説明

蛍光体ペーストおよびディスプレイ用部材の製造方法

【課題】本発明は、PDPへの塗布時にセル内に気泡を巻き込みにくく、塗布抜けのない蛍光体ペーストを提供する。
【解決手段】
蛍光体粉末、バインダー樹脂および有機溶剤を含む蛍光体ペーストであって、ペースト中の固形分の含有量が合計で50〜70質量%の範囲内、バインダー樹脂100質量部に対する蛍光体粉末の含有量が300〜800質量部の範囲内であり、かつ前記有機溶剤がジヒドロターピニルアセテート、ターピニルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルおよびジエチレングリコールブチルメチルエーテルから選ばれる有機溶媒A、テルピネオールおよびベンジルアルコールを含み、ペースト中の前記有機溶媒Aの含有量が3〜15質量%の範囲内、テルピネオールの含有量が1〜40質量%の範囲内、ベンジルアルコールの含有量が4〜40質量%の範囲内とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光体粉末が均一に分散された蛍光体ペースト、特にプラズマディスプレイパネル(以下PDPとする)に用いる蛍光体ペーストおよびそれを用いたディスプレイ用部材の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
PDPは、前面ガラス基板と背面ガラス基板との間に備えられた放電空間内で電極間にプラズマ放電を生じさせ、上記放電空間内に封入されたガスから発生した紫外線により放電空間内の蛍光体が発光することにより表示を行うものである。一般的に、PDPの背面板は基板上にアドレス電極、アドレス電極を覆う誘電体層、誘電体層上に隔壁を有し、蛍光体層は、隔壁で区切られたセル内、すなわちセル底部である誘電体層上と隔壁の側面に形成されており、PDPの高輝度化と輝度ムラ抑制のためには、セル底部の誘電体層上面および隔壁の側面に適切な厚みで蛍光体層が形成され、かつ、セル間の蛍光体厚みばらつきを一定以下に抑える必要がある。一般に蛍光体層は蛍光体粉末、バインダー樹脂および有機溶剤を含む蛍光体ペーストをセル内に塗布し、乾燥、焼成して設けられる。また、蛍光体ペーストをセル内に高精度かつ均一に塗布する方法として、吐出孔を有するノズルを用いて、吐出孔から蛍光体ペーストを連続的に吐出しつつ、ノズルと、基板を相対的に移動させてストライプ状に塗布する方法が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
このような方法で蛍光体層を形成する場合に、セル底部、隔壁の側面に適切な厚みで蛍光体層を形成し、かつ、セル間の蛍光体厚みばらつきを一定以下に抑えるためには、蛍光体ペーストにはセルの底部と隔壁の側面への付着性や、塗布性に関わる分散安定性、レオロジー特性等の最適化、これら特性を一定期間安定して維持することが要求される。
このような蛍光体ペーストとして、ペースト中の蛍光体粉末、バインダー樹脂の組成比率適正化による改善(特許文献2参照)や蛍光体ペーストのpHを弱塩基性側にして蛍光体粉末の分散性を向上することによる改善(特許文献3参照)といった方法が行われてきた。しかしながらこれらの蛍光体ペーストはPDPへの塗布時、気泡を巻き込みながらセル内に蛍光体ペーストが充填されることがあったため、PDPを焼成後、セル内に均一に蛍光体粉末が充填されず、塗布抜けが発生する場合があり、高精度かつ高品位の表示特性を示すPDPを歩留まり良く作製するにはペースト特性として不十分であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−233163号公報
【特許文献2】特開平11−224609号公報
【特許文献3】特許第4055251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、PDPへの塗布時にセル内に気泡を巻き込みにくく、塗布抜けのない蛍光体ペーストを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題の達成のため、本発明の蛍光体ペーストは、蛍光体粉末、バインダー樹脂および有機溶剤を含み、ペースト中の固形分の含有量が合計で50〜70質量%の範囲内、バインダー樹脂100質量部に対する蛍光体粉末の含有量が300〜800質量部の範囲内であって、かつ前記有機溶剤がジヒドロターピニルアセテート、ターピニルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルおよびジエチレングリコールブチルメチルエーテルから選ばれる有機溶剤A、テルピネオールおよびベンジルアルコールを含み、ペースト中の前記有機溶剤Aの含有量が3〜15質量%の範囲内、テルピネオールの含有量が1〜40質量%の範囲内、ベンジルアルコールの含有量が4〜40質量%の範囲内のものである。
【発明の効果】
【0007】
無機ガラス粉末とのぬれ性が良好で、塗布時にセル内で短時間に蛍光体ペーストがぬれ広がるため、気泡の巻き込みがなく塗布抜けのないPDPを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の蛍光体ペーストは、蛍光体粉末、バインダー樹脂、および有機溶剤としてジヒドロターピニルアセテート、ターピニルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルおよびジエチレングリコールブチルメチルエーテルから選ばれる有機溶剤A、テルピネオールおよびベンジルアルコールを含む。
【0009】
本発明の蛍光体ペーストに用いられる蛍光体粉末は特に限定されないが、赤色発光の蛍光体粉末ではY:Eu、YVO:Eu、(Y,Gd)BO:Eu、(Y,Gd)(P,V)O4:Eu、などが挙げられる。緑色発光の蛍光体粉末では、ZnSiO:Mn、(Y,Gd)BO:Tbなどが挙げられる。青色発光の蛍光体粉末ではBaMgAl1017:Eu、BaMgAl1423:Eu、BaMgAl1627:Eu、BaMgAl1424:Eu、などが挙げられる。また各色の粉末の電荷を揃えるため、表面を金属酸化物で被膜してもよい。蛍光体粉末の平均粒子径としては0.2〜5μmのものが好ましく1〜3μmのものがより好ましい。平均粒子径が5μmより大きくなると、ペースト作製後に放置した際に蛍光体粉末が沈降しやすく塗布ムラになりやすい傾向にあり、また平均粒子径が0.2μmより小さくなると比表面積が増大し、蛍光体粉末が凝集しやすくなるため、蛍光体層が不均一になったりノズルの吐出孔がつまる等の問題が発生しやすくなる傾向がある。粉末の配合量は蛍光体ペースト中に40〜60質量%が好ましく、40〜50質量%がより好ましい。蛍光体粉末の配合量が40質量%より小さいと、所望の蛍光体層の膜厚を得るための蛍光体ペーストの塗布膜厚が大きくなり、膜厚ムラを生じやすい。一方、蛍光体粉末の配合量が60質量%よりも大きいと、蛍光体ペースト中の蛍光体粉末が沈降しやすくなったり、ペーストの粘度変化が生じやすくなる傾向にある。
【0010】
本発明で用いるバインダー樹脂としては、蛍光体ペーストを塗布した段階では隔壁の側面やセル底部に適度な膜厚で付着するほどの粘度を有し、焼成時に酸化または分解または気化し、炭化物が無機物中に残存しないことが必要で、アクリル樹脂やエチルセルロースが挙げられる。特に、蛍光体粉末の分散性の点でエチルセルロースが好ましい。バインダー樹脂の配合量は蛍光体ペースト中に5〜20質量%が好ましく5〜15質量%がより好ましい。バインダー樹脂の配合量が小さい方が焼き飛び性が良好となるが、配合量が5質量%より小さいと蛍光体ペーストの粘度が低下しやすく、蛍光体粉末に対する分散安定化効果が不足したり、蛍光体ペースト塗布に適合する粘度特性が得られにくくなるという問題がある。また、20質量%より大きいとペーストの粘度が高くなりすぎる傾向がある。
【0011】
蛍光体ペーストの塗布性及び形成される蛍光体層の形状と深く関わるものとして、蛍光体粉末量とバインダー樹脂であるエチルセルロースの量の関係が重要であり、本発明に置いてはバインダー樹脂100質量部に対して蛍光体粉末300〜800質量部であることが必要である。より好ましくは、バインダー樹脂100質量部に対して蛍光体粉末400〜600質量部である。
【0012】
隔壁の側面及び底面に蛍光体層を形成する際、側面部分への蛍光体層の付着を促すためにバインダー樹脂100質量部に対して蛍光体粉末300〜800質量部を満足する必要がある。さらにバインダー樹脂100質量部に対して蛍光体粉末400〜600質量部であると、蛍光体層の最適な形状を保ちつつ、有機溶剤等でのペースト粘度の調節幅が大きくなる。バインダー樹脂100質量部に対し蛍光体粉末が800質量部を超えると隔壁側面の蛍光体層が厚く、底面が薄くなるため目的とする輝度が達成されない。また300質量部より小さい場合は底面が厚く、隔壁側面が薄くなるため高視野角での輝度の低下を招く。
【0013】
さらに、蛍光体ペースト中の有機溶剤を除いた成分である固形分の含有量は50〜70質量%である必要がある。50質量%未満ではバインダー樹脂と蛍光体粉末の比率から、蛍光体ペースト中に必要な蛍光体粉末比率を得ることができず、所望の蛍光体層膜厚を得るための蛍光体ペーストの塗布膜厚が大きくなり、膜厚ムラを生じ易い問題がある。また隔壁で区切られたセル内に塗布する場合、隔壁の高さより蛍光体ペーストの塗布膜厚を大きくする必要があり、隣接するセル内に蛍光体ペーストが流れ込むため、混色が生じやすくなる問題がある。70質量%より大きい時ではペーストの粘度が高くなり、吐出孔を有するノズルを用いて塗布する場合、吐出性および塗布性が低下する傾向にある。また、蛍光体層膜厚が大きくなり、隔壁、誘電体層及び前面板から形成される放電空間が小さくなり、放電特性が悪化する傾向がある。
【0014】
本発明では蛍光体ペーストの基板に対するぬれ性を改善し、塗布性を向上させるために、多数の検討を行った。蛍光体ペーストに導入するためにはバインダー樹脂の溶解性、粘度、引火点といった条件があり、これらを満たすことを前提に高精細な背面板に対して塗布した場合においても、気泡を巻き込みにくく、塗布抜けが発生しづらい有機溶剤の探索を行った。この結果に基づき、本発明では、ジヒドロターピニルアセテート、ターピニルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルおよびジエチレングリコールブチルメチルエーテルから選ばれる有機溶剤Aを含有成分として用いることが必須である。前述の有機溶剤Aは、蛍光体粉末を十分に分散させ、誘電体層、隔壁を構成するガラスに対してぬれ性が良いことに起因し塗布性の向上効果が得られると推定した。しかしながら、バインダー樹脂の溶解性が低いこと、また低粘度溶剤であることから有機溶剤Aのみからなる単一溶剤でのペースト化はできない。そこで本願発明者が鋭意検討を行った結果、有機溶剤A、テルピネオール、ベンジルアルコールをある割合の混合溶媒とすることが、塗布性や蛍光体層の膜厚などを必要とする程度に保つために十分な量のバインダー樹脂を溶解すると共に、蛍光体ペーストの粘度を吐出孔を有するノズルからの吐出に適当な程度に保つ点で必要となることを見いだした。
【0015】
有機溶剤の配合量は蛍光体ペースト中に有機溶剤Aが3〜15質量%、テルピネオールが1〜40質量%、ベンジルアルコールが4〜40質量%である。配合量がこの範囲以外では、ペースト粘度の高低を制御するのが困難になる。ここで、有機溶剤Aの配合量は、複数種類の有機溶媒Aを使用する場合はその合計の配合量を指す。有機溶剤Aの配合量が3質量%より小さい場合は、無機ガラス粉末に与えるぬれ性の効果が小さくなり、塗布時に気泡を巻き込む恐れがある。有機溶剤Aの配合量が15質量%より大きいとペースト粘度が低くなってしまう。テルピネオールの配合量が1質量%より小さい場合は、テルピネオールがバインダー樹脂に対する溶解性が高いため、バインダー樹脂の溶解性を下げてしまい、塗布性が低下する。テルピネオールの配合量が40質量%より大きいと、テルピネオールが高粘度溶剤であるために、ペースト粘度が高くなり、塗布性が低下する。ベンジルアルコールの配合量が4質量%より小さい場合は、ベンジルアルコールが低粘度溶剤であるため、ペースト粘度が高くなり、塗布性が低下する。ベンジルアルコールの配合量が40質量%より大きい場合は、ペースト粘度が小さくなりすぎることで塗布時に過剰に塗れ広がり、塗布ムラなどの不具合が生じる。
【0016】
有機溶剤の配合量は、蛍光体ペースト中に、30〜50質量%であることが好ましく、40〜50質量%がより好ましい。有機溶剤の配合量が30質量%より小さいと蛍光体ペーストの粘度が高くなりすぎ、レベリング不良により塗布面の平滑性が不良となる傾向がある。一方、有機溶剤の配合量が50質量%より大きいとペースト粘度が小さくなりすぎることで蛍光体粉末が沈降しやすくなる、乾燥に多大な時間とエネルギーを要する、等の問題を生じる。
【0017】
本発明の蛍光体ペーストは各種成分を所定の組成となるように調合した後、3本ローラーやメディア分散機などの混練・分散手段によって均質に混合・分散して作製する。蛍光体ペーストの粘度は塗布方法によって最適値は異なるものの、吐出孔を有するノズルを用いて隔壁間に蛍光体ペーストを塗布する方式においては、50,000〜80,000mPa・sが好ましい。50,000mPa・s未満では、吐出孔を有するノズルを用いて塗布する際、吐出前に吐出孔から蛍光体ペーストが染み出す恐れがあり、塗布困難になることがある。また80,000mPa・sより大きい場合は吐出孔からの吐出時の圧力が高くなり過ぎるなど、ペーストの取扱が困難になる。
【0018】
本発明は前記の蛍光体ペーストを用いて基板上に塗布する工程を含むディスプレイの製造方法にも関する。
【0019】
本発明のディスプレイパネル用部材の製造方法は、基板上に誘電体層および隔壁を有するパターン化基板の誘電体層及び隔壁で囲まれた溝部に、上述の蛍光体ペーストをストライプ状に塗布し、焼成することを特徴とする。以下、本発明のディスプレイパネル用部材の製造方法の一例を挙げる。
【0020】
基板上に、書き込み電極として、感光性銀ペーストとしてフォトリソグラフィー法により、ストライプ状電極を形成し、この基板に誘電体ペーストをスクリーン印刷法により塗布した後、500〜600℃で焼成して誘電体層を形成する。
【0021】
さらに誘電体層上に感光性ガラスペーストを用いて、フォトリソグラフィー法でパターンを形成した後、500〜600℃で10〜60分間焼成し、ストライプ状の隔壁パターンを形成する。
【0022】
このようにして形成された隔壁に、上記蛍光体ペーストパターンを形成する。蛍光体ペーストパターンの形成方法は、例えばスクリーン印刷法、吐出孔を有するノズルから蛍光体ペーストを吐出する方法、感光性レジストもしくは蛍光体ペーストに感光性としてフォトリソグラフィーにより形成する方法などが挙げられる。この中でも吐出孔を有するノズルから蛍光体ペーストを吐出する方法が簡便で、低コストのPDPを得ることができるため好ましい。蛍光体ペーストパターンを形成後、乾燥、焼成して隔壁の側面及び底面に蛍光体層を形成する。蛍光体ペーストの乾燥は、脱溶媒や樹脂成分の硬化(不飽和二重結合成分の熱重合による熱架橋など)を目的として行い、温度、時間は溶媒の沸点や樹脂成分の硬化温度等に合わせて設定できるが、通常、温度80℃〜200℃、乾燥時間10〜30分の条件で行うことが好ましい。また、焼成はバインダー樹脂などの有機成分の除去を主な目的として行い、有機成分の揮散しやすさや焼成しやすさなどの有機成分の特性や蛍光体粉末の耐熱性など無機成分の特性に応じて行うことが好ましい。乾燥、焼成共に多段階の焼成プロファイルで実施しても良い。特に焼成温度を多段階とする場合、有機成分が蛍光体表面で焼き焦げ、蛍光体層の発光特性が変化するなどの問題を回避しやすくなる。乾燥後に冷却を挟まず、連続的に焼成を行うことも蛍光体層の膜厚均一性確保などの点で好ましい。
【実施例】
【0023】
次に本発明の実施例をあげて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0024】
以下の材料を用い、蛍光体ペーストを調製した。
(A)蛍光体粉末
(A−1)青色蛍光体粉末:BaMgAl1017:Eu
(A−2)赤色蛍光体粉末:(Y,Gd)BO:Eu
(A−3)緑色蛍光体粉末:ZnSiO:Mn
(B)バインダー樹脂
エチルセルロース樹脂
(C)有機溶剤
有機溶剤A(表1に記載のもの)
テルピネオール
ベンジルアルコール
蛍光体粉末、バインダー樹脂、有機溶剤を混合、更にセラミックス製の3本ローラーで混練し、蛍光体ペーストを得た。各蛍光体ペーストの各成分及び配合量を表1に示す。
(E)感光性銀ペースト
以下の組成のペーストを用いた。
銀粒子(平均粒子径1.5μm、比表面積0.80m/g):150質量部
アクリル酸10質量%、メチルメタクリレート50質量%、グリセリンモノアクリレート40質量%からなるアクリル系共重合体樹脂(酸価30mgKOH/g、水酸基価410mgKOH/g、重量平均分子量12000):12質量部
トリメチロールプロパントリアクリレート:6質量部
2−ベンジル−ジメチルアミノ−1−(4−モノフォリノフェニル)−ブタノン−1:3質量部
γ−ブチロラクトン:18質量部
(F)誘電体ペースト
以下の組成ペーストを用いた。
ガラス転移点475℃、軟化点515℃のビスマス系ガラス:40質量部
エチルセルロース樹脂(エトキシ含有率50%):5質量部
テルピネオール:40質量部
(G)感光性ガラスペースト
以下のガラスペーストを用いた。
ガラス転移点491℃、軟化点528℃のガラス粉末:24質量部
ガラス転移点652℃のフィラー粉末:6質量部
アクリル酸10質量%、メチルメタクリレート50質量%、グリセリンモノアクリレート40質量%からなるアクリル系共重合体樹脂(酸価30mgKOH/g、水酸基価410mgKOH/g、重量平均分子量12000):7質量部
トリメチロールプロパントリアクリレート:3質量部
2−ベンジル−ジメチルアミノ−1−(4−モノフォリノフェニル)−ブタノン−1:1.5質量部
ウレタン化合物UA−3348PE:(新中村化学製)1.5質量部
次に以下の測定方法で実施例1〜11及び比較例1〜7における粘度測定、蛍光体ペーストの塗布性の評価を行った。
1.粘度評価
以下の条件でペースト作製直後の粘度測定を行った。
【0025】
粘度測定において粘度計はB型粘度計(ブルックフィールド製、モデルDV−II+Pro)を用い、スピンドルはSC4−14、容器はスモールアダプター(サンプルカップ3cc)、測定温度は25℃、ずり速度は1.2[s−1]で測定を開始してから粘度値を読みとるまでの時間を5分とした。蛍光体ペーストの粘度は50,000〜80,000mPa・sの範囲を○とし、それ以外の範囲を×と評価した。
2.塗布性評価
以下に示す方法で背面板を作製した。
【0026】
次に、340×260×2.8mmサイズのガラス基板(PD−200;旭硝子(株)製)を使用してAC(交流)型プラズマディスプレイパネルの背面板を形成した。基板上に書き込み電極として、感光性銀ペースト(E)を用いてフォトリソグラフィー法により、ピッチ140μm、線幅60μm、焼成後厚み4μmのストライプ状電極を形成した。この基板に誘電体ペースト(F)をスクリーン印刷法により塗布した後、550℃で焼成して、厚み10μmの誘電体層を形成した。
【0027】
さらに、誘電体層上に感光性ガラスペースト(G)を用いてフォトリソグラフィー法でパターン形成後、570℃で15分間焼成し、ピッチ140μm、線幅20μm、高さ100μmのストライプ状の隔壁パターンを形成した。このようにして形成された隔壁パターン間に、表1に示した組成の蛍光体ペーストをピッチ420μm、孔径80μm、孔長300μmの吐出孔を有するノズルを用いて塗布、180℃で15分乾燥させた後、焼成(500℃、30分)して隔壁の側面および底部に蛍光体層を形成し、蛍光体層のセル内の蛍光体層の塗布抜けの有無を確認した。セル内の蛍光体層の塗布抜けが存在すると、そのセルは不灯セルとなり表示欠点となる。従来の評価方法は面内から任意の点を選び評価する方法であったが、本評価では背面板内の50×50mmサイズ内を観察し、塗布抜けが無い場合を○、ある場合を×と評価した。
【0028】
表1に粘度測定及び塗布性評価の結果を示す。本発明の範囲内である蛍光体ペーストを用いた実施例1〜19は塗布性が優れていたが、本発明の範囲外である蛍光体ペーストを用いた比較例1〜7では塗布性に劣る結果となった。
【0029】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光体粉末、バインダー樹脂および有機溶剤を含む蛍光体ペーストであって、ペースト中の固形分の含有量が合計で50〜70質量%の範囲内、バインダー樹脂100質量部に対する蛍光体粉末の含有量が300〜800質量部の範囲内であり、かつ前記有機溶剤がジヒドロターピニルアセテート、ターピニルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルおよびジエチレングリコールブチルメチルエーテルから選ばれる有機溶剤A、テルピネオールおよびベンジルアルコールを含み、ペースト中の前記有機溶媒Aの含有量が3〜15質量%の範囲内、テルピネオールの含有量が1〜40質量%の範囲内、ベンジルアルコールの含有量が4〜40質量%の範囲内であることを特徴とする蛍光体ペースト。
【請求項2】
基板上に誘電体層および隔壁を有するパターン化基板の前記誘電体層及び前記隔壁で囲まれた溝部に、請求項1に記載の蛍光体ペーストをストライプ状に塗布し、焼成することを特徴とするディスプレイ用部材の製造方法。
【請求項3】
吐出孔を有するノズルを用いて、前記吐出孔から前記蛍光体ペーストを連続的に吐出しつつ、前記ノズルと、前記パターン化基板を相対的に移動させることによって前記蛍光体ペーストの塗布を行う請求項2に記載のディスプレイ用部材の製造方法。

【公開番号】特開2012−177100(P2012−177100A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−10734(P2012−10734)
【出願日】平成24年1月23日(2012.1.23)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】