説明

螺旋状鋼線、ゴム物品補強用スチールコード、タイヤ、及び、螺旋状鋼線の製造方法

【課題】耐腐食疲労性能の良い螺旋状鋼線を製造できる螺旋状鋼線の製造方法等を提供する。
【解決手段】ブラスめっき鋼線を伸線加工した後に、伸線加工後のブラスめっき鋼線を延長方向に螺旋を描くような螺旋状となるように螺旋型付け加工して螺旋状鋼線を製造する螺旋状鋼線10の製造方法において、伸線加工後で螺旋型付け加工前のブラスめっき鋼線10aの表層部の残留応力を圧縮応力状態とする第1処理を施し、第1処理後のブラスめっき鋼線10bの表層部の残留応力を圧縮応力状態に維持しながら表層部の残留応力量と表層部に隣接する直近内側部の残留応力量との差を小さくする第2処理を施し、第2処理後のブラスめっき鋼線10cを螺旋型付け加工して螺旋状鋼線10を製造した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、延長方向に螺旋を描くような螺旋状となるように型付けされて形成された耐腐食疲労性能の良い螺旋状鋼線、及び、この螺旋状鋼線の製造方法などに関する。
【背景技術】
【0002】
素線強度を高める為には伸線加工量をアップする手段が一般的であり、その結果として素線の表面部には引張り残留応力が発生して素線の耐腐食疲労性能が低下することは広く知られている。
ブラスめっき鋼線の螺旋状型付け時にはブラスめっき鋼線に塑性変形を与えるために、ブラスめっき鋼線の螺旋内側には最大引張り残留応力が発生してしまうこともごく一般的に知られている。
また、ブラスめっき鋼線が腐食環境下に曝された場合には、螺旋内側の最大引張り残留応力部分より腐食疲労が進展し、耐腐食疲労性能の低下を招いてしまうことも周知の事実である。
耐腐食疲労性能を改善する技術としてスキンパス伸線及びショットピーニング処理を行うことが提案されている(例えば、特許文献1等参照)。
また、伸線後の引張り残留応力を低減する方法等が提案されている(例えば、特許文献2等参照)が、螺旋型付けされたブラスめっき鋼線の螺旋内側には引張り残留応力が発生してしまい耐腐食疲労性能について効果が得られない。
更に伸線されたブラスめっき鋼線を複数本撚り合わせたスチールコードを千鳥状に配置した矯正ロール装置に通すことでスチールコードの残留応力及び真直性を改善する方法が提案されている(例えば、特許文献3等参照)が、この方法ではブラスめっき鋼線に傷が入り易く均一に圧縮差残留応力を付与できないという問題がある。
更に螺旋型付けされたブラスめっき鋼線の螺旋内側表層部の最大引張り残留応力を制御する方法として、ブラスめっき鋼線を撚り合わせる工程にて張力負荷装置を設けて、千鳥状に配置した複数個のローラにブラスめっき鋼線を通して曲げ加工を与えることによってブラスめっき鋼線の螺旋内側表層部の残留応力を制御する方法が提案されている(例えば、特許文献4;5等参照)。
しかしながら、ブラスめっき鋼線1本に対する螺旋型付けにおいては、この様な張力負荷装置を用いて千鳥状に配置した複数個のローラにブラスめっき鋼線を通して曲げ加工を与えてブラスめっき鋼線の螺旋内側表層部の残留応力を制御することは不可能であり、耐腐食疲労性能を改善できない。
一方、文献では知られていないが、図3を参照し、従来の螺旋状鋼線の製造装置1A及び製造方法を説明する。製造装置1Aは、湿式の伸線加工装置11、矯正加工装置14、鋼線引抜き駆動装置15、螺旋型付け加工装置17を備える。螺旋状鋼線の製造装置1Aによる製造方法は、伸線加工装置11、矯正加工装置14、鋼線引抜き駆動装置15による伸線加工工程、螺旋型付け加工装置17による螺旋型付け工程とを備える。各工程は、連続工程ではなく、別々に行われる工程である。鋼線引抜き駆動装置15は、ブラスめっき鋼線に当該ブラスめっき鋼線を最終引抜きダイス11zより引き抜くための力を与える駆動キャプスタン12、及び、戻しプーリ14c、補助プーリ群13を備える。
製造装置1Aによる製造方法を説明する。最終伸線加工工程では、高炭素鋼線の表面にブラスめっきを有したブラスめっき鋼線を伸線加工装置11の複数のダイスに通すことによって伸線加工し、伸線加工後のブラスめっき鋼線10aを矯正加工装置14に供給して矯正加工装置14の一方のローラ群25と他方のローラ群26との間で形成された通線路27にブラスめっき鋼線10aを通すことによってブラスめっき鋼線10aに曲げ加工を加えながらブラスめっき鋼線10aを真直に矯正して矯正加工後のブラスめっき鋼線10bを製造する。次に、別工程(次工程)の螺旋型付け加工工程においては、ブラスめっき鋼線10bを螺旋型付け加工装置17により螺旋型付け加工することによって螺旋状鋼線10Aを製造する。この製造方法によれば、矯正加工装置14の通線路27にブラスめっき鋼線10aを通すことによって、矯正加工後のブラスめっき鋼線10bの表層部に圧縮残留応力を発生させることができる。
【特許文献1】特開平7−308707号公報
【特許文献2】特開昭56−9037号公報
【特許文献3】特開昭57−149578号公報
【特許文献4】特開平8−325965号公報
【特許文献5】特開平10−129211号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、図3に示した従来の製造方法では、伸線加工装置11の最終引抜きダイス11zを経由した伸線加工後のブラスめっき鋼線10aが、矢印Bに示すように、鋼線引抜き駆動装置15の駆動キャプスタン12の円形外周面28を一周するように掛け渡された後に矯正加工装置14に供給される構成とすることによって、ブラスめっき鋼線10aが矯正加工装置14の通線路27を通過する際の引き抜き力(張力)を小さくしていた。従って、矯正加工装置14による矯正加工後の別工程の螺旋型付け加工工程での螺旋型付け加工においては、低い張力状態にあるブラスめっき鋼線10bに対して螺旋型付け加工が行われるので、製造された螺旋状鋼線10Aの周方向の圧縮残留応力状態が不均一な状態となってしまい、耐腐食疲労性能の良い螺旋状鋼線を得ることができないという欠点があった。
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたもので、耐腐食疲労性能の良い螺旋状鋼線を製造できる螺旋状鋼線の製造方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の螺旋状鋼線は、炭素含有量が0.70重量%以上の高炭素鋼線の表面にブラスめっきを有し、直径が0.10〜0.60mmφ、抗張力が3000MPa以上であって、延長方向に螺旋を描くような螺旋状となるように型付けされて形成された螺旋状鋼線において、螺旋状鋼線の表層部の残留応力が圧縮応力状態にあり、かつ、エッチング処理後に計測される表層部の圧縮残留応力量とエッチング処理後に計測される表層部に隣接する直近内側部の引張り残留応力量との差を110mmよりも小さくしたことを特徴とする。
本発明のゴム物品補強用スチールコードは、上記螺旋状鋼線の単品により構成されるか、または、上記螺旋状鋼線の複数本が撚り合わされずに束ねられて構成されたことを特徴とする。
本発明のタイヤは、上記ゴム物品補強用スチールコードが、プライまたはベルトのいずれか一方または両方に使用されたことを特徴とする。
本発明の螺旋状鋼線の製造方法は、ブラスめっき鋼線を伸線加工した後に、伸線加工後のブラスめっき鋼線を延長方向に螺旋を描くような螺旋状となるように螺旋型付け加工して螺旋状鋼線を製造する螺旋状鋼線の製造方法において、伸線加工後で螺旋型付け加工前のブラスめっき鋼線の表層部の残留応力を圧縮応力とする第1処理を施し、第1処理後のブラスめっき鋼線の表層部の残留応力を圧縮応力状態に維持しながら表層部の残留応力量と表層部に隣接する直近内側部の残留応力量との差を小さくする第2処理を施し、第2処理後のブラスめっき鋼線を螺旋型付け加工して螺旋状鋼線を製造したことを特徴とする。
第1処理は、最終引抜きダイスによる伸線加工後のブラスめっき鋼線を矯正加工装置によって真直に矯正する処理であることも特徴とする。
第2処理は、第1処理後のブラスめっき鋼線を捻り塑性加工する処理であることも特徴とする。
最終引抜きダイスによる伸線加工後のブラスめっき鋼線を真直に矯正する矯正加工装置に供給されるブラスめっき鋼線に当該ブラスめっき鋼線を最終引抜きダイスより引き抜くための力を与える駆動キャプスタンを用い、最終引抜きダイスによる伸線加工後のブラスめっき鋼線を駆動キャプスタンの外周面に掛け渡すことなく矯正加工装置に供給したことも特徴とする。
最終引抜きダイスによる伸線加工後のブラスめっき鋼線を真直に矯正する矯正加工装置に供給されるブラスめっき鋼線に当該ブラスめっき鋼線を最終引抜きダイスより引き抜くための力を与える駆動キャプスタンを用い、最終引抜きダイスによる伸線加工後のブラスめっき鋼線を駆動キャプスタンの外周面の180°以下の範囲に掛け渡した後に矯正加工装置に供給したことも特徴とする。
炭素含有量0.70重量%以上の高炭素鋼線の表面にブラスめっき層を備えたブラスめっき鋼線を用いて、直径の寸法が0.10〜0.60mmφ、及び、抗張力が3000MPa以上の螺旋状鋼線を製造したことも特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明の螺旋状鋼線によれば、螺旋状鋼線の表層部の残留応力が圧縮応力状態にあり、かつ、エッチング処理後に計測される表層部の圧縮残留応力量とエッチング処理後に計測される表層部に隣接する直近内側部の引張り残留応力量との差を110mmよりも小さくしたので、耐腐食疲労性能の良い螺旋状鋼線が得られる。
本発明のゴム物品補強用スチールコードは、上記螺旋状鋼線の単品により構成されるか、または、上記螺旋状鋼線の複数本が撚り合わされずに束ねられて構成されたので、耐腐食疲労性能の良いゴム物品補強用スチールコードとなる。
本発明のタイヤは、上記ゴム物品補強用スチールコードが、プライまたはベルトのいずれか一方または両方に使用されたので、耐腐食疲労性能の良いタイヤとなる。
本発明の螺旋状鋼線の製造方法は、伸線加工後で螺旋型付け加工前のブラスめっき鋼線の表層部の残留応力を圧縮応力とする第1処理を施し、第1処理後のブラスめっき鋼線の表層部の残留応力を圧縮応力状態に維持しながら表層部の残留応力量と表層部に隣接する直近内側部の残留応力量との差を小さくする第2処理を施すので、耐腐食疲労性能の良い螺旋状鋼線を製造できる。
第1処理として、最終引抜きダイスによる伸線加工後のブラスめっき鋼線を矯正加工装置によって真直に矯正する処理を施すことで、伸線加工後で螺旋型付け加工前のブラスめっき鋼線の表層部の残留応力を圧縮応力とすることができる。
第2処理として、第1処理後のブラスめっき鋼線を捻り塑性加工する処理を施すことで、第1処理後のブラスめっき鋼線の表層部の残留応力を圧縮応力状態に維持しながら表層部の残留応力量と表層部に隣接する直近内側部の残留応力量との差を小さくできる。
最終引抜きダイスによる伸線加工後のブラスめっき鋼線を真直に矯正する矯正加工装置に供給されるブラスめっき鋼線に当該ブラスめっき鋼線を最終引抜きダイスより引き抜くための力を与える駆動キャプスタンを用い、最終引抜きダイスによる伸線加工後のブラスめっき鋼線を駆動キャプスタンの外周面に掛け渡すことなく引抜き力を直接矯正加工装置に供給したので、ブラスめっき鋼線が矯正加工装置の通線路を通過する際の引き抜き力(張力)を大きくできて、耐腐食疲労性能の良い螺旋状鋼線を製造できる。
最終引抜きダイスによる伸線加工後のブラスめっき鋼線を真直に矯正する矯正加工装置に供給されるブラスめっき鋼線に当該ブラスめっき鋼線を最終引抜きダイスより引き抜くための力を与える駆動キャプスタンを用い、最終引抜きダイスによる伸線加工後のブラスめっき鋼線を駆動キャプスタンの外周面の180°以下の範囲に掛け渡した後に矯正加工装置に供給した場合でも、捻り塑性加工を施すため、捻り塑性加工後のブラスめっき鋼線の直近内側部の最大引張り残留応力が小さくなり、腐食疲労性能の良い螺旋状鋼線を製造できる。
炭素含有量0.70重量%以上の高炭素鋼線の表面にブラスめっき層を備えたブラスめっき鋼線を用いて、直径の寸法が0.10〜0.60mmφ、及び、抗張力が3000MPa以上の螺旋状鋼線を製造したので、タイヤのスチールコードなどに適した腐食疲労性能の良い螺旋状鋼線を製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
最良の形態1.
図1を参照し、螺旋状鋼線の製造装置及び製造方法を説明する。螺旋状鋼線10の製造装置1は、湿式の伸線加工装置11、矯正加工装置14、鋼線引抜き駆動装置15、捻り塑性加工装置16、螺旋型付け加工装置17を備える。矯正加工装置14及び螺旋型付け加工装置17は、図3の従来の製造装置1Aの矯正加工装置14及び螺旋型付け加工装置17の構成と同じである。伸線加工装置11は、周知のように、複数のダイスを用いてブラスめっき鋼線を所望の線径に伸線する装置である。
螺旋状鋼線10の製造装置1による製造方法は、伸線加工装置11、矯正加工装置14、鋼線引抜き駆動装置15による伸線加工工程、捻り塑性加工装置16による捻り塑性加工工程、螺旋型付け加工装置17による螺旋型付け工程とを備える。各工程は、連続工程ではなく、別々に行われる工程である。
【0007】
螺旋状鋼線10は次のように製造される。伸線加工工程では、炭素含有量0.70重量%以上の高炭素鋼線の表面にブラスめっき層を備えたブラスめっき鋼線が伸線加工装置11で伸線加工され、伸線加工装置11の最終引抜きダイス11zを経由した伸線加工後のブラスめっき鋼線10aが矯正加工装置14に送られ、矯正加工装置14では、ブラスめっき鋼線10aに曲げ加工を加えながらブラスめっき鋼線10aが真直になるように矯正加工される。
伸線加工工程後の別工程である捻り塑性加工工程においては、捻り塑性加工装置16によって矯正加工後のブラスめっき鋼線10bに捻り塑性加工が施される。
捻り塑性加工工程後の別工程である螺旋型付け工程においては、螺旋型付け加工装置17によって捻り塑性加工後のブラスめっき鋼線10cに螺旋型付け加工が施される。これにより、コイルスプリングを引き伸ばしたような形状に形成された耐腐食疲労性に優れた螺旋状鋼線10が製造される。この螺旋状鋼線10は、線が延長する方向に螺旋を描くような螺旋形状に形成され、直径が0.10〜0.60mmφ、抗張力が3000MPa以上となるように製造される。
【0008】
矯正加工装置14は、前段矯正加工装置14aと後段矯正加工装置14bとにより構成される。前段矯正加工装置14a及び後段矯正加工装置14bは、それぞれ、ローラ設置面21を備えたベース22と、ローラ設置面21に設けられた複数のローラ14rとにより形成される。ローラ14rはローラ設置面21と垂直な回転中心軸を中心として回転可能に設けられる。複数のローラ14rは、一方向に向けて千鳥状(ジグザク)に配置される。前段矯正加工装置14aのローラ設置面21と後段矯正加工装置14bのローラ設置面21とのなす角度が直角となるように前段矯正加工装置14aと後段矯正加工装置14bとが配置されたことによって、一方向に向けて一直線上に配置される第1矯正加工装置14a及び第2矯正加工装置14bの一方のローラ群25と一方向に向けて一直線上に配置される第1矯正加工装置14a及び第2矯正加工装置14bの他方のローラ群26との間にブラスめっき鋼線10aを通過させるための直線状の通線路27が形成される。
【0009】
鋼線引抜き駆動装置15は、ブラスめっき鋼線に当該ブラスめっき鋼線を最終引抜きダイス11zより引き抜くための力を与える駆動キャプスタン12、及び、戻しプーリ14c、補助プーリ群13を備える。
最良の形態1では、図1の矢印Aに示すように、最終引抜きダイス11zを経由したブラスめっき鋼線10aが駆動キャプスタン12の円形外周面28に掛け渡されずに矯正加工装置14に供給された構成とした。そして、矯正加工装置14を経由したブラスめっき鋼線10bが補助プーリ群13と駆動キャプスタン12とに掛け渡され、駆動キャプスタン12の駆動力によってブラスめっき鋼線10aが矯正加工装置14の通線路27を通過して引き抜かれる際に、一方のローラ群25と他方のローラ群26とによってブラスめっき鋼線10aに曲げ加工が加えられながらブラスめっき鋼線10aが駆動キャプスタン12の駆動力によって引き抜かれることによってブラスめっき鋼線10aが真直に矯正される。
【0010】
図3に示した従来の製造方法では、矯正加工装置14の通線路27を通過する際のブラスめっき鋼線10aの引き抜き力(張力)を小さくするために、伸線工程後のブラスめっき鋼線10aが、矢印Bに示すように、駆動キャプスタン12の円形外周面28を一周するように掛け渡された後に矯正加工装置14に供給される構成としていた。これにより、ブラスめっき鋼線10aが矯正加工装置14の通線路27を通過する際の引き抜き力(張力)が小さくなることで、矯正加工装置14による曲げ加工後のブラスめっき鋼線10bの表層部に発生する圧縮残留応力量が小さくなり、ブラスめっき鋼線10bの表層部は充分な圧縮残留応力状態とはならない。このため、螺旋型付け加工装置17による螺旋型付け工程においてブラスめっき鋼線10bに塑性変形が与えられた場合には、螺旋型付けされた螺旋状鋼線10Aの螺旋内側に最大引張り残留応力が発生してしまい、最大引張り残留応力が発生した部分より腐食疲労が進行して、螺旋状鋼線10Aの耐腐食疲労性能が低下してしまう。
【0011】
これに対して、最良の形態1では、ブラスめっき鋼線10aを駆動キャプスタン12の円形外周面28に掛け渡さずに矯正加工装置14に供給したことによって、ブラスめっき鋼線10aが矯正加工装置14の通線路27を通過する際の引き抜き力(張力)が図3に示す従来の製造方法よりも大きくなり、これにより矯正加工装置14においてブラスめっき鋼線10aに強い曲げ加工が加えられることになり、ブラスめっき鋼線10bの表層部には周方向に均一で大きな圧縮残留応力が発生する。
即ち、伸線加工後で螺旋型付け加工前のブラスめっき鋼線10aの表層部の残留応力を圧縮応力とする第1処理として、ブラスめっき鋼線10aを駆動キャプスタン12の円形外周面28に掛け渡さずに矯正加工装置14に供給してブラスめっき鋼線10aが矯正加工装置14の通線路27を通過する際の引き抜き力(張力)を大きくする処理を施した。
【0012】
矯正加工後のブラスめっき鋼線10bは、戻しプーリ14cを経由して補助プーリ群13の方向に送られて、補助プーリ群13と駆動キャプスタン12とに掛け渡されて搬送された後に巻枠81に巻き取られる。
捻り塑性加工工程では、巻枠81より巻き出されたブラスめっき鋼線10bに対して捻り塑性加工装置16により一方向に捻りを加えた後に捻り戻す捻り塑性加工が施された後のブラスめっき鋼線10cが巻枠82に巻き取られる。捻り塑性加工は、ブラスめっき鋼線10cの表層部に隣接した内側環状層部(以下、直近内側部という)に発生する引張り残留応力を低下させることを目的として行われる。たとえば、捻り塑性加工装置16としてのバンチャー撚線機を使用して、ブラスめっき鋼線10bに対して一方向に所定回数a回だけ捻りを加えた捻り塑性加工を施すことによって、ブラスめっき鋼線10cの直近内側部102の引張り残留応力を小さくする。図2(c)に示すように、捻り塑性加工後のブラスめっき鋼線10cに付与された捻り塑性加工の影響は、ブラスめっき鋼線10cの表層部において最大となり、ブラスめっき鋼線10cの中心cに近くなるほど小さくなるため、耐腐食疲労性能に悪影響を及ぼす直近内側部102に発生する引張り残留応力を小さくできるとともに、腐食疲労にて最終破断するブラスめっき鋼線10cの中心部の圧縮残留応力量の変動を抑えることができるので、疲労により亀裂の進展を抑制できる。つまり、捻り塑性加工後においては、ブラスめっき鋼線10cの表層部101の圧縮残留応力は周方向に均一で大きな圧縮応力状態が維持されながら、直近内側部102の引張り残留応力は小さくなるので、腐食疲労による表層部101の亀裂進展が遅くなり、ブラスめっき鋼線10cの耐腐食疲労性能が向上する。
即ち、第1処理後のブラスめっき鋼線10bの表層部101の残留応力量を圧縮応力状態に維持しながら表層部101の残留応力量と表層部101に隣接する直近内側部102の残留応力量との差を小さくする第2処理として、螺旋型付け加工前に、捻り塑性加工装置16による捻り塑性加工を施した。
なお、ブラスめっき鋼線にトーションが残っていると後の作業に問題があるため、捻り塑性加工によって一方向に捻られたブラスめっき鋼線10bを解捻方向に所定回数a回よりも多い回数である(a+n)回だけ捻り戻すことによって、捻り塑性加工後のブラスめっき鋼線10cをゼロトーションの状態(ブラスめっき鋼線10cが捻れていない状態)にする。
【0013】
図3に示した従来の製造方法のように、捻り塑性加工装置16による捻り塑性加工を施さずに、矯正加工後のブラスめっき鋼線10bを螺旋型付け加工装置17に供給して螺旋型付け加工を行った場合には、低い張力状態にあるブラスめっき鋼線10bに対して螺旋型付け加工が行われるので、螺旋状鋼線10Aの周方向の圧縮残留応力状態が不均一な状態となり、螺旋状鋼線10Aの耐腐食疲労性能が低下してしまうので、耐腐食疲労性能の良い螺旋状鋼線を得ることができない。
【0014】
螺旋型付け加工装置17は、筒体31と筒体31の筒の外周面に設けられた螺旋型付け部32と備える。螺旋型付け部32は、筒体31の筒の外周面より突出するよう設けられた複数本の鋼線ガイドピン33により形成される鋼線ガイドピン群34を複数組備える。鋼線ガイドピン群34は、筒体31の筒の外周面において筒の軸に沿った方向に複数の鋼線ガイドピン33が所定間隔隔てて並ぶように設けられて形成される。
巻枠82より巻き出された捻り塑性加工後のブラスめっき鋼線10cが1組の鋼線ガイドピン群34を構成する複数の鋼線ガイドピン33の間を千鳥状に通過するように通された後に巻枠83に巻き付けられる。
螺旋型付け加工工程では、螺旋型付け加工装置17が筒体31の中心を回転中心として回転Rするとともに捻り塑性加工後のブラスめっき鋼線10cが鋼線ガイドピン群34を通過することによって、螺旋型付けされた螺旋状鋼線10が形成される。このように螺旋型付け加工された螺旋状鋼線10が巻枠83に巻き取られることによって螺旋状鋼線10が製造される。
【0015】
図2は最良の形態1の製造方法により加工されるブラスめっき鋼線の残留応力分布状態を示す図であり、図2(a)は伸線加工後でかつ矯正加工前のブラスめっき鋼線10aの残留応力分布状態を示し、図2(b)は矯正加工後でかつ捻り塑性加工前のブラスめっき鋼線10bの残留応力分布状態を示し、図2(c)は捻り塑性加工後でかつ螺旋型付け加工前のブラスめっき鋼線10cの残留応力分布状態を示す。図2(a)からわかるように、伸線加工直後のブラスめっき鋼線10aの表層部101の状態は引張り残留応力状態であり、耐腐食疲労性能は悪い。図2(b)からわかるように、第1処理後のブラスめっき鋼線10aによれば、表層部101に充分な最大圧縮残留応力が発生し、耐腐食疲労性能が向上していることがわかる。そして、図2(c)からわかるように、第2処理後のブラスめっき鋼線10cでは、直近内側部102の引張り残留応力が低下し、表層部101の最大圧縮残留応力量と直近内側部102の最大引張り残留応力量との差rsが小さくなっている。つまり、第2処理を施すことで、ブラスめっき鋼線10cの耐腐食疲労性能をより向上させることができることが判明した。
【0016】
最良の形態1による螺旋状鋼線の製造方法によれば、ブラスめっき鋼線を伸線加工した後に真直に矯正し、矯正加工後のブラスめっき鋼線を延長方向に螺旋を描くような螺旋状となるように螺旋型付け加工して螺旋状鋼線10を製造する螺旋状鋼線の製造方法において、伸線加工後のブラスめっき鋼線10aを真直に矯正する矯正加工装置14に供給されるブラスめっき鋼線10aに当該ブラスめっき鋼線10aを矯正加工装置14より引き抜くための力(張力)を与える駆動キャプスタン12を用い、伸線加工後のブラスめっき鋼線10aを駆動キャプスタン12の円形外周面28に掛け渡すことなく矯正加工装置14に供給し、さらに、矯正加工後のブラスめっき鋼線10bを捻り塑性加工装置16で捻り塑性加工した後に螺旋型付け加工装置17に供給して螺旋型付け加工した。
このように、ブラスめっき鋼線10aが駆動キャプスタン12の円外周面28に掛け渡されずに矯正加工装置14に供給された構成としたため、ブラスめっき鋼線10aが矯正加工装置14の通線路27を通過する際の引き抜き力が大きくなって、矯正加工装置14により真直に矯正されたブラスめっき鋼線10bの表層部101には、周方向に均一で大きな圧縮残留応力が付与される。そして、螺旋型付け加工の前に、ブラスめっき鋼線10bに捻り塑性加工装置16による捻り塑性加工を施したので、捻り塑性加工後のブラスめっき鋼線10cの直近内側部102の最大引張り残留応力が小さくなり、結果として、後述の実施例でも示すように、螺旋状鋼線10の表層部の圧縮残留応力量と直近内側部の引張り残留応力量との差rsが小さくなったことによって、耐腐食疲労性能に優れた螺旋状鋼線10を製造できるようになった。
【0017】
また、最良の形態1で製造された螺旋状鋼線10の1つ1つの単品をゴム物品補強用スチールコードとして用いることによって腐食疲労性能に優れたゴム物品補強用スチールコードが得られる。
また、最良の形態1の製造方法により実質的に同一ピッチで螺旋型付けされて製造された螺旋状鋼線10を複数本撚り合わせずに束ねて形成されたゴム物品補強用スチールコードによれば、腐食疲労性能に優れたゴム物品補強用スチールコードとなる。
更に、上記のようなゴム物品補強用スチールコードを有するプライやベルトを作製し、これをタイヤの補強部材とすれば、腐食疲労性能に優れたタイヤを提供することができる。
【0018】
最良の形態2.
ブラスめっき鋼線を伸線加工した後に真直に矯正し、矯正加工後のブラスめっき鋼線を延長方向に螺旋を描くような螺旋状となるように螺旋型付け加工して螺旋状鋼線10を製造する螺旋状鋼線の製造方法において、伸線加工後のブラスめっき鋼線10aを真直に矯正する矯正加工装置14に供給されるブラスめっき鋼線10aに当該ブラスめっき鋼線10aを矯正加工装置14より引き抜くための力(張力)を与える駆動キャプスタン12を用い、伸線加工後のブラスめっき鋼線10aを駆動キャプスタン12の円形外周面28に掛け渡した後に矯正加工装置14に供給し、さらに、矯正加工後のブラスめっき鋼線10bを捻り塑性加工装置16で捻り塑性加工した後に螺旋型付け加工装置17に供給して螺旋型付け加工した。
このように、図3の従来の製造方法の螺旋型付け加工の前に捻り塑性加工を行う製造方法でも、後述する実施例で示すように、図3の従来の製造方法より耐腐食疲労性能の良い螺旋状鋼線を製造できることがわかった。
【0019】
最良の形態3.
伸線加工後で螺旋型付け加工前のブラスめっき鋼線の表層部の残留応力を圧縮応力とする第1処理として、減面率の大きい最終引抜きダイスを用いて減面率を大きくすることによって、ブラスめっき鋼線10aが矯正加工装置14の通線路27を通過する際の引き抜き力(張力)を大きくする処理を行っても良い。
【0020】
実施例
炭素含有量0.8重量%、及び、炭素含有量0.9重量%の高炭素鋼線材の表面にブラスめっきが施された線径0.21mmφ、抗張力3600MPa級の螺旋状鋼線を、異なる製造方法で製造し、各製造方法により製造された螺旋状鋼線の性能を評価した結果を図4;5に示す。実施例では、バンチャー撚線機を用いて、初期捻り2000rpm及び捻り戻し開放(ゼロトーション狙い)34000rpmで捻り塑性加工をおこなった。
実施例1乃至6は、図1に示した最良の形態の製造装置1を用いて製造した螺旋状鋼線10の性能を示す。比較例1乃至6は、図3に示した従来の製造装置1Aを用いて製造した螺旋状鋼線10Aの性能を示す。
図4;5の「矯正加工装置への供給方法」において、「直接」とは、伸線工程の最終引抜きダイス11zを経由したブラスめっき鋼線10aが駆動キャプスタン12の円形外周面28に掛け渡されずに矯正加工装置14に供給される構成を示す。「キャプスタン;360°」や「キャプスタン;180°」の角度は、伸線工程の最終引抜きダイス11zを経由したブラスめっき鋼線10aが駆動キャプスタン12の円形外周面28に掛け渡される円弧の範囲、即ち、図6に示すように、ブラスめっき鋼線10aが掛け渡される駆動キャプスタン12の円形外周面28の円弧の両端41;42と駆動キャプスタン12の回転中心である円の中心43とを繋ぐ2本の直線45;46とがなす角度α(以下、鋼線掛け渡たし範囲角度αという)である。つまり、「キャプスタン;360°」は、伸線工程の最終引抜きダイス11zを経由したブラスめっき鋼線10aが駆動キャプスタン12の円形外周面28を一周するように掛け渡された後に矯正加工装置14に送られる構成を示し、「キャプスタン;180°」は、伸線工程の最終引抜きダイス11zを経由したブラスめっき鋼線10aが駆動キャプスタン12の円形外周面28を半周するように掛け渡された後に矯正加工装置14に送られる構成を示す。
【0021】
各例の螺旋状鋼線の表層部101の残留応力量Rs及び直近内側部102の残留応力量Rsは、以下のようにして測定した。
各例で製造した螺旋状鋼線を、120mmの長さに切断した試験片を準備し、過硫酸アンモニウム水溶液により試験片のブラスめっきを除去し、図7(a)に示すように、試験片50の端部52を20mm程度直角に折り曲げる。そして、長さが100mmの部分の半周部分を、エッチングがされないようにラッカーで被覆し、端部52の20mmの部分は全周をラッカーで被覆した。その後、試験片50を50℃の50容量%硝酸水溶液中に浸漬してエッチング処理を行い、図7(b)に示すように、端部52の20mmの折曲部51を基準として、100mm部分の鋼線の曲りが最大となった時の変化量S(mm)を螺旋状鋼線の表層部101の残留応力量Rs(mm)とした。また、試験片50のエッチング時間を長くし、同様の方法で、100mm部分の鋼線の曲りが最大となった時の変化量S(mm)を螺旋状鋼線の直近内側部102の残留応力量Rs(mm)とした。そして、エッチング処理後に計測される螺旋状鋼線の表層部101の圧縮残留応力量とエッチング処理後に計測される直近内側部102の引張り残留応力量との差をrs(mm)とした。尚、残留応力量(mm)は、エッチング処理された側に曲った場合を圧縮((−)で示す)、ラッカー被覆側に曲った場合を引張り((+)で示す)とした。
また、螺旋状鋼線の腐食疲労性については、以下のようにして評価した。
螺旋状鋼線を100mmの長さに切断した試験片を準備し、この試験片を少量の硝酸イオン及び硫酸イオンを含む水溶液中に浸漬し、毎分1000回転の速度で294N/mmの繰り返し応力を与え、試験片が破断するまでの回転数を求めた。表では、比較例1での回転数を100として指数表示した。数値が大きいほど耐腐食疲労性能に優れていることを表している。
本発明では、エッチング処理後に計測される螺旋状鋼線の表層部101の圧縮残留応力量とエッチング処理後に計測される直近内側部102の引張り残留応力量との差rs(mm)を、比較例の中でも一番小さい比較例4の115mmよりも小さい110mmよりも小さくしたことで、従来よりも耐腐食疲労性能の良い螺旋状鋼線を得ることができる。
【0022】
図4;5から解かるように、矯正加工装置14への供給方法が同じであれば、螺旋型付け工程の前に捻り塑性加工を行わない製造方法で製造された比較例1乃至6の螺旋状鋼線に比べて、螺旋型付け工程の前に捻り塑性加工を行なう製造方法で製造した実施例1乃至6の螺旋状鋼線の方が、耐腐食疲労性能の優れた螺旋状鋼線を製造出来ることが確認された。
また、実施例3や実施例6のように、最良の形態で示した製造方法(即ち、ブラスめっき鋼線10aを駆動キャプスタン12の円形外周面28に掛け渡たさずに矯正加工装置14に供給するとともに、螺旋型付け加工の前に捻り塑性加工を行う製造方法)により製造された螺旋状鋼線の耐腐食疲労性能が特に優れていることが確認できた。
さらに、実施例1と実施例2とを比較したり、実施例4と実施例5とを比較してわかるように、鋼線掛け渡たし範囲角度αが小さいほど、耐腐食疲労性能の良い螺旋状鋼線を製造できることがわかった。
また、図3の従来の製造方法の螺旋型付け加工の前に捻り塑性加工を行う製造方法でも図3の従来の製造方法より耐腐食疲労性能の良い螺旋状鋼線を製造できることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明によれば、耐腐食疲労性能の良い螺旋状鋼線、ゴム物品補強用スチールコード、タイヤを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】螺旋状鋼線の製造装置を示す図(最良の形態1)。
【図2】製造装置により加工されたブラスめっき鋼線の残留応力状態を示す図(最良の形態1)。
【図3】螺旋状鋼線の製造装置を示す図(従来構成)。
【図4】実施例の結果を示す図。
【図5】実施例の結果を示す図。
【図6】鋼線掛け渡たし範囲角度αの説明図。
【図7】試験片及び残留応力の測定法を示した図。
【符号の説明】
【0025】
1 製造装置、10 螺旋状鋼線、11z 最終引抜きダイス、
12 駆動キャプスタン、14 矯正加工装置、16 捻り塑性加工装置、
17 螺旋型付け加工装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素含有量が0.70重量%以上の高炭素鋼線の表面にブラスめっきを有し、直径が0.10〜0.60mmφ、抗張力が3000MPa以上であって、延長方向に螺旋を描くような螺旋状となるように型付けされて形成された螺旋状鋼線において、螺旋状鋼線の表層部の残留応力が圧縮応力状態にあり、かつ、エッチング処理後に計測される表層部の圧縮残留応力量とエッチング処理後に計測される表層部に隣接する直近内側部の引張り残留応力量との差を110mmよりも小さくしたことを特徴とする螺旋状鋼線。
【請求項2】
請求項1に記載の螺旋状鋼線の単品により構成されるか、または、請求項1に記載の螺旋状鋼線の複数本が撚り合わされずに束ねられて構成されたことを特徴とするゴム物品補強用スチールコード。
【請求項3】
請求項2に記載のゴム物品補強用スチールコードが、プライまたはベルトのいずれか一方または両方に使用されたことを特徴とするタイヤ。
【請求項4】
ブラスめっき鋼線を伸線加工した後に、伸線加工後のブラスめっき鋼線を延長方向に螺旋を描くような螺旋状となるように螺旋型付け加工して螺旋状鋼線を製造する螺旋状鋼線の製造方法において、伸線加工後で螺旋型付け加工前のブラスめっき鋼線の表層部の残留応力を圧縮応力状態とする第1処理を施し、第1処理後のブラスめっき鋼線の表層部の残留応力を圧縮応力状態に維持しながら表層部の残留応力量と表層部に隣接する直近内側部の残留応力量との差を小さくする第2処理を施し、第2処理後のブラスめっき鋼線を螺旋型付け加工して螺旋状鋼線を製造したことを特徴とする螺旋状鋼線の製造方法。
【請求項5】
第1処理は、最終引抜きダイスによる伸線加工後のブラスめっき鋼線を矯正加工装置によって真直に矯正する処理であることを特徴とする請求項4に記載の螺旋状鋼線の製造方法。
【請求項6】
第2処理は、第1処理後のブラスめっき鋼線を捻り塑性加工する処理であることを特徴とする請求項4に記載の螺旋状鋼線の製造方法。
【請求項7】
最終引抜きダイスによる伸線加工後のブラスめっき鋼線を真直に矯正する矯正加工装置に供給されるブラスめっき鋼線に当該ブラスめっき鋼線を最終引抜きダイスより引き抜くための力を与える駆動キャプスタンを用い、最終引抜きダイスによる伸線加工後のブラスめっき鋼線を駆動キャプスタンの外周面に掛け渡すことなく矯正加工装置に供給したことを特徴とする請求項5に記載の螺旋状鋼線の製造方法。
【請求項8】
最終引抜きダイスによる伸線加工後のブラスめっき鋼線を真直に矯正する矯正加工装置に供給されるブラスめっき鋼線に当該ブラスめっき鋼線を最終引抜きダイスより引き抜くための力を与える駆動キャプスタンを用い、最終引抜きダイスによる伸線加工後のブラスめっき鋼線を駆動キャプスタンの外周面の180°以下の範囲に掛け渡した後に矯正加工装置に供給したことを特徴とする請求項5に記載の螺旋状鋼線の製造方法。
【請求項9】
炭素含有量0.70重量%以上の高炭素鋼線の表面にブラスめっき層を備えたブラスめっき鋼線を用いて、直径の寸法が0.10〜0.60mmφ、及び、抗張力が3000MPa以上の螺旋状鋼線を製造したことを特徴とする請求項4乃至請求項8のいずれかに記載の螺旋状鋼線の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−191422(P2009−191422A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−35890(P2008−35890)
【出願日】平成20年2月18日(2008.2.18)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】