説明

薬物伝達用生体適合性高分子ナノ粒子の製造方法およびそれにより製造されたナノ粒子

本発明は、薬物伝達用生体適合性高分子ナノ粒子およびその製造方法に関する。本発明の薬物伝達用生体適合性高分子ナノ粒子は、トリブロック共重合体、ポリエチレングリコール、および薬物を一定の温度で混合して均質な高分子混合体を形成し、室温で固化させ、水溶液上で溶解させることにより製造できる。本発明の方法は、高分子溶融工程を用いて、ポロキサマーナノ粒子を低費用で容易に製造できる。前記ナノ粒子は、薬物伝達用に適した粒子サイズ、および均質な粒度分布を有する。前記ナノ粒子は、二重層構造で構成され、難溶性薬物を含有できる。前記ナノ粒子は、製造工程で有機溶媒を使用しないため、その使用による残留物質がなく安定性が高い。生体内投与の際に薬物を含有したナノ粒子は、前記ナノ粒子を取り囲んだ高分子物質によって標的部位に行く間に溶解されず、生体内の標的部位で安定的に薬物を放出する効果が著しい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高分子溶融工程を用いた薬物伝達用生体適合性高分子ナノ粒子の製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、トリブロック共重合体、ポリエチレングリコール(PEG)、および薬物を一定の温度で混合して均質な高分子混合体を形成し、前記均質な高分子混合体を室温で固化させ、前記固化した高分子混合体を水溶液上で溶解させることにより、薬物伝達用生体的合成高分子ナノ粒子を製造する方法に関する。また、本発明は、体内の標的部位に薬物を放出することができるように前記方法によって製造される、難溶性薬物が封入された薬物伝達用生体的合成高分子ナノ粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
薬学の目覚ましい発達により、様々な高性能の新薬が開発されている。ところが、開発される多くの薬物は、低い溶解度により、臨床使用が極めて制限されている。
【0003】
かかる問題点を克服するために、高分子共重合体を用いた親水性高分子ミセルに関する研究が盛んに行われている(Journal of Controlled Release, 2004, Volume 97, Number 2, pp 249-257, by Yong Woo Cho et al., Journal of Drug Target, 2005, Volume 13, Number 1, pp. 73-80, by Junping Wang et al.)。
【0004】
また、このような試みの一つとして、安定な高分子ミセル組成物を用いた難溶性抗癌剤としてのパクリタキセル(paclitaxel)の可溶化に関する発明が報告された(韓国特許登録第421,451号、日本特開第1990−335267号)。
【0005】
上述した論文と発明では、親水性セグメントおよび疎水性セグメントを有するブロック共重合体から形成された高分子ミセルを薬物担体として用いている。
【0006】
ところが、これらの方法に使用される大部分のブロック高分子は、体内における安全性を認められた状態ではないため、実際の臨床適用に多くの問題点を持っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明は、上述した従来の技術の問題点を解決するためのもので、その目的は、人体無害な生体適合性高分子を用いて難溶性薬物の溶解度を高く維持し、薬物放出率を自由に調節する薬物伝達用生体適合性高分子ナノ粒子の製造方法を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、人体無害な生体適合性高分子を用いて難溶性薬物の溶解度を高く維持し、薬物放出率を自由に調節する薬物伝達用生体適合性高分子ナノ粒子を提供することにある。
【0009】
本発明の別の目的は、難溶性薬物の溶解度を高く維持し、薬物放出率を自由に調節する薬物伝達用生体適合性高分子ナノ粒子集合体の製造方法を提供することにある。
【0010】
本発明の別の目的は、難溶性薬物の溶解度を高く維持し、薬物放出率を自由に調節する薬物伝達用生体適合性高分子ナノ粒子集合体を提供することにある。
【0011】
本発明の別の目的は、環境および生体に親和的である、生体適合性高分子ナノ粒子の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、トリブロック共重合体、ポリエチレングリコール(PEG)、および薬物を一定の温度で混合して均質な高分子混合体を形成する段階と、前記均質な高分子混合体を室温で固化させる段階と、前記固化した高分子混合体を水溶液上で溶解させる段階とを含む、薬物伝達用生体適合性高分子ナノ粒子の製造方法を提供する。
【0013】
また、本発明は、トリブロック共重合体、ポリエチレングリコール(PEG)、および薬物を一定の温度で混合して均質な高分子混合体を形成する段階と、
前記均質な高分子混合体を室温で固化させる段階と、前記固化した高分子混合体を水溶液上で溶解させた後、溶解した高分子混合体を凍結乾燥させてトリブロック重合体二重層を形成する段階と、前記トリブロック重合体二重層を水溶液上で溶解させる段階とを含む、薬物伝達用生体適合性高分子ナノ粒子の製造方法を提供する。
【0014】
また、本発明は、トリブロック共重合体、ポリエチレングリコール(PEG)、および薬物を一定の温度で混合して均質な高分子混合体を形成する段階と、
前記均質な高分子混合体を低温で固化させる段階と、前記固化した高分子混合体を水溶液上で溶解させる段階とを含む、薬物伝達用生体適合性高分子ナノ粒子の製造方法を提供する。
【0015】
また、本発明は、前記方法によって製造される、薬物伝達用生体適合性高分子ナノ粒子を提供する。
【0016】
上記目的は、トリブロック共重合体、ポリエチレングリコール(PEG)、および薬物を一定の温度で混合して均質な高分子混合体を形成する段階と、
前記均質な高分子混合体を冷却および固化させる段階とを含む、薬物伝達用生体適合性高分子ナノ粒子集合体の製造方法を提供することにより達成される。
【0017】
また、この方法によって製造される薬物伝達用生体適合性高分子ナノ粒子を提供する。
【発明の効果】
【0018】
上述したように、本発明に係る高分子溶融工程を用いた薬物伝達用生体適合性高分子ナノ粒子の製造方法およびそのナノ粒子は、所望の粒子サイズおよび粒度分布を有するポロキサマーナノ粒子を簡便且つ低廉に製造することができる。二重層構造を有する、本発明のポロキサマーナノ粒子は、難溶性薬物を含むことができる。また、ポロキサマーナノ粒子は、有機溶媒を含まず、有機溶媒残留物質がないため、体内への使用が安全である。また、体内に投薬された、難溶性薬物が多く含まれた本発明のポロキサマーナノ粒子は、安定的に生体内の標的部位に到達し、調節された速度で薬物を安定に放出する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明によって製造されたナノ粒子の粒度分布グラフである。
【図2】本発明によって製造された薬物伝達用生体適合性高分子ナノ粒子のCryo−TEM(Transmittance electron microscopy)写真である。
【図3】本発明によって製造されたナノ粒子からのパクリタキセル薬物放出形態を示すグラフである。
【図4】本発明によって製造されたナノ粒子からのドセタキセル薬物放出形態を示すグラフである。
【図5】本発明によって製造された薬物伝達用生体適合性高分子ナノ粒子集合体のFE−SEM(Field Emission Scanning electron microscopy)写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、高分子溶融工程を用いた薬物伝達用生体適合性高分子ナノ粒子の製造方法において、ポロキサマー、ポリエチレングリコールおよび難溶性薬物の混合体を加熱して粘性のある溶融混合体を形成し、これを冷却して固化させた後、固化した混合体を蒸留水に含浸させて溶解を誘導し、難溶性薬物が封入された高分子溶融工程を用いた薬物伝達用生体適合性高分子ナノ粒子の製造方法を提供する。
【0021】
具体的に、本発明に係る薬物伝達用生体適合性高分子ナノ粒子の製造方法は、下記化学式1のトリブロック共重合体、下記化学式2のポリエチレングリコール(PEG)、および薬物を一定の温度で混合して均質な高分子混合体を形成する段階と、前記均質な高分子混合体を室温で冷却して固化させる段階と、前記固化した高分子混合体を水溶液上で溶解させてトリブロック共重合体ナノ粒子を製造する段階とを含む。
[化学式1]
HO(CO)(CO)(CO)
式中、bは10またはそれ以上の整数であり、aとcとの和はこれら末端部分が重合体の5〜95重量%、好ましくは20〜90重量%を含むように設定する。
[化学式2]
HO(CO)
式中、aは3〜1000の整数である。
【0022】
また、本発明に係る薬物伝達用生体適合性高分子ナノ粒子の製造方法は、前記化学式1のトリブロック共重合体、前記化学式2のポリエチレングリコール(PEG)、および薬物を一定の温度で混合して均質な高分子混合体を形成する段階と、前記均質な高分子混合体を室温で固化させる段階と、前記固化した高分子混合体を水溶液上で溶解させた後、凍結乾燥させてトリブロック重合体二重層を形成する段階と、前記凍結乾燥したトリブロック重合体二重層を水溶液上で溶解させる段階とを含む。
【0023】
前記化学式1のトリブロック共重合体は、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンのトリブロック共重合体であって、水に溶解する。前記トリブロック共重合体はポロキサマーである。
【0024】
ポロキサマーは、文献に記載された方法で製造することができ、或いは市販される製品を使用することができる。本発明で使用するポロキサマーは1000〜16000の分子量を有し、これらの性質はポリオキシプロピレンブロックとポリオキシエチレンブロックの比率、すなわち化学式1におけるa+cとbの比率に左右される。
【0025】
ポロキサマーは、室温で固体であり、水とエタノールに溶解性を示し、ポロキサマー68、127、188、237、338および407などが市販されている。例えば、ポロキサマー188とは、bが30であり、aとcとの和が約75である化学式1の化合物であって、分子量約8350のポロキサマーを意味する。
【0026】
前記化学式2のポリエチレングリコール(PEG)は、親水性と疎水性を有する両親媒性高分子である。前記ポリエチレングリコールは、低分子量の場合には液体であるが、分子量が大きくなりながら固体になる。前記ポリエチレングリコールはPEG150、300、400、1000、6000、8000、10000、20000、30000および40000などが市販されている。例えば、PEG300とは、分子量300のポリエチレングリコールを意味する。分子量10000超過のポリエチレングリコールはポリエチレンオキシド(PEO)とも呼ぶ。
【0027】
これらの中でも、PEG400は、液体の形態を取っており、各種難溶性薬物の可溶化に頻繁に使用された。特に、米国食品医薬品局(FDA)で人体の静脈注射への使用を許可した物質でもある。
【0028】
前記トリブロック共重合体とポリエチレングリコールの混合比率が2:8〜99:1、好ましくは5:5〜9:1である。トリブロック共重合体(ポロキサマー)とポリエチレングリコール(PEG)の比率が前記範囲を外れると、ナノ粒子製造時の収率が低下し或いは薬物放出が急に増加するという欠点がある。
【0029】
前記一定の温度は40〜70℃、好ましくは50〜60℃である。前記ポロキサマー、ポリエチレングリコールおよび難溶性薬物を一定の温度で加熱すると、溶融された均質液状粘性体としての高分子混合体を得ることができる。
【0030】
このように溶融された均質な液状粘性体を冷却すると、ポロキサマー内でポリエチレングリコールに薬物が溶解されている状態で固化が誘導され、これを水溶液上で溶解すると、薬物封入ナノ粒子が形成される。
前記均質な高分子混合体を固化する段階は、高分子混合体を室温で空気中に放置し、或いは外部冷却器または温度調節可能な反応容器を用いて冷却速度を調節することにより行う。
【0031】
ここで、室温は15℃以上の常温を意味するが、これに限定されない。
【0032】
液状粘性体の冷却速度および温度は、特に限定されず、一般には室温で空気中に放置するときの温度低下速度でも十分であるが、必要に応じて外部冷却器または温度調節可能な反応容器を用いて冷却速度を調節することができる。
【0033】
本発明において、ナノ粒子を形成するために固化された混合物の溶解に必要な時間は、一般に室温で10分〜1時間程度であるが、混合物の量に応じて可変的である。
【0034】
また、本発明は、高分子溶融工程を用いた薬物伝達用生体適合性高分子ナノ粒子の製造方法によって製造された薬物伝達用生体適合性高分子ナノ粒子を提供する。
【0035】
前記薬物伝達用生体適合性高分子ナノ粒子は、難溶性薬物の溶解度の増進および薬物放出挙動の調節が自由なポロキサマーナノ粒子である。
【0036】
前記ナノ粒子の平均粒径は100nm〜10μm、好ましくは50nm〜5μm、さらに好ましくは10nm〜3μmである。
【0037】
前記ナノ粒子の粒度分布は均一である。図1は前記ナノ粒子の粒度分布を粒子分析器(Particle size analyzer)で分析した結果を示す。
【0038】
前記ナノ粒子には薬物または生理活性物質が含まれている。ポロキサマーおよびポリエチレングリコールの溶融混合体に薬物または生理活性物質が含まれている場合、これらはポロキサマーの微小球内に大部分捕獲されてナノ粒子を形成し、これらの捕集率は相当高い。本発明で使用できる薬物または生理活性物質の種類は、55℃付近の温度で実質的に安定な物質であること以外は特に限定されない。
【0039】
本発明によれば、所望の粒子サイズおよび粒度分布を有し、各種薬物および生理活性物質をナノ粒子の形で低廉に製造することができる。
【0040】
前記ナノ粒子は有機溶媒を含まない。すなわち、本発明によって製造されたポロキサマーナノ粒子は、製造工程において有機溶媒を使用しないため、その使用による残留物質がなくて安定性が高い。
【0041】
また、本発明は、前記化学式1のトリブロック共重合体、前記化学式2のポリエチレングリコール(PEG)、および薬物を一定の温度で混合して均質な高分子混合体を形成する段階と、前記均質な高分子混合体を低温で固化する段階と、前記固化した高分子混合体を水溶液上で溶解させてトリブロック共重合体ナノ粒子を製造する段階とを含む、薬物伝達用生体適合性高分子ナノ粒子の製造方法を提供する。
【0042】
前記均質な高分子混合体の冷却は−100℃〜15℃で行う。
【0043】
ここで、前記均質な高分子混合体の冷却を低温で迅速に行って難溶性薬物の溶解度を高く維持し、薬物放出率を自由に調節する。前記冷却を迅速に行うことにより、多量の薬物伝達用生体的合成高分子ナノ粒子を安定的に製造することができる。
【0044】
前記化学式1のトリブロック共重合体、前記化学式2のポリエチレングリコール、および前記トリブロック共重合体と前記ポリエチレングリコールとの混合比は前述の記載を援用する。また、前記一定の温度の範囲も前述の記載を援用する。
【0045】
また、本発明は、高分子溶融工程を用いた薬物伝達用生体適合性高分子ナノ粒子の製造方法によって製造された薬物伝達用生体適合性高分子ナノ粒子を提供する。
【0046】
前記薬物伝達用生体適合性高分子ナノ粒子についての説明は前述の記載を援用する。
【0047】
また、本発明は、前記化学式1のトリブロック共重合体、前記化学式2のポリエチレングリコール(PEG)、および薬物を一定の温度で混合して均質な高分子混合体を形成する段階と、前記均質な高分子混合体を冷却し、固化する段階とを含む、薬物伝達用生体適合性高分子ナノ粒子集合体の製造方法を提供する。
【0048】
本発明は、薬物を含んだ均質な高分子混合体を冷却し、固化して薬物伝達用ナノ粒子集合体を形成し、前記薬物伝達用ナノ粒子集合体をまず投与した後、水溶液の含まれた環境でナノ粒子以外の高分子成分を溶解し、難溶性薬物の溶解度を高く維持することにより、薬物放出率を自由に調節する。
【0049】
前記ナノ粒子集合体を生体内へ投与するとき、高分子物質に取り囲まれたナノ粒子が安定的に生体内の標的部位に到達する。
【0050】
ここで、前記薬物伝達用ナノ粒子集合体は、均質な高分子混合体として冷却されて固化されたもので、ナノ粒子と高分子物質とが混在されているものである。前記薬物伝達用ナノ粒子集合体は、水溶液の含まれた環境で前記高分子物質がまず溶解されて薬物伝達用ナノ粒子が分離された後、前記薬物伝達用ナノ粒子の薬物が放出されるものである。
【0051】
前記化学式1のトリブロック共重合体、前記化学式2のポリエチレングリコール、および前記トリブロック共重合体と前記ポリエチレングリコールの混合比は、前述の記載を援用する。また、前記一定の温度の範囲と前記冷却温度の範囲も前述の記載を援用する。
【0052】
ここで、前記薬物伝達用ナノ粒子集合体の前記冷却温度の範囲は−100℃〜50℃である。
【0053】
また、本発明は、高分子溶融工程を用いた薬物伝達用生体適合性高分子ナノ粒子集合体の製造方法によって製造された薬物伝達用生体適合性高分子ナノ粒子集合体を提供する。
【0054】
前記ナノ粒子集合体には薬物または生理活性物質が混合されている。
【0055】
また、前記ナノ粒子集合体には有機溶媒が含まれていない。
【0056】
前記ナノ粒子集合体のナノ粒子は均一な粒度分布を有する。
【実施例】
【0057】
以下、本発明を下記実施例によって詳細に説明する。ところが、下記実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明を限定するものではない。
【0058】
実施例1
0.8gのポロキサマー(ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレントリブロック共重合体、F−68)および0.2gのポリエチレングリコール400(PEG400)を反応容器に導入し、55℃に加熱した。前記温度で20分間維持した後、反応混合物が完全に溶融されて液状の粘性体になると、加熱を中止し、放置して室温(25℃)まで冷却させた。固まった混合体を蒸留水に溶かし、0.45μmのフィルターで濾過して平均粒径50〜500nmのポロキサマーナノ粒子を得た。
図2はこうして得られたポロキサマーナノ粒子のCryo−TEM(Transmittance electron microscopy)写真を示す。ここで、黒色の結晶として見られるものが前記ポロキサマーナノ粒子である。
【0059】
実施例2
ポロキサマー(F−68)の代わりに、ポリオキシエチレンブロックの長さが増加したポロキサマー(F−127)を使用する以外は、実施例1と同様の手続きを繰返し行った。
こうして得られたポロキサマーナノ粒子は、200〜500nmの平均粒径を有する。
【0060】
実施例3
0.042gの抗癌剤パクリタキセル(Paclitaxel)を添加する以外は、実施例1と同様の手続きを繰返し行った。
パクリタキセルが封入されたポロキサマーナノ粒子を得た。その封入量をHPLC(高速液体クロマトグラフィー)で分析した。パクリタキセルの封入率は98%以上であった。こうして得られたナノ粒子からの薬物放出形態は図3に示した。
【0061】
実施例4
0.042gのドセタキセル(Docetaxel)を添加する以外は、実施例2と同様の手続きを繰返し行った。
ドセタキセルが封入されたポロキサマーナノ粒子を得た。その封入量をHPLC(高速液体クロマトグラフィー)で分析した。ドセタキセルの封入率は98%以上であった。こうして得られたナノ粒子からの薬物放出形態は図4に示した。
【0062】
実施例5
実施例1と同様の手続きによって製造された固化混合体を5mLの1重量%および5重量%のポロキサマー水溶液に添加して溶解させた後、凍結乾燥させてポロキサマー二重層構造のナノ粒子を得た。
【0063】
実施例6
0.042gの抗癌剤としてのパクリタキセルを添加する以外は、実施例5と同様の手続きを繰返し行った。
パクリタセルが封入される二重層構造のポロキサマーナノ粒子を得た。その封入量をHPLC(高速液体クロマトグラフィー)で分析した。パクリタキセルの封入率は98%以上であった。こうして得られたナノ粒子からの薬物放出形態は図3に示した。図3に示すように、二重層の形成により薬物放出率が減少することが分かる。このような方法を用いて薬物放出を調節することができる。
【0064】
実施例7
0.042gのドセタキセルを添加する以外は、実施例5と同様の手続きを繰返し行った。
ドセタキセルが封入されたポロキサマーナノ粒子を得た。その封入量をHPLC(高速液体クロマトグラフィー)で分析した。ドセタキセルの封入率は98%以上であった。
【0065】
実施例8
均質な高分子混合体を−70℃で冷却させた以外は、実施例3と同様の手続きを繰返し行った。
こうして得られたポロキサマーナノ粒子は50〜500nmの平均粒径を有する。
【0066】
実施例9
均質な高分子混合体を0℃で冷却させ、固まった混合体を蒸留水に溶かさずにそのまま得る以外は、実施例3と同様の手続きを繰返し行った。
ポロキサマーナノ粒子集合体を得た。前記ポロキサマーナノ粒子集合体のナノ粒子は、50〜500nmの平均粒径を有する。
図5はこうして得られたポロキサマーナノ粒子集合体のFS−SEM(Field Emission Scanning electron microscopy)写真を示す。ここで、白色結晶がナノ粒子であり、黒い背景が高分子物質であり、ナノ粒子集合体はナノ粒子と高分子物質とが分離されていない状態である。
【0067】
以上、本発明の好適な実施例について説明の目的で開示したが、当業者であれば、添付した請求の範囲に開示された本発明の精神と範囲から逸脱することなく、様々な変形、追加または置換を加え得ることを理解するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1のトリブロック共重合体、下記化学式2のポリエチレングリコール(PEG)、および薬物を一定の温度で混合して均質な高分子混合体を形成する段階と、
前記均質な高分子混合体を室温で固化させる段階と、
前記固化した高分子混合体を水溶液上で溶解させる段階とを含むことを特徴とする、薬物伝達用生体適合性高分子ナノ粒子の製造方法。
[化学式1]
HO(CO)(CO)(CO)
(式中、bは10またはそれ以上の整数であり、aとcとの和はこれら末端部分が重合体の全体重量に対して5〜95重量%、好ましくは20〜90重量%含まれるように設定する。)
[化学式2]
HO(CO)
(式中、aは3〜1000の整数である。)
【請求項2】
請求項1に記載の前記化学式1のトリブロック共重合体、請求項1に記載の前記化学式2のポリエチレングリコール(PEG)、および薬物を一定の温度で混合して均質な高分子混合体を形成する段階と、
前記均質な高分子混合体を室温で固化させる段階と、
前記固化した高分子混合体を水溶液上で溶解させた後、溶解した高分子混合体を凍結乾燥させてトリブロック重合体二重層を形成する段階と、
前記トリブロック重合体二重層を水溶液上で溶解させてトリブロック重合体二重層ナノ粒子を製造する段階とを含むことを特徴とする、薬物伝達用生体適合性高分子ナノ粒子の製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載の前記化学式1のトリブロック共重合体、請求項1に記載の前記化学式2のポリエチレングリコール(PEG)、および薬物を一定の温度で混合して均質な高分子混合体を形成する段階と、
前記均質な高分子混合体を低温で固化させる段階と、
前記固化した高分子混合体を水溶液上で溶解させてトリブロック共重合体ナノ粒子を製造する段階とを含むことを特徴とする、薬物伝達用生体適合性高分子ナノ粒子の製造方法。
【請求項4】
前記トリブロック共重合体は、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン−ポリオキシエチレンの構造を有し、水に溶解することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の薬物伝達用生体適合性高分子ナノ粒子の製造方法。
【請求項5】
前記トリブロック共重合体がポロキサマーであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の薬物伝達用生体適合性高分子ナノ粒子の製造方法。
【請求項6】
前記化学式2のポリエチレングリコールは、親水性と疎水性を有する両親媒性高分子であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の薬物伝達用生体適合性高分子ナノ粒子の製造方法。
【請求項7】
前記トリブロック共重合体と前記ポリエチレングリコールとの混合比が2:8〜99:1であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の薬物伝達用生体適合性高分子ナノ粒子の製造方法。
【請求項8】
前記トリブロック共重合体と前記ポリエチレングリコールとの混合比が5:5〜9:1であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の薬物伝達用生体適合性高分子ナノ粒子の製造方法。
【請求項9】
前記混合が40〜70℃の温度で行われることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の薬物伝達用生体適合性高分子ナノ粒子の製造方法。
【請求項10】
前記混合が50〜60℃の温度で行われることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の薬物伝達用生体適合性高分子ナノ粒子の製造方法。
【請求項11】
前記固化は、前記均質な高分子混合体を室温に放置し、或いは前記均質な高分子混合体を、温度調節可能な反応器で、調節された冷却速度で冷却することにより行うことを特徴とする、請求項1または2に記載の薬物伝達用生体適合性高分子ナノ粒子の製造方法。
【請求項12】
前記均質な高分子混合体の冷却は−100℃〜15℃の温度で行うことを特徴とする、請求項3に記載の薬物伝達用生体適合性高分子ナノ粒子の製造方法。
【請求項13】
請求項1に記載の前記化学式1のトリブロック共重合体、請求項1に記載の前記化学式2のポリエチレングリコール(PEG)、および薬物を一定の温度で混合して均質な高分子混合体を形成する段階と、
前記均質な高分子混合体を冷却および固化させる段階とを含むことを特徴とする、薬物伝達用生体適合性高分子ナノ粒子集合体の製造方法。
【請求項14】
請求項1〜12のいずれか1項の方法によって製造される、薬物伝達用生体適合性高分子ナノ粒子。
【請求項15】
前記生体適合性高分子ナノ粒子の平均粒径が100nm〜10μmであることを特徴とする、請求項14に記載の薬物伝達用生体適合性高分子ナノ粒子。
【請求項16】
前記生体適合性高分子ナノ粒子の平均粒径が50nm〜5μmであることを特徴とする、請求項14に記載の薬物伝達用生体適合性高分子ナノ粒子。
【請求項17】
前記生体適合性高分子ナノ粒子の平均粒径が10nm〜3μmであることを特徴とする、請求項14に記載の薬物伝達用生体適合性高分子ナノ粒子。
【請求項18】
前記ナノ粒子が均一な粒度分布を有することを特徴とする、請求項14に記載の薬物伝達用生体適合性高分子ナノ粒子。
【請求項19】
前記ナノ粒子には薬物または生理活性物質が含まれていることを特徴とする、請求項14に記載の薬物伝達用生体適合性高分子ナノ粒子。
【請求項20】
前記ナノ粒子が有機溶媒を含まないことを特徴とする、請求項14に記載の 薬物伝達用生体適合性高分子ナノ粒子。
【請求項21】
請求項13の方法によって製造される、薬物伝達用生体適合性高分子ナノ粒子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−525137(P2010−525137A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506041(P2010−506041)
【出願日】平成20年4月22日(2008.4.22)
【国際出願番号】PCT/KR2008/002257
【国際公開番号】WO2008/133422
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(509294656)ハンナム ユニバーシティ インスティチュート フォー インダストリー‐アカデミア コーポレイション (1)
【出願人】(509294645)コリア ユナイテッド ファーム.インク (2)
【Fターム(参考)】