説明

血圧上昇抑制剤

【課題】 血圧上昇抑制を目的とした組成物、及び該組成物を含む飲食品又は医薬品を提供することにある。
【解決手段】 カタトゲパンノキ(Artocarpus rigida)の成分を含有することを特徴とする血圧上昇抑制組成物、及び該組成物を含有する飲食品又は医薬品を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は血圧上昇抑制を目的とした組成物、及び該組成物を含む飲食品又は医薬品に関する。
【背景技術】
【0002】
レニン−アンジオテンシン系は、生体内における血圧、水分量、体内電解質バランスなどの恒常性調節系として重要な役割を持つ。主要な生理活性物質はアンジオテンシンIIである。アンジオテンシンIIは細胞膜上のアンジオテンシンII受容体、特に1型(AT)を介して血管収縮作用を示す。従って、AT受容体を拮抗させることにより、血圧降下作用が期待できる。
【0003】
血圧上昇を抑制する飲食品、医薬品は高血圧症の予防、治療に有用である。また、高血圧症の進行により発生する心臓疾患や脳血管障害の発症が抑制され、これらの疾病による死亡を防ぐことができる。現在、血圧上昇抑制剤としてギャバや、かつお節・いわし・ローヤルゼリーなどのペプチド類、ロサルタン、カプトプリルなどが知られているが、より効果の高い新しい素材が求められている。
【0004】
カタトゲパンノキ(学名Artocarpus rigida、英名Monkey jack)は、クワ科 パンノキ属の植物である。インド東部からマレーシアに分布している。葉は厚紙質の長楕円形であり、果実は7月の中頃から橙黄色に熟す。果皮には棘状の突起があり、果肉は甘くて多汁で、生食や菓子の原料に利用される。カタトゲパンノキは、抗炎症作用を有することが報告されている。しかし、血圧上昇抑制作用があることは全く知られていなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、血圧上昇抑制作用及び、アンジオテンシンII1型受容体拮抗作用を有する組成物を提供し、ひいては該組成物を含有する飲食品又は医薬品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、カタトゲパンノキに顕著な血圧上昇抑制作用があることを見出した。すなわち本発明は、以下の構成を有する。
(1)カタトゲパンノキの成分を含有することを特徴とする血圧上昇抑制組成物。
(2)上記(1)に記載の組成物を含有する飲食品又は医薬品。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、カタトゲパンノキの成分を含有することを特徴とする血圧上昇抑制組成物、及び該組成物を含有する飲食品又は医薬品を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
カタトゲパンノキ(学名Artocarpus rigida、英名Monkey jack)は、クワ科 パンノキ属に属する。本発明に係るカタトゲパンノキのメタノール抽出物とは、上記公知の葉をメタノールで抽出して得られた化合物である。メタノール抽出は一般的な方法で行う。例えば、葉を粉末状に粉砕した物にメタノールを加え、室温〜70℃程度で数時間から数日放置し、その抽出液に濾過、遠心分離等の操作を加え、濃縮する。
【0009】
葉を粉末状にすると、メタノールとの接触面積が増大し抽出を効率的に行うことができるが、粉末状の葉でなくても良い。また、葉から有効成分を溶出させる溶媒は、メタノールに限定されるものではなく、エタノール、アセトン、酢酸エチル、ヘキサン等の類似した他の有機溶媒等を用いることもできる。さらに、水抽出、熱水抽出、酸性下での抽出、アルカリ性下での抽出で得られたカタトゲパンノキの葉の抽出物でも、同様の作用を発揮し得るものである。また、浸漬する時間は、葉の大きさ、抽出雰囲気の温度によって異なるが、粉末状の葉であれば、通常の室温下では一昼夜の浸漬で十分である。
【0010】
本発明に関わる血圧上昇抑制剤を製造するには、上記の方法で製造した樹脂を粉末状にすると、メタノールとの接触面積が増大し抽出を効率的に行うことができるが、粉末状の樹脂でなくても良い。また、樹脂から有効成分を溶出させる溶媒は、メタノールに限定されるものではなく、エタノール、アセトン、酢酸エチル、ヘキサン等の類似した他の有機溶媒等を用いることもできる。さらに、水抽出、熱水抽出、酸性下での抽出、アルカリ性下での抽出で得られたカタトゲパンノキ葉の抽出物でも、同様の作用を発揮し得るものである。また、浸漬する時間は、樹脂の大きさ、抽出雰囲気の温度によって異なるが、粉末状の樹脂であれば、通常の室温下では一昼夜の浸漬で十分である。
【0011】
カタトゲパンノキの葉及びそのメタノール抽出物は、常法に従って従来公知の医薬用無毒性担体と組み合わせることにより、種々の剤形に製剤化できる。経口投与剤としては、錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤、ソフトカプセル剤等の固形剤や、溶液剤、懸濁剤、乳剤等の液剤や、凍結乾燥製剤が挙げられる。非経口投与剤としては、注射剤のほか、座薬、噴霧剤、経皮吸収剤が挙げられる。これらの製剤は、製剤上の常套手段により調製することができる。
【0012】
医薬用無毒性担体としては、グルコース、乳糖、蔗糖、澱粉、マンニトール、デキストリン、コレステロール酸グリセリド、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルデンプン、エチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタンコレステロール酸エステル、アミノ酸、アルブミン、水、生理食塩水等が挙げられる。また、必要に応じて、安定化剤、滑剤、湿潤剤、乳化剤、結合剤等の慣用の添加剤を適宜添加することができる。カタトゲパンノキ葉の投与量は、被投与者の年齢、体重、症状、疾患の程度、投与スケジュール、製剤形態等により適宜選択・決定されるが、一日当たり、0.01〜10g/kg体重程度とされ、一日数回に分けて投与しても良い。
【0013】
カタトゲパンノキは、食経験もあることから安全性が高いと考えられ、本発明の血圧上昇抑制剤を食品として摂取することもできる。本発明のカタトゲパンノキ葉に適当な助剤を添加し、慣用の手段を用いて食用に適した形態、例えば粒状、顆粒状、ペースト状に形成し機能性食品として、これを直接供するか、ハム、ソーセージ、かまぼこ、ちくわ、パン、バター、乳製品、菓子、水、酒類、清涼飲料水等の種々の飲食物に添加し飲食品として、これを直接供することもできる。カタトゲパンノキ葉を含む食品の摂取量は、摂取者の年齢、体重、症状、疾患の程度、食品の形態等により適宜選択・決定されるが、カタトゲパンノキ抽出物の摂取量が、一日当たり0.01〜10g/kg体重程度になるようにする。
【実施例】
【0014】
以下に本発明をより詳細に説明するために実施例を挙げるが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0015】
実施例1 カタトゲパンノキ葉メタノール抽出物の血圧上昇抑制作用
被験試料としてカタトゲパンノキ葉のメタノール抽出物を用いた。6週齢の雄性ddYマウスをコントロール群とカタトゲパンノキ投与群に分け、アンジオテンシンII(200μg/kg)を腹腔内投与した。アンジオテンシンII投与の30分前に、コントロール群には蒸留水を投与し、投与群には蒸留水に溶解させたカタトゲパンノキ葉メタノール抽出物を投与した。アンジオテンシンIIを投与する直前とアンジオテンシンII投与4分後にマウスの尾動脈収縮期血圧を測定した。4分後に測定した値から直前に測定した値を引いた値を収縮期血圧上昇値(mmHg)とした。その結果を表1に示す。それぞれの値は、平均値(mmHg)±標準誤差を示す。***は危険率0.5%で、注射4分後の収縮期血圧は注射直前の収縮期血圧に対し有意に上昇していた。#はそれぞれ危険率5%でコントロール群の収縮期血圧上昇値に対し有意に低下していた。有意差検定はStudentのt−testによって行った。
【0016】
【表1】

【0017】
実施例2 カタトゲパンノキ葉メタノール抽出物の細胞内Ca2+流入阻害作用
被験試料としてカタトゲパンノキ葉のメタノール抽出物を用いた。アンジオテンシンIIと受容体が結合すると、細胞外のCa2+が細胞内に流入する。実施例2では、アンジオテンシンII1型受容体が過剰発現した細胞を用い、蛍光試薬Fura−2AMによって、Ca2+の細胞内への流入量を検出し、アンジオテンシンIIと受容体の結合率を評価した。
蛍光光度比と細胞内Ca2+濃度は比例関係にある。予め何も添加しない時の蛍光強度比を測定し、次いでアンジオテンシンIIのみ添加後の蛍光強度比を測定して対照とする。サンプルを添加する前の蛍光強度比、サンプルのみ添加したときの蛍光強度比、次いでアンジオテンシンII添加後の蛍光強度比を測定し、サンプルのアンジオテンシンII1型受容体阻害作用を評価した。なお、サンプル添加前のベースラインは測定ごとに変動する。
コントロールとして、測定したアンジオテンシンIIのみ添加時の変化量を100%とした。なお、変化量とは、F340/F380の値の上昇値のことである。以下の式に示す、応答率(%)を用い、サンプルを評価した。応答率(%)が40%以下を強い活性、応答率(%)が50%以下を弱い活性とみなした。その結果を表2に示す。

【0018】
【表2】


【0019】
上記の結果より、カタトゲパンノキ葉抽出物はアンジオテンシンIIによる血圧の上昇を顕著に抑制することが示された。また、アンジオテンシンIIと受容体の結合によって引き起こされる、細胞内Ca2+流入の阻害作用を示した。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明により、カタトゲパンノキの成分を含有することを特徴とする、血圧上昇抑制作用及びアンジオテンシンII1型受容体拮抗作用を有する組成物及び該組成物を含有する飲食品又は医薬品提供することが可能となった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カタトゲパンノキの成分を含有することを特徴とする血圧上昇抑制組成物。
【請求項2】
上記カタトゲパンノキの成分が、カタトゲパンノキ葉メタノール抽出物である、請求項1に記載の血圧上昇抑制組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の組成物を含有する飲食品又は医薬品。

【公開番号】特開2010−202631(P2010−202631A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−77463(P2009−77463)
【出願日】平成21年3月4日(2009.3.4)
【出願人】(300076688)有限会社湘南予防医科学研究所 (54)
【Fターム(参考)】