蛍光温度計及び温度計測方法
【課題】高精度の温度測定が可能な蛍光温度計を提供する。
【解決手段】本発明の温度計測方法は、蛍光体を励起する励起ステップと、励起された蛍光体から発せられる蛍光を検出する蛍光検出ステップと、蛍光検出ステップで検出された蛍光の強度−時間信号を、時間領域信号から周波数領域信号に変換する信号変換ステップと、周波数領域信号における所定の周波数成分の変化量に基づいて被検物の温度を算出する温度算出ステップと、を有することを特徴とする。
【解決手段】本発明の温度計測方法は、蛍光体を励起する励起ステップと、励起された蛍光体から発せられる蛍光を検出する蛍光検出ステップと、蛍光検出ステップで検出された蛍光の強度−時間信号を、時間領域信号から周波数領域信号に変換する信号変換ステップと、周波数領域信号における所定の周波数成分の変化量に基づいて被検物の温度を算出する温度算出ステップと、を有することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光温度計及び温度計測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
蛍光を利用した温度センサは、例えば下記特許文献1,2に記載されているように、測定対象物上に配置した蛍光物質に励起光を照射し、特定波長での蛍光の発光強度が温度により増減する現象、蛍光物質から発光される蛍光の波長が温度によりシフトする現象、蛍光の減衰時間が温度によって変化する現象を利用し、温度を計測するものである。
【0003】
これらのうち、蛍光の吸収端付近の波長或いはピーク波長が温度によりシフトする現象を利用する温度センサでは、波長シフト量と温度の関係を事前に計測し、波長変化量を温度に換算する。
特定波長での蛍光の強度が温度により増減する現象を利用する温度センサでは、蛍光の発光強度に合わせて2種類の異なる波長透過フィルタを設置し、温度により蛍光の波長がシフトするに従い変化する2つの波長透過フィルタを透過する光量を計測し、これらの光量の比率と温度の関係を事前に計測しておき、温度に換算する等の方法が採用されている。
【0004】
一方、蛍光の発光減衰時間が温度により変化する現象を利用する温度センサでは、パルス光などの励起手段によって蛍光体を発光させ、フォトダイオードなどの検出手段により蛍光の強度−時間曲線を取得し、蛍光の減衰が一定の減衰量になるまでの時間を計測し、事前に測定していた温度と減衰時間の関係から、測定時間を温度に換算する等の方法が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭53−101480号公報
【特許文献2】特開昭61−120482号公報
【特許文献3】特開昭58−005621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、蛍光の発光強度が変化する現象及び発光波長が温度によってシフトする現象を利用した温度センサでは以下のような課題がある。
(1)測定温度が高くなると蛍光の発光スペクトルが広がり、それに伴って測定波長の強度が低下するために十分な信号強度を確保できない場合がある。
(2)温度センサ部の経時変化による較正を必要としたり、測定系における波長透過フィルタの透過特性ばらつき等の製造ばらつきが、そのまま温度測定精度のばらつきになってしまうため、測定装置の装置間格差が生じたり、測定精度の向上が困難である。
(3)蛍光を選択測定するための波長透過フィルタが必須であり、場合によっては複数枚の光学フィルタ必要になるため、高コストになりやすい。
(4)蛍光を伝達する手段として光ファイバを利用する場合、ファイバの劣化・曲げ等による影響を較正を必要とする。
【0007】
蛍光の減衰時間が温度によって変化する現象を利用した温度センサでは上記の課題のうちのいくらかは解決されるが、依然として以下のような課題があった。
(1)蛍光の減衰時間の測定が完了するまでは次の温度測定を開始できないため、速い温度変化に対する追従性が低い。
(2)蛍光の減衰時間の測定精度、ばらつきがそのまま温度測定の精度、ばらつきになってしまうため、高精度な温度測定が原理上難しい。
(3)測定温度が高くなると蛍光減衰時間が短くなるため、低温での測定と比較して測定精度が低下する。
(4)測定中のノイズや電源電圧変動によって蛍光の減衰時間の測定値が変化するため、測定精度が低下しやすい。
【0008】
本発明は、上記課題の少なくとも一つを解決し、高精度の温度測定が可能な蛍光温度計、及び温度計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の温度計測方法は、強度変調された励起光を蛍光体に照射し前記蛍光体を励起する励起ステップと、励起された蛍光体から発せられる蛍光を検出する蛍光検出ステップと、前記蛍光検出ステップで検出された前記蛍光の強度−時間信号を、時間領域信号から周波数領域信号に変換する信号変換ステップと、前記周波数領域信号における所定の周波数成分の変化量に基づいて前記蛍光体の温度を算出する温度算出ステップと、を有することを特徴とする。
【0010】
この温度測定方法によれば、蛍光の強度−時間信号における減衰時間を強度−時間曲線によって測定するのではなく、強度−時間曲線から変換した周波数領域信号の周波数成分から周波数変化量を算出するので、時間測定と比較して高い測定精度、再現性を得ることができ、結果として高精度に温度を取得することが可能である。
【0011】
前記温度算出ステップにおいて、2つの周波数成分の差分又は平均の変化量に基づいて前記蛍光体の温度を算出する方法としてもよい。
前記温度算出ステップにおいて、前記励起光の周波数に対する前記周波数成分の変化量に基づいて前記蛍光体の温度を算出する方法としてもよい。
前記温度算出ステップにおいて、強度が最大となる前記周波数成分の変化量に基づいて前記蛍光体の温度を算出する方法としてもよい。
前記信号変換ステップにおいて、前記蛍光の強度−時間信号の一部のみを抽出して周波数領域信号に変換する方法としてもよい。
前記信号変換ステップにおいて、前記蛍光の強度−時間信号の複数の部分を抽出し、抽出した各々の信号成分を周波数領域信号に変換し、前記温度算出ステップにおいて、各々の前記信号成分から得られた前記周波数領域信号の差分の変化量に基づいて前記蛍光体の温度を算出する方法としてもよい。
前記信号変換ステップにおいて、高速フーリエ変換により前記蛍光の強度−時間信号を変換する方法としてもよい。
前記励起ステップにおいて、単一周波数の波形に強度変調された励起光を前記蛍光体に照射する方法としてもよい。
前記温度算出ステップにおいて、前記励起光の周波数成分と、前記蛍光の周波数成分との差分又は平均の変化量に基づいて前記蛍光体の温度を算出する方法としてもよい。
前記励起ステップにおいて、第1周波数、及び前記第1周波数と異なる第2周波数を含む波形に強度変調された励起光を前記蛍光体に照射する方法としてもよい。
前記温度算出ステップにおいて、前記第1周波数及び第2周波数と、前記蛍光の一又は複数の周波数成分との差分又は平均の変化量に基づいて前記蛍光体の温度を算出する方法としてもよい。
前記励起ステップから前記温度算出ステップまでの一連の温度測定ステップを繰り返し実行するに際して、第1の前記温度測定ステップと第2の前記温度測定ステップとの間で、前記励起ステップにおいて前記蛍光体に照射する励起光の変調態様を異ならせる方法としてもよい。
変調の周波数が異なる複数の励起光を用いる方法としてもよい。
変調の関数が異なる複数の励起光を用いる方法としてもよい。
第1の前記温度測定ステップと第2の前記温度測定ステップとの間に、当該温度計測方法による温度測定の状況に応じて前記複数の励起光の切替を行う励起光切替ステップを有する方法としてもよい。
【0012】
次に、本発明の蛍光温度計は、強度変調された励起光を蛍光体に照射し前記蛍光体を励起する励起手段と、蛍光体への光照射によって前記蛍光体から発せられる蛍光を検出する蛍光検出手段と、前記蛍光検出手段で検出された前記蛍光の強度−時間信号を、時間領域信号から周波数領域信号に変換する信号変換手段と、前記周波数領域信号における所定の周波数成分の変化量に基づいて前記蛍光体の温度を算出する温度算出手段と、を有し、上記いずれかの方法で温度を算出することを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、蛍光の強度−時間信号における減衰時間を強度−時間曲線によって測定するのではなく、強度−時間曲線から変換した周波数領域信号の周波数成分から周波数変化量を算出するので、時間測定と比較して高い測定精度、再現性を得ることができ、結果として高精度に温度を取得することが可能である。また、蛍光の波長シフトを利用する構成のような波長透過フィルタが不要であるため、波長透過フィルタのばらつきに起因する測定精度の低下や光学系のコスト増を生じることもない。
【0014】
前記温度算出手段は、前記周波数領域信号を構成する2つの周波数成分の差分の変化量に基づいて前記蛍光体の温度を算出する構成としてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、蛍光の強度−時間信号の周波数成分を利用した変化量検出に基づいて温度を計測することでノイズや電源電圧変動の影響を受けにくくした、高精度の温度計測が可能な蛍光温度計、並びに温度計測方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態に係る蛍光温度計を示す図。
【図2】実施形態の温度計測方法を示すフローチャート。
【図3】蛍光の強度−時間信号の例を示す図。
【図4】蛍光の強度−時間信号を周波数領域信号に変換した例を示す図。
【図5】温度算出に用いる検量線の例を示す図。
【図6】第2実施形態に係る温度測定方法の説明図。
【図7】第2実施形態に係る温度測定方法の説明図。
【図8】第3実施形態に係る温度測定方法の説明図。
【図9】第2実施形態に係る温度測定方法の説明図。
【図10】図8及び図9に示す周波数領域信号の差分信号を示す図。
【図11】第4実施形態に係る温度測定方法の説明図。
【図12】第1変形例に係る温度測定方法の説明図。
【図13】第2変形例に係る温度測定方法の説明図。
【図14】第2変形例に係る温度測定方法の説明図。
【図15】第3変形例に係る温度測定方法の説明図。
【図16】第4変形例に係る温度測定方法における変調周波数変位を示す説明図。
【図17】蛍光温度計の一適用例であるプラズマ処理装置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0018】
(第1の実施形態)
[蛍光温度計]
図1(a)は、第1実施形態に係る蛍光温度計を示す図である。図1(a)には、蛍光温度計10と、被検物50と、被検物50の表面に設置された蛍光体20とが示されている。
蛍光温度計10は、励起部(励起手段)11と、蛍光検出部(蛍光検出手段)12と、制御部13とを備えている。制御部13は、信号変換部(信号変換手段)14と、温度算出部(温度算出手段)15とを有しており、励起部11及び蛍光検出部12を含む蛍光温度計10の全体を制御する。
【0019】
励起部11は、例えばレーザーダイオード(LD)や発光ダイオード(LED)などの発光素子と、発光素子の駆動回路と、発光素子から射出される光を変調する光変調装置と、を備えている。励起部11は、制御部13の制御のもと、被検物50上に設置された蛍光体20に対して、制御された励起光を照射する。本実施形態の励起部11では、駆動回路により発光素子が駆動され、発光素子の発光光が光変調装置に供給される。光変調装置は、入射光の強度を変調する機能を有しており、入射光から任意の波形の励起光を生成して射出する。
【0020】
蛍光検出部12は、入射する光の光量(輝度)を測定するフォトダイオード等の受光素子を備えている。蛍光検出部12は、制御部13の制御のもと、励起部11からの励起光の照射により蛍光体20から発せられた蛍光を検出し、検出した蛍光の強度−時間信号を制御部13に出力する。
【0021】
信号変換部14は、蛍光検出部12から入力される蛍光の強度−時間信号を、時間領域信号から周波数領域信号に変換し、得られた周波数領域信号を温度算出部15に出力する。信号変換部14は、例えば高速フーリエ変換(FFT;Fast Fourier Transform)機能を備えた信号処理回路として構成することができる。
【0022】
温度算出部15は、信号変換部14から入力される周波数領域信号における所定の周波数成分の基準値からの変化量を算出し、予め入力されている変化量と温度との関係から温度を算出する。具体的な温度算出手順については、後段の温度測定方法の説明において詳しく述べる。
【0023】
蛍光体20は、特に限定されず、用途目的に合わせて多種多様な材料から選択して用いることができる。具体的には、発光に適したエネルギー準位を有する希土類がドープされた蛍光材料、AlGaAs等の半導体、酸化マグネシウム等の金属酸化物、ルビー等の鉱物から適宜選択して用いることができる。
【0024】
被検物50は、特に限定されず、蛍光体20を設置可能なものであればいかなる物品であってもよい。蛍光体20は被検物50に接着される必要はなく、被検物50の測温位置に対して少なくとも測温期間中に当接可能であればよい。ただし、蛍光体20を被検物50と同一温度に保持する上では、蛍光体20は被検物50の表面に密着固定されることが好ましく、高熱伝導性の接着剤を介して接着されていることがより好ましい。
【0025】
また、図1(b)に示すように、蛍光体20は光ファイバ21などの導光手段により、励起部11、蛍光検出部12と連結されていてもよい。この場合は励起光が光ファイバ中を伝搬して蛍光体20にまで導かれ、励起光による蛍光が光ファイバ内を通り蛍光検出部12に導かれる。
【0026】
[温度計測方法]
次に、上記構成を備えた本実施形態の蛍光温度計10を用いた温度計測方法について、図2から図5を参照して説明する。
図2は、本実施形態の温度計測方法を示すフローチャートである。図3は、蛍光の強度−時間信号の例を示す図である。図4は、蛍光の強度−時間信号を周波数領域信号に変換した例を示す図である。図5は、温度算出に用いる検量線の例を示す図である。
【0027】
本実施形態の温度計測方法は、図2に示すように、励起ステップS10と、蛍光検出ステップS11と、信号変換ステップS12と、温度算出ステップS13と、を有する。
【0028】
まず、励起ステップS10では、被検物50上に設置された蛍光体20に対して、励起部11から強度変調された励起光を照射し、蛍光体20を発光させる。
次いで、蛍光検出ステップS11では、蛍光体20から発光された蛍光を蛍光検出部12において検出する。検出された蛍光の強度−時間信号は、蛍光検出部12から制御部13の信号変換部14へ出力される。
【0029】
ここで、図3(a)に示す波形A、及び図3(b)に示す波形Bは、励起部11から蛍光体20に矩形波の励起光を照射した場合に蛍光検出部12において検出される蛍光の強度−時間信号を例示したものである。波形Aは比較的低温の被検物50を測定した場合、波形Bは比較的高温の被検物50を測定した場合の波形を示している。これらの図に示すように、高温の被検物50を測定した波形Bは、低温の被検物50を測定した波形Aと比較して、強度−時間信号の立ち上がり及び立ち下がりの形状がいずれも急峻になる。
なお、図3は、温度によって蛍光強度−時間信号の立ち上がり及び立ち下がりの形状変化を示した概略図であり、励起光のオンオフのタイミングとは必ずしも一致していない。
【0030】
次に、信号変換ステップS12では、信号変換部14において、蛍光検出部12から入力された蛍光の強度−時間信号が、高速フーリエ変換により時間領域信号(波形A、B)から、図4に示す周波数領域信号(FFT波形Af、Bf)に変換される。変換された周波数領域信号は、信号変換部14から温度算出部15へ出力される。
【0031】
図4(a)に示すFFT波形Afは、図3(a)に示す波形Aを高速フーリエ変換することにより得られた周波数領域信号であり、図示の範囲では、周波数f1〜f5にそれぞれ対応する離散的な複数の周波数成分を有する。
図4(b)に示すFFT波形Bfは、図3(b)に示す波形Bを高速フーリエ変換することにより得られた周波数領域信号であり、FFT波形Afと同様に、図示の範囲では、周波数f1’、f2’にそれぞれ対応する離散的な複数の周波数成分を有する。
【0032】
次に、温度算出ステップS13では、温度算出部15において、信号変換部14から入力された周波数領域信号に基づいて蛍光体20(被検物50)の温度が算出される。具体的には、周波数領域信号を構成する一又は複数の周波数成分から算出される周波数変化量Δfを設定しておき、信号変換部14から入力された周波数領域信号に基づいて当該測定における周波数変化量Δfを算出する。そして、予め求めた周波数変化量Δfと温度Tとの関係を用いて、温度Tを算出する。
【0033】
図4(a)と図4(b)とを比較すると、これらは対応する周波数成分を有する。図4(a)の周波数成分f1と図4(b)の周波数成分f1’とが対応関係にあり、図4(a)の周波数成分f2と図4(b)の周波数成分f2’とが対応関係にある。すなわち、異なる温度で蛍光の強度−時間信号を測定したときに、その周波数領域信号においては、周波数成分のピーク(周波数)が温度変化に応じてシフトすることがわかる。したがって、この温度変化に対する周波数のシフト量(周波数変化量Δf)を事前に測定し、図5に示すような検量線を作成しておけば、測定により得られた周波数領域信号から周波数変化量Δfを算出し、これを用いて検量線を参照することで、温度に換算することが可能である。
【0034】
周波数変化量Δfとしては、種々の設定を採用することができる。図4(a)に示すFFT波形Afが基準波形であるとすると、周波数変化量Δfは、対応する周波数成分のシフト量である(f1’−f1)、あるいは(f2’−f2)として設定することができる。
【0035】
Δf=(f1’−f1)と設定した場合、周波数成分f1、f1’は強度が最大の周波数成分であるため、検出しやすく、ノイズの影響を受けにくくなる。
一方、Δf=(f2’−f2)と設定した場合、図4(b)に示されるように、Δf=(f1’−f1)としたときよりも同じ温度変化に対する周波数変化量Δfの値が大きくなるため、温度換算の分解能を高めることができる。
【0036】
あるいは、図4(a)における周波数成分f1、f2の周波数差(f2−f1)と、図4(b)における周波数差(f2’−f1’)との差((f2’−f1’)−(f2−f1))を周波数変化量Δfとして設定することもできる。測定時の外的擾乱要因(ノイズ、電源電圧変動等)によって周波数成分のピーク位置がずれた場合であっても、このように周波数領域信号内の周波数差をパラメータとすれば、ピーク位置の平行移動分については周波数差を算出する際に少なくとも排除される。したがって、ノイズなどの擾乱に影響を受けにくい、より安定した温度測定が可能となる。
【0037】
なお、上記周波数差(f2−f1)に代えて、周波数の平均値(f1+f2)/2の変化量((f1’+f2’)/2−(f1+f2)/2)を周波数変化量Δfとして設定してもよい。この場合にも、上記した外的擾乱要因の排除効果を得られるのはもちろんである。
【0038】
以上、詳細に説明したように、本実施形態の温度測定方法では、蛍光検出部12で検出した蛍光の強度−時間信号から信号変換部14によって周波数領域信号を生成し、かかる周波数領域信号に基づき算出した周波数変化量Δfを用いて検量線を参照することで温度を算出する。このような測定方法とすれば、以下のような従来技術に対する利点が得られる。
【0039】
まず、本実施形態の温度測定方法では、蛍光の強度−時間信号における減衰時間を強度−時間曲線によって測定するのではなく、強度−時間曲線から変換した周波数領域信号の周波数成分から周波数変化量Δfを算出するので、時間測定と比較して高い測定精度、再現性を得ることができ、結果として高精度に温度を取得することが可能である。
【0040】
また、蛍光の強度−時間曲線によって減衰時間を測定する方式では、測定温度が高くなったときに減衰時間が著しく短くなって測定が困難になったり、測定精度が低下するおそれがあった。これに対して、本実施形態の温度測定方法では、蛍光の強度−時間信号を変換して得られる周波数領域信号は、温度変化に対して周波数成分のピーク位置がシフトするものであり、周波数成分のピーク位置の検出精度自体が変化することはない。したがって、温度の高低によって測定精度が影響を受けることが無く、幅広い温度範囲で安定的に高精度の温度測定が可能である。
【0041】
また本実施形態の温度測定方法では、ノイズや電源電圧変動等の外的擾乱要因がある場合でも、基準周波数との周波数差の変化量を周波数変化量Δfとして設定することで、上記外的擾乱要因の影響をある程度排除することができる。したがって、外的擾乱要因が多い環境(プラズマ近傍、高電界環境、高磁界環境など)においても安定的に高精度の温度測定が可能である。
【0042】
また、蛍光の発光強度の変化及び波長シフトを利用した温度センサでは、測定温度が高くなったときに蛍光の発光スペクトルが広がって、測定対象の波長の光強度が低下する課題があったが、本実施形態の温度測定方法では、蛍光の強度−時間信号を変換した周波数領域信号における周波数シフトを計測するので、上記のような強度低下に起因する温度検出精度の低下は原理的に生じない。
【0043】
また、発光強度の変化及び蛍光の波長シフトを利用した温度センサでは、特定波長の光を選択するための波長透過フィルタのばらつきによって測定精度が左右され、また光学系のコストが上昇しやすいという課題があったが、本実施形態の蛍光温度計では、波長透過フィルタが不要であるため、波長透過フィルタに起因する測定精度の低下が生じることはなく、光学系のコストも低減することができる。
【0044】
(第2の実施形態)
次に、温度計測方法の第2の実施形態について、図6及び図7を参照して説明する。
第2の実施形態は、図1に示した蛍光温度計10の蛍光検出部12において得られる蛍光の強度−時間信号の一部のみを用いて周波数変化量Δfを算出し、被検物50の温度を測定する方法である。かかる温度測定方法は、制御部13の信号変換部14において蛍光の強度−時間信号の一部のみを抽出して周波数領域信号に変換する構成の蛍光温度計により実施することができる。
【0045】
図6及び図7は、蛍光の強度−時間信号のうち一部の強度範囲のみを周波数領域信号の算出に用いる温度測定方法の説明図である。
図6(a)に示す波形Cは、蛍光検出部12において得られる蛍光の強度−時間信号(例えば図3(a)に示した波形A)のうち、最大強度から20%の範囲にあたる部分波形Csを抽出したものである。図6(b)に示すFFT波形Cfは、波形Cを高速フーリエ変換した周波数領域信号である。
図7(a)に示す波形Dは、図6に示す波形Cよりも高温の被検物50を測定した場合の蛍光の強度−時間信号から、強度80%〜100%の範囲の部分波形Dsを抽出したものである。図7(b)に示すFFT波形Dfは、波形Dを高速フーリエ変換した周波数領域信号である。
【0046】
図6(b)及び図7(b)に示すように、蛍光の強度−時間信号の一部(強度80%〜100%の範囲)のみを周波数領域信号に変換した場合でも、先の第1実施形態と同様に、複数の周波数成分に分離することができ、測定温度が変化すると、対応する周波数成分のシフト(f1→f1’、f2→f2’)が生じることが分かる。したがって、本実施形態においても、周波数領域信号における周波数変化量Δfを設定し、温度と周波数変化量Δfとの関係を表す検量線を予め求めておけば、第1実施形態と同様に、蛍光の強度−時間信号を周波数領域信号に変換して周波数変化量Δfを算出し、かかる周波数変化量Δfを用いて検量線を参照することにより温度を算出することができる。
【0047】
本実施形態の温度測定方法では、温度算出に必要な蛍光の強度−時間信号は、強度80%〜100%の範囲のみであるため、蛍光の測定時間を短縮することが可能になる。
従来の蛍光の減衰時間に基づいて温度を算出する方法では、蛍光が所定の強度に減衰するまでの間、蛍光の測定を継続しなければならなかった。例えば、図3(a)に示した波形Aを得るには、21秒間の蛍光測定が必要である。
これに対して本実施形態では、蛍光の測定動作を、蛍光の強度が最大となった後、強度80%に減衰する時刻までで打ち切ることができる。したがって、1回の温度測定に要する時間を大幅に短縮することができるので、一定期間内における温度測定可能回数を増やすことができる。これにより、速い温度変化に対する追従性を改善することができる。
【0048】
なお、図6(a)に示した波形Cは、図6(b)に示すFFT波形Cfを算出するために用いたものであり、実際の温度測定時の強度−時間信号の波形とは異なるものである。すなわち、波形Cでは、FFT波形Cfにおいてある程度の強度が得られるように、蛍光の強度−時間信号の最大強度から20%の範囲を切り出した部分波形Csを複数連ねて配置しているが、実際の測定では、1つの部分波形Csが高速フーリエ変換され、FFT波形Cfと同様の波形に変換される。
また、図7(a)の波形Dについても同様である。
【0049】
(第3の実施形態)
次に、温度計測方法の第3の実施形態について、図8から図10を参照して説明する。
第3の実施形態は、蛍光検出部12において得られる蛍光の強度−時間信号の一部のみを周波数領域信号に変換する点は第2実施形態と同様であるが、蛍光の強度−時間信号のうち一部の区間のみを利用する点で異なる。かかる温度測定方法は、制御部13の信号変換部14において、蛍光の強度−時間信号のうち一部の区間の時間領域信号のみを抽出して周波数領域信号に変換する構成とした蛍光温度計により実施することができる。
【0050】
図8及び図9は、蛍光の強度−時間信号のうち一部の区間のみを周波数領域信号の算出に用いる温度測定方法の説明図である。図10は、図8及び図9に示す周波数領域信号の差分信号を示す図である。
【0051】
図8(a)に示す波形Eは、蛍光検出部12において得られる蛍光の強度−時間信号(例えば図3(a)に示した波形A)のうち、強度0%から最大強度に達するまでの区間(立ち上がり区間)にあたる部分波形Esを抽出したものである。図8(b)に示すFFT波形Efは、波形Eを高速フーリエ変換した周波数領域信号である。
【0052】
図9(a)に示す波形Fは、蛍光検出部12において得られる蛍光の強度−時間信号のうち、最大強度に達した時点から強度0%となるまでの区間(立ち下がり区間)に当たる部分波形Fsを抽出したものである。図9(b)に示すFFT波形Ffは、波形Fを高速フーリエ変換した周波数領域信号である。
【0053】
図8(b)及び図9(b)に示すように、蛍光の強度−時間信号の一部区間(立ち上がり区間、立ち下がり区間)のみを周波数領域信号に変換した場合でも、先の第1実施形態と同様に、複数の周波数成分に分離することができる。そして、これらの周波数成分が測定温度が変化に応じてシフトすることは、上記実施形態からも明らかである。したがって、本例においても、周波数領域信号における周波数変化量Δfを設定し、温度と周波数変化量Δfとの関係を表す検量線を予め求めておけば、第1実施形態と同様に、蛍光の強度−時間信号を周波数領域信号に変換して周波数変化量Δfを算出し、かかる周波数変化量Δfを用いて検量線を参照することにより温度を算出することができる。
【0054】
上記したように、蛍光の強度−時間信号の一部区間のみを周波数領域信号に変換した場合でも周波数変化量Δfの計測により温度を算出することができる。したがって、例えば蛍光の強度−時間信号の立ち上がり区間のみの測定を行うようにすることで、第2実施形態と同様に、温度測定時間を短縮することができ、速い温度変化への追従性を向上させることが可能である。
【0055】
次に、図10に示す差分波形Gは、図8(b)に示すFFT波形Efと図9(b)に示すFFT波形Ffとの差分をプロットしたものである。このような差分波形Gは、制御部13の温度算出部15において、信号変換部14から入力される2つの周波数領域信号の演算処理を実行することで取得することができる。
【0056】
図10に示すように、差分波形Gは、蛍光の強度−時間信号の立ち上がり部分、立ち下がり部分の双方を反映した多くの情報を包含するものであり、周波数変化量Δfの設定方法も種々の形態を選択しうる。
【0057】
例えば、差分強度が正である周波数成分fg1、fg2、fg3のみ、あるいはこれらと基準周波数f0(例えば0.05Hz)を組み合わせて周波数変化量Δfを設定することができる。あるいは、差分強度が負である周波数成分fg4、fg5のみ、あるいはこれらと基準周波数f0(例えば0.05Hz)を組み合わせて周波数変化量Δfを設定することもできる。
【0058】
さらには、周波数成分fg1〜fg5のうち、差分強度の絶対値が大きいもの2つの差分を用いて周波数変化量Δfを設定することもできる。例えば、周波数成分fg4と周波数成分fg2の差(fg4−fg2)を用いて周波数変化量Δfを設定することができる。具体的には、温度が変化したときに周波数成分fg4、fg2がそれぞれfg4’、fg2’に変化したとすれば、Δf=((fg4’−fg2’)−(fg4−fg2))として算出することができる。
【0059】
上記したように、蛍光の強度−時間信号における立ち上がり区間と立ち下がり区間との差分波形Gでは、種々の形態で周波数変化量Δfを設定することが可能である。そして、先の図8及び図9に示した蛍光の強度−時間信号の一部区間のみを用いて周波数変化量Δfを計測する方法を含めた第3実施形態の温度測定方法によれば、蛍光体20の特性や測定温度範囲、温度変化速度に合わせて、周波数変化量Δfを計測するための範囲(蛍光の強度−時間信号における区間)の設定、周波数成分の設定、差分処理などの処理を行うことができる。これにより、より安定で精度が出せる条件の下で温度測定を行うことが可能となる。
【0060】
(第4の実施形態)
次に、温度計測方法の第4の実施形態について、図11から図16を参照して説明する。
第4の実施形態は、図1に示した蛍光温度計10の励起部11から蛍光体20に対して変調された励起光を照射し、蛍光体20から変調された蛍光を射出させる温度測定方法である。
【0061】
図11は、第4の実施形態における励起光と蛍光を示す図である。図11(a)には、変調された励起光と、この励起光の照射により蛍光体20から発せられる変調された蛍光(蛍光1、蛍光2)が示されている。図11(b)は、図11(a)に示す励起光、蛍光1及び蛍光2の強度−時間信号を高速フーリエ変換した周波数領域信号である。
【0062】
図11(a)に示す励起光は、周波数ft0の正弦波であり、蛍光体20に対する照射期間中に強度が周期的に変動する。このような励起光を蛍光体20に照射すると、蛍光体20から射出される蛍光は、蛍光体20に含まれる蛍光材料の特性にもよるが、励起光よりも若干長周期の正弦波(蛍光1、蛍光2)として観測される。
【0063】
なお、蛍光2は、蛍光1の条件よりも高温の被検物50を測定したときに蛍光体20から出力される蛍光である。また、ここでは励起光の照射を停止した後の蛍光の減衰については考慮していない。また、図11(a)では、励起光と蛍光1、蛍光2の位相及び周期のずれを示すために、励起光の振幅と、蛍光1、蛍光2の振幅を合わせて波形を重ねて表示している。
【0064】
そして、図11(a)に示す3つの強度−時間信号(励起光、蛍光1、蛍光2)を高速フーリエ変換により周波数領域信号に変換すると、図11(b)に示すように、それぞれの強度−時間信号は、単一の周波数成分に変換される。すなわち、それぞれの強度−時間信号が単一周波数の正弦波であるから、励起光は周波数成分ft0のみの周波数領域信号、蛍光1は周波数成分ft1のみの周波数領域信号、蛍光2は周波数成分ft2のみの周波数領域信号となる。
【0065】
なお、蛍光体20の応答性が低い場合や励起光の照射強度が大きすぎる場合には、励起光の変化と蛍光の変化とが線形的な関係とならず、計測される蛍光1、蛍光2の周波数領域信号に周波数成分ft1、ft2以外の高調波成分が含まれる。しかしこのような場合にも、強度の大きい主たる周波数成分はft1、ft2であるため、図11に示す例と同様に考えることができる。
【0066】
図11(b)に示すように、励起光の周波数ft0が最も高く、次いで、高温条件で測定された蛍光2の周波数ft2が高く、低温条件で測定された蛍光1の周波数ft1が最も低い。すなわち、測定温度の変化に応じて、対応する周波数成分のシフト(ft1→ft2)が生じる。
したがって、本実施形態においても、周波数領域信号における周波数成分ft1、ft2と、温度との関係を示す検量線を予め作成しておくことで、観測された蛍光の周波数成分から被検物50の温度を容易に取得することができる。
【0067】
また、周波数領域信号における周波数変化量Δfを設定し、この周波数変化量Δfと温度との関係を表す検量線を予め求めておくことで、測定した蛍光の強度−時間信号から周波数変化量Δfを算出し、かかる周波数変化量Δfを用いて検量線を参照することにより温度を算出することもできる。
【0068】
周波数変化量Δfの設定方法は、図11(b)に示すように、種々の形態を採用することができる。具体的には、周波数成分ft0、ft1、ft2の差又は平均を周波数変化量Δfとして設定することができる。すなわち、Δf=ft0−ft1、Δf=ft0−ft2、Δf=ft2−ft1、Δf=(ft0+ft1)/2、Δf=(f0+ft2)/2、などと設定することができる。
【0069】
上記のように周波数成分同士の差又は平均を周波数変化量Δfとして設定することで、ノイズや電源電圧変動等の外的擾乱要因がある場合でも、上記外的擾乱要因の影響をある程度排除することができる。したがって、外的擾乱要因が多い環境(プラズマ近傍、高電界環境、高磁界環境など)においても安定的に高精度の温度測定が可能である。
【0070】
[変形例]
以下、図12から図16により本実施形態の変形例について説明する。
上記実施形態では、励起光を正弦波の形状に変調して蛍光体20を励起する場合について説明したが、変調された励起光の波形としては、任意の形状のものを用いることができる。
【0071】
<第1変形例>
図12は、第1変形例に係る温度測定方法の説明図である。
図12(a)は、波形として、第1周波数ft0の第1正弦波と、第2周波数2ft0の第2正弦波(第1正弦波の2倍波)との合成波を用いたときの励起光の波形を示す図である。図12(b)は、図12(a)に示す強度−時間信号を高速フーリエ変換した周波数領域信号である。
【0072】
図12(b)に示すように、図12(a)に示す励起光の強度−時間信号を周波数領域信号に変換すると、周波数ft0、2ft0に対応する2つの周波数成分が現れる。このような励起光を蛍光体20に照射して蛍光を観測すると、蛍光の周波数領域信号において、励起光の周波数ft0、2ft0に対応する2つの周波数成分が現れる。
この場合、励起光の第1周波数ft0との差分や平均だけでなく、第2周波数2ft0と蛍光の周波数成分との差や平均を周波数変化量Δfとして設定することができる。あるいは、第1周波数ft0と蛍光の周波数成分との差(値a)と、第2周波数2ft0と蛍光の周波数成分との差(値b)との平均値(a+b)/2を周波数変化量Δfとして設定することもできる。
【0073】
このように、複数の正弦波の合成波を波形として用いることで、周波数変化量Δfの設定のバリエーションが増えるため、蛍光体20の特性や測定温度範囲、温度変化速度に合わせて、周波数変化量Δfの設定を変更し、最適化することができる。これにより、より安定で精度が出せる条件の下で温度測定を行うことが可能となる。
【0074】
なお、第1変形例では、第2正弦波として第1正弦波の2倍波を用いたが、第2正弦波として、3倍波や4倍波を用いてもよく、1.5倍波を用いてもよい。いずれの場合にも、周波数領域信号において上記と同様に周波数に応じたピークが得られるので、同様の作用効果を得ることができる。
【0075】
<第2変形例>
図13は、第2変形例に係る温度測定方法の説明図である。
図13(a)は、波形として三角波を用いたときの励起光の波形を示す図である。図13(b)は、図13(a)に示す強度−時間信号を高速フーリエ変換した周波数領域信号である。
【0076】
図13(b)に示すように、三角波で変調した励起光には、弱い高調波成分が含まれる。このような励起光を蛍光体20に照射して蛍光を観測し、蛍光の強度−時間信号を周波数領域信号に変換すると、上記の高調波成分に対応する周波数成分が観測される。
しかし、図13(b)に示すように、三角波の場合には主要周波数(図示では最低周波数の成分)の強度が、高調波成分と比較して突出して大きい。したがって、三角波の主要周波数にのみ着目すれば、先の第1実施例と同様に扱うことができる。
【0077】
<第3変形例>
第3変形例は、先の第1変形例と同様に、励起光の波形として、複数の周波数成分を含む波形を用いる場合の例である。すなわち、ある程度の強度を有する複数の周波数成分を含む波形の例である。以下、図14及び図15を参照しつつ説明する。
【0078】
図14及び図15は、第3変形例に係る温度測定方法の説明図である。
図14(a)は、波形としてランプ波を用いたときの励起光の波形を示す図である。図14(b)は、図14(a)に示す強度−時間信号を高速フーリエ変換した周波数領域信号である。
図15(a)は、波形として矩形波を用いたときの励起光の波形を示す図である。図15(b)は、図15(a)に示す強度−時間信号を高速フーリエ変換した周波数領域信号である。
【0079】
図14(b)及び図15(b)に示すように、ランプ波又は矩形波を波形として用いた場合、規則正しく配列された複数の周波数成分を得ることができる。また、図13(b)に示した三角波の場合と比較して、強度最大の周波数成分と他の周波数成分との強度差が小さくなる。
したがって、ランプ波又は矩形波を用いて励起光を変調することで、計測される蛍光においても複数の周波数成分を観測することができ、複数の周波数成分の組み合わせから適宜選択して周波数変化量Δfを設定することが可能である。よって、蛍光体20の特性や測定温度範囲、温度変化速度に合わせて、周波数変化量Δfの設定を変更し、最適化することができる。これにより、より安定で精度が出せる条件の下で温度測定を行うことが可能となる。
また本例は、第1変形例のような正弦波の合成処理が困難である場合に有効である。
【0080】
<第4変形例>
第4変形例は、第4実施形態の温度測定方法において、温度測定を繰り返す中で励起光の変調周波数を変更する温度測定方法である。
【0081】
図16は、第4変形例に係る温度測定方法における変調周波数の変位を示す説明図である。図16において、横軸は測定温度領域(℃)、縦軸は励起光の変調周波数(Hz)である。
【0082】
本例の温度測定方法では、図16に示すように、被検物50の温度が属する測定温度領域に応じて、励起光の変調周波数を切り替える。具体的には、被検物50の温度が、0℃以上t1℃以下の範囲に属する場合には、周波数ft0の正弦波で変調した励起光を蛍光体20に照射して蛍光の測定を行い、t1℃以上t2℃以下の範囲に属する場合には、周波数2ft0の正弦波で変調した励起光を蛍光体20に照射して蛍光の測定を行う。
【0083】
図11(a)に示したように、蛍光1の波形よりも蛍光2の波形の方が励起光の波形に近い。すなわち、測定温度が高いほど蛍光の周波数成分と励起光の周波数成分ft0との差が小さくなる。これは、温度が上昇すると蛍光体20の応答が速くなるためである。そして、励起光の周波数成分ft0と蛍光の周波数成分との差が小さくなると、相対的にばらつきが大きくなり、温度測定の精度が低下する。
【0084】
そこで、本例では、測定温度が一定温度以上となったときに、励起光の変調周波数をより高い周波数に変更する。これにより、励起光の変動に対する蛍光の追従が遅れるため、励起光の周波数ft0に対する蛍光の周波数成分との差が大きくなり、温度測定の精度を維持することができる。
【0085】
なお、本例では2種類の変調周波数を切り替えることとしたが、3種類以上の変調周波数を切り替えて用いることとしてもよい。また、変調周波数を切り替えるのではなく、波形の関数(正弦波、矩形波、三角波、ランプ波等の波形形状、あるいは、変調度などの変調パラメータ)を測定温度に応じて切り替えることとしてもよい。また、測定温度が高くなったときにより高い変調周波数に切り替えることとしたが、蛍光材料の物性や応答性、重要な測定温度範囲などを勘案して、測定温度が高くなったときに変調周波数を下げる場合もあり得る。
【0086】
(適用例)
図17は、上記各実施形態の蛍光温度計の一適用例であるプラズマ処理装置を示す図である。
プラズマ処理装置100は、真空チャンバー102と、下部電極103と、静電チャック装置104と、上部電極105とを有する。被処理物であるウェハWは静電チャック装置104上に載置される。ウェハWは、静電チャック装置104に備えられた図示略の内部電極への直流電圧印加による静電力により吸着固定される。
【0087】
上部電極105は、プラズマ処理装置100がプラズマエッチング装置である場合には、エッチングガスを供給する貫通孔が形成されたシャワープレート状に形成される。プラズマエッチング装置においては、下部電極103への高周波電圧の印加により上部電極105との間に活性なラジカルを発生させ、かかるラジカルをウェハW表面に作用させることでエッチング処理を行う。
またプラズマ処理装置100がスパッタ装置である場合には、上部電極105上に図示略のターゲットが取り付けられ、上部電極への直流電圧又は高周波電圧の印加により発生させたプラズマによりターゲットから成膜粒子を叩き出し、ウェハW上に堆積させる。
【0088】
プラズマ処理装置100において、下部電極103及び静電チャック装置104の一部には、装置外から通じる挿入孔108が形成されており、静電チャック装置104裏面の挿入孔108の突き当たり部分に、蛍光体20が設けられている。そして、装置外に配置された蛍光温度計10から延びる導光体107が挿入孔108に挿入され、導光体107の先端が蛍光体20に突き当てられている。
【0089】
蛍光温度計10は、図1に示した励起部11から射出される励起光を導光体107を介して蛍光体20に照射するとともに、蛍光体20から発せられる蛍光を導光体107を介して蛍光検出部12へ入射させ、蛍光の強度−時間信号を計測する。取得された蛍光の強度−時間信号は制御部13に入力される。制御部13は、先に記載のいずれかの実施形態の温度計測方法により温度を算出する。
以上の動作により、静電チャック装置104の表層部の温度を計測することができる。
【0090】
以上の構成を備えたプラズマ処理装置によれば、先に記載の各実施形態の蛍光温度計を備えていることで、ウェハWの温度を高精度に測定することができる。また、各実施形態の温度計測方法を適宜選択することにより、速い温度変化に対して良好に追従する温度測定や、ノイズや電源電圧変動の影響を受けにくい温度測定を実施することも可能である。
【0091】
上記では、先に記載の各実施形態の蛍光温度計をプラズマ処理装置に用いた場合について説明したが、かかる構成に限定されるものではなく、蛍光体を設置可能あれば任意の被検物に設置することが可能である。
特に、先の実施形態の蛍光温度計では、ノイズや電源電圧変動の影響を受けにくい温度測定が可能であるため、従来は温度測定が困難であった高電界環境や高磁界環境においても高精度の温度測定が可能である。例えば、変圧装置内部や発電機内部、避雷器などの温度計測や、MRI(核磁気共鳴画像法)測定環境における温度計測にも好適に用いることができる。
また、前述の各実施形態では照射光及び蛍光の変化時間を秒(s:SEC)の単位で例示したが、msやμsの変化時間等、異なる変化時間であってもよい。
【符号の説明】
【0092】
10…蛍光温度計、11…励起部(励起手段)、12…蛍光検出部(蛍光検出手段)、14…信号変換部(信号変換手段)、15…温度算出部(温度算出手段)、20…蛍光体、50…被検物、S11…蛍光検出ステップ、S12…信号変換ステップ、S13…温度算出ステップ
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光温度計及び温度計測方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
蛍光を利用した温度センサは、例えば下記特許文献1,2に記載されているように、測定対象物上に配置した蛍光物質に励起光を照射し、特定波長での蛍光の発光強度が温度により増減する現象、蛍光物質から発光される蛍光の波長が温度によりシフトする現象、蛍光の減衰時間が温度によって変化する現象を利用し、温度を計測するものである。
【0003】
これらのうち、蛍光の吸収端付近の波長或いはピーク波長が温度によりシフトする現象を利用する温度センサでは、波長シフト量と温度の関係を事前に計測し、波長変化量を温度に換算する。
特定波長での蛍光の強度が温度により増減する現象を利用する温度センサでは、蛍光の発光強度に合わせて2種類の異なる波長透過フィルタを設置し、温度により蛍光の波長がシフトするに従い変化する2つの波長透過フィルタを透過する光量を計測し、これらの光量の比率と温度の関係を事前に計測しておき、温度に換算する等の方法が採用されている。
【0004】
一方、蛍光の発光減衰時間が温度により変化する現象を利用する温度センサでは、パルス光などの励起手段によって蛍光体を発光させ、フォトダイオードなどの検出手段により蛍光の強度−時間曲線を取得し、蛍光の減衰が一定の減衰量になるまでの時間を計測し、事前に測定していた温度と減衰時間の関係から、測定時間を温度に換算する等の方法が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭53−101480号公報
【特許文献2】特開昭61−120482号公報
【特許文献3】特開昭58−005621号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、蛍光の発光強度が変化する現象及び発光波長が温度によってシフトする現象を利用した温度センサでは以下のような課題がある。
(1)測定温度が高くなると蛍光の発光スペクトルが広がり、それに伴って測定波長の強度が低下するために十分な信号強度を確保できない場合がある。
(2)温度センサ部の経時変化による較正を必要としたり、測定系における波長透過フィルタの透過特性ばらつき等の製造ばらつきが、そのまま温度測定精度のばらつきになってしまうため、測定装置の装置間格差が生じたり、測定精度の向上が困難である。
(3)蛍光を選択測定するための波長透過フィルタが必須であり、場合によっては複数枚の光学フィルタ必要になるため、高コストになりやすい。
(4)蛍光を伝達する手段として光ファイバを利用する場合、ファイバの劣化・曲げ等による影響を較正を必要とする。
【0007】
蛍光の減衰時間が温度によって変化する現象を利用した温度センサでは上記の課題のうちのいくらかは解決されるが、依然として以下のような課題があった。
(1)蛍光の減衰時間の測定が完了するまでは次の温度測定を開始できないため、速い温度変化に対する追従性が低い。
(2)蛍光の減衰時間の測定精度、ばらつきがそのまま温度測定の精度、ばらつきになってしまうため、高精度な温度測定が原理上難しい。
(3)測定温度が高くなると蛍光減衰時間が短くなるため、低温での測定と比較して測定精度が低下する。
(4)測定中のノイズや電源電圧変動によって蛍光の減衰時間の測定値が変化するため、測定精度が低下しやすい。
【0008】
本発明は、上記課題の少なくとも一つを解決し、高精度の温度測定が可能な蛍光温度計、及び温度計測方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の温度計測方法は、強度変調された励起光を蛍光体に照射し前記蛍光体を励起する励起ステップと、励起された蛍光体から発せられる蛍光を検出する蛍光検出ステップと、前記蛍光検出ステップで検出された前記蛍光の強度−時間信号を、時間領域信号から周波数領域信号に変換する信号変換ステップと、前記周波数領域信号における所定の周波数成分の変化量に基づいて前記蛍光体の温度を算出する温度算出ステップと、を有することを特徴とする。
【0010】
この温度測定方法によれば、蛍光の強度−時間信号における減衰時間を強度−時間曲線によって測定するのではなく、強度−時間曲線から変換した周波数領域信号の周波数成分から周波数変化量を算出するので、時間測定と比較して高い測定精度、再現性を得ることができ、結果として高精度に温度を取得することが可能である。
【0011】
前記温度算出ステップにおいて、2つの周波数成分の差分又は平均の変化量に基づいて前記蛍光体の温度を算出する方法としてもよい。
前記温度算出ステップにおいて、前記励起光の周波数に対する前記周波数成分の変化量に基づいて前記蛍光体の温度を算出する方法としてもよい。
前記温度算出ステップにおいて、強度が最大となる前記周波数成分の変化量に基づいて前記蛍光体の温度を算出する方法としてもよい。
前記信号変換ステップにおいて、前記蛍光の強度−時間信号の一部のみを抽出して周波数領域信号に変換する方法としてもよい。
前記信号変換ステップにおいて、前記蛍光の強度−時間信号の複数の部分を抽出し、抽出した各々の信号成分を周波数領域信号に変換し、前記温度算出ステップにおいて、各々の前記信号成分から得られた前記周波数領域信号の差分の変化量に基づいて前記蛍光体の温度を算出する方法としてもよい。
前記信号変換ステップにおいて、高速フーリエ変換により前記蛍光の強度−時間信号を変換する方法としてもよい。
前記励起ステップにおいて、単一周波数の波形に強度変調された励起光を前記蛍光体に照射する方法としてもよい。
前記温度算出ステップにおいて、前記励起光の周波数成分と、前記蛍光の周波数成分との差分又は平均の変化量に基づいて前記蛍光体の温度を算出する方法としてもよい。
前記励起ステップにおいて、第1周波数、及び前記第1周波数と異なる第2周波数を含む波形に強度変調された励起光を前記蛍光体に照射する方法としてもよい。
前記温度算出ステップにおいて、前記第1周波数及び第2周波数と、前記蛍光の一又は複数の周波数成分との差分又は平均の変化量に基づいて前記蛍光体の温度を算出する方法としてもよい。
前記励起ステップから前記温度算出ステップまでの一連の温度測定ステップを繰り返し実行するに際して、第1の前記温度測定ステップと第2の前記温度測定ステップとの間で、前記励起ステップにおいて前記蛍光体に照射する励起光の変調態様を異ならせる方法としてもよい。
変調の周波数が異なる複数の励起光を用いる方法としてもよい。
変調の関数が異なる複数の励起光を用いる方法としてもよい。
第1の前記温度測定ステップと第2の前記温度測定ステップとの間に、当該温度計測方法による温度測定の状況に応じて前記複数の励起光の切替を行う励起光切替ステップを有する方法としてもよい。
【0012】
次に、本発明の蛍光温度計は、強度変調された励起光を蛍光体に照射し前記蛍光体を励起する励起手段と、蛍光体への光照射によって前記蛍光体から発せられる蛍光を検出する蛍光検出手段と、前記蛍光検出手段で検出された前記蛍光の強度−時間信号を、時間領域信号から周波数領域信号に変換する信号変換手段と、前記周波数領域信号における所定の周波数成分の変化量に基づいて前記蛍光体の温度を算出する温度算出手段と、を有し、上記いずれかの方法で温度を算出することを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、蛍光の強度−時間信号における減衰時間を強度−時間曲線によって測定するのではなく、強度−時間曲線から変換した周波数領域信号の周波数成分から周波数変化量を算出するので、時間測定と比較して高い測定精度、再現性を得ることができ、結果として高精度に温度を取得することが可能である。また、蛍光の波長シフトを利用する構成のような波長透過フィルタが不要であるため、波長透過フィルタのばらつきに起因する測定精度の低下や光学系のコスト増を生じることもない。
【0014】
前記温度算出手段は、前記周波数領域信号を構成する2つの周波数成分の差分の変化量に基づいて前記蛍光体の温度を算出する構成としてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、蛍光の強度−時間信号の周波数成分を利用した変化量検出に基づいて温度を計測することでノイズや電源電圧変動の影響を受けにくくした、高精度の温度計測が可能な蛍光温度計、並びに温度計測方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】第1実施形態に係る蛍光温度計を示す図。
【図2】実施形態の温度計測方法を示すフローチャート。
【図3】蛍光の強度−時間信号の例を示す図。
【図4】蛍光の強度−時間信号を周波数領域信号に変換した例を示す図。
【図5】温度算出に用いる検量線の例を示す図。
【図6】第2実施形態に係る温度測定方法の説明図。
【図7】第2実施形態に係る温度測定方法の説明図。
【図8】第3実施形態に係る温度測定方法の説明図。
【図9】第2実施形態に係る温度測定方法の説明図。
【図10】図8及び図9に示す周波数領域信号の差分信号を示す図。
【図11】第4実施形態に係る温度測定方法の説明図。
【図12】第1変形例に係る温度測定方法の説明図。
【図13】第2変形例に係る温度測定方法の説明図。
【図14】第2変形例に係る温度測定方法の説明図。
【図15】第3変形例に係る温度測定方法の説明図。
【図16】第4変形例に係る温度測定方法における変調周波数変位を示す説明図。
【図17】蛍光温度計の一適用例であるプラズマ処理装置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0018】
(第1の実施形態)
[蛍光温度計]
図1(a)は、第1実施形態に係る蛍光温度計を示す図である。図1(a)には、蛍光温度計10と、被検物50と、被検物50の表面に設置された蛍光体20とが示されている。
蛍光温度計10は、励起部(励起手段)11と、蛍光検出部(蛍光検出手段)12と、制御部13とを備えている。制御部13は、信号変換部(信号変換手段)14と、温度算出部(温度算出手段)15とを有しており、励起部11及び蛍光検出部12を含む蛍光温度計10の全体を制御する。
【0019】
励起部11は、例えばレーザーダイオード(LD)や発光ダイオード(LED)などの発光素子と、発光素子の駆動回路と、発光素子から射出される光を変調する光変調装置と、を備えている。励起部11は、制御部13の制御のもと、被検物50上に設置された蛍光体20に対して、制御された励起光を照射する。本実施形態の励起部11では、駆動回路により発光素子が駆動され、発光素子の発光光が光変調装置に供給される。光変調装置は、入射光の強度を変調する機能を有しており、入射光から任意の波形の励起光を生成して射出する。
【0020】
蛍光検出部12は、入射する光の光量(輝度)を測定するフォトダイオード等の受光素子を備えている。蛍光検出部12は、制御部13の制御のもと、励起部11からの励起光の照射により蛍光体20から発せられた蛍光を検出し、検出した蛍光の強度−時間信号を制御部13に出力する。
【0021】
信号変換部14は、蛍光検出部12から入力される蛍光の強度−時間信号を、時間領域信号から周波数領域信号に変換し、得られた周波数領域信号を温度算出部15に出力する。信号変換部14は、例えば高速フーリエ変換(FFT;Fast Fourier Transform)機能を備えた信号処理回路として構成することができる。
【0022】
温度算出部15は、信号変換部14から入力される周波数領域信号における所定の周波数成分の基準値からの変化量を算出し、予め入力されている変化量と温度との関係から温度を算出する。具体的な温度算出手順については、後段の温度測定方法の説明において詳しく述べる。
【0023】
蛍光体20は、特に限定されず、用途目的に合わせて多種多様な材料から選択して用いることができる。具体的には、発光に適したエネルギー準位を有する希土類がドープされた蛍光材料、AlGaAs等の半導体、酸化マグネシウム等の金属酸化物、ルビー等の鉱物から適宜選択して用いることができる。
【0024】
被検物50は、特に限定されず、蛍光体20を設置可能なものであればいかなる物品であってもよい。蛍光体20は被検物50に接着される必要はなく、被検物50の測温位置に対して少なくとも測温期間中に当接可能であればよい。ただし、蛍光体20を被検物50と同一温度に保持する上では、蛍光体20は被検物50の表面に密着固定されることが好ましく、高熱伝導性の接着剤を介して接着されていることがより好ましい。
【0025】
また、図1(b)に示すように、蛍光体20は光ファイバ21などの導光手段により、励起部11、蛍光検出部12と連結されていてもよい。この場合は励起光が光ファイバ中を伝搬して蛍光体20にまで導かれ、励起光による蛍光が光ファイバ内を通り蛍光検出部12に導かれる。
【0026】
[温度計測方法]
次に、上記構成を備えた本実施形態の蛍光温度計10を用いた温度計測方法について、図2から図5を参照して説明する。
図2は、本実施形態の温度計測方法を示すフローチャートである。図3は、蛍光の強度−時間信号の例を示す図である。図4は、蛍光の強度−時間信号を周波数領域信号に変換した例を示す図である。図5は、温度算出に用いる検量線の例を示す図である。
【0027】
本実施形態の温度計測方法は、図2に示すように、励起ステップS10と、蛍光検出ステップS11と、信号変換ステップS12と、温度算出ステップS13と、を有する。
【0028】
まず、励起ステップS10では、被検物50上に設置された蛍光体20に対して、励起部11から強度変調された励起光を照射し、蛍光体20を発光させる。
次いで、蛍光検出ステップS11では、蛍光体20から発光された蛍光を蛍光検出部12において検出する。検出された蛍光の強度−時間信号は、蛍光検出部12から制御部13の信号変換部14へ出力される。
【0029】
ここで、図3(a)に示す波形A、及び図3(b)に示す波形Bは、励起部11から蛍光体20に矩形波の励起光を照射した場合に蛍光検出部12において検出される蛍光の強度−時間信号を例示したものである。波形Aは比較的低温の被検物50を測定した場合、波形Bは比較的高温の被検物50を測定した場合の波形を示している。これらの図に示すように、高温の被検物50を測定した波形Bは、低温の被検物50を測定した波形Aと比較して、強度−時間信号の立ち上がり及び立ち下がりの形状がいずれも急峻になる。
なお、図3は、温度によって蛍光強度−時間信号の立ち上がり及び立ち下がりの形状変化を示した概略図であり、励起光のオンオフのタイミングとは必ずしも一致していない。
【0030】
次に、信号変換ステップS12では、信号変換部14において、蛍光検出部12から入力された蛍光の強度−時間信号が、高速フーリエ変換により時間領域信号(波形A、B)から、図4に示す周波数領域信号(FFT波形Af、Bf)に変換される。変換された周波数領域信号は、信号変換部14から温度算出部15へ出力される。
【0031】
図4(a)に示すFFT波形Afは、図3(a)に示す波形Aを高速フーリエ変換することにより得られた周波数領域信号であり、図示の範囲では、周波数f1〜f5にそれぞれ対応する離散的な複数の周波数成分を有する。
図4(b)に示すFFT波形Bfは、図3(b)に示す波形Bを高速フーリエ変換することにより得られた周波数領域信号であり、FFT波形Afと同様に、図示の範囲では、周波数f1’、f2’にそれぞれ対応する離散的な複数の周波数成分を有する。
【0032】
次に、温度算出ステップS13では、温度算出部15において、信号変換部14から入力された周波数領域信号に基づいて蛍光体20(被検物50)の温度が算出される。具体的には、周波数領域信号を構成する一又は複数の周波数成分から算出される周波数変化量Δfを設定しておき、信号変換部14から入力された周波数領域信号に基づいて当該測定における周波数変化量Δfを算出する。そして、予め求めた周波数変化量Δfと温度Tとの関係を用いて、温度Tを算出する。
【0033】
図4(a)と図4(b)とを比較すると、これらは対応する周波数成分を有する。図4(a)の周波数成分f1と図4(b)の周波数成分f1’とが対応関係にあり、図4(a)の周波数成分f2と図4(b)の周波数成分f2’とが対応関係にある。すなわち、異なる温度で蛍光の強度−時間信号を測定したときに、その周波数領域信号においては、周波数成分のピーク(周波数)が温度変化に応じてシフトすることがわかる。したがって、この温度変化に対する周波数のシフト量(周波数変化量Δf)を事前に測定し、図5に示すような検量線を作成しておけば、測定により得られた周波数領域信号から周波数変化量Δfを算出し、これを用いて検量線を参照することで、温度に換算することが可能である。
【0034】
周波数変化量Δfとしては、種々の設定を採用することができる。図4(a)に示すFFT波形Afが基準波形であるとすると、周波数変化量Δfは、対応する周波数成分のシフト量である(f1’−f1)、あるいは(f2’−f2)として設定することができる。
【0035】
Δf=(f1’−f1)と設定した場合、周波数成分f1、f1’は強度が最大の周波数成分であるため、検出しやすく、ノイズの影響を受けにくくなる。
一方、Δf=(f2’−f2)と設定した場合、図4(b)に示されるように、Δf=(f1’−f1)としたときよりも同じ温度変化に対する周波数変化量Δfの値が大きくなるため、温度換算の分解能を高めることができる。
【0036】
あるいは、図4(a)における周波数成分f1、f2の周波数差(f2−f1)と、図4(b)における周波数差(f2’−f1’)との差((f2’−f1’)−(f2−f1))を周波数変化量Δfとして設定することもできる。測定時の外的擾乱要因(ノイズ、電源電圧変動等)によって周波数成分のピーク位置がずれた場合であっても、このように周波数領域信号内の周波数差をパラメータとすれば、ピーク位置の平行移動分については周波数差を算出する際に少なくとも排除される。したがって、ノイズなどの擾乱に影響を受けにくい、より安定した温度測定が可能となる。
【0037】
なお、上記周波数差(f2−f1)に代えて、周波数の平均値(f1+f2)/2の変化量((f1’+f2’)/2−(f1+f2)/2)を周波数変化量Δfとして設定してもよい。この場合にも、上記した外的擾乱要因の排除効果を得られるのはもちろんである。
【0038】
以上、詳細に説明したように、本実施形態の温度測定方法では、蛍光検出部12で検出した蛍光の強度−時間信号から信号変換部14によって周波数領域信号を生成し、かかる周波数領域信号に基づき算出した周波数変化量Δfを用いて検量線を参照することで温度を算出する。このような測定方法とすれば、以下のような従来技術に対する利点が得られる。
【0039】
まず、本実施形態の温度測定方法では、蛍光の強度−時間信号における減衰時間を強度−時間曲線によって測定するのではなく、強度−時間曲線から変換した周波数領域信号の周波数成分から周波数変化量Δfを算出するので、時間測定と比較して高い測定精度、再現性を得ることができ、結果として高精度に温度を取得することが可能である。
【0040】
また、蛍光の強度−時間曲線によって減衰時間を測定する方式では、測定温度が高くなったときに減衰時間が著しく短くなって測定が困難になったり、測定精度が低下するおそれがあった。これに対して、本実施形態の温度測定方法では、蛍光の強度−時間信号を変換して得られる周波数領域信号は、温度変化に対して周波数成分のピーク位置がシフトするものであり、周波数成分のピーク位置の検出精度自体が変化することはない。したがって、温度の高低によって測定精度が影響を受けることが無く、幅広い温度範囲で安定的に高精度の温度測定が可能である。
【0041】
また本実施形態の温度測定方法では、ノイズや電源電圧変動等の外的擾乱要因がある場合でも、基準周波数との周波数差の変化量を周波数変化量Δfとして設定することで、上記外的擾乱要因の影響をある程度排除することができる。したがって、外的擾乱要因が多い環境(プラズマ近傍、高電界環境、高磁界環境など)においても安定的に高精度の温度測定が可能である。
【0042】
また、蛍光の発光強度の変化及び波長シフトを利用した温度センサでは、測定温度が高くなったときに蛍光の発光スペクトルが広がって、測定対象の波長の光強度が低下する課題があったが、本実施形態の温度測定方法では、蛍光の強度−時間信号を変換した周波数領域信号における周波数シフトを計測するので、上記のような強度低下に起因する温度検出精度の低下は原理的に生じない。
【0043】
また、発光強度の変化及び蛍光の波長シフトを利用した温度センサでは、特定波長の光を選択するための波長透過フィルタのばらつきによって測定精度が左右され、また光学系のコストが上昇しやすいという課題があったが、本実施形態の蛍光温度計では、波長透過フィルタが不要であるため、波長透過フィルタに起因する測定精度の低下が生じることはなく、光学系のコストも低減することができる。
【0044】
(第2の実施形態)
次に、温度計測方法の第2の実施形態について、図6及び図7を参照して説明する。
第2の実施形態は、図1に示した蛍光温度計10の蛍光検出部12において得られる蛍光の強度−時間信号の一部のみを用いて周波数変化量Δfを算出し、被検物50の温度を測定する方法である。かかる温度測定方法は、制御部13の信号変換部14において蛍光の強度−時間信号の一部のみを抽出して周波数領域信号に変換する構成の蛍光温度計により実施することができる。
【0045】
図6及び図7は、蛍光の強度−時間信号のうち一部の強度範囲のみを周波数領域信号の算出に用いる温度測定方法の説明図である。
図6(a)に示す波形Cは、蛍光検出部12において得られる蛍光の強度−時間信号(例えば図3(a)に示した波形A)のうち、最大強度から20%の範囲にあたる部分波形Csを抽出したものである。図6(b)に示すFFT波形Cfは、波形Cを高速フーリエ変換した周波数領域信号である。
図7(a)に示す波形Dは、図6に示す波形Cよりも高温の被検物50を測定した場合の蛍光の強度−時間信号から、強度80%〜100%の範囲の部分波形Dsを抽出したものである。図7(b)に示すFFT波形Dfは、波形Dを高速フーリエ変換した周波数領域信号である。
【0046】
図6(b)及び図7(b)に示すように、蛍光の強度−時間信号の一部(強度80%〜100%の範囲)のみを周波数領域信号に変換した場合でも、先の第1実施形態と同様に、複数の周波数成分に分離することができ、測定温度が変化すると、対応する周波数成分のシフト(f1→f1’、f2→f2’)が生じることが分かる。したがって、本実施形態においても、周波数領域信号における周波数変化量Δfを設定し、温度と周波数変化量Δfとの関係を表す検量線を予め求めておけば、第1実施形態と同様に、蛍光の強度−時間信号を周波数領域信号に変換して周波数変化量Δfを算出し、かかる周波数変化量Δfを用いて検量線を参照することにより温度を算出することができる。
【0047】
本実施形態の温度測定方法では、温度算出に必要な蛍光の強度−時間信号は、強度80%〜100%の範囲のみであるため、蛍光の測定時間を短縮することが可能になる。
従来の蛍光の減衰時間に基づいて温度を算出する方法では、蛍光が所定の強度に減衰するまでの間、蛍光の測定を継続しなければならなかった。例えば、図3(a)に示した波形Aを得るには、21秒間の蛍光測定が必要である。
これに対して本実施形態では、蛍光の測定動作を、蛍光の強度が最大となった後、強度80%に減衰する時刻までで打ち切ることができる。したがって、1回の温度測定に要する時間を大幅に短縮することができるので、一定期間内における温度測定可能回数を増やすことができる。これにより、速い温度変化に対する追従性を改善することができる。
【0048】
なお、図6(a)に示した波形Cは、図6(b)に示すFFT波形Cfを算出するために用いたものであり、実際の温度測定時の強度−時間信号の波形とは異なるものである。すなわち、波形Cでは、FFT波形Cfにおいてある程度の強度が得られるように、蛍光の強度−時間信号の最大強度から20%の範囲を切り出した部分波形Csを複数連ねて配置しているが、実際の測定では、1つの部分波形Csが高速フーリエ変換され、FFT波形Cfと同様の波形に変換される。
また、図7(a)の波形Dについても同様である。
【0049】
(第3の実施形態)
次に、温度計測方法の第3の実施形態について、図8から図10を参照して説明する。
第3の実施形態は、蛍光検出部12において得られる蛍光の強度−時間信号の一部のみを周波数領域信号に変換する点は第2実施形態と同様であるが、蛍光の強度−時間信号のうち一部の区間のみを利用する点で異なる。かかる温度測定方法は、制御部13の信号変換部14において、蛍光の強度−時間信号のうち一部の区間の時間領域信号のみを抽出して周波数領域信号に変換する構成とした蛍光温度計により実施することができる。
【0050】
図8及び図9は、蛍光の強度−時間信号のうち一部の区間のみを周波数領域信号の算出に用いる温度測定方法の説明図である。図10は、図8及び図9に示す周波数領域信号の差分信号を示す図である。
【0051】
図8(a)に示す波形Eは、蛍光検出部12において得られる蛍光の強度−時間信号(例えば図3(a)に示した波形A)のうち、強度0%から最大強度に達するまでの区間(立ち上がり区間)にあたる部分波形Esを抽出したものである。図8(b)に示すFFT波形Efは、波形Eを高速フーリエ変換した周波数領域信号である。
【0052】
図9(a)に示す波形Fは、蛍光検出部12において得られる蛍光の強度−時間信号のうち、最大強度に達した時点から強度0%となるまでの区間(立ち下がり区間)に当たる部分波形Fsを抽出したものである。図9(b)に示すFFT波形Ffは、波形Fを高速フーリエ変換した周波数領域信号である。
【0053】
図8(b)及び図9(b)に示すように、蛍光の強度−時間信号の一部区間(立ち上がり区間、立ち下がり区間)のみを周波数領域信号に変換した場合でも、先の第1実施形態と同様に、複数の周波数成分に分離することができる。そして、これらの周波数成分が測定温度が変化に応じてシフトすることは、上記実施形態からも明らかである。したがって、本例においても、周波数領域信号における周波数変化量Δfを設定し、温度と周波数変化量Δfとの関係を表す検量線を予め求めておけば、第1実施形態と同様に、蛍光の強度−時間信号を周波数領域信号に変換して周波数変化量Δfを算出し、かかる周波数変化量Δfを用いて検量線を参照することにより温度を算出することができる。
【0054】
上記したように、蛍光の強度−時間信号の一部区間のみを周波数領域信号に変換した場合でも周波数変化量Δfの計測により温度を算出することができる。したがって、例えば蛍光の強度−時間信号の立ち上がり区間のみの測定を行うようにすることで、第2実施形態と同様に、温度測定時間を短縮することができ、速い温度変化への追従性を向上させることが可能である。
【0055】
次に、図10に示す差分波形Gは、図8(b)に示すFFT波形Efと図9(b)に示すFFT波形Ffとの差分をプロットしたものである。このような差分波形Gは、制御部13の温度算出部15において、信号変換部14から入力される2つの周波数領域信号の演算処理を実行することで取得することができる。
【0056】
図10に示すように、差分波形Gは、蛍光の強度−時間信号の立ち上がり部分、立ち下がり部分の双方を反映した多くの情報を包含するものであり、周波数変化量Δfの設定方法も種々の形態を選択しうる。
【0057】
例えば、差分強度が正である周波数成分fg1、fg2、fg3のみ、あるいはこれらと基準周波数f0(例えば0.05Hz)を組み合わせて周波数変化量Δfを設定することができる。あるいは、差分強度が負である周波数成分fg4、fg5のみ、あるいはこれらと基準周波数f0(例えば0.05Hz)を組み合わせて周波数変化量Δfを設定することもできる。
【0058】
さらには、周波数成分fg1〜fg5のうち、差分強度の絶対値が大きいもの2つの差分を用いて周波数変化量Δfを設定することもできる。例えば、周波数成分fg4と周波数成分fg2の差(fg4−fg2)を用いて周波数変化量Δfを設定することができる。具体的には、温度が変化したときに周波数成分fg4、fg2がそれぞれfg4’、fg2’に変化したとすれば、Δf=((fg4’−fg2’)−(fg4−fg2))として算出することができる。
【0059】
上記したように、蛍光の強度−時間信号における立ち上がり区間と立ち下がり区間との差分波形Gでは、種々の形態で周波数変化量Δfを設定することが可能である。そして、先の図8及び図9に示した蛍光の強度−時間信号の一部区間のみを用いて周波数変化量Δfを計測する方法を含めた第3実施形態の温度測定方法によれば、蛍光体20の特性や測定温度範囲、温度変化速度に合わせて、周波数変化量Δfを計測するための範囲(蛍光の強度−時間信号における区間)の設定、周波数成分の設定、差分処理などの処理を行うことができる。これにより、より安定で精度が出せる条件の下で温度測定を行うことが可能となる。
【0060】
(第4の実施形態)
次に、温度計測方法の第4の実施形態について、図11から図16を参照して説明する。
第4の実施形態は、図1に示した蛍光温度計10の励起部11から蛍光体20に対して変調された励起光を照射し、蛍光体20から変調された蛍光を射出させる温度測定方法である。
【0061】
図11は、第4の実施形態における励起光と蛍光を示す図である。図11(a)には、変調された励起光と、この励起光の照射により蛍光体20から発せられる変調された蛍光(蛍光1、蛍光2)が示されている。図11(b)は、図11(a)に示す励起光、蛍光1及び蛍光2の強度−時間信号を高速フーリエ変換した周波数領域信号である。
【0062】
図11(a)に示す励起光は、周波数ft0の正弦波であり、蛍光体20に対する照射期間中に強度が周期的に変動する。このような励起光を蛍光体20に照射すると、蛍光体20から射出される蛍光は、蛍光体20に含まれる蛍光材料の特性にもよるが、励起光よりも若干長周期の正弦波(蛍光1、蛍光2)として観測される。
【0063】
なお、蛍光2は、蛍光1の条件よりも高温の被検物50を測定したときに蛍光体20から出力される蛍光である。また、ここでは励起光の照射を停止した後の蛍光の減衰については考慮していない。また、図11(a)では、励起光と蛍光1、蛍光2の位相及び周期のずれを示すために、励起光の振幅と、蛍光1、蛍光2の振幅を合わせて波形を重ねて表示している。
【0064】
そして、図11(a)に示す3つの強度−時間信号(励起光、蛍光1、蛍光2)を高速フーリエ変換により周波数領域信号に変換すると、図11(b)に示すように、それぞれの強度−時間信号は、単一の周波数成分に変換される。すなわち、それぞれの強度−時間信号が単一周波数の正弦波であるから、励起光は周波数成分ft0のみの周波数領域信号、蛍光1は周波数成分ft1のみの周波数領域信号、蛍光2は周波数成分ft2のみの周波数領域信号となる。
【0065】
なお、蛍光体20の応答性が低い場合や励起光の照射強度が大きすぎる場合には、励起光の変化と蛍光の変化とが線形的な関係とならず、計測される蛍光1、蛍光2の周波数領域信号に周波数成分ft1、ft2以外の高調波成分が含まれる。しかしこのような場合にも、強度の大きい主たる周波数成分はft1、ft2であるため、図11に示す例と同様に考えることができる。
【0066】
図11(b)に示すように、励起光の周波数ft0が最も高く、次いで、高温条件で測定された蛍光2の周波数ft2が高く、低温条件で測定された蛍光1の周波数ft1が最も低い。すなわち、測定温度の変化に応じて、対応する周波数成分のシフト(ft1→ft2)が生じる。
したがって、本実施形態においても、周波数領域信号における周波数成分ft1、ft2と、温度との関係を示す検量線を予め作成しておくことで、観測された蛍光の周波数成分から被検物50の温度を容易に取得することができる。
【0067】
また、周波数領域信号における周波数変化量Δfを設定し、この周波数変化量Δfと温度との関係を表す検量線を予め求めておくことで、測定した蛍光の強度−時間信号から周波数変化量Δfを算出し、かかる周波数変化量Δfを用いて検量線を参照することにより温度を算出することもできる。
【0068】
周波数変化量Δfの設定方法は、図11(b)に示すように、種々の形態を採用することができる。具体的には、周波数成分ft0、ft1、ft2の差又は平均を周波数変化量Δfとして設定することができる。すなわち、Δf=ft0−ft1、Δf=ft0−ft2、Δf=ft2−ft1、Δf=(ft0+ft1)/2、Δf=(f0+ft2)/2、などと設定することができる。
【0069】
上記のように周波数成分同士の差又は平均を周波数変化量Δfとして設定することで、ノイズや電源電圧変動等の外的擾乱要因がある場合でも、上記外的擾乱要因の影響をある程度排除することができる。したがって、外的擾乱要因が多い環境(プラズマ近傍、高電界環境、高磁界環境など)においても安定的に高精度の温度測定が可能である。
【0070】
[変形例]
以下、図12から図16により本実施形態の変形例について説明する。
上記実施形態では、励起光を正弦波の形状に変調して蛍光体20を励起する場合について説明したが、変調された励起光の波形としては、任意の形状のものを用いることができる。
【0071】
<第1変形例>
図12は、第1変形例に係る温度測定方法の説明図である。
図12(a)は、波形として、第1周波数ft0の第1正弦波と、第2周波数2ft0の第2正弦波(第1正弦波の2倍波)との合成波を用いたときの励起光の波形を示す図である。図12(b)は、図12(a)に示す強度−時間信号を高速フーリエ変換した周波数領域信号である。
【0072】
図12(b)に示すように、図12(a)に示す励起光の強度−時間信号を周波数領域信号に変換すると、周波数ft0、2ft0に対応する2つの周波数成分が現れる。このような励起光を蛍光体20に照射して蛍光を観測すると、蛍光の周波数領域信号において、励起光の周波数ft0、2ft0に対応する2つの周波数成分が現れる。
この場合、励起光の第1周波数ft0との差分や平均だけでなく、第2周波数2ft0と蛍光の周波数成分との差や平均を周波数変化量Δfとして設定することができる。あるいは、第1周波数ft0と蛍光の周波数成分との差(値a)と、第2周波数2ft0と蛍光の周波数成分との差(値b)との平均値(a+b)/2を周波数変化量Δfとして設定することもできる。
【0073】
このように、複数の正弦波の合成波を波形として用いることで、周波数変化量Δfの設定のバリエーションが増えるため、蛍光体20の特性や測定温度範囲、温度変化速度に合わせて、周波数変化量Δfの設定を変更し、最適化することができる。これにより、より安定で精度が出せる条件の下で温度測定を行うことが可能となる。
【0074】
なお、第1変形例では、第2正弦波として第1正弦波の2倍波を用いたが、第2正弦波として、3倍波や4倍波を用いてもよく、1.5倍波を用いてもよい。いずれの場合にも、周波数領域信号において上記と同様に周波数に応じたピークが得られるので、同様の作用効果を得ることができる。
【0075】
<第2変形例>
図13は、第2変形例に係る温度測定方法の説明図である。
図13(a)は、波形として三角波を用いたときの励起光の波形を示す図である。図13(b)は、図13(a)に示す強度−時間信号を高速フーリエ変換した周波数領域信号である。
【0076】
図13(b)に示すように、三角波で変調した励起光には、弱い高調波成分が含まれる。このような励起光を蛍光体20に照射して蛍光を観測し、蛍光の強度−時間信号を周波数領域信号に変換すると、上記の高調波成分に対応する周波数成分が観測される。
しかし、図13(b)に示すように、三角波の場合には主要周波数(図示では最低周波数の成分)の強度が、高調波成分と比較して突出して大きい。したがって、三角波の主要周波数にのみ着目すれば、先の第1実施例と同様に扱うことができる。
【0077】
<第3変形例>
第3変形例は、先の第1変形例と同様に、励起光の波形として、複数の周波数成分を含む波形を用いる場合の例である。すなわち、ある程度の強度を有する複数の周波数成分を含む波形の例である。以下、図14及び図15を参照しつつ説明する。
【0078】
図14及び図15は、第3変形例に係る温度測定方法の説明図である。
図14(a)は、波形としてランプ波を用いたときの励起光の波形を示す図である。図14(b)は、図14(a)に示す強度−時間信号を高速フーリエ変換した周波数領域信号である。
図15(a)は、波形として矩形波を用いたときの励起光の波形を示す図である。図15(b)は、図15(a)に示す強度−時間信号を高速フーリエ変換した周波数領域信号である。
【0079】
図14(b)及び図15(b)に示すように、ランプ波又は矩形波を波形として用いた場合、規則正しく配列された複数の周波数成分を得ることができる。また、図13(b)に示した三角波の場合と比較して、強度最大の周波数成分と他の周波数成分との強度差が小さくなる。
したがって、ランプ波又は矩形波を用いて励起光を変調することで、計測される蛍光においても複数の周波数成分を観測することができ、複数の周波数成分の組み合わせから適宜選択して周波数変化量Δfを設定することが可能である。よって、蛍光体20の特性や測定温度範囲、温度変化速度に合わせて、周波数変化量Δfの設定を変更し、最適化することができる。これにより、より安定で精度が出せる条件の下で温度測定を行うことが可能となる。
また本例は、第1変形例のような正弦波の合成処理が困難である場合に有効である。
【0080】
<第4変形例>
第4変形例は、第4実施形態の温度測定方法において、温度測定を繰り返す中で励起光の変調周波数を変更する温度測定方法である。
【0081】
図16は、第4変形例に係る温度測定方法における変調周波数の変位を示す説明図である。図16において、横軸は測定温度領域(℃)、縦軸は励起光の変調周波数(Hz)である。
【0082】
本例の温度測定方法では、図16に示すように、被検物50の温度が属する測定温度領域に応じて、励起光の変調周波数を切り替える。具体的には、被検物50の温度が、0℃以上t1℃以下の範囲に属する場合には、周波数ft0の正弦波で変調した励起光を蛍光体20に照射して蛍光の測定を行い、t1℃以上t2℃以下の範囲に属する場合には、周波数2ft0の正弦波で変調した励起光を蛍光体20に照射して蛍光の測定を行う。
【0083】
図11(a)に示したように、蛍光1の波形よりも蛍光2の波形の方が励起光の波形に近い。すなわち、測定温度が高いほど蛍光の周波数成分と励起光の周波数成分ft0との差が小さくなる。これは、温度が上昇すると蛍光体20の応答が速くなるためである。そして、励起光の周波数成分ft0と蛍光の周波数成分との差が小さくなると、相対的にばらつきが大きくなり、温度測定の精度が低下する。
【0084】
そこで、本例では、測定温度が一定温度以上となったときに、励起光の変調周波数をより高い周波数に変更する。これにより、励起光の変動に対する蛍光の追従が遅れるため、励起光の周波数ft0に対する蛍光の周波数成分との差が大きくなり、温度測定の精度を維持することができる。
【0085】
なお、本例では2種類の変調周波数を切り替えることとしたが、3種類以上の変調周波数を切り替えて用いることとしてもよい。また、変調周波数を切り替えるのではなく、波形の関数(正弦波、矩形波、三角波、ランプ波等の波形形状、あるいは、変調度などの変調パラメータ)を測定温度に応じて切り替えることとしてもよい。また、測定温度が高くなったときにより高い変調周波数に切り替えることとしたが、蛍光材料の物性や応答性、重要な測定温度範囲などを勘案して、測定温度が高くなったときに変調周波数を下げる場合もあり得る。
【0086】
(適用例)
図17は、上記各実施形態の蛍光温度計の一適用例であるプラズマ処理装置を示す図である。
プラズマ処理装置100は、真空チャンバー102と、下部電極103と、静電チャック装置104と、上部電極105とを有する。被処理物であるウェハWは静電チャック装置104上に載置される。ウェハWは、静電チャック装置104に備えられた図示略の内部電極への直流電圧印加による静電力により吸着固定される。
【0087】
上部電極105は、プラズマ処理装置100がプラズマエッチング装置である場合には、エッチングガスを供給する貫通孔が形成されたシャワープレート状に形成される。プラズマエッチング装置においては、下部電極103への高周波電圧の印加により上部電極105との間に活性なラジカルを発生させ、かかるラジカルをウェハW表面に作用させることでエッチング処理を行う。
またプラズマ処理装置100がスパッタ装置である場合には、上部電極105上に図示略のターゲットが取り付けられ、上部電極への直流電圧又は高周波電圧の印加により発生させたプラズマによりターゲットから成膜粒子を叩き出し、ウェハW上に堆積させる。
【0088】
プラズマ処理装置100において、下部電極103及び静電チャック装置104の一部には、装置外から通じる挿入孔108が形成されており、静電チャック装置104裏面の挿入孔108の突き当たり部分に、蛍光体20が設けられている。そして、装置外に配置された蛍光温度計10から延びる導光体107が挿入孔108に挿入され、導光体107の先端が蛍光体20に突き当てられている。
【0089】
蛍光温度計10は、図1に示した励起部11から射出される励起光を導光体107を介して蛍光体20に照射するとともに、蛍光体20から発せられる蛍光を導光体107を介して蛍光検出部12へ入射させ、蛍光の強度−時間信号を計測する。取得された蛍光の強度−時間信号は制御部13に入力される。制御部13は、先に記載のいずれかの実施形態の温度計測方法により温度を算出する。
以上の動作により、静電チャック装置104の表層部の温度を計測することができる。
【0090】
以上の構成を備えたプラズマ処理装置によれば、先に記載の各実施形態の蛍光温度計を備えていることで、ウェハWの温度を高精度に測定することができる。また、各実施形態の温度計測方法を適宜選択することにより、速い温度変化に対して良好に追従する温度測定や、ノイズや電源電圧変動の影響を受けにくい温度測定を実施することも可能である。
【0091】
上記では、先に記載の各実施形態の蛍光温度計をプラズマ処理装置に用いた場合について説明したが、かかる構成に限定されるものではなく、蛍光体を設置可能あれば任意の被検物に設置することが可能である。
特に、先の実施形態の蛍光温度計では、ノイズや電源電圧変動の影響を受けにくい温度測定が可能であるため、従来は温度測定が困難であった高電界環境や高磁界環境においても高精度の温度測定が可能である。例えば、変圧装置内部や発電機内部、避雷器などの温度計測や、MRI(核磁気共鳴画像法)測定環境における温度計測にも好適に用いることができる。
また、前述の各実施形態では照射光及び蛍光の変化時間を秒(s:SEC)の単位で例示したが、msやμsの変化時間等、異なる変化時間であってもよい。
【符号の説明】
【0092】
10…蛍光温度計、11…励起部(励起手段)、12…蛍光検出部(蛍光検出手段)、14…信号変換部(信号変換手段)、15…温度算出部(温度算出手段)、20…蛍光体、50…被検物、S11…蛍光検出ステップ、S12…信号変換ステップ、S13…温度算出ステップ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
強度変調された励起光を蛍光体に照射し前記蛍光体を励起する励起ステップと、
励起された蛍光体から発せられる蛍光を検出する蛍光検出ステップと、
前記蛍光検出ステップで検出された前記蛍光の強度−時間信号を、時間領域信号から周波数領域信号に変換する信号変換ステップと、
前記周波数領域信号における所定の周波数成分の変化量に基づいて前記蛍光体の温度を算出する温度算出ステップと、
を有することを特徴とする温度計測方法。
【請求項2】
前記温度算出ステップにおいて、2つの周波数成分の差分又は平均の変化量に基づいて前記蛍光体の温度を算出する、請求項1に記載の温度計測方法。
【請求項3】
前記温度算出ステップにおいて、前記励起光の周波数に対する前記周波数成分の変化量に基づいて前記蛍光体の温度を算出する、請求項1に記載の温度計測方法。
【請求項4】
前記温度算出ステップにおいて、強度が最大となる前記周波数成分の変化量に基づいて前記蛍光体の温度を算出する、請求項1に記載の温度計測方法。
【請求項5】
前記信号変換ステップにおいて、前記蛍光の強度−時間信号の一部のみを抽出して周波数領域信号に変換する、請求項1から4のいずれか1項に記載の温度計測方法。
【請求項6】
前記信号変換ステップにおいて、前記蛍光の強度−時間信号の複数の部分を抽出し、抽出した各々の信号成分を周波数領域信号に変換し、
前記温度算出ステップにおいて、各々の前記信号成分から得られた前記周波数領域信号の差分の変化量に基づいて前記蛍光体の温度を算出する、
請求項5に記載の温度計測方法。
【請求項7】
前記信号変換ステップにおいて、高速フーリエ変換により前記蛍光の強度−時間信号を変換する、請求項1から6のいずれか1項に記載の温度計測方法。
【請求項8】
前記励起ステップにおいて、単一周波数の波形に強度変調された励起光を前記蛍光体に照射する、請求項1に記載の温度計測方法。
【請求項9】
前記温度算出ステップにおいて、前記励起光の周波数成分と、前記蛍光の周波数成分との差分又は平均の変化量に基づいて前記蛍光体の温度を算出する、請求項8に記載の温度計測方法。
【請求項10】
前記励起ステップにおいて、第1周波数、及び前記第1周波数と異なる第2周波数を含む波形に強度変調された励起光を前記蛍光体に照射する、請求項1に記載の温度計測方法。
【請求項11】
前記温度算出ステップにおいて、前記第1周波数及び第2周波数と、前記蛍光の一又は複数の周波数成分との差分又は平均の変化量に基づいて前記蛍光体の温度を算出する、請求項10に記載の温度計測方法。
【請求項12】
前記励起ステップから前記温度算出ステップまでの一連の温度測定ステップを繰り返し実行するに際して、
第1の前記温度測定ステップと第2の前記温度測定ステップとの間で、前記励起ステップにおいて前記蛍光体に照射する励起光の変調態様を異ならせる、請求項8から11のいずれか1項に記載の温度計測方法。
【請求項13】
変調の周波数が異なる複数の励起光を用いる、請求項12に記載の温度計測方法。
【請求項14】
変調の関数が異なる複数の励起光を用いる、請求項12に記載の温度計測方法。
【請求項15】
第1の前記温度測定ステップと第2の前記温度測定ステップとの間に、当該温度計測方法による温度測定の状況に応じて前記複数の励起光の切替を行う励起光切替ステップを有する、請求項12から14のいずれか1項に記載の温度計測方法。
【請求項16】
強度変調された励起光を蛍光体に照射し前記蛍光体を励起する励起手段と、
蛍光体への光照射によって前記蛍光体から発せられる蛍光を検出する蛍光検出手段と、
前記蛍光検出手段で検出された前記蛍光の強度−時間信号を、時間領域信号から周波数領域信号に変換する信号変換手段と、
前記周波数領域信号における所定の周波数成分の変化量に基づいて前記蛍光体の温度を算出する温度算出手段と、
を有し、請求項1から15に記載のいずれかの方法で温度を算出することを特徴とする蛍光温度計。
【請求項17】
前記温度算出手段は、前記周波数領域信号を構成する2つの周波数成分の差分の変化量に基づいて前記蛍光体の温度を算出する、請求項16に記載の蛍光温度計。
【請求項1】
強度変調された励起光を蛍光体に照射し前記蛍光体を励起する励起ステップと、
励起された蛍光体から発せられる蛍光を検出する蛍光検出ステップと、
前記蛍光検出ステップで検出された前記蛍光の強度−時間信号を、時間領域信号から周波数領域信号に変換する信号変換ステップと、
前記周波数領域信号における所定の周波数成分の変化量に基づいて前記蛍光体の温度を算出する温度算出ステップと、
を有することを特徴とする温度計測方法。
【請求項2】
前記温度算出ステップにおいて、2つの周波数成分の差分又は平均の変化量に基づいて前記蛍光体の温度を算出する、請求項1に記載の温度計測方法。
【請求項3】
前記温度算出ステップにおいて、前記励起光の周波数に対する前記周波数成分の変化量に基づいて前記蛍光体の温度を算出する、請求項1に記載の温度計測方法。
【請求項4】
前記温度算出ステップにおいて、強度が最大となる前記周波数成分の変化量に基づいて前記蛍光体の温度を算出する、請求項1に記載の温度計測方法。
【請求項5】
前記信号変換ステップにおいて、前記蛍光の強度−時間信号の一部のみを抽出して周波数領域信号に変換する、請求項1から4のいずれか1項に記載の温度計測方法。
【請求項6】
前記信号変換ステップにおいて、前記蛍光の強度−時間信号の複数の部分を抽出し、抽出した各々の信号成分を周波数領域信号に変換し、
前記温度算出ステップにおいて、各々の前記信号成分から得られた前記周波数領域信号の差分の変化量に基づいて前記蛍光体の温度を算出する、
請求項5に記載の温度計測方法。
【請求項7】
前記信号変換ステップにおいて、高速フーリエ変換により前記蛍光の強度−時間信号を変換する、請求項1から6のいずれか1項に記載の温度計測方法。
【請求項8】
前記励起ステップにおいて、単一周波数の波形に強度変調された励起光を前記蛍光体に照射する、請求項1に記載の温度計測方法。
【請求項9】
前記温度算出ステップにおいて、前記励起光の周波数成分と、前記蛍光の周波数成分との差分又は平均の変化量に基づいて前記蛍光体の温度を算出する、請求項8に記載の温度計測方法。
【請求項10】
前記励起ステップにおいて、第1周波数、及び前記第1周波数と異なる第2周波数を含む波形に強度変調された励起光を前記蛍光体に照射する、請求項1に記載の温度計測方法。
【請求項11】
前記温度算出ステップにおいて、前記第1周波数及び第2周波数と、前記蛍光の一又は複数の周波数成分との差分又は平均の変化量に基づいて前記蛍光体の温度を算出する、請求項10に記載の温度計測方法。
【請求項12】
前記励起ステップから前記温度算出ステップまでの一連の温度測定ステップを繰り返し実行するに際して、
第1の前記温度測定ステップと第2の前記温度測定ステップとの間で、前記励起ステップにおいて前記蛍光体に照射する励起光の変調態様を異ならせる、請求項8から11のいずれか1項に記載の温度計測方法。
【請求項13】
変調の周波数が異なる複数の励起光を用いる、請求項12に記載の温度計測方法。
【請求項14】
変調の関数が異なる複数の励起光を用いる、請求項12に記載の温度計測方法。
【請求項15】
第1の前記温度測定ステップと第2の前記温度測定ステップとの間に、当該温度計測方法による温度測定の状況に応じて前記複数の励起光の切替を行う励起光切替ステップを有する、請求項12から14のいずれか1項に記載の温度計測方法。
【請求項16】
強度変調された励起光を蛍光体に照射し前記蛍光体を励起する励起手段と、
蛍光体への光照射によって前記蛍光体から発せられる蛍光を検出する蛍光検出手段と、
前記蛍光検出手段で検出された前記蛍光の強度−時間信号を、時間領域信号から周波数領域信号に変換する信号変換手段と、
前記周波数領域信号における所定の周波数成分の変化量に基づいて前記蛍光体の温度を算出する温度算出手段と、
を有し、請求項1から15に記載のいずれかの方法で温度を算出することを特徴とする蛍光温度計。
【請求項17】
前記温度算出手段は、前記周波数領域信号を構成する2つの周波数成分の差分の変化量に基づいて前記蛍光体の温度を算出する、請求項16に記載の蛍光温度計。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−211848(P2012−211848A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78026(P2011−78026)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(594199496)株式会社スミテック (2)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(594199496)株式会社スミテック (2)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]