説明

蛍光増白剤に関する改良

本発明は、サイズプレス中又は顔料コーティング組成物中のいずれかで紙の表面に適用したときに、優れた蛍光増白効果を提供しつつ、水への高い溶解性を兼ね備えていて、かつアニオン電荷が減少しているスチルベン蛍光増白剤に関する。また、本発明の蛍光増白剤は、布地の仕上げにも使用することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サイズプレス中又は顔料コーティング組成物中のいずれかで紙の表面に適用したときに、優れた蛍光増白効果を提供しつつ、水への高い溶解性を兼ね備えていて、さらにアニオン電荷が減少しているスチルベン蛍光増白剤に関する。
【背景技術】
【0002】
下式のスチルベン蛍光増白剤(OBA)は、例えば特開平62−106965、国際公開96/00221及び国際公開98/42685に開示されるものような、高い白色度を備えたコート紙を製造するための最先端技術の代表的なものである。
【化1】

(Mは通常アルカリ金属原子、
nは0、1又は2、及び
Rはアミノ基の水素原子がそこから除かれているアミノ酸残基である。)
【0003】
上式の化合物は水への高い溶解性を通常有しており、そのことは水溶液の形態で蛍光増白剤が市販及び使用されるのが最も都合のよい製紙産業にとって有利である。
【0004】
しかしながら、アミノ酸残基によって生じる高いアニオン電荷は、廃紙を再循環させたい、つまり製紙工程で生じた廃紙を再パルプ化したい製紙業者にとって、蛍光増白剤が再パルプ工程において抽出されうることで系中にアニオン電荷が蓄積し、例えばサイジング、又は定着及び排液用途のために使用されるカチオン性化学品と干渉しうるという点で問題となりうる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そのため、水への高い溶解性を兼ね備えており、減少したアニオン電荷を有する化合物特性の蛍光増白剤が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
驚くべきことに本発明者らは、式(1)の化合物が、サイズプレス中又は顔料コーティング組成物中のいずれかで紙の表面に適用したときに優れた蛍光増白効果を提供しつつ、減少したアニオン電荷と水への高い溶解性を兼ね備えていることを見出した。
【0007】
本発明は式(1)の化合物、又はこれら化合物の混合物を提供する。
【化2】

(Mは、水素、アルカリ金属カチオン、アンモニウム、又はC2−C3ヒドロキシアルキル基で1、2又は3置換されているアンモニウム、
nは、0、1又は2、
1は、水素、ヘテロ原子によって置換されてはならない直鎖C1−C8アルキル基又は分岐C3−C8アルキル基、並びに
2及びR3はそれぞれ、ヘテロ原子によって置換されてはならず、かつ環を形成してはならない、直鎖C1−C8アルキル基又は分岐C3−C8アルキル基である。)
【0008】
本発明のさらなる目的は、式(1)の化合物を調製するための方法であり、及び式(1)の化合物の蛍光増白剤としての使用、特に紙についての使用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
式(1)の化合物は、ハロゲン化シアヌルと、
a)下式のジアミン、
【化3】

b)下式のアミン、及び
【化4】

c)下式のアミン
【化5】

との段階的反応によって調製される。
【0010】
ハロゲン化シアヌルとしては、フッ化物、塩化物又は臭化物を使うことができ、塩化シアヌルが好ましい。
【0011】
それぞれの反応は水性媒体中で行うことができ、ハロゲン化シアヌルは水中、又は水系/有機系媒体中に懸濁しているか、アセトンのような溶剤中に溶解している。それぞれのアミンは希釈せずに導入してもよく、又は水溶液もしくは懸濁液の形態で導入してもよい。アミンは任意の順序で反応させてよいが、芳香族アミンを最初に反応させるのが好ましい。それぞれのアミンは化学量論量反応させてもよく、又は過剰量を反応させてもよい。芳香族アミンは化学量論量、又は若干過剰に反応させるのが通常であり、脂肪族アミンは化学量論量より5〜30%過剰に使用するのが一般的である。
【0012】
ハロゲン化シアヌルの1番目のハロゲン置換については、0〜20℃の温度範囲にて、酸性から中性のpH条件下、好ましくはpHの範囲を2〜7として行うことが好ましい。ハロゲン化シアヌルの2番目のハロゲン置換については、20〜60℃の温度範囲にて、弱酸性から弱アルカリ性の条件下で、好ましくはpHの範囲を4〜8として行うことが好ましい。ハロゲン化シアヌルの3番目のハロゲン置換については、60〜102℃の温度範囲にて、弱酸性からアルカリ性の条件下で、好ましくはpHの範囲を7〜10として行うことが好ましい。pHは必要に応じて適当な酸又は塩基を添加することによって制御してもよく、好ましい酸は、例えば塩酸、硫酸、ギ酸又は酢酸であり、好ましい塩基は、例えばアルカリ金属(例えばリチウム、ナトリウム又はカリウム)の水酸化物、炭酸塩もしくは重炭酸塩、又は脂肪族3級アミン、例えばトリエタノールアミン又はトリイソプロパノールアミンである。
【0013】
式(3)の芳香族アミンとして、アニリン、アニリン−2−スルホン酸、アニリン−3−スルホン酸、アニリン−4−スルホン酸、アニリン−2,4−ジスルホン酸及びアニリン−2,5−ジスルホン酸が例示される。好ましくは、(3)はアニリン−2,5−ジスルホン酸である。
【0014】
式(4)の脂肪族アミンとして、イソプロピルアミン、N−メチルイソプロピルアミン、N−エチルイソプロピルアミン、2−ブチルアミン、2−アミノ−3−メチルブチルアミン、1−エチルプロピルアミン、1,3−ジメチルブチルアミン及び1,5−ジメチルヘキシルアミンが例示される。好ましくは、(4)はイソプロピルアミン、N−メチルイソプロピルアミン又は2−ブチルアミンである。
【0015】
本発明の蛍光増白剤には、先行技術の類似の化合物と比べてアニオン電荷が低いという長所がある。また、驚くべきことにそのような蛍光増白剤は、脂肪族アミンがただ1つのアルキル置換基をα−炭素上に有しているか、あるいはヒドロキシル基で置換されているかのいずれかである類似の化合物と比べて、水へのより高い溶解性を有している。前者の種類の脂肪族アミンとして、スイス特許CH532686に記載されているジエチルアミンが例示される。後者の種類の脂肪族アミンとして、Organika,2001,volume 1999−2000,page 85−94にてWilkowska及びKonopskiによって記載されている2−アミノ−1−プロパノールが例示される。
【0016】
式(1)の合成した化合物は、必要であれば、従来法、例えば塩析又は酸の添加による沈殿生成により分離及び単離してもよく、さらにその後、濾過、洗浄及び乾燥してもよい。必要であれば、合成した化合物の溶液を、例えば限外濾過又は膜濾過によって脱塩し、さらに必要に応じて濃縮してもよい。その代わりに、濾過、洗浄及び必要に応じて乾燥した化合物を水に再溶解してもよく、そのようにしてできた溶液を脱塩し、必要に応じて濃縮してもよい。化合物の脱塩した水溶液は、必要であれば乾燥してもよい。液体又は乾燥した化合物をそのようなものとして使用してもよく、必要であれば、可溶化助剤又はヒドロトロープ、例えば尿素、又はモノ−、ジ−もしくはトリエタノールアミン、あるいはポリエチレングリコール又はポリビニルアルコールなどの他の添加剤のような、従来の混合剤と混合してもよい。本発明の好ましい態様においては、式(1)の化合物は、例えば濃度が5〜55質量%、好ましくは10〜40質量%の濃厚水溶液の形態で使用される。本発明のさらに好ましい態様においては、式(1)の化合物の濃厚水溶液は、ポリエチレングリコールを2〜40質量%、好ましくは5〜20質量%含む。
【0017】
式(1)の化合物は蛍光増白剤として使用するのに適しており、特にセルロース基材、例えば編織布、不織布又は紙の蛍光増白に適している。
【0018】
編織布及び不織布の蛍光増白については、式(1)の化合物を、例えばパディング処理で使用してもよく、このとき処理浴中の増白剤濃度をほぼ一定に保ってもよい。結合剤、特に合成樹脂を用いた編織布(布帛、又は好ましくは不織布)の仕上げにおいては、蛍光増白剤を合成樹脂に処理浴中で添加してもよく、あるいは事前に添加しておいてもよい。必要に応じて中間乾燥した後、コールドドゥエル(cold dwell)処理に従うか、あるいは熱処理により、増白剤を固定し、さらに仕上げ剤を架橋してもよい。また、酸や塩、例えば塩化マグネシウム及び塩化亜鉛に対して安定であるため、式(1)の化合物は綿の蛍光増白及び同時に施される防しわ加工仕上げにも適している。乾燥した基材に対して0.01〜2.5%、好ましくは0.03〜1.0%の範囲の蛍光増白剤濃度で、それらの化合物を使用してもよい。
【0019】
式(1)の化合物は、紙及び不織布を増白するための蛍光増白剤として特に適しており、より詳しくは、シート形成後の紙又はウェブ形成後の不織布を蛍光増白するのに好ましい。
【0020】
最も好ましくは、式(1)の化合物はシート形成後の紙の増白に適している。蛍光増白剤を顔料の入った被覆組成物に添加するか、又はサイジング溶液もしくは懸濁液に添加することによって、増白を有効に行ってもよい。紙については、きめの細かい又は荒い性質のものでもよく、セルロースが漂白済みの又は未漂白のものでもよい。
【0021】
サイズプレスにおける紙の処理については、蛍光増白剤を0.2〜30g/L、好ましくは1〜15g/L含むサイジング溶液又は懸濁液を使用してもよい。また、サイジング溶液又は懸濁液は、結合剤を好ましくは2〜15質量%の濃度で含む。pHは通常5〜9の範囲であり、好ましくは6〜8の範囲である。
【0022】
結合剤又はサイズ剤は、通常酵素的に又は化学的に改質されたデンプンであり、例えば酸化デンプン、ヒドロキシエチル化デンプン又はアセチル化デンプンである。
【0023】
顔料の入った被覆組成物は、基本的には、少なくとも1種のバインダーと白色顔料、特に不透明白色顔料を含み、さらに追加して分散剤及び消泡剤のような添加剤を含んでもよい、水性組成物である。
【0024】
白色顔料を含まない被覆組成物を作ることは可能だが、印刷向けに最良の白色基材は、白色顔料を10〜70質量%含む不透明の被覆組成物を用いて作られる。そのような白色顔料は、一般的には無機顔料であり、例えば、ケイ酸アルミニウム類(陶土としても知られるカオリン)、炭酸カルシウム(チョーク)、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム又は硫酸カルシウム(石こう)である。
【0025】
バインダーは、被覆組成物を製造するために製紙産業で一般的に使用される任意のものであってよく、単一のバインダー又は1次バインダーと2次バインダーの混合物からなってもよい。単一の又は1次バインダーは、好ましくは合成ラテックスであり、典型的にはスチレン−ブタジエン、酢酸ビニル、スチレンアクリル、ビニルアクリル又はエチレン酢酸ビニルポリマーである。2次バインダーは、例えばデンプン、カルボキシメチルセルロース、カゼイン、大豆ポリマー又はポリビニルアルコールであってよい。
【0026】
単一の又は1次バインダーについては、典型的には白色顔料の5〜25質量%の範囲の量が使用される。2次バインダーについては、典型的には白色顔料の0.1〜2質量%の範囲の量が使用されるが、デンプンについては、白色顔料の5〜10質量%の範囲で通常使用される。
【0027】
式(1)の蛍光増白剤については、典型的には白色顔料の0.01〜1質量%の範囲、好ましくは白色顔料の0.05〜0.5質量%の範囲の量が使用される。
【実施例】
【0028】
以下の実施例は、本発明をより詳細に説明するものである。他に断りのない限り、パーセント及び部は、質量パーセント及び質量部を意味する。
【0029】
調製例1:アニリン−2,5−ジスルホン酸26.6部と水酸化ナトリウム8.4部を水40部に溶解した溶液を、塩化シアヌル19.4部を氷水60部に懸濁した攪拌されている懸濁液に添加した。30%水酸化ナトリウムを滴下して加えることによりpHを6に保った。ジアゾ反応によって1級芳香族アミン基が検出されなくなるまで、混合物を10℃より低温で攪拌した。その後、4,4’−ジアミノスチルベン−2,2’−ジスルホン酸18.5部と水酸化ナトリウム4.0部を水25部に溶解した溶液を添加し、30%水酸化ナトリウムを添加してpHを6.5〜7.5の間に調整し、さらにジアゾ反応で陰性が得られるまで混合物を30℃で攪拌した。2−ブチルアミン8.4部を添加し、30%水酸化ナトリウムを添加してpHを8〜9に保ちながら、混合物を加熱して2時間還流した。水を用いて生成物を400部に希釈し、(5)の六ナトリウム塩16.3%及び塩化ナトリウム4.4%を含む水溶液を得た。
【0030】
【化6】

【0031】
調製例2:アニリン−2,5−ジスルホン酸26.6部と水酸化ナトリウム8.4部を水40部に溶解した溶液を、塩化シアヌル19.4部を氷水60部に懸濁した攪拌されている懸濁液に添加した。30%水酸化ナトリウムを滴下して加えることによりpHを6に保った。ジアゾ反応によって1級芳香族アミン基が検出されなくなるまで、混合物を10℃より低温で攪拌した。その後、4,4’−ジアミノスチルベン−2,2’−ジスルホン酸18.5部と水酸化ナトリウム4.0部を水25部に溶解した溶液を添加し、30%水酸化ナトリウムを添加してpHを6.5〜7.5の間に調整し、さらにジアゾ反応で陰性が得られるまで混合物を30℃で攪拌した。2−ブチルアミン8.4部を添加し、30%水酸化ナトリウムを添加してpHを8〜9に保ちながら、混合物を加熱して2時間還流した。そのようにして生成した水溶液を80℃に冷却し、平均分子量1500のポリエチレングリコール20部で処理した。溶液を再度10分間還流し、次いで水を用いて400部に希釈した。得られた水溶液は、(5)の六ナトリウム塩16.3%、ポリエチレングリコール1500 5%、及び塩化ナトリウム4.4%を含み、アニオン電荷が0.75μeq/g(Lasertrim粒子電荷分析機)であり、5℃で2週間置いた後に沈殿の徴候は見られなかった。
【0032】
比較例2A:2−ブチルアミン8.4部の代わりにイミノジ酢酸15.3部を用いて調製例2を繰り返し、(6)の10ナトリウム塩18.9%、ポリエチレングリコール1500 5%、及び塩化ナトリウム4.4%を含む水溶液を得た。溶液のアニオン電荷は1.35μeq/g(Lasertrim粒子電荷分析機)だった。
【0033】
【化7】

【0034】
比較例2B:2−ブチルアミン8.4部の代わりにジエチルアミン8.4部を用いて調製例2を繰り返し、(7)の六ナトリウム塩16.3%、ポリエチレングリコール1500 5%、及び塩化ナトリウム4.4%を含む水溶液を得た。5℃で6日間以内に、溶液に沈殿が生じた。
【0035】
【化8】

【0036】
比較例2C:2−ブチルアミン8.4部の代わりにDL−2−アミノ−1−プロパノール8.6部を用いて調製例2を繰り返し、(8)の六ナトリウム塩16.4%、ポリエチレングリコール1500 5%、及び塩化ナトリウム4.4%を含む水溶液を得た。5℃で6日間以内に、溶液に沈殿が生じた。
【0037】
【化9】

【0038】
調製例3:2−ブチルアミンとの反応が完結するところまで調製例2を繰り返した。そのようにして生成した水溶液を膜濾過により脱塩し、(5)を六ナトリウム塩の形態で最大40%含む溶液になるまで濃縮した。溶液を80℃に暖めて、平均分子量1500のポリエチレングリコール10部で処理した。溶液を再度10分間還流し、次いで水を用いて200部に希釈した。得られた水溶液は、20℃における粘度が0.02〜0.03Pa・sであり、(5)の六ナトリウム塩32.6%、ポリエチレングリコール1500 5%、及び塩化ナトリウム0.1%を含んでいた。
【0039】
調製例4:2−ブチルアミン8.4部の代わりにイソプロピルアミン6.8部を用いて調製例2を繰り返し、(9)の六ナトリウム塩16.0%、ポリエチレングリコール1500 5%、及び塩化ナトリウム4.4%を含む水溶液を得た。
【0040】
【化10】

【0041】
調製例5:2−ブチルアミン8.4部の代わりにN−メチルイソプロピルアミン8.4部を用いて調製例2を繰り返し、(10)の六ナトリウム塩16.3%、ポリエチレングリコール1500 5%、及び塩化ナトリウム4.4%を含む水溶液を得た。
【0042】
【化11】

【0043】
調製例6:2−ブチルアミン8.4部の代わりに1,2−ジメチルプロピルアミン10.0部を用いて調製例2を繰り返し、(11)の六ナトリウム塩16.7%、ポリエチレングリコール1500 5%、及び塩化ナトリウム4.4%を含む水溶液を得た。
【0044】
【化12】

【0045】
調製例7:2−ブチルアミン8.4部の代わりに1,3−ジメチルブチルアミン11.6部を用いて調製例2を繰り返し、(12)の六ナトリウム塩17.0%、ポリエチレングリコール1500 5%、及び塩化ナトリウム4.4%を含む水溶液を得た。
【0046】
【化13】

【0047】
調製例8:2−ブチルアミン8.4部の代わりに1,5−ジメチルヘキシルアミン14.9部を用いて調製例2を繰り返し、(13)の六ナトリウム塩17.7%、ポリエチレングリコール1500 5%、及び塩化ナトリウム4.4%を含む水溶液を得た。
【0048】
【化14】

【0049】
調製例9:アニリン−4−スルホン酸18.2部と水酸化ナトリウム4.2部を水20部に溶解した溶液を、塩化シアヌル19.4部を氷水60部に懸濁した攪拌されている懸濁液に添加した。30%水酸化ナトリウムを滴下して加えることによりpHを6に保った。ジアゾ反応によって1級芳香族アミン基が検出されなくなるまで、混合物を10℃より低温で攪拌した。その後、4,4’−ジアミノスチルベン−2,2’−ジスルホン酸18.5部と水酸化ナトリウム4.0部を水25部に溶解した溶液を添加し、30%水酸化ナトリウムを添加してpHを6.5〜7.5の間に調整し、さらにジアゾ反応で陰性が得られるまで混合物を30℃で攪拌した。2−ブチルアミン8.4部を添加し、30%水酸化ナトリウムを添加してpHを8〜9に保ちながら、混合物を加熱して2時間還流した。そのようにして生成した水溶液を80℃に冷却し、平均分子量1500のポリエチレングリコール20部と尿素80部で処理した。溶液を再度10分間還流し、次いで水を用いて400部に希釈した。得られた水溶液は、(14)の四ナトリウム塩13.8%、ポリエチレングリコール1500 5%、尿素20%、及び塩化ナトリウム4.4%を含んでいた。
【0050】
【化15】

【0051】
適用例1:調製例2に記載されているように作った増白剤(5)のナトリウム塩の溶液を、濃度10〜80g/Lの範囲で、攪拌されているアニオン性のジャガイモでんぷん(ABEVE B.A.から市販されているPerfectamyl A4692)水溶液に60℃で添加して、サイジング溶液を調製した。デンプン含量が5%になるよう溶液を水で希釈して、放置して冷却した。
【0052】
サイジング溶液を、実験室サイズのプレス機の動いているローラーの間に注ぎ、市販されている75g/m2の、AKD(アルキルケテンダイマー)でサイズされ、漂白してある紙基材のシートに適用した。処理した紙は、平床式乾燥機中、70℃で5分間乾燥した。乾燥した紙は測定に適当な状態にし、次いで校正したElrepho分光光度計でCIE白色度を測定した。測定値は、驚くほど高いレベルの白色度を示した。
【0053】
【表1】

【0054】
また、結果をグラフにして図1に示した。
【0055】
適用例2:チョーク(OMYAから市販されているHydrocarb90(商品名))500部、クレイ(IMERYSから市販されているKaolin SPS(商品名))500部、水470部、分散剤(BASFからPolysalz S(商品名)として市販されているポリアクリル酸のナトリウム塩)6部、ラテックス(BASFからAcronal S320D(商品名)として市販されているアクリル酸エステルコポリマー)200部、及びアニオン性の酸化ジャガイモでんぷん(AVEBEから市販されているPerfectamyl A4692(商品名))の20%水溶液400部を含む、被覆組成物を調製した。水を添加して固形分含量を65%に調節し、水酸化ナトリウムを用いてpHを8〜9に調節した。
【0056】
調製例2に記載されているように作った増白剤(5)のナトリウム塩の溶液を、濃度0.1〜0.6%の範囲で、攪拌している被覆組成物に添加した。その後、増白した被覆組成物を、速度設定を標準かつバーへの荷重も標準として自動ワイヤーバーアプリケーターを用い、市販されている75g/m2の、中性でサイズされた白い紙基材のシートに適用した。その後、被覆した紙を高温空気流中で5分間乾燥した。乾燥した紙は測定に適当な状態にし、次いで校正したElrepho分光光度計でCIE白色度を測定した。
【0057】
【表2】

【0058】
また、結果をグラフにして図2に示した。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】適用例1の結果をグラフにしたものである。
【図2】適用例2の結果をグラフにしたものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式(1)の化合物。
【化1】

(Mは、水素、アルカリ金属カチオン、アンモニウム、又はC2−C3ヒドロキシアルキル基で1、2又は3置換されているアンモニウムであり、
nは、0、1又は2であり、
1は、水素、ヘテロ原子によって置換されてはならない直鎖C1−C8アルキル基又は分岐C3−C8アルキル基であり、並びに
2及びR3はそれぞれ、ヘテロ原子によって置換されてはならず、かつ環を形成してはならない、直鎖C1−C8アルキル基又は分岐C3−C8アルキル基である。)
【請求項2】
Mが、水素、アルカリ金属カチオン又はアンモニウムであり、
nが、1又は2であり、
1が、水素、ヘテロ原子によって置換されてはならない直鎖C1−C4アルキル基又は分岐C3−C5アルキル基であり、並びに
2及びR3がそれぞれ、ヘテロ原子によって置換されてはならず、かつ環を形成してはならない、直鎖C1−C4アルキル基又は分岐C3−C6アルキル基である、
請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Mが、水素、ナトリウム又はカリウムであり、
nが、1又は2であり、
1が、水素、メチル、エチル、プロピル又はi−プロピルであり、並びに
2及びR3がそれぞれ、メチル、エチルもしくはプロピル、又はi−プロピル、i−ブチル、i−ペンチルもしくはi−ヘキシルである、
請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
Mが、水素又はナトリウムであり、
nが、1又は2であり、
1が、水素又はメチルであり、並びに
2及びR3がそれぞれ、メチル又はエチルである、
請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載の化合物又はこれらの混合物10〜40質量%を含み、及び必要に応じてポリエチレングリコール5〜20質量%を含む水溶液。
【請求項6】
ハロゲン化シアヌルと、
a)下式のジアミン、
【化2】

b)下式のアミン、及び
【化3】

c)下式のアミン
【化4】

(M、n、並びにR1、R2及びR3の基は、請求項1〜4のいずれか1つに定義したものを意味する。)
との段階的反応による、請求項1〜4のいずれか1つに記載の化合物の調製方法。
【請求項7】
式(3)の前記芳香族アミンがアニリン−2,5−ジスルホン酸であり、及び式(4)の前記脂肪族アミンがイソプロピルアミン、N−メチルイソプロピルアミン又は2−ブチルアミンである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
a)請求項1〜4のいずれか1つに記載の蛍光増白剤を、架橋可能な仕上げ剤に、処理浴中で添加しあるいは事前に添加し、
b)該仕上げ剤を架橋し、及び
c)その処理した布地を乾燥する
工程を含む、仕上げ段階におけるセルロース布地の蛍光増白方法。
【請求項9】
a)顔料の入った被覆組成物に、又はサイジング溶液もしくは懸濁液に、請求項1〜4のいずれか1つに記載の蛍光増白剤を添加し、あるいは請求項5に記載の溶液を添加し、
b)該被覆組成物又は該サイジング溶液もしくは懸濁液を紙に適用し、及び
c)その処理した紙を乾燥する
工程を含む、紙の蛍光増白方法。
【請求項10】
結合剤2〜15質量%を前記サイジング溶液又は懸濁液に添加する追加の工程を含む、請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−505856(P2008−505856A)
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−517302(P2007−517302)
【出願日】平成17年6月24日(2005.6.24)
【国際出願番号】PCT/EP2005/052960
【国際公開番号】WO2006/000573
【国際公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(596033657)クラリアント インターナショナル リミティド (48)
【Fターム(参考)】