血液と二相性リン酸カルシウムセラミック粒子との組合せ
本発明は、凝固血液又は凝固骨髄吸引液、及び二相性リン酸カルシウムセラミック粒子を含有する生体材料に、その製造方法に、並びに骨組織再生を可能とするインプラントの製造のためのその使用に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝固血液又は凝固骨髄吸引液、及び二相性リン酸カルシウムセラミック粒子を含有する新規な生体材料、並びにその調製のための方法、並びに骨組織再生を可能とするインプラントの生産のためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
外傷、より稀に腫瘍により主に生じる骨質喪失の再構築は、整形外科医が直面する主要な困難の1つである。最も一般的には腸骨稜から採取した海綿状又は皮質海綿状の骨組織の自家移植片の対象となるのは「狭い(narrow)」偽関節(骨質喪失が実質的である骨折部の骨緻密化の不良)から5cm〜6cmの骨喪失までの小さな欠損である(黄金律)。大きな欠損(≧6cm)は、はるかに煩雑な手順、血管付き骨移入(vascularized bone transfers)又はMasquelet手順を必要とする。それでも、入手可能な自家骨の量は限られており、骨緻密化は依然として不規則であり、これらの様々な技法は移植片を採取する部位で術後の合併症を非常に多く引き起こすものである。
【0003】
臨床業務において利用可能な様々な生体材料により、理論上は、自家移植の欠点を回避することが可能となる。残念なことに、それらのいずれも骨移植の結果に等しくなく、骨質の大きな喪失の再構築を可能とすることがない。
【0004】
現在研究されている代用骨の大部分は、数週間のin vitroでの選択及び細胞培養後に骨髄から得られた間葉系幹細胞と生体材料とを組み合わせるものである。このアプローチは労力を要しかつ高価であり、そのことが臨床上の利益を制限している。
【0005】
非特許文献1は、脱石灰化した骨粉、又は凝固血液のいずれかを含有するインプラントを記載している。複数の著者が、血液と合成の生体材料との組合せを研究している。非特許文献2は、脱石灰化したウシ骨粉末と血液とを含有するインプラントを記載している。非特許文献3は、グリセロールリン酸緩衝液中にキトサンを含有するポリマーの溶液とin situで凝固する血液とを含有するインプラントを記載している。非特許文献4は、血液とポリ乳酸誘導体(Polyfibre(登録商標)又はPolyfoam(登録商標))とを含有するインプラントを記載している。非特許文献5は、ウシアパタイトと静脈血とを含有するインプラントを記載している。特許文献1は、ポリマーゲルでコーティングされた顆粒材料から成る生体材料を記載しており、この生体材料は、骨欠損を充填しなければならない部位にスパチュラ又はシリンジを使用して適用するペーストを形成するために任意の種類の液体、特に血液と混合することができる。特許文献2は骨髄を含有する複合材料であって、生体適合性を有し多孔性の移植可能なマトリクス、及び凝固した材料、例えば骨髄、血液、血漿の凝固物を含む、複合材料を記載している。
【0006】
しかし、従来技術において記載されたこれらの移植可能な材料のうち、欠点を有しないものは1つもない。
【0007】
支持体(脱石灰化した骨、合成ポリマー等)と組み合わせる前に骨髄細胞の培養を必要とする材料は、使用するのに長い時間がかかり、またインプラントを装着する数週間前に治療対象の個体から骨髄を回収することを必要とし、そのことがそれと関連する手順及びリスクを増大させる。
【0008】
支持体と凝固していない血液とを組み合わせた生体材料によっては、インプラントを構築することは可能とならない。
【0009】
幾つかの支持材料と凝固血液との組合せが提案されているが、特にこの方法によっては均一な生体材料の製造は可能とならないため、得られる結果は必ずしも満足のいくものではない。
【0010】
支持体と凝固した又は凝固していない血液との組合せにより得られるこのような材料は、骨緻密化の問題がそれほど重要でない顎顔面外科処置に現在まで使用されているが、骨幹骨の修復にはほとんど又は全く使用されていない。
【0011】
特許文献2の場合には、教示される方法は、少なくとも5mmの脱石灰化した皮質骨線維と、及び凝固した材料、好ましくは骨髄由来の凝固した材料と組み合わせた、少なくとも1mmの最小の大きさを有する顆粒の形態の多孔性の脱石灰化した骨から成る支持材料を使用することにある。提案される例の全てが骨髄細胞を含む。
【0012】
本発明は従来技術の欠点を克服することを可能とし、特に本発明は、培養工程を使用することを必要とすることなく、合成の支持体(したがって容易に製造することができ一定かつ均一な特性を有する)、及び凝固血液から移植可能な生体材料を得ることを可能とし、この材料は卓越した生体適合性を有し、骨組織の迅速な再構築を可能とする。本発明は、硬度及び血管新生の観点で卓越した品質を有する骨の産生も可能とする。加えて、この生体材料を生産する方法は、単純であり、容易に実施することができ、治療対象の個体に対する多数の手順を必要とせず、従来技術の方法と比較して安価である。
【0013】
本発明の生体材料は、凝固血液と実質的に均一に混合した、顆粒の形態の二相性リン酸カルシウムを少なくとも含むペーストの形態である。
【0014】
二相性リン酸カルシウム(BCP)は、多くの医療用途及び歯科用途において使用される。二相性リン酸カルシウムは、非特許文献6により骨修復材料として初めて記載された。BCPは、ヒドロキシアパタイト(HA) Ca10(PO4)6(OH)2及びβ−リン酸三カルシウム (Ca3(PO4)2)(β−TCP)の混合物から成る。その生物活性及びその生体吸収能は、その構成要素であるヒドロキシアパタイトとβ−TCPとの割合により制御することができる。
【0015】
BCPを含有する生体材料は、他の合成生体材料と比較して、骨形成を促進する利点を有する。
【0016】
BCPは、多くの研究の主題である。非特許文献7は20μm未満の粒子径の選択により組織の炎症性応答が促進されることを示し、非特許文献8により観察されたようなこの粒子径が骨形成に特に好ましいという事実をこれにより説明することができた。
【0017】
一方、非特許文献9は、100μm〜250μmの範囲の大きさを有するキャリブレートしたBCP粒子は、培養した骨髄細胞と組み合わせた場合、最も多くの骨の再構築を引き起こすものであったが、44μm未満では骨の形成は観察されなかったこと、及び大きさが最大2mmの粒子により良好な結果が得られることを示した。
【0018】
非特許文献10により、40μm〜80μmのキャリブレートしたBCP粒子を用いて、培養した骨髄細胞が添加されるBCP/Si−ヒドロキシプロピルメチルセルロース複合材料のハイドロゲルの移植により良好な骨誘導を得ることができることが示されている。
【0019】
しかし、後者の2つの方法は、骨髄細胞を回収する工程、及びそれらの培養を必要とする。
【0020】
本発明は、以下の事実に基づく:
−BCPが抗凝固特性を有していたという本発明者らによる観察結果、
−従来技術の方法と比較して非常に単純な方法を用いることで、凝固血液又は凝固骨髄吸引液と組み合わせた選択した粒子径を有するBCPにより、非常に良好な骨形成を得ることが可能となり、非常に満足のいく品質を有する骨組織がもたらされるという同じ本発明者らによる観察結果。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0014279号
【特許文献2】国際公開第02/068010号
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】L. Okazaki et al., Clin. Oral Impl. Res., 16, 2005, 236-243
【非特許文献2】J. Schmid et al., Clin. Oral Impl. Res. 1997:8:75-8
【非特許文献3】A. Chevrier et al., Osteoarthritis and Cartilage (2007), 15, 316-327
【非特許文献4】B. Wallkamm et al., Clin. Oral Imp. Res., 14, 2003, 734-742
【非特許文献5】Yilderim M. et al., Clin. Oral Impl. Res., 2000, 11, 217-219
【非特許文献6】Nery EB et al., J. Periodontol. 1992 Sept., 63(9): 729-35
【非特許文献7】Fellah B.H. et al., J. Mater. Sci.: Mater. Med. (2007), 18, 287-294
【非特許文献8】Malard O. et al., J. Biomed. Mater. Res., 46(1), 1999, 103
【非特許文献9】Mankani M.H. et al., Biotechnology and Bioengineering, 72(1), 2001, 96-107
【非特許文献10】Trojani C. et al., Biomaterials, 27, 2006, 3256-3264
【発明の概要】
【0023】
したがって、本発明の第1の主題は、以下で規定する特定のBCPと凝固血液又は凝固骨髄吸引液との組合せである。有利には、この組合せは、展性を有する(malleable)均一なペーストの形態である。
【0024】
このペーストに過度の圧力(その三次元構造を損傷又は破壊する)をかけないように注意しながら、このペーストを充填すべき欠損の大きさ及び形状に適合させるために、このペーストを操作することができる。
【0025】
本発明において使用されるBCPは、40μm〜500μm、好ましくは40μm〜400μm、より好ましくはさらに40μm〜300μm、有利には80μm〜200μmの粒子径を有する。
【0026】
本発明において使用されるBCPは、粉砕し、例えばふるい分けにより、選択した直径を有する顆粒としてキャリブレートした高温焼結物(sinter)から成る。有利には、本発明において使用されるBCPは、ヒドロキシアパタイト及びβ−リン酸三カルシウムを、5/95〜95/5、好ましくは30/70〜80/20、有利には40/60〜60/40のHA/β−TCPの重量/重量比で含む。
【0027】
有利にはこれは、50nm〜150μm、好ましくは1μm〜50μmの範囲の孔径を有する多孔性のBCPである。
【0028】
リン酸三カルシウム及びヒドロキシアパタイトの顆粒又は粉末は、Bouler et al., J Biomed Mater Res, 1996, 32, 603-609、Bouler et al., J Biomed Mater Res, 2000, 51, 680-684、Obadia et al., J Biomed Mater Res, 2006, 80(B), 32-42により記載される方法に従って得ることができる。これらは、GRAFTYS SARL社から市販されている。
【0029】
BCP顆粒化物(granulate)に従来技術の方法を適用した場合、すなわち例えばBCPを血液試料と混合した場合、BCPが抗凝固特性を有しているため、血液凝固物は得られない。本発明の方法によれば、BCPを、抗凝固剤上で事前に回収した、又は抗凝固剤の非存在下で回収し生体材料のレシピエントと適合性を有するドナー中においてBCPと直ぐに接触させた血液試料と混合し、その後撹拌しながら少なくとも1つの凝固剤を混合物に添加する。好ましくは、凝固剤はカルシウム誘導体である。有利には、カルシウムベースの凝固剤は、生体適合性を有するカルシウム塩、例えばCaCl2、Ca(NO3)2、Ca(AcOEt)2、CaSO4から選択される。
【0030】
本発明を実施するために使用することができる他の凝固剤のうち、トロンビンに言及することができる。BCP、血液又は骨髄吸引液、及び凝固剤の混合は、凝固工程全体の間継続され、BCPの顆粒又は粒子と凝固血液又は凝固骨髄との均一な混合物の形成、特に懸濁液中におけるBCP粒子の維持を可能とするのに好適な強度のものである。この撹拌が過度である又は十分には強力でない場合、均一な混合物の製造は可能とならない。当業者は、均一な混合物の形成を視覚的に制御することができる。
【0031】
BCPに加えて、生体材料の組成物は、任意の添加物、例えばポリマー、セラミック粒子、薬学的分子を含んでいてもよく、これらの材料を使用するための条件は、それらの生体適合性、生体材料硬化(setting)反応に対する負の効果がないことである。当業者に既知のこのような添加物は、生体材料のレオロジー、そのin vivoでの挙動(硬度、吸収、骨形成)を変化させること、又は感染若しくは炎症性の現象の出現に対して作用すること(抗生物質、抗感染薬、抗炎症薬)を目的とする。
【0032】
活性成分、例えば治療用分子、例えば、例えば癌、骨粗しょう症から選択される病態を予防又は治療することを目的とする分子を本発明の生体材料中に導入することを想定することも可能であり得る。
【0033】
天然又は合成の成長因子を本発明の生体材料中に導入することも可能である。生体材料の吸収、及び体内におけるその後の動態(fate)の医療用画像による可視化を促進するバイオマーカー又は造影剤の存在を想定することも可能である。
【0034】
生体材料が目的とする患者から回収した脂肪組織、又は任意の他の組織若しくは細胞の調製物を本発明の生体材料中に導入することを想定することが可能であり、この組織又はこの調製物は、血液中又は血漿中又は生理食塩水中に事前に懸濁されている。組織又は細胞の調製物のうち、脂肪組織、血小板、骨髄細胞に言及することができる。
【0035】
粒子径を制御することでより良好な(より迅速な、より良好な品質を有する)骨組織の形成及び良好な吸収が可能となることが観察されているため、異なる粒子径を有するが、好ましくは小量の、有利にはBCPの総重量に対する重量により5%未満の、BCPの存在を想定することも可能である。
【0036】
本発明の方法によれば、BCPは、閉鎖無菌容器の空洞、例えばシリンジの内部空洞中に、配置される。レシピエントと適合性を有するドナーから事前に回収した血液又は骨髄吸引液を、この容器中に導入する。
【0037】
回収した血液又は骨髄吸引液を数秒を超える期間(5秒〜10秒)保存する必要がある場合、その早すぎる(premature)凝固を回避するために血液又は骨髄吸引液を、その回収後に直ぐに抗凝固剤と混合する。ドナー由来の血液は例えば、適当な量の抗凝固剤を含有するチューブ中に直接回収してもよい。
【0038】
抗凝固剤は、例えばクエン酸ナトリウム、また例えばヘパリンのようなカルシウムイオンのキレート剤であり得る。
【0039】
BCPと血液又は骨髄との混合物を、以下の好ましい割合で調製する:
血液(又は骨髄)の体積に対するBCPの10重量%〜90重量%、好ましくは50重量%〜90重量%、より好ましくはさらに60重量%〜80重量%(g/ml)。
【0040】
有利には、インプラントの生体適合性をできる限り確保するために、血液をレシピエント自体から回収する。本発明の一変形形態によれば、血液を、血液由来の産物、例えば血漿により置き換える。好ましくは全血を使用する。特許請求の範囲を含む本願全体において、「血液(blood)」という単語を使用する場合、その単語はその定義に血液由来の産物、例えば血漿を含む。
【0041】
好ましくは、本発明の実施においては、その回収に外科処置が必要とされない血液又は血漿を使用する。
【0042】
本発明の一変形形態によれば、そのボディ中にBCP及び必要に応じて添加物が事前に配置されているシリンジを用いて血液を回収することができる。
【0043】
BCP及び血液の最初の混合の後、例えばこのようなデバイスを使用する場合シリンジを用いた吸引により、凝固剤も混合物に添加する。
【0044】
均一な材料の形成を可能とするために、BCP、血液及び凝固剤を含有する閉鎖容器を直ぐに撹拌する。例えば、チューブ中で又はシリンジのボディ中で混合物を調製する場合、凝固が起こる間BCP粒子が懸濁液中に留まるように、その速度がBCPの粒子径に応じて設定されるロータリーシェーカー中に容器を配置する。本発明の一変形形態によれば、撹拌は、マグネチックスターラーと組み合わせた磁気ビーズにより行うことができる。
【0045】
本発明の好ましい変形形態によれば、BCP、血液及び凝固剤の混合物を含有する閉鎖容器を、BCPを沈降させるように、及びBCPで飽和したインプラントを形成するように血液凝固期の間静置させる。
【0046】
この工程の終了時には、混合物は、組成物中に導入した血液粒子、血漿及び他の分子を捕捉するフィブリンの3次元ネットワークを含有する均一な展性を有するペーストの形態である。
【0047】
本発明の生体材料の調製のために使用したデバイスのタイプに応じて、骨欠損を充填する必要がある位置に最も好適な手段を用いて上記生体材料をその後適用することができる。
【0048】
道具、例えばスパチュラを用いて(しかしインプラントの3次元構成を破損することなく)又はシリンジ若しくは別の円筒形デバイスを用い、その端部は本発明の生体材料のレオロジーに好適な開口部を形成するために事前に切断されている。
【0049】
したがって本発明の別の主題は、生体材料を生産する方法であって、少なくとも以下の工程:
(i)その大きさが40μm〜500μmである顆粒の形態のBCPと血液又は骨髄吸引液とを、血液又は骨髄の体積当たりのBCPの10重量%〜90重量%の範囲の割合で、混合する工程、
(ii)(血液又は骨髄の)凝固を引き起こすのに十分な量の少なくとも1つの凝固剤を工程(i)の混合物に添加する工程、
(iii)凝固が起こる間、BCPの均一化を促進する条件下で混合する工程
を含む、方法である。
【0050】
既に言及したように、本発明の方法においては、工程(i)〜工程(iii)を、シリンジの内部空洞において、又はその端部で閉鎖したチューブにおいて実施してもよい。凝固剤は、カルシウム誘導体、例えば上で列挙したカルシウム誘導体から、又は例えばトロンビンのような他の凝固剤から選択され得る。
【0051】
本発明の主題はまた、骨欠損を充填する方法であって、上に列挙した工程を含み、骨欠損が観察された空間に工程(iii)において得られた生体材料を適用する工程をさらに含む、方法である。この方法は、組織切開工程及び縫合工程をさらに含み得る。
【0052】
骨欠損の大きさ及び形状に応じて、本発明の生体材料による充填は、本発明の生体材料の移植部位で骨の再構築が進行する間、所要の機械的強度を罹患組織にもたらすことを可能とする骨接合と結び付けることができる。
【0053】
本発明者らが観察したように、本発明の生体材料の移植により、短期間(数週間)内で骨組織の形成を誘導することが可能となり、この骨組織は極めて豊富に血管新生していた。
【0054】
一方、40μm未満の粒子径を有するBCPを用いる同じ方法により得られる生体材料の移植によっては、十分な品質を有する及び満足のいく期間内における骨組織の形成を得ることは可能とならないことが観察された。500μmより大きい粒子径を有するBCPを用いる同じ方法により得られる生体材料の移植は、その吸収能がより低いインプラントをもたらす。
【0055】
本発明の別の主題は、本発明の方法を実施するためのキットであって、40μm〜500μm、好ましくは40μm〜400μm、有利には40μm〜300μm、より好ましくはさらに80μm〜200μmの粒子径を有するBCPと少なくとも1つの凝固剤との組合せを含む、キットから成る。好ましくは、凝固剤はカルシウム由来である。有利には凝固剤はCaCl2である。
【0056】
BCPの、及び必要に応じて回収した血液と組み合わせた抗凝固剤の抗凝固効果を相殺するために、凝固剤の量を算出する。
【0057】
血液及びBCPの混合物における凝固剤の濃度は、特に凝固剤がカルシウムに基づく場合には、好ましくは1mM〜50mM、より好ましくはさらに3mM〜35mMであるべきである。凝固剤は好ましくは、BCPの重量に対する凝固剤の溶液(ml/g)が2倍量を超えないように水溶液として添加するべきである。
【0058】
凝固剤の溶液の濃度は、これらの2つの制約に配慮するように、及び好ましくは120mM未満の濃度を有する凝固剤の溶液を使用する場合、特に凝固剤がカルシウム塩である場合、変化し得る。
【0059】
抗凝固剤上で血液を回収する場合、抗凝固剤の効果と生体材料の効果とを相殺するべきである。
【0060】
例えば、(Greiner Bio-One社から入手可能な商標Vacuette(登録商標)の、又はBecton Dickinson社から入手可能な商標Vacutainer(登録商標)の)従来の条件下でクエン酸ナトリウム上で回収した血液に関して、並びにBCP50mg及び血液100μlの割合において、本発明者らは、最終体積の1/5(すなわち20μl)の、80mMのカルシウム溶液を添加する(最終濃度13.3mM)。溶液の濃度は最大120mMであり得る。それを超えて(Above)過剰のカルシウムが存在し得るが、これは再び凝固を抑制する。
【0061】
血液を抗凝固剤上で回収しない場合、生体材料上で血液を直接回収し、直ぐに(in a second instance)カルシウムを添加する。この場合、血液体積の1/5の、およそ12mM〜60mMの範囲の濃度を有するカルシウム塩の水溶液を添加することが可能である。
【0062】
このような組合せは、
(a)BCPが配置される無菌の内部空洞を含むデバイス
(b)凝固剤を含有する無菌リザーバ
を含む無菌キットの形態であり得る。
【0063】
リザーバ(b)は、デバイス(a)の一部であってもよく、又は凝固剤を取り出し、デバイス(a)の内部空洞中に移すことができるチューブ若しくはボトル、若しくはBCPが配置される空洞中に凝固剤を注入することを可能とするシリンジのような別個の実体であってもよい。
【0064】
有利には、デバイス(a)は、内部空洞中への血液の導入を可能とする手段、例えば個体から直接若しくはリザーバから血液試料の回収を可能とする手段、又はBCPとの混合を可能とするような内部空洞中への血液試料の注入を可能とする手段を含む。回収した血液をBCPを含む空洞中に直接導入すること、又は抗凝固剤を配置したリザーバに血液を回収し、その後BCPが存在する空洞中に全体を移すことを想定することが可能である。骨髄吸引液を使用する場合、骨髄の吸引のための手段を用意する。
【0065】
デバイス(a)の内部空洞は、本発明の生体材料を製造するために必要な量の血液又は骨髄、及び混合物の他の構成要素、例えば凝固剤、活性成分、組織又は細胞の調製物をその中に導入することを可能とする大きさを有する。
【0066】
また有利には、デバイス(a)は、骨欠損が観察された区域に生体材料を適用することを可能とする手段を含む。
【0067】
このようなデバイスは、実験のセクションにおいて例示されるように、円筒形デバイス、例えばチューブ又はシリンジから成り得る。
【0068】
その内側にBCPを保存し、その中に血液及び凝固剤を注入し、生体材料を放出するために、生体材料が形成された場合それに対してピストンを装着することができるチューブを含む、特許文献2に記載されるもののようなデバイスを使用することを想定することも可能である。
【0069】
Vacutainer(登録商標)タイプのデバイス、すなわち所定の量の血液を回収することを可能とするシリンジが装着された真空下のチューブであって、その内部空洞においてBCPでプレコンディショニングされた、チューブを使用することを想定することも可能である。
【0070】
本発明の別の主題は、血液タンパク質の3次元ネットワークにおいて又は骨髄タンパク質のネットワークにおいて実質的に均一に分散した、その大きさが上で規定された顆粒の形態のBCPを含む移植可能な生体材料から成る。
【0071】
有利にはこの生体材料は、上で規定したようなBCP、及び血液(又は骨髄)タンパク質の凝固物を、展性を有するペーストの外観を有する実質的に均一な混合物の形態で含む。
【0072】
「展性を有するペースト」という表現は、それ自体は液体のような流動性を有しないがその機械的強度は十分に低く、或る個体が手作業で(特にスパチュラ又はシリンジのピストン等の器具を用いて)及ぼした圧力の効果の下で成型することが可能である材料を意味すると理解される。
【0073】
このような生体材料は、骨インプラントの製造が骨折、外傷若しくは腫瘍由来の骨質の喪失、外科処置後の欠損を充填すること、又はプロテーゼの適合を補助することを包含するか否かに関わらず、骨インプラントの製造のために使用することができる。
【0074】
例えば実施例に示すように生体材料を、骨欠損を充填する必要がある区域における外科処置により導入することができる。切開後、生体材料を移植し、再び切開部を閉じる。
【0075】
本発明の生体材料を、骨組織による欠損区域の定着を待つ間、アセンブリの安定化を可能とするように、より大きい機械的強度のために骨接合と組み合わせることができる。
【0076】
生体材料とプロテーゼとを組み合わせることを想定することが可能である。本発明の生体材料でプロテーゼをコーティングすることにより、プロテーゼにおける又はプロテーゼの周囲における生きた骨組織の移植を促進することが可能となる。
【0077】
本発明の生体材料は、骨組織の産生のための支持体としてin vitro又はex vivoで使用することもできる。
【0078】
実際に、この生体材料の周囲における骨の細胞(bone cells)の培養により、その後移植することができる骨組織を産生することが可能となる。
【0079】
本発明の別の主題は、骨インプラントを製造するための上で記載されるような生体材料のin vitro又はex vivoでの使用である。
【0080】
本発明によれば、生産することが望まれるインプラントの形状を有する型において本発明の生体材料上で骨の細胞を培養することが可能である。これらの条件下での細胞の培養により、適当な形状及び寸法を有する生体適合性を有するインプラントを得ることが可能となる。
【0081】
実験の節
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】BCP粒子の周囲における凝固血液のインプラントによる骨組織の形成を示す図である。 皮下(A及びC)部位及び筋肉内(B及びD)部位における移植の4週間後にHESで染色したインプラントの断面。 尺度:A及びB:500μm C及びD:50μm 白色の矢印:骨芽細胞 黒色の矢印:骨細胞(osteocytes) 黒色の矢じり:血管 白色の矢じり:破骨細胞
【図2】移植の4週間後の血液/BCPインプラントの切片を示す図である。 (A):細胞の細胞質中のオステオカルシンの褐色を示す、免疫血清とのハイブリダイゼーション(白色の矢印) (B):非免疫血清とのハイブリダイゼーション−尺度:10μm (C):Goldner染色−尺度:50μm 黒色の矢印:血管及び骨細胞
【図3】4週間後の血液/BCPインプラントの走査型電子顕微鏡観察の結果を示す図である。 (A)粒間空間におけるコラーゲンマトリクス−尺度:10μm (B)(A)の拡大図−尺度:1μm (C)2〜3の視認可能な核を有する顆粒に付着した2つの破骨細胞−尺度:10μm (D)機能的毛細血管−尺度:10μm
【図4】インプラントの走査型電子顕微鏡観察の結果を示す図である。 (A)BCP/凝固血液 (B)BCP/凝固血漿 尺度:1μm
【図5】移植の4週間後のBCP/血漿インプラント由来の骨組織の形成を示す図である。 皮下部位(A、C) 筋肉内部位(B、D) 尺度:500μm(A、B) 50μm(C、D)
【図6】ヌードタイプの免疫抑制マウスにおける皮下移植後の、BCP微小粒子(40μm〜80μm)と組み合わせたC57BL/6マウスの血液(A、B)及びヒト血液(C、D)から調製した生体材料の骨形成特性の比較を示す図である。低(A、C)倍率及び高(B、D)倍率での観察結果。 尺度:100μm。
【図7】マウスにおける皮下移植後の骨の形成に対するBCP微小粒子の大きさの影響を示す図である。(A)80μm〜200μmの粒子と混合した40μm未満の大きさを有する大量の微細な粉塵の、(B)40μm〜80μmの粒子の、(C、D)80μm〜200μmの粒子の、(E、F)200μm〜500μmの粒子の形態のBCPと組み合わせたC57BL/6マウスの血液から、インプラントを調製した。図D及び図Fはそれぞれ、インプラントC及びインプラントEのより高い倍率の図に対応する。尺度:100μm。
【図8】100μlのC57BL/6マウス血液と漸増量のBCPの微小粒子(40μm〜80μm)とから調製したインプラントを示す図である:(A)10mg、(B)30mg、(C)50mg及び(D)70mg。尺度:100μm。
【図9】イヌのX線観察結果を示す図である。キャリブレートしたBCP微小粒子(80μm〜200μm)の周囲における凝固全血:(A)50%の比を有するBCP/血液(凝固期の間、微小粒子は血液の懸濁液中に維持される)(方法No.1);(B)血液中の最大濃度のBCP(凝固の間、微小粒子は沈降する)(方法No.2)から調製したインプラント。白色の矢印は、骨幹端とインプラントとの間の放射線透過性のライン(line)の存在を示す。
【図10】ビーグル犬における移植を示す図である。手術後のX線観察結果。左側の(A)では、インプラントはBCP単独から成る。右側の(B)では、インプラントは、インプラントの調製の方法2による、最大の比のBCPを有するBCP/血液混合物から成る。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0083】
1.原理:
これは、手術室で実施した即時的な手順である。原理は、ポリプロピレンシリンジのボディにおいて、BCP粒子と抗凝固剤、すなわちカルシウムイオンのキレート剤上で回収した自家全血(50%(w/v))とを混合することにある。CaCl2の添加により、凝固を開始させることが可能となる。その後シリンジを、室温で10分間ロータリーミキサー上に配置し、これにより凝固の過程の間、血液の懸濁液中にBCP粒子を維持することが可能となる。凝固血液における粒子の均一な分布がこのようにして得られる。その後シリンジの端部を切断し、ピストンを用いてシリンジからインプラントを押し出し、移植部位に配置する。
【0084】
動物(C57BL/6マウス)において得られた結果:
異所性(ectopic)部位(皮下及び筋肉内)での生体材料の移植により、4週間後に非常に豊富に血管新生した石灰化した未成熟な骨組織が完全に定着したインプラントによる、その骨誘導特性が実証される。
【0085】
2.材料及び方法
2.1.二相性リン酸カルシウム粒子:
二相性リン酸カルシウム(BCP)生体材料は、60%のヒドロキシアパタイト(HA;Ca10(PO4)6(OH)2)、及び40%のリン酸三カルシウム(TCP;Ca3(PO4)2)から構成される。80ミクロン〜200ミクロンのキャリブレートしたBCP粒子は、GRAFTYS SARL社(Aix-en-Provence, France)により提供された。粒子を、180℃で2時間加熱することにより滅菌した。
【0086】
2.2.インプラントの調製、及び外科処置:
−マウスにおける皮下移植
獣医サービス指令(Direction of Veterinary Services)(Direction des Services Veterinaires)の規則に従って実験を行い、動物実験法に関する地域倫理委員会(Regional Ethics Committee for Animal Experimentation)(Comite Regional d'Ethique pour l'Experimentation Animale(CREEA))による認可を受けた(authorized)。麻酔した10週齢のC57BL/6マウスから、心臓内穿刺によりクエン酸ナトリウム(抗凝固剤)上で全血を回収する。幾つかの実験に関して、1800gで15分間の遠心分離により全血から血漿を調製した。
【0087】
方法1:100μlの全血(又は血漿)と50mgのBCP粒子とを1ml容シリンジ中で混合することによりインプラントを調製する。その後20μlの1%CaCl2溶液を添加することにより、凝固の活性化を得る。凝固の期間(5分〜10分)の間、シリンジを、New Brunswickのローラー(組織培養ローラータイプ、モデルTC−7 M1053−4005)上に配置する。これにより、シリンジ自体の回転運動、及び血塊の懸濁液中のBCP粒子の維持が可能となる。シリンジの端部を切断した後、ピストンによりシリンジからインプラントを押し出し、C57BL/6マウスの皮下に(SC)又は筋肉内に(IM)移植する。
【0088】
方法2:最大濃度の粒子、したがって最大のBCP/血液比を有するインプラントを調製する。それに関して、微小粒子が血液中で自然に沈降するのを可能とするように、BCP/血液/カルシウム混合物を、凝固の間固定位置に維持する。凝固血液における最大濃度の微小粒子がこのようにして得られると考えられる。
【0089】
皮下インプラントは背臥位で皮膚の下に配置し、筋肉内インプラントは切開した後に各大腿の筋肉塊の間に配置した。部位(SC及びIM)の各々で、移植の間に出血が誘導されなかったことを確認する。
【0090】
各移植実験において、4%イソフルランの吸入によりC57BL/6マウスを麻酔する。各マウスに対して2つのSCインプラント及び2つのIMインプラントを配置する。幾つかの実験では、各マウスに、各部位に1つの血液/BCPインプラント及び1つの血漿/BCPインプラントを配置した。4週間〜8週間後、CO2の吸入により動物を屠殺し、インプラントを解析のために取り出す。
【0091】
−ラットにおける骨部位での移植
本発明者らがラットに適用したプロトコルは、動物実験法に関する地域倫理委員会により承認された(NCA/2007/12−06)。ニース大学医学部の中央動物飼育施設(central animal house)(Animalerie Centrale)でこれらの予備実験を実施した。
【0092】
本発明者らは、プレート−スクリュー(plate-screw)骨接合と組み合わせた、重篤な大きさ(6mm)の大腿骨幹の断続的(interruptive)・分節状(segmental)の骨質の喪失のモデル(本発明者らの研究室で開発したモデル)を使用した。本発明者らは、ラット1匹当たり単一の大腿骨に対して手術を行い、本発明者らの生体材料(自家全血/BCP(80μm〜200μm))により骨質の喪失を充填する。臨床的に(疼痛がないこと、遊歩(deambulation)、全身の状態)、並びに0日、7日、15日、30日、45日、60日及び90日での写真により放射線学的に、ラットをモニタリングする。3ヶ月の終了時に、動物を屠殺し、大腿骨を回収し、骨接合材料の切除後にホルマリン中で骨を固定し、その後メタクリル酸メチル樹脂に埋め込み、組織学的研究を行う。
【0093】
第1の手順時に、50%(重量/体積)の粒子、すなわち手術前に動物から回収した全血150μl当たりBCP75mgの割合を用いて、インプラントを骨欠損の大きさに作製した。15μlの2% CaCl2の添加により凝固を開始させ、血液の懸濁液中にBCP粒子を維持するように、及び生体材料の均一性を確保するように、凝固が得られるまで連続的な回転により均一化を行う。
【0094】
−ビーグル犬における骨部位での移植
これは、ビーグル種の成体のイヌにおいて作製された、外側大腿顆の領域における重篤な大きさのキャリブレートした円筒形の空洞性(cavitary)骨質の喪失のモデルである。各々のイヌに関して、2つの大腿顆を処置した(tackled)。手順の始めに動物の頚静脈の領域における穿刺により全血(3.5ml)を回収し、生体材料を調製するのに使用する。各外側大腿顆の領域において8mm×10mmの円筒形の骨喪失を作製し、生理食塩水による洗浄及び吸引により腐骨を慎重に取り除く。
【0095】
各動物に、異なる組成であるが作り出した欠損を完全に充填するように調製された2つのインプラントを配置した。すなわち:
【0096】
一方では、試験される生体材料は、50%(重量/体積)すなわちBCP330mg及び全血660μlの比を有するBCP(80μm〜200μm)と血液との混合物から成る。混合物を調製するのに用いたシリンジの回転により、凝固の間BCP粒子を懸濁液中に維持する。
【0097】
他方では、BCPを単独で移植し、生理食塩水中で湿らせるが、これは660mgであり、対側の(controlateral)インプラントと同じ体積を占める。
【0098】
実験の期間は8週である。
【0099】
手術後のX線写真を、直ぐに及びENVNでの実験の終了時に撮影した。
【0100】
2.3.組織学的分析:
切り出したインプラントを10%緩衝化ホルマリン溶液中で24時間固定する。各インプラントをその後、室温で24時間10%(w/v)エチレンジアミン四酢酸(EDTA)溶液中で脱灰する又は脱灰しない3つの小片に切断し、その後パラフィン中に埋め込む。4μmの切片を調製し、脱パラフィン化し、湿らせ、ヘマトキシリン、エリスロシン、サフラン(HES)で染色する。ZeissのAxioskop顕微鏡を使用する光学顕微鏡観察により切片をその後検査する。AxioCam HRcカラーカメラ(Zeiss, Le Pecq, France)により写真を撮影する。一方で原線維骨(fibrillar bone)により、他方でBCP粒子により占有される表面積を定量化するために、インプラントの各画像を、インプラントの中央軸に沿って0.6mm2に等しい表面積を有する3つの区域に細区画化した。これらの3つの区域の各々において、原線維骨組織により占有される面積を、AxioVision Rel.4.6ソフトウェアを使用して測定した。この解析を、3つのSCインプラント及び3つのIMインプラントに関して実施した。2人の異なる観察者が光学顕微鏡(100×)下で毛細血管及び多核巨細胞をそれぞれ計測することにより、これらの同じ区域において、血管及び破骨細胞の数を評価した。1mm2当たりの破骨細胞及び血管の密度を、平均±標準偏差の形で表す。使用した統計試験はスチューデントのT検定である。0.05未満のp値に対して有意性を定義した。
【0101】
2.4.Goldner染色:
7μmの厚みを有する脱灰していないインプラントの切片を、骨組織の石灰化を評価すること及び石灰化していない類骨組織(赤色)から石灰化した組織(青色/緑色)を識別することを可能とするGoldnerのトリクロム法により染色した。簡潔に述べると、脱パラフィン化した切片を再水和し、その後ワイゲルトのヘマトキシリンの存在下で20分間インキュベートし、流水でリンスし、1%酸性アルコールの存在下で分別し、流水で5分間洗浄し、その後蒸留水でリンスする。その後切片を、キシリジンポンソー/酸性フクシン/アゾフロキシン/酢酸の溶液中における5分間のインキュベーションにより染色し、1%酢酸中でリンスし、リンモリブデン酸/オレンジGの存在下で20分間インキュベートし、1%酢酸中でリンスし、ライトグリーン/酢酸の存在下で5分間染色し、1%酢酸中で5分間洗浄し、乾燥し、Entellan封入媒体(Merck, Darmstadt, Germany)においてマウントする。
【0102】
2.5 マウスオステオカルシンの免疫組織化学的検査
本発明者らは、タンパク質のN末端のアミノ酸1〜20に対応する合成ペプチドに指向性を有するマウスオステオカルシンに対する免疫精製ポリクローナル抗体(Alexis Biochemicals, Lausanne, Switzerland)を使用した。簡潔に述べると、パラフィン中の7μmの切片を、脱パラフィン化し、エタノール中で再水和し、PBS中で洗浄し、PBS中の0.3%H2O2の存在下で30分間インキュベートした。PBS中における2回の洗浄後、1.5%ヤギ血清(ブロッキング緩衝液)の存在下で30分間、スライドをインキュベートした。PBS中で洗浄した後、ウサギ免疫グロブリンに対するビオチン標識抗体の存在下でのインキュベーションと、ペルオキシダーゼによる可視化のための手順とを、ABC標識キット(sc−2118、Santa Cruz, CA, USA)を使用して行った。その後切片をペルオキシダーゼの基質の存在下で10分間インキュベートし、細胞核をヘマトキシリンで3分間染色した。脱水後、Entellan封入液(Merck)中でマウント処理を行う。ブロッキング緩衝液の存在下でスライドをインキュベートすることにより対照を作製する。
【0103】
2.6.走査型電子顕微鏡観察
移植前、及び移植の4週間後の、凝固血液/BCP又は凝固血漿/BCPから成るインプラントを、緩衝化グルタルアルデヒド溶液中において4℃で12時間固定した。試料をその後洗浄し、30%グリセロールの存在下で1時間インキュベートし、その後液体窒素中で凍結し、破砕した。漸増濃度のエタノールの存在下での脱水後、それらをヘキサメチルジシラザン(Sigma-Aldrich, L'isle d'Abeau Chesnes, France)中に5分間浸漬し、その後室温で乾燥した。それらをその後アルミニウム支持体上に固定し、その後金−パラジウムの層でコーティングした(Polaron、E5100、UK)。その後日本電子株式会社(日本)の6700F型の走査型電子顕微鏡を使用して検査を行った。
【0104】
3.結果
3.1.凝固血液/BCPの皮下インプラント及び筋肉内インプラントの肉眼的解析及び顕微鏡的解析
BCP粒子の非存在下での凝固血液の移植によっては、骨組織の形成は可能とならなかった。4週間後、小量の線維状組織のみが移植部位に見出された。
【0105】
4週間後及び8週間後の、BCP粒子の周囲における凝固血液のインプラントの切り出し及び肉眼的検査により、その堅固な硬さ(firm consistency)とその表面における多数の小血管の存在とを観察することが可能となった。宿主組織の炎症は観察されなかった。
【0106】
移植の4週間後における血液/BCPインプラントのパラフィン切片の組織学的分析により、SCインプラント(図1A)及びIMインプラント(図1B)の両方に関して、BCPと密に接触した未成熟な骨組織による粒子間空間全体への完全かつ再現可能な定着が明らかとなった。より高い倍率での検査により、IM部位(図1D)ではSC部位(図1C)よりもコラーゲンマトリクスがより成熟していることが示唆される。粒子間空間において発生した原線維骨の量を評価するために、骨組織により占有される面積とBCPにより占有される面積との間の比を、材料及び方法の節で記載したように算出した。これによって、IMインプラントにおける骨組織の49.63±5.08%、及びSCインプラントにおける骨組織の42±8.33%により、SC部位とIM部位との間の有意差を示すことが可能となった(n=9、p=0.035)。これらの結果は全て、SC部位及びIM部位の両方において粒子間空間に完全に定着しているが、発生した組織の量はIMインプラントにおいて有意に大きいことを示している。
【0107】
各々の部位で、本発明者らは、全てのインプラントにおいて均一に分布した、コラーゲン性マトリクス内における多数の血管の存在を観察した(図1C、図1D、黒色の矢じり)。それらの計測によって、それぞれ61.4±10.2血管/mm2及び51.10±10血管/mm2の平均値により、IMインプラントとSCインプラントとの間の有意差が明らかとなった(n=9;p=0.045)。本発明者らは、BCP粒子に付着した多数の多核巨細胞も観察した(白色の矢じり)。これらの細胞は、過去の研究において本発明者らが破骨細胞と同定したものと同一である(非特許文献10)。それらの計測により、IMインプラントにおける88.51±14.60破骨細胞/mm2、及びSCインプラントにおける93.13±14.40破骨細胞/mm2の平均値、すなわち統計的には有意でない差異が明らかとなった。これらの細胞の高い吸収能は、微小粒子及び細胞質間断片化結晶の存在により、幾つかのBCP粒子の外形の不規則性、より低く不均一な密度を有するそれらの分解組織(texture)により、強く示唆されている。最後に、本発明者らは、BCP粒子の表面で整列した立方状の(cubic)骨芽細胞(図1C及び挿入部、図5C、白色の矢印)、及びコラーゲンマトリクス中に埋め込まれた骨細胞型の多数の細胞(図1D、図2B、図3A、図3B、黒色の矢印)の存在を観察した。これらの細胞の成熟骨芽細胞表現型を、オステオカルシンの細胞質内免疫組織学的検出により実証した(図2A)。さらに、全てのインプラントが、移植の4週間後のGoldner染色後に陽性であり、この新生した組織が石灰化していることが示された(図2C)。
【0108】
走査型電子顕微鏡観察による4週間後のIMインプラントの解析によって、BCP粒子の微小多孔性、粒子間空間を満たすコラーゲンマトリクス、赤血球を含有する機能的毛細血管の存在(図3A、図3D、白色の矢印)、及びBCP顆粒に付着した破骨細胞の存在(図3C、黒色の矢印)を観察することが可能となった(図3)。さらに、上記解析により、コラーゲンマトリクス中に埋め込まれ、骨芽細胞型の細胞周囲の空間により取り囲まれる、あらゆる方向に放射状に広がる多数の伸長部を保有する骨細胞型の星形の細胞の存在が確認された(図3A 挿入部、3B)。
【0109】
移植の8週間後に得られた結果によっては、4週間後のインプラントとの有意差は明らかにならなかった。SCインプラント及びIMインプラントの全てに、同じ組織学的特徴を示す未成熟な骨が完全に定着している。
【0110】
3.2.凝固血漿/BCPのSCインプラント及びIMインプラントの肉眼的解析及び顕微鏡的解析:
骨新生における血漿及び血液細胞のそれぞれの役割を分析するために、本発明者らは、各マウスに対して及び各部位(SC及びIM)に、凝固血液/BCPのインプラント及び凝固血漿/BCPのインプラントを並行して移植した。
【0111】
2つのタイプのインプラント(凝固血液/BCP及び凝固血漿/BCP)のフィブリンネットワークの構造を、走査型電子顕微鏡観察により解析した。これにより、凝固血液により得られるフィブリンメッシュが、凝固血漿により観察されるフィブリンメッシュより大きいことが示された(図4A、図4B)。予想通り、赤血球及び血小板が、凝固血液/BCPのインプラントにおいて観察される主要な細胞である。それらの形状及びそれらの構造の保存により良好な生存能が実証され(図4A)、これにより血液及びBCP粒子の混合物が血液細胞に対して有害な効果を有しないことが示される。
【0112】
4週間後及び8週間後の、凝固血漿/BCPのインプラントの切り出し及び肉眼的検査により、凝固血液/BCPのインプラントの特徴と類似の特徴、すなわち堅固な硬さと多数の視認可能な表面血管とが示された(結果は示していない)。4週間後の組織学的分析により、SCインプラントに新生骨が約80%も定着していることが示された(図5A)。IMインプラントの解析により、75%のケースでは完全な定着が(図5B)、25%のケースではより線維状かつ緩い組織の小さい中心区域の存在が(結果は示していない)、示された。各々の部位では、新生した原線維骨組織が、凝固血液/BCPのインプラントにおいて得られた組織の特徴と同じ特徴を示した(図5C、図5D)。結論として、これらの結果によって、全血の使用により両方の部位におけるインプラントの完全な定着を得ることが可能となることが実証される。凝固血漿とBCP粒子との組合せは、不完全な定着しかもたらさない。
【0113】
3.3 免疫抑制マウスにおける皮下移植後の、凝固ヒト血液と40μm〜80μmのBCP粒子とから構成されるインプラントの肉眼的解析及び顕微鏡的解析
本発明者らは、ヌードタイプの免疫抑制マウスにおける移植後の、40μm〜80μmのBCP粒子の周囲における凝固ヒト血液から調製した生体材料により誘導される骨の形成を分析した。並行して、同じ動物において、本発明者らは、マウス血液により誘導される骨の形成とヒト血液によりもたらされる骨の形成とを同じレシピエント動物において比較するために、C57BL/6マウス由来の血液から調製した生体材料を移植した。移植の6週間後、インプラントを回収し、固定し、先に記載されるように組織学的分析を実施した。
【0114】
組織学的研究の前でさえも、本発明者らは、ヒト血液から調製したインプラントの極めて異常な硬度を観察しており、一方でマウス血液のインプラントはより弾性的な硬さを有していた。
【0115】
マウスインプラントの組織学的分析により、シンジェニックな系において実施した過去の実験(C57BL/6マウスにおけるC57BL/6マウス血液の移植)において見出されたものと同等の品質を有する未成熟な骨組織が明らかとなった。本発明者らは、骨の細胞、骨芽細胞、骨細胞及び破骨細胞を同定することができる高度に血管新生したコラーゲン性原線維組織を観察した(図6A、図6B)。
【0116】
ヒトインプラントの組織学的分析により、成熟骨組織による定着を伴う非常に異なる結果がもたらされた。骨の細胞はより少数であり、骨細胞に偏っている。支持組織は、未成熟な造血細胞、例えば赤芽球及び脂肪細胞の存在を特徴とする造血プレート(hematopoiesis plates)をその内部に有する、より良好に構造化され整列しかつより高密度なコラーゲン線維への組織化を示す(図6C、図6D)。切断する際のこれらのインプラントの硬度により、この組織が高度に石灰化していることが示唆された。したがって本発明者らは、成熟層状骨組織を得た。
【0117】
ヒト及びマウスの血液の移植後に得られた骨組織の成熟度における差異は、これらの2つの種の血液の異なる特性、細胞組成及び/又はタンパク質組成、成長因子、可溶性因子、並びにフィブリンネットワークと関連する特性に起因している可能性がある。関与するメカニズムを理解することを試みるために、実験を実施する。
【0118】
本発明者らの結果と文献の結果との比較により、本発明者らがヒト血液から得た成熟骨組織が、複数のグループにより記載された、選択し、増殖させ、ex vivoで骨芽細胞に分化させ、その後BCP粉末と組み合わせ、免疫抑制マウスに皮下移植したヒト間葉系間質細胞(MSC)の移植後の骨組織と非常に類似していることが示された。
【0119】
したがってこれらの結果は全て、臨床上の用途にとって非常に有望である。
【0120】
3.4 骨の形成に対するBCPの粒子径の影響
本発明者らは、4つの形態のBCP、すなわちそれぞれ40μm〜80μm、80μm〜200μm及び200μm〜500μmにキャリブレートした3つの微小粒子形態、並びに80μm〜200μmの粒子と大きさが40μmにはるかに満たない(much less than)微細な粉塵との混合物(微細な粉塵の割合は、混合物の総重量に対する重量により40%である)を試験した。既に記載した条件下で、C57BL/6マウス血液とこれらの形態のBCPの各々とからインプラントを調製した。シンジェニックC57BL/6マウスにおける皮下移植の8週間後に、骨の形成を分析した。
【0121】
図7の結果は、80μm〜200μmの微小粒子から成るインプラントが、既に記載した特徴を有する未成熟な骨組織による最良の定着を非常に再現性良くもたらすことを示す(図7C、図7D)。図7Aに示したように、80μm〜200μmのBCP微小粒子と混合したBCP粉塵(40μm未満の大きさ)の存在は、骨の形成に対して極めて有害である。実際に、常に厳密に末梢冠(peripheral crown)に制限されたままであるインプラントの定着が観察されている。40μm〜80μmの粒から成るインプラントは良好な定着をもたらすが、80μm〜200μmのインプラントよりも再現性は低い。実際に、どういうわけか、図7Bに示すように、中央の定着不良が観察されることがある。最後に、200μm〜500μmの粒から成るインプラントには常に定着するが、この定着は満足度の低い品質を有するより線維状かつ緩い組織によるものである(図7E、図7F)。
【0122】
これらの結果により、本発明者らの生体材料においては、80μm〜200μmの顆粒度が、異所性部位での骨の形成に対してより好ましいことが実証される。
【0123】
3.5 骨の再構築のための最適なBCP/血液比の決定
本発明者らの生体材料中に、同じ体積の血液に対して可変量のBCP微小粒子を組み込むことが可能である。理想的な比の決定は、その開発において重要な工程であった。マウスにおける皮下部位での移植に関する複数の実験、及びウィスターラット及びビーグル犬において骨部位で実施した予備実験により、本発明者らは最良のBCP/血液比を特定することが可能となった。
【0124】
3.5.1.マウスにおける皮下異所性部位での移植
本発明者らは、固定量の血液(100μl)、固定量のCaCl2(10μl)、並びに漸増量の40μm〜80μmのBCP微小粒子(10mg、30mg、50mg及び70mg、すなわちBCP/血液比10%、30%、50%及び70%(重量/体積))から成るインプラントを調製した。ローラー上での回転により、凝固の間、BCP粒子を血液の懸濁液中に維持した(方法1)。これらのインプラントは、移植時には同等の大きさを有しており、それぞれの体積は、112μl、116μl、120μl及び124μlであった。
【0125】
図8に示されるように、移植の4週間後に、本発明者らは、インプラントの最終的な大きさが組み込んだBCPの初期重量と比例していること、及び全てのインプラントが同等の粒子密度を有することを観察した。さらに、未成熟な骨組織による定着は、BCP/血液比に関わらず同じであった。
【0126】
これらの結果により、凝固時にシリンジの回転により得られる初期インプラントにおける粒の均一な分散は、長時間維持されないことが示される。反対に、in vivoでのフィブリンゲルの自然分解とおそらく関連する、粒子のパッキングの現象が起こる。このパッキングは、初期の比に関わらず所定の体積に対して同じ濃度の粒をもたらすため、骨誘導現象が同じであることは当然であるように思われる。
【0127】
その後骨部位で実施した実験により、これらの結果が確認された。
【0128】
3.5.2.ラットにおける骨部位での移植
本発明者らは、ラット1匹当たり単一の大腿骨に対して手術を行い、本発明者らの生体材料(自家全血/BCP(80μm〜200μm))により骨質の喪失を充填する。臨床的に(疼痛がないこと、遊歩、全身の状態)、並びに0日、7日、15日、30日、45日、60日及び90日での写真により放射線学的に、ラットをモニタリングする。3ヶ月の終了時に、動物を屠殺し、大腿骨を回収し、骨接合材料の切除後にホルマリン中で骨を固定し、その後メタクリル酸メチル樹脂に埋め込み、組織学的研究を行う。
【0129】
第1の手順時に、50%(重量/体積)の粒子、すなわち手術前に動物から回収した全血150μl当たりBCP75mgの割合を用いて、インプラントを骨欠損の大きさに作製した。15μlの2% CaCl2の添加により凝固を開始させ、血液の懸濁液中にBCP粒子を維持するように、及び生体材料の均一性を確保するように、凝固が得られるまで連続的な回転により均一化を行う。
【0130】
本発明者らは、非常に再現性良くまた7日目の最初のX線写真から、生体材料と骨幹切片との間の接着がないことを反映する、骨表面とインプラントとの間の放射線透過性のラインの出現を観察した(図9A)。BCPが血液中において最大の濃度である(凝固の間、微小粒子は沈降する(方法No.2))場合、生体材料と骨幹切片との間の満足のいく接着が観察される(図9B)。
【0131】
3.5.3.インプラントを調製する2つの方法により得られた結果の比較
ラット(図9B)並びにイヌ(図10A及び図10B)の骨部位において、X線解析により、この新しいプロトコルを用いることで、正面のX線に対してはインプラントの縮みがないこと、及び側面のX線に対してはラインがないことが示された。異所性部位のマウスでは、本発明者らは、骨の形成に関する結果における差異を観察しなかった。
【0132】
3.5.4.考察:
沈降する生体材料の骨移植の場合(方法2)には、本発明者らがラット及びイヌに関して撮影したX線写真において観察することができるようにインプラントの寸法は低減せず、インプラントが骨と密に接触して正確に装着された場合には、インプラントは最適な形で骨再生(osteoconduction)現象及び骨誘導現象の利益を受ける。
【技術分野】
【0001】
本発明は、凝固血液又は凝固骨髄吸引液、及び二相性リン酸カルシウムセラミック粒子を含有する新規な生体材料、並びにその調製のための方法、並びに骨組織再生を可能とするインプラントの生産のためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
外傷、より稀に腫瘍により主に生じる骨質喪失の再構築は、整形外科医が直面する主要な困難の1つである。最も一般的には腸骨稜から採取した海綿状又は皮質海綿状の骨組織の自家移植片の対象となるのは「狭い(narrow)」偽関節(骨質喪失が実質的である骨折部の骨緻密化の不良)から5cm〜6cmの骨喪失までの小さな欠損である(黄金律)。大きな欠損(≧6cm)は、はるかに煩雑な手順、血管付き骨移入(vascularized bone transfers)又はMasquelet手順を必要とする。それでも、入手可能な自家骨の量は限られており、骨緻密化は依然として不規則であり、これらの様々な技法は移植片を採取する部位で術後の合併症を非常に多く引き起こすものである。
【0003】
臨床業務において利用可能な様々な生体材料により、理論上は、自家移植の欠点を回避することが可能となる。残念なことに、それらのいずれも骨移植の結果に等しくなく、骨質の大きな喪失の再構築を可能とすることがない。
【0004】
現在研究されている代用骨の大部分は、数週間のin vitroでの選択及び細胞培養後に骨髄から得られた間葉系幹細胞と生体材料とを組み合わせるものである。このアプローチは労力を要しかつ高価であり、そのことが臨床上の利益を制限している。
【0005】
非特許文献1は、脱石灰化した骨粉、又は凝固血液のいずれかを含有するインプラントを記載している。複数の著者が、血液と合成の生体材料との組合せを研究している。非特許文献2は、脱石灰化したウシ骨粉末と血液とを含有するインプラントを記載している。非特許文献3は、グリセロールリン酸緩衝液中にキトサンを含有するポリマーの溶液とin situで凝固する血液とを含有するインプラントを記載している。非特許文献4は、血液とポリ乳酸誘導体(Polyfibre(登録商標)又はPolyfoam(登録商標))とを含有するインプラントを記載している。非特許文献5は、ウシアパタイトと静脈血とを含有するインプラントを記載している。特許文献1は、ポリマーゲルでコーティングされた顆粒材料から成る生体材料を記載しており、この生体材料は、骨欠損を充填しなければならない部位にスパチュラ又はシリンジを使用して適用するペーストを形成するために任意の種類の液体、特に血液と混合することができる。特許文献2は骨髄を含有する複合材料であって、生体適合性を有し多孔性の移植可能なマトリクス、及び凝固した材料、例えば骨髄、血液、血漿の凝固物を含む、複合材料を記載している。
【0006】
しかし、従来技術において記載されたこれらの移植可能な材料のうち、欠点を有しないものは1つもない。
【0007】
支持体(脱石灰化した骨、合成ポリマー等)と組み合わせる前に骨髄細胞の培養を必要とする材料は、使用するのに長い時間がかかり、またインプラントを装着する数週間前に治療対象の個体から骨髄を回収することを必要とし、そのことがそれと関連する手順及びリスクを増大させる。
【0008】
支持体と凝固していない血液とを組み合わせた生体材料によっては、インプラントを構築することは可能とならない。
【0009】
幾つかの支持材料と凝固血液との組合せが提案されているが、特にこの方法によっては均一な生体材料の製造は可能とならないため、得られる結果は必ずしも満足のいくものではない。
【0010】
支持体と凝固した又は凝固していない血液との組合せにより得られるこのような材料は、骨緻密化の問題がそれほど重要でない顎顔面外科処置に現在まで使用されているが、骨幹骨の修復にはほとんど又は全く使用されていない。
【0011】
特許文献2の場合には、教示される方法は、少なくとも5mmの脱石灰化した皮質骨線維と、及び凝固した材料、好ましくは骨髄由来の凝固した材料と組み合わせた、少なくとも1mmの最小の大きさを有する顆粒の形態の多孔性の脱石灰化した骨から成る支持材料を使用することにある。提案される例の全てが骨髄細胞を含む。
【0012】
本発明は従来技術の欠点を克服することを可能とし、特に本発明は、培養工程を使用することを必要とすることなく、合成の支持体(したがって容易に製造することができ一定かつ均一な特性を有する)、及び凝固血液から移植可能な生体材料を得ることを可能とし、この材料は卓越した生体適合性を有し、骨組織の迅速な再構築を可能とする。本発明は、硬度及び血管新生の観点で卓越した品質を有する骨の産生も可能とする。加えて、この生体材料を生産する方法は、単純であり、容易に実施することができ、治療対象の個体に対する多数の手順を必要とせず、従来技術の方法と比較して安価である。
【0013】
本発明の生体材料は、凝固血液と実質的に均一に混合した、顆粒の形態の二相性リン酸カルシウムを少なくとも含むペーストの形態である。
【0014】
二相性リン酸カルシウム(BCP)は、多くの医療用途及び歯科用途において使用される。二相性リン酸カルシウムは、非特許文献6により骨修復材料として初めて記載された。BCPは、ヒドロキシアパタイト(HA) Ca10(PO4)6(OH)2及びβ−リン酸三カルシウム (Ca3(PO4)2)(β−TCP)の混合物から成る。その生物活性及びその生体吸収能は、その構成要素であるヒドロキシアパタイトとβ−TCPとの割合により制御することができる。
【0015】
BCPを含有する生体材料は、他の合成生体材料と比較して、骨形成を促進する利点を有する。
【0016】
BCPは、多くの研究の主題である。非特許文献7は20μm未満の粒子径の選択により組織の炎症性応答が促進されることを示し、非特許文献8により観察されたようなこの粒子径が骨形成に特に好ましいという事実をこれにより説明することができた。
【0017】
一方、非特許文献9は、100μm〜250μmの範囲の大きさを有するキャリブレートしたBCP粒子は、培養した骨髄細胞と組み合わせた場合、最も多くの骨の再構築を引き起こすものであったが、44μm未満では骨の形成は観察されなかったこと、及び大きさが最大2mmの粒子により良好な結果が得られることを示した。
【0018】
非特許文献10により、40μm〜80μmのキャリブレートしたBCP粒子を用いて、培養した骨髄細胞が添加されるBCP/Si−ヒドロキシプロピルメチルセルロース複合材料のハイドロゲルの移植により良好な骨誘導を得ることができることが示されている。
【0019】
しかし、後者の2つの方法は、骨髄細胞を回収する工程、及びそれらの培養を必要とする。
【0020】
本発明は、以下の事実に基づく:
−BCPが抗凝固特性を有していたという本発明者らによる観察結果、
−従来技術の方法と比較して非常に単純な方法を用いることで、凝固血液又は凝固骨髄吸引液と組み合わせた選択した粒子径を有するBCPにより、非常に良好な骨形成を得ることが可能となり、非常に満足のいく品質を有する骨組織がもたらされるという同じ本発明者らによる観察結果。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0014279号
【特許文献2】国際公開第02/068010号
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】L. Okazaki et al., Clin. Oral Impl. Res., 16, 2005, 236-243
【非特許文献2】J. Schmid et al., Clin. Oral Impl. Res. 1997:8:75-8
【非特許文献3】A. Chevrier et al., Osteoarthritis and Cartilage (2007), 15, 316-327
【非特許文献4】B. Wallkamm et al., Clin. Oral Imp. Res., 14, 2003, 734-742
【非特許文献5】Yilderim M. et al., Clin. Oral Impl. Res., 2000, 11, 217-219
【非特許文献6】Nery EB et al., J. Periodontol. 1992 Sept., 63(9): 729-35
【非特許文献7】Fellah B.H. et al., J. Mater. Sci.: Mater. Med. (2007), 18, 287-294
【非特許文献8】Malard O. et al., J. Biomed. Mater. Res., 46(1), 1999, 103
【非特許文献9】Mankani M.H. et al., Biotechnology and Bioengineering, 72(1), 2001, 96-107
【非特許文献10】Trojani C. et al., Biomaterials, 27, 2006, 3256-3264
【発明の概要】
【0023】
したがって、本発明の第1の主題は、以下で規定する特定のBCPと凝固血液又は凝固骨髄吸引液との組合せである。有利には、この組合せは、展性を有する(malleable)均一なペーストの形態である。
【0024】
このペーストに過度の圧力(その三次元構造を損傷又は破壊する)をかけないように注意しながら、このペーストを充填すべき欠損の大きさ及び形状に適合させるために、このペーストを操作することができる。
【0025】
本発明において使用されるBCPは、40μm〜500μm、好ましくは40μm〜400μm、より好ましくはさらに40μm〜300μm、有利には80μm〜200μmの粒子径を有する。
【0026】
本発明において使用されるBCPは、粉砕し、例えばふるい分けにより、選択した直径を有する顆粒としてキャリブレートした高温焼結物(sinter)から成る。有利には、本発明において使用されるBCPは、ヒドロキシアパタイト及びβ−リン酸三カルシウムを、5/95〜95/5、好ましくは30/70〜80/20、有利には40/60〜60/40のHA/β−TCPの重量/重量比で含む。
【0027】
有利にはこれは、50nm〜150μm、好ましくは1μm〜50μmの範囲の孔径を有する多孔性のBCPである。
【0028】
リン酸三カルシウム及びヒドロキシアパタイトの顆粒又は粉末は、Bouler et al., J Biomed Mater Res, 1996, 32, 603-609、Bouler et al., J Biomed Mater Res, 2000, 51, 680-684、Obadia et al., J Biomed Mater Res, 2006, 80(B), 32-42により記載される方法に従って得ることができる。これらは、GRAFTYS SARL社から市販されている。
【0029】
BCP顆粒化物(granulate)に従来技術の方法を適用した場合、すなわち例えばBCPを血液試料と混合した場合、BCPが抗凝固特性を有しているため、血液凝固物は得られない。本発明の方法によれば、BCPを、抗凝固剤上で事前に回収した、又は抗凝固剤の非存在下で回収し生体材料のレシピエントと適合性を有するドナー中においてBCPと直ぐに接触させた血液試料と混合し、その後撹拌しながら少なくとも1つの凝固剤を混合物に添加する。好ましくは、凝固剤はカルシウム誘導体である。有利には、カルシウムベースの凝固剤は、生体適合性を有するカルシウム塩、例えばCaCl2、Ca(NO3)2、Ca(AcOEt)2、CaSO4から選択される。
【0030】
本発明を実施するために使用することができる他の凝固剤のうち、トロンビンに言及することができる。BCP、血液又は骨髄吸引液、及び凝固剤の混合は、凝固工程全体の間継続され、BCPの顆粒又は粒子と凝固血液又は凝固骨髄との均一な混合物の形成、特に懸濁液中におけるBCP粒子の維持を可能とするのに好適な強度のものである。この撹拌が過度である又は十分には強力でない場合、均一な混合物の製造は可能とならない。当業者は、均一な混合物の形成を視覚的に制御することができる。
【0031】
BCPに加えて、生体材料の組成物は、任意の添加物、例えばポリマー、セラミック粒子、薬学的分子を含んでいてもよく、これらの材料を使用するための条件は、それらの生体適合性、生体材料硬化(setting)反応に対する負の効果がないことである。当業者に既知のこのような添加物は、生体材料のレオロジー、そのin vivoでの挙動(硬度、吸収、骨形成)を変化させること、又は感染若しくは炎症性の現象の出現に対して作用すること(抗生物質、抗感染薬、抗炎症薬)を目的とする。
【0032】
活性成分、例えば治療用分子、例えば、例えば癌、骨粗しょう症から選択される病態を予防又は治療することを目的とする分子を本発明の生体材料中に導入することを想定することも可能であり得る。
【0033】
天然又は合成の成長因子を本発明の生体材料中に導入することも可能である。生体材料の吸収、及び体内におけるその後の動態(fate)の医療用画像による可視化を促進するバイオマーカー又は造影剤の存在を想定することも可能である。
【0034】
生体材料が目的とする患者から回収した脂肪組織、又は任意の他の組織若しくは細胞の調製物を本発明の生体材料中に導入することを想定することが可能であり、この組織又はこの調製物は、血液中又は血漿中又は生理食塩水中に事前に懸濁されている。組織又は細胞の調製物のうち、脂肪組織、血小板、骨髄細胞に言及することができる。
【0035】
粒子径を制御することでより良好な(より迅速な、より良好な品質を有する)骨組織の形成及び良好な吸収が可能となることが観察されているため、異なる粒子径を有するが、好ましくは小量の、有利にはBCPの総重量に対する重量により5%未満の、BCPの存在を想定することも可能である。
【0036】
本発明の方法によれば、BCPは、閉鎖無菌容器の空洞、例えばシリンジの内部空洞中に、配置される。レシピエントと適合性を有するドナーから事前に回収した血液又は骨髄吸引液を、この容器中に導入する。
【0037】
回収した血液又は骨髄吸引液を数秒を超える期間(5秒〜10秒)保存する必要がある場合、その早すぎる(premature)凝固を回避するために血液又は骨髄吸引液を、その回収後に直ぐに抗凝固剤と混合する。ドナー由来の血液は例えば、適当な量の抗凝固剤を含有するチューブ中に直接回収してもよい。
【0038】
抗凝固剤は、例えばクエン酸ナトリウム、また例えばヘパリンのようなカルシウムイオンのキレート剤であり得る。
【0039】
BCPと血液又は骨髄との混合物を、以下の好ましい割合で調製する:
血液(又は骨髄)の体積に対するBCPの10重量%〜90重量%、好ましくは50重量%〜90重量%、より好ましくはさらに60重量%〜80重量%(g/ml)。
【0040】
有利には、インプラントの生体適合性をできる限り確保するために、血液をレシピエント自体から回収する。本発明の一変形形態によれば、血液を、血液由来の産物、例えば血漿により置き換える。好ましくは全血を使用する。特許請求の範囲を含む本願全体において、「血液(blood)」という単語を使用する場合、その単語はその定義に血液由来の産物、例えば血漿を含む。
【0041】
好ましくは、本発明の実施においては、その回収に外科処置が必要とされない血液又は血漿を使用する。
【0042】
本発明の一変形形態によれば、そのボディ中にBCP及び必要に応じて添加物が事前に配置されているシリンジを用いて血液を回収することができる。
【0043】
BCP及び血液の最初の混合の後、例えばこのようなデバイスを使用する場合シリンジを用いた吸引により、凝固剤も混合物に添加する。
【0044】
均一な材料の形成を可能とするために、BCP、血液及び凝固剤を含有する閉鎖容器を直ぐに撹拌する。例えば、チューブ中で又はシリンジのボディ中で混合物を調製する場合、凝固が起こる間BCP粒子が懸濁液中に留まるように、その速度がBCPの粒子径に応じて設定されるロータリーシェーカー中に容器を配置する。本発明の一変形形態によれば、撹拌は、マグネチックスターラーと組み合わせた磁気ビーズにより行うことができる。
【0045】
本発明の好ましい変形形態によれば、BCP、血液及び凝固剤の混合物を含有する閉鎖容器を、BCPを沈降させるように、及びBCPで飽和したインプラントを形成するように血液凝固期の間静置させる。
【0046】
この工程の終了時には、混合物は、組成物中に導入した血液粒子、血漿及び他の分子を捕捉するフィブリンの3次元ネットワークを含有する均一な展性を有するペーストの形態である。
【0047】
本発明の生体材料の調製のために使用したデバイスのタイプに応じて、骨欠損を充填する必要がある位置に最も好適な手段を用いて上記生体材料をその後適用することができる。
【0048】
道具、例えばスパチュラを用いて(しかしインプラントの3次元構成を破損することなく)又はシリンジ若しくは別の円筒形デバイスを用い、その端部は本発明の生体材料のレオロジーに好適な開口部を形成するために事前に切断されている。
【0049】
したがって本発明の別の主題は、生体材料を生産する方法であって、少なくとも以下の工程:
(i)その大きさが40μm〜500μmである顆粒の形態のBCPと血液又は骨髄吸引液とを、血液又は骨髄の体積当たりのBCPの10重量%〜90重量%の範囲の割合で、混合する工程、
(ii)(血液又は骨髄の)凝固を引き起こすのに十分な量の少なくとも1つの凝固剤を工程(i)の混合物に添加する工程、
(iii)凝固が起こる間、BCPの均一化を促進する条件下で混合する工程
を含む、方法である。
【0050】
既に言及したように、本発明の方法においては、工程(i)〜工程(iii)を、シリンジの内部空洞において、又はその端部で閉鎖したチューブにおいて実施してもよい。凝固剤は、カルシウム誘導体、例えば上で列挙したカルシウム誘導体から、又は例えばトロンビンのような他の凝固剤から選択され得る。
【0051】
本発明の主題はまた、骨欠損を充填する方法であって、上に列挙した工程を含み、骨欠損が観察された空間に工程(iii)において得られた生体材料を適用する工程をさらに含む、方法である。この方法は、組織切開工程及び縫合工程をさらに含み得る。
【0052】
骨欠損の大きさ及び形状に応じて、本発明の生体材料による充填は、本発明の生体材料の移植部位で骨の再構築が進行する間、所要の機械的強度を罹患組織にもたらすことを可能とする骨接合と結び付けることができる。
【0053】
本発明者らが観察したように、本発明の生体材料の移植により、短期間(数週間)内で骨組織の形成を誘導することが可能となり、この骨組織は極めて豊富に血管新生していた。
【0054】
一方、40μm未満の粒子径を有するBCPを用いる同じ方法により得られる生体材料の移植によっては、十分な品質を有する及び満足のいく期間内における骨組織の形成を得ることは可能とならないことが観察された。500μmより大きい粒子径を有するBCPを用いる同じ方法により得られる生体材料の移植は、その吸収能がより低いインプラントをもたらす。
【0055】
本発明の別の主題は、本発明の方法を実施するためのキットであって、40μm〜500μm、好ましくは40μm〜400μm、有利には40μm〜300μm、より好ましくはさらに80μm〜200μmの粒子径を有するBCPと少なくとも1つの凝固剤との組合せを含む、キットから成る。好ましくは、凝固剤はカルシウム由来である。有利には凝固剤はCaCl2である。
【0056】
BCPの、及び必要に応じて回収した血液と組み合わせた抗凝固剤の抗凝固効果を相殺するために、凝固剤の量を算出する。
【0057】
血液及びBCPの混合物における凝固剤の濃度は、特に凝固剤がカルシウムに基づく場合には、好ましくは1mM〜50mM、より好ましくはさらに3mM〜35mMであるべきである。凝固剤は好ましくは、BCPの重量に対する凝固剤の溶液(ml/g)が2倍量を超えないように水溶液として添加するべきである。
【0058】
凝固剤の溶液の濃度は、これらの2つの制約に配慮するように、及び好ましくは120mM未満の濃度を有する凝固剤の溶液を使用する場合、特に凝固剤がカルシウム塩である場合、変化し得る。
【0059】
抗凝固剤上で血液を回収する場合、抗凝固剤の効果と生体材料の効果とを相殺するべきである。
【0060】
例えば、(Greiner Bio-One社から入手可能な商標Vacuette(登録商標)の、又はBecton Dickinson社から入手可能な商標Vacutainer(登録商標)の)従来の条件下でクエン酸ナトリウム上で回収した血液に関して、並びにBCP50mg及び血液100μlの割合において、本発明者らは、最終体積の1/5(すなわち20μl)の、80mMのカルシウム溶液を添加する(最終濃度13.3mM)。溶液の濃度は最大120mMであり得る。それを超えて(Above)過剰のカルシウムが存在し得るが、これは再び凝固を抑制する。
【0061】
血液を抗凝固剤上で回収しない場合、生体材料上で血液を直接回収し、直ぐに(in a second instance)カルシウムを添加する。この場合、血液体積の1/5の、およそ12mM〜60mMの範囲の濃度を有するカルシウム塩の水溶液を添加することが可能である。
【0062】
このような組合せは、
(a)BCPが配置される無菌の内部空洞を含むデバイス
(b)凝固剤を含有する無菌リザーバ
を含む無菌キットの形態であり得る。
【0063】
リザーバ(b)は、デバイス(a)の一部であってもよく、又は凝固剤を取り出し、デバイス(a)の内部空洞中に移すことができるチューブ若しくはボトル、若しくはBCPが配置される空洞中に凝固剤を注入することを可能とするシリンジのような別個の実体であってもよい。
【0064】
有利には、デバイス(a)は、内部空洞中への血液の導入を可能とする手段、例えば個体から直接若しくはリザーバから血液試料の回収を可能とする手段、又はBCPとの混合を可能とするような内部空洞中への血液試料の注入を可能とする手段を含む。回収した血液をBCPを含む空洞中に直接導入すること、又は抗凝固剤を配置したリザーバに血液を回収し、その後BCPが存在する空洞中に全体を移すことを想定することが可能である。骨髄吸引液を使用する場合、骨髄の吸引のための手段を用意する。
【0065】
デバイス(a)の内部空洞は、本発明の生体材料を製造するために必要な量の血液又は骨髄、及び混合物の他の構成要素、例えば凝固剤、活性成分、組織又は細胞の調製物をその中に導入することを可能とする大きさを有する。
【0066】
また有利には、デバイス(a)は、骨欠損が観察された区域に生体材料を適用することを可能とする手段を含む。
【0067】
このようなデバイスは、実験のセクションにおいて例示されるように、円筒形デバイス、例えばチューブ又はシリンジから成り得る。
【0068】
その内側にBCPを保存し、その中に血液及び凝固剤を注入し、生体材料を放出するために、生体材料が形成された場合それに対してピストンを装着することができるチューブを含む、特許文献2に記載されるもののようなデバイスを使用することを想定することも可能である。
【0069】
Vacutainer(登録商標)タイプのデバイス、すなわち所定の量の血液を回収することを可能とするシリンジが装着された真空下のチューブであって、その内部空洞においてBCPでプレコンディショニングされた、チューブを使用することを想定することも可能である。
【0070】
本発明の別の主題は、血液タンパク質の3次元ネットワークにおいて又は骨髄タンパク質のネットワークにおいて実質的に均一に分散した、その大きさが上で規定された顆粒の形態のBCPを含む移植可能な生体材料から成る。
【0071】
有利にはこの生体材料は、上で規定したようなBCP、及び血液(又は骨髄)タンパク質の凝固物を、展性を有するペーストの外観を有する実質的に均一な混合物の形態で含む。
【0072】
「展性を有するペースト」という表現は、それ自体は液体のような流動性を有しないがその機械的強度は十分に低く、或る個体が手作業で(特にスパチュラ又はシリンジのピストン等の器具を用いて)及ぼした圧力の効果の下で成型することが可能である材料を意味すると理解される。
【0073】
このような生体材料は、骨インプラントの製造が骨折、外傷若しくは腫瘍由来の骨質の喪失、外科処置後の欠損を充填すること、又はプロテーゼの適合を補助することを包含するか否かに関わらず、骨インプラントの製造のために使用することができる。
【0074】
例えば実施例に示すように生体材料を、骨欠損を充填する必要がある区域における外科処置により導入することができる。切開後、生体材料を移植し、再び切開部を閉じる。
【0075】
本発明の生体材料を、骨組織による欠損区域の定着を待つ間、アセンブリの安定化を可能とするように、より大きい機械的強度のために骨接合と組み合わせることができる。
【0076】
生体材料とプロテーゼとを組み合わせることを想定することが可能である。本発明の生体材料でプロテーゼをコーティングすることにより、プロテーゼにおける又はプロテーゼの周囲における生きた骨組織の移植を促進することが可能となる。
【0077】
本発明の生体材料は、骨組織の産生のための支持体としてin vitro又はex vivoで使用することもできる。
【0078】
実際に、この生体材料の周囲における骨の細胞(bone cells)の培養により、その後移植することができる骨組織を産生することが可能となる。
【0079】
本発明の別の主題は、骨インプラントを製造するための上で記載されるような生体材料のin vitro又はex vivoでの使用である。
【0080】
本発明によれば、生産することが望まれるインプラントの形状を有する型において本発明の生体材料上で骨の細胞を培養することが可能である。これらの条件下での細胞の培養により、適当な形状及び寸法を有する生体適合性を有するインプラントを得ることが可能となる。
【0081】
実験の節
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】BCP粒子の周囲における凝固血液のインプラントによる骨組織の形成を示す図である。 皮下(A及びC)部位及び筋肉内(B及びD)部位における移植の4週間後にHESで染色したインプラントの断面。 尺度:A及びB:500μm C及びD:50μm 白色の矢印:骨芽細胞 黒色の矢印:骨細胞(osteocytes) 黒色の矢じり:血管 白色の矢じり:破骨細胞
【図2】移植の4週間後の血液/BCPインプラントの切片を示す図である。 (A):細胞の細胞質中のオステオカルシンの褐色を示す、免疫血清とのハイブリダイゼーション(白色の矢印) (B):非免疫血清とのハイブリダイゼーション−尺度:10μm (C):Goldner染色−尺度:50μm 黒色の矢印:血管及び骨細胞
【図3】4週間後の血液/BCPインプラントの走査型電子顕微鏡観察の結果を示す図である。 (A)粒間空間におけるコラーゲンマトリクス−尺度:10μm (B)(A)の拡大図−尺度:1μm (C)2〜3の視認可能な核を有する顆粒に付着した2つの破骨細胞−尺度:10μm (D)機能的毛細血管−尺度:10μm
【図4】インプラントの走査型電子顕微鏡観察の結果を示す図である。 (A)BCP/凝固血液 (B)BCP/凝固血漿 尺度:1μm
【図5】移植の4週間後のBCP/血漿インプラント由来の骨組織の形成を示す図である。 皮下部位(A、C) 筋肉内部位(B、D) 尺度:500μm(A、B) 50μm(C、D)
【図6】ヌードタイプの免疫抑制マウスにおける皮下移植後の、BCP微小粒子(40μm〜80μm)と組み合わせたC57BL/6マウスの血液(A、B)及びヒト血液(C、D)から調製した生体材料の骨形成特性の比較を示す図である。低(A、C)倍率及び高(B、D)倍率での観察結果。 尺度:100μm。
【図7】マウスにおける皮下移植後の骨の形成に対するBCP微小粒子の大きさの影響を示す図である。(A)80μm〜200μmの粒子と混合した40μm未満の大きさを有する大量の微細な粉塵の、(B)40μm〜80μmの粒子の、(C、D)80μm〜200μmの粒子の、(E、F)200μm〜500μmの粒子の形態のBCPと組み合わせたC57BL/6マウスの血液から、インプラントを調製した。図D及び図Fはそれぞれ、インプラントC及びインプラントEのより高い倍率の図に対応する。尺度:100μm。
【図8】100μlのC57BL/6マウス血液と漸増量のBCPの微小粒子(40μm〜80μm)とから調製したインプラントを示す図である:(A)10mg、(B)30mg、(C)50mg及び(D)70mg。尺度:100μm。
【図9】イヌのX線観察結果を示す図である。キャリブレートしたBCP微小粒子(80μm〜200μm)の周囲における凝固全血:(A)50%の比を有するBCP/血液(凝固期の間、微小粒子は血液の懸濁液中に維持される)(方法No.1);(B)血液中の最大濃度のBCP(凝固の間、微小粒子は沈降する)(方法No.2)から調製したインプラント。白色の矢印は、骨幹端とインプラントとの間の放射線透過性のライン(line)の存在を示す。
【図10】ビーグル犬における移植を示す図である。手術後のX線観察結果。左側の(A)では、インプラントはBCP単独から成る。右側の(B)では、インプラントは、インプラントの調製の方法2による、最大の比のBCPを有するBCP/血液混合物から成る。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0083】
1.原理:
これは、手術室で実施した即時的な手順である。原理は、ポリプロピレンシリンジのボディにおいて、BCP粒子と抗凝固剤、すなわちカルシウムイオンのキレート剤上で回収した自家全血(50%(w/v))とを混合することにある。CaCl2の添加により、凝固を開始させることが可能となる。その後シリンジを、室温で10分間ロータリーミキサー上に配置し、これにより凝固の過程の間、血液の懸濁液中にBCP粒子を維持することが可能となる。凝固血液における粒子の均一な分布がこのようにして得られる。その後シリンジの端部を切断し、ピストンを用いてシリンジからインプラントを押し出し、移植部位に配置する。
【0084】
動物(C57BL/6マウス)において得られた結果:
異所性(ectopic)部位(皮下及び筋肉内)での生体材料の移植により、4週間後に非常に豊富に血管新生した石灰化した未成熟な骨組織が完全に定着したインプラントによる、その骨誘導特性が実証される。
【0085】
2.材料及び方法
2.1.二相性リン酸カルシウム粒子:
二相性リン酸カルシウム(BCP)生体材料は、60%のヒドロキシアパタイト(HA;Ca10(PO4)6(OH)2)、及び40%のリン酸三カルシウム(TCP;Ca3(PO4)2)から構成される。80ミクロン〜200ミクロンのキャリブレートしたBCP粒子は、GRAFTYS SARL社(Aix-en-Provence, France)により提供された。粒子を、180℃で2時間加熱することにより滅菌した。
【0086】
2.2.インプラントの調製、及び外科処置:
−マウスにおける皮下移植
獣医サービス指令(Direction of Veterinary Services)(Direction des Services Veterinaires)の規則に従って実験を行い、動物実験法に関する地域倫理委員会(Regional Ethics Committee for Animal Experimentation)(Comite Regional d'Ethique pour l'Experimentation Animale(CREEA))による認可を受けた(authorized)。麻酔した10週齢のC57BL/6マウスから、心臓内穿刺によりクエン酸ナトリウム(抗凝固剤)上で全血を回収する。幾つかの実験に関して、1800gで15分間の遠心分離により全血から血漿を調製した。
【0087】
方法1:100μlの全血(又は血漿)と50mgのBCP粒子とを1ml容シリンジ中で混合することによりインプラントを調製する。その後20μlの1%CaCl2溶液を添加することにより、凝固の活性化を得る。凝固の期間(5分〜10分)の間、シリンジを、New Brunswickのローラー(組織培養ローラータイプ、モデルTC−7 M1053−4005)上に配置する。これにより、シリンジ自体の回転運動、及び血塊の懸濁液中のBCP粒子の維持が可能となる。シリンジの端部を切断した後、ピストンによりシリンジからインプラントを押し出し、C57BL/6マウスの皮下に(SC)又は筋肉内に(IM)移植する。
【0088】
方法2:最大濃度の粒子、したがって最大のBCP/血液比を有するインプラントを調製する。それに関して、微小粒子が血液中で自然に沈降するのを可能とするように、BCP/血液/カルシウム混合物を、凝固の間固定位置に維持する。凝固血液における最大濃度の微小粒子がこのようにして得られると考えられる。
【0089】
皮下インプラントは背臥位で皮膚の下に配置し、筋肉内インプラントは切開した後に各大腿の筋肉塊の間に配置した。部位(SC及びIM)の各々で、移植の間に出血が誘導されなかったことを確認する。
【0090】
各移植実験において、4%イソフルランの吸入によりC57BL/6マウスを麻酔する。各マウスに対して2つのSCインプラント及び2つのIMインプラントを配置する。幾つかの実験では、各マウスに、各部位に1つの血液/BCPインプラント及び1つの血漿/BCPインプラントを配置した。4週間〜8週間後、CO2の吸入により動物を屠殺し、インプラントを解析のために取り出す。
【0091】
−ラットにおける骨部位での移植
本発明者らがラットに適用したプロトコルは、動物実験法に関する地域倫理委員会により承認された(NCA/2007/12−06)。ニース大学医学部の中央動物飼育施設(central animal house)(Animalerie Centrale)でこれらの予備実験を実施した。
【0092】
本発明者らは、プレート−スクリュー(plate-screw)骨接合と組み合わせた、重篤な大きさ(6mm)の大腿骨幹の断続的(interruptive)・分節状(segmental)の骨質の喪失のモデル(本発明者らの研究室で開発したモデル)を使用した。本発明者らは、ラット1匹当たり単一の大腿骨に対して手術を行い、本発明者らの生体材料(自家全血/BCP(80μm〜200μm))により骨質の喪失を充填する。臨床的に(疼痛がないこと、遊歩(deambulation)、全身の状態)、並びに0日、7日、15日、30日、45日、60日及び90日での写真により放射線学的に、ラットをモニタリングする。3ヶ月の終了時に、動物を屠殺し、大腿骨を回収し、骨接合材料の切除後にホルマリン中で骨を固定し、その後メタクリル酸メチル樹脂に埋め込み、組織学的研究を行う。
【0093】
第1の手順時に、50%(重量/体積)の粒子、すなわち手術前に動物から回収した全血150μl当たりBCP75mgの割合を用いて、インプラントを骨欠損の大きさに作製した。15μlの2% CaCl2の添加により凝固を開始させ、血液の懸濁液中にBCP粒子を維持するように、及び生体材料の均一性を確保するように、凝固が得られるまで連続的な回転により均一化を行う。
【0094】
−ビーグル犬における骨部位での移植
これは、ビーグル種の成体のイヌにおいて作製された、外側大腿顆の領域における重篤な大きさのキャリブレートした円筒形の空洞性(cavitary)骨質の喪失のモデルである。各々のイヌに関して、2つの大腿顆を処置した(tackled)。手順の始めに動物の頚静脈の領域における穿刺により全血(3.5ml)を回収し、生体材料を調製するのに使用する。各外側大腿顆の領域において8mm×10mmの円筒形の骨喪失を作製し、生理食塩水による洗浄及び吸引により腐骨を慎重に取り除く。
【0095】
各動物に、異なる組成であるが作り出した欠損を完全に充填するように調製された2つのインプラントを配置した。すなわち:
【0096】
一方では、試験される生体材料は、50%(重量/体積)すなわちBCP330mg及び全血660μlの比を有するBCP(80μm〜200μm)と血液との混合物から成る。混合物を調製するのに用いたシリンジの回転により、凝固の間BCP粒子を懸濁液中に維持する。
【0097】
他方では、BCPを単独で移植し、生理食塩水中で湿らせるが、これは660mgであり、対側の(controlateral)インプラントと同じ体積を占める。
【0098】
実験の期間は8週である。
【0099】
手術後のX線写真を、直ぐに及びENVNでの実験の終了時に撮影した。
【0100】
2.3.組織学的分析:
切り出したインプラントを10%緩衝化ホルマリン溶液中で24時間固定する。各インプラントをその後、室温で24時間10%(w/v)エチレンジアミン四酢酸(EDTA)溶液中で脱灰する又は脱灰しない3つの小片に切断し、その後パラフィン中に埋め込む。4μmの切片を調製し、脱パラフィン化し、湿らせ、ヘマトキシリン、エリスロシン、サフラン(HES)で染色する。ZeissのAxioskop顕微鏡を使用する光学顕微鏡観察により切片をその後検査する。AxioCam HRcカラーカメラ(Zeiss, Le Pecq, France)により写真を撮影する。一方で原線維骨(fibrillar bone)により、他方でBCP粒子により占有される表面積を定量化するために、インプラントの各画像を、インプラントの中央軸に沿って0.6mm2に等しい表面積を有する3つの区域に細区画化した。これらの3つの区域の各々において、原線維骨組織により占有される面積を、AxioVision Rel.4.6ソフトウェアを使用して測定した。この解析を、3つのSCインプラント及び3つのIMインプラントに関して実施した。2人の異なる観察者が光学顕微鏡(100×)下で毛細血管及び多核巨細胞をそれぞれ計測することにより、これらの同じ区域において、血管及び破骨細胞の数を評価した。1mm2当たりの破骨細胞及び血管の密度を、平均±標準偏差の形で表す。使用した統計試験はスチューデントのT検定である。0.05未満のp値に対して有意性を定義した。
【0101】
2.4.Goldner染色:
7μmの厚みを有する脱灰していないインプラントの切片を、骨組織の石灰化を評価すること及び石灰化していない類骨組織(赤色)から石灰化した組織(青色/緑色)を識別することを可能とするGoldnerのトリクロム法により染色した。簡潔に述べると、脱パラフィン化した切片を再水和し、その後ワイゲルトのヘマトキシリンの存在下で20分間インキュベートし、流水でリンスし、1%酸性アルコールの存在下で分別し、流水で5分間洗浄し、その後蒸留水でリンスする。その後切片を、キシリジンポンソー/酸性フクシン/アゾフロキシン/酢酸の溶液中における5分間のインキュベーションにより染色し、1%酢酸中でリンスし、リンモリブデン酸/オレンジGの存在下で20分間インキュベートし、1%酢酸中でリンスし、ライトグリーン/酢酸の存在下で5分間染色し、1%酢酸中で5分間洗浄し、乾燥し、Entellan封入媒体(Merck, Darmstadt, Germany)においてマウントする。
【0102】
2.5 マウスオステオカルシンの免疫組織化学的検査
本発明者らは、タンパク質のN末端のアミノ酸1〜20に対応する合成ペプチドに指向性を有するマウスオステオカルシンに対する免疫精製ポリクローナル抗体(Alexis Biochemicals, Lausanne, Switzerland)を使用した。簡潔に述べると、パラフィン中の7μmの切片を、脱パラフィン化し、エタノール中で再水和し、PBS中で洗浄し、PBS中の0.3%H2O2の存在下で30分間インキュベートした。PBS中における2回の洗浄後、1.5%ヤギ血清(ブロッキング緩衝液)の存在下で30分間、スライドをインキュベートした。PBS中で洗浄した後、ウサギ免疫グロブリンに対するビオチン標識抗体の存在下でのインキュベーションと、ペルオキシダーゼによる可視化のための手順とを、ABC標識キット(sc−2118、Santa Cruz, CA, USA)を使用して行った。その後切片をペルオキシダーゼの基質の存在下で10分間インキュベートし、細胞核をヘマトキシリンで3分間染色した。脱水後、Entellan封入液(Merck)中でマウント処理を行う。ブロッキング緩衝液の存在下でスライドをインキュベートすることにより対照を作製する。
【0103】
2.6.走査型電子顕微鏡観察
移植前、及び移植の4週間後の、凝固血液/BCP又は凝固血漿/BCPから成るインプラントを、緩衝化グルタルアルデヒド溶液中において4℃で12時間固定した。試料をその後洗浄し、30%グリセロールの存在下で1時間インキュベートし、その後液体窒素中で凍結し、破砕した。漸増濃度のエタノールの存在下での脱水後、それらをヘキサメチルジシラザン(Sigma-Aldrich, L'isle d'Abeau Chesnes, France)中に5分間浸漬し、その後室温で乾燥した。それらをその後アルミニウム支持体上に固定し、その後金−パラジウムの層でコーティングした(Polaron、E5100、UK)。その後日本電子株式会社(日本)の6700F型の走査型電子顕微鏡を使用して検査を行った。
【0104】
3.結果
3.1.凝固血液/BCPの皮下インプラント及び筋肉内インプラントの肉眼的解析及び顕微鏡的解析
BCP粒子の非存在下での凝固血液の移植によっては、骨組織の形成は可能とならなかった。4週間後、小量の線維状組織のみが移植部位に見出された。
【0105】
4週間後及び8週間後の、BCP粒子の周囲における凝固血液のインプラントの切り出し及び肉眼的検査により、その堅固な硬さ(firm consistency)とその表面における多数の小血管の存在とを観察することが可能となった。宿主組織の炎症は観察されなかった。
【0106】
移植の4週間後における血液/BCPインプラントのパラフィン切片の組織学的分析により、SCインプラント(図1A)及びIMインプラント(図1B)の両方に関して、BCPと密に接触した未成熟な骨組織による粒子間空間全体への完全かつ再現可能な定着が明らかとなった。より高い倍率での検査により、IM部位(図1D)ではSC部位(図1C)よりもコラーゲンマトリクスがより成熟していることが示唆される。粒子間空間において発生した原線維骨の量を評価するために、骨組織により占有される面積とBCPにより占有される面積との間の比を、材料及び方法の節で記載したように算出した。これによって、IMインプラントにおける骨組織の49.63±5.08%、及びSCインプラントにおける骨組織の42±8.33%により、SC部位とIM部位との間の有意差を示すことが可能となった(n=9、p=0.035)。これらの結果は全て、SC部位及びIM部位の両方において粒子間空間に完全に定着しているが、発生した組織の量はIMインプラントにおいて有意に大きいことを示している。
【0107】
各々の部位で、本発明者らは、全てのインプラントにおいて均一に分布した、コラーゲン性マトリクス内における多数の血管の存在を観察した(図1C、図1D、黒色の矢じり)。それらの計測によって、それぞれ61.4±10.2血管/mm2及び51.10±10血管/mm2の平均値により、IMインプラントとSCインプラントとの間の有意差が明らかとなった(n=9;p=0.045)。本発明者らは、BCP粒子に付着した多数の多核巨細胞も観察した(白色の矢じり)。これらの細胞は、過去の研究において本発明者らが破骨細胞と同定したものと同一である(非特許文献10)。それらの計測により、IMインプラントにおける88.51±14.60破骨細胞/mm2、及びSCインプラントにおける93.13±14.40破骨細胞/mm2の平均値、すなわち統計的には有意でない差異が明らかとなった。これらの細胞の高い吸収能は、微小粒子及び細胞質間断片化結晶の存在により、幾つかのBCP粒子の外形の不規則性、より低く不均一な密度を有するそれらの分解組織(texture)により、強く示唆されている。最後に、本発明者らは、BCP粒子の表面で整列した立方状の(cubic)骨芽細胞(図1C及び挿入部、図5C、白色の矢印)、及びコラーゲンマトリクス中に埋め込まれた骨細胞型の多数の細胞(図1D、図2B、図3A、図3B、黒色の矢印)の存在を観察した。これらの細胞の成熟骨芽細胞表現型を、オステオカルシンの細胞質内免疫組織学的検出により実証した(図2A)。さらに、全てのインプラントが、移植の4週間後のGoldner染色後に陽性であり、この新生した組織が石灰化していることが示された(図2C)。
【0108】
走査型電子顕微鏡観察による4週間後のIMインプラントの解析によって、BCP粒子の微小多孔性、粒子間空間を満たすコラーゲンマトリクス、赤血球を含有する機能的毛細血管の存在(図3A、図3D、白色の矢印)、及びBCP顆粒に付着した破骨細胞の存在(図3C、黒色の矢印)を観察することが可能となった(図3)。さらに、上記解析により、コラーゲンマトリクス中に埋め込まれ、骨芽細胞型の細胞周囲の空間により取り囲まれる、あらゆる方向に放射状に広がる多数の伸長部を保有する骨細胞型の星形の細胞の存在が確認された(図3A 挿入部、3B)。
【0109】
移植の8週間後に得られた結果によっては、4週間後のインプラントとの有意差は明らかにならなかった。SCインプラント及びIMインプラントの全てに、同じ組織学的特徴を示す未成熟な骨が完全に定着している。
【0110】
3.2.凝固血漿/BCPのSCインプラント及びIMインプラントの肉眼的解析及び顕微鏡的解析:
骨新生における血漿及び血液細胞のそれぞれの役割を分析するために、本発明者らは、各マウスに対して及び各部位(SC及びIM)に、凝固血液/BCPのインプラント及び凝固血漿/BCPのインプラントを並行して移植した。
【0111】
2つのタイプのインプラント(凝固血液/BCP及び凝固血漿/BCP)のフィブリンネットワークの構造を、走査型電子顕微鏡観察により解析した。これにより、凝固血液により得られるフィブリンメッシュが、凝固血漿により観察されるフィブリンメッシュより大きいことが示された(図4A、図4B)。予想通り、赤血球及び血小板が、凝固血液/BCPのインプラントにおいて観察される主要な細胞である。それらの形状及びそれらの構造の保存により良好な生存能が実証され(図4A)、これにより血液及びBCP粒子の混合物が血液細胞に対して有害な効果を有しないことが示される。
【0112】
4週間後及び8週間後の、凝固血漿/BCPのインプラントの切り出し及び肉眼的検査により、凝固血液/BCPのインプラントの特徴と類似の特徴、すなわち堅固な硬さと多数の視認可能な表面血管とが示された(結果は示していない)。4週間後の組織学的分析により、SCインプラントに新生骨が約80%も定着していることが示された(図5A)。IMインプラントの解析により、75%のケースでは完全な定着が(図5B)、25%のケースではより線維状かつ緩い組織の小さい中心区域の存在が(結果は示していない)、示された。各々の部位では、新生した原線維骨組織が、凝固血液/BCPのインプラントにおいて得られた組織の特徴と同じ特徴を示した(図5C、図5D)。結論として、これらの結果によって、全血の使用により両方の部位におけるインプラントの完全な定着を得ることが可能となることが実証される。凝固血漿とBCP粒子との組合せは、不完全な定着しかもたらさない。
【0113】
3.3 免疫抑制マウスにおける皮下移植後の、凝固ヒト血液と40μm〜80μmのBCP粒子とから構成されるインプラントの肉眼的解析及び顕微鏡的解析
本発明者らは、ヌードタイプの免疫抑制マウスにおける移植後の、40μm〜80μmのBCP粒子の周囲における凝固ヒト血液から調製した生体材料により誘導される骨の形成を分析した。並行して、同じ動物において、本発明者らは、マウス血液により誘導される骨の形成とヒト血液によりもたらされる骨の形成とを同じレシピエント動物において比較するために、C57BL/6マウス由来の血液から調製した生体材料を移植した。移植の6週間後、インプラントを回収し、固定し、先に記載されるように組織学的分析を実施した。
【0114】
組織学的研究の前でさえも、本発明者らは、ヒト血液から調製したインプラントの極めて異常な硬度を観察しており、一方でマウス血液のインプラントはより弾性的な硬さを有していた。
【0115】
マウスインプラントの組織学的分析により、シンジェニックな系において実施した過去の実験(C57BL/6マウスにおけるC57BL/6マウス血液の移植)において見出されたものと同等の品質を有する未成熟な骨組織が明らかとなった。本発明者らは、骨の細胞、骨芽細胞、骨細胞及び破骨細胞を同定することができる高度に血管新生したコラーゲン性原線維組織を観察した(図6A、図6B)。
【0116】
ヒトインプラントの組織学的分析により、成熟骨組織による定着を伴う非常に異なる結果がもたらされた。骨の細胞はより少数であり、骨細胞に偏っている。支持組織は、未成熟な造血細胞、例えば赤芽球及び脂肪細胞の存在を特徴とする造血プレート(hematopoiesis plates)をその内部に有する、より良好に構造化され整列しかつより高密度なコラーゲン線維への組織化を示す(図6C、図6D)。切断する際のこれらのインプラントの硬度により、この組織が高度に石灰化していることが示唆された。したがって本発明者らは、成熟層状骨組織を得た。
【0117】
ヒト及びマウスの血液の移植後に得られた骨組織の成熟度における差異は、これらの2つの種の血液の異なる特性、細胞組成及び/又はタンパク質組成、成長因子、可溶性因子、並びにフィブリンネットワークと関連する特性に起因している可能性がある。関与するメカニズムを理解することを試みるために、実験を実施する。
【0118】
本発明者らの結果と文献の結果との比較により、本発明者らがヒト血液から得た成熟骨組織が、複数のグループにより記載された、選択し、増殖させ、ex vivoで骨芽細胞に分化させ、その後BCP粉末と組み合わせ、免疫抑制マウスに皮下移植したヒト間葉系間質細胞(MSC)の移植後の骨組織と非常に類似していることが示された。
【0119】
したがってこれらの結果は全て、臨床上の用途にとって非常に有望である。
【0120】
3.4 骨の形成に対するBCPの粒子径の影響
本発明者らは、4つの形態のBCP、すなわちそれぞれ40μm〜80μm、80μm〜200μm及び200μm〜500μmにキャリブレートした3つの微小粒子形態、並びに80μm〜200μmの粒子と大きさが40μmにはるかに満たない(much less than)微細な粉塵との混合物(微細な粉塵の割合は、混合物の総重量に対する重量により40%である)を試験した。既に記載した条件下で、C57BL/6マウス血液とこれらの形態のBCPの各々とからインプラントを調製した。シンジェニックC57BL/6マウスにおける皮下移植の8週間後に、骨の形成を分析した。
【0121】
図7の結果は、80μm〜200μmの微小粒子から成るインプラントが、既に記載した特徴を有する未成熟な骨組織による最良の定着を非常に再現性良くもたらすことを示す(図7C、図7D)。図7Aに示したように、80μm〜200μmのBCP微小粒子と混合したBCP粉塵(40μm未満の大きさ)の存在は、骨の形成に対して極めて有害である。実際に、常に厳密に末梢冠(peripheral crown)に制限されたままであるインプラントの定着が観察されている。40μm〜80μmの粒から成るインプラントは良好な定着をもたらすが、80μm〜200μmのインプラントよりも再現性は低い。実際に、どういうわけか、図7Bに示すように、中央の定着不良が観察されることがある。最後に、200μm〜500μmの粒から成るインプラントには常に定着するが、この定着は満足度の低い品質を有するより線維状かつ緩い組織によるものである(図7E、図7F)。
【0122】
これらの結果により、本発明者らの生体材料においては、80μm〜200μmの顆粒度が、異所性部位での骨の形成に対してより好ましいことが実証される。
【0123】
3.5 骨の再構築のための最適なBCP/血液比の決定
本発明者らの生体材料中に、同じ体積の血液に対して可変量のBCP微小粒子を組み込むことが可能である。理想的な比の決定は、その開発において重要な工程であった。マウスにおける皮下部位での移植に関する複数の実験、及びウィスターラット及びビーグル犬において骨部位で実施した予備実験により、本発明者らは最良のBCP/血液比を特定することが可能となった。
【0124】
3.5.1.マウスにおける皮下異所性部位での移植
本発明者らは、固定量の血液(100μl)、固定量のCaCl2(10μl)、並びに漸増量の40μm〜80μmのBCP微小粒子(10mg、30mg、50mg及び70mg、すなわちBCP/血液比10%、30%、50%及び70%(重量/体積))から成るインプラントを調製した。ローラー上での回転により、凝固の間、BCP粒子を血液の懸濁液中に維持した(方法1)。これらのインプラントは、移植時には同等の大きさを有しており、それぞれの体積は、112μl、116μl、120μl及び124μlであった。
【0125】
図8に示されるように、移植の4週間後に、本発明者らは、インプラントの最終的な大きさが組み込んだBCPの初期重量と比例していること、及び全てのインプラントが同等の粒子密度を有することを観察した。さらに、未成熟な骨組織による定着は、BCP/血液比に関わらず同じであった。
【0126】
これらの結果により、凝固時にシリンジの回転により得られる初期インプラントにおける粒の均一な分散は、長時間維持されないことが示される。反対に、in vivoでのフィブリンゲルの自然分解とおそらく関連する、粒子のパッキングの現象が起こる。このパッキングは、初期の比に関わらず所定の体積に対して同じ濃度の粒をもたらすため、骨誘導現象が同じであることは当然であるように思われる。
【0127】
その後骨部位で実施した実験により、これらの結果が確認された。
【0128】
3.5.2.ラットにおける骨部位での移植
本発明者らは、ラット1匹当たり単一の大腿骨に対して手術を行い、本発明者らの生体材料(自家全血/BCP(80μm〜200μm))により骨質の喪失を充填する。臨床的に(疼痛がないこと、遊歩、全身の状態)、並びに0日、7日、15日、30日、45日、60日及び90日での写真により放射線学的に、ラットをモニタリングする。3ヶ月の終了時に、動物を屠殺し、大腿骨を回収し、骨接合材料の切除後にホルマリン中で骨を固定し、その後メタクリル酸メチル樹脂に埋め込み、組織学的研究を行う。
【0129】
第1の手順時に、50%(重量/体積)の粒子、すなわち手術前に動物から回収した全血150μl当たりBCP75mgの割合を用いて、インプラントを骨欠損の大きさに作製した。15μlの2% CaCl2の添加により凝固を開始させ、血液の懸濁液中にBCP粒子を維持するように、及び生体材料の均一性を確保するように、凝固が得られるまで連続的な回転により均一化を行う。
【0130】
本発明者らは、非常に再現性良くまた7日目の最初のX線写真から、生体材料と骨幹切片との間の接着がないことを反映する、骨表面とインプラントとの間の放射線透過性のラインの出現を観察した(図9A)。BCPが血液中において最大の濃度である(凝固の間、微小粒子は沈降する(方法No.2))場合、生体材料と骨幹切片との間の満足のいく接着が観察される(図9B)。
【0131】
3.5.3.インプラントを調製する2つの方法により得られた結果の比較
ラット(図9B)並びにイヌ(図10A及び図10B)の骨部位において、X線解析により、この新しいプロトコルを用いることで、正面のX線に対してはインプラントの縮みがないこと、及び側面のX線に対してはラインがないことが示された。異所性部位のマウスでは、本発明者らは、骨の形成に関する結果における差異を観察しなかった。
【0132】
3.5.4.考察:
沈降する生体材料の骨移植の場合(方法2)には、本発明者らがラット及びイヌに関して撮影したX線写真において観察することができるようにインプラントの寸法は低減せず、インプラントが骨と密に接触して正確に装着された場合には、インプラントは最適な形で骨再生(osteoconduction)現象及び骨誘導現象の利益を受ける。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体材料を生産する方法であって、少なくとも以下の工程:
(i)その大きさが40μm〜500μmである顆粒の形態の二相性リン酸カルシウム、すなわちBCPと血液又は骨髄吸引液とを、血液又は骨髄の体積当たりのBCPのより10重量%〜90重量%の範囲の割合(g/ml)で、混合する工程、
(ii)前記血液又は前記骨髄の凝固を引き起こすのに十分な量の少なくとも1つの凝固剤を工程(i)の混合物に添加する工程、
(iii)前記凝固が起こる間、前記BCPの均一化を促進する条件下で混合する工程
を含む、方法。
【請求項2】
カルシウムに基づく前記凝固剤が、生体適合性を有するカルシウム塩、好ましくはCaCl2から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記血液を、前記生体材料が目的とするレシピエントと適合性を有するドナーから事前に回収した、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記血液を、前記生体材料が目的とするレシピエントから事前に回収した、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記BCP、前記血液及び前記凝固剤を含有する混合物を、該BCPを沈降させるように、及びBCPで飽和したインプラントを形成するように、血液凝固期の間静置させる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
シリンジの内部空洞において、又はその端部で閉鎖したチューブにおいて工程(i)〜工程(iii)を実施する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
血液の体積に対する50重量%〜90重量%、好ましくは60重量%〜80重量%(g/ml)のBCPを混合することを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法により得ることができる生体材料であって、40μm〜500μmの大きさを有する顆粒の形態のBCP、及び凝固血液又は凝固骨髄を含む、生体材料。
【請求項9】
展性を有する均一なペーストの形態の、請求項8に記載の生体材料。
【請求項10】
前記BCP顆粒が80μm〜200μmの範囲の大きさを有する、請求項8又は9に記載の生体材料。
【請求項11】
前記BCPが、ヒドロキシアパタイト(HA)及びβ−リン酸三カルシウム(β−TCP)を、5/95〜95/5のHA/β−TCPの重量/重量比で含有する、請求項8〜10のいずれか一項に記載の生体材料。
【請求項12】
ポリマー、セラミック粒子、薬学的分子、成長因子、天然又は合成の、バイオマーカー、造影剤、組織又は細胞の調製物から選択される少なくとも1つの添加物をさらに含む、請求項8〜11のいずれか一項に記載の生体材料。
【請求項13】
骨欠損を充填する方法におけるインプラントとしてのその使用のための、請求項8〜12のいずれか一項に記載の生体材料。
【請求項14】
請求項8〜13のいずれか一項に記載の生体材料と骨接合との組合せ。
【請求項15】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法を実施するためのキットであって、40μm〜500μmの粒子径を有するBCPとカルシウム由来の凝固剤との組合せを含む、キット。
【請求項16】
前記凝固剤がCaCl2である、請求項15に記載のキット。
【請求項17】
(a)前記BCPが配置される無菌の内部空洞を含むデバイス、
(b)前記凝固剤を含む無菌リザーバ
を含む、請求項15又は16に記載のキット。
【請求項18】
前記デバイス(a)が、前記内部空洞中への血液の導入を可能とする手段を含む、請求項15〜17のいずれか一項に記載のキット。
【請求項19】
前記デバイス(a)が、骨欠損が観察された区域における前記生体材料の適用を可能とする手段を含む、請求項15〜18のいずれか一項に記載のキット。
【請求項20】
前記デバイス(a)がシリンジから成る、請求項15〜19のいずれか一項に記載のキット。
【請求項21】
骨組織の産生のための支持体としての、in vitro又はex vivoでの請求項8〜14のいずれか一項に記載の生体材料の使用。
【請求項22】
骨インプラントを製造するための、in vitro又はex vivoでの請求項8〜14のいずれか一項に記載の生体材料の使用。
【請求項1】
生体材料を生産する方法であって、少なくとも以下の工程:
(i)その大きさが40μm〜500μmである顆粒の形態の二相性リン酸カルシウム、すなわちBCPと血液又は骨髄吸引液とを、血液又は骨髄の体積当たりのBCPのより10重量%〜90重量%の範囲の割合(g/ml)で、混合する工程、
(ii)前記血液又は前記骨髄の凝固を引き起こすのに十分な量の少なくとも1つの凝固剤を工程(i)の混合物に添加する工程、
(iii)前記凝固が起こる間、前記BCPの均一化を促進する条件下で混合する工程
を含む、方法。
【請求項2】
カルシウムに基づく前記凝固剤が、生体適合性を有するカルシウム塩、好ましくはCaCl2から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記血液を、前記生体材料が目的とするレシピエントと適合性を有するドナーから事前に回収した、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記血液を、前記生体材料が目的とするレシピエントから事前に回収した、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記BCP、前記血液及び前記凝固剤を含有する混合物を、該BCPを沈降させるように、及びBCPで飽和したインプラントを形成するように、血液凝固期の間静置させる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
シリンジの内部空洞において、又はその端部で閉鎖したチューブにおいて工程(i)〜工程(iii)を実施する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
血液の体積に対する50重量%〜90重量%、好ましくは60重量%〜80重量%(g/ml)のBCPを混合することを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法により得ることができる生体材料であって、40μm〜500μmの大きさを有する顆粒の形態のBCP、及び凝固血液又は凝固骨髄を含む、生体材料。
【請求項9】
展性を有する均一なペーストの形態の、請求項8に記載の生体材料。
【請求項10】
前記BCP顆粒が80μm〜200μmの範囲の大きさを有する、請求項8又は9に記載の生体材料。
【請求項11】
前記BCPが、ヒドロキシアパタイト(HA)及びβ−リン酸三カルシウム(β−TCP)を、5/95〜95/5のHA/β−TCPの重量/重量比で含有する、請求項8〜10のいずれか一項に記載の生体材料。
【請求項12】
ポリマー、セラミック粒子、薬学的分子、成長因子、天然又は合成の、バイオマーカー、造影剤、組織又は細胞の調製物から選択される少なくとも1つの添加物をさらに含む、請求項8〜11のいずれか一項に記載の生体材料。
【請求項13】
骨欠損を充填する方法におけるインプラントとしてのその使用のための、請求項8〜12のいずれか一項に記載の生体材料。
【請求項14】
請求項8〜13のいずれか一項に記載の生体材料と骨接合との組合せ。
【請求項15】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法を実施するためのキットであって、40μm〜500μmの粒子径を有するBCPとカルシウム由来の凝固剤との組合せを含む、キット。
【請求項16】
前記凝固剤がCaCl2である、請求項15に記載のキット。
【請求項17】
(a)前記BCPが配置される無菌の内部空洞を含むデバイス、
(b)前記凝固剤を含む無菌リザーバ
を含む、請求項15又は16に記載のキット。
【請求項18】
前記デバイス(a)が、前記内部空洞中への血液の導入を可能とする手段を含む、請求項15〜17のいずれか一項に記載のキット。
【請求項19】
前記デバイス(a)が、骨欠損が観察された区域における前記生体材料の適用を可能とする手段を含む、請求項15〜18のいずれか一項に記載のキット。
【請求項20】
前記デバイス(a)がシリンジから成る、請求項15〜19のいずれか一項に記載のキット。
【請求項21】
骨組織の産生のための支持体としての、in vitro又はex vivoでの請求項8〜14のいずれか一項に記載の生体材料の使用。
【請求項22】
骨インプラントを製造するための、in vitro又はex vivoでの請求項8〜14のいずれか一項に記載の生体材料の使用。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2011−525381(P2011−525381A)
【公表日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−514090(P2011−514090)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【国際出願番号】PCT/FR2009/000749
【国際公開番号】WO2010/007230
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(502205846)サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィク (154)
【出願人】(510336358)サントル オスピタリエ ユニヴェルシテール ドゥ ニース (2)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【国際出願番号】PCT/FR2009/000749
【国際公開番号】WO2010/007230
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(502205846)サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィク (154)
【出願人】(510336358)サントル オスピタリエ ユニヴェルシテール ドゥ ニース (2)
【Fターム(参考)】
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