説明

蛍光増幅核酸の検出装置及び検出方法

【課題】小型且つ安価な増幅核酸の検出装置及び該装置を用いる増幅核酸の簡便な検出方法を提供する。
【解決手段】表面21に平面状の試料保持部210が設けられた透光性の基板2の温度を調節し、前記試料保持部210において、一種又は二種以上の蛍光物質で標識された増幅産物である蛍光標識核酸を増幅し、得られた蛍光増幅核酸中の蛍光物質を、前記基板2の裏面22から励起し、前記蛍光物質の励起により生じた蛍光201を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光増幅核酸の検出装置及び該装置を用いる蛍光増幅核酸の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトゲノムの解読は、1980年代後半にその計画の議論が始まり、1990年頃から国際協力の下に進められてきた。そして2003年には、最初のゴールである全ゲノムの構造決定がほぼ終わり、本格的なゲノム研究時代に突入した。ゲノム研究時代を迎え、タンパク質や糖の構造・機能解析や、疾患と関連したSNPs解析等の研究の促進がはかられている。
前記ゲノム研究において、DNA、RNA等の核酸の増幅という手法は重要であり、増幅方法としてPCR(Polymerase Chain Reaction)法が広く利用されている。PCR法は、例えば、目的とするDNA領域をはさんで、プライマーを結合させ、DNAポリメラーゼ反応でDNA合成反応を繰り返すことによって、目的のDNA(鋳型DNA)断片を数十万倍にも増幅できる方法である。増幅されたDNAは、ゲル電気泳動などによって分離し、定量できるが、作業が煩雑であり自動化が難しい。
【0003】
そこで、リアルタイムPCR法を行うことで、定時的にDNAの増幅量の測定を行う手法が用いられている(特許文献1参照)。リアルタイムPCR法は、サイクル毎に増幅量を確認し、増幅量に基づいて鋳型DNAの定量を行う方法であり、迅速性と定量性に優れている。
例えば、PCR装置で核酸増幅量の定量モニタリングを行う装置において、ダイナミックレンジを拡大する露光時間が自動で選択可能であり、ドリフトを自動調整することで操作を簡略化したものが提案されている(特許文献2参照)。さらにこの装置では、テレセントリックな光学系と、定量対象の核酸溶液を保持する小ビンごとに対応してレンズを備えており、小ビンごとに焦点合わせが可能となっているなど、正確なデータを取得する為の機能を数多く備えている。
【特許文献1】特表平8−510562号公報
【特許文献2】特表2003−524754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、ゲノム研究の促進により、PCR関連の装置の需要は高くなっており、様々な研究機関で設置されるようになってきている。しかし、リアルタイムPCR装置は、DNA合成反応を行う際の温度制御手段をはじめ、増幅量を定量するための複雑な光学系やレーザー光源を必要とし、測定システムが大型且つ高価であり、通常のPCR装置と比較して普及率が低いのが現状である。
例えば、特許文献2で開示されている装置では、小ビンごとの焦点合わせは、常に小ビン中央になされており、小ビン中の核酸溶液が微量である場合には、小ビン中央の核酸溶液が不足するため、小ビンレンズ、視野レンズ、対物レンズ、プラテン等の光学系を、焦点が合うように再調整する必要があり、操作が煩雑であるという問題点があった。また、この装置において核酸溶液は、その液面が小ビンやプラテンの内壁に囲まれており、励起光を核酸溶液に正確に照射して焦点を合わせるためには、テレセントリックな光学系が必要となる。そして、テレセントリックな光学系が必要になると、装置が大型且つ高価になるという問題点があった。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、小型且つ安価な増幅核酸の検出装置及び該装置を用いる増幅核酸の簡便な検出方法を提供すること課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、
請求項1に記載の発明は、一種又は二種以上の蛍光物質で標識された増幅産物である蛍光増幅核酸の検出装置であって、前記蛍光増幅核酸の溶液を保持する、平面状の試料保持部が表面に設けられた透光性の基板と、前記基板の温度を調節する温調手段と、前記基板の裏面から励起光を照射して前記蛍光物質を励起する励起手段と、蛍光を検出する検出手段と、を備えることを特徴とする蛍光増幅核酸の検出装置である。
請求項2に記載の発明は、前記基板表面に、試料保持部である第一親水性領域と、該第一親水性領域周縁部を包囲する第一撥水性領域とが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の蛍光増幅核酸の検出装置である。
請求項3に記載の発明は、前記基板において、さらに前記第一撥水性領域の外側周縁部を包囲する第二親水性領域と、該第二親水性領域の外側周縁部を包囲する第二撥水性領域とが設けられていることを特徴とする請求項2に記載の蛍光増幅核酸の検出装置である。
請求項4に記載の発明は、前記基板の表面側及び/又は裏面側のうち、励起光及び検出すべき蛍光を遮らない位置に、前記温調手段が配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の蛍光増幅核酸の検出装置である。
請求項5に記載の発明は、前記基板の表面が、試料保持部及びその近傍を除いて、前記温調手段の基板と対向する面に、気密性部材を介して密着されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の蛍光増幅核酸の検出装置である。
請求項6に記載の発明は、さらに、前記検出手段による検出結果に基づいて、前記蛍光増幅核酸の増幅量を算出する情報処理手段を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の蛍光増幅核酸の検出装置である。
請求項7に記載の発明は、さらに、前記基板をその表面に対して平行な方向に移動させる移動手段を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の蛍光増幅核酸の検出装置である。
請求項8に記載の発明は、前記温調手段、検出手段、情報処理手段及び移動手段が、これらを制御する制御手段と電気的に接続されていることを特徴とする請求項7に記載の蛍光増幅核酸の検出装置である。
【0007】
請求項9に記載の発明は、一種又は二種以上の蛍光物質で標識された増幅産物である蛍光増幅核酸の検出方法であって、表面に平面状の試料保持部が設けられた透光性の基板の温度を調節し、前記試料保持部において蛍光標識核酸を増幅する工程と、得られた蛍光増幅核酸中の蛍光物質を、前記基板の裏面から励起する工程と、前記蛍光物質の励起により生じた蛍光を検出する工程と、を有することを特徴とする蛍光増幅核酸の検出方法である。
請求項10に記載の発明は、前記基板表面に第一親水性領域と、該第一親水性領域周縁部を包囲する第一撥水性領域とからなる前記試料保持部を設け、該試料保持部に前記蛍光増幅核酸の溶液を保持することを特徴とする請求項9に記載の蛍光増幅核酸の検出方法である。
請求項11に記載の発明は、前記試料保持部の蛍光増幅核酸の溶液を、該溶液よりも比重が小さく且つ沸点が100℃以上である非水溶性の液体で被覆することを特徴とする請求項10に記載の蛍光増幅核酸の検出方法である。
請求項12に記載の発明は、前記基板の表面側及び/又は裏面側のうち、励起光及び検出すべき蛍光を遮らない位置から、前記基板の温度調節を行なうことを特徴とする請求項9〜11のいずれか一項に記載の蛍光増幅核酸の検出方法である。
請求項13に記載の発明は、前記基板の表面を、試料保持部及びその近傍を除いて、基板の温度調節を行う温調手段の前記基板と対向する面に気密性部材を介して密着させ、前記蛍光増幅核酸の溶液を封止することを特徴とする請求項9〜12のいずれか一項に記載の蛍光増幅核酸の検出方法である。
請求項14に記載の発明は、前記蛍光を検出する工程に次いで、該検出結果に基づいて、前記蛍光増幅核酸の増幅量を算出する工程を有することを特徴とする請求項9〜13のいずれか一項に記載の蛍光増幅核酸の検出方法である。
請求項15に記載の発明は、前記基板の温度調節を特定の温度サイクルで行うことを特徴とする請求項9〜14のいずれか一項に記載の蛍光増幅核酸の検出方法である。
請求項16に記載の発明は、温度サイクルごとに、前記蛍光増幅核酸の増幅量を一回又は二回以上算出する工程を有することを特徴とする請求項15に記載の蛍光増幅核酸の検出方法である。
請求項17に記載の発明は、前記蛍光を検出する工程において、前記基板をその表面に対して平行な方向に移動させ、該基板上のすべての蛍光を検出することを特徴とする請求項9〜16のいずれか一項に記載の蛍光増幅核酸の検出方法である。
請求項18に記載の発明は、前記基板の温度調節及び移動、蛍光の検出、並びに前記蛍光増幅核酸の増幅量の算出を、これらを制御する制御手段を介して行うことを特徴とする請求項9〜17のいずれか一項に記載の蛍光増幅核酸の検出方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、検出装置を小型化できると共に安価に作製できる。また、極微量の増幅核酸も簡便にかつ高精度に検出できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明について詳しく説明する。
<検出装置>
本発明に係る蛍光増幅核酸の検出装置は、一種又は二種以上の蛍光物質で標識された増幅産物である蛍光増幅核酸の検出装置であって、前記蛍光増幅核酸の溶液を保持する、平面状の試料保持部が表面に設けられた透光性の基板と、前記基板の温度を調節する温調手段と、前記基板の裏面から励起光を照射して前記蛍光物質を励起する励起手段と、蛍光を検出する検出手段と、を備えることを特徴とするものである。
ここで蛍光増幅核酸とは、通常、増幅対象である核酸を蛍光物質で標識しつつ増幅したものである。
【0010】
蛍光物質としては、公知の如何なるものも使用でき特に限定されない。具体的には、フルオレセイン、ローダミン(ローダミングリーン、TAMRA等)、アクリフラビン、アレクサ(アレクサ647等)、サイバーグリーン(SYBR Green)等が例示できる。
蛍光物質は一種を単独で用いても良いし、二種以上を併用しても良い。二種以上を併用する場合には、その組み合わせ及び比率等は、目的に応じて適宜選択し得る。
また、増幅産物に導入する蛍光物質の量も、目的に応じて適宜選択し得る。
【0011】
核酸の増幅には、PCR法等、公知の手法を適用できる。
そして核酸とは、DNA、RNA、その他のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド等を指す。
【0012】
蛍光増幅核酸の溶液としては、核酸増幅後の反応液が好適である。後記するように、本発明の検出装置は、核酸増幅を行いながら、得られた反応液中の増幅核酸をリアルタイムで検出するのに特に好適である。
また増幅方法の特性から、上記溶液は、通常水溶液である。
【0013】
図1は、本発明に係る蛍光増幅核酸の検出装置1を例示する図であり、(a)は概略構成図、(b)は基板、ステージ及び温調手段を拡大して示す拡大断面図である。
この検出装置1は、おもに核酸増幅に関わる構成、増幅核酸の検出に関わる構成、装置の制御及び情報処理に関わる構成とからなる。
まず、核酸増幅に関わる構成について説明する。
核酸増幅に関わる構成は、おもに基板2と、基板2を支持するステージ3と、基板2の温度を調節する温調手段4を含む。
【0014】
基板2は透光性の材質からなる。透光性の材質とは、光の透過率が高く且つ自家蛍光の少ない材質を指し、具体的にはガラス類や透明な樹脂類が例示できる。なかでも好ましいものとしては、水板ガラス、白板ガラス、ハーフホワイトガラス等のガラス類が例示できる。
基板2はプレート状であることが好ましく、表面21及び裏面22が平滑なものが好ましい。ここで、基板の表面21とは、後記する試料保持部が設けられている側の基板2の面を指し、基板の裏面22とは、前記表面21とは反対側の基板2の面を指す。
基板2の大きさは特に限定されず、例えば表面21及び裏面22の大きさは、目的に応じて適宜選択し得る。ただし、基板2の厚みは、光の透過率が良好であるという観点からは薄いほど好ましく、基板2の強度も考慮して取り扱いのし易さという観点からは、0.5〜2.0mmであることが好ましい。
【0015】
基板の表面21には、蛍光増幅核酸の溶液を保持するための試料保持部210が設けられている。試料保持部210は、検出対象の蛍光増幅核酸を得るために、核酸増幅を行う部位でもある。
試料保持部210は平面状であり、スポットした溶液を保持できれば如何なる形態でも良く、基板表面21の特定領域をそのまま試料保持部としても良いが、溶液を安定して保持できる形態とすることが好ましい。溶液を安定して保持するためには、試料保持部210を親水性としたものが例示できる。このような基板の一例として、溶液を保持した状態のものを図2に例示する。図2(a)は、基板2の斜視図、(b)は(a)のII−II線における基板2の断面図である。
【0016】
図2(b)に示すように、基板の表面21には、試料保持部となる第一親水性領域211と、該第一親水性領域211の周縁部を包囲する第一撥水性領域212とが設けられている。蛍光増幅核酸の溶液20は第一親水性領域211上で安定して保持される。そして、第一撥水性領域212を設けることで、溶液20の移動が抑制されるので、溶液20がより安定して保持される。第一親水性領域211は、平面状であればその外形は特に限定されず、目的に応じて選択すれば良いが、図2に示すように略円形状が好ましい。第一撥水性領域212も平面状であることが好ましい。そしてその外形は特に限定されず、目的に応じて選択すれば良いが、リング状であることが好ましい。このようにすることで、溶液20がより安定して保持される。
【0017】
基板の表面21においては、図2に示すように、第一撥水性領域212の外側周縁部を包囲する第二親水性領域213と、該第二親水性領域213の外側周縁部を包囲する第二撥水性領域214とが設けられていることが好ましい。このようにすることで、保持された溶液20の蒸発を防ぐために、被覆液25で溶液20を被覆した際に、被覆液25も安定して保持できる。第二親水性領域213及び第二撥水性領域214は平面状であることが好ましい。そして、第二親水性領域213の外形は特に限定されないが、リング状であることが好ましい。このようにすることで、被覆液25がより安定して保持される。また、第二撥水性領域214の外形はリング状でも良いし、その他の形状でも良く、特に限定されない。そして、第一親水性領域211、第一撥水性領域212及び第二親水性領域213は、同心状に設けられていることが好ましい。
【0018】
被覆液25としては、溶液20の主溶媒である水の蒸発を抑制し、核酸増幅時における溶液20の加温にも耐えるようにするという目的から、溶液20よりも比重が小さく且つ沸点が100℃以上である非水溶性の液体を使用する。このような物性を有するものであれば如何なるものも使用し得るが、好ましい市販品として、各種ミネラルオイルやAdvalytix社製のシーリングソリューションが例示できる。溶液20を直接被覆することで、マイクロタイタープレートやサンプルチューブを使用した場合のように、溶液20近傍に多量の空気層が存在することがなく、例えばPCRの熱サイクル中に溶液20が蒸発することがなく、溶液20の濃度変化が抑制されるので、安定して核酸増幅を行うことができる。
そして、基板の表面21に、第二親水性領域213及び第二撥水性領域214を設けることで、上記のような物性を有する被覆液25の移動が、第一撥水性領域212及び第二撥水性領域214により抑制される。
【0019】
親水性領域及び撥水性領域の寸法は、目的に応じて適宜選択し得る。例えば、0.5〜3μL程度の極微量の溶液20を保持する場合には、第一親水性領域211の直径D1は1mm〜3mmとすることが好ましく、第一撥水性領域212の幅L1及び第二親水性領域213の幅L2は0.2mm〜1mmとすることが好ましい。第二撥水性領域214の寸法は、基板2の大きさや試料保持部の数を考慮して、任意に選択し得る。例えば、図2に示すように、第二親水性領域213の外側全面を第二撥水性領域214としても良い。
【0020】
親水性領域及び撥水性領域を有する基板2は、公知の方法で作製できる。具体的には、基板表面に親水処理及び撥水処理を施す方法、親水性基板表面に撥水処理を施す方法が例示できる。
親水処理としては、水酸基、アミノ基又はカルボキシ基等の親水性の官能基を基板表面に導入するものが例示できる。撥水処理としては、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基又はアルケニルオキシ基等の低極性の官能基や、一つ以上の水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基又はアルコキシ基等の疎水性の官能基を基板表面に導入するものが例示できる。
このような、親水性領域及び撥水性領域を有する基板2としては市販品を使用しても良く、例えば、極微量の溶液20を保持する目的においては、Advalytix社製のAmpliGrid(登録商標)が好適である。
【0021】
ステージ3は基板2を支持するものであり、図1においては、スタンド16に着脱可能に固定されている。ステージ3は、蛍光増幅核酸中の蛍光物質の基板裏面22からの励起と、蛍光物質の励起により生じた蛍光の検出を妨げないものであれば、その形状は特に限定されない。例えば、励起光61と検出すべき蛍光200及び201を遮らないように構成されたものが好ましく、具体的には図3に例示するものが挙げられる。図3(a)はステージ3の上面図、(b)は(a)のIII−III線における断面図はである。
【0022】
ステージ3は、切欠30が設けられた略四角形状の底板部31と、該底板部31上面にその三つの周縁部に沿って設けられたコ字状の外枠部32とで構成され、底板部31上面の露出面310上に基板2が支持されるようになっている。すなわち基板2は、その周縁部で露出面310に支持され、外枠部32で移動が規制される。そして基板2は、露出面310上で、図3中の矢印方向に移動可能とされている。このようなステージ3で基板2を支持することにより、ステージの前記切欠30を通じて、励起光61の照射と蛍光201の検出が行われる。
【0023】
ステージで基板を支持する場合には、図3に例示するように、ステージに形成された凹部に基板を嵌合させて固定しても良いし、ステージの平面上に載置した基板に、ステージ上に別途設けたストッパを当接して固定しても良く、支持方法は特に限定されない。
また、図3中のステージ3としては、基板2を一枚支持するものを例示しているが、複数枚の基板2を同時に支持できるようにしたものでも良い。
【0024】
ステージ3の材質は特に限定されず、例えば、金属、合金、樹脂等、公知の材質から適宜選択すれば良い。
また、ステージ3は、所望の材質を使用して公知の手法で一体成形、打ち抜き等により作製しても良いし、例えば、底板部31と外枠部32とを成形、打ち抜き等により別途作製し、これらを貼り合わせて作製しても良い。
【0025】
温調手段4は、試料保持部に保持された溶液20中でPCR等の核酸増幅を行う時に、基板2の温度を調節するものである。そして、図1においては、ステージ3と共にスタンド16に着脱可能に固定されており、さらに基板表面21に対して垂直な方向に移動可能とされ、基板2に接触できるようになっている。そして基板2の温度を調節する際は、通常は、基板2に直接接触させるか、又は熱伝導性の材質からなる介在物を介して間接的に基板2に接触させる。
温調手段4は、加温及び冷却が可能な公知のものから適宜選択して使用できるが、温度調節を迅速かつ高精度に行える観点から、ペルチェ素子を利用したものが好ましい。
【0026】
温調手段4の形状は特に限定されず、その配置形態等に応じて任意に選択できるが、基板2に直接接触させる場合には該基板2との接触面積が、介在物を介して間接的に接触させる場合には該介在物との接触面積が、それぞれ大きいほど好ましい。このように接触面積を大きくすることで、基板2の温度調節を短時間で高精度に行うことができる。
【0027】
温調手段4のうち基板2に接触して熱を伝導する部位の材質は、耐熱性で且つ熱伝導性の高いものが好ましく、アルミニウム、鉄、銅などの金属、ステンレスなどの合金、熱伝導性の各種樹脂類が例示できる。なかでも安定性、熱伝導性に優れることから、金属又は合金が好ましく、アルミニウムが特に好ましい。
【0028】
温調手段4の配置位置は、前記蛍光物質の基板裏面22からの励起と、蛍光物質の励起により生じた蛍光の検出を妨げないものであれば、特に限定されない。例えば、励起光61と検出すべき蛍光200及び201を遮らない位置に配置することが好ましく、さらに基板2又は前記介在物との接触面積を大きくするために、基板の表面21側及び裏面22側のいずれか一方又は双方に配置することがより好ましい。
【0029】
図1(b)に示す温調手段4は、基板の表面21側に配置されている。
ここで温調手段4はプレート状であり、その基板2と対向する面41を基板表面21と接触させて配置した際に、溶液20又は被覆液25が温調手段4と接触しないように、試料保持部及びその近傍と一致する部位に、凹部410、410・・が複数個形成されている。すなわち、温調手段4を基板2と接触させて配置した時に、基板2上の溶液20は被覆液25の有無によらず、試料保持部ごとに基板2と温調手段4とで封止される。ここで「試料保持部及びその近傍」とは、基板表面21のうち、被覆液25が載せられている領域よりもわずかに大きい領域のことを指す。このようにすることで、例えば、核酸増幅時における溶液20への汚染物質の混入が確実に防止され、隣接する溶液20、20・・間のコンタミネーションが確実に防止される。また、被覆液25を使用した場合には、仮にその破裂や飛散が生じても、隣接する溶液20、20・・間のコンタミネーションが確実に防止される。さらに、温調手段4と基板2との接触面積を大きくできると共に、溶液20からの放熱も抑制されるので、基板2の温度調節を短時間で高精度に行うことができる。したがって、核酸増幅をより高精度に行うことができる。
なおここでは、試料保持部一つごとに溶液20を封止する例を示したが、これに限定されず、複数の試料保持部ごとにまとめて溶液20、20・・を封止するようにしても良く、その場合、凹部410、410・・は、封止単位に応じて、その大きさを大きくすれば良い。
凹部410の形状は特に限定されず、円柱状、角柱状等から任意に選択できる。
【0030】
温調手段は基板の裏面22側及び/又は側面23側に配置されていても良い。
したがって、温調手段をステージ3と一体化させれば、装置の構造を簡略化できる点で好ましい。
温調手段をステージと一体化させたものとしては、図3に示したステージ3のうち、基板2との接触部位を温調手段としたものが例示できる。具体的には、底板部31の一部(例えば、311a、311b)又は全体を温調手段としても良いし、外枠部32の一部(例えば、321a)又は全体を温調手段としても良い。あるいは、これらを組み合わせても良い。このようにすることで、基板2をその裏面22側及び/又は側面23側から温度調節できる。
【0031】
温調手段は、基板の裏面22側及び/又は側面23側に加え、さらに表面21側に配置されていても良い。
したがって、例えば図4において、上記と同様にステージ3を温調手段と一体化させても良い。
【0032】
温調手段4は、図1に示すように、コンピュータ15に電気的に接続されていることが好ましい。このように制御手段に接続することで、核酸増幅時における温度、時間、サイクル数などを自動で制御できる。これにより、膨大な数のサンプルも迅速に処理できる。
【0033】
図1(b)に例示したように、温調手段4を基板の表面21側に配置する場合には、温調手段4を基板2に接触させて温度調節する際に、これらの接触面の間に気密性部材を介して密着させると良い。このような例を図4に例示する。図4は、基板2、気密性部材5及び温調手段4の配置形態を例示する図であり、(a)は上面図、(b)は(a)のIV−IV線における断面図である。
このようにすることで、温調手段4と基板2との間の密着性を一層向上させることができ、溶液20を一層確実に封止できる。
気密性部材5の材質としては、シリコンゴム、エラストマー、グリース等、公知の気密性材料が例示でき、これらの中から目的に応じて適宜選択できる。
なおここでは図示を省略するが、このような気密性部材は、前記ステージ3と基板2との接触面の間に介在させて、密着させても良い。このようにすることで、ステージ3へ基板2を安定して固定できる。また、ステージ3が温調手段と一体化されている場合には、ステージ3から基板2への熱伝導率が向上するので、基板2の温度調節を効率的に行うことができる。
【0034】
本発明において、基板2は、その配置位置を移動可能とされていることが好ましく、ステージ3に支持された状態のまま移動可能とされていることがより好ましい。すなわち、ステージ3が移動可能とされていることがより好ましい。移動方向は基板表面21に対して垂直な方向及び平行な方向のいずれか一方又は双方であり、少なくとも基板表面21に対して平行な方向に移動可能とされていることが好ましい。
例えば、基板2を画像撮影する際に、撮影可能な範囲が狭くて基板2上のすべての蛍光像を一度に撮影できない場合には、複数回に分けて画像撮影する必要がある。このような場合でも、基板2がその表面21に対して平行な方向に移動可能であれば、焦点調整を行うことなく、すべての蛍光像を容易に撮影できる。
【0035】
また、温調手段4も、その配置位置を移動可能とされていることが好ましく、ステージ3と連動して移動可能とされていることがより好ましく、ステージ3と一体に移動可能とされていることが特に好ましい。ここで、「温調手段4がステージ3と連動して移動可能」とは、「ステージ3の移動と共に温調手段4が移動可能であり、ステージ3の移動方向と温調手段4の移動方向は必ずしも一致しない」ことを指す。一方、「温調手段4がステージ3と一体に移動可能」とは、「ステージ3の移動と共に温調手段4が移動可能であり、ステージ3の移動方向と温調手段4の移動方向が一致する」ことを指す。例えば、温調手段4がステージ3と一体化されている場合は、後者に該当する。
温調手段4がステージ3と連動して又は一体に移動可能とされていることで、移動時の操作を簡略化でき、温調手段4がステージ3と一体に移動可能とされていることで、さらに移動後の配置位置の調整を温調手段4とステージ3とで別々に行う必要がなく、操作を一層簡略化できる。
【0036】
また、温調手段をステージとは別途に設ける場合には、温調手段はステージに対して配置位置が移動可能とされていることが好ましい。このようにすることで、ステージへの基板の着脱を容易に行うことができる。
【0037】
温調手段4は、基板2に接触して熱を伝導する部位を、所望の形状に成形すること以外は、公知の加温冷却装置等と同様に作製できる。
【0038】
基板2、ステージ3、温調手段4を移動させる移動手段は、公知の如何なるものでも良く、目的に応じて選択すれば良い。温調手段がステージに一体化されている場合には、言うまでもなく移動手段は一つのみを備えれば良い。
【0039】
移動手段は、後記するように、コンピュータ15に電気的に接続されていることが好ましい。このように制御手段に接続することで、蛍光検出時の基板2、ステージ3、温調手段4等の配置位置や、移動の時期及び時間等を自動で制御できる。これにより、膨大な数のサンプルも迅速に処理できる。
【0040】
次に、増幅核酸の検出に関わる構成について説明する。
増幅核酸の検出に関わる構成は、図1に示すように、おもに光源6、励起フィルタ7、ダイクロイックミラー8、対物レンズ9、発光フィルタ10、結像レンズ11、反射鏡12、検出手段13、暗箱14を含む。これらは、通常の蛍光検出装置において使用されるもので良い。
【0041】
光源6としては、例えば、ハロゲンランプ、キセノンランプが使用できる。
【0042】
励起フィルタ7は、光源6からの照射光60のうち、励起対象の蛍光物質を励起できる特定範囲の波長の光のみを透過させて励起光61とするものであり、蛍光物質の種類に応じて選択すれば良い。そして、反射光や迷光から生じるゴースト像の発生を防止するために、蛍光物質を励起する波長範囲以外の光を精度良く減衰させるものが好ましく、例えば、蛍光物質としてサイバーグリーンを使用する場合には、488nm近傍を中心とする波長帯域の光を透過させるものが好ましい。
【0043】
ダイクロイックミラー8は、励起光61を反射してこれを蛍光物質に導くと共に、蛍光物質が発した蛍光200を透過させてこれを発光フィルタ10に導く。ここでは、ダイクロイックミラーとして、励起光61を反射し蛍光200を透過させるものを例示しているが、検出装置の光学構成に応じて、例えば、励起光61を透過させ蛍光200を反射するものを使用しても良い。
【0044】
対物レンズ9は、ダイクロイックミラー8で反射された励起光61を通過させ、基板2にその裏面22から励起光61を照射する。そして、蛍光物質が発した蛍光200を通過させる。
【0045】
発光フィルタ10は、蛍光200の特定範囲の波長の光のみを透過させ検出すべき蛍光201とするものであり、蛍光物質の種類に応じて選択すれば良い。そして、反射光や迷光から生じるゴースト像の発生を防止するために、目的とする波長範囲以外の蛍光を精度良く減衰させるものが好ましく、例えば、蛍光物質としてサイバーグリーンを使用する場合には、522nm近傍を中心とする波長帯域の光を透過させるものが好ましい。
【0046】
前記のように蛍光物質としてサイバーグリーンを使用する場合には、ダイクロイックミラー8は、488nmと522nmの中間程度の波長、例えば、500nm近傍の波長で、透過及び反射の切り替えを行うと良い。
【0047】
検出手段13は、結像レンズ11及び反射鏡12を介して蛍光201を撮影するものであり、CCDカメラ等、画像撮影機能を有するものであればいずれでも良い。
また、検出手段13は、図1に示すように、コンピュータ15に電気的に接続されていることが好ましい。このように制御手段に接続することで、例えば、検出時の撮影回数、撮影タイミング、露光時間等を自動で制御できる。これにより、膨大な数のサンプルも迅速に処理できる。また、このように情報処理手段に接続することで、蛍光の検出結果に基づいて、蛍光増幅核酸の増幅量を自動で算出できる。これにより、検出結果から得られる膨大な量の情報を迅速に処理でき、所望の情報を効率的且つ高精度に入手できる。
【0048】
本発明においては、図1に示すように、暗箱14を設けることが好ましい。このようにすることで、正確に特定範囲の波長の励起光61を照射でき、蛍光検出を高精度に行なうことができる。また、暗箱14を使用する代わりに、蛍光検出を暗室内で行っても良いし、暗幕を使用して蛍光検出を行っても良い。
【0049】
本発明においては、励起フィルタ7に代わり、励起光を透過させるダイクロイックミラーを使用しても良いし、発光フィルタ10に代わり、蛍光を透過させるダイクロイックミラーを使用しても良い。
また、図1では図示を省略しているが、例えば、照明用や撮影用の光学系(光学レンズ等)を検出装置に追加しても良い。
【0050】
上記のように、コンピュータ15は、装置の制御及び情報処理に関わる構成である。
蛍光の検出に際しては、核酸増幅時における温度、時間、サイクル数等の増幅条件;蛍光検出時における基板2、ステージ3、温調手段4等の配置位置や、移動の時期及び時間等の装置の配置条件;検出時における検出手段13の撮影回数、撮影タイミング、露光時間等の検出条件;蛍光増幅核酸の増幅量算出時における算出条件等を設定しておくことで、蛍光増幅核酸の検出及び定量を自動で行うことができる。
【0051】
なお、本発明の検出装置においては、本発明の効果を損なわない範囲において、上記構成の一部を削除又は変更しても良いことは、言うまでも無い。
【0052】
本発明の検出装置1においては、基板2平面上で保持された溶液20中の蛍光増幅核酸を検出できるので、テレセントリックな光学系を備えなくても高精度に増幅核酸を検出できる。また、基板2と溶液20との接触面で焦点調整を行うので、焦点位置を溶液量に影響されることなく一定にでき、溶液20ごとに焦点調整を行う必要がない。したがって、装置の小型化と安価な作製が可能である。
【0053】
<検出方法>
本発明に係る蛍光増幅核酸の検出方法は、一種又は二種以上の蛍光物質で標識された増幅産物である蛍光増幅核酸の検出方法であって、表面に平面状の試料保持部が設けられた透光性の基板の温度を調節し、前記試料保持部において蛍光標識核酸を増幅する工程と、得られた蛍光増幅核酸中の蛍光物質を、前記基板の裏面から励起する工程と、前記蛍光物質の励起により生じた蛍光を検出する工程と、を有することを特徴とするものである。
本発明の検出方法においては、上記本発明の検出装置を使用することにより、核酸増幅を検出装置の試料保持部で行いながら、得られた反応液中の蛍光増幅核酸をリアルタイムで検出できる。
【0054】
本発明の検出方法においては、核酸増幅は、前記基板を使用してその試料保持部で行うこと以外は公知の方法で行うことができる。例えば、基板の温度調節を特定の温度サイクルで行うことができるので、PCR法等の核酸増幅法も容易に適用できる。
また蛍光の検出も、前記基板を使用して、蛍光物質の励起を該基板の裏面から行うこと以外は、公知の方法で行うことができる。
なお、本発明において「蛍光物質を基板の裏面から励起する」ためには、基板の裏面側から蛍光物質に励起光を照射すれば良く、必ずしも光源や励起フィルタ等の励起手段を基板の裏面側に配置する必要性はない。例えば、励起手段を基板の表面側に配置し、照射した励起光を、反射鏡等を用いて導くことで基板の裏面側から蛍光物質に照射しても良い。
【0055】
試料保持部に保持する蛍光増幅核酸の溶液の量は、目的に応じて設定すれば良いが、試料保持部の平面上に溶液を保持するので、極微量としても高精度に蛍光増幅核酸を検出できる。例えば、図2に示すような基板を使用する場合には、溶液の量は0.1〜5μLであることが好ましく、0.2〜3μLであることがより好ましく、0.5〜2μLであることが特に好ましい。
また被覆液の量は、蛍光増幅核酸の溶液を被覆できる範囲で選択すれば良いが、例えば、蛍光増幅核酸の溶液の量が上記範囲である場合には、1〜10μLであることが好ましく、2〜8μLであることがより好ましく、4〜6μLであることが特に好ましい。
【0056】
核酸増幅は、先に述べたように、気密性部材を用いるなどして溶液を封止して温度調節することにより、より高精度に行うことができる。
【0057】
本発明の検出方法においては、蛍光を検出する工程に次いで、該検出結果に基づいて、蛍光増幅核酸の増幅量を算出する工程を有することが好ましい。
蛍光増幅核酸は、溶液中の蛍光物質を励起することにより生じた蛍光を検出することで、検出できる。したがって、その時の蛍光強度から、蛍光増幅核酸の増幅量を算出できる。
【0058】
基板の温度調節を特定の温度サイクルで行う場合には、温度サイクルごとに、蛍光増幅核酸の増幅量を一回又は二回以上算出することが好ましい。このように増幅核酸をリアルタイムで定量することにより、鋳型として使用した核酸の増幅反応前の量を迅速且つ高精度に定量できる。
蛍光増幅核酸の増幅量を算出する回数は、状況に応じて選択すれば良い。
【0059】
本発明の検出装置が、基板を移動させる移動手段を備えている場合には、基板を移動させながら蛍光を検出すると、効率的な検出が可能となる場合がある。例えば、上記のように、基板上のすべての蛍光像を一度に撮影できない場合には、基板をその表面に対して平行な方向に移動させながら複数回に分けて画像撮影でき、撮影時ごとに焦点調整を行う必要がないので、基板上のすべての蛍光像を容易に撮影できる。
【0060】
次に、図1に示す検出装置を使用した場合の本発明の検出方法について、具体的に説明する。
光源6からの照射光60は、励起フィルタ7によって、特定範囲の波長の光のみが透過して励起光61となり、ダイクロイックミラー8によって反射され、対物レンズ9を通過して、基板の裏面22から蛍光物質に照射される。
励起光61の照射により生じた蛍光200は、対物レンズ9、ダイクロイックミラー8を通過し、発光フィルタ10によって、蛍光200の特定範囲の波長の光のみが透過して、検出すべき蛍光201となる。蛍光201は結像レンズ11、反射鏡12を通過して、検出手段13によって撮影される。
【0061】
本発明の検出方法においては、基板2と溶液20との接触面で焦点調整を行うので、焦点位置を溶液量に影響されることなく一定にできる。よって、検出操作の簡略化が可能であり、検出に供する溶液量も極微量にできるので、極微量の蛍光増幅核酸も高精度に検出できる。
以上のように、本発明によれば、極微量の蛍光増幅核酸を、省スペースで低コスト且つ簡便に、しかも高精度に検出できる。
【実施例】
【0062】
以下、具体的実施例により、本発明についてさらに詳しく説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に何ら限定されるものではない。
図1に示す検出装置を使用して、RNAのPCR増幅を行い、蛍光増幅RNAをリアルタイムで検出した。
<1.操作手順>
(1)以下に示す組成の、RNA濃度が異なる5種類の核酸増幅用溶液1μlを、図2に示す構成のAmpliGrid・AG480(商品名、Advalytix社製、以下、基板と略記する)の各試料保持部に分注した。各核酸増幅用溶液中の最終RNA濃度はそれぞれ、 100ng/μl、10ng/μl、1ng/μl、100pg/μl、10pg/μlである。
(核酸増幅用溶液)
(a)SYBR Green One−Step Enzyme Mix(Invitrogen社製);0.5μl
(b)2×SYBR Green Reaction Mix(Invitrogen社製); 12.5μl
(c)GAPDH upper primer;0.5μl
(d)GAPDH lower primer;0.5μl
(e)Nuclease free water;7.0μl
(f)RNA(16ng/μl、1.6ng/μl、160pg/μl、16pg/μl、1.6pg/μl);4.0μl
(a)〜(f)計;25.0μl
【0063】
(2)次いで、核酸増幅用溶液の蒸発を防ぐために、前記基板付属のシーリングソリューション5μlを用いて、核酸増幅用溶液をそれぞれ被覆した。
(3)(2)で調製した基板を測定装置のステージ上に載置し、手動にて温度制御部を基板上に設置した。
【0064】
(4)以下の加温冷却サイクルをコンピュータに入力し、核酸増幅反応を行った。
(加温冷却サイクル)
55℃/30分 → 94℃/2分 → (94℃/15秒 → 55℃/30秒 → 68℃/30秒)×50サイクル → 25℃
【0065】
(5)(4)の核酸増幅反応中の各サイクル68℃の工程にて、基板裏面に励起光を照射して、CCDカメラにて基板上の全反応領域を一度に撮影した。本実施例では、蛍光物質としてSYBR Greenを用いているので、GFP領域の励起光を照射した。
(6)(5)で得られた撮影画像における各反応領域の蛍光強度を、カイネティックコンピュータを用いて算出した。算出結果を図5に示す。
【0066】
<2.結果>
図5から明らかなように、RNA濃度と核酸増幅速度は比例していることが確認された。
【0067】
このように、本発明によれば、基板平面上で保持された溶液中の蛍光増幅核酸を検出するので、テレセントリックな光学系を備えなくても高精度に増幅核酸を検出できる。また、基板と溶液との接触面で焦点調整を行うので、焦点位置を溶液量に影響されることなく一定にでき、溶液ごとに焦点調整を行う必要がない。したがって、検出装置を小型化できると共に安価に作製できる。さらに、焦点位置を溶液量に影響されることなく一定にできるので、検出操作の簡略化が可能であり、検出に供する溶液量も極微量とすることが可能である。したがって、極微量の蛍光増幅核酸も高精度に検出できる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、核酸の増幅反応を必要とするゲノム研究に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明に係る蛍光増幅核酸の検出装置を例示する図であり、(a)は概略構成図、(b)は基板、ステージ及び温調手段を拡大して示す拡大断面図である。
【図2】溶液を保持した状態の本発明における基板を例示する図であり、(a)は斜視図、(b)は(a)のII−II線における断面図である。
【図3】本発明におけるステージを例示する図であり、(a)は上面図、(b)は(a)のIII−III線における断面図である。
【図4】本発明における基板、気密性部材及び温調手段の配置形態を例示する図であり、(a)は上面図、(b)は(a)のIV−IV線における断面図である。
【図5】実施例における蛍光強度の算出結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0070】
1・・・検出装置,2・・・基板、20・・・蛍光増幅核酸溶液、21・・・基板表面、22・・・基板裏面、200,201・・・蛍光、210・・・試料保持部、211・・・第一親水性領域、212・・・第一撥水性領域、213・・・第二親水性領域、214・・・第二撥水性領域、25・・・被覆液、3・・・ステージ、4・・・温調手段、5・・・気密性部材、6・・・光源、61・・・励起光、13・・・検出手段、15・・・制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一種又は二種以上の蛍光物質で標識された増幅産物である蛍光増幅核酸の検出装置であって、
前記蛍光増幅核酸の溶液を保持する、平面状の試料保持部が表面に設けられた透光性の基板と、
前記基板の温度を調節する温調手段と、
前記基板の裏面から励起光を照射して前記蛍光物質を励起する励起手段と、
蛍光を検出する検出手段と、
を備えることを特徴とする蛍光増幅核酸の検出装置。
【請求項2】
前記基板表面に、試料保持部である第一親水性領域と、該第一親水性領域周縁部を包囲する第一撥水性領域とが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の蛍光増幅核酸の検出装置。
【請求項3】
前記基板において、さらに前記第一撥水性領域の外側周縁部を包囲する第二親水性領域と、該第二親水性領域の外側周縁部を包囲する第二撥水性領域とが設けられていることを特徴とする請求項2に記載の蛍光増幅核酸の検出装置。
【請求項4】
前記基板の表面側及び/又は裏面側のうち、励起光及び検出すべき蛍光を遮らない位置に、前記温調手段が配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の蛍光増幅核酸の検出装置。
【請求項5】
前記基板の表面が、試料保持部及びその近傍を除いて、前記温調手段の基板と対向する面に、気密性部材を介して密着されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の蛍光増幅核酸の検出装置。
【請求項6】
さらに、前記検出手段による検出結果に基づいて、前記蛍光増幅核酸の増幅量を算出する情報処理手段を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の蛍光増幅核酸の検出装置。
【請求項7】
さらに、前記基板をその表面に対して平行な方向に移動させる移動手段を備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の蛍光増幅核酸の検出装置。
【請求項8】
前記温調手段、検出手段、情報処理手段及び移動手段が、これらを制御する制御手段と電気的に接続されていることを特徴とする請求項7に記載の蛍光増幅核酸の検出装置。
【請求項9】
一種又は二種以上の蛍光物質で標識された増幅産物である蛍光増幅核酸の検出方法であって、
表面に平面状の試料保持部が設けられた透光性の基板の温度を調節し、前記試料保持部において蛍光標識核酸を増幅する工程と、
得られた蛍光増幅核酸中の蛍光物質を、前記基板の裏面から励起する工程と、
前記蛍光物質の励起により生じた蛍光を検出する工程と、
を有することを特徴とする蛍光増幅核酸の検出方法。
【請求項10】
前記基板表面に第一親水性領域と、該第一親水性領域周縁部を包囲する第一撥水性領域とからなる前記試料保持部を設け、該試料保持部に前記蛍光増幅核酸の溶液を保持することを特徴とする請求項9に記載の蛍光増幅核酸の検出方法。
【請求項11】
前記試料保持部の蛍光増幅核酸の溶液を、該溶液よりも比重が小さく且つ沸点が100℃以上である非水溶性の液体で被覆することを特徴とする請求項10に記載の蛍光増幅核酸の検出方法。
【請求項12】
前記基板の表面側及び/又は裏面側のうち、励起光及び検出すべき蛍光を遮らない位置から、前記基板の温度調節を行なうことを特徴とする請求項9〜11のいずれか一項に記載の蛍光増幅核酸の検出方法。
【請求項13】
前記基板の表面を、試料保持部及びその近傍を除いて、基板の温度調節を行う温調手段の前記基板と対向する面に気密性部材を介して密着させ、前記蛍光増幅核酸の溶液を封止することを特徴とする請求項9〜12のいずれか一項に記載の蛍光増幅核酸の検出方法。
【請求項14】
前記蛍光を検出する工程に次いで、該検出結果に基づいて、前記蛍光増幅核酸の増幅量を算出する工程を有することを特徴とする請求項9〜13のいずれか一項に記載の蛍光増幅核酸の検出方法。
【請求項15】
前記基板の温度調節を特定の温度サイクルで行うことを特徴とする請求項9〜14のいずれか一項に記載の蛍光増幅核酸の検出方法。
【請求項16】
温度サイクルごとに、前記蛍光増幅核酸の増幅量を一回又は二回以上算出する工程を有することを特徴とする請求項15に記載の蛍光増幅核酸の検出方法。
【請求項17】
前記蛍光を検出する工程において、前記基板をその表面に対して平行な方向に移動させ、該基板上のすべての蛍光を検出することを特徴とする請求項9〜16のいずれか一項に記載の蛍光増幅核酸の検出方法。
【請求項18】
前記基板の温度調節及び移動、蛍光の検出、並びに前記蛍光増幅核酸の増幅量の算出を、これらを制御する制御手段を介して行うことを特徴とする請求項9〜17のいずれか一項に記載の蛍光増幅核酸の検出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−171921(P2009−171921A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−16180(P2008−16180)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】