説明

蛍光物質担持体及びその製造方法、上記蛍光物質担持体を用いた発光ダイオード

【課題】基体に担持させる蛍光物質の量を増大させることができると共に、光の入射効率が高く、さらに、基体の一面全体から光を均一に出射することができる高輝度な蛍光物質担持体の実現。
【解決手段】繊維12間に多数の空隙16が形成された不織布で基体14を形成し、該基体14の一面を入光面19と成すと共に他面を出光面21と成した蛍光物質担持体10であって、上記繊維12の表面に、蛍光体18を担持させると共に、繊維12間の空隙16に、蛍光体18が添加された透光性の結合剤20を充填し、さらに、上記入光面19及び出光面21の両方の面から、多方向へ突出する繊維12を形成した蛍光物質担持体10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基体に蛍光体、蛍光ガラス等の蛍光物質を担持させて成る蛍光物質担持体及びその製造方法、上記蛍光物質担持体を用いた発光ダイオードに係り、特に、基体に担持させる蛍光物質の量を増大させることができると共に、光の入射効率が高く、さらに、基体の一面全体から光を均一に出射することができる高輝度な蛍光物質担持体及びその製造方法と、上記蛍光物質担持体を用いた高輝度な発光ダイオードに関する。
【背景技術】
【0002】
基体に蛍光体、蛍光ガラス等の蛍光物質を担持させて成る蛍光物質担持体として、本出願人は先に、特開2005−105423号を提案した。
図8乃至図10に示すように、この蛍光物質担持体70は、多数の繊維72絡み合ってシート状に形成された不織布より成る基体74と、上記不織布を構成する繊維72の表面に被着・担持された蛍光物質としての蛍光体76とから成る。
【0003】
多数の上記繊維72が絡み合ってシート状に形成された不織布は、繊維72間に多数の空隙78(図10参照)が形成されており、また、多数の繊維72が立体的に絡み合っているため、単位体積当たりの繊維72の表面積が極めて大きいものである。
【0004】
上記蛍光物質担持体70の基体74を形成する不織布の繊維72表面の蛍光体76に、紫外線等の光が照射されると、この光が所定波長の可視光等の光に波長変換されて放射されるのである。
而して、上記蛍光物質担持体70にあっては、多数の繊維72が立体的に絡み合って形成され、単位体積当たりの繊維72の表面積が極めて大きい不織布を構成する繊維72の表面に、蛍光体76を担持せしめたことから、基体74に担持する蛍光体76の量を飛躍的に増大させることができるのである。
【0005】
尚、本出願人は、特開2006−60099号において、上記蛍光物質担持体70を用いた発光ダイオードについても提案を行っている。
【特許文献1】特開2005−105423
【特許文献2】特開2006−60099
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
蛍光体76から放射される光の輝度は、蛍光体76の量に略比例することから、蛍光物質担持体70の輝度を向上させるためには、基体74に担持させる蛍光体76の量をできるだけ多くすることが必要である。
【0007】
出願人が提案した上記従来の蛍光物質担持体70は、単位体積当たりの繊維72の表面積が極めて大きい不織布を構成する繊維72の表面に蛍光体76を担持させることにより、基体74に担持する蛍光体76の量を飛躍的に増大させることができるものであるが、より一層、基体に担持させる蛍光物質の量を増大させることができる高輝度な蛍光物質担持体の実現が望まれていた。
【0008】
また、上記従来の蛍光物質担持体70は、シート状の基体74の表面及び裏面が平坦面であった。このため、例えば、基体74の裏面から光を入射させると共に、表面から出射させる場合において、基体74内部に入射する光の一部が基体74の裏面で反射されてしまい、光の入射効率が低かった。また、基体74内部の蛍光体76が偏って分布していると、基体74の表面全体から光を均一に出射させることができなかった。
【0009】
本発明は、上記要請に応えるためになされたものであり、その目的とするところは、基体に担持させる蛍光物質の量を増大させることができると共に、光の入射効率が高く、さらに、基体の一面全体から光を均一に出射することができる高輝度な蛍光物質担持体と、該蛍光物質担持体の製造方法を実現することにある。
また本発明は、上記蛍光物質担持体を用いた高輝度な発光ダイオードの実現を、他の目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明の請求項1に記載の蛍光物質担持体は、繊維間に多数の空隙が形成された繊維の集合体で基体を形成し、該基体の一面を入光面と成すと共に他面を出光面と成した蛍光物質担持体であって、上記繊維の表面に、蛍光物質を担持させると共に、繊維間の空隙に、蛍光物質が添加された透光性の結合剤を充填し、さらに、上記入光面又は出光面の少なくとも一方の面から、多方向へ突出する繊維を形成したことを特徴とする。
上記基体の入光面及び出光面の両方の面から、多方向へ突出する繊維を形成するのが好ましい。
【0011】
また、本発明の請求項3に記載の蛍光物質担持体は、請求項1又は2に記載の蛍光物質担持体における繊維の集合体として、多数の繊維が絡み合って形成された不織布を用いたことを特徴とするものである。
【0012】
本発明の請求項4に記載の発光ダイオードは、請求項1乃至請求項3の何れかに記載の蛍光物質担持体と、請求項1乃至請求項3の何れかに記載の蛍光物質担持体に担持された蛍光物質を励起する波長の光を発光する発光ダイオードチップとを備えたことを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項5に記載の蛍光物質担持体の製造方法は、請求項1に記載の蛍光物質担持体の製造方法であって、
繊維の集合体に蛍光物質が添加された液状の結合剤を含浸させる工程と、
上記繊維の集合体の少なくとも一面を加圧して圧縮変形させた後、変形部分を復元させることにより、繊維の集合体の少なくとも一面を荒らして、荒らした面から多方向へ突出する繊維を形成する工程と、
上記液状の結合剤を固化させる工程と、
を備えたことを特徴とする。
また、本発明の請求項6に記載の蛍光物質担持体の製造方法は、請求項5に記載の蛍光物質担持体の製造方法における繊維の集合体として、多数の繊維が絡み合って形成された不織布を用いたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の請求項1に記載の蛍光物質担持体は、単位体積当たりの繊維の表面積が大きい繊維の集合体で基体を形成し、上記繊維の表面に、蛍光物質を担持させると共に、繊維間の空隙にも、蛍光物質が添加された透光性の結合剤を充填したことから、従来の上記蛍光物質担持体70に比べて、基体に担持する蛍光物質の量を増大させることができ、高輝度な蛍光物質担持体を実現できる。
尚、繊維間の空隙に充填された結合剤は透光性を有しているため、蛍光物質で波長変換された光の透過性も良好である。
【0015】
また、蛍光物質担持体を構成する基体の入光面から多方向に突出する繊維を形成した場合には、突出した上記繊維で光を乱反射させて基体内部に入射させることができるので、光の入射効率が高い。
さらに、蛍光物質担持体を構成する基体の出光面から多方向に突出する繊維を形成した場合には、突出した上記繊維で光が拡散され、基体の出光面全体から光を均一に出射することができる。
【0016】
繊維の集合体として、多数の繊維が絡み合って形成された不織布を用いた場合には、単位体積当たりの繊維の表面積が極めて大きいことから、担持する蛍光物質の表面積を極めて大きく確保することができる。
【0017】
本発明の請求項4に記載の発光ダイオードは、基体に担持する蛍光物質の量を増大させた請求項1乃至請求項3の何れかに記載の蛍光物質担持体を用いたことから、高輝度な発光ダイオードを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面に基づき、本発明に係る蛍光物質担持体の実施形態を説明する。
図1及び図2は、本発明に係る蛍光物質担持体10を示すものであり、該蛍光物質担持体10は、多数の繊維12が絡み合ってシート状に形成された繊維の集合体としての不織布より成る基体14を有している。
上記基体14を形成する不織布は、繊維12間に多数の空隙16(図3参照)が形成されており、また、多数の繊維12が立体的に絡み合っているため、単位体積当たりの繊維12の表面積が極めて大きいものである。
尚、上記繊維12の繊維密度や、不織布の厚さ、目付等を適宜調整することにより、不織布を構成する繊維12の総表面積を任意に増減可能である。
【0019】
シート状の不織布で形成された基体14の一面は、後述する蛍光体18を励起する波長の光の入光面19と成されると共に、他面は、蛍光体18で波長変換された光の出光面21と成されており、これら入光面19及び出光面21から、不織布を構成する繊維12が多数突出している。入光面19及び出光面21から突出した繊維12の突出方向は一定ではなく、多方向に突出しており、突出した繊維12同士が絡み合ったりしている場合もある。
【0020】
不織布で形成された上記基体14に、蛍光体18を分散・添加した透光性の結合剤20を含浸することにより、不織布を構成する繊維12の表面に、結合剤20を介して蛍光体18を被着・担持させると共に、繊維12間の空隙16に、蛍光体18が添加された結合剤20を充填させて成る。
図3に示すように、繊維12間の全ての空隙16に結合剤20が充填されるものではなく、結合剤20が充填されない空隙16も存在している。尚、上記入光面19及び出光面21に近づくに従って結合剤20が充填されない空隙16の割合が多くなっていく(図2参照)。
また、図4に示すように、繊維12の表面に被着される蛍光体18の量は、空隙16に充填された結合剤20中の蛍光体18の量よりも多くなっており、さらに、空隙16に充填された結合剤20中の蛍光体18の分布状態は、繊維12に近づくに従って蛍光体18の量が多くなっている。
【0021】
上記透光性の結合剤20としては、例えば、シリコン樹脂等の有機材料、ゾルゲルガラス等の無機材料を使用することができる。
【0022】
上記蛍光体18は、紫外線や青色可視光等の光の照射を受けると、この光を所定波長の可視光等の光に波長変換するものであり、例えば以下の組成のものを用いることができる。
紫外線を赤色可視光に変換する赤色発光用の蛍光体18として、MS:Eu(Mは、La、Gd、Yの何れか1種)、0.5MgF・3.5MgO・GeO:Mn、2MgO・2LiO・Sb:Mn、Y(P,V)O4:Eu、YVO4:Eu、(Sr,Mg)3(PO4):Sn、Y:Eu、CaSiO:Pb,Mn等がある。
また、紫外線を緑色可視光に変換する緑色発光用の蛍光体18として、BaMgAl1627:Eu,Mn、ZnSiO4:Mn、(Ce,Tb,Mn)MgAl1119、LaPO4:Ce,Tb、(Ce,Tb)MgAl1119、YSiO:Ce,Tb、ZnS:Cu,Al、ZnS:Cu,Au,Al、(Zn,Cd)S:Cu,Al、SrAl:Eu、SrAl:Eu,Dy、SrAl1425:Eu,Dy、YAl12:Tb、Y(Al,Ga)12:Tb、YAl12:Ce、Y(Al,Ga)12:Ce等がある。
更に、紫外線を青色可視光に変換する青色発光用の蛍光体18として、(SrCaBa)(PO)Cl:Eu、BaMgAl1627:Eu、(Sr,Mg)7:Eu、Sr7:Eu、Sr:Sn、Sr(PO4Cl:Eu、BaMgAl1627:Eu、CaWO4、CaWO4:Pb、ZnS:Ag,Cl、ZnS:Ag,Al、(Sr,Ca,Mg)10(PO)Cl:Eu等がある。
また、青色可視光を発光するLEDチップを光源に用いて白色光を得る場合等において、LEDチップから放射される青色可視光を緑色可視光に変換する緑色発光用の蛍光体18として、Y(Al,Ga)12:Ce、SrGa:Eu、CaScSi12:Ce、α−SiAlON:Eu、β−SiAlON:Eu等がある。
さらに、青色可視光を発光するLEDチップを光源に用いた場合等において、LEDチップから放射される青色可視光を赤色可視光に変換する赤色発光用の蛍光体18として、(Sr,Ca)S:Eu、(Ca,Sr)Si:Eu、CaSiN:Eu、CaAlSiN:Eu等がある。
上記赤色発光用の蛍光体18、緑色発光用の蛍光体18、青色発光用の蛍光体18を適宜選択・混合して用いることで、種々の色の発色が可能である。
尚、上記蛍光体18は、有機、無機の蛍光染料や、有機、無機の蛍光顔料を含むものである。
【0023】
上記繊維12は、ナイロン、ポリエステル、アクリル、ポリプロピレン等の樹脂繊維、
レーヨン等のセルロース系の化学繊維、ガラス繊維、金属繊維等の短繊維から成り、その直径は5〜20μm、長さは0.5〜20mm程度であるが、長さが50〜100mm程度の長繊維から成る繊維12を用いることも勿論可能である。
尚、光の透過性の観点から、透光性材料で繊維12を構成するのが好ましい。
【0024】
上記蛍光物質担持体10を構成する基体14の入光面19から入射した紫外線や青色可視光等の光が、不織布の繊維12表面の蛍光体18、及び、繊維12間の空隙16に充填された結合剤20中の蛍光体18に照射されると、この光が所定波長の可視光等の光に波長変換され、出光面21から外部へ放射されるのである。
【0025】
而して、上記蛍光物質担持体10にあっては、多数の繊維12が立体的に絡み合って形成され、単位体積当たりの繊維12の表面積が極めて大きい不織布を構成する繊維12の表面に蛍光体18を担持させると共に、繊維12間の空隙16にも蛍光体18を添加した結合剤20を充填したことから、従来の上記蛍光物質担持体70に比べて、基体14に担持する蛍光体18の量を増大させることができ、高輝度な蛍光物質担持体を実現できる。
尚、繊維12間の空隙16に充填された結合剤20は透光性を有していると共に、結合剤20が充填されない空隙16も存在するために、蛍光体18で波長変換された光の透過性も良好である。
【0026】
また、本発明の蛍光物質担持体10は、基体14の入光面19から多方向に突出する繊維12を形成したことにより、突出した上記繊維12で光を乱反射させて基体14内部に入射させることができるので、光の入射効率が高い。
さらに、本発明の蛍光物質担持体10は、基体14の出光面21から多方向に突出する繊維12を形成したことにより、突出した上記繊維12で光が拡散され、基体14の出光面21全体から光を均一に出射することができる。
【0027】
上記においては、基体14の入光面19及び出光面21の両面に、多方向へ突出する繊維12を形成した場合について説明したが、基体14の入光面19又は出光面21の何れか一方にのみ、多方向へ突出する繊維12を形成しても良い。
【0028】
以下において、上記蛍光物質担持体10の基体14に蛍光体18を担持させる方法について説明する。
先ず、所定長さのシート状の不織布を準備すると共に、粒子状の蛍光体18が分散・添加された液状の結合剤20を液槽(図示せず)内に満たしておく。
【0029】
次に、上記不織布を、液槽内の結合剤20中に浸漬し、不織布に蛍光体18が分散・添加された液状の結合剤20を含浸させる。尚、結合剤20に分散・添加された蛍光体18は、液状の結合剤20中で移動するが、固体である繊維12に衝突して移動が妨げられる結果、上記の通り、繊維12表面に被着される蛍光体18の量は、空隙16に充填された結合剤20中の蛍光体18の量よりも多くなり、さらに、空隙16に充填された結合剤20中の蛍光体18の分布状態は、繊維12に近づくに従って蛍光体18の量が多くなる。
【0030】
次に、図5に示すように、不織布を垂直方向に移送しつつ、一対の加圧ロール22で不織布の両面を挟圧することにより、不織布を加圧して圧縮変形させた後、変形部分を復元させる。而して、上記不織布が圧縮変形する過程で所定量の結合剤20が不織布から絞り出されて除去されると共に、不織布の変形部分が復元する過程で空気が不織布内に流入することにより、繊維12間の空隙16に充填されていた結合剤20が空気と置換され、図3に示すように、結合剤20が充填されない空隙16が形成されるのである。
また、不織布を垂直方向に移送しつつ、一対の加圧ロール22で不織布を挟圧することにより、不織布の内方に結合剤20が集まるため、上記の通り、入光面19及び出光面21に近づくに従って結合剤20が充填されない空隙16の割合が多くなっていく。
さらに、一対の加圧ロール22で不織布の両面を挟圧することにより、不織布の両面が荒らされ、不織布の両面から多方向へ突出する繊維12が形成される。
結合剤20中の蛍光体18の分散量、不織布の加圧力等の条件により、結合剤20が充填されない空隙16の割合(空隙率=不織布の体積に対する結合剤20が充填されない空隙16の体積の割合)が変化し、不織布の蛍光体担持量も変化する。
【0031】
その後、不織布を所定温度で所定時間加熱して、液状の結合剤20を固化させる。
例えば、結合剤20が熱硬化性樹脂であるシリコン樹脂の場合には、80〜150℃で2〜4時間加熱する。
また、結合剤20が液状のゾルゲルガラス材料の場合には、80〜120℃で0.5〜1時間加熱することにより、ゾルゲルガラス材料を加水分解、重合反応させて固体であるゾルゲルガラスを形成する。
上記ゾルゲルガラスは、金属アルコキシドや金属アセチルアセトネート、金属カルボキシレート等の金属有機化合物を出発物質として、その加水分解、重合反応を利用して合成されるものであり、溶液状態から出発するため、任意の形状のガラスに成形容易である。
上記ゾルゲルガラス材料は、一般式M(OR)n(M:金属元素、R:アルキル基、n:金属の酸化数)の金属有機化合物、水(加水分解のため)、溶媒としてメタノール、DMF(ヂメチルフォルムアミド)、加水分解・重合反応の調整剤としてアンモニアで構成することができ、このゾルゲルガラス材料を加水分解、重合反応させることにより、ゲル化し、硬いガラス状の無機質膜形成が生じてゾルゲルガラスが形成されるのである。
結合剤20を固化した後、不織布を所定形状にカットすることにより、上記蛍光物質担持体10が完成するのである。
【0032】
尚、蛍光物質担持体10を構成する基体14の入光面19又は出光面21の何れか一方にのみ、多方向へ突出する繊維12を形成する場合は、図6に示すように、不織布を水平方向に移送しつつ、加圧ロール22で不織布の一面だけを加圧することにより、不織布の一面側を圧縮変形させた後、変形部分を復元させれば良い。この結果、不織布の一面だけが荒らされ、不織布の一面から多方向へ突出する繊維12が形成されるのである。
【0033】
上記においては、結合剤20が充填されない空隙16も存在する場合を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、不織布を構成する繊維12間の全ての空隙16に結合剤20が充填されるようにしても良い。この場合も上記した通り、繊維12間の空隙16に充填される結合剤20は透光性を有しているため、蛍光体18で波長変換された光の透過性は良好である。
尚、不織布を構成する繊維12間の全ての空隙16に結合剤20を充填する場合には、不織布を液槽内の結合剤20中に浸漬した状態で真空雰囲気中に導入して脱気処理を行い、繊維12間の空隙16内の空気と結合剤20とを置換させれば良い。
【0034】
また、上記において繊維の集合体として、不織布を用いた場合を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、多数の繊維を織り込んで形成した織布を用い、該織布を構成する繊維に蛍光体を担持させても良い。この織布も、不織布には及ばないものの、単位体積当たりの繊維の表面積が大きいものである。
【0035】
図7は、上記蛍光物質担持体10を用いた発光ダイオード(LED)40を示すものである。該LED40は、樹脂等の絶縁材料より成り、孔42が形成された略リング状の枠体44と、第1のリードフレーム46及び第2のリードフレーム48を有している。
第1のリードフレーム46は、上記枠体44の底面44aの略全面を覆う先端部46aと、枠体44を貫通して外方へ向かって水平方向に取り出される後端部46bを有している。第1のリードフレーム46の先端部46aの一部は上記孔42内に露出しており、該孔42内に露出した第1のリードフレーム46の先端部46aに、LEDチップ50をダイボンドすることにより、第1のリードフレーム46とLEDチップ50底面の一方の電極(図示せず)とを電気的に接続している。
【0036】
また、第2のリードフレーム48は、上記枠体44を貫通して孔42内に露出する先端部48aと、枠体44の外方へ向かって水平方向に取り出されている後端部48bを有しており、第2のリードフレーム48の先端部48aと、上記LEDチップ50上面の他方の電極(図示せず)とをボンディングワイヤ52を介して電気的に接続して成る。
上記LEDチップ50は、電圧が印加されると、蛍光物質担持体10及び第2の蛍光物質担持体30に担持された蛍光体18を励起する波長の光を発光し、例えば、窒化ガリウム系半導体結晶で構成されている。
【0037】
上記第1のリードフレーム46の先端部46aと、第2のリードフレーム48の先端部48aは、上下方向に所定の間隙を設けて対向配置されることにより、相互に絶縁されている。
而して、本発明のLED40にあっては、第1のリードフレーム46の先端部46aと、第2のリードフレーム48の先端部48aを同一平面上に配置せず、上下方向に所定の間隙を設けて対向配置したことにより、第1のリードフレーム46の先端部46aで枠体44の底面44aの略全面を覆っても、第1のリードフレーム46と第2のリードフレーム48間の絶縁性を確保できるのである。
【0038】
また、上記枠体44の孔42内には、シリコン樹脂等より成る透光性のコーティング材54を充填してLEDチップ50を封止して成る。
さらに、上記枠体44の上端には、段部56が形成されており、該段部56上に上記蛍光物質担持体10を、その入光面19がLEDチップ50と対向するように載置している。この結果、上記LEDチップ50の上方に、第1の蛍光物質担持体10が配置されることとなる。
尚、蛍光物質担持体10とコーティング材54との間には、所定距離の空間58が介在している。
【0039】
而して、上記第1のリードフレーム46及び第2のリードフレーム48を介してLEDチップ50に電圧が印加されると、LEDチップ50が発光して、上記蛍光体18を励起させる波長の紫外線や青色可視光等の光が放射される。
LEDチップ50から放射された光は、蛍光物質担持体10を構成する基体14の入光面19から基体14内部に入射し、不織布の繊維12表面の蛍光体18、及び、繊維12間の空隙16に充填された結合剤20中の蛍光体18に照射されると、この光が所定波長の可視光等の光に波長変換され、基体14の出光面21から外部へ放射されるのである。
【0040】
而して、本発明の発光ダイオード40にあっては、単位体積当たりの繊維12の表面積が極めて大きい不織布を構成する繊維12の表面に蛍光体18を担持させると共に、繊維12間の空隙16にも蛍光体18を添加した結合剤20を充填したことにより、基体14に担持する蛍光体18の量を増大させた上記蛍光物質担持体10を用いたことから、高輝度な発光ダイオード40を実現できる。
【0041】
尚、図1乃至図7は模式図であり、説明の便宜上、本発明の特徴点を強調して表現しており、例えば、基体14の入光面19及び出光面21から突出する繊維12の突出長を強調して表現している。
【0042】
蛍光物質としては、上記した蛍光体18だけでなく、蛍光ガラスや蛍光樹脂等、紫外線や青色可視光等の光の照射を受けた場合に、この光を所定波長の可視光等の光に波長変換する全ての物質を含むものである。
蛍光ガラスは、ガラス材料に蛍光材料を添加して形成される透明体であり、また、蛍光樹脂は、エポキシ樹脂等の樹脂材料に蛍光材料を添加して形成される透明体である。これら蛍光ガラスや蛍光樹脂を粒子状と成し、第1の蛍光物質担持体10及び第2の蛍光物質担持体30の基体14,32に担持させれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る蛍光物質担持体を模式的に示す斜視図である。
【図2】本発明に係る蛍光物質担持体を模式的に示す部分拡大図である。
【図3】本発明に係る蛍光物質担持体を模式的に示す要部拡大図である。
【図4】本発明に係る蛍光物質担持体を模式的に示す要部断面図である。
【図5】本発明に係る蛍光物質担持体の製造方法を示す説明図である。
【図6】本発明に係る蛍光物質担持体の製造方法を示す説明図である。
【図7】本発明に係る発光ダイオードを模式的に示す断面図である。
【図8】従来の蛍光物質担持体を模式的に示す斜視図である。
【図9】従来の蛍光物質担持体を模式的に示す部分拡大図である。
【図10】従来の蛍光物質担持体を構成する繊維を模式的に示す拡大図である。
【符号の説明】
【0044】
10 蛍光物質担持体
12 繊維
14 基体
16 空隙
18 蛍光体
19 入光面
20 結合剤
21 出光面
22 加圧ロール
40 発光ダイオード
42 孔
44 枠体
46 第1のリードフレーム
48 第2のリードフレーム
50 LEDチップ
54 コーティング材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維間に多数の空隙が形成された繊維の集合体で基体を形成し、該基体の一面を入光面と成すと共に他面を出光面と成した蛍光物質担持体であって、上記繊維の表面に、蛍光物質を担持させると共に、繊維間の空隙に、蛍光物質が添加された透光性の結合剤を充填し、さらに、上記入光面又は出光面の少なくとも一方の面から、多方向へ突出する繊維を形成したことを特徴とする蛍光物質担持体。
【請求項2】
上記基体の入光面及び出光面の両方の面から、多方向へ突出する繊維を形成したことを特徴とする請求項1に記載の蛍光物質担持体。
【請求項3】
上記繊維の集合体が、多数の繊維が絡み合って形成された不織布であることを特徴とする請求項1又は2に記載の蛍光物質担持体。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れかに記載の蛍光物質担持体と、請求項1乃至請求項3の何れかに記載の蛍光物質担持体に担持された蛍光物質を励起する波長の光を発光する発光ダイオードチップとを備えたことを特徴とする発光ダイオード。
【請求項5】
請求項1に記載の蛍光物質担持体の製造方法であって、
繊維の集合体に蛍光物質が添加された液状の結合剤を含浸させる工程と、
上記繊維の集合体の少なくとも一面を加圧して圧縮変形させた後、変形部分を復元させることにより、繊維の集合体の少なくとも一面を荒らして、荒らした面から多方向へ突出する繊維を形成する工程と、
上記液状の結合剤を固化させる工程と、
を備えたことを特徴とする蛍光物質担持体の製造方法。
【請求項6】
上記繊維の集合体が、多数の繊維が絡み合って形成された不織布であることを特徴とする請求項5に記載の蛍光物質担持体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−84403(P2009−84403A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−255287(P2007−255287)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【出願人】(000122690)岡谷電機産業株式会社 (135)
【Fターム(参考)】