説明

血液リンパ球における子宮内膜症に関する分子診断マーカーの同定

本発明は、女性被験者における子宮内膜症への疾病素質を同定又は予測する方法であって、被験者における末梢血白血球又は末梢血の試料中の末梢血白血球の少なくとも1つの差次的発現遺伝子又はタンパク質若しくはペプチドの遺伝子発現レベルを確定して第1の値を提供する工程と、対照又は参照標準における上記白血球の少なくとも1つの差次的発現遺伝子又はタンパク質若しくはペプチドの遺伝子発現レベルを確定して第2の値を提供する工程と、第1の値及び第2の値の間に差が存在するか否かを比較する工程とを含む方法からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
子宮内膜症の非侵襲性の診断試験を目的としたDNAマイクロアレイによる同定遺伝子を用いた子宮内膜症患者の末梢血白血球の遺伝子発現パターンの分析。
【0002】
[関連出願]
本出願は、米国仮特許出願第60/654,331号(2005年2月18日提出)(参照によりその全体が本明細書中で援用される)の利益を主張する。
【背景技術】
【0003】
子宮内膜症は、生殖年齢の女性の10%もの多数に影響を及ぼすかなり一般的な婦人科学的疾患である(Mahmood, T.A. and Templeton, A. 1991 Hum Reprod 6: 544-549)。子宮内膜症の病因は依然として不明であり、そして子宮内膜症病変が定着し、進行し、骨盤外部位に移動するメカニズムは十分に理解されているわけではない(Witz, C.A. 他 2003
Hum Fertil 6: 34-40)。子宮内膜症の診断は一般的に、腹腔鏡検査中の骨盤の視覚的検査により実行される(Attaran, M. 他. 2002 Cleve Clin J Med 69: 647-653)。この診断手法は外科医の専門的技術によっており、したがってそれは本質的に正確でない。さらにまた腹腔鏡検査手法の侵襲性及び関連する罹患率は、再発及び治療に対する応答をモニタリングするためのその使用を妨げる。子宮内膜症を非外科的に診断することが、そして予後及び治療モニタリングのための非侵襲性ツールを有することが緊急に必要であるにもかかわらず、血中マーカーの同定に基づいた特異的臨床試験は依然として存在しない(Falcone, T.及びMascha, E. 2003 Fertil Steril 80: 886-888)。さらに、慢性の重症疼痛、不妊症及び精神的苦痛に悩む罹患女性が有する治療的選択肢はわずかであり、その中で根源的疾患を治癒し得るものはない。子宮内膜症特異的試験の基礎を成す候補遺伝子の探索は、困難であることがわかっている。したがって、子宮内膜症に関する分子生体マーカーの同定を促進するためにDNAマイクロアレイ技術の使用を目指す。
【0004】
DNAマイクロアレイは、癌、糖尿病及び心疾患のような複合遺伝子疾患に関連する遺伝子発現プロフィールを同定するために漸増的に用いられつつある(Hughes, T.R.及びShoemaker, D.D. 2001 Curr Opin Chem Biol 5: 21-25)。この強力な技術は、遺伝子発現における疾患特異的パターンを明らかにし、それにより候補遺伝子の同定を促進する(Albertson, D.G.及びPinkel, D. 2003 Hum Mol Genet 12: R145-52)。今日まで、子宮内膜症関連遺伝子の発見のためのDNAマイクロアレイの適用に関しては5つの報告しかなかった。5つの研究はすべて、腹腔鏡検査中に得られた子宮内膜症組織対正常子宮内膜の遺伝子発現プロフィールを比較しているが、しかし疾患の異なる態様(即ち、不妊症、深部子宮内膜症及び卵巣子宮内膜腫)に焦点を合わせていた。Eyster他(2002)による一研究では、分析された4,133の遺伝子からの8つが、匹敵する子宮内膜と比較して、子宮内膜腫において過剰発現されることが示された(Eyster, K.M. 他. 2002 Fertil Steril 77: 38-42)。過剰発現遺伝子は、細胞骨格素子(ビメンチン、β−アクチン及びα−2−アクチン)、ハウスキーピング遺伝子(40Sリボソームタンパク質S23)又は免疫関連タンパク質(Igγ軽鎖、Ig生殖系列H鎖、補体、主要組織適合性複合体クラス1)であった。細胞骨格タンパク質、例えばビメンチンの発現レベル増大が子宮内膜細胞の侵襲性能力を説明することができ、また子宮内膜移植片中の免疫細胞浸潤が免疫グロブリン遺伝子の観察された過剰発現を説明し得る、ということを著者らは提案した。Arimoto他(2003)も、DNAマイクロアレイを用いて、卵巣子宮内膜腫の遺伝子発現プロフィールを同定した(Arimoto, T. 他. 2003 Int J Oncol 22: 551-560)。子宮内膜嚢胞中で上向き調節されることが示された遺伝子の例は、HLA抗原、補体因子、リボソームタンパク質及び形質転換増殖因子B1(TGFBI)であった。下向き調節される遺伝子として
は、TP53、増殖停止及びDNA損傷誘導性タンパク質(GADD34、GADD45A及びGADD45B)、p53誘導性タンパク質(PIG11)、並びに卵管糖タンパク質(OVGP1)が挙げられた。Lebovic及び同僚(2002)は、子宮内膜症対正常子宮内膜生検においてIL−1βにより誘導される597ヒト遺伝子の遺伝子発現レベルを比較した(Lebovic, D.I. 他. 2002 Fertil Steril 78: 849-854)。細胞周期調節遺伝子Tob−1は異所性間質細胞中でIL−1βにより下向き調節される、ということが観察され、そしてこの遺伝子の発現の抑制が子宮内膜症細胞増殖を促し得るということを示唆した。Kao他(2003)は、DNAマイクロアレイを用いて、子宮内膜症関連不妊症の分子的基礎を分析した(Kao, L.C. 他. 2003 Endocrinology 144: 2870-2881)。着床の間に正常子宮内膜中で正常に上向き調節されるが、子宮内膜症では低減されることが判明した遺伝子は、IL−15(NK細胞増殖及び機能の強力なプロモーター)、補体4結合タンパク質(C4BP;LRP5と相互作用することによりWntシグナル伝達を妨害し得る)、及びグリコデリン(プロゲステロンの調節下にあり、そして受精を妨害することが示唆されている)を包含した。最後に、深部子宮内膜症病変は、血小板由来増殖因子受容体α(PDGFRA)、プロテインキナーゼCβ1(PKCβ1)及びヤヌスキナーゼ1(JAK1)の発現増大を示して、子宮内膜症の病態生理学におけるRAS/RAF IMAPK経路の関与に関する証拠を提供する、ということが近年示された(Matsuzaki, S. 他. 2004 Mol Hum Reprod 10: 719-728)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[本発明への推移]
本発明の研究の目的は、子宮内膜症患者及び対照からの血中リンパ球の遺伝子発現プロフィールの差を同定することであった。血液は子宮内膜症の主要標的組織ではないが、しかしこの疾患が炎症性構成成分に関連し、末梢血リンパ球中でモニタリングされ、評価さえされ得るといういくつかの証拠がある(Bedaiwy, M.A. 他. 2002 Hum Reprod 17: 426-431)。血中リンパ球が疾患過程に直接関与しない場合でさえ、これらの細胞の遺伝子発現プロフィールは疾患状態を示し、そして診断に役立つことが示されている(Tang, Y. 他. 2001 Ann Neurol 50: 699-707)。したがって、末梢血リンパ球における差次的発現遺伝子の同定は、疾患病因の理解において、そして非常に重要なのは、診断を容易にすることができる特定の非侵襲性分子試験の設計において、有用性を有する遺伝子標的を明らかにするだろうと仮説をたてた。血液試料を用いた子宮内膜症の診断のための基礎を形成するとして予見される遺伝子標的の同定を報告する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[発明の概要]
本発明は女性被検者における子宮内膜症への疾病素因を判定又は予測する方法であって、被検者における末梢血白血球又は末梢血の試料中の少なくとも1つの末梢血白血球の差次的発現遺伝子又はタンパク質若しくはぺプチドの発現レベルを測定して第1の値を提供する工程、対照又は参照標準における上記少なくとも1つの白血球の差次的発現遺伝子又はタンパク質若しくはペプチドの発現レベルを測定して第2の値を提供する工程と、第1の値及び第2の値間に差が存在するか否かを比較する工程とを含む方法を含む。
【0007】
本発明は、LOXL1、IL2RG、LRP5、MPB、TNF、MAN2A2、P4HA1及びPDGFから成る群から選ばれる遺伝子の発現レベルを測定する方法を含む。
【0008】
本発明は、LOXL1、IL2RG、LRP5、MPB、TNF、MAN2A2、P4HA1及びPDGFから成る群から選ばれるものに関するたんぱく質又はペプチドの発現レベルを測定する方法を含む
【0009】
本発明は、治療の前後に子宮内膜症を有すると判定された被検者をモニタリングする方法であって、治療前に被検者における末梢血白血球又は末梢血の試料中の少なくとも1つの末梢血白血球の差次的発現遺伝子の遺伝子発現レベルを測定して第1の値を提供する工程と、治療後に上記少なくとも1つの白血球の差次的発現遺伝子の遺伝子発現レベルを測定して第2の値を提供する工程と、治療前後に被検者の遺伝子発現レベルの差を比較する工程とを含む方法も含む。
【0010】
本発明は、子宮内膜症の治療において用いるための候補作用物質のスクリーニング方法であって、少なくとも1つの差次的発現遺伝子を発現し得る細胞を生体外で候補作用物質と接触させる工程と、細胞中の少なくとも1つの差次的発現遺伝子の遺伝子発現レベルを測定して第1の値を提供する工程と、候補作用物質の非存在下で細胞中の同一の少なくとも1つの差次的発現遺伝子の遺伝子発現レベルを測定して第2の値を提供する工程と、そして第1の値を第2の値と比較する工程であって、その差を子宮内膜症の治療のために潜在的に用いられ得ることの指標とする工程とを含む方法をさらに含む。
【0011】
本発明は、子宮内膜症の治療又は予防方法であって、少なくとも1つの差次的発現遺伝子又は遺伝子発現産物の発現レベル、合成レベル又は活性の増減を誘導し得る有効量の作用物質を被検者に投与することを含む方法をさらに含む。
【0012】
本発明は、少なくとも1つの差次的発現遺伝子又は遺伝子発現産物の遺伝子発現レベル、合成レベル又は活性の増減を誘導し得る有効量の作用物質を含む子宮内膜症の治療又は予防のための薬剤の製造方法をさらに含む。
【0013】
本発明は、女性被検者における子宮内膜症への疾病素因を判定又は予測するためのキットであって、被検者における末梢血白血球又は末梢血の試料中の少なくとも1つの末梢血白血球の差次的発現遺伝子の遺伝子の発現レベルを測定して第1の値を提供する手段と、対照又は参照標準における上記少なくとも1つの白血球の差次的発現遺伝子の遺伝子発現レベルを測定して第2の値を提供する手段と、第1の値及び第2の値の間に差が存在するか否かを比較する手段とを含むキットをさらに含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の研究の目的は、DNAマイクロアレイを用いて、末梢血リンパ球中の子宮内膜症に関する分子生体マーカーを同定することである。症例−対照研究は、マルチセンターアカデミックリサーチプログラムの一部として実行された。手術中のOB−GYN専門医により確定された、子宮内膜症を有するか又は有しない閉経前女性が分析された。マイクロアレイ分析は、6例の子宮内膜症患者及び5例の対照を包含し、15例の子宮内膜症患者及び15例の対照がリアルタイムRT−PCRにより分析された。全ての疾患段階を示す患者が含まれた。子宮内膜症患者及び対照からの血中リンパ球におけるmRNAの発現レベルは、標準総RNAのレベルと比較された。遺伝子発現データは、リアルタイムRT−PCR分析により確認された。遺伝子選択プログラムは、子宮内膜症患者からの試料中で差次的に発現される遺伝子を特定した。遺伝子発現データを確認するために、リアルタイムRT−PCRにより、9つの最も差次的な遺伝子が分析された。特定された9つの遺伝子のうち2つ、例えばGenbank寄託番号AY692262のヌクレオチド及びアミノ酸配列を有するインターロイキン2受容体γ(重度の複合型免疫不全)(IL2RG)、及び例えばGenbank寄託番号BC015090のヌクレオチド及びアミノ酸配列を有するリシルオキシダーゼ様1(LOXL1)は、有意に差次的に発現されることが示された。これは、子宮内膜症患者の末梢血リンパ球中で差次的に発現される遺伝子の最初の報告であり、これは、この疾患の病因に関する重要な手がかりを提供し得る。さらにそれらは、子宮内膜症に関する非侵襲性診断試験のための標的とみなされると予見され、そしてより大きな集団中で実証されると予期される。
【0015】
別記しない限り、本明細書中で用いられる技術的用語及び科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者に一般的に理解されるものと同一の意味を有する(例えばSingleton P及びSainsbury D著 Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 3rd ed., J. Wiley & Sons, Chichester, New York, 2001及びThe Glossary of Genetics, 5th Ed., R. Rieger 他(eds.), Springer Verlag (1991)参照)。
【0016】
「差次的発現」とは、本発明の状況では、対照被検者(例えば陰性診断又は検出不可能な子宮内膜症を有する人、正常又は健常被検者)と比較して、子宮内膜症を有する被検者の末梢血白血球中で、転写発現産物及び遺伝子発現産物(例えばタンパク質又はペプチド、mRNA、cDNA)が異なる量で発現される発現状態を指す。
【0017】
「転写物」とは、鋳型として別の核酸鎖を用いて合成された核酸の鎖を指す。
【0018】
本発明の「タンパク質又はポリペプチド又はペプチド」は、その任意の断片、特に免疫学的に検出可能な断片を含むよう意図される。細胞により放出されるタンパク質はこのような断片に分解されるか又は切断されるようになり得ることを当業者は認識するであろう。さらに、或る種のタンパク質又はポリペプチドは不活性形態で合成され、これはその後、タンパク質分解により活性化され得る。特定タンパク質のこのような断片は、タンパク質それ自体の代用物として検出され得る。
【0019】
タンパク質は、分泌され(輸送され)得るか、又は分泌されないこともある。分泌されないタンパク質は、細胞内(細胞の内側)に、又は細胞の表面に存在し得る。
【0020】
「試料」という用語は、本明細書中で用いる場合、判定、診断、予測又はモニタリングの目的のために得られた被検者からの試料を指す。本発明の或る種の態様では、このような試料は、進行中の病態の状況や子宮内膜症に及ぼす治療レジメンの影響を測定する目的のために採取され得る。好ましい試験試料としては、血液、血清又は血漿が挙げられる。さらにいくつかの試験試料は、例えば全血を血清成分又は血漿成分へ分離するような分画又は精製手順をふむことで、さらに容易に分析されることを当業者は理解するであろう。
【0021】
「血液」という用語は、本明細書中で用いる場合、前分画、末梢血白血球、末梢血単核球(PBMC)又は血液の別の亜分画を除く全血を指す。
【0022】
「末梢血」という用語は、全身循環における血液を指す。
【0023】
「遺伝子発現レベル」又は「ペプチドレベル」の差は、相対的差である。例えばそれは、対照被検者又は参照標準と比較した場合、子宮内膜症を有する被検者から採取された試料の遺伝子発現レベルの差であり得る。比較は、子宮内膜症の危険のある被検者と、所定の状態を有しないことが分かっている被検者、即ち「正常」又は「対照」における遺伝子発現レベルとの間でなされ得る。或るいは比較は、子宮内膜症に罹患していない正常個体の集団で見出される平均レベルのような良好な結果(例えば子宮内膜症が存在しない)に関連することが分かっている「参照標準」に対してなされ得る。本発明によれば、比較は、遺伝子発現レベルと子宮内膜症を発症する被検者の特定又は疾病素因との間でなされ得る。
【0024】
試験されている試料中の遺伝子発現レベル又は存在するタンパク質/ペプチドのレベルは、絶対量(例えばμg/ml)又は相対量(例えばシグナルの相対強度)であり得る。
【0025】
遺伝子発現の量又はタンパク質/ペプチドのレベルが他の試料における遺伝子発現の量
又はタンパク質/ペプチドのレベルと統計学的に有意に異なる場合、2つの試料間に差が存在する。例えば遺伝子発現の量又はタンパク質/ペプチドのレベルが他の試料中に存在するより少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約50%、少なくとも約80%、少なくとも約100%、少なくとも約200%、少なくとも約400%、少なくとも約600%、少なくとも約800%又は少なくとも約1000%多く存在する場合、2つの試料間の遺伝子発現における、又はタンパク質/ペプチドのレベルにおける差が存在する。
【0026】
子宮内膜症への疾病素因の判定又は予測は、診断的技法と考えられ得る。診断方法は、それらの感度及び特異性が異なる。例えば1つ又は複数の診断指標に基づいて、当業者はしばしば診断を下す。本発明では、これらは差次的発現遺伝子の発現レベル及び/又はそのポリペプチドレベルである。差次的発現遺伝子又はその産物であるポリペプチドの存在、非存在又は量は、子宮内膜症の存在、非存在又は重症度を示す。
【0027】
1つ又は複数の遺伝子の遺伝子発現レベル及び/又はポリペプチドレベルの多重測定は、疾患の進行又は疾患の治療をモニタリングするために用いられ得る遺伝子発現又はポリペプチドのレベルの一時的変化の測定と同様に成され得る。例えば遺伝子発現/ポリペプチドのレベルは、初回に、そして2回目に再び測定され得る。このような態様では、初回から2回目までの遺伝子発現及び/又はポリペプチドレベルの増大は、子宮内膜症の診断に役立ち得る。同様に、初回から2回目までの遺伝子発現及び/又はポリペプチドレベルの低減は、特定の種類の子宮内膜症治療に対する被検者の応答性を示し得る。さらにまた1つ又は複数の遺伝子の遺伝子発現の変化は、子宮内膜症の重症度及び将来の悪性事象に関連し得る。
【0028】
本発明の一実施形態では、少なくとも1つの遺伝子の遺伝子発現レベル及び/又はそのポリペプチドレベルが確定される。一実施形態では、例えばGenbank番号BC015090のリシルオキシダーゼ様1(LOXL1)、;例えばGenbank番号AY692262のインターロイキン2受容体γ(重度の複合型免疫不全)(IL2RG)、;例えばGenbank番号AF064548の低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質5(LRP5)、;例えばGenbank番号L18866のミエリン塩基性タンパク質(MBP)、;例えばGenbank番号BC028148の腫瘍壊死因子(TNFスーパーファミリー、成員2;TNF)、;例えばGenbank番号NM_006122のマンノシダーゼα、クラス2A、成員2(MAN2A2)、;例えばGenbank番号AK222960のプロコラーゲン−プロリン、2−オキソグルタレート4−ジオキシゲナーゼ(プロリン4−ヒドロキシラーゼ)α・ポリペプチド1(P4HA1)、;又は例えばGenbank番号AF336376の血小板由来成長因子D/DNA損傷誘導性タンパク質1(PDGFD)の遺伝子発現レベル、及び/又はそのポリペプチドレベルが測定される。別の実施形態では、LOXL1、IL2RG、LRP5、MPB、TNF、MAN2A2、P4HA1及びPDGFのうちの複数の遺伝子発現レベルが測定される。
【0029】
或る種の態様では遺伝子発現の比較測定は同一遺伝子について多数の時点でなされるが、一時点で所定の遺伝子を、そして第2の時点で第2の遺伝子を測定することも可能であり、これらの遺伝子の遺伝子発現の比較は診断情報を提供するか又は疾患の進行をモニタリングし得ることを当業者は理解するであろう。
【0030】
本発明の一態様では、1つ又は複数の遺伝子の遺伝子発現は異なる時点で比較測定され得る。
【0031】
「子宮内膜症の存在の確率」という語句は、本明細書中で用いる場合、被検者における状態を当業者が予測し得る方法を指す。それは、100%の精度で子宮内膜症を予測する
能力を指さない。その代わりに、それは、子宮内膜症が存在するか又は発症する確率の増大を指すことを当業者は理解するであろう。例えば子宮内膜症は、子宮内膜症への疾患素因による影響を受けないか又は子宮内膜症への疾患素因を有しない被検者のような対照又は参照標準と比較した場合に、高レベルのIL2RG発現及び/又はIL2RGポリペプチドレベル増大及び/又はLOXL1の発現レベル低減及び/又はLOXL1ポリペプチドのレベル低減を示す被験者において起こると思われる。本発明の一態様では、子宮内膜症の存在の確率は、見込み約50%、見込み約60%、見込み約75%、見込み約90%及び見込み約95%である。「約」という用語は、この状況では、±1%を指す。
【0032】
特定遺伝子と子宮内膜症への疾患素因とを関連付けることは統計学的分析であることを当業者は理解するであろう。さらに、ベースラインレベルからの遺伝子発現及び/又はペプチドレベルの変化は患者の予後を反映しており、そして遺伝子発現の変化の程度は悪性事象の重症度に関連づけられ得る。統計学的有意は、2以上の集団を比較し、そしてp値を確定することによりしばしば確定される。好ましいp値は、0.1、0.05、0.025、0.02、0.01、0.005、0.001及び0.0001である。
【0033】
さらなる態様では、本発明は被検者における子宮内膜症の同定のためのキットに関する。これらのキットは、被検者の試料における遺伝子の発現レベルを測定し、及び/又はポリペプチドレベルを測定するための装置及び試薬、並びに試験を実施するとともに結果を解釈するための説明書を含む。このようなキットは好ましくは、1つ又は複数のこのような測定を実施するのに十分な試薬を含有する。
【0034】
本発明による試験の「感度」とは、陽性の評価を得る(子宮内膜症を有する)罹患個体のパーセンテージである(「真の陽性」のパーセント)。試験により検出されない罹患個体は、「擬陰性」である。そして検定で陰性の評価を得る罹患していない被検者は「真の陰性」と呼ばれる。診断的検定の「特異性」は、1−擬陽性率であり、この場合、「擬陽性率」は、陽性の評価を得る疾患を有しない者の割合と定義される。特定の診断方法は状態の確定診断を提供し得ないが、それは、当該方法が診断を手助けする陽性指標を提供すれば十分である。
【0035】
遺伝子発現の測定
本発明の遺伝子発現の検出及び分析並びにポリペプチドレベルの測定のための多数の方法及び装置が、当業者に既知である。「遺伝子発現」という用語は、特定の遺伝子、例えばmRNA、cDNA、或いは特定遺伝子産物であるのポリペプチド、ペプチド又はタンパク質(これらに限定されない)の存在又は量を指す。本発明の好ましい態様では、LOXL1、IL2RG、LRP5、MPB、TNF、MAN2A2、P4HA1及び/若しくはPDGFの遺伝子発現、並びに/又は対応するポリペプチドのレベルが測定される。
【0036】
本発明の一実施形態では、遺伝子発現はRNAレベルを測定することにより確定される。遺伝子発現は、PCRベースの試験を用いて検出され得る。例えば逆転写酵素PCR(RT−PCR)が、RNAの発現を検出するために用いられる。RT−PCRでは、RNAは、逆転写酵素を用いてcDNAに酵素的に転化される。次にcDNAがPCR反応のための鋳型として用いられる。PCR産物は、任意の適切な方法、例えばゲル電気泳動及びDNA特異的染色による染色又は標識プローブとのハイブリダイゼーション(これらに限定されない)により検出され得る。本発明のさらに別の態様では、競合的鋳型の標準化混合物による定量的RT−PCRが利用され得る。
【0037】
本発明の別の実施形態では、遺伝子発現はハイブリダイゼーション試験を用いて検出される。ハイブリダイゼーション試験では、生体マーカーの存在又は非存在は、相補的核酸分子、例えばオリゴヌクレオチドプローブに対してハイブリダイズする、試料中の核酸の
ハイブルダイゼーション能力に基づいて測定される。種々のハイブリダイゼーション試験が利用可能である。本発明のいくつかの実施形態では、プローブと当該配列とのハイブリダイゼーションは、例えばノーザン又はサザン試験のように結合プローブを可視化することにより直接的に検出される。これらの試験では、DNA(サザン)又はRNA(ノーザン)が検出される。DNA又はRNAは次に、ゲノム中では高頻度に切断するが検出中のマーカーのいずれかの近くではそうではない一連の制限酵素で切断される。次にDNA又はRNAが、例えばアガロースゲル上で分離され、そして膜に移される。例えば放射性核種を組入れることにより標識された単数又は複数のプローブは、低緊縮条件下、中緊縮条件下又は高緊縮条件下で膜と接触させられる。非結合プローブは除去され、そして結合した標識プローブを可視化することにより結合の存在が検出される。本発明において、遺伝子発現はLOXL1、IL2RG、LRP5、MPB、TNF、MAN2A2、P4HA1及び/又はPDGFに関して測定される。
【0038】
核酸アレイ
核酸アレイは、核酸転写物から生成されるか又はそれと相補的な核酸配列或いはその領域、例えば血中に存在する核酸転写物の種の任意の組合せを含む。本発明によるマイクロアレイは、好ましくは10、100、500、1000、5000、10000及び15000個の核酸成員、さらに好ましくは少なくとも5000個の核酸成員を含む。これらの核酸成員は、本明細書中に記載される既知の又は新規の核酸配列或いはそれらの任意の組合せである。本発明によるマイクロアレイは、疾患を有する患者と健常患者からの血液試料中に存在する転写物RNA種の発現プロフィールの差次的レベルを試験するために用いられる。
【0039】
マイクロアレイとしては、個体中で発現される転写物を包含するアレイが挙げられる。一実施形態では、マイクロアレイは、ヒトにおいて発現される転写物を包含する。別の実施形態では、本発明のマイクロアレイはcDNAベースのアレイ又はオリゴヌクレオチドベースのアレイであり得る。
【0040】
定量的リアルタイムRT−PCR
本発明の別の態様では、本発明の転写物の1つ又は複数の種のレベルは、定量的方法、例えばQRT−PCR(即ちポリメラーゼ連鎖反応(PCR)と組合せて定量的逆転写(RT)を用いて血中からのRNAが測定される)を用いて測定され得る。
【0041】
血液からの総RNA又はmRNAは鋳型として用いられ、そして本発明の遺伝子の転写部分に特異的なプライマーは逆転写を開始するために用いられる。プライマー設計は、市販のソフトウエア(例えばPrimer Designer 1.0, Scientific Software等)を利用して成し遂げられ得る。逆転写の産物は、PCRのための鋳型としてその後用いられる。
【0042】
PCRは、特定標的配列を増幅するために熱安定性DNA依存性DNAポリメラーゼにより触媒される多数回のDNA複製を用いることにより、当該核酸配列を迅速に増幅するための方法を提供する。PCRは、増幅されるべき核酸配列、増幅されるべき配列の外側に位置する2つの一本鎖オリゴヌクレオチドプライマー、DNAポリメラーゼ、デオキシリボヌクレオシド三リン酸塩、緩衝剤及び塩の存在を要する。
【0043】
PCRの方法は、当該技術分野で既知である。PCRは、Mullis及びFaloona著, 1987,
Methods Enzymol.,155: 335に記載されているように実施される。
【0044】
PCRは、鋳型DNA又はcDNA(少なくともfg;さらに有用には、1〜1000ng)及び少なくとも25pmolのオリゴヌクレオチドプライマーを用いて実施される。典型的な反応混合物は以下のものを含む:100ngのDNA、25pmolのオリゴ
ヌクレオチドプライマー、2.5μlの10×PCR緩衝液1(Perkin-Elmer, Foster City, CA)、0.4μlの1.25μM dNTP、0.15μl(又は2.5単位)のTaq DNAポリメラーゼ(Perkin-Elmer, Foster City, CA)、並びに総容積を25μlにする脱イオン水。鉱油が任意選択で重層され、プログラム可能なサーマルサイクラーを用いてPCRが実施される。
【0045】
PCRサイクルの各工程の長さ及び温度、並びにサイクル数は、実際には緊縮要件にしたがって調整される。アニーリング温度及び時機は、プライマーが鋳型とアニーリングすると予測される効率と、耐容されるべきであるミスマッチの程度の両方により確定される。プライマーアニーリング条件の緊縮性を最適化する能力は、十分に当業者の知識内である。30℃〜72℃のアニーリング温度が用いられる。鋳型分子の初期変性は通常、92℃〜99℃で4分間行われ、その後、変性(94〜99℃で15秒〜1分)、アニーリング(上記のように確定される温度;1〜2分)及び伸長(72℃で1分)の工程からなるサイクルが20〜40サイクル行われる。最後の伸長工程は一般に72℃で4分間実行され、そして4℃での任意(0〜24時間)工程が続き得る。
【0046】
本来は定量的であるQRT−PCRは、血中のRNA転写物の1つ又は複数の種のレベルの定量的測定を提供するために、逆転写及びPCRの2段階手法を用いて、或いは一段階プロトコールでPCRと組合せた逆転写を用いても実施され得る。これらの技法(このための市販キット、例えばTaqman(登録商標)(Perkin-Elmer, Foster City, CA)がある)のうちの1つは、転写物特異的アンチセンスプローブを用いて実施される。このプローブはPCR産物(例えば遺伝子由来の核酸断片)に特異的であり、そしてオリゴヌクレオチドの5’末端に複合されたクエンチャー及び蛍光レポータープローブを用いて調製される。異なる蛍光マーカーは異なるレポーターに付着されて、1つの反応において2つの生成物の測定を可能にする。Taq DNAポリメラーゼが活性化されると、それは、5’から3’へのエキソヌクレアーゼ活性により鋳型に結合されたプローブの蛍光レポーターを切断する。クエンチャーの非存在下で、レポーターはここで蛍光を発する。レポーターの色変化は各特異的生成物の量に比例し、そして蛍光計により測定される。したがって各色の量が測定され、PCR産物が定量される。PCR反応は、多数の個体由来の試料が加工処理され同時に測定されるよう、96ウエルプレート中で実施される。Taqman系はゲル電気泳動を必要としないというさらなる利点を有し、そして標準曲線とともに用いられる場合、定量を可能にする。
【0047】
電気泳動を用いずに定量的にPCR産物を検出するための有用な第2の技法は、挿入(intercalating)染料、例えば市販のQuantiTect(商標) SYBR(登録商標) グリーン PCR(Qiagen, Valencia, California)を用いることである。RT−PCRは、PCR段階中にPCR産物中に組入れられ、PCR産物の量と比例する蛍光を生じる蛍光標識としてSYBR(登録商標)グリーンを用いて実施される。
【0048】
Taqman(登録商標)及びQuantiTect(商標) SYBR(登録商標)系の両方が、RNAの逆転写後に用いられ得る。
【0049】
さらに、転写物の1つ又は複数の種のレベルを定量的に測定するためのその他の系が既知であり、例としてはMolecular Beaconsが挙げられるが、これは蛍光分子及びクエンチャー分子を有するプローブを用い、そのプローブは、ヘアピン構造をとり、ヘアピン構造では蛍光分子が消光され、そしてハイブリダイズされると、ヘアピン構造が崩壊して蛍光が増大して、RNA転写物の1つ又は複数の種の定量的測定が可能になる。
【0050】
電気泳動を用いずに定量的にPCR産物を検出するためのいくつかの他の技法も、本発
明により用いられ得る(例えばPCR Protocols, A Guide to Methods and Applications, Innis 他., Academic Press, Inc. N.Y., (1990)参照)。
【0051】
タンパク質発現の測定
本発明のさらに別の実施形態では、遺伝子発現産物であるポリペプチドを測定することにより遺伝子発現が測定される。本発明の好ましい態様では、LOXL1、IL2RG、LRP5、MPB、TNF、MAN2A2、P4HA1及び/又はPDGFに関する遺伝子によりコードされる1つ又は複数のポリペプチドの量を測定することにより、遺伝子発現が測定される。本発明は、遺伝子発現を検出、測定する方法により限定されることはない。
【0052】
LOXL1、IL2RG、LRP5、MPB、TNF、MAN2A2、P4HA1及び/又はPDGFの遺伝子によりコードされる発現産物であるタンパク質、ポリペプチド又はペプチドは、適切な方法により検出され得る。試料中のペプチド、ポリペプチド又はタンパク質に関して、イムノアッセイ装置及び方法がしばしば用いられる。これらの装置及び方法は、当該分析物の存在又は量と相関したシグナルを生じるために、種々のサンドイッチアッセイ、競合的又は非競合的アッセイのフォーマットにおいて標識分子を利用し得る。さらに、或る種の方法及び装置、例えばバイオセンサー及び光学的イムノアッセイは、標識分子を必要とせずに分析物の存在又は量を確定するために用いられ得る。
【0053】
タンパク質、ポリペプチド又はペプチドの存在又は量は一般に、特異的抗体を用いて特異的結合を検出することで測定される。任意の適切なイムノアッセイ、例えば酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、競合的結合検定等が利用され得る。抗体とタンパク質又はポリペプチドとの特異的免疫学的結合は、直接又は間接的に検出され得る。直接的標識としては、抗体に付着される蛍光又は発光タグ、金属、染料、放射性核種等が挙げられる。間接的標識としては、当該技術分野で周知の種々の酵素、例えばアルカリ性ホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ等が挙げられる。
【0054】
タンパク質又はポリペプチドに特異的な固定化抗体の使用も、本発明において意図される。抗体は、種々の固体支持体、例えば磁性又はクロマトグラフィーマトリックス粒子、検定プレート(例えばマイクロタイターウエル)の表面、固体基体材料片(例えばプラスチック、ナイロン、紙他の上に固定され得る。試験ストリップは、固体支持体上にアレイ中の単数又は複数の抗体を配列させて被覆することにより調製され得る。このストリップは次に試験試料中に浸漬され、そして次に洗浄及び検出工程を通して迅速に加工処理されて、測定可能なシグナル、例えば着色スポットを生じ得る。
【0055】
本発明の複数の遺伝子及び/又はポリペプチドの分析は、一試験試料を用いて別個に又は同時に実行され得る。さらに、同一個体からの多数の試料を試験する(例えば連続時点で)ことの有用性を、当業者は認識するであろう。連続試料のこのような試験は、遺伝子発現及び/又はポリペプチドレベルにおける変化量の測定を可能にする。遺伝子発現レベルの増減、並びに一定の遺伝子発現及び/又はポリペプチドレベルの維持は、疾患状態についての有用な情報を提供し、例としては発病からのおよその時間を特定すること、回収可能な試料の存在及び量、薬剤療法の適切性、症候の好転により示されるような種々の療法の有効性、種々の型の子宮内膜症の鑑別、事象の重症度の同定、疾患重症度の同定、並びに患者の予後、例えば将来的な発症リスクの同定が挙げられるが、これらに限定されない。
【0056】
上記で参照された遺伝子を含むパネルは、子宮内膜症の診断又は予後、並びに子宮内膜症を有する被検者の管理に関連づけられる関連情報を提供するために構築され得る。この
ようなパネルは、好ましくはLOXL1、IL2RG、LRP5、MPB、TNF、MAN2A2、P4HA1及び/又はPDGFの配列を用いて構築され得る。単一遺伝子、又は遺伝子の大型パネルを含む遺伝子のサブセットの分析は、単独で、或いは単一ポリペプチド又はポリペプチドのサブセットの分析と組合せて、当業者により実行されて、感度又は特異性を最適化し得る。
【0057】
遺伝子発現の分析及び/又はポリペプチドレベルの確定は、同様に種々の身体的フォーマットで実行され得る。例えばマイクロタイタープレート及び自動制御機械の使用は、高処理量方式で多数の試験試料の処理を容易にするために用いられ得る。
【0058】
本発明の別の態様では、遺伝子産物、例えばcDNA、mRNA、cRNA、ポリペプチド及びその断片に配列において対応するプローブが既知の位置で特異的にハイブリダイズされるか又は結合され得るアレイが提供される。本発明の一実施形態では、アレイは、LOXL1、IL2RG、LRP5、MPB、TNF、MAN2A2、及び/又はPDGFに関する遺伝子によりコードされる生成物について別個の結合部位を各位置が表わすマトリックスである。本発明の別の態様では、「結合部位」(本明細書中では以後「部位」)とは、特定のコグネイトcDNAが特異的にハイブリダイズし得る核酸又は核酸類似体である。結合部位の核酸又は類似体は、例えば合成オリゴマー、全長cDNA、全長未満cDNA又は遺伝子断片であり得る。
【0059】
別の態様では、本発明は、遺伝子発現及び/又はポリペプチドレベルの分析のためのキットを提供する。このようなキットは、好ましくは、少なくとも1つの試験試料の分析のための装置及び試薬、並びに試験を実施するための使用説明書を含む。任意選択で、キットは、遺伝子発現及び/又はポリペプチドの量を被検者における子宮内膜症の診断又は予後に変換するための1つ又は複数の手段を含有し得る。被検者の遺伝子発現パターンと対照又は参照標準との比較は、被検者が子宮内膜症を有するか否かを示す。
【0060】
本発明の一実施形態では、キットは、LOXL1、IL2RG、LRP5、MPB、TNF、MAN2A2、P4HA1及び/又はPDGFのうちの少なくとも1つに特異的な抗体を含有する。その他の実施形態では、キットは、例えばオリゴヌクレオチドプローブ又はプライマーのように核酸を特異的に検出するための試薬を含有する。いくつかの実施形態では、キットは、検出試験を実施するために必要なすべての構成成分、例えば試験を実施するための、そして結果の分析のためのすべての対照及び使用説明書を含有する。本発明の一実施形態では、キットは、in vitro診断検定及び/又は薬学的又は食料製品のラベリングのための米国食品医薬品局(FDA)又は外国の同等機関により求められるような使用目的の記述を含めた仕様説明書を含有する。
【0061】
本発明の別の態様では、子宮内膜症の治療に用いるための作用物質のスクリーニング方法が提供される。特に、IL2RGの遺伝子発現レベル、合成レベル又は活性の低減を誘導し、及び/又はLOXL1の遺伝子発現レベル、合成レベル又は活性の増大を誘導し得る作用物質が意図される。
【0062】
例えば一実施形態では、先ず、試験作用物質を用いて子宮内膜症を有することが分かっている試験被検者を治療し、そして次に、子宮内膜症に応答して発現が変わる遺伝子又は配列の発現レベルに関して、及び/又はポリペプチドのレベルに関して、被検者の代表的試料を分析する。次に、試料の分析を、子宮内膜症を有することが分かっているが、しかし試験化合物を投与されない対照と比較して、それにより遺伝子発現を修飾し得る試験化合物を同定する。
【0063】
本発明の別の実施形態では、LOXL1、IL2RG、LRP5、MPB、TNF、M
AN2A2、P4HA1及び/又はPDGFの配列に基づいて治療を構築する。例えばIL2RGの発現を低減し、そしてLOXL1のレベル増大を誘導しようと試みる。
【0064】
上記遺伝子の発現を増大するか又は低減する方法は、当業者に既知である。発現の増大させるための例としては遺伝子の付加的コピーを被検者に供給することが挙げられる。発現を低減するための一例としては、RNAアンチセンス技術又は薬学的介入が挙げられる。
【0065】
DNAマイクロアレイを用いた血液リンパ球中の子宮内膜症に関する分子マーカーの同定
マイクロアレイデータ分析
実施例1に記載されたように、データを分析した。過剰発現とみなされる発現比は、DNAマイクロアレイデータ分析で一般的に用いられるように、≧2に設定された。患者及び対照からの末梢血リンパ球の総RNAを用いて、総計15097のcDNAクローン(14185の既知の遺伝子及び912の発現配列タグ部位)を分析した。t−統計(重量、表1参照)により、2つの群を分離する各遺伝子の識別能力を査定した。上向き−及び下向き調節されたほとんどの識別遺伝子を列挙した。患者対対照において過剰発現されることが判明した遺伝子から、4より大きい重量並びに2.0より大きい平均比差を有した9つを、さらなる分析のために選択した(図1)。これらを以下に示す:シグナル認識粒子受容体Bサブユニット(SRPRB);プロコラーゲン−プロリン、2−オキソグルタレート4−ジオキシゲナーゼ(プロリン4−ヒドロキシラーゼ)αポリペプチド1(P4HA1);リシルオキシダーゼ様1(LOXL1);インターロイキン2受容体γ(重度の複合型免疫不全)(IL2RG);低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質5(LRP5);ミエリン塩基性タンパク質(MBP);腫瘍壊死因子(TNFスーパーファミリー、成員2;TNF);マンノシダーゼα、クラス2A、成員2(MAN2A2);及び血小板由来成長因子D/DNA損傷誘導性タンパク質1(PDGFD)(表1)。9つの遺伝子すべての発現は、対照と比較して、患者の末梢血リンパ球では≧2倍増であった。
【0066】
【表1】

【0067】
リアルタイムRT−PCRを用いたマイクロアレイデータの検証
相対的リアルタイムRT−PCRを用いて、さらなる患者(N=15)及び対照(N=15)からの血液リンパ球中で、9つの顕著な差次的遺伝子の発現をさらに評価した。結果を、表1に要約する。同定された9つの遺伝子のうちの2つについて、リアルタイムRT−PCRにより差次的に発現されることを確認した。患者対対照において、IL2RGを上向き調節し(6.49倍;p=0.0037)、LOXLIを下向き調節した(0.06倍;p=0.0002)(図2)。LRP5、MBP、TNF、MAN2A2及びPDGFDをRT−PCRにより示されるように2倍以上に上向き調節したが、症例及び対照間の遺伝子発現レベルの差は統計学的有意に達しなかった。
【0068】
考察
過去において、生体マーカーを見出すことに向けられる研究の数は、大いに増大してきている(Colburn, W.A. 2003 J Clin Pharmacol 43: 329-341;Frank, R.及びHargreaves, R. 2003 Nat Rev Drug Discov 2: 566-580)。Biomarkers Definitions Working Groupによれば、生体マーカーは、「正常生物学的プロセス、病原性プロセス又は治療的介入に対する薬理学的応答の指標として客観的に測定され、評価される特質」である(Biomarkers Definitions Working Group 2001 Clin Pharmacol Ther 69: 89-95)。しかしながら、潜在的な診断的生体マーカーの数は、薬剤開発のために潜在的標的として考慮された数よりもはるかに少ない(Levenson, V.V. 2004 Pharmacogenomics 5: 459-461)。遺伝子発現の全体的分析は、新規の診断又は予後生体マーカーの発見を加速し得るが、これは、より広範な集団で実証される必要がある。
【0069】
それゆえ、大変利用しやすい組織である末梢血リンパ球中での遺伝子発現のパターンの特性化が、子宮内膜症に関する診断又は予後生体マーカーとして役立ち得る遺伝子の同定を促進し得るという前提で、この研究に着手した。血液リンパ球の転写物プロフィールのマイクロアレイ分析は、子宮内膜症移植片、子宮内膜腫又は腹水を試験することとは対照的に、この疾患に関する非侵襲性マーカーを見出す目的に良好に役立ち得ると仮説を立てた。子宮内膜症を有する女性対有しない女性の血清及び腹水の両方における種々の炎症分子/増殖因子のレベルの有意差を示す近年の研究についてこの仮説を基礎にした(Bedaiwy, M.A. 他. 2002 Hum Reprod 17: 426-431;Navarro, J. 2003 Obstet Gynecol Clin North Am 30: 181-192;Iwabe, T. 他. 2002 Gynecol Obstet Invest 53 Suppl 1: 19-25)。さらにまた、子宮内膜症患者と非罹患個体との間の遺伝子差に関する十分な証拠が存在し、そしてこのような差は血液リンパ球において明白である(Taylor, R.N. 他. 2002 Fertil Steril 78: 694-698;Nakago, S. 他. 2001 Mol Hum Reprod 7: 1079-1083)。最後に、免疫系は子宮内膜症において重要な役割を果たし、したがって全身免疫応答の分析は局所(即ち腹腔)免疫応答を反映し得る、ということが広く理解されている(Gagne, D. 他. 2003 Fertil Steril 80: 43-53;Gagne, D. 他. 2003 Fertil Steril 80:876-885)。
【0070】
今までのところ、子宮内膜症に関する2〜3の潜在的マーカー(主にサイトカイン、増殖因子、接着分子及びホルモン)のみが、血清又は血液リンパ球中で検出された。Bedaiwy及び共同研究者他(2002)は、血清IL−6及び腹水TNF−αを用いて、高度の感度及び特異性で、子宮内膜症を有する患者と有しない者とを識別し得る、ということを示した(Bedaiwy, M.A. 他. 2002 Hum Reprod 17: 426-431;Bedaiwy, M.A.及びFalcone, T. 2004 Clin Chim Acta 340: 41-56)。しかしながら、腹水TNF−αの測定は依然として侵襲的手法を要し、したがって子宮内膜症に関する簡易試験の基礎を成し得ない。Barrier and Sharpe-Timms (2002)は、進行した段階の子宮内膜症を有する女性はより高い血清レベルのVCAM−1及びより低い血清レベルのICAM−1を有すると報告した(Barrier, B.F.及びSharpe-Timms, K.L. 2002 J Soc Gynecol Investig 9: 98-101)。彼等は、異常レベルの可溶性接着分子は子宮内膜症の病因を説明する助けになるだけでなく、疾
患を段階づけるための生化学的マーカーとしても用いられ得ると結論づけた。Pizzo及び共同研究者他(2002)は、子宮内膜症患者がTNF−α、IL−8及びMCP−1(これらはすべて、疾患重症度に伴って低減するが、他方、血清TGF−βレベルは重症度に伴って増大する)のより高い血清レベルを有するということを示した(Pizzo, A. 他. 2002
Gynecol Obstet Invest 54: 82-87)。さらに、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の可溶性レベルも対照と比較して患者において有意に増大されたが、しかしこの観察は別の試験により反復され得なかった(Matalliotakis, I.M. 他. 2004 Int Immunopharmacol 4: 159-160;Gagne, D. 他. 2003 Hum Reprod 18: 1674-1680)。子宮内膜症患者の血清中で有意に増大される他のタンパク質は、黄体形成ホルモン(LH)、Fasリガンド、可溶性腫瘍壊死因子受容体及びICAM−1であるが、しかし後者の2つは、月経周期の特定相にある患者のみで有意に高かった(Illera, J.C. 他. 2001 Reproduction 121: 761-769;Garcia-Velasco, J.A. 他. 2002 Fertil Steril 78: 855-859;Koga, K. 他. 2000 Mol Hum Reprod 6: 929-933;Steff, A.M. 他. 2004 Hum Reprod 19: 172-178)。総合すると、上記の研究はすべて、全疾患段階の患者を診断するのに有用であり、且つその発現が試験時点での患者の月経周期相によらない子宮内膜症の非侵襲性マーカーを同定することができなかった。
【0071】
今日まで、遺伝子発現の子宮内膜症特異的パターンを同定するためのDNAマイクロアレイ技術の使用に関しては5つの報告しかない(Hughes, T.R.及びShoemaker, D.D. 2001
Curr Opin Chem Biol 5: 21-25;Albertson, D.G.及びPinkel, D. 2003 Hum Mol Genet 12: R145-52;Eyster, K.M. 他. 2002 Fertil Steril 77: 38-42;Arimoto, T. 他. 2003
Int J Oncol 22: 551-560;Lebovic, D.I. 他. 2002 Fertil Steril 78: 849-854;Kao,
L.C. 他. 2003 Endocrinology 144: 2870-2881;Matsuzaki, S. 他. 2004 Mol Hum Reprod 10: 719-728;Giudice, L.C. 他. 2002 Ann NY Acad Sci 955: 252-264;Discussion 293-295, 396-406)。しかしながらこれらの研究のうち、この衰弱性疾患に関する特異的血清ベース又は血液ベースの診断試験はない、という事実を詳細に取り扱ったものはない。したがって、子宮内膜症の病態生理学に関与する分子メカニズムを詳細に分析するのを確実に手助けする重要なデータが収集されているが、しかしこれらの研究は、血液又は血清を試験することにより診断及び治療モニタリングを促し得る共通の特定マーカーを同定することができなかった。さらに、これらの研究は、別個の遺伝子発現プロフィールにより実際に特性化され得る異なる疾患亜型(即ち、不妊症対深部子宮内膜症対卵巣子宮内膜症)に注目したため、報告されたデータは一致せず、広範に適用され得ない。
【0072】
血中の子宮内膜症に関する分子生体マーカーを同定するために、6例の患者及び5例の対照から単離された血液リンパ球中での〜15,000遺伝子/ESTの遺伝子発現を比較した。上向き−及び下向き調節遺伝子を列挙し、そして2つの試験群を分離するための各遺伝子の識別能力を、実施例1に記載されるようなt−統計学により査定した。過剰発現遺伝子の間で、4.0より大きい重量並びに2より大きい群別平均比変化を有する9例をさらに分析した。これらを以下の群に分類した。i)免疫応答に関与するタンパク質:子宮内膜症患者の腹水中に増大レベルで存在することが以前に示された前炎症性サイトカインであるTNF(Eisermann, J. 他. 1988 Fertil Steril 50: 573-579)、及び機能性IL−2、IL−4及びIL−7受容体の重要な構成成分である、共通γ鎖としても既知のIL−2Rγ鎖(IL2RG)(Nakajima, H. 他. 1997 Exp Med 185: 189-195);ii)コラーゲン代謝に関与する酵素:プロリル−4ヒドロキシラーゼ(P4HA1)はコラーゲン中の4−ヒドロキシプロリンの形成を触媒し(Annunen, P. 他. 1997 J Biol Chem 272: 17342-17348)、そしてリシルオキシダーゼ様1(LOXL1)は細胞外マトリックス中の不溶性コラーゲンの形成を媒介する(Molnar, J. 他. 2003 Biochim Biophys Acta 1647: 220-224);iii)細胞増殖/腫瘍形成の促進に関与する遺伝子:α−マンノシダーゼ(MAN2A2)、N結合型グリカンをプロセシングし、その発現レベルがin vitroで悪性挙動と相関されたグリコシルヒドロラーゼ(Misago, M. 他. 1995
Proc. Natl Acad Sci USA 92: 11766-11770;Yue, W. 他. 2004 Int J Cancer 108: 189-195);癌遺伝子Wntの補助受容体として機能し、細胞増殖及び乳癌細胞の侵襲性を積極的に調節することが示されている低密度リポタンパク質受容体5(LRP5)(Li, Y.
他. 1998 Invasion Metastasis 18: 240-251);アポトーシス及び悪性細胞において上向き調節されるシグナル認識粒子Bサブユニット(SRPRB)(Yan, W. 他. 2003 World J Gastroenterol 9: 1719-1724);並びに間葉に由来する細胞中でのその細胞分裂促進作用により特性化される血小板由来増殖因子D/DNA損傷誘導性タンパク質1(PDGFD)(Hamada, T. 他. 2000 FEBS Lett 475: 97-102);そしてiv)中枢神経系中及び造血細胞中で発現され、その発現がTNFにより増大されることが示されている、ミエリン鞘の主要タンパク質であるミエリン塩基性タンパク質(MBP)(Marty, M.C. 他. 2002 Proc Natl Acad Sci USA 99: 8856-8861;Huang, C.J. 他. 2002 Int J Dev Neurosci 20: 289-296)。患者及び対照からの付加的試料がリアルタイムRT−PCRを用いて分析される場合、IL2RG及びLOXL 1の相対的なmRNA発現の差は有意であることが示された。
【0073】
IL−2RG又は共通γ鎖は、すべての既知のT細胞増殖因子受容体(例えばIL−2、IL−4、IL−7、IL−9、IL−15及びIL−21)の一部である(Habib, T. 他. 2003 J Allergy Clin Immunol 112: 1033-1045)。このように、この受容体鎖は、Th1免疫応答の発生を媒介するシグナルの生成に決定的に関与する。子宮内膜症患者は活性化免疫細胞及び可溶性サイトカイン、例えばIL−2及びIL−4のレベル増大を示すということは周知である(Iwabe, T. 他. 2002 Gynecol Obstet Invest 53 Suppl 1: 19-25;Szyllo, K. 他. 2003 Mediators Inflamm 12: 131-138;Wu, M.Y. and Ho, H.N. 2003 Am J Reprod Immunol 49: 285-296)。さらに、II〜IV期の子宮内膜症を有するヒヒは、末梢血中のIL−2R+細胞のレベル増大を有することが示されている(D'Hooge, T.M. 他. 1996 Human Reprod 11: 1736-1740)。この遺伝子の発現は、子宮内膜症患者において増大されることが観察される。他方で、LOXL1は腫瘍抑制遺伝子として関連づけられるが、しかしこの役割は十分に解明されているわけではない(Contente, S. 他.
1990 Science 249: 796-798;Hamalainen, E.R. 他. 1995 J Biol Chem 270: 21590-21593)。LOXL1は、TGF−βシグナル伝達経路に関与し、頭部及び頚部扁平上皮癌細胞及び前立腺癌において下向き調節されることが示されている(Dairkee, S.H. 他. 2004
BMC Genomics 5: 47;Rost, T. 他. 2003 Anticancer Res 23: 1565-1573;Ren, C. 他.
1998 Cancer Res 58: 1285-1290)。LOXL1に関するリアルタイムRT−PCR及びマイクロアレイデータ間の不一致を説明できないが、しかし、この推定腫瘍抑制遺伝子がRT−PCRを用いて研究されたすべての子宮内膜症患者において劇的に下向き調節されるという事実は興味をそそるものであり、そしてさらなる調査に値する。マイクロアレイ及びリアルタイムPCR間の不一致は両方向で生じ、そして発現レベルは以前に報告されている(Orr, W.E. 他. 2003 Mol Vis 9: 482-496;Jenson, S.D. 他. 2003 Mol Pathol 56: 307-312;Ginestier, C. 他. 2002 Am J Pathol 161: 1223-1233;Mutch, D.M. 他. Nov 2001 Genome Biol 2: PREPRINT0009 (electronic publication);Goodsaid, F.M. 他. 2004 Environ Health Perspect 112: 456-460)。RT−PCRは遺伝子発現レベル確定における標準であり(Goodsaid, F.M. 他. 2004 Environ Health Perspect 112: 456-460)、そしてLOXL1がRT−PCRにより分析される患者のすべてにおいて劇的に低減されたという事実に鑑みて、重要な標準であると考えられるため、後者の結果はおそらくは患者において進行中のものをより良好に反映する。
【0074】
付加的試料のRT−PCR分析はLRP5、MBP、TNF、MAN2A2及びPDGFDに関するマイクロアレイデータを確認し得たが、しかし患者及び対照間の相対的mRNA発現における差は統計的有意に達しなかった。これは、個体差と、分析された試料サイズが小さいためとであり得る。MAN2A2の発現は対照においてよりも患者において12.93倍高かったが、しかし大きな標準誤差(7.4)は、この差が統計的有意に達
しないという事実を説明し得る。留意すべきは、TNFは子宮内膜症の病態生理学に強く関連づけられている。しかしながらその発現は、月経周期相により変わることが示されており(Hunt, J.S. 他. 1997 J Reprod Immunol 35: 87-99)、重症患者に比べて軽症患者において、より高レベルであることが実証されており(Pizzo, A. 他. 2002 Gynecol Obstet Invest 54: 82-87)、これは、この特定の遺伝子に関する有意性の欠如を説明し得る。本発明の試験も、DNAマイクロアレイ分析により示されたように、PDGFDの発現が患者の試料中で上向き調節されるということを示した。この観察は、Matsuzaki 他. (2004)により報告されたデータと一緒に、この疾患における血小板由来増殖因子系に関する重要な役割を支持する。彼等は、深部子宮内膜症病変におけるPDGF受容体の発現増大を報告したが、一方、本発明は、そのリガンドが子宮内膜症患者の血液リンパ球中で上向き調節されることを実証する。PDGFDは、細胞増殖及び形質転換を刺激し、そして血管新生において一役を果たすことが示されている(Ustach, C.V. 他. 2004 Cancer Res 64: 1722-1729;Li, H. 他. 2003 Oncogene 22: 1501-1510)。したがって、PDGF系の活性化が異所性部位での子宮内膜細胞の増殖を促進する手助けをし得ると推測されている。
【0075】
これは、子宮内膜症患者の末梢血リンパ球中で差次的に発現される遺伝子についての最初の報告であり、これが、この疾患の病因に関する重要な手がかりを提供し得る。本発明の分析は、疾患のマーカーとしてのそれらの使用をより明確にするために、疾患、構造変化又は発現プロフィールに伴うその分離がさらに研究されるものとして意図される遺伝子の同定をもたらした。別の実施形態では、遺伝子の組合せの遺伝子発現レベルの分析は、子宮内膜症に関する最小度侵襲性検出方法の特異性及び感度を増大すると提唱する。さらにまた、マイクロアレイ分析及びRT−PCRにより大型集団で実行される検証試験は、候補遺伝子の血清タンパク質レベルの測定により、そして子宮内膜症試料の高密度組織マイクロアレイ分析により完全なものになると予見される。
【0076】
本発明の研究で分析された患者は、疾患重症度(例えば重度;中等度;軽度;最小度)又は症候(例えば不妊対月経困難対その両方)に従って、種々の異なる臨床的部類に分類され得る;この分析はさらに、異なる遺伝的クラスを反映し得る。さらにまた、リンパ球遺伝子発現パターンに影響を及ぼし得る因子、例えば月経周期相、同時感染並びに現在の投薬を考慮することは重要である(Willis, C. 他. 2003 Hum Reprod 18: 1173-1178;Dosiou, C. 他. 2004 J Clin Endocrinol Metab 89: 2501-2504)。各部類中の患者が少数であるため、これらのクラス間の差を比較することはできなかった。したがって、本発明のデータに基づいて、子宮内膜症患者を対照と比較する発現分析は、試験される患者部類すべてに共通する遺伝子発現の差を検出し得るだけであった。本明細書中では、これらの知見、即ち疾患の亜型、同時投薬又は患者の月経周期相段階にかかわらず、IL−2RG及びLOXLIに関する遺伝子発現の差が有意であったという知見の有用性を提示する。われわれの実験室で進行中の予測試験は、当該遺伝子の発現パターン、即ち遺伝子発現レベルの差が月経周期相によって変化するか否か、そしてこのような差が臨床的提示又は疾患特質(例えば重症対軽症疾患;月経困難対不妊)に関連づけられ得るか否かを解明するために特定的に計画されている。
【0077】
要するに、この研究は、非侵襲性特異的診断試験の開発のための基礎として役立つと予見される子宮内膜症における新規の標的遺伝子座を、並びにこの慢性衰弱性疾患のための新規の療法を示した。
【実施例1】
【0078】
試験集団
プエルトリコ全体で実行する共同OB−GYNからの直接的照会により、試験被検者(患者及び対照)を動員した。試験中の患者集団は、手術中にOB−GYN専門医により子
宮内膜症と診断された閉経前女性で構成され、疾患のすべての期:重症(11)、中等度(6)、軽症(3)、最小度(1)の患者を包含する。マイクロアレイ(N=6;年齢範囲32〜39 y/o;平均=35.5 y/o)及びリアルタイムRT−PCR検証実験(N=15;年齢範囲26〜39 y/o;平均=31.2 y/o)のために用いられる患者試料を、我々の核酸バンクから無作為に選択した。21名の患者のうち13名(62%)は、試料を採取する場合、いかなる薬剤も摂取しなかった。投薬中の患者は、GnRHアゴニスト(6)、経口避妊薬(1)及びダノクリン(1)で治療される者であった。対照(マイクロアレイに関してはN=4;RT−PCRに関してはN=15)は、非関連性婦人科学的状態(例えば子宮類繊維腫、DUB、不妊化)に関する腹腔鏡検査又は開腹術を受けた、そして外科手術により確証されるような子宮内膜症を有しない女性であった。男性有志から得られた試料は、マイクロアレイ実験における対照として含まれた。対照試料は完全に匿名性であり、したがって人口学的情報に結びつけられなかった。マイクロアレイ及びRT−PCR実験のために用いられる患者及び対照からの試料は、重複しなかった。任意の実験の前に、Ponce School of Medicine及びNHGRI-NIHの両方のIRB委員会により、この研究プロトコールは評価され、認可された。全参加者が、当該試験に登録する前に、インフォームドコンセント書式を読み署名した。
【0079】
血液試料
インフォームドコンセント書類を得た後、標準滅菌手法を用いて、研究看護士による静脈穿刺により血液試料を収集した。先ず、実験室で、Histopaque(Sigma, St.
Louis, MO)中で2000rpmで40分間の遠心分離により、全血からリンパ球を単離した。Trizol LSを用いて、メーカーの仕様書(Invitrogen, Carlsbad, CA)に従って、総RNAをリンパ球から単離した。cDNAマイクロアレイによる発現分析:遺伝子選択プログラムを用いて、罹患女性の6例の血液試料及び5例の対照を分析した(下記参照)。用いたアレイは、前に記載されたようなガラススライド上で調製され、プリントされた15097のcDNAクローンを有した(DeRisi, J. 他. 1996 Nat Genet 14: 457-460;Shalon, D. 他. 1996 Genome Res 6: 639-645;Mousses, S. 他. in Gene expression analysis by cDNA microarrays, in Functional Genomics, F.J. Livesey及びS.P. Hunt (Eds.), 2000, Oxford University Press, Oxford, pp. 113-137)。これらのクローンのうち、912が発現配列タグであり、残りの14,185クローンは既知の遺伝子であった。ハイブリダイゼーション及びハイブリダイゼーション後洗浄を、前に記載されたように実行した(Mousses, S. 他. in Gene expression analysis by cDNA microarrays, in Functional Genomics, F.J. Livesey及びS.P. Hunt (Eds.), 2000, Oxford University Press, Oxford, pp. 113-137;Monni, O. 他. 2001 Proc. Natl Acad Sci USA 98: 5711-5716;Pollack, J.R. 他. 2002 Proc Natl Acad Sci USA 99: 12963-12968)。要するに、被検者の血液リンパ球からの約15〜20μgの総RNA並びに同量の標準参照(Universal Human Reference RNA, Stratagene, La Jolla, CA)を、SuperScript逆転写酵素(Invitrogen, Carlsbad、 CA)を用いて逆転写により、そしてそれぞれCy3−dUTP又はCy5−dUTP(Amersham -Pharmacia, Piscataway, NJ)で標識した。標識プローブをアルカリ性加水分解に付し、精製し、Microcon 30(Millipore, Billerica, CA)を用いて濃縮した。密閉保湿チャンバー中で65℃の水溶液中で、ハイブリダイゼーションを一晩(16〜24時間)実施した。
【0080】
cDNAマイクロアレイデータの統計学的分析
2つの群(子宮内膜症の群とそうではない群)間で有意の差次的発現を示す遺伝子を同定するために、前に記載されたように遺伝子選択プログラム(arrayanalysis. nih. gov)を用いた(Bittner, M. 他. 2000 Nature 406: 536-540;Hedenfalk, I. 他. 2001 N Engl J Med 344: 539-548)。遺伝子発現データを先ず測定品質評価でフィルタリングし、そしてt−統計を識別重量値として算定した。意味のない生物学的情報及び余剰なデータ点を除去後、最も差次的な遺伝子(即ち、4.0より大きい重量並びに2.0より大きい
群別平均比変化(2群間の平均比差)を満たす遺伝子)を列挙した。遺伝子発現比を先ず対数変換して、次に、全実験を通しての平均発現レベルからのそれらの標準偏差(σ)により色コード化し、発現上昇は赤色(暗灰色)に、そして発現低下は緑色(明緑色)に着色された(図1)。
【0081】
リアルタイムRT−PCRによる遺伝子発現データの検証
DNAマイクロアレイで得られた遺伝子発現データを検証するために、付加的患者(N=15)及び女性対照(N=15)の末梢血リンパ球からの総RNAを用いて、相対的なリアルタイムRT−PCRを実行した。全実験を、三重反復実験で実行した。即ち、Trizol LS試薬(Invitrogen, Carlsbad, CA)を用いて、総RNAを末梢血リンパ球から単離した。夾雑DNAを除去するために、試料をDNASeI(DNA-free, Ambion, Austin, TX)で処理した。メーカーのプロトコールに従って、iScript cDNA合成キット(Bio-Rad, Hercules, CA)を用いて、PTC−200サーマルサイクラー(MJ Research, Waltham, MA)で逆転写を実施した。cDNA合成後、メーカーの推奨(Bio-Rad, Hercules, CA)に従って、iQ SYBR Green Super Mixキットを用いて、特異的オリゴープライマー対で、PCR反応を実施した。PCR増幅プロフィールを以下に示す:94℃で4分間、その後、94℃/30秒での変性、遺伝子特異的アニーリング温度/30秒及び72℃/40秒での伸長を50サイクル。融解曲線を各実行後に作成して、プライマーの特異性を立証した。iCycler iQ Optical Systemソフトウエア、バージョン3.0a(Bio-Rad, Hercules, CA)を用いて、PCR増幅のリアルタイム分析を実行した。特異的オリゴ−プライマー対を公共データベースから得て、ニュージャージーメディカルスクールのMolecular Resource Facilityで合成した。ハウスキーピング遺伝子GAPDHに対する標準化後の各試料に関して、相対的発現レベルを算定した(Livak, K.J. 2001 Methods 25: 402-408)。独立両側t検定を用いて統計学的分析を実施して、患者及び対照における相対的mRNA発現レベルを比較した(GraphPad InStat 3)。統計学的有意を、<0.05のp値と定義した。
【実施例2】
【0082】
14名の付加的患者からのデータの分析を完了した。これらのマーカーの個々人の多様性のより良好な表示を可能にするオリジナルデータ(組1)の散布プロットを含めた(図3)。留意すべきは、散布プロットは、低発現レベルのLOXL1が今まで試験されたすべての患者で生じるということを示す。
【0083】
さらにまた、オリジナル知見を確認する14名の患者の別の組(組2)に関する付加的データを含める。以下に示す図は、試験した第2の組の患者の結果の要約を提示する。図4は、組2に関する各遺伝子の個々人の多様性を示す散布プロットから成る。図5は、患者組1(上パネル)及び組2(下パネル)からの平均発現比結果を提示し、一方、図6は、2群の結果の比較を示す。図7は、今まで試験した39名の患者からのデータをプロットする。
【0084】
本発明を、明確にし理解するために多少詳細に説明してきたが、形態及び詳述の種々の変更は本発明の真の範囲を逸脱することなく成され得ることを当業者は理解するであろう。図、表及び付録、並びに添付の特許請求の範囲、上記で参照された特許、出願及び出版物はすべて、参照により本明細書中で援用される。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】遺伝子選択プログラム(arrayanalysis.nih.gov、実施例1参照)に基づいた9つの最も差次的な遺伝子の発現を示す図である。各横列は遺伝子を表し、各縦列は試料を表わす。各遺伝子に関して、赤(暗灰)色は平均に比して高いレベルの発現を示し、緑(明灰)色は平均に比して低いレベルの発現を示す。下のスケールは、平均からの標準偏差の数値を示す(イタリック体のクローンIDは、イメージクローンではない。UniGene/Gene記号はUniGene build #173からである)。
【図2】子宮内膜症患者対正常対照における相対的遺伝子発現。y軸は、ハウスキーピング遺伝子GAPDHの発現に対する標準化後の、9つの最も差次的な遺伝子の平均相対発現(2-ΔΔCt)を示す。p値は、両側独立t検定(**p<0.001;*p<0.01)により算出された。
【図3−1】子宮内膜症患者対正常対照(組1)における遺伝子のmRNA発現を示す図である。
【図3−2】子宮内膜症患者対正常対照(組1)における遺伝子のmRNA発現を示す図である。
【図4−1】子宮内膜症患者対正常対照(組2)における遺伝子のmRNA発現を示す図である。
【図4−2】子宮内膜症患者対正常対照(組2)における遺伝子のmRNA発現を示す図である。
【図5】子宮内膜症患者対正常対照(組2)における相対的遺伝子発現を示す図である。
【図6】組1対組2の相対的発現比較を示す図である。
【図7】相対的な発現(全て)を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
女性被検者における子宮内膜症への疾病素因を判定又は予測する方法であって、
(a)被検者における末梢血白血球又は末梢血の試料中の少なくとも1つの末梢血白血球の差次的発現遺伝子の遺伝子発現レベルを測定して第1の値を提供する工程と、
(b)対照又は参照標準における前記少なくとも1つの白血球の差次的発現遺伝子の遺伝子発現レベルを測定して第2の値を提供する工程と、
(c)前記第1の値及び前記第2の値の間に差が存在するか否かを比較する工程と
を含む方法。
【請求項2】
前記対照又は参照標準が子宮内膜症を有しない被検者又は被検者群を用いて測定される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記第1の値が前記第2の値よりも高いことを子宮内膜症の存在又は子宮内膜症の発症を予測する指標とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記第1の値が前記第2の値よりも低いことが子宮内膜症の存在又は子宮内膜症の発症を予測する指標となる請求項1又は2記載の方法。
【請求項5】
子宮内膜症の存在が少なくとも50%の確率で予測される請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の値が前記第2の値より少なくとも20%高いか又は低い請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記遺伝子発現レベルの測定が前記遺伝子から転写されたポリヌクレオチドの発現量を測定することからなる請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
転写されたポリヌクレオチドがmRNA又はcDNAである請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記発現レベルがマイクロアレイ分析、ノーザンブロット分析、逆転写PCR又はRT−PCRにより検出される請求項7又は8記載の方法。
【請求項10】
LOXL1、IL2RG、LRP5、MPB、TNF、MAN2A2、P4HA1及びPDGFから成る群から選ばれる遺伝子の発現レベルが測定される請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
女性被検者における子宮内膜症への疾病素因を判定又は予測する方法であって、
(a)被検者における末梢血白血球又は末梢血の試料中の少なくとも1つの末梢血白血球の差次的発現タンパク質又はペプチドのレベルを測定して第1の値を提供する工程と、
(b)対照又は参照標準における前記少なくとも1つの白血球の差次的発現タンパク質又はぺプチドのレベルを測定して第2の値を提供する工程と、
(c)前記第1の値及び前記第2の値の間に差が存在するか否かを比較する工程と
を含む方法。
【請求項12】
前記第1の値が前記第2の値よりも高いことが子宮内膜症の存在又は子宮内膜症の発症を予測する指標となる請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記第1の値が前記第2の値よりも低いことを子宮内膜症の存在又は子宮内膜症の発症
を予測する指標とする請求項11記載の方法。
【請求項14】
前記遺伝子発現レベルの測定が遺伝子発現産物であるタンパク質の測定を含む請求項1記載の方法。
【請求項15】
前記タンパク質又はペプチドの量が該タンパク質又はペプチドと特異的に結合する抗体、抗体誘導体又は抗体断片を用いて検出される請求項11記載の方法。
【請求項16】
治療の前後に子宮内膜症を有すると判定された被検者をモニタリングする方法であって、
(a)治療前に前記被検者における末梢血白血球又は末梢血の試料中の少なくとも1つの末梢血白血球の差次的発現遺伝子の遺伝子発現レベルを測定して第1の値を提供する工程と、
(b)治療後に前記少なくとも1つの白血球の差次的発現遺伝子の遺伝子発現レベルを測定して第2の値を提供する工程と、
(c)前記第1の値及び第2の値の差を比較する工程と
を含む方法。
【請求項17】
子宮内膜症の治療において用いるための候補作用物質のスクリーニング方法であって、
(a)少なくとも1つの差次的発現遺伝子を発現し得る細胞を生体外で候補作用物質と接触させる工程と、
(b)前記細胞中の前記少なくとも1つの差次的発現遺伝子の遺伝子発現レベルを測定して第1の値を提供する工程と、
(c)前記候補作用物質の非存在下で前記細胞中の前記少なくとも1つの差次的発現遺伝子の遺伝子発現レベルを測定して第2の値を提供する工程と、
(d)前記第1の値を前記第2の値と比較して、その遺伝子の発現レベルの差を子宮内膜症の治療のために潜在的に用いられ得ることの指標とする工程と
を含む方法。
【請求項18】
少なくとも1つの差次的発現遺伝子又はその遺伝子の発現産物の遺伝子発現レベル、合成レベル又は活性の増減を誘導し得る有効量の作用物質を被検者に投与することからなる、子宮内膜症を治療又は予防する方法。
【請求項19】
少なくとも1つの差次的発現遺伝子又はその遺伝子の発現産物の遺伝子発現レベル、合成レベル又は活性の増減を誘導し得る有効量の作用物質を含む子宮内膜症の治療又は予防のための薬剤の製造方法。
【請求項20】
女性被検者における子宮内膜症への疾病素因を判定又は予測するためのキットであって、
(a)被検者における末梢血白血球又は末梢血の試料中の少なくとも1つの末梢血白血球の差次的発現遺伝子の遺伝子発現レベルを測定して第1の値を提供する手段と、
(b)対照又は参照標準における前記少なくとも1つの白血球の差次的発現遺伝子の遺伝子発現レベルを測定して第2の値を提供する手段と、
(c)前記第1の値及び前記第2の値の間に差が存在するか否かを比較する手段と
を含むキット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3−1】
image rotate

【図3−2】
image rotate

【図4−1】
image rotate

【図4−2】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公表番号】特表2008−537474(P2008−537474A)
【公表日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−556134(P2007−556134)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【国際出願番号】PCT/US2005/044723
【国際公開番号】WO2006/091254
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(502006782)アメリカ合衆国 (47)
【出願人】(507279462)
【Fターム(参考)】