説明

螺旋管

管の部分の中心線がほぼ螺旋の経路をたどる管であって、前記螺旋の振幅が前記管の内径の半分以下である前記部分を含む管。流体がそのような管の中を流れるとき、流体は旋回する。このことは、流体が面内で撹拌されるという改良点、滞留時間が極めて一様になる等の多くの利点を提供する。発明はまた、そのような管を製造する様々な方法に及ぶ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流体を搬送する管に関する。
【背景技術】
【0002】
流体が「旋回流」として流れることができることは既に知られており、この流れは、タービン用の圧力管及び吸出し管についてWO97/28637で議論されている。旋回流は、圧力管又は吸出し管をその中心線が三次元的に湾曲するように形成することによって達成される。
【0003】
旋回流には従来の流れより多くの利点がある。乱流による圧力損失(及びエネルギ損失)を減少させることができる。さらに、管を横切る流れの速度プロファイルは、従来の流れよりもより均一である (あるいは、鈍い)。その結果、旋回流として流れる流体はプランジャーとして機能する傾向があり、管壁に蓄積するであろう沈殿物又は残骸を取り除く。このことは水力発電プラントにおいて特に重要である。
【0004】
同様の三次元湾曲を持つ管はまた、WO02/093063で議論され、そこでは、それらの管は生産加工工場において使用される。そのようなプラントでは、管はしばしば、プラントの様々な部分を接続し何らかの距離延伸する必要があり、また多くのベント管を持つ。三次元湾曲を持つようにベント管を形成することは旋回流を促進し、エネルギ損失を減少させかつ停滞と沈殿のリスク減少させることに通じる。
【0005】
しかしながら、これらの先行技術文献は、旋回流を引き起こすために、公知の二次元カーブ(エルボベント等)に代えた三次元カーブを使用するだけであり、通常、一般に真直な管が使用される状況において旋回流を引き起こすことには関係がない。
【0006】
直管の中に旋回流を生じさせうる1つの方法は、管に沿って湾曲する溝又はリブを(砲身の線状のように)管の内部表面に沿って形成することであろう。しかしながら、これは管の潤辺を増加させる不都合を持ち、そして、リブの場合、管の断面積を減少させる。溝とリブは共に流体抵抗を増加させ、その結果、圧力損失に通じる。
【0007】
さらに、レイノズル数が極めて小さくない場合、溝又はリブが管壁近くの流れにのみ影響を与え、かつ、流れが管全幅に渡って流れを旋回させるためには長い管を提供することが必要であるかもしれないことを実験は示した。管の中心における渦巻は管壁での流れからのモーメントの拡散移動によってのみ達成され、溝又はリブは、管壁近くの流体と管中心部の流体間の混合を促進しない。
【発明の開示】
【0008】
発明の第1態様において、部分の中心線が実質的に螺旋経路を通る部分を含む管であって、該螺旋の振幅が管の内径の半分以下である管が提供される。
【0009】
このように螺旋状部分として形成された1つの管に流体が入ると、ほぼすぐに旋回流は生じる。管の直径の2,3倍の長さに渡って流体が管の中に入ると、旋回流が生じることが判明した。さらに、旋回流は、管壁における流体と管の中心における流体間での質量移送、モーメント移送、熱移送と共に、流体の2次運動及び混合にかかわる。
【0010】
この明細書(特許請求の範囲を含む)では、螺旋の振幅は横幅の中間位置からの変位範囲のことをいう。したがって、螺旋状の中心線を持つ管の場合、振幅は螺旋状の中心線を持つ全幅の半分である。管の断面積は長さに沿って実質的に一定である。
【0011】
発明の第1態様に従った管において、管の内腔に沿って「見通し線」が存在する。これは螺旋形とは異なり、螺旋はコア(固体コア、あるいは空気コアを持つ「仮想」コアのいずれか)の回りを有効に巻いている。見通し線における流れは潜在的に真直な経路を流れることができるが、一般に、渦巻成分を有することが発見された、
この明細書(特許請求の範囲を含む)の目的に関し、用語、螺旋管の「相対振幅」とは振幅を内径で割ったものと定義される。螺旋管の振幅が管の内径の半分以下であるので、これは、相対振幅が0.5以下であることを意味する。0.45、0.40、0.35、0.30、0.25、0.20、0.15、0.1又は0.05以下の相対振幅が好ましい。全体的に見て螺旋管がそれと同じ断面積の通常の直管に比べてそれほぼ幅広でないという点で、螺旋管の相対振幅がより小さいほど、横方向空間を有効により良く使用できる。より小さい相対振幅はまた、より広い「見通し線」をもたらし、管に沿って管内に圧力計他の装置を挿入することのできるより広いスペースを提供する。より高いレイノズル数を伴うことにより、より小さい相対振幅を使用でき、満足できる範囲まで旋回流を引き起こすことができる。このことは、一般的に、任意の内径に対して、大きな流量が存在するところでは、小さくても旋回流を引き起こすのにいまだ十分である小さな相対振幅を用いることができることを意味する。
【0012】
螺旋のネジレ角はまた、流れのために有効な大きい断面積を有することの願わしさを持つスペース問題のバランスをとる関連要素である。ネジレ角は、望ましくは65°以下、より望ましくは55°、45°、35°、25°、20°、15°、10°又は5°以下である。相対振幅に関して、条件と、特に、管によって搬送される流体の粘性、密度及び速度に従ってネジレ角を最適化できる。
【0013】
一般的に言って、レイノズル数がより大きければ、ネジレ角をより小さくして満足できる旋回流を達成でき、レイノズル数をより小さくすれば、満足できる旋回流を発生させるためにより大きなネジレ角が必要される。より速い流れ(レイノズル数をより大きくする)のためにより大きなネジレ角を使用することは、管壁の近くで淀み流体ポケットがあるかもしれないので、一般に望ましくない。したがって、任意のレイノズル数(又はレイノズル数の範囲)に対して、ネジレ角は望ましくは、満足できる渦巻を発生させるようにできるだけ小さくするように選ばれる。ある実施例では、ネジレ角は20°未満である。
【0014】
一般に、管は複数の螺旋ターンを有するであろう。管に沿った螺旋の繰り返しターンは、旋回流が完全に発生するのを保証する傾向がある。
【0015】
管は通常その長さに渡って実質的に同じ相対振幅とネジレ角を持つように作られる。しかしながら、それらの一方又は両方は異なるようにすることができる。さらに、螺旋状部分は管の全長に沿って延伸することができ、又は、流れを「設定する」ためかつ管の他の管への接続を簡素化するために管の一部だけに沿って延伸することができる。
【0016】
管はほぼ直線的に延伸することができる(すなわち、螺旋回転の軸は直線となることができる)。しかしながら、ほぼ曲がった管を作り出すために軸を湾曲させることができる。軸の湾曲を二次元又は三次元とすることができる。湾曲が三次元であるなら、三次元湾曲によって引き起こされた渦巻が螺旋管で引き起こされた渦巻を増大させるようにすることが重要である。
【0017】
本発明の第2の形態によると、管の部分の中心線がほぼ螺旋状の経路をたどる前記部分を有する管を製造する方法であって、該方法は、真直なフレキシブルチューブ(可撓管)部分を別の真直なフレキシブル部材に隣接させ;前記フレキシブルチューブ部分とフレキシブル部材を互いの周りにねじり;フレキシブルチューブ部分がその形状を維持するようにフレキシブルチューブ部分を処理するステップを含んでなる。
【0018】
このように別のフレキシブル(可撓)部材と共にねじられると、フレキシブルチューブ部分は、上で説明されるように螺旋形状部分となることが見いだされた。管部分の直径とフレキシブル部材の直径を変えることによって、螺旋状部分の相対振幅を変えることができる、そして、管部分とフレキシブル部材のアセンブリの端部が互いに対してねじられる角度を変えることによってピッチを変えることができる。
【0019】
望ましくは、ねじる間に、フレキシブルチューブ部分はキンクその他の好ましくない変形を生じることを防止され、好ましい実施例では、ねじる前に管部分にとまりばめコイルバネが挿入される。
【0020】
フレキシブルチューブ部分の形を維持する処理方法として多くの方法がある。例えば、初期状態はフレキシブルであるが、時間がたつにつれて硬化する材料からフレキシブルチューブ部分を形成することができた。しかしながら、好ましい形態では、フレキシブルチューブ部分は適当な処理によりその形を維持することができる材料(熱硬化性プラスチック、UV硬化樹脂等)から形成される。
【0021】
特に好適な形態では、フレキシブルな真直な部材は第2フレキシブルチューブ部分である。そのような方法は同時の2つの螺旋状部分を生産し、次に、その2つの螺旋状部分を切り離して2つの別々の螺旋状部分を提供することができる。さらに、それらの2つの螺旋状部分が互いに巻きつけられて密に接触し、これは様々な状況において有利である。両方の管が同じ外径であるなら、2つの螺旋状部分が同じになるが、両方の螺旋状部分は、ここで想定されるより大きい振幅を持つ。したがって、2つの管が異なる直径を有することが好ましく、そうすれば、大きい方の管から形成された螺旋状部分はその内径の半分以下の振幅を持つことができる。
【0022】
さらに別の態様によると、管の部分の中心線がほぼ螺旋状の経路をたどる前記部分を含む管を製造する方法であって:直管を押し出す押出機に供給し;押出された管を螺旋形状に形成する形つくり機を押出機の下流に配設し;押出機から直管を押し出し、該押し出された直管を形つくり機を使用して螺旋形状に形成する;ステップを含む方法が提供される。
【0023】
この方法は、原料から螺旋状部分を直接的に生産する利点を持ち、事前に直管を形成する必要性を避けることができる。それはまた、連続した長さの螺旋管を生産することを可能にする。
【0024】
好ましい形態では、形つくり機は、押出機の軸にほぼ平行な回転軸を持つ回転部材を含む。この回転部材は管が通る孔を有し、該孔はその中心が回転軸からオフセットするように位置される。回転部材は、管が孔を通るときに、回転駆動されて管を螺旋形に成形する。
【0025】
この形つくり機を使用することで、管の幾何学形状をいくつかに変えることができる。例えば、回転部材の回転数を増減することができるように、押出機の速度を増減することができる。さらに、異なった位置の孔と共に異なった回転部材を使用できる。
【0026】
望ましくは、回転軸が孔を通るが孔の中心からオフセットするように回転部材の孔は位置され、それにより、螺旋の振幅が管の内径の半分であり、螺旋状部分に渡って比較的一定である螺旋状部分を生産することができる。
【0027】
発明はまた、この方法を実施する装置に及び。
【0028】
発明のさらなる態様によると、管の部分の中心線がほぼ螺旋状経路をたどる前記部分を含む管を製造する方法であって:螺旋状マンドレルを提供し;螺旋状マンドレルの周りにフレキシブル管を巻き付けて該管を螺旋状にし;螺旋状にされた管をその形状を保持するように処理し;螺旋状に形状が保持された管をマンドレルから取り外すステップを含んでなる方法が提供される。
【0029】
この方法は、作り出される管の形状をかなりのコントロールすることができ、また、上で説明された「ねじり」法と比べて再現性が改良されている。螺旋状部分の幾何学的形状は、マンドレルの形状と、マンドレルとフレキシブル管の相対的なサイズにより決定される。
【0030】
望ましくは、管は螺旋状のマンドレルよりもかなり長く、一端においてマンドレルに巻きつけられ、螺旋状マンドレルに沿って動かされてその形状を維持するように他端においてマンドレルから巻き戻される。このことは、上で説明されるように、方法がバッチプロセスよりむしろ連続生産方式に使用されるようにする。
【0031】
管の外径がマンドレルの内径より大きいほうが好ましく、そうすれば、生産される螺旋管の振幅が管の内径の半分以下となる。
【0032】
発明はまた、この方法に使用する螺旋状マンドレルに及び。
【0033】
さらなる態様によると、管の部分の中心線がほぼ螺旋状の経路をたどる前記部分を含む管を製造する方法であって:各々が真直な中心線と、互いに平行でない端面を有する複数の短い管部分を、その側部が最も長い側部を有し、最短側部は前記最も長い側部に直径方向に対向するように配設し;2つの短い部分を一方の部分の最も長い側部が次の部分の最も長い側部から回転方向にオフセットするように結合し;別の短い部分を、各々が先行する部分から同じ量だけ回転方向にわずかにオフセットするように接続する;ステップを含んでなる方法が提供される。
【0034】
先の方法はある材料の管の製造に制限される。この方法は対照的に、いかなる適当な材料からの管の製造に使用できる。それはある状況(例えば、プラスチックパイプでは強度が不十分である場合) において必要とされる金属パイプの製造に特に適している。
【0035】
ここで、発明の好ましい実施例を例示の目的で、添付図面に言及して説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
図1に示された管(又はチューブ)10は円形断面を有し、外径DEと、内径DIと、壁厚Tを有する。管は、一定振幅A(これは中間部から端までの距離として測定される)、 一定ピッチP、一定ネジレ角θ、曲げ幅Wの螺旋形状に巻かれている。管10は、螺旋の曲げ幅Wと等しい幅を持つ縦方向に延伸する想像上のエンベロープ20に収まっている。
【0037】
エンベロープ20が中心縦軸30を持つと見なすことができ、この中心縦軸は螺旋回転軸である。図示の管(チューブ)10は真直な軸30を有するが、この軸は、それに代えて、(二次元又は三次元の)大きいな曲率半径を持つことができることが理解される。管は、中心縦軸30回りの螺旋経路を通る中心線40を有する。
【0038】
振幅Aは管の内径Dの半分未満であることがわかる。振幅をこのサイズ以下に保つことによって、管が占領する横方向のスペースと管の全長を比較的小さく保つことができると共に、管の螺旋形状は管に沿って流体の旋回流を促進させる。
【0039】
螺旋部分における流れの特性を証明するために、円形断面のポリ塩化ビニール(PVC)管を使用して多くの実験が行われた。
【実施例1】
【0040】
図1に示されたパラメータに言及して説明すると、管は、12mmの外径DE、8mmの内径DI、及び2mmの壁厚Tを有する。管は45mmのピッチP及び8°のネジレ角θを有し、螺旋状に巻かれている。振幅Aは、2個の直定規の間に管を置き、直定規の間の離間距離を測定することによって確立された。振幅は曲げ幅Wから外径DEを引き算することによって決定される。即ち、2A=W-DEである。故に、
A = (W − DE)/2
この実施例では、曲げ幅Wは14mmであったので、
A = (W − DE)/2 = (14-12)/2 = 1 mm
以前に説明したように、「相対振幅」ARは、AR = A / DIと定義される。
【0041】
故に、この実施例の場合、AR = A / DI= 1/8 = 0.125
水を管に通した。流れ特性を観測するために、管壁を半径方向に貫通する2本の注射針80と82を用いて、目で見ることができる染料を流れに注入した。2つの注入位置は共に中心軸30に近く、すなわち、流れ「核(コア)」のところであった。一方の注射針80は赤インク、他方の注射針82は青インクを注入した。図1から、インク線条84と86がからみ合い、核において旋回流、すなわち、ほぼ螺旋状の流れが生じていることがわかる。図1に示す実験は、レイノズル数REが500で行われた。2つの追加実験において、それぞれ250と100のレイノズル数を使用して、また、旋回核流が観測された。
【実施例2】
【0042】
インク線条84,86を管の壁に近いところで放つように注射針80と82を配置したことを除き、実施例2に関するパラメータは実施例1と同じであった。図2は、レイノズル数REがそれぞれ500と250の場合の、壁の近くでインクを放った2つの実験結果を示している。どちらの場合も、インク線条が螺旋管の形状に流れ、壁の近くの旋回しているのが見られる。
【実施例3】
【0043】
別の研究において、内径8mmの直管の中を流れる流れを相対振幅ARが0.45の内径8mmの螺旋管内を流れる流れと比較した。どちらの場合も、レイノズル数は500であり、上流端において薄い管を通して0.2mlの粘土塊をインジケータとして注入した。インジケータの注入の後の経過時間を示すデジタルクロックと共に流れの写真が撮られた。
【0044】
螺旋状部分に注入されたインジケータの粘土塊は管の長さに渡って軸方向への分散が制限され、一貫して残ったままの傾向を示した。対照的に、直管においては、(管の中心近くの)コア流体のインジケータはすばやく管を出、壁に近い流体中のインジケータは管壁に残る傾向を示し、管を出るのにより長い時間がかかった。そのうえ、インジケータは直管におけるよりも螺旋管の中においてよりコンパクトな量で移動した。これらのすべての調査結果は、管の断面に渡り混合が生じ、螺旋管内の速度プロフィールの鈍化があったことを示す。
【実施例4】
【0045】
この実施例の実験は、螺旋管内の混相流を、単一平面においてほぼ正弦波様の経路を通る中心線を持ち管内の流れと比較することにかかわった。螺旋管(その中心線が三次元に湾曲したもの、すなわち、3D管)の場合、内径が8mm、外径が12mm、曲げ幅が17mmであり、0.3125の相対振幅であった。ピッチは90mmであった。平面的な波状管(その中心線が二次元に湾曲したもの、すなわち、2D管)の場合、内径が8mm、外径が12mm、波形平面で測定された曲げ幅は17mmであった。ピッチは3D管ケースのものとかそれほぼ異なってはいなく、80mmであった。2D管は、そのほぼ正弦波様の中心線を垂直平面内に置くように保持され、事実上、上向きに凸状及び凹形のUベンドを形成する。
【0046】
3D及び2Dの両方の管の長さはおよそ400mmであり、いずれの場合も4〜5ピッチであった。両方の管に関して、1分あたり450と900mlの水流を用い、(レイノズル数はそれぞれ1200と2400で)研究が実行された。すべての場合において、3ml/分の割合で空気流を導入するため、すなわち、450ml/分の場合に0. 66%の水流、900ml/分の場合に0.33%の水流とするために注射針を使用した。空気は圧縮空気ラインから来て、それぞれ3D及び2D形状の開始部分である上流側から管に注入された。
【0047】
レイノズル数が1200の3D管による実験では、空気泡は2〜3mmのサイズであり、管を急速に通過した。レイノズル数2400では、気泡はより大きく5〜7mmであったが、付着する(くっつく)傾向がなく管に沿って動き続けた。
【0048】
レイノズル数が1200と2400の2D管の場合、気泡は大きく3〜5mmであり、(管の外から見たときに)上向きの凸曲面にくっつく傾向があった。
【0049】
混相流においては、それほど濃くない流体が3D管に沿って運ばれるが、同等な2D管では、それほど濃くない流体は管のより高い部分に蓄積する傾向があることを実験は示している。
【0050】
上で論じたように、流体が螺旋状部分として形成された管内にこのように入ると、旋回流は非常にすばやく形成される。さらに、旋回流は流体のかなりの2次運動と混合を生じさせ、管壁に位置する流体と管の中心に位置する流体の間のマス移動を伴う。
【0051】
このように旋回流を螺旋状部分に急速に生じさせることは、流れを「調節」するに用いられ、螺旋状部分の下流に有益な効果を提供する。
【0052】
以上述べたように、三次元カーブを持つ管を使用することは、三次元カーブによって生じる旋回流がある利益を提供するため、通常の(二次元の)エルボーベント管を使用するよりも良い。しかしながら、エルボーベント管を単に三次元カーブを持つ管に取り替えることは通常可能でない。エルボーベント管に繋がった入口管と出口管は通常同じ平面内にあり、これは三次元カーブを持つ管の場合と異なる。したがって、三次元カーブを持つ管がエルボーベント管に代わって使用されるならば、入口管及び/又は出口管の位置を変えるためにかなりの修正が必要とされる。
【0053】
しかしながら、上で説明される螺旋状部分が通常のエルボーベント管の上流に嵌合されるならば、はるかに少ない修正で旋回流の利益を達成できる。旋回流が螺旋状部分に急速に生じ、この旋回流はエルボーベント管内においても続く。
【0054】
螺旋状部分は小さな振幅を有するので、直管が使用されるほとんどの位置でそれを使用でき、このように流れを「調節し」、旋回流の利益を提供することができる。その使用がエルボベント管だけに制限されるものではなく、T型又はY型ジョイント、弁その他のフィティングにも使用できることに注意されるべきである。
【0055】
このように流れを条件付けさせることは盲端に対して特に役に立つ。そのような盲端は、T型又はY型ジョイントにおいて、ジョイントの二股の一方が(例えば弁で)塞がれるところで生じる。通常の流れに関して、分岐部分における流体は、閉鎖に際して、停滞する傾向を有し、これは腐食等の問題に通じる。しかしながら、合流点に対して流れが渦を巻くようにされるなら、渦巻は盲端まで至り、これは、停滞を防いで上の問題を避けることができる。
【0056】
流れを調節するために螺旋状部分を使用するさらなる方法は、それらを繰り返し部分として使用することである。ある状況では、連続した長さの螺旋管の全体に螺旋状部分を提供することは必要でないかもしれず、代わりに、直管はその長さに沿って配置される多数の短い螺旋状部分を含むこととしてもよい。各螺旋状部分はそこを流れる流体を旋回流にするが、この旋回流は、流体が直管を流れる際に次第に弱まる傾向を有する。多くの「繰り返し部分」を設けることは、旋回流を再確立し、その並立利点を伴うことになる。
【0057】
多くの方法でこのタイプの螺旋管部分を作ることができる。例えば、真直な堅い部材(ポールなど)の回りに可撓性直管を巻き付けて、それを螺旋状の管にする。次に、管を真直な堅い部材から取り外して、螺旋軸に沿って延ばすことができる。この延ばしは螺旋を「延展」するという効果を有し、ピッチが大きくなりかつ、振幅が小さくなる。しかしながら、この「延展」は螺旋を歪めるので、この方法は好ましくない。
【0058】
図3aと3bに概略的に示す別法において、可撓性直管100は別の可撓性の真直な部材110(望ましくは、円形断面を持つ)の横に置かれる。管と部材の端部は互い結合し、次に、結合体を捩る。これにより両者が螺旋状の経路を通るようにする効果がある。
【0059】
捩る際に、可撓性管にキンク他の望ましくない変形を生じさせないようにすべきである。これを行う1つの方法は、捩る前に管の中に とまり嵌めコイルバネ(図3aにおいて破線で示され参照番号120によって指示される)を挿入することである。
【0060】
適当な処理により形状を保持することができる材料(例えば、熱硬化性プラスチック、UV硬化樹脂及び同様のもの)から可撓性管を形成することができる。そういった処理を行った後に管と部材を互いに引き離して、小さな振幅の螺旋形を形成することができる。螺旋形はその形状が保たれる。
【0061】
変形例において、そのような2個の可撓性管を並べて横たえて、それらの端を互いに結合し、2個の管を捩り、そのような互いに巻きつけられた2つの管部分を生産し、2つの管部分を切り離して別々の螺旋状部分を生産することができる。
【0062】
螺旋状部分を作るために、直管を変形させることの代替手段として、管の押出しの間に直接螺旋状部分を形成することが可能である。これをするための装置を図4に概略的に示す。
【0063】
図からわかるように、装置は直管210を押出す従来の管押出機200を含んでいる。そのような押出機はよく知られているので、さらなる説明はしない。貫通孔224を持つ回転部材222を含む装置220が押出機の出口の下流に配置されている。貫通孔は偏心して位置され、回転部材の回転中心が貫通孔内であるが、貫通孔の中心と一致しないように位置する。回転部材は、貫通孔の軸が押出される管の軸に平行であるように保持され回転駆動される。これは、例えば、ウォームギヤ226に噛み合う回転部材の外周の歯又はいかなる他の適当な駆動系統で達成される。
【0064】
押出機から押出された管210は貫通孔224を通るように導かれ、管が押出されるとき、回転部材222は回転駆動される。この回転の結果、貫通孔の中心は円を描くように駆動され、これにより、管は螺旋状に押出される。貫通孔が回転部材の回転中心に重なるので、管は、上で説明したように、小振幅螺旋230として形成される。
【0065】
管がいったん螺旋状に形成されると、その形を保持するように処理されうる。実際には、熱可塑性材料から管を単に押出し出し、それが冷えると螺旋形に硬化する。この冷却は、水噴霧その他同様な方法を使用して達成することができる。
【0066】
熱可塑性の管が貫通孔に付着しないようにするために何らかの潤滑を提供する必要があるかもしれない。特に、管が回転部材を通り抜けるときに管に捩りを与えないようにするために潤滑を必要とするであろう。
【0067】
製造される螺旋の形はいくつかの要素に依存し、特に、押出し速度、回転部材の回転速度及び貫通孔の偏心度に依存する。螺旋管の特定の必要な形状を得るためにこれらの要素を変えることができる。
【0068】
螺旋状部分を成形する特に適した方法は、螺旋状マンドレルを使用することであり、この方法を図5a〜5eに示す。
【0069】
図5aはこの方法に使用する螺旋状マンドレルの略図である。マンドレルは螺旋状に形成された剛体ロッドから成る。図示の実施例では、螺旋のピッチと振幅はマンドレルの全長さに渡って一定であるが、それらを変えることとしてもよい。
【0070】
螺旋状部分を形成するために、図5bに示すように、外径がマンドレル300の内径より大きい可撓性直管310をマンドレル300の周りに巻き付ける。管はマンドレル内のスペースより広いので、図からわかるように、螺旋形状を採る。
【0071】
管が螺旋形状を保持するように処理された後に、図5cと5dに示すように管をマンドレルから取り除くことができる。
【0072】
図からわかるように、螺旋状部分のピッチはマンドレルのピッチと同じである。螺旋状部分の振幅は、管の直径とマンドレルの直径により定まる。
【0073】
上の説明は螺旋状部分を形成するためのバッチ加工法に関するが、この方法はまた、連続運転に適している。可撓性の管の連続体を比較的長さの短いマンドレル内に引き抜き、そしてそれが引き抜かれたときに、その形状を保持するように処理することができる(例えば、熱硬化性樹脂から形成された管を加熱することによって)。
【0074】
実験は、管がこのように引き抜かれるときに管がマンドレルに対して回転することを示した。したがって、プロセスの滑らかな機能を可能にするために何らかの潤滑を必要とするかもしれない。非常に大きい管とマンドレルに関しては、潤滑よりむしろマンドレル上にローラーベアリングを提供することが望ましいかもしれない。
【0075】
図5eは、管が引き抜かれるときの管310とマンドレル300の概略断面図である。螺旋状のマンドレルをその軸に沿って端から見ると円として見え、同様に、管(円形断面を持つ)は同図において円として見える。マンドレルが点320で管の外側に接することことが見られ、引き抜き加工を妨げることなく、マンドレルを下から支えることができる。
【0076】
マンドレルを適当などんな方法でも形成でき、マンドレルを形成する方法は処理される管のサイズに大いに依存する。比較的小さい管に関しては、円形断面を持つ部材の周りにロッドを巻き付けることによってマンドレルを形成できる。より大きい管の場合、例えば、CNCフライス盤を使用して、マンドレルを機械加工する必要があるかもしれない。
【0077】
上で説明された方法はある材料(熱硬化性の、及び、熱可塑性の材料など)に制限される。しかしながら、これらの材料は強度不足の傾向があり、沖合、あるいは、非常に高圧の流体を搬送しなければならないより極限的な環境における使用にはおそらく適しないであろう。小振幅の螺旋管がそのような状況で使用されるならば、異なった方法でそれを形成しれなければならない。
【0078】
高圧状況での使用のための小振幅の螺旋を形成する1つの方法を図6a、6b、及び6cに言及して説明する。
【0079】
高圧用の直管を形成する公知の方法は、それぞれ事実上非常に短い管である多数の短いセクション(部分)からそれを形成することである。各セクションはその上流端と下流端にフランジを持ち、これらのフランジは協働してセクションを互いに連結する。従来技術では、セクションの端が平行面上にあるので、セクションが一緒に接続されるとき、結果として生じる管は真直である。しかしながら、わずかに斜めになった平面上にセクションの端部が横たわるようにセクションをまた形成することができる。図6aに示すように、このタイプのセクション400は直径方向に反対側の側部(SS)よりわずかに長い1側(SL)を持ち、上で説明される湾曲管及び螺旋管を形成するために組み立てられる。
【0080】
斜行端部を持つ複数の短管セクションから二次元カーブを有する1本の管410を作り出すために、これらのセクションは、互いの長い方の側面が接続されるように互いに連結される。図6bに示されるように、これにより、二次元カーブを有する管を作り出すことができる。
【0081】
螺旋管420を生産するために、セクションは互いに同様に接続されるが、各セクションは先行するセクションに対してわずかに回転した状態で連結される。これは図6cに示され、螺旋管がそのようなセクションから形成されることが示される。図6cの管の左側では、長い方の側部SLが最初の数セクションに示され、セクション間に相対的な回転があることがわかる。この相対的な回転の量は螺旋のピッチを決定する。相対的回転量が小さいと、ネジレ角が小さくかつピッチの大きい螺旋が生産され、相対的回転量が大きいと、ネジレ角が大きくピッチの小さいで螺旋が生産される。
【0082】
管の少なくとも1方の端部は、完全に円形であるというよりむしろある程度楕円になることが理解される (端部は、円筒をその軸に対して正確に90°でない角度を成して切断する平面により形成されるためである)。好ましい形態では、両端は楕円であるように形成される。なぜならば、そうすることで、各セグメントの両方の端部楕円表面が互いによく合うことができ、二次元カーブをより容易に構成することができるからである。
【0083】
各セクションを螺旋状に組み立てられるようにするために互いに連結される端面間のわずかな回転及び/又は形状変形を吸収できるように、端面にいくらかのコンプライアンス(弾力性、撓み性)が必要である。適当などんな方法でも、例えば、端面をエラストマー材料にすることで、これを達成できる。
【0084】
螺旋状部分における旋回流により生じる効果、並びに、特に、より均一な速度プロフィール及び改良された混合は多くの状況で利用されうる。さらに、螺旋状部分の全幅が同じ断面積の直管のものよりわずかだけ大きいので、通常直管が使用されるどんな状況でも螺旋状部分を事実上使用できる。
【0085】
このタイプの螺旋管を熱交換機に使用できる。これらの熱交換機は通常、比較的大径のチャンバの形態を取り、そのチャンバを最初の流体が流れる。チャンバ内には多数の小径管が設けられ、これらの小径管内を第1流体よりも温度の低い第2流体が流れる。2つの流体間で熱交換がなされる。
【0086】
螺旋管からこれらの小径管を形成すると、多くの利点が提供される。第一に、螺旋状に曲がった管の表面積が同じ長さの直管の表面積よりいくらか大きく、そのために、熱伝達に利用可能な面積は増加する。より重要なことに、螺旋状に曲がった管内での流体の改良された混合は、第1流体によって加熱された管壁の流体がより冷たい流体に絶えず置き替えられることを意味する。これは、管壁の流体が該壁の近くに滞在する傾向を示す直管内での流れと対照的である。混合効果は、螺旋状に曲がった管内の流体全体に熱交換プロセスを受けさせ、効率を改善する。
【0087】
改良された混合は図7に示される。図7は螺旋状部分と、それに続く下流直線部分を示す。それらの部分に沿った数ポイントにおいて、流れが図示されている。流れの第1断面は螺旋状部分への入口でのものであり、管の中心における流体は管壁により近い流体よりも濃く表示されている。流体が螺旋状部分に沿って動くにつれ、螺旋状部分においてかなりの面内混合があることがわかり、この混合は螺旋状部分の下流の直線部分においても続いている。
【0088】
熱交換機に戻って、そのような管状部分を形成する方法について上で説明したように、多数の管の「ツイストペア」から熱交換機を形成することもまた可能であろう。熱流体が1本の管の中を流れて、冷流体は他の管内を流れるだろう。管の親密な接触で、熱交換はきわめて容易に行われる。
【0089】
多相流(液体とガスの混合物の流れ等)に旋回流のさらなる利点を見ることができる。このタイプの多相流は、沸点に近い液体又は石油掘削における油とガスの混合物等のような多くの状況において生じうる。そういった多相流は、また、油や水などの異なった濃度の2つの混和しない流体の流れ、又はこれらの状況の組み合わせでも生じうる。多相流は、ガスが気泡を形成し、この気泡が浮力により管のより高い部分に溜まる傾向を有するので、従来の管に多くの問題をもたらしうる。十分なガスが溜まると、エアロックが形成され流れに重大に影響する。同様に、2つの非混和性液の流れにより、より濃い流体は管の下部に蓄積されて同様の問題を引き起こす。
【0090】
多相流におけるガス蓄積に関するさらなる問題は、それが「スラッギング」につながりうるということである。気泡が流れを完全に妨げる程度まで管壁に集まると、この現象は起こる。この封鎖部分に流体が接近すると、ガス圧を上げる傾向があり、そして圧力がある一定のポイントに達すると、封鎖部分は突然移行する。この「爆発」は管と、その下流の装置に大きい衝撃荷重を与え、重大な被害を引き起こしうる。事実、産油プラットホームは、そのような荷重に対処するために通常過剰設計される。
【0091】
しかしながら、螺旋回流の場合、気泡は、壁において蓄積するよりむしろ管の中心に留まる傾向を有する。これは渦巻の遠心分離機効果から生じると信じられている。即ち、流れのより濃い液体部分が管壁に向かい、流れのより濃くないガス部分は管の中心に向かい、かつ、流体によって連行さる。異なった密度の流体が合体又は水たまりになるという機会がより少なくなるので、エアロックなどの封鎖の起こる機会が減少する。また、気泡が管壁から遠ざけられので、スラッギングが生じる機会も極めて無くなる。
【0092】
さらに、上で説明したように、螺旋管内の旋回流における気泡は直管内の従来の流れにおける気泡より小さくなる傾向があることが実験的に示された。同様の効果は異なった密度の2つの非混和性液に関しても起こるだろう。
【0093】
気泡(又は、実際にそれほど密度が濃くない部分)は螺旋管の中心へ向かうという事実は、流れのガス含量の減少に関しても利点を提供する。
【0094】
螺旋管内のガス/液体多相流において、ガスが管の中心において非常に小さい断面積を占領することがわかった。直管との比較では、断面積に渡ってガス濃縮が減少され、この減少は20パーセントか30パーセントまで達する。(両方の管においてガス流量は同じであることに注意されるべきである。ガス流は、より小さい断面積を補うために、直管内よりも螺旋管の中の方が速い。)
このガス濃度の減少は、例えば、ポンプを用いると、非常に有益である。ポンプは、通常、多相流に対処するように設計されておらず、またガス濃度が高いと通常うまく作動しない。このように螺旋管を使用して流れ内のガス濃度を減少させることにより、ポンプの効率は高めることができる。
【0095】
多相旋回流で得られるさらなる有益な効果は圧力降下の低減である。鉛直管において実験により、直管内での圧力降下と比較して10〜20パーセントの低減を得た。圧力降下の低減はまた、同じ圧差で流れを増加させることができ、したがって、流体をポンプ送りするに必要なエネルギ量を減少させることができる。
【0096】
旋回流で達成できるより一定の速度プロフィールはまた、多くの利点を与える。管壁の近くの流量は直管の場合の従来の流れにおけるものより大きく、そのため、管内の固体物質が管壁に堆積する危険性がより少なくなる。このことは、管がスラリー他の同様物を輸送するのに使用される場合に特に重要である。
【0097】
さまざまな採掘と抽出の過程の間、密度の大きい微粒子状固体はフルイド・サスペンション(すなわち、スラリーの中)で輸送され、典型的な流れは50%の固体である。サスペンション中で固体が沈殿することを避けるために、レイノズル数をかなり高く保つことが必要である。直管を使用するならば、流速を比較的高くして沈殿を避けることが必要であり、このことは、スラリーのポンプ送りに使用するより多くのエネルギを必要とする。しかしながら、螺旋管では、沈殿のリスクを増加させること無く遅い流速を使用することができ、そのため、エネルギ消費を下げることができる。
【0098】
スラリーをかなり遠くまで(数キロメートルまで)輸送することができ、また、必要な流量を得るために管の直径を数メータとすることができることに注意されるべきである。このサイズの管でもまだ螺旋管の有益な効果を達成できる。
【0099】
壁の近くの増加する流量はまた、バイオフィルムの形成(これは非常に望ましくない)を抑制できる。また、淀み領域の形成の危険性が減少され、腐食が淀み領域で生じうるので、腐食の危険も減少する。これらの有益な効果は上で説明されるような単にスラリーの輸送ではなく、すべての状況に適用される。
【0100】
さらに、より一定の速度プロフィールと、管壁における流体と管の中心における流体間の改良された混合により、管内の流体の滞留時間はより一定である。このことは、管内の流体が何らかの処理を受ける場合 (例えば、加熱、冷却、照射など)、流体への処理効果がより均一になるので相当の利点を有する。対比のため、管の中心での流れが管壁での流れよりも速い通常の管において、滞留時間は (流体が中心の近くか壁の近くにあるかに依存して)変化する。したがって、壁の近くの流体は、その長い滞留時間のために、管の中心における流体よりも大きい程度に処理される。このことは、上の実施例3の説明からわかる。
【0101】
螺旋部分における旋回流に関連する2次運動と混合の別の利点は流動不安定と乱流の発達の抑制である。これは実験的に示された。より一定の速度プロフィールのさらなる利点は、同じ管が異なった物質を輸送するのに使用されるならば、軸方向分散とその結果の混合を減少させるということである。これは、例えば、バッチ処理の間に反応炉が成分で満たされているときに生じうる。
【0102】
軸方向分散は既知の問題であり、特に、管の中心での流体が管壁での流体よりも著しく速く流れるという層流に関するものである。軸方向分散を減少させる1つの方法は流れを乱すことである。なぜならば、これが速度プロフィールを平坦化させる傾向を有し、速度を管断面に渡ってより均等にするためである。しかしながら、これはさらなる困難を生じさせる。なぜならば、何らかの流体(例えば、巨大分子のサスペンション)は乱流によって損傷を受けるからである。
【0103】
管に螺旋状部分を使用することで、バッチの軸方向分散を減少させかつ従来の管よりはるかに早くピーク濃度を達成することを可能にする。これらの特徴は小バッチサイズの場合に特に重要である。
【0104】
これらの効果は食品加工と調剤生産に関して特に有益である。
【0105】
通常食品加工で、食物のバッチは直管を通して輸送される。しかしながら、速度プロフィールのために、管の中心における材料が管壁の近くにおける材料よりも高速で管内を通過する傾向があるので、バッチは管に沿って「広がる」傾向がある。対照的に、螺旋管が使用されるならば、管の中心近くの材料と管壁近くの材料の混合が高められ、バッチが、より「凝集状態」のまま残る。このことは、バッチ間の切換時間を減少させ、また、バッチ間の管を洗い落とすのに必要な時間を短縮する(と共に、沈殿形成の危険を減少させ、説明した他の有益な効果を供給する)。
【0106】
調剤生産もまた、材料を直管に通す輸送にかかわるが、螺旋管を使用することで同じ有益な効果を達成できる。
【0107】
石油化学製品の加工工場でまた、螺旋状部分を使用できる。それらを使うことができる1つの特定の領域が「クラッカー」にある。多くの分解過程が供給原料に存在する分子よりも多くの分子を生産し、産出高は分子が再結合するのを防ぐために低圧環境に依存する。これは冷却塔で製品を冷やし、分解炉から冷却塔を通って分解ガスコンプレッサーに至る間の圧力損失を最小にすることによって達成される(産出高は圧力損失に逆比例するからである)。直管に代えて螺旋状部分を使用することで、圧力損失を減少させることができ、その結果、産出高を増加させる。もちろん、螺旋状部分をまた、石油化学製品の加工工場の他の領域で使用できる。
【0108】
さらに、流れの面内混合が改良されるので、このタイプの螺旋管をまた、ミキサーとして使用できる。螺旋管の中に第1流体を輸送でき、分岐管に第2流体を導入して通すことができる。この分岐管もまた、螺旋管とすることができ、その場合、2本の管が同じ「巻き方」を有することが望ましい。より一定の滞留時間に結び付けられたこの改良された混合は、螺旋管がまた、反応炉管として働くことができることを意味する。
【0109】
螺旋管の特定の応用例を説明したが、螺旋管の使用はこれらの応用例に限定されるものではないことが理解される。事実、それが与える利点(より一定の速度プロフィール、面内混合の改良、軸方向分散の減少、停滞の減少等)が有益であるどんな応用にも螺旋管を使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】螺旋部分内の流れを実験するために使用する管の姿図である。
【図2】図1のものと同様の図であるが、異なった実験に関するものである。
【図3】図3aと3bは螺旋管を製造する第1の方法を示す図である。
【図4】螺旋管を製造する第2方法を示す図である。
【図5】図5a 乃至5eは螺旋管を製造する第3方法を示す図である。
【図6】図6a乃至図6cは螺旋管を製造する第4方法を示す図である。
【図7】螺旋部分内及びその下流において生じる面内混合を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管の部分の中心線がほぼ螺旋の経路をたどる前記部分を含む管であって、前記螺旋の振幅が前記管の内径の半分以下である管。
【請求項2】
請求項1に記載の管であって、前記部分は複数の螺旋ターンを持つ管。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の管であって、前記部分はその長さに沿って実質的に同じ振幅とネジレ角を持つ管。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つに記載の管であって、前記部分は前記管の全長に沿って延伸する管。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1つに記載の管であって、前記部分は前記管の一部に沿ってのみ延伸する管。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1つに記載の管であって、前記螺旋回転の軸は直線である管。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか1つに記載の管であって、前記螺旋回転の軸は曲がっている管。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1つに記載の管であって、ミキサーとして使用される管。
【請求項9】
管の部分の中心線がほぼ螺旋の経路をたどる前記部分を含む管を製造する方法であって、可撓管部分を別の真直の可撓部材に隣接させ、前記可撓管部分と前記可撓部材を互いの周りにねじり、前記可撓管部分がその形状を維持するように前記可撓管部分を処理するステップを含む方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、ねじられる際に前記可撓管部分にキンクその他の好ましくない変形を生じることを防止する方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、ねじる前に前記管部分にとまりばめコイルバネを挿入する方法。
【請求項12】
請求項9〜乃至11のいずれか1つに記載の方法であって、前記可撓管部分は、熱硬化性プラスチック、UV硬化樹脂等の、該可撓管部分の形状を維持する処理が可能な材料から形成される方法。
【請求項13】
請求項9乃至12のいずれか1つに記載の方法であって、前記真直の可撓部材は第2可撓管部分である方法。
【請求項14】
管の部分の中心線がほぼ螺旋の経路をたどる前記部分を含む管を製造する方法であって:
直管を押し出す押出機を配設し;
前記押出された管を螺旋形状に形成する形つくり機を前記押出機の下流に配設し;
前記押出機から直管を押し出し、前記形つくり機を使用して該直管を螺旋形状に形成する;
ステップを含んでなる方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、前記形つくり機は、前記押出機の軸にほぼ平行な回転軸を有する回転部材であって、前記直管が通る孔を備え、該孔はその中心が前記回転軸からオフセットするように位置され、前記回転部材は前記直管が該回転部材を通過するときに回転駆動されて前記直管を螺旋形にする回転部材を含んでなる方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、前記回転軸が前記孔を通るが前記孔の中心からオフセットするように前記回転部材の前記孔は位置され、前記螺旋の振幅が前記直管の内径の半分以下であり、かつ、前記部分の長さに渡り比較的一定である螺旋状部分を生産する方法。
【請求項17】
請求項14乃至16のいずれか1つに記載の方法を行う装置。
【請求項18】
管の部分の中心線がほぼ螺旋の経路をたどる前記部分を含む管を製造する方法であって:
螺旋状マンドレルを提供し;
前記螺旋状マンドレルの周りに可撓管を巻きつけて螺旋状にし;
前記螺旋状にされた管がその形状を維持するように処理し;
前記処理されて螺旋形状を維持する管を前記螺旋状マンドレルから取り外す;
ステップを含んでなる方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、前記管は前記螺旋状マンドレルよりかなり長く、一端で前記マンドレルに巻きつけられ、前記螺旋状マンドレルに沿って動かされかつその形状を維持するように処理され、他端において前記螺旋状マンドレルからほどかれる方法。
【請求項20】
請求項18又は19に記載の方法であって、前記管の外径は前記マンドレルの内径より大きくして前記生産された螺旋管の振幅が前記管の内径の半分以下となる方法。
【請求項21】
請求項18乃至20のいずれか1つに記載の方法に使用する螺旋状マンドレル。
【請求項22】
管の部分の中心線がほぼ螺旋の経路をたどる前記部分を含む管を製造する方法であって:
各々が真直な中心線と、互いに平行でない端面を有する複数の短い管部分を提供し;
前記複数の管部分の2つの管部分を、一方の管部分の長い方の側部が次の他方の管部分の長い方の側部から回転方向に僅かにオフセットするように接続し;
さらに別の短い管部分を前記先行する管部分から同じ量だけ回転方向にオフセットさせて次々と接続する;
ステップを含んでなる方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

image rotate

【図4】
image rotate

image rotate

image rotate

image rotate

image rotate

image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2006−520878(P2006−520878A)
【公表日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−505981(P2006−505981)
【出願日】平成16年3月18日(2004.3.18)
【国際出願番号】PCT/GB2004/001163
【国際公開番号】WO2004/083705
【国際公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(505354729)インペリアル・カリッジ・イノベイションズ・リミテッド (6)
【Fターム(参考)】