説明

血圧情報測定装置

【課題】被測定者への負担が軽減できるとともに精度よく血圧情報を測定することができる血圧情報測定装置を提供する。
【解決手段】血圧計1Aは、径方向に拡縮可能な略円筒状のカーラ34と、帯状の形態を有し、カーラ34の内周面に沿って湾曲した状態で配置された上腕圧迫用空気袋31と、カーラ34を径方向に拡縮させる拡縮機構とを含むカフ部を備えている。上腕圧迫用空気袋31は、カーラ34が縮径するに際して、周方向における一方端および他方端が可動端として移動することで縮径するように構成されている。上記可動端の可動範囲は、カフ部に挿入される上腕120の鉛直下方に位置する部分を除く部分に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上腕等を挿入するための中空部が予め形成されたカフ部が設けられた血圧情報測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
血圧情報を測定することは、その人の健康状態を知る上で非常に重要なことである。近年においては、たとえば脳卒中や心不全、心筋梗塞等の循環器系疾患のリスク解析に資する代表的な指標としてその有用性が広く認められている収縮期血圧値(最高血圧)、拡張期血圧値(最低血圧)等の血圧値を測定することに限られず、脈波を測定すること等によって心臓負荷や動脈硬化度等を捉える試み等もなされている。
【0003】
血圧情報測定装置は、これら血圧情報を測定するための装置であり、循環器系疾患の早期発見や予防、治療等の分野においてさらなる活用が期待されている。なお、血圧情報には、収縮期血圧値、拡張期血圧値、平均血圧値、脈波、脈拍、動脈硬化度を示す各種指標等、循環器系の種々の情報が広く含まれる。
【0004】
一般に、血圧情報の測定には、カフが利用される。ここで、カフとは、内空を有する流体袋を含む帯状または環状の構造物であって生体の一部に装着が可能なものを意味し、気体や液体等の流体を上記内空に注入することによって流体袋を膨張させて動脈を圧迫することで血圧情報の測定に利用されるもののことを指す。なお、カフは、腕帯あるいはマンシェットとも呼ばれる。
【0005】
近年、血圧情報としての収縮期血圧値および拡張期血圧値が測定可能に構成された血圧計として、上腕に対するカフの巻き付けを自動的に行なう自動カフ巻付機構を具備したものが普及している。このような自動カフ巻付機構を具備した血圧計が開示された文献としては、たとえば特開平10−314123号公報(特許文献1)や、特開2005−237432号公報(特許文献2)、特開2005−230175号公報(特許文献3)、特開2005−305028号公報(特許文献4)等がある。
【0006】
これら特許文献1ないし4に開示の血圧計にあっては、装置本体に設けられた中空部を取り囲むようにカフが配置され、カフが上腕に巻き付けられる前の状態(すなわち、自動カフ巻付機構によるカフの巻き付けがなされていない状態)において上記中空部の形状が上腕の外形よりも大きい略円柱状に構成され、自動カフ巻付機構が作動することによってカフが上腕の形状にあわせて縮径することにより、カフが上腕にフィットするように構成されている。
【0007】
上記構成が採用された血圧計においては、上腕に対するカフの巻き付け強さが測定毎に一定に保たれるようになるため、安定した測定精度が実現できるメリットが得られるのみならず、煩雑なカフの巻き付け作業が不要になるため、利便性が向上するメリットも得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−314123号公報
【特許文献2】特開2005−237432号公報
【特許文献3】特開2005−230175号公報
【特許文献4】特開2005−305028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、被測定部位である上腕の周囲長には、大きな個人差があるため、より多くの人が利用できる血圧計とするためには、周囲長の異なる上腕に対してより広くカフが適正に巻き付け可能となるように構成することが必要になる。
【0010】
そのため、上述した特許文献1ないし4に開示の血圧計にあっては、流体袋としての上腕圧迫用空気袋を完全な筒状の形態とはせずに帯状の形態とし、これを装置本体に設けられた中空部を取り囲むよう湾曲状に配置する構成が採用されている。このように構成することにより、巻き付けに際して上腕圧迫用空気袋の周方向の端部が中空部の周方向に沿って移動することで上腕圧迫用空気袋が縮径するようになり、巻き付け後においてカフが上腕に対して隙間なくフィットすることになる。
【0011】
なお、上述した特許文献1ないし4に開示の血圧計にあっては、非巻き付け状態において上腕圧迫用空気袋の周方向の一方端および他方端の間に生じる隙間が装置本体の下部に配置されるように構成されており、巻き付け動作時においてこれら一方端および他方端のうちの少なくとも一方が可動端として上腕が挿入される中空部の鉛直下方の位置に向けて移動するように構成されている。
【0012】
上記構成の血圧計にあっては、巻き付け動作時において、上腕の下部が中空部の下面に接触してしまうケースが発生し、上腕圧迫用空気袋の上記可動端によって上腕の下部が巻き込まれてしまう場合があった。これは、巻き付け動作が終了するまでの間、挿入した上腕を中空部の略中央位置に浮かした状態で保持することができず、上腕が鉛直下方に下降してしまった場合に生じるものである。
【0013】
当該上腕の下部の巻き込みが生じた場合には、適正に上腕圧迫用空気袋が上腕に対して巻き付けられないことになり、精度よく血圧値が測定できないといった問題が生じるばかりでなく、被測定者に苦痛を与えてしまったり、鬱血を生じさせてしまったりする場合もあり、その改善が求められていた。
【0014】
したがって、本発明は、上述した問題点を解決すべくなされたものであり、被測定者への負担が軽減できるとともに精度よく血圧情報を測定することができる血圧情報測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に基づく血圧情報測定装置は、径方向に拡縮可能な略円筒状の可撓性部材と、帯状の形態を有し、上記可撓性部材の内周面に沿って湾曲した状態で配置された生体圧迫用流体袋と、上記可撓性部材を上記径方向に拡縮させる拡縮機構とを含むカフ部を備えている。上記生体圧迫用流体袋は、上記可撓性部材が縮径するに際して、周方向における一方端および他方端のうちの少なくとも一方が可動端として移動することで縮径するように構成されており、上記可動端の可動範囲は、上記カフ部に挿入された被測定部位の鉛直下方に位置する部分を除く部分に配置されている。
【0016】
上記本発明に基づく血圧情報測定装置にあっては、上記可撓性部材が縮径していない状態において、上記生体圧迫用流体袋の上記一方端および上記他方端の間に生じる隙間が、上記カフ部に挿入された被測定部位の鉛直下方に位置する部分を除く部分に配設されていることが好ましい。また、その場合には、上記隙間が、上記中空部の軸線を含む平面によって上記装置本体を上下に二分した場合の上部側の部分に配設されていることが好ましい。
【0017】
上記本発明に基づく血圧情報測定装置にあっては、上記カフ部が、当該カフ部の軸線を含む鉛直面を基準とした場合に、上記隙間が上記鉛直面の一方の側方に配置される第1の状態と、上記隙間が上記鉛直面の他方の側方に配置される第2の状態とを採り得るように切り替え可能に構成されていることが好ましい。
【0018】
上記本発明に基づく血圧情報測定装置にあっては、上記カフ部の軸線を回転中心として上記カフ部が回転可能に構成されることにより、上記カフ部が上記第1の状態と上記第2の状態とを採り得るように切り替え可能に構成されていることが好ましい。
【0019】
上記本発明に基づく血圧情報測定装置は、さらに、上記カフ部を回転駆動する駆動部と、上記カフ部に左腕が挿入されたか右腕が挿入されたかを検知するための検知部と、上記検知部の検知結果に基づいて上記駆動部を駆動することで上記第1の状態および上記第2の状態の切り替えを行なう切替制御部とを備えていることが好ましい。
【0020】
上記本発明に基づく血圧情報測定装置は、さらに、上記カフ部を回転駆動する駆動部と、上記カフ部に左腕を挿入したか右腕を挿入したかを操作することで入力が可能な入力操作部と、上記入力操作部への入力結果に基づいて上記駆動部を駆動することで上記第1の状態および上記第2の状態の切り替えを行なう切替制御部とを備えていることが好ましい。
【0021】
上記本発明に基づく血圧情報測定装置は、さらに、上記カフ部を手動操作で回転させるための回転操作部を備えていることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、被測定者への負担が軽減できるとともに精度よく血圧情報を測定することができる血圧情報測定装置を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施の形態1における血圧計の概略斜視図である。
【図2】図1に示す血圧計を異なる方向から見た場合の概略斜視図である。
【図3】図1に示す血圧計の上腕挿入部の概略縦断面図である。
【図4】図1に示す血圧計の上腕挿入部の概略横断面図である。
【図5】図1に示す血圧計の機能ブロックの構成を示す図である。
【図6】図1に示す血圧計の装着手順を示す図であり、上腕挿入部の中空部に腕を挿し込む様子を示す図である。
【図7】図1に示す血圧計を使用した場合の測定姿勢を示す図である。
【図8】図1に示す血圧計の動作フローを示す図である。
【図9】図1に示す血圧計の上腕挿入部のカフ部の巻き付け動作前の状態を示す概略縦断面図である。
【図10】図1に示す血圧計の上腕挿入部のカフ部の巻き付け動作後の状態を示す概略縦断面図である。
【図11】上腕圧迫用空気袋の周方向の両端を可動端とした場合の上腕圧迫用空気袋の好適な配設位置を示す模式縦断面図である。
【図12】被測定部位として左腕の上腕を採用した場合の上腕圧迫用空気袋の特に好適な配設位置を示す模式図である。
【図13】被測定部位として右腕の上腕を採用した場合の上腕圧迫用空気袋の特に好適な配設位置を示す模式縦断面図である。
【図14】上腕圧迫用空気袋の周方向の一方端を可動端とした場合の上腕圧迫用空気袋の好適な配設位置を示す模式縦断面図である。
【図15】本発明の実施の形態1に基づいた変形例に係る血圧計の拡縮機構およびこれを駆動する駆動機構の構成を示す概略縦断面図である。
【図16】本発明の実施の形態2における血圧計の概略斜視図である。
【図17】図16に示す血圧計の上腕挿入部を含む部分の概略縦断面図である。
【図18】本発明の実施の形態2に基づいた変形例に係る血圧計の概略斜視図である。
【図19】本発明の実施の形態3における血圧計の概略斜視図である。
【図20】図19に示す血圧計の上腕挿入部を含む部分の概略縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。以下に示す実施の形態においては、血圧情報測定装置として、自動カフ巻付機構を備えた上腕式血圧計を例示して説明を行なう。なお、以下に示す実施の形態においては、同一または共通する部分に図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
【0025】
(実施の形態1)
図1および図2は、本発明の実施の形態1における血圧計の概略斜視図であり、図1は、本実施の形態における血圧計を前方右斜め上方から見た場合の図、図2は、前方左斜め上方から見た場合の図である。なお、図1は、血圧計の非使用状態を示しており、図2は、上腕の挿入が可能な位置に上腕挿入部が回動された後の状態を示している。まず、これら図1および図2を参照して、本実施の形態における血圧計1Aの外観構造について説明する。
【0026】
図1および図2に示すように、本実施の形態における血圧計1Aは、装置本体2を備えている。装置本体2は、テーブル等の載置面200(図6および図7参照)に載置される被載置面11を含む本体部10と、生体の一部である被測定部位としての上腕が挿入される略円柱状の中空部20aを含む生体挿入部としての上腕挿入部20とを有している。
【0027】
本体部10は、箱状の外殻を有しており、その下面によって上述した被載置面11が構成されており、その上面の所定位置に表示部42および操作部43が設けられている。本体部10の内部には、後述する制御部40や各種エア系コンポーネント50,60等(図5参照)が主として収容されている。また、表示部42および操作部43に隣接する本体部10の上面の所定位置には、被測定者が測定姿勢(図7参照)を採った際に肘を載置するための肘置き12が設けられている。この肘置き12は、たとえば本体部10の上面に凹部を設けること等によって形成されている。
【0028】
上腕挿入部20は、外装体としての非伸縮性のシェル21および高伸縮性の内布29からなる略円筒状の外殻を有しており、その内周面を規定する内布29の表面によって上述した中空部20aが構成されており、その外周面を規定するシェル21の所定位置に把手部22aが設けられている。この把手部22aは、当該把手部22aを被測定者が把持することで上腕挿入部20を容易に回動させることができるように設けられた部位であり、当該把手部22aの近傍には、非使用状態において本体部10にロックされた上腕挿入部20の開錠を可能にする開錠ボタン22bが設けられている。また、上腕挿入部20の内部には、後述するカフ部が主として収容されている。
【0029】
上腕挿入部20は、たとえばヒンジ等からなる回動連結機構を介して本体部10に回動可能に連結されている。より具体的には、本体部10の前端部寄りの位置と上腕挿入部20の下端部寄りの位置とがヒンジを介して回動可能に連結されることにより、上腕挿入部20が、図2中に示す矢印A方向に沿って回動するように構成されている。これにより、上腕挿入部20は、非使用状態において本体部10上に位置することでコンパクトに収納されることになり、また使用状態において前方に向かって(すなわち使用者側に向かって)傾倒し、中空部20aへの上腕の挿入が可能になる。
【0030】
図3および図4は、本実施の形態における血圧計の上腕挿入部の断面図であり、図3は、中空部の軸線と直交する平面に沿って上腕挿入部を切断した場合の概略縦断面図、図4は、図3中に示すIV−IV線に沿って上腕挿入部を切断した場合の概略横断面図である。次に、これら図3および図4を参照して、本実施の形態における血圧計1Aの上腕挿入部20の内部構造について説明する。
【0031】
図3および図4に示すように、上腕挿入部20は、上述した外装体であるシェル21および内布29に加えて、生体圧迫用流体袋としての上腕圧迫用空気袋31と、可撓性部材としてのカーラ34と、巻き付け用流体袋としての巻き付け用空気袋37とを主として備えている。上述したカフ部は、このうちの上腕圧迫用空気袋31、カーラ34および巻き付け用空気袋37によって主として構成されており、巻き付け用空気袋37は、カーラ34を径方向に拡縮させる拡縮機構を構成している。
【0032】
上腕圧迫用空気袋31、カーラ34および巻き付け用空気袋37は、いずれもシェル21および内布29によって構成される上腕挿入部20の外装体の内部に収容配置されており、径方向に積層されている。これにより、上腕圧迫用空気袋31、カーラ34および巻き付け用空気袋37は、いずれも中空部20aを囲むように配置されている。
【0033】
上腕圧迫用空気袋31は、シェル21および内布29によって構成される空間のうちの最内層に配置されており、内布29に隣接して設けられている。上腕圧迫用空気袋31は、好適には樹脂シートを用いて形成された袋状の部材からなり、帯状の形態を有している。具体的には、上腕圧迫用空気袋31は、内布29側に位置する内側シート部材31aと、シェル21側に位置する外側シート部材31bとを有しており、内部に膨縮空間31cを有している。上腕圧迫用空気袋31は、内側シート部材31aと外側シート部材31bとが重ね合わされてその周縁が溶着されることによって袋状に形成されている。なお、上腕圧迫用空気袋31の内部に位置する膨縮空間31cは、後述する上腕圧迫用エア系コンポーネント50(図5参照)に接続管を介して接続されている。
【0034】
上腕圧迫用空気袋31を構成する樹脂シートとしては、伸縮性に富んでおり溶着後において膨縮空間31cからの漏気がない材質のものであればどのようなものでも利用が可能である。このような観点から、樹脂シートとしては、たとえばエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂や、軟質塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリウレタン(PU)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂等からなるものが好適に利用できる。
【0035】
カーラ34は、シェル21および内布29によって構成される空間のうち、上腕圧迫用空気袋31の外側に位置する空間に配置されており、径方向に弾性変形することで拡縮可能に構成された略円筒状の部材からなる。より詳細には、カーラ34は、環状の形態を有する湾曲弾性板にて構成されており、その周方向における一端部が他端部に重ね合わされている。カーラ34は、上腕圧迫用空気袋31を上腕側に向けて付勢するためのものであり、十分な弾性力を発現するように、好適にはポリプロピレン(PP)樹脂等からなる部材にて構成される。
【0036】
巻き付け用空気袋37は、シェル21および内布29によって構成される空間のうちの最外層に配置されており、シェル21に隣接して設けられている。巻き付け用空気袋37は、好適には樹脂シートを用いて形成された袋状の部材からなり、帯状の形態を有している。具体的には、巻き付け用空気袋37は、内布29側に位置する内側シート部材37aと、シェル21側に位置する外側シート部材37bとを有しており、内部に膨縮空間37cを有している。巻き付け用空気袋37は、内側シート部材37aと外側シート部材37bとが重ね合わされてその周縁が溶着されることによって袋状に形成されている。なお、巻き付け用空気袋37の内部に位置する膨縮空間37cは、後述する巻き付け用エア系コンポーネント60(図5参照)に接続管を介して接続されている。
【0037】
巻き付け用空気袋37を構成する樹脂シートとしては、伸縮性に富んでおり溶着後において膨縮空間37cからの漏気がない材質のものであればどのようなものでも利用が可能である。このような観点から、樹脂シートとしては、たとえばエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂や、軟質塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリウレタン(PU)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂等からなるものが好適に利用できる。
【0038】
上述した上腕圧迫用空気袋31の外周面は、湾曲形状の樹脂プレート32によって覆われている。当該樹脂プレート32は、比較的剛性の小さい上腕圧迫用空気袋31の形状を湾曲状に維持するための形状維持部材であり、上腕圧迫用空気袋31に固定されている。
【0039】
また、樹脂プレート32とカーラ34との間およびカーラ34と巻き付け用空気袋37との間には、これら部材同士の滑りを向上させるための低摩擦部材が配置されている。具体的には、樹脂プレート32とカーラ34との間には、樹脂プレート32の外周面を覆うように布地33が介装されており、カーラ34は、その内周面および外周面の大部分が布袋35によって覆われており、カーラ34と巻き付け用空気袋37との間には、巻き付け用空気袋37の内周面を覆うように布地36が介装されている。これにより、布地33と布袋35とが接触するとともに布袋35と布地36とが接触することになり、上述した部材同士が直接接触するように配置された場合に生じる摩擦抵抗の低減が図られている。
【0040】
なお、上述した樹脂プレート32に加え、布地33も上腕圧迫用空気袋31に固定されており、これにより上腕圧迫用空気袋31、樹脂プレート32および布地33が一体化されることで上腕圧迫ユニット30が構成されている。
【0041】
以上により、上腕圧迫用空気袋31を含む上腕圧迫ユニット30が、カーラ34の内周面に沿って周方向に摺動可能に構成されており、また、カーラ34が、巻き付け用空気袋37の内周面に沿って周方向に摺動可能に構成されている。このように構成することにより、カーラ34が縮径するに際して、上腕圧迫用空気袋31が当該カーラ34の内周面に沿って摺動することになり、これにより上腕圧迫用空気袋31が縮径することになる。なお、巻き付け用空気袋37は、シェル21に対して固定的に組付けられていることが好ましい。
【0042】
図3に示すように、上腕圧迫ユニット30の周方向における一方端Bおよび他方端Cは、いずれも低摩擦部材としての布地33が上腕圧迫用空気袋31の端部に沿って折り返されることで、当該上腕圧迫用空気袋31の端部が露出しないように構成されている。ここで、上腕圧迫ユニット30の上記一方端Bを湾曲状に構成するとともに、上腕圧迫ユニット30の上記他方端Cを尖鋭状に構成することとすれば、上腕圧迫ユニット30の縮径時において上記一方端Bが上記他方端Cに容易に乗り上げるようにすることができ、上腕圧迫ユニット30のスムーズな縮径動作が実現され、これにより上腕圧迫用空気袋31がカーラ34の内周面に沿ってスムーズに摺動することになる。
【0043】
図5は、本実施の形態における血圧計の機能ブロックの構成を示す図である。次に、この図5を参照して、本実施の形態における血圧計1Aの機能ブロックの構成について説明する。
【0044】
図5に示すように、本実施の形態における血圧計1Aは、上述した上腕圧迫用空気袋31、巻き付け用空気袋37、表示部42および操作部43に加え、制御部40と、メモリ部41と、電源部44と、上腕圧迫用エア系コンポーネント50と、巻き付け用エア系コンポーネント60とを主として備えている。
【0045】
上腕圧迫用エア系コンポーネント50は、加圧ポンプ51と、排気弁52と、圧力センサ53とを含んでおり、これら加圧ポンプ51、排気弁52および圧力センサ53が、上述した上腕圧迫用空気袋31に接続管を介して接続されている。このうちの加圧ポンプ51および排気弁52は、上腕圧迫用空気袋31を加減圧するための加減圧機構に相当し、圧力センサ53は、上腕圧迫用空気袋31の内圧を検知する圧力検知部に相当する。なお、血圧計1Aには、上腕圧迫用エア系コンポーネント50の付属回路として、加圧ポンプ駆動回路54、排気弁駆動回路55および発振回路56が別途設けられている。
【0046】
巻き付け用エア系コンポーネント60は、加圧ポンプ61と、排気弁62と、圧力センサ63とを含んでおり、これら加圧ポンプ61、排気弁62および圧力センサ63が、上述した巻き付け用空気袋37に接続管を介して接続されている。このうちの加圧ポンプ61および排気弁62は、巻き付け用空気袋37を加減圧するための加減圧機構に相当する。なお、血圧計1Aには、巻き付け用エア系コンポーネント60の付属回路として、加圧ポンプ駆動回路64、排気弁駆動回路65および発振回路66が別途設けられている。ここで、本実施の形態においては、この巻き付け用エア系コンポーネント60が、カーラ34を径方向に拡縮させる拡縮機構としての巻き付け用空気袋37を駆動する駆動機構に相当することになる。
【0047】
制御部40は、たとえばCPU(Central Processing Unit)にて構成され、血圧計1Aの全体を制御するための手段である。メモリ部41は、たとえばROM(Read-Only Memory)やRAM(Random-Access Memory)にて構成され、血圧値測定のための処理手順を制御部40等に実行させるためのプログラムを記憶したり、測定結果等を記憶したりするための手段である。
【0048】
表示部42は、たとえばLCD(Liquid Crystal Display)にて構成され、測定結果等を表示するための手段である。操作部43は、被測定者等による操作を受付けてこの外部からの命令を制御部40や電源部44に入力するための手段である。電源部44は、制御部40に電力を供給するための手段である。
【0049】
制御部40は、加圧ポンプ51,61および排気弁52,62を駆動するための制御信号を加圧ポンプ駆動回路54,64および排気弁駆動回路55,65にそれぞれ入力する。また、制御部40は、圧力センサ53によって検出された圧力値に基づいて被測定者の血圧値を取得する血圧情報取得部(不図示)を含んでおり、この血圧情報測定部によって取得された血圧値が、測定結果として上述したメモリ部41や表示部42に入力される。また、制御部40は、圧力センサ63によって検出された圧力値に基づいて巻き付け用空気袋37の加圧状態を判別する。
【0050】
なお、血圧計1Aは、測定結果としての血圧値を外部の機器(たとえばPC(Personal Computer)やプリンタ等)に出力する出力部を別途有していてもよい。出力部としては、たとえばシリアル通信回線や各種の記録媒体への書き込み装置等が利用可能である。
【0051】
加圧ポンプ駆動回路54は、制御部40から入力された制御信号に基づいて加圧ポンプ51の動作を制御する。加圧ポンプ51は、上腕圧迫用空気袋31の膨縮空間31cに空気を供給することにより上腕圧迫用空気袋31の内部の圧力(以下、「カフ圧」とも称する)を加圧するためのものであり、その動作が上述した加圧ポンプ駆動回路54によって制御される。
【0052】
排気弁駆動回路55は、制御部40から入力された制御信号に基づいて排気弁52の開閉動作を制御する。排気弁52は、上腕圧迫用空気袋31の内部の圧力を維持したり、上腕圧迫用空気袋31の膨縮空間31cを外部に開放してカフ圧を減圧したりするためのものであり、その動作が上述した排気弁駆動回路55によって制御される。
【0053】
圧力センサ53は、静電容量型のセンサであり、上腕圧迫用空気袋31の内部の圧力に応じてその静電容量値が変化する。発振回路56は、圧力センサ53の静電容量値に応じた発振周波数の信号を生成し、生成した信号を制御部40に入力する。
【0054】
加圧ポンプ駆動回路64は、制御部40から入力された制御信号に基づいて加圧ポンプ61の動作を制御する。加圧ポンプ61は、巻き付け用空気袋37の膨縮空間37cに空気を供給することにより巻き付け用空気袋37の内部の圧力を加圧するためのものであり、その動作が上述した加圧ポンプ駆動回路64によって制御される。
【0055】
排気弁駆動回路65は、制御部40から入力された制御信号に基づいて排気弁62の開閉動作を制御する。排気弁62は、巻き付け用空気袋37の内部の圧力を維持したり、巻き付け用空気袋37の膨縮空間37cを外部に開放して内圧を減圧したりするためのものであり、その動作が上述した排気弁駆動回路65によって制御される。
【0056】
圧力センサ63は、静電容量型のセンサであり、巻き付け用空気袋37の内部の圧力に応じてその静電容量値が変化する。発振回路66は、圧力センサ63の静電容量値に応じた発振周波数の信号を生成し、生成した信号を制御部40に入力する。
【0057】
図6は、本実施の形態における血圧計におけるカフ部の装着手順を示す模式図であり、上腕挿入部の中空部に腕を挿し込む様子を示す図である。また、図7は、本実施の形態における血圧計を使用した場合の測定姿勢を示す模式図である。なお、これら図6および図7においては、被測定部位として左腕の上腕を採用した場合を示している。次に、これら図6および図7を参照して、本実施の形態における血圧計1Aを使用する場合のカフ部の装着手順および測定姿勢について説明する。
【0058】
図6に示すように、本実施の形態における血圧計1Aを使用して血圧値を測定する場合には、水平な載置面200を有するテーブル等の上に血圧計1Aの本体部10を載置し、被測定者100はたとえば椅子に着席する。そして、右手で上腕挿入部20に設けられた把手部22aを把持し、開錠ボタン22bを押下して上腕挿入部20を図中矢印A1方向に移動させ、さらに右手で上腕挿入部20の傾角を調整しつつ、左腕の前腕110を上腕挿入部20の中空部20aに挿し込む。
【0059】
被測定者100は、左腕をさらに中空部20aの奥に向かって挿し込むことにより、左腕の上腕120が中空部20a内に配置されるようにする。そして、被測定者100は、中空部20aに挿し込んだ左腕の肘を軽く曲げ、肘を本体部10の上面に設けられた肘置き12に載せることにより、図7に示す測定姿勢を採る。なお、このとき、上腕挿入部20は左腕の動きに追従して図中矢印A2方向に回動し、最終的に左腕の上腕120の傾角に応じた角度位置にて留まることになる。
【0060】
図8は、本実施の形態における血圧計の動作フローを示す図である。次に、この図8を参照して、本実施の形態における血圧計1Aの動作フローについて説明する。なお、このフローチャートに従うプログラムは、メモリ部41に予め記憶されており、制御部40がメモリ部41からこのプログラムを読み出して実行することにより、その処理が実行されるものである。
【0061】
血圧値を測定する際には、被測定者100は、上記図7に示す測定姿勢を採り、この状態において本体部10に設けられた操作部43を操作して血圧計1Aの電源をオンにする。これにより、電源部44から制御部40に対して電力が供給されて制御部40が駆動する。図8に示すように、制御部40は、その駆動後において、まず血圧計1Aの初期化を行なう(ステップS101)。
【0062】
次に、制御部40は、被測定者100の測定開始の指示を待ち、被測定者100が測定開始の指示を操作部43を操作することによって与えた場合に、排気弁62を閉塞させるとともに加圧ポンプ61を駆動して巻き付け用空気袋37の加圧を開始し(ステップS102)、巻き付け用空気袋37の内圧が所定値になるまでこれを上昇させ、所定値に達した時点で加圧ポンプ61の駆動を停止して巻き付け用空気袋37の加圧を停止する(ステップS103)。ここで、上記所定値は、巻き付け用空気袋37が十分に膨張して上腕圧迫用空気袋31が上腕120に宛がわれた状態なる圧力値に設定されていることが好ましく、当該所定値に達したか否かは、制御部40に発振回路66から入力される信号に基づいて制御部40が判断すればよい。
【0063】
次に、制御部40は、排気弁52を閉塞させるとともに加圧ポンプ51を駆動して上腕圧迫用空気袋31の加圧を開始してカフ圧を徐々に上昇させる(ステップS104)。この上腕圧迫用空気袋31を加圧する過程において、制御部40は、公知の手順で拡張期血圧値および収縮期血圧値を算出する。具体的には、制御部40は、上腕圧迫用空気袋31のカフ圧を上昇させる過程において発振回路56から得られる発振周波数に基づき脈波情報を抽出する。そして、制御部40は、抽出された脈波情報に基づいて上記血圧値を算出する。
【0064】
ステップS104において血圧値が算出されると、制御部40は、加圧ポンプ51の駆動を停止して上腕圧迫用空気袋31の加圧を停止する(ステップS105)。その後、制御部40は、測定結果としての血圧値を表示部42に表示するとともに、当該血圧値をメモリ部41に格納し(ステップS106)、つづいて、排気弁52を開放することで上腕圧迫用空気袋31内の空気を完全に排気するとともに、排気弁62を開放することで巻き付け用空気袋37内の空気を完全に排気する(ステップS107)。
【0065】
その後、制御部40は、被測定者100の電源オフの指令を待ってその動作を終了する。なお、以上において説明した測定方式は、上腕圧迫用空気袋31の加圧時にカフ圧を微速加圧してその際に脈波を検出することで血圧値を測定するいわゆる加圧測定方式に基づいたものであるが、上腕圧迫用空気袋31の減圧時にカフ圧を微速減圧してその際に脈波を検出することで血圧値を測定するいわゆる減圧測定方式を採用することも当然に可能である。
【0066】
ここで、本実施の形態における血圧計1Aにあっては、図4に示すように、カーラ34が縮径していない状態(すなわち非巻き付け状態)において、上腕圧迫用空気袋31の周方向における一方端および他方端(すなわち、上腕圧迫ユニット30の上記一方端Bおよび上記他方端C)の間に生じる隙間Dが、カフ部を含む上腕挿入部20の上部側の位置に配設されている。このように構成することにより、上腕圧迫ユニット30の可動端(すなわち、上記一方端Bおよび上記他方端C)によって上腕が巻き込まれてしまうことを効果的に抑制することが可能になる。以下において、その理由について詳説する。
【0067】
図9は、本実施の形態における血圧計の上腕挿入部のカフ部の巻き付け動作前の状態を示す概略縦断面図であり、図10は、カフ部の巻き付け動作後の状態を示す概略縦断面図である。なお、図9および図10に示す上腕120は、左腕の上腕を表わしており、図9および図10に示す断面は、当該上腕120を中枢側から抹消側に向けて見た場合の縦断面である。
【0068】
上述した図7に示す測定姿勢を被測定者100が採った場合には、多くの場合、図9に示すように、上腕120が中空部20aの下方の位置に配置されることになる。上腕120の内部には、上腕骨121および上腕大動脈122が位置しており、中空部20aに挿入された腕が左腕の上腕である場合には、上腕大動脈122は、上腕挿入部20の右側部側に位置することになる。なお、このとき、上腕120と内布29との間の距離は、上腕の鉛直下方の位置で最小となり(場合によっては、当該位置で上腕120と内布29とが接触し)、他の位置(すなわち、鉛直上方、右側方、左側方等の位置)でこれよりも大きくなる。
【0069】
この状態において、カフ部の巻き付け動作が開始され、巻き付け用空気袋37の膨縮空間37cの加圧が開始されて巻き付け用空気袋37が膨張し始めると、上腕挿入部20の上部側に位置する上腕圧迫ユニット30の上記一方端Bおよび上記他方端Cは、カーラ34の縮径動作に伴って、それぞれこれら端部同士が近付く方向(すなわち、図中に示す矢印B1方向およびC1方向)に移動を開始し、これによって上腕圧迫ユニット30が縮径を開始する。
【0070】
被測定者の上腕120が比較的太く、上腕120の周囲長が比較的長い場合には、カフ部の巻き付け動作が進行することによって、上腕圧迫ユニット30の上記一方端Bと上記他方端Cとが重なることなくこれらの間に隙間Dが生じた状態のまま、上腕120の全周囲において上腕表面に内布29が接触することになり、上腕圧迫用空気袋31が上腕120の概ね全周囲にわたって巻き付けられた状態となってカフ部の巻き付け動作が終了する。
【0071】
一方、図10に示すように、被測定者の上腕120が比較的細く、上腕120の周囲長が比較的短い場合には、カフ部の巻き付け動作が進行することによって、上腕圧迫ユニット30の上記一方端Bと上記他方端Cとが接触して上記一方端Bが上記他方端Cに乗り上げることで重なり、その後、上腕120の全周囲において上腕表面に内布29が接触することになり、上腕圧迫用空気袋31が上腕120の全周囲にわたって巻き付けられた状態となってカフ部の巻き付け動作が終了する。
【0072】
その際、上述したいずれの場合にあっても、上腕圧迫ユニット30が縮径を開始すると、間もなく上腕挿入部20の下部側の部分において上腕120が内布29に接触することになる(当初より接触している場合を除く)が、当該下部側の部分を除く他の部分(すなわち、上腕挿入部20の上部側の部分、左側部側の部分、右側部側の部分等)においては、上腕120と内布29とは直ちには接触しない。これは、上述した上腕120と内布29との間の距離が、周方向の位置において異なるためである。
【0073】
ここで、本実施の形態における血圧計1Aにあっては、上述したように、カーラ34が縮径していない状態において、上腕圧迫用空気袋31の周方向における一方端および他方端(すなわち、上腕圧迫ユニット30の上記一方端Bおよび上記他方端C)の間に生じる隙間Dが、カフ部を含む上腕挿入部20の上部側の位置に配設されているため、可動端であるこれら上腕圧迫用空気袋31の周方向における一方端および他方端の可動範囲も、カフ部を含む上腕挿入部20の上部側の位置に配置されることになり、上記カフ部の巻き付け動作の最終段階において、これら可動端が位置する部分において上腕120が内布29に接触することになる。したがって、これら可動端が上腕を巻き込む可能性が大幅に低減できることになる。
【0074】
このように、本実施の形態の如くの血圧計1Aとすることにより、巻き付け動作時における上腕の巻き込みの発生頻度が大幅に低減できるため、適正に上腕圧迫用空気袋31を上腕120に対して巻き付けることが可能になり、精度よく血圧値を測定することが可能となり、また被測定者100に苦痛を与えてしまったり、鬱血を生じさせてしまったりすることも回避できる。したがって、上記構成を採用することにより、被測定者100への負担が軽減できるとともに精度よく血圧値を測定することができる上腕式血圧計とすることができる。
【0075】
以上において説明した本実施の形態にあっては、カーラ34が縮径していない状態において、上腕圧迫用空気袋31の周方向における一方端および他方端の間に生じる隙間Dが、カフ部を含む上腕挿入部20の上部側の位置に配設されるように構成した場合を例示したが、当該隙間Dが配設される位置を他の位置に変更した場合にも、同様の効果が得られる場合がある。以下においては、上記効果が得られる具体的な上記隙間Dの配設位置について説明する。
【0076】
図11ないし図14は、種々の条件下において、上腕圧迫用空気袋の好適な配設位置を示す模式縦断面図である。図11ないし図14においては、中空部20aの軸線を符号Oにて表わしている。なお、これら図11ないし図14においては、上腕挿入部20の内部の構成を簡略化して示している。
【0077】
図11ないし図13は、上腕圧迫用空気袋31の周方向の両端が可動端として機能するように構成した場合を示している。このように、上腕圧迫用空気袋31の周方向の両端が可動端となる場合としては、たとえば上腕圧迫ユニット30を他の部材に固定していない場合や、上腕圧迫ユニット30の周方向の略中央部をカーラ34またはカーラ34を収容する布袋35等に固定する場合等が想定され、上述した本発明の実施の形態1における場合も、この場合に含まれる。なお、図11ないし図13においては、上腕圧迫ユニット30の周方向の略中央部をカーラ34に固定した場合を例示しており、その固定位置を符号Eで表わしている。
【0078】
図11に示すように、上腕圧迫用空気袋31の周方向の両端が可動端として機能するように構成した場合には、上腕圧迫ユニット30の周方向の一方端Bおよび他方端Cは、巻き付け動作時において互いに近付く方向(図中に示す矢印B1方向およびC1方向)に移動し、その後、場合によっては、上記一方端Bが上記他方端Cに乗り上げてこれらが遠ざかる方向に移動する。そのため、これら可動端の可動範囲は、巻き付け動作前において上記隙間Dが位置する部分に概ね合致することになる。
【0079】
以上を考慮すれば、このように上腕圧迫用空気袋31の周方向の両端を可動部として構成した場合には、巻き付け動作前の状態において、上記隙間Dが、カフ部を含む上腕挿入部20の中空部20aに挿入された上腕120の鉛直下方に位置する部分(図中において符号Fで示す部分)を除く部分(すなわち、図中に示す範囲R1に含まれる部分)に配設されることが必要になる。したがって、当該条件を充足するように上腕圧迫用空気袋31が配置されることにより、上述した効果を確実に得ることが可能になる。
【0080】
なお、被測定者100の上腕120の周長に大きな個人差があるため、相当程度のマージンを確保することを考慮した場合には、巻き付け動作前の状態において、上記隙間Dが、中空部20aの軸線を含む平面によってカフ部を含む上腕挿入部20を上下に二分した場合の上部側の部分(すなわち、図中に示す範囲R2に含まれる部分)に配設されていることがなお好ましい。
【0081】
また、血圧値をより精度よく測定するためには、巻き付け動作後の状態において、上腕圧迫用空気袋31の周方向の略中央部が、上腕大動脈122が位置する部分の上腕表面に配置されていることが好ましいことが知られている。この条件を充足しつつ、先に述べた条件(すなわち、上記隙間Dが、カフ部を含む上腕挿入部20の中空部20aに挿入された上腕120の鉛直下方に位置する部分を除く部分に配設される条件)を充足する場合として、図12および図13に示す態様が考えられる。
【0082】
すなわち、図12に示すように、上腕挿入部20の中空部20aに挿入される上腕120が左腕の上腕である場合には、上腕大動脈122は、上腕挿入部20の右側部寄りの位置に配置されることになるため、上記隙間Dは、カフ部を含む上腕挿入部20の左側部側の位置に配設されている(すなわち、中空部20aの軸線を含む鉛直面を基準とした場合に、上記隙間Dがこの鉛直面の左側の位置に配設されている)ことが好ましいことになる。この左側部側の位置は、上述した上記隙間Dが配設されるべき上腕挿入部の中空部20aに挿入された上腕120の鉛直下方に位置する部分を除く部分に該当するため、当該構成を採用することにより、上述した効果に加え、さらに高精度に血圧値を測定することが可能になる。
【0083】
また、図13に示すように、上腕挿入部20の中空部20aに挿入される上腕120が右腕の上腕である場合には、上腕大動脈122は、カフ部を含む上腕挿入部20の左側部寄りの位置に配置されることになるため、上記隙間Dは、上腕挿入部20の右側部側の位置に配設されている(すなわち、中空部20aの軸線を含む鉛直面を基準とした場合に、上記隙間Dがこの鉛直面の右側の位置に配設されている)ことが好ましいことになる。この右側部側の位置は、上述した上記隙間Dが配設されるべき上腕挿入部の中空部20aに挿入された上腕120の鉛直下方に位置する部分を除く部分に該当するため、当該構成を採用することにより、上述した効果に加え、さらに高精度に血圧値を測定することが可能になる。
【0084】
一方、図14は、上腕圧迫用空気袋31の周方向の一方端が可動端として機能するように構成した場合を示している。このように、上腕圧迫用空気袋31の周方向の一方端が可動端となる場合としては、たとえば上腕圧迫ユニット30の周方向の他方端をカーラ34またはカーラ34を収容する布袋35等に固定する場合等が想定される。なお、図14においては、この場合を例示しており、その固定位置を符号Eで表わしている。
【0085】
図14に示すように、上腕圧迫用空気袋31の周方向の一方端が可動端として機能するように構成した場合には、上腕圧迫ユニット30の周方向の一方端Bは、巻き付け動作時において上腕圧迫ユニット30の周方向の他方端Cに近付く方向(図中に示す矢印B1方向)に移動し、その後、場合によっては、上記一方端Bが上記他方端Cに乗り上げて上記他方端Cから遠ざかる方向に移動する。そのため、当該可動端の可動範囲は、巻き付け動作前において上記隙間Dが位置する部分に概ね合致することになる。
【0086】
以上を考慮すれば、このように上腕圧迫用空気袋31の周方向の一方端を可動部として構成した場合には、巻き付け動作前の状態において、上記隙間Dが、カフ部を含む上腕挿入部20の中空部20aに挿入された上腕120の鉛直下方に位置する部分(図中において符号Fで示す部分)を除く部分(すなわち、図中に示す範囲R1に含まれる部分)に配設されることが必要になる。したがって、当該条件を充足するように上腕圧迫用空気袋31が配置されることにより、上述した効果を確実に得ることが可能になる。
【0087】
なお、被測定者100の上腕120の周長に大きな個人差があるため、相当程度のマージンを確保することを考慮した場合には、巻き付け動作前の状態において、上記隙間Dが、中空部20aの軸線を含む平面によってカフ部を含む上腕挿入部20を上下に二分した場合の上部側の部分(すなわち、図中に示す範囲R2に含まれる部分)に配設されていることがなお好ましい。
【0088】
以上から理解されるように、上腕圧迫用空気袋31の周方向の両端を可動部として構成した場合および上腕圧迫用空気袋31の周方向の一方端を可動部として構成した場合のいずれの場合にも、巻き付け動作前の状態において、上記隙間Dが、カフ部を含む上腕挿入部20の中空部20aに挿入された上腕120の鉛直下方に位置する部分を除く部分に配設されていれば、上述した効果が奏されることになる。
【0089】
図15は、上述した本発明の実施の形態1に基づいた変形例に係る血圧計の拡縮機構およびこれを駆動する駆動機構の構成を示す概略縦断面図である。次に、この図15を参照して、本発明の実施の形態1に基づいた変形例に係る血圧計1Bについて説明する。
【0090】
上述した本発明の実施の形態1における血圧計1Aにあっては、可撓性部材であるカーラ34を径方向に拡縮させる拡縮機構として、カーラ34の外側に配置された巻き付け用空気袋37を利用することとしていた。しかしながら、図15に示すように、本変形例に係る血圧計1Bにあっては、上記に代えて、カーラ34の外側に配置されたベルト67によって拡縮機構が構成されている。
【0091】
ベルト67は、カーラ34の外周面に接触するようにカーラ34に巻き付けられており、その一端が回転ドラム68に固定されており、その他端が上腕挿入部20に設けられた支持ピン70に固定されている。支持ピン70は、ベルト67の上記他端を移動不能に固定するためのものである。回転ドラム68は、回転自在に軸支されており、タイミングベルトを介して電動モータ69の駆動軸に接続されている。電動モータ69は、上述した制御部40によってその駆動が制御され、駆動軸が順方向または逆方向に回転することでタイミングベルトを駆動し、これにより回転ドラム68を回転させてベルト67の巻き取りまたは送り出しを行なう。
【0092】
このような拡縮機構およびこれを駆動する駆動機構を備えた血圧計1Bとした場合にも、巻き付け動作前の状態において、上記隙間Dが、カフ部を含む上腕挿入部20の中空部20aに挿入された上腕120の鉛直下方に位置する部分を除く部分に配設されていれば、上述した本発明の実施の形態1における血圧計1Aとした場合と同様の効果を得ることができる。
【0093】
(実施の形態2)
図16は、本発明の実施の形態2における血圧計の概略斜視図である。また、図17は、本実施の形態における血圧計の上腕挿入部を含む部分の概略縦断面図である。以下においては、これら図16および図17を参照して、本実施の形態における血圧計1Cについて説明する。
【0094】
本実施の形態における血圧計1Cは、装置本体2が、左腕の上腕を上腕挿入部20の中空部20aに挿入する場合に好適な第1の状態(図12に示したように、上腕圧迫用空気袋31の隙間Dが、カフ部を含む上腕挿入部20の左側部側に配設された状態)と、右腕の上腕を上腕挿入部20の中空部20aに挿入する場合に好適な第2の状態(図13に示したように、上腕圧迫用空気袋31の隙間Dが、カフ部を含む上腕挿入部20の右側部側に配設された状態)とに切り替え可能に構成されたものである。
【0095】
図16に示すように、本実施の形態における血圧計1Cの装置本体2は、被載置面11を含む本体部10および中空部20aを含む上腕挿入部20に加え、上腕挿入部20が内部に収容されたケース体23をさらに備えている。ケース体23は、略円筒状の形状を有しており、好ましくは硬質な部材にて構成されている。上腕挿入部20は、中空部20aの軸線を回転中心としてケース体23の内部において回転可能となるようにケース体23によって支持されている。
【0096】
また、本実施の形態における血圧計1Cにあっては、ケース体23がたとえばヒンジ等からなる回動連結機構を介して本体部10に回動可能に連結されている。これにより、ケース体23の内部に収容された上腕挿入部20は、当該ケース体23と共に本体部10に対して相対的に回動するように構成されることになる。なお、本実施の形態における血圧計1Cにあっては、把手部22aおよび開錠ボタン22bがいずれもケース体23の外周面の所定位置に設けられている。
【0097】
血圧計1Cの本体部10の前面であってかつ上腕挿入部20よりも右側寄りの位置には、検知部としての非接触式センサ45が設けられている。非接触式センサ45は、たとえば光電センサ等からなり、本体部10の当該非接触式センサ45が設けられ部分の前方の位置であってかつ当該部分から所定の距離範囲内に被測定者の体幹があるか否かを検出するためのものである。当該非接触式センサ45で検知された情報は、上述した制御部40に入力される。
【0098】
図17に示すように、上腕挿入部20のシェル21の外周面には、凹凸状の歯が形成されており、当該シェル21に設けられた歯に歯合するように、その内周面に歯が形成された歯付ベルト24がシェル21に巻回されている。ここで、シェル21の外周面とケース体23の内周面との間には、所定の大きさの隙間が設けられており、当該隙間に歯付ベルト24が挿通されている。
【0099】
歯付ベルト24は、その一部がケース体23の外部に引き出されており、当該引き出された部分の歯付ベルト24に歯合するように歯付プーリ25が配設されている。この歯付プーリ25は、回転自在に軸支されており、タイミングベルトを介して電動モータ26の駆動軸に接続されている。電動モータ26は、上述した制御部40によってその駆動が制御され、駆動軸が順方向または逆方向に回転することでタイミングベルトを駆動し、これにより歯付プーリ25を回転させて歯付ベルト24を順方向または逆方向に送る。なお、これら歯付ベルト24、歯付プーリ25および電動モータ26が、上腕挿入部20を回転駆動する駆動部に相当する。
【0100】
ここで、本実施の形態における血圧計1Cにあっては、切替制御部としての制御部40が、血圧値の測定に際して、まず非接触式センサ45から入力された信号に基づいて、中空部20aに挿入された上腕が左腕の上腕であるか右腕の上腕であるかを判断する。より詳細には、非接触式センサ45が上腕挿入部20よりも装置本体の右側寄りの位置に設けられているため、制御部40は、非接触式センサ45にて体幹が検出された場合に左腕の上腕が中空部20aに挿入されたと判断することができ、非接触式センサ45にて体幹を検出しなかった場合に右腕の上腕が中空部20aに挿入されたと判断することができる。
【0101】
次に、制御部40は、左腕の上腕が中空部20aに挿入されたと判断した場合に、上述した電動モータ26を駆動することで上腕圧迫用空気袋31を含む上腕挿入部20を図中に示す矢印G1方向に回転させて図12に示した第1の状態に移行させ、右腕の上腕が中空部20aに挿入されたと判断した場合に、上述した電動モータ26を駆動することで上腕圧迫用空気袋31を含む上腕挿入部20を図中に示す矢印G2方向に回転させて図13に示した第2の状態に移行させる。なお、電動モータ26の駆動前における上腕挿入部20の初期位置としては、図17に示す如く、上腕圧迫用空気袋31の隙間Dがケース体23の上部側の位置に配設された位置としておくことが好ましい。
【0102】
その後、制御部40は、上述した本発明の実施の形態1の場合と同様に、カフ部の巻き付け動作を開始することで、図8に示した一連の動作フローを実行する。なお、上述の如くの初期位置に設定した場合には、一連の動作を実行した後に、上腕挿入部20を初期位置に復帰させる処理を行なうことが好ましい。
【0103】
以上において説明した本実施の形態における血圧計1Cとすることにより、上述した本発明の実施の形態1において説明した効果に加え、左腕の上腕を被測定部位とした場合および右腕の上腕を被測定部位とした場合のいずれにおいても高精度に血圧値が測定可能な両腕対応の上腕式血圧計とすることができるという効果を得ることができる。なお、左腕の上腕を被測定部位とした場合および右腕の上腕を被測定部位とした場合のいずれにおいても同等の条件の下で血圧値測定を可能にするためには、上述した第1の状態(図12参照)における上腕圧迫用空気袋31の隙間Dの位置と、上述した第2の状態(図13参照)における上腕圧迫用空気袋31の隙間Dの位置とが、中空部20aの軸線を含め鉛直面を基準とした場合に対称の位置関係となるように、カフ部を含む上腕挿入部20の回転範囲を設定しておけばよい。
【0104】
図18は、本発明の実施の形態2に基づいた変形例に係る血圧計の概略斜視図である。次に、この図18を参照して、本発明の実施の形態2に基づいた変形例に係る血圧計1Dについて説明する。
【0105】
上述した本発明の実施の形態2においては、非接触式センサ45を本体部10に設けることで中空部20aに挿入された上腕が左腕の上腕であるか右腕の上腕であるかを判断し、これに基づいて自動的に、左腕の上腕に適合した第1の状態および右腕の上腕に適合した第2の状態のいずれかに装置本体2が切り替わるように構成した場合を例示した。これに対し、本変形例に係る血圧計1Dにあっては、図18に示すように、当該非接触式センサ45を廃止し、代わりに、中空部20aに左腕の上腕を挿入したか右腕の上腕を挿入したかを被測定者が操作することで入力可能な入力操作部43aを本体部10に設けた構成としている。
【0106】
このように構成することにより、制御部40は、入力操作部43aを被測定者が操作することによって入力された情報に基づいて中空部20aに左腕の上腕が挿入されたか右腕の上腕が挿入されたかを判断することが可能になり、左腕の上腕に適合した第1の状態および右腕の上腕に適合した第2の状態のいずれかに装置本体2を切り替えることが可能になる。したがって、上記構成とした場合にも、上述した本発明の実施の形態2における血圧計1Cとした場合と同様の効果を得ることができる。
【0107】
(実施の形態3)
図19は、本発明の実施の形態3における血圧計の概略斜視図である。また、図20は、本実施の形態における血圧計の上腕挿入部を含む部分の概略縦断面図である。以下においては、これら図19および図20を参照して、本実施の形態における血圧計1Eについて説明する。
【0108】
本実施の形態における血圧計1Eは、上述した本発明の実施の形態2における血圧計1Cと同様に、装置本体2が、左腕の上腕を上腕挿入部20の中空部20aに挿入する場合に好適な第1の状態(図12に示したように、上腕圧迫用空気袋31の隙間Dが、カフ部を含む上腕挿入部20の左側部側に配設された状態)と、右腕の上腕を上腕挿入部20の中空部20aに挿入する場合に好適な第2の状態(図13に示したように、上腕圧迫用空気袋31の隙間Dが、カフ部を含む上腕挿入部20の右側部側に配設された状態)とに切り替え可能に構成されたものであるが、当該切り替えを被測定者自らが操作することで実現できるように構成されている点において、上述した本発明の実施の形態2における血圧計1Cと相違している。
【0109】
図19に示すように、本実施の形態における血圧計1Eの装置本体2は、被載置面11を含む本体部10と、中空部20aを含む上腕挿入部20と、当該上腕挿入部20が内部に収容されたケース体23とを備えており、把手部22aが上腕挿入部20の外周面を規定するシェル21に設けられている。ケース体23には、周方向に沿って延びるようにガイドスリット28が設けられており、把手部22aは、当該ガイドスリット28を介してケース体23の外部に引き出されている。
【0110】
図20に示すように、上腕挿入部20のシェル21の外周面とケース体23の内周面との間には、所定の大きさの隙間が設けられており、当該隙間に周方向に沿ってベアリング27が配置されている。これにより、上腕挿入部20は、中空部20aの軸線を回転中心としてケース体23の内部において回転可能となるようにケース体23によって支持されている。
【0111】
上記構成を採用することにより、本実施の形態における血圧計1Eにあっては、被測定者が把手部22aを把持してこれをガイドスリット28に沿って左右方向(図19中に示す矢印H方向)に回転移動させることにより、ケース体23の内部において上腕挿入部20が回転することになる。すなわち、把手部22aが、上腕挿入部20を手動操作することで回転されるための回転操作部として機能することになり、被測定者自らがこれを操作することで左腕の上腕に適合した第1の状態および右腕の上腕に適合した第2の状態のいずれかに装置本体2を切り替えることが可能に構成されている。
【0112】
より具体的には、中空部20aに左腕の上腕を挿入する場合には、予め被測定者が把手部22aを把持してこれを図20中に示す矢印H1方向に移動させることにより、上腕挿入部20が回転して図12に示した第1の状態に移行することになり、中空部20aに右腕の上腕を挿入する場合には、予め被測定者が把手部22aを把持してこれを図20中に示す矢印H2方向に移動させることにより、上腕挿入部20が回転して図13に示した第2の状態に移行することになる。
【0113】
以上において説明した本実施の形態における血圧計1Eとすることにより、上述した本発明の実施の形態2において説明した効果と同様の効果を得ることができる。なお、左腕の上腕を被測定部位とした場合および右腕の上腕を被測定部位とした場合のいずれにおいても同等の条件の下で血圧値測定を可能にするためには、上述した第1の状態(図12参照)における上腕圧迫用空気袋31の隙間Dの位置と、上述した第2の状態(図13参照)における上腕圧迫用空気袋31の隙間Dの位置とが、中空部20aの軸線を含め鉛直面を基準とした場合に対称の位置関係となるように、カフ部を含む上腕挿入部20の回転範囲をガイドスリット28の周方向長さを調節すること等で設定しておけばよい。また、これら第1の状態および第2の状態のいずれかに移行することで本体部10に対する上腕挿入部20のロックが解除されるように構成すれば、上腕挿入部20の回転操作のし忘れを未然に防止することも可能になる。
【0114】
上述した本発明の実施の形態1ないし3およびその変形例においては、被載置面を含む本体部と中空部を含む上腕挿入部とが回動可能に連結された構成の装置本体を備えてなる血圧計に本発明を適用した場合を例示して説明を行なったが、必ずしもこれら本体部と上腕挿入部とに装置本体が分離されている必要はなく、被載置面および中空部を含む単一の筐体からなる装置本体を備えてなる血圧計に本発明を適用することも当然に可能である。また、本体部と上腕挿入部とが連結されずに分離された構成の血圧計に本発明を適用することも可能である。その場合には、本体部に内蔵されたエア系コンポーネントと上腕挿入部に内蔵された空気袋とを可撓性のエア管を介して接続すればよい。
【0115】
また、上述した本発明の実施の形態1ないし3およびその変形例においては、上腕圧迫用空気袋とカーラとがその一部においてのみ固定されたものを例示して説明を行なったが、これら上腕圧迫用空気袋とカーラとが、完全に一体化されたものにも本発明の適用は可能である。
【0116】
また、上述した本発明の実施の形態1ないし3およびその変形例において示した特徴的な構成は、必要に応じて相互に組み合わせることが当然に可能である。
【0117】
さらには、上述した本発明の実施の形態1ないし3およびその変形例においては、血圧情報測定装置として収縮期血圧値、拡張期血圧値等の血圧値が測定可能な上腕式血圧計に本発明を適用した場合を例示したが、本発明は、この他にも、手首や手指、足首、足先等、身体の四肢のいずれかの部分を被測定部位として採用するものであれば、どのような血圧計にもその適用が可能である。また、本発明の適用対象は、収縮期血圧値および拡張期血圧値等の血圧値を測定する血圧計に限られるものではない。すなわち、本発明は、他の血圧情報である脈波や脈拍、AI(Augmentation Index)値に代表される動脈硬化度を示す指標、平均血圧値、酸素飽和度等を測定可能にする血圧情報測定装置にもその適用が可能である。
【0118】
このように、今回開示した上記各実施の形態およびその変形例はすべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0119】
1A〜1E 血圧計、2 装置本体、10 本体部、11 被載置面、12 肘置き、20 上腕挿入部、20a 中空部、21 シェル、22a 把手部、22b 開錠ボタン、23 ケース体、24 歯付ベルト、25 歯付プーリ、26 電動モータ、27 ベアリング、28 ガイドスリット、29 内布、30 上腕圧迫ユニット、31 上腕圧迫用空気袋、31a 内側シート部材、31b 外側シート部材、31c 膨縮空間、32 樹脂プレート、33 布地、34 カーラ、35 布袋、36 布地、37 巻き付け用空気袋、37a 内側シート部材、37b 外側シート部材、37c 膨縮空間、40 制御部、41 メモリ部、42 表示部、43a 入力操作部、43 操作部、44 電源部、45 非接触式センサ、50 上腕圧迫用エア系コンポーネント、51 加圧ポンプ、52 排気弁、53 圧力センサ、54 加圧ポンプ駆動回路、55 排気弁駆動回路、56 発振回路、60 巻き付け用エア系コンポーネント、61 加圧ポンプ、62 排気弁、63 圧力センサ、64 加圧ポンプ駆動回路、65 排気弁駆動回路、66 発振回路、67 ベルト、68 回転ドラム、69 電動モータ、70 支持ピン、100 被測定者、110 前腕、120 上腕、121 上腕骨、122 上腕大動脈、200 載置面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
径方向に拡縮可能な略円筒状の可撓性部材と、
帯状の形態を有し、前記可撓性部材の内周面に沿って湾曲した状態で配置された生体圧迫用流体袋と、
前記可撓性部材を前記径方向に拡縮させる拡縮機構とを含むカフ部を備えた血圧情報測定装置であって、
前記生体圧迫用流体袋は、前記可撓性部材が縮径するに際して、周方向における一方端および他方端のうちの少なくとも一方が可動端として移動することで縮径するように構成され、
前記可動端の可動範囲が、前記カフ部に挿入された被測定部位の鉛直下方に位置する部分を除く部分に配置されている、血圧情報測定装置。
【請求項2】
前記可撓性部材が縮径していない状態において、前記生体圧迫用流体袋の前記一方端および前記他方端の間に生じる隙間が、前記カフ部に挿入された被測定部位の鉛直下方に位置する部分を除く部分に配設されている、請求項1に記載の血圧情報測定装置。
【請求項3】
前記隙間が、前記カフ部の軸線を含む平面によって前記カフ部を上下に二分した場合の上部側の部分に配設されている、請求項2に記載の血圧情報測定装置。
【請求項4】
前記カフ部が、当該カフ部の軸線を含む鉛直面を基準とした場合に、前記隙間が前記鉛直面の一方の側方に配置される第1の状態と、前記隙間が前記鉛直面の他方の側方に配置される第2の状態とを採り得るように切り替え可能に構成されている、請求項2に記載の血圧情報測定装置。
【請求項5】
前記カフ部の軸線を回転中心として前記カフ部が回転可能に構成されることにより、前記カフ部が前記第1の状態と前記第2の状態とを採り得るように切り替え可能に構成されている、請求項4に記載の血圧情報測定装置。
【請求項6】
前記カフ部を回転駆動する駆動部と、
前記カフ部に左腕が挿入されたか右腕が挿入されたかを検知するための検知部と、
前記検知部の検知結果に基づいて前記駆動部を駆動することで前記第1の状態および前記第2の状態の切り替えを行なう切替制御部とをさらに備えた、請求項5に記載の血圧情報測定装置。
【請求項7】
前記カフ部を回転駆動する駆動部と、
前記カフ部に左腕を挿入したか右腕を挿入したかを操作することで入力が可能な入力操作部と、
前記入力操作部への入力結果に基づいて前記駆動部を駆動することで前記第1の状態および前記第2の状態の切り替えを行なう切替制御部とをさらに備えた、請求項5に記載の血圧情報測定装置。
【請求項8】
前記カフ部を手動操作で回転させるための回転操作部をさらに備えた、請求項5に記載の血圧情報測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−249841(P2012−249841A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125138(P2011−125138)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(503246015)オムロンヘルスケア株式会社 (584)
【Fターム(参考)】