説明

蛍光測定装置

【課題】装置を小型化・コンパクト化できるとともに極微量の検体液でも蛍光測定を行うことができ、検体液の前処理や廃液処理を簡便化させて前処理や廃液処理に係る工数を大幅に削減することができ、また簡単に洗浄することができ洗浄作業性に著しく優れ、さらに高エネルギーの励起光を入射させ、それに伴い高レベルの蛍光を得ることができ蛍光測定感度が高く測定精度の高い蛍光測定装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、検体液が注入される両端が開口した複数の細管5と、一端部に光源11が接続された励起光導波路8と、励起光導波路8の他端部に配設され細管5の外周面に近接され細管5の内側に焦点を合わせる集光レンズ16と、一端部が集光レンズ16の焦点近傍の細管5の外周面に近接された蛍光導波路9と、蛍光導波路9の他端部に接続された蛍光検出器13と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子生物学,医学,薬学,農学,生命科学,遺伝子工学等の分野で用いられる蛍光測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、分子生物学,医学,薬学,農学,生命科学,遺伝子工学等の多くの分野において、関連する酵素やタンパク質、遺伝子を含む検体液の検査や分析等のため、蛍光物質の蛍光を測定する蛍光測定装置が用いられている。このような分野においては、多種の検査や分析を同時に並行して行う必要があるため、一般的には、蛍光測定用マイクロプレートに形成された多数のウェルに検体液を注入し、プレートリーダ上でウェルの蛍光を同時並行で測定することにより高速測定を行う蛍光測定装置が用いられている。
しかし、このような蛍光測定装置では、装置内部にプレートリーダやマイクロプレートの機械的な移送装置を有するので、装置が大型化するとともに、摺動部分の磨耗や焼付等に起因する故障が多発するという問題があった。
そこで、プレートリーダやマイクロプレートの移送装置を除去することにより、摺動部分の磨耗や焼付等に起因する故障を少なくするための技術が開発された。
このような技術としては、例えば(特許文献1)に「複数の蛍光発光の場より光ファイバを用いて少数の光検知素子に導き、複数の励起光源を順番に測定に必要な時間点灯させながら、測定点を順次切換えることにより多点の蛍光を測定する蛍光検出法」が開示されている。
【特許文献1】特開平7−120393号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら上記従来の技術においては、以下のような課題を有していた。
(1)(特許文献1)の実施例に記載された装置は、検体液を注入する各々の試料容器が6mm×6mmの寸法を有しており、これが10個連なっているため、試料容器の占有面積が広く、装置を小型化・コンパクト化することができないという課題を有していた。
(2)検体液を注入する各々の試料容器が6mm×6mmの寸法を有しているため、極微量の検体液を試料容器に注入したのでは蛍光測定ができない。そのため、ミリリットル単位の検体液が必要となり、多量の検体液を用意しなければならないという課題を有していた。さらに、蛍光測定を終えた検体液の量も多くなるため、廃液処理作業が煩雑化するという課題を有していた。
(3)試料容器が角張っているため、測定後の試料容器を洗浄し難く、また試料容器が有底のため、装置から取り外して洗浄しなければならず、洗浄作業も煩雑化するという課題を有していた。
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、検体液を注入する容積や占有面積を狭くして小型化・コンパクト化させることができ、また極微量の検体液でも蛍光測定を行うことができ、検体液の前処理や廃液処理を簡便化させて前処理や廃液処理に係る工数を大幅に削減することができ、また簡単に洗浄することができ洗浄作業性に著しく優れ、さらに高エネルギーの励起光を入射させ、それに伴い高レベルの蛍光を得ることができ蛍光測定感度が高く測定精度の高い蛍光測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記従来の課題を解決するために本発明の蛍光測定装置は、以下の構成を有している。
本発明の請求項1に記載の蛍光測定装置は、検体液が注入される両端が開口した複数の細管と、一端部に光源が接続された励起光導波路と、前記励起光導波路の他端部に配設され前記細管の外周面に近接され前記細管の内側に焦点を合わせる集光レンズと、一端部が前記集光レンズの焦点近傍の前記細管の外周面に近接された蛍光導波路と、前記蛍光導波路の他端部に接続された蛍光検出器と、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)両端が開口した細管に検体液を注入し蛍光測定を行うので、細管を複数本連ねて配置しても広いスペースを必要としないため、装置を小型化・コンパクト化することができる。
(2)検体液を注入するのが細管なので極微量の検体液でも蛍光測定を行うことができ、検体液の前処理や廃液処理も簡便に行うことができる。
(3)細管の両端が開口しているため、蛍光測定を終えたときには一方の開口から他方の開口に向けて洗浄水を注入することで、細管内部の洗浄を行うことができる。また、装置から細管を取り外して洗浄した場合でも、細管の隅々まで簡単に洗浄することができ洗浄作業性に著しく優れる。
(4)励起光導波路の他端部に集光レンズが配設されているので、励起光導波路から導入される励起光が細管に入射するときに屈折して散乱してしまうのを防止して、細管の内側に励起光の焦点を合わせることができるため、高エネルギーの励起光を細管の内側に入射させることができ、それに伴い高レベルの蛍光を得ることができ、蛍光測定感度を高め測定精度を向上させることができる。
(5)細管にピペッターで検体液を注入する際に、ピペッタチップと細管との間の気密性が保たれていると、ピペッターから注入された検体液が細管内に留まるため、ピペッターを差し込んだままの状態で迅速に蛍光測定を行なうこともできる。
【0006】
ここで、細管としては、透明なガラス製、合成樹脂製等で形成されたものが用いられる。市販のガラス管を用いることもできる。安価なため好適である。
細管の内面の短手方向の断面形状としては、円形状や多角形状に形成されたものが用いられるが、内面が滑らかな円形状に形成されたものが好適である。注入された検体液を用意に洗浄できるからである。
細管の外径としては3〜5mm、内径としては1.5〜3mmが好適である。外径が5mmより太くなるにつれ占有スペースが広くなり装置が大型化する傾向がみられ、3mmより細くなるにつれ折れ易くなる傾向がみられるため、いずれも好ましくない。また、内径が1.5mmより細くなるにつれ、検体液の注入が困難になる傾向がみられるため、好ましくない。
【0007】
光源としては、LEDが好適に用いられる。温度特性が安定しており、また点灯後の光量変化が短時間に安定するからである。
集光レンズとしては、ボールレンズ、ドラムレンズ、ハーフドラムレンズ等、適宜選択して用いることができる。
集光レンズは、蛍光導波路の一端部にも配設するのが望ましい。蛍光の散乱を防止し、蛍光導波路に導く蛍光のエネルギーが低下するのを防止するためである。
【0008】
本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の蛍光測定装置であって、前記細管が挿入された細管挿入孔と、前記細管挿入孔と連通し前記励起光導波路の他端部が挿入された励起光導波路挿入孔と、前記細管挿入孔と連通し前記蛍光導波路の一端部が挿入された蛍光導波路挿入孔と、が形成された細管挿入ブロックを備えた構成を有している。
この構成により、請求項1で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)細管挿入ブロックに、細管、励起光導波路の他端部及び蛍光導波路の一端部が挿入され固定されているので、細管と集光レンズとの距離や、細管と蛍光導波管の一端部との距離を一定に保つことができ蛍光測定精度を一定に保つことができ、またユニット化できるため、装置の組立製造が容易で生産性に優れ、さらに装置の修理の際には細管挿入ブロックごと交換することができ修理作業性に優れる。
(2)細管挿入ブロックの少なくとも細管挿入孔の周囲に遮光性を付与することで、励起光や蛍光の迷光を抑制することができ、また隣り合う細管間で励起光や蛍光の干渉等が生じず蛍光測定精度を高めることができる。
【0009】
ここで、細管挿入ブロックは、合成樹脂製等で形成されたものが用いられる。着色剤を混合する等により遮光性を付与することができる。
また、細管が保持された細管挿入ブロックを縦方向や横方向に複数列設させることにより、細管をマトリックス状等に配置することができ、多種の検体液の蛍光測定を短時間で同時に行うこともできる。
【0010】
本発明の請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の蛍光測定装置であって、前記励起光導波路の他端部側と前記蛍光導波路の一端部側が結合された構成を有している。
この構成により、請求項1又は2で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)励起光導波路の他端部側と蛍光導波路の一端部側が結合されているので、細管に近接する励起光導波路と蛍光導波路を細径化させることができ、細管の周囲をコンパクト化できる。
(2)励起光導波路に配設された集光レンズを蛍光導波路で共用できるため、部品点数を減らすことができる。
【0011】
ここで、励起光導波路と蛍光導波路を結合する手段としては、励起光導波路と蛍光導波路を溶融し結合させる手段、方向性結合器を用いて光励起光導波路と蛍光導波路を結合させる手段等、適宜選択して用いることができる。
【0012】
本発明の請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の内いずれか1に記載の蛍光測定装置であって、前記細管の外周面を被覆した被覆層と、前記被覆層の所定部に形成され前記励起光導波路の他端部及び前記蛍光導波路の一端部が近接された貫通孔部と、を備えた構成を有している。
この構成により、請求項1乃至3の内いずれか1で得られる作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)細管の外周面を被覆した被覆層を備えているので、取り扱い中に細管が折れたり割れたりした場合でも、破片が手指に刺さったりして怪我をするのを防ぐことができる。
【0013】
ここで、被覆層としては、合成樹脂製で形成されたものが用いられる。黒色等に着色された被覆層を用いると、貫通孔部以外の部分が遮光され迷光を防止できるため好適である。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明の蛍光測定装置によれば、以下のような有利な効果が得られる。
請求項1に記載の発明によれば、
(1)両端が開口した細管に検体液を注入し蛍光測定を行うので、細管を複数本連ねて配置しても広いスペースを必要としないため、小型化・コンパクト化させた蛍光測定装置を提供できる。
(2)検体液を注入するのが細管なので極微量の検体液でも蛍光測定を行うことができ、検体液の前処理や廃液処理も簡便に行うことができ、前処理や廃液処理に係る工数を大幅に削減することができる蛍光測定装置を提供できる。
(3)細管の両端が開口しているため、細管の隅々まで簡単に洗浄することができ洗浄作業性に著しく優れた蛍光測定装置を提供できる。
(4)励起光導波路の他端部に集光レンズが配設されているので、励起光導波路から導入される励起光が細管に入射するときに屈折して散乱してしまうのを防止して、細管の内側に励起光の焦点を合わせることができるため、高エネルギーの励起光を細管の内側に入射させることができ、それに伴い高レベルの蛍光を得ることができ、蛍光測定感度を高め測定精度の高い蛍光測定装置を提供できる。
(5)細管にピペッターで検体液を注入する際に、ピペッタチップと細管との間の気密性が保たれていると、ピペッターから注入された検体液が細管内に留まるため、その状態で迅速に蛍光測定を行なうこともでき操作性に優れた蛍光測定装置を提供できる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加え、
(1)細管挿入ブロックに、細管、励起光導波路の他端部及び蛍光導波路の一端部が挿入され固定されているので、細管と集光レンズとの距離や、細管と蛍光導波管の一端部との距離を一定に保つことができ蛍光測定精度を一定に保つことができ、またユニット化できるため、装置の組立製造が容易で生産性に優れ、さらに装置の修理の際には細管挿入ブロックごと交換することができ修理作業性に優れた蛍光測定装置を提供できる。
(2)細管挿入ブロックの少なくとも細管挿入孔の周囲に遮光性を付与することで、励起光や蛍光の迷光を抑制することができ、また隣り合う細管間で励起光や蛍光の干渉等が生じず蛍光測定精度を高めることができる蛍光測定装置を提供できる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2の効果に加え、
(1)励起光導波路の他端部側と蛍光導波路の一端部側が結合されているので、細管に近接する励起光導波路と蛍光導波路を細径化させることができ、細管の周囲をコンパクト化でき小型でコンパクトな蛍光測定装置を提供できる。
(2)励起光導波路に配設された集光レンズを蛍光導波路で共用できるため、部品点数を減らすことができる蛍光測定装置を提供できる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、請求項1乃至3の内いずれか1の効果に加え、
(1)細管の外周面を被覆した被覆層を備えているので、取り扱い中に細管が折れたり割れたりした場合でも、破片が手指に刺さったりして怪我をするのを防ぐことができる蛍光測定装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は実施の形態1における蛍光測定装置の模式図であり、図2は励起光導波路と集光レンズの斜視図である。
図1において、1は本発明の実施の形態1における蛍光測定装置、2は黒色等に着色された遮光性を有する合成樹脂製で形成された細管挿入ブロック、3は細管挿入ブロック2の上面から下面に亘って一定間隔で略平行に穿孔された複数の細管挿入孔、4は細管挿入ブロック2の側面から細管挿入孔3に向かって略直交して穿孔され細管挿入孔2と連通した励起光導波路挿入孔、5は細管挿入孔2の各々に嵌挿されたガラス管等の細管である。本実施の形態においては、細管5は外径3〜5mm,内径1.5〜3mmの市販のガラス管を4〜6cm程度の長さに切断したものが用いられている。6は励起光導波路挿入孔4に嵌挿された導波路プラグ、7は光ファイバで形成され導波路プラグ6の内側に挿入された結合導波路、8は励起光が導かれる光ファイバで形成された励起光導波路、9は蛍光が導かれる光ファイバで形成された蛍光導波路である。本実施の形態においては、励起光導波路8の他端部側と蛍光導波路9の一端部側は結合されて結合導波路7を構成している。
10は励起光導波路8の一端部に接続され励起光の特定の波長を選択する励起光フィルタ、11は励起光フィルタ10に接続されたLEDからなる光源、12は蛍光導波路9の他端部に接続され励起光の波長とは異なる蛍光の特定の波長を選択する蛍光フィルタ、13は複数の蛍光フィルタ12に接続し検出した蛍光を電気信号に変換する蛍光検出器、14は光源11の点灯と蛍光検出器13の検出チャンネルを一定時間毎に切換えるとともに蛍光検出器13が変換した電気信号を処理する制御部、15は細管5の下部の開口に接続され測定を終えた検体液を排出する排出路、Pは一直線上に連設された複数の細管5の開口から各々の細管5に一度に検体液を注入するピペッターである。
【0019】
図2において、16は図示しない導波路プラグ6の内側に挿入された結合導波路7の先端部に配設されたボールレンズ等の集光レンズである。本実施の形態においては、励起光導波路8の他端部側と蛍光導波路9の一端部側は結合されて結合導波路7を構成しているため、結合導波路7の先端部に集光レンズ16が配設されていることは、励起光導波路8の他端部に集光レンズ16が配設されていることと同じである。そして、集光レンズ16は細管5の外周面に近接され細管5の内側に励起光の焦点を合わせている。
また、励起光導波路8の他端部側と蛍光導波路9の一端部側は結合されて結合導波路7を構成しているため、結合導波路7の先端部に集光レンズ16が配設されていることは、蛍光導波管9の一端部に集光レンズ16が配設されていることと同じである。そして、集光レンズ16は蛍光を蛍光導波路9の内側に集光するので、蛍光導波管9に導く蛍光のエネルギーが低下するのを防止する。
また、励起光導波路8の他端部側と蛍光導波路9の一端部側は結合されて結合導波路7を構成しているため、励起光導波路挿入孔4に導波路プラグ6が挿入され、導波路プラグ6の内側に結合導波路7が挿入されていることは、励起光導波路挿入孔4に励起光導波路8の他端部と蛍光導波路9の一端部が挿入されていることと同じである。従って、本実施の形態においては、励起光導波路挿入孔4は、蛍光導波路9の一端部が挿入された蛍光導波路挿入孔を兼ねている。
【0020】
以上のように構成された本発明の実施の形態1における蛍光測定装置について、以下その動作原理に基づく使用方法を説明する。
ピペッターPに吸い込んだ検体液を細管5の上部の開口から注入した後、蛍光測定装置1の図示しない電源スイッチを入れると、制御部14は光源11の一つを点灯させる。光源11から照射された励起光は励起光フィルタ10で特定の波長が選択され励起光導波管8に導かれる。励起光導波管8に導かれた励起光は、励起光導波路8と結合した結合導波路7に導かれ導波路プラグ6内に導かれる。励起光の一部は、結合導波路7と結合した蛍光導波路9にも導かれるが、蛍光フィルタ12でカットされるため、蛍光検出器13には導かれない。
導波路プラグ6内の結合導波路7に導かれた励起光は、集光レンズ16で集光され、細管5の内側の検体液に入射される。励起光は検体液に含まれる蛍光物質を励起し、蛍光物質は蛍光を放つ。蛍光は集光レンズ16で集光され、導波路プラグ6内の結合導波路7内に導かれる。結合導波路7に導かれた蛍光は蛍光導波路9に導かれて蛍光フィルタ12を通過し、蛍光検出器13に導かれる。蛍光検出器13は蛍光を電気信号に変換し、制御部14は変換された電気信号を処理する。
一定時間が経過したら、制御部14は点灯させていた光源11を消灯し、別の光源11を点灯させ、蛍光検出器13の検出チャンネルを切換えて、別の細管5に注入した検体液の蛍光測定を行う。これを繰り返すことで、複数の細管5に注入した検体液の蛍光測定を行うことができる。
測定を終えた検体液は、排出路15に配設された図示しないバルブを開弁することによって、細管5の下部の開口から排出することができる。
【0021】
以上のように、本発明の実施の形態1における蛍光測定装置は構成されているので、以下のような作用が得られる。
(1)両端が開口した細管5に検体液を注入し蛍光測定を行うので、細管5を複数本連ねて配置しても広いスペースを必要としないため、装置を小型化・コンパクト化することができる。
(2)検体液を注入するのが細管5なので極微量の検体液でも蛍光測定を行うことができ、検体液の前処理や廃液処理も簡便に行うことができる。
(3)細管5の内径が細いので、毛細管現象により検体液を細管5内に保持することができる。また、細管5の両端が開口しているため、蛍光測定を終えたときには一方の開口から他方の開口に向けて洗浄水を注入することで、細管内部の洗浄を行うことができる。また、装置から細管を取り外して洗浄した場合でも、細管の隅々まで簡単に洗浄することができ洗浄作業性に著しく優れる。
(4)励起光導波路8の他端部としての結合導波路7の先端部に集光レンズ16が配設されているので、励起光導波路8から導入される励起光が細管5に入射するときに屈折して散乱してしまうのを防止して、細管5の内側に励起光の焦点を合わせることができるため、高エネルギーの励起光を細管5の内側に入射させることができ、それに伴い高レベルの蛍光を得ることができ、蛍光測定感度を高め測定精度を向上させることができる。
(5)細管5に直接、ピペッターPで検体液を注入することができるとともに、ピペッタチップと細管5との間の気密性が保たれていると、ピペッターPで注入した検体液が細管5内に留まるため、この状態で蛍光測定を行なうこともできる。従って、検体液内の反応が一次反応であることを前提にすれば、制御部14が光源11の点灯と蛍光検出器13の検出チャンネルの切換えを短時間に行い、ピペッターPを細管5に差し込んだままの状態で反応速度を短時間に求められ、測定時間を著しく短縮できる。
(6)細管挿入ブロック2に、細管5、励起光導波路8の他端部及び蛍光導波路9の一端部が結合された結合導波路7と集光レンズ16が挿入され固定されているので、細管5と集光レンズ16との距離を一定に保つことができ蛍光測定精度を一定に保つことができ、また細管挿入ブロック2でユニット化されているので、装置の組立製造が容易で生産性に優れ、さらに装置の修理の際には細管挿入ブロック2ごと交換することができ修理作業性に優れる。
(7)細管挿入ブロック2が遮光性を有しているので、隣り合う細管5間で励起光や蛍光の干渉等が生じず、また迷光を抑制して蛍光測定精度を高めることができる。
(8)励起光導波路8の他端部側と蛍光導波路9の一端部側が結合されて結合導波路7を形成しているので、細管5に近接する結合導波路7を細径化させることができ、細管5の周囲をコンパクト化できる。
(9)励起光導波路8と蛍光導波路9を結合させた結合導波路7の先端部に集光レンズ16を配設することで、励起光と蛍光の集光を共用できるため、部品点数を減らすことができる。
(10)制御部14が、光源11の点灯と蛍光検出器13の検出チャンネルの切換えを行うので、唯一の蛍光検出器13により複数の細管5に注入した検体液の蛍光測定を行うことができ、光源11毎に蛍光検出器を配設する必要がなく部品点数を削減できる。
【0022】
(実施の形態2)
図3は実施の形態2における蛍光測定装置の細管の斜視図である。なお、実施の形態1と同様のものは、同じ符号を付して説明を省略する。
図中、5aは実施の形態2における細管、5bは透明なガラスや合成樹脂等で形成された細管5の外周面を被覆した合成樹脂製等の被覆層、5cは被覆層5bの所定部に形成され図示しない結合導波路7の先端部に配設された集光レンズ16が近接される貫通孔部である。
以上のように、本発明の実施の形態2における蛍光測定装置の細管は構成されているので、実施の形態1に記載した作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)細管5の外周面を被覆した被覆層5bを備えているので、取り扱い中に細管5が折れたり割れたりした場合でも、破片が手指に刺さったりして怪我をするのを防ぐことができる。
(2)黒色等に着色された被覆層5bを用いると、貫通孔部5c以外の部分が遮光され迷光を防止でき、蛍光測定精度を高めることができる。
【0023】
(実施の形態3)
図4は実施の形態3における蛍光測定装置の要部斜視図である。なお、実施の形態1で説明したものと同様のものは、同じ符号を付して説明を省略する。
図中、21は実施の形態3における蛍光測定装置、22は遮光性を有する黒色の合成樹脂製で形成された細管挿入ブロック、23は細管挿入ブロック22の上面から下面に亘って一定間隔で略平行に穿孔された複数の細管挿入孔、24は細管挿入ブロック22の側面から細管挿入孔23に向かって略直交して穿孔され細管挿入孔23と連通した励起光導波路挿入孔、25は励起光導波路挿入孔24が形成された細管挿入ブロック22の反対面から細管挿入孔23に向かって略直交して穿孔され細管挿入孔23及び励起光導波路挿入孔24と連通した蛍光導波路挿入孔、26は励起光導波路挿入孔24に嵌挿された励起光導波路プラグ、27は光ファイバで形成され励起光導波路プラグ26の内側に挿入された励起光導波路、28は蛍光導波路挿入孔25に嵌挿された蛍光導波路プラグ、29は光ファイバで形成され蛍光光導波路プラグ28の内側に挿入された蛍光光導波路である。なお、励起光導波路プラグ26の内側に挿入された励起光導波路27の先端部及び蛍光導波路プラグ28の内側に挿入された蛍光導波路28の先端部には、実施の形態1で説明したものと同様に、図示しない集光レンズが配設されている。
実施の形態3における蛍光測定装置の使用方法は、実施の形態1で説明したものと同様なので、説明を省略する。
【0024】
以上のように、本発明の実施の形態3における蛍光測定装置は構成されているので、実施の形態1に記載した作用(8)及び(9)は得られないが、励起光導波路27の他端部側と蛍光導波路29の一端部側を結合させて結合導波路を形成する必要がないため、製造が容易である。
【0025】
本実施の形態においては、励起光導波路27の他端部と蛍光導波路29の一端部が略同一線上に配置された場合について説明したが、これに限定するものではなく、蛍光導波路29の一端部は、励起光の焦点近傍の細管5の外周面に近接されていればよい。細管5内の検体液の蛍光を検出できるからである。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明は、分子生物学,医学,薬学,遺伝子工学等の分野で用いられる蛍光測定装置に関し、検体液を注入する容積が狭いため小型化・コンパクト化させることができ、また極微量の検体液でも蛍光測定を行うことができ、検体液の前処理や廃液処理を簡便化させて前処理や廃液処理に係る工数を大幅に削減することができ、また簡単に洗浄することができ洗浄作業性に著しく優れ、さらに高エネルギーの励起光を入射させ、それに伴い高レベルの蛍光を得ることができ蛍光測定感度が高く測定精度の高い蛍光測定装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施の形態1における蛍光測定装置の模式図
【図2】励起光導波路と集光レンズの斜視図
【図3】実施の形態2における蛍光測定装置の細管の斜視図
【図4】実施の形態3における蛍光測定装置の要部斜視図
【符号の説明】
【0028】
1 蛍光測定装置
2 細管挿入ブロック
3 細管挿入孔
4 励起光導波路挿入孔
5,5a 細管
5b 被覆層
5c 貫通孔部
6 導波路プラグ
7 結合導波路
8 励起光導波路
9 蛍光導波路
10 励起光フィルタ
11 光源
12 蛍光フィルタ
13 蛍光検出器
14 制御部
15 排出路
21 蛍光測定装置
22 細管挿入ブロック
23 細管挿入孔
24 励起光導波路挿入孔
25 蛍光導波路挿入孔
26 励起光導波路プラグ
27 励起光導波路
28 蛍光導波路プラグ
29 蛍光光導波路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体液が注入される両端が開口した複数の細管と、一端部に光源が接続された励起光導波路と、前記励起光導波路の他端部に配設され前記細管の外周面に近接され前記細管の内側に焦点を合わせる集光レンズと、一端部が前記集光レンズの焦点近傍の前記細管の外周面に近接された蛍光導波路と、前記蛍光導波路の他端部に接続された蛍光検出器と、を備えていることを特徴とする蛍光測定装置。
【請求項2】
前記細管が挿入された細管挿入孔と、前記細管挿入孔と連通し前記励起光導波路の他端部が挿入された励起光導波路挿入孔と、前記細管挿入孔と連通し前記蛍光導波路の一端部が挿入された蛍光導波路挿入孔と、が形成された細管挿入ブロックを備えていることを特徴とする請求項1に記載の蛍光測定装置。
【請求項3】
前記励起光導波路の他端部側と前記蛍光導波路の一端部側が結合されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の蛍光測定装置。
【請求項4】
前記細管の外周面を被覆した被覆層と、前記被覆層の所定部に形成され前記励起光導波路の他端部及び前記蛍光導波路の一端部が近接された貫通孔部と、を備えていることを特徴とする請求項1乃至3の内いずれか1に記載の蛍光測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−249663(P2008−249663A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−94830(P2007−94830)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(504174135)国立大学法人九州工業大学 (489)
【Fターム(参考)】