説明

血小板由来増殖因子タンパク質の分析および分離

【課題】PDGFの構造的イソ型の生物学的活性を比較し得るような、組換え的に産生されるPDGFの構造的イソ型を分離および定量する方法であって、純粋なイソ型からなるバルク薬物物質を調製するのに有用であるものの提供。
【解決手段】PDGF活性を有する組成物であって、該組成物は、細胞培養物由来の組換えPDGF(rPDGF)タンパク質またはその改変体の少なくとも1つの分離されたイソ型を含み、該イソ型は、インタクトなイソ型または一重クリッピングされたイソ型であり、ここで、該活性は、未精製細胞培養物のPDGF活性より少なくとも20%大きい、組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、タンパク質の分析および分離の分野に関し、特に構造的不均一性を有する異種タンパク質の精製イソ型の調製物に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
血小板由来増殖因子(PDGF)は、間葉に由来する細胞についての血清中の主なマイトジェンであり、血小板α顆粒中に蓄積されている。血管に対する傷害により、損傷した血管の近傍でのこれらの顆粒からのPDGF放出が活性化される。このマイトジェンは、線維芽細胞および平滑筋細胞、ならびに単球および好中球の強力な誘因物質として作用する。局在するPDGFのマイトジェン活性は、傷害部位でこれらの細胞の増殖を生じ、創傷修復のプロセスに寄与する。
【0003】
精製された天然の血小板由来増殖因子(PDGF)は、約30,000ダルトンの糖タンパク質であり、2つのジスルフィド結合されたポリペプチド鎖からなる。これらの鎖の2つの形態(AおよびBと称される)が、同定されている。この天然のタンパク質は、AAもしくはBBのホモダイマーまたはABのヘテロダイマー、ならびにその混合物として存在する。PDGF-A鎖に関しては、部分的なアミノ酸配列が同定されており(Johnssonら(1984) EMBO J. 3:921〜928)、そしてPDGF A鎖前駆体の2つの形態をコードするcDNAが記載されている(米国特許第5,219,759号)。成熟A鎖は、211個のアミノ酸の前駆体ポリペプチドのタンパク質分解性プロセシングにより誘導される、104個のアミノ酸のポリペプチドからなる。PDGF-B鎖をコードするcDNAもまた、記載されている(Nature(1985) 316:748〜750)。成熟B鎖は、241個のアミノ酸の前駆体ポリペプチドのタンパク質分解性プロセシングにより誘導される、109個のアミノ酸のポリペプチドからなる。PDGFの成熟A鎖およびB鎖は、51%の配列同一性を示し、各鎖で保存された8つのシステイン残基を有する(Johnssonら(1984)EMBO J. 3:921〜928)。
【0004】
前駆体ポリペプチドの成熟PDGF-A鎖およびPDGF-B鎖へのタンパク質分解性プロセシングに加えて、酵母宿主で産生される組換えPDGF(rPDGF)は、かなりの構造的不均一性を有する分泌型成熟タンパク質を生じるさらなる翻訳後プロセシングを受ける。これは、ヘテロダイマーであるrPDGF-ABに関して、より詳細にはホモダイマーであるrPDGF-BBに関して事実である。
【0005】
酵母宿主でバルク薬物物質を産生するために発現させる場合、PDGFは、Arg-32残基とThr-33残基との間で、B鎖のエンド型タンパク質分解性(endoproteolytic)切断、いわゆる、クリッピングを受け、クリッピングされていない、いわゆるインタクトなrPDGFと、B鎖のArg-32残基とThr-33残基との間で切断されているクリッピングされたrPDGFの混合物を有するバルク薬物物質を生じる。rPDGF-BBの場合、一方または両方のB鎖がクリッピングされ得、それぞれ、一重クリッピングされたrPDGF-BBまたは二重クリッピングされたrPDGF-BBを生じる。本発明について、目的の他の翻訳後修飾は、C末端アミノ酸のエキソ型タンパク質分解性(exoproteolytic)除去、いわゆるトランケーションを含む。これは、クリッピングされたB鎖からArg-32を、ならびに/またはインタクトなB鎖およびクリッピングされたB鎖からThr-109を除去し得る。これらの翻訳後修飾は、分泌型産物に存在するrPDGF-BBの多くの構造的形態、いわゆるイソ型を導く。本発明の方法は、rPDGF、より詳細にはrPDGF-BBのインタクトなイソ型、一重クリッピングされたイソ型、および二重クリッピングされたイソ型の分離および精製に関する。
【0006】
PDGFの3つのダイマー形態は、2つの公知のPDGFレセプター遺伝子産物、αおよびβに関して、異なる結合親和性を示す。βレセプターは、PDGF B鎖を認識し、そしてPDGF-BBの存在下でダイマー化される。αレセプターは、PDGF B鎖およびPDGF A鎖を認識し、そしてPDGF-BB、PDGF-AA、およびPDGF-ABによりダイマー化され得る(例えば、Abboudら(1994) J. Cell. Phys. 158:140〜150を参照のこと)。レセプターの結合または活性化に関与するPDGF-BBのアミノ酸残基領域は、残基Ile25〜残基Phe37に限定されている(Gieseら(1990) Mol. Cell. Biol. 10:5496〜5501)。これらの残基は、酵母宿主によるPDGF-BBの産生の間のエンド型タンパク質分解性プロセシングにより切断されるArg-32/Thr-33部位を含む。
【0007】
改善された生物学的活性を示す組換えPDGF-BBのプロテイナーゼ耐性変異体が同定されている(Cookら(1992) Biochem. J. 281:57〜65;欧州特許出願第0 547 064 B1もまた参照のこと)。これらの変異体は、Arg-32でのB鎖のエンド型タンパク質分解性切断を妨げる。従って、この領域でのエンド型タンパク質分解性切断の排除により、発酵プロセス中の酵母宿主で産生されるPDGF-BBの生物学的活性の増加を明らかに導く。この生物学的活性の増加は、おそらく、組換えPDGF-BB産物中のクリッピングされていない、いわゆるインタクトなPDGF-BBの相対量の増加およびクリッピングされたPDGF-BBの相対的量の減少に関連する。同様に、rPDGF-BBタンパク質内部のB鎖のいずれかまたは両方におけるこの領域のエンド型タンパク質分解性切断は、インタクトなrPDGF-BB単独からなるバルク薬物物質で見出される生物学的活性とは異なる生物学的活性を有するバルク薬物物質を生じることが期待される。
【0008】
本発明の前に、組換え的に産生されたPDGFを精製するために当該分野で一般的に用いられていた方法では、翻訳後プロセシング(PDGF-B鎖のArg-32とThr-33との間のエンド型タンパク質分解性切断を含む)から生じるPDGFの種々のイソ型は区別されていなかった。先行技術により、翻訳後のエンド型タンパク質分解性切断から生じる構造的イソ型は、種々の程度の生物学的活性を有し得ることが教示され、それゆえ、発酵により産生されるバルク薬物物質の生物学的活性全体に影響を与え得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
PDGFの構造的イソ型の生物学的活性を比較し得るような、組換え的に産生されるPDGFの構造的イソ型を分離および定量する方法が必要である。これらの方法は、純粋なイソ型からなるバルク薬物物質を調製するのに有用である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によって以下が提供される:
(1)PDGF活性を有する組成物であって、該組成物は、細胞培養物由来の組換えPDGF(rPDGF)タンパク質またはその改変体の少なくとも1つの分離されたイソ型を含み、該イソ型は、インタクトなイソ型または一重クリッピングされたイソ型であり、ここで、該活性は、未精製細胞培養物のPDGF活性より少なくとも20%大きい、組成物。
(2)前記rPDGFタンパク質が、rPDGF-ABまたはrPDGF-BBからなる群から選択される、項目1に記載の組成物。
(3)前記rPDGFタンパク質がヒトタンパク質(rhPDGF)である、項目2に記載の組成物。
(4)前記活性が少なくとも50%大きい、項目1に記載の組成物。
(5)前記rhPDGFが酵母宿主細胞で産生される、項目4に記載の組成物。
(6)前記タンパク質のイソ型の混合物を含む細胞培養物からPDGF活性を有するrPDGFタンパク質の分離されたイソ型を調製する方法であって、該方法が、該細胞培養物をTSKスルホプロピル陽イオン交換クロマトグラフィーカラムにロードする工程、該細胞培養物を、該カラムから線形勾配の緩衝液を用いて洗浄する工程、および該イソ型を含む溶出画分を回収する工程を包含する、方法。
(7)前記イソ型が、インタクトなイソ型または一重クリッピングされたイソ型である、項目6に記載の方法。
(8)前記タンパク質が、rPDGF-ABまたはrPDGF-BBから選択されるrPDGFである、項目7に記載の方法。
(9)前記rPDGFタンパク質がrhPDGFである、項目7に記載の方法。
(10)前記rhPDGFが、酵母宿主細胞で産生される、項目9に記載の方法。
(11)イソ型の混合物を含む細胞培養物からPDGF活性を有するrPDGFタンパク質のインタクトなイソ型および一重クリッピングされたイソ型の混合物を調製する方法であって、該方法が、該細胞培養物をTSKスルホプロピル陽イオン交換クロマトグラフィーカラムにロードする工程、該細胞培養物を、該カラムから線形勾配の緩衝液を用いて洗浄する工程、二重クリッピングされたイソ型を含む溶出画分を捨てる工程、およびインタクトなイソ型および一重クリッピングされたイソ型を含む溶出画分を回収する工程を包含する、方法。
(12)前記タンパク質が、rPDGF-ABまたはrPDGF-BBから選択されるrPDGFである、項目11に記載の方法。
(13)前記rPDGFタンパク質がrhPDGFである、項目12に記載の方法。
(14)前記rhPDGFが酵母宿主細胞で産生される、項目13に記載の方法。
(15)PDGF活性を有する薬学的組成物であって、該組成物が、rPDGFタンパク質またはその改変体の少なくとも1つの分離されたイソ型を含み、ここで、該イソ型は、インタクトなイソ型または一重クリッピングされたイソ型であり、該薬学的組成物は、薬学的に受容可能なキャリアをさらに含む、薬学的組成物。
(16)前記タンパク質が、rhPDGF-ABまたはrhPDGF-BBから選択されるrhPDGFである、項目15に記載の薬学的組成物。
(17)前記rhPDGFが、酵母宿主細胞で産生される、項目16に記載の薬学的組成物。
(18)PDGF活性を有する治療有効量の薬学的組成物を投与する工程を包含する、創傷を処置するための方法であって、該組成物が、PDGFタンパク質またはその改変体の少なくとも1つの分離されたイソ型を含み、ここで、該イソ型が、インタクトなイソ型または一重クリッピングされたイソ型であり、該薬学的組成物が、薬学的に受容可能なキャリアをさらに含む、方法。
(19)前記創傷が、裂傷、熱傷、潰瘍、外科的創傷、骨傷害、上皮性創傷、および内皮性創傷からなる群より選択される、項目18に記載の方法。
(20)前記タンパク質が、rhPDGF-ABおよびrhPDGF-BBから選択されるrhPDGFである、項目19に記載の方法。
(21)前記rhPDGFが酵母宿主で産生される、項目20に記載の方法。
【0011】
発明の要旨
構造的不均一性を有する血小板由来増殖因子(PDGF)タンパク質の改善されている精製方法および定量方法が提供される。これらのタンパク質の実質的に純粋なイソ型の調製物は、TSKスルホプロピル陽イオン交換クロマトグラフィーおよび逆相高速液体クロマトグラフィーを用いて達成される。これらの方法は、分泌型組換えPDGF(rPDGF)、より詳細には、rPDGF-BBの翻訳後のエンド型タンパク質分解性プロセシングから生じるイソ型を分離するために特に有用である。本発明の逆荷電性キャピラリーゾーン電気泳動法(reverse charge capillary zone electrophoresis)は、エンド型タンパク質分解性翻訳後修飾物を定量するのに有用である。
【0012】
本発明の組成物は、構造的不均一性を有する分泌型PDGFタンパク質の実質的に精製されたイソ型、より詳細には、PDGF-BBの精製されたインタクトなイソ型、一重クリッピングされたイソ型、および二重クリッピングされたイソ型である。これらの実質的に精製されたPDGFイソ型の少なくとも1つを含む薬学的組成物および創傷治癒を促進させる際のそれらの使用方法もまた、提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
発明の詳細な記載
本発明は、創傷の処置における治療用薬剤として有用であるPDGF活性を有する組成物に関する。より詳細には、これらの組成物は、少なくとも1つの生物学的に活性な、実質的に精製された組換えPDGF(rPDGF)タンパク質のイソ型を含む。「組換え」とは、タンパク質が、目的の外因性PDGFタンパク質をコードするヌクレオチド配列で安定に形質転換された宿主生物体の細胞中で、異種タンパク質または外因性タンパク質として産生されることを意図する。
【0014】
本発明の方法は、rPDGFのイソ型の混合物を含むバルク薬物物質からの生物学的に活性なrPDGFのイソ型の分離を提供する。この方法は、特に、分泌型rPDGF、より詳細には、rPDGF-BBの翻訳後エンド型タンパク質分解性プロセシングから生じるイソ型を分離するのに有用である。一旦分離されると、イソ型は、実質的に精製され得、そして創傷の処置に使用するために薬学的組成物中に組み込まれ得る。
【0015】
rPDGFタンパク質のイソ型は、生物学的な状況において正常にPDGFに属する1つ以上の生物学的機能または1セットの活性を実施する能力を有する場合、「生物学的に活性」である。これらの生物学的活性は、特異的な細胞表面レセプターへのPDGFの結合に続く、応答性細胞型の走化性および/または有糸分裂誘発の誘導を含む。PDGFの他の生物学的活性は、ホスホリパーゼ活性化、ホスファチジルイノシトール(phosphotidylinositol)代謝回転およびプロスタグランジン代謝の増加、応答性細胞によるコラーゲン合成およびコラゲナーゼ合成の両方の刺激、PDGFレセプターを欠失している細胞の間接的な増殖性応答、ならびに強力な血管収縮薬活性を含み得るが、これらに限定されない。生物学的活性は、PDGFに関して当該分野で利用可能な任意の数のアッセイを用いて決定され得、このアッセイは、本明細書中に記載のマイトジェンアッセイを含むが、これに限定されない。
【0016】
「実質的に精製されたイソ型」とは、rPDGFを含む組成物の少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%が、目的のイソ型であることを意図する。タンパク質の実質的に精製されたイソ型を、rPDGFのイソ型の混合物を含む細胞培養物から、目的のイソ型の分離を提供する本発明の方法を用いることにより得る。「目的のイソ型の分離」とは、残存するイソ型が実質的に精製されるように、細胞培養物にて任意の所望されないイソ型または他の成分を除去することを意図する。
【0017】
イソ型が本発明の方法を用いて分離されるrPDGFタンパク質は、生物学的に活性なダイマー形態、より詳細には、rPDGF-AAおよびrPDGF-BBのホモダイマーまたはrPDGF-ABのヘテロダイマー、ならびに任意の実質的に相同で、機能的に等価なその改変体である。「改変体」とは、天然タンパク質のN末端もしくはC末端に対する1つ以上のアミノ酸の欠失または付加;天然タンパク質中の1つ以上の部位での1つ以上のアミノ酸の欠失または付加;あるいは天然タンパク質中の1つ以上の部位での1つ以上のアミノ酸の置換による、天然タンパク質に由来するタンパク質を意図する。全体的な荷電、疎水性/親水性、および/または置換されたアミノ酸の立体的大きさを保存する保存的置換が好ましくあり得る。このような置換は、例えば、以下の群のメンバーの間でなされ得る:Gly⇔Ala、Val⇔Ile⇔Leu、Asp⇔Glu、Lys⇔Arg、Asn⇔Gln、およびPhe⇔Trp⇔Tyr。他の置換が行われて本質的でないアミノ酸残基を除去し得るが、グリコシル化部位、リン酸化部位、アセチル化部位を変更し得るか、または機能に関しては必要ではないシステイン残基の位置を変更することにより折り畳みパターンを変更し得る。このような操作方法は、一般的に当該分野で公知である。
【0018】
例えば、目的のPDGFタンパク質のアミノ酸配列改変体は、天然のPDGFタンパク質をコードするDNA配列の変異により調製され得る。変異誘発およびヌクレオチド配列改変のための方法は、当該分野で周知である。例えば、Kunkel(1985)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:488〜492;Kunkelら(1987) Methods Enzymol. 154:367〜382;米国特許第4,873,192号;WalkerおよびGaastra編(1983)Techniques in Molecular Biology(MacMillan Publishing Company, New York)およびそれに引用される参考文献を参照のこと;これらは本明細書中に参考として援用される。このような改変体は所望の生物学的活性を有し続ける。明らかに、改変体PDGFタンパク質をコードするDNAでなされる変異は、配列をリーディングフレームの外に配置してはならず、そして好ましくは2次mRNA構造を生成し得る相補領域を作製しない。欧州特許出願公開第75,444号を参照のこと。
【0019】
従って、イソ型が本発明の方法を用いて分離されるrPDGFタンパク質は、天然に存在するPDGFタンパク質およびその改変体を含む。これらの改変体は、それらの天然のPDGFタンパク質に実質的に相同であり、そして機能的に等価である。天然PDGFタンパク質の改変体は、そのアミノ酸配列の少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%、そして最も好ましくは少なくとも約95%が、天然PDGFタンパク質のアミノ酸配列に同一である場合、天然タンパク質に対して「実質的に相同」である。改変体は、約1個、2個、3個、または4個のアミノ酸により相違し得る。「機能的に等価」とは、改変体の配列が、目的の天然タンパク質と実質的に同じ生物学的活性を有するタンパク質を産生する鎖を定義することを意図する。実質的な配列改変体を含む、このように機能的に等価な改変体はまた、本発明に含まれる。従って、天然タンパク質の機能的に等価な改変体は、治療に有用であるために、十分な生物学的活性を有している。「治療的に有用」であるとは、治療目的(例えば、創傷の治癒のような)を達成する際に効果的であることを意図する。
【0020】
機能的等価を決定する方法は、当該分野で利用可能である。生物学的活性は、天然タンパク質の活性を測定するために特に設計されたアッセイを用いて測定され得る。さらに、生物学的に活性な天然タンパク質に対して惹起された抗体を、機能的に等価なアナログに結合するそれらの能力に関して試験し得る。ここで、効果的な結合は、天然タンパク質の立体配座に類似の立体配座を有するタンパク質の指標である。
【0021】
本発明の方法は、rPDGFタンパク質のイソ型、より詳細には、rPDGFの翻訳後エンド型タンパク質分解性プロセシングから生じるイソ型について改善された分離および精製を提供する。イソ型が分離されたrPDGFは、ホモダイマーのPDGF-BBまたはヘテロダイマーのPDGF-ABであり得る。1つの好ましい実施態様においては、組換えヒトPDGF(rhPDGF)タンパク質のイソ型が、本発明の方法を用いて分離されて、そして精製される。
【0022】
本発明の方法を用いてイソ型が分離されるrPDGFタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、ゲノム配列、cDNA配列、または合成DNA配列であり得る。天然型のPDGFをコードする遺伝子が配列決定され、そして種々のアナログが、当該分野で周知である。PDGFのホモダイマーまたはヘテロダイマーの発現は、例えば、米国特許第4,766,073号;同第4,769,328号;同第4,801,542号;同第4,845,075号;同第4,849,407号;同第5,045,633号;同第5,128,321号;および同第5,187,263号に記載され;本明細書中に参考として援用される。A鎖ポリペプチドおよびB鎖ポリペプチドに関する公知のアミノ酸配列に基づいて、PDGFA鎖およびB鎖ポリペプチドをコードする合成ヌクレオチド配列は、当該分野で利用可能な方法を用いてインビトロで作製され得る。詳細には、Sambrookら(1989) Molecular Cloning: A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor, New York)を参照のこと。目的の組換えPDGFタンパク質が、ヘテロダイマーのrhPDGF-ABである場合、A鎖およびB鎖ポリペプチドを含むハイブリッド前駆体ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列は、宿主細胞の同時形質転換のための1つの発現カセットの一部としてアセンブルされ得、または別々の発現カセットにアセンブルされ得る。
【0023】
目的の組換えPDGFタンパク質をコードするヌクレオチド配列は、本発明の方法に従って目的のイソ型を引き続いて分離および精製するために、適切な発現系において発現され得る。異種タンパク質を発現する方法、より詳細には、細菌(例えば、Hoppeら(1990) Eur. J. Biochem 187:207〜214;Frettoら(1993) J. Biol. Chem. 268:3625〜3631を参照のこと)、酵母(Kellyら(1984) EMBO J. 4:3399〜3405;Ostmanら(1989) Growth Factors 1:271〜281)、および哺乳動物細胞(例えば、Ostmanら(1988) J. Biol. Chem. 263:16202〜16208を参照のこと)中で組換えPDGFホモダイマーおよび組換えPDGFヘテロダイマーを発現する方法は当該分野で利用可能である。欧州特許第177,957号;米国特許第5,219,759号;および「酵母における異種タンパク質の改善された発現」と題された本出願と同時出願された同時係属中の出願(出願第)(本明細書中に参考として援用される)もまた参照のこと。本発明の方法は、任意の宿主系で産生されるrPDGFについて実施され得、ここで、翻訳後エンド型タンパク質分解性プロセシングは、イソ型の混合物を含む分泌型rPDGF産物を導く。
【0024】
イソ型の翻訳後タンパク質分解性プロセシングおよび産生での問題に、しばしば、酵母宿主で産生されるrPDGFにおいて遭遇する。「酵母」は、子嚢胞子菌酵母(Endomycetales)、担子胞子菌酵母、および真菌類不完全菌類(Blastomycetes)に属する酵母を意図する。子嚢胞子菌酵母は、2つの科、SpermophthoraceaeおよびSaccharomycetaceaeに分けられる。後者は、4つの亜科、Schizosaccharomycoideae(例えば、Schizosaccharomyces属)、Nadsonioideae、Lipomycoideae、およびSaccharomycoideae(例えば、Pichia属、Kluyveromyces属、およびSaccharomyces属)からなる。担子胞子菌酵母は、Leucosporidium属、Rhodosporidium属、Sporidiobolus属、Filobasidium属、およびFilobasidiella属を含む。真菌類不完全菌類に属する酵母は、2つの科、Sporobolomycetaceae(例えば、Sporobolomyces属、Bullera属)およびCryptococcaceae(例えば、Candida属)に分けられる。本発明の特に目的の種は、Pichia属、Kluyveromyces属、Saccharomyces属、Schizosaccharomyces属、およびCandida属内の種である。特に目的のものは、Saccharomyces種の、S.cerevisiae、S.carlsbergensis、S.diastaticus、S.douglasii、S.kluyveri、S.norbensis、およびS.oviformisである。Kluyveromyces属の特に目的の種は、K.lactisを含む。酵母の分類は将来変更され得るので、本発明の目的のために、酵母を、Skinnerら編(1980) Biology and Activities of Yeast(Soc. App. Bacteriol. Symp. シリーズ9号)に記載のように定義する。上記に加え、当業者は、おそらく酵母の生物学および酵母遺伝学の操作に精通している。例えば、Bacilaら編(1978) Biochemistry and Genetics of Yeast; RoseおよびHarrison編(1987) The Yeasts(第2版);Strathernら編(1981) The Molecular Biology of the Yeast Saccharomycesを参照のこと;これらは本明細書中に参考として援用される。
【0025】
異種タンパク質の発現のために、適切な酵母および他の微生物宿主を選択することは、当該分野の技術範囲内である。発現のために酵母宿主を選択する場合、適切な宿主は、特に、良好な分泌能、低いタンパク質分解性活性、および全体的な頑強さを有することが示される宿主を含み得る。酵母および他の微生物は、一般に、Yeast Genetic Stock Center, Department of Biophysics and Medical Physics, University of California, Berkeley, California;およびAmerican Type Culture Collection, Rockville, Marylandを含む種々の供給源から入手可能である。
【0026】
酵母宿主においてrPDGFを発現する方法は、当該分野で利用可能である。このような方法の1つは、ヒトPDGF-BBをコードするヌクレオチド配列を含むプラスミド発現ベクターで酵母宿主細胞を形質転換することを含む。この方法は、簡潔には、本明細書中の実施例1に記載され、そして「酵母における異種タンパク質の改善された発現」と題された本出願と同時出願された同時係属中の特許出願(出願第)(これは、本明細書中に参考として援用される)に詳述されている。
【0027】
酵母宿主で発現される場合、rPDGFは、発酵産生プロセス中に、タンパク質の翻訳後プロセシングから生じる構造的イソ型の複合体混合物として分泌される。翻訳後プロセシングは、特に、rPDGF-BBの発現で一般的である。これらの構造的イソ型は、PDGF活性についての標準的アッセイを用いて実証した場合、種々の程度の生物学的活性を有する。本発明の方法は、これらの構造的イソ型の分離に関する。その結果、生物学的活性が最大である実質的に精製されたイソ型を含む最終的な薬学的組成物が、調製され得る。これらの方法は、rPDGF-ABのイソ型、そしてより詳細には、rPDGF-BBのイソ型の分離に有用である。
【0028】
酵母宿主細胞により産生される組換えPDGF-BBは、2つのB鎖の高度にねじれた逆平行対からなる、十分に折り畳まれた、生物学的に活性なホモダイマータンパク質として分泌される(Oefnerら(1992) EMBO J. 11:3921〜3926)。各B鎖は、109個のアミノ酸残基を含む。バルク薬物物質を産生する発酵の間に、いくつかの翻訳後修飾が、分泌型rPDGF-BBに生じる。これは、かなりの構造的不均一性を有するrPDGFタンパク質を含むバルク薬物物質を生じる。このような修飾は、以下を含むがそれらに限定されない:残基Arg-32と残基Thr-23との間のエンド型タンパク質分解性消化(「クリッピング」といわれる)、Arg-32およびThr-109でのC末端アミノ酸のエキソ型タンパク質分解性除去(「トランケーション」といわれる)、Serおよび/またはThr残基のグリコシル化、およびメチオニンの酸化。これらの翻訳後修飾は、分泌産物に存在するrPDGF-BBの多くの構造的形態、いわゆるイソ型を導く。rPDGF-BB酵母産物の構造的不均一性は、残基41および残基42での強固なPro-Pro結合の存在によりさらに複雑化されている。この強固な結合の回転は、ジスルフィド結合およびTrp-40のかさばった側鎖が近傍にあることによりさらに妨げられる。この回転の妨害は、室温でrPDGF-BBの安定なシス−トランス異性体の形成を導く。翻訳後修飾の複数の組合せおよびPro-Pro異性化を考慮する場合、多くの潜在的なイソ型が存在するが、翻訳後のクリッピングおよびトランケーションから生じるイソ型が、本発明の第1の目的である。
【0029】
Arg-32とThr-33との間の翻訳後エンド型タンパク質分解性プロセシングすなわちクリッピングは、以下の3つの異なる別個のrPDGF-BBの塩基性イソ型を導く:インタクトなイソ型、一重クリッピングされたイソ型、および二重クリッピングされたイソ型。「インタクトな」とは、両方のB鎖が、インタクトなままであり、エンド型タンパク質分解性切断されないことを意図する。「一重クリッピング」とは、1つのB鎖がインタクトであり、もう一方のB鎖がArg-32とThr-33との間でエンド型タンパク質分解性切断されていることを意図する。「二重クリッピング」とは、両方のB鎖がArg-32とThr-33との間でエンド型タンパク質分解性切断されることを意図する。各それぞれのイソ型は、Arg-32またはThr-109のC末端トランケーションによりさらに修飾され得、任意の所定の塩基性イソ型について、多くの公知の誘導された構造種を産生する。従って、インタクトなイソ型については、C末端トランケーションは、残基109でのみ生じ得、3つの異なる構造種のそのイソ型を導く。一重クリッピングされたイソ型については、残基32と残基109の両方のC末端トランケーションは、8つの異なる構造種のそのイソ型を産生し得る。二重クリッピングされたイソ型については、10の構造種のそのイソ型があり得る。全部で、クリッピングの翻訳後プロセスの後に続くArg-32残基またはThr-109残基でのC末端トランケーションは、図1〜3に模式的に示すように、バルク薬物物質中にrPDGF-BBの21のあり得る構造的イソ型の複合体混合物を導く。
【0030】
本発明の方法は、rPDGF-BBのインタクトな異性体、一重クリッピングされた異性体、および二重クリッピングされた異性体と称される塩基性イソ型の分離に関する。それらの各々は、Arg-32残基またはThr-109残基のトランケーションから生じる既知の数の誘導された構造種を含む。インタクトなイソ型は、100%のマイトジェン活性を有し、一重クリッピングされたイソ型は120%のマイトジェン活性を有し、そして二重クリッピングされたイソ型は20%のマイトジェン活性を有することが決定されている。参照サンプルは、50%の活性を示す。従って、本発明の方法を利用すると、未精製細胞培養物より、少なくとも約20%高いPDGF活性を有し、好ましくは少なくとも約50%高いPDGF活性を有し、より好ましくは、少なくとも約100%高いPDGF活性を有する組成物が得られ得る。従って、創傷の処置のための治療用薬剤としての使用を有する薬学的なrPDGF-BB組成物を調製する目的のために、薬学的組成物が、rPDGF-BBのインタクトなイソ型および/または一重クリッピングされたイソ型を含むようにこれらのイソ型を分離することが、明らかに所望される。本発明の方法は、発酵によって産生されるバルク薬物物質のrPDGF-BBの二重クリッピングされたイソ型からの、インタクトなイソ型および一重クリッピングされたイソ型の分離を提供することによって、このような薬学的組成物の調製を可能にする。
【0031】
本発明の方法は、イオン交換濃縮、逆相高速液体クロマトグラフィー、および逆荷電性キャピラリーゾーン電気泳動を利用する。これらの方法のうちの第1のものは、rPDGF、特にrPDGF-BBのインタクトな異性体、一重クリッピングされた異性体、および二重クリッピングされた異性体の分離に関する。ここで、分離は、rPDGFの治療的使用に適切な精製度であるべきである。それゆえに、この方法は、実質的に精製された、インタクトなrPDGF、一重クリッピングされたrPDGF、またはインタクトなおよび一重クリッピングされたrPDGF、特にrPDGF-BBを含む薬学的組成物の産生における使用のためにこれらの異性体の分離に適切である。第2および第3の方法は、インタクトな異性体、一重クリッピングされた異性体、および二重クリッピングされた異性体の分離手段を提供する一方で、下記に記載のように、分析手段のために主に有用である。
【0032】
rPDGF-BBのインタクトなイソ型および一重クリッピングされたイソ型は、二重クリッピングされたイソ型から、イオン交換濃縮により、rPDGF-BBの治療的使用に適切な精製程度まで分離され得る。生物学的な活性なrPDGF-BBを含む大量の薬物は、陽イオン交換クロマトグラフィーおよびTSKスルホプロピルカラム(TSK SP)を用いて、二重クリッピングされたイソ型から、インタクトなrhPDGF-BBのイソ型および一重クリッピングされたrhPDGF-BBのイソ型を分離することにより、実質的に精製されたこれらのイソ型が濃縮され得る。発酵により産生されるバルク薬物物質(3つのイソ型全てを含む)は、カラム上に流され、NaCl溶液を用いて所望のイソ型が溶出される。二重クリッピングされたイソ型が、より早い画分に溶出し、続いて一重クリッピングされたイソ型およびインタクトなイソ型が溶出される。二重クリッピングされたイソ型を含む溶出画分の除去は、一重クリッピングされたイソ型およびインタクトなイソ型を溶出する画分のその後の回収を可能にする。これらの画分は、単離されたrPDGF-BBのインタクトなイソ型、一重クリッピングされたイソ型、またはインタクトなイソ型と一重クリッピングされたイソ型との混合物を含む組成物を産生するために別々にあるいは一緒に使用され得る。
【0033】
逆相高速液体クロマトグラフィー(RP HPLC)は、複数のイソ型を有するダイマーのタンパク質調製物の特定のイソ型を分離するのに有用な方法である。ここで、少なくとも1つのイソ型は、2つの異なる面を有する。「面」とは、RP-HPLCの状況で用いられる用語を意味し、ここで、ダイマーのタンパク質の各ポリペプチド鎖は、分子の「面」である。PDGF-BBのようなホモダイマーについては、2つの鎖が同一であり、そして1つの面を他方の面とは異なるようにする修飾がない場合、この分子は、1つの面のみを有する。しかし、rPDGF-BBの場合のように、分子が鎖のうちの1つでエンド型タンパク質分解性の切断がされている鎖を有する場合、一重クリッピングされたイソ型を作製し、得られるダイマーは2つの面を有する:クリッピングされていない鎖の面およびクリッピングされた鎖の面。ヘテロダイマーは、元来2つの面を有する。例えば、rPDGF-ABのヘテロダイマーの場合は、A鎖は1つの面であり、B鎖は別の面である。
【0034】
本発明の目的のために、高温で実施されるRP-HPLCを用いて、rPDGF-BBのインタクトなイソ型、一重クリッピングされたイソ型、および二重クリッピングされたイソ型を分離する。本発明に従って、RP-HPLC法は、rPDGF-BBイソ型を分離するために、最低温度が約75℃〜最高温度が約90℃の温度で実施され、そしてより好ましくは、この温度は約85℃である。本発明のRP-HPLC法は、アセトニトリルの組合せイソクラティック(isocratic)/段階勾配の使用をさらに含み得る。
【0035】
rPDGF-BBのイソ型を分析および分離するための本願の高温RP HPLCの前に、E.coliでPDGF-BBを産生し、RP-HPLCを用いてその分析を行っている研究者により、得られるクロマトグラムにおいて少なくとも4つのピークが日常的に認められることが示されている(WatsonおよびKenney(1992) J. Chromatography 606:165〜170を参照のこと)。これらのピークは、残基41および残基42でPro-Pro配列により引き起こされる露出した疎水性の差異に起因することが確証された(WatsonおよびKenneyら(1992) J. Chromatogr. 606:165〜170)。従って、pro-pro配座異性体(conformer)が測定された。さらに、酵母Saccharomyces cerevisiaeで発現されるrPDGF-BBは、以下の実施例3に開示されるように、種々の環境温度および準環境温度でRP HPLCで分析した場合、広範なおよび不均一なクロマトグラフィープロフィールを生じる複数の配座異性体を示す。これらの温度でのRP HPLCによるrPDGF-BBの分析および分離は、分子内のPro-Pro異性化により複雑化される。さらに、吸着(absorptive)クロマトグラフィーは、これらの条件下でホモダイマーのタンパク質の反対の面にクリッピングおよびトランケーションを同時に分離し得ない。
【0036】
本発明に従って高温で実施した場合、RP HPLC分析は、Pro-Pro異性化の平衡を促進し、そして脱着の速度を促進する。結果として、複数のPro-Pro配座異性体の現象は認められない。従って、潜在的に分離されたイソ型の数は、インタクトなイソ型、一重クリッピングされたイソ型、および二重クリッピングされたイソ型、ならびにそれらのエキソ型タンパク質分解された種として先に記載された21の構造体に減少し得る。さらに、RP HPLC分析が、約85℃で実施される場合、ダイマーの分子の両方の面で生じるクリッピングおよびトランケーションに起因する翻訳後修飾からもたらされる不均一性が、分離され得る。
【0037】
高温に加え、組合せイソクラティック/段階勾配も用いて、イソ型の分離を改善し得る。従って、クロマトグラフィープロフィールは、非常に単純になる。イソクラティック/段階勾配を伴う高温RP HPLC法を使用すると、クリッピングに基づいて優先的にrPDGF-BBのイソ型の分離が提供され、rPDGF-BBのインタクトなイソ型、一重クリッピングされたイソ型、および二重クリッピングされたイソ型の分析および分離を容易にする。イソクラティック/段階勾配を実施する方法は、当該分野で利用可能である。
【0038】
rPDGF-BBの多量のインタクトなイソ型、一重クリッピングされたイソ型、および二重クリッピングされたイソ型は、本発明に従って、高温およびアセトニトリルのイソクラティック/段階勾配でRP HPLC法を用いてrPDGFのイソ型の混合物を含むバルク薬物物質から分離され得る。これらのイソ型は、アセトニトリルおよびTFA溶媒ならびに緩衝液成分から精製され得る。精製は、このような溶媒からタンパク質を取り出すための標準的な手段を用いて達成される。例えば、小さなチューブを用いた透析(またはより多量では連続流動透析繊維を用いる)を行って、治療用薬剤として使用するのに適切な産物を生じ得る。
【0039】
本発明の方法に従って得られた精製rPDGF-BBのイソ型は、精製イソ型の相対的生物学的活性を決定するための生物学的活性のアッセイを実施するのに有用である。rPDGF-BBの場合は、rPDGF-BBの少なくとも1つのイソ型を含むバルク薬物物質の生物学的活性を決定するマイトジェンアッセイが、本明細書中に開示される実施例5に記載されるように実施され得る。
【0040】
本発明の高温RP HPLC法は、個々のイソ型の生物学的活性を分析するに充分な多量のrPDGF-BBのイソ型を分離するために有用であるが、この方法は、バルク薬物物質中のインタクトなイソ型およびクリッピングされたイソ型の日常的な分析ならびに定量には適切ではない。このような定量および日常的な分析を提供するために、本発明の第3の方法、逆荷電性キャピラリーゾーン電気泳動(RC CZE)が開発された。
【0041】
本発明の逆荷電性CZEは、荷電の不均一性をモニタリングするために最初に開発された。なぜならば、rPDGF-BB分子の極端に高い等電点(pI=10.5)により、従来の等電点電気泳動(IEF)分析の使用が除外されたからである。しかし、ハンドキャスト型の非常に高いpIを有するIEFゲル(hand cast very high pI IEF gel)の使用が可能であり得る。
【0042】
RC CZEによる分離は、荷電/サイズ比に基づく。従って、本発明のrPDGF-BBに関して、塩基性残基Arg-32のトランケーションは、RC CZEアッセイ選択性に対して、中性のアミノ酸残基Thr-109のトランケーションよりも大きな影響を有する。Thr-109残基のトランケーションは、認識できるほどにはタンパク質の荷電もサイズも変更させないので、インタクトなイソ型内の3つの可能なカテゴリーのイソ型の間で分離は生じない。インタクトなイソ型と一重クリッピングされたイソ型との間で観察されるベースライン分離は、一重クリッピングされたイソ型の流体力学サイズの増加に起因し得る。流体力学サイズの増加は、二次構造の部分的変性を通して生じ得る。一重クリッピングされたイソ型内では、2つの種(一方はArg-32のC末端トランケーションを有さず、他方はこのトランケーションを有する)の分離は、Arg-32のC末端トランケーションから生じるイソ型の種の荷電の減少に起因する。二重クリッピングされたイソ型内では、3つのイソ型が区別され得る;これらの分離は、Arg-32の一重または二重のC末端トランケーションのいずれかから生じる荷電の相違に起因し得る。
【0043】
これまで記載されたRC CZE法は、Arg-32トランケーションを有する一重クリッピングされたイソ型と、Arg-32トランケーションを有さない二重クリッピングされたイソ型とを区別できず、従って分離出来ない。これらの2つのイソ型のカテゴリーを分離するため、ならびにインタクトなイソ型、一重クリッピングされたイソ型、および二重クリッピングされたイソ型を定量するために、本発明のRC CZE法は、種々のrPDGF-BBイソ型を含むバルク薬物物質を分析する前にカルボキシペプチダーゼBで処理する工程をさらに含む。この酵素は、カルボキシ末端に位置する塩基性アミノ酸アルギニンおよびリジンに特異的である。酵素処理は、Arg-32トランケーションを有さない一重クリッピングされたイソ型を、Arg-32トランケーションを有する一重クリッピングされたイソ型に変換し、そしてArg-32トランケーションを有さないかまたは1つだけ有する二重クリッピングされたイソ型を2つのArg-32トランケーションを有するイソ型に変換する。従って、バルク薬物物質PDGF-BBのカルボキシペプチダーゼBでの処理は、RC CZE電気泳動図を単純化し、そしてArg-32とThr-33との間のクリッピングにより定義されるような、rPDGF-BBの3つのイソ型(インタクトな、一重クリッピング、および二重クリッピングと呼ばれるようなイソ型)の定量を可能にする。
【0044】
インタクトな、一重クリッピング、および二重クリッピングを、カルボキシペプチダーゼBの使用により単離するための本発明において改変されるような、PDGF-BBの分析のRC CZE法は、質的コントロールの状況では、本明細書中に記載されるrPDGF-BBイソ型を含むバルク薬物物質の分析のために有用である。質的コントロールの状況でPDGF-BBを分析するためにRC CZEを使用することの利点は、この方法により達成される容易さおよび精度である。このことにより、本方法は、バルク薬物物質の質的コントロールにおいて必要とされるような分析のこのような日常的な活動に適切な方法となる。
【0045】
従って、本発明の方法は、rPDGF-BBのインタクトなイソ型、一重クリッピングされたイソ型、および二重クリッピングされたイソ型を分析および分離することに有用である。rPDGF-BBの所望のインタクトなイソ型、一重クリッピングされたイソ型、またはインタクトなイソ型と一重クリッピングされたイソ型との混合物の分離後、実質的に精製された目的のイソ型を含む組成物を生成するために必要な程度まで、混入緩衝液または他の不純物が除去され得る。これらの組成物は、以下に記載されるように、治療用薬剤としての使用のために調製され得る。「治療用薬剤」により、治療目標(例えば、創傷の治癒)を達成する薬剤が意図される。
【0046】
実質的に精製されたrPDGF-BBのインタクトなイソ型、一重クリッピングされたイソ型、またはインタクトなイソ型と一重クリッピングされたイソ型との混合物を含む組成物は、創傷、特に天然のPDGFの放出に応答して正常に修復する創傷の処置において治療用薬剤として有用である。
【0047】
PDGFの放出は、単球、線維芽細胞および平滑筋細胞を損傷部位に誘引し、そして創傷修復のために細胞複製を開始させる走化性因子としてインビボで作用する。この増殖因子は、ラットにおける切開創傷の治癒、および室または皮下箇所のような身体の領域における治癒を促進することが示されている。従って、PDGFは、潰瘍、熱傷、および皮膚移植片のような創傷の治癒における適用を有する。さらに、PDGFを用いて、損傷した結合組織から生じる創傷を治癒させ得る。この修復は、線維芽細胞増殖およびコラーゲン沈着を必要とする。さらに、創傷治癒がかなり多数の因子(高齢、糖尿病、ガン、および抗炎症性薬物または抗凝固剤での処置を含むがこれらに限定されない)により遅れる場合、PDGFを用いて、そうでない場合には創傷治癒が遅れる状況で、哺乳動物における正常な創傷治癒を促進し得る。
【0048】
全層性熱傷および中間層熱傷の修復のための治療用薬剤としての血小板由来増殖因子の有用性はまた、Danilenkoら (1995) Am. J. Pathol. 147:1261-1277により記載されている。このようにして、組換えPDGF-BBは、著しい細胞外マトリクスおよび顆粒化組織の生成を誘導し、その結果、熱傷欠損が修復される。
【0049】
糖尿病(創傷治癒の遅延の合併症を有する状態)の状況では、難治性糖尿病創傷が、治癒プロセスに重要である増殖因子および/またはサイトカインの欠損の結果であることが結論されている。いくつかの予備的な研究は、Doxeyら (1995) Life Sciences 57(11):111-23に記載されるように、特定の増殖因子またはサイトカインの適用が創傷治癒を促進し得ることを示した。この研究では、創傷がある糖尿病ラットのPDGFは、コントロール動物に比較して低いレベルで産生された。これらのラットは、創傷を受けた何日後かに起きた、創傷を取り囲む細胞における遅延したPDGF産生を有した。このことは、おそらく、糖尿病動物における創傷治癒の遅延を説明する。従って、創傷治癒を誘導および正常化するための糖尿病へのPDGF-BBの投与についての潜在的な適用が存在する。
【0050】
PDGF-BBおよび他のPDGFダイマー(PDGF-AAおよびPDGF-ABを含む)の作用機構は、Lepistoら(1995) Biochem. Biophys. Res. Comm. 209(2):393-9に一般的に議論される。ダイマーPDGF-AAおよびPDGF-BBは、定常状態レベルのプロ-α1(I)、およびプロα1(III)コラーゲン鎖mRNA、ならびにコラーゲンの産生を、両方とも用量依存性様式でダウンレギュレートする。
【0051】
さらに、PDGFを含む組成物は、結合組織の増殖、骨およびセメント質の増殖を促進することにより、そして例えば、特に歯周疾患の場合に、損傷した骨の領域におけるタンパク質およびコラーゲン合成を刺激することにより、損傷した骨または枯渇した骨の治癒を促進し得る(WO 88/03409を参照のこと)。
【0052】
PDGFを含む組成物は、WO 91/15231および米国特許第5,019,559号に記載されるように、例えば、褥瘡、裂傷、および熱傷のような創傷について迅速で、有効な治癒を提供し得、ここで、インスリン様増殖因子(IGF)を伴う組成物におけるPDGFは、新たな結合組織の増加および上皮組織の増殖の増強を促進する。
【0053】
PDGFを含む組成物は、ゲル処方物において投与され得、そしてこのような処方物は、WO 93/08825に記載されるような、潰瘍、表在性の創傷および裂傷、擦過傷、外科的創傷、熱傷、ならびに骨欠損のような状態の創傷治癒を促進するための局所投与に適切である。
【0054】
創傷の処置のための治療用薬剤としての使用について、本明細書中に記載されるPDGF-BBのインタクトなイソ型、一重クリッピングされたイソ型、またはインタクトなイソ型と一重クリッピングされたイソ型との混合物を含む組成物は、適切な薬学的に受容可能なキャリアとともに、または治療的使用を妨害する不純物およびエレメントを含まないように実質的に精製されたタンパク質調製物中で局所的に投与され得る。毒性、抗原性、炎症性、または他の有害な物質を含まず、そして少なくとも約80%の純度であるこのような調製物が、適切であると考えられる。タンパク質の濃度は、rPDGF-BBについての治療用途に依存して、約1μg/ml〜約25μg/ml総容量であり得るか、または約1ng/ml〜約50μg/mlのような広範な範囲であり得る。創傷箇所における新規な線維芽細胞の出現速度を加速し、そして線維芽細胞数を増加させるため、ならびにこれらの線維芽細胞におけるDNA合成およびこれらの線維芽細胞によるコラーゲン沈着を刺激するために十分な治療有効量は、創傷の特徴に依存して、約1ml〜約5mlの調製物の範囲である。
【0055】
実質的に精製されたrPDGF-BBのインタクトなイソ型もしくは一重クリッピングされたイソ型、またはこのようなイソ型の混合物、および適切な薬学的に受容可能なキャリアを含む薬学的組成物は、創傷の処置のための治療用薬剤として投与するために処方され得る。薬学的に受容可能なキャリアは、大きなゆっくりと代謝される巨大分子(例えば、タンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリマーアミノ酸、アミノ酸コポリマー、および粒子中の不活性ウイルス)であり得る。このようなキャリアは、当業者に周知である。薬学的に受容可能な塩、例えば、無機酸塩(例えば、塩酸塩、臭化水素塩、リン酸塩、硫酸塩など);および有機酸の塩(例えば、酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、安息香酸塩など)は、その中で用いられ得る。治療用組成物中の薬学的に受容可能なキャリアは、液体(例えば、水、生理食塩水、グリセロール、およびエタノール)を含み得る。さらに、補助物質(例えば、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝化物質など)は、このようなビヒクル中に存在し得る。
【0056】
薬学的組成物を処方するための方法は、一般に、当該分野で公知である。薬学的に受容可能なキャリア、安定剤、およびイソモライト(isomolyte)の処方および選択についての徹底的な議論は、Remington's Pharmaceutical Sciences,第18版(Mack Pub. Co., Eaton, Pennsylvania, 1990)に見出され得る。
【0057】
代表的には、治療用薬学的組成物は、液体の溶液または懸濁物のいずれかの注射可能物として調製される。注射の前に、液体ビヒクルに溶解または懸濁するのに適切な固体形態もまた、調製され得る。リポソームは、薬学的に受容可能なキャリアの定義に含まれる。いくつかのリポソーム組成物は、米国特許第5,422,120号;WO 95/13796; WO 94/23697; WO 91/14445;およびEP 524,968 B1に記載される。
【0058】
PDGF-BB治療用薬学的組成物の投与は、処置される創傷に適切であるような任意の手段による投与、そして処置される動物の身体の任意の位置に対する投与であり得る。従って、PDGF-BBは、例えば、非経口的または局所的に投与され得る。非経口投与は、皮下、静脈内、動脈内、筋肉内、または身体の領域もしくは器官への直接注射を含み得る。
【0059】
以下の実施例は、例示のために提供され、限定のために提供されるわけではない。
【実施例】
【0060】
実施例1:PDGF-BBバルク薬物物質の調製
組換えヒトPDGF-BB(rhPDGF)を、成熟ヒトPDGF-Bポリペプチド鎖をコードする遺伝子を含む多コピー性酵母発現プラスミドを用いて遺伝的に改変された酵母Saccharomyces cerevisiaeの1株から生成した。この酵母発現系の詳細は、本出願と同時に出願された、「Improved Expression of Heterologous Proteins in Yeast」と表題を付けられた同時係属中の出願、出願番号 (本明細書中に参考として援用される)に開示される。
【0061】
S.cerevisiae株MB2-1を、以下の遺伝子型を含むように開発した:Matα,ura3Δ, leu2-3, leu2-112, his3-11, his3-15, pep4Δ, [cir°]。これは、最少培地において増殖する場合にウラシル、ロイシン、およびヒスチジンの栄養補充物を必要とする、ウラシル、ロイシン、およびヒスチジンについて栄養素要求性である。MB2-1は、内因性2-μプラスミドを含まない。2-μプラスミドは、導入されたプラスミドの安定性を妨害し、そして内因性プラスミドと導入されたプラスミドとの組換えを助長する傾向がある。この株は、異種タンパク質の生成を妨害する機能的なプロテアーゼA(PEP4遺伝子の産物)を発現しない。MB2-1は、これらの好ましい特徴(これは、異種タンパク質の高発現についての選択を含む)を付与するように設計された。
【0062】
rhPDGF-BBを発現することについて選択されたベクターpAB24は、酵母-細菌シャトルベクターである。このプラスミドは、いくつかの天然に存在する細菌プラスミドに由来するpBR322からの配列と、内因性S.cerevisiae 2-μプラスミド(Broach (1981) Molecular Biology of the Yeast Saccharomyces (Cold Spring Harbor Press, New York), 1:445-470)の配列とのキメラである。このベクターの特徴は、本出願と同時に出願された、「Improved Expression of Heterologous Proteins in Yeast」と表題を付けられた同時係属中の出願、出願番号 (本明細書中に参考として援用される)に詳細に記載される。
【0063】
rhPDGF-BBをコードするヌクレオチド配列を含む発現カセットを、pAB24ベクターに連結して、酵母発現プラスミドpYL7PPBを作製した。このプラスミドを構築するための方法およびその特徴の詳細な説明は、本出願と同時に出願された、「Improved Expression of Heterologous Proteins in Yeast」と表題を付けられた同時係属中の出願、出願番号 (本明細書中に参考として援用される)に詳細に記載される。
【0064】
手短に言えば、プラスミドpYL7PPBは、以下の特徴を有する発現カセットを含む。転写開始および終結は、誘導性ハイブリッド酵母プロモーターADH/GAPおよびMatα転写ターミネーターにより媒介される。このカセットは、天然のヒトプロPDGF-Bの分泌を媒介する、トランケーションされた酵母α-因子リーダーをコードするオープンリーディングフレームをさらに含む。発現構築物中に含まれるプロ配列は、天然のN末端プロペプチドコード配列のみである;天然のC末端プロペプチド配列は、この構築物中に含まれなかった。N末端プロペプチドを含むことは、同時係属中の出願第 号に開示されるようなrhPDGF-BBの増強された発現をもたらした。トランケーションされたα因子リーダー/N末端プロペプチドおよびN末端プロペプチド/PDGF-B連結物における二塩基性プロセシング部位は、酵母により正確にプロセシングされたrhPDGF-Bポリペプチドの生成を促進するために含まれた。トランケーションされたα因子リーダー-プロPDGF-BをコードするpYL7PPBからのオープンリーディングフレームのヌクレオチド配列および推定アミノ酸配列は、同時係属中の出願第 号に開示される。
【0065】
hPDGF-BをコードするcDNAの単離は、ヒトクローン性神経膠腫細胞株から単離されたRNAから調製されたcDNAライブラリーを用いて実施された。このcDNAの単離および特徴付けは、Westermarkら, J. Neurosci Res 8:491 (1982)ならびにPontenおよびWestermark, Med Biol 56: 184 (1978)に記載されている。この細胞株を、PDGF遺伝子単離のRNAの供給源として利用した。なぜなら、この細胞株は、試験した他の細胞株よりも高いレベルのPDGFレセプター競合活性を生じることが示されているからである。
【0066】
実施例2:TSKスルホプロピル陽イオン交換クロマトグラフィーを用いる、
インタクトなrhPDGF-BBイソ型および一重クリッピングされたrhPDGF-BBイソ型の、rhPDGF-BBバルク薬物物質からの濃縮
rhPDGF-BBバルク薬物物質の作製は、実施例1に記載される。この手順の全体の目標は、ミリグラム量のrhPDGF-BBのインタクトなイソ型、一重クリッピングされたイソ型、および二重クリッピングされたイソ型を、酵母宿主細胞において生成された純粋なrhPDGF-BBの反復TSK SP 5PW(Tosoh-Haas)クロマトグラフィーを用いて作製し、次いでマイトジェンアッセイを用いて3つのイソ型の相対的な生物学的活性を決定することであった。このプロセスでは、製造プロトコルで要求される0M〜1MのNaClの代わりに、SP TSK 5PWが0M〜0.6MのNaCl勾配で溶出された場合に、有意な部分のrhPDGF-BBの二重クリッピングされたイソ型が、残りの物質とは離れて勾配の初めの部分に溶出されるようであることが示された。二重クリッピングされたイソ型は、生物学的活性が最も少ない(以下の実施例を参照のこと)ので、この(0〜0.6M勾配への)単純な変更を、将来の大規模な第二世代プロセスに組み込むことが有用であり得る。
【0067】
カラムを、50mlのTSK SP 5PW(膨潤前に供給される)を空のPharmaciaカラムK26(2.5×10cm)に充填することにより調製した。充填したカラムを、5カラム容量(c.v.)以上のローディング緩衝液(0.05M 酢酸Na、pH4.5)で洗浄した。実施例1の方法により生成されたrhPDGF-BBをアプライし、そしてカラムを2c.v.以上のローディング緩衝液で洗浄し、次いで2c.v.の0.05M リン酸Na(pH7)(NaOHを用いる)で洗浄した。産物を、50mMリン酸ナトリウム(pH7.0)中の10c.v.の線形勾配(0から0.6M)NaCl(緩衝液B)を用いて溶出した。溶出ピークを分画した。
【0068】
本明細書に示す実行において、出発材料は、実施例1に記載されるようなrhPDGF-BBの最終プールであった。この材料は、pH6のリン酸Na中で9.9mg/mlであり;pHを1M NaH3PO4でpH4.5に調整した。rh-PDGF-BBの濃度は、pH調整後に9mg/mlであり、そしてロードの伝導度は25℃にて1.62mS/cmであった。全ての研究を、室温にて行なった。477mg(53ml)を、2ml/分にてカラムにロードした。カラムを、2c.v.のローディング緩衝液(100ml)で洗浄し、次いで0〜0.6M NaCl勾配を約10c.v.(492ml)でアプライした。15ml画分を収集し、そして画分をPAGE(10〜20% Novex Tricine Gels)および吸光度測定により分析した。タンパク質は、画分28から始まり画分50を超えて溶出した。ゲルに基づいて、画分28〜30をプールし、蒸留水で1:1に希釈して(結合を可能にするのに伝導度を十分低くするため)、SPカラムに再度アプライし、そして同じ条件下で溶出した。マイトジェンアッセイにより分析した場合、ロードは、参照標準の14%の活性を有することが示された。このことは、これらの画分が、大量の二重クリッピングされたイソ型を表すことを示す。しかし、SDS PAGEゲルによっては、PDGF-BBダイマーイソ型の量に関しては十分な分析は行われ得なかった。実施例4に記載されるRC CZE法によるこれらの画分の分析は、画分の純度の程度を示し、そしてどの画分がどのイソ型をどのような相対量で含むかの評価を行うのを助ける。A280により、プールされたチューブ(28〜30)は、約69mg、すなわち実行のためにロードされた477mgのうちの15%であることが示された。この材料を用いて行ったマイトジェンアッセイの結果は、低い活性および二重クリッピングされたイソ型を示す。次いで、RC CZEを用いるこれらの画分の分析は、単離されたいくつかのイソ型の最終決定、およびその量の定量に適切である。
【0069】
実施例3:非還元型rhPDGF-BBの高温線形勾配RP HPLC分析
実施例1に記載のように酵母において生成されたバルク薬物物質rhPDGF-BBを、WISP 712オートインジェクターおよびPE 135ダイオードアレイディテクターを装備したSpectra Physics 8800溶媒送達ポンプを用いて、5μm、300オングストローム、Delta-Pak C3(3.9mmID×15cm L)カラムで分析した。カラム温度を、Jones ChromatographyヒーティングブロックのNesslabグリコール冷却バスの使用により制御した。分離を、40分間にわたる5〜60%アセトニトリル/0.1% TFA線形勾配を用いて1.2ml/分の流速で達成した。
【0070】
rhPDGF-BBを、5℃で分析し、いくつかのより小さな肩部を有する6つの異なるピークが分離した。温度が上昇するにつれ(5℃、20℃、33℃、60℃)、プロファイルは、あまり明確でなくなった。しかし、60℃では、肩部が依然として存在するとはいえ、ピークはより分離された。5℃のプロファイルで観察された初期に溶出する二重ピーク(24分)は、温度が上昇するにつれて消失した。5℃で生じた異なるピークをさらに特徴付けるために、rhPDGF-BBを、半ば分取的に分画した。これらの画分を、RP HPLCにより分析し、そして各画分を、再度クロマトグラフィーにかけ、他の画分に存在する顕著な量のタンパク質を示すプロファイルを得た。従って、緩慢だが可逆的な平衡が、rhPDGF-BB配座異性体の変換から生じた5℃で分離されたイソ型間に存在することが明らかである。Pro-Pro結合の異性化は、おそらく、rhPDGF-BB配座異性体の間で観察された緩慢な平衡の原因である。
【0071】
次いで、非還元型rhPDGF-BBのRP HPLC分析を、線形TFA/アセトニトリル勾配を用いて85℃にて維持したZorbax 300SB-C18逆相カラム(4.6mm ID×25 cm L)を用いて行なった。この方法により、21個の推定のrhPDGF-BBのクリッピングおよびトランケーションされたイソ型(これらは、3つの主な群(インタクトなもの、一重クリッピングされたもの、および二重クリッピングされたもの)に集中した)が分離された。各群にまたがって収集された画分を、還元型rhPDGF-BBのRP HPLCを用いて分析した。結果は、各群における複数のピークが、Arg-32およびThr-109の異なるレベルのC末端トランケーションに起因することを示した。クリッピングされたイソ型およびインタクトなイソ型のこれらの3つの群からの分離を改善するさらなる試みは、線形勾配を用いては不成功であった。従って、RP HPLCの線形勾配での高温は、分子の両面で生じるクリッピングおよびトランケーションに起因する翻訳後修飾から生じる不均一性を解決し、そして複数のPro-Pro配座異性体の現象は高温では観察されなかった。
【0072】
次いで、組合せイソクラティック(isocratic)/段階勾配を、高温に加えて用い、イソ型の分離を改善した。高温段階勾配は、二重クリッピングされたイソ型を29%アセトニトリルで、一重クリッピングされたイソ型を30%アセトニトリルで、そしてインタクトなイソ型を33%アセトニトリルで分離した。上記の線形勾配とは異なり、トランケーションに起因するイソ型は、分離されず、従ってプロファイルを大いに単純化した。従って、優先的にクリッピングに基づくrhPDGF-BBのイソ型の分離を、ちょうど記載された高温組合せイソクラティック/段階勾配により達成し、それゆえ、クロマトグラフィープロファイルを大いに単純化し、そして重要な機能的なrhPDGF-BBのイソ型の分析および分離を容易にした。
【0073】
実施例4:カルボキシペプチダーゼBを用いる前処理を含む、
rhPDGF-BBについての逆荷電性キャピラリーゾーン電気泳動アッセイ
実施例1に記載のように酵母において組換えにより生成されたrhPDGF-BBのサンプル、および既知の組成のPDGF-BBを有する参照材料を、逆荷電性キャピラリーゾーン電気泳動(RC CZE)を用いてアッセイした。目的のサンプルを、pH8.0でTris緩衝液を有するランニング緩衝液中に、分光測光法により決定した場合の1.0mg/mlの濃度に希釈した。100μlの25U/mlのカルボキシペプチダーゼBを、50μlの試験サンプルに添加した。室温にて30分間のインキュベーションの後、25μlの0.1N HClを添加した。配列表を、Turbochrom Sequence Screenにて作成した。アッセイを実施するために必要な脱ガス試薬を、1500μlの以下の各々を、別々の1700μlポリプロピレン微量遠心チューブに入れることにより調製した:1N NaOH、eCAPTM Regenerator溶液、および50mM Tris緩衝液(pH8.0)。チューブを、利用可能な最大のrpm設定で5分間、微量遠心分離した。
【0074】
アッセイを、以下の情報を伴って構成したキャピラリー電気泳動システム(BioFocusTM 3000)で行なった:プレップ1:注入前NaOH、180秒間;プレップ2:注入前AMREGEN、180秒間;プレップ3:注入前AMRINSE、180秒間;圧力:2psi秒;極性:陰極から陽極;電圧:15.00kV;電流限界:50.00μA;入口緩衝液:AMRUN;出口緩衝液:AMRUN;カートリッジ温度:25℃;実行時間:10分間;単波長プログラム可能検出モード;およびλ(nm):214。
【0075】
サンプルを、BioFocusTM 3000にロードした。Enable Peak検出を、二重クリッピングされたピークが電気泳動図において生じる前に設定し、そしてDisable Peak検出を、インタクトなrhPDGF-BBピークの後の水平線の後に設定した。電気泳動図は、二連のサンプル測定の相違が10%未満であるならば許容可能であった。
【0076】
RC CZEによるrhPDGF-BBの臨床ロットの分析の結果は、商業用途が意図される材料について、インタクトなイソ型、一重クリッピングされたイソ型、および二重クリッピングされたイソ型の以下の組成を示した:
バッチ 二重クリッピング 一重クリッピング インタクト
------------------------------------------------------------------------------
1 47% 31% 22%
2 44% 33% 23%
3 45% 33% 22%
4 46% 33% 21%
5 45% 33% 22%
6 45% 32% 23%
実施例5:rhPDGF-BBの一重クリッピングされたイソ型、二重クリッピングされたイソ型、およびインタクトなイソ型のマイトジェン活性
PDGFが培養中のDNA合成および細胞増殖を刺激する能力は、PDGFに応答する培養細胞のDNAへのH-チミジン取り込みにより試験され得、そしてPDGFまたはPDGF様分子の生物学的活性の実証となる。このようなアッセイは、米国特許第4,849,407号、およびCookら(1992) Biochem. J. 281:57-65(本明細書中に参考として援用される)に記載される。これは、PDGFの潜在的な治療的利益を決定する標準的なアッセイである。
【0077】
PDGF(マイトジェンの1つ)のマイトジェンアッセイは、当該分野では、治療的組成物としての潜在的な有用性を示すと考えられる。C末端トランケーションが、生物学的活性に何の効果も有さないことが以前に決定されている。狭い範囲のピーク溶出を超えると、クロマトグラフィーのアセトニトリルおよびトリフルオロ酢酸(ACN-TFA)成分が、マイトジェンアッセイに一致した効果を有することもまた決定されている。
【0078】
精製されたrhPDGF-BBの一重クリッピングされた形態、二重クリッピングされた形態、およびインタクトな形態が、高温非還元RP HPLCの反復サイクルを通して回収された。一重クリッピングされた形態、二重クリッピングされた形態、およびインタクトな形態は、高温非還元および還元RP HPLCアッセイを用いて試験され、そして純度がそれぞれ、95%、97%、および95%であることが見出された。次いで、各形態のサンプルを、マイトジェン活性アッセイにより試験した。全てのサンプルを、同じアッセイにおいて三連でアッセイした。各イソ型の画分を収集し、そして一重クリッピングされたイソ型が120%の活性を有し、インタクトなイソ型が100%の活性を有し、そして二重クリッピングされたイソ型が20%の活性を有することが決定された。参照サンプル(rhPDGF-BBのインタクトなイソ型、一重クリッピングされたイソ型、および二重クリッピングされたイソ型の混合物を含む未精製細胞培養物)は、50%の活性を示した。このことは、治療的使用が意図される大量の物質rhPDGF-BB中の二重クリッピングされたイソ型を除去することが所望され得ることを示した。
【0079】
実施例6:創傷を処置するためのPDGF-BB
インタクトなイソ型および一重クリッピングされたイソ型のPDGF-BB混合物を、局所用クリーム中に調製する。約50〜約100mMのPDGF-BB混合物の塗布を、III度の熱傷創傷に、一日に1〜3回、1ヶ月にわたって行うか、または創傷が治癒するまで行う。熱傷創傷に手当てをするための標準的な塗布手順は、熱傷創傷へのPDGF-BBクリームの投与について実施される。
【0080】
本明細書中で言及された全ての刊行物および特許出願は、本発明に関する当業者のレベルの例示である。全ての刊行物および特許出願は、各々の刊行物または特許出願が具体的におよび個々に参考として援用されることが示されたのと同程度に本明細書中に参考として援用される。
【0081】
前述の発明は、例示のため、および理解を明確にする目的のための例で幾分詳細に記載されてきたが、特定の変更および改変が添付の請求の範囲の範囲内で実施され得ることが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】図1は、Thr-109のトランケーションを伴うかまたは伴わないrhPDGF-BB(A群)のインタクトなイソ型の模式図である。1本の線はB鎖を表し;対の線はrhPDGF-BBを表す。
【図2】図2は、Arg-32およびThr-109のトランケーションを伴うかまたは伴わない、rhPDGF-BBの一重クリッピングされたイソ型の模式図である。対の線は、一重クリッピングされたrhPDGF-BBを表す。B鎖の1つにおけるクリッピングは、線の中断によって表されている。一重クリッピングされたイソ型の種は、タンパク質の全体の荷電の差異に基づいてB群およびC群に分けられる。クリッピング部位でのArg-32のトランケーション(C群)は、より酸性のイソ型を産生する一方で、Thr-109のトランケーションのみ(B群)は、分子の荷電を変化させない。
【図3】図3は、Arg-32およびThr-109のトランケーションを伴うかまたは伴わないrhPDGF-BBの二重クリッピングされたイソ型の模式図である。対の中断された線は、二重クリッピングされたrhPDGF-BBを表す。B鎖の各々におけるクリッピングは、各線の中断により表される。二重クリッピングされたイソ型は、タンパク質の全体の荷電の差異に基づいて、D、E、およびF群に分けられる。クリッピング部位のうちの1つでのArg-32のトランケーション(E群)は、イソ型をより酸性にする一方で、両方のクリッピング部位でのArg-32のトランケーション(F群)は、2つの塩基性のアミノ酸残基を除去する。Thr-109のみでのトランケーション(D群)は、分子の荷電を変化させず、一重クリッピングされた種(B群)と同様である。
【図4】図4は、線形勾配溶出を用いたrhPDGF-BBの高温逆相(RP)HPLCプロフィールである。rhPDGF-BBの二重クリッピングされたイソ型およびトランケーションされて二重クリッピングされたイソ型(A)、rhPDGF-BBの一重クリッピングされたイソ型およびトランケーションされて一重クリッピングされたイソ型(B)、ならびにrhPDGF-BBのインタクトなイソ型およびトランケーションされたインタクトなイソ型(C)は、いくつかのピークのうちの3つの群として分離される。
【図5】図5は、段階的勾配溶出を用いたrhPDGF-BBの高温RP HPLCプロフィールである。rhPDGF-BBの二重クリッピングされたイソ型およびトランケーションされて二重クリッピングされたイソ型(A)、rhPDGF-BBの一重クリッピングされたイソ型およびトランケーションされて一重クリッピングされたイソ型(B)、rhPDGF-BBのインタクトなイソ型およびトランケーションされたインタクトなイソ型(C)、ならびにrhPDGF-BBのダイマー/ダイマー(D)は、個々のピークとして分離される。
【図6】図6は、未処理rhPDGF-BB(上部)と比較した、カルボキシペプチダーゼB処理PDGF-BB(下部)の逆荷電性キャピラリーゾーン電気泳動(RC CZE)の電気泳動図である。文字は、図1〜3で同定された群に対応している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書等に記載されるような、血小板由来増殖因子タンパク質の分析および分離。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−31173(P2008−31173A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−208669(P2007−208669)
【出願日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【分割の表示】特願平10−526985の分割
【原出願日】平成9年12月12日(1997.12.12)
【出願人】(591076811)カイロン コーポレイション (265)
【Fターム(参考)】