説明

蛍光寿命画像顕微法および分光法

蛍光発光分光法データおよび蛍光寿命画像顕微法データの分析のための方法およびシステムを記載する。正確な分解へと収束する任意の形式の蛍光強度減衰のための一意的なラゲール展開を、従来の方法よりも高速に求めることができる。ラゲール展開手法は、固有の蛍光寿命と大いに相関する展開係数を含むので、蛍光動力学を直接特徴付けることが可能になる。複雑系については、離散的指数成分に関して蛍光強度減衰の従来の分析は、内在する蛍光動力学の正しい表示を容易には提供することができない。ラゲール展開手法を活用して、多様な系からの時間分解蛍光データの分析のための代替のノンパラメトリック法を記載し、それは、試料の特徴付けおよび識別を促進する。蛍光寿命画像化の分析のための超高速な方法も記載し、試料の組成変化および機能変化のリアルタイムでの分析が、光顕レベルまたは巨視レベルで促進される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施態様は、蛍光発光の分析を必要とする医学、生物学、生化学、化学、薬剤学、遺伝学、およびその他の分野を含む分野の広範な範囲の用途に利用することのできる、時間分解蛍光発光データおよび蛍光寿命画像顕微法データの定量分析および定性分析に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光分光法は非破壊光学法であり、病態に関連する生化学的、機能的、形態学的変化に対して細胞や組織を含む複雑な生物系をプローブするのに広く利用される。このようなアプローチはインビボでの非侵襲的診断の可能性を有する。蛍光測定は、静的(定常状態または時間積分)にも動的(時間分解)にも分類することができる。定常状態の手法は、蛍光発光強度および分光分布についての情報をもたらす、時間にわたって積分されたスペクトルを提供する一方、時間分解手法は、動的に発生する蛍光発光を測定し、試料の分子種に対するさらなる識見(例えば蛍光種の数および発光全体への蛍光種の寄与)、および/または局所環境の変化に対するさらなる識見を提供する。
【0003】
時間分解蛍光測定には2つの方法が広く用いられる。すなわち、時間領域と周波数領域である。時間領域については、試料は短い光パルス(通常ナノ秒以下)で励起され、高速光検出器により励起に続いて発光強度が測定される。周波数領域では、強度を変調した光が試料蛍光を誘起する。試料の蛍光緩和寿命に起因して、放射された波は励起に対して相対的に時間が遅延され、減衰時間を計算するのに用いられる位相シフトが誘起される。
【0004】
時間領域測定との関連で、蛍光インパルス応答関数(IRF)は、単一の蛍光減衰測定の全ての時間情報を含む。IRFは理想的なd関数の励起に対するシステムの応答である。実際には、励起光パルスは通常、少なくとも数ピコ秒の幅がある。したがって、これらは振幅の異なる一連のd関数であり、各関数はそのd関数の高さに比例する強度で試料からのIRFを開始すると見なすべきである。測定される強度減衰関数は、異なる振幅および異なる時間で開始する全IRFの和である。数学的には、測定される蛍光強度減衰データは、励起光パルスでIRFを畳み込みすることにより得られる。したがって、ある化合物の蛍光IRFを推定するには、測定される蛍光強度パルスから励起光パルスを逆畳み込みする必要がある。
【0005】
励起光パルスがd関数の励起に似て充分に短い場合、測定される蛍光減衰は固有IRFに酷似することになる。現在では非常に短い(フェムト秒の)励起光パルスを発生させることができるが、一般的利用可能性に乏しいため、ピコ秒レーザが、今なお時間分解測定に最も広範に使用される光源である。したがって、多くの場合、調査される化合物の固有の蛍光IRFは励起光パルス幅のオーダーの寿命を有することになり、続いて正確な逆畳み込み手法が非常に重要になる。
【0006】
逆畳み込み法はふつう2つのグループに分けられる。IRFの関数形式の前提を要するもの、例えば非線形の最小二乗反復再畳み込み法、および、前提なしにIRFを直接与えるもの、例えば、特にフーリエ変換法、ラプラス変換法、指数級数法、拡張指数法である。これらの方法に加え、大域解析として知られている代替のアプローチ(このアプローチでは多数の蛍光減衰実験の一斉分析が行われる)が、時間領域のデータにも周波数領域のデータにも有益であることが判明した。ところで、これらの方法のうちで最も一般的に利用される逆畳み込み手法は、非線形の最小二乗反復再畳み込み(LSIR)法である。この手法は最小二乗最小化アルゴリズムを応用して、蛍光減衰の多指数展開の係数を算出する。複雑な生物系において、蛍光発光は、通常は幾つかの内生的な蛍光物質に由来しており、吸光および散乱の影響を受ける。一方で、このような複雑な媒体から多指数減衰に関して一時的である時間分解蛍光減衰を分析することは完全に適切というわけではない。というのも、蛍光物質の内容物に関する蛍光IRFの多指数フィッティングパラメータは容易に解釈できないからである。なお種々の多指数表現が実験の蛍光減衰データを同様に充分に再現することができるので、複雑な蛍光系にはIRF減衰物理学の関数形式についての任意の先験的前提を回避するという利点があることを示唆している。
【0007】
同様に、蛍光寿命画像顕微法(FLIM)との関連で、逆畳み込み法はデータ分析にとって極めて重要である。寿命は異なるが類似のスペクトル特性を有する蛍光物質を区別するその能力のため、FLIMは次第に一般に普及してきた。FLIM分析の最新の方法では、固有の蛍光減衰またはIRFに蛍光発光を近似させることができるように、励起パルスが無視できるほど短いという前提、およびIRFは単一指数減衰法則に従うという前提が必要となる。ところが、短い励起パルス、および単一指数蛍光減衰という必要となる前提は、実際には場合により満足させることができず、ほとんどのレーザ励起パルスは数ピコ秒幅となり、同一試料中には多数の蛍光物質が同時に励起されている。このような状況下では、逆畳み込みアルゴリズムを応用する必要があり、より一般的な蛍光減衰法則を前提とする必要がある。
【0008】
さらに、画像化における蛍光寿命は画素ごとに決定されるので、時間減衰を回復させるための反復方法は時間のかかるものとなり、概して相当数のデータ試料の取得を必要とすることがある。
【0009】
実験入出力データから動的システムの固有特性を逆畳み込みする方法としての離散時間ラゲール基底に基づく展開が、初めにMarmarelisにより提案され、腎臓の自己調節や心拍数の自律性調節を含む、種々の生理学系の線形および非線形モデリングに応用された。ラゲールを基礎とする逆畳み込み手法はLSIR手法の変形として近年報告されたが、そこでは、蛍光IRFが、指数関数の加重和ではなく、離散時間ラゲール基底に基づく展開として示されている。ラゲール逆畳み込み手法は、これまで組織の光学分光法に応用されており、アテローム性動脈硬化症からの時間分解蛍光発光データの分析に、また、種々の種類のヒト胸部組織を介して伝送される超高速レーザパルスの時間広がり関数の分析に有望な結果をもたらした。さらに、Marcu等の特許文献1において(これを、完全に示したように参考としてによりその全容を本明細書に援用する)、ラゲール逆畳み込み手法は時間分解レーザ誘起型蛍光分光法(TR‐LIFS)に応用され、スペクトル領域および時間領域の両方においてタンパク質および脂質の蛍光成分の蛍光応答を調査することにより組織を特徴付けるために用いられた。一方で、この手法を蛍光測定に応用する際の公式な評価は報告されていない。
【0010】
従って、正確であるとともに迅速な、時間分解蛍光発光データおよび蛍光寿命画像顕微法データの定量分析および定性分析のための方法およびシステムの必要性が存在する。
【特許文献1】米国特許第6,272,376号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0011】
(発明の概要)
本発明は、従来の手段を活用して、蛍光発光減衰データを分析するための蛍光を発生させ、これを測定する方法およびシステムを開示する。この蛍光発光減衰データは、1組の定量的記述子に関して、生化学系の蛍光発光の強度および寿命(時間)特性を記述する。記述子は、ラゲール基底として知られている数学関数の直交族に基づく、固有の蛍光発光減衰の展開の係数に対応している。したがって、化学/生化学的試料の固有の蛍光減衰h(n)は次式で表される。
【0012】
【数9】

ここで、cは展開係数であり、この方法で用いられる記述子を表す。これらの記述子は、時間分解および定常状態の試料の蛍光スペクトルを完全に特徴付ける。これらの記述子を直接使用して、化学/生化学成分の混合物中の濃度を予測するために蛍光時間分解データを較正することができ、生化学系を直接に特徴付けし、分類することが可能になる。
【0013】
本発明は、多指数LSIR法を含む従来技術に勝る、幾つかの利点を提供する。例として、ラゲール関数基底に基づく任意の形式の固有の蛍光強度減衰の展開は、減衰法則の関数形式を前提とすることなく常に求めることができる。より重要なことに、展開係数の集合は一意的である。対照的に、多指数展開は、指数の数または減衰定数の値が予め決められている場合でも、2つ以上の解を生じることがある。さらに、ラゲール手法は多指数LSIRよりも高速に実行するので、このことは、蛍光寿命画像化(ここでは、逆畳み込みを画像の画素ごとに適用しなければならない)との関連で非常に重要である。さらに、ラゲール展開係数は固有の寿命値と極めて相関しているので、これらの係数の使用は、生化学化合物をそれらの蛍光寿命の性質に関して特徴付ける新規のアプローチであるということが示唆される。多指数法については、推定される平均寿命が常に固有の強度減衰寿命と相関しているとはいえ、個々の多指数パラメータ(減衰定数および前指数係数)は固有の寿命に必ずしも相関していないことがある。
【0014】
さらに、本発明の他の実施態様は、FLIMデータの定量分析のための堅牢かつ極めて高速な方法に関する。この方法は、ラゲール逆畳み込み手法を用いてデータの画素ごとにIRFを推定し、試料の寿命マップを生成する。測定される画像から励起パルスが逆畳み込みされる。画像を用いて第1の展開係数が推定される。第1の展開係数の係数マップが生成される。第1の展開係数に由来する時間分解情報を画像から除去した後、同様のアプローチにより、次に高い展開係数マップが推定され得る。いったん全展開係数のマップが推定されると、IRFを画素ごとに構築することにより寿命のマップを算出することができ、S個の時間段階(time instance)については次式が成り立つ。
【0015】
【数10】

最終的に、IRFがその最大値の1/eとなる時間点を補間することにより、寿命マップが算出される。
【0016】
この方法は、時間分解蛍光画像化について現在のアルゴリズムに勝る幾つかの利点を提供する。例として、任意の形式の固有の蛍光強度減衰を、それらの関数形式の先験的前提なしにラゲール基底に基づく展開として画素ごとに推定することができる。さらに、各画素から蛍光IRFを展開するのに必要となる画像の数が著しく少なく、したがって、取得時間の低減が可能となる。一実施態様において、必要となる画像の数はわずか5とすることができる。一方で、必要とされる画像の数は5に限定する必要はなく、代替の実施態様において、必要となる画像の数を5より多くすることも、5より少なくすることもできる。このことは、リアルタイムでの取得を要する関数蛍光寿命画像化の問題に特に関連がある。さらに、測定される画像からの励起光パルスの逆畳み込みが実際に画素ごとに行われるため、非常に短いパルスでの励起はもはや不要である。
【0017】
それ故に、この方法は、多様な実際の用途に利用できる、費用を抑えたより簡素なFLIM系を発展させる可能性を有する。例として、本発明に係る分析法は、ラゲール関数の直交性を利用して、展開係数の完全なマップを極めて迅速に算出することを可能にする。展開係数の集合は、これらが展開するIRFの時間特性を集約するので、画像の画素ごとでの蛍光減衰の完全な特徴付けを数秒で達成することができる。
【0018】
さらに、展開係数のマップを直接使用して、化学/生化学成分の混合物中の濃度のマップを予測することもでき、試料領域上の生化学成分の空間分布も、それらの相対濃度も、推定することができる。
【0019】
先に言及したような利点を考慮すれば、本発明の実施態様は、生物学的研究、生物医学的研究、臨床診断、化学的研究、生化学的研究、薬学的研究、遺伝子研究、およびその他多くのものを含む多様な分野で活用することができる。そのようなものとして、本発明は多種多様な用途に利用することができ、そこには、生化学成分の混合物からの相対濃度の推定、正常脳に対する腫瘍の術中同定(例えば神経外科切除中の脳腫瘍の同定)、アテローム硬化斑の生化学的組成の特徴付け、および斑破裂の予測標識の同定が含まれるが、これらに限定されない。
【0020】
本発明の実施態様は多様な方法で実施することができ、パーソナルコンピュータまたはサーバ上にて実行可能なコンピュータソフトウェアを含む。さらに、本発明の実施態様は、試料検出/分析手法として寿命蛍光分光法を用いた任意の分析機器と併せて使用することができる。それには、分光光度計、血球計算器、創薬分析系が含まれるが、これらに限定されない。本発明の代替の実施態様は、FLIM顕微鏡手法系および蛍光時間分解発光データによる分光器計測と併せて使用することができる。本発明のさらなる実施態様が、本発明に係る方法を、当業者に容易に理解され通常の業務で実施されるような代替の設備、計測および実験装置に組み入れることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
図1は、本発明の一実施態様による、試料の蛍光測定を得るための方法のブロック図を示す。試料は短い光パルスで励起してもよい。ブロック110では、測定される試料強度減衰関数を決定する。ラゲール逆畳み込み手法を使用して、試料の固有の蛍光強度減衰を推定する。試料は生物学的組織、化学的試料、生化学的試料、あるいはそれらの任意の組み合わせであってもよく、当技術分野で公知のその他の任意の種類の試料であってもよい。用語「組織」は、広く、特定の機能を遂行する類似細胞の集合体からなる任意の生命体を言及しているということが理解されるべきである。例えば、組織は、動脈壁、腫瘍塊、または血漿の一部であってもよい。
【0022】
ラゲール逆畳み込み手法は、離散時間ラゲール基底に基づいて蛍光IRFを展開するノンパラメトリック法である。ラゲール関数(LF)は、漸近指数の緩和動力学によりラゲール関数を物理系に好ましいものにする指数項が中に組み込まれているため、適切な正規直交基底として示唆されてきた。ラゲール基底は完全直交系関数であるため、このアプローチにユニークな特徴として、このラゲール基底は任意の形式の蛍光応答を再現できるということがある。このように、ラゲール基底は減衰関数の一意的かつ完全な展開を表す。測定される蛍光強度減衰データy(t)は、励起光パルスx(t)によるIRF h(t)の畳み込みにより次式で与えられる。
【0023】
【数11】

一方で、時間領域の時間分解蛍光測定は、パルスサンプリング・ゲート検出手法(高速ディジタイザでの蛍光パルスの直接記録)の場合のように、多くの場合、離散時間において得られる。離散時間の場合、観察される蛍光強度減衰パルスと励起レーザパルスとの関係は、次の畳み込み式により表される。
【0024】
【数12】

式(2)中のパラメータKはシステムメモリの大きさを決定し、Tはサンプリング間隔であり、h(m)は固有の蛍光IRFである。ラゲール逆畳み込み手法は離散時間LF bα(n)の正規直交系を用いて、蛍光IRFを離散化し展開する。
【0025】
【数13】

式(3)において、cは未知のラゲール展開係数(LEC)である。ブロック120に示すように、展開係数が推定される。これらの展開係数は入出力データに基づいて推定することができる。bα(n)は、j次の正規直交離散時間LFを示し、Lは、IRFをモデル化するのに使用されるLFの数である。LF基底は次式のように定義される。
【0026】
【数14】

各LFの次数jは、そのゼロ交差(根)の数に等しい。ラゲールパラメータ(0<α<1)はLFの指数関数の傾きの変化率を決定する。次数jが高次になるほど、および/または、ラゲールパラメータαが大きくなるほど、LFの時間の広がりが長くなり、また、ゼロ交差間の時間間隔が大きくなる。ラゲールパラメータαが、システムのインパルス応答のラゲール展開が収束の点で最も効率的となる時間スケールを規定するということに留意することは重要である。したがって、蛍光IRFの寿命を長く(メモリを長寿命に)すれば、効率的再現のためにαを大きくすることが必要となり得る。一般に、パラメータαは、カーネルメモリ長Kと、展開に使用されるラゲール関数Lの数とに基づいて選択されるので、全ての関数は、インパルス応答の終わりまでゼロに充分に接近して減衰する。
【0027】
式(3)を式(2)に挿入することにより、畳み込み式(2)は次のようになる。
【0028】
【数15】

ここで、v(n)は、LFによる励起入力の離散時間畳み込みであり、「基本変数」を意味する。v(n)の算定は、次の再帰的関係を用いることにより、極めて迅速化することができる。
【0029】
【数16】

これは、離散時間LFの特定の形式に起因する。この再帰的関係の算定は、以下の再帰方程式により初期化する必要がある。この式では所定の刺激x(n)についてv(n)が得られる。
【0030】
【数17】

これらの算定は、n=0,1,・・・,N、およびj=0,1,・・・,L−1について高速に実行することができる。ここで、Nはデータ集合における試料の数であり、LはIRF展開において使用されるLFの総数である。最終的に、離散信号y(n)およびv(n)による式(5)の一般化線形最小二乗フィッティングにより、未知の展開係数を推定することができる。モデルで使用すべき最適なLF数、続いて、パラメータαの値が、残差の加重和を最小化することにより決定された。
【0031】
【数18】

ここで、y(n)は実際の蛍光減衰、
【0032】
【数19】

は推定された減衰、wは重み係数である。重みwは、時間nでの測定に関して実験上の分散σの逆数に比例している。時間領域測定で最も一般的な手法である時間相関単一光子計数法について、実験上の分散を算出することは簡単である。というのも、これは、分散が光子計数の数に比例することが知られているポアソン統計に従うことを前提としているからである。高速ディジタイザでの蛍光パルスの直接記録を利用して、時間領域を測定することもできる。一方で、この場合において、実験上の分散は、代表的な1組の実験データから推定することが必要となる。実験上の分散を蛍光減衰の振幅の関数として推定するために、試料の蛍光減衰は反復して測定され、次に、各時間点nでの減衰信号の分散および平均強度が算出される。平均強度の関数としての分散の両対数プロットを通る直線適合の傾斜が、実験上の分散と蛍光強度減衰振幅との関係を示すことになる。
【0033】
時間相関単一光子計数について、6つの異なる蛍光基準色素の、それらのピーク波長での55回の蛍光減衰反復測定から、実験上の分散が推定された。分散は、両対数スケールにおいて55回の測定の平均の関数として表され、6組のデータの両対数プロットを通る直線フィッティングの平均傾斜は0.99(範囲:0.91〜1.09)であり、実験上の分散は蛍光信号にほぼ比例して増加したということを示唆した。したがって、重みwは1/y(n)により推定された。
【0034】
最終的に、ラゲール展開係数を用いて、それらの蛍光時間特性に関して試料を特徴付けることができる(130)。
【0035】
図2は、本発明の一実施態様による方法を用いるシステムを示す。測定される蛍光強度減衰は、入力装置102を介してプロセッサ100で受信することができる。入力装置102は、測定される蛍光強度減衰を決定するのに使用可能な蛍光顕微鏡に連結され得る。あるいは、測定される蛍光強度減衰は入力装置102にて手動で入力することができるが、この入力装置とはコンピュータ端末またはキーボードとすることができる。本発明の代替の実施態様において、当業者には容易に理解されるように、入力装置102は、本発明に係る方法により処理され得るタイプのデータの生成、収集、提供などができる任意の電子機器あるいは同様の機器から選択することができ、これはルーチンの実験により実施することができる。さらに、入力装置102は、励起光源(図示せず)を含むか、または励起光源に連結されて、励起パルスを発生させることができる。励起光源は、当技術分野において知られているような任意の光源とすることができ、窒素レーザあるいは紫外レーザを含むが、これに限定されない。次に、プロセッサ100を使用して、ラゲール逆畳み込み法により、測定される蛍光強度減衰から励起パルスを逆畳み込みして固有の蛍光強度減衰を推定することができる。プロセッサ100はラゲール展開係数を推定することができ、このラゲール展開係数は、出力装置104を介して出力されるか、記憶装置106に記憶して、その手法の精度または速度を評価するのに、あるいは試料を特徴付けるのに、さらに使用することができる。
【0036】
ラゲール逆畳み込み手法、およびラゲール展開係数に基づいて生化学成分の混合物中の濃度を予測するための提案方法の遂行能力が、シミュレートされたデータと実験データとにより評定された。所定のIRFの放射寿命値τが、IRFがその最大値の1/eとなる時間点を補間することにより計算された。シミュレートされたデータの生成、および寿命蛍光基準に基づく蛍光測定を次の項で簡単に説明する。
【0037】
(時間分解蛍光データの生成)
(シミュレートされたデータ)
合成データは、固定の減衰定数、および各指数成分の部分的寄与についてランダムな値を用いた4指数モデル(four−exponential model)により生成された。計600組のデータが生成され、平均寿命値は0.3〜12nsの間となった。このデータに、ゼロ平均の3つの異なる分散レベルの白色雑音が加えられ、約80dB、60dB、50dBの信号対雑音比(それぞれ低雑音、中間雑音、高雑音のレベル群)を有する600組のデータの3つの異なる群が生じた。本発明者らのシミュレーションのための励起信号として、9‐シアノアントラセンの試料から測定されたレーザパルス(700psecのパルス幅)が使用された。したがって、全組のデータがレーザ信号により畳み込みされ、本発明者らのシミュレーションの「測定される」減衰データが生じた。このデータにラゲール逆畳み込み手法が、3〜6のラゲール関数の範囲で異なるモデル次数を用いて適用された。同様に、多指数逆畳み込み手法も、1〜4の指数成分の範囲の異なるモデル次数を用いてこのデータに適用された。
【0038】
(実験データ:寿命蛍光基準)
蛍光寿命測定のための基準色素からデータが収集された。色素は、生物学的用途、例えば組織からの蛍光発光にとって最も適切な、広範な範囲の放射寿命(0.54〜12ns)を網羅するように選択された。選択された蛍光物質には、ローズベンガル(33,000、Sigma−Aldrich)、ローダミンB(25,242、Sigma−Aldrich)、9‐シアノアントラセン(15,276、Sigma−Aldrich)が含まれる。測定に使用された蛍光色素は10−6M溶液に希釈された。蛍光基準試料は、発光波長337.1nm(700spec WHOM)を有するサブナノ秒パルスの窒素レーザで励起された。蛍光性パルス(高速ディジタイザおよびゲート検出)の直接記録を可能にする時間分解時間領域蛍光装置により蛍光応答が測定された。光ファイバ束(二股プローブ)により蛍光パルスが収集され、起動時間180psである多重チャンネルプレートの光電子増倍管に結合された単色光分光器へと指向された。単一励起パルスからの蛍光パルス全体は、1GHz帯域幅のディジタルオシロスコープで記録された。各試料溶液については、200nmスペクトル領域で、400nmから650nmまで5nmの増分で時間分解蛍光スペクトルが測定された。各測定シーケンス後、励起レーザ線を僅かに下回る波長で、レーザパルス時間プロファイルが測定された。同一のキュベットを使用して、溶媒(エタノールまたはメタノール)用にバックグラウンドスペクトルが用いられた。
【0039】
(技術評価および検証)
(シミュレートされたデータ)
図3aは、ラゲール逆畳み込み法による、シミュレートされた時間分解蛍光強度減衰(灰色の実線、中間雑音レベルにてτ=4.1ns)、それに対応する推定(黒色の点線、L=5)、およびレーザパルス(黒色の実線)のグラフを示す。残差(上の挿入図)は、ピーク蛍光振幅の<2%であり、ゼロ付近でランダムに分布して見える。残差の自己相関関数(下の挿入図)は、非ランダムな残差に特徴的である低周波振動は含まず、主としてゼロ付近に集中した95%信頼区間(点線)内に含まれる。これらの観察は合成の蛍光減衰と推定された蛍光減衰との間の優れた適合を示し、ラゲール展開手法に基づく逆畳み込みアルゴリズムにより蛍光IRFが適切に推定されたことを示している。図3bに示される、多指数アプローチ(P=3)による同一試料の蛍光減衰の結果も同様な結果を示した。図3aおよび図3bで描かれる1つの重要な事柄とは、ラゲール適合および多指数適合の両方に対応する残差および自己相関関数が非常に類似して見えるということである。このことは、両手法が正しい合成時間分解減衰データに正確に適合し、単なる人工的データの付加的な白色雑音成分は無視することができるという事実により説明される。
【0040】
0.3〜12nsの寿命範囲に沿ったラゲール逆畳み込み手法および多指数逆畳み込み手法の遂行能力が、実際の寿命値と推定された寿命値との間の相対誤差(RLE)、および正規化平均二乗誤差(NMSE)により評定された。両手法で同様の遂行能力が得られた。すなわち、低雑音、中間雑音、高雑音のレベル群についてそれぞれ、求められたRLE値は1%、2%、4%未満であったのに対して、NMSE値は0.04%、0.3%、0.9%未満であった。
【0041】
固有の蛍光減衰の推定に関して、LF数(蛍光IRFを展開するために選択された)の影響を調査するために、合成データは、異なる次数(3〜6LF)のラゲール展開により逆畳み込みされた。寿命の範囲が1〜8nsである減衰については、5LFであるIRF展開が蛍光発光減衰(RLE<2%)の最良の推定を生じた。高速減衰(τ<1ns)および低速減衰(τ>8ns)の最良の推定は、それぞれ6LFおよび3〜4LFの展開により得られた。多指数逆畳み込み法に関しては、低速減衰では2指数展開、高速減衰では3指数展開により、IRF(RLE<2%)の良好な推定が生じた。
【0042】
上述したように、調査される化合物をさらに特徴付けるために使用すべき固有の時間蛍光動力学を、逆畳み込み手法が表現するということが重要である。多指数逆畳み込み手法およびラゲール逆畳み込み手法はいずれも、蛍光IRFを表現するのに使用する以下のようなモデルのパラメータに関して時間蛍光強度減衰情報を集約する。i)多指数法の場合に関しては前指数因子(a)および減衰定数(τ)、ii)ラゲールアプローチの場合に関してはラゲールαパラメータおよびc展開係数。したがって、化合物をその蛍光寿命情報に関して特徴付けようとする本来の試みとは、多指数あるいはラゲールのいずれかのモデルパラメータを活用することである。
【0043】
これらのモデルパラメータが、調査される化合物の蛍光時間情報を独力で反映するかどうかを調査するために、シミュレートされたデータの実際の寿命値とモデルパラメータとの間の相関係数(最初の2つの指数パラメータ、および最初の3つのラゲール展開係数)が算出された。二変数の場合は、各変数の分散により正規化された2つの変数間の共分散として相関係数(−1<r<1)が規定され、この相関係数が、これらの2つの変数間の線形関係の強さを測定する。相関係数r=−1は完全な負数(逆数)の線形従属を示し、r=0は線形従属がないことを示し、r=1は完全な正数の線形従属を示す。
【0044】
図4aに、4〜5nsの間の放射寿命の関数としての最初の3つのラゲール展開係数、および相関係数を示す。明らかに観察できることであるが、1番目および3番目の展開係数が固有の減衰寿命と正に相関したのに対して、2番目の展開係数は固有の寿命と負に相関した。3つ全てのラゲール展開係数(LEC‐1〜LEC‐3)が実際の寿命値(r>0.95)に非常に相関した。この結果は、ラゲール展開係数の各々が、IRFの時間緩和を捕捉して反映し、したがって、調査される化合物の特徴付けにさらに利用できるということを示している。
【0045】
図4bには、2指数の高速(t)および低速(t)減衰定数のプロット、および放射寿命4〜5nsの間の関数としての高速指数(a/(a+a))の相対的な寄与のプロットも示す。この具体的な寿命範囲に関して、時間減衰定数のうち1つのみである低速減衰定数(t)が寿命値と正に相関した(r=0.82±0.01)。残りの時間減衰定数、および正規化された前指数因子は、寿命値(それぞれr=0.55±0.02、およびr=0.54±0.03)と相関しなかった。
【0046】
(実験データ)
実験データから蛍光減衰を取り出すラゲール逆畳み込み法の精度を調査するために、広範な緩和寿命を有する多数の寿命蛍光基準が溶液中で測定された。ラゲール逆畳み込み法と多指数逆畳み込み法の両方により取り出された寿命は、文献(Lakowicz、「Principles of Fluorescence Spectroscopy, 2nd ed.」、Kluwer Academic/Plenum、New York(1999)参照)からの値と比較された。この分析の結果を表1に示す(平均±SE)。
【0047】
【表1】

寿命が数百ピコ秒の範囲である、ローズベンガルのような寿命の短い蛍光物質を、ラゲール逆畳み込み手法により容易に取り出すことができた。図5aにおいて、メタノール中のローズベンガルからの580nmでの蛍光強度減衰測定に関してこのことを示す。蛍光物質の強度減衰データは、L=3またはL=4のラゲールモデルにも、単一指数減衰にも最も適合した。この具体的な実施例に関して、ラゲールのほうが、残差が小さいことが示すように(図5aの上の挿入図)、ラゲールアプローチのほうが良好に機能したとはいえ、図5a、図5bに示すように、両方の方法が非常に良好な適合を生じた。ラゲール法および指数法の両方において、固有の蛍光減衰(IRF)はそれぞれ寿命値0.456±0.004ns、および0.4±0.006nsで同様になり、これらは以前に報告されたデータと良く一致した。
【0048】
同様に、エタノールおよびメタノール中のローダミンBの測定は、ラゲール法がナノ秒およびサブナノ秒の蛍光寿命を正確に分解するという能力を実証したが(図6a)、このことは特に重要である。というのも、生物学的に関連性のある多数の蛍光物質(例えばエラスチン、コラーゲン)が、これらの時間スケールで放射することが知られているからである。RdmB蛍光物質の強度減衰データは、L=4のラゲールモデル、および単一指数減衰に最も適合した。図6a、図6bからわかるように、両方の方法は非常に良好な適合を生じた。
【0049】
最後に、ラゲール手法の能力を評定して長い蛍光寿命を取り出すために、エタノール中の9‐シアノアントラセン(9/CA)の蛍光減衰も逆畳み込みされた(図7a、図7b)。ラゲール法および指数法の両方で、固有の蛍光減衰が寿命値に関して同様になり(上記の表1を参照)、これらも以前の報告と一致した。9/CA蛍光物質の強度減衰データはL=2のラゲールモデル、および単一指数減衰に最も適合し、図7a、図7bにおいて観察されるように、2つの方法により、非常に良好な適合が得られた。シミュレーションデータに関する結果と同様に、寿命の短い化合物(例えばRBおよびRdmB)と比較して、寿命の長い蛍光物質(例えば9/CA)の逆畳み込みには、必要となる展開のためのLFが少ないということが観察された。
【0050】
ラゲール逆畳み込み手法および多指数逆畳み込み手法の両方の算定時間を比較するために、幾つかの波長(400〜650nm)で250組の9/CA時間分解蛍光データが両手法により逆畳み込みされ、各組のデータについて逆畳み込み時間が測定された。平均算定時間は、5LFのラゲール逆畳み込みでは33.1±0.86ms、単一指数LSIR逆畳み込みでは101.4±1.6msであった。両方法はMatlab‐6.5で実施され、IBM互換のワークステーション(Intel Xeonプロセッサ、2.0GHz)で実行された。
【0051】
(応用)
(ラゲール展開係数による混合物中の濃度の予測)
上述のように、ラゲール展開係数は蛍光振幅(強度)および時間減衰特性についての特有の情報を含むため、これらの係数を生化学系の定量分析に直接使用することができる。これに対応するために、蛍光IRFのラゲール展開係数の分析に基づいて生化学成分の混合物中の濃度を予測するための方法を、本項において紹介し、以下にに記載する。
【0052】
試料の蛍光IRFであるS(n)はN個のラゲール関数bα(n)に基づいて展開することができる。
【0053】
【数20】

式(9)において、cは試料の減衰モデルの展開係数である。試料はM個の生化学成分から成り、それらの各々は、蛍光IRFであるC(n)を生成し、これらが同じN個のラゲール関数に基づいて展開できるということも仮定となる。
【0054】
【数21】

式(10)において、ak,jはk番目の生化学成分のIRFの展開係数である。
【0055】
最終的に、試料の蛍光IRFであるS(n)は、それらのM個の個々の生化学成分の蛍光IRFであるC(n)の線形組み合わせとして次のようにもモデル化できると仮定する。
【0056】
【数22】

ここで、Aは、試料の蛍光IRFに対する個々の生化学成分の蛍光IRFの相対的な寄与である。式(10)を式(11)に挿入すると、以下のようにすることができる。
【0057】
【数23】

最終的に、式(9)および(12)から、以下のように、試料IRFの展開係数cを生化学成分IRFの展開係数ak,jに関連付けることができる。
【0058】
【数24】

実際には、展開係数cおよびak,jは、試料の蛍光強度減衰測定および個々の生化学成分の蛍光強度減衰測定から推定することができる。それ故に、(13)で規定された線形方程式の系を解くことにより、試料の蛍光IRFに対する個々の生化学成分の蛍光IRFの相対的な寄与Aを取り出すことが可能である。この系を解くために、方程式の数は未知数の個数以上にすべきであり(N≧M)、それ故に、減衰モデル化を展開するのに使用されるLFの数(N)は、個々の生化学成分の数(M)以上にすべきであるということに注目するのが重要である。
【0059】
ラゲール展開係数の分析に基づいて生化学成分の混合物中の濃度を予測するための方法が、異なった相対濃度のローズベンガル(RB)およびローダミンB(RdmB)の混合物でテストされた。3種類の混合溶液が、濃度値[RdmB]/[RB]をそれぞれ0.25/0.75μM、0.50/0.5μM、0.75/0.25μMに等しくして調製された。10−6MローズベンガルおよびローダミンBの溶液も、[RdmB]/[RB]濃度をそれぞれ0/1.0μMおよび1.0/0μMにして測定された。550〜600nm間の波長(575nmのスペクトルピーク周辺での波長範囲に対応)で5つの溶液から時間分解蛍光測定が記録され、分析に使用された。
【0060】
(ラゲール係数による濃度予測の検証)
生化学成分の混合物中の濃度を予測するための提案方法をテストするために、ローダミンB(RdmB)およびローズベンガル(RB)の5つの混合物の蛍光減衰が、離散時間ラゲールパラメータα=0.81で5LFを用いて展開された。混合物の蛍光減衰に対する個々の生化学成分減衰の相対的な寄与(A)が、式(13)を解くことにより予測された。スペクトル分析に基づく濃度予測に関して提案アプローチをより従来の方法と比較するために、主成分回帰(PCR)および部分最小二乗(PLS)を混合物のスペクトルデータに適用することにより、RdmBの相対濃度も決定された。これら3つの方法の結果を表2に示す。
【0061】
【表2】

全ての方法で、3つの溶液中のローダミンB濃度の類似した推定が得られる。一方で、固有の蛍光減衰のラゲールモデルは、スペクトル法(PCR:誤差<7%、PLS:誤差<10%)と比較して、蛍光物質の濃度がより良好に推定された(誤差<2%)。
【0062】
(検討)
多指数逆畳み込みは複雑な生体分子系の蛍光IRFを正確に取り出す可能性を有するとはいえ、多指数適合のパラメータは、蛍光物質の内容物の数に関して容易には解釈することができない。蛍光物質の環境、タンパク質の立体構造または架橋が変化した場合も、単一の蛍光物質の強度減衰は異なることになろう。したがって、個々の減衰時間を考慮することは一般に現実的ではない。その上、上記で示したシミュレーション結果で十分実証されたのと同じ蛍光強度減衰実験データを、全く異なる多指数表現が再現することがある(シミュレーション結果では、4指数モデルにより生成された合成減衰データが、2〜4指数成分とは異なる次数の多指数モデルにより正確に逆畳み込みされた)。このことと既に報告された証拠とが、複雑な蛍光系に関して、蛍光減衰法則の関数形式について全ての前提を回避することにおいて利点があるという結論を支持する。さらに、このことが示唆するのは、ラゲール逆畳み込み手法は、任意の形式の固有の蛍光強度減衰を、その関数形式の先験的前提なしに展開する能力を有するので、複雑系の時間領域蛍光データの分析に適したアプローチであるということである。
【0063】
シミュレーションと寿命蛍光基準の両方からの結果は、蛍光IRFを取り出すための精度に関してラゲール法が多指数法と同様に機能するという結論を支持するが、ラゲール法の1つの利点として、ラゲールパラメータαの任意の値に関して、対応するLF基底は完全正規直交基底であるということがある。したがって、ラゲール関数基底に基づく蛍光IRFの展開が常に求められるということは確実であり、さらに重要なことに、展開係数の集合は規定したラゲール基底について一意的である。組織の内生的な蛍光物質の発光に関連性のある時間である0.3〜12nsの範囲の寿命値で蛍光減衰を展開するには3〜6LFで充分であるということを本発明者らの結果が示した。一般に、低速減衰の正確な推定では、必要となる展開のためのLFは高速減衰(6以上)よりも少ない(3未満)。対照的に、多指数法による逆畳み込みは、指数の数または減衰定数の値が予め決められている場合でも、2つ以上の解を生じることがある。多指数展開の考えられる解のスパンは、減衰定数の値を先験的に決めることにより著しく低減することができるが、このことは、Wareらの「Deconvolution of fluorescence and phosphorescence decay curves. A least square method」、J Phys Chem 77、2038〜2048(1973)により提案されている指数級数法において提案された。しかし、指数級数法による逆畳み込みは、予め決めた減衰定数が、調査される蛍光減衰と同程度である場合のみに成功するということに留意することが重要である。
【0064】
多指数LSIRに勝るラゲール逆畳み込みの別の利点が、展開パラメータを推定するのに必要となる様々な方法から生じる。ラゲール展開手法は最小二乗最適化手順を用いて、システム力学のラゲール展開の係数を決定する。ラゲール基底が規定されている(すなわち、パラメータαの値およびラゲール関数の数が与えられている)場合、展開係数を求める問題は、線形最小二乗の最小化問題である(式(5)で与えられた)線形方程式の優決定の系を解くことへと縮小される。線形方程式に関して、ラゲール展開手法により公式化もできる非線形力学の推定にとってさえも、同一の性質が成立する。対照的に、伝統的な多指数LSIR手法は固有の非線形パラメータ(減衰定数)の推定を必要とし、このことは、非線形最小二乗問題を表す。今日、非線形最小二乗問題の解決のための非常に堅牢かつ効率的な多数のアルゴリズム、例えば、ガウス‐ニュートン法、およびレーベンベルグ‐マルカート法が利用可能であるとはいえ、線形最小二乗問題(ラゲール手法)を解くことのほうが、非線形最小二乗の解を(多指数法により)求めることよりもはるかに単純で算定上費用のかからない問題である。このことは、算定分析の速度に関して上述した結果によりはっきりと支持され、ラゲール逆畳み込み手法の正しい解決への収束が単一指数逆畳み込みよりも約3倍、高速であるということを示した。2指数展開またはより高次の多指数展開が用いられる場合、収束速度はより重要となろう。ラゲール法のこの具体的な利点は、データ分析の速度が非常に重要である組織診断の臨床研究およびFLIM(以下で検討する)にとって、寿命蛍光分光法の応用との関連でさらにより重要となる。
【0065】
各ラゲール展開係数は固有の寿命値と極めて相関しているということを相関係数(r)の分析が実証し、これらの係数の使用は、それらの蛍光発光の時間特性に関する生化学化合物の直接の特徴付けにとって新規のアプローチとしての可能性があるということを示唆した。多指数逆畳み込みの事例に関して、推定された(算出された)平均寿命は固有の放射寿命と常に相関しているとはいえ、個々の多指数パラメータ(減衰定数および前指数係数)は固有の寿命と必ずしも相関し得ない。このことはシミュレーションの結果に示され、そこでは減衰定数のうち1つのみが寿命と相関した。個々の多指数パラメータと寿命との間の相関がこのように乏しいことは、多指数モデルが蛍光IRFの直交展開を表さず、それ故に、推定されるフィッティングパラメータが相互から独立していないために生じる。この状態は、1つの具体的なパラメータの値が、適合されるべきデータによっても、他のフィッティングパラメータの値によっても決定され、したがって、実際の寿命と多指数パラメータの推定値との間の相関が低減されることになるということを暗示している。対照的に、ラゲール基底はIRFの直交展開を提供するため、各展開係数の値はもっぱら適合すべきデータに依存し、これらの展開係数の値は実際の寿命値に大いに相関する。
【0066】
この研究は、ラゲール展開係数が蛍光減衰の定量的な解釈のための可能性を有するということも実証した。ここで混合物中の濃度を予測するための新規の方法が導入され、蛍光基準成分(ローダミンBおよびローズベンガル)に首尾よくテストされた。さらに、この方法は、スペクトル分析の伝統的な方法(PCRおよびPLS)により得られた予測と比較すると、狭いスペクトル領域からの蛍光減衰情報のみにより、蛍光物質の濃度の改良された予測を生じた。いかなる特定の理論によっても束縛されるのを希望するところではないが、この結果についての1つの可能な説明として、スペクトル法は蛍光強度の分光分布から導かれた情報のみを使用する一方、提案されたラゲール法は所定の狭いスペクトル領域からの蛍光発光の振幅と時間情報との両方を使用する。RdmBおよびRBの発光スペクトルは大いに重なり合っており、したがって、スペクトル発光は単独ではそれらの相対濃度の予測にとって限定された情報を提供することになろう。一方、RdmBおよびRBは異なる蛍光減衰特性を呈し、これらが、ラゲール係数が濃度予測に使用される際の振幅情報と共に考慮された。この研究において、提案されるラゲール法が、所定の狭いスペクトル領域からの蛍光発光の振幅情報および時間情報を使用するのみであるとはいえ、多数の発光波長で獲得される蛍光IRFに対応するラゲール展開係数は、蛍光発光のスペクトル情報も反映する。このスペクトル情報は、生物系の特徴付けおよび識別のためのより高度な方法に一体化することもできよう。
【0067】
固有の蛍光減衰の多指数モデルに基づいて、生化学成分の混合物中の濃度を予測するための類似の方法も実施できるということが注目に値する。このような方法は、蛍光データに含まれる振幅情報および時間情報の両方に用いることになるので、これは、本明細書中に示したラゲール法の遂行能力と同様の遂行能力を生ずる可能性が最もある。一方で、多指数展開に基づく方法は、先験的に減衰定数が選択されるということが必要となろう。それ故に、多指数モデルに基づくアプローチの1つの欠点として、調査される濃度の許容できる予測を確実にするためには、減衰定数の「良好な推測」が必要となることになる(これらは、調査される蛍光減衰と同程度である必要がある)ことである。このような手法のさらなる要件として、使用される指数項の数は、取り出されるべき生化学の濃度の数以上とすべきであるということがあろう。それ故に、調査される生物系において存在すると前提される成分の数が多くなるほど、必要となる指数項が多くなる。多数の減衰定数を推測することも必要になり、このことがその応用を困難にする可能性がある。ラゲールモデルに基づく濃度推定のための方法は、観察される減衰データから選択可能なラゲールパラメータαを予め規定することのみを必要とする。
【0068】
これらの発見の全てを総合すれば、ラゲール展開法(および具体的には展開係数)の使用は、生物系における種々の生化学化合物の相対濃度の定量化、およびそれらの続いて起こる特徴付けならびに識別にとって期待できるアプローチを呈するということが示唆される。ラゲール逆畳み込み手法の応用により、内在する蛍光力学の先験的知識なしに蛍光系を正確に分析できることになるばかりでなく、データ処理時間の低減を促進することができる。
【0069】
(蛍光寿命画像顕微法)
本発明の代替実施態様は、寿命画像化データの分析のための方法を含むことができる。この方法を用いて、正確かつリアルタイムに、生物学的試料に光顕レベルおよび/または巨視レベルで存在する組成変化および機能変化、例えば細胞代謝(pH、Ca、Mg、酸素濃度の変化など)、および腫瘍、アテローム硬化斑等の特定の生理学的状況の病理の検出を分析することができる。
【0070】
これに関連して、ラゲール逆畳み込み手法が用いられて、蛍光寿命画像顕微法データの分析のための堅牢かつ極めて高速な方法が実行される。この方法は、固有の蛍光減衰を、画像の画素ごとに、ラゲール基底に基づいてそれらを展開することによって推定する。試料画像の各画素rの固有の蛍光減衰h(r,n)は次式で表される。
【0071】
【数25】

ここで、c(r)は画素ごとに推定すべき展開係数であり、減衰の時間分解情報を含む。この方法はラゲール関数の直交性を活用しており、このことは、次数jごとの展開係数が相互から独立しており、それ故に、それらの各々は個別に推定できるということを暗示している。したがって、所与の次数jについて、展開係数c(r)の完全なマッピングは、全ての画素について、一般的なラゲール基底bα(n)により極めて迅速に同時に推定することができる。
【0072】
図8は、本発明のこの実施態様の方法をさらに示す。ブロック802において、励起パルスx(n)が、以下で示す測定される画像H(r,t)から逆畳み込みされる。ここで、rは画素位置を意味し、tは時間ゲートを意味する。
【0073】
【数26】

変数cは、一般化された線形最小二乗フィッティングにより推定されるべき未知の展開係数を表現する。v(n)は、ラゲール関数による励起入力の離散的畳み込みであり、「基本変数」を意味する。Lは、IRFをモデル化するのに使用されるラゲール関数の数である。
【0074】
前述のように、展開係数は相互から独立しており、したがって、個別に推定することができる。この条件により、ラゲール展開係数の算定の再公式化が可能になる。励起光パルスx(t)により時間t=(t,t,,…,t)にて得られるN個の遅延画像H(r,t)を考慮する。基本変数vα(n)を同一時間t=(t,t,,…,t)で再標本化することもできる。次に、画像H(r,t)および第1再標本化基本変数vα(n)を用いて次の線形方程式の系を解くことにより、第1の展開係数を推定することができる(804)。
【0075】
【数27】

次に、最小二乗アプローチを用いて上記の線形方程式の系からc(r)を解き、方程式を項ごとの式に書き換えることにより、以下の分析的な式が得られる。
【0076】
【数28】

指数rが画像全体における画素位置を表すということを考慮すれば、先の式は、各画素での係数c(r)の完全なマップが、単に、対応する時間遅延での値により重みをつけた遅延画像H(r,t)と、全ての遅延時間で基本変数値vα(n)の二乗和により正規化された遅延画像H(r,t)との和によって与えられるということを示す。この演算に関わるのは重みをつけたN個の画像の和のみであることから、その算出時間は著しく短くなる。
【0077】
いったん第1の展開係数c(r)のマップが算出されると、同様のアプローチを用いて、より高い展開係数マップc(r)(j=1,…,L−1)を推定することができる(806)。j番目の展開係数マップc(r)の推定のための方法を一般化して、先の展開係数マップの推定後の結果生じるN個の残差画像を推定することができる。
【0078】
【数29】

最後に、j番目の展開係数マップc(r)は式(17)を次のように更新することにより解かれる。
【0079】
【数30】

観察できるように、L個の展開係数の完全なマップの推定にはマトリクスの和および差のみが関わるので、これにより処理が極めて高速になる。いったん展開係数のマップが推定されると、画素ごとの固有の蛍光減衰h(r,n)を構築することができ、次に、S個の時間段階について画素ごとにIRFを構築することにより、寿命のマップを算出することができる(808)。
【0080】
【数31】

最後に、IRFがその最大値の1/eとなる時間点を補間することにより、寿命マップが算出される(810)。
【0081】
(FLIMデータ分析の検証)
4指数モデルにより生成された合成FLIM画像で、FLIMラゲール逆畳み込み手法の遂行能力が最初にテストされた。計600組のデータが生成され、0.3〜12nsの間の平均寿命値が生じた。次に、一連の600×600画素のFLIM画像が生成されたが、ここで、画像の各列は600の多指数減衰のコピー1つに対応している。
【0082】
別の群の合成画像が、ローズベンガル(RB)、ローダミンB(RdmB)、9‐シアノアントラセン(9CA)を含む1組の蛍光寿命基準色素から導かれた。各色素について、蛍光減衰の時間分解測定が55回、ピーク発光波長にて行われた。次に、一連の55×55画素のFLIM画像が生成されたが、ここで、画像の各列は55の基準測定のコピー1つに対応している。
【0083】
FLIMラゲール逆畳み込み法は合成画像の寿命マップを正しく取り出すことができるということを合成多指数画像の分析が示した。図9に示すように、本発明者らの方法により推定された寿命値は、特に2nsを超える寿命に関して、実際の値に非常に接近していた。さらに重要なことに、600×600画素の多指数画像の逆畳み込みが極めて高速に達成されるということも観察された。<5sでラゲール展開係数c(r)の完全なマップが算出され、<20sで画素ごとの実際の蛍光IRFおよびこれに対応する寿命マップが算出された。従来のFLIM逆畳み込み法が1ms/画素で機能すると仮定とすれば、これらの結果は、本発明者らの方法が少なくとも18倍高速に機能するということを示すことになる。
【0084】
RLD法およびN‐RLD法に対するFLIMラゲール法の時間精度を比較するために、蛍光寿命基準から導かれた合成画像の寿命マップが、3つのアルゴリズムにより推定された。ラゲール逆畳み込みは15の、次に5つの遅延画像で実行され、寿命推定における試料の数の影響が評価された。この分析結果(寿命マップの平均値)を表3に示す。これら3つの方法は、元の蛍光寿命分光器データ(FLS)から得られる値と同様の寿命値を生成し、文献にある値と良く一致した。これらの全ての方法により、RBのように数百ピコ秒の範囲の寿命を有する高速放射する蛍光物質が容易に測定された。同様に、RdmBの測定が、ナノ秒およびサブナノ秒の蛍光寿命を正確に分解する3つの方法の能力を実証した。長い蛍光寿命を取り出すアルゴリズムの能力を評定するために、エタノール中での9/CAの測定も首尾よく逆畳み込みされた。15および5つの遅延画像のラゲール法による寿命推定が同様の値を生成するということも観察された。
【0085】
【表3】

合成RB画像の代表的な画素からの蛍光減衰データについての適合度の分析が、ラゲール逆畳み込み法の非常に良好な推定を示した。図10は、RB画素減衰(実線)と、分析に使用された試料(四角形)およびこれに対応するラゲール適合(三角形)とを示す。正規化された推定の誤差(NErr)は、逆畳み込みに使用された遅延画像が15でも5でも、<4%であった。
【0086】
同様に、図11に示すように、代表的なRdmB画素からの蛍光減衰データの分析も非常に良好な適合を示した。この具体的な場合では、5つの遅延画像が分析された場合のみ、NErrが低くなった(<0.5%)。
【0087】
最後に、図12に示すように、代表的な9/CA画素からの蛍光減衰データの分析も非常に良好な適合を示した。この場合について、15の遅延画像が分析された場合、NErrが低くなった(<1%)。
【0088】
従って、本発明の実施態様は、時間分解蛍光画像化に関して、現行のアルゴリズムに勝る次のような多数の重要な利点を示す。(1)任意の形式の固有の蛍光強度減衰を、その関数形式の先験的前提なく、ラゲール基底に基づく展開として画素ごとに推定することができる。(2)蛍光IRFを各画素から展開するのに必要な画像の数は比較的少なく(わずか遅延画像5つ)、したがって、取得時間の低減が可能となる。(3)超高速光源はもはや不要、それにより、寿命画像化を行うのに費用が抑えられる。(4)最後に、最も重要なことに、一般的なラゲール基底により、画素ごとの蛍光IRFが並列に展開され、したがって、算定時間が著しく低減される。
【0089】
RLDやN‐RLDなど、FLIM分析の現行の高速な方法は全て、これらが単一指数の力学に従う場合、減衰を画素ごとに完全に特徴付けるのに充分な寿命値のマップを推定する。しかし、より複雑な減衰関数を考慮する必要がある場合には、より高性能で時間のかかる他のアルゴリズム、例えば多指数法、または拡張指数法を適用する必要がある。本発明の一実施態様のラゲールFLIM逆畳み込み手法はラゲール関数の直交性を活用し、展開係数の完全なマップを極めて高速に算出することを可能にする。展開係数の集合は、それらが展開するIRFの時間特性を集約することから、画像の画素ごとの蛍光減衰の完全な特徴付けを数秒で達成することができる。
【0090】
蛍光寿命基準画像のシミュレーションからの結果も、画素ごとのIRFの正確な推定を、遅延画像を相当に減らして達成できるということを示す。このことは、基準FLIM逆畳み込み法が数十の遅延画像の取得を必要とするので特に重要である。したがって、本発明者らの方法は、取得すべき遅延画像が少ないことから、算定時間も取得時間も著しく低減される。このことは、リアルタイムでの取得が必要となる関数の蛍光寿命画像化との関連で、特別妥当となろう。
【0091】
最後に、たいていの現行のFLIM分析のアルゴリズムは、励起光パルスが無視できるほど短く、蛍光発光を固有IRFに近似させることができるという前提を必要とする。この要求に対応するために、たいていの現行のFLIM系は超高速光源を使用しているが、これらは、現実世界の用途で使用するのには、一般的には、過度に高価で高性能である。本発明の実施態様は測定される画像から励起光パルスを逆畳み込みすることから、非常に短いパルスによる励起はもはや不要である。したがって、本発明の実施態様は、実用上の多様な用途に使用できる、費用を抑えたより簡素なFLIM系の発展を潜在的に可能とすることになる。
【0092】
(応用)
有機化学、法医学、医学的診断、遺伝学、分子生物学を含む数々の分野において、化合物の混合物内で対象の化合物を同定するための安全で効率的かつコスト効率の良い方法の必要性が増大している。生物由来の生成物の単離中に、また、高分子化合物、例えばポリペプチド、タンパク質、多糖、および核酸の化学配列または酵素配列中に、化合物の混合物がたびたび有機合成サイクルの生成物として生じる。
【0093】
前述のように、本発明の実施態様は広範囲に適用可能であり、医学、生物学、生化学、化学、薬剤学、遺伝学を含む、ただしこれらに限定されない分野の広い範囲において、使用することができる。組織の蛍光発光は様々な種類の蛍光物質の複合スペクトルであることから、本発明の実施態様を使用して、以下のものを含み、ただしこれらに限定されない多様な応用を促進することができる。細胞内成分および細胞内活性の顕微鏡的研究;正常組織に対する腫瘍の術中同定(例えば脳腫瘍の神経外科的切除中の脳組織の同定);アテローム硬化斑の生化学組成の特徴付けおよび斑破裂の予測標識の同定;特に新薬発見のために少量の試料を自動スクリーニングするための、生物活性を有する化学物質の同定;タンパク質の構造および機能の調査のためのDNA配列決定。
【0094】
本発明は、現行の任意の蛍光寿命画像顕微法(FLIM)系に関して実施することができる。そのユニークな利点のため、FLIMは、細胞内成分および細胞内活性の顕微鏡的研究のための、また最近では巨視的組織レベルの用途のための重要な光学的画像化手段となっている。蛍光寿命は、重なり合うスペクトルを有する多数の蛍光物質を分離するための付加的な対照源を提供する。それ故に、種々の細胞内成分の位置および活性を同一エッセイで研究することが可能である。その上、FLIMは、内生的な蛍光物質の位置および動力学、例えば還元型ピリジンヌクレオチドまたはNAD(p)Hおよびそのタンパク質への結合を画像化するのに用いられてきた。さらに、充分な信号対雑音比(SNR)が与えられたとすると、蛍光寿命は励起光の強度ばらつきおよびプローブの分布から独立している。それ故に、蛍光画像は、内在する蛍光動力学についての情報を提供することができる。さらに、蛍光寿命は、蛍光物質の微環境、すなわちpH、温度、他の化学種の存在の変化に敏感である。それ故に、FLIMは、蛍光物質の濃度および動力学の定量的な画像化のために、厄介な波長のレシオメトリック測定なしに用いることができる。FLIMは、臨床的研究、生物学研究、生化学研究において広範囲に及ぶ応用例を有するFroester共鳴エネルギー移動(FRET)の定量的測定にとっても重要な手法となっている。
【0095】
人口の高齢化に伴い予想される癌症例の増加に関して、癌診断のより効果的な発見および治療が重要になってきた。それ故に、実験室でのテストおよび機器を商業化するために共同の協力がなされており(例えば本発明)、これらは医師が癌患者を診断し観察するのを支援する可能性を有する。本発明の1つの重要な寄与は、組織の自然蛍光を単純に用いることによって人体にある腫瘍を含む組織から正常な組織を区別するその能力である。この手法により、医師は、疑わしい悪性組織に単にTR‐LIFSプローブを向け、プローブのフィードバックに基づいて、組織が癌性/悪性かどうかを決定することが可能となる。このことは、脳の生検に短期的に重点を置きつつ、一般外科の診断精度および正確さを改良することになる。このシステムにより、医師は、組織試料を病理検査室に回し、時として否定的である結果を待つことに甘んじなければならないのではなく、リアルタイムで診断することが可能になる。これらの従来の組織病理学的方法は時間ばかりでなく費用もかかる。本発明は、異なる種類の組織を区別できることに加えて、高価かつ極めて不必要な生検の必要性を著しく低減する可能性を有する。無誘導の生検に関連する費用とリスクとを考慮すれば、これは、診断精度が上がり、患者の安心が増し、医療産業全体として数百万ドル節約できるということになる。さらに、本発明は、多様な種類の外科治療において組織同定のための内視鏡と併せて使用することができ、ハンドヘルド型の装置に適合させることができる。本発明により導入される技術革新と癌診断市場の大規模で急速な成長とが組み合わされて、製品の商業化は実行可能で急速なものになる。
【0096】
アテローム性動脈硬化は、経済先進社会における中〜後期成人期の間の死亡の主要因であると報告される血管の進行性疾患である。アテローム性動脈硬化は、重要な動脈床(冠状動脈、大脳、大動脈腸骨動脈)に好発部位を有し、例えば心筋梗塞、卒中、四肢の虚血性壊疽など危機な事態を引き起こす。臨床的状況では、アテローム性動脈硬化症を特徴付ける集中的な取り組みが行われてきた。この疾患の臨床的分類を行うように設計される手法の主な課題とは、具体的な疾患の種類の治療を正確に決定するために使用できる組織学的分類を、極力厳密に描くことである。正常動脈壁と異常動脈壁とにおいてエラスチン、コラーゲン、脂質、およびその他の自己蛍光源を検出するための、また、エクスビボとインビボとの両方でアテローム硬化斑の生化学組成を特徴付けるための、定常状態(スペクトル分解型)および時間分解型の手法を含む、蛍光分光法に基づく手法を示した。
【0097】
本発明が、各臨床的段階での動脈壁における3つの主要な蛍光物質(エラスチン、コラーゲン、脂質の豊富な析出物)の寄与を推定するための方法を提供することから、アテローム性動脈硬化が最も重要な医学的条件となったが、この条件により本発明の方法が適用され、変化するその進行段階でアテローム性動脈硬化症を完全に特徴付けた。
【0098】
本発明は、液体試料中の化学物質と生物活性とを迅速に同定するための自動化一体型システム(すなわちマルチウェルプラットフォーム)、具体的には、新薬、農薬または化粧品用の少量の試料を自動スクリーニングするための自動化一体型システムでも実施することができる。試料中の化学物質と生物活性とを迅速に同定するためのシステムおよび方法は、多数の異なる分野に役立てることができる。例として、農薬、薬学、環境、および化粧品の分野は全て、化学物質を含む数多くの液体試料が処理される用途、例えば試料中の検体の存在の検出、また、治療活性および毒物学に関する治療のテストを含んでいる。
【0099】
DNA配列決定は、DNAの長さの範囲内で核酸塩基が配列される順序を決定することを含む。蛍光性標識を活用する配列および他の分析法は放射性同位体を活用する方法に勝る改良をしばしば示すとはいえ、現行の蛍光性方法論は、ある種の欠陥により妨害されている。例えば、個々のヌクレオチドを同定するために、各ヌクレオチドは、一意的吸光度を有する蛍光性標識、および/または吸光度または発光最大値の異なる発光スペクトルを有する蛍光性標識を担持していなければならない。したがって、個々のヌクレオチドをそれらのタグの蛍光スペクトルに基づいてはっきりと区別するために、各タグの吸光度または発光最大値が、他のあらゆるタグの吸光度または発光最大値とはっきり区別されなければならない。さらに、最大値の各々を検出するために、蛍光は多数の異なる波長で監視されなければならないので、フィルタリングシステムを採用しなければならない。このことは厄介であり、計測の費用が増加する。化合物の吸光または発光の最大値がその化合物を取り巻く環境に依存することにより、この状況はさらに複雑なものになる。したがって、蛍光標識された個々の化合物をその吸光および/または発光スペクトル(例えば最大値)以外の蛍光性寿命の特徴に依存して化合物の混合物内で検出する方法は、当技術分野において意義深い進歩を表すことになろう。本発明はこのような方法を提供する。
【0100】
上記の記載は本発明の具体的な実施態様に言及しているが、多くの代替案、変更態様、および変容が、本発明の精神から逸脱することなく行われ得るということが理解されよう。添付の特許請求の範囲は、このような代替案、変更態様、および変容を本発明の正確な範囲および精神の範囲内に当てはまるものとして包含することを意図している。それ故に、目下開示した実施態様は、あらゆる点で限定的なものではなく例示的なものとして、また、本発明の範囲は先に述べた説明ではなく添付の特許請求の範囲により示されており、それ故に、特許請求の範囲の同等物の意味および範囲内に収まる全ての変更はその中に包含されることを意図しているということが考慮されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】図1は、本発明の一実施態様による、蛍光測定を得るための方法のブロック図を示す。
【図2】図2は、本発明の一実施態様の方法を実施するためのシステムのブロック図を示す。
【図3】図3aおよび図3bは、本発明の一実施態様による、試料をシミュレートした蛍光減衰の跡(灰色実線、t=4.1ns)とそれに対応する推定された減衰の跡(黒色点線)とを、ラゲール法と多指数法とに関して、レーザパルス(黒色実線)と共に示す。
【図4】図4aおよび図4bは、本発明の一実施態様による、ラゲール展開係数によりシミュレートしたデータの実際の寿命値(LEC−1〜LEC−3)と、多指数LSIRのパラメータとの間の相関のグラフを示す。
【図5】図5aおよび図5bは、本発明の一実施態様による、メタノール中のローズベンガルから580nmで測定された時間分解減衰のグラフを、レーザの跡とそれに対応するフィッティングと共に、ラゲールアプローチと指数アプローチとに関して示す。
【図6】図6aおよび図6bは、本発明の一実施態様による、エタノール中のローダミンBから590nmで測定された時間分解減衰のグラフを、レーザの跡とそれに対応するフィッティングと共に、ラゲールアプローチと指数アプローチとに関して示す。
【図7】図7aおよび図7bは、本発明の一実施態様による、エタノール中の9/CAから445nmで測定された時間分解減衰のグラフを示しており、これをレーザの跡とそれに対応するフィッティングと共に、ラゲールアプローチと指数アプローチとに関して示す。
【図8】図8は、本発明の一実施態様によりFLIMデータを分析するための方法のブロック図を示す。
【図9】図9は、本発明の一実施態様により、実際の寿命値と、推定された寿命値とを比較するグラフを示す。
【図10】図10は、本発明の一実施態様による、15と5の試料を使用したRB画像からのランダムな画素に関する単一画素分析のグラフを示す。
【図11】図11は、本発明の一実施態様による、15と5の試料を使用したRdmB画像からのランダムな画素に関する単一画素分析のグラフを示す。
【図12】図12は、本発明の一実施態様による、15と5の試料を使用した9/CA画像からのランダムな画素に関する単一画素分析のグラフを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を特徴付ける方法であって、
ラゲール係数(「{c}」)を含む展開に基づいて該試料の蛍光インパルス応答(「h(n)」)を推定することであって、該展開は次式
【数1】

で表される、ことと、
該ラゲール係数を直接分析することにより該試料を特徴付けることと
を包含する、方法。
【請求項2】
前記試料が、生物学的組織、化学的試料、生化学的試料、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記試料の少なくとも1つの生化学成分の濃度を予測することをさらに包含し、該試料は複数の生化学成分を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
コンピュータ読取可能なプログラムコードを符号化したコンピュータ読取可能な媒体であって、実行される場合において、該プログラムコードが
ラゲール係数(「{c}」)を含む展開に基づいて試料の蛍光インパルス応答(「h(n)」)を推定することであって、該展開は次式
【数2】

で表される、ことと、
該ラゲール係数を直接分析することにより該試料を特徴付けることと
をコンピュータにさせる、媒体。
【請求項5】
試料を特徴付けるための機器であって、
該機器は、コンピュータ読取可能なプログラムコードを符号化したコンピュータ読取可能な媒体を備え、実行される場合において、該プログラムコードが、
ラゲール係数(「{c}」)を含む展開に基づいて試料の蛍光インパルス応答(「h(n)」)を推定することとであって、該展開は次式
【数3】

で表される、ことと、
該ラゲール係数を直接分析することにより該試料を特徴付けることと
を該機器にさせる、機器。
【請求項6】
前記機器が、分光光度計と創薬分析システムからなる群から選択される、請求項5に記載の機器。
【請求項7】
試料を励起するための励起発生器と、
測定される蛍光パルスの跡を決定するための蛍光強度測定装置と、
該測定される蛍光パルスの跡を受信するための第1インタフェースと、
該測定される蛍光パルスの跡とラゲール係数(「{c}」)を含む展開とに基づいて該試料の蛍光インパルス応答(「h(n)」)を推定し、該ラゲール係数を直接分析することにより該試料を特徴付けるためのプロセッサであって、該展開は次式
【数4】

で表される、プロセッサと
を備える、システム。
【請求項8】
前記試料が、生物学的組織、化学的試料、生化学的試料、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記試料中の組成変化を分析するようにさらに構成されている、請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記試料中の機能変化を分析するようにさらに構成されている、請求項7に記載のシステム。
【請求項11】
正常組織を腫瘍と区別するようにさらに構成されている、請求項7に記載のシステム。
【請求項12】
アテローム硬化斑の組成を特徴付けるようにさらに構成されている、請求項7に記載のシステム。
【請求項13】
アテローム硬化斑の易損性および破裂の標識を予測するようにさらに構成されている、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記プロセッサが前記試料中の濃度をさらに予測し、該試料は生化学成分の混合物である、請求項7に記載のシステム。
【請求項15】
分光光度計、血球計算器、創薬分析システムからなる群から選択された分析機器をさらに備える、請求項7に記載のシステム。
【請求項16】
励起パルスに晒された試料のインパルス応答を獲得することと、
該励起パルスを、測定される画像から逆畳み込みすることと、
画像内の複数の画素の各画素にて複数の展開係数(「{c}」)の第1の展開係数(「{c}」)を推定し、該第1の展開係数(「{c}」)のマップを算出することと、
該複数の展開係数(「{c}」)のうち、より高い展開係数のマップを生成することと、
所定数の時間段階に対して画素ごとにインパルス応答関数(「IRF」)を構築し、かつ該IRFが最大値の1/eとなる時間点を補間することによって、寿命のマップを算出することであって、該IRFは次式
【数5】

で表される、ことと
を包含する、方法。
【請求項17】
前記試料が、生物学的組織、化学的試料、生化学的試料、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
腫瘍とアテローム硬化斑からなる群から生理学的状態を検出することをさらに包含する、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記試料画像のうちの少なくとも1つの生化学成分の濃度の分布を予測することをさらに包含し、前記試料は複数の生化学成分を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
細胞内成分および該細胞内成分の活性をモニタリングすることをさらに包含する、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
生物活性を有する化学物質を同定し、新薬発見のために前記試料を自動スクリーニングすることをさらに包含する、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
薬剤の高速/高処理量の測量および集計が可能とするように、該薬剤をその化学組成に基づいて特徴付けるようにさらに構成されている、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
生化学エッセイを生化学的内容物に基づいて特徴付けて、該エッセイの高速/高処理量の測量/分析を促進するようにさらに構成されている、請求項21に記載のシステム。
【請求項24】
デオキシリボ核酸(DNA)のマイクロアレイを配列決定することをさらに包含する、請求項16に記載の方法。
【請求項25】
測定される試料の寿命画像を生成するための蛍光寿命画像化装置と、
該測定される寿命画像を受信するための第1インタフェースと、
該測定される寿命画像を基に部分的に推定されるラゲール係数(「{c}」})を含む展開に基づいて、該試料の蛍光インパルス応答(「h(n)」)を画素ごとに構築することにより、該試料の寿命マップを算出するためのプロセッサであって、該展開は次式
【数6】

で表される、プロセッサと、
該寿命マップを送信するための第2インタフェースと
を備える、システム。
【請求項26】
前記試料が、生物学的組織、化学的試料、生化学的試料、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記試料中の組成変化を分析するようにさらに構成されている、請求項25に記載のシステム。
【請求項28】
前記試料中の機能変化を分析するようにさらに構成されている、請求項25に記載のシステム。
【請求項29】
腫瘍とアテローム硬化斑からなる群から選択される生理学的状態を検出するようにさらに構成されている、請求項25に記載のシステム。
【請求項30】
前記プロセッサが、前記試料画像中の濃度の分布をさらに予測し、該試料は生化学成分の混合物である、請求項25に記載のシステム。
【請求項31】
細胞内成分および細胞内活性をモニタリングするようにさらに構成されている、請求項25に記載のシステム。
【請求項32】
生物活性を有する化学物質を同定し、新薬発見のために前記試料を自動スクリーニングするようにさらに構成されている、請求項25に記載のシステム。
【請求項33】
マイクロアレイのデオキシリボ核酸(DNA)配列決定を実行するようにさらに構成されている、請求項25に記載のシステム。
【請求項34】
蛍光寿命画像顕微法(FLIM)の顕微鏡システムをさらに備える、請求項25に記載のシステム。
【請求項35】
コンピュータ読取可能なプログラムコードを符号化したコンピュータ読取可能な媒体であって、実行される場合において、該プログラムコードが、
励起パルスに晒された試料のインパルス応答を獲得することと、
画像内の各画素にて複数の展開係数(「{c}」)の第1の展開係数(「{c}」)を推定し、該第1の展開係数のマップを算出することと、
該複数の展開係数のうち、より高い展開係数のマップを生成することと
をコンピュータにさせる、媒体。
【請求項36】
コンピュータ読取可能なプログラムを符号化したコンピュータ読取可能な媒体であって、実行されると、該プログラムが、
所定数の時間段階に対して画素ごとにインパルス応答関数(「IRF」)を構築することにより、寿命のマップを算出することと、
該IRFが最大値の1/eとなる時間点を補間することであって、該インパルス応答関数が次式
【数7】

で表される、ことと
をコンピュータにさらにさせる、請求項35に記載の媒体。
【請求項37】
コンピュータ読取可能なプログラムを符号化したコンピュータ読取可能な媒体であって、実行されると、該プログラムが、腫瘍とアテローム硬化斑からなる群から選択される生理学的状態を検出することをコンピュータにさらにさせる、請求項35に記載の媒体。
【請求項38】
コンピュータ読取可能なプログラムを符号化したコンピュータ読取可能な媒体であって、実行されると、該プログラムが、前記試料中の組成変化を分析することをコンピュータにさらにさせる、請求項35に記載の媒体。
【請求項39】
コンピュータ読取可能なプログラムを符号化したコンピュータ読取可能な媒体であって、実行されると、該プログラムが、前記試料中の機能変化を分析することをコンピュータにさらにさせる、請求項35に記載の媒体。
【請求項40】
コンピュータ読取可能なプログラムを符号化したコンピュータ読取可能な媒体であって、実行されると、該プログラムが、前記試料の前記画像中の濃度の分布を予測することをコンピュータにさらにさせ、該試料は生化学成分の混合物である、請求項35に記載の媒体。
【請求項41】
コンピュータ読取可能なプログラムを符号化したコンピュータ読取可能な媒体であって、実行されると、該プログラムが、細胞内成分および該細胞内成分の活性をモニタリングすることをコンピュータにさらにさせる、請求項35に記載の媒体。
【請求項42】
コンピュータ読取可能なプログラムを符号化したコンピュータ読取可能な媒体であって、実行されると、該プログラムが生物活性を有する化学物質を同定し、前記試料を自動スクリーニングし、新薬発見を促進することをコンピュータにさらにさせる、請求項35に記載の媒体。
【請求項43】
コンピュータ読取可能なプログラムを符号化したコンピュータ読取可能な媒体であって、実行されると、該プログラムが、マイクロアレイのデオキシリボ核酸(DNA)配列決定を実行することをコンピュータにさらにさせる、請求項35に記載の媒体。
【請求項44】
コンピュータ読取可能なプログラムコードを符号化したコンピュータ読取可能な媒体を備える機器であって、実行されると、該プログラムコードが、
励起パルスに晒された試料のインパルス応答を獲得することと、
画像内の各画素にて複数の展開係数(「{c}」)の第1の展開係数(「{c}」)を推定し、該第1の展開係数のマップを算出することと、
該複数の展開係数のうち、より高い展開係数のマップを生成することと、
所定数の時間段階に対して画素ごとにインパルス応答関数(「IRF」)を構築することにより、寿命のマップを算出することと、
該IRFが最大値の1/eとなる時間点を補間することであって、該インパルス応答関数は次式
【数8】

で表される、ことと
を該機器にさらにさせる、機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2007−502988(P2007−502988A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523995(P2006−523995)
【出願日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【国際出願番号】PCT/US2004/026759
【国際公開番号】WO2005/019800
【国際公開日】平成17年3月3日(2005.3.3)
【出願人】(398062149)セダーズ−シナイ メディカル センター (34)
【Fターム(参考)】