説明

薬用モジュール用の可撓性リザーバ

少なくとも2つの薬剤を同時送達する注射方式のために、薬用モジュール(4)に用いる少なくとも1つの可撓性セクションを備えたリザーバ(31)が開示され、ここでは第1の薬剤を含む1番目の送達デバイス(7)は第2の薬剤(2)の単回用量を含む薬用モジュール(4)を受けて、そして両方の薬剤は単一中空ニードル(3)を通して送達される。リザーバ(31)は第1及び第2の薬剤の送達を可能にするのに1つ又はそれ以上のスリット弁(44、45)を含む。薬用モジュール(4)はまた、スリット弁(44、45)を開口するのにリザーバ(31)のハウジング(43)に係合するニードルガード(22)をも含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の具体的な実施態様は、少なくとも2つの薬剤を、単回用量設定機構及び単回投与インターフェイスだけを有するデバイスを用いて、別々のリザーバから送達する医療デバイス及び方法に関する。使用者によって開始される単回送達手順は、好ましくは第2の薬剤の非使用者設定可能用量、及び好ましくは患者に送達予定の第1の薬剤の可変設定用量をもたらす。薬剤は、2つ又はそれ以上のリザーバ、容器又は包装にて利用可能で、各々は独立に(単一薬物化合物)又はプレミックス(共製剤化多剤薬物化合物(co-formulated multiple drug compounds))薬剤を含む。具体的には、本開示は、第2の薬剤の単回用量を含有する可撓性リザーバにかかわる。本リザーバは、1番目の薬物送達デバイスに取り付けられる薬用モジュール中で使用することができる。少なくとも1つのスリットバルブ(特に「ラクダの背」型弁)は、第2の薬剤が可撓性リザーバから投与されることを可能にし得る。治療反応が治療プロファイルの調節及び定義を通して、明確な目標患者群に対して最適化することができる場合にこれは特に有利であり得る。
【背景技術】
【0002】
特定の病状は1つ又はそれ以上の異なる薬剤を用いる処置を必要とする。幾つかの薬物化合物は、最適治療用量を送達するために、互いに特定の関連において送達する必要がある。ここでは、併用療法が望ましいかもしれないが、限定されるものではないが、安定性、不十分な治療効果及び毒性などの理由で単一製剤では可能でない。
【0003】
例えば、ある場合には、長時間作用型インスリンで、及びプログルカゴン遺伝子の転写産物から由来するグルカゴン様ペプチド−1(GLP−1)で糖尿病患者を処置することは有利である。GLP−1は体内に見出され、消化管ホルモンとして腸管L細胞により分泌される。GLP−1は、それ(及びそのアナログ)を糖尿病の潜在的処置法として広範囲な検討の対象とする幾つかの生理学的性質を有する。
【0004】
2つの活性薬剤又は「複数の薬剤」を同時に送達する場合には、多くの潜在的な問題がある。2つの活性薬剤は、製剤の長期、保存寿命貯蔵中に互いに相互作用し得る。それ故、活性成分を別々に保存すること、及び送達、例えば注射、無針注射、ポンプ、又は吸入の時点でそれらをただ併せることは有利である。しかしながら、2つの薬剤を併せる方法は、使用者が確実に反復してそして安全に実施できるように単純かつ簡便である必要がある。
【0005】
更なる問題は、併用療法を構成する各活性薬剤の量及び/又は割合は、各使用者で又はそれらの療法の異なる工程で変化する必要があることである。例えば1つ又はそれ以上の有効成分は、患者を「維持」用量まで徐々に導くのに調節期間(titration period)を必要としてよい。更なる例は、1つの有効成分は調整不能固定用量を必要とする一方で、他の有効成分は患者の症状又は身体状況に応じて変わる場合である。この問題は、これらのプレミックス製剤が医療関係者又は使用者により変えることができない固定比率の活性成分を有する可能性があることから、複数の活性薬剤のプレミックス製剤は好適ではないことを意味する。
【0006】
更なる問題は、多くの使用者が1つの薬物送達システムより多く使用し、又は所要用量併用の必要な正確な計算をする必要があるのに対処することができないために、多種薬剤化合物療法が必要とされる場合に生じる。これは特に機敏性又は認知的困難の使用者に当てはまる。状況次第では、薬剤を投与する前にデバイス及び/又はニードルカニューレのプライミング手順を行うことも必要である。同様に、場合によっては、1つの薬物化合物をバイパスして、別々のリザーバから単一の薬剤だけを投与することが必要となる可能性がある。
【0007】
従って、使用者が行うのに簡単な単回注射又は送達工程において、2つ又はそれ以上の薬物送達のためのデバイス及び方法を提供すべき強い必要性が存在する。上述の問題は、次いで、ただ併せて及び/又は単回送達手順中に患者に送達する2つ又はそれ以上の活性薬剤用の別個の保存容器を提供することにより克服し得る。1つの薬剤の用量設定は、自動的に第2の薬剤の用量を固定又は決定し得る(即ち非使用者設定可能)。その上、この機会は1つ又は両方の薬剤の量を変えるために与えられ得る。例えば、1つの流体量は注射器具の性質を変えることにより変更することができる(例えば使用者可変用量をダイヤルするか又はデバイスの「固定」用量を変化させる)。第2の流体量は、異なる容積及び/又は濃度の第2の活性薬剤を含む各バリアントを備えた種々の第2の薬物含有包装を作製することにより変えることができる。次いで使用者又は医療関係者は、最も適切な第2の包装、又は一連の特殊な処置形態用の異なる包装若しくはその一連の組み合わせを選択し得る。
【0008】
本開示はまた、第2の薬剤の単回用量を含む薬用モジュールで用いる可撓性リザーバを提供する。リザーバの可撓性ハウジングは、プライミング工程中に1番目の薬剤のバイパスを可能にし、及び/又は第2の薬剤の単回用量を投与するのに、少なくとも1つの弁、好ましくはスリット弁を有することにより特徴付けられ得る。弁を開けるために可撓性リザーバハウジングと相互作用するニードルガードが含まれてよい。
【0009】
これらの及び他の利点は本発明の下記のより詳細な記述から明らかになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明により解決されるべき問題は、薬剤の投与が改良されているリザーバ、薬用モジュール及び薬物送達デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
開示されたリザーバ、薬用モジュール及び薬物送達デバイスは、単一薬物送達システム内で多剤薬物化合物の複合組み合わせを可能にし得る。特に、使用者は、1つの単回用量設定機構及び単回投与インターフェイスを通して多種薬物化合物デバイスを設定及び投与することを可能にし得る。本単回用量セッターは、1つの薬剤の単回用量が単回投与インターフェイスを通して設定及び投与されるとき、個々の薬物化合物の事前に定義された組み合わせが送達されるように、デバイスの機構を適宜調節する。
【0012】
個々の薬物化合物間の治療的関係を規定することにより、本送達デバイスは、患者/使用者がデバイスを使用する毎に正確な用量組み合わせを算出し設定する必要がある場合に、多回入力に伴う固有のリスクなしに多剤薬物化合物デバイスから最適な治療的組み合わせ用量を受けることを確実にするのに役立ち得る。薬剤は、その形状を変えやすい力によって作用を受ける場合に、流動することができそして安定した速度で形状を変える、ここでは液体又は気体又は紛体と定義される流体であってよい。あるいは、薬剤の1つは、輸送され、可溶化されるかさもなければ別の流体薬剤と併せて投与される固体であってよい。
【0013】
開示されたリザーバ、薬用モジュール及び薬物送達デバイスは、単回入力及び関連の事前に定義された治療プロファイルが、使用者がデバイスを使用する毎に使用者がそれらの処方量を算出する必要性を除き、そして単回入力が組み合わせ化合物の非常に容易な設定及び投与を可能にするので、機敏性又は認知的困難の使用者にとって特に有利であり得る。
【発明の効果】
【0014】
好ましい実施態様では、多回投与、使用者選択可能デバイスの中に含まれるインスリンなどの基本薬物化合物(master drug compound)は、第2の薬剤の単回投与量を含む単回使用、使用者交換可能モジュール及び単回投与インターフェイスによって使用することが可能である。1番目のデバイスに連結した場合に、第2の化合物は1番目の化合物の投与時にアクティブ化/送達される。本開示は2つの可能な薬物組み合わせとしてインスリン、インスリンアナログ又はインスリン誘導体、及びGLP−1又はGLP−1を特に記載するが、鎮痛薬、ホルモン、βアゴニスト又はコルチコステロイドなどの他の薬物若しくは薬物組み合わせ、又はいずれの上記薬物の組み合わせも本開示で使用することが可能である。
【0015】
用語「インスリン」は、ヒトインスリン又はヒトインスリンアナログ若しくは誘導体を含む、インスリン、インスリンアナログ、インスリン誘導体又はその混合物を意味するものとする。インスリンアナログの例は、限定されるものではなく、Gly(A21)、Arg(B31)、Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3)、Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28)、Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;ヒトインスリン、ここでB28位置のプロリンはAsp、Lys、Leu、Val又はAlaによって置換されてよく、そしてここでB29位置においてLysはProによって置換されてよい;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン又はDes(B30)ヒトインスリンである。インスリン誘導体の例は、限定されるものではなく、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイル−ヒトインスリン;B29−N−パルミトイルヒトインスリン;B28−N−ミリストイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−Y−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−Y−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン及びB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0016】
本明細書で使用される用語「GLP−1」は、限定されるものではなく、エキセナチド(エキセンジン−4(1−39)、配列H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH2)のペプチド、エキセンジン−3、リラグルチド、又はAVE0010(H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Ser−Lys−Lys−Lys−Lys−Lys−Lys−NH2)を含む、GLP−1、GLP−1アナログ、又はその混合物を意味するものとする。
【0017】
βアゴニストの例は、限定されるものではなく、サルブタモール、レボサルブタモール、テルブタリン、ピルブテロール、プロカテロール、メタプロテレノール、フェノテロール、メシル酸ビトルテロール、サルメテロール、ホルモテロール、バンブテロール、クレンブテロール、インダカテロールである。
【0018】
ホルモンは、ゴナドトロピン(ホリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン (ソマトロピン)、デスモプレッシン、テルリプレッシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどの、例えば脳下垂体ホルモン又は視床下部ホルモン又は調節活性ペプチド及びそれらのアンタゴニストである。
【0019】
1つの態様によれば、薬用モジュールで用いるリザーバが提供される。薬用モジュールは、好ましくは解除可能に薬物送達デバイスに取り付けられる。リザーバは可撓性ハウジングを含んでよい。あるいは、リザーバは少なくとも1つの可撓性セクションを有するハウジングを含んでよい。この場合に、ハウジングはより小さい可撓性又は剛性のセクションを含んでもよい。少なくとも部分的に可撓性のハウジングは内部チャンバを画成し得る。リザーバのハウジングは近位端及び遠位端を含んでよい。リザーバは末端キャップを含んでよい。末端キャップはハウジングより小さい可撓性で、特にハウジングの可撓性セクションより小さい可撓性であり得る。末端キャップは剛性であり得る。特に、末端キャップは、ハウジングの少なくとも1つの可撓性セクションを製作するために用いられる材料よりも剛性の材料を用いて構成される。末端キャップはハウジングの近位端に位置してよい。従って、内部チャンバの、好ましくは内部チャンバの近位端は末端キャップで密閉されてよい。リザーバは弁を含んでよい。リザーバ及び弁は一体的に形成され得る。弁はハウジングの少なくとも1つの可撓性セクションに配置されてよい。特に弁周囲部位は可撓性であり得る。弁は可撓性の弁であってよい。弁は可撓性ハウジングの遠位端に適宜位置している。
【0020】
可撓性の又は少なくとも部分的に可撓性のハウジングは、医療グレードのシリコン、熱可塑性エラストマー、又は類似の材料を用いて製作し得るが、ただし構成材料はリザーバに含まれる薬剤と親和性がある。
【0021】
更なる態様は薬用モジュールに関する。薬用モジュールは、好ましくは解除可能に薬物送達デバイスに取り付けられる。該薬物送達デバイスは、第1の薬剤の少なくとも1つの用量、好ましくは複数の用量を保持する一次リザーバを含んでよい。薬用モジュールは第2の薬剤、好ましくは第2の薬剤の単回用量を含んでよい。第2の薬剤は既述のリザーバの内部チャンバに保持され得る。薬用モジュールは薬用ニードルであってよい。薬用モジュールは第1又は遠位ニードルカニューレを含んでよい。薬用モジュールは第2又は近位ニードルカニューレを含んでよい。薬用モジュールのリザーバは、第1と第2のニードルカニューレ間で軸方向に配置されてよい。ニードルカニューレはリザーバとの流体連通を確立するために構成され得る。遠位ニードルカニューレの遠位端は注射部位に適用されるように構成され得る。遠位ニードルカニューレの近位端は、リザーバ、特にリザーバの遠位端に配置されるシール又はセプタムを穿孔するために構成され得る。近位ニードルカニューレの遠位端は、リザーバ、特にリザーバの近位端に配置されるシール又はセプタムを穿孔するために構成され得る。近位ニードルの近位端は、一次リザーバ、特に一次リザーバの遠位端に配置されるシール又はセプタムを穿孔するために構成され得る。薬用モジュール、特に薬用モジュールのリザーバは、特に流体連通が2番目のリザーバと少なくとも1つの第1及び第2のニードルカニューレとの間で確立される前に、薬用モジュールがデバイスに取り付けられるとき、第2の薬剤でプレフィルドされてよい。薬物送達デバイス、特に一次リザーバは、モジュールがデバイスに取り付けられる前に第1の薬剤で少なくとも部分的に満たされてよい。
【0022】
薬物送達デバイスは、薬用モジュールがデバイスに取り付けられる前に、又は薬用モジュールがデバイスから取り外された後に、第1の薬剤の用量を設定し投与するのに好適であり得る。従って、デバイスは単独型デバイスを形成し、例えば薬用モジュールの不存在下でも動作するように構成され得る。このために、ニードルカニューレは、好ましくは取り外し可能にデバイスの遠位端に取り付けられてよい。
【0023】
薬用モジュールはハウジングを含んでよい。ハウジングは遠位端及び近位端を有してよい。ハウジングは薬物送達デバイスへの取り付けのために構成され得る。ハウジング、好ましくは、ハウジングの遠位端はコネクタを有してよい。コネクタは薬物送達デバイスへの取り付けのために構成され得る。既述のリザーバはハウジングの一部分に適宜配置されてよい。薬用モジュールはガード、特にニードルガードを含んでよい。ニードルガードはハウジングに操作可能に連結し得る。ニードルガードは、薬用モジュールの一部分に配置されたニードルカニューレに対して保護するように適合され配置されてよい。ニードルガードは注射部位に適用中に軸方向において動くように構成され得る。ニードルガードは、薬用モジュールの可撓性又は少なくとも部分的に可撓性のハウジングを係合するように構成され得る。
【0024】
リザーバの剛性末端キャップは、第2の薬剤と内部チャンバの外側間に液体シールを備えてよい。剛性末端キャップは弁を含んでよい。該弁はチェック又はダック弁を含んでよい。逆止又はダック弁は内部チャンバと、そして特に第2の薬剤と流体連通し得る。
【0025】
リザーバの遠位端に配置し得る弁はスリット弁、即ちラクダの背型弁であってよい。スリット弁は内部チャンバ、そして特に内部チャンバに保持された第2の薬剤と流体連通し得る。注射中、特に既述のニードルガードが軸方向、特に近位方向に動くとき、例えばニードルガードが後退するとき、このスリット弁は、少なくとも部分的に可撓性のハウジング及びニードルガードの機械的協動に因り開放位置へと押し付けられ、例えば圧搾される(squeezed)。特に、弁の圧搾(squeezing)は、弁が配置されるハウジングの可撓性セクションによって可能にされ得る。特に、ニードルガードの後退時には、ニードルガード及びハウジングの機械的協動、特にニードルガード及びハウジングの可撓性セクションの機械的協動は、リザーバの遠位端に配置されたスリット弁を開くように圧搾し得て、次いで内部チャンバから第2の薬剤が流れ出すことを可能にする。遠位配置弁が開くと、リザーバ内の水圧は近位配置弁の遠位部分、即ち剛性末端キャップの弁で低下する。剛性末端キャップの近位側及び剛性末端キャップの近位部分に加えられた第1の薬剤の圧力は、剛性末端キャップの弁を強制的に開かせ、第1の薬剤の設定用量がリザーバの内部チャンバに流入することを可能にし、次いで第2の薬剤を送り出して強制的に排出させる。
【0026】
実施態様によれば、可撓性又は少なくとも部分的に可撓性のハウジングは好ましくは半径方向の突出部を含む。突出部は可撓性ハウジング外面に配置されてよい。好ましくは半径方向の突出部は弁に操作可能に連結され得る。リザーバの可撓性又は少なくとも部分的に可撓性のハウジングの、特に突出部の機械的協動、及びニードルガードはリザーバの弁の開口を可能にし得る。
【0027】
実施態様によれば、リザーバはバイパスチャンネルを含む。バイパスチャンネルは薬用モジュールのリザーバをバイパスする流体経路を含んでよい。バイパスチャンネルは可撓性又は少なくとも部分的に可撓性のハウジングの近位端を遠位端に連結し得る。バイパスチャンネルは好ましくは可撓性又は少なくとも部分的に可撓性のハウジングの一体部分として形成される。しかしながら、バイパスチャンネルは適宜内部チャンバと流体連通しているわけではない。バイパスチャンネルは弁を含んでよい。弁はバイパスチャンネルの遠位端に配置されてよい。あるいは、弁はバイパスチャンネルの近位端に配置されてよい。弁は、ハウジングの少なくとも1つの可撓性セクション又は更なる可撓性セクションに配置されてよい。好ましくは、弁は上述のように、好ましくは内部チャンバの遠位端に配置されたスリット弁に設計において類似しているスリット弁である。バイパスチャンネルの近位端はキャップで密閉されていなくてよい。従って、バイパスチャンネルは、薬用モジュールが注射器具に取り付けられる場合に、一次リザーバに保持された第1の薬剤の流体流に対して開放されていてよい。突出部はバイパスチャンネルの外側面に位置してよい。突出部はバイパス弁に操作可能に連結され得る。突出部は、可撓性又は少なくとも部分的に可撓性のハウジングの既述突出部よりも薬用モジュールの遠位端に近接して配置されてよい。突出部は、薬用モジュールが薬物送達デバイスに連結される場合に、ニードルガードと機械的協動をするように、好ましくは係合するように構成され得る。本係合はバイパスチャンネルのスリット弁を開かせ得る。この弁の位置で、ニードルガードは伸長した例えば遠位位置において、そしてモジュールは薬物送達デバイスに取り付けられ、薬用モジュールは第1の薬剤でプライミングすることができる。特に、第1の薬剤は、開かれたバイパス弁に因りバイパスチャンネルを通して流れ得る。内部チャンバの遠位端に配置された末端キャップ弁及びスリット弁は閉じられるので、第1の薬剤は、モジュールのプライミングのために、可撓性又は少なくとも部分的に可撓性のハウジングの内部チャンバを通して流れることが防止される。
【0028】
注射のために、ニードルガードはモジュールハウジングへ後退し得て、例えばニードルガードは近位方向に動き得る。従って、ニードルガードはバイパスチャンネルで突出部をもはや係合し得ず、従ってバイパススリット弁を閉鎖することが可能となる。ニードルガードが更に後退するときに、好ましくは軸方向に、特に近位方向に配置される可撓性又は少なくとも部分的に可撓性のハウジングで、それは他の突出部と機械的協働をして特に係合し得て、薬用モジュールが上述のようにデバイスに取り付けられる場合には、ニードルガードが係合する突出部から相殺される。従って、可撓性又は少なくとも部分的に可撓性のハウジングの遠位端における内部チャンバ弁は開かれ得る。一次リザーバ及び薬用モジュールのリザーバの流体連通、それ故に可撓性又は少なくとも部分的に可撓性のハウジング中に含まれる第2の薬剤の投与が上述のように可能となり得る。
【0029】
特に、後退中、例えば近位方向における動き中に、ニードルガードは、可撓性又は少なくとも部分的に可撓性のハウジングの外側に位置する前記突出部を係合し得る。本係合は突出部に力を及ぼし得て、順に可撓性ハウジングが撓み又は変形するようにし得て、それ故に可撓性ハウジングの遠位端に好ましくは配置されるスリット弁を開く。突出物からのガードの係合解除は力を除き得る。従って、ニードルガード及び突出部の係合解除後に、可撓性又は少なくとも部分的に可撓性のハウジングは弁を閉鎖させることによりその元の形状に戻し得る。
【0030】
実施態様によれば、リザーバの内部チャンバは、第2の薬剤で、好ましくは第2の薬剤の単回用量でプレフィルドされる。第2の薬剤はGLP−1又はインスリンとGLP−1のプレミックスなどの液状製剤であってよい。
【0031】
既述リザーバを保持する薬用モジュールは上述のハウジングを含む。ハウジングは複数部材を含むことができる。好ましくは、ハウジングは、薬用モジュールにおいて安定に取り付けられ、そしてニードルガード後退中に内部チャンバと流体連通しているように構成された2つのニードルカニューレを含む。薬用モジュールが先ず薬物送達デバイスに取り付けられるとき、薬用モジュール中のニードルガードは遠位に強制又は付勢され得て、リザーバの可撓性又は少なくとも部分的に可撓性のハウジングの突出部、例えば可撓性又は少なくとも部分的に可撓性のハウジングの遠位端により近接して配置された突出部、例えばバイパスチャンネルの外面に配置された突出部の1つを係合させる。従って、流体バイパスチャンネルの底部又は遠位端のバイパススリット弁は開かれ得る。本流体流路又はチャンネルは、第1の/1番目の薬剤の送達/プライミングにおいて送達デバイスのプライミング機能に使用し得る。本バイパスは、1番目の薬剤が、内部チャンバ内に含まれる薬剤との相互作用なしに投与インターフェイスに流れることができるように、デザインされた多数の手段によって達成することができる。好ましくは、バイパスは、可撓性又は少なくとも部分的に可撓性のハウジングの一部として、例えば、第1の薬剤が近位ニードルカニューレを通して一次リザーバからバイパスへ流入し、次いでスリット弁を通してそして最後に遠位又は注射針から流出するように、リザーバの外壁を流れ下る管又は導管として構成される。
【0032】
ニードルガードの設計は本発明に決定的なものではないが、これは好ましくはハウジングに操作可能に連結され、そして注射部位への適用中に軸方向に動くように構成される。ニードルガードは第2の薬剤に対してスリット弁の開口を調節するように機能し得る。ニードルガードの後退は、使用者が注射しているシステムを「識別する(tell)」特徴的な機能であり得る。ガードはまた、内側ハウジングに取り付けられる注射針のこれ以上の使用を防止し得るガードロックを含んでよい。ガードロックの設計は本開示に決定的なものではないが、しかしながら、好ましい方法は、モジュール内に含まれる回転スリーブ又は可動若しくは滑りロックの使用を含む。可動ロックの設計は、ニードルガードが近位方向において軸方向に動く場合にそれが可動ロックを係合し(持ち上げ)、そして次にガードが方向を反転させる(遠位方向に動く)とき、可動ロックをそれによって運ぶように構成されたものであり得る。ガードがその逆方向の動きを終了した時点で、可動ロックはガードに係合したままの間に薬用モジュールの非可動部分に固定又はロックされるようになる。これはガードがいずれの方向においても更なる軸方向運動をしないようにし得る。他のロック機構も使用することができ、そしてまたデバイスの単回、二回又は多回使用も可能であり得る。
【0033】
更なる態様は薬物送達デバイスに関する。薬物送達デバイスは既述の薬用モジュールを含んでよい。薬物送達デバイスは一次リザーバ、例えばカートリッジを含んでよい。一次リザーバは、更なる薬剤の少なくとも1つの用量、好ましくは複数の用量を保持し得る。
【0034】
ニードルガードが初めて後退する前に、使用者は、一次リザーバ中に保持された更なる、例えば第1の薬剤だけを用いて、可撓性又は少なくとも部分的に可撓性のハウジングの内部に保持された第2の薬剤を投与することなしに薬物送達デバイスをプライミングすることができる。特に、薬用モジュールがデバイスに連結され、そしてニードルガードが遠位方向に伸びるとき、バイパス弁及びニードルガードは、バイパス弁が第1の薬剤を投与するために開くように機械的協動をし得る。プライミング後、使用者がまだ第1の薬剤を設定していない場合、使用者は、単回用量セッターを用いて薬物送達デバイスの一次リザーバに含まれる第1の薬剤の用量を設定し得る。使用者が用量ボタンを起動するとき、一次リザーバからの第1の薬剤の設定用量は、遠位方向に動くようにし得て、そして単回投与インターフェイス、好ましくは中空注射針を通して薬用モジュールに含まれるリザーバから、第2の薬剤の非使用者設定用量(例えば単回用量)の実質的にすべてを同時に行わせ得る。送達手順の完了時に、実質的にすべての第2の薬剤が、並びに第1の薬剤の選択用量が単回投与インターフェイスを通して排出される。「実質的にすべて」とは少なくとも約80%の第2の薬剤が薬物送達デバイスから排出され、好ましくは少なくとも約90%が排出されることを意味する。注射の完了時に、ニードルガードは、第1の薬剤だけの最後の第2、又は更なる多回注射を可能にするために、薬用モジュールが使用者アクティブ化アンロック又はガードロックオーバオライド機構(override features)を有さなければ、既述のロック機構を通して第2の送達又は挿入を防止し得る。
【0035】
不連続ユニット又は混合ユニットのような化合物の組み合わせは、一体ニードルを介して本体に送達され得る。これは、使用者の視点から見て、標準針を使用する現在利用できる注射器具に非常に厳密に適合する方法で、達成し得る併用薬物注射方式を提供し得る。
【0036】
好ましい実施態様によれば、薬用モジュールに用いるリザーバが提供され、内部チャンバを画成する可撓性ハウジングを含み、そして近位端及び遠位端、近位端に位置する剛性末端キャップ及び遠位端に位置する弁を有する。
【0037】
好ましい実施態様によれば、薬用モジュールに用いるリザーバが提供され、ここで薬用モジュールは薬物送達デバイスに取り付けられる。リザーバは、少なくとも1つの可撓性セクションを含むハウジング、内部チャンバを画成しそして近位端及び遠位端を有するハウジングを含む。リザーバは更に、近位端に位置する剛性末端キャップ及び可撓性セクションに位置する弁を含む。
【0038】
好ましい実施態様によれば、薬用モジュールは既述のリザーバを含んで提供される。薬用モジュールは薬物送達デバイスに取り付けられ、薬物送達デバイスは第1の薬物の一次リザーバを含み、そして薬用モジュールは、リザーバの可撓性又は少なくとも部分的に可撓性のハウジングによって画成される内部チャンバに保持される第2の薬剤を含む。
【0039】
好ましい実施態様によれば、薬物送達デバイスに取り付けられる薬用モジュールが提供される。薬用モジュールは近位端及び遠位端を有するハウジングを含み、ここでは近位端は薬物送達デバイスに取り付け用に構成されるコネクタを有する。薬用モジュールはハウジングの一部分にリザーバを含み、リザーバは単回用量の薬剤を含み、可撓性又は少なくとも部分的に可撓性のハウジングは内部チャンバを画成し、そして近位端及び遠位端、近位端に位置する剛性末端キャップ及び遠位端に位置するスリット弁を有する。薬用モジュールは、ハウジングに操作可能に連結され、そして注射部位に適用中に軸方向に動き、及び弁を開けるために可撓性又は少なくとも部分的に可撓性のハウジングを係合するように構成される、ニードルガードを含む。
【0040】
本開示の薬用モジュールは、適切な適合性インターフェイスを備えたいずれの薬物送達デバイスとともに使用するために設計することができる。しかしながら、専用の又はコード化機構(coded features)の利用を通して1つの限定された1番目の薬物送達デバイス(又はデバイス群)にその使用を制限するように、薬用モジュールを設計することが好ましいといえる。場合によっては、薬用モジュールは1つの薬物送達デバイスに専用であること、一方でデバイスへの標準薬物投与インターフェイスの取り付けも可能にすることを保証することは有利となり得る。これは使用者がモジュールを取り付ける場合に併用療法を送達することを許容し得て、しかし、限定されるものではないが、1番目の化合物の用量分割又は補充などの状況において標準薬物投与インターフェイスを通して1番目の化合物の送達をも独立して許容し得る。
【0041】
薬用モジュールは、必要な場合、特に調節期間が特定の薬物で必要になる場合に、投与計画を特注する(tailor)ことが適宜可能となる。薬用モジュールは、限定されるものではないが、患者に調節を容易にする特定の順序で供給された薬用モジュールを使用するように指示することができるように、機構又はグラフィックス、付番等の美的設計などの顕著な識別機構による調節レベルの数で供給することができる。あるいは、処方医師は患者に「レベル1」調節薬用モジュールの数を提供してよく、次いでこれらが終了した場合、医師は次のレベルを処方することができる。この調節プログラムの主たる利点は1番目のデバイスが終始変わらないことである。
【0042】
好ましい実施態様では、1番目の薬物送達デバイスは1回以上使用され、従って多回使用性である。しかしながら、薬物送達デバイスは単回使用使い捨てデバイスであってもよい。そのようなデバイスは1番目の薬物化合物の交換可能なリザーバを有しても有さなくてもよいが、本開示は両方のケースに対して同等に適用可能である。また既に標準薬物送達デバイスを用いている患者に対してオンオフ追加薬物として処方することができる、種々の状況に対して一連の異なる薬用モジュールを有することも可能である。患者が既使用の薬用モジュールを再使用しようとするならば、薬物投与又は挿入後に起動し得るロッキングニードルガードはこの状況を患者に警告することができる。使用者に警告する他の手段は下記の幾つか(又は全部)を含んでよい:
一度、モジュールが使用され取り外されたら、1番目の薬物送達デバイスへの薬用モジュールの再取り付けの物理的阻止。
一度、それが使用されたら、薬物投与インターフェイスを通した以後の液体流の物理的/水圧的阻止。
1番目の薬物送達デバイスの用量セッター及び/又は用量ボタンの物理的ロック。
視覚的警告(一度、挿入及び/又は流体流が生じたら、モジュールに関する指示窓内の例えば色及び/又は匂い及び/又は警告文章/表示物(indicia)の変化)。
触覚フィードバック(使用後のモジュールハブの外面における触覚特性の有無)。
【0043】
本実施態様の更なる特徴は、両方の薬剤が1つの注射針を介してそして1つの注射工程において送達されることであってよい。これは2つの別個の注射剤を投与するのと比較して、使用者工程低減の観点から使用者に簡便な利点を提供する。この利便性はまた、特に注射を嫌がり又は認知的若しくは機敏性困難な使用者に、処方された療法のコンプライアンス改善をもたらす。
【0044】
本開示はまた、別々の1番目の包装に保存された2つの薬剤を送達する方法をも網羅する。薬剤はいずれも液体であってよく、又はあるいは1つ又はそれ以上の薬剤は粉末、懸濁液又はスラリーであってよい。1つの実施態様では、薬用モジュールは、それが薬用モジュールを通して注射されるように、1番目の薬剤に溶解又は同伴される粉末薬剤を充填することができる。
【0045】
本開示の種々の態様のこれら並びに他の利点は、添付図面を適切に参照して下記の詳細な説明を読むことにより当業者に明らかになるものである。
【0046】
本発明の範囲は請求項の内容によって規定される。本発明は特定の実施態様に限定されるものではなく、種々の実施態様のいずれものエレメントの組み合わせを含む。その上、本発明は請求項のいずれもの組み合わせ及び請求項により開示されるいずれかの機構の組み合わせを含む。
【0047】
代表的な実施態様は以下において図面を参照して本明細書に記載される:
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】1つの可能な薬物送達デバイスを図示する。
【図2】2つのラクダの背型弁を含む可撓性リザーバを有する薬用モジュールの実施態様の断面図を図示する。
【図3】可撓性リザーバの拡大透視図を図示する。
【図4】可撓性リザーバの遠位端の拡大透視図を図示する。
【図5】ニードルガード及びリザーバがバイパス又はプライミングモードになっている、可撓性リザーバとニードルガードの相互作用の拡大透視図を図示する。
【図6】剛性キャップ部材及び一体ダック弁を説明する可撓性リザーバの近位端の拡大断面透視図を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0049】
開示される薬用モジュールの具体的実施態様は、第2の薬物化合物(薬剤)の固定所定用量及び1番目又は第1の薬物化合物の可変用量を、単一出力又は薬物投与インターフェイスを通して投与することができる。使用者による1番目の薬剤の用量設定は、好ましくはリザーバ又は密閉カプセルに含まれる単回用量である、第2の薬剤の固定用量を自動的に決定する。好ましい実施態様では、薬物投与インターフェイスはニードルカニューレ(中空針)である。図1は、薬用モジュール4(図2参照)が、デバイス7の遠位端32に配置される連結手段9を介して取り付けることができる、薬物送達デバイス7の1つの実例を説明する。各薬用モジュール4は好ましくは内蔵型であって、そしてデバイス7の遠位端32で取り付け手段9に適合する取り付け手段8を有する、密閉及び滅菌使い捨てモジュールとして提供される。示されてはいないが、薬用モジュール4は保護及び滅菌容器に含まれ製造業者によって供給することができ、ここでは使用者は滅菌薬用モジュールに接近するために容器自体のシールを剥ぐか又は裂いて開封し得る。ある場合には、薬用モジュール4の各端部に対して2つ又はそれ以上のシールを備えることが望ましいといえるが、滅菌供給のその他の手段もまた同等に適用可能で許容範囲である。
【0050】
いずれの公知の取り付け手段8も、ねじ山、スナップロック、スナップフィット、ルアーロック、バヨネット、スナップリング、キードスロット(keyed slot)、及びそのような連結材の組み合わせなどのあらゆるタイプの恒久的及び取り外し可能な連結手段を含み、薬用モジュール4を選択薬物送達デバイス7に取り付けるのに使用することができる。図2は、薬物送達デバイス7の遠位端32のねじ山9を係合し得るねじとして取り付け手段8を図示する。図2〜5で示される実施態様は、第2の薬剤2を可撓性リザーバ31内に完全に含まれている単回用量として利用できる。可撓性内蔵型リザーバ又はカプセル31の使用は、第2の薬剤2と薬用モジュール4の構成において使用される材料、具体的にハウジング10又は薬用モジュール4の構成において使用されるいかなる他の部材間で、材料不適合性のリスクを最小化し得る。
【0051】
投与操作の終わりに可撓性カプセル/リザーバ31に残り得る、再循環及び/又は停滞域によってもたらされる第2の薬剤2の残留量を最小化するために、所定の位置にある又はカプセル31内に含まれる流速分布システムを有することが好ましい(示されていない)。好ましくは、流速分布システムの設計は、少なくとも約80%の第2の薬剤2が針3の遠位端を通してカプセル31から排出されることを確実にし得る。最も好ましくは、少なくとも約90%が排出され得ることである。理想的には、カプセル31を通して一次リザーバからの第1の又は1番目の薬剤の変位が、2つの薬剤の実質的混合なしに第2の薬剤2を変位させ得ることである。
【0052】
薬用モジュール4は2つのニードルカニューレ3、5を含む。第1のニードルカニューレ3は、モジュール4の遠位端に配置される。第2のニードルカニューレ5は第1のニードルカニューレ3から近位に配置される。薬用モジュールのリザーバ又はカプセル31はニードルカニューレ3、5間で軸方向に配置される。第1及び第2のニードルカニューレ3、5はカプセル31との流体連通を確立するように位置する。
【0053】
多目的デバイス7への薬用モジュール4の取り付けは、薬用モジュール4の近位端に位置する係合ニードル5が、多目的デバイス7の一次リザーバ又はカートリッジ14の遠位端を密閉するセプタム1に貫通するようにさせる。従って、カートリッジ14は、モジュール4がデバイス7に取り付けられ前にデバイス7に導入される。デバイス7のカートリッジ14は、それがデバイス7に取り付けられ前に第1の薬剤で満たされる。係合ニードル5がカートリッジ14のセプタム1を通して通過すると、流体連結が第1又は1番目の薬剤と針5との間で行われる。
【0054】
薬用モジュール4を薬物送達デバイス7に取り付ける前に、スリーブ15は、バネ11などの付勢部材によって近位方向に付勢され、これはまたニードルガード22を図2に示すように完全伸長した、例えば遠位の第1の始動位置に付勢し得る。薬用モジュール4のカプセル31は、それがデバイス7に取り付けられ前に2番目の薬剤でプレフィルドされる。薬用モジュール4が薬物送達デバイス7のカートリッジホルダ又はコネクタ9に取り付けられる場合に、スリーブ15は遠位に動き、そしてニードルガード22上にバネ11を通して力を及ぼす。これは、ニードルガード22上に、好ましくはニードルガード22の内面に位置する1つ又はそれ以上の突出部40が、カプセル31(図5参照)の可撓性ハウジング43の外側に位置する1つ又はそれ以上の突出部41を係合するように、ニードルガード22を遠位に動くようにさせる。この係合が、バイパスチャンネル21の遠位端でバイパススリット弁44を開くように圧搾させるが、これはリザーバ31の、特にリザーバ31のハウジング43の可撓性の作用である。
【0055】
この時点で、システムは、用量セッター12(図1参照)を使用しそして用量ボタン13を押して1番目の薬剤の低用量を設定することによりプライミングすることができる。この1番目の薬剤の低設定用量はリザーバ14から流れ出て、近位ニードルカニューレ5を通して流出し、そしてバイパスチャンネル21のオープントップ23に流入し得る。プライミング薬剤はバイパスチャンネル21を流下し、開放バイパススリット弁44を通して流出し、ニードルカニューレ3を通して投与し得る。プライミング薬剤は、内部チャンバ30の近位端が剛性キャップ29を含むことから、リザーバ31中の第2の薬剤2と混合しない。剛性キャップ29は逆止弁(即ち「ダック」弁)28を含み、スリット弁45が閉鎖位置(図6参照)にあることから、これがプライミング薬剤の流れを阻止する。加えて、可撓性ハウジング43は、締まり嵌め18を通して剛性部材29を受け入れるショルダを有することができる。ショルダ17は、剛性部材29の内部チャンバ30への挿入高さを制限するように構成することができる。プライミング流体は、それが最小抵抗のチャンネルであるので、バイパスチャンネル21を流下する。流体はその出口が閉鎖されるので内部チャンバ31へ流入するところがない。
【0056】
プライミング後に、用量は普通のやり方で設定することができる(例えば、単回用量だけが可能な場合、ユニットの適切な番号をダイヤルアウトすること又はデバイス7を傾けることによって)。次いで薬剤の投与は、ニードルガード22を注射部位に適用すること、そしてデバイス7上の用量ボタン13のアクティブ化を介して薬剤を皮下注射することによって達成される。用量ボタン13は、用量セッター12によって設定された第1の薬剤の用量をデバイス7の遠位端32に向いて動かす、いずれのトリガー機構であってもよい。好ましい実施態様では、用量ボタン13は、第1の薬剤の一次リザーバ14においてピストンを係合するスピンドルに操作可能に連結される。注射部位への適合は、ニードルガード22を薬用モジュール4のハウジング10へ後退させる。ニードルガード又は安全シールド22は、偶発的針刺しを防止し及び/又は針恐怖症に罹る使用者が経験する不安を低減し得る如何なる設計であってもよい。安全シールドの正確な設計は本開示に決定的なものではないが、しかしながら下記に開示される好ましい設計は、薬用モジュール4が、第2の又は多回の更なる注射に対して使用者無視ボタンによりニードルガード22をロック解除するように構成されなければ、針3の単回使用だけを許容するものである。
【0057】
ニードルガード22の後退は、ニードルガード22で1つ又はそれ以上の突出部50が、カプセル31の可撓性ハウジング43で1つ又はそれ以上の突出部42を係合するようにさせる。本係合は、スリット弁45を開くように圧搾し、これはハウジング43の可撓性によって可能となり、第2の薬剤2が内部チャンバ30から流出しそして出力ニードル3を通して投与できるようにする。スリット弁45が開くと、カプセル31内の水圧が逆止弁28の遠位部分で減少する。剛性部材又は末端キャップ29の近位側及び逆止弁28の近位部分にかかる1番目の薬剤の圧力は、1番目の薬剤の設定用量がカプセル31の内部チャンバ30へ流入できるように逆止弁28を強制的に開くようにさせることができ、このようにして第2の薬剤2を駆出又は強制排出させる。ある場合には、バイパスチャンネル21への入口にチェックバルブ28を有することが望ましいといえる。これは、バイパスチャンネル21の端部及び内部チャンバ30の端部においてスリット弁44、45の開口によって制御されることを可能にし得る。これは、ニードルガード22が作動している場合には、流体は剛性部材29に力をかける前に先ずバイパスチャンネル21を満たすという問題をいくらか解決する。
【0058】
いずれの上述の実施態様においても、第2の薬剤2は、粉末固体状態で、第2のリザーバ若しくはカプセル31内に含まれるいずれもの液体状態であるか、又は薬物投与インターフェイスの内側面にコーティングされてよい。薬剤2の高濃度の固形は低濃度を有する液体よりも小さい容積を占める利点を有する。これは順に薬用モジュール4の目減り量を減らす。付加的な利点は、薬剤2の固形が、薬剤2の液体状態よりも第2のリザーバ31に密閉するのに潜在的に容易であることである。デバイス7は、投与中に第1の薬剤によって溶解される第2の薬剤2での好ましい実施態様と同じように使用し得る。
【0059】
薬用モジュール4内のリザーバカプセル31に含まれる第2の薬剤2の、薬剤の投与中における1番目の薬剤への拡散を最小化するために、流速分布システムを使用し得る。そのようなシステムはまた、システムからの第2の薬剤2の効率的排出を確実にし、そして残留容積を大幅に最小化する。流速分布システムの1つの可能な実施態様は、カプセル31に位置する環状ピンとして構成され、そして第2の薬剤2が2つ又はそれ以上の支持リブの形状及び位置によって規定される流路を満たすように構成される流量ディストリビュータであってよい。流量ディストリビュータ(環状ピン)は、1番目の/第1及び第2の薬剤に適合性であるいずれの材料からも作ることができる。好ましい材料は、多回投与薬剤カートリッジに見出されるセプタム又はピストン(栓)を製作するのに通常使用されるものであってよいが、長期保存中に薬剤に適合性するいずれの材料も同等に適用可能である。流路の形状は、支持リブの寸法及び数を変えることにより薬剤のプラグ流に対して最適化することができる。流量ディストリビュータとバイアルの壁間に形成される環の断面積は相対的に小さく保たれる必要がある。第2の薬剤2を貯蔵することが可能な容積は、カプセル31の内容積−流量ディストリビュータの容積に等しくてよい。従って、流量ディストリビュータの容積がカプセル31の内容積よりもわずかに小さい場合、第2の薬剤2が占める小容積が残される。それ故、カプセル31及び流量ディストリビュータの両方のスケールは大きくなり得る一方で少容積の薬剤2を貯蔵する。この更なる利点は、薬剤2に利用可能な容積が流量ディストリビュータとそのハウジング間の容積の差によって規定されるので、外部カプセル形状は薬剤2の容積によって決定されない。結果として第2の薬剤2の小容積(例えば50μl)では、カプセル31は取り扱い、輸送、製作、充填及びアセンブリの許容サイズであり得る。
【0060】
上述の実施態様の薬物送達デバイス7と薬用モジュール4間の連結又は取り付けは、コネクタ、止め具、スプライン、リブ、溝、などの付加機構(示されていない)を、及び特殊な薬用モジュール4が適合している薬物送達デバイス7にのみ取り付けられることを確実にする同様の設計機構を含んでよい。そのような付加機構は、不適切薬用モジュール4の非適合注射器具への挿入を防止し得る。
【0061】
薬用モジュール4の形状は、流体リザーバを画成するのに又は第2の薬剤2の別々の内蔵型リザーバ31を含むのに、そして1つ又はそれ以上のニードルカニューレ3、5を取り付けるのに、好適な円筒体又は他の幾何学的形状であってよい。
【0062】
好ましくは、薬用モジュール4は、無菌性を維持するために密閉されている独立型及び分離型デバイスとして製薬業者によって提供される。薬用モジュール4の滅菌シールは、薬用モジュール4が使用者によって前進し又は薬物送達デバイス7に取り付けられる場合に、好ましくは、例えば切断し、引き裂き又は剥がすことにより自動的に開くように設計される。注射器具7の端部での傾斜面などの機構又は薬用モジュール4内部の機構は、シールのこの開口を補助し得る。
【0063】
薬用モジュール4は、多回使用注射器具7、好ましくは図1に示されるものと類似のペン型多回投与注射器具7と合同で動作するように設計され得る。注射器具7は再使用可能又は使い捨てデバイスであってよい。使い捨てデバイスとは、薬剤を予め充填した製造業者から得られ、そして初回の薬剤が使用済になった後に新しい薬剤を再充填することができない注射器具7を意味する。注射器具7は固定用量又は設定可能用量及び好ましくは多回用量デバイスであってよいが、しかしながら、ある場合には単回用量、使い捨てデバイスを使用することが有利である。
【0064】
典型的な注射器具7は薬剤のカートリッジ又は他のリザーバ14を含む。このカートリッジ14は、一般的に円筒形であり、通常はガラスで製作される。カートリッジ14は一端においてゴム栓で、そして他端においてゴム製セプタムで密閉される。注射器具は多回注射剤を送達するために設計される。注射器具は更に用量セッターを含んでよい;用量セッターは操作可能に送達機構に連結されてよい。注射器具は用量ボタンを含む;用量ボタンは操作可能に送達機構に連結されてよい。用量ボタンは、用量セッターによって設定される薬剤用量が、デバイスの遠位端に向いて遠位方向に動くようにさせるいずれのトリガー機構であってもよい。好ましい実施態様では、用量ボタンは、第1の薬剤の一次リザーバにおいてピストンを係合するスピンドルに操作可能に連結される。更なる実施態様では、スピンドルは2つの異なるねじ山を含む回転可能なピストンロッドである。送達機構は一般的に使用者の手動動作により作動するが、しかしながら、注射機構は、バネ、圧縮気体又は電気エネルギーなどの他の手段によっても作動し得る。
【0065】
本発明の代表的な実施態様が記載されている。しかしながら、当業者には当然のことながら、変更又は改変は、請求の範囲によって規定される本発明の真の範囲及び精神から逸脱することなくこれらの実施態様で行われてよい。
【0066】
参照番号
1 セプタム
2 第2の薬剤
3 針
4 薬用モジュール
5 係合ニードル
7 薬物送達デバイス
8 取り付け手段
9 連結手段
10 ハウジング
11 ばね
12 用量セッター
13 用量ボタン
14 一次リザーバ/カートリッジ
15 スリーブ
17 ショルダ
18 締まり嵌め
21 バイパスチャンネル
22 ニードルガード
23 オープントップ
28 逆止弁
29 キャップ
30 内部チャンバ
31 可撓性リザーバ/カプセル
32 遠位端
40 突出部
41 突出部
42 突出部
43 可撓性ハウジング
44 バイパススリット弁
45 スリット弁
50 突出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.少なくとも1つの可撓性セクションを含んでなり、内部チャンバ(30)を画成し、そして近位端及び遠位端を有するハウジング(43);
b.近位端に位置する剛性の末端キャップ(29);及び
c.可撓性セクションに位置する弁(45);
を含んでなる、薬物送達デバイス(7)に取り付け可能な薬用モジュール(4)に用いるためのリザーバ(31)。
【請求項2】
ハウジング(43)が医療グレードのシリコン又は熱可塑性エラストマーを含む、請求項1に記載のリザーバ(31)。
【請求項3】
弁(45)がスリット弁である、請求項1又は2に記載のリザーバ(31)。
【請求項4】
ハウジング(43)がバイパスチャンネル(21)を含み、ここでバイパスチャンネル(21)は近位端を遠位端に連結し、内部チャンバ(30)と流体連通していない、請求項1〜3のいずれか1項に記載のリザーバ(31)。
【請求項5】
バイパスチャンネル(21)が少なくとも1つのスリット弁(44)を含む、請求項4に記載のリザーバ。
【請求項6】
バイパスチャンネル(21)の弁(44)がハウジング(43)の前記可撓性セクションに又は更なる可撓性セクションに位置する、請求項5に記載のリザーバ。
【請求項7】
ハウジング(43)が、弁(45)に操作可能に連結される突出部(42)で、その突出部(42)及び薬物送達デバイス(7)の部材の機械的協動が弁(45)の開口を可能にするように構成される該突出部(42)を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載のリザーバ(31)。
【請求項8】
ハウジング(43)が少なくとも2つの突出部(41、42)を含み、各突出部(41、42)は弁(44、45)の1つに操作可能に連結され、そして各突出部(41、42)はそれぞれの突出部(41、42)及び薬物送達デバイス(7)の部材の機械的協動がそれぞれの弁(44、45)の開口を可能にするように構成される、請求項5〜7のいずれか1項に記載のリザーバ(31)。
【請求項9】
末端キャップ(29)が、内部チャンバ(30)と流体連通を可能にするように適合され配置される逆止弁(28)を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載のリザーバ(31)。
【請求項10】
薬用モジュール(4)が薬物送達デバイス(7)に取り付け可能で、薬物送達デバイス(7)は第1の薬剤の一次リザーバ(14)を含んでなり、そして薬用モジュール(4)はリザーバ(31)のハウジング(4)によって画成される内部チャンバ(30)に保持される第2の薬剤(2)を含んでなる、請求項1〜9のいずれか1項に記載のリザーバ(31)を含んでなる薬用モジュール(4)。
【請求項11】
薬物送達デバイス(7)への取り付けのために構成されるハウジング(10)、及びそのハウジング(10)に操作可能に連結されるニードルガード(22)を含んでなり、ここでニードルガード(22)は薬用モジュール(4)の一部分に配置されたニードルカニューレ(3)に対する保護を提供するように適合され配置され、そしてニードルガード(22)は注射部位への適用中に軸方向に動くようにそしてハウジング(43)を係合するように構成される、請求項10に記載の薬用モジュール。
【請求項12】
ハウジング(43)及びニードルガード(22)の機械的協動がリザーバ(31)のそれぞれの弁(44、45)の開口を可能にする、請求項11に記載の薬用モジュール(4)。
【請求項13】
ハウジング(43)が少なくとも2つの突出部(41、42)を含み、各突出部(41、42)は弁(44、45)の1つに操作可能に連結され、そしてそれぞれの突出部(41、42)は、ニードルガード(22)が2つの異なる軸方向位置にある場合にニードルガード(22)に係合するように構成される、請求項10〜12のいずれか1項に記載の薬用モジュール(4)。
【請求項14】
請求項10〜13のいずれか1項に記載の薬用モジュール(4)及び一次リザーバ(14)含んでなり、一次リザーバ(14)が第1の薬剤の少なくとも1つの用量を保持している、薬物送達デバイス(7)。
【請求項15】
ハウジング(43)は、薬用モジュール(4)が薬物送達デバイス(7)に連結されたとき、ニードルガード(22)と機械的協動をするように構成され、そしてニードルガード(22)は、バイパスチャンネル(21)のスリット弁(44)が開くように遠位方向に伸びる、請求項14に記載の薬物送達デバイス(7)。
【請求項16】
ハウジング(43)は、ハウジング(43)の弁(45)が開き、そして一次リザーバ(14)及び薬用モジュール(4)のリザーバ(31)の流体連通が可能にされるように、ニードルガード(22)が近位方向に後退したとき、ニードルガード(22)と機械的協働をするように構成される、請求項14又は15に記載の薬物送達デバイス(7)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−518638(P2013−518638A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551593(P2012−551593)
【出願日】平成23年2月1日(2011.2.1)
【国際出願番号】PCT/EP2011/051393
【国際公開番号】WO2011/095478
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(397056695)サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (456)
【Fターム(参考)】