蛍光顕微鏡装置
【課題】装置全体を小型化し、試料から発生する微弱な蛍光への外光の混入を防止して鮮明な蛍光画像を得る。
【解決手段】試料Aを搭載するステージ101と、試料Aからの蛍光を集光する対物レンズ15と、ステージ101と対物レンズ15とを相対的に移動させる移動機構102と、対物レンズ15に固定された第1のカバー部材103と、ステージ101側に設けられ、第1のカバー部材103とともに対物レンズ15先端15aおよびステージ101上の空間Sを覆う第2のカバー部材101と、これら第1、第2のカバー部材101,103の相対移動を許容しかつ両カバー部材101,103の隙間からの光の漏れを防止する遮光手段とを備える蛍光顕微鏡装置100を提供する。
【解決手段】試料Aを搭載するステージ101と、試料Aからの蛍光を集光する対物レンズ15と、ステージ101と対物レンズ15とを相対的に移動させる移動機構102と、対物レンズ15に固定された第1のカバー部材103と、ステージ101側に設けられ、第1のカバー部材103とともに対物レンズ15先端15aおよびステージ101上の空間Sを覆う第2のカバー部材101と、これら第1、第2のカバー部材101,103の相対移動を許容しかつ両カバー部材101,103の隙間からの光の漏れを防止する遮光手段とを備える蛍光顕微鏡装置100を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体組織等の試料を蛍光観察するための蛍光顕微鏡装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ光のような励起光を試料に照射して、試料から発生する液光を観察する蛍光観察装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
この蛍光観察装置は、試料から発生する微弱な蛍光に外光が混入して鮮明な蛍光画像を得ることが困難になるという不都合を防止するために、その全体が蛍光観察用暗箱装置によって覆われている。
【0003】
【特許文献1】特開2006−71544号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された蛍光観察用暗箱装置は、蛍光観察装置全体を覆うものであるため、装置が大型化してしまう不都合がある。特に、顕微鏡本体を小型化して、角度変更可能に構成され、試料に対して任意の方向から対物レンズを近接させることができる顕微鏡装置においては、折角顕微鏡本体を小型化していても、顕微鏡本体の可動範囲全体を覆うような大きさの蛍光観察用暗箱装置が必要となり、装置全体の小型化を図ることができないという不都合がある。
【0005】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、装置全体を小型化し、試料から発生する微弱な蛍光への外光の混入を防止して鮮明な蛍光画像を得ることができる蛍光顕微鏡装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、試料を搭載するステージと、試料からの蛍光を集光する対物レンズと、前記ステージと前記対物レンズとを相対的に移動させる移動機構と、前記対物レンズに固定された第1のカバー部材と、前記ステージ側に設けられ、前記第1のカバー部材とともに前記対物レンズ先端および前記ステージ上の空間を覆う第2のカバー部材と、これら第1、第2のカバー部材の相対移動を許容しかつ両カバー部材の隙間からの光の漏れを防止する遮光手段とを備える蛍光顕微鏡装置を提供する。
【0007】
本発明によれば、ステージに試料を搭載し、移動機構を作動させて対物レンズとステージとを相対的に移動させることにより、対物レンズを試料の所望の観察対象部位に対向させ、試料から発生する蛍光を集光することができる。この場合において、対物レンズ側に固定された第1のカバー部材と、ステージ側に設けられた第2のカバー部材とが組み合わせられることにより、対物レンズの先端を含むステージ上の空間が覆われる。
【0008】
第1、第2のカバー部材間に設けられた遮光手段は、対物レンズとステージとが相対的に移動させられることにより第1のカバー部材と第2のカバー部材とが相対移動させられても、両者間の隙間からの光の漏れを防止する。したがって、試料から発せられる微弱な蛍光に混入する外光を大幅に低減し、鮮明な蛍光観察を行うことが可能となる。
【0009】
上記発明においては、前記遮光手段が、前記第1のカバー部材と第2のカバー部材とを相対移動方向に直交する方向に微小隙間をあけて、相対移動方向に重複させることにより構成されていることとしてもよい。
このようにすることで、対物レンズとステージとが相対的に移動させられることにより第1のカバー部材と第2のカバー部材との間に相対移動が発生しても、遮光手段が、第1のカバー部材と第2のカバー部材との微小隙間を維持し、かつ、相対移動方向に重複させる。これにより、ステージ上の試料に対する対物レンズの相対位置にかかわらず、外光が直接的に第1,第2のカバー部材により囲われた空間内に入射することを簡易に防止して、鮮明な蛍光観察を行うことが可能となる。
【0010】
また、上記発明においては、前記遮光手段が、第1のカバー部材と第2のカバー部材とを接続する蛇腹部材からなることとしてもよい。
このようにすることで、対物レンズとステージとが相対的に移動させられることにより第1のカバー部材と第2のカバー部材との間に相対移動が発生しても、蛇腹部材からなる遮光手段が弾性変形させられて、ステージ上の試料に対する対物レンズの相対位置にかかわらず、第1,第2のカバー部材により囲われた空間内に外光が入射することをより確実に防止して、鮮明な蛍光観察を行うことが可能となる。
【0011】
また、上記発明においては、前記第2のカバー部材が、前記ステージの一部により構成されていることとしてもよい。
このようにすることで、部品点数を削減することができる。
【0012】
また、上記発明においては、前記試料に対する対物レンズの角度を変更させる角度変更機構を備え、前記遮光手段が、前記角度変更機構による試料に対する対物レンズの角度の変更にかかわらず、第1のカバー部材と第2のカバー部材との隙間をほぼ一定に維持することとしてもよい。
このようにすることで、対物レンズが試料に対して角度変更させられることにより第1のカバー部材と第2のカバー部材との間に相対移動が発生しても、遮光手段が、第1のカバー部材と第2のカバー部材との隙間を維持するので、外光が直接的に第1,第2のカバー部材により囲われた空間内に入射することを簡易に防止して、鮮明な蛍光観察を行うことが可能となる。
【0013】
また、上記発明においては、前記角度変更機構が、ステージに対して試料を角度変更可能に支持する試料支持機構により構成されていることとしてもよい。
このようにすることで、試料に対する対物レンズの角度を簡易に変更することができる。
【0014】
また、上記発明においては、前記移動機構が、前記ステージに対する対物レンズの角度を変更させるよう両者を相対的に移動させることとしてもよい。
このようにすることで、移動機構の作動により、ステージに対する対物レンズの相対角度を変化させ、ステージ上の試料を種々の角度から観察することができる。この場合においても、遮光部材は、第1のカバー部材と第2のカバー部材との微小隙間を維持し、かつ、相対移動方向に重複させる。これにより、ステージ上の試料に対する対物レンズの相対角度にかかわらず、外光が直接的に第1,第2のカバー部材により囲われた空間内に入射することを簡易に防止して、鮮明な蛍光観察を行うことが可能となる。
【0015】
また、上記発明においては、前記移動機構が、所定の軸線回りに対物レンズを揺動させ、前記遮光手段が、前記第1のカバー部材および第2のカバー部材を前記軸線を中心とした回転体形状とすることにより構成されていることとしてもよい。
このようにすることで、移動機構の作動により、ステージに対して所定の軸線回りに対物レンズを揺動させても、該軸線を中心とした回転体形状をした第1、第2のカバー部材の微小隙間が維持される。これにより、ステージ上の試料に対する対物レンズの相対角度にかかわらず、外光が直接的に第1,第2のカバー部材により囲われた空間内に入射することを簡易に防止して、鮮明な蛍光観察を行うことが可能となる。
【0016】
また、上記発明においては、ステージに対して試料を角度変更可能に支持する試料支持機構を備えることとしてもよい。
このようにすることで、移動機構によってステージに対する対物レンズの相対角度を変化させなくても、試料支持機構の作動により、ステージに対する試料の角度を変化させることができる。その結果、移動機構および遮光部材を簡易な構造にすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、装置全体を小型化し、試料から発生する微弱な蛍光への外光の混入を防止して鮮明な蛍光画像を得ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係る蛍光顕微鏡装置100について、図1を参照して説明する。
本実施形態に係る蛍光顕微鏡装置100は、マウス等の実験動物のような生体を試料として、その内部を観察するのに適した装置である。
【0019】
本実施形態に係る蛍光顕微鏡装置100は、図1に示されるように、試料を搭載するステージ101と、対物レンズユニット15を備える顕微鏡本体1と、該顕微鏡本体1をその光軸に沿う方向に移動させる移動機構102と、顕微鏡本体1に固定されたカバー部材(第1のカバー部材)103とを備えている。
【0020】
前記移動機構102は、鉛直方向に沿って設けられた支柱104と、該支柱に沿って上下方向に移動可能に設けられ、前記顕微鏡本体1を固定するスライダ105とを備えている。スライダ105を上下方向(Z方向)に移動させることで、顕微鏡本体1を上下動させ、ステージ101上に固定されている試料Aに対して、対物レンズユニット15の先端15aを光軸方向に近接、離間させることができるようになっている。
【0021】
前記カバー部材103は、顕微鏡本体1の対物レンズユニット15に取り付けねじ近傍に固定されている。カバー部材103は、対物レンズユニット15の先端15aを含む空間Sを覆う箱状に形成されているとともに、その下端が、水平方向に張り出したステージ101の下方に回り込んで、ステージ101のベース101aに水平方向に微小隙間を空けて配置されている。
【0022】
前記ステージ101は、前記ベース101aの上方に、水平2方向(X方向およびY方向)に移動可能な可動部101X,101Yを備えており、該可動部101X,101Yの上面に設けられた固定具106により試料Aをステージ101に固定した状態に搭載することができる。したがって、ステージ101の可動部101X,101Yを駆動して、カバー部材103の内部空間Sにおいて試料Aを水平2方向に移動させ、移動機構102を作動させて顕微鏡本体1を鉛直方向に移動させることにより、対物レンズユニット15の先端15aを、試料Aの所望の観察対象部位に対向配置させることができるようになっている。
【0023】
また、カバー部材103の内部には、明視野観察用の照明装置107が配置されている。
また、カバー部材103の下端は、移動機構102による顕微鏡本体1の動作範囲内において、対物レンズユニット15の先端15aがステージ101に突き当たる前に、ステージ101のベース101aに突き当たる位置に配置されている。これにより、ストッパが形成され、対物レンズユニット15の先端15aがステージ101に突き当たることによる対物レンズユニット15の破損を防止することができるようになっている。
【0024】
ここで、本実施形態における顕微鏡本体1について、以下に詳細に説明する。
顕微鏡本体1は、装置本体2と、該装置本体2に光軸C方向に移動可能に備えられた対物レンズ装着部3、該対物レンズ装着部3に装着された対物レンズユニット15と、装置本体2と対物レンズ装着部3との間に配置された付勢手段4とを備えている。
【0025】
装置本体2は、本体ケース5と、該本体ケース5に固定されたコリメートユニット6と、該コリメートユニット6によって平行光にされた光を2次元的に走査する光走査部7と、該光走査部7により走査された光を集光して中間像を結像させる瞳投影レンズユニット8と、中間像を結像した光を集光して平行光にする結像レンズユニット9とを備えている。
【0026】
コリメートユニット6には、図示しない光源からの光を導く光ファイバ10の先端がコネクタ11によって固定されている。コネクタ11はコリメートユニット6に、光軸に対して若干傾斜して斜めに固定されている。これにより、光ファイバ10の出射端面10aを、長さ方向に対して斜めに形成し、該出射端面10aにおける光ファイバ10内の反射光が、光源側に設けられている光検出器(図示略)に戻ることを防止するように構成されている。光ファイバ10の出射端面10aから出射された光は、コリメートユニット6のレンズ6Aを通過することによって集光され、平行光に変換されるようになっている。
【0027】
光走査部7は、例えば、直交する2つの軸線回りにそれぞれ揺動可能に支持された2枚のガルバノミラー(図示略)を近接配置してなる、いわゆる近接ガルバノミラーにより構成されている。各ガルバノミラーは、ケーブル12を介して外部の図示しない制御装置から送られてきた制御信号によって、図示しないアクチュエータにより、所定の速さで往復揺動させられるようになっている。これにより、平行光は2次元的に走査されるようになっている。
【0028】
瞳投影レンズユニット8のレンズ8aを支持する枠体8bは、結像レンズユニット9のレンズ9aを支持する枠体9bに固定され、結像レンズユニット9の枠体9bは、前記本体ケース5に固定されている。結像レンズユニット9の枠体9bは、略円筒状の固定側円筒部13を備えている。
【0029】
前記対物レンズ装着部3は、前記固定側円筒部13の外側に軸線方向に沿って移動可能に嵌合される可動側円筒部14を備えている。可動側円筒部14の一端には、半径方向外方に延びる鍔部14aが設けられている。また可動側円筒部14の他端には、対物レンズユニット15を固定するネジ部16が設けられている。
【0030】
前記結像レンズユニット9の枠体9bには、前記対物レンズ装着部3の鍔部14aに係合するホルダ17が固定されている。また、固定側円筒部13の外面には、半径方向に沿ってネジ孔18が形成されている。また、可動側円筒部14の前記ネジ孔18に対応する位置には、軸線方向に沿って所定の長さにわたって延びる長孔19が形成されている。前記ネジ孔18には前記長孔19を介してボルト20が締結されている。長孔19はボルト20の頭部の直径より若干大きな幅寸法を有している。したがって、長孔19内においてボルト20の頭部が軸線方向に相対移動可能にされるとともに、長孔19とボルト20との周方向に沿う相対移動が禁止されている。これにより、回り止め機構21が構成されている。
【0031】
図1中、符号22は、ボルト20の頭部および長孔19を覆うカバー部材である。カバー部材22は、例えば、ゴム製であり、対物レンズユニット15の着脱時に把持することにより、対物レンズユニット15を取り付ける対物レンズ装着部3を滑らないように保持可能として着脱を容易にするようになっている。また、カバー部材22は、可動側円筒部14に設けられた長孔19全体を被覆して、長孔19内に塵埃が入り込むことを防止している。さらに、長孔19やボルト20を覆うことで外観を見栄えよくしている。
【0032】
前記固定側円筒部13の外面および可動側円筒部14の内面には、全周にわたって、相互に軸線方向に対向配置される段部13a,14bが形成されている。これらの段部13a,14bの間には、前記付勢手段4を構成するコイルスプリング(以下、コイルスプリング4という。)が挟まれている。コイルスプリング4は、段部13a,14b間の距離が最も広がった状態においても、ある程度圧縮された状態とされ、段部13a,14b間の距離を広げる方向に常に付勢している。
【0033】
すなわち、対物レンズ装着部3は、コイルスプリング4の弾発力によって、その先端に向かう方向に付勢され、後端に設けた鍔部14aがホルダ17に突き当たることによって、光軸Cに沿って先端に向かう方向へのそれ以上の変位を規制され、かつ、その位置に精度よく位置決めされるようになっている。また、対物レンズユニット15の先端15aが、試料Aその他の物体に当接して光軸C方向に押圧され、その押圧力がコイルスプリング4の弾発力を上回ると、対物レンズ装着部3が、結像レンズユニット9の枠体9bに対して相対的に、光軸Cに沿って後端側に押し戻されるように移動させられるようになっている。
【0034】
この場合において、対物レンズ装着部3の結像レンズユニット9の枠体9bに対する光軸C方向に沿う相対変位は、結像レンズユニット9から出射された平行光の位置Bにおいて光路長を変化させるように行われるようになっている。
【0035】
このように構成された本実施形態に係る蛍光顕微鏡装置100の作用について以下に説明する。
本実施形態に係る蛍光顕微鏡装置100を使用するには、まず、ステージ101上の固定具106に観察対象部位を切開した実験小動物のような生体からなる試料Aを固定して、カバー部材103内に収容する。カバー部材103は対物レンズユニット15の先端15aを含むステージ101上の空間Sを取り囲む。カバー部材103の下端は、ステージ101のベース(第2のカバー部材)101aに微小隙間を空けて配置されるので、外光はその微小隙間を介してのみ、カバー部材103内に入射する。しかしながら、カバー部材103が、水平方向に張り出したステージ101の下側に回り込む形状を有しているので、カバー部材103内への外光の入射は大幅に低減される。
【0036】
この状態でカバー部材103内部の照明装置107を作動させるとともに、光走査部7を作動させ、試料Aからの反射光を観察しながら、ステージ101および移動機構102を作動させる。これにより、観察対象部位に対向する位置に、対物レンズユニット15の先端15aが配置されるので、光源からの励起光を光ファイバ10から装置本体2内に導入し、光走査部7を作動させる。
【0037】
光源から発せられた励起光は、光ファイバ10を伝播した後、コネクタ11を介して装置本体2内に導かれる。装置本体2にはコリメートユニット6が固定されているので、光ファイバ10の出射端面10aから本体ケース5内に出射された励起光はコリメートユニット6のレンズ6Aを通過することによって平行光に変換される。
【0038】
平行光に変換された励起光は光走査部7に入射される。光走査部7は近接ガルバノミラーを往復揺動させることにより、励起光を90°(図1中、水平に入射された励起光を鉛直方向に)偏向し、かつ、2次元的に走査する。走査された励起光は瞳投影レンズユニット8を通過させられることにより中間像を結像し、その後、結像レンズユニット9を通過することによって平行光に変換される。そして、結像レンズユニット9から出射された平行光は対物レンズユニット15に入射され、その先端15aの前方の所定の作動距離をあけた焦点位置に再結像させられる。
【0039】
試料Aに励起光が入射されると、試料A内部に存在する蛍光物質が励起されて蛍光が発せられる。発生した蛍光は、対物レンズユニット15の先端15aから対物レンズユニット15内に戻り、結像レンズユニット9、瞳投影レンズユニット8,光走査部7およびコリメートユニット6を介して光ファイバ10に入射され、光源側に戻る。光源側において、蛍光は、図示しないダイクロイックミラーによって励起光から分離され図示しない光検出器、例えば、光電子増倍管(PMT)によって検出される。そして、検出された蛍光は画像化されてモニタに表示されることになる。
【0040】
光ファイバ10が、シングルモードファイバのように十分に細いコア径を有している場合には、光ファイバ10の先端が対物レンズユニット15の先端15aの結像位置と共役な位置関係となって共焦点光学系が構成される。したがって、対物レンズユニット15の先端15aの結像位置近傍において発生した蛍光のみが光ファイバ10内に入射されることになり、解像度の高い画像を得ることができる。また、光ファイバ10がそれよりも太いコア径を有する場合には、解像度は低くなるが、明るく、奥行きのある画像を得ることができる。
【0041】
そして、得られた画像を見ながら、所望の観察位置を探すために装置本体2および対物レンズユニット15をその光軸C方向に移動させると、励起光の結像位置が光軸C方向に移動する結果、深さ方向の観察位置を変化させることができる。
この場合に、対物レンズユニット15の先端15aが試料Aの内部において、比較的固い組織等の何らかの物体に突き当たると、対物レンズユニット15の先端15aに押圧力が加わることになる。
【0042】
そして、その押圧力が、コイルスプリング4の弾発力を上回ると、図3および図4に示されるように、コイルスプリング4が圧縮される方向に変形させられて、対物レンズユニット15よび対物レンズ装着部3が装置本体2に対して光軸C方向に相対的に変位させられる。したがって、対物レンズユニット15の先端15aに過大な押圧力が加わることが防止され、対物レンズユニット15および相手方の試料Aの損傷を防止することができる。
【0043】
この場合において、本実施形態に係る蛍光顕微鏡装置100によれば、上述したコイルスプリング4を含む緩衝機構が対物レンズユニット15の先端15a近傍に設けられているのではなく、装置本体2側に設けられているので、対物レンズユニット15の先端15a近傍の構造を簡素化して、細径化することが可能となる。したがって、生体等の試料Aの内部を観察する際に、対物レンズユニット15の先端15aを挿入するために切開する範囲を必要最小限に止めることができる。
【0044】
その結果、試料Aにかかる負担を低減し、試料Aの健全性を長期にわたって維持することができる。すなわち、対物レンズユニット15の先端15aを生体等の試料Aに挿入した状態で、長期間にわたり、生体を生きたままの状態で観察し続けることが可能となる。
【0045】
また、対物レンズユニット15に緩衝機構を設けない本実施形態に係る蛍光顕微鏡装置100によれば、倍率や、先端形状の異なる対物レンズユニット15を対物レンズ装着部3に交換して取り付ける場合に、対物レンズユニット15毎に緩衝機構を設ける必要がないので、装置全体のコストを低減することができるという利点もある。さらに、緩衝機構における可動部を対物レンズユニット15に設けないので、対物レンズユニット15の防水構造を容易に構築することができ、体液等の液体を含む試料Aの内部にまで対物レンズユニット15の先端15aを挿入して行う観察に適した蛍光顕微鏡装置100を提供することができる。
【0046】
また、本実施形態に係る蛍光顕微鏡装置100によれば、対物レンズユニット15が装置本体2に対して変位する際に、結像レンズユニット9から出射された平行光の位置Bにおいて光路長が変化させられる。したがって、対物レンズユニット15が光軸C方向に変位しても、その結像関係が変化しない。
【0047】
すなわち、対物レンズユニット15の先端15aを試料Aに押し付けた状態で、その押圧力によって対物レンズユニット15が光軸C方向に押し戻されても、モニタに表示されている画像の焦点がずれることがない。したがって、装置本体2に対する対物レンズユニット15の相対変位量を十分に確保しておくことにより、対物レンズユニット15を装置本体2に対して相対変位させながら同一箇所の観察を行うことが可能となる。
【0048】
例えば、試料Aが、マウス等の生体である場合には、生体を生きたまま観察しようとすると、心臓の拍動、血管の脈動、呼吸動等によって試料Aの表面が変動する。この場合に、本実施形態に係る蛍光顕微鏡装置100を用いることによって、対物レンズユニット15の先端15aを試料Aに押し付けて、対物レンズユニット15を装置本体2方向に少し押し戻した位置で観察を行う。
【0049】
これにより、試料Aを対物レンズユニット15の押圧力によって押さえるとともに、それ以上の力で脈動等する場合には、対物レンズユニット15を脈動等に合わせて変位させながら観察することができる。この場合に、対物レンズユニット15が変位しても結像関係が変化しないので、ピントのあった鮮明な画像を表示し続けることができる。
【0050】
また、本実施形態に係る蛍光顕微鏡装置100においては、結像レンズユニット9から出力される平行光の位置Bにおいて、対物レンズユニット15を着脱することとしているので、着脱される対物レンズユニット15は無限遠光学系となる。したがって、対物レンズ装着部3のネジ部16を通常の顕微鏡に用いられるネジ部の規格に設定しておくことにより、通常の顕微鏡の対物レンズユニット15Aを着脱することもできる。
【0051】
さらに、本実施形態に係る蛍光顕微鏡装置100によれば、固定側円筒部13に固定したボルト20の頭を可動側円筒部14に形成した長孔19の内部に配置して、対物レンズ装着部3の装置本体2に対する周方向の回転を防止しているので、結像レンズユニット9に対して対物レンズユニット15が相対回転してしまうことによって装置全体の光学特性が変動することを防止できる。また、対物レンズ装着部3に設けられたネジ部16に対して対物レンズユニット15を着脱する際に、対物レンズ装着部3が回り止めされているので、着脱作業の作業性がよいという利点がある。
【0052】
また、本実施形態に係る蛍光顕微鏡装置100は、カバー部材103によって対物レンズユニット15の先端15aを含む、ステージ101上方の空間を覆っているので、対物レンズユニット15の先端15aから出射されるレーザ光のような励起光が外部に漏れることをも効果的に防止することができる。特に、カバー部材103をステージ101のベース101aの側面に微小間隙を開けて配置しているので、移動機構102による顕微鏡本体1の上下動にかかわらず、上記微小隙間を維持して励起光の空間S外への漏洩および外光の空間S内への入射を防止し続けることができる。
【0053】
さらに、本実施形態に係る蛍光顕微鏡装置100によれば、移動機構102による動作範囲内において、対物レンズユニット15の先端15aがステージ101の可動部101Xに突き当たる前に、カバー部材103の下端がベース101aに突き当たるように設定されているので、カバー部材103をストッパとして機能させ、対物レンズユニット15の破損を防止することができる。
【0054】
なお、本実施形態に係る蛍光顕微鏡装置100において、以下の種々の変形例を採用することができる。
図2に示される例では、ステージ101は、Z方向のみに駆動され、スライダ105が支柱104に対して水平2方向(X,Y方向)に移動可能に設けられている。
【0055】
この場合に、対物レンズユニット15に対して固定された平板状の第1のカバー部材110と、ステージ101のベース101aに固定され、第1のカバー部材110とともに空間Sを取り囲む第2のカバー部材111とが設けられている。
第2のカバー部材111には、対物レンズユニット15を貫通させる十分に大きな貫通孔111aがその上部に形成されている。また、第1のカバー部材110は、第2のカバー部材111の貫通孔111aを閉塞する位置に配置され、第2のカバー部材111との間に鉛直方向に微小間隙をあけて配置されている。
【0056】
そして、第1のカバー部材110と第2のカバー部材111とは、水平方向に重複した領域を形成するように配置されている。これにより、スライダ105を支柱104に対して水平2方向に移動させて、試料Aに対する対物レンズユニット15の位置を変更しても、第1のカバー部材110と第2のカバー部材111との間の微小隙間が維持されて、空間S内への外光の入射および空間S外への励起光の漏洩が防止される。
【0057】
また、図3および図4に示される例では、移動機構102が支柱104に沿って移動可能なスライダ105が備えられるとともに、支柱104を水平軸線回りに回転させる揺動機構(図示略)が備えられている。
この場合、対物レンズユニット15には第1のカバー部材120が固定され、ステージ101のベース101aには、第2のカバー部材121が固定されている。
【0058】
第2のカバー部材121は、前記支柱104の揺動軸線を中心とした円筒面部分121aと、該円筒面部分121aの幅方向の両端に設けられた側壁部121b(図3中、一方のみを表示)とを備えている。
また、第1のカバー部材120は、対物レンズユニット15の先端部15aを含む空間を覆う箱状に形成されるとともに、その下端部に、前記移動機構102が作動させられて、対物レンズユニット15の先端15aが蛍光観察位置に配置されたときに、前記第2のカバー部材121の円筒面部分121aに微小間隙をあけて近接させられる円筒面部分120aを備えている。
【0059】
このようにすることで、図4に示されるように、揺動機構の作動により支柱104が水平軸線回りに揺動させられて、試料Aに対する対物レンズユニット15の角度が変化させられても、第1、第2のカバー部材の円筒面部分120a,121aを微小隙間をあけて近接させることができる。その結果、試料Aに対して対物レンズユニット15による観察角度方向を変化させても、当該微小隙間を介した空間Sへの外光の入射および空間Sからの励起光の漏洩を極力抑えることができるという利点がある。
【0060】
また、この場合には、図5に示されるように、第1のカバー部材120および第2のカバー部材121の端部に、微小隙間方向に屈曲形成された屈曲部120b,121cをそれぞれ設けることにしてもよい。このようにすることで、ラビリンス効果により、さらに効果的に、外光の入射と励起光の漏洩を防止することができる。
【0061】
また、第2のカバー部材121に代えて、第1のカバー部材120とステージ101との間を接続する蛇腹部材(図示略)を設けることにしてもよい。このようにすることで、両者間に生ずる隙間を完全に塞いで、外光の入射と励起光の漏洩を完全に防止し、かつ、対物レンズの移動を容易にすることができる。
【0062】
また、支柱104を水平軸線D(図8参照。)回りに揺動させる揺動機構122を備え、かつ、支柱104に対してスライダ105が前記水平軸線Dに沿う方向(Y方向)に移動可能に支持されている場合について、図6〜図8を参照して説明する。この場合には、ステージ101は、X,Z方向の2方向に試料Aを移動させることができるようになっている。
【0063】
この場合、ステージ101に固定された第2のカバー部材131が、その上部に貫通孔131aを揺する円筒面部分131bを有し、対物レンズユニット15に固定される第1のカバー部材130が、前記第2のカバー部材131の円筒面部分131bに微小間隙を開けて配置される円筒面状に形成されていることとすればよい。第2のカバー部材131の側壁には、図7に示されるような窓部131cが形成され、該窓部131cは、図8に示されるように扉131dによって開閉可能とされていることが好ましい。
【0064】
また、図2と同様のカバー部材110,111を採用した場合に、図9に示されるように、試料Aの固定具140として、ステージ101に対して、試料Aを揺動可能に支持する構造のものを採用することで、試料Aに対する対物レンズユニット15の角度を相対的に変化させることとしてもよい。
また、この場合に、図10に示されるように、第2のカバー部材111を貫通して、空間S内を観察可能な広角レンズを備えたカメラ141を配置してもよい。この場合、固定具140を外部から操作可能な電動式にすることで、カメラ141により観察しながら固定具140を操作し、試料Aの所望の観察対象部位に、対物レンズユニット15の先端15aを容易に対向させることができる。
【0065】
また、本実施形態においては、細径の先端部を有する対物レンズユニット15を搭載し、取り回し容易な小型の顕微鏡本体1を有する蛍光顕微鏡装置100について説明したが、これに代えて、図11に示されるように、通常の大型の蛍光顕微鏡装置200に、同様のカバー部材を適用してもよい。
【0066】
図11において、符号201は接眼レンズ、符号202は鏡筒、符号203は走査型ユニット、符号204はキューブターレット、符号205は準焦ハンドル、符号206はアーム、符号207は第1のカバー部材、符号208は蛇腹部材、符号209はステージ(第2のカバー部材)、符号210はシャーレである。
【0067】
このようにすることで、対物レンズユニット15の先端15aおよび試料Aを含む空間Sが、第1のカバー部材207、蛇腹部材208およびステージ209によって囲われ、準焦ハンドル205を操作することによるアーム206および対物レンズユニット15の上下動によっても、空間Sが閉じた状態に維持され、空間S内への外光の入射と、空間Sからの励起光の漏洩を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の一実施形態に係る蛍光顕微鏡装置を示す縦断面図である。
【図2】図1の蛍光顕微鏡装置の第1の変形例に係る蛍光顕微鏡装置を示す一部を破断した正面図である。
【図3】図1の蛍光顕微鏡装置の第2の変形例に係る蛍光顕微鏡装置を示す一部を破断した正面図である。
【図4】図3の蛍光顕微鏡装置において、対物レンズユニットを試料に対して傾斜させた状態を示す一部を破断した正面図である。
【図5】図1の蛍光顕微鏡装置の第3の変形例に係る蛍光顕微鏡装置を示す一部を破断した正面図である。
【図6】図1の蛍光顕微鏡装置の第4の変形例に係る蛍光顕微鏡装置を示す一部を破断した正面図である。
【図7】図6の蛍光顕微鏡装置の正面図である。
【図8】図6の蛍光顕微鏡装置の側面図である。
【図9】図1の蛍光顕微鏡装置の第5の変形例に係る蛍光顕微鏡装置を示す一部を破断した正面図である。
【図10】図1の蛍光顕微鏡装置の第6の変形例に係る蛍光顕微鏡装置を示す一部を破断した正面図である。
【図11】図1の蛍光顕微鏡装置の第7の変形例に係る蛍光顕微鏡装置を示す一部を破断した正面図である。
【符号の説明】
【0069】
A 試料
S 空間
15 対物レンズユニット(対物レンズ)
100,200 蛍光顕微鏡装置
101,209 ステージ(第2のカバー部材)
102 移動機構
103,110,120,130,207 第1のカバー部材
111,121,131 第2のカバー部材
140 固定具(試料支持機構)
208 蛇腹部材(遮光手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体組織等の試料を蛍光観察するための蛍光顕微鏡装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザ光のような励起光を試料に照射して、試料から発生する液光を観察する蛍光観察装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
この蛍光観察装置は、試料から発生する微弱な蛍光に外光が混入して鮮明な蛍光画像を得ることが困難になるという不都合を防止するために、その全体が蛍光観察用暗箱装置によって覆われている。
【0003】
【特許文献1】特開2006−71544号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された蛍光観察用暗箱装置は、蛍光観察装置全体を覆うものであるため、装置が大型化してしまう不都合がある。特に、顕微鏡本体を小型化して、角度変更可能に構成され、試料に対して任意の方向から対物レンズを近接させることができる顕微鏡装置においては、折角顕微鏡本体を小型化していても、顕微鏡本体の可動範囲全体を覆うような大きさの蛍光観察用暗箱装置が必要となり、装置全体の小型化を図ることができないという不都合がある。
【0005】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、装置全体を小型化し、試料から発生する微弱な蛍光への外光の混入を防止して鮮明な蛍光画像を得ることができる蛍光顕微鏡装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、試料を搭載するステージと、試料からの蛍光を集光する対物レンズと、前記ステージと前記対物レンズとを相対的に移動させる移動機構と、前記対物レンズに固定された第1のカバー部材と、前記ステージ側に設けられ、前記第1のカバー部材とともに前記対物レンズ先端および前記ステージ上の空間を覆う第2のカバー部材と、これら第1、第2のカバー部材の相対移動を許容しかつ両カバー部材の隙間からの光の漏れを防止する遮光手段とを備える蛍光顕微鏡装置を提供する。
【0007】
本発明によれば、ステージに試料を搭載し、移動機構を作動させて対物レンズとステージとを相対的に移動させることにより、対物レンズを試料の所望の観察対象部位に対向させ、試料から発生する蛍光を集光することができる。この場合において、対物レンズ側に固定された第1のカバー部材と、ステージ側に設けられた第2のカバー部材とが組み合わせられることにより、対物レンズの先端を含むステージ上の空間が覆われる。
【0008】
第1、第2のカバー部材間に設けられた遮光手段は、対物レンズとステージとが相対的に移動させられることにより第1のカバー部材と第2のカバー部材とが相対移動させられても、両者間の隙間からの光の漏れを防止する。したがって、試料から発せられる微弱な蛍光に混入する外光を大幅に低減し、鮮明な蛍光観察を行うことが可能となる。
【0009】
上記発明においては、前記遮光手段が、前記第1のカバー部材と第2のカバー部材とを相対移動方向に直交する方向に微小隙間をあけて、相対移動方向に重複させることにより構成されていることとしてもよい。
このようにすることで、対物レンズとステージとが相対的に移動させられることにより第1のカバー部材と第2のカバー部材との間に相対移動が発生しても、遮光手段が、第1のカバー部材と第2のカバー部材との微小隙間を維持し、かつ、相対移動方向に重複させる。これにより、ステージ上の試料に対する対物レンズの相対位置にかかわらず、外光が直接的に第1,第2のカバー部材により囲われた空間内に入射することを簡易に防止して、鮮明な蛍光観察を行うことが可能となる。
【0010】
また、上記発明においては、前記遮光手段が、第1のカバー部材と第2のカバー部材とを接続する蛇腹部材からなることとしてもよい。
このようにすることで、対物レンズとステージとが相対的に移動させられることにより第1のカバー部材と第2のカバー部材との間に相対移動が発生しても、蛇腹部材からなる遮光手段が弾性変形させられて、ステージ上の試料に対する対物レンズの相対位置にかかわらず、第1,第2のカバー部材により囲われた空間内に外光が入射することをより確実に防止して、鮮明な蛍光観察を行うことが可能となる。
【0011】
また、上記発明においては、前記第2のカバー部材が、前記ステージの一部により構成されていることとしてもよい。
このようにすることで、部品点数を削減することができる。
【0012】
また、上記発明においては、前記試料に対する対物レンズの角度を変更させる角度変更機構を備え、前記遮光手段が、前記角度変更機構による試料に対する対物レンズの角度の変更にかかわらず、第1のカバー部材と第2のカバー部材との隙間をほぼ一定に維持することとしてもよい。
このようにすることで、対物レンズが試料に対して角度変更させられることにより第1のカバー部材と第2のカバー部材との間に相対移動が発生しても、遮光手段が、第1のカバー部材と第2のカバー部材との隙間を維持するので、外光が直接的に第1,第2のカバー部材により囲われた空間内に入射することを簡易に防止して、鮮明な蛍光観察を行うことが可能となる。
【0013】
また、上記発明においては、前記角度変更機構が、ステージに対して試料を角度変更可能に支持する試料支持機構により構成されていることとしてもよい。
このようにすることで、試料に対する対物レンズの角度を簡易に変更することができる。
【0014】
また、上記発明においては、前記移動機構が、前記ステージに対する対物レンズの角度を変更させるよう両者を相対的に移動させることとしてもよい。
このようにすることで、移動機構の作動により、ステージに対する対物レンズの相対角度を変化させ、ステージ上の試料を種々の角度から観察することができる。この場合においても、遮光部材は、第1のカバー部材と第2のカバー部材との微小隙間を維持し、かつ、相対移動方向に重複させる。これにより、ステージ上の試料に対する対物レンズの相対角度にかかわらず、外光が直接的に第1,第2のカバー部材により囲われた空間内に入射することを簡易に防止して、鮮明な蛍光観察を行うことが可能となる。
【0015】
また、上記発明においては、前記移動機構が、所定の軸線回りに対物レンズを揺動させ、前記遮光手段が、前記第1のカバー部材および第2のカバー部材を前記軸線を中心とした回転体形状とすることにより構成されていることとしてもよい。
このようにすることで、移動機構の作動により、ステージに対して所定の軸線回りに対物レンズを揺動させても、該軸線を中心とした回転体形状をした第1、第2のカバー部材の微小隙間が維持される。これにより、ステージ上の試料に対する対物レンズの相対角度にかかわらず、外光が直接的に第1,第2のカバー部材により囲われた空間内に入射することを簡易に防止して、鮮明な蛍光観察を行うことが可能となる。
【0016】
また、上記発明においては、ステージに対して試料を角度変更可能に支持する試料支持機構を備えることとしてもよい。
このようにすることで、移動機構によってステージに対する対物レンズの相対角度を変化させなくても、試料支持機構の作動により、ステージに対する試料の角度を変化させることができる。その結果、移動機構および遮光部材を簡易な構造にすることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、装置全体を小型化し、試料から発生する微弱な蛍光への外光の混入を防止して鮮明な蛍光画像を得ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態に係る蛍光顕微鏡装置100について、図1を参照して説明する。
本実施形態に係る蛍光顕微鏡装置100は、マウス等の実験動物のような生体を試料として、その内部を観察するのに適した装置である。
【0019】
本実施形態に係る蛍光顕微鏡装置100は、図1に示されるように、試料を搭載するステージ101と、対物レンズユニット15を備える顕微鏡本体1と、該顕微鏡本体1をその光軸に沿う方向に移動させる移動機構102と、顕微鏡本体1に固定されたカバー部材(第1のカバー部材)103とを備えている。
【0020】
前記移動機構102は、鉛直方向に沿って設けられた支柱104と、該支柱に沿って上下方向に移動可能に設けられ、前記顕微鏡本体1を固定するスライダ105とを備えている。スライダ105を上下方向(Z方向)に移動させることで、顕微鏡本体1を上下動させ、ステージ101上に固定されている試料Aに対して、対物レンズユニット15の先端15aを光軸方向に近接、離間させることができるようになっている。
【0021】
前記カバー部材103は、顕微鏡本体1の対物レンズユニット15に取り付けねじ近傍に固定されている。カバー部材103は、対物レンズユニット15の先端15aを含む空間Sを覆う箱状に形成されているとともに、その下端が、水平方向に張り出したステージ101の下方に回り込んで、ステージ101のベース101aに水平方向に微小隙間を空けて配置されている。
【0022】
前記ステージ101は、前記ベース101aの上方に、水平2方向(X方向およびY方向)に移動可能な可動部101X,101Yを備えており、該可動部101X,101Yの上面に設けられた固定具106により試料Aをステージ101に固定した状態に搭載することができる。したがって、ステージ101の可動部101X,101Yを駆動して、カバー部材103の内部空間Sにおいて試料Aを水平2方向に移動させ、移動機構102を作動させて顕微鏡本体1を鉛直方向に移動させることにより、対物レンズユニット15の先端15aを、試料Aの所望の観察対象部位に対向配置させることができるようになっている。
【0023】
また、カバー部材103の内部には、明視野観察用の照明装置107が配置されている。
また、カバー部材103の下端は、移動機構102による顕微鏡本体1の動作範囲内において、対物レンズユニット15の先端15aがステージ101に突き当たる前に、ステージ101のベース101aに突き当たる位置に配置されている。これにより、ストッパが形成され、対物レンズユニット15の先端15aがステージ101に突き当たることによる対物レンズユニット15の破損を防止することができるようになっている。
【0024】
ここで、本実施形態における顕微鏡本体1について、以下に詳細に説明する。
顕微鏡本体1は、装置本体2と、該装置本体2に光軸C方向に移動可能に備えられた対物レンズ装着部3、該対物レンズ装着部3に装着された対物レンズユニット15と、装置本体2と対物レンズ装着部3との間に配置された付勢手段4とを備えている。
【0025】
装置本体2は、本体ケース5と、該本体ケース5に固定されたコリメートユニット6と、該コリメートユニット6によって平行光にされた光を2次元的に走査する光走査部7と、該光走査部7により走査された光を集光して中間像を結像させる瞳投影レンズユニット8と、中間像を結像した光を集光して平行光にする結像レンズユニット9とを備えている。
【0026】
コリメートユニット6には、図示しない光源からの光を導く光ファイバ10の先端がコネクタ11によって固定されている。コネクタ11はコリメートユニット6に、光軸に対して若干傾斜して斜めに固定されている。これにより、光ファイバ10の出射端面10aを、長さ方向に対して斜めに形成し、該出射端面10aにおける光ファイバ10内の反射光が、光源側に設けられている光検出器(図示略)に戻ることを防止するように構成されている。光ファイバ10の出射端面10aから出射された光は、コリメートユニット6のレンズ6Aを通過することによって集光され、平行光に変換されるようになっている。
【0027】
光走査部7は、例えば、直交する2つの軸線回りにそれぞれ揺動可能に支持された2枚のガルバノミラー(図示略)を近接配置してなる、いわゆる近接ガルバノミラーにより構成されている。各ガルバノミラーは、ケーブル12を介して外部の図示しない制御装置から送られてきた制御信号によって、図示しないアクチュエータにより、所定の速さで往復揺動させられるようになっている。これにより、平行光は2次元的に走査されるようになっている。
【0028】
瞳投影レンズユニット8のレンズ8aを支持する枠体8bは、結像レンズユニット9のレンズ9aを支持する枠体9bに固定され、結像レンズユニット9の枠体9bは、前記本体ケース5に固定されている。結像レンズユニット9の枠体9bは、略円筒状の固定側円筒部13を備えている。
【0029】
前記対物レンズ装着部3は、前記固定側円筒部13の外側に軸線方向に沿って移動可能に嵌合される可動側円筒部14を備えている。可動側円筒部14の一端には、半径方向外方に延びる鍔部14aが設けられている。また可動側円筒部14の他端には、対物レンズユニット15を固定するネジ部16が設けられている。
【0030】
前記結像レンズユニット9の枠体9bには、前記対物レンズ装着部3の鍔部14aに係合するホルダ17が固定されている。また、固定側円筒部13の外面には、半径方向に沿ってネジ孔18が形成されている。また、可動側円筒部14の前記ネジ孔18に対応する位置には、軸線方向に沿って所定の長さにわたって延びる長孔19が形成されている。前記ネジ孔18には前記長孔19を介してボルト20が締結されている。長孔19はボルト20の頭部の直径より若干大きな幅寸法を有している。したがって、長孔19内においてボルト20の頭部が軸線方向に相対移動可能にされるとともに、長孔19とボルト20との周方向に沿う相対移動が禁止されている。これにより、回り止め機構21が構成されている。
【0031】
図1中、符号22は、ボルト20の頭部および長孔19を覆うカバー部材である。カバー部材22は、例えば、ゴム製であり、対物レンズユニット15の着脱時に把持することにより、対物レンズユニット15を取り付ける対物レンズ装着部3を滑らないように保持可能として着脱を容易にするようになっている。また、カバー部材22は、可動側円筒部14に設けられた長孔19全体を被覆して、長孔19内に塵埃が入り込むことを防止している。さらに、長孔19やボルト20を覆うことで外観を見栄えよくしている。
【0032】
前記固定側円筒部13の外面および可動側円筒部14の内面には、全周にわたって、相互に軸線方向に対向配置される段部13a,14bが形成されている。これらの段部13a,14bの間には、前記付勢手段4を構成するコイルスプリング(以下、コイルスプリング4という。)が挟まれている。コイルスプリング4は、段部13a,14b間の距離が最も広がった状態においても、ある程度圧縮された状態とされ、段部13a,14b間の距離を広げる方向に常に付勢している。
【0033】
すなわち、対物レンズ装着部3は、コイルスプリング4の弾発力によって、その先端に向かう方向に付勢され、後端に設けた鍔部14aがホルダ17に突き当たることによって、光軸Cに沿って先端に向かう方向へのそれ以上の変位を規制され、かつ、その位置に精度よく位置決めされるようになっている。また、対物レンズユニット15の先端15aが、試料Aその他の物体に当接して光軸C方向に押圧され、その押圧力がコイルスプリング4の弾発力を上回ると、対物レンズ装着部3が、結像レンズユニット9の枠体9bに対して相対的に、光軸Cに沿って後端側に押し戻されるように移動させられるようになっている。
【0034】
この場合において、対物レンズ装着部3の結像レンズユニット9の枠体9bに対する光軸C方向に沿う相対変位は、結像レンズユニット9から出射された平行光の位置Bにおいて光路長を変化させるように行われるようになっている。
【0035】
このように構成された本実施形態に係る蛍光顕微鏡装置100の作用について以下に説明する。
本実施形態に係る蛍光顕微鏡装置100を使用するには、まず、ステージ101上の固定具106に観察対象部位を切開した実験小動物のような生体からなる試料Aを固定して、カバー部材103内に収容する。カバー部材103は対物レンズユニット15の先端15aを含むステージ101上の空間Sを取り囲む。カバー部材103の下端は、ステージ101のベース(第2のカバー部材)101aに微小隙間を空けて配置されるので、外光はその微小隙間を介してのみ、カバー部材103内に入射する。しかしながら、カバー部材103が、水平方向に張り出したステージ101の下側に回り込む形状を有しているので、カバー部材103内への外光の入射は大幅に低減される。
【0036】
この状態でカバー部材103内部の照明装置107を作動させるとともに、光走査部7を作動させ、試料Aからの反射光を観察しながら、ステージ101および移動機構102を作動させる。これにより、観察対象部位に対向する位置に、対物レンズユニット15の先端15aが配置されるので、光源からの励起光を光ファイバ10から装置本体2内に導入し、光走査部7を作動させる。
【0037】
光源から発せられた励起光は、光ファイバ10を伝播した後、コネクタ11を介して装置本体2内に導かれる。装置本体2にはコリメートユニット6が固定されているので、光ファイバ10の出射端面10aから本体ケース5内に出射された励起光はコリメートユニット6のレンズ6Aを通過することによって平行光に変換される。
【0038】
平行光に変換された励起光は光走査部7に入射される。光走査部7は近接ガルバノミラーを往復揺動させることにより、励起光を90°(図1中、水平に入射された励起光を鉛直方向に)偏向し、かつ、2次元的に走査する。走査された励起光は瞳投影レンズユニット8を通過させられることにより中間像を結像し、その後、結像レンズユニット9を通過することによって平行光に変換される。そして、結像レンズユニット9から出射された平行光は対物レンズユニット15に入射され、その先端15aの前方の所定の作動距離をあけた焦点位置に再結像させられる。
【0039】
試料Aに励起光が入射されると、試料A内部に存在する蛍光物質が励起されて蛍光が発せられる。発生した蛍光は、対物レンズユニット15の先端15aから対物レンズユニット15内に戻り、結像レンズユニット9、瞳投影レンズユニット8,光走査部7およびコリメートユニット6を介して光ファイバ10に入射され、光源側に戻る。光源側において、蛍光は、図示しないダイクロイックミラーによって励起光から分離され図示しない光検出器、例えば、光電子増倍管(PMT)によって検出される。そして、検出された蛍光は画像化されてモニタに表示されることになる。
【0040】
光ファイバ10が、シングルモードファイバのように十分に細いコア径を有している場合には、光ファイバ10の先端が対物レンズユニット15の先端15aの結像位置と共役な位置関係となって共焦点光学系が構成される。したがって、対物レンズユニット15の先端15aの結像位置近傍において発生した蛍光のみが光ファイバ10内に入射されることになり、解像度の高い画像を得ることができる。また、光ファイバ10がそれよりも太いコア径を有する場合には、解像度は低くなるが、明るく、奥行きのある画像を得ることができる。
【0041】
そして、得られた画像を見ながら、所望の観察位置を探すために装置本体2および対物レンズユニット15をその光軸C方向に移動させると、励起光の結像位置が光軸C方向に移動する結果、深さ方向の観察位置を変化させることができる。
この場合に、対物レンズユニット15の先端15aが試料Aの内部において、比較的固い組織等の何らかの物体に突き当たると、対物レンズユニット15の先端15aに押圧力が加わることになる。
【0042】
そして、その押圧力が、コイルスプリング4の弾発力を上回ると、図3および図4に示されるように、コイルスプリング4が圧縮される方向に変形させられて、対物レンズユニット15よび対物レンズ装着部3が装置本体2に対して光軸C方向に相対的に変位させられる。したがって、対物レンズユニット15の先端15aに過大な押圧力が加わることが防止され、対物レンズユニット15および相手方の試料Aの損傷を防止することができる。
【0043】
この場合において、本実施形態に係る蛍光顕微鏡装置100によれば、上述したコイルスプリング4を含む緩衝機構が対物レンズユニット15の先端15a近傍に設けられているのではなく、装置本体2側に設けられているので、対物レンズユニット15の先端15a近傍の構造を簡素化して、細径化することが可能となる。したがって、生体等の試料Aの内部を観察する際に、対物レンズユニット15の先端15aを挿入するために切開する範囲を必要最小限に止めることができる。
【0044】
その結果、試料Aにかかる負担を低減し、試料Aの健全性を長期にわたって維持することができる。すなわち、対物レンズユニット15の先端15aを生体等の試料Aに挿入した状態で、長期間にわたり、生体を生きたままの状態で観察し続けることが可能となる。
【0045】
また、対物レンズユニット15に緩衝機構を設けない本実施形態に係る蛍光顕微鏡装置100によれば、倍率や、先端形状の異なる対物レンズユニット15を対物レンズ装着部3に交換して取り付ける場合に、対物レンズユニット15毎に緩衝機構を設ける必要がないので、装置全体のコストを低減することができるという利点もある。さらに、緩衝機構における可動部を対物レンズユニット15に設けないので、対物レンズユニット15の防水構造を容易に構築することができ、体液等の液体を含む試料Aの内部にまで対物レンズユニット15の先端15aを挿入して行う観察に適した蛍光顕微鏡装置100を提供することができる。
【0046】
また、本実施形態に係る蛍光顕微鏡装置100によれば、対物レンズユニット15が装置本体2に対して変位する際に、結像レンズユニット9から出射された平行光の位置Bにおいて光路長が変化させられる。したがって、対物レンズユニット15が光軸C方向に変位しても、その結像関係が変化しない。
【0047】
すなわち、対物レンズユニット15の先端15aを試料Aに押し付けた状態で、その押圧力によって対物レンズユニット15が光軸C方向に押し戻されても、モニタに表示されている画像の焦点がずれることがない。したがって、装置本体2に対する対物レンズユニット15の相対変位量を十分に確保しておくことにより、対物レンズユニット15を装置本体2に対して相対変位させながら同一箇所の観察を行うことが可能となる。
【0048】
例えば、試料Aが、マウス等の生体である場合には、生体を生きたまま観察しようとすると、心臓の拍動、血管の脈動、呼吸動等によって試料Aの表面が変動する。この場合に、本実施形態に係る蛍光顕微鏡装置100を用いることによって、対物レンズユニット15の先端15aを試料Aに押し付けて、対物レンズユニット15を装置本体2方向に少し押し戻した位置で観察を行う。
【0049】
これにより、試料Aを対物レンズユニット15の押圧力によって押さえるとともに、それ以上の力で脈動等する場合には、対物レンズユニット15を脈動等に合わせて変位させながら観察することができる。この場合に、対物レンズユニット15が変位しても結像関係が変化しないので、ピントのあった鮮明な画像を表示し続けることができる。
【0050】
また、本実施形態に係る蛍光顕微鏡装置100においては、結像レンズユニット9から出力される平行光の位置Bにおいて、対物レンズユニット15を着脱することとしているので、着脱される対物レンズユニット15は無限遠光学系となる。したがって、対物レンズ装着部3のネジ部16を通常の顕微鏡に用いられるネジ部の規格に設定しておくことにより、通常の顕微鏡の対物レンズユニット15Aを着脱することもできる。
【0051】
さらに、本実施形態に係る蛍光顕微鏡装置100によれば、固定側円筒部13に固定したボルト20の頭を可動側円筒部14に形成した長孔19の内部に配置して、対物レンズ装着部3の装置本体2に対する周方向の回転を防止しているので、結像レンズユニット9に対して対物レンズユニット15が相対回転してしまうことによって装置全体の光学特性が変動することを防止できる。また、対物レンズ装着部3に設けられたネジ部16に対して対物レンズユニット15を着脱する際に、対物レンズ装着部3が回り止めされているので、着脱作業の作業性がよいという利点がある。
【0052】
また、本実施形態に係る蛍光顕微鏡装置100は、カバー部材103によって対物レンズユニット15の先端15aを含む、ステージ101上方の空間を覆っているので、対物レンズユニット15の先端15aから出射されるレーザ光のような励起光が外部に漏れることをも効果的に防止することができる。特に、カバー部材103をステージ101のベース101aの側面に微小間隙を開けて配置しているので、移動機構102による顕微鏡本体1の上下動にかかわらず、上記微小隙間を維持して励起光の空間S外への漏洩および外光の空間S内への入射を防止し続けることができる。
【0053】
さらに、本実施形態に係る蛍光顕微鏡装置100によれば、移動機構102による動作範囲内において、対物レンズユニット15の先端15aがステージ101の可動部101Xに突き当たる前に、カバー部材103の下端がベース101aに突き当たるように設定されているので、カバー部材103をストッパとして機能させ、対物レンズユニット15の破損を防止することができる。
【0054】
なお、本実施形態に係る蛍光顕微鏡装置100において、以下の種々の変形例を採用することができる。
図2に示される例では、ステージ101は、Z方向のみに駆動され、スライダ105が支柱104に対して水平2方向(X,Y方向)に移動可能に設けられている。
【0055】
この場合に、対物レンズユニット15に対して固定された平板状の第1のカバー部材110と、ステージ101のベース101aに固定され、第1のカバー部材110とともに空間Sを取り囲む第2のカバー部材111とが設けられている。
第2のカバー部材111には、対物レンズユニット15を貫通させる十分に大きな貫通孔111aがその上部に形成されている。また、第1のカバー部材110は、第2のカバー部材111の貫通孔111aを閉塞する位置に配置され、第2のカバー部材111との間に鉛直方向に微小間隙をあけて配置されている。
【0056】
そして、第1のカバー部材110と第2のカバー部材111とは、水平方向に重複した領域を形成するように配置されている。これにより、スライダ105を支柱104に対して水平2方向に移動させて、試料Aに対する対物レンズユニット15の位置を変更しても、第1のカバー部材110と第2のカバー部材111との間の微小隙間が維持されて、空間S内への外光の入射および空間S外への励起光の漏洩が防止される。
【0057】
また、図3および図4に示される例では、移動機構102が支柱104に沿って移動可能なスライダ105が備えられるとともに、支柱104を水平軸線回りに回転させる揺動機構(図示略)が備えられている。
この場合、対物レンズユニット15には第1のカバー部材120が固定され、ステージ101のベース101aには、第2のカバー部材121が固定されている。
【0058】
第2のカバー部材121は、前記支柱104の揺動軸線を中心とした円筒面部分121aと、該円筒面部分121aの幅方向の両端に設けられた側壁部121b(図3中、一方のみを表示)とを備えている。
また、第1のカバー部材120は、対物レンズユニット15の先端部15aを含む空間を覆う箱状に形成されるとともに、その下端部に、前記移動機構102が作動させられて、対物レンズユニット15の先端15aが蛍光観察位置に配置されたときに、前記第2のカバー部材121の円筒面部分121aに微小間隙をあけて近接させられる円筒面部分120aを備えている。
【0059】
このようにすることで、図4に示されるように、揺動機構の作動により支柱104が水平軸線回りに揺動させられて、試料Aに対する対物レンズユニット15の角度が変化させられても、第1、第2のカバー部材の円筒面部分120a,121aを微小隙間をあけて近接させることができる。その結果、試料Aに対して対物レンズユニット15による観察角度方向を変化させても、当該微小隙間を介した空間Sへの外光の入射および空間Sからの励起光の漏洩を極力抑えることができるという利点がある。
【0060】
また、この場合には、図5に示されるように、第1のカバー部材120および第2のカバー部材121の端部に、微小隙間方向に屈曲形成された屈曲部120b,121cをそれぞれ設けることにしてもよい。このようにすることで、ラビリンス効果により、さらに効果的に、外光の入射と励起光の漏洩を防止することができる。
【0061】
また、第2のカバー部材121に代えて、第1のカバー部材120とステージ101との間を接続する蛇腹部材(図示略)を設けることにしてもよい。このようにすることで、両者間に生ずる隙間を完全に塞いで、外光の入射と励起光の漏洩を完全に防止し、かつ、対物レンズの移動を容易にすることができる。
【0062】
また、支柱104を水平軸線D(図8参照。)回りに揺動させる揺動機構122を備え、かつ、支柱104に対してスライダ105が前記水平軸線Dに沿う方向(Y方向)に移動可能に支持されている場合について、図6〜図8を参照して説明する。この場合には、ステージ101は、X,Z方向の2方向に試料Aを移動させることができるようになっている。
【0063】
この場合、ステージ101に固定された第2のカバー部材131が、その上部に貫通孔131aを揺する円筒面部分131bを有し、対物レンズユニット15に固定される第1のカバー部材130が、前記第2のカバー部材131の円筒面部分131bに微小間隙を開けて配置される円筒面状に形成されていることとすればよい。第2のカバー部材131の側壁には、図7に示されるような窓部131cが形成され、該窓部131cは、図8に示されるように扉131dによって開閉可能とされていることが好ましい。
【0064】
また、図2と同様のカバー部材110,111を採用した場合に、図9に示されるように、試料Aの固定具140として、ステージ101に対して、試料Aを揺動可能に支持する構造のものを採用することで、試料Aに対する対物レンズユニット15の角度を相対的に変化させることとしてもよい。
また、この場合に、図10に示されるように、第2のカバー部材111を貫通して、空間S内を観察可能な広角レンズを備えたカメラ141を配置してもよい。この場合、固定具140を外部から操作可能な電動式にすることで、カメラ141により観察しながら固定具140を操作し、試料Aの所望の観察対象部位に、対物レンズユニット15の先端15aを容易に対向させることができる。
【0065】
また、本実施形態においては、細径の先端部を有する対物レンズユニット15を搭載し、取り回し容易な小型の顕微鏡本体1を有する蛍光顕微鏡装置100について説明したが、これに代えて、図11に示されるように、通常の大型の蛍光顕微鏡装置200に、同様のカバー部材を適用してもよい。
【0066】
図11において、符号201は接眼レンズ、符号202は鏡筒、符号203は走査型ユニット、符号204はキューブターレット、符号205は準焦ハンドル、符号206はアーム、符号207は第1のカバー部材、符号208は蛇腹部材、符号209はステージ(第2のカバー部材)、符号210はシャーレである。
【0067】
このようにすることで、対物レンズユニット15の先端15aおよび試料Aを含む空間Sが、第1のカバー部材207、蛇腹部材208およびステージ209によって囲われ、準焦ハンドル205を操作することによるアーム206および対物レンズユニット15の上下動によっても、空間Sが閉じた状態に維持され、空間S内への外光の入射と、空間Sからの励起光の漏洩を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の一実施形態に係る蛍光顕微鏡装置を示す縦断面図である。
【図2】図1の蛍光顕微鏡装置の第1の変形例に係る蛍光顕微鏡装置を示す一部を破断した正面図である。
【図3】図1の蛍光顕微鏡装置の第2の変形例に係る蛍光顕微鏡装置を示す一部を破断した正面図である。
【図4】図3の蛍光顕微鏡装置において、対物レンズユニットを試料に対して傾斜させた状態を示す一部を破断した正面図である。
【図5】図1の蛍光顕微鏡装置の第3の変形例に係る蛍光顕微鏡装置を示す一部を破断した正面図である。
【図6】図1の蛍光顕微鏡装置の第4の変形例に係る蛍光顕微鏡装置を示す一部を破断した正面図である。
【図7】図6の蛍光顕微鏡装置の正面図である。
【図8】図6の蛍光顕微鏡装置の側面図である。
【図9】図1の蛍光顕微鏡装置の第5の変形例に係る蛍光顕微鏡装置を示す一部を破断した正面図である。
【図10】図1の蛍光顕微鏡装置の第6の変形例に係る蛍光顕微鏡装置を示す一部を破断した正面図である。
【図11】図1の蛍光顕微鏡装置の第7の変形例に係る蛍光顕微鏡装置を示す一部を破断した正面図である。
【符号の説明】
【0069】
A 試料
S 空間
15 対物レンズユニット(対物レンズ)
100,200 蛍光顕微鏡装置
101,209 ステージ(第2のカバー部材)
102 移動機構
103,110,120,130,207 第1のカバー部材
111,121,131 第2のカバー部材
140 固定具(試料支持機構)
208 蛇腹部材(遮光手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を搭載するステージと、
試料からの蛍光を集光する対物レンズと、
前記ステージと前記対物レンズとを相対的に移動させる移動機構と、
前記対物レンズに固定された第1のカバー部材と、
前記ステージ側に設けられ、前記第1のカバー部材とともに前記対物レンズ先端および前記ステージ上の空間を覆う第2のカバー部材と、
これら第1、第2のカバー部材の相対移動を許容しかつ両カバー部材の隙間からの光の漏れを防止する遮光手段とを備える蛍光顕微鏡装置。
【請求項2】
前記遮光手段が、前記第1のカバー部材と第2のカバー部材とを相対移動方向に直交する方向に微小隙間をあけて、相対移動方向に重複させることにより構成されている請求項1に記載の蛍光顕微鏡装置。
【請求項3】
前記遮光手段が、第1のカバー部材と第2のカバー部材とを接続する蛇腹部材からなる請求項1に記載の蛍光顕微鏡装置。
【請求項4】
前記第2のカバー部材が、前記ステージの一部により構成されている請求項1に記載の蛍光顕微鏡装置。
【請求項5】
前記移動機構が、前記ステージに対する対物レンズの角度を変更させるよう両者を相対的に移動させる請求項2に記載の蛍光顕微鏡装置。
【請求項6】
前記移動機構が、所定の軸線回りに対物レンズを揺動させ、
前記遮光手段が、前記第1のカバー部材および第2のカバー部材を前記軸線を中心とした回転体形状とすることにより構成されている請求項5に記載の蛍光顕微鏡装置。
【請求項7】
ステージに対して試料を角度変更可能に支持する試料支持機構を備える請求項2に記載の蛍光顕微鏡装置。
【請求項1】
試料を搭載するステージと、
試料からの蛍光を集光する対物レンズと、
前記ステージと前記対物レンズとを相対的に移動させる移動機構と、
前記対物レンズに固定された第1のカバー部材と、
前記ステージ側に設けられ、前記第1のカバー部材とともに前記対物レンズ先端および前記ステージ上の空間を覆う第2のカバー部材と、
これら第1、第2のカバー部材の相対移動を許容しかつ両カバー部材の隙間からの光の漏れを防止する遮光手段とを備える蛍光顕微鏡装置。
【請求項2】
前記遮光手段が、前記第1のカバー部材と第2のカバー部材とを相対移動方向に直交する方向に微小隙間をあけて、相対移動方向に重複させることにより構成されている請求項1に記載の蛍光顕微鏡装置。
【請求項3】
前記遮光手段が、第1のカバー部材と第2のカバー部材とを接続する蛇腹部材からなる請求項1に記載の蛍光顕微鏡装置。
【請求項4】
前記第2のカバー部材が、前記ステージの一部により構成されている請求項1に記載の蛍光顕微鏡装置。
【請求項5】
前記移動機構が、前記ステージに対する対物レンズの角度を変更させるよう両者を相対的に移動させる請求項2に記載の蛍光顕微鏡装置。
【請求項6】
前記移動機構が、所定の軸線回りに対物レンズを揺動させ、
前記遮光手段が、前記第1のカバー部材および第2のカバー部材を前記軸線を中心とした回転体形状とすることにより構成されている請求項5に記載の蛍光顕微鏡装置。
【請求項7】
ステージに対して試料を角度変更可能に支持する試料支持機構を備える請求項2に記載の蛍光顕微鏡装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−262031(P2008−262031A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−104700(P2007−104700)
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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