説明

血液脳関門を介して化合物を輸送するためのアプロチニンポリペプチド

【課題】薬剤送達の分野における改善をもたらし、個体の血液脳関門を介して化合物または薬剤を輸送するための、非侵襲的かつ柔軟性のある方法および担体を提供する。
【解決手段】本発明は、in vitroアッセイにおいて哺乳動物の血液脳関門を模倣した(と似た)細胞層を横断することができる(すなわち横断している)生物活性ポリペプチドを提供し、このポリペプチドは、例えば、アプロチニン、アプロチニン類似体、配列番号1において定義されるアミノ酸配列を含んで良い(または本質的にそれからなっていてよい)アプロチニン断片、特定のアミノ酸配列の生物活性類似体、特定のアミノ酸配列の生物活性断片、および特定のアミノ酸配列の類似体の生物活性断片からなる群から選択することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤送達の分野における改善に関する。より詳細には本発明は、ポリペプチド、接合体、および本発明のポリペプチドまたは接合体を含む医薬組成物に関する。本発明はさらに、哺乳動物の血液脳関門を介して化合物または薬剤を輸送するため、ならびに神経疾患の治療および診断における、これらのポリペプチドおよび接合体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
脳の病状に関する新たな療法の開発において、血液脳関門(BBB)は、中枢神経系(CNS)の障害を治療するための薬剤の考えられる使用に関する、主な障害として考えられている。CNS用薬剤に関する世界市場は1998年は330億ドルであり、これは心臓血管用薬剤に関する世界市場のそれのほぼ半分であったが、しかしながら米国では、心臓血管病よりもCNS障害に2倍近く多くの人々が罹患している。この不均衡の理由は、98%を超えるすべての考えられるCNS用薬剤が血液脳関門を横断しないということである。さらに、99%を超える世界のCNS用薬剤の開発はCNS用薬剤の発見のみに向けられており、1%未満がCNS用薬剤の送達を対象としている。この割合によって、何故有効な治療が脳腫瘍、アルツハイマー病および脳卒中などの主な神経疾患に現在利用可能でないかを、説明することができるはずである。
【0003】
脳は2つの関門系:血液脳関門(BBB)および血液脳脊髄液関門(BCSFB)の存在によって、おそらく毒性である物質に対して保護されている。BBBは、血清リガンドの取り込みに関する主な経路であると考えられる、何故ならその表面積は、BCSFBの表面積より約5000倍大きいからである。BBBを構成する脳内皮は、CNSの多くの障害に対する考えられる薬剤の使用に関して主な障害となる。
【0004】
原則として、約500ダルトンより小さい親油性分子のみがBBBを、すなわち血液から脳へ通過することができる。しかしながら、CNS障害を治療するための動物試験において有望な結果を示す、多くの薬剤の大きさは相当大きい。したがって、ペプチドおよびタンパク質療法剤は、これらの薬剤に対する脳毛細管内皮壁の無視できる程度の浸透性のために、血液から脳への輸送からは一般に除外される。脳毛細管内皮細胞(BCEC)は、他の器官の毛細血管と比較して、固い接合部によって密接に塞がれており、数個の有窓毛細血管および数個の細胞内小胞を有する。BCECは細胞外マトリクス、星状細胞、周細胞およびミクログリア細胞によって囲まれている。内皮細胞と星状細胞の脚突起および毛細血管の基底膜の密接な関係は、血液-脳の交換の確かな制御を可能にするBBBの性質の発展および維持に重要である。
【0005】
国際公開WO2004/060403は、血液脳関門を介して薬剤を輸送するための分子に関する、本発明者によってなされた発明を開示している。それ以外は今日まで、脳に利用可能である有効な薬剤送達手法は存在しない。脳へのペプチドおよびタンパク質薬剤送達に関する研究中の方法は、3つの主な戦略に分けることができる。第1に、侵襲的手順には外科手術による薬剤の直接的な脳室内投与、および高浸透圧溶液の頚動脈内注入によるBBBの一時的破壊がある。第2に、薬理系戦略は、ペプチドまたはタンパク質の脂質可溶性を増大させることによってBBBを介した通過を容易にすることに本質がある。第3に、生理系戦略はBBBにおいて様々な担体機構を利用するものであり、これは近年特徴付けられてきている。この手法では、受容体標的型送達媒体と同様にBBBに作用するタンパク質ベクターと薬剤を結合させる。この手法は非常に特異的であり、無限の標的との臨床適応に関して極度の柔軟性で高い有効性を示す。後者の手法は、前述の公開中に記載された分子および本発明の分子を考案した本発明者によって以前から、かつ依然として研究されている。
【0006】
米国特許第5,807,980号は、ウシ膵臓トリプシン阻害剤(アプロチニン)由来の阻害剤、ならびにその調製法および治療用途を記載している。これらのペプチドは、異常な血栓症などの組織因子および/または因子VIIIaの異常な出現または量によって特徴付けられる状態を治療するために使用される。
【0007】
米国特許第5,780,265号は、血漿中のカリクレインを阻害することができるセリンプロテアーゼ阻害剤を記載している。
【0008】
米国特許第5,118,668号は、ウシ膵臓トリプシン阻害剤変異体を記載している。
【0009】
個体のBBBを介して化合物または薬剤を輸送するための、担体またはベクターとして作用することができる改良型分子が提供されることが、非常に望ましいはずである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】国際公開WO2004/060403
【特許文献2】米国特許第5,807,980号
【特許文献3】米国特許第5,780,265号
【特許文献4】米国特許第5,118,668号
【特許文献5】国際出願番号PCT/CA2004/000011
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Genebank:www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/
【非特許文献2】Biochemistry(第3版、1988、Lubert Stryer、Stanford University、W.H.Freeman and Company、ニューヨーク)
【非特許文献3】Dehouck M.P.、Meresse S、Delorme P.、Fruchart J.C.、Ceccheili,R.、An Easier,Reproductible,and Mass-Production Method to Study the Blood-Brain Barrier In Vitro.、J.Neurochem、54、1798〜1801、1990
【非特許文献4】Laccabue et al、2001 Cancer、92(12):3085〜92
【非特許文献5】Dagenais et al、2000、J.Cereb.Blood Flow Metab.20(2):381〜386
【非特許文献6】Smith(1996、Pharm.Biotechnol.8:285〜307)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の1つの目的は、薬剤送達の分野における改善をもたらすことである。
【0013】
本発明の他の目的は、個体の血液脳関門を介して化合物または薬剤を輸送するための、非侵襲的かつ柔軟性のある方法および担体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本出願は、例えば血液脳関門を介して望ましい化合物を輸送することができる、新たな分子を開示する。
【0015】
第1の態様において、本発明は、in vitroアッセイにおいて哺乳動物の血液脳関門を模倣した(と似た)細胞層を横断することができる(すなわち横断している)生物活性ポリペプチドを提供し、このポリペプチドは、例えば、
アプロチニン(配列番号98)、
アプロチニン類似体、
配列番号1において定義されるアミノ酸配列を含んで良い(または本質的にそれからなっていてよい)アプロチニン断片、
配列番号1の生物活性類似体、
配列番号1の生物活性断片、および
配列番号1の類似体の生物活性断片
からなる群から選択することができる。
【0016】
第2の態様において、本発明は、in vitroアッセイにおいて哺乳動物の血液脳関門を模倣した(と似た)細胞層を横断することができる(すなわち横断している)生物活性ポリペプチドを提供し、このポリペプチドは、例えば、
配列番号1において定義されるアミノ酸配列を含むことができるアプロチニン断片、
配列番号1の生物活性類似体、
配列番号1の生物活性断片、および
配列番号1の類似体の生物活性断片
からなる群から選択することができる。
【0017】
本発明によれば、アプロチニン断片は配列番号1において定義される配列からなっていてよい。さらに、本発明によれば、アプロチニン断片は配列番号1を含むことができ、約19アミノ酸〜約54アミノ酸の長さ、例えば10〜50アミノ酸長、10〜30アミノ酸長などを有することができる。
【0018】
本発明によれば、配列番号1の生物活性類似体は、約19アミノ酸〜約54アミノ酸(例えば、例えば21〜23、25〜34、36〜50および52〜54を含む)、または約19アミノ酸〜約50アミノ酸、または約19アミノ酸〜約34アミノ酸(例えば、19、20、21、22、23、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34)、約19アミノ酸〜約23アミノ酸、または約19、20、21、22、23、24、35、51アミノ酸の長さを有することができる。
【0019】
本明細書に記載する(例えば19アミノ酸の)ポリペプチドの生物活性断片は、例えば約7、8、9または10〜18アミノ酸のポリペプチドを含むことができる。したがって、本発明によれば、配列番号1または配列番号1の類似体の生物活性断片は、約7〜約18アミノ酸または約10〜約18の長さを有することができる。
【0020】
米国特許第5,807,980号は、本明細書で配列番号102として同定するポリペプチドを記載している。
【0021】
米国特許第5,780,265号は、本明細書で配列番号103として同定するポリペプチドを記載している。
【0022】
アプロチニンのアミノ酸配列(配列番号98)、Angiopep-1のアミノ酸配列、および生物活性類似体のいくつかの配列は、例えば国際公開番号W02004/060403の下で2004年7月22日に公開された、国際出願番号PCT/CA2004/000011において見ることができる。さらに、国際公開番号W004/060403は、本明細書で配列番号104として同定するポリペプチドを記載している。
【0023】
米国特許第5,118,668号は、配列番号105で示す配列を有するポリペプチドを記載している。
【0024】
アプロチニン類似体の例は、国際出願番号PCT/CA2004/000011中に開示された合成アプロチニン配列(またはその一部分)のタンパク質ブラスト(Genebank:www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)を実施することによって発見することができる。代表的なアプロチニン類似体は、例えばアクセッション番号CAA37967(GI:58005)、1405218C(GI:3604747)などの下で見ることができる。
【0025】
他の態様において、本発明は、in vitroアッセイにおいて哺乳動物の血液脳関門を模倣した(と似た)細胞層を横断することができる(すなわち横断している)生物活性ポリペプチドを提供し、このポリペプチドは、例えば、
配列番号1を含むことができる19〜54(例えば19〜50)アミノ酸長のアプロチニン断片、
配列番号1からなるアプロチニン断片、
約19〜50アミノ酸長の配列番号1の生物活性類似体、および
(10〜18アミノ酸の)配列番号1の生物活性断片または(約10〜18アミノ酸の)配列番号1の類似体の生物活性断片
からなる群から選択することができる。
【0026】
本発明によれば、配列番号1の生物活性類似体を提供し、この生物活性類似体は、例えば、
配列番号1のアミノ酸配列との少なくとも35%の同一性を含むことができる配列番号1の類似体、
配列番号1のアミノ酸配列との少なくとも40%の同一性を含むことができる配列番号1の類似体、
配列番号1のアミノ酸配列との少なくとも50%の同一性を含むことができる配列番号1の類似体、
配列番号1のアミノ酸配列との少なくとも60%の同一性を含むことができる配列番号1の類似体、
配列番号1のアミノ酸配列との少なくとも70%の同一性を含むことができる配列番号1の類似体、
配列番号1のアミノ酸配列との少なくとも80%の同一性を含むことができる配列番号1の類似体、
配列番号1のアミノ酸配列との少なくとも90%の同一性を含むことができる配列番号1の類似体、および
配列番号1のアミノ酸配列との少なくとも95%(すなわち96%、97%、98%、99%および100%)の同一性を含むことができる配列番号1の類似体
からなる群から選択することができる。
【0027】
例えば、配列番号1の生物活性類似体は、配列番号2〜配列番号62、配列番号68〜配列番号93および配列番号97ならびに99、100および101のいずれか1つにおいて定義されるアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を含むことができる。本発明のポリペプチドが例えば配列番号99、100または101を含む場合、ポリペプチドは約10〜50アミノ酸、例えば10〜30アミノ酸長のアミノ酸配列を有することができる。
【0028】
さらに、本発明によれば、配列番号1の生物活性類似体は配列番号67において定義されるアミノ酸配列を含むことができる(すなわち、配列番号67のアミド化型であるポリペプチド番号67(Angiopep-1))。
【0029】
本発明のポリペプチドはアミド化することができる、すなわちアミド化アミノ酸配列を有することができる。例えば、配列番号67のポリペプチドをアミド化することができる(ポリペプチド番号67)。
【0030】
本発明の一部は、配列番号102、103、104および105において定義するポリペプチド以外の本明細書で定義するポリペプチドに関するものであってよく、本発明の他の部分はこれらのペプチドを含むことができる。例えば、非制限的に、これらのペプチドを含む接合体、および神経疾患(例えば脳腫瘍)を治療するためのその使用、神経疾患(例えば脳腫瘍)の治療法、神経疾患を治療するための医薬組成物などは本発明によって含まれる。
【0031】
さらに、他の態様において、本発明は、in vitroアッセイにおいて哺乳動物の血液脳関門を模倣した(と似た)細胞層を横断することができる(すなわち横断している)生物活性ポリペプチドを提供し、このポリペプチドは、例えば、
配列番号1を含むことができる19〜54(例えば19〜50)アミノ酸長のアプロチニン断片、
配列番号1からなるアプロチニン断片、
約19〜50アミノ酸長の配列番号1の生物活性類似体(ただし、前記類似体は、配列番号102、103、104または105を含まず、また配列番号67からなる場合アミド化されている)、
10〜18アミノ酸の配列番号1の生物活性断片、および
約10〜18アミノ酸の配列番号1の類似体の生物活性断片
からなる群から選択することができる。
【0032】
さらに、本発明によれば、配列番号1の生物活性断片または配列番号1の類似体の生物活性断片は、配列番号1または配列番号1の類似体の少なくとも9個または少なくとも10個の(連続または隣接した)アミノ酸を含むことができる。
【0033】
本発明のポリペプチドは、1〜12個のアミノ酸置換を含むことができるアミノ酸配列を有することができる(すなわち配列番号91)。例えば、アミノ酸置換は1〜10個の間のアミノ酸置換、または1〜5個の間のアミノ酸置換であってよい。本発明によれば、アミノ酸置換は非保存的アミノ酸置換または保存的アミノ酸置換であってよい。
【0034】
例えば、本発明のポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸と同一であるアミノ酸および同一ではない(非同一の)他のアミノ酸を含む場合、同一ではないものは保存的アミノ酸置換であってよい。同一アミノ酸と非同一アミノ酸の比較は、対応する位置を見ることによって実施することができる。
【0035】
少なくとも35%の同一性を有することができる配列番号1の類似体の例には、例えば配列番号91において定義するアミノ酸配列を含む(からなる)ポリペプチド(約36.8%の同一性、すなわち配列番号91の19個のアミノ酸のうち7個のアミノ酸が配列番号1と同一である)、配列番号98において定義するアミノ酸配列を含む(からなる)ポリペプチド(約68.4%の同一性、すなわち19個のアミノ酸のうち13個のアミノ酸が配列番号1と同一である)、配列番号67において定義するアミノ酸配列を含む(からなる)ポリペプチド(約73.7%の同一性、すなわち19個のアミノ酸のうち14個のアミノ酸が配列番号1と同一である)、配列番号76において定義するアミノ酸配列を含む(からなる)ポリペプチド(約73.7%の同一性、すなわち19個のアミノ酸のうち14個のアミノ酸が配列番号1と同一である)、および配列番号5において定義するアミノ酸配列を含む(からなる)ポリペプチド(約79%の同一性、すなわち19個のアミノ酸のうち15個のアミノ酸が配列番号1と同一である)がある。
【0036】
少なくとも60%の同一性を有することができる配列番号1の類似体の例には、例えば配列番号98において定義するアミノ酸配列を含む(からなる)ポリペプチド(約68.4%の同一性、すなわち19個のアミノ酸のうち13個のアミノ酸が配列番号1と同一である)、配列番号67において定義するアミノ酸配列を含む(からなる)ポリペプチド(約73.7%の同一性、すなわち19個のアミノ酸のうち14個のアミノ酸が配列番号1と同一である)、配列番号76において定義するアミノ酸配列を含む(からなる)ポリペプチド(約73.7%の同一性、すなわち19個のアミノ酸のうち14個のアミノ酸が配列番号1と同一である)、および配列番号5において定義するアミノ酸配列を含む(からなる)ポリペプチド(約79%の同一性、すなわち19個のアミノ酸のうち15個のアミノ酸が配列番号1と同一である)がある。
【0037】
少なくとも70%の同一性を有することができる配列番号1の類似体の例には、例えば配列番号67において定義するアミノ酸配列を含む(からなる)ポリペプチド(約73.7%の同一性、すなわち19個のアミノ酸のうち14個のアミノ酸が配列番号1と同一である)、配列番号76において定義するアミノ酸配列を含む(からなる)ポリペプチド(約73.7%の同一性、すなわち19個のアミノ酸のうち14個のアミノ酸が配列番号1と同一である)、および配列番号5において定義するアミノ酸配列を含む(からなる)ポリペプチド(約79%の同一性、すなわち19個のアミノ酸のうち15個のアミノ酸が配列番号1と同一である)がある。
【0038】
本発明によれば、担体は、より詳細には、ペプチド番号5、67、76、91およびペプチド97(すなわち配列番号5、67、76、91および97(Angiopep-2))からなる群から選択することができる。例えば、血液脳関門を介して担体と結合した作用物質を輸送するために、担体を使用することができる。本発明によれば、担体は作用物質との結合後に血液脳関門を横断することができ、したがって血液脳関門を介して作用物質を輸送することができる。
【0039】
本発明によれば、ポリペプチドは単離された形または実質的に精製された形であってよい。
【0040】
より詳細には、本発明は、担体と結合した作用物質を血液脳関門を介して輸送するための担体を提供し、この場合担体は作用物質との結合後に血液脳関門を横断することができ、したがって血液脳関門を介して作用物質を輸送することができる。担体は本発明の少なくとも1つのポリペプチドを含むことができる(ただし、前記ポリペプチドまたは担体は、配列番号67からなる場合、前記ポリペプチドは基によって修飾、例えばアミド化されているものとする)。例えば、アプロチニンと関係がある分子のクラスから担体を選択することができる。
【0041】
担体によって影響を受ける輸送活性は、血液脳関門の完全性には影響を与えない。作用物質の輸送は例えば、個体の中枢神経系(CNS)への作用物質の送達をもたらす可能性がある。
【0042】
本発明のポリペプチドが化学的に合成することができ(例えば、固相合成)、あるいは組換えDNA技術によって生成することができることは、本明細書において理解されよう。特異的アミノ酸をコードするコドンは当技術分野でよく知られており、例えばBiochemistry(第3版、1988、Lubert Stryer、Stanford University、W.H.Freeman and Company、ニューヨーク)中で論じられている。したがって、本発明の担体をコードするヌクレオチド配列は本明細書に含まれる。より詳細には、配列番号1〜97のいずれか1つからなる群から選択されるポリペプチドをコードするヌクレオチド配列(デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドまたはそれらの誘導体)は、本発明によって含まれる。アプロチニン類似体をコードする代表的なヌクレオチド配列は配列番号106において示され、アクセッション番号X04666でGene Bankにおいて見ることができる。この配列は、配列番号98において見られるバリンの代わりに(配列番号106によってコードされるアミノ酸配列に関して)位置16にリシンを有するアプロチニン類似体をコードしている。配列番号106のヌクレオチド配列の突然変異を当技術分野で知られている方法によって導入して、位置16にバリンを有する配列番号98のペプチドの生成を変えることができる。当技術分野で知られている技法を使用して、ヌクレオチド配列中に他の突然変異を導入して、本発明の類似体をコードさせることができる。酵素による消化またはポリメラーゼ連鎖反応などによって、このヌクレオチド配列から断片を得ることができる。あるいは、当技術分野で知られている方法によって、望ましいヌクレオチド配列を化学的に合成することができる。
【0043】
他の態様において、本発明は、本発明のポリペプチドのいずれか1つからなる群から選択される担体、および例えば薬剤(例えば小分子薬剤、例えば抗生作用物質)、医薬品、検出可能な標識、タンパク質(例えば酵素)、タンパク質系化合物(例えば、タンパク質またはポリペプチド鎖を含むタンパク質複合体)およびポリペプチド(ペプチド)からなる群から選択される作用物質を含むことができる接合体に関する。作用物質はより詳細には、中枢神経系のレベルで活性がある分子であってよい。作用物質は神経疾患を治療または検出するための任意の作用物質であってよい。
【0044】
本発明によれば、接合体の一部分である担体は、例えば、
配列番号1を含むことができる10〜54(例えば19〜50)アミノ酸長のアプロチニン断片、
配列番号1からなるアプロチニン断片、
(例えば、約19〜50アミノ酸長の)配列番号1の生物活性類似体(ただし、前記類似体は、配列番号67からなる場合アミド化されている)、
10〜18アミノ酸の配列番号1の生物活性断片、および
約10〜18アミノ酸の配列番号1の類似体の生物活性断片
からなる群から選択することができる。
【0045】
本発明によれば、作用物質は約160,000ダルトンの最大分子量を有することができる。
【0046】
さらに、本発明によれば、輸送活性は受容体介在性トランスサイトーシスまたは吸着作用介在性トランスサイトーシスによって影響を受ける可能性がある。作用物質はこのような機構によって輸送され得る作用物質であってよい。
【0047】
さらに、本発明によれば、接合体は、本発明の担体から本質的になる第1の部分およびタンパク質またはタンパク質系作用物質から本質的になる第2の部分を有することができる融合タンパク質の形であってよい。
【0048】
担体および/または接合体によって治療または検出することができる代表的な神経疾患は、例えば脳腫瘍、脳転移、統合失調症、てんかん、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、脳卒中および血液脳関門関連機能不全(例えば肥満症)からなる群から選択される疾患である。
【0049】
本発明によれば、血液脳関門関連機能不全は肥満症である。さらに、本発明によれば、本発明の担体と接合体形成することができる作用物質はレプチンであってよい。レプチンおよび担体を含む接合体は、例えば肥満症の治療において使用することができる。
【0050】
本発明によれば、検出可能な標識は放射線イメージング用作用物質であってよい。本発明の担体と接合体形成することができ本明細書に含まれる標識の例には、例えば非制限的に同位体、蛍光標識(例えばローダミン)、レポーター分子(例えばビオチン)などがある。検出可能な標識の他の例には、例えば緑色蛍光タンパク質、ビオチン、Hisタグタンパク質およびβ-ガラクトシダーゼがある。
【0051】
本発明の担体と接合体形成することができ本明細書に含まれるタンパク質またはタンパク質系化合物の例には、例えば非制限的に抗体、抗体断片(例えば、Fv断片、F(ab)2、F(ab)2'、Fabなどの抗体結合断片)、ペプチドまたはタンパク質系薬剤(例えば、正の薬理的調節剤(アゴニスト)または薬理的阻害剤(アンタゴニスト))などがある。本明細書に含まれる作用物質の他の例には、細胞毒素(例えば、モノメチルオーリスタチンE(MMAE)、細菌のエンドトキシンおよびエクソトキシン由来の毒素;ジフテリア毒素、ボツリヌス菌毒素、破傷風毒素、百日咳毒素、ブドウ球菌エンテロトキシン、毒性ショック症候群毒素TSST-1、アデニル酸シクラーゼ毒素、シガ毒素、コレラエンテロトキシンなど)および抗血管新生化合物(エンドスタチン、カテキン、ニュートリシューティカル、ケモカインIP-10、マトリクスメタロプロテイナーゼ(MMPI)の阻害剤、アナステルリン、ビロネクチン、抗トロンビン、チロシンキナーゼ阻害剤、VEGF阻害剤、受容体に対する抗体、ヘルセプチン、アバスチン、パニツムマブなど)がある。
【0052】
さらに、本発明によれば、作用物質は(例えば脳腫瘍を治療するための)抗癌剤などの小分子薬剤であってよい。本発明によって含まれる抗癌剤は、例えば本発明の担体とのその結合を可能にする基を有する薬剤を含むことができる。抗癌剤の例には、例えば非制限的にパクリタキセル(タクソール)、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エトポシド、ドキソルビシン、シクロホスファミド、タキソテール、メルファラン、クロラムブシルおよび任意の組合せからなる群から選択することができる薬剤がある。
【0053】
より詳細には、本発明の接合体は式R-L-Mまたはその薬剤として許容される塩を含むことができ、前式でRはアプロチニン(例えばアプロチニン、アプロチニン断片、Angiopep-1、Angiopep-2、類似体、誘導体または断片)と関係がある分子の群である。例えばRは、L-Mとの結合後に血液脳関門を横断することができ、したがって血液脳関門を介してMを輸送することができる、アプロチニンと関係がある分子の群から選択される担体であってよい。Lはリンカーまたは結合(化学結合)であってよい。Mは薬剤(例えば小分子薬剤)、医薬品、(検出可能な)標識、タンパク質またはタンパク質系化合物(例えば抗体、抗体断片)、抗生作用物質、抗癌剤、抗血管新生化合物およびポリペプチドまたは中枢神経系のレベルで活性がある任意の分子からなる群から選択される作用物質であってよい。式R-L-Mを特定の順序または特定の比に制限することは意図しないことは、本明細書において理解されよう。本明細書において例示するように、MはRに対していくつかの比で見ることができる。
【0054】
例えば、式R-L-Mまたはその薬剤として許容される塩の接合体は血液脳関門を介してMを輸送するために使用することができ、この場合Rは例えば本明細書に記載するペプチド番号5、67、76、91および97からなる群から選択される担体であってよい。担体はL-Mとの結合後に血液脳関門を横断することができ、したがって血液脳関門を介してMを輸送することができる。
【0055】
本発明によれば、Mは神経疾患を治療または診断するのに有用な作用物質であってよい。
【0056】
2つ以上の担体結合部位が利用可能であるかまたは存在するとき、2つ以上の薬剤または薬剤分子を本発明の担体と結合させることができることは、本明細書において理解されよう。したがって、接合体は1つまたは複数の薬剤分子を含むことができる。接合体はそれ自体で活性がある可能性がある、すなわち担体と結合したときでさえ、薬剤は活性がある可能性がある。さらに、本発明によれば、化合物は担体から、すなわち一般に血液脳関門を介した輸送後に放出されるかあるいは放出されない可能性がある。したがって化合物は接合体から(または担体から)放出される可能性があり、その後活性状態になる可能性がある。より詳細には、作用物質は、血液脳関門を介した輸送後に担体から放出される可能性がある。
【0057】
本発明の他の実施形態によれば、血液脳関門を介して作用物質を輸送するための接合体を提供し、この接合体は、(a)担体、および(b)担体と結合した作用物質を含むことができ、この接合体は血液脳関門を横断することができ、したがって血液脳関門を介して作用物質を輸送することができる。
【0058】
他の態様において、本発明は、作用物質を、それを必要とする哺乳動物の血液脳関門を介して輸送するための、本発明の担体または接合体の使用に関する。
【0059】
さらに他の態様において、本発明は、患者の血液脳関門を介してアプロチニンと関係がある分子と結合した化合物を輸送するための、アプロチニンと関係がある分子の群の使用に関する。
【0060】
他の態様において、本発明は、神経疾患または中枢神経系疾患を診断するための、本明細書に記載する担体または接合体の使用に関する。例えば、in vivoの神経疾患の検出用に担体または接合体を使用することができる。
【0061】
担体は、例えば(生物活性がある)、
アプロチニン(配列番号98)、
配列番号1において定義されるアミノ酸配列を含むことができるアプロチニン断片、
配列番号1からなるアプロチニン断片、
配列番号1の生物活性類似体、および
配列番号1の生物活性断片または配列番号1の類似体の生物活性断片
からなる群から選択することができる。
【0062】
より詳細には、担体は、例えば(生物活性がある)、
配列番号1において定義されるアミノ酸配列を含むことができるアプロチニン断片、
配列番号1からなるアプロチニン断片、
配列番号1の生物活性類似体、および
配列番号1の生物活性断片または配列番号1の類似体の生物活性断片
からなる群から選択することができる。
【0063】
本発明によれば、その類似体が配列番号67からなるとき、前記類似体はアミド化されている。
【0064】
さらにより詳細には、担体は、例えば、
配列番号1を含むことができる10〜54(例えば19〜50)アミノ酸長のアプロチニン断片、
配列番号1からなるアプロチニン断片、
(例えば、約19〜50アミノ酸長の)配列番号1の生物活性類似体(ただし、前記類似体は配列番号67からなる場合アミド化されている)、
10〜18アミノ酸の配列番号1の生物活性断片、および
約10〜18アミノ酸の配列番号1の類似体の生物活性断片
からなる群から選択することができる。
【0065】
他の態様において、本発明は、医薬品の製造におけるアプロチニンと関係がある分子の群の使用に関する。
【0066】
本発明によれば、神経疾患を治療するためあるいは中枢神経系障害を治療するための医薬品の製造における、アプロチニンと関係がある分子の群の使用を提供する。
【0067】
さらに他の態様において、本発明は、脳疾患(脳関連疾患)または神経疾患を治療するため、脳疾患または神経疾患を診断するための、または血液脳関門を介して作用物質を輸送するための医薬品の製造における、本明細書に記載する担体または接合体の使用に関する。
【0068】
他の態様において、本発明は、例えば神経疾患を有する哺乳動物を治療するための、または神経疾患の診断を必要とする哺乳動物の神経疾患を診断するための、本発明の担体または接合体の使用に関する。
【0069】
本発明によれば、本発明によって含まれる神経疾患には、例えば非制限的に脳腫瘍、脳転移、統合失調症、てんかん、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、脳卒中および血液脳関門関連機能不全がある。
【0070】
他の態様において、本発明は、哺乳動物(ヒト、動物)の血液脳関門を介して作用物質を輸送するための方法に関するものであり、この方法は、アプロチニンと関係がある分子の群と結合した作用物質を含む化合物を哺乳動物に投与する段階を具備することができる。
【0071】
さらに他の態様において、本発明は、患者の神経疾患を治療するための方法を提供し、この方法は、アプロチニンと関係がある分子の群、およびアプロチニンと関係がある分子の群と結合している、神経疾患を治療するように適合された化合物を含む医薬品を患者に投与する段階を具備する。
【0072】
他の態様において、患者の中枢神経系障害を治療するための方法を提供し、この方法は、アプロチニンと関係がある分子の群、およびアプロチニンと結合している中枢神経系を治療するように適合された化合物を含む医薬品を患者に投与する段階を具備する。
【0073】
さらに他の態様において、血液脳関門を介して作用物質を輸送するための方法を提供し、この方法は、本発明の医薬組成物を個体に投与する段階を具備する。
【0074】
他の態様において、本発明はさらに、治療を必要とする哺乳動物(例えば患者)(例えば、神経疾患を有する患者)を治療するための方法に関する。この方法は、本発明の担体、接合体および/または医薬組成物を哺乳動物に投与する段階を具備することができる。
【0075】
本発明はさらに、神経疾患の診断を必要とする哺乳動物(例えば患者)の神経疾患を診断する方法(すなわち診断法)に関する。この方法は、本発明の担体、接合体および/または医薬組成物を哺乳動物(ヒト個体、患者、動物)に投与する段階を具備することができる。
【0076】
本発明によれば、動脈内、鼻腔内、腹膜内、静脈内、筋肉内、皮下、経皮あるいは経口的に投与を実施することができる。
【0077】
本発明によれば、医薬組成物は治療有効量で哺乳動物に投与することができる。
【0078】
神経疾患の診断を必要とする哺乳動物(神経疾患の診断を必要とする個体)は例えば、神経疾患、中枢神経系疾患、脳腫瘍、脳転移などを有するかあるいはこれらを有する危険がある哺乳動物であってよい。
【0079】
他の態様において、本発明は、例えば
本発明の担体(本明細書に記載するポリペプチドのいずれかからなる群から選択することができる)または接合体、および
薬剤として許容される担体、例えば薬剤として許容される賦形剤
を含むことができる医薬組成物に関する。
【0080】
本発明によれば、医薬組成物は例えば、神経疾患を治療するために使用することができる。
【0081】
さらに、本発明によれば、医薬組成物は例えば、神経疾患を診断するために使用することができる。
【0082】
さらに、本発明によれば、医薬組成物は例えば、血液脳関門を介して作用物質を輸送するために使用することができる。
【0083】
さらに、本発明によれば、医薬組成物は例えば、個体のCNSに作用物質を送達するために使用することができる。
【0084】
さらに、本発明によれば、医薬組成物は例えば、治療を必要とする哺乳動物の中枢神経系障害を治療するために使用することができる。
【0085】
本発明によれば、医薬組成物は個体のCNSに作用物質を送達するために使用することができる。
【0086】
担体(ポリペプチド)または接合体の薬剤として許容される塩が本発明によって含まれることは、本明細書において理解されよう。
【0087】
したがって、組成物(医薬組成物)は、薬剤として許容される賦形剤と結合した、本明細書に記載の通り製造した医薬品を含むことができる。
【0088】
本発明の目的のために、以下の用語を以下のように定義する。
【0089】
用語「担体」または「ベクター」は、化合物を輸送することができる、ポリペプチドなどの化合物または分子を意味するものとする。例えば、血液脳関門を介して輸送を行うことができる。担体は他の化合物または作用物質と結合(共有またはそれ以外)あるいは接合体形成することができ、したがって血液脳関門を介して他の化合物または作用物質を輸送することができる。例えば、担体は脳内皮細胞上に存在する受容体と結合することができ、したがってトランスサイトーシスにより血液脳関門を介して輸送することができる。担体は、血液脳関門の完全性に影響を与えずに、高レベルの内皮細胞を介した輸送を実施することができる分子であってよい。担体はタンパク質、ペプチドまたはペプチド模倣体だけには限られないがこれらであってよく、天然に存在し得るか、あるいは化学合成または組換え遺伝技術(遺伝子工学処理)によって生成することができる。
【0090】
用語「接合体」は、担体と他の化合物または作用物質の組合せを意味するものとする。接合体は、リンカーなどを介した化学的性質のものであってよいか、あるいは例えば組換え遺伝技術による遺伝的性質のもの、例えばレポーター分子(例えば緑色蛍光タンパク質、β-ガラクトシダーゼ、Hisタグなど)との融合タンパク質の形のものなどであってよい。
【0091】
表現「小分子薬剤」は、1000g/モル以下の分子量を有する薬剤を意味するものとする。
【0092】
用語「治療」、「治療する」などは、望ましい薬理学的および/または生理的効果、例えば癌細胞増殖の阻害、癌細胞の死、あるいは神経疾患または状態の改善を得ることを意味するものとする。この効果は疾患またはその症状を完全または部分的に防ぐ点で予防的であってよく、かつ/あるいは疾患および/または疾患の原因となる悪影響を部分的または完全に治癒する点で療法的であってよい。本明細書で使用する「治療」は哺乳動物、特にヒトにおける疾患の任意の治療を含み、(a)疾患に対する素因がある可能性があるが依然として疾患を有すると診断されていない個体において、疾患または状態が発生するのを予防すること(例えば、癌を予防すること)、(b)疾患を抑制すること(例えば、その発症を停止させること)または(c)疾患を軽減させること(例えば、疾患に付随する症状を低下させること)を含む。本明細書で使用する「治療」は、個体への担体-作用物質接合体の投与を非制限的に含む、個体における状態を治療、治癒、緩和、改善、低下または抑制するための個体への医薬作用物質または化合物の任意の投与を含む。
【0093】
用語「癌」は、その独特の特性が制御不能な増殖をもたらす正常な調節の消失、分化の欠如、ならびに局所組織を侵襲する能力および転移する能力である、任意の細胞の悪性腫瘍を意味するものとする。癌は任意の器官の任意の組織において発症する可能性がある。より詳細には、癌は脳の癌を非制限的に含むものとする。
【0094】
用語「投与する」および「投与」は、動脈内、鼻腔内、腹膜内、静脈内、筋肉内、皮下、経皮あるいは経口的な形態を非制限的に含めた送達の形態を意味するものとする。1日当たりの用量は時間期間中1回、2回以上投与するのに適した形で1回、2回以上の用量に分けることができる。
【0095】
用語「治療上有効」または「有効量」は、疾患または医学的状態に付随するいくつかの症状を実質的に改善するのに充分な化合物の量を意味するものとする。例えば、癌または精神状態あるいは神経疾患またはCNS疾患の治療では、疾患または状態の任意の症状を低下させる、予防する、遅延させる、抑制する、あるいは抑える作用物質または化合物は治療上有効であるはずである。疾患または状態を治癒するのに治療有効量の作用物質または化合物は必要とされないが、疾患または状態の発症が遅れる、害される、または予防される、あるいは疾患または状態の症状が改善される、あるいは疾患または状態の期間が変わる、あるいは例えば疾患または状態の重度が低下する、あるいは個体における回復が加速するような、疾患または状態の治療をもたらすはずである。
【0096】
本発明の担体および接合体は従来の治療法および/または療法と組み合わせて使用することができ、あるいは従来の治療法および/または療法とは別に使用することができる。
【0097】
本発明の接合体を併用療法において他の作用物質と共に投与するとき、それらは逐次的あるいは同時に個体に投与することができる。あるいは、本発明による医薬組成物は、本明細書に記載する薬剤として許容される賦形剤と結合した本発明の担体-作用物質接合体と、当技術分野で知られている他の療法または予防剤の組合せからなっていてよい。
【0098】
薬剤として許容される酸添加塩は、当技術分野で知られており使用されている方法によって調製することができ、本発明によって含まれる。
【0099】
本発明の生物活性ポリペプチドは機能的誘導体を含む。用語「機能的誘導体」は、本発明の担体または作用物質または接合体およびそれらの塩の「化学的誘導体」、「断片」、または「変異体」、生物活性配列または一部分を意味するものとする。担体の機能的誘導体は、他の化合物または作用物質と結合または接合体形成して血液脳関門を横断することができ、したがって血液脳関門を介して他の化合物または作用物質を輸送することができる。
【0100】
用語「化学的誘導体」は、担体、作用物質または担体-作用物質接合体の一部分でない他の化学成分を含む、本発明の担体、作用物質または接合体を意味するものとする。共有結合修飾は本発明の範囲内に含まれる。化学的誘導体は直接的な化学合成によって、当技術分野でよく知られている方法を使用して都合よく調製することができる。このような修飾は、例えば選択した側鎖または末端残基と反応することができる有機誘導体化作用物質と標的アミノ酸残基を反応させることによって、タンパク質またはペプチド担体、作用物質または担体-作用物質接合体に導入することができる。担体の化学的誘導体は血液脳関門を横断することができ、他の化合物または作用物質と結合または接合体形成することができ、したがって血液脳関門を介して他の化合物または作用物質を輸送することができる。好ましい実施形態では、血液脳関門を越える非常に高レベルの内皮細胞を介した輸送が、血液脳関門の完全性にいかなる影響も与えずに得られる。
【0101】
用語「作用物質」は、抗体、薬剤(医薬用薬剤など)、または治療用作用物質または治療用化合物などの化合物、マーカー、トレーサーまたは画像化用化合物を非制限的に意味するものとする。
【0102】
用語「治療用作用物質」または「作用物質」は、疾患、肉体または精神状態、障害または感染の症状を治療するために使用される、作用物質および/または医薬品および/または薬剤を意味するものとし、中枢神経系のレベルで活性がある抗生作用物質、抗癌剤、抗血管新生作用物質および分子だけには限られないがこれらを含み、例えばパクリタキセルを静脈内投与して、脳腫瘍を治療することができる。
【0103】
用語「状態」は、神経疾患、障害、感染、あるいは慢性または急性の痛みを含めた、個体に対する、あるいは個体における痛み、不快感、病状、疾患または無力(精神的または肉体的)を引き起こす任意の状況を意味するものとする。本発明によって治療することができる神経疾患には、脳腫瘍、脳転移、統合失調症、てんかん、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病および脳卒中があるが、これらだけには限られない。
【0104】
本明細書で使用する「医薬組成物」は、薬剤として許容される希釈剤、防腐剤、可溶剤、乳化剤、アジュバントおよび/または担体と1つになった治療有効量の作用物質を意味する。本明細書で使用する「治療有効量」は、所与の条件および投与養生法に関して治療効果をもたらすその量を指す。このような組成物は液体状態または凍結乾燥状態、あるいはそれ以外は乾燥配合物であり、様々なバッファー内容(例えばトリス-HCl、酢酸、リン酸)、pHおよびイオン強度の希釈剤、表面への吸収を妨げるためのアルブミンまたはゼラチンなどの添加剤、界面活性剤(例えばTween20、Tween80、PluronicF68、胆汁酸塩)を含む。可溶剤(例えばグリセロール、ポリエチレングリセロール)、抗酸化剤(例えばアスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)、防腐剤(例えばチメロサール、ベンジルアルコール、パラベン)、バルキング物質または浸透圧調節剤(例えばラクトース、マンニトール)、ポリエチレングリコールなどのポリマーとタンパク質の共有結合、金属イオンとの錯体形成、またはポリ乳酸、ポリグリコール酸、ヒドロゲルなどのポリマー化合物の粒子調製物中またはその上、あるいはリポソーム、マイクロエマルジョン、ミセル、単層または多層小胞、赤血球ゴースト、またはスフェロプラスト上への作用物質の取り込み。このような組成物は物理状態、可溶性、安定性、in vivo放出の割合、およびin vivoクリアランスの割合に影響を与えるはずである。制御型または持続放出型組成物には、親油性デポー剤(例えば脂肪酸、ワックス、油)中の配合物がある。ポリマー(例えば、ポロキサマーまたはポロキサミン)でコーティングされた粒子組成物も、本発明によって含まれる。本発明の組成物の他の実施形態は、粒子形の保護コーティング、プロテアーゼ阻害剤、または非経口、肺、鼻腔、経口、膣、直腸経路を含めた様々な投与経路の浸透性増大剤を組み込んでいる。一実施形態では、医薬組成物を非経口的、側癌性病変、経粘膜的、経皮的、筋肉内、静脈内、皮内、皮下、腹膜内、脳室内、頭蓋内および腫瘍内に投与する。
【0105】
さらに、本明細書で使用する「薬剤として許容される担体」または「医薬担体」は当技術分野で知られており、0.01〜0.1Mまたは0.05Mのリン酸バッファーまたは0.8%生理食塩水を含むが、これらだけに限られない。さらに、このような薬剤として許容される担体は水溶液または非水溶液、懸濁液、および乳濁液であってよい。非水性溶媒の例は、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物油、およびオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルである。水性担体には生理食塩水および緩衝培地を含めて水、アルコール/水溶液、乳濁液または懸濁液がある。非経口賦形薬には塩化ナトリウム溶液、リンガーのデキストロース、デキストロースと塩化ナトリウム、乳酸加リンガーまたは固定油がある。静脈内賦形薬には流体および栄養補給剤、リンガーのデキストロースに基づく補給剤などの電解質補給剤などがある。例えば抗菌剤、抗酸化剤、対照作用物質、不活性ガスなどなどの、防腐剤および他の添加剤が存在してもよい。
【0106】
「類似体」は、元の配列または元の配列の一部分に由来し、1つまたは複数の修飾、例えばアミノ酸配列の1つまたは複数の修飾(例えば、アミノ酸の付加、欠失、挿入、置換など)、1つまたは複数のアミノ酸の骨格または側鎖の1つまたは複数の修飾、または1つまたは複数のアミノ酸(側鎖または骨格)への基または他の分子の付加を含む可能性がある、ポリペプチドとして本明細書では理解されたい。したがって「類似体」は、本明細書に記載するポリペプチドのそれと類似した生物活性および化学構造(またはその構造の一部分)を有する分子として、本明細書では理解されたい。類似体は、ポリペプチドの一端または両端のいずれかおよび/またはポリペプチドのアミノ酸配列内に、1つまたは複数のアミノ酸の挿入を例えば有する可能性があるポリペプチドを含む。
【0107】
「類似体」は、元の配列または元の配列の一部分のそれと配列類似性および/または配列同一性を有する可能性があり、本明細書で論じるようなその構造の修飾を有する可能性もある。2つの配列間の類似性の程度は、同一性(同一なアミノ酸)および保存的置換の割合に基づく。
【0108】
類似性または同一性は、例えば2、3、4、5、10、19、20アミノ酸以上(およびこの間の任意の数)の領域で比較することができる。同一性は本明細書では、元のペプチドと同一であり元のポリペプチドと比較して同じまたは類似の位置を占める可能性があるアミノ酸を含むことができる。例えば元のポリペプチドと50%の同一性を有する類似体は、元のポリペプチドの50%のアミノ酸配列、および同様に他の割合のアミノ酸配列を含む類似体を例えば含むことができる。元のペプチドのアミノ酸と同一または類似である類似体のアミノ酸間にギャップを見つけることができることは、本明細書において理解されよう。ギャップはアミノ酸を含まない可能性があり、元のペプチドと同一または類似ではない1つまたは複数のアミノ酸を含む可能性がある。本発明の担体(ポリペプチド)の生物活性類似体は、本明細書に含まれる。
【0109】
例えばデフォルトギャップ加重を使用して、nアルゴリズムGAP、BESTFIT、またはFASTA in the Wisconsin Genetics Software Package Release 7.0を用いて、同一性の割合を測定することができる。
【0110】
例えば類似体は、元のアミノ酸配列との50%の同一性を含むかあるいは有する可能性があり、類似の位置を占める残りのアミノ酸の部分は、例えば非保存的または保存的アミノ酸置換であってよい。
【0111】
したがって本発明の類似体は、元の配列または元の配列の一部分と少なくとも90%の配列類似性を有する可能性がある類似体を含む。「類似体」は元の配列または元の配列の一部分と、例えば少なくとも35%、50%、60%、70%、80%、90%または95%(96%、97%、98%、99%および100%)の配列類似性を有する可能性がある。さらに「類似体」は、アミノ酸の骨格または側鎖の1つまたは複数の修飾、あるいは基または他の分子の付加などを組み合わせた元の配列と、例えば少なくとも35%、50%、60%、70%、80%、90%または95%(96%、97%、98%、99%および100%)の配列類似性を有する可能性もある。他のアミノ酸と類似であると考えられる代表的なアミノ酸(保存的アミノ酸)は当技術分野で知られており、例えば表1中に列挙するアミノ酸を含む。
【0112】
本発明の類似体は、元の配列または元の配列の一部分と、少なくとも35%、50%、60%、70%、80%、90%または95%(96%、97%、98%、99%および100%)の配列同一性を有する可能性がある類似体も含む。さらに「類似体」は、アミノ酸の骨格または側鎖の1つまたは複数の修飾、あるいは基または他の分子の付加などを組み合わせた元の配列と、例えば35%、50%、60%、70%、80%、90%または95%の(配列)同一性を有する可能性がある(すなわち、元のペプチドと少なくとも35%、50%、60%、70%、80%、90%または95%同一である類似体)。
【0113】
「断片」は、元の配列または親配列の一部分あるいは前記親配列の類似体に由来する、ポリペプチドとして本明細書では理解されたい。断片は1つまたは複数のアミノ酸の切断部分を有するポリペプチドを含み、切断部分はアミノ末端(N-末端)、カルボキシ末端(C-末端)、あるいはタンパク質の内部に由来する可能性がある。断片は元の配列の対応する部分と同じ配列を含む可能性がある。本明細書に記載する担体(ポリペプチド)の生物活性断片は本発明によって含まれる。
【0114】
したがって、本明細書に記載する元のポリペプチド、断片(修飾または非修飾)、類似体(修飾または非修飾)、誘導体(修飾または非修飾)、相同体(修飾または非修飾)の形である生物活性ポリペプチドは、本発明によって含まれる。
【0115】
したがって、望ましい生物学的活性を著しく害さない、元のポリペプチドと比較して修飾を有する任意のポリペプチドが、本明細書に含まれる。本発明のポリペプチドにいくつかの修飾を、それらの生物学的活性に有害な影響を与えずに施すことができることは、当技術分野でよく知られている。これらの修飾は他方で、元のポリペプチドの生物学的活性を維持または増大させることができ、あるいは1つまたは複数の本発明のポリペプチドの特性(例えば安定性、生物学的利用能など)を最適化することができ、これはいくつかの場合、必要とされるかあるいは望ましい可能性がある。本発明のポリペプチドは例えば、翻訳後プロセシングなどの本来のプロセス、または当技術分野で知られている化学修飾技法のいずれかによって修飾される、アミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。ポリペプチド骨格、アミノ酸側鎖およびアミノまたはカルボキシ末端を含めた、ポリペプチド中の任意の場所に修飾が存在する可能性がある。同じ型の修飾が、所与のポリペプチド中の数個の部位に同じまたは様々な程度で、存在する可能性があることは理解されるはずである。さらに、1つの所与のポリペプチドは多くの型の修飾を含むことができる。ポリペプチドはユビキチン化の結果として分枝状であってよく、ポリペプチドは分枝有りまたは無しの環状であってよい。環状、分枝状および分枝環状ポリペプチドは翻訳後の本来のプロセスから生じる可能性があり、あるいは合成法によって作製することができる。修飾は例えばペグ化、アセチル化、アシル化、アセトミドメチル(Acm)基の付加、ADP-リボシル化、アルキル化、アミド化、ビオチニル化、カルバモイル化、カルボキシエチル化、エステル化、フラビンとの共有結合、ヘム成分との共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体との共有結合、薬剤の共有結合、マーカー(例えば蛍光、放射活性マーカーなど)の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋、環状化、ジスルフィド結合の形成、脱メチル化、共有架橋の形成、システインの形成、ピログルタミン酸の形成、ホルミル化、γ-カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカーの形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解プロセス、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、アルギニン化およびユビキチン化などのタンパク質へのアミノ酸のトランスファーRNA仲介型の付加などを非制限的に含む。本明細書に記載するポリペプチドに対する2つ以上の修飾は、生物学的活性が元の(親)ポリペプチドと同等である程度で、本発明によって含まれることは本明細書において理解されよう。
【0116】
前に論じたように、ポリペプチド修飾は、例えばポリペプチド配列中にアミノ酸挿入(すなわち付加)、欠失および置換(すなわち置換)、保存的または非保存的のいずれか(例えばD-アミノ酸、デスアミノ酸)を含むことができ、このような変化はポリペプチドの全体的な生物学的活性を実質的に変えない。
【0117】
置換の例は、保存的である(すなわち、残基が他の同じ一般的な型または基によって置換されている)置換、あるいは望ましいときは、非保存的である(すなわち、残基が他の型のアミノ酸によって置換されている)置換であってよい。さらに、非天然アミノ酸は天然アミノ酸に置換することができる(すなわち、非天然保存的アミノ酸置換または非天然非保存的アミノ酸置換)。
【0118】
理解されるように、天然アミノ酸は酸性、塩基性、中性および極性、または中性および無極性として下位分類することができる。さらに、3つのコードされているアミノ酸は芳香族である。本発明の所定のポリペプチドと異なるコードされているポリペプチドが、置換されるアミノ酸のそれと同じ型または基に由来するアミノ酸の置換コドンを含むことは、有用である可能性がある。したがっていくつかの場合、塩基性アミノ酸Lys、ArgおよびHisは交換することが可能であり、酸性アミノ酸AspおよびGluは交換することが可能であり、中性極性アミノ酸Ser、Thr、Cys、GlnおよびAsnは交換することが可能であり、無極性脂肪族アミノ酸Gly、Ala、Val、Ile、およびLeuは交換可能であるが、大きさのため、GlyとAlaはより密接に関連しており、Val、Ile、およびLeuは互いにより密接に関連しており、芳香族アミノ酸Phe、TrpおよびTyrは交換することが可能である。
【0119】
ポリペプチドを合成によって作製する場合、DNAによって本来コードされていない(天然に存在しないあるいは非天然アミノ酸)アミノ酸による置換を施すことも可能であることを、さらに記さなければならない。
【0120】
非天然アミノ酸は、哺乳動物中で本来生成または発見されないアミノ酸として本明細書では理解されよう。非天然アミノ酸はD-アミノ酸、システインの硫黄原子と結合したアセチルアミノメチル基を有するアミノ酸、ペグ化アミノ酸などを含む。非天然アミノ酸を明確なポリペプチド配列中に封入することによって、元のポリペプチドの誘導体がしたがって生成するはずである。非天然アミノ酸(残基)は、nが2〜6である式NH2(CH2)nCOOHのオメガアミノ酸、中性無極性アミノ酸、例えばサルコシン、t-ブチルアラニン、t-ブチルグリシン、N-メチルイソロイシン、ノルロイシンなども含む。フェニルグリシンはTrp、TyrまたはPheで置換することができ、シトルリンおよびメチオニンスルホキシドは中性無極性であり、システイン酸は酸性であり、かつオルニチンは塩基性である。プロリンはヒドロキシプロリンで置換することができ、形態付与性を保持することができる。
【0121】
類似体は置換的突然変異誘発によって作製することができ、本発明のポリペプチドの生物学的活性を保持することができることは、当技術分野で知られている。これらの類似体は、除去されるタンパク質分子中に少なくとも1つのアミノ酸残基、およびその場所に挿入される異なる残基を有する。「保存的置換」として同定した置換の例は表1中に示す。このような置換が望ましくない変化をもたらす場合、次いで表1中に「代表的な置換」と称する、あるいはアミノ酸クラスを参照して本明細書にさらに記載する他の型の置換を導入し、生成物をスクリーニングする。
【0122】
いくつかの場合、アミノ酸の置換、挿入、または欠失によって、ポリペプチドの生物学的活性を改変することは重要である可能性がある。例えば、ポリペプチドの修飾はポリペプチドの生物学的活性の増大をもたらす可能性があり、その毒性を調節する可能性があり、生物学的利用能または安定性の変化をもたらす可能性があり、あるいはその免疫学的活性または免疫学的同一性を調節する可能性がある。機能または免疫学的同一性の実質的改変は、(a)例えばシートまたはらせん状立体配座としての、置換の領域中のポリペプチド骨格の構造、(b)標的部位における分子の電荷または疎水性、あるいは(c)側鎖の容積の維持に対するその影響が著しく異なる置換を選択することによって実施する。天然に存在する残基は、一般的な側鎖の性質に基づいていくつかの群に分けられる:
(1)疎水性:ノルロイシン、メチオニン(Met)、アラニン(Ala)、バリン(Val)、ロイシン(Leu)、イソロイシン(Ile)、ヒスチジン(His)、トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)、フェニルアラニン(Phe)、
(2)中性親水性:システイン(Cys)、セリン(Ser)、スレオニン(Thr)
(3)酸性/負に帯電:アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)
(4)塩基性:アスパラギン(Asn)、グルタミン(Gln)、ヒスチジン(His)、リシン(Lys)、アルギニン(Arg)
(5)鎖の配向に影響を与える残基:グリシン(Gly)、プロリン(Pro);
(6)芳香族:トリプトファン(Trp)、チロシン(Tyr)、フェニルアラニン(Phe)、ヒスチジン(His)、
(7)極性:Ser、Thr、Asn、Gln
(8)塩基性正に帯電:Arg、Lys、His、および;
(9)帯電:Asp、Glu、Arg、Lys、His
【0123】
非保存的置換は、これらのクラスの1つの要素と他の要素の交換を必然的に伴うはずである。保存的置換は、これらの基の1つの要素とこれらの基の他の要素の交換を必然的に伴うはずである。あるいは、他の保存的アミノ酸置換は表1に列挙する。
【0124】
【表1】

【0125】
生物活性類似体は例えば、元の配列中の少なくとも1つの(すなわち、非保存的または保存的)アミノ酸置換を有する類似体であってよい。生物活性類似体は例えば、1つまたは複数のアミノ酸の挿入を有する類似体であってもよい。
【0126】
他の代表的な類似体には例えば、
式I:X1-配列番号1-X2を有することができる配列番号1の類似体
式II:X1-Angiopep-1-X2を有することができるAngiopep-1類似体および
式III:X1-Angiopep-2-X2を有することができるAngiopep-2類似体がある。
【0127】
X1およびX2は独立に0〜約100(例えば、0から約30〜50)アミノ酸のアミノ酸配列であってよい。X1およびX2はアプロチニンまたはアプロチニン類似体の連続したアミノ酸から誘導され得るか(相同アミノ酸配列)、あるいは任意の他のアミノ酸配列(異種アミノ酸配列)であってよい。式I、II、またはIIIのいずれかの化合物は、Angiopep-1、Angiopep-2または配列番号1のアミノ酸配列内にアミノ酸の置換、欠失または挿入を含む可能性もある。しかしながら類似体は、本明細書に記載するアッセイの1つあるいは任意の類似または同等のアッセイにより測定して、生物活性があることが好ましいはずである。
【0128】
生物活性ポリペプチド(例えば担体)は、本明細書に記載するアッセイまたは方法の1つを使用することによって同定することができる。例えば、候補担体は従来のペプチド合成法によって生成することができ、本明細書に記載したのと同様にタクソールと結合させることができ、本明細書に記載したのと同様にin vivoモデルで試験することができる。例えば接合体で治療しなかった対照と比較して、腫瘍細胞を注射し接合体で治療した動物の生存期間を増大させるその有効性に基づいて、生物活性担体を同定することができる。さらに生物活性担体は、in situ脳潅流アッセイにおいて柔組織中のその位置に基づいて同定することができる。
【0129】
本発明の個々の特性(例えば温度、濃度、時間など)に関して「範囲」または「物質の群」を言及する場合、本発明は各それぞれの特異的要素、ならびにそのすべての下位範囲または下位群の組合せに関するものであり、それらを本明細書に明らかに組み込むことは、本明細書において理解されよう。したがって、任意の指定範囲または群が、ある範囲または群の各それぞれの要素を個別に、およびその中に含まれる各それぞれの考えられる下位範囲または下位群を参照する、かつ同様にその中の任意の下位範囲または下位群に関して参照する、簡単な形式として理解されよう。したがって例えば、
10〜18の長さに関して、アミノ酸Iはそれぞれおよび各々個々の長さ、例えば18、17、15、10およびその間の任意の数の長さなどが本明細書に具体的に組み込まれるとして理解されよう。したがって、詳細に言及しない限り、本明細書に言及するそれぞれの範囲は、含まれるものとして理解されよう。例えば、5〜10アミノ酸長という表現では、5と10は含まれるものとする。
かつ同様に配列、長さ、濃度、要素などの他のパラメータに関して理解されよう。
【0130】
本明細書で定義する配列、領域、一部分はそれぞれ、記載するそれぞれおよび各々個々の配列、領域、一部分、したがってならびにそれぞれおよび各々の考えられる下位配列、下位領域、下位部分を、このような下位配列、下位領域、下位部分が特定の可能性を含むとして肯定的に定義されようと、特定の可能性またはその組合せを排除するとして定義されようと、例えばある領域の排他的定義を次のように「ただし前記ポリペプチドは4、5、6、7、8または9アミノ酸より短くないものとする」と読むことができようと含むことは、本明細書において特に理解されよう。否定的制限のさらに他の例は、以下の;配列番号Yのポリペプチド以外配列番号Xを含む配列などである。否定的制限の他の例は、以下の;ただし前記ポリペプチドは配列番号Zではない(含まないあるいはからならない)である。
【0131】
図面中、本発明の代表的な実施形態を示す。
【図面の簡単な説明】
【0132】
【図1】トリシンゲルを使用する分析の一例を示す図である。
【図2】本発明のベクターまたは担体とパクリタキセルの結合の方法を示す図である。
【図3】アプロチニンと結合したパクリタキセルを用いた、ルイスラットにおける膠芽腫モデルの治療の効果を示す図である。
【図4】AngioPep-1と結合したパクリタキセルを用いた、ヌードマウスにおける膠芽腫モデルの治療の効果を示す図である。
【図5】架橋剤BS3を使用する、アプロチニンとIgGを結合させるために使用したプロトコルを示す図である。
【図6】架橋剤スルホ-EMCSを使用する、アプロチニンとIgGを結合させるために使用したプロトコルを示す図である。
【図7】IgG-アプロチニン接合体の脳への浸透を示す図である。
【図8】膠芽腫移植マウス(無胸腺、ヌードマウス)の生存率に対する、タクソール-Angiopep-2接合体の治療の効果を示す図である。
【図9】本発明の代表的なポリペプチドの構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0133】
本発明は、作用物質、医薬品または他の分子を脳および/または中枢神経系(CNS)に輸送するための、ベクターまたは担体として働くことができる新たな分子に関する。独力で血液脳関門を横断することができない、あるいはその際に有効でない作用物質、医薬品または他の分子は、ベクターまたは担体と付着または結合(接合体形成)させて血液脳関門を介して輸送させる。あるいは、独力で血液脳関門を横断することができる作用物質は、本発明の担体と接合体形成したときその輸送の増大を見ることもできる。このような接合体は、状態または疾患を治療するための、医薬組成物などの組成物の形であってよい。
【0134】
担体ベクターとしての候補分子の設計
国際公開番号WO2004/060403中で、本発明者は、AngioPep-1(配列番号67)およびアプロチニン(配列番号98)は、望ましい分子を血液脳関門を介して輸送するのに有効なベクターであることを開示している。本発明者は、血液脳関門を介して作用物質を輸送するための担体として他の分子を使用することもできることを、本明細書において実証する。したがって、アプロチニンおよびAngiopep-1および修飾形のAngiopep-1(アミド化、ペプチド番号67)と類似したドメインを有するペプチドは、したがって可能性のある担体ベクターとして考えた。これらの誘導ペプチドはアプロチニンおよびAngiopep-1を模倣しているが、異なるアミノ酸挿入を含み、異なる電荷を有する。これまで、表2中に示す96のペプチドおよび配列表中に列挙する他のペプチドを、担体としてのそれらの可能性に関して試験した。
【0135】
以下の実験中、他のペプチドと比較して高いそれらの活性に基づいてペプチドを選択していることは、本明細書において理解されよう。さらなる実験用に選択しなかったペプチドを決して否認しているわけではなく、非機能的であるとして考えることを意図しない。これらのペプチドは実質的な活性を示し、(生物活性)担体としての有用性を有し、さらに、本発明によって含まれる。
【0136】
【表2A】

【表2B】

【表2C】

【表2D】

【表2E】

【0137】
in vitroモデルを用いた選択
スクリーニングアッセイおよび脳への薬剤輸送の機械的試験用にin vitroモデルを使用した。血液脳関門のこの有効なin vitroモデルは、CELLIAL(商標)Technologies社によって開発された。再現性のある結果を得て、脳に到達する異なる担体の能力を評価するためにin vitroモデルを使用した。このモデルは、ウシ脳毛細血管内皮細胞とラットのグリア細胞の同時培養物からなる。このモデルは、固い接合部、有窓毛細血管の欠如、経内皮チャンネルの欠如、親水性分子の低い浸透性および高い電気抵抗性を含めた脳内皮に特徴的な超微細構造の特徴を示す。さらにこのモデルは、試験した広範囲の分子のin vitro分析とin vivo分析の間で良い相関係数を示している。今日まで、組織培養に関する実験上の利点を保ちながら、in vivoに存在する細胞環境のいくつかの複雑性を再現することによって得たすべてのデータが、このBBBモデルはin vivoの状況に非常に似ていることを示している。多くの試験が、BBBの最も再現性のあるin vitroモデルの1つとして、この細胞の同時培養物を確認している。
【0138】
BBBのin vitroモデルは、BBCECと星状細胞の同時培養物を使用することによって樹立された。細胞培養の前に、プレート挿入物(Millicell-PC3.0μM;30mm径)の上側をラット尾部のコラーゲンでコーティングした。次いでそれらを星状細胞を含む6ウェルのマイクロプレートに置き、BBCECを2mLの同時培養培地中のフィルターの上側に平板培養した。このBBCEC培地は1週間に3回変えた。これらの条件下で、分化したBBCECは7日後にコンフルエントな単層を形成した。コンフルエントに達した後の第5日と第7日の間に実験を行った。スクロースに関する浸透係数を測定して内皮の浸透性を確認した。
【0139】
混合状態の星状細胞の初代培養物を、新生ラットの大脳皮質から調製した(Dehouck M.P.、Meresse S.、Delorme P.、Fruchart J.C.、Cecchelli,R.、An Easier,Reproductible,and Mass-Production Method to Study the Blood-Brain Barrier In Vitro.、J.Neurochem、54、1798〜1801、1990)。簡単に言うと、髄膜を除去した後、脳組織を82μmのナイロンシーブを介して軽く押出した。10%熱不活性化ウシ胎児血清を補った2mLの最適培養培地(DMEM)中に1.2×105個の細胞/1mLの濃度で、6ウェルのマイクロプレートに星状細胞を平板培養した。培地は1週間に2回変えた。
【0140】
ウシ脳毛細血管内皮細胞(BBCEC)はCellial Technologiesから得た。細胞は10%(v/v)ウマ血清および10%熱不活性化コウシ血清を補ったDMEM培地の存在下で培養し、2mMのグルタミン、50μg/mLのゲンタマイシン、および1ng/mLの塩基性線維芽細胞増殖因子を1日おきに加えた。
【0141】
開始時に、選択の第1レベルで、表2中に記載した96のペプチドを、BBBのin vitroモデルを用いて担体として試験した。内皮細胞で被覆された挿入物または内皮細胞で被覆されていない挿入物の上側に、37℃において90分間それぞれのペプチドを加えた。インキュベーション後、チャンバーの下側のペプチドを電気泳動によって解析した。電気泳動ゲルをクーマシーブルーで染色して、図1中に(非制限的に)いくつかのペプチドに関して例示したようにペプチドを目に見える状態にした。AngioPep-1(配列番号67またはペプチド番号67(アミド化形)のいずれか)は参照として、あるいは比較目的のため本明細書中で頻繁に使用する。図1中では、フィルターの上側に施したそれぞれ開始時のペプチドを、対照として電気泳動ゲルに載せた(ini)。90分間のトランスサイトーシスの後、内皮細胞で被覆された(+)または被覆されていない(-)フィルターの外側基底側からの50μlの体積も、トリシンゲルに載せた。ペプチドを目に見える状態にするため、ゲルをクーマシーブルーで染色した。
【0142】
第1レベルのスクリーニング後に、クーマシーブルー染色によってチャンバーの下側中で検出したペプチド(5、8、45、67、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、81、82、90および91)を、ヨウ素化ペプチドを用いる他の試験用に選択した。簡単に言うと、Sigmaからのヨウ素-ビーズを使用する標準的な手順を用いて、選択したペプチドをヨウ素化した。2つのヨウ素-ビーズをそれぞれのタンパク質に使用した。これらのビーズをWhatman(商標)フィルターにおいて3mlのリン酸バッファー(PB)で2回洗浄し、60μlのPBに再懸濁させた。Amersham-Pharmacia biotechからの125I(1mCi)を、室温で5分間ビーズ懸濁液に加えた。それぞれのペプチドのヨウ素化は、100μg(80〜100μl)のビーズ懸濁液を加えることによって開始した。室温で10分間のインキュベーションの後、Pierceからの5mlの架橋デキストラン(商標)を予め充填した脱塩カラムに上清を施し、125I-タンパク質は10mlのPBSを用いて溶出させた。0.5mlの分画を回収し、5μlのそれぞれの分画中の放射能を測定した。125I-タンパク質に対応する分画を集め、リンガー/Hepesバッファー、pH7.4に対して透析した。放射標識の有効度は0.6〜1.0×108cpm/タンパク質100μgであった。
【0143】
ヨウ素化ペプチドは、BBBのin vitroモデルを用いてさらに調べた。内皮細胞で被覆された挿入物または内皮細胞で被覆されていない挿入物の上側に、37℃において90分間それぞれのペプチドを加えた。インキュベーション後、チャンバーの下側のペプチドをTCA沈殿させた。結果はcpm比として表した。それぞれの[125I]-ペプチドに関して、底部チャンバー中のcpmの数を、内皮細胞で被覆されているか(+細胞/開始時)あるいは被覆されていない(-細胞/開始時)フィルターに加えたcpmの合計数で割った。内皮細胞で被覆されているかあるいは被覆されていないフィルターの底部チャンバー中に見られた[125I]-ペプチドの数の間の比も、計算した(+細胞/-細胞)。非常に低い-細胞/開始時の比は、フィルターがペプチド(ペプチド5および8)に干渉する可能性があることを示す。高い+細胞/開始時および+細胞/-細胞の比は、脳内皮細胞を介したペプチドの充分な透過を示す。前に選択した18のペプチドに関する結果は表3中に示す。
【0144】
【表3】

【0145】
これらの結果から、一般に0.35より高い+細胞/-細胞の比を有する12のペプチド、すなわち5、8、67、75、76、77、78、79、81、82、90および91を選択した。ペプチド番号91および番号77は、それらの+細胞/-細胞の比(>0.2)のため他の試験用にさらに選択した。
【0146】
次いで12の選択したペプチドを、in vitro BBBモデルを使用してそれらの浸透係数を評価することによって調べた。250nMでのそれぞれの選択したペプチドのBBBの完全性に対する影響を、BBBモデル、星状細胞の存在下においてフィルター上で増殖させたBBCEC単層における、[14C]スクロースの浸透性を測定することによって決定した。この試験を実施するために、挿入物上で増殖させた脳内皮細胞単層を、37℃において2時間、ウェル当たり2mLのリンガー-Hepesを含む6ウェルのプレート(外側基底区画)に移した。リンガー-Hepes溶液は、150mMのNaCl、5.2mMのKCl、2.2mMのCaCl2、0.2mMのMgCl2、6mMのNaHCO3、5mMのHepes、2.8mMのHepes、pH7.4から構成されていた。それぞれの先端型チャンバーにおいて、標識した[14C]スクロースを含む1mLのリンガー-Hepesと培養培地を交換した。異なる時間、挿入物を他のウェル中に置いた。細胞を含まないフィルターまたはBBCEC細胞でコーティングしたフィルターにおいて、[14C]スクロースの透過を37℃で測定した。実験開始時の時間ゼロでペプチドを加える。結果はスクロースのクリアランス(μl)として時間の関数(分)としてプロットした。
クリアランス(μl)=[C]A×VA/[C]L [C]A=管腔外トレーサー濃度
VA=管腔外チャンバーの容積
[C]L=管腔トレーサー濃度
【0147】
直線的変化の勾配(μl/分)が、ペプチドの存在下での細胞を含まないフィルター(Psf)またはBBCEC細胞でコーティングしたフィルター(PSt)に関するスクロースの浸透係数である。
【0148】
浸透係数(Pe)は以下のように計算した:
1/Pe=(1/PSt-1/PSf)/フィルター面積(4.2cm2)
【0149】
最高のPeを有するペプチド:67、76、90、91、5、79、8、および78を選択した。
【0150】
(マウスにおける)in situ脳潅流を、最良のペプチドを選択するための第4レベルの選択として使用した。この手順はさらに、脳血管区画内に残存する化合物と管腔外内皮膜を横断して脳の柔組織に入った化合物を区別する。実際、潅流後の毛細血管削除の技法によって、分子が本当に内皮を横断して脳の柔組織に入るかどうかを測定することができる。この技法を使用して、特定のペプチドが脳の柔組織分画中に蓄積する傾向があることを本明細書において実証する(表4参照)。
【0151】
【表4】

【0152】
4つのペプチド、すなわち5、67、76および91は、脳全体(ホモジェネート)に関して見られる容積の少なくとも25%である20ml/100gを超える容積で柔組織中において最高レベルの分布を示し、したがって輸送ベクターとして使用するための担体として最高の可能性を示した。脳柔組織中のその少ない分布容積(18ml/100g)のため、ペプチド79は除外した。ペプチド67は、本発明者が出願した以前の出願中に記載したアミド化形のAngioPep-1である。ペプチドのアミド化は、ペプチドの全体の電荷に影響を与える。表2および3中において明らかであるように、異なる電荷を有する2つのペプチドは必ずしも同じ活性を有していない。
【0153】
したがって、本発明のベクターまたは担体は、血液脳関門を介して作用物質を輸送するための方法であって、アプロチニンまたはその機能的誘導体(すなわち、アプロチニン類似体、アプロチニン断片、アプロチニン誘導体、アプロチニン断片の類似体)などの担体と結合した活性成分または医薬作用物質を含む作用物質を個体に投与する段階を具備する方法で、使用することができる。
【0154】
担体および接合体は、動脈内、鼻腔内、腹膜内、静脈内、筋肉内、皮下、経皮あるいは経口的に患者に投与することができる。作用物質は例えば抗血管新生化合物であってよい。作用物質は約160,000ダルトンの最大分子量を有することができる。本明細書で論じるように、作用物質はマーカーまたは小分子薬剤などの薬剤、タンパク質、ペプチドまたは酵素であってよい。薬剤は例えば患者の神経疾患または中枢神経系障害を治療するために適合させることができる。薬剤は細胞毒性薬剤であってよく、マーカーは放射活性標識、緑色蛍光タンパク質、Hisタグタンパク質またはβ-ガラクトシダーゼなどの検出可能な標識であってよい。作用物質は例えば、患者の中枢神経系に送達することができる。
【0155】
他の実施形態によれば、本明細書中に述べる使用、方法、化合物、作用物質、薬剤または医薬品が、患者の血液脳関門の完全性を変える可能性はない。
【0156】
本発明の他の実施形態によれば、ペプチドはアプロチニン、アプロチニン断片(配列番号1)、および配列番号1〜97、99、100または101において定義するペプチドのいずれか1つからなる群から選択することができる。
【0157】
例えば、ペプチド5、76、91、97および97およびペプチド67は、患者の血液脳関門を介して作用物質または化合物を輸送するために、作用物質または化合物とペプチドを結合させることによって、本発明において使用することができる。作用物質または化合物は神経疾患を治療するための、または中枢神経系障害を治療するために適合させることができる。
【0158】
例えばペプチド5、76、91、97およびペプチド67などの本発明の担体は、例えば抗体が疾患または状態特異的抗原と結合している放射線イメージング用作用物質-抗体-担体接合体を使用することによって、疾患または状態を検出するために、放射線イメージング用作用物質などの検出可能な標識、放射線を放出する作用物質などと結合させることができるか、あるいはこれらで標識することができる。抗体以外の当技術分野で知られており使用されている他の結合分子も、本発明によって企図される。あるいは、本発明の担体またはその機能的誘導体またはその混合物を、治療剤と結合させて疾患または状態を治療することができ、あるいはその混合物と結合させることができるか、あるいはそれらで標識することができる。血液脳関門を介して作用物質を輸送することができる条件下で、本発明の担体-作用物質接合体を個体に投与することによって、治療を実施することができる。
【0159】
本明細書で使用する治療剤は、細胞を殺傷することができる薬剤、医薬品、放射線を放出する作用物質、細胞毒素(例えば、化学療法剤)および/またはその生物活性断片、および/またはその混合物であってよく、あるいは治療剤は、治療する個体における疾患または状態を治療、治癒、緩和、改善、低下または抑制するための作用物質であってよい。治療剤は合成産物、または真菌、細菌、またはマイコプラズマ、ウイルスなどの他の微生物、爬虫類などの動物、または植物源の産物であってよい。治療剤および/またはその生物活性断片は酵素活性作用物質および/またはその断片であってよく、あるいは重要および/または必要な細胞経路を抑制または阻害すること、あるいは重要および/または必要な本来存在する細胞要素と競合することによって作用し得る。
【0160】
適切である可能性がある、放射線を放出する放射線イメージング用作用物質(検出可能な放射標識)の例は、インジウム-111、テクニチウム-99、または低量のヨウ素-131によって例示される。
【0161】
本発明において使用するための検出可能な標識、またはマーカーは放射標識、蛍光標識、核磁気共鳴活性標識、発光標識、発色団標識、PETスキャナー用の陽電子放出同位体、化学発光標識、または酵素標識であってよい。蛍光標識には、緑色蛍光タンパク質(GFP)、フルオレセイン、およびローダミンがあるが、これらだけには限られない。化学発光標識には、ルシフェラーゼおよびβ-ガラクトシダーゼがあるが、これらだけには限られない。酵素標識には、ペルオキシダーゼおよびホスファターゼがあるが、これらだけには限られない。Hisタグも検出可能な標識であり得る。
【0162】
例えば担体と作用物質の間の化学結合の酵素による切断または破断によって、血液脳関門を介した輸送後に、担体から作用物質が放出され得ることは企図される。次いで放出作用物質は、担体の不在下においてその考えられる能力で機能し得る。
【0163】
本発明の範囲を制限するためではなく本発明を例示するために与える以下の実施例を参照することによって、本発明はさらに容易に理解されるはずである。以下の実施例は、アプロチニンに関して与えている。しかしながら本発明の分子は、血液脳関門を介して作用物質を輸送する担体としてのそれらの能力に関してアプロチニンと共通の性質を共有していることは、本明細書において実証している。したがって、これらの実施例を本発明の分子に適用する。
【実施例1】
【0164】
(実施例1)
薬剤接合体(パクリタキセル)に関する戦略
接合体形成用に、パクリタキセル(TAXOL(商標))は2つの戦略上役立つ位置(位置C2'およびC7)を有する。図2は、本発明のベクターまたは担体とパクリタキセルの結合の方法を示す。簡単に言うと、パクリタキセルを無水コハク酸ピリジンと室温で3時間反応させて、位置2'においてスクシニル基を結合させる。このような2'-スクシニルパクリタキセルは、位置2'に切断性エステル結合を有し、これは切断時にコハク酸を簡単に放出し得る。この切断性エステル結合はさらに、望むならばリンカーを用いた様々な修飾に使用することができる。生成した2'-O-スクシニル-パクリタキセルは次いで室温において9時間DMSO中でEDC/NHSと反応させ、次に室温においてさらに4時間の反応時間リンガー/DMSOに溶かした担体またはベクターを加える。図2に示す接合体形成反応はHPLCによって調べる。パクリタキセル、2'-O-スクシニル-パクリタキセルおよび2'-O-NHS-スクシニル-パクリタキセルなどのそれぞれの中間体は、HPLC、薄層液体クロマトグラフィー、NMR(13Cまたは1Hの交換)、融点、質量分析法などの異なる手法を使用して精製し確認した。最終的な接合体は、質量分析法およびSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分析する。これによって、それぞれのベクターと接合体形成したパクリタキセル分子の数を測定することができる。
【0165】
アプロチニン-パクリタキセル接合体のトランスサイトーシス能力を測定し、以下の表5において報告する。
【0166】
【表5】

【0167】
表5中に見られるように、パクリタキセルとアプロチニンの接合体は、スクロースの完全性に影響を与えずに、依然としてin vitroモデルの血液脳関門を横断することができ、本発明の分子(本明細書ではベクターまたは担体とも呼ぶ)は、パクリタキセルなどの大きな化学作用物質と接合体形成したとき、その活性を依然保持していることがしたがって証明された。
【0168】
ラット脳腫瘍モデルにおける生存試験を次いで行って、接合体形成したパクリタキセルがin vivoで依然活性があるかどうかを確認した。ラット脳腫瘍モデル用に、50000のCNS-1のグリオーマ細胞の脳内移植をラットに施した。3(3)日後、静脈内注射によるビヒクル(アプロチニン)、パクリタキセル(5mg/kg)またはパクリタキセル-アプロチニン(5mg/kg)を用いた治療を動物に施した。動物を殺傷するまで毎週、治療剤を次いで投与した(図3参照)。ラットは臨床症状および体重減少に関して毎日調べた。優れた動物に関する慣習のプロトコルにしたがって、体重減少を3日連続で観察したとき、または体重減少が動物の最初の体重の20%を超える場合の前に動物を殺傷した。
【0169】
同じ実験プロトコルを使用すると、パクリタキセルは最大耐量(54mg/kg)において単独で注射したとき、マウスの生存期間を増大させることができなかった(Laccabue et al、2001 Cancer、92(12):3085〜92)。
【0170】
ヒト脳腫瘍異種移植片を移植したマウスにおいても生存試験を行った。マウス脳腫瘍モデル用に、500000のヒトU87のグリオーマ細胞の脳内移植をマウスに施した。移植の3日後、静脈内注射によるパクリタキセル-Angiopep1(5mg/kg)またはビヒクルを用いた治療を動物に施した。動物を殺傷するまで毎週、治療剤を次いで投与した。マウスは臨床症状および体重減少に関して毎日調べた。優れた動物に関する慣習のプロトコルにしたがって、体重減少を3日連続で観察したとき、または体重減少が動物の最初の体重の20%を超える場合の前に動物を殺傷した。対照群の平均生存試験が19±2日であったことを、ここで観察した。統計分析用に、生存期間の20%の増大が有意であると考えた。図4中に見ることができるように、接合体パクリタキセル-AngioPep-1はその活性を保持しており、統計上有意な影響を有していた。パクリタキセル-Angiopep1で治療した動物の生存時間は、対照群と比較して有意に延長される(p<0.05、n=8)。
【0171】
2つの生存試験において得た結果は、本発明のベクターとパクリタキセルの接合体は、動物の生存期間を増大させることを示す。
【実施例2】
【0172】
抗体接合体に関する戦略
タンパク質は一般に結合に利用可能ないくつかのアミノ基を有するので、スルホ-NHS/EDC活性化を使用するアミンカップリングを使用して、治療用抗体と本発明のベクター(担体)を架橋させる。それが迅速、簡潔かつ再現性のあるカップリング技法であるため、生成する接合体は抗体の生物活性を依然として保持しながら安定しており、それが確実に調節することができる高い結合能力、およびカップリング手順中に低い非特異的相互作用を有するために、この手法を選択した。
【0173】
抗体または抗体断片(FabおよびFab'2)を本発明のベクターと接合体形成させて、脳へのそれらの送達を増大させた。様々な接合体形成手法を使用してIgGとアプロチニンを最初に接合体形成させ、本発明の担体がアプロチニンとまったく同様に挙動することを証明した。
【0174】
BS3[ビス(スルホスクシニミジル)スベリン酸]、NHS/EDC(N-ヒドロキシスクシンイミドおよびN-エチル-N'(ジメチルアミノプロピル)カルボジイミドまたはスルホ-EMCS([N-e-マレイミドカプロン酸]ヒドラジド)などの異なる架橋剤が、IgGの接合体形成に関して試験されている。BS3は、接触可能な第一級アミンを標的化するホモ二官能性のN-ヒドロキシスクシンイミドエステルである。NHS/EDCは第一級アミン基とカルボキシル基の接合体形成をもたらす。スルホ-EMCSは、スルフヒドリルおよびアミノ基に対して反応性があるヘテロ二官能性の反応基(マレイミドおよびNHS-エステル)である。
【0175】
架橋剤BS3(図5)またはスルホ-EMCS(図6)を使用して、アプロチニンとIgGの接合体形成を最初に評価した。
【0176】
BBBを介したIgGまたはIgG-接合体の輸送を次いで試験した。マウスの脳毛細血管の管腔側への[125I]-IgGの取り込みは、マウス脳内の薬剤取り込みの研究用に本発明者の研究室において適合させたin situ脳潅流法を使用して測定した(Dagenais et al、2000、J.Cereb.Blood Flow Metab.20(2):381〜386)。BBBの輸送定数は、Smith(1996、Pharm.Biotechnol.8:285〜307)によって以前に記載されたのと同様に測定した。IgGの取り込みは以下の等式から分布容積(Vd)として表した。
Vd=Q*br/C*pf
上式でQ*brは計算した右脳半球1グラム当たりの[125I]-IgGまたは[125I]-IgG-アプロチニン接合体の量であり、C*pfは潅流液中で測定した標識トレーサーの濃度である。
【0177】
この実験の結果は、非結合[125I]-IgGの取り込みより多量の[125I]-IgG-アプロチニン接合体の脳への取り込みがあることを示す(図7参照)。
【0178】
IgGとアプロチニンの接合体形成は、in vivoにおいて脳の柔組織中のそれらの蓄積を増大させる。
【実施例3】
【0179】
マウスの生存に対するタクソール-Angiopep-2接合体の影響
タクソール-Angiopep-2(本明細書ではペプチド番号97と呼ぶ(angiopep2はアミド化されていない)を用いたこの試験を行って、タクソールとAngiopep-2の接合体がマウスの生存期間を増大させることができるかどうかを測定した。Angiopep-2の構造は配列番号97において示す。この実験のために、500000のヒトU87のグリオーマ細胞の脳内移植をマウスに施した。移植の3日後、尾部静脈注射によるビヒクル(DMSO/リンガー-Hepes80:20v/v(すなわち対照))またはタクソール-Angiopep-2接合体(3:1、すなわち、それぞれのペプチドに対して3タクソール分子の比;TxlAn2(5mg/kg))を用いた治療を動物に施した(図8)。マウスは臨床症状および体重減少に関して毎日調べた。治療剤は動物を殺傷するまで投与した。表6中に示すように、対照群の平均生存期間は18日であり、一方タクソール-Angiopep-2接合体を与えたマウスの平均生存期間は21日であったことを我々は観察した(図8)。タクソール-Angiopep-2接合体で治療したマウスに関して得た生存曲線(赤色)は、平均生存期間が有意に17%増大したことを示す(図8)。表6中にさらに表す統計分析は、タクソール-Angiopep-2接合体の投与は生存期間を有意に17%増大させたことを示す(p値=0.048)。
【0180】
【表6】

【0181】
本出願中に言及するそれぞれの刊行物、特許および特許出願の中身は、参照により本明細書に組み込む。
【0182】
本発明を本明細書に詳細に記載し添付の図面中に示してきたが、本発明は本明細書に記載する実施形態に限られず、本発明の範囲または精神から逸脱せずに、様々な変形および変更形態を実施することができることは理解されよう。
【0183】
本発明をその特定の実施形態に関して記載してきたが、他の変更形態が可能であり、本出願は本発明の原理に概して従い、本発明が関係する分野内の既知または一般的慣習の範疇にあり、本明細書で前述した必要不可欠な特徴に適用することができ、添付の特許請求の範囲に従うような本開示からの逸脱を含めた、本発明の任意の変形、使用、または適合形を含むことを目的としていることは理解されるはずである。
【0184】
配列
配列番号
NO.:
1 T F V Y G G C R A K R N N F K S A E D
2 T F Q Y G G C M G N G N N F V T E K E
3 P F F Y G G C G G N R N N F D T E E Y
4 S F Y Y G G C L G N K N N Y L R E E E
5 T F F Y G G C R A K R N N F K R A K Y
ペプチド番号5は配列番号5において定義するアミノ酸配列を含み、そのC末端においてアミド化されている(例えば図9を参照)
【0185】
6 T F F Y G G C R G K R N N F K R A K Y
7 T F F Y G G C R A K K N N Y K R A K Y
8 T F F Y G G C R G K K N N F K R A K Y
9 T F Q Y G G C R A K R N N F K R A K Y
10 T F Q Y G G C R G K K N N F K R A K Y
11 T F F Y G G C L G K R N N F K R A K Y
12 T F F Y G G S L G K R N N F K R A K Y
13 P F F Y G G C G G K K N N F K R A K Y
14 T F F Y G G C R G K G N N Y K R A K Y
15 P F F Y G G C R G K R N N F L R A K Y
16 T F F Y G G C R G K R N N F K R E K Y
17 P F F Y G G C R A K K N N F K R A K E
18 T F F Y G G C R G K R N N F K R A K D
19 T F F Y G G C R A K R N N F D R A K Y
20 T F F Y G G C R G K K N N F K R A E Y
21 P F F Y G G C G A N R N N F K R A K Y
22 T F F Y G G C G G K K N N F K T A K Y
23 T F F Y G G C R G N R N N F L R A K Y
24 T F F Y G G C R G N R N N F K T A K Y
25 T F F Y G G S R G N R N N F K T A K Y
26 T F F Y G G C L G N G N N F K R A K Y
27 T F F Y G G C L G N R N N F L R A K Y
28 T F F Y G G C L G N R N N F K T A K Y
29 T F F Y G G C R G N G N N F K S A K Y
30 T F F Y G G C R G K K N N F D R E K Y
31 T F F Y G G C R G K R N N F L R E K E
32 T F F Y G G C R G K G N N F D R A K Y
33 T F F Y G G S R G K G N N F D R A K Y
34 T F F Y G G C R G N G N N F V T A K Y
35 P F F Y G G C G G K G N N Y V T A K Y
36 T F F Y G G C L G K G N N F L T A K Y
37 S F F Y G G C L G N K N N F L T A K Y
38 T F F Y G G C G G N K N N F V R E K Y
39 T F F Y G G C M G N K N N F V R E K Y
40 T F F Y G G S M G N K N N F V R E K Y
41 P F F Y G G C L G N R N N Y V R E K Y
42 T F F Y G G C L G N R N N F V R E K Y
43 T F F Y G G C L G N K N N Y V R E K Y

44 T F F Y G G C G G N G N N F L T A K Y
45 T F F Y G G C R G N R N N F L T A E Y
46 T F F Y G G C R G N G N N F K S A E Y
47 P F F Y G G C L G N K N N F K T A E Y
48 T F F Y G G C R G N R N N F K T E E Y
49 T F F Y G G C R G K R N N F K T E E D
50 P F F Y G G C G G N G N N F V R E K Y
51 S F F Y G G C M G N G N N F V R E K Y
52 P F F Y G G C G G N G N N F L R E K Y
53 T F F Y G G C L G N G N N F V R E K Y
54 S F F Y G G C L G N G N N Y L R E K Y
55 T F F Y G G S L G N G N N F V R E K Y
56 T F F Y G G C R G N G N N F V T A E Y
57 T F F Y G G C L G K G N N F V S A E Y
58 T F F Y G G C L G N R N N F D R A E Y
59 T F F Y G G C L G N R N N F L R E E Y
60 T F F Y G G C L G N K N N Y L R E E Y
61 P F F Y G G C G G N R N N Y L R E E Y
62 P F F Y G G S G G N R N N Y L R E E Y
63 M R P D F C L E P P Y T G P C V A R I
64 A R I I R Y F Y N A K A G L C Q T F V Y G
65 Y G G C R A K R N N Y K S A E D C M R T C G
66 P D F C L E P P Y T G P C V A R I I R Y F Y
67 T F F Y G G C R G K R N N F K T E E Y
ペプチド番号67は配列番号67において定義するアミノ酸配列を含み、そのC末端においてアミド化されている(例えば図9を参照)
【0186】
68 K F F Y G G C R G K R N N F K T E E Y
69 T F Y Y G G C R G K R N N Y K T E E Y
70 T F F Y G G S R G K R N N F K T E E Y
71 C T F F Y G C C R G K R N N F K T E E Y
72 T F F Y G G C R G K R N N F K T E E Y C
73 C T F F Y G S C R G K R N N F K T E E Y
74 T F F Y G G S R G K R N N F K T E E Y C
75 P F F Y G G C R G K R N N F K T E E Y
76 T F F Y G G C R G K R N N F K T K E Y
ペプチド番号76は配列番号76において定義するアミノ酸配列を含み、そのC末端においてアミド化されている(例えば図9を参照)
【0187】
77 T F F Y G G K R G K R N N F K T E E Y
78 T F F Y G G C R G K R N N F K T K R Y
79 T F F Y G G K R G K R N N F K T A E Y
80 T F F Y G G K R G K R N N F K T A G Y
81 T F F Y G G K R G K R N N F K R E K Y
82 T F F Y G G K R G K R N N F K R A K Y
83 T F F Y G G C L G N R N N F K T E E Y
84 T F F Y G C G R G K R N N F K T E E Y
85 T F F Y G G R C G K R N N F K T E E Y
86 T F F Y G G C L G N G N N F D T E E E
87 T F Q Y G G C R G K R N N F K T E E Y
88 Y N K E F G T F N T K G C E R G Y R F
89 R F K Y G G C L G N M N N F E T L E E
90 R F K Y G G C L G N K N N F L R L K Y
91 R F K Y G G C L G N K N N Y L R L K Y
ペプチド番号91は配列番号91において定義するアミノ酸配列を含み、そのC末端においてアミド化されている(例えば図9を参照)
【0188】
92 K T K R K R K K Q R V K I A Y E E I F K N Y
93 K T K R K R K K Q R V K I A Y
94 R G G R L S Y S R R F S T S T G R
95 R R L S Y S R R R F
96 R Q I K I W F Q N R R M K W K K
97 T F F Y G G S R G K R N N F K T E E Y
98 M R P D F C L E P P Y T G P C V A R I
I R Y F Y N A K A G L C Q T F V Y G G
C R A K R N N F K S A E D C M R T C G G A

99 T F F Y G G C R G K R N N F K T K E Y
100 R F K Y G G C L G N K N N Y L R L K Y
101 T F F Y G G C R A K R N N F K R A K Y
102 N A K A G L C Q T F V Y G G C L A K R N N F E S A E D C M R T C G G A

103 Y G G C R A K R N N F K S A E D C M R T C G G A

104 G L C Q T F V Y G G C R A K R N N F K S A E
105 L C Q T F V Y G G C E A K R N N F K S A
【0189】
配列番号106
atgagaccag atttctgcct cgagccgccg tacactgggc cctgcaaagc tcgtatcatc
cgttacttct acaatgcaaa ggcaggcctg tgtcagacct tcgtatacgg cggctgcaga
gctaagcgta acaacttcaa atccgcggaa gactgcatgc gtacttgcgg tggtgcttag

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号67の配列に対して少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、前記ポリペプチドが配列番号67の配列に対して少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、前記置換がCysからSerへの置換である、ポリペプチド。
【請求項2】
配列番号67の配列に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、前記ポリペプチドが配列番号67の配列に対して少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、前記置換がCysからSerへの置換であり、前記ポリペプチドが10から50の間のアミノ酸長である、ポリペプチド。
【請求項3】
配列番号67の配列に対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む化合物であって、前記ポリペプチドが配列番号67の配列に対して少なくとも1つのアミノ酸置換を含み、前記置換がCysからSerへの置換であり、前記ポリペプチドが治療剤、検出可能な標識、ペプチド、タンパク質、又はタンパク質複合体に接合している、化合物。
【請求項4】
前記ポリペプチドが10から50アミノ酸長である、請求項1に記載のポリペプチド又は請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
前記アミノ酸配列が、配列番号67の配列に対して少なくとも80%の同一性を有する、請求項2若しくは4に記載のポリペプチド又は請求項3若しくは4に記載の化合物。
【請求項6】
前記アミノ酸配列が、配列番号67の配列に対して少なくとも90%の同一性を有する、請求項1、2、若しくは4に記載のポリペプチド、又は請求項3若しくは4に記載の化合物。
【請求項7】
前記アミノ酸配列が配列番号97の配列を含む、請求項6に記載のポリペプチド又は化合物。
【請求項8】
前記アミノ酸配列が配列番号97の配列からなる、請求項7に記載のポリペプチド又は化合物。
【請求項9】
配列番号7、13、17、21、26、27、35、37から39、41、43、44、50から54、60、61、63から66、及び88から93のいずれか1つに対して少なくとも70%の同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【請求項10】
前記アミノ酸配列が、配列番号90及び91のいずれか1つと少なくとも70%の同一性を有する請求項9に記載のポリペプチド。
【請求項11】
前記同一性の割合が少なくとも80%である、請求項9又は10に記載のポリペプチド。
【請求項12】
配列番号5、8,9、10、11、14、15、18、19、22、23、28から34、36、40、42、46、47、55から59、62、及び86のいずれか1つと少なくとも80%の同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【請求項13】
前記アミノ酸配列が配列番号5又は8に対して少なくとも80%の同一性を有する、請求項12に記載のポリペプチド。
【請求項14】
前記同一性の割合が少なくとも90%である、請求項9から13のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項15】
配列番号6、12、16、20、24、25、45、48、49、68から71、73から76、78から83、85、及び87のいずれか1つに対して少なくとも90%の同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【請求項16】
前記アミノ酸配列が、配列番号70、71、及び73から82のいずれか1つに対して少なくとも90%の同一性を有する、請求項15に記載のポリペプチド。
【請求項17】
前記同一性の割合が100%である、請求項9から16のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項18】
配列番号72、77、及び84のいずれか1つのアミノ酸配列を含むポリペプチド。
【請求項19】
前記ポリペプチドが10から50のアミノ酸長である、請求項9から18のいずれか一項に記載のポリペプチド。
【請求項20】
請求項1、2、及び4から19のいずれか一項に記載のポリペプチドを含む組成物。
【請求項21】
(a)請求項9から19のいずれか一項に記載のポリペプチド、及び
(b)前記ポリペプチドに接合されている、治療剤、検出可能な標識、ペプチド、タンパク質、又はタンパク質複合体
を含む化合物。
【請求項22】
前記タンパク質又はタンパク質複合体が抗体又は抗体断片である、請求項3から8及び20のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項23】
前記治療剤が小分子薬剤である、請求項3から8及び20のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項24】
前記小分子薬剤が抗癌剤である、請求項22に記載の化合物。
【請求項25】
前記抗癌剤が、パクリタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、エトポシド、ドキソルビシン、シクロホスファミド、タキソテール、メルファラン、クロラムブシルおよびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項23に記載の化合物。
【請求項26】
前記抗癌剤がパクリタキセルである、請求項24に記載の化合物。
【請求項27】
前記抗癌剤がエトポシドである、請求項24に記載の化合物。
【請求項28】
前記抗癌剤がドキソルビシンである、請求項24に記載の化合物。
【請求項29】
前記ポリペプチド又は化合物が精製されている、請求項1、2、及び4から19のいずれか一項に記載のポリペプチド又は請求項3から8及び20から27のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項30】
前記ポリペプチドが組換え遺伝子技術によって生産されている、請求項1、2、及び4から19のいずれか一項に記載のポリペプチド又は請求項3から8及び20から27のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項31】
前記ポリペプチドが化学合成によって生産されている、請求項1、2、及び4から19のいずれか一項に記載のポリペプチド又は請求項3から8及び20から27のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項32】
請求項1、2、及び4から19のいずれか一項に記載のポリペプチド又は請求項3から8及び20から27のいずれか一項に記載の化合物、並びに薬剤として許容される担体を含む、医薬組成物。
【請求項33】
前記組成物又は前記化合物が血液脳関門を通過することができる、請求項1、2、及び4から19のいずれか一項に記載のポリペプチド又は請求項3から8及び20から27のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項34】
神経疾患を治療するための、請求項3から8及び20から27のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項35】
前記神経疾患が、脳腫瘍、脳転移、統合失調症、てんかん、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、及び脳卒中からなる群から選択される、請求項33に記載の化合物。
【請求項36】
前記神経疾患が脳腫瘍又は脳転移である、請求項34に記載の化合物。
【請求項37】
前記脳腫瘍がグリオーマ又は膠芽腫である、請求項36に記載の化合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−144174(P2011−144174A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−4842(P2011−4842)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【分割の表示】特願2007−555430(P2007−555430)の分割
【原出願日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【出願人】(505255699)アンジオケム・インコーポレーテッド (4)
【Fターム(参考)】