説明

血清LDLコレステロール値の低下作用を有する経口組成物。

【課題】血清中のLDLコレステロール値を低下させることを特徴とする経口組成物を提供する。更には、長期間実施しても安全性上の課題が生じない経口摂取可能な素材を用いた血清中のHDLコレステロール値には影響を与えずに、LDLコレステロール値を低下させる経口組成物を提供する。
【解決手段】ヤナギの樹皮および/または芽からの抽出物を経口組成物に配合させる。特に西洋ヤナギの樹皮抽出物を配合する経口組成物が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヤナギ樹皮抽出物および/またはヤナギ芽抽出物を含有する血清中のLDLコレステロール値を低下させることを特徴とする経口組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
血清中のコレステロール値、特にLDLコレステロール値が高い状態が継続すると、血管組織に変質が生じるリスクが高まることが知られている。この状態を放置すれば、脂質異常症を発症し、最終的には日本人の死因の約3割を占める心疾患や脳血管疾患を引き起こす要因にもなることから、血清中のLDLコレステロールを低減させ、低く抑えることは肝要である。しかし、近年、食生活の乱れに起因する不規則な食習慣や動物性脂質の過剰摂取などにより、年齢が上がるとともに血清中のLDLコレステロール値も上昇し、脂質異常症を発症する人が年々増加している。
【0003】
血清中のLDLコレステロール値は食事内容に大きく影響を受けることから、食事内容を改善して血清中のLDLコレステロール値を下げる方法が有効であり、最も好ましい。しかし、食事内容を改善し、それを継続して実行することは現実には難しく、日常の食事内容を変えることなく血清中のLDLコレステロール値を下げる方法が望まれている。医薬品の服用は効果が高く、簡単に実行できるが、薬効に頼り長期間服用する人が多いため、横紋筋融解作用や肝機能障害等の副作用のリスクが存在するだけでなく、昨今の医療費増大を増長することから好ましくない。
【0004】
そこで、実行が容易でかつ長期間実施しても安全性上の課題が生じない方法として、食品由来の素材を有効成分とする機能性食品の開発が進められている。例えば、特許文献1には、シジミ可食部の抽出物を有効成分とするコレステロール低下剤が、特許文献2には、ラクトバチルス種(Lactobacillus
sp.)の分離株を有効成分とする血清コレステロール低下組成物が、特許文献3には、卵白に含有されるペプチドを有効成分とする血清コレステロール低下剤などが提案されているが、未だ十分な効果を得るものがない。
【特許文献1】特開2007−210990号公報
【特許文献2】特開2007−135596号公報
【特許文献3】特開2007−126369号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、血清LDLコレステロール値の低下作用を有する経口組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するためにヤナギ樹皮抽出物および/またはヤナギ芽抽出物に優れた血清中のLDLコレステロール値を低下させる効果があることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は下記の組成物を提供するものである。
項1.ヤナギ樹皮抽出物および/またはヤナギ芽抽出物を含有する血清中のLDLコレステロール値を低下させることを特徴とする経口組成物。
項2.「コレステロールを正常に保つことを助ける」旨が表示に付された食品であることを特徴とする請求項1に記載の経口組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、血清LDLコレステロール値の低下作用を有する経口組成物を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明につき更に詳細に説明する。
【0010】
本発明に用いることのできるヤナギは、ヤナギ科(Salicaceae)のPopulus属又はSalix族に属する植物である。Populus属に属する植物の例としては、ウラジロハコヤナギ(別名ハクヨウ、ギンドロ;P.alba)、カナダポプラ、アメリカクロヤマナラシ(別名ヒロハハコヤナギ)、コトカケヤナギ、(P.euphratica)、オオバヤマナラシ(P.tomentosa)、チリメンドロ(P.koreana)、ドロノキ(P.maximowiczii)、ヨーロッパクロヤマナラシ(P.nigra)、セイヨウハコヤナギ(別名イタリアヤマナラシ;P.nigra var. italica)、ヤマナラシ(別名ハコヤナギ、ポプラ;P.sieboldii)、バルサムポプラ(P.tecamahaca)、シマヤマナラシ、チョウセンヤマナラシ(P.davidiana)、アメリカヤマナラシ(P.tremuloides)、P.euramericana等が挙げられる。Salix属に属する植物の例としては、セイヨウシロヤナギ(S.alba)、サイコクキツネヤナギ(S.alopochroa)、ユスラバヤナギ、シダレヤナギ(別名イトヤナギ;S.babylonica)、ヤマネコヤナギ(別名バッコヤナギ;S.bakko)、アカメヤナギ(別名マルバヤナギ;(S.chaeagnos)、コガネシダレ(S.chrysochoma)、S.daphnoides、サクリス・エラエアグスノス(S.elaeagnos Scopoli)、ポッキリヤナギ(S.futura)、カワヤナギ(別名ナガバカワヤナギ;S.gilgiana)、ネコヤナギ(S.alba)(S.gracilistyla)、クロヤナギ(S.gracilistyla var. melanostachys)、サウセ(S.humboldtiana)、イヌコリヤナギ(S.integra)、シバヤナギ(S.japonica)、シロヤナギ(S.jessoens)、キヌヤナギ(S.kinuyanagi)、コリヤナギ(S.koriyanagi)、エゾヤナギ(S.rorida)、フリソデヤナギ(S.leucopithecia)、ウンリュウヤナギ(S.matsudana f. tortuosa)、タカネイワヤナギ(別名レンゲイワヤナギ)、オオシダレヤナギ(S.ohshidare)、エゾマメヤナギ(S.nummularia ssp. pauciflora)、エゾノキヌヤナギ(S.pet-susu)、S.purpurea、コウヒリュウ、ミヤマヤナギ(別名ミネヤナギ;S.reinii)、コマイワヤナギ(S.rupifraga)、オノエヤナギ(別名カラフトヤナギ;S.sachalinensis)、コゴメヤナギ(S.serissaefolia)、シライヤナギ(S.shirai)、Salix sp、タチヤナギ(S.subfragilis)、ノヤナギ(別名ヒメヤナギ)、イヨウヤナギ、キツネヤナギ(別名イワヤナギ;S.vulpina)、エゾノタカネヤナギ(S.yezoalpina)等が挙げられる。ヤナギの抽出部位は樹皮および/または芽(特に新芽)を使用するが、その葉、花、果実、枝、幹等が一部混在していても良い。好ましいヤナギは、西洋ヤナギであり、中でもSalix daphnoides,Salix sp,Salix purpurea,Salix fragilix,Salix albaである。
【0011】
本発明においてヤナギ樹皮抽出物やヤナギ芽抽出物は、上記のヤナギの樹皮や芽を必要に応じて、細切り、乾燥、粉砕などの抽出に適した形状に処理を行ってから抽出することが好ましい。通常、上記処理されたヤナギ抽出部位を抽出溶媒を用い、必要に応じて静置、振とう、超音波照射、加熱、加圧等やそれらを組みあわせることによって抽出する。好ましくは、ヤナギ抽出部位を抽出溶媒に浸漬し、振とうまたは攪拌する方法である。
【0012】
抽出溶媒としては、通常水、有機溶媒などを単独又は2種以上を併用して用いる。有機溶媒は、通常、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール等の低級アルコール類;ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコールなどの多価アルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;CO2などの超臨界流体などが使用できる。好ましい抽出溶媒としては水又はエタノールであり、単独で又は両者を組み合わせ混合して使用できる。より好ましい抽出溶媒は水である。
【0013】
抽出温度は、通常3〜溶媒の沸点である。抽出時間は、抽出溶媒の種類、抽出温度、ヤナギ抽出部位の抽出時の形態などによって異なるが、通常1時間〜7日間、好ましくは2時間〜3日間である。また、必要に応じて加圧することもできる。
【0014】
抽出物は、そのままでも本発明におけるヤナギ樹皮抽出物および/またはヤナギ芽抽出物として使用することができるが、濃縮、乾固、凍結乾燥したものを、水、有機溶媒等に溶解したり、抽出物の有する効果を損なわない範囲で脱色、脱臭、脱塩などの精製処理を行ったり、液・液分配。カラムクロマトグラフィによる分画処理などを行って得られたものを使用することもできる。また、ヤナギ樹皮抽出物および/またはヤナギ芽抽出物をリポソームなどの担体やマイクロカプセルなどに内包させて使用することもできる。
【0015】
本発明の血清中のLDLコレステロール値を低下させる経口組成物におけるヤナギ樹皮抽出物および/またはヤナギ芽抽出物の含有量は、0.0001〜50重量%、好ましくは0.01〜30重量%、より好ましくは0.5〜10重量%である。
【0016】
本発明の経口組成物は、使用目的などに応じて経口摂取に適した形態、例えば、液剤、ドリンク剤、錠剤、顆粒剤、細粒剤、粉剤などの固形剤あるいは当該液剤又は固形剤を封入したカプセル剤、口腔用スプレイ、トローチなどの形態のほか、通常食品で用いられる様々な形態をとることができる。
【0017】
更に錠剤などの固形剤には必要に応じ通常の錠皮を施した錠剤、例えば糖衣錠、ゼラチン被包錠、フィルムコーティング錠、二重錠、多層錠などとすることができる。液体製剤は水性または油性の懸濁液、液状、シロップ、エキシリル剤であってもよく、通常の担体、添加剤などを用いて常法に従い、調製することができる。
【0018】
好ましい製剤の形態は錠剤、トローチ、顆粒剤、カプセル剤、ドリンク剤であり、より好ましい製剤の形態は、錠剤、顆粒剤またはドリンク剤である。
【0019】
本発明の経口組成物は、医薬品や食品として許容される食材や添加物を含むことができる。例えば、糖質(糖類、炭水化物など)、脂質、たん白質、ミネラル類、ビタミン類、食物繊維等の他の栄養成分のほか、食品としての形態や機能を付与するのに必要な成分、(例えば嬌味成分、賦形成分、静菌性成分、色素成分、各種調味料素材、など)や通常の製剤化に用いられる添加剤(パラチノース、マルチトール、乳糖等の賦形剤、サッカリン、ステビア等の甘味料、ステアリン酸マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステル等の滑沢剤、クエン酸等の酸味料、塩化亜鉛、粉末茶等の矯味剤、着香剤)、動植物エキス、各種薬効成分などが挙げられる。
【0020】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。なお、各例中の配合量は、特に規定がない限り重量%を示す。
【0021】
<試験例:飲用試験>
【0022】
試験方法
健常者16名(26〜45歳、平均年齢34.2歳;男性7名、女性9名)を被験者として試験を行なった。飲用試験は、2週間の飲用期間とその後2週間のウォッシュアウト期間を設定し、飲用期間及びウォッシュアウト期間中においては、食事制限やその他の制約などは一切設けなかった。被検物質であるヤナギ樹皮抽出物は、西洋ヤナギ樹皮抽出物(粉末)を使用した。飲用期間中、被験者は、カプセルに封入した西洋ヤナギ樹皮粉末エキスを1日につき800mgを毎日飲用した。採血は、飲用期間の開始時と終了時及びウォッシュアウト期間終了時の空腹時に実施し、血清中の総コレステロール値、HDLコレステロール値、LDLコレステロール値を測定した。測定結果の統計解析については、検査を行った週を因子としてANOVAを実施し、F値が有意であった場合、post hocテストとしてBonferroni分析を実施し、各週での有意差検定を行った。検定結果は、1%以下の危険率で有意の場合「**」、5%以下の危険率で有意の場合「*」、それ以外の場合「−」で示した。測定結果を表1に示す。
【0023】
【表1】

【0024】
試験結果
血清中のLDLコレステロール値は、西洋ヤナギ樹皮抽出物の2週間の飲用により、有意に低下し、さらにその後のウォッシュアウト期間終了時には有意に上昇し、飲用開始時の水準に戻った。一方、血清中のHDLコレステロール値には、期間中の変化は見られず、血清中の総コレステロール値はLDLコレステロール値と同様の傾向を示した。以上より、西洋ヤナギ樹皮抽出物の飲用により、血清中のHDLコレステロール値には影響を与えずに、LDLコレステロール値を低下させることがわかった。
【0025】
以下に、本発明に係る処方例を記載する。
【0026】
実施例1:粉末食品
成分 重量%
西洋ヤナギ樹皮抽出物 20.0%
果糖 30.0%
デキストリン 42.4%
ペパーミントフレーバー 3.0%
アスコルビン酸 2.5%
スクラロース 0.1%
レモンフレーバー 2.0%
合計 100.0%
【0027】
実施例2:錠剤
成分 重量%
ガラクトース 38.0%
西洋ヤナギ芽抽出物 15.0%
結晶セルロース 21.94%
エリスリトール 10.0%
スクラロース 0.06%
クエン酸 5.0%
ハッカ 4.0%
メントール 1.0%
ショ糖脂肪酸エステル 5.0%
合計 100.0%
【0028】
実施例3:飴
成分 重量%
還元麦芽糖水飴 52.0%
乳糖 10.0%
西洋ヤナギ樹皮抽出物 5.0%
柿の葉水抽出物 5.0%
クエン酸 7.0%
ペパーミントフレーバー 1.5%
スペアミントフレーバー 1.0%
ピーチフレーバー 2.5%
精製水 16.0%
合計 100.0%
【0029】
実施例4:顆粒食品
成分 重量%
西洋ヤナギ樹皮/芽抽出物 10.0%
ドクダミ水抽出物 5.0%
グァバ水抽出物 5.0%
ビワ水抽出物 5.0%
デキストリン 49.8%
ブドウ糖 20.0%
アスパルテーム 0.2%
アップルフレーバー 5.0%
合計 100.0%
【0030】
実施例5:チュアブル錠
成分 重量%
西洋ヤナギ樹皮抽出物 20.0%
ブドウ糖 30.0%
アスパルテーム 0.15%
エリスリトール 20.0%
結晶セルロース 22.85%
ショ糖脂肪酸エステル 4.0%
スペアミントフレーバー 3.0%
合計 100.0%
【0031】
実施例6:粉末茶
成分 重量%
西洋ヤナギ樹皮抽出物 30.0%
ハトムギ水抽出物 10.0%
煎茶水抽出物 5.0%
甜茶水抽出物 3.0%
デキストリン 18.9%
ブドウ糖 20.0%
スクラロース 0.1%
粉乳 10.0%
ジンジャーフレーバー 3.0%
合計 100.0%
【0032】
実施例7:グミキャンディー
成分 重量%
西洋ヤナギ樹皮抽出物 10.0%
ショ糖 55.0%
ブドウ糖 10.0%
クエン酸 1.2%
ゼラチン 8.0%
l−メントール 0.1%
ジンジャーフレーバー 1.2%
精製水 14.5%
合計 100.0%
【0033】
実施例8:カプセル剤
成分 重量%
西洋ヤナギ樹皮抽出物 65.0%
結晶セルロース 35.0%
合計 100.0%

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヤナギ樹皮抽出物および/またはヤナギ芽抽出物を含有する血清中のLDLコレステロール値を低下させることを特徴とする経口組成物。
【請求項2】
「コレステロールを正常に保つことを助ける」旨が表示に付された食品であることを特徴とする請求項1に記載の経口組成物。

【公開番号】特開2009−242273(P2009−242273A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−89197(P2008−89197)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000106324)サンスター株式会社 (200)
【Fターム(参考)】