説明

虚像表示装置

【課題】紫外線の影響による経年劣化を抑制して、良好な画像を形成できる虚像表示装置を提供すること。
【解決手段】導光装置20が紫外光吸収部材UAを含むシェード部材29によって表面側である第2反射面21b側を覆われており、シェード部材29が導光装置20に向かう外界光のうち紫外光成分UVを予め吸収することで、導光装置20に対する紫外光成分UVの影響を抑制できる。つまり、虚像表示装置100は、紫外線の影響による経年劣化を抑制して、良好な画像を形成できる。また、以上の場合、シェード部材29は、紫外光成分UVを吸収することで、結果として観察者の眼EYについても紫外光成分UVから保護するものとなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭部に装着して使用するヘッドマウントディスプレイ等の虚像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ヘッドマウントディスプレイのように虚像の形成及び観察を可能にする虚像表示装置として、導光板によって表示素子からの画像光を観察者の瞳に導くタイプのものが種々提案されており、例えば画像光と外界光とを重畳させるために、シースルー光学系を用いたものが提案されている(特許文献1等参照)。
【0003】
しかし、特に特許文献1等のようなシースルー光学系の場合、ヘッドマウントディスプレイを構成する光学部材が外界光に含まれる紫外線を受けることにより、次第に当該光学部材において短波長の光の透過率が低下する黄変という現象が生じることがある。このような黄変が光学部材の内部のように画像光を導く部分で生じると、外界光のみならず光学部材を通過する画像光までもが着色して、映し出される画像の色バランスが崩れたり、画像光の透過率が低下したりしてしまう。
【0004】
上記のような黄変が光学部材の内部で生じることを防ぐため、紫外光を吸収する材料を混入し、かつ、黄変しにくいプラスチックレンズ(特許文献2〜4等参照)の材料を用いて導光板の基材や表面コート層であるハードコート層を構成することも考えられる。しかし、この場合、紫外線の基材の内部への侵入を防げるとしても、比較的紫外線を多く受けることになる基材の表面側や表面コート自体が黄変してしまうと、その黄変した表面側の箇所を画像光が通過する場合には、画像光の着色や透過率低下といった経年劣化が著しくなる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−224473号公報
【特許文献2】特開2002−182001号公報
【特許文献3】特開2004−345123号公報
【特許文献4】特開2008−90327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、紫外線の影響による経年劣化を抑制して、良好な画像を形成できる虚像表示装置を提供することを目的とする。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の虚像表示装置は、(a)画像光を形成する画像表示装置と、(b)画像表示装置から射出された画像光による虚像を形成する投射光学系と、(c1)投射光学系を通過した画像光を内部に取り込む光入射部と、(c2)光入射部から取り込まれた画像光を導く導光部と、(c3)導光部を経た画像光を外部へ取出す光射出部と、を有する(c)導光装置と、を備え、(d)導光装置の表面を覆うように配置されて、外界から導光装置に向かう光に含まれる紫外光の成分を吸収する紫外光吸収材をさらに有する。
【0008】
上記虚像表示装置では、導光装置が紫外光吸収材によって表面側を覆われており、当該紫外光吸収材が導光装置に向かう外界光のうち紫外光成分を予め吸収することで、導光装置に対する当該紫外光成分の影響を抑制できる。つまり、虚像表示装置は、紫外線の影響による着色、透明率の低下等の経年劣化を抑制して、良好な画像を形成できる。ここで、紫外線吸収材については、導光装置と別体で設けられたものに含ませる場合のほか、例えば導光装置の表面に貼り付けるフィルム部材に混入させて紫外線吸収性を持たせる場合や、導光部の表面をコートするコート材に含まれる場合等種々の態様が可能である。
【0009】
本発明の具体的な側面では、光射出部が、導光部を経た画像光を反射させて外部へ取出すとともに、外界光を通過させて外界光の観察を可能にする半透過反射膜を有する。この場合、半透過反射膜を有することで、画像光と外界光とを重畳させるシースルー観察が可能となる。
【0010】
本発明の別の側面では、導光部が、対向して延び全反射により画像光を導く第1及び第2の全反射面を有し、導光装置が、少なくとも第1及び第2の全反射面を含む画像光の導光に寄与する導光面に付随して設けられるハードコート層を有する。この場合、ハードコート層によって、導光面を損傷から防いだり汚れの除去を容易にしたりして、映像の解像度低下を防止することができる。また、このハードコート層は、紫外光吸収材によって保護され、劣化が抑制される。
【0011】
本発明のさらに別の側面では、導光装置を表面側から覆って入射する外界光の透過量を調整するとともに、紫外光吸収材を含むシェード部材をさらに有する。ここで、シェード部材については、紫外光成分を吸収することで遮断するものであればよく、可視光成分の透過率の比較的高いものに限られず、必要に応じて適宜定められる種々のものが含まれ、例えば可視光成分の透過率を略100%とするものであってもよいものとする。この場合、導光装置に向かう外界光に含まれる紫外光成分を、シェード部材において吸収し、導光装置に到達させないようにすることができる。なお、シェード部材は、導光装置に対して着脱可能とすることができる。
【0012】
本発明のさらに別の側面では、導光装置が、紫外光を吸収することで硬化した紫外線硬化部材を含む。この場合、導光装置を構成する光透過性の光学部材を、光重合等によって比較的低温で高精度に形成することができる。また、これらの光学部材は、紫外光吸収材によって保護され、劣化を抑制できる。
【0013】
本発明のさらに別の側面では、紫外光吸収材が、通過する光のうち、紫外光よりも長い波長帯に属する可視光を略一定の透過率で透過させる。この場合、紫外光吸収材によって外界光のうち可視光の成分の色バランスを崩すことなく観察者に認識させることができる。
【0014】
本発明のさらに別の側面では、紫外光吸収材が、紫外光の透過率を、可視光波長領域帯の光の透過率よりも小さくしている。この場合、紫外光を除去して導光装置を保護し併せて観察者の眼を保護するものとなるだけでなく、観察者が可視光を認識しやすいものとすることができる。
【0015】
本発明のさらに別の側面では、導光装置が、光入射部、導光部及び光射出部を含む導光部材と、導光部材と接合することによって外界光の観察を可能にする透視部を構成するとともに紫外光吸収材によって表面側が覆われている光透過部材と、を有する。この場合、導光部材とともにシースルーのための透視部を構成する光透過部材についても、紫外線の影響による着色、透明率の低下等の経年劣化を抑制して、良好な画像を形成できる。
【0016】
本発明のさらに別の側面では、導光部が、互いに平行に配置され全反射による導光を可能にする第1反射面と第2反射面とを有し、光入射部が、第1反射面に対して所定の角度をなす第3反射面を有し、光射出部が、第1反射面に対して所定の角度をなす第4反射面を有する。光入射部の第3反射面で反射された画像光が導光部の第1及び第2反射面で全反射されつつ伝搬され、光射出部の第4反射面で反射されて虚像として観察者の眼に入射する。なお、光入射部と導光部と光射出部とを一体的なブロック状部材とすることにより、射出成形技術を利用して導光装置を高精度で形成することができ、このブロック状部材を紫外光吸収材によって紫外光成分から保護できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第1実施形態の虚像表示装置を示す斜視図である。
【図2】(A)は、虚像表示装置を構成する第1表示装置の本体部分の平面図であり、(B)は、本体部分の正面図である。
【図3】(A)は、シェード部材の構造及び取付けを示す図であり、(B)は、シェード部材による紫外線吸収について説明するための図である。(C)は、変形例のシェード部材の取付けを示す図であり、(D)は、変形例のシェード部材による紫外線吸収について説明するための図である。
【図4】紫外光吸収材の透過率特性を示すグラフである。
【図5】(A)は、第2実施形態の虚像表示装置のシェード部材の構造及び取付けを示す図であり、(B)は、変形例のシェード部材による紫外線吸収について説明するための図である。
【図6】(A)は、第3実施形態に係る虚像表示装置を示す断面図であり、(B)及び(C)は、導光装置の正面図及び平面図である。
【図7】画像光の光路について説明する模式的な図である。
【図8】ハーフミラー層を含む接合部を説明する断面図である。
【図9】(A)は、第4実施形態に係る虚像表示装置を示す断面図であり、(B)及び(C)は、導光装置の正面図及び平面図である。
【図10】画像光の光路について説明する模式的な図である。
【図11】ハーフミラー層を含む接合部を説明する断面図である。
【図12】ハーフミラー層を含む接合部の他の例を説明する断面図である。
【図13】(A)は、虚像表示装置を構成する第1表示装置の変形例を示す図であり、(B)は、第1表示装置の別の変形例を示す図である。
【図14】虚像表示装置を構成する第1表示装置のさらに別の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る虚像表示装置について詳細に説明する。
【0019】
〔A.虚像表示装置の外観〕
図1に示す実施形態の虚像表示装置100は、眼鏡のような外観を有するヘッドマウントディスプレイであり、この虚像表示装置100を装着した観察者に対して虚像による画像光を認識させることができるとともに、観察者に外界像をシースルーで観察させることができる。虚像表示装置100は、観察者の眼前を覆う光学パネル110と、光学パネル110を支持するフレーム121と、光学パネル110を前方側から着脱可能に覆う保護部材であるシェード部材29と、フレーム121のうちシェード部材29に隣接する前方側のカバー部分から後方側のつる部分(テンプル)にかけての部分に付加された第1及び第2駆動部131,132とを備える。ここで、光学パネル110は、第1パネル部分111と第2パネル部分112とを有し、両パネル部分111,112は、中央で一体的に連結された板状の部品となっている。図面上で左側の第1パネル部分111と第1駆動部131とを組み合わせた第1表示装置100Aは、左眼用の虚像を形成する部分であり、単独でも虚像表示装置として機能する。また、図面上で右側の第2パネル部分112と第2駆動部132とを組み合わせた第2表示装置100Bは、右眼用の虚像を形成する部分であり、単独でも虚像表示装置として機能する。なお、シェード部材29は、外界光の透過量を調整する部材であり、着脱可能であり、シェード部材29を取り外した状態でも虚像表示装置100の使用は可能となっている。
【0020】
〔B.表示装置の構造〕
図2(A)等に示すように、第1表示装置100Aは、画像形成装置10と、導光装置20とを備える。ここで、画像形成装置10は、図1における第1駆動部131に相当し、導光装置20は、図1における第1パネル部分111に相当する。なお、図1に示す第2表示装置100Bは、第1表示装置100Aと同様の構造を有し左右を反転させただけであるので、第2表示装置100Bの詳細な説明は省略する。
【0021】
画像形成装置10は、画像表示装置11と、投射光学系12とを有する。このうち、画像表示装置11は、2次元的な照明光SLを射出する照明装置31と、透過型の空間光変調装置である液晶表示デバイス32と、照明装置31及び液晶表示デバイス32の動作を制御する駆動制御部34とを有する。
【0022】
照明装置31は、赤、緑、青の3色を含む光を発生する光源31aと、光源31aからの光を拡散させて矩形断面の光束にするバックライト導光部31bとを有する。液晶表示デバイス32は、照明装置31からの照明光SLを空間的に変調して動画像等の表示対象となるべき画像光を形成する。駆動制御部34は、光源駆動回路34aと、液晶駆動回路34bとを備える。光源駆動回路34aは、照明装置31の光源31aに電力を供給して安定した輝度の照明光SLを射出させる。液晶駆動回路34bは、液晶表示デバイス32に対して画像信号又は駆動信号を出力することにより、透過率パターンとして動画や静止画の元になるカラーの画像光を形成する。なお、液晶駆動回路34bに画像処理機能を持たせることができるが、外付けの制御回路に画像処理機能を持たせることもできる。
【0023】
投射光学系12は、液晶表示デバイス32上の各点から射出された画像光を平行状態の光束にするコリメートレンズである。
【0024】
導光装置20は、導光部材21と光透過部材23とを接合したものであり、全体としてXY面に平行に延びる平板状の光学部材を構成している。
【0025】
導光装置20のうち、導光部材21は、平面視において台形のプリズム状部材であり、側面として、第1反射面21aと、第2反射面21bと、第3反射面21cと、第4反射面21dとを有する。また、導光部材21は、第1、第2、第3反射面21a,21b,21c及び第4反射面21dに隣接するとともに互いに対向する上面21eと下面21fとを有する。ここで、第1及び第2反射面21a,21bは、XY面に沿って延び、導光部材21の厚みtだけ離間する。また、第3反射面21cは、XY面に対して45°以下の鋭角αで傾斜しており、第4反射面21dは、XY面に対して例えば45°以下の鋭角βで傾斜している。第3反射面21cを通る第1光軸AX1と第4反射面21dを通る第2光軸AX2とは平行に配置され距離Dだけ離間している。なお、第1反射面21aと第3反射面21cとの間には、稜を除去するように端面21hが設けられている。導光部材21は、この端面21hも含めると、7面の多面体状の外形を有するものとなっている。
【0026】
導光部材21は、可視域で高い光透過性を示す樹脂材料で形成されている。導光部材21は、射出成型によって一体的に成型されたブロック状部材を本体部分20aとし、本体部分(ブロック状部材)20aは、例えば熱又は光重合型の樹脂材料を成型金型内に射出させ熱硬化又は光硬化させることで形成されている。このように導光部材21は、基材としての本体部分20aを一体形成品とするが、機能的に、光入射部B1と導光部B2と光射出部B3とに分けて考えることができる。
【0027】
光入射部B1は、三角プリズム状の部分であり、第1反射面21aの一部である光入射面ISと、光入射面ISに対向する第3反射面21cとを有する。光入射面ISは、画像形成装置10からの画像光GLを取り込むための裏側又は観察者側の平面であり、投射光学系12に対向してその第1光軸AX1に垂直に延びている。第3反射面21cは、矩形の輪郭を有し、その矩形領域全体に、光入射面ISを通過した画像光GLを反射して導光部B2内に導くための全反射ミラーであるミラー層25を有する。このミラー層25は、導光部材21の本体部分20aの斜面RS上にアルミ等の蒸着によって成膜を施すことにより形成される。第3反射面21cは、投射光学系12の第1光軸AX1又はXY面に対して例えば鋭角α=25°〜27°で傾斜しており、光入射面ISから入射し全体として+Z方向に向かう画像光GLを、全体として−Z方向寄りの−X方向に向かわせるように折り曲げることで、画像光GLを導光部B2内に確実に結合させる。
【0028】
導光部B2は、互いに対向しXY面に平行に延びる2平面として、光入射部B1で折り曲げられた画像光をそれぞれ全反射させる第1反射面21aと第2反射面21bとを有している。第1及び第2反射面21a,21bの間隔すなわち導光部材21の厚みtは、例えば9mm程度とされている。ここでは、第1反射面21aが画像形成装置10に近い裏側又は観察者側にあるものとし、第2反射面21bが画像形成装置10から遠い表側又は外界側にあるものとする。この場合、第1反射面21aは、上記の光入射面ISや後述する光射出面OSと共通の面部分となっている。第1及び第2反射面21a,21bは、屈折率差を利用する全反射面であり、ミラー層等の反射コートが施されていないが、本実施形態の場合、本体部分20aの表面上に表面コート層であるハードコート層27を成膜することで形成されている。ハードコート層27は、虚像表示装置100の露出部分に形成されるものであり、第1及び第2反射面21a,21bを形成するとともに、当該露出部分を損傷から防いだり汚れの除去を容易にしたりして、映像の解像度低下を防止する。このハードコート層27は、本体部分20aの平坦面上に例えば紫外線硬化性のコート剤をディップ処理等によって表面に塗布した後、紫外線照射によりコート材を硬化させることで形成できる。つまり、ハードコート層27を、コート材を硬化させた紫外線硬化部材で構成することができる。
【0029】
ここで、図2(A)に一部拡大して示すように、例えば第1及び第2反射面21a,21bでの全反射を、ハードコート層27の表面側で生じさせる場合、1回の全反射において、画像光GLの成分がハードコート層27を2度通過することになる。従って、このような構成とする場合には、画像光の劣化を防ぐため、ハードコート層27の黄変を抑制することが特に重要となる。
【0030】
光入射部B1の第3反射面21cで反射された画像光GLは、まず、第1反射面21aに入射し、全反射される。次に、当該画像光GLは、第2反射面21bに入射し、全反射される。以下この動作が繰り返されることで、画像光は、全体として導光装置20の奥側の主導光方向すなわち光射出部B3を設けた+Z側に導かれる。なお、第1及び第2反射面21a,21bには反射コートが施されていないため、外界側から第2反射面21bに入射する外界光又は外光は、高い透過率で導光部B2を通過する。つまり、導光部B2は、外界像の透視が可能なシースルータイプになっている。
【0031】
光射出部B3は、三角プリズム状の部分であり、第1反射面21aの一部である光射出面OSと、光射出面OSに対向する第4反射面21dとを有する。光射出面OSは、画像光GLを観察者の眼EYに向けて射出するための裏側の平面であり、光入射面ISと同様に第1反射面21aの一部となっており、第2光軸AX2に垂直に延びている。光射出部B3を通る第2光軸AX2と光入射部B1を通る第1光軸AX1との距離Dは、観察者の頭部の幅等を考慮して例えば50mmに設定されている。第4反射面21dは、矩形の平坦面であり、第1及び第2反射面21a,21bを経て入射してきた画像光GLを反射して光射出部B3外に射出させるとともに外界光GL’を透過させるためのハーフミラー層28を、第4反射面21dの中央に配置された矩形の部分領域に有する。このハーフミラー層28は、光透過性を有する半透過反射膜である。ハーフミラー層(半透過反射膜)28は、導光部材21のうち第4反射面21dを構成する斜面RR上に例えば銀等による金属反射膜や誘電体多層膜を成膜することにより形成される。ハーフミラー層28の画像光GLに対する反射率は、シースルーによる外界光GL’の観察を容易にする観点で、想定される画像光GLの入射角範囲において10%以上50%以下とする。具体的な実施例のハーフミラー層28の画像光GLに対する反射率は、例えば20%に設定され、画像光GLに対する透過率は、例えば80%に設定される。
【0032】
第4反射面21dは、第1反射面21aに垂直な第2光軸AX2又はXY面に対して例えば鋭角α=25°〜27°で傾斜しており、上記ハーフミラー層28により、導光部B2の第1及び第2反射面21a,21bを経て入射してきた画像光GLを部分的に反射して全体として−Z方向に向かわせるように折り曲げることで、光射出面OSを通過させる。なお、第4反射面21dを透過した画像光GLxの成分は、光透過部材23に入射し、映像の形成には利用されない。
【0033】
光透過部材23は、導光部材21の本体部分20aと同一の屈折率を有する本体部分23sで構成され、第1面23aと、第2面23bと、第3面23cとを有する。第1及び第2面23a,23bは、第1及び第2反射面21a,21bと同様、本体部分23sの表面上に表面コート層であるハードコート層27を成膜することで形成されており、XY面に沿って延びている。また、第3面23cは、XY面に対して傾斜しており、導光部材21の第4反射面21dに対向して平行に配置されている。つまり、光透過部材23は、第2面23bと第3面23cとに挟まれた楔状の部材を有するものとなっている。光透過部材23は、導光部材21と同様に、可視域で高い光透過性を示す樹脂材料で形成されている。光透過部材23は、射出成型によって一体的に成型されたブロック状部材を本体部分23sとするものであり、本体部分23sは、例えば熱又は光重合型の樹脂材料を成型金型内に射出させ熱硬化又は光硬化させることで形成されている。
【0034】
光透過部材23において、第1面23aは、導光部材21に設けた第1反射面21aの延長平面上に配置され、観察者の眼EYに近い裏側にあり、第2面23bは、導光部材21に設けた第2反射面21bの延長平面上に配置され、観察者の眼EYから遠い表側にある。第3面23cは、接着剤によって導光部材21の第4反射面21dに接合される矩形の光透過面である。以上の第1面23aと第3面23cとなす角度は、導光部材21の第2反射面21bと第4反射面21dとのなす角度εと等しくなっており、第2面23bと第3面23cとのなす角度は、導光部材21の第1反射面21aと第3反射面21cとのなす角度βと等しくなっている。
【0035】
光透過部材23と導光部材21とは、両者の接合部分及びその近傍において、透視部B4を構成している。すなわち、第1及び第2面23a,23bには、ミラー層等の反射コートが施されていないため、導光部材21の導光部B2と同様に外界光GL’を高い透過率で透過させる。第3面23cも、外界光GL’を高い透過率で透過可能であるが、導光部材21の第4反射面21dがハーフミラー層28を有していることから、第3面23cの中央領域を通過する外界光GL’は、例えば20%減光される。つまり、観察者は、20%に減光された画像光GLと80%に減光された外界光GL’とを重畳させたものを観察することになる。なお、シェード部材29を装着した状態では、外界光GL’は、光透過部材23や導光部材21を通過する前に予め減光された状態となっており、観察者は、例えば80%の数分の1に減光された外界光GL’を観察することになる。
【0036】
〔C.画像光の光路の概要〕
図3(A)は、液晶表示デバイス32の縦断面CS1に対応する第1方向D1又は非閉じ込め方向DW1の光路を説明する図である。第1方向D1に沿った縦断面すなわちYZ面(展開後のY’Z’面)において、液晶表示デバイス32から射出された画像光のうち、図中一点鎖線で示す表示領域32bの上端側(+Y側)から射出される成分を画像光GLaとし、図中二点差線で示す表示領域32bの下端側(−Y側)から射出される成分を画像光GLbとする。
【0037】
上側の画像光GLaは、投射光学系12によって平行光束化され、展開された光軸AX’に沿って、導光部材21の光入射部B1、導光部B2、及び光射出部B3を通り、観察者の眼EYに対して平行光束状態で、角度φの上方向から傾いて入射する。一方、下側の画像光GLbは、投射光学系12によって平行光束化され、展開された光軸AX’に沿って、導光部材21の光入射部B1、導光部B2、及び光射出部B3を通り、観察者の眼EYに対して平行光束状態で、角度φ(|φ|=|φ|)の下方向から傾いて入射する。以上の角度φ,φは、上下の半画角に相当し、例えば6.5°に設定される。
【0038】
図3(B)は、液晶表示デバイス32の横断面CS2に対応する第2方向D2又は閉じ込め方向DW2の光路を説明する図である。第2方向D2に沿った横断面CS2すなわちXZ面(展開後のX’Z’面)において、液晶表示デバイス32から射出された画像光のうち、図中一点鎖線で示す表示領域32bに向かって右端側(+X側)の第1表示点P1から射出される成分を画像光GL1とし、図中二点差線で示す表示領域32bに向かって左端側(−X側)の第2表示点P2から射出される成分を画像光GL2とする。
【0039】
右側の第1表示点P1からの画像光GL1は、投射光学系12によって平行光束化され、展開された光軸AX’に沿って、導光部材21の光入射部B1、導光部B2、及び光射出部B3を通り、観察者の眼EYに対して平行光束状態で、角度θの右方向から傾いて入射する。一方、左側の第2表示点P2からの画像光GL2は、投射光学系12によって平行光束化され、展開された光軸AX’に沿って、導光部材21の光入射部B1、導光部B2、及び光射出部B3を通り、観察者の眼EYに対して平行光束状態で、角度θ(|θ|=|θ|)の左方向から傾いて入射する。以上の角度θ,θは、左右の半画角に相当し、例えば10°に設定される。
【0040】
なお、第2方向D2又は閉じ込め方向DW2、すなわち横方向に関しては、導光部材21中で画像光GL1,GL2が反射によって折り返され、反射の回数も異なることから、各画像光GL1,GL2が導光部材21中で不連続に表現されている。また、観察者の眼EYについては、図2(A)の場合と比較して見ている方向が上下反対となっている。結果的に、横方向に関しては、全体として画面が左右反転するが、後に詳述するように導光部材21を高精度に加工することで、液晶表示デバイス32の右半分の画像と液晶表示デバイス32の左半分の画像とが切れ目なく連続してズレなくつなぎ合わされたものとなる。なお、両画像光GL1,GL2の導光部材21内での反射回数が互いに異なることを考慮して、右側の画像光GL1の射出角度θ’と左側の画像光GL2の射出角度θ’とは異なるものに設定されている。
【0041】
以上により、観察者の眼EYに入射する画像光GLa,GLb,GL1,GL2は、無限遠からの虚像となっており、縦の第1方向D1又は非閉じ込め方向DW1に関しては、液晶表示デバイス32に形成された映像が正立し、横の第2方向D2又は閉じ込め方向DW2に関しては、液晶表示デバイス32に形成された映像が反転する。
【0042】
以上のようなシースルー型の構成を有する虚像表示装置100では、外界光を透過させる露出部分が多くなるため、虚像表示装置100を構成する導光部材21その他の光透過性の光学部材が、外界光GL’に含まれる紫外光成分を通過させることによって、年を経るとともに黄変して光の透過率が低下してしまう可能性がある。例えば虚像表示装置100を構成するハードコート層27は、導光部材21や光透過部材23の表面においてシースルーを良好な状態に保つために重要な光学部材であるが、既述のように、コート剤をディップ処理によって成膜することで形成されるものである。従って、これらの部材21,23のコート剤として紫外線硬化性のもので形成される紫外線硬化材を用いることが考えられる。また、導光部材21の本体部分20aや光透過部材23の本体部分23sも紫外線硬化材を原料としこれを硬化して形成される紫外線硬化部材で構成される場合がある。紫外線硬化部材は、原料である紫外線硬化材が紫外線を吸収することで硬化する性質を有する以上、経年とともに黄変が進む可能性がある。以上のことから、ハードコート層27や本体部分20a等の虚像表示装置100を構成する光透過性の光学部材を紫外光成分から保護することは、非常に重要な課題である。本実施形態では、図1に示すシェード部材29が紫外光成分を吸収する紫外光吸収材を含むことによって、ハードコート層27や本体部分20a等の虚像表示装置100を構成する光透過性の光学部材を紫外光から的確に保護している。
【0043】
〔D.シェード部材の構造と導光部材への取付け〕
以下、図3(A)等により、シェード部材29の構造や導光部材21すなわち光学パネル110への取付けについて説明する。図3(A)及び図3(B)の側断面図に示すように、シェード部材29は、断面視U字形状を有している。シェード部材29は、既述のように、図1の光学パネル110すなわち図3(A)等の導光装置20を第2反射面21b側から覆うことで、外界光の透過量を調整する部材であり、ある程度の光透過性を有して、かつ、着脱可能となっている。虚像表示装置100は、シェード部材29を装着した状態でも、取り外した状態でも使用が可能である。シェード部材29の具体的な使用態様としては、例えばシェード部材29がある程度の遮光性を有することで、虚像表示装置100の使用環境が明るい場合と暗い場合や、画像光による映像と外界の状況とのどちらを重視するかといった観察者の要請に応じて装着したり外したりすることができるものとなっている。本実施形態では、特に、シェード部材29が紫外光吸収性の材料又はこれを混ぜ込んだ材料(紫外光吸収材)で形成された紫外光吸収部材UAで構成されている。また、シェード部材29は、交換可能であり、劣化した場合は、新品に交換することができ、用途に応じて透過率の異なるものに交換することも可能である。
【0044】
ここで、シェード部材29の紫外光吸収部材UAに用いる紫外光吸収性の材料すなわち紫外光吸収部材UAの原料である紫外光吸収材としては、種々のものが考えられる。具体的には、例えば特開2002−182001号公報(特許文献2)に開示されている樹脂組成物、つまりエポキシ(メタ)アクリレート、特定のポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、芳香環を有する特定構造のモノ(メタ)アクリレート、その他の重合性モノマーを主成分とする原料モノマーと、特定構造のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤と、可視光領域に吸収特性を有する光重合開始剤とを含有するものを、紫外光吸収部材UAの材料として用いることができる。また、例えば、特開2004−345123号公報(特許文献3)に開示されている原料組成物、つまりエピスルフィド等化合物やポリイソシアネート化合物等を含む重合性モノマーを主成分として含有するモノマー組成物に対して紫外線吸収剤として500μm以下の粒径のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を溶解させた後重合させた樹脂組成物を、紫外光吸収部材UAの材料として用いることもできる。これらのような材料を用いることで、紫外光吸収部材UAを、十分な紫外線吸収性を有し、かつ、比較的黄変しにくいものとすることができる。
【0045】
図4に、シェード部材29に紫外線吸収剤を混入させた場合の透過率を示す。この例では、可視光の波長範囲(400nm〜650nm)で、外界光GL’の強度を低下させ、映像光すなわち画像光GLを見易くする為に、10%程度の透過率としている。なお、この例では、シェード部材29の外界光GL’の透過方向についての厚さを2mmとしている。曲線C1は、紫外線吸収剤を含まない場合で、紫外領域(350nm〜400nm)の透過率が、可視光領域の透過率より高くなっている。この材料に、紫外線吸収剤を導入することにより、曲線C2に示す通り、可視光領域での透過率を変えず、かつ、紫外領域の透過率を20%以下に低減させ、曲線C1の場合に比べて3/4程度とすることができる。
【0046】
以下、図3(A)等に戻って、シェード部材29の取付け構造について説明する。シェード部材29は、図3(A)に示すように、導光部材21の第2反射面21b側を覆うことでカバーとして主体的に機能する部分である主部29xと、主部29xの上下端から延びて導光部材21の上面21e及び下面21f側を覆う一対の壁部29y,29yと、壁部29y,29yの先端に形成される一対の爪部29a,29aと、壁部29y,29yの根本側に形成される一対の凸部29b,29bと、を有している。
【0047】
シェード部材29は、図3(A)に示すように、導光部材21のうち観察者の眼EY側と反対側すなわち第2反射面21b側である矢印AWの方向から押し付けて、可撓性の壁部29yの先端に設けた爪部29aを導光部材21に引っかけるように係止させることで、導光部材21へ取付け可能となっている。つまり、シェード部材29は、図3(B)に示すように、導光部材21のうち観察者の眼EY側に位置する第1反射面21aの光学的には使用されない周辺部分SSに、爪部29aを引っかけて係止される。これにより、シェード部材29は、導光部材21のうち眼EYの反対側に位置する第2反射面21b全体を覆った状態となり、観察者の眼EYと反対側から導光部材21に向かう外界光GL’のうち、一定の割合の可視光成分VRを通過させる一方、紫外光成分UVを吸収する。つまり、シェード部材29は、紫外光成分UVを導光部材21に到達させる前に吸収して、導光部材21を構成する本体部分20aやハードコート層27を、紫外光成分UVから保護するものとなっている。
【0048】
また、可撓性の壁部29yの先端に設けた爪部29aによる係止を外すことで、図3(A)に示すシェード部材29が導光部材21から外された状態に戻すことができる。つまり、シェード部材29は、導光部材21に対して着脱自在であり、導光部材21を含む光学パネル110に装着されて光学パネル110を保護しつつ、例えばシェード部材29が経年とともに黄変してもシェード部材29のみを取り換えることができるものとなっている。
【0049】
なお、一対の凸部29b,29bは、シェード部材29の主部29xと第2反射面21b側のハードコート層27との間に空間GPを設けるための位置決め部である。凸部29b,29bによって、主部29xが導光部材21のハードコート層27に直接接しない状態を確保でき、導光部材21の表面の損傷を防ぐ等、導光部材21にシェード部材29が影響を及ぼさないものにできる。
【0050】
また、シェード部材29による可視光成分VRの透過率或いは遮光率については、必要に応じて適宜定められ、透過率を略100%とする遮光性のほとんどないものとしてもよい。つまり、シェード部材29は、紫外光成分UVを吸収することで遮断するものであればよく、可視光成分VRの透過率の高低を問わない。
【0051】
以上のように、本実施形態では、導光装置20が紫外光吸収部材UAを含むシェード部材29によって表面側である第2反射面21b側を覆われており、シェード部材29が導光装置20に向かう外界光のうち紫外光成分UVを予め吸収することで、導光装置20に対する紫外光成分UVの影響を抑制できる。つまり、虚像表示装置100は、導光部材21等を含む光学パネル110において紫外線の影響による経年劣化を抑制して、良好な画像を形成できる。また、以上の場合、シェード部材29は、紫外光成分UVを吸収することで、結果として観察者の眼EYについても紫外光成分UVから保護するものとなっている。
【0052】
図3(C)及び図3(D)は、本実施形態に係る虚像表示装置の他の一例を示す図である。この例では、シェード部材29が紫外光吸収部材UAを内部に有するのではなく、シェード部材本体29mのうち導光装置20の反対側に位置する表面29n上に紫外光吸収部材UAを設ける構成としている。この場合も、紫外光吸収部材UAによって紫外光成分UVを吸収することで、導光装置20の各光学部品の黄変を防ぐことができる。なお、例えば紫外光吸収部材UAを付け外し可能なフィルム状の部材とすることで、紫外光吸収部材UAが経年劣化した場合には、新しいものに取り換えるものとしてもよい。また、導光装置20の各光学部品の黄変を防ぐことができるのであれば、上記以外の場所に紫外光吸収部材UAを設けてもよく、例えば、図3(C)及び図3(D)において、紫外光吸収部材UAをシェード部材本体29mのうち導光装置20の第2反射面21bに対向する側すなわちシェード部材29の裏側に設けてもよい。また、導光装置20の各光学部品の黄変に大きく関与する部分のみに紫外光吸収部材UAを設けて、黄変の影響がない又は少ない箇所には紫外光吸収部材UAを設けない構成としてもよい。
【0053】
また、紫外光吸収部材UAを積層膜等で構成することも可能である。つまり、例えばシェード部材29の表面を多層膜で構成することによってこれを紫外光吸収部材UAとすることができる。なお、この場合、積層膜の各層を構成する材料が、紫外光吸収部材UAの原料である紫外光吸収材となる。
【0054】
また、上記のシェード部材29のように可撓性の壁部29y及びその先端に設けた爪部29aを有する構成に代えて、紫外線吸収材入りの薄いプラスチックシートで構成される保護シートのようなものを貼り付ける、あるいは装着する構成としてもよい。つまり、例えば導光装置20の側面にネジ、溝、爪等を配置することで固定されて導光装置20の前面を覆うようなプラスチックシートを設けることで、紫外線を吸収するものとしてもよい。
【0055】
〔第2実施形態〕
以下、第2実施形態に係る虚像表示装置について説明する。なお、本実施形態に係る虚像表示装置は、第1実施形態に係る虚像表示装置100の変形例であり、特に説明しない場合、第1の虚像表示装置100と同様であるものとする。
【0056】
図5(A)及び図5(B)は、第2実施形態に係る虚像表示装置の一例を示す図であり、第1実施形態の図3(A)及び図3(B)に対応する側断面図である。この例では、シェード部材29が紫外光吸収部材UAを含まず、紫外光吸収部材UAが第2反射面21b全体を覆うように別途設けられている。
【0057】
この場合、着脱可能なシェード部材29の有無にかかわらず、紫外光吸収部材UAによって外界光GL’に含まれる紫外光成分UVを吸収することで、導光装置20の各光学部品の黄変を防ぐことができる。一方、外界光GL’のうち可視光成分VRについては、一定量通過させることで、観察者の眼EYに到達するものとなっている。
【0058】
なお、上記のような紫外光吸収部材UAの構成については、例えば原料である紫外光吸収材を混入させた紫外線吸収フィルム部材を紫外光吸収部材UAとして導光装置20の表面に貼り付けるというものが考えられる。また、導光装置20の表面を原料である紫外光吸収材によって直接コートして紫外光吸収部材UAとするものでもよく、種々の態様が可能である。また、以上のような紫外光吸収部材UAを設けることで、シェード部材29を有しない構成としてもよい。
【0059】
〔第3実施形態〕
以下、第3実施形態に係る虚像表示装置について説明する。なお、本実施形態に係る虚像表示装置は、第1実施形態に係る虚像表示装置100の変形例であり、特に説明しない場合、第1の虚像表示装置100と同様であるものとする。
【0060】
図6(A)〜6(C)に示す虚像表示装置100は、画像形成装置10と、導光装置420とを一組として備える。導光装置420は、導光部材21と、角度変換部423と、光透過部材23とを備える。なお、図6(A)は、図6(B)に示す導光装置420のA−A断面に対応する。
【0061】
導光部材21の全体的な外観は、図中XY面に平行に延びる平板である本体部分20aによって形成されている。また、導光部材21は、側面として、第1反射面21aと、第2反射面21bと、第3反射面21cとを有する。また、導光部材21は、第1、第2及び第3反射面21a,21b,21cに隣接するとともに互いに対向する上面21eと下面21fとを有する。さらに、導光部材21は、長手方向の一端において本体部分20aを拡張するように形成されたプリズム部PS及びこれに付随する第3反射面21cを有し、長手方向の他端において多数のミラーによって構成される角度変換部423につながる構造となっている。
【0062】
本体部分20aは、光透過性の樹脂材料等により形成され、XY面に平行で画像形成装置10に対向する裏側の平面上に、画像形成装置10からの画像光を取り込む光入射面ISを有している。本体部分20aは、そのプリズム部PSの側面として光入射面ISの他に矩形の斜面RSを有し、当該斜面RS上には、これを被覆するようにミラー層25が形成されている。ここで、ミラー層25は、斜面RSと協働することにより、光入射面ISに対して傾斜した状態で配置される第3反射面21cとして機能する。この第3反射面21cは、光入射面ISから入射し全体として+Z方向に向かう画像光を、全体として−Z方向に偏った−X方向に向かわせるように折り曲げることで、画像光を本体部分20a内に確実に結合させる。
【0063】
導光部材21の第1及び第2反射面21a,21bは、平板状の本体部分20aの主面であり互いに対向しXY面に対して平行に延びる2平面として、プリズム部PSで折り曲げられた画像光をそれぞれ全反射させる。第3反射面21cで反射された画像光は、まず、第1反射面21aに入射し、全反射される。次に、当該画像光は、第2反射面21bに入射し、全反射される。以下この動作が繰り返されることで、画像光は、導光部材21の奥側即ち角度変換部423を設けた−X側に導かれる。
【0064】
図6(C)に示すように、導光部材21において、第3反射面21cと後述する光入射面ISとは、光入射部B1として機能する。また、導光部材21の第1及び第2反射面21a,21bに挟まれた本体部分20aと、後述する角度変換部423とは、導光部B2として機能する。なお、角度変換部423は、光射出部B3として機能する。
【0065】
角度変換部423は、導光部材21の奥側(−X側)において、第1及び第2反射面21a,21bの延長平面に沿って形成されている。ここで、本体部分20aの奥側端部は、角度変換部423の一部となっている。角度変換部423は、第1及び第2反射面21a,21bに対して傾斜し互いに平行に等間隔で配列される多数のハーフミラー層28を有する。角度変換部423は、導光部材421の第1及び第2反射面21a,21bを経て入射してきた画像光を、所定角度で反射して光射出面OSを介して観察者の眼EY側へ折り曲げる。つまり、角度変換部423は、画像光の角度を変換している。
【0066】
光透過部材23は、角度変換部423を奥側(−X側)に延長した部分であり、導光部材421の本体部分20aと同様に平板状の部材となっている。
【0067】
以上において、角度変換部423の全部又は入口側の一部は、導光部材21と組み合わせることで導光部B2の一部としても機能している。また、角度変換部423の全部又は奥側の一部は、光透過部材23と組み合わせることで透視部B4として機能している。
【0068】
画像形成装置10から射出され光入射面ISから導光部材21に入射した画像光は、第3反射面21cで一様に反射されて折り曲げられ、導光部材21の第1及び第2反射面21a,21bにおいて繰り返し全反射されて光軸AXに略沿って一定の広がりを有する状態で進み、さらに、角度変換部423において適度な角度で折り曲げられることで取出し可能な状態となり、最終的に角度変換部423に付随する光射出面OSから外部に射出される。光射出面OSから外部に射出された画像光は、虚像光として観察者の眼EYに入射する。
【0069】
以下、導光装置420中の画像光の光路について説明する。なお、第3実施形態における導光装置420は、縦の第1方向D1(Y方向)に関して、図1(A)の導光装置20と同様に機能する。一方、導光装置420は、横の第2方向D2(X方向)に関して、多数の伝搬モードの画像光を導光させるものとなっており、2つの伝搬モードの画像光を導光させる図2(A)の導光装置20と異なっている。
【0070】
図6(A)に示すように、画像表示装置11の液晶表示デバイス(画像光形成部)32から射出される画像光のうち、射出面32aの中央部分から射出される点線で示す成分を画像光GL41とし、射出面32aの紙面右側(+X側)から射出される一点鎖線で示す成分を画像光GL42とし、射出面32aの紙面左側(−X側)から射出される二点鎖線で示す成分を画像光GL43とする。
【0071】
投射光学系12を経た各画像光GL41,GL42,GL43の主要成分は、導光部材21の光入射面ISからそれぞれ入射した後、第1及び第2反射面21a,21bにおいて互いに異なる角度で全反射を繰り返す。具体的には、画像光GL41,GL42,GL43のうち、液晶表示デバイス(画像光形成部)32の射出面32aの中央部分から射出された画像光GL41は、投射光学系12を通過後に平行光束として光入射面ISに入射し第3反射面21cで反射された後、標準反射角γで導光部材21の第1反射面21aに入射し、全反射される。その後、画像光GL41は、標準反射角γを保った状態で、第1及び第2反射面21a,21bで全反射を繰り返す。画像光GL41は、第1及び第2反射面21a,21bにおいてN回(Nは自然数)全反射され、角度変換部423の中央部23kに達する。この中央部23kで反射された画像光GL41は、光射出面OSから当該光射出面OS又はXY面に対して垂直な光軸AX方向に平行光束として射出される。
【0072】
液晶表示デバイス32の射出面32aの一端側(+X側)から射出された画像光GL42は、投射光学系12を通過後に平行光束として光入射面ISに入射し第3反射面21cで反射された後、最大反射角γで導光部材21の第1反射面21aに入射し、全反射される。画像光GL42は、第1及び第2反射面21a,21bにおいて例えばN−M回(Mは自然数)全反射され、角度変換部423のうち最も入口側(+X側)の周辺部23mに達する。この周辺部23mで反射された画像光GL42は、入口の第3反射面21c側から離れるように+X軸に対して鈍角をなし、光軸AXに対して角度θ12(導光装置420内ではθ12’)だけ傾斜した方向に射出される(図7参照)。
【0073】
液晶表示デバイス32の射出面32aの他端側(−X側)から射出された画像光GL43は、投射光学系12の通過後に平行光束として光入射面ISに入射し第3反射面21cで反射された後、最小反射角γで導光部材21の第1反射面21aに入射し、全反射される。画像光GL43は、第1及び第2反射面21a,21bにおいて例えばN+M回全反射され、角度変換部423のうち最も奥側(−X側)の周辺部23hに入射する。この周辺部23hで反射された画像光GL43は、第3反射面21c側に戻されるように+X軸に対して鋭角をなし、光軸AXに対して角度θ13(導光装置420内ではθ13’)だけ傾斜した方向に射出される(図7参照)。
【0074】
図8に示すように、角度変換部423は、複数のプリズム424を所定のピッチでX方向に多数配列した構造を有する。各プリズム424は、光射出側に第1接合面424jを有し、光入射側に第2接合面424cを有する。本体部分20aの第1接合面21j上又は各プリズム424の第1接合面424j上には、半透過反射膜であるハーフミラー層28が形成されている。
【0075】
本実施形態においても、第1及び第2実施形態の場合と同様に、紫外光吸収部材UA(図3(A)、図5(A)等参照)を設けることによって導光装置20の表面側である第2反射面21b側を覆うことで、導光装置20に向かう外界光のうち紫外光成分UVを予め吸収し、導光装置20に対する紫外光成分の影響を抑制できる。また、観察者の眼EYについても紫外光成分UVから保護するものとなっている。これにより、例えば角度変換部423を構成するハーフミラー層28や、これを接着する接着層CCといった光透過性の各光学部材を保護することができる。
【0076】
〔第4実施形態〕
以下、第4実施形態に係る虚像表示装置について説明する。なお、本実施形態に係る虚像表示装置は、第1実施形態に係る虚像表示装置100の変形例であり、特に説明しない場合、第1の虚像表示装置100と同様であるものとする。
【0077】
図9(A)〜9(C)に示す虚像表示装置100は、画像形成装置10と、導光装置520とを一組として備える。導光装置520は、その一部として導光部材521を有している。導光部材521は、本体部分20aと、画像取出部である角度変換部523とを備える。なお、図9(A)は、図9(B)に示す導光部材521のA−A断面に対応する。
【0078】
導光部材521の全体的な外観は、図中XY面に平行に延びる平板である本体部分20aによって形成されている。また、導光部材521は、側面として、第1反射面21aと、第2反射面21bと、第3反射面21cとを有する。また、導光部材521は、第1、第2及び第3反射面21a,21b,21cに隣接するとともに互いに対向する上面21eと下面21fとを有する。さらに、導光部材521は、長手方向の一端において本体部分20aを拡張するように形成されたプリズム部PS及びこれに付随する第3反射面21cを有し、長手方向の他端において本体部分20aに埋め込まれた多数の微小ミラーによって構成される角度変換部523を有する構造となっている。導光部材521は、一体的な部品であるが、第1実施形態の場合と同様に、光入射部B1と導光部B2と光射出部B3とに分けて考えることができ(図9(C)参照)、このうち光入射部B1は、第3反射面21cと後述する光入射面ISとを有する部分であり、光入射部B1は、第1及び第2反射面21a,21bを有する部分であり、導光部B2は、角度変換部523と後述する光射出面OSとを有する部分である。
【0079】
本体部分20aは、光透過性の樹脂材料等により形成され、XY面に平行で画像形成装置10に対向する裏側又は観察者側の平面上に、画像形成装置10からの画像光を取り込む光入射面ISと、画像光を観察者の眼EYに向けて射出させる光射出面OSとを有している。本体部分20aは、そのプリズム部PSの側面として光入射面ISの他に矩形の斜面RSを有し、当該斜面RS上には、これを被覆するようにミラー層25が形成されている。ここで、ミラー層25は、斜面RSと協働することにより、光入射面ISに対して傾斜した状態で配置される入射光折曲部である第3反射面21cとして機能する。この第3反射面21cは、光入射面ISから入射し全体として+Z方向に向かう画像光を、全体として−Z方向に偏った−XZ方向に向かわせるように折り曲げることで、画像光を本体部分20a内に確実に結合させる。また、本体部分20aにおいて、光射出面OSの裏側の平面に沿って微細構造である角度変換部523が形成されている。本体部分20aは、入口側の第3反射面21cから奥側の角度変換部523にかけて延在し、プリズム部PSを介して内部に入射させた画像光を角度変換部523に導く。
【0080】
導光部材521の第1及び第2反射面21a,21bは、平板状の本体部分20aの主面であり互いに対向しXY面に対して平行に延びる2平面として、プリズム部PS又は光入射部B1で折り曲げられた画像光をそれぞれ全反射させる。第3反射面21cで反射された画像光は、まず、第1反射面21aに入射し、全反射される。次に、当該画像光は、第2反射面21bに入射し、全反射される。以下この動作が繰り返されることで、画像光は、導光装置520の奥側即ち角度変換部523を設けた−X側に導かれる。
【0081】
本体部分20aの光射出面OSに対向して配置される角度変換部523は、導光部材521の奥側(−X側)において、第2反射面21bの延長平面に沿ってこの延長平面に近接して形成されている。角度変換部523は、導光部材521の第1及び第2反射面21a,21bを経て入射してきた画像光を、所定角度で反射して光射出面OS側へ折り曲げる。つまり、角度変換部523は、画像光の角度を変換している。
【0082】
画像形成装置10から射出され光入射面ISから導光部材521に入射した画像光は、第3反射面21cで一様に反射されて折り曲げられ、導光部材521の第1及び第2反射面21a,21bにおいて繰り返し全反射されて光軸AXに略沿って一定の広がりを有する状態で進み、さらに、角度変換部523において適度な角度で折り曲げられることで取出し可能な状態となり、最終的に光射出面OSから外部に射出される。光射出面OSから外部に射出された画像光は、虚像光として観察者の眼EYに入射する。当該虚像光が観察者の網膜において結像することで、観察者は虚像による映像光等の画像光を認識することができる。
【0083】
以下、導光装置520中の画像光の光路について説明する。なお、第4実施形態における導光装置520は、縦の第1方向D1(Y方向)に関して、図1(A)の導光装置20と同様に機能する。一方、導光装置520は、横の第2方向D2(X方向)に関して、多数の伝搬モードの画像光を導光させるものとなっており、2つの伝搬モードの画像光を導光させる図2(A)の導光装置20と異なっている。
【0084】
図9(A)に示すように、画像表示装置11の液晶表示デバイス(画像光形成部)32から射出される画像光のうち、射出面32aの中央部分から射出される点線で示す成分を画像光GL51とし、射出面32aの紙面右側(+X側)から射出される一点鎖線で示す成分を画像光GL52とし、射出面32aの紙面左側(−X側)から射出される二点鎖線で示す成分を画像光GL53とする。
【0085】
投射光学系12を経た各画像光GL51,GL52,GL53の主要成分は、導光部材521の光入射面ISからそれぞれ入射した後、第1及び第2反射面21a,21bにおいて互いに異なる角度で全反射を繰り返す。具体的には、画像光GL51,GL52,GL53のうち、液晶表示デバイス(画像光形成部)32の射出面32aの中央部分から射出された画像光GL51は、投射光学系12を通過後に平行光束として光入射面ISに入射し第3反射面21cで反射された後、標準反射角γで導光部材521の第1反射面21aに入射し、全反射される。その後、画像光GL51は、標準反射角γを保った状態で、第1及び第2反射面21a,21bで全反射を繰り返す。画像光GL51は、第1及び第2反射面21a,21bにおいてN回(Nは自然数)全反射され、角度変換部523の中央部23kに達する。この中央部23kで反射された画像光GL51は、光射出面OSから当該光射出面OS又はXY面に対して垂直な光軸AX方向に平行光束として射出される。
【0086】
液晶表示デバイス32の射出面32aの一端側(+X側)から射出された画像光GL52は、投射光学系12を通過後に平行光束として光入射面ISに入射し第3反射面21cで反射された後、最小反射角γで導光部材521の第1反射面21aに入射し、全反射される。画像光GL52は、第1及び第2反射面21a,21bにおいて例えばN−M回(Mは自然数)全反射され、角度変換部523のうち最も奥側(−X側)の周辺部23hに達する。この周辺部23hで反射された画像光GL52は、入口の第3反射面21c側に戻されるように+X軸に対して鋭角をなし、光軸AXに対して角度θ12(導光装置520内ではθ12’)だけ傾斜した方向に射出される(図10参照)。
【0087】
液晶表示デバイス32の射出面32aの他端側(−X側)から射出された画像光GL53は、投射光学系12の通過後に平行光束として光入射面ISに入射し第3反射面21cで反射された後、最小反射角γで導光部材521の第1反射面21aに入射し、全反射される。画像光GL53は、第1及び第2反射面21a,21bにおいて例えばN+M回全反射され、角度変換部523のうち最も入口側(+X側)の周辺部23mに入射する。この周辺部23mで反射された画像光GL53は、第3反射面21c側から離れるように+X軸に対して鈍角をなし、光軸AXに対して角度θ13(導光装置520内ではθ13’)だけ傾斜した方向に射出される(図10参照)。
【0088】
なお、図10に示すように、角度変換部523は、ストライプ状に配列された多数の線状の反射ユニット2cで構成される。つまり、角度変換部523は、Y方向に延びる細長い反射ユニット2cを所定のピッチPTで角度変換部523の延びる主導光方向すなわち−X方向に沿って多数配列させることで構成されている。各反射ユニット2cは、奥側即ち光路下流側に配置される1つの反射面部分である第1の反射面2aと、入口側即ち光路上流側に配置される他の1つの反射面部分である第2の反射面2bとを1組のものとして有し、両反射面2a,2bは、一定の楔角δをなしている。これらのうち、少なくとも第2の反射面2bは、一部の光を透過可能な部分反射面であり、観察者に外界像をシースルーで観察させることを可能にしている。当該反射ユニット2cにおいて、画像光GL52,53は、最初に奥側即ち−X側の第1の反射面2aで反射され、次に、入口側即ち+X側の第2の反射面2bで反射される。当該反射ユニット2cを経た画像光GL52,53は、他の反射ユニット2cを経ることなく、角度変換部523での1回だけの通過で所望の角度に折り曲げられ観察者側に取り出される。
【0089】
図11に示すように、角度変換部523は、導光部材521から延びる比較的厚い板状の接合部材521nと、光透過部材23から延びる比較的薄い板状の接合部材523nとを接合した構造を有する。接合部材521nの第1接合面21j上には、ハーフミラー層28が形成されている。
【0090】
また、このほかの一例として、図12に示すように、角度変換部623は、導光部材621の一部に反射ユニット2cを形成するための微細構造の凹凸部621nを設け、凹凸部621n上にハーフミラー層28を形成した後、ハーフミラー層28を樹脂材料623nで凹凸部621nを埋めることで形成されるものであってもよい。この場合、樹脂材料623nとして、例えば紫外線硬化性の材料を用いることで、微細構造を有する凹凸部621nに隙間なく当該材料を充填させた後、紫外線照射によって硬化させて角度変換部623を作製することができる。つまり、角度変換部623を紫外線硬化部材で構成することができる。紫外線硬化部材で構成される角度変換部623は、紫外光吸収部材UA(図3(A)等参照)によって外界光GL’に含まれる紫外光成分UVから保護される。
【0091】
本実施形態においても、第1及び第2実施形態の場合と同様に、紫外光吸収部材UA(図3(A)、図5(A)等参照)を設けることによって導光装置20の表面側である第2反射面21b側を覆うことで、導光装置20に向かう外界光のうち紫外光成分UVを予め吸収し、導光装置20に対する紫外光成分の影響を抑制できる。また、観察者の眼EYについても紫外光成分UVから保護するものとなっている。これにより、例えば角度変換部523,623を構成するハーフミラー層28や、これを接着する接着層CCといった光透過性の各光学部材を保護することができる。
【0092】
〔その他〕
以上実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0093】
上記の説明では、導光装置20は、ハードコート層27を有する構成としているが、ハードコート層27を有しないものであってもよい。また、シェード部材29を着脱可能としているが、シェード部材29が常に装着された固定的なものとしてもよい。例えば、シェード部材29を固定的なものとする場合には、導光装置20のうち少なくともシェード部材29側にはハードコート層27を設けない構成とすることが考えられる。
【0094】
上記実施形態では、半透過反射部であるハーフミラー層28を、例えば銀等による金属反射膜や誘電体多層膜を成膜することにより形成される半透過反射膜としているが、これに限らず、半透過反射性を有する半透過部材や、半透過性のシート等によって半透過反射部を構成するものとしてもよい。また、例えば図13(A)に示すように、ミラー層25やハーフミラー層28(図2(A)等参照)に代えて、ホログラム素子HE1,HE2によって第3反射面21cや第4反射面21dを形成するものとしてもよい。つまり、画像光を折り曲げるとともに外界光を透過させる半透過反射部をホログラム素子HE2で構成するものとしてもよい。この場合、画像表示装置11は、光源として、例えば3色の光束を発生するLED光源を有し、ホログラム素子HE1,HE2は、当該3色に応じた3層構造のホログラム層を有するものとする。これにより、ホログラム素子HE1,HE2は、第3反射面21cや第4反射面21dの近辺に形成された仮想的なミラーとして、画像表示装置11からの各色光を所望の方向に反射させる機能を有するものとなる。つまり、ホログラム素子HE1,HE2は、画像光の反射方向の調整を可能とする。また、ホログラム素子HE1,HE2を用いる場合、各色光を所望の方向に反射できる。従って、例えば図13(B)に示すように、第3及び第4反射面21c,21dを第1反射面21aに対して傾斜させることなく、第2反射面21bを延長した第1反射面21aに平行な面上にホログラム素子HE1,HE2を形成する構成とすることもできる。なお、ホログラム素子HE2は、特定波長帯の光に対してのみ作用し他の波長帯の光を透過させるため、外界光を通過させてシースルー観察が可能となっている。
【0095】
上記の説明では、光入射部B1と導光部B2と光射出部B3とを備える導光装置20を用いたが、光入射部B1や光射出部B3において、平面ミラーを用いる必要はなく、球面又は非球面の曲面ミラーによってレンズ的な機能を持たせることもできる。さらに、図14に示すように、光入射部B1として、導光部B2から分離したプリズム又はブロック状のリレー部材1125を用いることができ、このリレー部材1125の入射出射面や反射内面にレンズ的な機能を持たせることもできる。なお、導光部B2を構成する導光体26には、画像光GLを反射によって伝搬させる第1及び第2の面である第1及び第2反射面21a,21bが設けられているが、これらの反射面21a,21bは、互いに平行である必要はなく、曲面とすることもできる。
【0096】
上記の説明では、画像光形成部として、透過型の液晶表示デバイス32等を用いているが、画像光形成部としては、透過型の液晶表示デバイスに限らず種々のものを利用可能である。例えば、反射型の液晶表示デバイスを用いた構成も可能であり、液晶表示デバイス32に代えてデジタル・マイクロミラー・デバイス等を用いることもできる。さらに、液晶表示デバイス32に代えて有機EL等の自発光型の表示デバイスを用いることができる。
【0097】
上記実施形態では、照明装置31からの照明光SLに特に指向性を持たせていないが、照明光SLに液晶表示デバイス32の位置に応じた指向性を持たせることができる。これにより、液晶表示デバイス32を効率的に照明することができ、画像光GLの位置による輝度ムラを低減できる。
【0098】
上記の説明では、光入射面ISと光射出面OSとを同一の平面上に配置しているが、これに限らず、例えば、光入射面ISを第1反射面21aと同一の平面上に配置し、光射出面OSを第2反射面21bと同一の平面上に配置する構成とすることもできる。この場合、第1反射面21aと第4反射面21dとが鈍角をなすことになる。
【0099】
上記の説明では、導光部材21が眼EYの並ぶ横方向に延びているが、導光部材21は、縦方向に延びるものとできる。この場合、図1の光学パネル110すなわち導光部材21,421,521は、直列的ではなく並列的に平行配置されることになる。
【0100】
上記の説明では、光入射部B1と導光部B2と光射出部B3とを備える導光装置20を用いたが、光入射部B1や光射出部B3において、平面ミラーを用いる必要はなく、球面又は非球面の曲面ミラーによってレンズ的な機能を持たせることもできる。さらに、光入射部B1として、導光部B2から分離したプリズム又はブロック状のリレー部材を用いることができ、このリレー部材の入射出射面や反射内面にレンズ的な機能を持たせることもできる。
【0101】
上記の説明では、虚像表示装置100がヘッドマウントディスプレイであるとして具体的な説明を行ったが、虚像表示装置100は、ヘッドアップディスプレイに改変することもできる。
【0102】
上記実施形態の虚像表示装置100では、右眼及び左眼の双方に対応して、一組ずつ表示装置100A,100B(具体的には画像形成装置10、導光装置20等)設ける構成としているが、右眼又は左眼のいずれか一方に対してのみ例えば画像形成装置10と導光装置20とを設け画像を片眼視する構成にしてもよい。
【0103】
また、図2(B)に示す導光部材21の光射出面OSに対向してレンズその他の光学素子を配置することもできる。或いは、ハーフミラー層28は、保護層で被覆されたホログラムシートに置き換えることができる。この場合、照明装置31として可干渉性の高いものを使用し、ホログラムシートとして液晶表示デバイス32で形成された例えば3色の画像を個別に処理する積層型の回折シートを用いる。
【0104】
上記実施形態では、光入射面ISを通る第1光軸AX1と光入射面ISを通る第2光軸AX2とが平行であるとしたが、これらの光軸AX1,AX2を非平行とすることもできる。
【0105】
上記実施形態では、液晶表示デバイス32の表示輝度を特に調整していないが、図5(B)に示すような投射像IM1,IM2の範囲や重複に応じて表示輝度の調整を行うことができる。
【0106】
上記実施形態では、導光部材21の第4反射面21dに設けたハーフミラー層28の反射率を20%としてシースルーを優先しているが、ハーフミラー層28の反射率を50%以上として画像光を優先することもできる。
【0107】
上記の説明では、第1及び第2反射面21a,21bにおいて、表面上にミラーやハーフミラー等を施すことなく空気との界面により画像光を全反射させて導くものとしているが、本願発明における全反射については、第1及び第2反射面21a,21b上の全体又は一部にミラーコートや、ハーフミラー膜が形成されてなされる反射も含むものとする。例えば、画像光の入射角度が全反射条件を満たした上で、第1及び第2反射面21a,21bの全体又は一部にミラーコート等が施され、実質的に全ての画像光を反射する場合も含まれる。また、十分な明るさの画像光を得られるのであれば、多少透過性のあるミラーによって第1及び第2反射面21a,21bの全体又は一部がコートされていてもよい。
【符号の説明】
【0108】
2c…反射ユニット、 10…画像形成装置、 11…画像表示装置、 12…投射光学系、 20,420,520…導光装置、 20a…本体部分、 21,421,521…導光部材、 21a,21b,21c,21d…第1-第4反射面、 23…光透過部材、 23s…本体部分、 23a…第1面、 23b…第2面、 25…ミラー層、 27…ハードコート層(紫外線硬化部材)、 28…ハーフミラー層(半透過反射膜)、 31…照明装置、 29…シェード部材、 32…液晶表示デバイス、 34…駆動制御部、 100…虚像表示装置、 100A,100B…表示装置、 110…光学パネル、 423,523,623…角度変換部、 424…プリズム、 UA…紫外光吸収部材、 AX,AX1,AX2…光軸、 B1…光入射部、 B2…導光部、 B3…光射出部、 B4…透視部、 CC…接着層、 EY…眼、 GL…画像光、 GL’…外界光、 GL1,GL2…画像光、 IM1,IM2…投射像(虚像)、 IS…光入射面、 OS…光射出面、 SL…照明光、 UV…紫外光成分、 VR…可視光成分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像光を形成する画像表示装置と、
前記画像表示装置から射出された前記画像光による虚像を形成する投射光学系と、
前記投射光学系を通過した前記画像光を内部に取り込む光入射部と、前記光入射部から取り込まれた前記画像光を導く導光部と、前記導光部を経た前記画像光を外部へ取出す光射出部と、を有する導光装置と、
を備え、
前記導光装置の表面を覆うように配置されて、外界から前記導光装置に向かう光に含まれる紫外光の成分を吸収する紫外光吸収材をさらに有する、虚像表示装置。
【請求項2】
前記光射出部は、前記導光部を経た前記画像光を反射させて外部へ取出すとともに、外界光を通過させて外界光の観察を可能にする半透過反射膜を有する、請求項1に記載の虚像表示装置。
【請求項3】
前記導光部は、対向して延び全反射により前記画像光を導く第1及び第2の全反射面を有し、
前記導光装置は、少なくとも前記第1及び第2の全反射面を含む前記画像光の導光に寄与する導光面に付随して設けられるハードコート層を有する、請求項1及び請求項2のいずれか一項に記載の虚像表示装置。
【請求項4】
前記導光装置を表面側から覆って入射する外界光の透過量を調整するとともに、前記紫外光吸収材を含むシェード部材をさらに有する、請求項1から3までのいずれか一項に記載の虚像表示装置。
【請求項5】
前記導光装置は、紫外光を吸収することで硬化した紫外線硬化部材を含む、請求項1から4に記載の虚像表示装置。
【請求項6】
前記紫外光吸収材は、通過する光のうち、前記紫外光よりも長い波長帯に属する可視光を略一定の透過率で透過させる、請求項1から5までのいずれか一項に記載の虚像表示装置。
【請求項7】
前記紫外光吸収材は、前記紫外光の透過率を、前記可視光波長領域帯の光の透過率よりも小さくしている、請求項6に記載の虚像表示装置。
【請求項8】
前記導光装置は、前記光入射部、前記導光部及び前記光射出部を含む導光部材と、前記導光部材と接合することによって外界光の観察を可能にする透視部を構成するとともに前記紫外光吸収材によって表面側が覆われている光透過部材と、を有する、請求項1から7までのいずれか一項に記載の虚像表示装置。
【請求項9】
前記導光部は、互いに平行に配置され全反射による導光を可能にする第1反射面と第2反射面とを有し、
前記光入射部は、前記第1反射面に対して所定の角度をなす第3反射面を有し、
前記光射出部は、前記第1反射面に対して所定の角度をなす第4反射面を有する、請求項1から8までのいずれか一項に記載の虚像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−83686(P2013−83686A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−221590(P2011−221590)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】