融雪路盤ユニットおよび融雪路盤システム
【課題】 温風を送る上流側路面と下流側路面との温度差を減少して融雪ムラが生じるのを抑制し、所望の路面領域を融雪することができる融雪路盤ユニットおよび融雪路盤システムを提供する。
【解決手段】 熱媒体である温風が流れる下部通気路2と上部通気路3とを熱伝達性仕切部材4を介して上下に配置し、前記下部通気路2の一端に送気口21を設けるとともに、他端に前記上部通気路3と連通する連通口41を設け、前記上部通気路3の一端に排気口31を設けてなる。
【解決手段】 熱媒体である温風が流れる下部通気路2と上部通気路3とを熱伝達性仕切部材4を介して上下に配置し、前記下部通気路2の一端に送気口21を設けるとともに、他端に前記上部通気路3と連通する連通口41を設け、前記上部通気路3の一端に排気口31を設けてなる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、融雪路盤ユニットおよび融雪路盤システムに関し、特に空気を熱媒体として使用し、道路や駐車場等の路面温度の上昇ムラを抑えることで融雪ムラを抑制しうる融雪路盤ユニットおよび融雪路盤システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、空気を熱媒体として用いる融雪技術が提案されている。例えば、実開平5−71212号公報に記載の融雪用温風ヒーティング装置は、温風ボイラーに連結された鉄鋼管通風パイプが砂の中に蛇行状態で配管されており、その上面にアスファルトが舗装されている。そして、温風ボイラーから鉄鋼管通風パイプ内に温風を送ることにより、アスファルト舗装路面を暖めて融雪するものである(特許文献1)。
【0003】
また、特開2005−36426号公報に記載の無水融雪装置は、裏面に凹条を有する敷設体を複数個並べて路面を構成し、各敷設体の凹状の通風溝が温風を導入する通路を形成するように敷設されている。そして、この通路に温風を導入することにより敷設体を暖めて路面を融雪するものである(特許文献2)。
【0004】
さらに、特開2006−57239号公報に記載の融雪装置は、内部空間を有する構造躯体が路面下に埋設されており、前記内部空間に連通する空気入口部および空気出口部が設けられている。そして、前記内部空間内を定圧制御しながら温風を流動させることにより路面を暖めて融雪するものである(特許文献3)。
【0005】
【特許文献1】実開平5−71212号公報
【特許文献2】特開2005−36426号公報
【特許文献3】特開2006−57239号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1〜3に記載された発明を含め、従来の温風を熱媒体として用いる融雪技術においては、いわゆる融雪ムラが発生するという問題がある。つまり、温風は路面下を流れる間に雪を融かす熱や外気への放熱によって熱が奪われるため、その温度は上流(送気口側)から下流(排気口側)に向かうに連れて著しく降下する。このため、路面温度に差が生じ、上流側の路面では雪が融けているが、下流側の路面では雪が融けないという融雪ムラが生じてしまう。特に、空気の熱容量は水に比べて非常に小さいため、送風量が少ない場合等には温度ムラがより一層顕著となる。
【0007】
融雪ムラが発生すると、すでに雪が融けた路面から温風熱がそのまま外気へ放出され、無駄に熱を捨てることになる。特に冬場の外気温は低いため温度低下が激しく極めて融雪効率が悪い。そして、下流側の雪を融かすためには送風を長時間続けるか、より高温の温風を送る必要がありランニングコストが増大するという問題につながる。
【0008】
一方、融雪ムラが生じている状態は、外観上、「雪が融けない」印象が強くなることから、ユーザから融雪システムが故障した、不良である等のクレームが入りやすい。
【0009】
なお、上記特許文献1に記載された発明については、鉄鋼管通風パイプをU字状に曲げて配管するため、各鉄鋼管通風パイプの間には、必ず所定間隔の隙間が形成される。このため、鉄鋼管通風パイプの真上と各鉄鋼管通風パイプ同士の隙間の上とでは、路面温度に差が存在し、融雪ムラが生じやすくなっている。この融雪ムラをなくすためには鉄鋼管パイプを密に敷設しなければならない。また、一部が損傷した場合であってもパイプ全体を取り替え修理しなければならず手間もコストも大きな負担となる。
【0010】
また、上記特許文献2に記載された発明については、各通路の下流側で温度が降下するだけでなく、各通路同士の間にも低温域部分が生じてしまい、融雪ムラが生じやすい。なお、通路の本数を増やして凹条の間隔を狭くすることで通路間の温度低下を抑えることも考えられるが、その分消費エネルギーが大きくなってしまうという問題が生じる。
【0011】
さらに、上記特許文献3に記載された発明についても、融雪領域を均一に加熱できる旨が記載されているが、これらを実証する実験等は示されておらず、空気入口部から空気出口部に沿って温度が漸減するものと考えられる。また、躯体内部を一定圧力に保つ必要性から構造躯体には高い気密性が求められ、かつ、圧力制御弁等の高価な制御機器が必要となるためコストが高くなる。施工上、構造躯体の大きさに制約があり実用性に欠けるという問題もある。
【0012】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、温風を送る上流側路面と下流側路面との温度差を減少して融雪ムラが生じるのを抑制し、所望の路面領域を融雪することができる融雪路盤ユニットおよび融雪路盤システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る融雪路盤ユニットの特徴は、熱媒体である温風が流れる下部通気路と上部通気路とを熱伝達性仕切部材を介して上下に配置し、前記下部通気路の一端に送気口を設けるとともに、他端に前記上部通気路と連通する連通口を設け、前記上部通気路の一端に排気口を設けてなる点にある。
【0014】
また、本発明に係る融雪路盤ユニットの特徴は、熱媒体である温風が流れる下部通気路と上部通気路とを熱伝達性仕切部材を介して上下に配置し、前記下部通気路の一端に送気口を設けるとともに、前記上部通気路の他端に排気口を設け、前記熱伝達性仕切部材には、前記下部通気路内の温風を前記上部通気路に吹き出させる連通孔を設けてなる点にある。
【0015】
また、本発明において、前記熱伝達性仕切部材の少なくとも上部通気路側には、熱交換用フィンが長手方向に沿って設けられており、かつ、この熱交換用フィンの上端が、路盤材の下面に接触していることが好ましい。
【0016】
さらに、本発明において、前記連通口が形成された下部通気路および上部通気路の端面を上下に湾曲させた温風誘導面に形成していることが好ましい。
【0017】
また、本発明に係る融雪路盤システムの特徴は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の融雪路盤ユニットを直線状に形成するとともに、複数の直線状融雪路盤ユニットを並列配置し、各下部通気路の送気口に送風機を連結することにより、前記下部通気路から前記連通口または連通孔を介して前記上部通気路へ温風を流す点にある。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、温風を送る上流側路面と下流側路面との温度差を減少して融雪ムラが生じるのを抑制し、所望の路面領域を融雪することができる。また、温風を流す通気路の一部に欠陥が生じてもユニット単位で交換することができて路盤全面を掘り起こさなくてすむ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る融雪路盤ユニット1Aおよび融雪路盤システム10Aの第1実施形態について図面を用いて説明する。図1は、本第1実施形態の融雪路盤ユニット1Aおよび融雪路盤システム10Aを示す平面図であり、図2および図3は、それぞれ図1における2A−2A線断面図および3B−3B線断面図である。
【0020】
図1から図3に示すように、本第1実施形態の融雪路盤ユニット1Aは、主として、熱媒体である温風が流れる下部通気路2および上部通気路3と、これら下部通気路2と上部通気路3とを上下に仕切る熱伝達性仕切部材4と、上部通気路3の上面に敷設される路盤材5とから構成されている。そして、この融雪路盤ユニット1Aの下部通気路2に温風を送る送風機6を備えることにより融雪路盤システム10Aが構成されている。
【0021】
以下、各構成部について詳細に説明する。下部通気路2および上部通気路3は、融雪しようとする路面下に温風を流すためのものである。本第1実施形態では、図3に示すように、断面凹状の通気路部材7を路面に沿って埋設し、この通気路部材7の内部空間を板状の熱伝達性仕切部材4によって上下2層に分割することで、下部通気路2および上部通気路3を構成するようになっている。このため、下部通気路2と上部通気路3とは、熱伝達性仕切部材4を介して伝熱可能な状態で上下平行に設けられる。
【0022】
また、図2に示すように、下部通気路2の一端には、温風を送気する送気口21が設けられ、上部通気路3の一端には、温風を排気する排気口31が設けられている。また、下部通気路2および上部通気路3は、その他端に設けられた連通口41によって連通されている。これにより送気口21から導入された温風は、下部通気路2を流れた後に連通口41から上部通気路3へ流入し、その流れ方向が反転されて排気口31から排出されるようになっている。
【0023】
熱伝達性仕切部材4は、下部通気路2を流れる温風と、上部通気路3を流れる温風との間で熱伝達させる役割を果たすものである。本第1実施形態において、熱伝達性仕切部材4は、熱伝達率の高いアルミニウム板によって形成されており、通気路部材7の上下方向における略中央位置に固定されている。なお、本第1実施形態では、熱伝達性仕切部材4の端部をカットすることにより連通口41を構成しているが、これに限らず、熱伝達性仕切部材4の端部に孔を空けて構成してもよい。
【0024】
また、本第1実施形態において、熱伝達性仕切部材4の下部通気路2側(下部通気路2の上面)および上部通気路3側(上部通気路3の下面)には、熱交換用フィン8が設けられている。この熱交換用フィン8は、熱伝達性仕切部材4の表面積を増やして下部通気路2を流れる温風から上部通気路3を流れる温風への熱交換効率を向上させるものである。本第1実施形態では、図2および図3に示すように、アルミニウム板からなる3枚の熱交換用フィン8が、融雪路盤ユニット1Aの長手方向に沿って延在されている。
【0025】
また、本第1実施形態では、後述するように、融雪ムラを低減するため、上部通気路3側の各熱交換用フィン8は、その上端を路盤材5の下面に接触させており、下部通気路2側の各熱交換用フィン8は、その下端を下部通気路2の底面に接触させている。なお、熱交換用フィン8の形状や配置は、上記構成に限られるものではないが、温風の流れをできるだけ妨げないような構成が好ましい。
【0026】
路盤材5は、熱伝導性の高い材料によって形成されており、融雪路面を構成している。本第1実施形態では、通気路部材7の上面に路盤材5を敷設して上部通気路3を構成しているが、この構成に限られるものではなく、断面四角形の通気路部材7として一体的に構成してもよい。
【0027】
送風機6は、下部通気路2の送気口21へ温風を導入するためのものである。本第1実施形態では、図1に示すように、四つの融雪路盤ユニット1Aを並列配置して融雪可能な領域を拡張させている。このため、送風機6に接続された送風管61には、四つに分岐する分岐管62が接続され、この分岐管62の各端部が各下部通気路2の送気口21に連結されている。
【0028】
なお、本第1実施形態では、温風ボイラー等の暖房装置によって暖められた温風を使用しているが、この構成に限られるものではなく、一般住宅や地下鉄等から排出される熱源を温風として導入するようにしてもよい。また、本第1実施形態では、排気口31から温風を外気に放出しているが、この構成に限られるものではなく、分岐管62および送風管61を用いて各排気口31を送風機6の吸入口63に接続し、温風を循環させる構成にしてもよい。
【0029】
つぎに、本第1実施形態の融雪路盤ユニット1Aおよび融雪路盤システム10Aによる作用について説明する。
【0030】
本第1実施形態の融雪路盤ユニット1Aおよび融雪路盤システム10Aによって、路盤材5の表面を融雪する場合、手動あるいは降雪感知センサーを利用して自動で融雪路盤システム10Aを作動させる。まず、送風機6から温風を送出し、各下部通気路2の送気口21に温風を送り込む。このとき、温風は分岐管62によって分岐され、各送気口21には等しい風量および温度の温風が導入される。これにより、各融雪路盤ユニット1A間においても路面温度差を生じにくくでき、融雪ムラが生じるのを低減しうる。なお、日向と日陰の差など同じ地域においても路面環境に差がある場合には、適宜、融雪路盤ユニット1Aに送る送風機6を別に準備することもユニット化により対応可能である。
【0031】
各送気口21から送出された温風は、下部通気路2内を他端に向かって流れた後、連通口41を通って上部通気路3へ導入される。そして、連通口41を通過した温風は下部通気路2における通風方向とは逆方向に反転されて上部通気路3を流れ、排気口31から外に排出される。これにより、上部通気路3を流れる温風が路盤材5を暖めてこの路盤材5に降り積もる雪を融かす。
【0032】
また、本第1実施形態では、温風が流れている間、熱伝達性仕切部材4によって、下部通気路2を上流から下流に向けて流れる温風と、上部通気路3を下流から上流に向けて流れる温風との間で効果的に熱交換が行われる。このため、上部通気路3を流れる温風の温度が急激に低下するのを防ぐことができ、温度ムラが生じにくく各融雪路盤ユニット1Aの長手方向における融雪ムラが生じるのを抑制できる。
【0033】
ここで、上述した下部通気路2と上部通気路3との間における熱交換による作用についてもう少し詳しく説明する。まず、従来の技術で説明したように、熱伝達性仕切部材4を備えていない場合には、上流側から下流側に向かって温風の温度が低下し、路面温度が低下するため、これに応じて下流側が融けないという融雪ムラが生じる。また、仮に本融雪路盤ユニット1Aにおいて熱伝達性仕切部材4が熱伝達機能を有していない場合、下部通気路2を流れる温風は、送気口21から連通口41に向かうに従って温度が低下する。また、上部通気路3を流れる温風は、連通口41から排気口31に向かうに従って温度が低下する。したがって、この場合、路面温度は連通口41側から排気口31側に沿って低下し、排気口31側が融雪しないという融雪ムラが生じる。
【0034】
これに対し、本第1実施形態では、熱伝達性仕切部材4が優れた熱伝達機能を有している。このため、下部通気路2の温風と、上部通気路3の温風との間では、その温度差が推進力となって熱交換が速やか行われる。このとき、熱の移動量は温度差に比例するため、送気口21(排気口31)近傍において、熱移動量が最大となる。そして、上記温度差およびこれに起因する熱移動量は、連通口41側に向かうに従って略直線的に小さくなり、連通口41近傍においてほぼゼロとなる。
【0035】
したがって、下部通気路2および上部通気路3では、上下方向の熱交換によって温度が平均化され、その内部全体が連通口41近傍の温度にほぼ等しくなる。これにより、各融雪路盤ユニット1Aの長手方向において、路面温度が均一化され融雪ムラが低減する。また、各融雪路盤ユニット1A内の温度が均一化されると、温風の熱損失自体が低減されるため、理論的には均一化される平均温度がより上昇し融雪効率が一層向上するものと考えられる。
【0036】
ただし、上述したように、各通気路2,3の上下方向における温度差が直線的になる条件としては、融雪や外気への放熱等によって上部通気路3から失われる熱量が、下部通気路2から速やかに補給される必要がある。このため、各通気路2,3を流れる温風の対流熱伝達を考慮し、熱伝達に優れた形状や材質の熱伝達性仕切部材4を選定することが好ましい。そこで、本第1実施形態では、熱伝達性仕切部材4の上下面に、熱伝達を向上させるための熱交換用フィン8が立設されている。この熱交換用フィン8により、下部通気路2を流れる温風の熱が効果的に集められ、その熱が上部通気路3を流れる温風へ速やかに伝達される。また、熱交換用フィン8は温風の流れに沿うようにして延在されているため、温風の流れを極力妨げることなく、送風に要するエネルギーの増加が抑えられてランニングコストを上昇させない工夫がなされている。
【0037】
また、本第1実施形態では、下部通気路2側の各熱交換用フィン8が、下部通気路2の底面まで延びているため、下部通気路2を流れる温風の熱を最大限に採集する。また、上部通気路3側の各熱交換用フィン8が、路盤材5の下面に接触しているため、上下通気路間の熱交換効率を高めることはもとより、路盤材5への熱伝達効率を高めて路面温度を均等に上昇させ、放熱量を増大させる。さらに、各熱交換用フィン8は、路盤材5の下面を支持して補強材の役割をも果たすようになっている。
【0038】
また、本第1実施形態では、各融雪路盤ユニット1Aが直線状に形成され、コンパクトにユニット化されているため、施工が簡単であり、ユーザーの要望に応じたカスタマイズが可能である。例えば、当初は狭い範囲にだけ本第1実施形態の融雪路盤ユニット1Aおよび融雪路盤システム10Aを導入し、その後、融雪可能な領域を拡張したくなった場合には、埋設済みの融雪路盤ユニット1Aを掘り返す必要がなく、既存の融雪路盤ユニット1Aと並列するように融雪路盤ユニット1Aを追加配置するだけで、簡単に増設されるようになっている。
【0039】
以上のような本第1実施形態によれば、
1.路面温度を均一化して融雪ムラが生じるのを抑制し、意図した路面エリアの融雪を計画的に実行することができる。
2.融雪効率を向上させ、ランニングコストを低減することができる。
3.ユーザーが希望する融雪領域を大小任意に構成することができ、簡単に増設することもできる等の効果を奏する。
【0040】
つぎに、本発明に係る融雪路盤ユニット1Bおよび融雪路盤システム10Bの第2実施形態について説明する。なお、本第2実施形態の構成のうち、上述した第1実施形態の構成と同等または相当する構成については同一の符号を付し、再度の説明を省略する。
【0041】
図4は、本第2実施形態の融雪路盤ユニット1Bおよび融雪路盤システム10Bを示す平面図であり、図5は、図4における5A−5A線断面図である。また、図6は、本第2実施形態の熱伝達性仕切部材4の平面図である。
【0042】
図4から図6に示すように、本第2実施形態の特徴は、上述した第1実施形態の連通口41の代わりに、熱伝達性仕切部材4に多数の連通孔42を設け、排気口31を上部通気路3の他端側に設ける点にある。
【0043】
本第2実施形態において、連通孔42は、下部通気路2内の圧力を略均等に保持し、下部通気路2内の温風を上部通気路3へ全体的にほぼ均等に吹き出させる孔径および開孔率で形成されている。つまり、孔径および開孔率を調整することによって、上部通気路3への送風を制御している。孔径および開口率が小さ過ぎると、温風がスムーズに上部通気路3へ移動できず、路面温度を充分に上昇させられないおそれがある。一方、孔径および開孔率が大き過ぎると、下部通気路2内の圧力が不均一となり、通風抵抗の小さい送気口21近傍でより多くの温風が上部通気路3へ移動するため、排気口31側を温める温風が減少してしまうからである。
【0044】
つぎに、本第2実施形態の融雪路盤ユニット1Bおよび融雪路盤システム10Bによる作用について説明する。まず、第1実施形態と同様、融雪路盤システム10Bを作動させて送風機6から温風を送出すると、送気口21から各下部通気路2内へ温風が送り込まれる。送出された温風は、下部通気路2内を他端側へ流れながら熱伝達性仕切部材4を介して上部通気路3内の空気を暖める。また、温風の一部は、図5に示すように、通気孔42から一様に上部通気路3へ吹き出すため、長手方向における温度ムラを低減する。
【0045】
また、本第2実施形態では、上部通気路3内に雨水や融雪水等が浸入した場合であっても、通気孔42から速やかに排出する。このため、熱伝達性仕切部材4を傾斜させることなく、浸入水が溜まるのを防止し、熱交換効率が低減してしまうのを防止する。また、本第2実施形態では、排気口31が送気口21と反対側に配置されるため、第1実施形態のような配置に限定されない。このため、例えば、本融雪路盤システム10Bを一般家庭の玄関先に配設する場合、排気口31を玄関から離れた位置に設けることが可能となる。
【0046】
以上のような本第2実施形態によれば、上述した第1実施形態の作用効果に加えて、上部通気路3における排水性能を向上でき、本融雪路盤システム10Bを設置する場所の制約に合わせて、排気口31を送気口21とは反対側に設置することができる。
【実施例1】
【0047】
『第1実施形態による路面温度の測定実験』
つぎに、本第1実施形態の融雪路盤ユニット1Aおよび融雪路盤システム10Aの具体的実施例について説明する。本実施例1では、図7から図10に示すように、本発明に係る融雪路盤ユニット1Aの他、比較例1として、単に一方向にのみ通風される通気路を備えた従来型融雪路盤11を用意し、路面温度を測定する実験を行った。
【0048】
本実施例1において、通気路部材7には、長さ600mm、横幅(内寸)150mm、高さ(内寸)150mmの鉄筋コンクリート製トラフを使用した。また、路盤材5として、厚さ30mm、縦600mm、横300mmの御影石平板を使用した。そして、図7に示すように、8個のトラフを直列に配置した2本の通気路を隣接するように並列させた。また、各トラフの両端部は、厚さ50mmの発泡スチロールで密閉し、各トラフの両側には、100mm幅のコンクリート製縁石を横幅調整用に配置した。なお、各システムにおける路面の寸法は、共に長さ4.8m、幅300mm、融雪面積1.44m2である。
【0049】
なお、本実施例1では、住宅の換気排熱を温風として利用する融雪路盤システム10Aを想定し、通気路の寸法を設定した。具体的には、住宅の集中換気システムには、送風機6が内蔵されており、この送風機6が適正な換気量を確保するようにバランスのとれた運転を行っている。したがって、この集中換気システムに内蔵された送風機6だけで融雪路盤ユニット1Aに送風できれば、きわめて安価な融雪路盤システム10Aが実現できることになる。このため、通気路内における送風抵抗はできるだけ小さい方が望ましい。
【0050】
また、空気は熱容量が極めて小さいため、融雪負荷に見合った多量の空気を通気路内に流す必要がある。したがって、通気路内の送風抵抗が小さいほど、少ない送風動力で温風を流すことができ有利となる。このため、本実施例1では、通気路内の送風抵抗が小さくなるように、溝付きタイルを用いる実証例(「空気熱媒体融雪システムACCESSのバリエーションと熱設計」寒地技術論文・報告集 vol.22, 2006年, p.481)と比較考量し、通気路部材7の内寸を上記のように設定した。
【0051】
上記2本の通気路のうち、本実施例1の融雪路盤ユニット1Aについては、図8および図10に示すように、一端側の発泡スチロールに直径100mmの鋼板製ダクト継ぎ手を取り付けて送気口21とした。そして、この送気口21に直径100mm、長さ4.6mのフレキシブルアルミダクト13を連結することで、ダクト内部を下部通気路2とし、ダクト外部を上部通気路3として構成した。また、送気口21の上部には、高さ30mm、長さ100mm程度の排気口31を設けた。
【0052】
一方、比較例1の融雪路盤11については、図9に示すように、通気路の両端部に上記ダクト継ぎ手を取り付け、送気口21および排気口31とした。そして、図7に示すように、各送気口21に分岐管62を連結し、この分岐管62の基端部を温風発生装置12に接続した。なお、比較例1の融雪路盤11においては、送気口21から流入した温風が通気路内を一方向に流れ、排気口31からそのまま外気へ放出されるようになっている。
【0053】
以上の構成において、各通気路内に温風を導入し、路面温度を測定する実験を行った。なお、住宅の24時間換気システムでは、温風用熱源として温度15℃〜25℃、風量100m3/h〜180m3/h程度の排熱が見込まれる。このため、本実験では、これらの数値を参考に、温風発生装置12で発生させた一定温度の温風を各通気路内に同一風量で連続導入し、安定した時点の路面温度分布を赤外線サーモカメラを用いて撮影した。
【0054】
図11は、送風温度15℃、風量32m3/hで温風を送風した場合における本実験の結果である。図11に示すように、本実施例1の融雪路盤ユニット1Aでは、路面平均温度9.6℃、路面最大最小温度差3.4℃、標準偏差0.43であった。これに対し、比較例1では、路面平均温度9.9℃、路面最大最小温度差5.0℃、標準偏差0.96であった。ただし、この時の外気温度は0.1℃であった。
【0055】
以上のように、本実施例1の融雪路盤ユニット1Aにおいては、比較例1の融雪路盤11と比較して、路面平均温度は0.3℃低いものの、温度分布の平均化の指標となる最大温度差は1.6℃も小さい値を示した。また、本実施例1の融雪路盤ユニット1Aにおいては、平均温度周辺の散らばり度合いを示す標準偏差が比較例1より0.53も小さい値を示した。以上の結果より、本実施例1の融雪路盤ユニット1Aおよび融雪路盤システム10Aは、路面温度の均一化に有効であることが実証された。
【実施例2】
【0056】
『熱交換用フィンが路面温度へ与える影響の解析』
本実施例2では、本第1実施形態の融雪路盤ユニット1Aおよび融雪路盤システム10Aにおいて、熱交換用フィン8が路面温度へ与える影響についてシミュレーション解析を行った。
【0057】
具体的には、熱交換用フィン8は、通気路内の上下2層間における熱伝達を促進する手段として、伝熱面積が大きいほど有効であるが、反面、材料コストおよび圧力損失が増大してしまうという問題がある。そこで、本実施例2では、最適なフィン形状を特定するため、市販のソフトウェア(Solid WorksおよびCOSMOS Flo Works)を使用し、路盤材5の表面温度分布、表面放熱量、および出入口差圧を評価指標とするCFD(Computational Fluid Dynamics:数値流体力学)解析を行った。
【0058】
解析モデルとしては、本第1実施形態の融雪路盤ユニット1Aに基づき、150mm×150mmの空洞断面を有し、横210mm×高さ180mm×長さ4800mmの断面U字形状の通気路部材7を設定した。そして、この通気路部材7上に、厚さ30mm、横210×長さ4800mmの路盤材5を置いて通気路を形成した。また、通気路部材7の内部には、板厚2mm、横150mm×長さ4700mmの熱伝達性仕切部材4を底面から75mmの高さに配置し、その両端部を210mm×210mm角、厚さ50mmのキャップ材(断熱材)で閉塞した。キャップ材の一方には、直径50mmの送風口21および排出口31を上下に設けた。また、熱伝達性仕切部材4の他端をキャップ材の内壁面から100mm離隔して連通口41を構成した。
【0059】
また、境界条件として、通気路部材7とキャップ材は断熱壁とし、路盤材5の表面上に温度-10℃、熱伝達率20W/m2の負荷を与えた。また、送風条件として、温度20℃、送風量43.2m3/hを与えた。この値は、換気量150m3/hで融雪面積5m2(30m3/(h・m2))と仮定した場合における本モデルの融雪面積1.44m2(300mm×4,800mm:実験用御影石寸法)に相当する送風量である。なお、路盤材5の熱伝導率は、御影石の実測値3W/(m・K)を用いた。
【0060】
上記モデルにおいて、熱交換用フィン8として、熱伝達性仕切部材4と同様のアルミニウム板を4枚使用し、フィン間隔を30mm、フィン厚を1.2mmに固定した。そして、フィン高さを変えたときの路盤材5の表面温度等について解析を行った。また、比較例2として、熱交換用フィン8を設けず、熱伝達性仕切部材4だけを設けた場合についても解析を行った。その結果を図12に示す。また、このときの通気路部材7における前方(送気口21近傍)、中央および後方(連通口41近傍)での断面温度分布図を図13に示す。
【0061】
本実施例2では、上部通気路3および下部通気路2のフィン高さ(mm)をそれぞれ72/75(実施例2−1)、73/75(実施例2−2)、73/0(実施例2−3)、73/25(実施例2−4)および73/50(実施例2−5)に設定した。なお、実施例2−1および実施例2−2は、いずれも下部通気路2側の熱交換用フィン8が通気路部材7の底面に接触している一方、上部通気路3側の熱交換用フィン8は、実施例2−1では、路盤材5の下面との間に1mmの隙間があり、実施例2−2では、路盤材5に接触した状態にある。
【0062】
図12に示すように、隙間を空けた実施例2−1では、比較例2と同様、連通口41付近でのみ路面温度が上昇し温度ムラが発生していた。また、路盤材表面からの放熱量や平均温度などについても、ほとんど大きな差異は認められなかった。一方、熱交換用フィン8を路盤材5に接触させた実施例2−2では、送気口21から連通口41にかけて略均等に路面温度が上昇しており、上下の通気路間で効率よく熱交換が行われているものと考えられる。また、実施例2−2では、実施例2−1と比べても、放熱量が約2倍に増加しており、路盤材5の表面平均温度も3℃以上上昇していた。したがって、上部通気路3側の熱交換用フィン8は、路盤材5に接触させることが最適であることが示された。
【0063】
また、実施例2−2から実施例2−5までの結果から、上部通気路3側の熱交換用フィン8を路盤材5に接触させた状態で、下部通気路2側の熱交換用フィン8の高さだけを変化させた場合、フィン高さが増すほど路面温度が上昇し均一性にも優れることがわかった。したがって、下部通気路2側の熱交換用フィン8についても、通気路部材7の底面に接触させることが最適であることが示された。
【0064】
ただし、実施例2−1では、下部通気路2側の熱交換用フィン8を通気路部材7の底面に接触させているにも関わらず、下部通気路2側に熱交換用フィン8を全く設けない実施例2−3よりも放熱量や平均温度が低く、温度ムラが発生している。したがって、路面温度を均等に上昇させて融雪ムラを解消するには、上部通気路3側の熱交換用フィン8を路盤材5の下面に接触させることが最も重要であることが示された。
【0065】
以上の本実施例2によれば、本第1実施形態の融雪路盤ユニット1Aにおいて、融雪ムラを解消させるのに最も適した熱交換用フィン8の形状は、上部通気路3側の熱交換用フィン8を路盤材5に接触させ、下部通気路2側の熱交換用フィン8を通気路部材7の底面に接触させることである。特に、路盤材5と熱交換用フィン8との接触は、上下の通気路間の熱交換だけでなく、路盤材5への熱伝達に優れた効果があり、路盤材温度の上昇や表面温度の均一化、および放熱量の増大に大きく作用する。
【0066】
ただし、熱交換用フィン8のフィン高さを増やすほど、圧力損失の増大につながるため、この影響を極力少なくするには、フィン間隔を広げることで対応しうる。本実施例2において、融雪効果と圧力損失とのバランスを考慮すると、フィン間隔は30mm(無次元距離:0.2)程度が適当と考えられる。また、フィン厚については、圧力損失の影響は少ないものの、材料費を考慮すると1.2〜1.6mmが適当と考えられる。
【実施例3】
【0067】
『第2実施形態における連通孔42の最適な孔径および開孔率の解析』
本実施例3では、本第2実施形態の融雪路盤ユニット1Bおよび融雪路盤システム10Bにおいて、熱伝達性仕切部材4に設ける連通孔42の最適な孔径および開孔率についてシミュレーション解析を行った。
【0068】
具体的には、本実施形態2の融雪路盤ユニット1Bにおいては、熱伝達性仕切部材4の連通孔42から温風を均一に吹き出させることが、路盤材5の表面温度を均一化させる上で最も重要と考えられる。そこで、本実施例3では、路盤材5の表面温度を均一化しうる孔径および開孔率の最適値を求めるため、実施例2と同様のCFD解析を行った。
【0069】
解析モデルとしては、熱伝達性仕切部材4と排気口31の位置を除き、前述の実施例2と同様のものを使用した。また、送風条件(20℃、43.2m3/h)および熱負荷条件(-10℃、20W/m2)についても、実施例2と同様とした。以上において、本実施例3では、熱伝達性仕切部材4として厚さ2mmの断熱材を使用し、角穴の千鳥配列で連通孔42を設けた。そして、孔径と孔間隔とを適宜組み合わせて開孔率を変化させたときの路盤材5の表面温度等について解析を行った。
【0070】
まず、本実施例3では、連通孔42の孔径を20mmに固定した場合(実施例3−1)、9mmに固定した場合(実施例3−2)、および6mmに固定した場合(実施例3−3)において、開孔率を変化させ、路盤材5の表面温度分布を解析した。その結果、図14から図16に示すように、いずれの場合においても、開孔率が小さくなるほど、路盤材5の表面温度が均一化されていることが示された。
【0071】
また、本実施例3では、連通孔42の開孔率を約12%前後に設定した場合(実施例3−4)および約22%前後に設定した場合(実施例3−5)において、孔径を変化させ、路盤材5の表面温度分布を解析した。その結果、図17および図18に示すように、連通孔42の孔径を小さくするほど、放熱量や平均温度は低下するものの、路面の温度分布が均一化する傾向を示した。
【0072】
本実施例3の解析結果は、連通孔42の孔径や開孔率が大きくなると、下部通気路2内での圧力が均等にならず、通風抵抗の小さな送気口21付近でより多くの温風が上層部に移動してしまうことに起因するものと考えられる。したがって、本実施例3によれば、上記の送風条件下で路盤材5の表面温度を均一化させるには、連通孔42の孔径を6〜9mmであって、開孔率を10〜20%程度に設定することが適当と考えられる。
【実施例4】
【0073】
『第1実施形態と本第2実施形態との比較解析』
本実施例4では、本第1実施形態の融雪路盤ユニット1Aと、本第2実施形態の融雪路盤ユニット1Bとを比較し、両者の融雪性能についてシミュレーション解析を行った。
【0074】
具体的には、本第1実施形態の融雪路盤ユニット1Aにおいて熱交換用フィン8を設けない場合(実施例4−1)、本第2実施形態の融雪路盤ユニット1Bにおいて熱交換用フィン8を設けない場合(実施例4−2)、本第1実施形態の融雪路盤ユニット1Aにおいて熱交換用フィン8を設けた場合(実施例4−3)、および本第2実施形態の融雪路盤ユニット1Bにおいて熱交換用フィン8を設けた場合(実施例4−4)のそれぞれにつき、同一条件下においてCFD解析による比較検討を行った。また、比較例4として、上述した比較例1と同様の融雪路盤ユニットにつき、同様の解析を行った。
【0075】
本実施例4において、熱交換用フィン8の形状は全て同一(フィン高さ73mm/75mm、フィン間隔30mm、フィン厚1.2mm)とし、上部通気路3の熱交換用フィン8は路盤材5に接触している。また、熱伝達性仕切部材4は、全て板厚が2mmのアルミニウム板を使用し、第2実施形態の連通孔42は、孔径6mm、開孔率16%の角穴配列とした。そして、送風条件は、実施例2,3と同様(20℃、43.2m3/h)に固定する一方、熱負荷条件としては、積雪が無い状態を想定した条件(-10℃、20W/m2)と、積雪状態を想定した条件(0℃、233W/m2)とを設定した。
【0076】
以上の条件下において、上記各実施例について、積雪が無い状態を想定した条件下での解析結果を図19に示し、積雪状態を想定した条件下での解析結果を図21に示す。また、このときの通気路部材7における前方、中央および後方の各位置での断面温度分布図をそれぞれ図20および図22に示す。
【0077】
図19から図22に示すように、いずれの条件下においても熱交換用フィン8が無い場合、実施例4−2は、比較例4や実施例4−1に比べて、路盤材5の表面温度の均一性には優れている。しかしながら、路盤材5の温度レベルは低く、積雪が無い条件下では、放熱量は実施例4−1の約59%程度であり、比較例4の約74%程度となっている。また、積雪がある条件下においても、放熱量は実施例4−1の約56%程度であり、比較例4の約84%程度となっている。
【0078】
一方、熱交換用フィン8を設けた場合、いずれの条件下でも両実施形態において表面温度が大きく上昇し、積雪がない条件下では、実施例4−4の放熱量(150W/m2)が、実施例4−3の放熱量(141W/m2)を上回り、熱交換用フィン8が無い実施例4−2の放熱量(44W/m2)に対し、およそ3.4倍の値を示した。また、積雪がある条件下においても、実施例4−4の放熱量(127W/m2)が、実施例4−3の放熱量(123W/m2)を上回り、熱交換用フィン8が無い実施例4−2の放熱量(36W/m2)に対し、およそ3.6倍の値を示した。
【0079】
以上の本実施例4によれば、第2実施形態の融雪路盤ユニット1Bでも、熱伝達性仕切部材4に熱交換用フィン8を設け、これを路盤材5に接触させることで、第1実施形態と同等の融雪効果が発揮されることが示された。
【0080】
なお、本発明に係る融雪路盤ユニット1A,1Bおよび融雪路盤システム10A,10Bは、前述した各実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0081】
例えば、第1および第2実施形態の下部通気路2および上部通気路3は、通気路部材7を熱伝達性仕切部材4によって上下2層に分割しているが、この構成に限られるものではなく、上記実施例1のように、フレキシブルアルミダクト13によって、下部通気路2および上部通気路3を構成してもよい。すなわち、下部通気路2と上部通気路3とが上下方向に並列配置され、熱伝達性仕切部材4を介して下部通気路2を流れる温風と、上部通気路3を流れる温風とが熱交換をしうるように構成されているものであればよい。
【0082】
また、上述した第1および第2実施形態では、熱伝達性仕切部材4として、平板状のアルミニウム板を使用しているが、この構成に限られるものではない。例えば、上記実施例1のように、アルミダクト13によって下部通気路2と上部通気路3とを構成した場合には、当該アルミダクト13自体が熱伝達性仕切部材4として機能するし、送気口21との接続も容易となる。また、伸縮性の高いアルミダクトを用いることにより、伝熱面積が増大するだけではなく、ダクトの末端と通気路の他端部の隙間によって構成される連通口41の調整が容易になる等の利点がある。
【0083】
また、本発明に係る下部通気路2および上部通気路3の形状は、上述した本実施形態に限られるものではない。例えば、図23に示すように、連通口41が形成された下部通気路2および上部通気路3の端面を上下に湾曲させ、温風誘導面9にしてもよい。この構成によれば、下部通気路2内を連通口41近傍まで流れた温風は、温風誘導面9に沿って滑らかに上方へと誘導され上部通気路3へ導入される。このため、送風抵抗が小さくなり、送風に必要なランニングコストが低減される。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明に係る融雪路盤ユニットおよび融雪路盤システムの第1実施形態を示す平面図である。
【図2】図1における2A−2A線断面図である。
【図3】図1における3B−3B線断面図である。
【図4】本発明に係る融雪路盤ユニットおよび融雪路盤システムの第2実施形態を示す平面図である。
【図5】図4における5A−5A線断面図である。
【図6】図4における6B−6B線断面図である。
【図7】本実施例1の融雪路盤ユニットおよび融雪路盤システムと、比較例の融雪路盤とを示す平面図である。
【図8】図7における5A−5A線断面図である。
【図9】図7における6B−6B線断面図である。
【図10】図7における7C−7C線断面図である。
【図11】本実施例1および比較例の実験結果を示す表である。
【図12】本実施例2において、熱交換用フィンの高さを変化させた場合における路盤材表面の温度分布図である。
【図13】図12における通気路部材の前方、中央および後方の各位置における断面温度分布図である。
【図14】本実施例3において、連通孔の孔径を20mmに固定し、開孔率を変化させた場合における路盤材表面の温度分布図である。
【図15】本実施例3において、連通孔の孔径を9mmに固定し、開孔率を変化させた場合における路盤材表面の温度分布図である。
【図16】本実施例3において、連通孔の孔径を6mmに固定し、開孔率を変化させた場合における路盤材表面の温度分布図である。
【図17】本実施例3において、連通孔の開孔率を約12%前後に設定し、孔径を変化させた場合における路盤材表面の温度分布図である。
【図18】本実施例3において、連通孔の開孔率を約22%前後に設定し、孔径を変化させた場合における路盤材表面の温度分布図である。
【図19】本実施例4において、無積雪状態を想定した条件下における各実施形態の融雪性能を比較した路盤材表面の温度分布図である。
【図20】図19における通気路部材の前方、中央および後方の各位置における断面温度分布図である。
【図21】本実施例4において、積雪状態を想定した条件下における各実施形態の融雪性能を比較した路盤材表面の温度分布図である。
【図22】図21における通気路部材の前方、中央および後方の各位置における断面温度分布図である。
【図23】本発明に係る融雪路盤ユニットおよび融雪路盤システムの他の実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0085】
1A,1B 融雪路盤ユニット
2 下部通気路
3 上部通気路
4 熱伝達性仕切部材
5 路盤材
6 送風機
7 通気路部材
8 熱交換用フィン
9 温風誘導面
10A,10B 融雪路盤システム
11 従来型融雪路盤
12 温風発生装置
13 フレキシブルアルミダクト
21 送気口
31 排気口
41 連通口
42 連通孔
61 送風管
62 分岐管
63 吸入口
【技術分野】
【0001】
本発明は、融雪路盤ユニットおよび融雪路盤システムに関し、特に空気を熱媒体として使用し、道路や駐車場等の路面温度の上昇ムラを抑えることで融雪ムラを抑制しうる融雪路盤ユニットおよび融雪路盤システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、空気を熱媒体として用いる融雪技術が提案されている。例えば、実開平5−71212号公報に記載の融雪用温風ヒーティング装置は、温風ボイラーに連結された鉄鋼管通風パイプが砂の中に蛇行状態で配管されており、その上面にアスファルトが舗装されている。そして、温風ボイラーから鉄鋼管通風パイプ内に温風を送ることにより、アスファルト舗装路面を暖めて融雪するものである(特許文献1)。
【0003】
また、特開2005−36426号公報に記載の無水融雪装置は、裏面に凹条を有する敷設体を複数個並べて路面を構成し、各敷設体の凹状の通風溝が温風を導入する通路を形成するように敷設されている。そして、この通路に温風を導入することにより敷設体を暖めて路面を融雪するものである(特許文献2)。
【0004】
さらに、特開2006−57239号公報に記載の融雪装置は、内部空間を有する構造躯体が路面下に埋設されており、前記内部空間に連通する空気入口部および空気出口部が設けられている。そして、前記内部空間内を定圧制御しながら温風を流動させることにより路面を暖めて融雪するものである(特許文献3)。
【0005】
【特許文献1】実開平5−71212号公報
【特許文献2】特開2005−36426号公報
【特許文献3】特開2006−57239号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1〜3に記載された発明を含め、従来の温風を熱媒体として用いる融雪技術においては、いわゆる融雪ムラが発生するという問題がある。つまり、温風は路面下を流れる間に雪を融かす熱や外気への放熱によって熱が奪われるため、その温度は上流(送気口側)から下流(排気口側)に向かうに連れて著しく降下する。このため、路面温度に差が生じ、上流側の路面では雪が融けているが、下流側の路面では雪が融けないという融雪ムラが生じてしまう。特に、空気の熱容量は水に比べて非常に小さいため、送風量が少ない場合等には温度ムラがより一層顕著となる。
【0007】
融雪ムラが発生すると、すでに雪が融けた路面から温風熱がそのまま外気へ放出され、無駄に熱を捨てることになる。特に冬場の外気温は低いため温度低下が激しく極めて融雪効率が悪い。そして、下流側の雪を融かすためには送風を長時間続けるか、より高温の温風を送る必要がありランニングコストが増大するという問題につながる。
【0008】
一方、融雪ムラが生じている状態は、外観上、「雪が融けない」印象が強くなることから、ユーザから融雪システムが故障した、不良である等のクレームが入りやすい。
【0009】
なお、上記特許文献1に記載された発明については、鉄鋼管通風パイプをU字状に曲げて配管するため、各鉄鋼管通風パイプの間には、必ず所定間隔の隙間が形成される。このため、鉄鋼管通風パイプの真上と各鉄鋼管通風パイプ同士の隙間の上とでは、路面温度に差が存在し、融雪ムラが生じやすくなっている。この融雪ムラをなくすためには鉄鋼管パイプを密に敷設しなければならない。また、一部が損傷した場合であってもパイプ全体を取り替え修理しなければならず手間もコストも大きな負担となる。
【0010】
また、上記特許文献2に記載された発明については、各通路の下流側で温度が降下するだけでなく、各通路同士の間にも低温域部分が生じてしまい、融雪ムラが生じやすい。なお、通路の本数を増やして凹条の間隔を狭くすることで通路間の温度低下を抑えることも考えられるが、その分消費エネルギーが大きくなってしまうという問題が生じる。
【0011】
さらに、上記特許文献3に記載された発明についても、融雪領域を均一に加熱できる旨が記載されているが、これらを実証する実験等は示されておらず、空気入口部から空気出口部に沿って温度が漸減するものと考えられる。また、躯体内部を一定圧力に保つ必要性から構造躯体には高い気密性が求められ、かつ、圧力制御弁等の高価な制御機器が必要となるためコストが高くなる。施工上、構造躯体の大きさに制約があり実用性に欠けるという問題もある。
【0012】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであって、温風を送る上流側路面と下流側路面との温度差を減少して融雪ムラが生じるのを抑制し、所望の路面領域を融雪することができる融雪路盤ユニットおよび融雪路盤システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係る融雪路盤ユニットの特徴は、熱媒体である温風が流れる下部通気路と上部通気路とを熱伝達性仕切部材を介して上下に配置し、前記下部通気路の一端に送気口を設けるとともに、他端に前記上部通気路と連通する連通口を設け、前記上部通気路の一端に排気口を設けてなる点にある。
【0014】
また、本発明に係る融雪路盤ユニットの特徴は、熱媒体である温風が流れる下部通気路と上部通気路とを熱伝達性仕切部材を介して上下に配置し、前記下部通気路の一端に送気口を設けるとともに、前記上部通気路の他端に排気口を設け、前記熱伝達性仕切部材には、前記下部通気路内の温風を前記上部通気路に吹き出させる連通孔を設けてなる点にある。
【0015】
また、本発明において、前記熱伝達性仕切部材の少なくとも上部通気路側には、熱交換用フィンが長手方向に沿って設けられており、かつ、この熱交換用フィンの上端が、路盤材の下面に接触していることが好ましい。
【0016】
さらに、本発明において、前記連通口が形成された下部通気路および上部通気路の端面を上下に湾曲させた温風誘導面に形成していることが好ましい。
【0017】
また、本発明に係る融雪路盤システムの特徴は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の融雪路盤ユニットを直線状に形成するとともに、複数の直線状融雪路盤ユニットを並列配置し、各下部通気路の送気口に送風機を連結することにより、前記下部通気路から前記連通口または連通孔を介して前記上部通気路へ温風を流す点にある。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、温風を送る上流側路面と下流側路面との温度差を減少して融雪ムラが生じるのを抑制し、所望の路面領域を融雪することができる。また、温風を流す通気路の一部に欠陥が生じてもユニット単位で交換することができて路盤全面を掘り起こさなくてすむ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る融雪路盤ユニット1Aおよび融雪路盤システム10Aの第1実施形態について図面を用いて説明する。図1は、本第1実施形態の融雪路盤ユニット1Aおよび融雪路盤システム10Aを示す平面図であり、図2および図3は、それぞれ図1における2A−2A線断面図および3B−3B線断面図である。
【0020】
図1から図3に示すように、本第1実施形態の融雪路盤ユニット1Aは、主として、熱媒体である温風が流れる下部通気路2および上部通気路3と、これら下部通気路2と上部通気路3とを上下に仕切る熱伝達性仕切部材4と、上部通気路3の上面に敷設される路盤材5とから構成されている。そして、この融雪路盤ユニット1Aの下部通気路2に温風を送る送風機6を備えることにより融雪路盤システム10Aが構成されている。
【0021】
以下、各構成部について詳細に説明する。下部通気路2および上部通気路3は、融雪しようとする路面下に温風を流すためのものである。本第1実施形態では、図3に示すように、断面凹状の通気路部材7を路面に沿って埋設し、この通気路部材7の内部空間を板状の熱伝達性仕切部材4によって上下2層に分割することで、下部通気路2および上部通気路3を構成するようになっている。このため、下部通気路2と上部通気路3とは、熱伝達性仕切部材4を介して伝熱可能な状態で上下平行に設けられる。
【0022】
また、図2に示すように、下部通気路2の一端には、温風を送気する送気口21が設けられ、上部通気路3の一端には、温風を排気する排気口31が設けられている。また、下部通気路2および上部通気路3は、その他端に設けられた連通口41によって連通されている。これにより送気口21から導入された温風は、下部通気路2を流れた後に連通口41から上部通気路3へ流入し、その流れ方向が反転されて排気口31から排出されるようになっている。
【0023】
熱伝達性仕切部材4は、下部通気路2を流れる温風と、上部通気路3を流れる温風との間で熱伝達させる役割を果たすものである。本第1実施形態において、熱伝達性仕切部材4は、熱伝達率の高いアルミニウム板によって形成されており、通気路部材7の上下方向における略中央位置に固定されている。なお、本第1実施形態では、熱伝達性仕切部材4の端部をカットすることにより連通口41を構成しているが、これに限らず、熱伝達性仕切部材4の端部に孔を空けて構成してもよい。
【0024】
また、本第1実施形態において、熱伝達性仕切部材4の下部通気路2側(下部通気路2の上面)および上部通気路3側(上部通気路3の下面)には、熱交換用フィン8が設けられている。この熱交換用フィン8は、熱伝達性仕切部材4の表面積を増やして下部通気路2を流れる温風から上部通気路3を流れる温風への熱交換効率を向上させるものである。本第1実施形態では、図2および図3に示すように、アルミニウム板からなる3枚の熱交換用フィン8が、融雪路盤ユニット1Aの長手方向に沿って延在されている。
【0025】
また、本第1実施形態では、後述するように、融雪ムラを低減するため、上部通気路3側の各熱交換用フィン8は、その上端を路盤材5の下面に接触させており、下部通気路2側の各熱交換用フィン8は、その下端を下部通気路2の底面に接触させている。なお、熱交換用フィン8の形状や配置は、上記構成に限られるものではないが、温風の流れをできるだけ妨げないような構成が好ましい。
【0026】
路盤材5は、熱伝導性の高い材料によって形成されており、融雪路面を構成している。本第1実施形態では、通気路部材7の上面に路盤材5を敷設して上部通気路3を構成しているが、この構成に限られるものではなく、断面四角形の通気路部材7として一体的に構成してもよい。
【0027】
送風機6は、下部通気路2の送気口21へ温風を導入するためのものである。本第1実施形態では、図1に示すように、四つの融雪路盤ユニット1Aを並列配置して融雪可能な領域を拡張させている。このため、送風機6に接続された送風管61には、四つに分岐する分岐管62が接続され、この分岐管62の各端部が各下部通気路2の送気口21に連結されている。
【0028】
なお、本第1実施形態では、温風ボイラー等の暖房装置によって暖められた温風を使用しているが、この構成に限られるものではなく、一般住宅や地下鉄等から排出される熱源を温風として導入するようにしてもよい。また、本第1実施形態では、排気口31から温風を外気に放出しているが、この構成に限られるものではなく、分岐管62および送風管61を用いて各排気口31を送風機6の吸入口63に接続し、温風を循環させる構成にしてもよい。
【0029】
つぎに、本第1実施形態の融雪路盤ユニット1Aおよび融雪路盤システム10Aによる作用について説明する。
【0030】
本第1実施形態の融雪路盤ユニット1Aおよび融雪路盤システム10Aによって、路盤材5の表面を融雪する場合、手動あるいは降雪感知センサーを利用して自動で融雪路盤システム10Aを作動させる。まず、送風機6から温風を送出し、各下部通気路2の送気口21に温風を送り込む。このとき、温風は分岐管62によって分岐され、各送気口21には等しい風量および温度の温風が導入される。これにより、各融雪路盤ユニット1A間においても路面温度差を生じにくくでき、融雪ムラが生じるのを低減しうる。なお、日向と日陰の差など同じ地域においても路面環境に差がある場合には、適宜、融雪路盤ユニット1Aに送る送風機6を別に準備することもユニット化により対応可能である。
【0031】
各送気口21から送出された温風は、下部通気路2内を他端に向かって流れた後、連通口41を通って上部通気路3へ導入される。そして、連通口41を通過した温風は下部通気路2における通風方向とは逆方向に反転されて上部通気路3を流れ、排気口31から外に排出される。これにより、上部通気路3を流れる温風が路盤材5を暖めてこの路盤材5に降り積もる雪を融かす。
【0032】
また、本第1実施形態では、温風が流れている間、熱伝達性仕切部材4によって、下部通気路2を上流から下流に向けて流れる温風と、上部通気路3を下流から上流に向けて流れる温風との間で効果的に熱交換が行われる。このため、上部通気路3を流れる温風の温度が急激に低下するのを防ぐことができ、温度ムラが生じにくく各融雪路盤ユニット1Aの長手方向における融雪ムラが生じるのを抑制できる。
【0033】
ここで、上述した下部通気路2と上部通気路3との間における熱交換による作用についてもう少し詳しく説明する。まず、従来の技術で説明したように、熱伝達性仕切部材4を備えていない場合には、上流側から下流側に向かって温風の温度が低下し、路面温度が低下するため、これに応じて下流側が融けないという融雪ムラが生じる。また、仮に本融雪路盤ユニット1Aにおいて熱伝達性仕切部材4が熱伝達機能を有していない場合、下部通気路2を流れる温風は、送気口21から連通口41に向かうに従って温度が低下する。また、上部通気路3を流れる温風は、連通口41から排気口31に向かうに従って温度が低下する。したがって、この場合、路面温度は連通口41側から排気口31側に沿って低下し、排気口31側が融雪しないという融雪ムラが生じる。
【0034】
これに対し、本第1実施形態では、熱伝達性仕切部材4が優れた熱伝達機能を有している。このため、下部通気路2の温風と、上部通気路3の温風との間では、その温度差が推進力となって熱交換が速やか行われる。このとき、熱の移動量は温度差に比例するため、送気口21(排気口31)近傍において、熱移動量が最大となる。そして、上記温度差およびこれに起因する熱移動量は、連通口41側に向かうに従って略直線的に小さくなり、連通口41近傍においてほぼゼロとなる。
【0035】
したがって、下部通気路2および上部通気路3では、上下方向の熱交換によって温度が平均化され、その内部全体が連通口41近傍の温度にほぼ等しくなる。これにより、各融雪路盤ユニット1Aの長手方向において、路面温度が均一化され融雪ムラが低減する。また、各融雪路盤ユニット1A内の温度が均一化されると、温風の熱損失自体が低減されるため、理論的には均一化される平均温度がより上昇し融雪効率が一層向上するものと考えられる。
【0036】
ただし、上述したように、各通気路2,3の上下方向における温度差が直線的になる条件としては、融雪や外気への放熱等によって上部通気路3から失われる熱量が、下部通気路2から速やかに補給される必要がある。このため、各通気路2,3を流れる温風の対流熱伝達を考慮し、熱伝達に優れた形状や材質の熱伝達性仕切部材4を選定することが好ましい。そこで、本第1実施形態では、熱伝達性仕切部材4の上下面に、熱伝達を向上させるための熱交換用フィン8が立設されている。この熱交換用フィン8により、下部通気路2を流れる温風の熱が効果的に集められ、その熱が上部通気路3を流れる温風へ速やかに伝達される。また、熱交換用フィン8は温風の流れに沿うようにして延在されているため、温風の流れを極力妨げることなく、送風に要するエネルギーの増加が抑えられてランニングコストを上昇させない工夫がなされている。
【0037】
また、本第1実施形態では、下部通気路2側の各熱交換用フィン8が、下部通気路2の底面まで延びているため、下部通気路2を流れる温風の熱を最大限に採集する。また、上部通気路3側の各熱交換用フィン8が、路盤材5の下面に接触しているため、上下通気路間の熱交換効率を高めることはもとより、路盤材5への熱伝達効率を高めて路面温度を均等に上昇させ、放熱量を増大させる。さらに、各熱交換用フィン8は、路盤材5の下面を支持して補強材の役割をも果たすようになっている。
【0038】
また、本第1実施形態では、各融雪路盤ユニット1Aが直線状に形成され、コンパクトにユニット化されているため、施工が簡単であり、ユーザーの要望に応じたカスタマイズが可能である。例えば、当初は狭い範囲にだけ本第1実施形態の融雪路盤ユニット1Aおよび融雪路盤システム10Aを導入し、その後、融雪可能な領域を拡張したくなった場合には、埋設済みの融雪路盤ユニット1Aを掘り返す必要がなく、既存の融雪路盤ユニット1Aと並列するように融雪路盤ユニット1Aを追加配置するだけで、簡単に増設されるようになっている。
【0039】
以上のような本第1実施形態によれば、
1.路面温度を均一化して融雪ムラが生じるのを抑制し、意図した路面エリアの融雪を計画的に実行することができる。
2.融雪効率を向上させ、ランニングコストを低減することができる。
3.ユーザーが希望する融雪領域を大小任意に構成することができ、簡単に増設することもできる等の効果を奏する。
【0040】
つぎに、本発明に係る融雪路盤ユニット1Bおよび融雪路盤システム10Bの第2実施形態について説明する。なお、本第2実施形態の構成のうち、上述した第1実施形態の構成と同等または相当する構成については同一の符号を付し、再度の説明を省略する。
【0041】
図4は、本第2実施形態の融雪路盤ユニット1Bおよび融雪路盤システム10Bを示す平面図であり、図5は、図4における5A−5A線断面図である。また、図6は、本第2実施形態の熱伝達性仕切部材4の平面図である。
【0042】
図4から図6に示すように、本第2実施形態の特徴は、上述した第1実施形態の連通口41の代わりに、熱伝達性仕切部材4に多数の連通孔42を設け、排気口31を上部通気路3の他端側に設ける点にある。
【0043】
本第2実施形態において、連通孔42は、下部通気路2内の圧力を略均等に保持し、下部通気路2内の温風を上部通気路3へ全体的にほぼ均等に吹き出させる孔径および開孔率で形成されている。つまり、孔径および開孔率を調整することによって、上部通気路3への送風を制御している。孔径および開口率が小さ過ぎると、温風がスムーズに上部通気路3へ移動できず、路面温度を充分に上昇させられないおそれがある。一方、孔径および開孔率が大き過ぎると、下部通気路2内の圧力が不均一となり、通風抵抗の小さい送気口21近傍でより多くの温風が上部通気路3へ移動するため、排気口31側を温める温風が減少してしまうからである。
【0044】
つぎに、本第2実施形態の融雪路盤ユニット1Bおよび融雪路盤システム10Bによる作用について説明する。まず、第1実施形態と同様、融雪路盤システム10Bを作動させて送風機6から温風を送出すると、送気口21から各下部通気路2内へ温風が送り込まれる。送出された温風は、下部通気路2内を他端側へ流れながら熱伝達性仕切部材4を介して上部通気路3内の空気を暖める。また、温風の一部は、図5に示すように、通気孔42から一様に上部通気路3へ吹き出すため、長手方向における温度ムラを低減する。
【0045】
また、本第2実施形態では、上部通気路3内に雨水や融雪水等が浸入した場合であっても、通気孔42から速やかに排出する。このため、熱伝達性仕切部材4を傾斜させることなく、浸入水が溜まるのを防止し、熱交換効率が低減してしまうのを防止する。また、本第2実施形態では、排気口31が送気口21と反対側に配置されるため、第1実施形態のような配置に限定されない。このため、例えば、本融雪路盤システム10Bを一般家庭の玄関先に配設する場合、排気口31を玄関から離れた位置に設けることが可能となる。
【0046】
以上のような本第2実施形態によれば、上述した第1実施形態の作用効果に加えて、上部通気路3における排水性能を向上でき、本融雪路盤システム10Bを設置する場所の制約に合わせて、排気口31を送気口21とは反対側に設置することができる。
【実施例1】
【0047】
『第1実施形態による路面温度の測定実験』
つぎに、本第1実施形態の融雪路盤ユニット1Aおよび融雪路盤システム10Aの具体的実施例について説明する。本実施例1では、図7から図10に示すように、本発明に係る融雪路盤ユニット1Aの他、比較例1として、単に一方向にのみ通風される通気路を備えた従来型融雪路盤11を用意し、路面温度を測定する実験を行った。
【0048】
本実施例1において、通気路部材7には、長さ600mm、横幅(内寸)150mm、高さ(内寸)150mmの鉄筋コンクリート製トラフを使用した。また、路盤材5として、厚さ30mm、縦600mm、横300mmの御影石平板を使用した。そして、図7に示すように、8個のトラフを直列に配置した2本の通気路を隣接するように並列させた。また、各トラフの両端部は、厚さ50mmの発泡スチロールで密閉し、各トラフの両側には、100mm幅のコンクリート製縁石を横幅調整用に配置した。なお、各システムにおける路面の寸法は、共に長さ4.8m、幅300mm、融雪面積1.44m2である。
【0049】
なお、本実施例1では、住宅の換気排熱を温風として利用する融雪路盤システム10Aを想定し、通気路の寸法を設定した。具体的には、住宅の集中換気システムには、送風機6が内蔵されており、この送風機6が適正な換気量を確保するようにバランスのとれた運転を行っている。したがって、この集中換気システムに内蔵された送風機6だけで融雪路盤ユニット1Aに送風できれば、きわめて安価な融雪路盤システム10Aが実現できることになる。このため、通気路内における送風抵抗はできるだけ小さい方が望ましい。
【0050】
また、空気は熱容量が極めて小さいため、融雪負荷に見合った多量の空気を通気路内に流す必要がある。したがって、通気路内の送風抵抗が小さいほど、少ない送風動力で温風を流すことができ有利となる。このため、本実施例1では、通気路内の送風抵抗が小さくなるように、溝付きタイルを用いる実証例(「空気熱媒体融雪システムACCESSのバリエーションと熱設計」寒地技術論文・報告集 vol.22, 2006年, p.481)と比較考量し、通気路部材7の内寸を上記のように設定した。
【0051】
上記2本の通気路のうち、本実施例1の融雪路盤ユニット1Aについては、図8および図10に示すように、一端側の発泡スチロールに直径100mmの鋼板製ダクト継ぎ手を取り付けて送気口21とした。そして、この送気口21に直径100mm、長さ4.6mのフレキシブルアルミダクト13を連結することで、ダクト内部を下部通気路2とし、ダクト外部を上部通気路3として構成した。また、送気口21の上部には、高さ30mm、長さ100mm程度の排気口31を設けた。
【0052】
一方、比較例1の融雪路盤11については、図9に示すように、通気路の両端部に上記ダクト継ぎ手を取り付け、送気口21および排気口31とした。そして、図7に示すように、各送気口21に分岐管62を連結し、この分岐管62の基端部を温風発生装置12に接続した。なお、比較例1の融雪路盤11においては、送気口21から流入した温風が通気路内を一方向に流れ、排気口31からそのまま外気へ放出されるようになっている。
【0053】
以上の構成において、各通気路内に温風を導入し、路面温度を測定する実験を行った。なお、住宅の24時間換気システムでは、温風用熱源として温度15℃〜25℃、風量100m3/h〜180m3/h程度の排熱が見込まれる。このため、本実験では、これらの数値を参考に、温風発生装置12で発生させた一定温度の温風を各通気路内に同一風量で連続導入し、安定した時点の路面温度分布を赤外線サーモカメラを用いて撮影した。
【0054】
図11は、送風温度15℃、風量32m3/hで温風を送風した場合における本実験の結果である。図11に示すように、本実施例1の融雪路盤ユニット1Aでは、路面平均温度9.6℃、路面最大最小温度差3.4℃、標準偏差0.43であった。これに対し、比較例1では、路面平均温度9.9℃、路面最大最小温度差5.0℃、標準偏差0.96であった。ただし、この時の外気温度は0.1℃であった。
【0055】
以上のように、本実施例1の融雪路盤ユニット1Aにおいては、比較例1の融雪路盤11と比較して、路面平均温度は0.3℃低いものの、温度分布の平均化の指標となる最大温度差は1.6℃も小さい値を示した。また、本実施例1の融雪路盤ユニット1Aにおいては、平均温度周辺の散らばり度合いを示す標準偏差が比較例1より0.53も小さい値を示した。以上の結果より、本実施例1の融雪路盤ユニット1Aおよび融雪路盤システム10Aは、路面温度の均一化に有効であることが実証された。
【実施例2】
【0056】
『熱交換用フィンが路面温度へ与える影響の解析』
本実施例2では、本第1実施形態の融雪路盤ユニット1Aおよび融雪路盤システム10Aにおいて、熱交換用フィン8が路面温度へ与える影響についてシミュレーション解析を行った。
【0057】
具体的には、熱交換用フィン8は、通気路内の上下2層間における熱伝達を促進する手段として、伝熱面積が大きいほど有効であるが、反面、材料コストおよび圧力損失が増大してしまうという問題がある。そこで、本実施例2では、最適なフィン形状を特定するため、市販のソフトウェア(Solid WorksおよびCOSMOS Flo Works)を使用し、路盤材5の表面温度分布、表面放熱量、および出入口差圧を評価指標とするCFD(Computational Fluid Dynamics:数値流体力学)解析を行った。
【0058】
解析モデルとしては、本第1実施形態の融雪路盤ユニット1Aに基づき、150mm×150mmの空洞断面を有し、横210mm×高さ180mm×長さ4800mmの断面U字形状の通気路部材7を設定した。そして、この通気路部材7上に、厚さ30mm、横210×長さ4800mmの路盤材5を置いて通気路を形成した。また、通気路部材7の内部には、板厚2mm、横150mm×長さ4700mmの熱伝達性仕切部材4を底面から75mmの高さに配置し、その両端部を210mm×210mm角、厚さ50mmのキャップ材(断熱材)で閉塞した。キャップ材の一方には、直径50mmの送風口21および排出口31を上下に設けた。また、熱伝達性仕切部材4の他端をキャップ材の内壁面から100mm離隔して連通口41を構成した。
【0059】
また、境界条件として、通気路部材7とキャップ材は断熱壁とし、路盤材5の表面上に温度-10℃、熱伝達率20W/m2の負荷を与えた。また、送風条件として、温度20℃、送風量43.2m3/hを与えた。この値は、換気量150m3/hで融雪面積5m2(30m3/(h・m2))と仮定した場合における本モデルの融雪面積1.44m2(300mm×4,800mm:実験用御影石寸法)に相当する送風量である。なお、路盤材5の熱伝導率は、御影石の実測値3W/(m・K)を用いた。
【0060】
上記モデルにおいて、熱交換用フィン8として、熱伝達性仕切部材4と同様のアルミニウム板を4枚使用し、フィン間隔を30mm、フィン厚を1.2mmに固定した。そして、フィン高さを変えたときの路盤材5の表面温度等について解析を行った。また、比較例2として、熱交換用フィン8を設けず、熱伝達性仕切部材4だけを設けた場合についても解析を行った。その結果を図12に示す。また、このときの通気路部材7における前方(送気口21近傍)、中央および後方(連通口41近傍)での断面温度分布図を図13に示す。
【0061】
本実施例2では、上部通気路3および下部通気路2のフィン高さ(mm)をそれぞれ72/75(実施例2−1)、73/75(実施例2−2)、73/0(実施例2−3)、73/25(実施例2−4)および73/50(実施例2−5)に設定した。なお、実施例2−1および実施例2−2は、いずれも下部通気路2側の熱交換用フィン8が通気路部材7の底面に接触している一方、上部通気路3側の熱交換用フィン8は、実施例2−1では、路盤材5の下面との間に1mmの隙間があり、実施例2−2では、路盤材5に接触した状態にある。
【0062】
図12に示すように、隙間を空けた実施例2−1では、比較例2と同様、連通口41付近でのみ路面温度が上昇し温度ムラが発生していた。また、路盤材表面からの放熱量や平均温度などについても、ほとんど大きな差異は認められなかった。一方、熱交換用フィン8を路盤材5に接触させた実施例2−2では、送気口21から連通口41にかけて略均等に路面温度が上昇しており、上下の通気路間で効率よく熱交換が行われているものと考えられる。また、実施例2−2では、実施例2−1と比べても、放熱量が約2倍に増加しており、路盤材5の表面平均温度も3℃以上上昇していた。したがって、上部通気路3側の熱交換用フィン8は、路盤材5に接触させることが最適であることが示された。
【0063】
また、実施例2−2から実施例2−5までの結果から、上部通気路3側の熱交換用フィン8を路盤材5に接触させた状態で、下部通気路2側の熱交換用フィン8の高さだけを変化させた場合、フィン高さが増すほど路面温度が上昇し均一性にも優れることがわかった。したがって、下部通気路2側の熱交換用フィン8についても、通気路部材7の底面に接触させることが最適であることが示された。
【0064】
ただし、実施例2−1では、下部通気路2側の熱交換用フィン8を通気路部材7の底面に接触させているにも関わらず、下部通気路2側に熱交換用フィン8を全く設けない実施例2−3よりも放熱量や平均温度が低く、温度ムラが発生している。したがって、路面温度を均等に上昇させて融雪ムラを解消するには、上部通気路3側の熱交換用フィン8を路盤材5の下面に接触させることが最も重要であることが示された。
【0065】
以上の本実施例2によれば、本第1実施形態の融雪路盤ユニット1Aにおいて、融雪ムラを解消させるのに最も適した熱交換用フィン8の形状は、上部通気路3側の熱交換用フィン8を路盤材5に接触させ、下部通気路2側の熱交換用フィン8を通気路部材7の底面に接触させることである。特に、路盤材5と熱交換用フィン8との接触は、上下の通気路間の熱交換だけでなく、路盤材5への熱伝達に優れた効果があり、路盤材温度の上昇や表面温度の均一化、および放熱量の増大に大きく作用する。
【0066】
ただし、熱交換用フィン8のフィン高さを増やすほど、圧力損失の増大につながるため、この影響を極力少なくするには、フィン間隔を広げることで対応しうる。本実施例2において、融雪効果と圧力損失とのバランスを考慮すると、フィン間隔は30mm(無次元距離:0.2)程度が適当と考えられる。また、フィン厚については、圧力損失の影響は少ないものの、材料費を考慮すると1.2〜1.6mmが適当と考えられる。
【実施例3】
【0067】
『第2実施形態における連通孔42の最適な孔径および開孔率の解析』
本実施例3では、本第2実施形態の融雪路盤ユニット1Bおよび融雪路盤システム10Bにおいて、熱伝達性仕切部材4に設ける連通孔42の最適な孔径および開孔率についてシミュレーション解析を行った。
【0068】
具体的には、本実施形態2の融雪路盤ユニット1Bにおいては、熱伝達性仕切部材4の連通孔42から温風を均一に吹き出させることが、路盤材5の表面温度を均一化させる上で最も重要と考えられる。そこで、本実施例3では、路盤材5の表面温度を均一化しうる孔径および開孔率の最適値を求めるため、実施例2と同様のCFD解析を行った。
【0069】
解析モデルとしては、熱伝達性仕切部材4と排気口31の位置を除き、前述の実施例2と同様のものを使用した。また、送風条件(20℃、43.2m3/h)および熱負荷条件(-10℃、20W/m2)についても、実施例2と同様とした。以上において、本実施例3では、熱伝達性仕切部材4として厚さ2mmの断熱材を使用し、角穴の千鳥配列で連通孔42を設けた。そして、孔径と孔間隔とを適宜組み合わせて開孔率を変化させたときの路盤材5の表面温度等について解析を行った。
【0070】
まず、本実施例3では、連通孔42の孔径を20mmに固定した場合(実施例3−1)、9mmに固定した場合(実施例3−2)、および6mmに固定した場合(実施例3−3)において、開孔率を変化させ、路盤材5の表面温度分布を解析した。その結果、図14から図16に示すように、いずれの場合においても、開孔率が小さくなるほど、路盤材5の表面温度が均一化されていることが示された。
【0071】
また、本実施例3では、連通孔42の開孔率を約12%前後に設定した場合(実施例3−4)および約22%前後に設定した場合(実施例3−5)において、孔径を変化させ、路盤材5の表面温度分布を解析した。その結果、図17および図18に示すように、連通孔42の孔径を小さくするほど、放熱量や平均温度は低下するものの、路面の温度分布が均一化する傾向を示した。
【0072】
本実施例3の解析結果は、連通孔42の孔径や開孔率が大きくなると、下部通気路2内での圧力が均等にならず、通風抵抗の小さな送気口21付近でより多くの温風が上層部に移動してしまうことに起因するものと考えられる。したがって、本実施例3によれば、上記の送風条件下で路盤材5の表面温度を均一化させるには、連通孔42の孔径を6〜9mmであって、開孔率を10〜20%程度に設定することが適当と考えられる。
【実施例4】
【0073】
『第1実施形態と本第2実施形態との比較解析』
本実施例4では、本第1実施形態の融雪路盤ユニット1Aと、本第2実施形態の融雪路盤ユニット1Bとを比較し、両者の融雪性能についてシミュレーション解析を行った。
【0074】
具体的には、本第1実施形態の融雪路盤ユニット1Aにおいて熱交換用フィン8を設けない場合(実施例4−1)、本第2実施形態の融雪路盤ユニット1Bにおいて熱交換用フィン8を設けない場合(実施例4−2)、本第1実施形態の融雪路盤ユニット1Aにおいて熱交換用フィン8を設けた場合(実施例4−3)、および本第2実施形態の融雪路盤ユニット1Bにおいて熱交換用フィン8を設けた場合(実施例4−4)のそれぞれにつき、同一条件下においてCFD解析による比較検討を行った。また、比較例4として、上述した比較例1と同様の融雪路盤ユニットにつき、同様の解析を行った。
【0075】
本実施例4において、熱交換用フィン8の形状は全て同一(フィン高さ73mm/75mm、フィン間隔30mm、フィン厚1.2mm)とし、上部通気路3の熱交換用フィン8は路盤材5に接触している。また、熱伝達性仕切部材4は、全て板厚が2mmのアルミニウム板を使用し、第2実施形態の連通孔42は、孔径6mm、開孔率16%の角穴配列とした。そして、送風条件は、実施例2,3と同様(20℃、43.2m3/h)に固定する一方、熱負荷条件としては、積雪が無い状態を想定した条件(-10℃、20W/m2)と、積雪状態を想定した条件(0℃、233W/m2)とを設定した。
【0076】
以上の条件下において、上記各実施例について、積雪が無い状態を想定した条件下での解析結果を図19に示し、積雪状態を想定した条件下での解析結果を図21に示す。また、このときの通気路部材7における前方、中央および後方の各位置での断面温度分布図をそれぞれ図20および図22に示す。
【0077】
図19から図22に示すように、いずれの条件下においても熱交換用フィン8が無い場合、実施例4−2は、比較例4や実施例4−1に比べて、路盤材5の表面温度の均一性には優れている。しかしながら、路盤材5の温度レベルは低く、積雪が無い条件下では、放熱量は実施例4−1の約59%程度であり、比較例4の約74%程度となっている。また、積雪がある条件下においても、放熱量は実施例4−1の約56%程度であり、比較例4の約84%程度となっている。
【0078】
一方、熱交換用フィン8を設けた場合、いずれの条件下でも両実施形態において表面温度が大きく上昇し、積雪がない条件下では、実施例4−4の放熱量(150W/m2)が、実施例4−3の放熱量(141W/m2)を上回り、熱交換用フィン8が無い実施例4−2の放熱量(44W/m2)に対し、およそ3.4倍の値を示した。また、積雪がある条件下においても、実施例4−4の放熱量(127W/m2)が、実施例4−3の放熱量(123W/m2)を上回り、熱交換用フィン8が無い実施例4−2の放熱量(36W/m2)に対し、およそ3.6倍の値を示した。
【0079】
以上の本実施例4によれば、第2実施形態の融雪路盤ユニット1Bでも、熱伝達性仕切部材4に熱交換用フィン8を設け、これを路盤材5に接触させることで、第1実施形態と同等の融雪効果が発揮されることが示された。
【0080】
なお、本発明に係る融雪路盤ユニット1A,1Bおよび融雪路盤システム10A,10Bは、前述した各実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0081】
例えば、第1および第2実施形態の下部通気路2および上部通気路3は、通気路部材7を熱伝達性仕切部材4によって上下2層に分割しているが、この構成に限られるものではなく、上記実施例1のように、フレキシブルアルミダクト13によって、下部通気路2および上部通気路3を構成してもよい。すなわち、下部通気路2と上部通気路3とが上下方向に並列配置され、熱伝達性仕切部材4を介して下部通気路2を流れる温風と、上部通気路3を流れる温風とが熱交換をしうるように構成されているものであればよい。
【0082】
また、上述した第1および第2実施形態では、熱伝達性仕切部材4として、平板状のアルミニウム板を使用しているが、この構成に限られるものではない。例えば、上記実施例1のように、アルミダクト13によって下部通気路2と上部通気路3とを構成した場合には、当該アルミダクト13自体が熱伝達性仕切部材4として機能するし、送気口21との接続も容易となる。また、伸縮性の高いアルミダクトを用いることにより、伝熱面積が増大するだけではなく、ダクトの末端と通気路の他端部の隙間によって構成される連通口41の調整が容易になる等の利点がある。
【0083】
また、本発明に係る下部通気路2および上部通気路3の形状は、上述した本実施形態に限られるものではない。例えば、図23に示すように、連通口41が形成された下部通気路2および上部通気路3の端面を上下に湾曲させ、温風誘導面9にしてもよい。この構成によれば、下部通気路2内を連通口41近傍まで流れた温風は、温風誘導面9に沿って滑らかに上方へと誘導され上部通気路3へ導入される。このため、送風抵抗が小さくなり、送風に必要なランニングコストが低減される。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明に係る融雪路盤ユニットおよび融雪路盤システムの第1実施形態を示す平面図である。
【図2】図1における2A−2A線断面図である。
【図3】図1における3B−3B線断面図である。
【図4】本発明に係る融雪路盤ユニットおよび融雪路盤システムの第2実施形態を示す平面図である。
【図5】図4における5A−5A線断面図である。
【図6】図4における6B−6B線断面図である。
【図7】本実施例1の融雪路盤ユニットおよび融雪路盤システムと、比較例の融雪路盤とを示す平面図である。
【図8】図7における5A−5A線断面図である。
【図9】図7における6B−6B線断面図である。
【図10】図7における7C−7C線断面図である。
【図11】本実施例1および比較例の実験結果を示す表である。
【図12】本実施例2において、熱交換用フィンの高さを変化させた場合における路盤材表面の温度分布図である。
【図13】図12における通気路部材の前方、中央および後方の各位置における断面温度分布図である。
【図14】本実施例3において、連通孔の孔径を20mmに固定し、開孔率を変化させた場合における路盤材表面の温度分布図である。
【図15】本実施例3において、連通孔の孔径を9mmに固定し、開孔率を変化させた場合における路盤材表面の温度分布図である。
【図16】本実施例3において、連通孔の孔径を6mmに固定し、開孔率を変化させた場合における路盤材表面の温度分布図である。
【図17】本実施例3において、連通孔の開孔率を約12%前後に設定し、孔径を変化させた場合における路盤材表面の温度分布図である。
【図18】本実施例3において、連通孔の開孔率を約22%前後に設定し、孔径を変化させた場合における路盤材表面の温度分布図である。
【図19】本実施例4において、無積雪状態を想定した条件下における各実施形態の融雪性能を比較した路盤材表面の温度分布図である。
【図20】図19における通気路部材の前方、中央および後方の各位置における断面温度分布図である。
【図21】本実施例4において、積雪状態を想定した条件下における各実施形態の融雪性能を比較した路盤材表面の温度分布図である。
【図22】図21における通気路部材の前方、中央および後方の各位置における断面温度分布図である。
【図23】本発明に係る融雪路盤ユニットおよび融雪路盤システムの他の実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0085】
1A,1B 融雪路盤ユニット
2 下部通気路
3 上部通気路
4 熱伝達性仕切部材
5 路盤材
6 送風機
7 通気路部材
8 熱交換用フィン
9 温風誘導面
10A,10B 融雪路盤システム
11 従来型融雪路盤
12 温風発生装置
13 フレキシブルアルミダクト
21 送気口
31 排気口
41 連通口
42 連通孔
61 送風管
62 分岐管
63 吸入口
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒体である温風が流れる下部通気路と上部通気路とを熱伝達性仕切部材を介して上下に配置し、前記下部通気路の一端に送気口を設けるとともに、他端に前記上部通気路と連通する連通口を設け、前記上部通気路の一端に排気口を設けてなることを特徴とする融雪路盤ユニット。
【請求項2】
熱媒体である温風が流れる下部通気路と上部通気路とを熱伝達性仕切部材を介して上下に配置し、前記下部通気路の一端に送気口を設けるとともに、前記上部通気路の他端に排気口を設け、前記熱伝達性仕切部材には、前記下部通気路内の温風を前記上部通気路に吹き出させる連通孔を設けてなることを特徴とする融雪路盤ユニット。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記熱伝達性仕切部材の少なくとも上部通気路側には、熱交換用フィンが長手方向に沿って設けられており、かつ、この熱交換用フィンの上端が、路盤材の下面に接触していることを特徴とする融雪路盤ユニット。
【請求項4】
請求項1または請求項3において、前記連通口が形成された下部通気路および上部通気路の端面を上下に湾曲させた温風誘導面に形成していることを特徴とする融雪路盤ユニット。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の融雪路盤ユニットを直線状に形成するとともに、複数の直線状融雪路盤ユニットを並列配置し、各下部通気路の送気口に送風機を連結することにより、前記下部通気路から前記連通口または連通孔を介して前記上部通気路へ温風を流すことを特徴とする融雪路盤システム。
【請求項1】
熱媒体である温風が流れる下部通気路と上部通気路とを熱伝達性仕切部材を介して上下に配置し、前記下部通気路の一端に送気口を設けるとともに、他端に前記上部通気路と連通する連通口を設け、前記上部通気路の一端に排気口を設けてなることを特徴とする融雪路盤ユニット。
【請求項2】
熱媒体である温風が流れる下部通気路と上部通気路とを熱伝達性仕切部材を介して上下に配置し、前記下部通気路の一端に送気口を設けるとともに、前記上部通気路の他端に排気口を設け、前記熱伝達性仕切部材には、前記下部通気路内の温風を前記上部通気路に吹き出させる連通孔を設けてなることを特徴とする融雪路盤ユニット。
【請求項3】
請求項1または請求項2において、前記熱伝達性仕切部材の少なくとも上部通気路側には、熱交換用フィンが長手方向に沿って設けられており、かつ、この熱交換用フィンの上端が、路盤材の下面に接触していることを特徴とする融雪路盤ユニット。
【請求項4】
請求項1または請求項3において、前記連通口が形成された下部通気路および上部通気路の端面を上下に湾曲させた温風誘導面に形成していることを特徴とする融雪路盤ユニット。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれかに記載の融雪路盤ユニットを直線状に形成するとともに、複数の直線状融雪路盤ユニットを並列配置し、各下部通気路の送気口に送風機を連結することにより、前記下部通気路から前記連通口または連通孔を介して前記上部通気路へ温風を流すことを特徴とする融雪路盤システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図23】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図23】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2008−255774(P2008−255774A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−58360(P2008−58360)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(591190955)北海道 (121)
【出願人】(501094971)株式会社ホクスイ設計コンサル (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(591190955)北海道 (121)
【出願人】(501094971)株式会社ホクスイ設計コンサル (5)
【Fターム(参考)】
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