説明

血液透析装置における透析器の検査方法および血液透析装置

【解決手段】 血液透析装置は、透析液を流通させる透析液回路と血液を流通させる血液回路とが接続された透析器と、上記透析液回路における圧力を測定する圧力測定手段とを備えている。
上記透析液回路に液が貯溜され、かつ、上記血液回路を大気に開放させた状態で、上記透析液回路内の液を排液させて内部を負圧にするとともに、上記圧力測定手段により該透析液回路の圧力を測定する。
該透析液回路における圧力の変動がない場合には透析器の濾過膜に異常がなく、圧力の変動がある場合には透析器の濾過膜に漏れがあるものと判断する。
【効果】 血液回路や濾過膜の損傷を防止しつつ、透析器における濾過膜の漏れを検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は血液透析装置における透析器の検査方法および血液透析装置に関し、詳しくは透析液を流通させる透析液回路と血液を流通させる血液回路とが接続された透析器を備える血液透析装置における透析器の検査方法および血液透析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血液透析装置には透析液を流通させる透析液回路と血液を流通させる血液回路とが接続された透析器が装着されており、この透析液の内部には中空糸などの濾過膜が設けられている。
上記透析器は、製造メーカーにおいて厳重なチェックが行われており、上記濾過膜の漏れは発生しないようになっているが、例えば輸送中などの衝撃により実際に使用するまでの間に濾過膜に漏れが発生するおそれがある。
このため、上記透析器を透析装置に装着して透析治療を行う際に、あらかじめ上記透析器における濾過膜の漏れを検査することが行われ、このような透析器の検査方法として、血液回路および透析液回路に液体を充満させ、血液回路を昇圧することにより濾過膜の漏れを検査する方法が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−199819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1の場合、血液回路を昇圧しているため、血液回路を構成するチューブが膨張したり、透析器における濾過膜が血液回路側の昇圧を想定していないことから、濾過膜に負荷がかかって損傷してしまうという問題があった。
このような問題に鑑み、本発明は血液回路や濾過膜の損傷を防止しつつ、透析器における濾過膜の漏れを検出することが可能な透析器の検査方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、請求項1にかかる血液透析装置における透析器の検査方法は、透析液を流通させる透析液回路と血液を流通させる血液回路とが接続された透析器を備える血液透析装置における透析器の検査方法において、
上記透析液回路における圧力を測定する圧力測定手段を設け、
上記透析液回路に液が貯溜され、かつ、上記血液回路を大気に開放させた状態で、上記透析液回路内の液を排液させて内部を負圧にするとともに、上記圧力測定手段により該透析液回路の圧力を測定して、
該透析液回路における圧力の変動がない場合には透析器の濾過膜に異常がなく、圧力の変動がある場合には透析器の濾過膜に漏れがあるものと判断することを特徴としている。
【0006】
また請求項5にかかる血液透析装置は、透析液を流通させる透析液回路と血液を流通させる血液回路とが接続された透析器を備える血液透析装置において、
上記透析器に透析液を供給する透析液供給通路と、透析器から透析液を排出させる透析液排出通路と、該透析液回路における圧力を測定する圧力測定手段と、上記透析液供給通路を開閉する開閉手段と、上記透析液排出通路から液を排液させる排液手段と、上記圧力測定手段の測定結果が入力されるとともに、上記排液手段および開閉手段の作動を制御する制御手段とを備え、
さらに上記制御手段は、上記圧力測定手段の測定結果に基づき、圧力の変動がない場合には透析器の濾過膜に異常がなく、圧力の変動がある場合には透析器の濾過膜に漏れがあるものと判定する判定手段を備え、
上記制御手段は、上記透析液回路に液が貯溜された状態で上記透析液供給通路を閉鎖させ、さらに、血液回路が大気に開放された状態で上記透析液回路内の液を排液させて上記透析液回路内を負圧にし、この状態で圧力測定手段の測定結果を入力して、
上記判定手段は上記透析液回路内の圧力に基づいて透析器の濾過膜の漏れの有無を検査することを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
上記請求項1および請求項5の発明によれば、血液回路の内部を大気解放させるとともに、透析液回路の内部を負圧として、透析液回路と血液回路との間に差圧を生じさせることで、血液回路を構成するチューブなどが膨張することはなく、また濾過膜への負荷がないことから、血液回路や濾過膜の損傷を防止しつつ、透析器における濾過膜の漏れを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施例にかかる血液透析装置の液回路図。
【図2】透析器の漏れ検査を行う際の動作説明図。
【図3】透析器の漏れ検査を行う際の動作説明図。
【図4】第2実施例にかかる血液透析装置の液回路図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下図示実施例について説明すると、図1は透析治療を行う血液透析装置1の液回路を示し、上記血液透析装置1は図1(a)に示す制御手段1aによって制御されるようになっている。
上記血液透析装置1は、拡散、限外ろ過、浸透圧により血液と透析液との間で透析を行う透析器2と、該透析器2に接続された血液回路3と、透析器2に接続された透析液回路4とを備えている。
上記透析器2は、樹脂製の外装ケース2aと、該外装ケース2aの内部に設けた濾過膜を構成する多数の中空糸2bとから構成され、上記中空糸2bの内部は上記血液回路3と連通して血液が流通し、外装ケース2aと中空糸2bとの間の通路2cには上記透析液回路4が連通して透析液が血液とは逆方向に流通するようになっている。
上記透析器2に用いられる濾過膜としての中空糸2bは、液体は通過させるが気体を通過させない性質を有しており、本実施例ではこの中空糸2bの性質を利用することで、該血液透析装置1の使用前に上記透析器2の漏れを検査することが可能となっている。
上記制御手段1aは、以下に詳述するように血液透析装置1を構成するポンプや開閉弁の動作を制御したり、各部に設けられたセンサの測定結果に基づいて各種の動作を行うようになっている。本実施例では特に上記透析器2の漏れの判定を行うことが可能となっている。
【0010】
上記血液回路3は、患者の血管に接続されて上記透析器2に血液を供給する血液供給通路を構成する動脈側通路11と、透析器2から患者に血液を戻す血液排出通路を構成する静脈側通路12とから構成され、これら通路はシリコーン製のチューブで構成されている。
動脈側通路11には、その一端に患者の血管に穿刺される穿刺針11aが設けられるとともに他端が透析器2に接続され、上記穿刺針11aから順に、動脈側通路11を閉鎖する供給側閉塞手段としてのクランプ13と、血液を送液する血液ポンプ14と、ドリップチャンバ15とが配置されている。
上記血液ポンプ14は、チューブをしごいて送液するローラポンプであるとともに、上記制御手段1aによって作動を制御され、患者から透析器2へ血液を送液することが可能となっている。
上記静脈側通路12は、その一端が上記透析器2に接続されるとともに他端に患者の血管に穿刺される穿刺針12aが設けられており、上記透析器2から順に、ドリップチャンバ16および静脈側通路12を閉鎖する排出側閉塞手段としてのクランプ17が配置され、ドリップチャンバ16には圧力計16aが設けられている。
【0011】
そして、上記動脈側通路11に設けたドリップチャンバ15には、圧力計15aとともに該ドリップチャンバ15内の液面高さを調整するための液面調整手段18が設けられている。
この液面調整手段18は、ドリップチャンバ15の上部に接続されるとともに2方向に分岐したエア通路19と、分岐した一方のエア通路19に設けられたエアポンプPと、分岐した他方のエア通路19に設けられた開閉弁V0と、分岐したエア通路19の端部に設けられて空気を浄化するフィルタFとを備えている。
上記液面調整手段18は、透析治療を始める前にあらかじめ上記血液回路3を生理食塩液等のプライミング液で満たすプライミングを行う際に使用され、プライミング時に上記ドリップチャンバ15内にプライミング液が充満されると、その後上記エアポンプPを作動させて、上記フィルタFを通過した浄化された空気をドリップチャンバ15内に流入させ、ドリップチャンバ15の液面を所定の高さに調節するようになっている。
そして、後述する透析器2の漏れを検査する際には、上記開閉弁V0を開放することで血液回路3を大気開放し、血液回路3に上記フィルタFを介して浄化された空気を流入させるようになっており、本実施例では液面調整手段18は大気開放手段を構成するようになっている。
【0012】
透析液回路4は、第1透析液チャンバ21または第2透析液チャンバ22から新鮮な透析液を透析器2に供給する透析液供給通路23と、透析器2を通過した使用済みの透析液を第1透析液チャンバ21または第2透析液チャンバ22に回収する透析液回収通路24とから構成され、これら通路はシリコーン製のチューブで構成されている。
また、上記第1、第2透析液チャンバ21、22には、図示しない透析液製造装置から供給される新鮮な透析液の流通する給液通路25と、使用済みの透析液を排出するための排液通路26とが接続されている。
第1透析液チャンバ21および第2透析液チャンバ22は同形となっており、内部が2枚のダイアフラムによって、新鮮な透析液を供給するための供給室21a,22aと、使用済みの透析液を回収するための回収室21b、22bと、これら供給室21a,22aと回収室21b、22bとの間に形成された中間室21c、22cとに区画されている。
このうち上記中間室21c、22cの内部にはそれぞれシリコーンオイルが充填されており、このシリコーンオイルは中間室21cと中間室22cとの間に設けられたシリコーンオイルポンプ27によって中間室21cと中間室22cとの間を相互に送液され、これにより中間室21c、22cの容積が増減されるようになっている。このような第1透析液チャンバ21、第2透析液チャンバ22、シリコーンオイルポンプ27により、血液から除水する除水手段が構成されている。
上記給液通路25には上記透析液を送液する給液ポンプ31が設けられるとともに、該給液ポンプ31の下流側で2方向に分岐して上記第1、第2透析液チャンバ21、22の上記供給室21a,22aに接続され、分岐した通路にはそれぞれ制御手段1aの制御によって開閉される給液弁V1,V2が設けられている。
【0013】
上記透析液供給通路23は、その上流部分が2方向に分岐してそれぞれ上記第1、第2透析液チャンバ21、22の供給室21a,22aに接続され、下流部分が上記透析器2に接続されており、上記分岐部分にはそれぞれ制御手段1aの制御によって開閉される供給弁V3,V4が設けられている。
また透析液供給通路23には、透析液の有害成分を除去する透析液フィルタF1と、上記制御手段1aの制御によって開閉される閉塞手段としての第1開閉弁V5と、上記透析液フィルタF1と上記第1開閉弁V5との間に位置する開放手段43とが設けられている。
上記透析液フィルタF1の一次側には、上記透析液供給通路23と透析液回収通路24とを連通させる第1バイパス通路42が接続され、該第1バイパス通路42には上記制御手段1aの制御によって開閉される第2開閉弁V6が設けられている。
透析治療中において、上記第1開閉弁V5は開放されるとともに上記第2開閉弁V6は閉鎖されているが、例えば図示しない濃度センサによって濃度の不良が検出された場合には、上記第1開閉弁V5を閉鎖して第2開閉弁V6を開放することにより、不良透析液を透析器2を通過させずに、第1バイパス通路42を介して透析液回収通路24へと送液することが可能となっている。
また上記第1開閉弁V5および第2開閉弁V6は、後述する透析器2の漏れ検査を行う際には閉鎖されるようになっており、透析液の流通を阻止するようになっている。
【0014】
上記開放手段43は、透析液供給通路23における上記透析液フィルタF1と上記第1開閉弁V5との間に接続された開放通路44に、上記制御手段1aの制御によって開閉される第3開閉弁V7と、透析液の流出を阻止する逆止弁45と、流入する大気を清浄化するフィルタFとを備えている。
上記開放手段43は、上記透析液フィルタF1の漏れの検査に使用され、透析治療を行う前に、上記上記第1開閉弁V5を閉鎖して第2開閉弁V6および上記第3開閉弁V7を開放する。
すると、上記開放通路44を介して透析液回路4への大気の流入が許容され、上記透析液フィルタF1の2次側から1次側への大気の流入の有無により、透析液フィルタF1の漏れを検査することができる。ここで、透析液回路4に流入する大気はフィルタFによって清浄化されており、また上記逆止弁45は透析液の流出を阻止するようになっている。
【0015】
上記透析液回収通路24は、上流部分が上記透析器2に接続されるとともに、下流部分が2方向に分岐してそれぞれ上記第1、第2透析液チャンバ21、22の回収室21b、22bに接続され、この分岐部分にはそれぞれ制御手段1aの制御によって開閉される回収弁V8,V9が設けられている。
また透析液回収通路24には、上記透析器2から順に、透析液回路4内の圧力を測定する圧力測定手段としての圧力センサ51と、透析液を送液する透析液ポンプ52と、透析液内の気体を脱気する脱気槽53とが設けられ、該脱気槽53と排液通路26との間には第2バイパス通路54が配設されている。
上記圧力センサ51は、透析液回収通路24およびこれと連通する透析器2内の通路2cの液圧を測定するようになっており、透析治療中において、制御手段1aは圧力センサ51より入力された測定結果とあらかじめ設定された設定値と比較し、測定結果が所定の範囲を逸脱した場合には所要の警報を出力するようになっている。
さらに本実施例では、上記透析器2の漏れを検出するため、上記制御手段1aには上記圧力センサ51の測定結果に基づいて上記透析器2の濾過膜に漏れが有るか否かを判定する判定手段55が設けられている。
上記第2バイパス通路54には上記制御手段1aの制御によって開閉される第5開閉弁V10が設けられており、透析治療中はこの第5開閉弁V10は閉鎖され、後述する透析器2の漏れを検査する際には、開放されて上記第2バイパス通路54内に透析液を流通させるようになっている。
【0016】
上記排液通路26は、その上流部分が2方向に分岐してそれぞれ上記第1、第2透析液チャンバ21、22の回収室21b、22bに接続され、下流部分は医療機関に設備された図示しない排液管に接続され、上記分岐部分にはそれぞれ制御手段1aの制御によって開閉される排液弁V11,V12が設けられている。
このような構成により次のように透析動作を行う。すなわち上記透析液回路4に対して、上記制御手段1aは第1透析液チャンバ21に隣接する給液弁V1と排液弁V11を開放するとともに供給弁V3と回収弁V8を閉鎖することで、供給室21aには新鮮な透析液が流入し、回収室21bからは同量の使用済み透析液が排液通路26へと排出される。
このときシリコーンオイルポンプ27を作動させず、中間室21cのシリコーンオイルの量に変更がなければ、供給室21aに流入する透析液と、回収室21bから排出される透析液の量とは同じ量となる。
一方、制御手段1aは上記第2透析液チャンバ22に隣接する供給弁V4と回収弁V9を開放するとともに給液弁V2と排液弁V12を閉鎖することで、回収室22bには上記透析液ポンプ52によって送液された使用済みの透析液が流入し、供給室22aからは同量の新鮮な透析液が透析液供給通路23に供給される。
その後、上記制御手段1aが上記給液弁V1,V2、供給弁V3,V4、回収弁V8,V9、排液弁V11,V12を交互に開閉することで、第1、第2透析液チャンバ21、22からの新鮮な透析液は透析液供給通路23を介して透析器2へと供給され、透析器2を通過した使用済みの透析液は上記透析液回収通路24を介して第1、第2透析液チャンバ21、22に回収される。
【0017】
以下、上記構成を有する血液透析装置1における透析器2の検査方法について説明する。ここでは、特に新品の透析器2を血液透析装置1に装着して、該透析器2の漏れの有無について検査を行う際の操作方法を説明する。
最初に、操作者は新品の透析器2を血液透析装置1の図示しないホルダに支持させて、この透析器2に新品の血液回路3を接続するとともに、該血液回路3を血液ポンプ14やクランプ13、17に装着する。
次に上記血液回路3に対して、クランプ13,17を用いて動脈側通路11および静脈側通路12を閉塞し、さらに上記動脈側通路11のドリップチャンバ15に接続した液面調整手段18の開閉弁V0を開放する。
これにより、血液回路3の内部には上記エア通路19を介して上記フィルタFを通過した浄化された空気のみが流入可能な状態となり、血液回路3の内部に汚染された空気や細菌等が侵入してしまうことを防止している。
【0018】
続いて、透析器2に透析液回路4を接続し、透析器2に透析液を供給して透析器2内の通路2cを透析液で満たす。この状態で上記制御手段1aは、上記給液弁V1,V2、供給弁V3,V4、回収弁V8,V9、排液弁V11,V12をすべて閉鎖させる。
さらに上記制御手段1aは上記透析液供給通路23に設けた上記閉塞手段としての第1開閉弁V5と、第1バイパス通路42に設けた第2開閉弁V6とを閉鎖し、さらに上記透析液回収通路24に設けた透析液ポンプ52を作動させるとともに、上記第2バイパス通路54に設けた第5開閉弁V10を開放する。
ここで、図2における透析液回路4の太線部分は、上記動作によって透析液が流動する経路を示している。
具体的に説明すると、上記第1、第2透析液チャンバ21、22に隣接する回収弁V8,V9は、閉鎖されており、透析液ポンプ52によって送液された透析液は上記第1、第2チャンバ21、22の回収室21b、22bには流入せず、脱気槽53に連結された第2バイパス通路54を通過して排液通路26より排出される。
【0019】
上記透析液ポンプ52により所定量の排液を行うと、制御手段1aは、上記図2に示す状態から、透析液ポンプ52の作動を停止するとともに、第5開閉弁V10を閉鎖し排液弁V11および回収弁V9を開放する。
続いて制御手段1aは、上記シリコーンオイルポンプ27を作動させて、第2透析液チャンバ22の中間室22cから第1透析液チャンバ21の中間室21cへと所定量のシリコーンオイルを移動させる。
すると、上記第2透析液チャンバ22の中間室22cの容積が減少するため、回収室22bには容積の減少分だけ透析液が透析液回収通路24より流入し、続いて、排液弁V11、回収弁V9を閉鎖し、回収弁V8、排液弁V12を開放して、シリコーンオイルポンプ27を作動させて中間室21cから中間室22cへシリコーンオイルを移動させ、これを繰り返すことにより透析液回路4の内部の圧力が所定の負圧となる。
【0020】
一方、上記血液回路3は上記開閉弁V0が開放されていることにより大気開放されて内部は大気圧を維持している。これにより上記透析器2の内部では、通路2cが負圧、中空糸2bの内部が大気圧となって、これらの間に差圧が発生した状態となっている。
ここで、上記透析器2に用いられる中空糸2bは、液体を透過させる一方で気体は通過させない性質を有していることから、上記中空糸2bに漏れがない場合、上記差圧が発生しても中空糸2b内の空気は通路2cに移動することはなく、圧力センサ51で測定される圧力に変動が生じることはない。
逆に、上記中空糸2bに漏れがある場合には、上記差圧によって中空糸2b内の空気が通路2cに移動してしまうため、透析液回路4の圧力は負圧から大気圧へと変動することとなる。
上記透析液回路4に設けた圧力センサ51では、該透析液回路4の圧力変動を監視しており、上記判定手段55は、所定時間の間に圧力上昇の変動がない場合には透析器2の漏れがないものと判定し、圧力上昇の変動がある場合には透析器2の漏れがあるものと判断する。そしてこの判定結果に基づいて上記制御手段1aは、透析器2の良否の判定結果を表示する。
このような透析器2の漏れ検査は、血液回路3および中空糸2bの内部を生理食塩液等のプライミング液で満たすプライミング工程の前の内部が空の状態で行い、検査が終了すると、従来公知の方法によってプライミングを行い、その後血液回路3を患者に接続して透析治療を行うことが可能となる。
【0021】
上記実施例にかかる透析器2の検査方法によれば、上記透析液回路4に透析液を満たすとともに上記血液回路3を大気開放した状態で、上記透析液回路4の内部を負圧にするとともに上記圧力センサ51により該透析液回路4の圧力を測定することで、透析器2における中空糸2bの漏れを検出することができる。
このとき、透析液回路4の内部は負圧となるものの、血液回路3の内部は大気圧が維持されるため、血液回路3の内部が昇圧されることはなく、血液回路3を構成するチューブが膨張して接続が外れたり漏れが生じることはない。
また、上記透析液回路4を負圧にして上記血液回路3との間に差圧を発生させることは、上記除水手段によって透析治療中にも発生することであり、透析器2の使用態様として想定されていることであるから、上記検査によって中空糸2bが損傷することはない。
さらに、血液回路3を大気に開放させる際、動脈側通路11、静脈側通路12の先端により外気と連通させることもできるが、本実施例では、上記動脈側通路11および静脈側通路12を閉塞手段としてのクランプ13,17によって閉塞し、ドリップチャンバ15に設けた液面調整手段18を構成するフィルタFを介して外気と連通させることから、血液回路3が当該外気によって汚染されることはない。
そして、上記透析液回路4を負圧にする際に、あらかじめ比較的大流量の上記透析液ポンプ52によって透析液回路4内の液を排出させ、その後上記除水手段としてのシリコーンオイルポンプ27を用いて減圧させることで、透析液回路4を負圧にする時間を短縮することができる。
つまり、上記透析液ポンプ52は透析液回路4の内部を負圧にすることはできないものの、送液量が上記シリコーンオイルポンプ27の送液量よりも大きいことから、透析液回路4の内部から速やかに排液することが可能であり、効率的に透析液回路4を負圧にすることが可能となっている。
【0022】
図4は第2実施例にかかる血液透析装置1の液回路を説明する図となっている。
本実施例における血液透析装置1は、上記第1実施例の血液透析装置1に対し、上記透析液回路4に設けた第1、第2透析液チャンバ21、22の構成と、上記除水手段として透析液回収通路24に除水ポンプ61を設けた点で異なっている。
また第2実施例の血液透析装置1はいわゆる個人用透析装置となっており、上記給液通路25には浄水が供給され、この給液通路25の途中にはA液を供給するA液供給手段とB液を供給するB液供給手段とが接続されている。
以下具体的に説明すると、上記第1、第2透析液チャンバ21、22は、それぞれ1枚のダイアフラムによってそれぞれ供給室21a,22aと回収室21b、22bとに区画されており、上記第1実施例における中間室21c、22cは形成されていない。
一方、上記第1実施例と同様、上記供給室21a,22aにはそれぞれ透析液供給通路23および給液通路25が接続され、また回収室21b、22bにはそれぞれ透析液回収通路24および排液通路26が接続されている。そしてこれらの通路にはそれぞれ上記制御手段1aによって開閉される上記給液弁V1,V2、供給弁V3,V4、回収弁V8,V9、排液弁V11,V12が設けられている。
このような構成により、上記給液弁V1,V2、供給弁V3,V4、回収弁V8,V9、排液弁V11,V12を作動させると、第1実施例と同様、透析器2への新鮮な透析液の供給ならびに透析器2からの使用済み透析液の回収を行うことが可能となっている。
一方、上記除水ポンプ61は、透析液回収通路24と排液通路26との間に配設された除水通路62に設けられており、透析治療中にこの除水ポンプ61を作動させることで、血液から透析液へと除水することが可能となっている。
なお、この除水ポンプ61についても、上記第1実施例におけるシリコーンオイルポンプ27と同様の、送液量の小さいシリンダを備えた容積型のピストンポンプが使用されている。
それ以外の構成については、上記第1実施例に記載した構成と略同じであるので、詳細な説明は省略する。
【0023】
この第2実施例の構成を有する血液透析装置1においても、上記第1実施例同様の手順により透析器2における漏れ検査を行うことが可能となっている。
まず、上記第1実施例と同じ手順により、血液回路3をクランプ13,17によって閉塞するとともに、液面調整手段18の開閉弁V0を開放し、これにより上記フィルタFを介して清浄化された大気が血液回路3に流入可能となる。
一方、透析液回路4では、上記透析液供給通路23の第1開閉弁V5と、第1バイパス通路42の第2開閉弁V6とを閉塞した状態で、第5開閉弁V10を開放し上記透析液ポンプ52を作動させて透析液回路4から排液をする。
その後、透析液ポンプ52を停止させ上記除水ポンプ61を作動させると、図4の太線で示す経路を上記透析液が流通して透析液回路4が負圧となり、第1実施例同様、透析器2の内部では通路2cと中空糸2bの内部との間で差圧が発生することとなる。
そして、上記制御手段1aが上記圧力センサ51により透析液回路4の圧力の変動を監視し、これに基づいて判定手段55により圧力上昇の変動がない場合には透析器2に漏れがなく、圧力上昇の変動があった場合には漏れが存在するものと判定する。
【0024】
なお、上記実施例において、血液回路3を大気開放するために上記動脈側通路11に設けたドリップチャンバ15の液面調整手段18を利用しているが、これに限らず別途フィルタFを備えた大気開放手段を血液回路のいずれかの位置に接続することも可能である。
【符号の説明】
【0025】
1 血液透析装置 2 透析器
3 血液回路 4 透析液回路
11 動脈側通路(血液供給通路) 12 静脈側通路(血液排出通路)
13 クランプ(供給側閉塞手段) 17 クランプ(排出側閉塞手段)
18 液面調整手段(大気開放手段)19 エア通路(大気開放通路)
23 透析液供給通路 24 透析液回収通路
27 シリコーンオイルポンプ(除水手段)
51 圧力センサ(圧力測定手段) 52 透析液ポンプ
V5 第1開閉弁(開閉手段) V6 第2開閉弁(開閉手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透析液を流通させる透析液回路と血液を流通させる血液回路とが接続された透析器を備える血液透析装置における透析器の検査方法において、
上記透析液回路における圧力を測定する圧力測定手段を設け、
上記透析液回路に液が貯溜され、かつ、上記血液回路を大気に開放させた状態で、上記透析液回路内の液を排液させて内部を負圧にするとともに、上記圧力測定手段により該透析液回路の圧力を測定して、
該透析液回路における圧力の変動がない場合には透析器の濾過膜に異常がなく、圧力の変動がある場合には透析器の濾過膜に漏れがあるものと判断することを特徴とする血液透析装置における透析器の検査方法。
【請求項2】
上記血液回路に大気を浄化するフィルタを備えた大気開放通路を接続し、
上記血液回路の両端部からの大気の流入を阻止した状態で、上記大気開放通路により血液回路を大気に開放させることを特徴とする請求項1に記載の血液透析装置における透析器の検査方法。
【請求項3】
上記透析液回路は、透析器に透析液を供給する透析液供給通路と、透析器から透析液を排出させる透析液排出通路から構成され、さらに上記透析液供給通路を開閉させる開閉手段と、上記透析液排出通路から液を排液させる排液手段とを設け、
上記開閉手段により透析液供給通路を閉鎖させた状態で、上記排液手段により透析液排出通路から液を排液させて、上記透析液回路の内部を負圧にすることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれかに記載の血液透析装置における透析器の検査方法。
【請求項4】
上記排液手段は、上記透析液排出通路に設けた送液ポンプと、透析器を介して血液から除水を行うための除水手段とから構成され、
初めに上記送液ポンプを作動させて上記透析液排出通路から液を排出させ、次に上記除水手段を作動させて透析液回路内の圧力を所定圧力まで低下させることを特徴とする請求項3に記載の血液透析装置における透析器の検査方法。
【請求項5】
透析液を流通させる透析液回路と血液を流通させる血液回路とが接続された透析器を備える血液透析装置において、
上記透析器に透析液を供給する透析液供給通路と、透析器から透析液を排出させる透析液排出通路と、該透析液回路における圧力を測定する圧力測定手段と、上記透析液供給通路を開閉する開閉手段と、上記透析液排出通路から液を排液させる排液手段と、上記圧力測定手段の測定結果が入力されるとともに、上記排液手段および開閉手段の作動を制御する制御手段とを備え、
さらに上記制御手段は、上記圧力測定手段の測定結果に基づき、圧力の変動がない場合には透析器の濾過膜に異常がなく、圧力の変動がある場合には透析器の濾過膜に漏れがあるものと判定する判定手段を備え、
上記制御手段は、上記透析液回路に液が貯溜された状態で上記透析液供給通路を閉鎖させ、さらに、血液回路が大気に開放された状態で上記透析液回路内の液を排液させて上記透析液回路内を負圧にし、この状態で圧力測定手段の測定結果を入力して、
上記判定手段は上記透析液回路内の圧力に基づいて透析器の濾過膜の漏れの有無を検査することを特徴とする血液透析装置。
【請求項6】
上記血液回路は、透析器に血液を供給する血液供給通路と、透析器から血液を排出させる血液排出通路とから構成され、大気を浄化するフィルタと開閉弁とを有する大気開放通路と、血液供給通路を閉塞する供給側閉塞手段と、血液排出通路を閉塞する排出側閉塞手段とを備え、
大気開放通路を開放させるとともに血液供給通路および血液排出通路を閉塞させて、血液回路を大気に開放された状態とすることを特徴とする請求項5に記載の血液透析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−196301(P2012−196301A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−61989(P2011−61989)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【出願人】(000135036)ニプロ株式会社 (583)
【出願人】(000253019)澁谷工業株式会社 (503)
【Fターム(参考)】