載の医薬組成物を投与することを含んでなる、前記被験者の治療方法。
【請求項76】
投与が静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、経口、鼻腔内、口腔内、経膣、経腸、眼球内、鞘内、局所、舌下または皮内ルートを介して行われる、請求項73〜75の何れか1項に記載の方法。
【請求項77】
投与が経口的に行われる、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
再発性弛張性多発性硬化症に冒された被験者の治療方法であって、酢酸グラチラマーのナノ粒子組成物を経口投与することを含んでなり、該ナノ粒子組成物中の酢酸グラチラマーの量が、前記被験者における再発性弛張性多発性硬化症の症状を緩和するのに有効である方法。
【請求項79】
自己免疫性疾患の治療に使用するための、酢酸グラチラマーを含む請求項13、22〜26、70または71の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項80】
自己免疫性疾患が多発性硬化症である、請求項79に記載の医薬組成物。
【請求項81】
薬剤として使用するための酢酸グラチラマーを含む、請求項13、22〜26、70または71の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項82】
炎症性非自己免疫性疾患の治療用薬剤の製造における、酢酸グラチラマーを含む請求項13、22〜26、70または71の何れか1項に記載の医薬組成物の使用。
【請求項83】
医薬組成物が静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、経口、鼻腔内、口腔内、経膣、経腸、眼球内、鞘内、局所、舌下または皮内投与のために処方される、請求項79〜81の何れか1項に記載の医薬組成物。
【請求項84】
投与が経口で行われる、請求項83に記載の医薬組成物。
【請求項85】
薬剤が静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、経口、鼻腔内、口腔内、経膣、経腸、眼球内、鞘内、局所、舌下または皮内投与のために処方される、請求項82に記載の使用。
【請求項86】
投与が経口で行われる、請求項85に記載の使用。
【請求項87】
再発性弛張性多発性硬化症の治療に使用するための、酢酸グラチラマーのナノ粒子組成物。
【請求項88】
薬剤中に使用するための、酢酸グラチラマーのナノ粒子組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2007−509981(P2007−509981A)
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538369(P2006−538369)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【国際出願番号】PCT/US2004/036172
【国際公開番号】WO2005/041933
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(501079705)テバ ファーマシューティカル インダストリーズ リミティド (283)
【Fターム(参考)】