説明

融着部材における自己離型性ナノ粒子充填剤

【課題】オイルレス融着のための、長い耐用年数を有する高性能な融着用の新規なトップコート材料を有する融着部材およびそれらの製造方法を提供する。
【解決手段】融着部材を含む融着サブシステムであって、前記融着部材が、基材と前記基材上に配置されたトップコート層とを含み、前記トップコート層が、フルオロポリマー中に均一に分散され、前記トップコート層に連続自己離型性表面を形成するフッ素化ナノ粒子を含む融着サブシステムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置および融着部材に関し、詳細には、融着部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真印刷プロセスにおいては、融着サブシステム内の融着部材と加圧部材によって形成されるニップを通して媒体を搬送し、該融着ニップを加熱することにより、媒体上のトナー画像を融着部材の表面と接触させて媒体上のトナー画像を定着させる。加熱によってトナーは粘着性になり、媒体に付着する。しかし、トナー画像のトナー粒子は、媒体に付着することに加えて融着部材にも吸着することがあり、その結果、オフセット画像が生ずることとなる。融着器上のオフセット画像をクリーニングしないと、それが次の回転で該媒体に印刷され、印刷物に望ましくない画像不良が生じることがある。トナー汚染、すなわち熱で軟化したトナー粒子の融着部材表面への付着、を克服するために、従来の溶融融着技術では、フルオロエラストマーをなどの非粘着性コーティングで被覆された融着部材が用いられている。しかし、フルオロエラストマー融着ロールは、現在、離型のためにPDMS系融着オイルの使用を必要とし、これは、最終用途で問題を生じさせる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、これらの問題および先行技術の他の問題を克服して、オイルレス融着のための、長い耐用年数を有する高性能な融着用の新規なトップコート材料を有する融着部材、およびそれらの製造方法を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
様々な実施形態によれば、融着部材を備える融着サブシステムが提供される。前記融着部材は、基材および該基材上に配置されたトップコート層を含んでいてもよく、前記トップコート層は、フルオロポリマー中に実質的に均一に分散され、トップコート層に連続自己離型性表面を形成するフッ素化ナノ粒子を含む。
【0005】
他の実施形態によれば、融着サブシステム部材の製造方法が提供される。前記方法は、基材を含む融着部材を提供すること、および金属アルコキシドとフルオロアルキルシランを含む混合物の共加水分解によってフッ素化ナノ粒子を形成することを含んでいてもよい。前記方法はまた、フッ素化ナノ粒子をフルオロポリマーに実質的に均一に分散するようにフルオロポリマーにフッ素化ナノ粒子を分散させて、コーティング組成物を形成すること、および前記コーティング組成物を基材上に塗布して被覆基材を形成することを含んでいてもよい。前記方法は、被覆基材を硬化させて基材上にトップコート層を形成すること、およびトップコート層が連続自己離型性表面を含むようにトップコート層を研磨することをさらに含んでいてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明の様々な実施形態による、印刷装置の一例を示す略図である。
【図2】本発明の様々な実施形態による、図1に示した融着部材の断面の一例を示す略図である。
【図3A】本発明の様々な実施形態による、通常の使用による磨耗前のトップコート層の一例を示す略図である。
【図3B】本発明の様々な実施形態による、通常の使用による磨耗後のトップコート層の一例を示す略図である。
【図4】本発明の様々な実施形態による、融着部材の断面の他の例を示す略図である。
【図5】本発明の様々な実施形態による、印刷装置の融着サブシステムを示す略図である。
【図6】本発明の様々な実施形態による、融着サブシステム部材の製造方法の一例を示す。
【図7】本発明の様々な実施形態による、画像形成方法の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
図1は、例示的な印刷装置100を示す略図である。前記印刷装置100は、電子写真感光体172、および該電子写真感光体172を均一に帯電させるための帯電ステーション174を備えていてもよい。電子写真感光体172は、図1に示すようにドラム感光体であってもよく、ベルト感光体(図示せず)であってもよい。前記印刷装置100は、撮像ステーション176も備えていてもよく、ここで、電子写真感光体172上に潜像を形成するために原文書(図示せず)を光源(図示せず)で露光してもよい。印刷装置100は、電子写真感光体172上の潜像を可視画像に変換するための現像サブシステム178、および該可視画像を媒体120に転写するための転写サブシステム179をさらに備えていてもよい。印刷装置100はまた、媒体120上に可視画像を定着させるための融着サブシステム101を備えていてもよい。融着サブシステム101は、融着部材110、加圧部材112、給油サブシステム(図示せず)、およびクリーニングウェブ(図示せず)のうちの1つ以上を備えていてもよい。前記融着部材110および/または加圧部材112は、フルオロポリマーに実質的に均一に分散されたフッ素化ナノ粒子を含むトップコート層を有していてもよい。ある実施形態では、融着部材110は、図1に示すように、融着ロール110であってもよい。他の実施形態では、融着部材110は、図5に示すように、融着ベルト515であってもよい。様々な実施形態において、加圧部材112は、図1に示すように加圧ロール112であってもよく、加圧ベルト(図示せず)であってもよい。
【0008】
図2は、例示的な融着部材110の断面を示す略図である。様々な実施形態において、融着部材110は、基材102の上に配置されたトップコート層106を含んでいてもよい。図3Aおよび図3Bに示すように、トップコート層106、306A、306Bは、フルオロポリマー309の全体にわたって実質的に均一に分散されたフッ素化ナノ粒子307を含み、トップコート層106、306A、306Bに連続自己離型性表面108、308を形成してもよい。様々な実施形態において、前記フッ素化ナノ粒子307は、実質的に凝集していなくてもよい。本明細書では、「実質的に凝集していないフッ素化ナノ粒子」という用語は、単一のフッ素化ナノ粒子と、フッ素化ナノ粒子の小さなクラスタの両方を指す。本明細書では、「自己離型性表面」という用語は、最少量の融着オイルで、または融着オイルを使用せずに、媒体を離型させる表面を指す。また、本明細書では、「連続自己離型性表面」という用語は、磨耗による厚みの減少にかかわらず、自己離型性表面を維持する表面を指す。特定の理論に拘束されることを意図するものではないが、トップコート層106、306A、306Bの連続自己離型性表面108、308は、本質的に低い表面エネルギーを有するフッ素化ナノ粒子307をフルオロポリマー309中に実質的に均一に分散した結果であると考えられる。図3Aに示すように、厚さがtAであるトップコート層306Aは、実質的に表面付近にフッ素化ナノ粒子307が存在するため、自己離型性表面308を有する。図3Bは、厚さがtBである磨耗後のトップコート層306Bを示す。ここで、tBは、tAより小さい。しかし、磨耗にもかかわらず、トップコート層306Bは、実質的に表面付近にフッ素化ナノ粒子307が存在するため、依然として自己離型性表面308を有する。したがって、トップコート層106、306A、306Bは、通常の使用による磨耗のため厚みが変わった後でさえ、融着時に連続自己離型性表面108、308が維持される。
【0009】
様々な実施形態において、フッ素化ナノ粒子307は、出発材料として、金属アルコキシドとフルオロアルキルシランを含む混合物の共加水分解により形成されるフッ素化酸化物のナノ粒子を含んでいてもよい。金属アルコキシドの例には、オルトケイ酸テトラメチル、オルトケイ酸テトラエチル、オルトケイ酸テトラブチル、オルトケイ酸テトラプロピル、チタンブトキシド、チタンプロポキシド、チタンエトキシド、チタンメトキシド、ジルコニウムエトキシド、ジルコニウムプロポキシド、およびこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。例えば、フルオロアルキルトリクロロシラン、フルオロアルキルトリメトキシシラン、およびフルオロアルキルトリエトキシシランなど、任意の適したフルオロアルキルシランを使用してもよい。この場合、フルオロアルキル基は、約6〜約30個の炭素原子、および少なくとも5個のフッ素原子を含んでいてもよい。フルオロアルキルシランの例には、ノナフルオロへキシルトリメトキシシラン、ノナフルオロへキシルトリエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン、およびこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。オルトケイ酸テトラエチルとトリデカフルオロ(オクチル)トリエトキシシランの加水分解および縮合によるフッ素化シリカナノ粒子の調製例を下のスキーム1に示す。
【化1】

【0010】
ある実施形態では、金属アルコキシドおよびフルオロアルキルシランを含む出発材料としての混合物もまた、シラン化合物、アミノシラン化合物、またはフェノール含有シラン化合物のうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。アミノシラン化合物の例には、4−アミノブチルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、およびこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。フェノール含有シラン化合物の例としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない。
【化2】

(式中、Rは、1〜約15個の炭素原子を含むヒドロカルビル基であり、Yは、例えば、ヒドロキシル基、アルコキシ基、ハロゲン基、カルボキシレート基など、任意の適した基であり、nは、1〜12の整数であり、mは、1〜3の整数である。)
【0011】
ある場合では、フッ素化ナノ粒子307の平均粒径は、約10nm〜約500nmの範囲であってもよく、他の場合には、約10nm〜約200nmの範囲であってもよく、さらに他の場合には、約10nm〜約100nmの範囲であってもよい。ある実施形態では、フッ素化ナノ粒子307は、トップコート層106、306A、306Bの組成物の重量に対して、約0.5重量%〜約20重量%の範囲の量で存在していてもよく、他の実施形態では、トップコート層106、306A、306Bの組成物の重量に対して、約5重量%〜約15重量%の範囲の量で存在していてもよい。
【0012】
様々な実施形態では、フルオロポリマー309は、フルオロポリマー309の重量に対して、約60重量%より多いフッ素を含有していてもよい。ある実施形態では、フルオロポリマー309としては、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)、ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)、ペルフルオロ(エチルビニルエーテル)、およびこれらの混合物からなる群より選択される1以上のモノマー繰り返し単位を有するポリマーが挙げられる。しかし、任意の他の適したモノマー繰り返し単位を使用することができる。フルオロポリマー309の例には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ペルフルオロアルコキシポリマー樹脂(PFA)、テトラフルオロエチレン(TFE)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)のコポリマー、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)とフッ化ビニリデン(VDFまたはVF2)のコポリマー、テトラフルオロエチレン(TFE)とフッ化ビニリデン(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)のターポリマー、およびテトラフルオロエチレン(TFE)とフッ化ビニリデン(VF2)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)のテトラポリマーが含まれるが、これらに限定されない。
【0013】
ある実施形態では、フッ素化ナノ粒子307は、フルオロポリマーと化学結合している部分(moiety)を含むことができる。他の実施形態では、例えば、ビス−フェノール、ジアミンおよびアミノシランなどの架橋剤を使用して、フルオロポリマー309を架橋してもよい。
【0014】
ある場合では、トップコート層106の厚さは、約50nm〜約300μmであってもよく、他の場合には、トップコート層106の厚さは、約3μm〜約80μmであってもよい。
【0015】
図4は、別の例示的な融着部材410の断面を示す略図である。前記融着部材410は、基材402上に配置された柔軟層404と、該柔軟層404上に配置され、フルオロポリマーに分散されたフッ素化ナノ粒子を含むトップコート層406を含んでいてもよく、トップコート層106、406は連続自己離型性表面108、308を有する。様々な実施形態において、柔軟層404は、シリコーン、フルオロシリコーンまたはフルオロエラストマーのうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。柔軟層の材料の例には、室温加硫(RTV)シリコーンゴム;高温加硫(HTV)シリコーンゴム;および低温加硫(LTV)シリコーンゴムなどのシリコーンゴムが含まれるが、これらに限定されない。市販シリコーンゴムの例には、SILASTIC(登録商標)735ブラックRTVおよびSILASTIC(登録商標)RTV(Dow Corning Corp.、ミシガン、ミッドランド)、ならびに106RTV Silicone Rubberおよび90 RTV Silicone Rubber(General Erectric、ニューヨーク、アルバニー)が含まれるが、これらに限定されない。他の適したシリコーン材料としては、Sylgard(登録商標)182(Dow Corning Corp.、ミシガン、ミッドランド);シロキサン(好ましくは、ポリジメチルシロキサン);Silicone Rubber 552(Sampson Coatings、バージニア、リッチモンド)などのフルオロシリコーン;ジメチルシリコーン;ビニル架橋熱硬化性ゴムまたはシラノール室温架橋材などの料液体シリコーンゴムなどが挙げられるが、これらに限定されない。ある場合には、柔軟層404は、約10μm〜約10mmの厚みであってもよく、他の場合には、約3mm〜約8mmの厚みであってもよい。
【0016】
図1、2、4に示す融着部材110、410において、基材102、402は、例えば、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミドイミド、ポリケトン、ポリフタルアミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、およびポリアリールエーテルケトンなどの高温プラスチック基材であってもよい。他の実施形態では、基材102、402は、例えば、スチールおよびアルミニウムなどの金属基材であってもよい。基材102、402は、例えば、ロールおよびベルトなどの任意の適した形を有していてもよい。ベルト形状の基材102、402の厚みは、約50μm〜約300μmであってもよく、ある場合には、約50μm〜約100μmであってもよい。円筒形状またはロール形状の基材102、402の厚みは、約2mm〜約20mmであってもよく、ある場合には、約3mm〜約10mmであってもよい。
【0017】
様々な実施形態において、融着部材110、410はまた、1つ以上の任意の接着層(図示せず)を含んでいてもよい。前記任意の接着層(図示せず)は、基材402と柔軟層404の間に、および/または柔軟層404とトップコート層406の間に、および/または基材102とトップコート層106の間に配置して、確実に層106、404、406のそれぞれが互いに適切に結合し、性能目標を果たすことができる。前記任意の接着層の材料の例には、エポキシ樹脂およびポリシロキサンが含まれるが、これらに限定されない。
【0018】
印刷装置100は、図1に示すような電子写真式プリンターであってもよい。ある実施形態では、印刷装置100は、インクジェットプリンターであってもよい(図示せず)。
【0019】
図5は、電子写真式プリンターにおけるベルト形状の融着サブシステム501の例を示す略図である。融着サブシステム501は、融着ベルト515および回転可能な加圧ロール512を有していてもよく、これらは、融着ニップ511を形成するように取り付けられる。様々な実施形態において、融着ベルト515および加圧ロール512は、図2に示すように基材102の上に、または図4に示すように柔軟層404の上に配置されたトップコート層106、406、およびフルオロポリマー309に分散されたフッ素化ナノ粒子307を含み、トップコート層106、406が連続自己離型性表面108、308を有していてもよい。融着されていないトナー画像を有する媒体520は、融着用の融着ニップ511を通して搬送される。
【0020】
融着部材110、410、515における、フルオロポリマー309に分散されたフッ素化ナノ粒子307を含む本発明のトップコート層106、406の例は、オイルレス融着に必要とされる低い表面エネルギーおよび化学的不活性を有する。さらに、トップコート層106、406中のフッ素化ナノ粒子307充填剤は、トップコートの弾性率を増大させることができ、融着部材110、410、515の長期耐用に望ましい低表面エネルギーの融着表面と接触すると用紙端がスライドし得るので、前縁および側縁の磨耗の減少を生じさせることができる。加えて、トップコート層106、406は、例えば、スプレーコーティング、浸漬塗布、ブラシコーティング、ローラーコーティング、スピンコーティング、キャスティングおよびフローコーティングなどの単純な技術を用いて形成することができる。
【0021】
様々な実施形態において、図1および5に示す加圧部材112、512も、例示的融着部材110、410の図2および図4に示すような断面を有していてもよい。
【0022】
図6は、例示的な融着サブシステム部材の製造方法600を概略的に図示するものである。方法600は、基材を含む融着部材を用意するステップ621、および金属アルコキシドとフルオロアルキルシランとを含む混合物の共加水分解によってフッ素化ナノ粒子を形成するステップ622を含んでいてもよい。方法600は、フルオロポリマー中に実質的に均一にフッ素化ナノ粒子が分散されるようにフルオロポリマーにフッ素化ナノ粒子を分散させて、コーティング組成物を形成するステップ623も含んでいてもよい。様々な実施形態において、フルオロポリマーとしては、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)、ペルフルオロ(エチルビニルエーテル)およびペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)からなる群より選択される1つ以上のモノマー繰り返し単位を有するポリマーを挙げることができる。フルオロポリマーの例には、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ペルフルオロアルコキシポリマー樹脂(PFA)、テトラフルオロエチレン(TFE)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)のコポリマー、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)とフッ化ビニリデン(VDFまたはVF2)のコポリマー、テトラフルオロエチレン(TFE)とフッ化ビニリデン(VDF)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)のターポリマー、およびテトラフルオロエチレン(TFE)とフッ化ビニリデン(VF2)とヘキサフルオロプロピレン(HFP)のターポリマーが含まれるが、これらに限定されない。ある実施形態では、フルオロポリマーにフッ素化ナノ粒子を分散させるステップ623は、フッ素化ナノ粒子をフルオロポリマーに実質的に均一に分散させるように、フルオロポリマーとフッ素化ナノ粒子を混合溶解することを含んでいてもよい。他の実施形態では、フルオロポリマーにフッ素化ナノ粒子を分散させるステップ623は、第一の溶剤にフッ素化ナノ粒子を分散させること、第二の溶剤中にフルオロポリマーを含むフルオロポリマー溶液を用意すること、およびフッ素化ナノ粒子がフルオロポリマーに実質的に均一に分散されるように前記分散させたナノ粒子を該フルオロポリマー溶液に添加して、コーティング組成物を形成することを含んでいてもよい。前記第一の溶剤および第二の溶剤としては、これらに限定されないが、水、アルコール、C5〜C18脂肪族炭化水素、C6〜C18芳香族炭化水素、エーテル、ケトン、アミドおよびこれらの混合物などの任意の適した溶剤を使用することができる。方法600は、前記コーティング組成物にフルオロポリマー架橋剤を添加するステップ624をさらに含んでいてもよい。架橋剤の例には、ビス−フェノール、ジアミン、およびアミノシロキサンが含まれるが、これらに限定されない。
【0023】
融着サブシステム部材の製造方法600は、基材上に前記コーティング組成物を塗布して被覆基材を形成するステップ625をさらに含んでいてもよい。例えば、スプレーコーティング、浸漬コーティング、ブラシコーティング、ローラーコーティング、スピンコーティング、キャスティングおよびフローコーティングなどの、基剤のある領域に分散液を塗布するための任意の適した技術を用いることができる。ある実施形態では、基材上にコーティング組成物を塗布して被覆基材を形成するステップ625は、基材上に柔軟層を形成すること、および該柔軟層上にコーティング組成物を塗布して被覆基材を形成することを含んでいてもよい。これらに限定されないが、シリコーン、フルオロシリコーンおよびフルオロエラストマーなどの任意の適した材料を使用して柔軟層を形成することができる。
【0024】
方法600は、前記被覆基材を硬化させて基材上にトップコート層を形成するステップ626、およびトップコート層の表面に連続自己離型性表面が形成されるようトップコート層を研磨するステップ627を含んでいてもよい。様々な実施形態において、硬化は、約200℃〜約400℃の範囲で行ってもよい。特定の理論に拘束されるものではないが、この硬化プロセス中にフッ素化架橋剤、および/または第一の溶剤および第二の溶剤が蒸発または分解して、トップコート層にフッ素化ナノ粒子およびフルオロポリマーのみが残ると考えられる。例えば、パッドを用いた機械的研磨などの、任意の適した研磨方法を用いることができる。
【0025】
図7は、例示的な画像形成方法700を示す。方法700は、媒体上にトナー画像を形成するステップ781、フルオロポリマーに分散されたフッ素化ナノ粒子を含むトップコート層を有する融着部材を備えた融着サブシステムを用意するステップ782、融着サブシステムを通して媒体を搬送するステップ783、および融着用ニップを加熱して媒体上にトナー画像を融着するステップ784を含んでいてもよい。
【実施例】
【0026】
実施例1−フッ素化ナノ粒子の調製
オルトケイ酸テトラエチル約20.8部を、エタノール約100mL中の約5.1部のトリデカフルオロ(オクチル)トリエトキシシランに添加した。前記溶液を水酸化アンモニウム/エタノール溶液(エタノール約100mL中に約24mLの28% NH3・H2O)と混合し、室温で約12時間、激しく攪拌した。得られた混合物を約110℃で約1時間、空気中で加熱した。沈殿したフッ素化シリカ粒子を洗浄、濾過した。粒径分析装置(商品名:Nanotrac 252;Microtrac Inc.、フロリダ、ノース・ラルゴ)で測定した粒径は、約10nm〜約100nmの範囲であった。
【0027】
実施例2−フルオロポリマーへのフッ素化ナノ粒子の分散
フルオロポリマー複合材「AFC」を次のように調製した。二軸スクリュ押出機を、約20回転/分(rpm)のローター速度で約20分間使用して、約5グラムのフッ素化ナノ粒子と約50グラムのViton GF(E.I.du Pont de Nemous,Inc.から入手可能)を約170℃で混合して、約10pphのフッ素化ナノ粒子を含有するポリマー複合材を形成した。同様の手順を用いて、20pphのフッ素化ナノ粒子を有するフルオロポリマー複合材「BFC」、および30pphのフッ素化ナノ粒子を有するフルオロポリマー複合材「CFC」を調製した。
【0028】
実施例3−トップコート層の調製
メチルイソブチルケトン(MIBK)に溶解した17重量%のフルオロポリマー複合材AFC、BFCおよびCFCをそれぞれ含有する3種のコーティング組成物ACC、BCCおよびCCCは、5pph(VITON(登録商標)−GFの重量に対する百分率)のAO700架橋剤(アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン架橋剤;Gelest社製)および24pphのメタノールを配合して調製した。前記コーティング組成物ACC、BCCおよびCCCを、バーコーターで3つのアルミニウム基材にコートし、約24時間、49℃〜218℃での段階的加熱処理によりコーティングを硬化させた。
【表1】

【0029】
実施例4−実施例3の試料の表面自由エネルギーの測定
ギャップコートしたViton/F−NP複合材コーティング試料A、BおよびCについて、調製時のまま、ならびにW−20研磨紙を使用して研磨した後(試料AP、BPおよびCP)の表面自由エネルギーを測定した。研磨は、使用に先立ち、iGen Fuserロールに用いられるスーパー仕上げ手順を真似た。比較のために、Viton/AO700対照試料D、および表面上に堆積させたフッ素化ナノ粒子の層を有するViton/AO700コーティング(E)も作製した。それぞれのサンプルの表面自由エネルギーを、水、ホルムミドおよびジヨードメタンの3つの液体の液滴の接触角により測定した。表面自由エネルギーを表2に示す。試料A、BおよびC(調製時のままのギャップ塗工したViton/F−NP複合材コーティング)の表面自由エネルギーは、対照試料Dのものと同等であった。しかし、研磨により、10pphの試料APおよび20pphの試料BPについては、表面自由エネルギーが目標値18mN/m2(Tefron(登録商標)についての値)近くに低下し、30pphの試料CPについては、表面自由エネルギーがTeflon(登録商標)の値より低かった。さらに、30pphを添合することにより、Viton/AO700表面上にフッ素化ナノ粒子のオーバーコートを有する試料Eで観察された、約12mN/m2という非常に低い表面自由エネルギー値に近づく。
【0030】
【表2】

【0031】
表2に記載した結果は、フッ素化ナノ粒子などの自己離型性ナノ粒子充填剤の添合により、フルオロエラストマーコーティングの表面エネルギーを大きく低下させることができることを示唆している。さらに、本発明のアプローチは、融着ロールにおいて現在使用されている材料の有するフルオロレラストマー特性を維持しながら、Teflon(登録商標)様材料の有する低い表面エネルギー特徴を兼備する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
融着部材を含む融着サブシステムであって、
前記融着部材が、
基材と、
前記基材上に配置されたトップコート層とを含み、
前記トップコート層が、フルオロポリマー中に均一に分散され、前記トップコート層に連続自己離型性表面を形成するフッ素化ナノ粒子を含む融着サブシステム。
【請求項2】
前記フルオロポリマーが、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、ペルフルオロ(メチルビニルエーテル)、ペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)、およびペルフルオロ(エチルビニルエーテル)からなる群より選択される1つ以上のモノマー繰り返し単位を含む、請求項1に記載の融着サブシステム。
【請求項3】
前記フッ素化ナノ粒子が、前記フルオロポリマーと化学結合している部分をさらに含む、請求項1または請求項2に記載の融着サブシステム。
【請求項4】
前記フッ素化ナノ粒子が、金属アルコキシドとフルオロアルキルシランとを含む混合物の共加水分解によって形成されたフッ素化酸化物のナノ粒子を含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の融着サブシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−211209(P2010−211209A)
【公開日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−51412(P2010−51412)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】