説明

血中脂質改善剤組成物

【課題】
優れた血中総コレステロール低下剤を提供することを課題とする。
【解決手段】
有効成分としてプラバスタチンと、酪酸リボフラビン又はアスコルビン酸から選択される1種以上のビタミンを含有し、そのビタミンが単独では血中総コレステロール低下作用を示すことがない量であることを特徴とする、プラバスタチンの血中総コレステロール低下作用を増強させた血中総コレステロール低下剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラバスタチンと、リボフラビン類、d−α−トコフェロール類、アスコルビン酸類及びイノシトールヘキサニコチネートからなる群から選択される1種以上のビタミンとを、含有する血中総コレステロール低下剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
プラバスタチンは、生体において、HMG−CoAリダクターゼを阻害することにより、血中総コレステロール量を低下させる作用を有する薬物である。また、リボフラビン類、d−α−トコフェロール類、アスコルビン酸類及びイノシトールヘキサニコチネートは、それぞれ、単剤で血中総コレステロール低下作用を有することが知られている。
【0003】
さらに、HMG−CoAリダクターゼ阻害剤と、d−α−トコフェロール類又はアスコルビン酸類とを組み合わせることで、血中総コレステロール量の低下効果を保ちつつ、HMG−CoAリダクターゼ阻害剤の効果によって生体内で減少したd−α−トコフェロールやアスコルビン酸を補完し得ることが知られている(特表平8−505853号)。
【0004】
しかしながら、プラバスタチンと、リボフラビン類、d−α−トコフェロール類、アスコルビン酸類又はイノシトールヘキサニコチネートとの併用により、相乗的に血中総コレステロール量が低下することは知られていない。
【0005】
また、プラバスタチンは、安全域の高い薬物であるが、長期に服用する性質のものであるため、さらに少ない服用量で血中総コレステロール量を下げることが望まれていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者等は、血中総コレステロール量を下げる組成物につき、鋭意研究を続けた結果、プラバスタチンと、ある種のビタミンとを併用することにより、従来より少ないプラバスタチンナトリウム量で血中総コレステロール量を下げ得ることを見出し、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、プラバスタチンと、酪酸リボフラビン、酢酸d−α−トコフェロール、アスコルビン酸及びイノシトールヘキサニコチネートからなる群から選択される1種以上のビタミンとを、含有する血中総コレステロール低下剤組成物である。
【0008】
「プラバスタチン(化学名:(+)―(3R,5R)−3,5−ジヒドロキシ−7−[(1S,2S,6S,8S,8aR)−6−ヒドロキシ−2−メチル−8−[(S)−2−メチルブチリルオキシ]−1,2,6,7,8,8a−ヘキサヒドロ−1−ナフチル]ヘプタノン)」とは、下記式で表される化合物及びその塩(特に、ナトリウム塩)をいい、その製造方法は、特開昭57−2240号等に記載されているが、市販されているので、容易に入手し得る。
【0009】
【化1】

【0010】
「リボフラビン類」とは、リボフラビン自体及び酪酸リボフラビンのようなリボフラビンの酸エステルをいう。
【0011】
「トコフェロール類」とは、トコフェロール自体(ラセミ体及び光学活性体)及び酢酸トコフェロール(ラセミ体及び光学活性体)のようなトコフェロールの酸エステルをいう。
【0012】
「アスコルビン酸類」とは、アルコスビン酸自体、アスコルビン酸ナトリウムのようなアスコルビン酸塩及びアスコルビン酸ステアリン酸エステルのようなアスコルビン酸の酸エステルをいう。
【0013】
「イノシトールヘキサニコチネート」とは、イノシトールに存在する6つの水酸基がニコチン酸でエステル化された化合物をいう。
【0014】
「血中総コレステロール量」とは、血中に存在するコレステロール及びコレステロールエステルの全量をいう。
【0015】
血中総コレステロール量低下剤の「低下」とは、臨床上意義のある程度に下げることをいう。
【発明の効果】
【0016】
本発明のプラバスタチンとアスコルビン酸等の組合せに係る組成物は、優れた血中総コレステロール量の低下作用を有するので、血中総コレステロール低下剤として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の血中脂質改善剤組成物が固形製剤の場合において含有される、
プラバスタチンの重量%は、通常、0.01乃至5%であり、好適には、0.05乃至3%であり、また、
リボフラビン類の重量%は、通常、0.002乃至40%であり、好適には、0.01乃至20%であり、さらに、
アスコルビン酸類の重量%は、通常、0.05乃至50%であり、好適には、0.5乃至25%であり、さらにまた、
トコフェロール類の重量%は、通常、0.002乃至40%であり、好適には、0.02乃至20%であり、イノシトールヘキサニコチネートの重量%は、通常0.05乃至50%であり、好適には、0.5乃至25%である。
【0018】
本発明の血中総コレステロール量低下剤組成物が液剤の場合において含有される、
プラバスタチンの含有量は、通常、0.01乃至10mg/mLであり、好適には、0.05乃至5mg/mLであり、また、
リボフラビン類の含有量は、通常、0.05乃至5mg/mLであり、好適には、0.1乃至3mg/mLであり、さらに、
アスコルビン酸類の含有量は、通常、1乃至10mg/mLであり、好適には、3乃至7mg/mLであり、さらにまた、
トコフェロール類の含有量は、通常、0.5乃至5mg/mLであり、好適には、1.5乃至3mg/mLであり、
イノシトールヘキサニコチネートの含有量は、通常1乃至40mg/mLであり、好適には、2乃至20mg/mLである。
【0019】
本発明の血中総コレステロール量低下剤組成物の具体的な剤形としては、例えば、錠剤、細粒剤(散剤を含む)、カプセル、液剤等をあげることができ、各剤形に適した添加剤や基材を適宜使用し、日本薬局方等に記載された通常の方法に従い、製造することができる。
【0020】
上記各剤形において、その剤形に応じ、通常使用される各種添加剤を使用することもできる。
【0021】
例えば、錠剤の場合、乳糖、結晶セルロース等を賦形剤として、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等を安定化剤として、ヒドロキシプロピルセルロース等を結合剤として、ステアリン酸マグネシウム等を滑沢剤として、使用することができ、
細粒剤及びカプセル剤の場合、乳糖、精製白糖等を賦形剤として、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム等を安定化剤として、トウモロコシデンプン等を吸着剤として、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリソルベート等を結合剤として、使用することができ、
液剤の場合、D−ソルビトール液、ハチミツ等を甘味剤として、dl−リンゴ酸等を矯味剤として、エデト酸ナトリウム等を安定化剤として、エタノール等を溶解補助剤として、ステアリン酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60等を可溶化剤として、使用することができる。
【0022】
上記各剤形において、必要に応じ、クロスポピドン等の崩壊剤;ケイ酸カルシウム等の吸着剤;三二酸化鉄、カラメル等の着色剤;安息香酸ナトリウム等のpH調節剤;香料;を添加することもできる。
【実施例】
【0023】
(実施例1)錠剤
(1)成分
【0024】
【表1】

【0025】
【表2】

【0026】
(2)製法
上記成分及び分量をとり、日局製剤総則「錠剤」の項に準じて錠剤を製する。
【0027】
(実施例2)細粒剤
(1)成分
【0028】
【表3】

【0029】
【表4】

【0030】
(2)製法
上記成分及び分量をとり、日局製剤総則「顆粒剤」の項に準じて細粒剤を製する。
【0031】
(実施例3)カプセル剤
(1)成分
【0032】
【表5】

【0033】
【表6】

【0034】
(2)製法
上記成分及び分量をとり、日局製剤総則「顆粒剤」の項に準じて細粒剤を製した後、カプセルに充てんして硬カプセル剤を製する。
【0035】
(実施例4)液剤
(1)成分
【0036】
【表7】

【0037】
【表8】

【0038】
(2)製法
上記成分及び分量をとり、日局製剤総則「液剤」の項に準じて液剤を製する。
【0039】
(実施例5)血中脂質量の評価試験
<試験方法>
(1)被験物質
プラバスタチンは、三共株式会社の純度99.4%のものを使用した。
【0040】
酪酸リボフラビン、酢酸d−α−トコフェロール、アスコルビン酸及びイノシトールヘキサニコチネートは、それぞれ、三菱東京製薬製、エーザイ製、日本ロッシュ製及び白鳥製薬製のものを購入し、使用した。
(2)試験動物
試験動物としては、Covance Research Products Inc.からビーグル犬雄を5箇月齢で購入し、約1箇月間の検疫及び馴化飼育後に使用した。
(3)投与剤形、製剤の調整方法及び製剤の保存方法
TORPAC社から購入したゼラチンカプセル(1/2オンス)に、プラバスタチン又は各配合剤について各試験動物毎の体重をもとに算出した必要量を充填した。なお、プラバスタチン充填済カプセルは冷蔵で、配合剤充填カプセルは室温で、投与直前まで保存した。なお、配合剤の場合は、同一のゼラチンカプセルに充填した。
(4)投与経路及び投与期間
プラバスタチン又は配合剤を充填したカプセルは、1日1回9:00〜12:30の間に、試験動物に強制経口投与した。なお、試験動物は投与前2乃至3時間絶食させた。投与期間は、11日間とした。
(5)被験試料の調製及び試験方法
カプセル投与前−14及び−7日(投与開始前第2週及び第1週)、投与後4日、8日及び12日に、橈側皮静脈から約10ml採血した。なお、採血前約18時間、試験動物は絶食させた。得られた血液を試験管にとり、室温で30分から1時間放置後、遠心分離し(3000rpm、10分間)て得られた血清を用い、総コレステロール及びALPを、それぞれ、CEH−COD−POD法及びBessey-Lowry法で、測定した。 なお、各含量の測定には、Instrumentation Laboratory社の全自動分析装置Monarchを使用した。
<試験結果>
プラバスタチンと、酪酸リボフラビン、酢酸d−α−トコフェロール、アスコルビン酸及びイノシトールヘキサニコチネートそれぞれの各投与量における単剤及び配合剤における血中脂質量等を、投与2週間及び1週間前の血清脂質量の平均を100として換算して求めた。各値は、一群5匹の平均値である。
(プラバスタチンと酪酸リボフラビンの併用効果)
【0041】
(表9)

--------------------------------------------------------------------------------
被験物質 血中総コレステロール量
(mg/Kg) 投与後4日 投与後8日 投与後12日
--------------------------------------------------------------------------------
プラバスタチン単剤(2) 93.6 90.0 93.0
酪酸リボフラビン単剤(6) 103.9 101.6 100.5
プラバスタチン(2) 91.4 82.6 85.8
+酪酸リボフラビン(6)
--------------------------------------------------------------------------------
【0042】
(表10)

--------------------------------------------------------------------------------
被験物質 ALP量
(mg/Kg) 投与後4日 投与後8日 投与後12日
--------------------------------------------------------------------------------
プラバスタチン単剤(2) 97.4 96.7 92.2
酪酸リボフラビン単剤(6) 98.1 98.8 93.9
プラバスタチン(2) 90.8 89.1 89.5
+酪酸リボフラビン(6)
--------------------------------------------------------------------------------
(プラバスタチンと酢酸d−α−トコフェロールの併用効果)
【0043】
【表11】



(プラバスタチンとアスコルビン酸の併用効果)
【0044】
(表12)

--------------------------------------------------------------------------------
被験物質 血中総コレステロール量
(mg/Kg) 投与後4日 投与後8日 投与後12日
--------------------------------------------------------------------------------
プラバスタチン単剤(2) 93.6 90.0 93.0
アスコルビン酸単剤(50) 98.7 98.2 103.4
プラバスタチン(2) 89.4 84.1 80.9
+アスコルビン酸(50)
--------------------------------------------------------------------------------
(プラバスタチンとイノシトールヘキサニコチネートの併用効果)
【0045】
【表13】


(プラバスタチン、酢酸-d-α-トコフェロール及びアスコルビン酸の併用効果)
【0046】
【表14】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分としてプラバスタチンと、酪酸リボフラビン又はアスコルビン酸から選択される1種以上のビタミンを含有し、そのビタミンが単独では血中総コレステロール低下作用を示すことがない量であることを特徴とする、プラバスタチンの血中総コレステロール低下作用を増強させた血中総コレステロール低下剤組成物。
【請求項2】
プラバスタチン1重量部に対して、ビタミンが、酪酸リボフラビン3重量部以下又はアスコルビン酸25重量部以下から選択される1種である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ビタミンが、酪酸リボフラビンのみである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
ビタミンが、アスコルビン酸のみである、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
固形製剤の全量が680mg以下であって、固形製剤の有効成分としてプラバスタチン0.05乃至3重量%と、酪酸リボフラビン0.01乃至20重量%又はアスコルビン酸0.5乃至50重量%から選択される1種以上のビタミンを含有する、プラバスタチンの血中総コレステロール低下作用を増強させた血中総コレステロール低下剤組成物。
【請求項6】
ビタミンが、酪酸リボフラビンのみである、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
ビタミンが、アスコルビン酸のみである、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
固形製剤の全量680mg中の有効成分としてプラバスタチン20mgと、酪酸リボフラビン12mgのビタミンのみを含有する、プラバスタチンの血中総コレステロール低下作用を増強させた血中総コレステロール低下剤組成物。
【請求項9】
固形製剤の全量1440mg中の有効成分としてプラバスタチン20mgと、アスコルビン酸500mgのビタミンのみを含有する、プラバスタチンの血中総コレステロール低下作用を増強させた血中総コレステロール低下剤組成物。
【請求項10】
プラバスタチンの含有量が20mg以下の場合であって、有効成分としての投与量がプラバスタチン2mg/kgに対して、酪酸リボフラビン6mg/kg以下又はアスコルビン酸50mg/kg以下から選択される1種以上のビタミンを含有し、プラバスタチンの血中総コレステロール低下作用を増強させた血中総コレステロール低下剤組成物。
【請求項11】
ビタミンが酪酸リボフラビン6mg/kgのみである、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
ビタミンがアスコルビン酸50mg/kgのみである、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
プラバスタチンの投与量が20mg以下の場合に、酪酸リボフラビン又はアスコルビン酸のビタミン単独では血中総コレステロール低下作用を有さない量のビタミンをプラバスタチンとともに用いることによる、プラバスタチンによる血中総コレステロール低下作用を増強する方法。
【請求項14】
ビタミンが酪酸リボフラビンであって、酪酸リボフラビン/プラバスタチン比が6/2以下である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ビタミンがアスコルビン酸であって、アスコルビン酸/プラバスタチン比が50/2以下である、請求項13に記載の方法。

【公開番号】特開2008−189684(P2008−189684A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−95945(P2008−95945)
【出願日】平成20年4月2日(2008.4.2)
【分割の表示】特願2001−319000(P2001−319000)の分割
【原出願日】平成13年10月17日(2001.10.17)
【出願人】(307010166)第一三共株式会社 (196)
【出願人】(306014736)第一三共ヘルスケア株式会社 (176)
【Fターム(参考)】