説明

螺旋状ステント

【課題】何らかの影響を及ぼすような捩りを与えることがなく、しかもステントでサポートされた流体導管内の流れを旋回流にすることを容易にすることができ、潰れた状態から拡張状態へ動くことができる内部ステントを提供する。
【解決手段】ステントが潰れた状態であるときに人間又は動物の体の流体導管に挿入され、拡張状態へ拡張されるステント2であって、前記導管に係合する外壁7を有し、該外壁7は拡張状態において縦方向及び周囲方向に延伸する螺旋状部分6を有しかつステントが潰れた状態から拡張状態まで拡張するときに延伸に抵抗するようにする。

【発明の詳細な説明】
【発明の技術分野】
【0001】
本発明は人体か動物の体の流体導管へ挿入するステントに関する。ステントは血管を物理的に支持するのに使用されるほぼ管状の装置である。すなわち、ステントは静脈か動脈などの血管のキンク又は閉塞を防ぐのを助け、ダイラテーション他の処理の後にその崩壊を防ぐのに使用される。
【従来の技術】
【0002】
ステントは広義に2つの主なカテゴリに分類される。バルーンにより拡張されるステントと、自己拡張型ステントである。前者の場合では、ステント材料はバルーンの膨脹を介して塑性変形されるので、バルーンを萎ませた後にステントは拡張したまま残る。そのようなステントは、「潰れた」状態に製造され、すぐに配送が可能であり、血管他の流体導管の中にあるときに拡張状態に広げられる。
【0003】
自己拡張型ステントもまた、潰れている状態で配送されるように設計されており、拘束配送システムから解放されると、ステントは予定されたサイズの拡張状態に広がる。この効果は材料の弾性及び/又は形状記憶効果を使用することによって達成される。形状記憶ステントの場合、一般的に使用される材料はニチノールである。
【0004】
多くの異なるデザインのステントが市場で流通している。それらは耐蝕性と生物学的適合性を提供するさまざまな材料から作られている。それらはシート、丸いか平坦なワイヤ又はチューブから作られる。それらはほぼ筒状であるが、それらが挿入される流体導管の反りに従うために縦方向にフレキシブル(可撓)である。
【0005】
EP1042997は、より狭い又はねじれている冠動脈内にステントの一端を容易に配置するため、又は、特定の冠動脈の湾曲部にステントを到達させるために、長さに沿って可撓性の度合いが異なるステントを提供することを提案した。この提案は、ストラットの厚さがステントの長さに沿って可変するストラットを相互接続したパターンのステントを提供することを伴う。
【0006】
私たちは、動脈の非平面形によって引き起こされる旋回パターンを含む動脈内の流れパターンが血栓症、アテローム性動脈硬化症、内膜増生などの血管系の病気の進展を抑制するように作動することを以前に提案した。
【0007】
WO98/53764において、血管の一部を支持するステントが開示されている。ステントは支持部分を含み、この支持部分の回り又は内部に移植血管の一部を、この一部をステントが内部又は外部で支持するように、置くことができる。ステントの支持部は、移植血管とホスト血管の間の流れが非平面カーブになるように形成される。これは旋回流を発生させて、血管系の病気、特に内膜増生の発生を抑える好ましい血流速度パターンを提供する。
【0008】
WO00/32241において、別のタイプのステントが開示されており、これは支持部を含み、この支持部の回り又は内部に移植血管ではなく、完全な血管の一部が置かれる。この支持部分は閉塞、キンク又は崩壊による血管の欠陥を防ぐことができる。ここでも、ステントの支持部は、血管の中の流れが非平面カーブになるような形状及び/又は向きとされている。好ましい血流速度パターンは、ステント内部とステントを超えた部分に旋回流を発生させることで達成できる。血栓症、アテローム性動脈硬化症、内膜増生などの病気による血管の欠陥をそれによりかなり減少させることができる。
【0009】
旋回流がどのように有益であるかに関するさらなる態様は上の刊行物で説明されている。非平面形のチューブがどのようにして流動不安定性を禁止するについては、ケアロ他(Caro et al.)(1998)のJ.フィジオ(J. Physiol)、513P、2Pでさらに説明されている。
【0010】
WO00/38591において、螺旋状の流れを引き起こすために、内部螺旋溝又はリッジを備えるステントが提案されている。この文献の図9乃至12はメッシュシリンダの形態のステントを示し、流路内に突出して流れを案内するための羽根部材が前記シリンダの内部に取り付けられている。しかしながら、流れ内に突出する羽根の存在は、特に羽根の上に何か材料のビルトアップがあれば、流れを妨げ流体抵抗を増加させる。また、筒状のチューブにおける羽根の使用は流れの全体の断面に渡って旋回流を確かに引き起こすことができないかもしれない。チューブのセンターにより近いところの流れは、特により高いレイノズル数の流れの場合、線型流路を通る傾向がある。さらに、比較的短い長さの流れの上に羽根を設けることは、流れ特性の一時的な変更だけを創成しやすく、羽根の下流の隔てたところでは流れは正常なパターンに戻る。
【0011】
WO02/098325において、血流導管の内腔の内部形状に影響を及ぼすために、血流導管の外に筒状の外部構造を配置する様々な提案がなされている。リブ他の半径方向内向きに突出する螺旋状の部材を提供することによって、内腔の形を導管の外から変更することができる。これらの様々な構造は、潰れている状態で導管内において配送でき目標位置で拡張することができるステントとしては使用できない。
【0012】
WO00/32241において、血管の非平面湾曲を確立及び/又は維持する内部ステントが示されている。この文献の図5は、形状記憶合金の、部分的にコイル状又は少なくとも部分的に螺旋状のクリップであって、筒状のワイヤメッシュに取り付けられたクリップを示す。そのような構成において、ステントがいったんインストールされてクリップがさらにコイル状に巻かれた状態へと運動すると、クリップは筒状ワイヤメッシュを非平面湾曲させるが、また同時にそれを捩る。ステントが血管の内壁に荷重を与えることは望ましくないので、この捩りはクリップによって課される螺旋状ターンの数を、例えば、1つ又は1つ未満のターンに制限するかもしれない。しかしながら、管内に旋回流を引き起こし又は維持する目的は、螺旋状のターンの数を増加させることによって補助される。クリップはまた、血管腔に突出するリブを形成するが、このリブは、羽根部材に関して上で議論したように、血管の流れ特性について理想的でないかもしれない。
【発明の開示】
【0013】
私たちは、今、何らかの影響を及ぼすような捩りを与えることがなく、しかも、ステントでサポートされた流体導管内の流れを非平面湾曲状に流す、すなわち、旋回流にすることを容易にすることができ、潰れた状態から拡張状態へ動くことができる内部ステントを生産する方法を見いだした。
【0014】
発明の第1の態様によると、潰れている状態で人体又は動物の体の流体導管へ挿入され拡張状態へ拡張するステントが提供される。このステントは導管と係合する外壁を含み、この外壁は、前記拡張状体のときに縦方向及び円周方向に延伸する螺旋状部分を持ち、この螺旋状部分は、ステントが潰れている状態から拡張状態まで拡張するときに、延伸に耐える。
【0015】
そのようなステントによって支えられた流体導管の中の流れは非平面カーブ状に流れて旋回流を促進する。その利益については上で説明した。したがって、導管の流れ内腔(flow lumen)を考えると、それは長手方向(X軸)に延伸するので、1つ以上の平面(すなわち、Y軸とZ軸の両方)において曲がる。言い換えれば、流れ内腔は長手方向にほぼ螺旋状に延伸する。そのような非平面状カーブは、拡張状態のときに非回転対称形状(一次回転対称)によって達成され、それはステントの長さに沿って捩れている。しかしながら、それはまた、ステントが円形その他の回転対称断面形状であって、1「スライス」から次のスライスへと横方向にシフトする断面形状を有するならば、達成される。ある場合、捩れ、横方向にシフトする非回転対称形の組み合わせが提供される。
【0016】
望ましくは、ステントは、拡張状態のときに、流体導管をそれが長手方向に延伸するときに非平面カーブ状にし、カーブは少なくとも1つのターンをなす。1つ以上のターン、より望ましくは複数のターンを提供することは、実質的な捻りを伴うことなく、すなわち、ステントの一端が他端に対して意味を成す回転を生じることなく、潰れている状態から拡張状態に広がる好適なステントの能力によって可能にされる。このことは、ステントが潰れた状態、拡張した状態の両方の場合に、同じターン数(巻数)を持つ螺旋状部分により達成される。ステントのこの特性は、導管に捩れを引き起こすことなくステントが延伸できることを意味する。捩れは人体又は動物の体の導管を束縛するので、望ましくない。
【0017】
望ましくは、拡張状態のステントの中心線は実質的に螺旋状の経路をとる。言い換えれば、ステントの隣接する断面スライス(切片)の中心軌跡は螺旋状の軌跡又は中心線を形成する。
【0018】
一般に、著しい溝、リッジ、リブ又は羽根も避けることが好ましい。なぜなら、これらは流れ特性を改良するという望ましい効果の反対のものを持ち、すなわち、流れを妨げ、堆積物の形成を容易にし又は淀んだ領域を創成する。したがって、望ましくは、ステントは、実質的にリブや羽根を有さず、例えば、可撓性導管の流れ内腔に突出するリブとして作用する(隣接ワイヤより)厚いワイヤを持たない。
【0019】
ステントは流れ特性を改良する。周知のとおり、真っすぐなチューブの場合、粘性効果のため、壁近く速度はチューブのコアにおける速度と比べて非常に遅い。単一平面において曲がっているチューブの場合、ベントの外側の流れの速度は増加されるが、内部の流れの速度はさらに遅くなる。どちらの場合も、チューブの幅を横切る軸流速度にかなりの変化がある。発明による螺旋状のチューブ部分を使用することで、旋回流が発生し、チューブ部分を横切る流れの軸流速度プロフィールは一般により均一、あるいは、「より鈍く」なり、チューブ部分の外部と内部の両方における流れの軸流速度は平均軸流速度により近くなる。したがって、旋回流を与え、軸速度及び壁近くの部分の速度を比較的一定に分布させることによって流れ特性を改良できる。また、断面に渡る混合が促進される、流動不安定の発生の可能性が減少する。淀み領域の回避とフラッシングが促進される。移植の所とその下流での堆積及び病理の進展の可能性が減少する。
【0020】
望むならば、螺旋中心線の振幅とピッチをステントの長さに沿って変化するように選ぶことができる。螺旋状部分によって提供され延伸への抵抗を増減することによって振幅の変化を達成でき、一方、螺旋状部分自体のピッチを変えることによってピッチの変化を達成できる。そのような変化は、例えば、ステントの上流端で穏やかな旋回を導入して、下流方向において旋回効果を増加させることが願われる場合に望ましい。
【0021】
好ましい実施形態のステントは螺旋状部分を有し、この螺旋状部分はそれに隣接するステントの部分よりも延伸に対する大きな抵抗を有する。望ましくは、螺旋状部分は、螺旋状部分に隣接するステントの部分のステント成形材料の量よりも増量した量を含む。この材料の増量は、ステントが拡張状態に拡張するときに延伸に対する必要な抵抗を提供することができる。増量は、例えば、半径方向及び/又は縦方向及び/又は円周方向においてより厚い構造部材によって供給することができる。それに代えて、又は、追加的に余分なステント成形部材を使用して増量を供給できる。例えば、編んだステントの場合、1本以上の余分なワイヤ織り込むことによって、螺旋状部分を提供できる。他の場合、余分なストラットを提供できる。
【0022】
螺旋状部分は、ステントの拡張の間に曲げを伸ばすのに抵抗する曲がり部分を有する構造部材を含むことができる。多くのステントはノード間において又はノードにおいて曲がった構造部材から成る。一般に、ステントが拡張するとき、ステントの直径が大きくなるのに従って、曲がり部分のいくつか又はすべては真っ直ぐになる。したがって、螺旋状部分に隣接する曲がり部分よりも真っ直ぐになることに抵抗する曲がり部分を有する構造部材を持つ螺旋状部分によって延伸への必要な抵抗を達成できる。
【0023】
円周方向の延伸に抵抗するように、あるいは、長手方向の延伸に抵抗するように、あるいは、円周方向かつ長手方向の延伸に抵抗するように、螺旋状部分を構成することができる。螺旋状部分の適切な形状の選択は、一般に、ステントのタイプとそれが広がる方法に依存する。
【0024】
螺旋状部分を長手方向及び円周方向に延伸するストライプとして見なすことができる。ストライプは、例えば、ステントに1本以上の余分なワイヤが織り込まれた場合、実質的に連続することができ。あるいは、ストライプを不連続とすることができ、この場合、ステントはより厚い構造部材又はその他空間によって分離される変更タイプの複数の構造部材を有する。
【0025】
ステントを自己拡張型又はバルーンにより拡張されるものとすることができる。自己拡張型ステントの場合、潰れている状態から拡張状態までの拡張の間、螺旋状部分の一部でない部分はその弾性か形状記憶特性により拡張しようとしている。それほど拡張できないことによって、螺旋状部分の近くで拡張は抵抗される。螺旋状部分はそれ自体、ステントの拡張の間に、ある程度まで拡張することができ、事実、それ自体、その弾性か形状記憶特性により広がろうとしている。しかしながら、ステントの残りの部分は螺旋状部分より広がろうとしており、事実上、螺旋状部分が延伸への抵抗を提供する。これは、ステントによって支えられた流体導管内で旋回流を促進するために必要な形をステントがとることを可能にする。
【0026】
バルーンによる拡張可能なステントの場合、ステントを拡張させる力はバルーンから供給される。螺旋状部分の拡張はより少なく、このことは、その塑性変形の度合いがステントの他の部分より通常より少ないことを意味する。
【0027】
ステントの基本的な形状は、コイルステント、螺旋渦巻状ステント、編んだステント、連続リングステントや、閉鎖セル型連続リングステント、開放型セルステント等の多くの使用されているタイプのものとすることができる。コイル形状を作ること、ワイヤを組む若しくは編むこと、チューブをレーザ切断すること、放電加工(EDM)すること、化学的エッチを行うこと、又は他の知られている方法でこれらのステントを作ることができる。ステントをさまざまな材料から作ることができ、材料はステンレス、ニチノール、タンタル、プラチナイリジウム、ニオブ合金、コバルト合金又はポリマー (生分解性ポリマー等)を含む。
【0028】
本発明の第2実施形態によると、潰れた状態で人体か動物の体の流体導管に挿入されてバルーンにより拡張状態へ拡張させることが可能なステントが提供される。このステントは、拡張する壁を持つバルーンを有し、該壁は前記拡張状態のときに縦方向及び円周方向に延伸する螺旋状部分であって、バルーンが潰れた状態から拡張状態まで拡張するときに延伸に抵抗する螺旋状部分を有する。
【0029】
いくつかの状況においては、主要なステント本体、すなわち、バルーンが取り外された後に流体導管に残されるものは拡張の前は従来タイプのものであることができる。しかしながら、拡張の後に、それは(塑性変形により) バルーンが決定する形に対応する形を保持し、螺旋状部分の拡張は他の部分に比べて拡張が少ない状態となる。
【0030】
代替的に、ステントは発明の第1の実施態様に従い、すなわち、延伸に抵抗する螺旋状部分を有し、流体導管と係合する外壁を持つことができる。バルーンの螺旋状部分とステントの外壁は次に望ましくは互いに位置決めされるように配置される。
【0031】
バルーンの拡張可能な壁の螺旋状部分は隣接する壁部分のものより大きい壁厚を持つことができる。これは、一定の壁厚のバルーンの外側に螺旋状の「ストライプ」を加えて、より厚い螺旋状部分を作ることによって容易に達成される。
【0032】
ある態様では、発明は人体か動物の体の可撓導管に挿入するステントであって、該導管の流れ内腔の螺旋状の中心線が比較的小さい振幅であるステントに関する。
【0033】
WO00/38591でのさらなる提案はコルクねじ形に曲げられた円形断面チューブを提供することである。コルクねじの螺旋が中央の下側に明らかなギャップを持つことが普通であり、そのため、この提案された構成がチューブの幅に比べて広い曲げ幅、確実にチューブ直径の2倍以上を持つであろう。螺旋の振幅はチューブの内径の半分を超えるであろうし、チューブの内部に沿う「見通し線」がないであろう。したがって、この提案は比較的扱いにくく、ある種の応用には不適当であるだろう。同様の提案はWO02/98325の図5に示され、これは導管の外部に位置されるチューブ状のメッシュ構造に関し、チューブは大きい振幅の螺旋を有し、かつ、ここでもチューブの内部に沿って「見通し線」がない。
【0034】
本発明の第3の実施態様によれば、潰れた状態で人体か動物の体の流体導管に挿入され拡張状態へ拡張されるステントが提供され、該ステントは、拡張状態で、流れ内腔を持つ実質的に螺旋状の経路をとる中心線を流体導管に持たせ、該螺旋状中心線は65°以下の螺旋角度と、流れ内腔の内径の半分以下の振幅を持つ。
【0035】
第3の態様の上記の特徴と、その以下の好ましい特徴はまた、個々に、あるいは組合せて、本発明の第1及び第2態様に従うステントに関して役立つ。
【0036】
発明は完全な(そのままの)血管又は移植血管の内部ステントに適用できる。
【0037】
本明細書(特許請求の範囲を含む)では、螺旋の振幅は、横幅の中間位置からの変位範囲のことをいう。したがって、螺旋中心線を持つ流れ内腔の場合、振幅は螺旋中心線を持つ全幅の半分である。
【0038】
螺旋の振幅がチューブの内径の半分以下である流れ内腔において、コルクねじ形状とは異なり、チューブの内腔に沿って「見通し線」が存在し、そこでは、事実、螺旋はコア(固体コア、あるいは空気コアを持つ「仮想」コアのいずれか)の回りを有効に巻いている。見通し線における流れは潜在的に真直な経路を流れることができるが、一般に、渦巻成分を有することを我々は発見した。
【0039】
この明細書(特許請求の範囲を含む)の目的に関し、用語、螺旋状流れ内腔の「相対振幅」とは振幅を内径で割ったものとされる。そのため、螺旋チューブの振幅がチューブの内径の半分以下である流れ内腔において、これは、相対振幅が0.5以下であることを意味する。ある状況において相対振幅は0.45、0.40、0.35、0.30、0.25、0.20、0.15、0.1又は0.05以下であることが好ましい。しかしながら、相対振幅は少なくとも0.05、より好ましくは、0.1である。これは、必要な旋回流が確実に誘発されることを助けることができる。
【0040】
相対振幅は、ステントと、そのデザインの空間的な規制の使用に従って変化する。しかしながら、振幅をチューブ内径の半分未満に保つことによって、過度に大きい装置を設けること無く、旋回流を引き起こすことができることが理解される。ステントを備えた導管によって占領される「包囲体」が流体導管を囲む組織内の利用可能なスペースに嵌合することができ、導管が位置する局部環境によってこの包囲体が特定の経路を通るようにされる場合でさえも、流れ内腔の必要な螺旋形状を維持することができる。
【0041】
ステントがフルサイズに広がるのを導管が防ぐことが予想される。したがって、0.5を超える(例えば、0.6か0.7)の相対振幅を持つようにステントを設計することができるが、使用においては、流れ内腔の相対振幅は0.5以下である。しかしながら、一定の好ましい配置では、生体外(ex vivo)の拡張したステントの相対的な振幅は0.5以下である。
【0042】
螺旋の螺旋角度はまた、流れのために有効な断面積を最大化する願わしさを持つ流れチューブのスペース拘束のバランスをとる関連要素である。螺旋角度は65°以下であり、望ましくは、55°、45°、35°、25°、20°、15°、10°又は5°以下である。相対振幅に関して、螺旋角度を流体の粘性、密度及び速度の条件に従って最適化できる。
【0043】
一般的に言って、レイノズル数がより大きければ、螺旋角度をより小さくして満足できる旋回流を達成でき、レイノズル数をより小さくすれば、満足できる旋回流を発生させるためにより大きな螺旋角度が必要される。より大きな螺旋角度を使用することは、チューブ壁の近くで淀み流体ポケットがあるかもしれないので、一般に望ましくない。したがって、任意のレイノズル数(又はレイノズル数の範囲)に対して、螺旋角度は望ましくは、満足できる旋回流を発生させるようにできるだけ小さくするように選ばれる。螺旋角度をより小さくすると、同等の筒状チューブのものと比較して、長さの増加がより小さくなる。ある実施形態では、螺旋角度は20°未満又は15°未満である。
【0044】
脈動流では、レイノズル数はある範囲で変化することが理解される。休んでいるときの典型的平均動脈血流レイノズル数はおよそ100であり、脈動流における場合の2倍又は3倍、興奮しているときの平均値の3〜4倍のピーク値に達する。したがって、旋回流が促進される範囲は同様に変化する。低いレイノズル数において淀み流領域があっても、例えば、小螺旋角度及び/又は小相対振幅が選択されるため、これらは、レイノズル数がより大きいときの流れ期間において洗浄される傾向がある。
【0045】
ステントを全長に渡って実質的に同じ相対振幅と螺旋角度で作ることができる。ステントが使用中されると、引張荷重によるチューブ部分の伸張か収縮により、又は捩り荷重により小さい変化がステントに生じうる。しかしながら、スペース規制に適合するため、又は、流れ状態を最適化することのいずれか一方のために、ステントが可変螺旋角度及び/又は相対振幅を持つ状況があるかもしれない。
【0046】
製造を簡易化する理由で、ステントが長さに沿って実質的に一定の断面積を持つことが好ましいかもしれない。ここでも、使用の際にステントに作用する荷重によりそれに変化がありうる。
【0047】
ステントの螺旋状部分をステントの全長の一部にのみ設けることとしても良いし、又はそれを実質的に全長に延伸させることもできる。例えば、ステントはその全長の一部にのみ、あるいは、実質的にその全長に渡って、発明の形状を備える部分を持つことができる。ステントに1つの完全なターンの一部、例えば、四分の一、半分又は四分の三のターンを設けることができる。ステントは望ましくは少なくとも1つのターン、より望ましくは少なくとも複数のターンを持つ。ステントに沿った螺旋の繰り返しターンは確実に旋回流を発生させ維持する傾向がある。
【0048】
ステントはほぼ直線的に延伸することができる。言い換えれば、ステントの中心線が軸の回りに実質的に螺旋状の経路をとる該軸は真直であることができる。あるいはまた、軸自体を曲がったものとすることができ、そこでは、ステント付き導管が占領する包囲体は、例えば「アーチ」形状の導管を作り出すために曲がっている。アーチ湾曲を平面状か非平面状にすることができるが、望ましくは、旋回流が維持され該旋回流が湾曲形状によって取り消されないようなものであるべきである。従って、例えば、ステントは、発明の第3の態様による形状を持つ、すなわち、ステント付き導管が65°以下の螺旋角度及びチューブ部分の内径の半分以下の振幅を有し実質的に螺旋状経路を通る、ほぼ「アーチ」形状(平面状か非平面状)であることができる。
【0049】
ステントは、所望とあらば、薬剤コーティングを含むことができる。そのようなコーティングは薬剤を持続的にある期間の間放出することができる。それ故、ステントは病気の初期治療のために薬剤を提供でき、流れに伝わるその特性のために長い期間治療効果を与えることができる。
【0050】
チューブの円周に設けた複数の溝かリッジ、又は捩られた非円形部を用い、チューブが実質的に真直である上記従来技術の提案においては、チューブの中心線もまた真直である。これは、本発明の第3の態様のほぼ螺旋状の経路をとるステントの中心線と異なっている。従って、ステントは実質的に円形断面、引いては、可能な限り小さい潤辺対断面積比を持つことができると共に、旋回流を引き起こすのに必要な特性をいまだ持つことができる。もちろん、ステントが非円形断面を持つ状況、例えば、インターフェース(接続)を補助するため又は圧力損失問題が重要でない状況があるかもしれない。
【0051】
螺旋状に配置された単一の内部リブを有するチューブがWO97/24081とEP1127557 A1で提案されている。これは螺旋経路をとる中心線を持つチューブをもたらすが、リブが別様の筒状チューブに設けられているため、螺旋の振幅が非常に小さく、一般に、0.05未満の相対振幅を持つ。旋回流の発生は、発生するとしても、それに対応して限られものであり不十分である。
【0052】
溝、リッジ又はリブを使用する先行技術の提案にさらに関連して、動脈の形状は正常な生理的な状態の下にあって、非平面状(すなわち、螺旋の性質上1つ以上の平面において曲がっている)であり、かつ、溝付きでなく、又は線条でもない。より大きな関連レイノズル数において、螺旋形状(非平面状)における流れが線条/溝付きにおける流れと異なり、例えば、前者の場合において、壁面に近い流れとコア流の両方において旋回流であることが実験的にわかった。旋回流の発達は、線条/溝付きの場合よりもより急速であり、旋回流の発達のために多くのチューブ直径を使用することができる。したがって、生理的非平面状 (溝付き又は線条形状と異なる)の導入は病理発展を抑制する点で有益であると期待される。
【0053】
発明の第3の態様のステントが螺旋中心線を有するので、渦構造の空間的な再編成があり、これは、ステントの断面を横切る軸流のコア運動をもたらし、断面に沿った混合を促進する。旋回流は、停滞と流れ分離領域の発達を抑制して流れを安定させる。
【0054】
複数の溝、リッジ若しくはリブ、又は非円形断面の捩りチューブを使用する先行技術における提案において言及したように、中心線は螺旋状ではなく真直である。これは急カーブでの流れを安定させると予想できるが、直管においては渦構造の空間的な再編成を引き起こさず、チューブの断面を横切る軸流のコアの運動をもたらす。したがって、それは、発明によるチューブと同一程度には断面を横切る混合を促進しない。そのような混合は血管での物質移動と血管の生理的な保全を維持することにおいて重要である。
【0055】
ここに開示されたステント形状を様々な生物医学応用に使用でき、例えば、様々な動脈 (冠状動脈、頚動脈、及び、腎臓の動脈等)と、静脈における応用、胃腸など(例えば、胆汁管か膵管)の非心臓血管での応用、泌尿器科(例えば、尿管か尿道)での応用、呼吸器系(肺空気路)での応用である。したがって、発明は血液以外の体液のためのステントに及ぶ。一般に、発明の形状の使用は、淀み領域の存在を避け、したがって、有益である。
【0056】
発明のいくつかの好ましい実施形態をここで一例として添付図面を参照して説明する。
【0057】
図1〜3は編んだステント2の拡張状態を示す。ステントは、メッシュ状に構成されメッシュ様の外壁7としてまとめられた普通のワイヤストランド4を含む。ステントはまた、その縦(長手)方向及び円周方向に延伸する螺旋状部分又は「ストライプ」6を備える。この螺旋状部分6は、この実施形態の場合、メインメッシュに織り込まれた2つの追加ストランド8から成る。
【0058】
螺旋状部分6の1つの効果は、図3に示すように、螺旋状部分に相当する領域において一部が取り除かれた円に近い断面形状を作ることである。この断面形状は図心9を有する。ステントの長さに沿った図心9の軌跡は、図1に示すように螺旋中心線40を定める。中心線40は、ステントが含まれる想像上の包囲体20の中心に位置する縦軸30の周りの螺旋状経路を通る。この螺旋の振幅Aは図1に示される。
【0059】
実際には、振幅Aは、断面形状を円3の中心に関して単に回転させることによって達成されるものより大きい。その場合、包囲体20は単に円3に相当する。しかしながら、拡張の際に螺旋状部分が延伸に抵抗することの効果は包囲体20を円3よりかなり大きくすることである。これは螺旋状部分が非平面又は螺旋状の流れ内腔の創造に貢献するという別の効果である。
【0060】
使用中に、ステントは目標位置に配備され、次に、バルーンによって、あるいは、ストランド4の弾性又は形状記憶特性によって広げられる。螺旋状部分6は、 (少なくとも縦方向の) 延伸を制限するように作用し、したがって、拡張されたステントは説明された形状を採り、そこでは、ステントの中心線は螺旋経路をとる。外壁7は流体導管壁に係合し、その形に影響を及ぼして目標位置の流体導管の内腔がまた螺旋状の中心線を持つように流体導管壁の形に影響を及ぼす。これは、内腔に沿って旋回流を促進させることを支援する。ステントの巻き方 (「s」状、「z」状)は、通常、ステントの上流に既に存在するどんな旋回流を消滅させるのではなく強めるために局部の流体導管の形状を補足するように選択される。
【0061】
図1〜3に示す実施形態において、2本の螺旋状に構成されたワイヤ8を提供したが、これとは異なる数のワイヤを使用することができる。さらに、ワイヤは螺旋状部分6の中央において延伸に対して最大抵抗を提供し、螺旋状部分の縁に向かって抵抗が少なくなるように、例えば、中央に最も厚いワイヤを用い、縁に向かうにつれて薄いワイヤを用いてワイヤのグレードを変えるように設計されうる。そのようなアレンジメントは、拡張ステントの形が横断面から見た場合、如何なるリッジ又は溝を持たず、理想的には、かなり円に近いものにさせる。
【0062】
変更例では、実質的に円形断面のステントを生産するために、螺旋状部分は単一の螺旋状に設けたワイヤ8によって形成される。この単一のワイヤは、ステントの拡張の間に縦方向の延伸に対する抵抗を与えることができ、螺旋中心線を持つ内腔を形成することができる。円形断面形状に形成されたステントは、内腔の中心線が螺旋状となる必要な旋回流誘発効果をいまだ供給できる。
【0063】
図4と図5はいわゆる螺旋渦巻状(helical spiral)のステントの実施形態を示す。この場合、ステントの基本的デザインは波形12のワイヤ10から成り、その波形はステントの一端から他端までコイル様に延伸する。波形12の縦方向に隣接する波は、連結要素14によって接合されている。拡張状態において、波の波長は、ステントの円周の大部分に関して距離Dである。螺旋状部分6の領域において、この波長はD未満に減少されている。波長を減少させたことの効果は、内部でステントが拡張する流体導管の内腔をそこに旋回流を促進するような必要な形状とすることである。
【0064】
図4と図5のステントの潰れている状態において、波形12の波の波長はステント全体を通じて小さくなる。拡張の間に螺旋状部分6の領域の波長は最も少なく増加する。螺旋状部分6によって円周方向の延伸は抵抗を受ける。これは、例えば、螺旋状部分6の波の自然な形がDよりも小さい波長を持つことにより達成することができる。これは、例えば、ステントが金属シートかチューブから切り取ることによって作ることが適切であるかもしれない。
【0065】
螺旋状部分6の領域において円周方向の拡張を少なくすることを達成する別の方法は、螺旋状部分6における円周方向の波の隣接部分間に短いブリッジ16を供給することである。そのようなブリッジ16は図6に示される。螺旋状部分に沿ってさらなるブリッジが間隔を置いて提供される。
【0066】
図7は、隣接するセル間に「v」ヒンジを有する閉鎖セルタイプのステントを示している。この場合、螺旋状部分6は他のセル20より小さいセル18の螺旋状のラインを形成することによって提供される。ステントがバルーンによって、あるいは、ステントが形成される材料の弾性又は形状記憶特性によって広げられるとき、セル20は所定のサイズに拡張する。セル18は所定のより小さいサイズに拡張し、これは延伸に抵抗することを意味する。他のステントのように、結果として、ステントが中で広げられる流体導管の内腔が旋回流を促進する構成が採用された。
【0067】
図に示し説明した様々なステントは単一の螺旋状部分6を備える。しかしながら、複数の螺旋状部分を提供することもできる。望ましくは、ステントは非回転対称(一次回転対称)であり、これにより、拡張したステントの中心線が確実に螺旋経路をとるからである。
【0068】
図14は移植血管又は完全な血管に使用する内部ステント12を示している。ステント12は、繋がっているワイヤメッシュから作られ、ほぼステントの全長において螺旋形状を持つ。使用される材料は望ましくは、ステントの挿入を容易にする形状記憶合金である。
【0069】
図15は内部ステント12の代替例を示している。ここでは、繋がっているワイヤメッシュがその一端の短い領域だけにわたる螺旋状チューブ部分1を持つ。
【0070】
図16は、挿入された後の移植血管14内に位置するステント12を示す。動脈6に外科手術により取り付けられた移植血管14を図示目的のために透明で示し、元の位置の内部に置かれた部分螺旋状ワイヤメッシュステントを示す。
【0071】
図14、図15及び図16の内部ステントの場合、メッシュ自体が淀み領域のハニカムを形成することを避けるために、変更は、滑らかな内部ライニングをメッシュに提供することを伴うことができる。あるいはまた、WO01/45593で説明されるように、ステントの内層をリンケージなしで螺旋状に巻くこととしてもよい。
【0072】
ステントの螺旋形状は、旋回流を促進し引いては流動不安定と病理部位の発展を最小にするように設けられる。
【0073】
図14と図15に示すステントは湾曲縦軸を有する包囲体の中に定義される。それらはほぼアーチ状である。そのようなアーチは一平面内で曲がることができ、又は、それ自体、非平面状であり、その場合、非平面性が螺旋と同じ方向の旋回流を促進するべきである。
【0074】
ステントはアーチ形状である必要はなく、アーチ形状に代えて、例えば、図17に示すようにほぼ真直な軸を持つことができる。図17のステントは真直な中心縦軸30を有し、1ターンのおよそ半分を受ける螺旋中心線40を備える。ステントの螺旋の小さな振幅は、ステントが筒状の形に近いことを意味し、したがって、従来のステントが以前に使用された手順で使用できる。しかしながら、これは円形断面形から逸脱することなく、かつまた、螺旋状のリブ他の突起を形成することなく達成される。ステントが挿入される血管はステントが作る形を採ることができ、したがって、旋回流の利益を得ることが予想される。他の実施形態では、螺旋中心線は1ターンの半分以上に相当することができる。
【0075】
図17のステントは、例えば、冠状動脈の動脈血栓症か狹窄症がある動脈のステントとして使用できる。
【0076】
図8は風船玉(トイ・バルーン)55に対して行った実験の結果を示す。そのバルーンは細長いタイプであった。それは膨らませられることなく筒状ロッド上に支持され、そして、別のバルーンから切り取られたプラスチック片51が前記筒状ロッド上に支持されたバルーンに接着剤で接着して縦方向及び円周方向に延伸する螺旋状片6を形成した。バルーン上に真直な線50を描いた。接着剤が硬化した後、バルーンを膨らませた。膨らんだバルーンを図8に示す。
【0077】
膨らんだバルーン55は螺旋状の内腔を有することがわかる。先に説明したステントと同様に、バルーン55は螺旋中心線40を有し、中心線40は縦軸30回りに螺旋経路をとる。縦軸が想像上の筒状20の中心に位置し、バルーンはこの包囲体に包含される。螺旋の振幅Aは図8に示される。
【0078】
膨らんだ後に、真直な線50が波形となりバルーンの1側面上に沿って残ることに注意されたい。すなわち、立面図である図8に全体の線50を見ることができる。
【0079】
このことは、意味のある捩りを少しも生じることなく、バルーンが潰れている状態から拡張状体になったことを示す。バルーンの全長に渡って正味の捩りが生じていない。発明の好ましい実施形態による拡張ステントの同様の効果は、流体導管内に位置するステントが拡張して流体導管の内部に係合するときにその導管に過度の捩り負荷を課さないということである。これは、導管が例えば血管であるケースで有益である。なぜならば、捩りは血管の外部テザーによって抵抗されるからである。
【0080】
したがって、好ましい実施例では、ステントは実質的に捩りを生じることなく潰れている状態から拡張状態に広がる。ステントに捩りがないことはまた、拡張の間に、例えば、血管に捩れ(捩れは血管のテザーに因り好ましくない)を引き起こすことなく、ステントが複数のターンを持つことを可能にする。
【0081】
図8のバルーンは筒状の膜からスタートする。該膜は螺旋状部分であって、バルーンの残りの部分より厚い壁厚(この場合、倍)を持つ螺旋状部分を備える。膨らむ間に、より厚い螺旋状部分はあらゆる方向(縦方向及び円周方向を含む)の延伸に抵抗する傾向があり、その結果、膨脹バルーンの形に影響を及ぼす。通常の筒状形を採用することに代えて、バルーンは螺旋中心線40を備える形をとることができる。
【0082】
図8は、螺旋状部分によって達成された振幅Aが非円形断面を単に回転させることにより達成されるであろう振幅よりも大きいことを示す。包囲体20の直径はバルーンの直径より実質的に大きい。拡張したステント外壁、又は、バルーンにより拡張可能なステントに使用するバルーンの壁についても同じ効果が得られる。
【0083】
別の実験では、平行な側縁を持つものではなく、テーパ付きの幅を持つプラスチック帯52が作られた。螺旋中心線40の振幅Aは、帯の幅がより広いところでは、より大きいことが見いだされた。これは図9に示される。帯の幅がより狭い方が、その断面の円形からの逸れがより少ない傾向がある。拡張された実験的なバルーン膜の形を拡張したステント外壁又はバルーンにより拡張可能なステントに使用するバルーンの壁に類似するものとみなすことができる。したがって、螺旋状バルーンの内部を内腔か流路と考えると、流れ内にはみ出すリブ、羽根他の流れガイドを使用することなく、上で議論した望ましい流動性を与える螺旋状の内腔が得られることが理解される。
【0084】
このように、ステントの拡張の間に延伸に抵抗する螺旋状部分を導入することによって、拡張されたときにステントは、それが支える流体導管が螺旋状の内腔を持ち、それにより旋回流を促進させる形を採るようにさせることを実験結果は示している。図8と9のバルーンにおいて観測された効果は、自己拡張型又はバルーン拡張型のどちらか一方及び/又はバルーン拡張型ステントに用いられるバルーンにおける主要なステント本体において得ることができる。
【0085】
図10はバルーン拡張型ステント2を示している。バルーン55は螺旋状のストリップ(帯)6を備える。膨脹の際、バルーンはステント2に必要な螺旋形状を採らせ、図8の実験的なバルーンに示す形状に拡張させる。ステントは、導管、例えば、血管が螺旋状の流れ内腔を持つように、導管を支持する形状を保持するために塑性変形するように設計されている。
【0086】
好ましい実施形態では、より厚いワイヤ自体が円形断面の内腔にリブか流れガイドを提供するようなより厚いワイヤの使用にステントが依存しないことに注意されたい。むしろ、内腔の形は螺旋状部分の延伸への抵抗で変更される。
【0087】
図11に示すチューブ部分1は円形断面、外径D、内径D、壁厚Tを持つ。チューブは一定の振幅A(中心から端までの距離として測定される)、一定のピッチP、一定の螺旋角度θ、及び曲げ幅Wの螺旋形に巻かれる。チューブ部分1は、縦方向に延伸し螺旋の曲げ幅Wと等しい幅を持つ想像上の包囲体20に包含される。包囲体20は中心縦軸30(これはまた、螺旋回転軸と呼ばれる)を持っていると見なすことができる。図示のチューブ部分1は直線軸30を有するが、設計代案として、重心軸を湾曲させることが可能であることが理解される。チューブ部分は、中心縦軸30回りに螺旋経路を通る中心線40を有する。
【0088】
振幅Aはチューブ内径D未満であることがわかる。振幅をこのサイズより小さく保つことによって、チューブ部分が専有するスペースを比較的小さく保つことができると共に、同時に、チューブ部分の螺旋形はチューブ部分において流体の旋回流を促進する。
【実施例1】
【0089】
円形断面を有するポリ塩化ビニールチューブを使用して実験が行われた。図12に示すパラメータに言及して説明すると、管は、12mmの外径D、8mmの内径D、及び2mmの壁厚Tを有する。管は45mmのピッチP及び8°の螺旋角度θを有し、螺旋状に巻かれている。振幅Aは、2個の直定規の間に管を置き、直定規の間の離間距離を測定することによって確立された。振幅は曲げ幅Wから外径Dを引き算することによって決定される。即ち、2A=W−Dである。故に、A=(W−D)/2
この実施例では、曲げ幅Wは14mmであったので、
A=(W−D)/2=(14−12)/2=1mm
以前に説明したように、「相対振幅」Aは、A=A/Dと定義される。
【0090】
故に、この実施例の場合、A=A/D=1/8=0.125である。
【0091】
水を管に通した。流れ特性を観測するために、管壁を半径方向に貫通する2本の注射針80と82を用いて、目で見ることができる染料を流れに注入した。2つの注入位置は共に中心軸30に近く、すなわち、流れ「コア」のところであった。一方の注射針80は赤インク、他方の注射針82は青インクを注入した。
【0092】
図11は、レイノズル数Rがそれぞれ500、250及び100の場合の3つの実験結果を示している。すべての場合でインク線条84と86がからみ合い、コアにおいて旋回流、すなわち、ほぼ回転する流れが生じていることがわかる。
【実施例2】
【0093】
インク線条84,86を管の壁に近いところで放つように注射針80と82を配置したことを除き、実施例2に関するパラメータは実施例1と同じであった。図13は、レイノズル数REがそれぞれ500と250の場合の、壁の近くでインクを放った2つの実験結果を示している。どちらの場合も、インク線条が螺旋管の形状に流れているのが見られ、壁の近くの旋回を示している。その上、インク線条と水との混合が促進される。
【0094】
本発明は、第3及び第4の実施態様において、相対振幅Aの値が0.5以下、すなわち、小さい相対振幅に関するものであることが理解される。真直なチューブ部分において、振幅Aと相対振幅Aの両方がゼロであり、螺旋が存在しない。故に、相対振幅Aの値がゼロに近づくと、チューブ部分の渦巻を引き起こす能力は減少する。どんな与えられた状況のための相対振幅Aの最も低い実行可能な値は流速と、流体の粘性と濃度(すなわち、レイノズル数)と、ピッチ(螺旋角度)と、チューブ部分の特定の使用に依存する。少なくとも0.05、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40又は0.45の相対振幅が好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本発明に従うステントの第1実施形態の斜視図である。
【図2】図1のステントの縦断面図である。
【図3】図2のステントのIII- III線横断面図である。
【図4】ステントの第2実施形態の縦断面図である。
【図5】図4の第2実施形態の線V-V横断面図である。
【図6】ステントの第3実施形態の断片的な縦断面図である。
【図7】ステントの第4実施形態の断片的な縦断面図である。
【図8】実験的なバルーンの図である。
【図9】別の実験的なバルーンの図である。
【図10】バルーンで膨脹させることが可能な膨脹前のステントの一部の側面図である。
【図11】本発明のある態様に従った流れ内腔を持つチューブ部分の立面図である。
【図12】実験に使用するチューブ部分の立面図である。
【図13】別の実験に使用したチューブ部分の立面図である。
【図14】ステントの斜視図である。
【図15】別のステントの斜視図である。
【図16】動脈移植部分を内部で支持する図15のステントの斜視図である。
【図17】内部動脈ステントの斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潰れた状態であるときに人体又は動物の体の流体導管に挿入され、拡張状態へ拡張されるステントであって前記導管に係合する外壁を有し、該外壁は前記拡張状態において縦方向及び周囲方向に延伸する螺旋状部分であって、ステントが前記潰れた状態から前記拡張状態まで拡張するときに延伸に抵抗する螺旋状部分を有するステント。
【請求項2】
請求項1に記載のステントであって、前記拡張状態のステントの中心線がほぼ螺旋状の経路をとるステント。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のステントであって、前記螺旋状部分は、該螺旋状部分に隣接するステントの部分のステント形成材料の量よりも多いステント形成材料の量を含むステント。
【請求項4】
請求項1、2又は3に記載のステントであって、前記螺旋状部分は、ステントの拡張の間に湾曲が真っ直ぐになることに抵抗する湾曲部分を有する構造部材を含むステント。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のステントであって、自己拡張型であるステント。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のステントであって、バルーンによって拡張されるステント。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項に記載のステントであって、前記拡張状態により、前記ステントが縦方向に延伸するときに前記流体導管を少なくとも1つのターンを持つ非平面カーブにするステント。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載のステントであって、実質的な捩りを生じることなく前記潰れた状態から前記拡張状態に拡張するステント。
【請求項9】
潰れた状態であるときに人体又は動物の体の流体導管に挿入され、バルーンによって拡張状態へ拡張されるステントであって拡張可能な壁を持つバルーンを含み、前記壁は前記拡張状態において縦方向及び周囲方向に延伸する螺旋状部分であって、前記バルーンが潰れた状態から拡張状態まで拡張するときに延伸に抵抗する螺旋状部分を有するステント。
【請求項10】
請求項9に記載のステントであって、バルーンによって拡張可能な前記壁の前記螺旋状部分は隣接する壁部分の壁厚よりも大きい壁厚を持つステント。
【請求項11】
請求項9又は10に記載のステントであって、前記拡張状態において、縦方向に延伸するときに、前記流体導管を少なくとも1つのターンを持つ非平面カーブにするステント。
【請求項12】
潰れた状態であるときに人体又は動物の体の流体導管へ挿入され、拡張状態へ拡張するステントであって、前記拡張状態において、ほぼ螺旋状の経路をとる中心線を持つ流れ内腔を前記流体導管に持たせ、前記螺旋状中心線は65°以下の螺旋角度と、前記流れ内腔の内径の半分以下である振幅を有するステント。
【請求項13】
請求項12に記載のステントであって、前記螺旋状中心線の前記振幅を前記チューブの内径で除した値は少なくとも0.05であるステント。
【請求項14】
請求項12又は13に記載のステントであって、前記拡張状態において、前記導管の前記流れ内腔に突出するリブを実質的に有していないステント。
【請求項15】
請求項12、13又は14に記載のステントであって、前記螺旋角度は15°以下であるステント。
【請求項16】
請求項12乃至15のいずれか1項に記載のステントであって、前記ステント付き導管の前記流れ内腔は実質的に円形断面であるステント。
【請求項17】
請求項12乃至16のいずれか1項に記載のステントであって、前記ステント付き導管の前記螺旋状中心線は前記ステントの全長の一部に渡ってのみ延伸するステント。
【請求項18】
請求項12乃至16のいずれか1項に記載のステントであって、前記ステント付き導管の前記螺旋状の中心線は前記ステントのほぼ全長に渡って延伸するステント。
【請求項19】
請求項12乃至18のいずれか1項に記載のステントであって、ステントの前記中心線は湾曲軸回りのほぼ螺旋状の経路を通るステント。
【請求項20】
請求項1乃至19のいずれか1項に記載のステントであって、薬剤コーティングを含むステント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−142660(P2010−142660A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−21334(P2010−21334)
【出願日】平成22年2月2日(2010.2.2)
【分割の表示】特願2006−505978(P2006−505978)の分割
【原出願日】平成16年3月18日(2004.3.18)
【出願人】(505354718)ヴェリヤン・メディカル・リミテッド (8)
【Fターム(参考)】