説明

蛇腹管継ぎ手付きの蛇腹管、及び蛇腹管継ぎ手と蛇腹管との結合方法

本発明の一実施例に係る蛇腹管継ぎ手付きの蛇腹管は、外面または内面に止め段部が形成された蛇腹管継ぎ手と、山と谷が形成された一端部が止め段部に当たって止まるように蛇腹管継ぎ手の少なくとも一部に挿入され、溶加材により一端部が蛇腹管継ぎ手に溶接される蛇腹管と、を備える。また、本発明の一実施例に係る蛇腹管継ぎ手と蛇腹管との結合方法は、山と谷が形成された蛇腹管の一端部と、蛇腹管の一端部が挿入される蛇腹管継ぎ手の結合部のうち少なくとも一方に溶加材を塗布する溶加材塗布段階と、蛇腹管の一端部を、蛇腹管継ぎ手に形成された止め段部に当たって止まるように、蛇腹管継ぎ手に形成された結合部に挿入する蛇腹管挿入段階と、蛇腹管継ぎ手に挿入された蛇腹管の少なくとも一部を加熱して、溶加材により蛇腹管の一端部と蛇腹管継ぎ手が溶接されるようにする蛇腹管溶接段階と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛇腹管継ぎ手付きの蛇腹管、及び蛇腹管継ぎ手と蛇腹管との結合方法に係り、特に、蛇腹管の溶接がしやすくなり、熱処理による熱の影響を少なく受ける蛇腹管継ぎ手付きの蛇腹管及び蛇腹管継ぎ手と蛇腹管との結合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、航空機、自動車、機械設備、建築物の配管工事に用いられている蛇腹管は、ステンレススチールからなり、その両端部にフランジやエルボーなどの継ぎ手がアーク溶接方法、プラズマ溶接方法、ブレーズ溶接方法またはねじ結合構造などにより取り付けられている。
【0003】
ステンレススチール製の蛇腹管は、肉厚が0.3mm以下であり、そこに溶接される継ぎ手のニップルまたはフィッティングの肉厚は1mm以上であるのが一般的であるが、肉厚の相違により薄板溶接が不可能だった。
【0004】
そのため、肉厚0.5mm以上の溶接用リングと蛇腹管とをアーク溶接またはプラズマ溶接した後に、溶接した溶接用リングを継ぎ手のニップルまたはフィッティングに溶接した。こうすると、溶接工程が複雑になり、溶接コストが高すぎになり、肉厚の薄い蛇腹管の溶接ビード部及び溶接熱影響部に溶接応力による亀裂・腐食が発生するという問題につながる。
【0005】
一方、ブレーズ溶接方法は、長さの短い蛇腹管とそこに溶接される継ぎ手の肉厚1mm以上のニップルまたはフィッティングを溶接する場合に、溶接技術に優れている熟練工しか溶接できず、熟練工以外は溶接が不可能だった。また、溶接部と溶接熱影響部に溶接応力による亀裂・腐食が発生する問題もあった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、蛇腹管の溶接がしやすくなり、熱処理による熱影響を少なく受ける蛇腹管継ぎ手付きの蛇腹管及び蛇腹管継ぎ手と蛇腹管との結合方法を提供することである。
【0007】
本発明の課題は、以上に言及した課題に制限されるものではなく、言及していない別の課題は、下の記載から、当業者に明確に理解されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するために、本発明の一実施例に係る蛇腹管継ぎ手付きの蛇腹管は、外面または内面に止め段部が形成された蛇腹管継ぎ手と、山と谷が形成された一端部が止め段部に当たって止まるように蛇腹管継ぎ手の少なくとも一部に挿入され、溶加材により一端部が蛇腹管継ぎ手に溶接される蛇腹管と、を備えてなる。
【0009】
また、上記課題を達成するために、本発明の一実施例に係る蛇腹管継ぎ手と蛇腹管との結合方法は、山と谷が形成された蛇腹管の一端部と、該蛇腹管の一端部が挿入される蛇腹管継ぎ手の結合部のうち少なくとも一方に溶加材を塗布する溶加材塗布段階と、前記蛇腹管の一端部を、前記蛇腹管継ぎ手に形成された止め段部に当たって止まるように、前記蛇腹管継ぎ手に形成された結合部に挿入する蛇腹管挿入段階と、前記蛇腹管継ぎ手に挿入された前記蛇腹管の少なくとも一部を加熱して、前記溶加材により前記蛇腹管の一端部と前記蛇腹管継ぎ手が溶接されるようにする蛇腹管溶接段階と、を有してなる。
【0010】
その他の実施例の具体的な事項は、詳細な説明及び図面に含まれている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の蛇腹管継ぎ手付きの蛇腹管、及び蛇腹管継ぎ手と蛇腹管との結合方法によれば、下記のような効果が一つ以上得られる。
【0012】
第一に、蛇腹管継ぎ手の結合部と蛇腹管の山及び谷のうち少なくとも一方で溶加材が溶融して結合部と蛇腹管とが溶接されるようにしたため、熟練者によらずにも溶接が可能になる。
【0013】
第二に、止め段部を備えたため、蛇腹管が蛇腹管継ぎ手に締結される時に、蛇腹管を支持することができる。
【0014】
第三に、止め段部を備えることで、溶加材が溶融時に流れ出ることを防ぎ、蛇腹管継ぎ手と蛇腹管の一端部との隙間に溶加材が溶着して容易に溶接が起きるようにする
【0015】
第四に、蛇腹管の先端面と段差部との間が溶接されることで、蛇腹管の山と谷に塗布された溶加材が外部に流れ出ることなく蛇腹管継ぎ手の結合部と溶接されるようにする。
【0016】
第五に、らせん状の山と谷を蛇腹管の一端部と結合部に形成することで、蛇腹管と結合部とが山と谷によって回転しつつ螺合し、この螺合により、溶接前に一定の強度で結合された状態に維持させることができる。
【0017】
第六に、蛇腹管溶接段階において、蛇腹管の熱処理時に、同じ熱処理炉中で蛇腹管の熱処理と溶加材による溶接を同時に行うため、別の溶接工程を行わずにすみ、製造コストを節減することができる。
【0018】
第七に、別の溶接工程時に発生する溶接熱による熱応力が発生せず、溶接部の熱応力による腐食が防止される。
【0019】
第八に、蛇腹管溶接段階において、溶加材が溶融して溶接される時に、蛇腹管と蛇腹管継ぎ手に全体的に均一に熱が伝達され、溶加材の溶融及び溶接が容易に起き、溶接強度が向上する。
【0020】
最後に、蛇腹管溶接段階において、蛇腹管と蛇腹管継ぎ手が一体として熱処理炉中で溶接されるので、蛇腹管の長さに拘わることなく溶接が可能であり、このような蛇腹管継ぎ手の存在により、別の溶接リングを必要とせず、未熟練者にも溶接が可能になる。
【0021】
本発明の効果は以上に言及した効果に制限されず、言及していない他の効果は、特許請求の範囲の記載から当業者に明確に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施例に係る蛇腹管継ぎ手及び蛇腹管を示す断面図である。
【図2】蛇腹管継ぎ手が蛇腹管に接合された状態を示す図である。
【図3】止め段部の他の実施例を示す図である。
【図4】蛇腹管継ぎ手に蛇腹管が溶接された状態を示す図である。
【図5】本発明の他の実施例に係る蛇腹管継ぎ手を示す図である。
【図6】本発明の他の実施例に係る蛇腹管継ぎ手を示す図である。
【図7】本発明の他の実施例に係る蛇腹管継ぎ手を示す図である。
【図8】本発明の一実施例に係る蛇腹管と蛇腹管継ぎ手との溶接方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の利点及び特徴、並びにそれらを達成する方法は、添付の図面と共に詳細に後述される実施例から明確になるであろう。ただし、本発明は、以下に開示される実施例に限定されず、様々な形態とすることができる。そのため、これらの実施例は、本発明の開示を完全なものにし、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者に、発明の範ちゅうを完全に教示するために提供されるものであり、よって、本発明は、請求項の範ちゅうによって定義されなければならない。なお、明細書全体を通じて同一の参照符号は同一の構成要素を指す。
【0024】
以下、図面を参考にして本発明について説明する。
【0025】
図1は、本発明の一実施例に係る蛇腹管継ぎ手1及び蛇腹管2を示す断面図であり、図2は、蛇腹管継ぎ手1が蛇腹管2に接合された状態を示す図であり、図3は、止め段部13の他の実施例を示す図である。
【0026】
図1乃至図3を参照すると、本発明の一実施例に係る蛇腹管継ぎ手1が接合された蛇腹管2は、外面または内面に止め段部13が形成された蛇腹管継ぎ手1と、山21及び谷23が形成された一端部が止め段部13に当たって止まるように蛇腹管継ぎ手1の少なくとも一部に挿入され、溶加材3によって一端部25が蛇腹管継ぎ手1に溶接された蛇腹管2と、からなる。
【0027】
蛇腹管2は、クロムとニッケルを含有したり、用途によって、ニッケル、タングステン、チタン、モリブデンなどの元素を含有した耐食性の鋼鉄で、航空機、自動車、機械設備、建築物の流体が通過する流路を形成するために取り付けられる。
【0028】
蛇腹管2は、曲げや伸張が可能なように多数の山21及び谷23が連続して形成されたフレキシブルチューブ(flexible tube)でよい。蛇腹管2の一端部25は、後述する蛇腹管継ぎ手1と接合される蛇腹管2の一部分であり、蛇腹管2と同じ山21及び谷23が形成されている。
【0029】
蛇腹管2は、オーステナイト系ステンレススチールに属するSTS 304及びSTS 316Lで作製されると好ましい。STS 304は、Cが0.08%以下、Siが0.5〜0.75%、Pが0.035%以下、Niが8.00〜15.00%、Crが17.00〜18.00%が含まれている。また、STS 316Lは、Cが0.03%以下、Siが0.5〜0.75%、Pが0.035%以下、Sが0.03%以下、Niが12.00〜15.00%、Crが17.00〜18.00%、Moが2.00〜3.00%が含まれている。
【0030】
蛇腹管継ぎ手1は、蛇腹管2が挿入されるようにする一種の取付部材である。蛇腹管継ぎ手1は、一つの蛇腹管2と他の蛇腹管2とを結合させて蛇腹管2を延長したり、他の装置との連結、直径の異なる蛇腹管2の連結などに使われる。蛇腹管継ぎ手1に蛇腹管2が挿入される構造には様々な実施例があり、それについては後述する。
【0031】
蛇腹管継ぎ手1は、炭素鋼鍛鋼品(KSD3710)や炭素鋼鋳鋼品(KSD4101)からなると好ましいが、これに蛇腹管継ぎ手1の材質が限定されることはない。
【0032】
蛇腹管継ぎ手1は、外面または内面の少なくとも一方に止め段部13が形成される。止め段部13は、蛇腹管2の一端部25が蛇腹管継ぎ手1の少なくとも一部に挿入される時に、蛇腹管2の一端部25が一定の距離挿入されてから止まるようにするストッパの役割と、溶接時に溶加材3が流れ込むことを防ぐ役割を有する。溶接時における止め段部13の役割については後述する。
【0033】
止め段部13のストッパの役割について説明すると、止め段部13は、蛇腹管2の一端部25が蛇腹管継ぎ手1に挿入される際に、挿入された蛇腹管2の一端部25が止まるようにし、蛇腹管2の一端部25が蛇腹管継ぎ手1に少なくとも一部挿入されるようにする。
【0034】
止め段部13は蛇腹管継ぎ手1の外面または内面の少なくとも一方に形成されるようにすることができ、図1乃至図3には、止め段部13が蛇腹管継ぎ手1の内面に形成されている。蛇腹管2の一端部25が蛇腹管継ぎ手1に挿入される時に、蛇腹管継ぎ手1の内面に挿入される場合は、止め段部13が蛇腹管継ぎ手1の内面に形成されることで、ストッパの役割、及び溶接時に溶加材3が流れ出ることを防ぐ役割を担うこととなる。止め段部13が蛇腹管継ぎ手1の外面に形成される場合については、図5及び図7等を参照して詳述する。
【0035】
溶加材3は、ペースト(Paste)タイプのBNi系を含むものとすることが好ましい。具体的に、溶加材3は、蛇腹管2の材質によって異なってくる。STS 304及びSTS 316Lの蛇腹管2は、応力除去のための固溶化熱処理の温度範囲が1065℃〜1120℃であり、溶接温度が蛇腹管2の固溶化熱処理温度に近似する1050℃〜1150℃であるNi 65〜75%、Cr 13〜20%、B 2.75〜4.75%及び微量のFe、Si、Cが含まれたBNi系溶加材3が用いられることが好ましい。
【0036】
溶加材3は蛇腹管2の一端部25または蛇腹管継ぎ手1の少なくとも一部に塗布される構成とすることができる。以下では溶加材3が蛇腹管継ぎ手1の少なくとも一部に塗布されるとして説明するが、これに本発明の思想が限定されるものではない。
【0037】
溶加材3は蛇腹管継ぎ手1の外面または内面の少なくとも一方に塗布可能であり、蛇腹管継ぎ手1と蛇腹管2の一端部25が挿入される実施例によって適宜塗布すればよい。これについては後述する。以下では、蛇腹管継ぎ手1の内面に蛇腹管2の一端部25が挿入されるとして説明するが、これに本発明の思想が限定されるものではない。
【0038】
溶加材3が蛇腹管2の継ぎ手の一部に塗布された状態で、蛇腹管2の一端部25が蛇腹管継ぎ手1に挿入され、この時、止め段部13には蛇腹管2の一端部25が突き当たる。この状態で溶接装置または熱処理炉により溶接温度に達すると溶加材3が溶融し、蛇腹管2の一端部25と蛇腹管継ぎ手1とが溶接される。
【0039】
この時、止め段部13は、蛇腹管継ぎ手1と蛇腹管2の一端部25との隙間を塞ぐことで、溶融した溶加材3が流れ出ることを防ぐ。具体的に、蛇腹管継ぎ手1に塗布された溶加材3は、蛇腹管継ぎ手1と蛇腹管2の一端部25との間に位置し、溶融温度に達すると粘性の液体状態で溶接が行われるが、この時、止め段部13がないと、蛇腹管継ぎ手1の内面に沿って溶加材3がはみ出され、蛇腹管継ぎ手1と蛇腹管2の一端部25との溶接が不完全になる。そのため、蛇腹管継ぎ手1に形成された止め段部13が溶加材3が溶融時に流れ出ることを防ぎ、蛇腹管継ぎ手1と蛇腹管2の一端部25との隙間に溶加材3が溶融して容易に溶接が起きるようにする。また、止め段部13と蛇腹管2の一端部とが溶接されることによって、後述する蛇腹管2の山21と谷23における溶加材3も外部に流れ出ることなく蛇腹管継ぎ手1の結合部11と溶接されるようにする。
【0040】
蛇腹管2と蛇腹管継ぎ手1との溶接時に、蛇腹管2が溶接される温度は1050℃乃至1150℃であり、この温度は、蛇腹管2の溶接応力と加工硬化を除去するための固溶化熱処理温度に相当する。溶加材3は、1050℃乃至1150℃で溶融して溶接される材質のもので、上述のようにBNi系溶加材3とすることができる。これにより、蛇腹管2の熱処理時に、同じ熱処理炉中で蛇腹管2の熱処理と溶加材3による溶接(ブレーズ溶接、Brazing)を同時に行うため、別の溶接工程を行わずにすみ、製造コストを節減することができる。なお、別の溶接工程時に発生する溶接熱による熱応力が発生せず、溶接部の熱応力による腐食を防止することができる。
【0041】
また、溶加材3が溶融して溶接される時に、蛇腹管2と蛇腹管2継ぎ手に全体的に均一に熱が伝達されるから、溶加材3の溶融及び溶接が容易に起き、溶接強度が向上する。
【0042】
また、蛇腹管2と蛇腹管継ぎ手1とが一体として熱処理炉中で溶接されるので、蛇腹管2の長さにかかわることなく溶接可能であり、このような蛇腹管継ぎ手1の存在により、別の溶接リングを必要とせず、未熟練者にも溶接が可能になる。
【0043】
最終的に、熱処理及び溶接の完了した蛇腹管2と蛇腹管継ぎ手1を熱処理炉中から取り出して冷却させることで、溶接が終了する。
【0044】
以下、蛇腹管継ぎ手1の構成と溶加材3により溶接される具体的な構成について詳細に説明する。
【0045】
まず、蛇腹管継ぎ手1の構成について説明すると、蛇腹管継ぎ手1は、胴部15と、胴部15よりも肉厚が小さく、かつ蛇腹管2の一端部25が挿入されて溶接される結合部11と、を有して構成される。
【0046】
胴部15は、蛇腹管継ぎ手1の胴体をなす部分を指す。
【0047】
結合部11は、蛇腹管2の一端部25が挿入されて溶接される部分である。結合部11は、胴部15よりも肉厚を小さくする。この場合、止め段部13は、胴部15と結合部11との間に形成される段差部13に該当する。胴部15と胴部15よりも肉厚を小さくした結合部11との間に両者の肉厚の差による段差部13が形成され、この段差部13が上述の止め段部13の役割を担う。
【0048】
また、止め段部13の他の実施例として、図3に示すように、蛇腹管継ぎ手1の外面または内面に突出した突起部13を形成することもできる。以下では、止め段部13として図1乃至図2に示す段差部13を挙げて説明するが、これに止め段部13の形状や位置が限定されるものではない。
【0049】
結合部11の外面または内面のいずれか一方と、蛇腹管2の一端部25の内面または外面とがそれぞれ対応して接する。すなわち、結合部11の内面に蛇腹管2の一端部25が挿入されると、蛇腹管2の一端部25の外面が結合部11の内面と接する。この時、溶加材3は結合部11の内面に塗布される。また、結合部11の外面に蛇腹管2の一端部25が挿入されると、蛇腹管2の一端部25の内面が結合部11の外面と接する。この時、溶加材3は結合部11の外面に塗布される。以下では、蛇腹管2の一端部25の外面が結合部11の内面と接する前者を挙げて説明し、後者については図5で説明する。
【0050】
段差部13の肉厚tは0.01mm乃至0.03mmとする。段差部13は、蛇腹管2を支持し、また段差部13による蛇腹管2と蛇腹管継ぎ手1間の流路を一致させるために小さい肉厚とすることが好ましく、特に、0.01mm乃至0.03mmにすればよい。
【0051】
溶接時に、少なくとも段差部13と蛇腹管2の先端面Dとが溶加材3によって溶接される。上述のように、蛇腹管継ぎ手1と蛇腹管2の一端部25とが溶接される時に、蛇腹管継ぎ手1の段差部13と蛇腹管2の一端部25の先端面Dとの間で溶加材3による溶接がなされる。すなわち、段差部13と蛇腹管2の先端面Dとが溶接されることで、蛇腹管2の一端部25と結合部11との間で溶融した溶加材3が流れ出ることを防ぐ。
【0052】
溶加材3が溶接される部分は、蛇腹管2の先端面Dの一部でよく、また、先端面D全体の周りと段差部13との間が溶接されるとよい。上述のように、段差部13は、溶加材3が溶融時に流れ出ることを防き、かつ、蛇腹管2の先端面Dと段差部13との間に溶加材3が溶融して溶接がなされるようにする。また、蛇腹管2の先端面Dと段差部13との間が溶接されることによって、後述する蛇腹管2の山21及び谷23に塗布された溶加材3が外部に流れ出ることなく蛇腹管継ぎ手1の結合部11と溶接されるようにする。
【0053】
図2及び図4は、蛇腹管継ぎ手1に蛇腹管2が溶接された状態を示す図である。
【0054】
図2及び図4を参照すると、蛇腹管2の山21及び谷23の少なくとも一部が溶加材3によって結合部11に溶接される。
【0055】
溶加材3は、上述のように、蛇腹管継ぎ手1の内面と蛇腹管2の一端部25の外面との間に設けられ、この状態で溶融して溶接される。溶加材3が溶融すると、蛇腹管2の先端面Dと段差部13との間で溶融し、かつ、図2に示すように、蛇腹管継ぎ手1の結合部11に挿入された蛇腹管2の一端部25における谷23の少なくとも一部に溶加材3が充填されて蛇腹管2を溶接することができる。すなわち、溶加材3が結合部11に塗布された状態で蛇腹管2の一端部25が挿入されると、結合部11と蛇腹管2の一端部25との間の空間である谷23の少なくとも一部に溶加材3が充填され、この状態で溶融して結合部11と蛇腹管2の一端部25とを溶接する。また、図4に示すように、蛇腹管2の一端部25の少なくとも一部の山21と結合部11との間に溶加材3が溶融して溶接されてもよい。また、溶加材3は、山21の一部及び谷23の一部に充填されて結合部11と蛇腹管2の一端部25とを溶接してもよい。
【0056】
図5乃至図7は、本発明の他の実施例に係る蛇腹管継ぎ手1を示す図である。
【0057】
図5を参照すると、本発明の他の実施例に係る蛇腹管継ぎ手1は、外面に止め段部13が形成され、蛇腹管2の一端部25の内面に結合部11の外面が接する。
【0058】
蛇腹管2の一端部25が蛇腹管継ぎ手1の結合部11に外嵌されてもよい。この場合、溶加材3は、蛇腹管2の一端部25の内面または結合部11の外面に塗布され、好ましくは、図5に示すように、結合部11の外面に塗布される。
【0059】
溶加材3が塗布されている状態で蛇腹管2の一端部25が外嵌され、止め段部13は段差部13として蛇腹管継ぎ手1の外面に形成されている。蛇腹管2の一端部25が結合部11の外面に嵌って接し、溶加材3は、蛇腹管2の一端部25の山または谷の少なくとも一部と結合部11の外面との間で溶融して溶接される。段差部13は、蛇腹管2の一端部25の先端面Dと溶接されて、溶加材3が溶融時に蛇腹管継ぎ手1の外面に沿って流れていくことを防止する。
【0060】
図6乃至図7を参照すると、本発明の他の実施例に係る蛇腹管継ぎ手1が接合された蛇腹管2は、蛇腹管2にらせん状の山21と谷23が形成され、結合部11にも、蛇腹管2の山21と谷23に対応するらせん状の山15と谷17が形成され、蛇腹管2が結合部11に螺合するようになっている。
【0061】
蛇腹管2にはらせん状の山21と谷23が形成されており、結合部11にも、蛇腹管2の山21と谷23に対応するらせん状の山15と谷17が形成されている。
【0062】
らせん状は、スクリューのような螺旋からなるとよく、蛇腹管2と結合部11は、それらの山15と谷17によって回転しつつ螺合する。この螺合により、溶接前に一定の強度で結合した状態になる。
【0063】
結合部11に塗布された溶加材3は、螺合時に、蛇腹管2の山21及び/または谷23と結合部11との間に位置するようになる。この状態で溶加材3は溶融して蛇腹管2と結合部11とを溶接する。
【0064】
蛇腹管2の一端部25と結合部11とが締結される実施例について説明すると、図6に示すように、蛇腹管2の一端部25の外面に結合部11の内面が螺合し、段差部13は結合部11の内面に形成されている。
【0065】
蛇腹管2の一端部25が結合部11の内側に挿入されて、蛇腹管2の一端部25の外面と結合部11の内面が接する。この時、結合部11に形成された山15と谷17によって蛇腹管2が螺合する。結合部11に塗布された溶加材3は、蛇腹管2の螺合時に、蛇腹管2の谷23と結合部11との間に多量位置し、微量が蛇腹管2の寸法公差などにより蛇腹管2の山21と結合部11との間に位置することがある。溶加材3は、上述のように、溶融して結合部11と蛇腹管2とを溶接する。
【0066】
蛇腹管2の一端部25と結合部11とが締結される他の実施例について説明すると、図7に示すように、結合部11が蛇腹管2の一端部25の内側に挿入され、蛇腹管2の一端部25の内面と結合部11の外面が接する。この時、結合部11に形成された山15と谷17によって蛇腹管2が螺合する。結合部11に塗布された溶加材3は、蛇腹管2の螺合時に、蛇腹管2の山21の内側面に該当する、谷23のように形成された部分と結合部11との間に多量位置し、微量が蛇腹管2の寸法公差などにより蛇腹管2の谷23と結合部11との間に位置することがある。溶加材3は、上述のように溶融して結合部11と蛇腹管2を溶接する。
【0067】
図8は、本発明の一実施例に係る蛇腹管2と蛇腹管継ぎ手1との溶接方法を示すフローチャートである。
【0068】
図8を参照すると、本発明の一実施例に係る蛇腹管2と蛇腹管継ぎ手1との溶接方法は、山21と谷23が形成された蛇腹管2の一端部25と、蛇腹管2の一端部25が挿入される蛇腹管継ぎ手1の結合部11のうち少なくとも一方に溶加材3を塗布する溶加材塗布段階(S10)、蛇腹管2の一端部25を蛇腹管継ぎ手1に形成された止め段部13に突き当たって止まるように蛇腹管継ぎ手1の結合部11に挿入する蛇腹管挿入段階(S20)、及び蛇腹管継ぎ手1に挿入された蛇腹管2の少なくとも一部を加熱して溶加材3によって蛇腹管2の一端部25と蛇腹管継ぎ手1とが溶接されるようにする蛇腹管溶接段階(S30)を含む。
【0069】
溶加材塗布段階(S10)では、蛇腹管2の一端部25と蛇腹管継ぎ手1の結合部11のうち少なくとも一方に溶加材3が塗布される。図1乃至図7で上述したように、蛇腹管2の一端部25と蛇腹管継ぎ手1が挿入される実施例によって溶加材3の塗布される位置がそれぞれ異なる。蛇腹管2の一端部25と結合部11が挿入される実施例に対応して溶加材3の塗布される位置が決定されるようにする。
【0070】
蛇腹管挿入段階(S20)は、図1乃至図5に示した蛇腹管2の一端部25と結合部11が挿入される実施例に従って挿入される。具体的に、結合部11の外面または内面のいずれかと、蛇腹管2の一端部25の内面または外面がそれぞれ対応して接する。もし、結合部11の内面に蛇腹管2の一端部25が挿入されると、蛇腹管2の一端部25の外面が結合部11の内面と接する。この時、溶加材塗布段階(S10)の溶加材3は、結合部11の内面に塗布されている。また、結合部11の外面に蛇腹管2の一端部25が外嵌されると、蛇腹管2の一端部25の内面が結合部11の外面と接する。この時、溶加材塗布段階(S10)の溶加材3は結合部11の外面に塗布されている。以下では、蛇腹管2の一端部25の外面が結合部11の内面と接するとして説明するが、これに本発明の思想が限定されるものではない。
【0071】
また、蛇腹管挿入段階(S20)では、図6または図7に示すように、らせん状の山21と谷23が形成された蛇腹管2が、蛇腹管2の山21と谷23に対応するらせん状の山21と谷23が形成された結合部11に螺合しつつ挿入されてもよい。
【0072】
蛇腹管挿入段階(S20)は、溶加材3が塗布された状態で蛇腹管2の一端部25が蛇腹管継ぎ手1に挿入され、この時、止め段部13は、蛇腹管2の一端部25が止まるようにする。
【0073】
蛇腹管溶接段階(S30)は、上記の蛇腹管継ぎ手1と蛇腹管2を溶接装置または熱処理炉により溶接温度に達するようにし、溶接温度で溶加材3が溶融して蛇腹管2の一端部25と蛇腹管継ぎ手1とが溶接されるようにする段階である。
【0074】
蛇腹管溶接段階(S30)で、少なくとも止め段部13と蛇腹管2の先端面Dが溶加材3により溶接される。すなわち、止め段部13と蛇腹管2の先端面Dが溶接されることで、蛇腹管2の一端部25と結合部11との間に溶融している溶加材3が流れ出ることを防ぐ。また、溶加材3が溶接される部分は、蛇腹管2の先端面Dの一部でよく、また、先端面D全体における管の周りと止め段部13との間が溶接されるとよい。上述のように、止め段部13は、溶加材3の溶融時に流れ出ることを防き、蛇腹管2の先端面Dと止め段部13との間に溶加材3が溶融して溶接がなされるようにする。また、蛇腹管2の先端面Dと止め段部13との間が溶接されることによって、蛇腹管2の一端部25における山21と谷23に塗布された溶加材3が外部に流れ出ることなく蛇腹管継ぎ手1の結合部11と溶接されるようにする。
【0075】
蛇腹管溶接段階(S30)は、結合部11と、結合部11に挿入された蛇腹管2の一端部25における山21及び谷23のうち少なくとも一部とが、溶加材3によって溶接される。
【0076】
具体的に、図2に示すように、蛇腹管継ぎ手1の結合部11に挿入された蛇腹管2の一端部25の谷23の少なくとも一部に溶加材3が充填され、結合部11と蛇腹管2とを溶接することができる。すなわち、溶加材3が結合部11に塗布された状態で蛇腹管2の一端部25が挿入されると、結合部11と蛇腹管2の一端部25との間の空間である谷23の部分の少なくとも一部に溶加材3が充填され、この状態で溶加材3が溶融して結合部11と蛇腹管2の一端部25とを溶接する。
【0077】
また、図4に示すように、蛇腹管2の一端部25の少なくとも一部の山21と結合部11との間に溶加材3が溶融して溶接されてもよい。また、溶加材3は、山21の一部と谷23の一部に充填されて結合部11と蛇腹管2の一端部25とを溶接してもよい。
また、図6乃至図7に示すように、、蛇腹管継ぎ手1の結合部11と蛇腹管2の一端部25とが螺合する場合にも、山21及び/または谷23の少なくとも一部に溶加材3が充填され、結合部11と蛇腹管2の一端部25とが溶接されてもよい。
【0078】
蛇腹管2と蛇腹管継ぎ手1との溶接時に、蛇腹管2が溶接される温度は1050℃乃至1150℃であり、この温度は、蛇腹管2の溶接応力と加工硬化を除去するための固溶化熱処理温度に相当する。溶加材3は、1050℃乃至1150℃で溶融して溶接される材質のもので、上述のようにBNi系溶加材3とすることができる。これにより、蛇腹管2の熱処理時に、同じ熱処理炉中で蛇腹管2の熱処理と溶加材3による溶接(ブレーズ溶接、Brazing)を同時に行うため、別の溶接工程を行わずにすみ、製造コストを節減することができる。なお、別の溶接工程時に発生する溶接熱による熱応力が発生せず、溶接部の熱応力による腐食を防止することができる。
【0079】
また、溶加材3が溶融して溶接される時に、蛇腹管2と蛇腹管2継ぎ手に全体的に均一に熱が伝達されるから、溶加材3の溶融及び溶接が容易に起き、溶接強度が向上する。
【0080】
また、蛇腹管2と蛇腹管継ぎ手1とが一体として熱処理炉中で溶接されるので、蛇腹管2の長さにかかわることなく溶接可能であり、このような蛇腹管継ぎ手1の存在により、別の溶接リングを必要とせず、未熟練者にも溶接が可能になる。
【0081】
最終的に、熱処理及び溶接の完了した蛇腹管2と蛇腹管継ぎ手1を熱処理炉中から取り出して冷却させることで、溶接が終了する。
【0082】
以上では、本発明の好適な実施例について図示及び説明してきたが、本発明は、上述した特定の実施例に限定されず、特許請求の範囲で請求する本発明の要旨から逸脱することなく、当該発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者には様々な変形実施が可能であり、それらの変形実施は、本発明の技術的思想や展望と別個のものとして理解されてはならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外面または内面に止め段部が形成された蛇腹管継ぎ手と、
山と谷が形成された一端部が前記止め段部に当たって止まるように前記蛇腹管継ぎ手の少なくとも一部に挿入され、溶加材によって前記一端部が前記蛇腹管継ぎ手に溶接される蛇腹管と、
を備える、蛇腹管継ぎ手付きの蛇腹管。
【請求項2】
前記蛇腹管継ぎ手は、
胴部と、
前記胴部に比べて小さい肉厚を有し、前記蛇腹管の一端部が挿入されて溶接される結合部と、
を備えて構成され、
前記止め段部は、前記胴部と前記結合部との間に形成される段差部である、請求項1に記載の蛇腹管継ぎ手付きの蛇腹管。
【請求項3】
前記蛇腹管は、少なくとも前記段差部と前記蛇腹管の先端面とが前記溶加材によって溶接された、請求項2に記載の蛇腹管継ぎ手付きの蛇腹管。
【請求項4】
前記蛇腹管は、前記山と谷のうち少なくとも一部が前記溶加材によって前記結合部と溶接された、請求項2に記載の蛇腹管継ぎ手付きの蛇腹管。
【請求項5】
前記蛇腹管は、前記結合部に挿入された前記蛇腹管の一端部における谷の少なくとも一部に、前記溶加材が充填されて溶接された、請求項4に記載の蛇腹管継ぎ手付きの蛇腹管。
【請求項6】
前記蛇腹管は、らせん状の山と谷が形成された、請求項2に記載の蛇腹管継ぎ手付きの蛇腹管。
【請求項7】
前記結合部の外面または内面と、前記結合部に挿入された前記蛇腹管の一端部の内面または外面とがそれぞれ対応して接する、請求項2乃至5のいずれか1項に記載の蛇腹管継ぎ手付きの蛇腹管。
【請求項8】
前記蛇腹管にはらせん状の山と谷が形成され、
前記結合部は、前記蛇腹管の前記山と谷に対応するらせん状の山と谷が形成され、
前記蛇腹管が前記結合部に螺合する、請求項2乃至5のいずれか1項に記載の蛇腹管継ぎ手付きの蛇腹管。
【請求項9】
山と谷が形成された蛇腹管の一端部と、前記蛇腹管の一端部が挿入される蛇腹管継ぎ手の結合部のうち少なくとも一方に溶加材を塗布する溶加材塗布段階と、
前記蛇腹管の一端部を前記蛇腹管継ぎ手に形成された止め段部に当たって止まるよに前記蛇腹管継ぎ手の結合部に挿入する蛇腹管挿入段階と、
前記蛇腹管継ぎ手に挿入された前記蛇腹管の少なくとも一部を加熱し、前記溶加材により前記蛇腹管の一端部と前記蛇腹管継ぎ手とが溶接されるようにする蛇腹管溶接段階と、
を有する、蛇腹管継ぎ手と蛇腹管との結合方法。
【請求項10】
前記蛇腹管溶接段階は1050℃乃至1150℃の炉中で行われ、溶接工程及び熱処理工程が同時に行われる、請求項9に記載の蛇腹管継ぎ手と蛇腹管との結合方法。
【請求項11】
前記蛇腹管挿入段階は、
らせん状の山と谷が形成された前記蛇腹管が、前記蛇腹管の前記山と谷に対応するらせん状の山と谷が形成された前記結合部に螺合しつつ挿入される、請求項9に記載の蛇腹管継ぎ手と蛇腹管との結合方法。
【請求項12】
前記蛇腹管溶接段階は、少なくとも前記止め段部と前記蛇腹管の先端面が前記溶加材により溶接される、請求項9に記載の蛇腹管継ぎ手と蛇腹管との結合方法。
【請求項13】
前記蛇腹管溶接段階は、
前記結合部と、前記結合部に挿入された前記蛇腹管の一端部における山と谷のうち少なくとも一部とが、前記溶加材により溶接される、請求項9乃至12のいずれか1項に記載の蛇腹管継ぎ手と蛇腹管との結合方法。
【請求項14】
前記蛇腹管溶接段階は、
前記結合部に挿入された前記蛇腹管の一端部における谷の少なくとも一部に前記溶加材が充填されて溶接される、請求項9乃至12のいずれか1項に記載の蛇腹管継ぎ手と蛇腹管との結合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2013−518725(P2013−518725A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551911(P2012−551911)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【国際出願番号】PCT/KR2011/000617
【国際公開番号】WO2011/096678
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(512072164)ドン−ア フレキシブル メタル チューブス カンパニー リミテッド (2)
【氏名又は名称原語表記】DONG−A FLEXIBLE METAL TUBES CO., LTD
【住所又は居所原語表記】4th floor,Kowon Building 20−19 Yangjae−dong,Seocho−ku,Seoul 137−130 Republic of Korea
【Fターム(参考)】