説明

血中コレステロール低下用経口組成物

【課題】イソフラボンの血中総コレステロール低下作用を増強させて高コレステロール血症を改善する組成物を提供する。
【解決手段】ダイフラクトース アンハイドライドとイソフラボン及び/又はその誘導体を有効成分として含有する血中コレステロール低下用経口組成物。
【選択図面】 なし

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血中コレステロールを低下させる組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
平成14年国民栄養調査によると、男性の11.5%、女性の18.2%の血清総コレステロール値が240mg/dLを超えており、相当数の高コレステロール血症患者が存在すると推定される。血清総コレステロールが上昇するとともに、冠動脈疾患の相対リスクは連続的に上昇することが知られている(動脈硬化疾患診療ガイドライン 2002年版,日本動脈硬化学会)。このような状態に対し、薬物治療のみでなく、食事を含めたライフスタイルの改善による治療が試みられている。
イソフラボン類は、高コレステロール血症に有効であることが知られている(特許文献1:特開平9−255570号公報)。またイソフラボン類の一つダイゼインを利用してLDL−コレステロールを減少させ、HDL−コレステロールを上昇させることで、アテローム硬化症の危険性を減少させる方法が報告されている(特許文献2:特開平11−139973号公報)。しかしながら、イソフラボン類を多く含む大豆を多食する日本においても、高コレステロール血症は増加しつづけており、社会的にみるとイソフラボンの効果は必ずしも十分とはいえない。
オリゴ糖の一種であるダイフラクトース アンハイドライド(以下DFAと記す)についてはビフィズス菌増殖作用を有すること(特許文献3:特公平3−5788号公報)やカルシウム吸収量を増やすこと(特許文献4:特許第3514955号公報)、利尿作用をもつこと(特許文献5:特開2003−321371号公報)が知られていたが、イソフラボンとの併用でコレステロールを低下させる効果については知られていなかった。一方オリゴ糖類では、微細食物繊維とオリゴ糖を組み合わせた高脂血症改善剤が発明されており、特にフラクトオリゴ糖が有効であるとされている(特許文献6:特開2000−154143号公報)。
【0003】
【特許文献1】特開平9−255570号公報
【特許文献2】特開平11−139973号公報
【特許文献3】特公平3−5788号公報
【特許文献4】特許第3514955号公報
【特許文献5】特開2003−321371号公報
【特許文献6】特開2000−154143号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
イソフラボンの血中総コレステロール低下作用を増強させて高コレステロール血症を改善する組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
イソフラボンの血中総コレステロール低下作用を増強させることができる手段を鋭意検討する中で、DFAの摂取により、イソフラボンの血中の総コレステロール低下作用が増強されることを見出した。すなわち本発明はDFAとイソフラボンを併用することで、血中コレステロール低下作用を奏する組成物である。
【0006】
すなわち本発明の主な構成は、ダイフラクトース アンハイドライドとイソフラボン及び/又はその誘導体を有効成分として含有することで、イソフラボンのコレステロール低下作用を増強させることを特徴とする血中コレステロール低下用経口組成物である。
(1)ダイフラクトース アンハイドライドとイソフラボン及び/又はその誘導体を有効成分として含有することを特徴とする血中コレステロール低下用経口組成物。
(2)ダイフラクトース アンハイドライドとダイゼイン及び/又はその誘導体を有効成分として含有することを特徴とする血中コレステロール低下用経口組成物。
(3)ダイフラクトース アンハイドライドとイソフラボン及び/又はその誘導体を有効成分として含有することで、イソフラボンのコレステロール低下作用を増強させることを特徴とする血中コレステロール低下用経口組成物。
(4)ダイフラクトース アンハイドライドとダイゼイン及び/又はその誘導体を有効成分として含有することで、ダイゼインのコレステロール低下作用を増強させることを特徴とする血中コレステロール低下用経口組成物。
(5)(1)〜(4)のいずれかに記載された組成物を含有する医薬品又は食品。
(6)(1)〜(4)のいずれかに記載された組成物を含有するペット動物用医薬又はペット動物用飼料。
【発明の効果】
【0007】
本発明のDFAとイソフラボン及び/又はその誘導体を含有する組成物は血中コレステロール低下作用を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明でいうDFAとは、公知の物質であって2個のフラクトースが、互いに2点ずつで結合したアンヒドロ化環状二糖である。従来、カラメルなどに存在することが知られていたが、工業的には、イヌリンをイヌリン分解酵素、例えば、Arthrobacter sp.H65−7株が産生するイヌリンフラクトトランスフェラーゼ(EC2.4.1.93)により発酵させたり、レヴァンをArthrobacternicotinovorans GS−9が産生するレヴァンフルクトトランスフェラーゼ(EC2.4.1.10)を発酵させたりすることにより製造することができる。二分子のフラクトースの結合様式の差異により、誘導体が5種類存在し、それぞれ、DFAI、DFAII、DFAIII、DFAIV、DFAV と称される。本発明でいうDFAとは、それら全てをいうが、本発明では、もっぱら、工業的生産の効率、精製してからの安定性などが優れているDFAIII、DFAIVが好ましく使用される。
【0009】
本発明に係る経口組成物は、DFA を有効成分として含有するものであって、医薬品タイプ又は飲食品(ペット動物用飼餌料を含む)タイプの組成物として利用することができる。例えば、ヒト又はペット動物用の医薬品、飲食品、調製粉乳、経腸栄養剤、健康飲食品、飼餌料添加物など、最終的に経口投与可能な形態であれば制限はない。本発明において最も好ましく使用されるのは、DFAとイソフラボン及び/又はその誘導体を大腸まで吸収されずに届けられる形態であり、例えば腸溶性カプセル中に含有させる形態が考えられる。また、有効成分の含有量は、特に限定されない。
【0010】
飲食品タイプの組成物として使用する場合には、DFAをそのまま使用したり、他の食品ないし食品成分と併用したりして、適宜常法に従い使用できる。また、加工にあたっては、熱安定性、酸安定性ともに高いため、通常の食品加工方法がなんら問題なく適用できる。DFAを含有する食品タイプの経口組成物は、粉末、顆粒状、ペースト状、液状、懸濁状、錠剤、カプセル剤など特段の限定は受けない。例えば甘味料、酸味料、ビタミン剤その他ドリンク剤製造に常用される各種成分を用いて、健康ドリンクに製剤化することも例示できる。
【0011】
医薬品タイプの組成物として使用する場合、本有効成分は、種々の形態で投与される。その投与形態としては、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤等による経口投与が例示できる。これらの各種製剤は、常法に従って主薬に賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味矯臭剤、溶解補助剤、懸濁剤、コーティング剤などの医薬の製剤技術分野において通常使用しうる既知の補助剤を用いて製剤化することができる。
その使用量は症状、年令、体重、剤形によって異なるが、通常は、成人に対して、経口投与の場合に1日当たり、体重1kg当たり0.5〜2000mg、好ましくは1〜1000mgの範囲で投与するのがよい。
【0012】
また、本発明のイソフラボンとは、一般名としてゲニステイン、ダイゼイン、グリシチン等とされるイソフラボン骨格を有する成分を指し、その誘導体とは、配糖体、及び/又はそのアセチル化、マロニル化等の修飾を受けた誘導体を示す。本発明においては、腸内細菌によりより強い活性をもつエクオールに変換されるダイゼイン及び/又はその誘導体が好ましく使用される。本発明において使用されるイソフラボン及び/又はその誘導体の由来は、化学合成品、天然物の抽出物及びその加工品、植物そのもののいずれでも可能である。
【0013】
以下の実施例をもって本発明をより詳細に説明するが、これらは単に例示するのみであり、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0014】
DFAとイソフラボンを併用した際の血漿総コレステロール低下作用を調べた。
Wistar-ST系雄ラット(6週齢)21匹を3日間無イソフラボン飼料で予備飼育した後、体重層別法により各群n=7で3群に分け、表1のとおりイソフラボン40%含有食品を0.25%含有した基本飼料(Basal diet群)、基本飼料のセルロースを全体の1.5%DFAIIIで置換した飼料(DFAIII群)、基本飼料のセルロースを全体の1.5%フラクトオリゴ糖で置換した飼料(FOS群)を与えて19日間飼育した。20日目に腹部大動脈より採血を行い、遠心分離により血漿を得、自動分析機(DRI-CHEM 3500 富士フィルムメディカル社製)にて血漿総コレステロールを測定した。
【0015】
その結果を表2に示す。表中のa、bは異記号を有する値の間に有意差があることを示す。Basal diet群とDFAIII群のSheffe法による有意差はp=0.051であり、強い傾向とみなされた。HDLコレステロールはDFAIII群ではやや低くなるが各群で大差が見られなかった。
この結果から明らかなように、DFAの摂取により、イソフラボンのみを摂取した群と比較して血清総コレステロールの低下傾向がみられた。この効果は、公知の高脂血症改善効果のあるオリゴ糖である、フラクトオリゴ糖にはみられなかった。
【0016】
【表1】


【0017】
【表2】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイフラクトース アンハイドライドとイソフラボン及び/又はその誘導体を有効成分として含有することを特徴とする血中コレステロール低下用経口組成物。
【請求項2】
ダイフラクトース アンハイドライドとダイゼイン及び/又はその誘導体を有効成分として含有することを特徴とする血中コレステロール低下用経口組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された組成物を含有する医薬品又は食品。
【請求項4】
請求項1又は2に記載された組成物を含有するペット動物用医薬又はペット動物用飼料。


【公開番号】特開2006−193459(P2006−193459A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−5738(P2005−5738)
【出願日】平成17年1月12日(2005.1.12)
【出願人】(593106918)株式会社ファンケル (310)
【Fターム(参考)】