説明

蛋白質分離回収装置及び蛋白質分離回収方法

【課題】蛋白質を含む原液から蛋白質を分離して回収する蛋白質分離回収装置及び蛋白質分離回収方法において、原液をフラッシュすることによって蛋白質を凝固させる処理を安定化させる。
【解決手段】単位時間あたり一定量の原液Xを減圧容器5に供給する原液供給手段2と、凝集部6における第2スラリーX2の貯留量を検出すると共に該検出結果に基づく量の第2スラリーX2を凝集部6から分離部8に供給するスラリー供給手段7とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛋白質を含む原液から蛋白質を分離して回収する蛋白質分離回収装置及び蛋白質分離回収方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、馬鈴薯澱粉を製造する際に排水として排出されるデカンタ汁液等の蛋白質を含む原液から、蛋白質が凝固されて分離回収されている。
このように蛋白質を原液から分離回収を行う蛋白質分離回収装置では、加熱された原液をフラッシュタンク(減圧容器)にてフラッシュして蛋白質を凝固させることで凝固蛋白質を含むスラリー(第1スラリー)を生成し、さらに凝集タンクにて凝固蛋白質を凝集したスラリー(第2スラリー)を生成すると共に当該スラリーを一時的に貯留している。そして、蛋白質分離回収装置は、凝集タンクに貯留されたスラリーをデカンタ(分離部)に供給して固液分離することによって蛋白質を回収する。
【特許文献1】特許第3846131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、従来の蛋白質分離回収装置では、フラッシュタンクへの原液の供給量を凝集タンクのスラリーの液面位置に基づいて制御している。
つまり、従来蛋白質分離回収装置では、凝集タンクにおけるスラリーの液面が下がった場合に、液面の下がり量に応じた原液をフラッシュタンクへ供給している。
【0004】
しかしながら、このような蛋白質分離回収装置では、単位時間あたりにおけるフラッシュタンクから凝集タンクへのスラリーの供給量の変化が大きい場合には、凝集タンクにおけるスラリーの液面が激しく変化するため、フラッシュタンクへの原液の供給量も激しく変化する。
特に、原液として馬鈴薯澱粉を製造する際に排水として排出されるデカンタ汁液を用いた場合には、フラッシュタンクで生成されるスラリーが大量の気泡を含んでおり、フラッシュタンクでのフラッシュ量がフラッシュタンク内の圧力と温度条件で定められる量に対して変動し、フラッシュタンクから凝集タンクへ移行すべきスラリーの量が変化しやすい。このため、単位時間のスラリーの供給量が激しく変化しやすい。
【0005】
一般的には、フラッシュタンクへの原液の供給量の制御は、応答速度の速い空気作動弁等を使用している。しかしながら、このような応答速度の速い空気動作弁を使用した場合であっても、上述のように凝集タンクにおけるスラリーの液面が激しく変化する場合には、フラッシュタンクへの原液の供給量を凝集タンクにおけるスラリーの液面変化に追従させることが難しい。
このため、フラッシュタンクへの原液の供給量が求められる適正量に対して変動してしまい、フラッシュタンクにおける原液の処理が安定しない。つまり、蛋白質分離回収装置の最も重要な処理である、原液をフラッシュすることによって蛋白質を凝固させる処理が安定しない。
【0006】
また、蛋白質分離回収装置においては、フラッシュタンクにおける安定処理のために、フラッシュタンクへ供給される原液の加熱温度を一定に保つことが好ましい。
従来の蛋白質分離回収装置では、フラッシュタンクに供給される原液の温度を検出しながら、原液にスチームを供給するフィードバック制御にて原液を一定温度に加熱しているが、上述のようにフラッシュタンクへの原液の供給量が激しく変化する場合には、原液を一定温度に加熱することが困難となる。
つまり、フラッシュタンクに供給される原液の温度は、原液とスチームとの相対量によって規定される。このため、フラッシュタンクへの原液の供給量が激しく変化する場合には、原液とスチームとの相対量をフィードバック制御によって一定に保つことが困難となり、原液を一定温度に加熱することが困難となる。
このように従来の蛋白質分離回収装置では、フラッシュタンクへの原液の供給量が激しく変化する場合には、フラッシュタンクに供給する原液の温度を安定化することができず、フラッシュタンクにおける原液の処理が安定しない。つまり、原液をフラッシュすることによって蛋白質を凝固させる処理が安定しない。
【0007】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、蛋白質を含む原液から蛋白質を分離して回収する蛋白質分離回収装置及び蛋白質分離回収方法において、原液をフラッシュすることによって蛋白質を凝固させる処理を安定化させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の蛋白質分離回収装置は、蛋白質を含むと共に加熱された原液をフラッシュする減圧容器と、該減圧容器にて生成された凝固蛋白質を含む第1スラリーが供給されると共に上記凝固蛋白質を凝集する凝集部と、該凝集部にて凝集された凝固蛋白質を含む第2スラリーを固液分離する分離部と、上記減圧容器に供給される上記原液を加熱する加熱部とを備える蛋白質分離回収装置であって、単位時間あたり一定量の上記原液を上記減圧容器に供給する原液供給手段と、上記凝集部における上記第2スラリーの貯留量を検出すると共に該検出結果に基づく量の上記第2スラリーを上記凝集部から上記分離部に供給するスラリー供給手段とを備えることを特徴とする。
【0009】
このような特徴を有する本発明の蛋白質分離回収装置によれば、原液供給手段によって単位時間あたり一定量の原液が減圧容器に供給され、スラリー供給手段によって凝集部における第2スラリーの貯留量が検出されると共にこの検出結果に基づく量の第2スラリーが分離部に供給される。
【0010】
また、本発明の蛋白質分離回収装置においては、上記スラリー供給手段は、上記検出結果に基づいて上記凝集部における上記第2スラリーの貯留量が一定となるように上記凝集部から上記分離部に供給する第2スラリーの量を決定するという構成を採用する。
【0011】
また、本発明の蛋白質分離回収装置においては、上記スラリー供給手段は、上記第2スラリーを上記凝集部から上記分離部に供給する供給ポンプと、上記凝集部における上記第2スラリーの貯留量を検出すると共に該検出結果に基づいて上記供給ポンプを駆動する貯留量指示調節部とを備えるという構成を採用する。
【0012】
また、本発明の蛋白質分離回収装置においては、上記原液は、馬鈴薯澱粉を製造する際に排水として排出されるデカンタ汁液であるという構成を採用する。
【0013】
次に、本発明の蛋白質分離回収方法は、蛋白質を含むと共に加熱された原液を減圧してフラッシュすることによって凝固蛋白質を含む第1スラリーを生成する第1スラリー生成工程と、上記第1スラリーに含まれる上記凝固蛋白質を凝集することで第2スラリーを生成すると共に上記第2スラリーを一時的に貯留する第2スラリー生成工程と、上記第2スラリーを固液分離する固液分離工程と、上記第1スラリー生成工程に供される上記原液を加熱する加熱工程とを有する蛋白質分離回収方法であって、上記第1スラリー生成工程に一定量の上記原液を供すると共に、上記第2スラリー生成工程における上記第2スラリーの貯留量に基づく量の上記第2スラリーを上記分離工程に供することを特徴とする。
【0014】
このような特徴を有する本発明の蛋白質分離回収方法によれば、単位時間あたり一定量の原液が第1スラリー生成工程に供され、第2スラリー生成工程における第2スラリーの貯留量に基づく量の第2スラリーが分離工程に供される。
【0015】
また、本発明の蛋白質分離回収方法においては、上記第2スラリー生成工程における上記第2スラリーの貯留量が一定となるように上記分離工程に供する上記第2スラリーの量を決定するという構成を採用する。
【0016】
また、本発明の蛋白質分離回収方法においては、上記原液は、馬鈴薯澱粉を製造する際に排水として排出されるデカンタ汁液であるという構成を採用する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の蛋白質分離回収装置によれば、原液供給手段によって単位時間あたり一定量の原液が減圧容器に供給され、スラリー供給手段によって凝集部における第2スラリーの貯留量が検出されると共にこの検出結果に基づく量の第2スラリーが分離部に供給される。
つまり、本発明の蛋白質分離回収装置によれば、単位時間あたりの減圧容器から凝集部に供給される第1スラリーの供給量が大きく変化する場合であっても、減圧容器に対しては常に一定の原液が供給される。このため、減圧容器への原液の供給量が一定となり、減圧容器における処理を安定させることが可能となる。また、減圧容器への原液の供給量が一定となることで、原液を一定温度に加熱することが容易となり、これによっても減圧容器における処理を安定させることが可能となる。
さらに本発明の蛋白質分離回収装置によれば、単位時間あたりの減圧容器から凝集部に供給される第1スラリーの供給量が大きく変化する場合は、この変化量は分離部への第2スラリーの供給量によって吸収される。このため、凝集部における第2スラリーの貯留量を制御することができ、凝集部にて減圧容器から送り出された第1スラリーを常に受け入れることができる。したがって、減圧容器にて第1スラリーが溢れることが防止され、減圧容器を常に処理可能な状態に保つことができる。
このような本発明の蛋白質分離回収装置によれば、減圧容器における処理を安定させることができると共に常に減圧容器における処理を行える環境を維持することができる。したがって、本発明の蛋白質分離回収装置によれば、原液をフラッシュすることによって蛋白質を凝固させる処理を安定化させることが可能となる。
【0018】
本発明の蛋白質分離回収方法によれば、単位時間あたり一定量の原液が第1スラリー生成工程に供され、第2スラリー生成工程における第2スラリーの貯留量に基づく量の第2スラリーが分離工程に供される。
つまり、本発明の蛋白質分離回収方法によれば、単位時間あたりの第1スラリー生成工程から第2スラリー生成工程に供される第1スラリーの供給量が大きく変化する場合であっても、第1スラリー生成工程に対しては常に一定の原液が供される。このため、第1スラリー生成工程への原液の供給量が一定となり、第1スラリー生成工程における処理を安定させることが可能となる。また、第1スラリー生成工程への原液の供給量が一定となることで、原液を一定温度に加熱することが容易となり、これによっても第1スラリー生成工程における処理を安定させることが可能となる。
さらに本発明の蛋白質分離方法によれば、単位時間あたりの第1スラリー生成工程から第2スラリー生成工程に供される第1スラリーの供給量が大きく変化する場合は、この変化量は分離工程への第2スラリーの供給量によって吸収される。このため、第2スラリー生成工程における第2スラリーの貯留量を制御することができ、第2スラリー生成工程にて第1スラリー生成工程から送り出された第1スラリーを常に受け入れることができる。したがって、第1スラリー生成工程にて第1スラリーが溢れることが防止され、第1スラリー生成工程を常に処理可能な状態に保つことができる。
このような本発明の蛋白質分離回収方法によれば、第1スラリー生成工程における処理を安定させることができると共に常に第1スラリー生成工程における処理を行える環境を維持することができる。したがって、本発明の蛋白質分離回収方法によれば、原液をフラッシュすることによって蛋白質を凝固させる処理を安定化させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明に係る蛋白質分離回収装置及び蛋白質分離回収方法の一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0020】
図1は、本実施形態の蛋白質分離回収装置の概略構成を示すフロー図である。この図に示すように、本実施形態の蛋白質分離回収装置S1は、原液タンク1、原液供給部2(原液供給手段)、加熱部3、ジェットクッカ4、フラッシュタンク5(減圧容器)、凝集タンク6(凝集部)、スラリー供給部7(スラリー供給手段)、デカンター8(分離部)、を備えている。
【0021】
原液タンク1は、外部から供給される原液Xを一時的に貯留する容器である。
この原液タンク1に貯留される原液Xは、蛋白質を含む液体であり、本実施形態においては、馬鈴薯澱粉を製造する際に排水として排出されるデカンタ汁液を用いるものとする。
【0022】
原液供給部2は、原液タンク1に貯留された原液Xを下流のフラッシュタンク5側に送り出すものであり、本実施形態においては、単位時間あたりに一定量の原液Xをフラッシュタンク側5に送り出す。つまり、このような原液供給部2によって、単位時間あたり一定量の原液Xがフラッシュタンク5に供給される。
【0023】
より詳細には、原液供給部2は、原液タンク1から原液Xを送り出すための原液供給ポンプ2aと、該原液供給ポンプ2aから送り出された原液Xの流量を一定に制御する流量指示調節部2bとを備えている。さらに流量指示調節部2bは、原液供給ポンプ2aから送り出された原液Xの流量を検出する流量検出センサ2cと、開度に応じた流量の原液Xを通過させるバルブ2dと、流量検出センサ2cの検出結果に基づいてバルブ2dの開度を調節する流量指示調節計2eとを備えている。
そして、このように構成された原液供給部2は、原液供給ポンプ2aより送り出された原液Xの流量を流量検出センサ2cで検出し、この検出結果に応じて流量指示調節計2eがバルブ2dの開度を調節することによって、単位時間あたり一定量の原液Xをフラッシュタンク5側に送り出す。
【0024】
加熱部3は、原液供給部2から送り出された原液X(すなわちフラッシュタンク5に供給される原液X)をスチームYにて一定温度に加熱するものである。
この加熱部3は、原液Xの流れを利用して原液XにスチームYを供給するスチームインジェクタ3aと、スチームYが供給された原液Xの温度を一定に制御する温度指示調節部3bとを備えている。さらに、温度指示調節部3bは、スチームYが供給された原液X(スチームインジェクタ3aから排出された原液X)の温度を検出する温度検出センサ3cと、開度に応じた流量のスチームYをスチームインジェクタ3aに通過させるバルブ3dと、温度検出センサ3cの検出結果に基づいてバルブ3dの開度を調節する温度指示調節計3eとを備えている。
そして、このように構成された加熱部3は、スチームインジェクタ3aから排出された原液Xの温度を温度検出センサ3cで検出し、この検出結果に応じて温度指示調節計3eがバルブ3dの開度を調節することによって、原液Xを一定温度に加熱する。
【0025】
ジェットクッカ4は、原液Xと加熱部3にて供給されたスチームYとを効率的に混合してフラッシュタンク5に供給するものである。
このジェットクッカ4によって、スチームYと効率的に混合された原液Xは、糊状となってフラッシュタンク5に供給される。
【0026】
フラッシュタンク5は、内部が減圧された容器であり、加熱された原液Xをフラッシュすることによって、原液Xに含まれる蛋白質を凝固させて、凝固された蛋白質を含むスラリーX1(第1スラリー)を生成するものである。
このフラッシュタンク5は、上記スラリーX1を下方から排出すると共に、スラリーX1を生成する際に発生した気化成分であるベーパーZを上方から外部に排出する。なお、フラッシュタンク5から排出されたベーパーZは、熱回収される等により再利用される。
【0027】
凝集タンク6は、フラッシュタンク5にて生成されたスラリーX1が供給されると共に、スラリーX1中の凝固蛋白質を凝集することによって凝集された凝固蛋白質を含むスラリーX2(第2スラリー)を生成するものである。
この凝集タンク6は、スラリーX1が供給されると共にスラリーX2を一時的に貯留する容器6aと、容器6a内を攪拌することによって凝固蛋白質を凝集する攪拌装置6bとを備えている。
【0028】
スラリー供給部7は、凝集タンク6におけるスラリーX2の貯留量を検出すると共にこの検出結果に基づく量のスラリーX2を凝集タンク6からデカンター8に供給するものである。そして、本実施形態においてスラリー供給部7は、凝集タンク6におけるスラリーX2の貯留量が一定となるように凝集タンク6からデカンター8に供給するスラリーX2の量を決定する。
なお、本実施形態においては、スラリー供給部7は、スラリーX2の貯留量をスラリーX2の液面に置き換えて制御を行っている。すなわち、スラリー供給部7は、凝集タンク6におけるスラリーX2の液面を検出すると共にこの検出結果に基づく量のスラリーX2を凝集タンク6からデカンター8に供給する。また、スラリー供給部7は、凝集タンク6におけるスラリーX2の液面が一定となるように凝集タンク6からデカンター8に供給するスラリーX2の量を決定する。
【0029】
より詳細には、スラリー供給部7は、スラリーX2を凝集タンク6からデカンター8に供給するスラリー供給ポンプ7a(供給ポンプ)と、凝集タンク6におけるスラリーX2の液面を検出すると共にこの検出結果に基づいてスラリー供給ポンプ7aを駆動する液面指示調節部7bとを備えている。さらに液面指示調節部7bは、凝集タンク6におけるスラリーX2の液面を検出する液面検出センサ7cと、該液面検出センサ7cの検出結果に基づいてスラリー供給ポンプ7aを駆動する液面指示調節計7dとを備えている。
そして、このように構成されたスラリー供給部7は、凝集タンク6に貯留されたスラリーX2の液面を液面検出センサ7cにて検出し、この検出結果に応じて液面指示調節計7dがスラリー供給ポンプ7aを駆動することによって、凝集タンク6におけるスラリーX2の液面を一定に制御する。
【0030】
デカンター8は、凝集タンク6にて凝集された凝固蛋白質を含むスラリーX2を固液分離するものであり、固体成分を回収蛋白X3として排出すると共に、液体成分を分離液X4として排出する。
【0031】
次に、このように構成された本実施形態の蛋白質分離回収装置の動作(蛋白質分離回収方法)について説明する。
【0032】
まず、原液タンク1に貯留された原液Xは、原液供給部2によって、フラッシュタンク5側に単位時間あたり一定量で送り出される。
より詳細には、原液Xは、原液供給ポンプ2aにより送り出され、その流量が流量検出センサ2cによって検出される。そして、当該検出結果に基づいて流量指示調節計2eがバルブ2dの開度を調節し、一定量の原液Xがバルブ2dを通過する。この結果、原液Xは、フラッシュタンク5側に一定量で送り出される。
【0033】
続いて、原液供給部2から送り出された原液Xは、加熱部3によって一定温度に加熱される(加熱工程)。
より詳細には、原液Xは、スチームインジェクタ3aを介してスチームYが供給されることによって加熱される。そして、スチームYが供給されることによって加熱された原液Xの温度が温度検出センサ3cによって検出され、この検出結果に基づいて温度指示調節計3eがバルブ3dの開度を調節することによって、原液Xを一定の温度に加温する量のスチームYがスチームインジェクタ3aに供給される。この結果、フラッシュタンク5に供給される(後述する第1スラリー生成工程に供される)原液Xは、一定温度に加熱される。
【0034】
ここで、本実施形態の蛋白質分離回収装置においては、原液供給部2から送り出される原液Xが一定量とされている。このため、原液Xを一定温度に加熱するための量のスチームを正確に原液Xに供給することが可能となり、確実に原液Xを一定温度に加熱することが可能となる。
【0035】
続いて、加熱部3にて加熱された原液Xは、ジェットクッカ4によって効率的にスチームYと混合されて糊状とされる。
【0036】
続いて、原液Xは、減圧されたフラッシュタンク5にてフラッシュされる。これによって、原液Xに含まれる蛋白質が凝固し、凝固蛋白質を含むスラリーX1が生成される(第1スラリー生成工程)。
そして、スラリーX1は、フラッシュタンク5の下方から排出される。また、スラリーX1の生成の際に発生した気化成分であるベーパーZはフラッシュタンク5の上方から排出される。
【0037】
ここで、本実施形態の蛋白質分離回収装置においては、原液供給部2から一定量の原液Xが送り出されることによって、フラッシュタンク5に常に一定量の原液Xが供給される。つまり、第1スラリー生成工程に常に一定の原液Xが供給される。このため、フラッシュタンク5における処理(すなわち第1スラリー生成工程における処理)を安定させることが可能となる。
さらに、上述のように本実施形態の蛋白質分離回収装置においては、加熱部3にて確実に原液Xを一定温度に加熱することが可能となるため、これによってもフラッシュタンク5における処理(すなわち第1スラリー生成工程における処理)を安定させることが可能となる。
【0038】
続いて、スラリーX1は、凝集タンク6に供給される。そして、スラリーX1に含まれる凝固蛋白質が凝集されることによって、凝集された凝固蛋白質を含むスラリーX2が生成される(第2スラリー生成工程)。このスラリーX2は、凝集タンク6にて一時的に貯留される。
【0039】
続いて、凝集タンク6に貯留されたスラリーX2は、スラリー供給部7によって凝集タンク6におけるスラリーX2の液面が一定となるようにデカンター8に供給される。
より詳細には、凝集タンク6に貯留されたスラリーX2の液面が液面検出センサ7cによって検出され、この検出結果に基づいて液面指示調節計7dがスラリー供給ポンプ7aをスラリーX2の液面が所定の高さとなるように駆動する。この結果、凝集タンク6におけるスラリーX2の液面が一定となるようにスラリーX2がデカンター8に供給される。つまり、第2スラリー生成工程におけるスラリーX2の貯留量が常に一定となるように決定し、当該決定に基づいた量のスラリーX2がデカンター8(後述の固液分離工程)に供される。
【0040】
なお、本実施形態の蛋白質分離回収装置においては、原液Xとして馬鈴薯澱粉を製造する際に排水として排出されるデカンタ汁液を用いている。このため、フラッシュタンク5において生成されるスラリーX1が大量の気泡を含んでおり、これによってフラッシュタンク5から凝集タンク6へのスラリーX1の移行量が、単位時間あたりで大きく変動する。
これに対して、本実施形態の蛋白質分離回収装置においては、スラリー供給部7にて凝集タンク6に貯留されるスラリーX2の液面を一定に制御する。このため、フラッシュタンク5から凝集タンク6へのスラリーX1の移行量が大きく変化する場合であっても、この変化量はデカンター8へのスラリーX2の供給量によって吸収される。
よって、凝集タンク6におけるスラリーX2の貯留量を一定に制御することができ、凝集タンク6にてフラッシュタンク5から送り出されたスラリーX1を常に受け入れることができる。したがって、フラッシュタンク5にてスラリーX1が溢れることが防止され、フラッシュタンク5を常に処理可能な状態に保つことができる。
【0041】
続いて、デカンター8に供給されたスラリーX2は、固液分離される(固液分離工程)。これによって、スラリーX2が固体成分と液体成分とに分離され、固体成分が回収蛋白X3として排出され、液体成分が分離液X4として排出される。
【0042】
以上のような本実施形態の蛋白質分離回収装置によれば、原液供給部2によって単位時間あたり一定量の原液Xがフラッシュタンク5に供給され、スラリー供給部7によって凝集タンク6におけるスラリーX2の貯留量が検出されると共にこの検出結果に基づく量のスラリーX2がデカンター8に供給される。
つまり、本実施形態の蛋白質分離回収装置によれば、単位時間あたりのフラッシュタンク5から凝集タンク6に供給されるスラリーX1の供給量が大きく変化する場合であっても、フラッシュタンク5に対しては常に一定の原液Xが供給される。このため、フラッシュタンク5への原液Xの供給量が一定となり、フラッシュタンク5における処理を安定させることが可能となる。また、フラッシュタンク5への原液Xの供給量が一定となることで、原液Xを一定温度に加熱することが容易となり、これによってもフラッシュタンク5における処理を安定させることが可能となる。
さらに本実施形態の蛋白質分離回収装置によれば、単位時間あたりのフラッシュタンク5から凝集タンク6に供給されるスラリーX1の供給量が大きく変化する場合は、この変化量はデカンター8へのスラリーX2の供給量によって吸収される。このため、凝集タンク6におけるスラリーX2の貯留量を制御することができ、凝集タンク6にてフラッシュタンク5から送り出されたスラリーX1を常に受け入れることができる。したがって、フラッシュタンク5にてスラリーX1が溢れることが防止され、フラッシュタンク5を常に処理可能な状態に保つことができる。
このような本実施形態の蛋白質分離回収装置によれば、フラッシュタンク5における処理を安定させることができると共に常にフラッシュタンク5における処理を行える環境を維持することができる。したがって、本実施形態の蛋白質分離回収装置によれば、原液Xをフラッシュすることによって蛋白質を凝固させる処理を安定化させることが可能となる。
【0043】
また、本実施形態の蛋白質分離回収方法によれば、単位時間あたり一定量の原液Xが第1スラリー生成工程に供され、第2スラリー生成工程におけるスラリーX2の貯留量に基づく量のスラリーX2分離工程に供される。
つまり、本実施形態の蛋白質分離回収方法によれば、単位時間あたりの第1スラリー生成工程から第2スラリー生成工程に供される第1スラリーX1の供給量が大きく変化する場合であっても、第1スラリー生成工程に対しては常に一定の原液Xが供される。このため、第1スラリー生成工程への原液Xの供給量が一定となり、第1スラリー生成工程における処理を安定させることが可能となる。また、第1スラリー生成工程への原液Xの供給量が一定となることで、原液Xを一定温度に加熱することが容易となり、これによっても第1スラリー生成工程における処理を安定させることが可能となる。
さらに本実施形態の蛋白質分離方法によれば、単位時間あたりの第1スラリー生成工程から第2スラリー生成工程に供されるスラリーX1の供給量が大きく変化する場合は、この変化量は分離工程へのスラリーX2の供給量によって吸収される。このため、第2スラリー生成工程におけるスラリーX2の貯留量を制御することができ、第2スラリー生成工程にて第1スラリー生成工程から送り出されたスラリーX1を常に受け入れることができる。したがって、第1スラリー生成工程にてスラリーX1が溢れることが防止され、第1スラリー生成工程を常に処理可能な状態に保つことができる。
このような本実施形態の蛋白質分離回収方法によれば、第1スラリー生成工程における処理を安定させることができると共に常に第1スラリー生成工程における処理を行える環境を維持することができる。したがって、本実施形態の蛋白質分離回収方法によれば、原液Xをフラッシュすることによって蛋白質を凝固させる処理を安定化させることが可能となる。
【0044】
なお、本実施形態の蛋白質分離回収装置及び蛋白質分離回収方法によれば、凝集タンク6(第2スラリー生成工程)から排出されるスラリーX2の量は、単位時間あたりに変動する。このため、デカンター8における処理時間がばらつき、デカンターの処理効率が低下する懸念がある。
しかしながら、原液Xをフラッシュすることによって蛋白質を凝固させる処理が安定化されるため、スラリーX2の脱水性が改善され、従来の蛋白質分離回収装置及び蛋白質分離回収方法と同様の処理時間でスラリーX2を固液分離することができる。したがって、本実施形態の蛋白質分離回収装置及び蛋白質分離回収方法によれば、デカンターの処理効率を低下させることがない。
【0045】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る蛋白質分離回収装置及び蛋白質分離回収方法の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0046】
例えば、上記実施形態においては、原液Xとして、馬鈴薯澱粉を製造する際に排水として排出されるデカンタ汁液を用いる構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、蛋白質を含む液体であれば、原液として用いることができる。
【0047】
また、上記実施形態においては、凝集タンク6におけるスラリーX2の液面を検出することによって、凝集タンク6におけるスラリーX2の貯留量を間接的に検出する構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば凝集タンク6におけるスラリーX2の重量を検出することによって、凝集タンク6におけるスラリーX2の貯留量を検出しても良い。
【0048】
また、上記実施形態においては、スチームYを原液Xに供給することによって、原液Xを加熱する構成について説明した。
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばヒータ等の他の加熱部を用いて原液Xを加熱しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の一実施形態における蛋白質分離回収装置の概略構成を示すフロー図である。
【符号の説明】
【0050】
S1……蛋白質分離回収装置、1……原液タンク、2……原液供給部(原液供給手段)、2a……原液供給ポンプ、2b……流量指示調節部(流量指示調節手段)、3……加熱部、3a……スチームインジェクタ、3b……温度指示調節部、4……ジェットクッカ、5……フラッシュタンク(減圧容器)、6……凝集タンク(凝集部)、7……スラリー供給部(スラリー供給手段)、7a……スラリー供給ポンプ(供給ポンプ)、7b……液面指示調節部(貯留量指示調節部)、8……デカンター(分離部)、X……原液、Y……スチーム、X1……スラリー(第1スラリー)、X2……スラリー(第2スラリー)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛋白質を含むと共に加熱された原液をフラッシュする減圧容器と、該減圧容器にて生成された凝固蛋白質を含む第1スラリーが供給されると共に前記凝固蛋白質を凝集する凝集部と、該凝集部にて凝集された凝固蛋白質を含む第2スラリーを固液分離する分離部と、前記減圧容器に供給される前記原液を加熱する加熱部とを備える蛋白質分離回収装置であって、
単位時間あたり一定量の前記原液を前記減圧容器に供給する原液供給手段と、
前記凝集部における前記第2スラリーの貯留量を検出すると共に該検出結果に基づく量の前記第2スラリーを前記凝集部から前記分離部に供給するスラリー供給手段と
を備えることを特徴とする蛋白質分離回収装置。
【請求項2】
前記スラリー供給手段は、前記検出結果に基づいて前記凝集部における前記第2スラリーの貯留量が一定となるように前記凝集部から前記分離部に供給する第2スラリーの量を決定することを特徴とする請求項1記載の蛋白質分離回収装置。
【請求項3】
前記スラリー供給手段は、前記第2スラリーを前記凝集部から前記分離部に供給する供給ポンプと、前記凝集部における前記第2スラリーの貯留量を検出すると共に該検出結果に基づいて前記供給ポンプを駆動する貯留量指示調節部とを備えることを特徴とする請求項1または2記載の蛋白質分離回収装置。
【請求項4】
前記原液は、馬鈴薯澱粉を製造する際に排水として排出されるデカンタ汁液であることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の蛋白質分離回収装置。
【請求項5】
蛋白質を含むと共に加熱された原液を減圧してフラッシュすることによって凝固蛋白質を含む第1スラリーを生成する第1スラリー生成工程と、前記第1スラリーに含まれる前記凝固蛋白質を凝集することで第2スラリーを生成すると共に前記第2スラリーを一時的に貯留する第2スラリー生成工程と、前記第2スラリーを固液分離する固液分離工程と、前記第1スラリー生成工程に供される前記原液を加熱する加熱工程とを有する蛋白質分離回収方法であって、
前記第1スラリー生成工程に一定量の前記原液を供すると共に、前記第2スラリー生成工程における前記第2スラリーの貯留量に基づく量の前記第2スラリーを前記分離工程に供することを特徴とする蛋白質分離回収方法。
【請求項6】
前記第2スラリー生成工程における前記第2スラリーの貯留量が一定となるように前記分離工程に供する前記第2スラリーの量を決定することを特徴とする請求項5記載の蛋白質分離回収方法。
【請求項7】
前記原液は、馬鈴薯澱粉を製造する際に排水として排出されるデカンタ汁液であることを特徴とする請求項5または6記載の蛋白質分離回収方法。






【図1】
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【公開番号】特開2009−280534(P2009−280534A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−135511(P2008−135511)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】