説明

血液透析装置及び血液透析方法

【課題】推定ドライウェイトがドライウェイトに近似した適正な透析治療時の経過(時系列データ)を複数記憶しておき、その後の透析治療過程において、ドライウェイトに近似する適正な治療結果となるべき経過となっているか否かを判別することが容易とされる血液透析装置及び血液透析方法を提供する。
【解決手段】推定ドライウェイトに基づいた除水量に従って除水して透析治療を行う透析処理手段と、該透析処理手段による透析治療過程で体外循環する血液のΔBVを時系列的に複数時点で測定して時系列データを得るΔBV検出手段9と、透析処理手段による透析治療後、推定ドライウェイトがドライウェイトに近似しているか否かを判定して当該透析治療の適否を判定する判定手段10と、該判定手段10で適正な透析治療であったと判定された時系列データを複数記憶し得る記憶手段11とを具備したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の血液を体外循環させつつ血液透析処理及び除水を行うための血液透析装置及び血液透析方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、透析治療においては、患者の血液を体外循環させるための血液回路と、該血液回路の途中に接続されたダイアライザと、しごき型の血液ポンプと、ダイアライザとの間で透析液の導入又は導出を行って血液透析処理を行いつつ除水可能な透析装置本体とを有した血液透析装置が用いられる。尚、血液回路は、先端に動脈側穿刺針が取り付けられる動脈側血液回路と、先端に静脈側穿刺針が取り付けられる静脈側血液回路とから主に構成されている。
【0003】
そして、動脈側及び静脈側の穿刺針を患者に穿刺した状態で血液ポンプを駆動させると、動脈側穿刺針から患者の血液が採取され、その血液が、動脈側血液回路、ダイアライザ及び静脈側血液回路を経て、静脈側穿刺針から患者の体内に戻るようになっている。かかるダイアライザの内部には、血液浄化膜としての複数の中空糸が配設されており、それぞれの中空糸の内部に血液を流通させるとともに、当該中空糸の外部(即ち、中空糸の外周面と筐体の内周面との間)に透析装置本体から供給される所定濃度の透析液を流通させ、中空糸内部を通過する血液の老廃物等が血液浄化膜を透過して透析液内に排出されるようになっている。
【0004】
これにより、老廃物等が排出されて清浄化された血液が静脈側血液回路を介して患者の体内に戻るようになっている。一方、透析装置本体内には、患者の血液から水分を取り除くための除水ポンプが配設されており、透析治療時に血液浄化膜を介して除水が行われるように構成されている。かかる除水ポンプによる除水時において除去すべき水分量(除水速度)は、除水ポンプの駆動を制御することにより行われる。
【0005】
然るに、除水すべき量(水分除去量)が多い場合、除水速度を速くする必要があるため、患者の健康状態によっては、しばしば低血圧などのショック症状を引き起こす可能性がある。かかるショック症状の前兆を把握すべく、従来、透析治療中における患者の血液のヘマトクリット値(血液中の血球成分の体積分率)を検出し、このヘマトクリット値から患者の循環血液量の変化率(ΔBV)を算出して監視する装置が提案されている。
【0006】
即ち、通常、除水によって患者の循環血液量の変化率(ΔBV)は治療時間の経過に伴い低下するのであるが、急激なΔBVの低下が生じた場合には低血圧などのショック症状が生じる前兆であると予想され、当該急激なΔBVの低下時に何らかの処置(補液処置や透析治療の停止等)を施せばショック症状を未然に防止することが可能と考えられるのである。しかして、透析治療中において、患者のヘマトクリット値を逐次測定し、そのヘマトクリット値から患者の循環血液量の変化率(ΔBV)を検出し得る透析治療装置が例えば特許文献1にて開示されている。
【0007】
ところで、上記除水ポンプによる除水量は、患者の体重がドライウェイト(透析療法によって細胞外液量が是正された時点の体重)に近づくように予め設定されるべきである。すなわち、医師等医療従事者の経験等により患者のドライウェイトが予め推定され(このように推定されたドライウェイトを推定ドライウェイトとよぶ)、その推定ドライウェイトとなるように除水量が設定されるのである。そして、推定ドライウェイトが真のドライウェイト(これを単にドライウェイトとよぶ)と近似しているか否かは、例えば循環血漿量変化率(ΔCPV%)を患者の体重変化率(ΔBW%)で除する演算式にて得られるPWI(プラズマ・ウォーター・インデックス)なる指標が所定の範囲内の値であるか否かで把握することができる。
【特許文献1】特開2004−97781号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記従来の血液透析装置においては、以下の如き問題があった。
上記従来のものは、PWIなる指標に基づき推定ドライウェイトがドライウェイトに近似した適正な透析治療であったか否かが判別できるものの、そのPWIの適正値は、透析時間経過とともに変化する可能性があり、或いは透析終了時のPWIの適正値も透析条件によって変化し得るため、治療が終了した後に初めて適正であったか否かが判別できるものとされている。従って、透析治療過程においては、推定ドライウェイトがドライウェイトに近似した適正な経過となっているか否かが判別できないという問題があった。
【0009】
然るに、比較的長期に亘って透析治療を行っている安定維持透析患者においては、通常、循環血液量変化率ΔBVの如き透析治療過程で体外循環する血液の濃度に係るパラメータを時系列的に複数時点で測定することにより得られた時系列データ(特に標準化したもの)については、再現性があることが分かっている。しかして、本出願人は、時系列データの再現性を利用することにより、透析治療過程における透析治療の適否をリアルタイムに把握することができる血液透析装置を検討するに至った。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、推定ドライウェイトがドライウェイトに近似した適正な透析治療時の経過(時系列データ)を複数記憶しておき、その後の透析治療過程において、ドライウェイトに近似する適正な治療結果となるべき経過となっているか否かを判別することが容易とされる血液透析装置及び血液透析方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1記載の発明は、体外循環する患者の血液に対して血液透析処理しつつ推定ドライウェイトに基づいた除水量に従って除水して透析治療を行う透析処理手段と、該透析処理手段による透析治療過程で体外循環する血液の濃度に係るパラメータを時系列的に複数時点で測定して時系列データを得る検出手段と、前記透析処理手段による透析治療後、前記推定ドライウェイトがドライウェイトに近似しているか否かを判定して当該透析治療の適否を判定する判定手段と、該判定手段で適正な透析治療であったと判定された時系列データを複数記憶し得る記憶手段とを具備したことを特徴とする。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の血液透析装置において、前記判定手段は、PWIなる指標の算出に基づき、前記推定ドライウェイトがドライウェイトに近似しているか否かを判定するものであることを特徴とする。
【0013】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の血液透析装置において、前記記憶手段で記憶された複数の時系列データに基づき、適正な透析治療過程において予想される時系列データの適正推移を算出する算出手段を具備したことを特徴とする。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の血液透析装置において、前記算出手段は、体外循環する血液の濃度に係るパラメータの測定時点毎における下限値から上限値までの所定幅を持った適正推移範囲を算出することを特徴とする。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項3又は請求項4記載の血液透析装置において、前記透析処理手段による透析治療を行う際、前記算出手段にて算出された適正推移又は適正推移範囲をグラフとして表示しつつ前記検出手段にて測定されたパラメータを当該グラフに重ね合わせてリアルタイムに表示することを特徴とする。
【0016】
請求項6記載の発明は、請求項3〜請求項5の何れか1つに記載の血液透析装置において、前記透析処理手段による透析治療を行う際、前記検出手段にて検出されたパラメータが前記算出手段にて算出された適正推移又は適正推移範囲から逸脱したことを条件として、所定の報知を行うことを特徴とする。
【0017】
請求項7記載の発明は、請求項1〜請求項6の何れか1つに記載の血液透析装置において、前記記憶手段で記憶された時系列データに所定の演算を行って標準化し、患者の体重又は除水量など特定患者固有の条件に関わらない普遍的な時系列データとすることを特徴とする。
【0018】
請求項8記載の発明は、請求項1〜請求項7の何れか1つに記載の血液透析装置において、前記検出手段で検出されるパラメータは、体外循環する血液の濃度から算出される循環血液量変化率(ΔBV)であることを特徴とする。
【0019】
請求項9記載の発明は、体外循環する患者の血液に対して血液透析処理しつつ推定ドライウェイトに基づいた除水量に従って除水して透析治療を行い、その透析治療過程で体外循環する血液の濃度に係るパラメータを時系列的に複数時点で測定して時系列データを得るとともに、当該透析治療後、前記推定ドライウェイトがドライウェイトに近似しているか否かを判定して当該透析治療の適否を判定し、適正であると判定された時系列データを複数記憶することを特徴とする。
【0020】
請求項10記載の発明は、請求項9記載の血液透析方法において、PWIなる指標の算出に基づき、前記推定ドライウェイトがドライウェイトに近似しているか否かを判定することを特徴とする。
【0021】
請求項11記載の発明は、請求項9又は請求項10記載の血液透析方法において、記憶された複数の時系列データに基づき、適正な透析治療過程において予想される時系列データの適正推移を算出することを特徴とする。
【0022】
請求項12記載の発明は、請求項11記載の血液透析方法において、体外循環する血液の濃度に係るパラメータの測定時点毎における下限値から上限値までの所定幅を持った適正推移範囲を算出することを特徴とする。
【0023】
請求項13記載の発明は、請求項11又は請求項12記載の血液透析方法において、透析治療を行う際、算出された適正推移又は適正推移範囲をグラフとして表示しつつ測定されたパラメータを当該グラフに重ね合わせてリアルタイムに表示することを特徴とする。
【0024】
請求項14記載の発明は、請求項11〜請求項13の何れか1つに記載の血液透析方法において、透析治療を行う際、検出されたパラメータが算出された適正推移又は適正推移範囲から逸脱したことを条件として、所定の報知を行うことを特徴とする。
【0025】
請求項15記載の発明は、請求項9〜請求項14の何れか1つに記載の血液透析方法において、記憶された時系列データに所定の演算を行って標準化し、患者の体重又は除水量など特定患者固有の条件に関わらない普遍的な時系列データとすることを特徴とする。
【0026】
請求項16記載の発明は、請求項9〜請求項15の何れか1つに記載の血液透析方法において、検出されるパラメータは、体外循環する血液の濃度から算出される循環血液量変化率(ΔBV)であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
請求項1及び請求項9の発明によれば、透析治療後、推定ドライウェイトがドライウェイトに近似しているか否かを判定して当該透析治療の適否を判定し、適正であると判定された時系列データを複数記憶するので、その後の透析治療過程において、ドライウェイトに近似する適正な治療結果となるべき経過となっているか否かを判別することが容易とされる。
【0028】
請求項2及び請求項10の発明によれば、PWIなる指標の算出に基づき、前記推定ドライウェイトがドライウェイトに近似しているか否かを判定するので、より簡易且つ確実に推定ドライウェイトがドライウェイトに近似しているか否かを判定して当該透析治療の適否を判定することができる。
【0029】
請求項3及び請求項11の発明によれば、記憶された複数の時系列データに基づき、適正な透析治療過程において予想される時系列データの適正推移を算出するので、かかる適正推移とその後の透析治療過程において検出されるパラメータ(体外循環する血液の濃度に係るパラメータ)との比較を行えば、推定ドライウェイトがドライウェイトに近似しているか否かの判別をより容易に行わせることができる。
【0030】
請求項4及び請求項12の発明によれば、体外循環する血液の濃度に係るパラメータの測定時点毎における下限値から上限値までの所定幅を持った適正推移範囲を算出するので、その後の透析治療過程において検出されるパラメータ(体外循環する血液の濃度に係るパラメータ)が当該適正範囲内であるか否かを認識することができる。
【0031】
請求項5及び請求項13の発明によれば、透析治療を行う際、算出された適正推移又は適正推移範囲をグラフとして表示しつつ測定されたパラメータを当該グラフに重ね合わせてリアルタイムに表示するので、透析治療の過程において、推定ドライウェイトがドライウェイトに近似した適正な経過となっているか否かの判別をより視覚的に行わせることができるとともに、測定されたパラメータが上限値又は下限値を超える兆候を察知することができる。
【0032】
請求項6及び請求項14の発明によれば、透析治療を行う際、検出されたパラメータが算出された適正推移又は適正推移範囲から逸脱したことを条件として、所定の報知を行うので、医療従事者の注意を促すことができる。
【0033】
請求項7及び請求項15の発明によれば、記憶された時系列データに所定の演算を行って標準化し、患者の体重又は除水量など特定患者固有の条件に関わらない普遍的な時系列データとするので、特定の患者のみならず、多数の透析治療患者の時系列データに基づいて、推定ドライウェイトがドライウェイトに近似した適正な経過となっているか否かの判別を行わせることができる。また、特定の患者のみに適用する場合であっても、推定ドライウェイトがドライウェイトに近似した適正な経過となっているか否かの判別を行うにあたり、透析治療毎に異なる患者の前体重の変化や除水量の変化等の影響を回避することができる。
【0034】
請求項8及び請求項16の発明によれば、検出されるパラメータは、体外循環する血液の濃度から算出される循環血液量変化率(ΔBV)であるので、透析治療過程において、推定ドライウェイトがドライウェイトに近似した適正な循環血液量変化率の経過となっているか否かの判別を容易に行わせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る血液透析装置は、患者の血液を体外循環させつつ血液透析処理及び除水を行うためのもので、図1に示すように、患者の血液を体外循環させるための血液回路1と、該血液回路1に接続されて血液透析処理を行うためのダイアライザ2と、該ダイアライザ2に接続されて透析液を供給しつつ除水する透析装置本体6とから主に構成されている。尚、血液回路1は、同図に示すように、可撓性チューブから成る動脈側血液回路1a及び静脈側血液回路1bから主に構成されており、これら動脈側血液回路1aと静脈側血液回路1bの間にダイアライザ2が接続されている。
【0036】
動脈側血液回路1aには、その先端に動脈側穿刺針aが接続されているとともに、途中にしごき型の血液ポンプ3、及びヘマトクリットセンサ5が配設されている。一方、静脈側血液回路1bには、その先端に静脈側穿刺針bが接続されているとともに、途中に除泡用のドリップチャンバ4が接続されている。
【0037】
ヘマトクリットセンサ5は、例えばLED等の発光素子及びフォトダイオード等の受光素子を備え、発光素子から血液に所定波長の光を照射するとともに、その透過した光或いは反射した光を受光素子にて受光することにより、血液回路1内を流れて体外循環する患者の血液の濃度を示すヘマトクリット値を測定するものである。即ち、ヘマトクリット値とは、血液の濃度を示す指標であり、具体的には、全血に占める赤血球の容積率で表されるものである。
【0038】
そして、動脈側穿刺針a及び静脈側穿刺針bを患者に穿刺した状態で、血液ポンプ3を駆動させると、患者の血液は、動脈側血液回路1aを通ってダイアライザ2に至り、該ダイアライザ2によって血液浄化が施され、ドリップチャンバ4で除泡がなされつつ静脈側血液回路1bを通って患者の体内に戻る。即ち、患者の血液を血液回路1にて体外循環させつつダイアライザ2にて浄化するのである。
【0039】
ダイアライザ2は、その筐体部に、血液導入ポート2a、血液導出ポート2b、透析液導入ポート2c及び透析液導出ポート2dが形成されており、このうち血液導入ポート2aには動脈側血液回路1aの基端が、血液導出ポート2bには静脈側血液回路1bの基端がそれぞれ接続されている。また、透析液導入ポート2c及び透析液導出ポート2dは、透析装置本体6から延設された透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2とそれぞれ接続されている。
【0040】
ダイアライザ2内には、複数の中空糸が収容されており、該中空糸内部が血液の流路とされるとともに、中空糸外周面と筐体部の内周面との間が透析液の流路とされている。中空糸には、その外周面と内周面とを貫通した微少な孔(ポア)が多数形成されて中空糸膜を形成しており、該膜を介して血液中の不純物等が透析液内に透過し得るよう構成されている。
【0041】
一方、透析装置本体6は、図2に示すように、透析液導入ラインL1及び透析液排出ラインL2に跨って形成された複式ポンプPと、透析液排出ラインL2において複式ポンプPを迂回して接続されたバイパスラインL3と、該バイパスラインL3に接続された除水ポンプ8とから主に構成されている。そして、透析液導入ラインL1の一端がダイアライザ2(透析液導入ポート2c)に接続されるとともに、他端が所定濃度の透析液を調製する透析液供給装置7に接続されている。
【0042】
また、透析液排出ラインL2の一端は、ダイアライザ2(透析液導出ポート2d)に接続されるとともに、他端が図示しない廃液手段と接続されており、透析液供給装置7から供給された透析液が透析液導入ラインL1を通ってダイアライザ2に至った後、透析液排出ラインL2及びバイパスラインL3を通って廃液手段に送られるようになっている。
【0043】
除水ポンプ8は、ダイアライザ2中を流れる患者の血液から水分を除去するためのものである。即ち、かかる除水ポンプ8を駆動させると、複式ポンプPが定量型であるため、透析液導入ラインL1から導入される透析液量よりも透析液排出ラインL2から排出される液体の容量が多くなり、その多い容量分だけ血液中から水分が除去されるのである。尚、かかる除水ポンプ8以外の手段(例えば所謂バランシングチャンバ等を利用するもの)にて患者の血液から水分を除去するようにしてもよい。尚、複式ポンプP及び除水ポンプ9は、体外循環する患者の血液に対し血液透析処理及び除水を行うための透析処理手段を構成する。
【0044】
一方、医師等医療従事者は、透析治療開始前に推定ドライウェイトに基づく除水量を設定することとなり、かかる除水量に基づき除水ポンプ8が駆動することとなる。ここで、推定ドライウェイトは医療従事者等が診察や経験に基づくものであり、ドライウェイトとは必ずしも一致しない。
【0045】
一方、透析装置本体6には、図3に示すように、本発明に係る検出手段としてのΔBV検出手段9と、判定手段10と、記憶手段11と、算出手段12と、透析装置本体6が具備するディスプレイ等から成る表示手段13と、音声出力可能なスピーカ等から成る報知手段14とが配設されている。このうちΔBV検出手段10は、前述したヘマトクリットセンサ5と電気的に接続されており、当該ヘマトクリットセンサ5から送信されたヘマトクリット値に基づき循環血液量変化率(ΔBV)を演算して検出するためのものである。
【0046】
即ち、透析治療過程で体外循環する血液の濃度に係るパラメータであるヘマトクリット値をヘマトクリットセンサ5にて逐次測定するとともに、各ヘマトクリット値に基づいてΔBV検出手段9が循環血液量変化率(ΔBV%)を演算して検出することにより、時系列的に複数時点で測定した時系列データ(透析治療時における循環血液量変化率の経時的変化傾向を示すデータ)を得ることができるのである。
【0047】
因みに、ヘマトクリットセンサ5にて得られるヘマトクリット値をHtとおくと、循環血液量の変化率ΔBVは、(透析開始時のHt−測定時のHt)/測定時のHt×100なる演算式から求めることができる。これにより、透析治療時間経過に伴って患者の循環血液量の変化率(ΔBV)を逐次検出することができ、当該透析治療における時系列データを得ることができる。
【0048】
然るに、上記ΔBV検出手段9は、測定されたヘマトクリット値に基づいて循環血液量変化率(ΔBV%)を求めているが、これに代えて例えばヘモグロビン濃度や血清総蛋白濃度などに基づいて循環血液量変化率(ΔBV%)を用いてもよい。更に、循環血液量変化率(ΔBV%)を求めるためのパラメータを測定するにあたり、光学的或いは超音波等種々形態のものを使用することができる。
【0049】
判定手段10は、透析治療後、推定ドライウェイトがドライウェイトに近似しているか否かを判定して当該透析治療の適否を判定するためのもので、ΔBV検出手段9及び記憶手段11とそれぞれ電気的に接続されている。かかる判定手段10での推定ドライウェイトの判定基準は、例えば患者に対する除水による体重変化(減少)が血液濃度に対してどの程度影響するかの指標であるPWI(プラズマ・ウォーター・インデックス)を用いることができる。このPWIは、循環血漿量変化率(ΔCPV%)を患者の体重変化率(ΔBW%)で除する演算式(PWI=ΔCPV%/ΔBW%)にて算出されるもので、推定ドライウェイトがドライウェイトに近似していたときには、その数値が適正範囲内となることが検証の結果明らかとされている。
【0050】
然るに、PWIが大きいと除水による体重減少に対する血液濃縮率が大きいことを示し、除水により血液中から水分を奪っている割に血管外からの間質液の補充がなされていないことが認識できる一方、PWIが小さいと、血液から水分を奪っても間質液の補充に余裕があることが認識できる。
【0051】
また、PWIを求めるためのパラメータであるΔBW(%)及びΔCPV(%)は、以下の如く求めることができる。透析治療前の患者の体重(BW1)と、除水ポンプ8の駆動量に基づき把握される除水量(透析治療終了時点での除水積算値:UFV)とを用い、体重変化率ΔBW%が以下の式1にて求められる。
【0052】
ΔBW%=(BW2−BW1)/BW1×100(%)
=(−UFV)/BW1×100(%)…(式1)
但し、BW2は、透析治療終了時点での患者の体重であるとともに、飲食又は排泄などによる患者の体重の増減は考慮していない。
【0053】
また、ヘマトクリットセンサ5により検出される除水開始時点でのヘマトクリット値(Ht1(%))と、除水終了時点でのヘマトクリット値(Ht2(%))とを用い、後述する式2にて循環血漿量変化率(ΔCPV%)(血液指標の変化率)を求めることができる。尚、CPV1、BV1を除水開始時点での循環血漿量及び循環血液量、CPV2、BV2を除水終了時点での循環血漿量及び循環血液量とし、血液1(L)=1(kg)とみなした場合、血漿量=血液量×(1−血球成分比)であるから、CPV1=BV1×(1−Ht1/100)、CPV2=BV2×(1−Ht2/100)である。
【0054】
ΔCPV%=(CPV2−CPV1)/CPV1×100
={BV2(1−Ht2/100)−BV1(1−Ht1/100)}/{
BV1(1−Ht1/100)}×100
=(BV2−BV1−BV2×Ht2/100+BV1×Ht1/100)
/{BV1(1−Ht1/100)}×100
【0055】
ここで、透析治療中において循環血液中の赤血球は失われず、その容積が変化しないことから、BV1×Ht1=BV2×Ht2(両辺は循環血液の容積における赤血球の占める容積を示す)である。従って、
【0056】
ΔCPV%=(BV2−BV1)/{BV1(1−Ht1/100)}×100
=(BV2/BV1−1)/(1−Ht1/100)×100
=(Ht1/Ht2−1)/(1−Ht1/100)×100(%)…(式2)
【0057】
上記の如きPWIなる指標による推定ドライウェイトの判定基準に代えて、例えば心胸郭比に基づくものとしてもよい。かかる心胸郭比は、患者の胸部X線写真から胸郭の長さ(横幅)に対する心臓の大きさ(横幅)の比から成る値で、この心胸郭比の50%以下となるような体重がドライウェイトとされている。よって、透析治療後に計測された心胸郭比から推定ドライウェイトがドライウェイトに近似していたか否かを判定することができる。また、上記PWIなる指標や心胸郭比の算出に加え、例えば透析治療後の患者の血圧や特定の患者別、性別、原疾患別等を参酌して推定ドライウェイトがドライウェイトに近似していたか否かを判定するようにしてもよい。
【0058】
記憶手段11は、例えばメモリ等から成るものであり、判定手段10で適正な透析治療であったと判定された時系列データのみを複数記憶し得るものである。すなわち、透析治療後、判定手段10で患者のPWIが適正範囲内であると判定された時系列データが順次記憶されるので、推定ドライウェイトがドライウェイトに近似した適切な透析治療時の時系列データのみが記憶手段11に累積的に蓄積されることとなる。
【0059】
例えば、同一患者につき記憶手段11にて記憶された複数の時系列データとして、図4で示す如きグラフに表すことができる。尚、当該グラフは、横軸を透析治療時間(h)、縦軸をΔBV検出手段9で検出された循環血液量の変化率ΔBV(%)とした場合の、複数の透析治療日における時系列データを示すものであり、透析治療日毎に前体重(透析治療を行う前の患者の体重)が異なっている。
【0060】
算出手段12は、記憶手段11で記憶された複数の時系列データ(例えば図4中、複数のグラフで示される各データ)に基づき、適正な透析治療過程において予想される時系列データの適正推移を算出するためのものである。また、算出手段12は、記憶手段11で記憶された時系列データに所定の演算を行って標準化し、患者の体重又は除水量など特定患者固有の条件に関わらない普遍的な時系列データとした後、適正推移を算出するよう構成されている。
【0061】
時系列データの標準化は、例えば透析治療で得られたΔBV値(変数)を、その透析治療前後の体重変化率(ΔBW%)で除する演算(ΔBV/最終ΔBW)にて行うことができ、当該体重変化率(ΔBW%)は、上述した式1にて算出することができる。具体的には、当該式1における除水積算値(UFV)の項にその透析治療(適正な透析治療)における目標除水量を、前体重(BW1)の項に患者の前体重(透析治療前の体重)をそれぞれ代入することにより、標準化されて特定患者固有の条件に関わらない普遍的な時系列データ(例えば図5の如きグラフ)を得ることができる。
【0062】
但し、標準化されないグラフとの比較を視覚的に容易たらしめるべく、図5(図7も同様)においては、負の値である体重変化率ΔBW%の代わりに正の値である体重減少率(すなわち体重変化率ΔBW%が負の値であるから体重減少率は「−ΔBW%」として表される)を用いた演算結果をグラフ化したものとしており、時間経過に伴って下方に推移するグラフとなっている。尚、かかる時系列データの標準化のための算出を、算出手段12とは別個の外部手段にて行わせるよう構成してもよい。
【0063】
図5のグラフによれば、推定ドライウェイトがドライウェイトに近似した適正な透析治療時の時系列データは、上記の如き標準化処理がなされると、ほぼ一定の経時的変化傾向(トレンド)を有することが分かり、再現性を有することが認められる。これら標準化された時系列データに対して例えば回帰計算を施して曲線回帰を図り(即ち相関性を見いだす)、適正な透析治療過程において予想される時系列データの適正推移を算出することができる。
【0064】
また、標準化された時系列データの分布から、測定時点毎(体外循環する血液の濃度に係るパラメータ(本実施形態においてはΔBV)の測定時点毎)における下限値から上限値までの所定幅を持った適正推移範囲を算出するようにしてもよい。例えば上限値及び下限値を透析治療時間に対する関数とすることにより適正推移範囲をグラフ化すると、例えば図6で示すように、透析治療時間経過に伴う上限の関数(U)と下限値の関数(D)を得ることができる。
【0065】
更に、上記の如く標準化された回帰曲線を利用し、これから行われる透析治療の目標除水量と患者の前体重を当該回帰曲線の式に代入することにより、その透析治療での血液指標の推移を予想することができる。すなわち、ΔBV/最終ΔBW=ΔBV(%)/(除水量/BW前×100(%))であることから、「除水量」の項にその透析治療の「目標除水量」、及び「BW前」の項にその透析治療前に計測した患者の体重(前体重)をそれぞれ代入すれば、その透析治療におけるΔBVの推移が予想できるのである。
【0066】
尚、上記した如き上限値及び下限値の透析治療時間に対する関数における最終BWの項に対して、上記と同様の前体重と目標除水量を代入すれば、その透析治療における時間tに対するΔBV推移の範囲(上限値及び下限値)を予想することができる。
【0067】
上記の如く得られた予想推移を、以下に示す表示手段13に表示して適正推移の傾向と比較できるようにしてもよい。然るに、予想推移の適正推移からの乖離が認められた場合、これを修正するように透析治療条件を変更することも可能である。
【0068】
表示手段13は、本血液透析装置にて透析治療を行う際、算出手段12にて算出された適正推移又は適正推移範囲をグラフとして表示しつつΔBV検出手段9にて測定された循環血液量変化率(ΔBV)を当該グラフに重ね合わせてリアルタイムに表示するものである。例えば測定された循環血液量変化率(ΔBV)と上限値及び下限値を有する適正推移範囲とをグラフとして表示したものを図6に示す。これにより、透析治療の過程において、推定ドライウェイトがドライウェイトに近似した適正な経過となっているか否かの判別をより視覚的に行わせることができるとともに、循環血液量変化率(ΔBV)が上限値又は下限値を超える兆候を察知することができる。
【0069】
報知手段14は、透析治療を行う際、測定された循環血液量変化率(ΔBV)が算出手段12にて算出された適正推移又は適正推移範囲から逸脱したことを条件として、所定の報知を行うものであり、例えば音声等を出力し得るスピーカや光を照射し得る光源(LEDなど)から成るものである。例えば、透析治療過程において、測定された循環血液量変化率(ΔBV)が適正推移範囲の上限値を超えた場合は、推定ドライウェイトがその患者のドライウェイトに比べて高い(設定除水量が小さ過ぎ)と判断し得るとともに、下限値を超えた場合は、推定ドライウェイトがその患者のドライウェイトに比べて低い(設定除水量が大き過ぎ)と判断することができるので、これを踏まえたガイダンスを行うことができる。
【0070】
このように、透析治療を行う際、検出されたパラメータが算出された適正推移又は適正推移範囲から逸脱したことを条件として、所定の報知を行うので、医療従事者の注意を促すことができる。尚、報知手段14による報知やガイダンス内容を記録に残し、その後の透析治療に活用すようにしてもよい。
【0071】
上記血液透析装置によれば、推定ドライウェイトが患者のドライウェイトに近似しているか否かに基づいて透析治療の適否を判定し、適正であると判定された時系列データを複数記憶するので、その後の透析治療過程においては、推定ドライウェイトがドライウェイトに近似した適正な経過となっているか否かを判別することが容易である。また、体外循環する血液の濃度から算出される循環血液量変化率(ΔBV)をパラメータとして検出しているので、透析治療過程において、推定ドライウェイトがドライウェイトに近似した適正な循環血液量変化率の経過となっているか否かの判別を容易に行わせることができる。
【0072】
加えて、推定ドライウェイトが患者のドライウェイトに近似しているか否かの判定につき、PWIなる指標の算出により行っているため、例えば心胸郭比などによる判定に比べ胸部X線写真等を得る必要がない。従って、より簡易且つ確実に推定ドライウェイトがドライウェイトに近似しているか否かを判定して当該透析治療の適否を判定することができる。
【0073】
更に、適正推移とその後の透析治療過程において検出される循環血液量変化率(ΔBV)(体外循環する血液の濃度に係るパラメータ)との比較を行えば、推定ドライウェイトがドライウェイトに近似した適正な経過となっているか否かの判別をより容易に行わせることができ、特に、循環血液量変化率(ΔBV)の測定時点毎における下限値から上限値までの所定幅を持った適正推移範囲を算出すれば、その後の透析治療過程において検出される循環血液量変化率(ΔBV)が当該適正範囲内であるか否かを認識することができる。
【0074】
また更に、記憶手段11にて記憶された時系列データに所定の演算を行って標準化し、患者の体重又は除水量など特定患者固有の条件に関わらない普遍的な時系列データとするので、特定の患者のみに適用する場合であっても、推定ドライウェイトがドライウェイトに近似した適正な経過となっているか否かの判別を行うにあたり、透析治療毎に異なる患者の前体重の変化や除水量の変化等の影響を回避することができる。
【0075】
然るに、時系列データに所定の演算を行って標準化して普遍的な時系列データとすることにより、上記実施形態の如く特定の患者のみならず、多数の透析治療患者の時系列データに基づいて、推定ドライウェイトがドライウェイトに近似した適正な経過となっているか否かの判別を行わせることができる。その場合、図7に示すように、例えば多数の透析治療患者の時系列データに対して回帰計算等により所定時間毎の分布幅を求め、普遍的な上限値及び下限値を有した適性推移範囲を得るようにするのが好ましい。
【0076】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば透析治療過程で体外循環する血液の濃度に係る他のパラメータ(ヘマトクリット値自体、循環血液量(BV)、循環血漿量(CPV)、循環血漿量変化率(ΔCPV)など)を時系列毎に複数時点で測定して時系列データを得るようにし、それを判定手段10にて判定するようにしてもよい。
【0077】
また、透析治療時間に対する循環血液量変化率(ΔBV)を測定する過程において、患者が飲食、補液或いは体位変換(寝返り等)のイベントを入力して、除水によらない見かけ上の循環血液量変化率(ΔBV)の変動による影響を排除(データ取得排除等)し得るようにしてもよい。この場合、時系列データの収集精度を向上させることができる。
【0078】
更に、判定手段で適正な透析治療であったと判定された時系列データを複数記憶し得る記憶手段は、本実施形態の如く血液透析装置内に配設されたものに限定されず、例えば外部の中央監視システムなどを利用してもよい。この場合、患者の時系列データを容易に共有化することができ、共有化した患者の時系列データをデータベース化して一括管理することができる。また更に、算出手段12の算出により算出された適正推移又は適正推移範囲に対し、透析条件の変化や医師等の医療従事者の見解等に基づいて補正を施すようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0079】
透析治療過程で体外循環する血液の濃度に係るパラメータを時系列的に複数時点で測定して時系列データを得るとともに、当該透析治療後、推定ドライウェイトがドライウェイトに近似しているか否かを判定して当該透析治療の適否を判定し、適正であると判定された時系列データを複数記憶する血液透析装置及び血液透析方法であれば、別途の機能が付加されたもの不随機能がないもの等、他の形態の血液透析装置及び血液透析方法に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明の実施形態に係る血液透析装置を示す全体模式図
【図2】同血液透析装置における透析装置本体であって、内部の機械的構成を示す模式図
【図3】同血液透析装置における透析装置本体であって、内部の電気的構成等を示すブロック図
【図4】同血液透析装置における記憶手段で記憶された複数の時系列データを表示手段にて表示させたグラフ
【図5】同血液透析装置における記憶手段で記憶された複数の時系列データに対して標準化を施したものを表示手段にて表示させたグラフ
【図6】同血液透析装置における算出手段で算出された適正推移範囲と、透析治療過程におけるΔBV手段で測定された循環血液量変化率(ΔBV)とを表示手段にて重ね合わせて表示させたグラフ
【図7】同血液透析装置において多数の患者の時系列データに対し回帰計算を施して得られた分布幅を示すグラフ
【符号の説明】
【0081】
1 血液回路
1a 動脈側血液回路
1b 静脈側血液回路
2 ダイアライザ
3 血液ポンプ
4 静脈側ドリップチャンバ
5 ヘマトクリットセンサ
6 透析装置本体
7 透析液供給装置
8 除水ポンプ
9 ΔBV検出手段(検出手段)
10 判定手段
11 記憶手段
12 算出手段
13 表示手段
14 報知手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体外循環する患者の血液に対して血液透析処理しつつ推定ドライウェイトに基づいた除水量に従って除水して透析治療を行う透析処理手段と、
該透析処理手段による透析治療過程で体外循環する血液の濃度に係るパラメータを時系列的に複数時点で測定して時系列データを得る検出手段と、
前記透析処理手段による透析治療後、前記推定ドライウェイトがドライウェイトに近似しているか否かを判定して当該透析治療の適否を判定する判定手段と、
該判定手段で適正な透析治療であったと判定された時系列データを複数記憶し得る記憶手段と、
を具備したことを特徴とする血液透析装置。
【請求項2】
前記判定手段は、PWIなる指標の算出に基づき、前記推定ドライウェイトがドライウェイトに近似しているか否かを判定するものであることを特徴とする請求項1記載の血液透析装置。
【請求項3】
前記記憶手段で記憶された複数の時系列データに基づき、適正な透析治療過程において予想される時系列データの適正推移を算出する算出手段を具備したことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の血液透析装置。
【請求項4】
前記算出手段は、体外循環する血液の濃度に係るパラメータの測定時点毎における下限値から上限値までの所定幅を持った適正推移範囲を算出することを特徴とする請求項3記載の血液透析装置。
【請求項5】
前記透析処理手段による透析治療を行う際、前記算出手段にて算出された適正推移又は適正推移範囲をグラフとして表示しつつ前記検出手段にて測定されたパラメータを当該グラフに重ね合わせてリアルタイムに表示することを特徴とする請求項3又は請求項4記載の血液透析装置。
【請求項6】
前記透析処理手段による透析治療を行う際、前記検出手段にて検出されたパラメータが前記算出手段にて算出された適正推移又は適正推移範囲から逸脱したことを条件として、所定の報知を行うことを特徴とする請求項3〜請求項5の何れか1つに記載の血液透析装置。
【請求項7】
前記記憶手段で記憶された時系列データに所定の演算を行って標準化し、患者の体重又は除水量など特定患者固有の条件に関わらない普遍的な時系列データとすることを特徴とする請求項1〜請求項6の何れか1つに記載の血液透析装置。
【請求項8】
前記検出手段で検出されるパラメータは、体外循環する血液の濃度から算出される循環血液量変化率(ΔBV)であることを特徴とする請求項1〜請求項7の何れか1つに記載の血液透析装置。
【請求項9】
体外循環する患者の血液に対して血液透析処理しつつ推定ドライウェイトに基づいた除水量に従って除水して透析治療を行い、その透析治療過程で体外循環する血液の濃度に係るパラメータを時系列的に複数時点で測定して時系列データを得るとともに、当該透析治療後、前記推定ドライウェイトがドライウェイトに近似しているか否かを判定して当該透析治療の適否を判定し、適正であると判定された時系列データを複数記憶することを特徴とする血液透析方法。
【請求項10】
PWIなる指標の算出に基づき、前記推定ドライウェイトがドライウェイトに近似しているか否かを判定することを特徴とする請求項9記載の血液透析方法。
【請求項11】
記憶された複数の時系列データに基づき、適正な透析治療過程において予想される時系列データの適正推移を算出することを特徴とする請求項9又は請求項10記載の血液透析方法。
【請求項12】
体外循環する血液の濃度に係るパラメータの測定時点毎における下限値から上限値までの所定幅を持った適正推移範囲を算出することを特徴とする請求項11記載の血液透析方法。
【請求項13】
透析治療を行う際、算出された適正推移又は適正推移範囲をグラフとして表示しつつ測定されたパラメータを当該グラフに重ね合わせてリアルタイムに表示することを特徴とする請求項11又は請求項12記載の血液透析方法。
【請求項14】
透析治療を行う際、検出されたパラメータが算出された適正推移又は適正推移範囲から逸脱したことを条件として、所定の報知を行うことを特徴とする請求項11〜請求項13の何れか1つに記載の血液透析方法。
【請求項15】
記憶された時系列データに所定の演算を行って標準化し、患者の体重又は除水量など特定患者固有の条件に関わらない普遍的な時系列データとすることを特徴とする請求項9〜請求項14の何れか1つに記載の血液透析方法。
【請求項16】
検出されるパラメータは、体外循環する血液の濃度から算出される循環血液量変化率(ΔBV)であることを特徴とする請求項9〜請求項15の何れか1つに記載の血液透析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−130300(P2007−130300A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−327437(P2005−327437)
【出願日】平成17年11月11日(2005.11.11)
【出願人】(000226242)日機装株式会社 (383)
【Fターム(参考)】