説明

融雪用電熱屋根材

【課題】この発明は、屋根の軒上に敷設し、該部の積雪を加熱することを目的とした融雪用屋根材に関する。
【解決手段】この発明は、屋根の軒部の上部へ設置する金属板の上面に耐候層を設け、前記金属板の下面にカーボン層を発熱材とする電熱シートを層着し、該電熱シートの下面に断熱層を設けると共に、前記電熱シートは、合成樹脂製の絶縁シートの間に、カーボン織布又はカーボン粒よりなるカーボンシートを挟着し、該カーボンシートに電極箔を並列層着し、前記電極箔に接続具付きのリード線を接続したことを特徴とする融雪用電熱屋根材により、目的を達成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、屋根の軒先の上面に葺き、又は軒先瓦の上面に設置して、該部の雪を融かすことを目的とした融雪用電熱屋根材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来融雪用屋根材としては、屋根の軒先上に敷設する融雪用パネルヒーターが知られている。
【0003】
前記パネルヒーターとしては、例えば二枚の絶縁板の間にニクロム線などの電熱線を挟着固定したものが一般的である。前記ニクロム線を使用する場合には、適切な配線を施さないと、均一パネルヒーターとすることができない。
【0004】
また発熱量、最高温度の制御などの電流制御が必要であり、単位パネルヒーターを接続する場合もあった。
【特許文献1】特開2005−248680
【特許文献2】特開2001−12026
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来のパネルヒーターは、ニクロム線などの電熱線を絶縁板に挟着した構造であり、絶縁板としては、合成樹脂板又はセラミックス板を用いるので、絶縁性は大きいが、伝熱性が小さい場合も少なくない。また合成樹脂板の場合には耐候性の大きい材質を用いなければならない問題点があった。
【0006】
またニクロム線を電熱線として使用する場合には、発熱制御の為に、抵抗器その他の電圧制御器(電流調整器)が必要であった。
【0007】
更にパネルヒーターは平板状が普通であって、曲面に敷設するには、特注を必要とし、全体として固着につき特別の配慮を必要とするなど幾多の問題点があった。
【0008】
また融雪が必要なのは、降雪時機で、特に多量の雪が降る季節であって、例えば11月〜3月頃までであり、長くとも5ヶ月にすぎないから、従って7ヶ月は降雨時の邪魔にならないことが要件であると共に、永年に亘り設置したままでも老化又は破損することのない構造でなくてはならない。
【0009】
更に電気料が多大になるおそれがあるので、可能ならば自家発電で融雪に必要な電気量を得ることが好ましい。降雪時に必要な電気量を得ることができれば、融雪の不必要時には前記融雪用電気を日常の電気に回すことにより、一般電気料を激減させることができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、屋根葺きに使用できる金属板の裏面に電熱シートを層着して前記従来のパネルヒーターとすることにより、前記従来の問題点を解決したのである。
【0011】
即ちこの発明は、屋根の軒部の上部へ設置する金属板の上面に耐候層を設け、前記金属板の下面にカーボン層を発熱材とする電熱シートを層着し、該電熱シートの下面に断熱層を設けると共に、前記電熱シートは、合成樹脂製の絶縁シートの間に、カーボン織布又はカーボン粒よりなるカーボンシートを挟着し、該カーボンシートに電極箔を並列層着し、前記電極箔に接続具付きのリード線を接続したことを特徴とする融雪用電熱屋根材であり、金属板は、屋根葺用の屋根材の形状、又は瓦上へ嵌着設置できる形状としたものである。
【0012】
また他の発明は、屋根葺用の屋根材を形成する金属板は、方形板の一縁上面側に、上掛止鉤条を設け、他縁下面側に、前記上掛止鉤条と掛止する形状の下掛止鉤条を設けたものであり、瓦上へ設置する金属板は、瓦と相似形に湾曲すると共に、少なくともその一縁に瓦又は屋根に設けた掛止具へ掛止できる鉤片を形成したものである。
【0013】
前記カーボン織布は、例えば和紙の繊維で織布し、この織布を炭化して製造したものである。
【0014】
前記発明において、金属板により、屋根葺をする場合には、その金属板を使用し、瓦上に設置する場合には、瓦の上面に敷設できるように相似形に湾曲させる。前記により降雪時は勿論、降雨時にも支障なく使用することができる。屋根に敷設する電熱屋根材は、金属板で葺く屋根の場合には、該金属板の裏面に電熱シートを層着すればよいが、瓦屋根の場合には、瓦上へ電熱屋根材を敷設する。
【0015】
前記電熱屋根材は、軒先から40cm〜60cmに亘って敷設する。従って、屋根材の幅が40cmの場合には、そのまま利用し、30cmの場合には2列に亘って敷設する。
【0016】
また瓦の場合には、2列又は3列に亘って敷設すれば、目的を達成することができる。瓦の場合には、瓦の上面との間に2cm〜3cm位の隙間を設けて雨水を流すようにする場合と、瓦面に接着して敷設し、雨水は金属板上を流すようにすることもできる。
【0017】
前記のように、軒先から40cm〜60cmに亘って融雪材を敷設すれば、この間の積雪は、融解して滑り落ちるので、軒先から棟迄の積雪は順次滑降して、軒先から全部落下させることができる。
【0018】
また発電については、現に知られている太陽電池、風力発電、又は廃棄物を燃焼させた際に発生する熱を利用して発生させた電気を利用することにより、前記融雪時の給電に関する電気料増加の問題点を解決することができる。
【0019】
前記屋根葺きに使用できる金属板としては、例えば方形の鋼板又はアルミ板の表面に耐候性塗料を塗布して耐候層とし、前記金属板の一縁上面側に、上掛止鉤条を設け、他縁下面側に前記上掛止鉤条と掛止する下掛止鉤条を設けると共に、前記金属板の下面へ電熱シートを層着し、該電熱シートの下面に断熱層を設けて、電熱屋根材を構成した。
【0020】
また瓦の上面へ敷設する電熱屋根材の場合には、前記方形の金属板を瓦の上面と相似形に湾曲成形すると共に、前記金属板の下面に電熱シートを層着し、前記金属板の上縁側に、瓦の上側面と掛止する突条を設けて金属板を瓦上へ固定できるようにしたものである。
【0021】
前記は一例であって、瓦上へ敷設する金属板に関し、設置状態を堅固にする為に適宜止め構造を使用することができる。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、金属板の裏面に電熱シートを層着し、その下面に断熱層を設けたので、電熱シートに通電すれば所定の温度(例えば60℃)に発熱するので、金属板を伝熱して、金属板上の雪を効率よく融雪する効果がある。然して面ヒーターとなるので、金属板に接する雪は均等に加温され、融雪される。少なくとも金属板上の雪が氷結することがないので、或程度(例えば20cm)積もった雪は逐次流下し、軒先から地上へ落下する。斯様に軒先上の雪が融雪すれば、その上部から棟までの雪は自分の重量によって屋根上を滑降し、逐次落下するので、屋根へ過度に積雪することなく、従って雪掻きする必要がなくなる。
【0023】
またこの発明の屋根材によれば、雨水は抵抗なく流下するので、降雨時に支障なく1年中敷設しておくことができる。また金属板葺きの屋根においては、軒先の金属板のみに電熱シートを層着し、断熱材で覆えばよいので、従来使用している屋根材をそのまま使用することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
上縁に上鉤条を設け、下縁に下鉤条を設けた方形の鋼板の表面に、耐錆塗料を塗布し、裏面に電熱シートを層着し、該電熱シートの下面に断熱材を層着して融雪材を構成する。
【0025】
前記電熱シートは、前記鋼板よりも小さい方形(例えば5cm位小さい寸法)であって、絶縁シートによりカーボン層と、電極箔とを挟着し、密封して一体的な電熱シートであり、前記電極にリード線を接続し、リード線に接続具が接続してある。従って屋根上へ融雪材を敷設する毎に前記電熱シートを接続する。そして、各電熱シートは電源に対し、並列接続させている。従って一つの電熱シートが何等かの理由によって通電しない為に発熱しない場合があっても、他の電熱シートは支障なく発熱する。
【0026】
この発明における電熱シートの電源は、原則的に現地発電による。そこで太陽熱発電及び風力発電が考えられる。太陽熱発電は、日照との関係で冬季は不利だけれども、春、夏、秋等に発電し、余剰電力を売れば、冬季の補助になる。また風力発電は、風向、風量などで地域地形に左右される。次に廃棄物を燃焼させ、その熱を利用する発電は、地方自治体などで十分可能性のある企画である。
【0027】
前記のように、現地調達による配電も考慮すべきである。
【実施例1】
【0028】
この発明の電熱屋根材の実施例を図1、2、3に基づいて説明する。上面に耐候性の塗料層4を設けた厚さ3mm、長さ50cm、幅40cmのアルミ板1の上縁に、上掛止鉤条2を設け、下縁に、前記上掛止鉤条2と掛止できる下掛止鉤条3を設け、前記アルミ板1の下面に電熱シート5を層着し、電熱シート5の下面に発泡ウレタンよりなる断熱板6を層着してこの発明の屋根材10を構成する。
【0029】
前記電熱シート5は、耐熱性合成樹脂シート(例えばナイロンシート7)の上面にカーボン織布8を重ね、カーボン織布8の上面に、アルミ箔よりなる短冊状の電極箔9a、9bを当接し、カーボン織布8と、電極箔9a、9b上へ、ナイロンシート7を被着し、前記上下のナイロンシート7、7の四周を熱着して前記水密性の電熱シート5を構成した。図中11a、11bはリード線、12は接続器である。
【0030】
前記接続器12は、図3のように合成樹脂製の匣体13の内部に銅板を屈接した当接板14が内設され、該当接板14の当接片14a、14bに、リード線11a、11bを当接させて接続する。図中11cはアース線である。前記電極箔9a、9bの端縁は、半田15を利用してリード線11a、11bに固定する。
【0031】
前記において、例えば図1(a)のように、方形電熱シートの四周に接続器12を接続しておけば、電熱シートを自由に接続して電熱面積を増加させることができる。
【0032】
前記実施例は、電熱層としてカーボン織布を用いたが、絶縁シートの面へ、カーボン粒子を塗布しても同様である。
【0033】
前記において、リード線から給電すれば、電気は例えば電極箔9aから矢示21のように流れ、電極箔9bを矢示22のように流動する。
【0034】
前記カーボン層は、電熱により赤外線を放射するので、融雪効率を向上し得ると共に、製造時に、最高温度を規制することができるので、例えば温度上限を80℃にするとか、60℃にするとか選定することにより、過熱又は発火などによる不慮の事故を未然に防止することができる。
【実施例2】
【0035】
この発明の他の実施例を図4に基づいて説明すると、瓦の表面形状に湾曲した鋼板15の下面に電熱シート5を層着して、瓦17上へ設置できる屋根材16としたものである。この屋根材16は、瓦17上へ接着し、又は前記鋼板15に設けた掛止片18により瓦へ引っ掛けて固定する。図中19は断熱板である。
【0036】
前記実施例によれば、既設の瓦屋根にも自由に敷設できる特性がある。前記実施例は屋根材16の掛止片18を瓦17に掛止したが、屋根に設置した掛止杆(図示してない)へ固定することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】(a)この発明の電熱シートの平面図、(b)同じく縦断側面図、(c)同じく一部断面拡大図、(d)同じく他の例の一部断面拡大図。
【図2】(a)同じく敷設状態の実施例の一部平面図、(b)同じく掛止状態を示す断面図。
【図3】(a)同じく接続器の一部を省略した拡大平面図、(b)同じく一部を省略した拡大正面図、(c)同じく接続部の拡大平面図、(d)同じく断面図。
【図4】同じく他の実施例の斜視図。
【符号の説明】
【0038】
1 アルミ板
2 上鉤条
3 下鉤条
4 塗料層
5 電熱シート
6 断熱板
7 ナイロンシート
8 カーボン織布
9a、9b 電極
10 屋根材
11a、11b 屋根材
12 接続器
13 匣体
14 当接板
15 金属板
16 屋根材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根の軒部の上部へ設置する金属板の上面に耐候層を設け、前記金属板の下面にカーボン層を発熱材とする電熱シートを層着し、該電熱シートの下面に断熱層を設けると共に、前記電熱シートは、合成樹脂製の絶縁シートの間に、カーボン織布又はカーボン粒よりなるカーボンシートを挟着し、該カーボンシートに電極箔を並列層着し、前記電極箔に接続具付きのリード線を接続したことを特徴とする融雪用電熱屋根材。
【請求項2】
金属板は、屋根葺用の屋根材の形状、又は瓦上へ嵌着設置できる形状としたことを特徴とする請求項1記載の融雪用電熱屋根材。
【請求項3】
屋根葺用の屋根材を形成する金属板は、方形板の一縁上面側に、上掛止鉤条を設け、他縁下面側に、前記上掛止鉤条と掛止する形状の下掛止鉤条を設けたことを特徴とする請求項1記載の融雪用電熱屋根材。
【請求項4】
瓦上へ設置する金属板は、瓦と相似形に湾曲すると共に、少なくともその一縁に瓦又は屋根に設けた掛止具へ掛止できる鉤片を形成したことを特徴とする請求項2記載の融雪用電熱屋根材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−144381(P2009−144381A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−321871(P2007−321871)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(303013039)
【Fターム(参考)】