説明

血漿中半減期が調節された融合タンパク質

本発明は、融合タンパク質およびアルツハイマー病患者の酵素的処置におけるそれらの使用に関する。当該融合タンパク質は、アミロイドベータ(Aβ)ペプチドを切断する成分(例えばネプリライシン、インスリン分解酵素(IDE))、血漿中半減期を調節する別の成分(例えばIgGのFc部分またはPGE)、および上記の二成分を接続する第三の成分を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、融合タンパク質およびアルツハイマー病患者の酵素的処置におけるそれらの使用に関する。当該融合タンパク質は、アミロイドベータ(Aβ)ペプチドを切断する成分、血漿中半減期を調節する別の成分、および上記の二成分を接続する第三の成分を含む。
【背景技術】
【0002】
本発明は、アミロイドペプチドを特異的に認識しそれらを分解または修飾を通じて不活化する酵素とアミロイドペプチドを反応させることによって、アミロイドプラークの形成および/または成長を防止する方法に関する。本発明はさらに、触媒活性および/または選択性が改善された最適化アミロイドペプチド分解酵素を投与することによってアルツハイマー病を処置する方法に関する。本発明はまた、医学的治療の分野、特に神経変性疾患の分野に関連し、神経変性疾患、特にアルツハイマー病に罹患した患者において脳アミロイドのクリアランス機構を誘導する方法を提供する。さらに、本発明は、このような機構を誘導するのに効果的なタンパク質およびペプチドの使用に関する。
【0003】
本発明は、血漿中での安定性および半減期を調節する分子を結合させることによってAβペプチド分解性分子を治療に適した薬剤に変える方法を記載する。本発明において記載されるAβペプチド分解性分子は全体的に、有効な治療薬剤として使用するには血漿中半減期が短い。しかし、これらの分解性分子を本発明において記載され例示される調節性分子と組み合わせることによって、これらの最適化アミロイドペプチド分解酵素融合タンパク質の投与によりアルツハイマー病の処置において効果的に使用できる機能性薬剤が生産される。
【0004】
神経変性疾患、特にアルツハイマー病(AD)は、患者の生命に対して強力な衰弱化作用を有する。さらに、これらの疾患は、甚大な健康上、社会的、および経済的な負担を強いる。ADは最も一般的な加齢性神経変性状態であり、65歳以上の集団の約10%が罹患しており、85歳以上では45%に至る(Vickers et al.,Progress in Neurobiology 2000,60:139−165)。今日、米国、欧州、および日本における症例はおよそ1,200万例に達している。先進国においては人口統計上、高齢者数が増加しているので、この状況が悪化することは不可避であろう。ADに罹患した個体の脳において起こる神経病理学的特徴は、老人斑ならびに異常な線維構造の出現および神経原線維変化の形成を伴う重度の細胞骨格の変化である。家族性の症例および散発性の症例の両者は、共通の病理学的特徴として、脳における細胞外原線維性βアミロイドの沈着を有し、これがニューロン機能の損傷およびニューロン脱落と関連すると考えられている(Younkin S.G.,Ann.Neurol.37,287−288,1995;Selkoe,D.J.,Nature 399,A23−A31,1999;Borchelt D.R.et al.,Neuron 17,1005−1013,1996)。βアミロイド沈着物は、いくつかの種類のアミロイドβペプチド(Aβ)から構成され;特にAβ42がアミロイドプラークに徐々に沈着してゆく。ADは進行性の疾患であり、記憶形成の早期欠損に関連し、最終的には高度の認知機能の完全な衰退をもたらす。ADの病因に特有の特徴は、変性プロセスに対する特定の脳領域および神経細胞の亜集団の選択的な脆弱化である。特に、側頭葉領域および海馬が、この疾患の進行において早期にかつより重大な影響を受ける。他方、前頭皮質、後頭皮質、および小脳のニューロンは大部分が無傷のまま維持され、神経変性から保護される(Terry et al.,Annals of Neurology 1981,10:184−192)。
【0005】
遺伝学的証拠は、全てではないにしても多くの家族性ADを引き起こす遺伝的条件においてAβ42の産生量が増加することを示唆しており(Borchelt D.R.et al.,Neuron 17,1005−1013,1996;Duff K.et al.,Nature 383,710−713,1996;Scheuner D.et al.,Nat.Med.2,864−870,1996;Citron M.et al.,Neurobiol.Dis.5,107−116,1998)、Aβ42生成の増加もしくは分解の減少のいずれか、またはその両方によってアミロイド形成が引き起こされ得る可能性が指摘されている(Glabe,C.,Nat.Med.6,133−134,2000)。これらはAPP、プレセニリン1、およびプレセニリン2の遺伝子における遺伝的欠陥に起因する稀な早期発症型ADの例であるが、主流形態である晩期発症型の散発性ADは、その病因論的起源が未だ解明されていない。しかし、その個体にADを発症させるいくつかの危険因子が同定されており、その中で最も注目されているのがアポリポタンパク質E(ApoE)のイプシロン4対立遺伝子およびシスタチンCのB対立遺伝子である。神経変性障害の遅発性のおよび複雑な病因は、解決が困難な治療剤開発に対する挑戦を強いている。
【0006】
現在、ADは治癒できず、高い確率で死亡前にADを診断する方法すらない。しかし、βアミロイドは、その形成を減少させる(Vassar,R.et al.,Science 286,735−41,1999)かまたはその脳からのクリアランスを促進する機構を活性化させるよう設計された薬物の開発において主要な標的となっている。
【0007】
しかし、Schenkら(Nature,vol.400,173−177,1999;Arch.Neurol.,vol.57,934−936,2000)による最初の実験結果は、ADに対する新しい治療ストラテジーの可能性を示唆する。変異型ヒトAPP(717位のアミノ酸が通常のバリンではなくフェニルアラニンである)を過剰発現するPDAPPトランスジェニックマウスは、年齢依存的かつ脳領域依存的な様式でADの神経病理学的特徴の多くを徐々に発症する。AD型の神経病理の発症前(6週齢)またはアミロイドβの沈着およびいくつかのその後の神経病理学的変化が十分に観察されるそれよりも老齢時(11月)のいずれかにおいて、トランスジェニック動物をAβ42で免疫刺激した。若い動物を免疫刺激することで、βアミロイドプラークの形成、神経炎性ジストロフィ(neuritic dystrophy)、およびアストログリオーシスの発症が本質的に予防された。老齢の動物の処置もまた、これらのAD様神経病理の程度および進行を顕著に軽減した。Aβ42免疫は抗Aβ抗体を生成させることおよびAβ免疫反応性の単球性/小グリア細胞が残存するプラーク領域で見られることが示された。しかし、能動免疫アプローチは、ヒト被検体において重篤な副作用および現時点で知られていない合併症を併発し得る。
【0008】
Bardら(Nature Medicine,Vol.6,Number 8,916−919,2000)は、アミロイドβペプチドに対する抗体の末梢投与がアミロイド量を十分に減らすことを報告している。受動的に投与された抗体は、比較的低い血清レベルであったにも拘わらず、血液脳関門を通過して中枢神経系に入り、プラークをデコレートして既存のアミロイドのクリアランスを誘導することができた。しかし、βペプチドに対する受動免疫でさえも、ヒト患者においては望ましくない副作用を引き起こす可能性がある。
【0009】
本発明は、アルツハイマー患者を処置するための組換えタンパク質の使用に関する。Aβペプチドの代謝における同化経路と異化経路の間のバランスは微妙である。多くの努力がAβペプチドの生成に対してなされてきたが、これらのペプチドのクリアランスに対しては最近までほとんど注目されてこなかった。細胞外Aβペプチドの除去は、二つの一般的な機構:細胞内インターナリゼーションおよび細胞外分解を通じて進行するようである。本発明は、アミロイドβペプチドの自然異化プロセスを補完する新規のアプローチを記載する。
【0010】
DeMattos(PNAS 98:8850−8855.2001)は、Aβペプチドがその血漿中濃度を低下させることによって間接的にCNSから除去できることを提唱するシンク仮説(sink hypothesis)を記載している。彼らは血漿中のAβペプチドと結合する抗体を使用し、それによってCNSからAβを隔離した。これは、この抗体が血漿からCNSへのAβの流入を阻止し、および/または遊離Aβの血漿中濃度の低下により血漿とCNSの間の平衡を変化させるがゆえに達成される。抗体とは関係のないアミロイド結合因子もまた、血漿中での結合を通じてCNSからアミロイドβペプチドを除去するのに有効であることが示された。Matsuokaら(J.Neuroscience,Vol.23:29−33,2003)は、二つのアミロイドβペプチド結合因子、ゲルソリンおよびGM1を用いて血漿中Aβを隔離しそれによって脳アミロイドーシスを軽減または予防するというデータを示した。
【0011】
Aβペプチドを除去または排除する別のアプローチは、アミロイドβペプチドを毒性学的作用がないかまたは少ない、よりクリアランスを受け易い小フラグメントに分解する分解酵素の使用である。このAβペプチドの酵素的消化もまた、遊離アミロイドβペプチドの血漿中濃度の低下によるシンク仮説の機構を通して作用し続ける。しかし、CNSおよび/またはCSFのアミロイドβペプチドの直接的なクリアランスという選択肢も存在する。このアプローチは遊離Aβの濃度を低下させるだけでなく、その全長ペプチドから環境を直接的に浄化し得る。このアプローチは、抗体等のアミロイドβペプチド結合因子を用いた場合に見られるような血漿中Aβの総(遊離および結合)濃度を増加させないために有利である。Aβペプチドを複数の部位で分解する酵素、例えばNEPが文献に記載されている(Leissring et al.,JBC.278:37314−37320,2003)。複数部位でのAβペプチドの分解は小フラグメントを生成し得、これは血流から迅速に排除される。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的は、Aβペプチドを分解できる融合タンパク質を提供することである。従って本発明は、Aβペプチドをそのアミノ酸配列内の一つまたはそれ以上の切断部位で分解できる、式A−L−M[AはAβペプチドを切断する成分であり;Mは血漿中半減期を調節する成分であり;LはAおよびMを接続する成分である]を有する融合タンパク質を提供する。
【0013】
一つの局面において、LがAおよびMを共有結合により接続する、そのような融合タンパク質を提供する。
【0014】
別の局面において、Aがプロテアーゼである、そのような融合タンパク質を提供する。このようなプロテアーゼは改良型プロテアーゼであり得る。
【0015】
さらに別の局面において、Aがスカフォールドタンパク質である、そのような融合タンパク質を提供する。
【0016】
さらに別の局面において、Aがヒトネプリライシンである、そのような融合タンパク質を提供する。この局面の一つの実施態様において、ネプリライシンは細胞外ネプリライシンである。細胞外ネプリライシンは配列番号1、2、3、または4のいずれか一つに記載のアミノ酸配列を含み得る。
【0017】
さらに別の局面において、Aがインスリン分解酵素である、そのような融合タンパク質を提供する。
【0018】
さらに別の局面において、Mが抗体のFc部分である、そのような融合タンパク質を提供する。MはIgG抗体由来のFc部分であり得る。
【0019】
さらに別の局面において、Mがペグ化もしくはグリコシル化のいずれかまたはその両方である、そのような融合タンパク質を提供する。
【0020】
さらに別の局面において、Lが適当な配列を有するペプチド、化学リンカー、およびAとMの間の直接接続から選択される、そのような融合タンパク質を提供する。
【0021】
さらに別の局面において、Aがヒトネプリライシンであり;MがIgG抗体由来のFc部分であり;Lがペプチドである、そのような融合タンパク質を提供する。ネプリライシンは細胞外ネプリライシンであり得、配列番号1、2、3、または4のいずれか一つに記載のアミノ酸配列を含み得る。
【0022】
さらに別の実施態様において、融合タンパク質は、配列番号8に記載のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の融合タンパク質である。
【0023】
さらに別の局面において、成分Lを通じて接続された成分Aおよび成分Mの組み合わせが、成分A単独よりも長い半減期を有する、そのような融合タンパク質を提供する。
【0024】
本発明の別の実施態様において、Aβペプチドを一つまたはそれ以上の切断部位で分解できる、式(B:A)−L−M[BはAβペプチドに結合する成分であり、AはAβペプチドを切断する成分であり;Mは血漿中半減期を延長する成分であり;LはBおよびAとMを接続する成分である]を有する融合タンパク質を提供する。
【0025】
この実施態様の一つの局面において、LがAおよびMを共有結合により接続する、そのような融合タンパク質を提供する。
【0026】
この実施態様の別の局面において、Bがアミロイドβペプチドを結合するタンパク質である、そのような融合タンパク質を提供する。
【0027】
この実施態様の別の局面において、Bがアミロイドβペプチドを結合するよう設計・合成された構造である、そのような融合タンパク質を提供する。
【0028】
この実施態様の別の局面において、Bが相補性決定領域(CDR)を含む抗体由来の部分、例えばFab、scFv、または単一ドメインである、そのような融合タンパク質を提供する。重鎖のみを有するラクダ抗体(camel antibody)が結合成分として使用できる。
【0029】
この実施態様の別の局面において、Bがアミロイドβペプチドを結合するスカフォールドタンパク質である、そのような融合タンパク質を提供する。スカフォールドタンパク質の例はテンダミスタット(tendamistat)、アフィボディ(affibody)、アンチカリン(anticalin)、およびアンキリンである。
【0030】
この実施態様のさらに別の局面において、Aがプロテアーゼ、改良型プロテアーゼ、およびスカフォールドタンパク質から選択される、そのような融合タンパク質を提供する。
【0031】
この実施態様のさらに別の局面において、Aがヒトネプリライシンである、そのような融合タンパク質を提供する。ネプリライシンは細胞外ネプリライシンであり得、配列番号1、2、3、または4のいずれか一つに記載のアミノ酸配列を含み得る。
【0032】
この実施態様のさらに別の局面において、Aがインスリン分解酵素である、そのような融合タンパク質を提供する。
【0033】
この実施態様のさらに別の局面において、Mが抗体のFc部分である、そのような融合タンパク質を提供する。MはIgG抗体由来のFc部分であり得る。
【0034】
この実施態様のさらに別の局面において、Mがペグ化もしくはグリコシル化のいずれかまたはその両方である、そのような融合タンパク質を提供する。
【0035】
この実施態様のさらに別の局面において、Lがペプチド、化学リンカー、およびAとMの間の直接接続から選択される、そのような融合タンパク質を提供する。
【0036】
この実施態様のさらに別の局面において、Aがヒトネプリライシンであり;BがFabフラグメントであり;MがIgG抗体由来のFc部分であり;Lがペプチドである、そのような融合タンパク質を提供する。ネプリライシンは細胞外ネプリライシンであり得、配列番号1、2、3、または4のいずれか一つに記載のアミノ酸配列を含み得る。
【0037】
この実施態様のさらに別の局面において、成分Lを通じて連結された成分A、成分B、および成分Mの組み合わせが、成分A単独もしくは成分B単独、または成分AおよびBを一緒に接続したものよりも長い半減期を有する、そのような融合タンパク質を提供する。
【0038】
本発明のさらに別の実施態様において、Aβペプチドを一つまたはそれ以上の切断部位で分解できる、式A−L−M−L−B[BはAβペプチドを結合する成分であり、AはAβペプチドを切断する成分であり;Mは血漿中半減期を延長する部分であり;LはAとMおよびMとBを接続する成分である]を有する融合タンパク質を提供する。
【0039】
この実施態様の一つの局面において、LがAおよびMを共有結合により接続する、そのような融合タンパク質を提供する。
【0040】
この実施態様の別の局面において、Aがプロテアーゼ、改良型プロテアーゼ、およびスカフォールドタンパク質から選択される、そのような融合タンパク質を提供する。
【0041】
この実施態様のさらに別の局面において、Aがヒトネプリライシンである、そのような融合タンパク質を提供する。ネプリライシンは細胞外ネプリライシンであり得、配列番号1、2、3、または4のいずれか一つに記載のアミノ酸配列を含み得る。
【0042】
この実施態様のさらに別の局面において、Aがインスリン分解酵素である、そのような融合タンパク質を提供する。
【0043】
この実施態様のさらに別の局面において、Bがアミロイドβペプチドを結合するタンパク質である、そのような融合タンパク質を提供する。
【0044】
この実施態様の別の局面において、Bがアミロイドβペプチドを結合するよう設計・合成された構造である、そのような融合タンパク質を提供する。
【0045】
この実施態様の別の局面において、Bが相補性決定領域(CDR)を含む抗体由来の部分、例えばFab、scFv、または単一ドメインである、そのような融合タンパク質を提供する。重鎖のみを有するラクダ抗体が結合成分として使用できる。
【0046】
この実施態様の別の局面において、Bがアミロイドβペプチドに結合するスカフォールドタンパク質である、そのような融合タンパク質を提供する。スカフォールドタンパク質の例はテンダミスタット、アフィボディ、アンチカリン、およびアンキリンである。
【0047】
この実施態様のさらに別の局面において、Mが抗体のFc部分である、そのような融合タンパク質を提供する。MはIgG抗体由来のFc部分であり得る。
【0048】
この実施態様のさらに別の局面において、Mがペグ化およびグリコシル化から選択される、そのような融合タンパク質を提供する。
【0049】
この実施態様のさらに別の局面において、Lがペプチド、化学リンカー、およびAとMの間の直接接続から選択される、そのような融合タンパク質を提供する。
【0050】
この実施態様のさらに別の局面において、Aがヒトネプリライシンであり;BがFabフラグメントであり;MがIgG抗体由来のFc部分であり;Lがペプチドである、そのような融合タンパク質を提供する。ネプリライシンは細胞外ネプリライシンであり得、配列番号1、2、3、または4のいずれか一つに記載のアミノ酸配列を含み得る。
【0051】
この実施態様のさらに別の局面において、成分Lを通じて連結された成分A、成分B、および成分Mの組み合わせが、成分A単独もしくは成分B単独、または成分AおよびBを一緒に接続したものよりも長い半減期を有する、そのような融合タンパク質を提供する。
【0052】
本明細書を通して使用される用語は、特定の例に限定する他の断りがない限り以下の通り定義される。
【0053】
用語「調節因子」は、治療用タンパク質の分解を防止する、および/または血漿中半減期を増加させるか、毒性を減らすか、免疫原性を減らすか、もしくは生物学的活性を増加させる分子を意味する。典型的な調節因子には、Fcドメインおよび直鎖ポリマー(例えばポリエチレングリコール(PEG)、ポリリジン、デキストラン等);分枝鎖ポリマー(例えば米国特許第4,289,872号、米国特許第5,229,490号;WO93/21259を参照のこと);脂質;コレステロール類(例えばステロイド);糖質もしくはオリゴ糖;またはサルヴェージ受容体(salvage receptor)に結合する任意の天然もしくは合成タンパク質、ポリペプチド、もしくはペプチドが含まれる。グリコシル化もまた、その融合タンパク質のサイズの増加を通じて、主としてクリアランス機構の変化により血漿中半減期を延長できる調節因子の例である。
【0054】
用語「タンパク質」は、アミロイドβペプチドをそのアミノ酸配列内の任意の可能性のある部位でタンパク質分解的切断によって分解する触媒活性を有する分子を意味する。タンパク質の例には、ネプリライシン酵素およびアミロイドβペプチドを分解するその他の触媒活性酵素が含まれる。触媒抗体もまた、タンパク質部分として使用できる。タンパク質は、任意の種(例えばヒト、サル、マウス)由来の天然の変異体または合理的設計もしくは分子進化技術(molecular evolution technologies)を用いて設計された変異体であり得る。タンパク質分子はまた、種々の多型変異体またはスプライス変異体であり得る。
【0055】
用語「融合物」は、調節因子分子およびタンパク質分子から構成される分子を意味する。調節因子はタンパク質部分に共有結合により連結されて、融合タンパク質が形成され得る。タンパク質を調節因子部分に連結するのに非共有結合的アプローチも使用できる。
【0056】
用語「分解する」または「分解」は、一つの出発分子を二つまたはそれ以上の分子に分割するプロセスを意味する。より具体的には、アミロイドβペプチド(アミノ酸1〜43およびそれ未満の任意のサイズ)は切断され、その出発分子と比較してより小さいフラグメントを生成する。切断は、ペプチド結合の加水分解またはその分子をより小さな部分に分割するその他のタイプの反応を通じて達成され得る。
【0057】
用語「ネイティブFc」は、単量体型であるか多量体型であるかを問わず、全長抗体の消化により生じる非抗原結合フラグメントの配列を含む分子または配列を意味する。ネイティブFcの元々の免疫グロブリン源は、ヒト起源のものであり得、かつIgG1およびIgG2が好ましいものの任意の免疫グロブリンであり得る。ネイティブFcは単量体ポリペプチドから構成され、これらは共有結合(すなわちジスルフィド結合)および非共有結合による会合により連結されて二量体型または多量体型となり得る。ネイティブFc分子の単量体サブユニット間の分子内ジスルフィド結合数は、クラス(例えばIgG、IgA、IgE)またはサブクラス(例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgA1、IgGA2)に依存して1〜4の範囲である。ネイティブFcの一つの例は、IgGのパパイン消化により生じるジスルフィド結合型二量体である(Ellison et al.(1982),Nucleic Acids Res.10:4071−9を参照のこと)。本明細書中で使用される場合、用語「ネイティブFc」は、単量体型、二量体型、および多量体型の総称である。
【0058】
用語「Fc変異体」は、ネイティブFcから修飾されたものであるがサルヴェージ受容体FcRnに対する結合部位を依然として保持する分子または配列を意味する。参照により本明細書に組み込まれる刊行物WO97/34631およびWO96/32478は、典型的なFc変異体およびサルヴェージ受容体との相互作用を記載する。従って、用語「Fc変異体」は、非ヒトネイティブFcからヒト化された分子または配列を含む。さらに、ネイティブFcは、本発明の融合分子に必要とされない構造的特徴または生物学的活性を提供するという理由で除去され得る部位を含む。従って、用語「Fc変異体」は、(1)ジスルフィド結合の形成、(2)選択された宿主細胞との不適合性、(3)選択された宿主細胞における発現の場合のN末端の不均一性、(4)グリコシル化、(5)補体との相互作用、(6)サルヴェージ受容体以外のFc受容体への結合性、または(7)抗体依存的な細胞の細胞傷害性(ADCC)に影響するかまたはこれらに関与する一つまたはそれ以上のネイティブFc部分または残基を欠く分子または配列を含む。Fc変異体については、本明細書中以降でさらに詳細に記載する。
【0059】
用語「Fcドメイン」は、上記のようなネイティブFcおよびFc変異体の分子および配列を包含する。Fc変異体およびネイティブFcと同様、用語「Fcドメイン」は、全長抗体から消化されたものであるかその他の手段によって作製されたものであるかを問わず、単量体型または多量体型の分子を含む。
【0060】
用語「薬理学的に活性」は、そのように記載される物質が測定して、医学的パラメータ(例えば血圧、血球数、コレステロールレベル)または疾患状態(例えばがん、自己免疫障害、痴呆)に影響する活性を有することを意味する。
【0061】
用語「アミロイドベータペプチド」、「Aβペプチド」、または「アミロイドβペプチド」は、ヒトAβ A4タンパク質[前駆体]における、その配列のアミノ酸672〜714に対応するアミノ酸配列(一文字コード)DAEFRHDSG YEVHHQKLVF FAEDVGSNKG AIIGLMVGGV VIAT(配列番号50)(アミノ酸1〜43)に相関する任意の形態のペプチドを意味する。これにはこのペプチドの任意の短縮形態、例えば1〜38、1〜40、および1〜42も含まれるがこれらの形態に限定されない。さらに、アミロイドβペプチドはいくつかの天然形態を有する。ヒト型のアミロイドβペプチドは、Aβ39、Aβ40、Aβ41、Aβ42、およびAβ43と称される。これらのペプチドの配列およびAPP前駆体との関係は、Hardy et al.,TINS 20,155−158(1997)の図1で解説されている。例えば、Aβ42は、配列:H2N−Asp−Ala−Glu−Phe−Arg−His−Asp−Ser−Gly−Tyr−Glu−Val−His−His−Gln−Lys−Leu−Val−Phe−Phe−Ala−Glu−Asp−Val−Gly−Ser−Asn−Lys−Gly−Ala−Ile−Ile−Gly−Leu−Met−Val−Gly−Gly−Val−Val−IIe−Ala−OH(配列番号51)を有する。Aβ41、Aβ40、およびAβ39は、それぞれ、C末端からAla、Ala−Ile、およびAla−Ile−Valが脱落している点でAβ42と異なる。Aβ43は、C末端にスレオニン残基が存在する点でAβ42と異なる。全般的には、アミロイドベータペプチドは、アルツハイマー病を引き起こすプラーク形成に関与するペプチド形態を意味する。
【0062】
用語「半減期」は、融合タンパク質の初期濃度の半分が血漿から排除されるのに要する時間と定義される。本発明は、血漿中半減期を調節する方法を記載する。このような修飾により、薬物動力学的特性の改善された(例えば、インビボ血清中半減期が増大した)融合タンパク質が生産され得る。半減期の延長は、融合タンパク質の初期濃度の半分を血漿から除去またはクリアランスを行うのにより長い時間がかかることを意味する。薬学的または化学的な化合物の半減期は十分定義されており、当該分野で公知である。
【0063】
用語「接続」は、二つまたはそれ以上の部分の間の共有結合的または可逆的な連結を意味する。共有結合的連結は、例えばペプチド結合、ジスルフィド結合、炭素−炭素カップリング、または原子間の共有結合的連結に基づく任意のタイプの連結であり得る。可逆的連結は、例えばビオチン−ストレプトアビジン、抗体−抗原、または当該分野で公知の可逆的連結として分類される連結であり得る。例えば、共有結合的連結は、融合タンパク質のタンパク質部分および調節因子部分が同一プラスミドから組換え体として生産される場合、従ってそのような接続がDNAレベルで設計される場合に、直接的に獲得される。
【0064】
用語「切断部位」は、タンパク質または酵素によって切断され得るペプチド配列内の特定の位置/部位を意味する。切断は通常、二つのアミノ酸を接続するペプチド結合の加水分解によってなされる。切断はまた、タンパク質または酵素を単独でまたは組み合わせて用いることで、同一ペプチド内の複数部位においてなされ得る。切断部位はまた、ペプチド結合以外の部位であり得る。本発明は、アミロイドβペプチドの切断について詳細に記載する。
【0065】
用語「結合ドメイン」は、治療上適切な親和性でアミロイドβペプチドと結合する分子を意味する。これらの分子は、約106、107,108,109、または1010-1より大きいまたはこれに等しい結合親和性でアミロイドβペプチドに結合する。典型的な結合ドメインは、抗体(例えば、全てCDR領域を含むFab、scFv、単一ドメイン)、本発明および文献に記載されるスカフォールドタンパク質、またはアミロイドβペプチドに対する親和性を有する合成分子であるがこれらに限定されない。
【0066】
用語「プロテアーゼ」は、ペプチド結合の加水分解において作用する任意のタンパク質分子を意味する。プロテアーゼには、天然のタンパク質分解酵素、および部位特異的もしくはランダム突然変異誘発または任意のその他のタンパク質工学的方法により獲得されるそれらの変異体、タンパク質分解酵素の任意のフラグメント、または上記タンパク質の一つを含む任意の分子複合体もしくは融合タンパク質が含まれる。プロテアーゼは、セリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、またはメタロプロテアーゼであり得る。
【0067】
用語「基質」または「ペプチド基質」は、プロテアーゼによる触媒作用により加水分解され得るペプチド結合を含む、任意のアミノ酸組成、配列、または長さの任意のペプチド、オリゴペプチド、またはタンパク質分子を意味する。加水分解されるペプチド結合は、「切断部位」と称される。基質内の位置の番号表示は、Schlechter & Bergerにより導入された系に従う(Biochem.Biophys.Res.Commun.27(1967)157−162)。切断部位のN末端側に隣接するアミノ酸残基には、P1、P2、P3等の番号を付し、切断部位のC末端側に隣接する残基には、P1’、P2’、P3’等の番号を付す。本発明の基質またはペプチド基質はアミロイドβペプチドである。
【0068】
用語「特異性」は、特定のペプチド基質を選択的に認識および加水分解する一方で他の基質は切断せず維持する、タンパク質またはプロテアーゼの能力を意味する。特異性は、定性的および定量的に表現され得る。「定性的特異性」は、ペプチド基質の特定の位置でプロテアーゼに受け入れられるアミノ酸残基の種類を意味する。全ての潜在的なペプチド基質のうちのごく一部のみを受け入れるプロテアーゼは、「高い特異性」を有する。ほとんど全てのペプチド基質を受け入れるプロテアーゼは、「低い特異性」を有する。非常に低い特異性を有するプロテアーゼは「非特異的プロテアーゼ」とも称される。
【0069】
用語「進化型プロテアーゼ(evolved protease)」は、ランダムPCR、DNAシャッフリング、またはDNA/RNAレベルで多様性を発生させる他のタイプの方法を用いて獲得されている任意のプロテアーゼを表す。これらのアプローチについて記載する文献は、例えば、D.A.Drummond,B.L.Iverson,G.Georgiou and F.H.Arnold,Journal of Molecular Biology 350:806−816(2005)およびS.McQ and D.S.Tawfik,Biochemistry 44:5444−5452(2005)である。
【0070】
用語「改良型プロテアーゼ」は、必要な場合により高い触媒活性を有する任意のプロテアーゼ変異体を表す。しかし、いくつかの例においては、より低い触媒活性が好ましい場合がある。改良型プロテアーゼはまた、起源のプロテアーゼよりも、他の基質と比較して特定の基質をより効率的に切断する変異体を意味する。改良型は、より最適化された薬学的化合物を得るためのより好ましい特性、例えば触媒活性および/または選択性を意味する。
【0071】
用語「ヒトネプリライシン」は、任意の天然型のヒトネプリライシンを意味する。これには、ヒト集団において天然に存在する全てのスプライス変異体および多型変異体が含まれる。多くの形態のヒトネプリライシンが本発明において記載されている(配列番号1〜4)。
【0072】
用語「スカフォールドタンパク質」は、アミロイドβペプチドに結合する任意のタンパク質を表す。スカフォールドタンパク質の例は、テンダミスタット、アフィボディ、アンチカリン、およびアンキリンである。これらのスカフォールドタンパク質は、典型的には設計され、これは堅いコア構造、および結合因子の識別のためにランダム化される部分、ループ、表面、または内腔に基づく。これらのスカフォールドタンパク質は文献に十分記載されている。
【0073】
本発明は、最適化された組換えAβ分解酵素の投与が、Aβの脳内レベルを低下させることによってアミロイドプラーク形成を阻害する可能性を示唆する。これによって、アミロイドプラークに関連するアストログリオーシスも軽減される。
【0074】
本発明の一つの局面において、治療用化合物は全てヒト起源のものである。融合タンパク質は、免疫原性作用の可能性が最も低いリンカーを用いて一緒に連結された完全ヒトタンパク質から構成される。
【0075】
結合分子、例えば抗体と比較して、分解酵素を使用する利点は以下の通りである:
・ アミロイドβペプチドとの複合体中の結合分子が十分迅速に排除されない場合にアミロイドβペプチドの濃度が上昇する可能性のある結合アプローチと比較して、酵素によるアミロイドβペプチドの分解は毒性作用を直接的に除去し得る。これは、アミロイドβペプチドの濃度が末梢で上昇する場合に特に有害であり得る。
・ アミロイドβペプチドの触媒による分解は、結合よりも効果的にペプチドを除去する。十分なアミロイドβペプチドを除去するのに触媒量の分解酵素しか必要としないのに対して、結合分子、例えば抗体の場合は、治療効果のために化学量論的な量が必要とされる。このことは、治療的処置に必要な量に大きな影響を及ぼす。
・ 結合分子が抗体であり、BBBを通過してプラーク内のアミロイドβペプチドに結合できる場合、有害な潜在的免疫学的応答が起こる可能性がある。他方、触媒性融合タンパク質はプラークに結合せず、Fc反応性を使用するものの遊離アミロイドβペプチドの濃度を減少させるのみである。従って、触媒酵素は遊離アミロイドβペプチドのプールを分解するのみである。抗体等の結合因子は、CNSに入り、Fc活性を通じてプラークを溶解する可能性がある。これは、多量のアミロイドβペプチドがプラーク周辺に放出されかつそれらが細胞に毒性である場合望ましくないことがある。
【0076】
Aβの異化における一つの重要な酵素はネプリライシンであり、これは中性エンドペプチダーゼ24.11またはNEPとしても公知である。Iwataら(Nature Medicine,6:143−149,2000)は、Aβ1-42ペプチドが、生化学的な分析によればネプリライシンと類似または同一のNEPにより行われる限定的なタンパク質分解を通じて完全な分解を起こすことを示した。常に、NEP阻害剤の注入は、内因性Aβ42の生化学的・病理学的な脳内沈着をもたらした。従ってこのNEPにより触媒されるタンパク質分解はAβ42異化の割合を制限することが見出された。
【0077】
NEPは、エンケファリン、タキキニン、ブラジキニン、エンドセリン、および心房性ナトリウム利尿ペプチドを含む様々な生物学的に活性なペプチドの不活性化に関与する、94kDの2型膜結合型Znメタロペプチダーゼである。NEPはCNSのペプチド作動性ニューロンに存在し、その脳内発現は細胞特異的な様式で調節される(Roques B.P.et al.,Pharmacol.Rev.45,87−146,1993;Lu B.et al.,J.Exp.Med.181,2271−2275,1995;Lu B.et al.,Ann.N.Y.Acad.Sci.780,156−163,1996)。2型NEP転写物はCNSには存在しないが、1型および3型の転写物は、それぞれニューロンおよび脳梁の乏突起膠細胞に局在する(Li C.et al.,J.Biol.Chem.270,5723−5728,1995)。プロテアーゼおよびエンドペプチダーゼのネプリライシンファミリーには、NEPと構造的または機能的に相同なメンバー、例えば最近記載された、NEPに対して補完的なパターンでCNSにおいて発現されるNEP II遺伝子およびそのアイソフォームを含む(Ouimet T.et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.271:565−570,2000)。このファミリーのさらなるメンバーはNL−1(ネプリライシン様1)であり、これはNEP阻害剤ホスホラミドンにより効率的に阻害される可溶型タンパク質である(Ghaddar G.et al.,Biochem.J.347:419−429,2000)。
【0078】
Aβを異化することが公知の他の酵素もまた記載されている。亜鉛メタロペプチダーゼであるインスリン分解酵素(IDE,EC.3.4.22.11)は、Aβ1-40およびAβ1-42を切断して無害な生産物らしきものにする。IDEは真のペプチダーゼであり;タンパク質を加水分解しない。この酵素は、インビトロでインスリンおよびインスリン関連ペプチド、βエンドルフィン、ならびにAβペプチドを含む限定的な数のペプチドを切断する。IDEは、生理学的なAβの代謝酵素の一つであることが示唆されている(W.Q.Qui et al.(1998)J.Biol.Chem.273,32730−32738)。KurichkinおよびGoto(I.V.Kurochkin and S.Gato(1994)FEBS Lett.345,33−37)は、インスリン分解酵素がAβ1-40を加水分解できることを最初に報告した。この知見は、二つの別の研究において確認された(W.Q.Qui et al.(1998)J.Biol.Chem.273,32730−32738;およびJ.R.McDermott and A.M.Gibson(1997)Neurochem.Res.22,49−56)。さらに、最近Aβ分解酵素であることが同定された(Yamin R.et al.,J.Biol.Chem.274,18777−18784,1999)メタロプロテアーゼ24.15もまた、Aβの注射に反応して変化しなかった。アンギオテンシン変換酵素(ACE)、無関係のニューロンのZnメタロエンドペプチダーゼもまた、潜在的なAβペプチド分解酵素であると言及されている(Barnes N.M.et al.,Eur.J.Pharmacol.200,289−292,1991;Alvarez R.et al.,J.Neurol.Neurosurg.Psychiatry 67,733−736,1999;Amouyel P.et al.,Ann.N.Y.Acad.Sci.903,437−441,2000)が、Aβに対する親和性は未知である(McDermott J.R.and Gibson A.M.,Neurochem.Res.22,49−56,1997)。
【0079】
ネプリライシン由来の使用される配列は、このタンパク質の細胞外部分であり得る。細胞外部分は、膜領域の外側であると定義されるネプリライシンの部分と定義される。本発明はまた、アミロイドβペプチド分解成分としてのネプリライシンの全長配列の使用を包含する。本発明はまた、アミロイドβペプチドに対する触媒活性が保存されている限り、ネプリライシンの小フラグメントを包含する。本発明はまた、ネプリライシンの任意の多型変異体およびスプライス変異体を包含する。
【0080】
本発明は、Aβペプチドがアミロイドプラークを形成する前にこれらを加水分解するかまたは少なくとも既存のプラークがさらに進行するのを防止するための新規かつ代替的なストラテジーを記載する。遊離のAβペプチドと平衡状態にある任意のプラーク由来のAβペプチドを加水分解することにより既存のプラークを除去することもまた可能な場合もある。
【0081】
本発明の別の実施態様は、高い親和性でアミロイドβペプチドに結合する一つの部分から構成される分子に関する。この親和性は、結合親和性でいうとマイクロモル濃度未満である。アミロイドβペプチドに対する結合親和性は、好ましくは結合親和性でいうとナノモル濃度水準である。アミロイドβペプチドとの相互作用に関与する他の部分は、アミロイドβペプチド構造の一つまたはそれ以上の部位でアミロイドβペプチドを切断する活性成分である。両方ともアミロイドβペプチドを認識する結合部分と触媒活性部分を一緒に連結して組み合わせる理由は、結合部分がアミロイドβペプチドに結合することによってその局所濃度を増加させ、(結合部分および触媒部分が)解離型のアミロイドβペプチドに結合するためである。一部はその解離型に特異的に結合し、凝集型には結合しない。一部は凝集型および解離型の両方に結合する。一部のそのような抗体はアミロイドβペプチドの天然の短鎖型Aβに結合し(すなわち、共有結合またはその他の方法で一緒に連結され)、その二機能性分子に操作された連結により局所的に周囲に存在する活性部分により切断されることになる。アミロイドβペプチド結合成分とアミロイドβペプチド分解成分の間の連結は、リンカー成分を含むまたは含まない血漿中半減期調節成分を介在させるのが好ましい。
【0082】
本発明のいくつかの実施態様において、治療剤は、アミロイドβペプチドまたはアミロイドプラークの他の成分に特異的に結合する融合タンパク質を含む。このような化合物は、モノクローナルもしくはポリクローナルまたは任意のその他のアミロイドβペプチド結合因子の一部であり得る。これらの化合物は、約106、107、108、109、または1010-1より大きいまたはこれに等しい結合親和性でアミロイドβペプチドに結合する。これらの結合成分は、好ましくはアミロイドβペプチド分解成分に接続される。
【0083】
本発明の一つの局面は、融合タンパク質における抗体の「Fc」ドメインおよびアミロイドβペプチド分解成分の組み合わせに関する。抗体は、二つの機能的に独立した部分、抗原に結合する「Fab」として公知の可変ドメイン、ならびに補体活性化および食細胞による攻撃のようなエフェクター機能に関連する「Fc」として公知の定常ドメインを含む。Fcの血清中半減期は長いが、Fabは短命である。Capon et al.(1989),Nature 337:525−31。Fcドメインは、治療用タンパク質と組み合わされることで、より長い半減期を提供するか、またはFc受容体結合、プロテインA結合、補体結合のような機能、およびおそらくは胎盤通過さえも組み込むことができる。
【0084】
本発明の好ましい分子は、Fc結合型アミロイドβペプチド分解タンパク質、例えばNEP関連タンパク質である。
【0085】
抗体のFcドメインとの融合によるタンパク質性治療剤の有用な修飾については、発明の名称「Modified Peptides as Therapeutic Agents」の公報WO 99/25044で詳細に議論されている。この公報は、「運搬体(vehicle)」、例えばPEG、デキストラン、またはFc部分との連結について議論している。
【0086】
IgG分子は、抗体のIgGクラスに特異的な三つのクラスのFc受容体(FcR)、すなわちFcγRI、FcγRII、またはFcγRIIIと相互作用する。好ましい実施態様において、融合タンパク質の免疫グロブリン(Ig)成分は、FcγRI、FcγRII、またはFcγRIIIの少なくとも一つに対して低い結合親和性を有するIgGの定常領域の少なくとも一部を有する。本発明の一つの局面において、Fc受容体に対する融合タンパク質の結合親和性は、細胞上のFc受容体に対して低い結合親和性を有する重鎖アイソタイプを融合パートナーとして使用することによって低下させる。例えば、ヒトIgG1およびIgG3は両方ともFcRγIに高い親和性で結合されることが報告されているが、IgG4はその10分の1の親和性で結合し、IgG2は全く結合しない。Fc受容体に対するIgGの結合に重要な配列は、CH2ドメインに局在することが報告されている。従って、好ましい実施態様において、インビボでの循環半減期が強化された抗体型融合タンパク質は、IgG2またはIgG4の少なくともCH2ドメインを第二の非免疫グロブリンタンパク質に連結することによって獲得される。例えば、4つの公知のIgGアイソタイプのうち、IgG1(Cγ1)およびIgG3(Cγ3)は、高い親和性でFcRγIに結合することが公知であるが、IgG4(Cγ4)は10倍低い結合親和性を有し、IgG2(Cγ2)はFcRγIに結合しない。
【0087】
一つの実施態様において、融合タンパク質のAβペプチド分解成分は酵素である。用語「酵素」は、プロテアーゼまたはペプチダーゼとして活性なタンパク質、そのアナログ、およびそれらのフラグメントを表すために本明細書中で使用される。好ましくは、酵素には、セリンプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ、メタロプロテアーゼ、およびシステインプロテアーゼが含まれる。好ましくは、本発明の融合タンパク質は、酵素的な生物学的活性を示す。
【0088】
別の実施態様において、免疫グロブリンドメインは、IgGのFcドメイン、IgGの重鎖、およびIgGの軽鎖からなる群より選択される。別の実施態様において、融合タンパク質における抗体の定常領域はヒト起源のものであり、免疫グロブリンのIgGクラス、特にIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4クラス、好ましくはIgG2またはIgG4クラスに由来する免疫グロブリンファミリーに属するものであり得る。代替的に、他の哺乳動物由来、特にげっ歯類または霊長類由来のIgGクラスに属する免疫グロブリンの定常領域を使用することも可能であるが;本発明に従い、免疫グロブリンクラスIgD、IgM、IgA、またはIgEの定常領域を使用することも可能である。典型的には、本発明の構築物に存在する抗体フラグメントは、FcドメインCH3またはその一部、およびFcドメインCH2の少なくとも一部分のセグメントを含み得る。あるいは、二量体化のために成分(A)としてCH3ドメインおよびヒンジ領域を含む、本発明の融合構築物とすることも可能である。
【0089】
しかし、ネイティブ状態で見出される免疫グロブリン配列の誘導体、特に少なくとも一つの置換、欠失、および/または挿入を含むその変異体(これらをまとめて用語「変異体」として表す)を使用することも可能である。典型的には、このような変異体は、ネイティブ配列と少なくとも90%、好ましくは少なくとも95%、より好ましくは少なくとも98%の配列同一性を有する。この文脈で特に好ましい変異体は、典型的には各々のネイティブ配列と比較して10個未満、好ましくは5個未満、非常に好ましくは3個未満の置換を含む置換変異体である。以下の置換の選択肢が好ましいことに留意されたい:TrpとMet、Val、Leu、Ile、Phe、His、もしくはTyr、またはその逆;AlaとSer、Thr、Gly、Val、Ile、もしくはLeu、またはその逆;GluとGln、Asp、もしくはAsn、またはその逆;AspとGlu、Gln、もしくはAsn、またはその逆;ArgとLys、またはその逆;SerとThr、Ala、Val、もしくはCys、またはその逆;TyrとHis、Phe、もしくはTrp、またはその逆;GlyまたはProと他の19個の天然アミノ酸のうちの一つ、またはその逆。
【0090】
可溶型受容体−IgG融合タンパク質は一般的な免疫学的試薬であり、それらの構築方法は当該分野で公知である(例えば米国特許第5,225,538号を参照のこと)。機能的なアミロイドβペプチド分解ドメインは、免疫グロブリンクラスまたはサブクラス由来の免疫グロブリンFcドメインに融合され得る。異なるIgクラスまたはサブクラスに属する抗体のFcドメインは、別の二次エフェクター機能を活性化し得る。活性化は、Fcドメインが同族のFc受容体に結合した場合に起こる。二次エフェクター機能には、補体系を活性化する能力、胎盤を通過する能力、および様々な微生物タンパク質に結合する能力が含まれる。異なる免疫グロブリンのクラスおよびサブクラスの特性は、Roitt et al.,Immunology,p.4.8(Mosby−Year Book Europe Ltd.,3d ed.1993)に記載される。抗原結合性のIgG1、IgG3、およびIgM抗体のFcドメインは、補体酵素カスケードを活性化できる。IgG2のFcドメインは補体活性化に対する効果が小さいようであり、IgG4、IgA、IgD、およびIgEのFcドメインにはそのような効果がない。従って、それに関連する二次エフェクター機能が特定の免疫応答またはアミロイドβペプチド分解−Fc融合タンパク質により処置されている疾患に望ましいかどうかに基づきFcドメインが選択され得る。標的細胞を損傷または死滅させるのが良い場合、特に活性なFcドメイン(IgG1)が、アミロイドβペプチド分解−Fc融合タンパク質を作製するのに選択され得る。あるいは、補体系を惹起しないアミロイドβペプチド分解−Fc融合物を生産するのが望まれる場合、不活性なIgG4 Fcドメインが選択され得る。本発明は、触媒成分がFc部分に連結されかつ直接結合成分を含まない融合タンパク質を開示する。多くのFcの作用は結合を通じて媒介されるので、これはFc由来の作用および活性が制限されることを意味する。例えば、補体活性化は、結合およびネットワークの形成に依存する。
【0091】
本発明に従う融合構築物は、典型的に、しかし必ずしもそうとは限らないが、免疫グロブリンフラグメントのC末端側に、触媒部分と調節因子部分の間に移行領域(transition region)を含み、この移行領域はさらにリンカー配列を含み得、このリンカー配列は好ましくはペプチド配列であり得る。このペプチド配列は、1〜70アミノ酸の長さを有し得、場合によりアミノ酸は、さらに好ましくは10〜50アミノ酸であり、特に好ましくは12〜30アミノ酸である。移行配列のリンカー領域は、例えばDNA制限切断部位に対応するさらなる短いペプチド配列と隣接され得る。この関係で、分子生物学から当業者がよく知っている任意の制限切断部位が使用できる。適するリンカー配列は、好ましくは多数のプロリン残基を(例えばリンカー領域における一つおきの位置に)含み、それに加えて好ましくは全体として親水性の特性を有する人工配列である。少なくとも30%がプロリン残基からなるリンカー配列が好ましい。親水性の特性は、好ましくは正電荷(例えばリジンもしくはアルギニン)または負電荷(例えばアスパラギン酸もしくはグルタミン酸)を有する少なくとも一つのアミノ酸により達成できる。従ってリンカー領域は全体として、リンカー領域に必要な柔軟性および/または剛性を付与するために、好ましくは多数のグリシン残基および/またはプロリン残基も含む。
【0092】
しかし、ネイティブ配列、例えば細胞外に配置されるが即座に作用する、すなわち細胞膜の前に位置するNEPファミリーに属するリガンドのフラグメントもまた、リンカーとして、場合によりネイティブ配列の置換、欠失、または挿入後のものとして使用するのに適している。これらのフラグメントは、好ましくは膜貫通領域以降の細胞外へと続く50AAであり、その他ではこれらの最初の50AAのサブフラグメントである。しかし、本発明の融合タンパク質におけるこれらのリンカー領域の免疫原性を制限し、いかなる生来の体液性防御反応をも惹起させないために、対応する天然ヒト配列と少なくとも85%の配列同一性を有するこれらのセグメントが好ましく、少なくとも95%の配列同一性が非常に好ましく、少なくとも99%の配列同一性が特に好ましい。本発明の文脈において、リンカー領域は好ましくはいかなる免疫原性も有するべきではない。
【0093】
しかし、アミロイドβペプチド分解成分と血漿中半減期調節成分をアミド様の結合によって連結するペプチド配列の代替として、非ペプチド性もしくは偽ペプチド性(pseudopeptide)の化合物または非共有結合に基づく化合物を使用することも可能である。この関係で言及できる例は、特にN−ヒドロキシスクシンイミドエステルおよびヘテロ二官能性リンカー、例えばN−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジ−チオ)プロピオネート(SPDP)または類似のクロスリンカーである。
【0094】
血漿中半減期を調節する他の方法は、ペグ化または分子量を増加させる他のタイプの修飾、例えばグリコシル化を使用することである。
【0095】
上記のとおり、ポリマー系調節剤もまた使用され得る。一般に、調節剤として有用な化学的部分を付加する様々な手段が利用可能であり、例えば本明細書にその全体を参照により組み込まれる、特許協力条約(「PCT」)国際公開WO96/11953、発明の名称「N−Terminally Chemically Modified Protein Compositions and Methods」を参照されたい。このPCT公報は、とりわけ、タンパク質のN末端への水溶性ポリマーの選択的付加を記載する。
【0096】
好ましいポリマー系調節剤はポリエチレングリコール(PEG)である。PEG基は、任意の都合の良い分子量のものでよく、直鎖型であっても分枝型であってもよい。PEGの平均分子量は、好ましくは約2キロダルトン(「kD」)〜約100kDa、より好ましくは約5kDa〜約50kDa、最も好ましくは約5kDa〜約10kDaの範囲であり得る。PEG基は一般的に、PEG部分の反応基(例えばアルデヒド基、アミノ基、チオール基、またはエステル基)を通じた本発明の化合物の反応基(例えばアルデヒド基、アミノ基、またはエステル基)に対するアシル化または還元的アルキル化を介して本発明の化合物に結合され得る。
【0097】
タンパク質のPEG化に有用なストラテジーは、各々が他方に対して相互に反応性を有する特定の官能性を有するタンパク質およびPEG部分を、溶液中での共役的連結の形成を通じて結合させることからなる。タンパク質は、従来の組換え発現技術を用いて調製できる。タンパク質は、特異的部位で適切な官能基により「事前活性化(preactivated)」される。この前駆体は精製され、PEG部分との反応前に十分に特徴付けがなされる。タンパク質とPEGの連結は通常水相で行われ、これは逆相分析用HPLCによって容易に観察できる。PEG化タンパク質は、分取用HPLCによって容易に精製でき、分析用HPLC、アミノ酸分析、およびレーザー脱離質量分析によって特徴付けできる。
【0098】
多糖ポリマーは、タンパク質の修飾に使用され得る別のタイプの水溶性ポリマーである。デキストランは、主としてα1−6結合により連結された個々のグルコースサブユニットを含む多糖ポリマーである。デキストラン自体は多くの分子量範囲で利用可能であり、約1kD〜約70kDの分子量のものが容易に入手できる。デキストランは、調節剤として単独でまたは別の調節因子(例えばFc)と組み合わせて本発明において使用するのに適した水溶性ポリマーである。例えばWO96/11953およびWO96/05309を参照のこと。治療用または診断用の免疫グロブリンに接合されたデキストランの使用が報告されている;例えば参照により本明細書に組み込まれる欧州特許出願公開第0 315 456号を参照のこと。デキストランを本発明に従い運搬体として使用する場合、約1kD〜約20kDのデキストランが好ましい。
【0099】
糖質(オリゴ糖)基は、タンパク質におけるグリコシル化部位として公知の部位に便利に結合され得る。一般的に、O結合型オリゴ糖は、配列Asn−X−Ser/Thr[ここで、Xはプロリン以外の任意のアミノ酸であり得る]の一部である場合のセリン(Ser)またはスレオニン(Thr)残基に付加され、N結合型オリゴ糖はアスパラギン(Asn)残基に付加される。Xは好ましくはプロリン以外の19個の天然アミノ酸の一つである。N結合型およびO結合型のオリゴ糖の構造ならびに各タイプで見られる糖残基は異なる。両方に共通して見られる一つの糖のタイプはN−アセチルノイラミン酸(シアル酸という)である。シアル酸は通常、N結合型およびO結合型の両方のオリゴ糖の末端残基であり、その負電荷によってグリコシル化化合物に酸性の特性を付与し得る。このような部位は、本発明の化合物のリンカーに組み込まれ得、好ましくは(例えば哺乳動物細胞、例えばCHO、BHK、COSにおける)ポリペプチド化合物の組換え体産生の間に細胞によりグリコシル化される。しかし、このような部位は、当該分野で公知の合成または半合成手順によってさらにグリコシル化され得る。グリコシル化に適したアミノ酸は、調節因子部分およびタンパク質部分の両方の特定部位に組み込まれ得る。これらの特定のアミノ酸の操作に使用する好ましい技術は、部位特異的変異誘発またはそれに匹敵する方法である。他の修飾の選択肢には、プロリンおよびリジンのヒドロキシル化、セリン残基またはスレオニン残基のヒドロキシル基のリン酸化、Cys中の硫黄原子の酸化、リジン、アルギニン、およびヒスチジンの側鎖のαアミノ基のメチル化が含まれる。Creighton,Proteins:Structure and Molecule Properties(W.H.Freeman & Co.,San Francisco),pp.79−86(1983)。従って、アミロイドβペプチド分解成分内のグリコシル化部位は操作され得る。例えば、好ましくはネプリライシン構造の表面上の残基がグリコシル化できるよう修飾される。ネプリライシンの3D構造は、グリコシル化部位およびペグ化部位の両方の導入に適したアミノ酸置換を選択するのに使用され得る。グリコシル化部位は、例えばAsn−X−Ser/Thr配列を用いて導入される。ペグ化のためには、表面に露出している適当なアミノ酸が、例えば、ペグ化成分の特異的かつ効率的なカップリングのためにシステイン残基に置き換えられる。
【0100】
本発明の化合物は、DNAレベルでも変更され得る。この化合物の任意の部分のDNA配列が、選択された宿主細胞と適合性がより高いコドンに変更され得る。好ましい宿主細胞である大腸菌については、最適化されたコドンが当該分野で公知である。コドンは、制限部位を排除またはサイレント制限部位を含むよう置換され得、これらは選択された宿主細胞におけるDNAのプロセシングを補助し得る。運搬体、リンカー、およびペプチドのDNA配列は、上記の配列変更のいずれかを含むよう修飾され得る。
【0101】
リンカー:任意の「リンカー」基が選択できる。存在する場合でもそれは主にスペーサーとして機能するので、その化学構造は重要ではない。リンカーは好ましくは、ペプチド結合によって一緒に連結されたアミノ酸から構成される。従って、好ましい実施態様において、リンカーは、ペプチド結合によって連結された、20個の天然アミノ酸から選択される1〜20個のアミノ酸から構成される。当業者に十分理解されていることであるが、これらのアミノ酸の一部はグリコシル化され得る。より好ましい実施態様において、1〜20個のアミノ酸は、グリシン、アラニン、プロリン、アスパラギン、グルタミン、およびリジンから選択される。さらにより好ましくは、リンカーは、大部分が、立体障害のないアミノ酸、例えばグリシンおよびアラニンで構成される。従って、好ましいリンカーは、ポリグリシン(特に(Gly)4、(Gly)5)、ポリ(Gly−Ala)、およびポリアラニンである。
【0102】
プロテアーゼの量的特異性は多様である。非常に非特異的なプロテアーゼ、例えばフェニルアラニン、バリン、もしくはロイシン残基を含む全てのポリペプチドを切断するパパイン、またはアルギニンもしくはリジン残基を含む全てのポリペプチドを切断するトリプシンが公知である。他方、特異性の高いプロテアーゼ、例えばプラスミノゲンを単一の特定配列においてのみ切断する組織型プラスミノゲン活性化因子(t−PA)も公知である。基質特異性の高いプロテアーゼは、生体のタンパク質機能の調節に重要な役割を果たす。例えば、ポリペプチド基質の特異的切断は、前駆体タンパク質を活性化するかまたは活性タンパク質もしくは酵素を不活化し、それによってそれらの機能を調節する。基質特異性の高いいくつかのプロテアーゼは医学的用途で使用される。特異的なポリペプチド基質の切断による活性化または不活化の薬学的な例は、急性心筋梗塞において、プラスミノゲンを活性化してフィブリン塊を分解するt−PAの適用、または卒中において、フィブリノゲンを不活性化することで血液の粘性を減らしその輸送能力を強化するアンクロドの適用である。t−PAはヒト血液の調節に必要な活性を有するヒトプロテアーゼであり、アンクロドは非ヒトプロテアーゼである。これはクサリヘビAgkistrodon rhodostomaから単離されたものであり、ヘビ毒の主要成分を含む。従って、治療適用性を有する非ヒトプロテアーゼがいくつか存在する。しかし、それらの同定は通常は極めて偶発的である。薬物投与による疾患の処置は、典型的には、その薬物により開始される、患者の体内の特定のタンパク質(内因性のタンパク質または感染微生物もしくはウイルスのタンパク質)の機能を活性化または不活化する分子的機構に基づく。これらの標的に対する化学薬物の作用を理解または予測するのは依然として困難であるが、タンパク質薬物は、数百万もの他のタンパク質の中からこれらの標的タンパク質を特異的に認識できる。他のタンパク質を認識する能力を生来有するタンパク質の顕著な例は、抗体、受容体、およびプロテアーゼである。潜在的な標的タンパク質は多数あるが、今日ごく僅かなプロテアーゼだけしかこれらの標的タンパク質にアドレスするのに利用可能でない。プロテアーゼはタンパク質分解活性を有するゆえに、タンパク質またはペプチド標的の不活性化に特に適している。ヒトタンパク質のみを考慮する場合でも、潜在的な標的タンパク質の数は依然として莫大である。ヒトゲノムは30,000〜100,000の遺伝子を含み、それらの各々が異なるタンパク質をコードすると推定されている。これらのタンパク質またはペプチドの多くがヒト疾患に関与し、従って潜在的な薬学的標的である。天然単離体をスクリーニングすることによってこのような特定の質的特異性を有するプロテアーゼを発見することは難しいかもしれない。従って、公知のプロテアーゼまたは触媒抗体を含む他のスカフォールドタンパク質の触媒選択性を最適化することが必要である。
【0103】
既知の特異性を有するプロテアーゼの選択系は、当該分野で、例えばSmith et al.,Proc.Natl.Acad.Sci USA,Vol.88(1991)から公知である。例示されているように、この系は、選択マーカーとしての酵母転写因子GAL4、GAL4に挿入された規定の切断可能な標的配列をTEVプロテアーゼと共に含む。この切断はDNA結合ドメインと転写活性化ドメインを分離し、それにより転写因子を不活化する。得られるガラクトース代謝細胞の表現型上の不能性は、熱量アッセイによってまたは自殺基質2−デオキシガラクトース上の選択によって検出できる。
【0104】
さらに、選択は、修飾、例えば上記Harrisら(US 2002/022243)によりACCとしての基に基づく蛍光部分を有するペプチド基質の使用により行われ得る。
【0105】
本発明において記載されるような有効なアミロイドβペプチド分解成分を同定または生産するために、同一または類似のアプローチが使用できる。このアミロイドβペプチド分解成分を操作する出発点は、アミロイドβペプチドに対する何らかの活性を有するかまたは活性を全く有さない酵素であり得る。他の成分は、特定領域がアミロイドβペプチドに対する活性の保持についてランダム化されたスカフォールドタンパク質であり得る。スカフォールド構造の一部が、結合部位または活性部位を形成するランダム化部分を相対的に固定された位置に保持するコア構造である、様々なスカフォールドタンパク質が文献に記載されている。
【0106】
配列特異性が変更されたタンパク質分解酵素を生成させる研究技術は、その原理が公知となっている。これらはそれらの発現・選択系により分類できる。遺伝子選択は、プロテアーゼまたは任意の他のタンパク質が、さらに産生生物の増殖挙動の改変をもたらす前駆体タンパク質を切断することのできる生物内でこのプロテアーゼまたは任意の他のタンパク質を生産することを意味する。種々のプロテアーゼを含む生物集団から、増殖挙動が改変された生物が選択され得る。この原理は、Davisら(米国特許第5258289号)によって報告された。ファージ系の生産は、タンパク質分解酵素またはファージタンパク質を切断できる抗体の存在下で活性化されるファージタンパク質の切断に依存する。選択されたタンパク質分解酵素、スカフォールド、または抗体は、ファージ産物の活性化のためにアミノ酸配列を切断する能力を有することになる。
【0107】
膜結合型プロテアーゼを用いる、配列特異性の変更されたタンパク質分解酵素の生成系が報告されている。Iversonら(WO 98/49286)は、細胞表面に提示される膜結合型プロテアーゼの発現系を記載する。この実験デザインの必須要素は、触媒反応が細胞表面で行われる必要があること、すなわち基質および生成物が酵素を表面で発現する細菌と関連付けて維持されなければならないことである。選択系の別の例は、細胞表面上で活性タンパク質を発現させ、特性の改善された変異体を含む細胞を選別するFACS分取法の使用である(Varadarajan et al.,Proc.Natl.Acad.Sci USA,Vol.102,6855(2005))。それらは、プロテアーゼ切断部位に対する特異性について300万倍の変化を示した。
【0108】
自律分泌型プロテアーゼを用いる、配列特異性の変更されたタンパク質分解酵素の生成系もまた公知である。Duffら(WO 98/11237)は、自律分泌型プロテアーゼの発現系を記載する。この実験デザインの必須要素は、その膜結合型前駆体分子の自律的タンパク質分解プロセシングにより触媒反応がそのプロテアーゼ自体に作用し、成熟プロテアーゼを細胞膜から細胞外環境へと放出することである。
【0109】
Broadら(WO 99/11801)は、プロテアーゼの特異性の変更に適した異種細胞系を開示する。この系は転写因子前駆体を含み、その転写因子はプロテアーゼ切断部位を介して膜アンカー型ドメインに連結される。プロテアーゼ切断部位におけるプロテアーゼによる切断は転写因子を遊離させ、次いで各プロモーターの制御下にある標的遺伝子の発現を開始させる。その特異性変更の実験デザインは、修飾された配列を有するプロテアーゼ切断部位を挿入することおよびプロテアーゼを変異誘発に供することにある。
【0110】
本発明によれば、任意のタンパク質またはペプチドが、適当なアミロイドβペプチド分解成分を生成するために直接的にまたは出発点として使用できる。例えば、本発明に従い、任意のプロテアーゼが第一プロテアーゼとして使用できる。好ましくは、ヒト起源の任意のタンパク質またはペプチドが使用される。通常はヒト体内に存在する天然タンパク質またはペプチドが使用される場合、可能な限り最小の変化が好ましい。いくつかの方法において、異なる結合特異性および/または分解活性を有する二つまたはそれ以上の融合タンパク質が同時に投与され、その場合に投与される各融合タンパク質の用量は、示された範囲内に含まれる。融合タンパク質は通常、複数の時点で投与される。単回投与間の間隔は、例えば、週ごと、月ごと、三ヶ月ごと、または一年ごとであり得る。間隔はまた、患者の血漿中の融合タンパク質の血中レベルを測定することによって示される場合は不規則であり得る。いくつかの方法においては、用量は1〜1000ug/mlの血漿中融合タンパク質濃度を達成するよう調整され、いくつかの方法においては、25〜300ug/mlを達成するよう調整される。また、いくつかの方法においては、用量は1〜1000ng/mlの血漿中融合タンパク質濃度を達成するよう調整され、いくつかの方法においては、25〜300ng/mlを達成するよう調整される。あるいは、融合タンパク質は、徐放性処方物として投与でき、この場合は必要とされる投与頻度が少ない。用量および頻度は、患者における融合タンパク質の半減期に依存して変化する。一般的に、Fc部分を有する融合タンパク質は、長い半減期を示す。用量および投与頻度は、処置が予防的なものか治療的なものかによって変化し得る。予防的適用においては、長い時間をかけて比較的長い間隔で比較的少ない用量が投与される。一部の患者は生涯処置を受け続ける。治療的適用においては、疾患の進行が緩慢になるかまたは停止するまで、好ましくは患者が疾患の症状の部分的または完全な改善を示すまで、比較的短い間隔で比較的多い用量を必要とする場合がある。その後、患者は予防的療法を施され得る。触媒活性を有するアミロイドβペプチド分解性融合タンパク質は、結合因子、例えば抗体及び抗体と比較して低用量で投与できると考えられる。
【0111】
本発明の薬学的組成物における活性成分の実際の用量レベルは、特定の患者に対する所望の治療反応を達成するのに有効であり、患者に対して毒性とならない活性成分の量、組成、および投与様式を得るために変更され得る。選択された用量レベルは、使用する本発明の特定の組成物、またはそのエステル、塩、もしくはアミドの活性、投与経路、投与時期、使用されている特定の化合物の排出速度、処置期間、使用する特定の組成物と組み合わせて使用する他の薬物、化合物、および/もしくは物質、年齢、性別、体重、状態、処置される患者の全般的な健康および過去の病歴、ならびに医学分野で周知の同様の要因を含む様々な薬物動態学的要因に依存し得る。
【0112】
本明細書中で引用した全ての刊行物および特許は、それらが本発明時の技術水準を示すものとしておよび/または本発明の説明および実施可能性を提供するために、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。刊行物は、任意の科学文献もしくは特許公報、または全ての記録された電気的形式もしくは印刷形式を含む任意の媒体形式で利用可能な任意の他の情報を意味する。以下の参考文献についてはその全体が参照により本明細書に組み込まれる:Ausubel,et al.,ed.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,Inc.,NY,N.Y.(1987−2001);Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2ndEdition,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989);Harlow and Lane,antibodies,a Laboratory Manual,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989);Colligan,et al.,eds.,Current Protocols in Immunology,John Wiley & Sons,Inc.,NY(1994−2001);Colligan et al.,Current Protocols in Protein Science,John Wiley & Sons,NY,N.Y.,(1997−2001)。
【0113】
本発明の一つの局面は、天然の野生型タンパク質の修飾によりアミロイドβペプチドの分解についての選択性を向上させる可能性である。野生型配列においてアミノ酸を導入/置換するのに部位特異的変異誘発が使用できる。一つのアプローチは、この分解酵素の活性部位を調査することにより合理的なデザインを使用することである。選択性プロフィール(他のペプチド/タンパク質と比較してのアミロイドβペプイドの分解性)を潜在的に変更し得るアミノ酸は他のアミノ酸で置換され、新規の変異体は当該分野で公知の切断アッセイにおいて試験され得る。好ましくは、アミロイドβペプチドに対する触媒的分解活性が他の関連ペプチドと比較してより高い変異体が有用である。他の関連ペプチドには、エンケファリン、神経ペプチドY、サブスタンスP、ソマトスタチン(somastatin)、コレシストキニンが含まれるがこれらに限定されない。
【0114】
本発明の目的は、神経変性疾患の処置の開発およびこのような疾患における治療的介入に有用な化合物の同定に適した方法および物質を提供することである。βアミロイドが最適化された酵素により媒介される機構を通じて排除され得るという知見に基づき、本発明は、特許請求の範囲に示され本明細書中以降に記載されるような方法および物質を提供するに至った。
【0115】
本発明は、哺乳動物の末梢系に有効量の最適化された酵素活性化合物を投与することを含む、神経変性障害を予防および処置する方法を提供する。特に、酵素活性化合物は、一部が酵素活性を有し他の部分が血漿中半減期を調節する融合タンパク質である。この方法は、脳アミロイドーシス、例えばアルツハイマー病を予防および処置するのに適している。本発明はまた、種々のアッセイ原理−生化学、特に活性および血漿中半減期の調節について最適化された酵素化合物を試験するため、好ましくは複数の化合物をスクリーニングするための細胞アッセイを提供する。さらなる実施態様において、このアッセイは、酵素活性を検出する前にネプリライシンファミリーのメンバーの公知の阻害剤を添加することを包含する。適当な阻害剤は、例えばホスホラミドン、チオルファン、スパイノルフィン、または前記物質の機能的誘導体である。
【0116】
概略的な意味において、本発明に従うアッセイは、インビトロおよびインビボの両方で酵素活性および血漿中半減期を測定する。
【0117】
別の局面において、本発明は、(i)Aβペプチドを分解する化合物、好ましくは特異性が高くAβペプチド分解活性が高い化合物を同定すること、(ii)血漿中半減期を決定する調節因子化合物にこのAβペプチド分解性化合物を連結することの工程を含む、医薬の製造方法を提供する。
【0118】
本発明の化合物は、組換えDNA技術を用いて形質転換宿主細胞において作成され得る。そのために、融合タンパク質をコードする組換えDNA分子が調製される。このようなDNA分子の調製方法は当該分野でよく知られている。例えば、調節因子およびタンパク質をコードする配列は、適当な制限酵素を用いてDNAから切り出すことができる。あるいは、DNA分子は、化学的合成技術、例えばホスホルアミデート法を用いて合成できる。また、これらの技術の組み合わせも使用できる。
【0119】
本発明はまた、適切な宿主において調節因子、タンパク質、または融合物を発現できるベクターを包含する。このベクターは、適切な発現制御配列に動作するように連結された調節因子、タンパク質、および/または融合物をコードするDNA分子を含む。DNA分子をベクターに挿入する前または後のいずれかにこの動作可能な連結を達成する方法はよく知られている。発現制御配列には、プロモーター、アクチベーター、エンハンサー、オペレーター、リボソーム結合部位、開始シグナル、停止シグナル、キャップシグナル、ポリアデニル化シグナル、および転写または翻訳の制御に関連する他のシグナルが含まれる。
【0120】
DNA分子を含む得られるベクターは、適切な宿主を形質転換するのに使用される。この形質転換は、当該分野でよく知られた方法を用いて行われ得る。多くの利用可能かつよく知られた宿主細胞のいずれかが、本発明の実施の際に使用され得る。特定の宿主の選択は、当該分野で認識されている多くの要因に依存する。これらには、例えば、選択された発現ベクターとの適合性、DNA分子によりコードされる融合物の毒性、形質転換率、融合物の回収容易性、発現特性、生物学的安全性、および費用が含まれる。これらの要因のバランスは、全ての宿主が特定のDNA配列の発現に等しく有効な訳ではないということを理解した上でとらなければならない。これらの一般的な指針の下で有用な微生物宿主には、細菌(例えば大腸菌)、酵母(例えばサッカロミセス属エスピー)、およびその他の真菌、昆虫、植物、哺乳動物(ヒトを含む)の培養細胞、または当該分野で公知のその他の宿主が含まれる。
【0121】
次に、形質転換された宿主は培養および精製される。宿主細胞は、所望の化合物を発現するよう従来の発酵条件下で培養され得る。このような発酵条件は当該分野でよく知られている。最後に、当該分野でよく知られた方法により培養物から融合物が精製される。一つの好ましいアプローチは、調節因子としてFc部分を使用する場合にプロテインAまたは類似の技術を使用して融合タンパク質を精製することである。調節因子、タンパク質、および融合物はまた、合成方法によっても作製され得る。例えば、固相合成技術が使用され得る。適当な技術は当該分野で周知であり、Merrifield(1973),Chem.Polypeptides,pp.335−61(Katsoyannis and Panayotis eds.);Merrifield(1963),J.Am.Chem.Soc.85:2149;Davis et al.(1985),Biochem.Intl.10:394−414;Stewart and Young(1969),Solid Phase Peptide Synthesis;米国特許第3,941,763号;Finn et al.(1976),The Proteins(3rd ed.)2:105−253;およびErickson et al.(1976),The Proteins(3rd ed.)2:257−527に記載される技術が含まれる。固相合成は、最も費用対効果の優れた小ペプチドまたはタンパク質の作製法であるがゆえに、個別のペプチドまたはタンパク質の好ましい作製技術である。
【0122】
一般的に、本発明の化合物は、インビボでアミロイドβペプチドを分解するそれらの能力から生ずる薬理学的活性を有する。これらの化合物の活性は、当該分野で公知のアッセイによって測定できる。NEP−Fc化合物についてのインビボアッセイはさらに、本明細書の実施例の節に記載されている。
【0123】
一般的に、本発明はまた、本発明の薬学的組成物の使用の可能性を提供する。このような薬学的組成物は、注射による投与、または経口、経肺、経鼻、経皮、または他の形式の投与用であり得る。一般的に、本発明は、薬学的に許容される希釈剤、保存剤、可溶化剤、乳化剤、アジュバント、および/または担体と共に有効量の本発明の化合物を含む薬学的組成物を包含する。このような組成物は、様々な緩衝成分(例えばTris−HCl、酢酸、リン酸)、pH、およびイオン強度の希釈剤;界面活性剤および可溶化剤(例えばTween 80、Polysorbate 80)、抗酸化剤(例えばアスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)、保存剤(例えばチメロサール(Thimersol)、ベンジルアルコール)、およびバルキング物質(例えばラクトース、マンニトール)等の添加剤;ポリマー化合物、例えばポリ乳酸、ポリグリコール酸等の微粒子調製物またはリポソームへの物質の研和を含む。ヒアルロン酸もまた使用され得、これは循環における持続時間の延長を促進する効果を有し得る。このような組成物は、本発明のタンパク質および誘導体の物理的状態、安定性、インビボ放出速度、およびインビボクリアランス速度に影響し得る。例えば、参照により本明細書に組み込まれるRemington's Pharmaceutical Sciences,18th Ed.(1990,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.18042)の1435〜1712ページを参照のこと。この組成物は、液体形態で製造され得るし、乾燥粉末、例えば凍結乾燥形態でも製造され得る。経皮処方物のようなインプラント可能な徐放処方物もまた意図される。これらの代替投与法は当該分野でよく知られている。
【0124】
上記の状態の治療方法にかかわる投薬計画は、薬物の作用を加減する様々な要因、例えば患者の年齢、状態、体重、性別、および食事、あらゆる感染の重症度、投与期間、ならびにその他の臨床的要因を考慮した上で担当医により決定され得る。一般的には、一日の投薬計画は、体重1キログラムあたり本発明の化合物0.1〜1000マイクログラム、好ましくはキログラムあたり0.1〜150マイクログラムの範囲である。
【実施例】
【0125】
実施例1
融合タンパク質の構築
タンパク質ドメインの説明
ネプリライシンの細胞外ドメインは、アミノ酸51〜749(最初のメチオニンを除く)と定義される(配列番号1〜4)。このドメインにおいてアミノ酸の相違をもたらす多型が二つ同定されており、それらの異なる変異体のアミノ酸配列を配列番号1〜4に記載する。ネプリライシンの細胞外ドメインはIgG4 Fcドメイン(ヒンジ領域を含む)に融合させた。このタンパク質が発現中に培養培地に分泌されるようシグナル配列(配列番号5)を導入した。ヒンジ領域の配列は配列番号6に示し、IgG4 Fcドメインについては配列番号7に示す。完全融合タンパク質(配列番号1に対応するヒトネプリライシン変異体を含む)は配列番号8に記載する。最終融合タンパク質(シグナル配列を含まない)は(二量体として)推定分子量211kDaを有する。
【0126】
融合タンパク質をコードする遺伝子の構築の説明
IgG4のFcドメインをコードする遺伝子との融合物としてネプリライシンの細胞外ドメインをコードする遺伝子をpGEMクローニングベクターに導入した。分子生物学的作業は、含まれる遺伝子の3’末端および5’末端に特異的なプライマーを用いるPCRに基づくものである。シグナルペプチドのクローニングに使用するBstZ17I独自の平滑末端制限部位(GTATAC)を作出するために最初のGTA配列を付加した、ヒトネプリライシンの細胞外ドメインを増幅するためのフォワードプライマーは配列番号9に示す。使用したリバースプライマー(配列番号10)は、IgG4のヒンジの配列に対応する配列(配列番号11)を含む。これは、IgG4との重複配列を作出するためのものである。ヒトIgG4 Fcfドメインは、配列番号12に示されるフォワードプライマーを用いるPCRによって増幅した。このプライマーは、ネプリライシンとの重複領域を作出するために、ヒトネプリライシンのC末端部分に対応する部分(配列番号13)を含む。IgG4 Fcドメインを増幅するためのリバースプライマー(配列番号14)は、GatewayクローニングのためのATTB2配列に対応する配列および停止コドン(配列番号15)を含む。
【0127】
テンプレートとしてヒトネプリライシンおよびFc IgG4ドメインをコードする増幅遺伝子、および配列番号9、10、12、および14のプライマー(配列番号10および12のプライマーは重複する特異性を有する)を用いるオーバーラップPCR反応により、ネプリライシン−Fc融合タンパク質をコードする遺伝子に対応するフラグメントを作出した(その全体像は図15に示す)。マウスカッパ軽鎖シグナルペプチドの付加は、BstZ17I平滑末端制限部位を用いて、pGEMクローニングベクターにおけるネプリライシン−Fc融合タンパク質をコードする遺伝子の上流に合成DNAオリゴを連結することによって行った。シグナルペプチドの配列は、ATTB1 Gatewayコンセンサス配列に対応する配列(配列番号17)ならびにその下流にエンハンサー配列、リボソーム結合部位、TATAボックス、Kozak配列、および開始コドンを含むフォワードプライマー(配列番号16)を用いて増幅した。使用したリバースプライマーは配列番号18に示す。シグナルペプチドを導入するストラテジーは図16に示す。
(Nep−Fc融合タンパク質およびシグナル配列をコードする)完全遺伝子はまず最初にpGEMベクターに挿入し、次いでGatewayドナーベクターに挿入した。Gatewayドナーベクターは、完全Nep−Fc遺伝子を様々な発現ベクターに導入するために使用した。Gateway系を使用することで、制限酵素の代わりに組換えを用いる効率的な方法でドナーベクターから発現ベクターへの移行を行える。調査に用いた哺乳動物発現ベクターは、主にpCEP4、pEAK10、およびpcDNA3.1(Gateway適応型)である。これらは全て、CMVプロモーターに基づく標準的な哺乳動物発現ベクターである。遺伝子は、そのDNA配列を検証するため、全てのクローニング工程を終えた後に配列分析に供した。
【0128】
実施例2
Fc−ネプリライシンタンパク質の発現および精製
Nep−Fc融合タンパク質は、哺乳動物細胞において一過的に発現させた。HEK293T細胞およびHEK293EBNA細胞を含む様々な細胞株を使用した。融合タンパク質の発現は懸濁培養適合細胞(suspension−adapted cells)または付着細胞培養物において行い、種々のトランスフェクション試薬、種々の細胞密度、および種々のトランスフェクション試薬・プラスミド比を用いて調査した。融合タンパク質の活性は、小スケールの最適化実験において検証した。Nep−Fcは、第一工程としてプロテインAアフィニティクロマトグラフィを用いて培養上清から直接精製した。第二精製工程が必要な場合、例えばイオン交換またはゲル濾過を使用する。最終融合タンパク質は、インビボ用途(マウス研究)に適した緩衝液、例えば安定剤(例えばスクロース、塩、または界面活性剤)を含む緩衝液を用いて処方した。最終精製融合タンパク質は、濃度(例えばA280、BCA)、同一性(例えばネプリライシンまたはIgG4に特異的な抗体を用いるウェスタンブロット、質量分析)、および純度(例えばSDS−PAGE、分析用ゲル濾過)について分析した。シグナルペプチドのプロセシングを確認するため、このタンパク質をN末端配列分析によって分析した。最終タンパク質のバッチを、機能を検証するためのインビトロおよびインビボ研究に使用した。
【0129】
実施例3
NEP−Fc酵素活性
組換えNEP−Fcを、二工程発色アッセイを用いてネプリライシン酵素活性について評価した。第一反応において、グルタリル−Ala−Ala−Phe−4−メトキシ−2−ナフチルアミドをネプリライシンによって切断してPhe−4−メトキシ−2−ナフチルアミドとし、第二工程において、アミノペプチダーゼを用いて蛍光性の4−メトキシ−2−ナフチルアミンを生成させた。100μMのグルタリル−Ala−Ala−Phe−4−メトキシナフチルアミド、50〜100μgの膜画分、および20mMのMES緩衝液を含有する100μL量の反応混合物を96ウェルマイクロタイタープレートに加えた。インキュベーションは37℃の水浴中で2時間行った。インキュベーション期間の最後にホスホラミドンを添加することによって反応を停止させた。ロイシンアミノペプチダーゼを加え、その混合物をさらに15分間インキュベートした。4−メトキシ−2−ナフチルアミンは、340nMの励起波長および425nMの発光波長における分光蛍光分析により定量した。標準曲線を作成するのに遊離の4−メトキシナフチルアミンを使用した。
【0130】
実施例4
アミロイドβペプチド濃度の測定
このアッセイでは、アミロイドβペプチドの測定を説明する。このアッセイは、タンパク質または酵素によって分解されなかった場合のアミロイドβペプチドを検出する二つの抗体に基づく。この特定の実施例では細胞由来の上清の使用について記載するが、様々なサンプル、例えば純粋な緩衝液または血漿にも適用できる。
【0131】
HEKAPPは、この細胞が80〜90%のコンフルエンスになったときに採取した。この細胞を、DMEM中0.2×106/mlの濃度で96ウェルポリ−D−リジンコートプレート(BD,Falon)に播種した。マルチドロップ(multidrop)を使って、100ul細胞上清/ウェルにした。細胞プレートを37℃、5%CO2下で一晩インキュベートした。NEP−Fcは37℃、5% CO2下で24時間(または任意の適当な時間)インキュベートした。次いで100μlの培地を丸底96ウェルプレート(Greiner,ポリプロピレン)に移した。50μlの検出溶液(IGENアッセイ緩衝液中0.5μg/mlのRαAβ40および0.25μg/mlのビオチン−4G8、5mlが必要。RαAβ40:ストック:1,22mg/mlのRαAβ40(Biosource 44−348)。2μlのストックRαAβ40+5000μlのIGENアッセイ緩衝液を添加。最終アッセイ濃度0.125μg/ml)ビオチン−4G8:ストック:1mg/mlのbio−4G8。1.25μlのストックBio−4G8を上記のRαAβ40溶液に加えた。加えて最終アッセイ濃度を0.063μg/mlとし、4℃で7時間以上インキュベートした)。次いで、50μlのDynabead & Ru−GαR溶液を加え、22℃で1時間(激しく)振盪した。最後に、IGEN/BioVeris M8アナライザープログラムAβ−細胞アッセイでプレートを読み取った。アミロイドβペプチド濃度測定の実施例は、標準曲線実験が良い相関を有する(R2=0.9959)ところで行った。
【0132】
実施例5
アミロイドβペプチドの触媒的分解はアミロイドβペプチドの遊離プールの間の平衡を変化させる
膜を通じて繋がっている別の区画における分解によってある区画からアミロイドβペプチドが除去される可能性を調査するための実験を行った。同様の実験を、アミロイドβペプチド薬剤として抗体を用いて行った。この実験は、DeMattosら(PNAS,2001)に記載されている。ある区画においてネプリライシンおよび/またはNEP−Fcによりアミロイドβペプチドを分解することによって、他の区画におけるアミロイドβペプチドの濃度が低下した。重要なことは、ネプリライシンまたはNEP−Fcが、その分子量の大きさ(それぞれ161.000Daおよび211.000Da)が原因で膜を通過できないことである。
【0133】
実施例6
アミロイドプラークにおけるAβ1-40フラグメントの沈着の阻害
アミロイドベータ1−40(Aβ1-40)を始めに96ウェルマイクロタイタープレートに沈着させるプロトコルを使用した。次いで、放射活性(125I標識)Aβ1-40をこのプレートのウェルに加えた(沈着したAβ1-40にさらに加えた)。これは、アルツハイマー患者の脳において見られるAβ1-40の沈着を模倣する。この実験の目的は、ネプリライシンがAβ1-40を、アミロイドプラークに沈着しないフラグメントに分解できるかどうかを観察することであった。これは、ネプリライシンがアルツハイマー病におけるアミロイド沈着の持続的な形成を予防できることを実証する。
96ウェルプレートをAβ1-40で予めコーティングした。コントロールとして、100pMの125I−Aβ1-40を、予め沈着させたAβ1-40プラークに3時間沈着させた。ネプリライシンは、500ng、50ng、および5ngの濃度で3時間、125I−Aβ1-40と共にこのウェルに加えた。次いで、125I−Aβ1-40の沈着の阻害を様々な濃度のネプリライシンについて検出した。
【0134】
実施例7
Aβペプチドの切断部位の決定
精製されたネプリライシンおよび/またはNEP−Fcを、25μMのAβ1-40と共に、40mMリン酸カリウム緩衝液、pH7.2中、37℃で1時間インキュベートした。この反応生成物をC4逆相HPLCカラムにロードし、65分間かけて5〜75%のアセトニトリルの直線勾配を用いて生成物を分割した。生成物は、Waters 484検出器を用い、214nmにおける吸光度により検出し、個々の生成物のピークを手作業で収集した。生成物の分析はまた、生成物がHPLCによって分割されていない未処理の反応混合物においても行うことができる。生成物は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(MALDI−TOF−MS)によって同定した。ネプリライシンおよび/またはNEP−FcとAβ1-40の反応は、反応混合物から直接的にMALDI−TOF−MSによって同定した生成物を用いて同様の様式で行った。
【0135】
実施例8
Aβ1-40沈着アッセイ
ベータアミロイド沈着アッセイは、Eslerら(Esler et al.(1997)Nat Biotech 15:268−263)に記載された通りに行った。簡単に説明すると、96ウェルマイクロタイタープレートをアミロイドβ1-40凝集物(QCB/Biosource,Hopkinton,Mass.)で予めコーティングしたものにさらに、非特異的結合を防ぐため50mM Tris−HCl、pH7.5中0.1%のウシ血清アルブミンの溶液200μlで20分間コーティングした。ネプリライシンの存在下または非存在下でのAβ1-40沈着を測定するため、50mM Tris−HCl、pH7.5中0.1nMの125I標識Aβ1-40の溶液150μlを予めコーティングしたウェルに加え、4時間インキュベートした。添加の際、ネプリライシン(0.5〜500ng)をゼロ時に直接ウェルに加えた。この反応は、余分な沈着していない放射標識Aβ1-40を50mM Tris−HCl、pH7.5で洗い流すことによって停止した。洗浄したウェル上に沈着した放射標識をガンマカウンターで計測した。このプロトコルのバリエーションとして、ネプリライシンを1nM 125I−Aβ1-40と共に60分間予めインキュベートした後、沈着アッセイに加えることもできる。
【0136】
実施例9
神経保護アッセイ
神経毒性アッセイは、初代ラット皮質ニューロン培養物を樹立するため18日胎齢のラット胎仔を用いてEstusら(Estus et al.(1997)J Neurosci 17:7736−7745)に記載された通りに行った。最初にラット脳皮質細胞を、ポリエチレンイミンで予めコーティングしておいた16ウェルチャンバースライド(Nalge Nunc International,Rochester,N.Y.)中のAM0培地において、1×105細胞/ウェルの密度で3〜5時間培養した。この培養物は、AM0培地を100ユニット/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、および2% B27血清サプリメント(Life Technologies,Rockville,Md.)を含有するダルベッコ改変イーグル培地(DMEM,Life Technologies,Rockville,Md.)と交換することによって、ニューロンを富化させた。細胞をAβペプチドで処理した後、室温で15分間4%パラホルムアルデヒドで固定した。細胞をPBSで洗浄した後、これらを1μg/mlのHoechst 33258で10分間染色した。次いで蛍光顕微鏡によってニューロンを可視化した。均一に分散したクロマチンを有する細胞を生存細胞と評点し、凝縮したクロマチンを含有する細胞を非生存細胞と評点した。読み取りは基本的に三連で行い、最小で250個のニューロンを各ウェルで評点した。上記の通り処理した細胞は、ホフマン製変調コントラストレンズを備えたニコン製顕微鏡を用いて可視化した。サンプルを、ANOVAを用いた統計的分析に供した。AβペプチドをネプリライシンまたはNEP−Fcで予め処理したことを除いてAβペプチドを用いて同じ処理を行った。これにより、この分解プロセスがAβペプチドの毒性作用を除去することが示された。
【0137】
実施例10
タンパク質ドメインIDE、IDE Fc(IgG4)、ECE1、およびECE1 Fc(IgG4)の説明
IDE(インスリン分解酵素)は1018アミノ酸長のタンパク質である(配列番号19)。IDEのスプライス変異体および多型変異体が記載されている。一つのスプライス変異体においては、一つのエキソンが、「wt」エキソンと類似のペプチド配列をコードする同じサイズの別のエキソンで置換されている(配列番号20に示される)。この変異体は、インスリンおよびAβの両方を分解する効率が低いことが記載されている。IDE遺伝子におけるいくつかの多型も記載されており、それによるアミノ酸の相違がこのドメインにおいて同定されている:D947N(配列番号21)、E612K(配列番号22)、L298F(配列番号23)、およびE408G(配列番号24)。
ECE1(エンドセリン変換酵素1)の細胞外ドメイン(配列番号26)は681アミノ酸長のタンパク質であり、全長の膜結合型ECE1タンパク質のアミノ酸90〜770と規定される。
最終融合タンパク質の構築の間、IDEおよびECE1(細胞外ドメイン)をIgG4 Fcドメイン(ヒンジ領域を含む)に融合し、この融合タンパク質のN末端にシグナル配列(配列番号5)を追加した。シグナル配列は、発現の間に培養培地へのタンパク質の分泌を可能にする。ヒンジ領域の配列は配列番号6に示され、IgG4 Fcドメインの配列は配列番号7に示される。(配列番号19に対応するヒトIDE変異体を含む)完全IDE−Fc(IgG4)融合タンパク質は配列番号25に記載される。最終融合タンパク質IDE−Fc(IgG4)は、推定分子量147kDa(単量体として)または二量体として294kDaを有する。(配列番号26に対応するヒトECE1変異体を含む)ECE1−Fc(IgG4)融合タンパク質は配列番号27に記載され、これは推定分子量103kDa(単量体として)または206kDa(二量体として)を有する。
【0138】
タンパク質ドメインネプリライシン−Fc(IgG2)の説明
実施例1に記載されるのと同様の様式で、ネプリライシンの細胞外ドメイン(配列番号1)をIgG2 Fcドメイン(ヒンジ領域を含む)に融合した。発現の間にタンパク質が培養培地に分泌されるよう、シグナル配列をこの融合タンパク質のN末端に追加した(配列番号5)。IgG2ヒンジ領域の配列は配列番号28に示され、IgG2 Fcドメインの配列は配列番号29に示される。(配列番号1に対応するヒトネプリライシン変異体を含む)完全ネプリライシン−Fc(IgG2)融合タンパク質は配列番号30に記載される。最終融合タンパク質ネプリライシン−Fc(IgG2)は、推定分子量105.5kDa(単量体として)または二量体として211kDaを有する。
【0139】
融合タンパク質IDE−Fc(IgG4)をコードする遺伝子の構築の説明
ヒトIDEをコードする遺伝子は、ヒト骨格筋cDNA(Clontech cat# 637234)からPCR増幅(配列番号31および配列番号32のオリゴヌクレオチド)し、pGEM−Tクローニングベクターにクローニングした。次いで、PCR(配列番号33および配列番号34のオリゴヌクレオチド)を用いてIDEの5’末端にヒトカッパ軽鎖シグナル配列を導入し、その生成物をpGEM−Tベクターにクローニングした。ヒトIgG4 Fcドメインも同様に、自作プラスミド(実施例1に記載のNep−IgG4)からPCR増幅(配列番号35および配列番号36のオリゴヌクレオチド)し、pGEM−Tにクローニングした。IDE遺伝子の最後のコドンおよびIgG4ヒンジ領域の最初のコドンは独特なXhoI部位を形成した。この部位は、IgG4をpGEM−T−IDEプラスミドに移して融合構築物を作製するのに使用した。この融合遺伝子の両端にattB部位を追加するため、二回目のPCRを行った(配列番号37および配列番号38のオリゴヌクレオチド)。Gateway BP組換えを用いてPCR産物をpDONR221に導入した。得られたエントリークローンは、配列を検証し、Gateway LR組換えを用いてこの融合遺伝子をpCEP4/GWおよびpEAK10/GW発現ベクターに移すのに使用した。
【0140】
融合タンパク質ECE1−Fc(IgG4)をコードする遺伝子の構築の説明
ヒトECE1をコードする遺伝子は、5’末端にヒトカッパ軽鎖シグナル配列をおよび3’末端に独特なEcoRI部位を導入するオリゴヌクレオチドを用いて自作cDNAソース(プラスミドDNA)からPCR増幅した(配列番号39および配列番号40のオリゴヌクレオチド)。ヒトIgG4 Fcドメインも、5’末端にEcoRI部位を導入したことを除いて同様にプラスミドDNAからPCR増幅した(配列番号41および配列番号36のオリゴヌクレオチド)。ECE1およびIgG4を別々にpGEM−Tベクターにクローニングした。EcoRI部位を用いてIgG4をpGEM−T−ECE1プラスミドに移し、融合構築物を作製した。次いで、部位特異的変異誘発(配列番号42および配列番号43のオリゴヌクレオチド)によってオリジナル配列を再形成し、EcoRI部位を除去した。この融合遺伝子の両端にattB組換え部位を追加するためPCRを行った(配列番号37および配列番号38のオリゴヌクレオチド)。Gateway BP組換えを用いてPCR産物をpDONR221に導入した。得られたエントリークローンは、配列を検証し、この融合遺伝子をpCEP4/GWおよびpEAK10/GW発現ベクターに移すのに使用した。
【0141】
融合タンパク質Nep−Fc(IgG2)をコードする遺伝子の構築の説明
融合タンパク質NEP−Fc(IgG2)をコードする遺伝子は、2つの重複するPCRフラグメントを合体させることによって作出した。第一フラグメントはNEPの可溶型ドメインに対応し、これは、NEPの5’末端にカッパ軽鎖シグナルペプチドを追加するGateway attB1コンセンサス配列に対応するフォワードプライマー(配列番号44のオリゴヌクレオチド)および第二フラグメントとの重複領域を作出するためにヒトIgG2のヒンジ領域に対応する配列の後にNEPのコード領域の末端(停止コドンを含まない)を含むリバースプライマー(配列番号45のオリゴヌクレオチド)を用いて自作プラスミド(実施例1に記載されるpGEM−NEP−IgG4)から増幅した。第二フラグメントはヒトIgG2のヒンジ領域およびFcドメインに対応し、これは、(第一フラグメントとの重複領域を作出するために)5’末端にNEPの最後から25個のコードヌクレオチドをおよび3’末端にattB2コンセンサス配列を導入するオリゴヌクレオチドを用いて増幅した(配列CおよびD)。配列番号46のオリゴヌクレオチドおよび配列番号47のオリゴヌクレオチドを最終的なオーバーラップPCRに使用し、次いでそのフラグメントをGateway BP組換えを用いてpDONR221に導入した。得られたエントリークローンの配列は、検証し、この融合遺伝子をGateway LR組換えを用いてpCEP4/GWおよびpEAK10/GW発現ベクターに移すのに使用した。
【0142】
ネプリライシンをコードする遺伝子の構築の説明
NEPの可溶型ドメインをコードする遺伝子は、カッパ軽鎖シグナルペプチドを含めるattB1コンセンサス配列に対応するフォワードオリゴヌクレオチド(配列番号48のオリゴヌクレオチド)およびその3’末端に停止コドン(TGA)およびattB2コンセンサス配列を導入するリバースプライマー(配列番号49のオリゴヌクレオチド)を用いて自作プラスミド(実施例1に記載されるpGEM−NEP−IgG4)から増幅した。次いでこのフラグメントをGateway BP組換えを用いてpDONR221に導入した。得られたエントリークローンは、配列を検証し、この融合遺伝子をGateway LR組換えを用いてpCEP4/GWおよびpEAK10/GW発現ベクターに移すのに使用した。
【0143】
実施例11
ネプリライシンの細胞外ドメインならびに融合タンパク質ネプリライシン−Fc(IgG4)、ネプリライシン−Fc(IgG2)、およびIDE−Fc(IgG4)の発現
タンパク質ネプリライシン(細胞外ドメインのみ)、Nep−Fc(IgG4)、Nep−Fc(IgG2)、およびIDE−Fc(IgG4)を、懸濁培養適合哺乳動物細胞において一過的に発現させた。この生成実験において使用した細胞株は、HEK293S、HEK293S−T、およびHEK293S−EBNA細胞を含むHEK293由来の細胞株である。目的のタンパク質をコードするプラスミドpCEP4およびPEAK10からの発現を試験した。トランスフェクションは、およそ0.5〜1×106の細胞密度および0.3〜0.8μg/ml細胞懸濁物(終濃度)の範囲の濃度のプラスミドDNAを用いて行った。試験したトランスフェクション試薬は、2μg/ml細胞懸濁物(終濃度)のポリエチレンイミン(Polyscience)および1μl/ml細胞懸濁物(終濃度)のRO1539(Roche)である。発現は、振盪フラスコ中200mlの細胞培養量(タンパク質Nep−Fc(IgG4)およびIDE−Fc(IgG4)用)、400mlスピナーフラスコ(タンパク質ネプリライシンおよびネプリライシン−Fc(IgG2)用)、1Lバイオリアクター(融合タンパク質Nep−Fc(IgG4)用)、5Lバイオリアクター(ネプリライシンタンパク質用)、ならびに10Lバイオリアクター(融合タンパク質ネプリライシン−Fc(IgG4)用)において行った。発現後、種々の日に培養上清からサンプルを採取し、細胞密度、細胞生存率、タンパク質発現、および酵素活性を分析した。細胞培養物は7日後または10日後に遠心分離により採取し、その細胞培養培地をタンパク質精製実験に使用した。ネプリライシンを産生する5Lバイオリアクター由来の培養培地における活性を分析した結果を図17に示す。全てのトランスフェクション試薬およびプラスミド濃度の組み合わせで成功し、異なるレベルの産生、典型的には2〜3mg/Lの範囲の生成物が得られた。
【0144】
実施例12
ネプリライシンの無血清発現
ネプリライシンの細胞外ドメインを、懸濁培養適合哺乳動物細胞(293−FおよびHEK293S−EBNA)において無血清条件下で発現ベクターpCEP4−Nepから一過的に発現させた。トランスフェクションは、0.5〜1×106の細胞密度および0.3〜0.8μg/ml細胞懸濁物(終濃度)の範囲のDNA濃度を用いて行った。使用したトランスフェクション試薬は、1.3μl/ml細胞懸濁物(終濃度)の293フェクチン(fectin)(InVitrogen)、2μg/ml細胞懸濁物(終濃度)のポリエチレンイミン(Polyscience)、および1μl/ml細胞懸濁物(終濃度)のRO1539(Roche)である。発現は200mlスケール(振盪フラスコ)で行った。発現および細胞増殖の後、種々の日にサンプルを採取し、細胞密度、細胞生存率、タンパク質発現、および酵素活性を分析した。細胞培養物は7日後に遠心分離により採取し、発現されたタンパク質を含むその細胞培地をタンパク質精製実験に使用した。発現レベルは、発現が検出レベル以下または非常に低かった(<0.5mg/L)RO1539でトランスフェクトした培養物を除いて、典型的には1〜2ml/Lの範囲であった。
【0145】
実施例13
発現されたネプリライシンタンパク質の固相抽出による精製
ネプリライシンは、培養上清から直接的にアフィニティ精製した。可溶型ネプリライシンは、ストレプトアビジンセファロース(GE Healthcare)に結合したビオチン化抗ネプリライシン抗体(R&D Systems)を用いて精製した。14μlのビオチン化抗ネプリライシン抗体(R&D Systems)を140μlのストレプトアビジンセファローススラリー(GE Healthcare)に加え、穏やかに混合しつつ室温で2時間インキュベートした。このセファロースを二度洗浄し、140μlのPBSに再懸濁した。この抗ネプリライシン抗体が結合したセファローススラリーを10mlの培養上清に加え、このサンプルを4℃で5時間インキュベートした。インキュベーション後、セファロースをPBSで一度洗浄し、1200μlの50mM Tris−HCl、pH7.5、150mM NaClに再懸濁した。600μlのスラリーを活性の測定に使用し、残りの600μlのスラリーをペレットにして60μlの0.1Mクエン酸、pH3.2に再懸濁し、室温で10分間インキュベートした。このセファロースをペレットにし、上清の精製タンパク質濃度を280nmにおける吸光度により測定した。精製タンパク質の活性を図18に示す。ネプリライシンの精製はまた、200μMのZnCl2を添加したことを除いて上記の通り行った。亜鉛を添加したサンプルと添加しなかったサンプルの間で活性の差は見られなかった。図における差異は、濃度測定の不確実性によるものである。
【0146】
実施例14
発現されたIDE−Fcタンパク質の固相抽出による精製
IDE−FcはプロテインAセファロース(GE Healthcare)を用いて精製した。100μlのプロテインAセファロースを50mlの細胞上清に加え、4℃で一晩インキュベートした。インキュベーション後、セファロースをPBSで一度洗浄し、1200μlの50mM Tris−HCl、pH7.5、150mM NaClに再懸濁した。600μlのスラリーを活性の測定に使用し、残りの600μlのスラリーをペレットにして60μlの0.1Mクエン酸、pH3.2に再懸濁し、室温で10分間インキュベートした。このセファロースをペレットにし、上清の精製タンパク質濃度を280nmにおける吸光度により測定した。
【0147】
実施例15
発現されたFc融合タンパク質のアフィニティクロマトグラフィおよび低pH溶出による精製
融合タンパク質の精製は、哺乳動物細胞における発現から生じた細胞培地を用いて行った。精製はアフィニティクロマトグラフィ(プロテインA)およびそれに続く低pH溶出によって行い、AEKTAExplorerクロマトグラフィシステム(GE Healthcare)を用いて行った。XK16カラム(GE Healthcare)中およそ2mlの組換えプロテインAセファロースFF(GE Healthcare)を、20ml PBS(2.7mM KCl、138mM NaCl、1.5mM KH2PO4、8mM Na2HPO4−7H2O、pH6.7〜7.0、10×ストックから調製、Invitrogen)で平衡化した。発現された融合タンパク質(ネプリライシン−Fc(IgG2)、ネプリライシン−Fc(IgG4)、またはIDE−Fc(IgG4))を含む50mlの細胞培養培地を1ml/分でカラムにアプライした。このカラムを50mlのPBSで洗浄した後、結合したタンパク質を溶出緩衝液(0.1Mクエン酸、pH3.2)で溶出した。精製画分は、1ml溶出タンパク質に対して200μlの1M Tris Baseを加えることによって直ちに中和した。精製画分をプールし、プールしたタンパク質の緩衝液を、遠心式フィルター(Amicon、Mwカットオフ5kDa)を用いて50mM Tris−HCl、pH7.5、150mM NaClに交換した。精製したタンパク質をSDS−PAGEで分析したところ、およそ90%の純度であることが確認された。精製されたFc部分に融合されたネプリライシンの例を図19に示す。
【0148】
実施例16
ネプリライシン−Fcタンパク質(IgG2およびIgG4)ならびにIDE−Fc(IgG4)タンパク質の高塩溶出を用いた精製
発現された融合タンパク質の精製は、哺乳動物細胞における発現から生じた細胞培地を用いて行った。精製は、本質的にDwyerら、1999に記載の通りに行った。1mlのHiTrapプロテインAカラム(GE Healthcare)を20mlの結合緩衝液(25mM Hepes、pH7.2、1mM CaCl2)で平衡化した後、発現したネプリライシン−Fc(IgG2)、ネプリライシン−Fc(IgG4)、またはIDE−Fc(IgG4)を含む50mlの細胞培養培地をカラムにアプライした。流速はおよそ1ml/分であった。このカラムを50mlの結合緩衝液で洗浄した後、結合したタンパク質を3.5M MgCl2水溶液で溶出した。溶出は時間依存的であり、一カラム量の溶出緩衝液ごとにおよそ15分間カラムをインキュベートした。精製画分をプールし、プールしたタンパク質の緩衝液を、遠心式フィルター(Amicon、Mwカットオフ5kDa)を用いて50mM Tris−HCl、pH7.5、150mM NaClに交換した。精製したタンパク質をSDS−PAGEで分析したところ、およそ80%の純度であることが確認された。
【0149】
実施例17
ネプリライシン、ネプリライシン−Fc(IgG4)、およびネプリライシン−Fc(IgG2)の発現のウェスタンブロット解析
哺乳動物細胞における発現から生じた細胞培養培地を、ウェスタンブロットを用いて解析した。15μlの細胞培養培地を、追加のグリセリン(5%、終濃度)およびDTT(10%、終濃度)を含有する4×LDSサンプル緩衝液(Invitrogen)に希釈した。サンプルを75℃で10分間加熱し、SDS−PAGEゲル(4〜12%、勾配ゲル、10ウェル(1mm)、Invitrogen)にロードした。泳動緩衝液としてMES緩衝液を用いた。ポジティブコントロールとして、市販のネプリライシン(R&D Systems)を使用した(およそ0.7μgをゲルにロードした)。このゲルに30分間200Vをかけて泳動させた。30Vで1時間電気ブロッティングを行い、タンパク質をPVDF膜に移した。この膜をTBST(TBS(20mM Tris、500mM NaCl、pH7.5 BioRad)プラス0.05% Tween−20)中で一晩ブロッキングした後、これを15ml TBST中45μlの一次抗体(抗Nep、ビオチン化(R&D Systems))と共にインキュベートした。この膜を室温で1時間インキュベートし、TBSTで三度洗浄し、そしてHRP接合ストレプトアビジン(GE Healthcare、1:10000希釈(15ml TBST中1.5μl))と共に1時間インキュベートした。この膜をTBSTで三度および水で三度洗浄した後、ECLプラス試薬(GE Healthcare)およびECLフィルム(GE Healthcare)を用いてバンドを可視化した。典型的な結果を図19に示す。
【0150】
実施例18
ネプリライシンの酵素活性のFRETアッセイ
ネプリライシンの酵素活性は、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)アッセイにおいて決定した。組換えヒトネプリライシン(R&D Systems)、ネプリライシン/ネプリライシン−Fc産生細胞(AZ Soedertaelje)由来の培養培地、または精製ネプリライシン/ネプリライシン−Fcを、発蛍光性ペプチド基質V−Mca−Arg−Pro−Gly−Phe−Ser−Ala−Phe−Lys(Dnp)−OH(R&D Systems)(配列番号52)を含む96ウェルプレートに加えた。コントロールの組換えヒトネプリライシンの終濃度は0.25μg/ml(および種々の濃度の様々なネプリライシン構築物)であり、ペプチド基質の終濃度は10μMであった。本アッセイにおけるシグナルの特異性をコントロールするためおよび特異的なネプリライシン活性を検証するため、10μMのネプリライシン阻害剤ホスホラミドン(BIOMOL)をいくつかのウェルに加えた。全ての成分をウェルに添加した後、プレートを直ちに蛍光プレートリーダー(Ascent)に設置し、励起340nmおよび発光405nmでシグナルを20分間毎分記録した。酵素の活性は、反応速度−勾配係数=ΣΔRFU/Δtを算出することによって評価した。この勾配係数を、様々なネプリライシン構築物と生成物の間の正確な比較のために使用し、かつネプリライシンのコントロールサンプルと比較した。
【0151】
実施例19
モルモット血漿中のアミロイドβペプチド1-40およびアミロイドβペプチド1-42のネプリライシンによる分解
アミロイドβペプチド1-40(Aβ1-40)およびアミロイドβペプチド1-42(Aβ1-42)のネプリライシンによる分解を、雄性のDunkin Hartleyモルモット、体重250〜300g(HBLidkoeping ka)由来のヘパリン処理血漿を用いて調査した。麻酔したモルモットから心臓への穿刺により採血した。血液を予め冷やしておいたヘパリン−血漿チューブに集め、4℃、3000×gで10分間遠心分離した(サンプリングの20分以内)。血漿サンプルを予め冷やしておいたポリプロピレンチューブに移し、直ちにドライアイスで凍結させ、使用するまで−70℃で保管した。本実験は、5〜6匹のモルモット由来の血漿のプールを用いて行った。25mM Trisおよび100mM NaCl pH8(R&D Systems)を含有する緩衝液中のヒト組換えネプリライシンまたは緩衝液のみ(すなわちビヒクル)を、10μMホスホラミドン(Biomol)の存在下または非存在下で、モルモット血漿と共に37℃で0〜360分間インキュベートした。終濃度4.7mMのEDTAをチューブに加えた後、Aβ1-40またはAβ1-42の量を、Biosource(Aβ1-40)またはInnogenetics(Aβ1-42)から購入した市販のELISAキットを用いて分析した。
ネプリライシンは、時間依存的な様式でAβ1-40およびAβ1-42を分解した(図20、図21)。ネプリライシンは、用量依存的な様式でAβ1-40を分解した(図22)。Aβ40の分解は、10μMホスホラミドンの添加により阻害された(図23)。
【0152】
実施例20
アミロイドβペプチドの可溶型ネプリライシンによる分解
本実験の目標は、ネプリライシンがアミロイドβ1−40ペプチドを分解できることを実証することである。本アッセイでは、ネプリライシン阻害剤を加えた場合または加えなかった場合のネプリライシン(R&D Systems)の存在下でのインキュベーション後の残存するアミロイドβペプチド(Bachem)濃度の測定を行った。アミロイドβ1−40ペプチド(終濃度1μMもしくは10μM)および/またはネプリライシン(1.8μg/ml)および/またはホスホラミドン(10μM)を含有する100μlの反応混合物を、丸底96ウェルポリプロピレンプレートにおいて、37℃で3時間インキュベートした。インキュベーション後、抗Aβ40(終濃度0.125μg/ml;Biosource)抗体およびビオチン化6E10(終濃度0.125μg/ml;Signet)抗体を含有する50μlの抗体溶液を各ウェルに加えた。プレートを室温で3時間インキュベートした。インキュベーション後、Dynabeads M280(Dynal Biotech ASA)および二次抗体Ru−GαR(終濃度0.132μg/ml)の検出混合物50μlを全てのウェルに加えた。プレートをシェーカー上で室温で1時間インキュベートし、結果をIGEN/BioVeris M8アナライザーで記録した。ネプリライシンによるアミロイドβ1−40ペプチドの分解は、ネプリライシンの非存在下でのアミロイドβ1−40ペプチドの濃度に対するネプリライシンの存在下でのインキュベーション後に残存するアミロイドβ1−40ペプチドの割合として算出した。1.8μg/mlの濃度で組換えヒトネプリライシンは、37℃で3時間のインキュベーション後にアミロイドβ1−40ペプチド(1nM)の88%を分解した。このネプリライシン活性は、10μMのホスホラミドンの存在下で完全に打ち消された(図24)。この実施例は、ネプリライシンがアミロイドβペプチドを効果的に分解すること、およびより低いAβペプチド濃度でより高い効果を有する傾向をも示す。
【0153】
実施例21
細胞培養上清におけるネプリライシン濃度の測定
細胞培養上清におけるネプリライシン濃度は、GyrosTMBioaffyTMCDマイクロラボラトリ法およびGyrolab Workstation LIF機器(Gyros AB,Sweden)を用いて測定した。本実験の目標は、ネプリライシン産生の至適条件を確認することであった。種々の細胞培養物由来のサンプルをサンプル希釈液(Gyros AB)で1:10希釈し、Thermo−Fast(c)96ウェルPCRプレート(Abgene,UK)に加えた。捕捉試薬としてモノクローナルマウスビオチン化抗ヒトネプリライシン抗体(Serotec)を使用し(終濃度0.05mg/ml)、Alexa Fluor 647色素(Molecular Probes)で標識したポリクローナルヤギ抗ヒトネプリライシン抗体(R&D Systems)を検出抗体として用いた(終濃度100nM)。標準曲線を作成するため、市販のネプリライシン(R&D Systems)を31.6nM〜2000nMの範囲の濃度でスタンダードとして使用した。スタンダード、捕捉抗体、および検出抗体を別々のThermo−Fast(c)96ウェルPCRプレート(Abgene)に加えた。両プレートおよびGyrolab BioaffyTM 1 CDをGyrolab Workstation LIF機器に設置し、Gyrolab BioaffyTM ソフトウェアパッケージバージョン1.8(Gyros AB)を用いて製造元のプロトコルに従い濃度測定を行った。本アッセイは、精製または部分精製されたネプリライシンまたはネプリライシン融合構築物に対しても使用できる。
【0154】
実施例22
モルモット血漿中のアミロイドβペプチド1-40およびアミロイドβペプチド1-42の自作Nep/Fc−Nepによる分解(インビボ研究)
実験手順
血漿中の可溶型Aβレベルに対して自作のNep/Fc−Nepを試験するため、モルモットを用いたインビボ研究を行った。γ−セクレターゼ阻害剤ZR−M550426(M550426)を参照(血漿中Aβレベルの減少についてのポジティブコントロール)として使用した。
モルモットを秤量し、適切な用量をi.v.投与した。動物の健康状態の観察は同じ時点で行った。6匹の動物を、それぞれ0時間後、3時間後、および24時間後(Fc−Nepのみ)に犠牲にした。動物をイソフルランで麻酔し、心臓への穿刺により血液をサンプリングした。血液サンプル取扱の情報および可溶型Aβ1-40またはAβ1-42の分析に関する情報については実施例19を参照されたい。全ての血漿サンプルを、薬物暴露を決定するためPK研究用に準備した(実施例23を参照のこと)。
【0155】
自作のNepに関する研究デザイン
動物 雄性Dunkin Hartleyモルモット
250〜300g
用量 3時間後に0、20、200μg/mlの血漿中濃度を
与えるタンパク質用量を投与(PK分析により決定され
得る)
投与経路および頻度 静脈内、単回投与
時点 3時間
一群の動物数 6(それぞれブランクが3、参照が3)
群数 5
総動物数 24
倫理承認番号 S58−04
読み取り ELISAによる血漿中の可溶型Aβ40/42
(実施例19を参照のこと)および薬物濃度
(実施例23を参照のこと)
【0156】
自作のFc−Nepに関する研究デザイン
動物 雄性Dunkin Hartleyモルモット
250〜300g
用量 3時間後および24時間後に0、20、200μg/ml
の血漿中濃度を与えるタンパク質用量を投与
投与経路および頻度 静脈内、単回投与
時点 3、24時間
一群の動物数 6(それぞれブランクが3、参照が3)
群数 8
総動物数 42
倫理承認番号 S58−04
読み取り ELISAによる血漿中の可溶型Aβ40/42および
薬物濃度
【0157】
実施例23
Nep−Fcおよびネプリライシン単独の薬物動態
ネプリライシンの薬物動態の実体を改善するため、具体的にはクリアランスを減少させ半減期を改善する目的で、Nep−Fc融合タンパク質を開発した。試験のために、以下に記載される通り、6匹のモルモットに単回i.v.用量を投与した(3匹にNep−Fc、3匹にネプリライシン)。動物用設備に馴れさせた後、二つのカテーテルを各動物に:一方を頸動脈に、一方を頸静脈に挿入した。手術から復帰させた後、典型的には一週間以内に、投薬直前に頸静脈に挿入したカテーテルから基準サンプルを抜き取った。1mg/kgの活性化合物からなる一回量を、頸動脈のカテーテルを介してi.v.投与した。150μlの血液サンプルを、頸静脈に挿入したカテーテルを介して投薬から1、2、3、4、6、8、24、48、72、96、168、216、264、および336時間後に抜き取った。抗凝固剤を含有するチューブにサンプリングする際、アリコートを氷上に置いた。血漿は、サンプリングから15分以内に遠心分離(典型的には1500g、4℃で10分間)により調製し、直ちに凍結させた。Nep−Fcおよびネプリライシンの血漿中濃度は、実施例21に記載の捕捉抗体および検出抗体を用いる免疫アッセイを介してまたは酵素結合イムノソルベント検定法(ELISA)を通じて決定した。薬物動態パラメータは、ソフトウェアパッケージ(WinNonlin,Pharsight Corporation,USA)を用いて算出した。
【0158】
実施例24
IDE−Fcの精製およびFRETアッセイを用いた酵素活性
IDE−FcはプロテインAセファロース(GE Healthcare)を用いて精製した。100μlのプロテインAセファロースを50mlの細胞上清に加え、4℃で6時間インキュベートした。インキュベーション後、セファロースをPBSで一度洗浄し、1200μlの50mM Tris−HCl、pH7.5、150mM NaClに再懸濁した。600μlを活性の測定に使用し、残りの600μlのスラリーをペレットにして60μlの0.1Mクエン酸、pH3.2に再懸濁し、室温で10分間インキュベートした。このセファロースをペレットにし、上清の精製タンパク質濃度を280nmにおける吸光度により測定した。この上清をSDS−PAGE分析およびウェスタンブロット解析した。15μlを、追加のグリセリン(5%、終濃度)およびDTT(10%、終濃度)を含有する4×LDSサンプル緩衝液(Invitrogen)に希釈した。サンプルを75℃で10分間加熱し、SDS−PAGEゲル(4〜12%、勾配ゲル、12ウェル(1mm)、Invitrogen)にロードした。泳動緩衝液としてMES緩衝液を用いた。ポジティブコントロールとして、市販のIDE(R&D Systems)を使用した(0.1μgをゲルにロードした)。このゲルに35分間200Vをかけて泳動させた。このSDS−PAGEをSyproRuby染色液(Molecular Probes)で一晩染色し、50%メタノール、7%酢酸で30分間固定した。15Vで20分間電気ブロッティングを行い、タンパク質をPVDF膜に移した。この膜をPBSプラス0.05% Tween−20(PBST)に希釈した5%の脱脂粉乳(BioRad)で一晩ブロッキングした後、これを10ml PBST中0.2μg/mlの一次抗体(抗IDE(R&D Systems))と共にインキュベートした。この膜を室温で2時間インキュベートし、PBSTで三度洗浄し、そしてHRP接合抗ヤギ抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories)と共に1時間インキュベートした。この膜をPBSTで三度洗浄した後、ECLプラス試薬(GE Healthcare)およびECLフィルム(GE Healthcare)を用いてバンドを可視化した。精製されたIDE−Fcに対するSDS−PAGEおよびウェスタンブロットを図25に示す。IDE酵素活性は、蛍光共鳴エネルギー転移(FRET)アッセイにおいて評価した。60μlの組換えヒトIDE(R&D Systems)またはIDE−Fc産生細胞由来のセファロース精製培養培地(HEPES緩衝液で1:2希釈)(AZ Soedertaelje)を発蛍光性ペプチド基質V−Mca−Arg−Pro−Gly−Phe−Ser−Ala−Phe−Lys(Dnp)−OH(R&D Systems)(配列番号52)を30μl含む96ウェルプレートに加えた。組換えヒトIDEの終濃度は0.1μg/mlであり、基質の終濃度は10μMであった。シグナルの特異性をコントロールするため、10μlの(1mMの)IDE阻害剤フェナントロリン(Sigma−Aldrich)をいくつかのウェルに加えた。全ての成分をウェルに添加した後、プレートを直ちに蛍光プレートリーダー(Ascent)に設置し、励起340nmおよび発光405nmでシグナルを20分間毎分記録した。酵素の活性は、反応速度−勾配係数=ΣΔRFU/Δtを算出することによって評価した。精製されたIDE−Fcに関する酵素活性のデータを図26に示す。
【0159】
実施例25
IDEおよびECEの多型変異体
IDE(インスリン分解酵素)は1018アミノ酸長のタンパク質である(配列番号19)。IDEのスプライス変異体および多型変異体が記載されている。一つのスプライス変異体においては、一つのエキソン(15a)が、15aエキソンと類似のペプチド配列をコードする同じサイズの別のエキソン(15b)で置換されている(スプライス変異体(15b)は配列番号20に記載される)。この変異体は、インスリンおよびAβの両方を分解する効率が低いことが記載されている。IDE遺伝子ではいくつかの多型も記載されており、それによるアミノ酸の相違がこのドメインにおいて確認されている:D947N、E612K、L298F、およびE408G。これらの多型の全ての組み合わせも存在し得る。ECE1(エンドセリン変換酵素1)の細胞外ドメイン(配列番号26)は681アミノ酸長のタンパク質であり、全長の膜結合型ECE1タンパク質のアミノ酸90〜770と規定される。ECE1遺伝子は、アミノ酸の相違をもたらすいくつかの潜在的な多型を含む:R665C、W541R、L494Q、およびT252I。これらの多型の全ての組み合わせも存在し得る。
【0160】
配列表
配列番号1
ネプリライシンの細胞外ドメインのアミノ酸配列、第一バージョン:
YDDGICKSSDCIKSAARLIQNMDATTEPCTDFFKYACGGWLKRNVIPETSSRYGNFDILRDELEVVLKDVLQEPKTEDIVAVQKAKALYRSCINESAIDSRGGEPLLKLLPDIYGWPVATENWEQKYGASWTAEKAIAQLNSKYGKKVLINLFVGTDDKNSVNHVIHIDQPRLGLPSRDYYECTGIYKEACTAYVDFMISVARLIRQEERLPIDENQLALEMNKVMELEKEIANATAKPEDRNDPMLLYNKMTLAQIQNNFSLEINGKPFSWLNFTNEIMSTVNISITNEEDVVVYAPEYLTKLKPILTKYSARDLQNLMSWRFIMDLVSSLSRTYKESRNAFRKALYGTTSETATWRRCANYVNGNMENAVGRLYVEAAFAGESKHVVEDLIAQIREVFIQTLDDLTWMDAETKKRAEEKALAIKERIGYPDDIVSNDNKLNNEYLELNYKEDEYFENIIQNLKFSQSKQLKKLREKVDKDEWISGAAVVNAFYSSGRNQIVFPAGILQPPFFSAQQSNSLNYGGIGMVIGHEITHGFDDNGRNFNKDGDLVDWWTQQSASNFKEQSQCMVYQYGNFSWDLAGGQHLNGINTLGENIADNGGLGQAYRAYQNYIKKNGEEKLLPGLDLNHKQLFFLNFAQVWCGTYRPEYAVNSIKTDVHSPGNFRIIGTLQNSAEFSEAFHCRKNSYMNPEKKCRVW
【0161】
配列番号2
ネプリライシンの細胞外ドメインのアミノ酸配列、第二バージョン:
YDDGICKSSDCIKSAARLIQNMDATTEPCRDFFKYACGGWLKRNVIPETSSRYGNFDILRDELEVVLKDVLQEPKTEDIVAVQKAKALYRSCINESAIDSRGGEPLLKLLPDIYGWPVATENWEQKYGASWTAEKAIAQLNSKYGKKVLINLFVGTDDKNSVNHVIHIDQPRLGLPSRDYYECTGIYKEACTAYVDFMISVARLIRQEERLPIDENQLALEMNKVMELEKEIANATAKPEDRNDPMLLYNKMTLAQIQNNFSLEINGKPFSWLNFTNEIMSTVNISITNEEDVVVYAPEYLTKLKPILTKYSARDLQNLMSWRFIMDLVSSLSRTYKESRNAFRKALYGTTSETATWRRCANYVNGNMENAVGRLYVEAAFAGESKHVVEDLIAQIREVFIQTLDDLTWMDAETKKRAEEKALAIKERIGYPDDIVSNDNKLNNEYLELNYKEDEYFENIIQNLKFSQSKQLKKLREKVDKDEWISGAAVVNAFYSSGRNQIVFPAGILQPPFFSAQQSNSLNYGGIGMVIGHEITHGFDDNGRNFNKDGDLVDWWTQQSASNFKEQSQCMVYQYGNFSWDLAGGQHLNGINTLGENIADNGGLGQAYRAYQNYIKKNGEEKLLPGLDLNHKQLFFLNFAQVWCGTYRPEYAVNSIKTDVHSPGNFRIIGTLQNSAEFSEAFHCRKNSYMNPEKKCRVW
【0162】
配列番号3
ネプリライシンの細胞外ドメインのアミノ酸配列、第三バージョン:
YDDGICKSSDCIKSAARLIQNMDATTEPCTDFFKYACGGWLKRNVIPETSSRYGNFDILRDELEVVLKDVLQEPKTEDIVAVQKAKALYRSCINESAIDSRGGEPLLKLLPDIYGWPVATENWEQKYGASWTAEKAIAQLNSKYGKKVLINLFVGTDDKNSVNHVIHIDQPRLGLPSRDYYECTGIYKEACTAYVDFMISVARLIRQEERLPIDENQLALEMNKVMELEKEIANATAKPEDRNDPMLLYNKMRLAQIQNNFSLEINGKPFSWLNFTNEIMSTVNISITNEEDVVVYAPEYLTKLKPILTKYSARDLQNLMSWRFIMDLVSSLSRTYKESRNAFRKALYGTTSETATWRRCANYVNGNMENAVGRLYVEAAFAGESKHVVEDLIAQIREVFIQTLDDLTWMDAETKKRAEEKALAIKERIGYPDDIVSNDNKLNNEYLELNYKEDEYFENIIQNLKFSQSKQLKKLREKVDKDEWISGAAVVNAFYSSGRNQIVFPAGILQPPFFSAQQSNSLNYGGIGMVIGHEITHGFDDNGRNFNKDGDLVDWWTQQSASNFKEQSQCMVYQYGNFSWDLAGGQHLNGINTLGENIADNGGLGQAYRAYQNYIKKNGEEKLLPGLDLNHKQLFFLNFAQVWCGTYRPEYAVNSIKTDVHSPGNFRIIGTLQNSAEFSEAFHCRKNSYMNPEKKCRVW
【0163】
配列番号4
ネプリライシンの細胞外ドメインのアミノ酸配列、第四バージョン:
YDDGICKSSDCIKSAARLIQNMDATTEPCRDFFKYACGGWLKRNVIPETSSRYGNFDILRDELEVVLKDVLQEPKTEDIVAVQKAKALYRSCINESAIDSRGGEPLLKLLPDIYGWPVATENWEQKYGASWTAEKAIAQLNSKYGKKVLINLFVGTDDKNSVNHVIHIDQPRLGLPSRDYYECTGIYKEACTAYVDFMISVARLIRQEERLPIDENQLALEMNKVMELEKEIANATAKPEDRNDPMLLYNKMRLAQIQNNFSLEINGKPFSWLNFTNEIMSTVNISITNEEDVVVYAPEYLTKLKPILTKYSARDLQNLMSWRFIMDLVSSLSRTYKESRNAFRKALYGTTSETATWRRCANYVNGNMENAVGRLYVEAAFAGESKHVVEDLIAQIREVFIQTLDDLTWMDAETKKRAEEKALAIKERIGYPDDIVSNDNKLNNEYLELNYKEDEYFENIIQNLKFSQSKQLKKLREKVDKDEWISGAAVVNAFYSSGRNQIVFPAGILQPPFFSAQQSNSLNYGGIGMVIGHEITHGFDDNGRNFNKDGDLVDWWTQQSASNFKEQSQCMVYQYGNFSWDLAGGQHLNGINTLGENIADNGGLGQAYRAYQNYIKKNGEEKLLPGLDLNHKQLFFLNFAQVWCGTYRPEYAVNSIKTDVHSPGNFRIIGTLQNSAEFSEAFHCRKNSYMNPEKKCRVW
【0164】
配列番号5
シグナル配列のアミノ酸:
METDTLLLWVLLLWVPGSTGD
【0165】
配列番号6
(IgG4由来の)ヒンジ領域のアミノ酸:
ESKYGPPCPSCP
【0166】
配列番号7
(IgG4由来の)Fcドメインのアミノ酸:
APEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK
【0167】
配列番号8
完全融合タンパク質のアミノ酸配列:
METDTLLLWVLLLWVPGSTGDYDDGICKSSDCIKSAARLIQNMDATTEPCTDFFKYACGGWLKRNVIPETSSRYGNFDILRDELEVVLKDVLQEPKTEDIVAVQKAKALYRSCINESAIDSRGGEPLLKLLPDIYGWPVATENWEQKYGASWTAEKAIAQLNSKYGKKVLINLFVGTDDKNSVNHVIHIDQPRLGLPSRDYYECTGIYKEACTAYVDFMISVARLIRQEERLPIDENQLALEMNKVMELEKEIANATAKPEDRNDPMLLYNKMTLAQIQNNFSLEINGKPFSWLNFTNEIMSTVNISITNEEDVVVYAPEYLTKLKPILTKYSARDLQNLMSWRFIMDLVSSLSRTYKESRNAFRKALYGTTSETATWRRCANYVNGNMENAVGRLYVEAAFAGESKHVVEDLIAQIREVFIQTLDDLTWMDAETKKRAEEKALAIKERIGYPDDIVSNDNKLNNEYLELNYKEDEYFENIIQNLKFSQSKQLKKLREKVDKDEWISGAAVVNAFYSSGRNQIVFPAGILQPPFFSAQQSNSLNYGGIGMVIGHEITHGFDDNGRNFNKDGDLVDWWTQQSASNFKEQSQCMVYQYGNFSWDLAGGQHLNGINTLGENIADNGGLGQAYRAYQNYIKKNGEEKLLPGLDLNHKQLFFLNFAQVWCGTYRPEYAVNSIKTDVHSPGNFRIIGTLQNSAEFSEAFHCRKNSYMNPEKKCRVWESKYGPPCPSCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK
【0168】
配列番号9
ヒトネプリライシンのクローニング用のフォワードプライマーの核酸配列:
GTATACGATGATGGTATTTGC
【0169】
配列番号10
ヒトネプリライシンのクローニング用のリバースプライマーの核酸配列:
GGCATGGGGGACCATATTTGGACTCCCAAACCCGGCACTTCTTTTC.
【0170】
配列番号11
配列番号10におけるFc IgG4との重複領域の核酸配列:
GGCATGGGGGACCATATTTGGACTC
【0171】
配列番号12
hIgG4由来のFcおよびヒンジのクローニング用のフォワードプライマーの核酸配列:
TCCAGAAAAGAAGTGCCGGGTTTGGGAGTCCAAATATGGTCCCCCATG
【0172】
配列番号13
配列番号12におけるヒトネプリライシンとの重複領域の核酸配列:
TCCAGAAAAGAAGTGCCGGGTTTGG
【0173】
配列番号14
hIgG4由来のFcおよびヒンジのクローニング用のリバースプライマーの核酸配列:GGGGACCACTTTGTACAAGAAAGCTGGGTCTCATTTACCCAGAGACAGGGAG
【0174】
配列番号15
配列番号14のGateway配列および停止コドンの核酸配列:
GGGGACCACTTTGTACAAGAAAGCTGGGTCTCA
【0175】
配列番号16
マウスカッパ軽鎖シグナルペプチドのクローニング用のフォワードプライマーの核酸配列:
GGGGACAAGTTTGTACAAAAAAGCAGGCTTCTTTAACTTTAAGAAGGAGATATAACCATGGAGACAGACACACTCCT
【0176】
配列番号17
配列番号16におけるGateway配列および停止コドンの核酸配列:
GGGGACAAGTTTGTACAAAAAAGCAGGCTTCTTTAACTTTAAGAAGGAGATATAACCATG
【0177】
配列番号18
マウスカッパ軽鎖シグナルペプチドのクローニング用のリバースプライマーの核酸配列:GTCACCAGTGGAACCTGGAAC
【0178】
配列番号19
IDEタンパク質、変異体1
MRYRLAWLLHPALPSTFRSVLGARLPPPERLCGFQKKTYSKMNNPAIKRIGNHITKSPEDKREYRGLELANGIKVLLMSDPTTDKSSAALDVHIGSLSDPPNIAGLSHFCEHMLFLGTKKYPKENEYSQFLSEHAGSSNAFTSGEHTNYYFDVSHEHLEGALDRFAQFFLCPLFDESCKDREVNAVDSEHEKNVMNDAWRLFQLEKATGNPKHPFSKFGTGNKYTLETRPNQEGIDVRQELLKFHSAYYSSNLMAVCVLGRESLDDLTNLVVKLFSEVENKNVPLPEFPEHPFQEEHLKQLYKIVPIKDIRNLYVTFPIPDLQKYYKSNPGHYLGHLIGHEGPGSLLSELKSKGWVNTLVGGQKEGARGFMFFIINVDLTEEGLLHVEDIILHMFQYIQKLRAEGPQEWVFQECKDLNAVAFRFKDKERPRGYTSKIAGILHYYPLEEVLTAEYLLEEFRPDLIEMVLDKLRPENVRVAIVSKSFEGKTDRTEEWYGTQYKQEAIPDEVIKKWQNADLNGKFKLPTKNEFIPTNFEILPLEKEATPYPALIKDTVMSKLWFKQDDKKKKPKACLNFEFFSPFAYVDPLHCNMAYLYLELLKDSLNEYAYAAELAGLSYDLQNTIYGMYLSVKGYNDKQPILLKKIIEKMATFEIDEKRFEIIKEAYMRSLNNFRAEQPHQHAMYYLRLLMTEVAWTKDELKEALDDVTLPRLKAFIPQLLSRLHIEALLHGNITKQAALGIMQMVEDTLIEHAHTKPLLPSQLVRYREVQLPDRGWFVYQQRNEVHNNCGIEIYYQTDMQSTSENMFLELFCQIISEPCFNTLRTKEQLGYIVFSGPRRANGIQSLRFIIQSEKPPHYLESRVEAFLITMEKSIEDMTEEAFQKHIQALAIRRLDKPKKLSAECAKYWGEIISQQYNFDRDNTEVAYLKTLTKEDIIKFYKEMLAVDAPRRHKVSVHVLAREMDSCPVVGEFPCQNDINLSQAPALPQPEVIQNMTEFKRGLPLFPLVKPHINFMAAKL
【0179】
配列番号20
IDEタンパク質、変異体2(スプライス変異体)
MRYRLAWLLHPALPSTFRSVLGARLPPPERLCGFQKKTYSKMNNPAIKRIGNHITKSPEDKREYRGLELANGIKVLLISDPTTDKSSAALDVHIGSLSDPPNIAGLSHFCEHMLFLGTKKYPKENEYSQFLSEHAGSSNAFTSGEHTNYYFDVSHEHLEGALDRFAQFFLCPLFDESCKDREVNAVDSEHEKNVMNDAWRLFQLEKATGNPKHPFSKFGTGNKYTLETRPNQEGIDVRQELLKFHSAYYSSNLMAVCVLGRESLDDLTNLVVKLFSEVENKNVPLPEFPEHPFQEEHLKQLYKIVPIKDIRNLYVTFPIPDLQKYYKSNPGHYLGHLIGHEGPGSLLSELKSKGWVNTLVGGQKEGARGFMFFIINVDLTEEGLLHVEDIILHMFQYIQKLRAEGPQGWVFQECKDLNAVAFRFKDKERPRGYTSKIAGILHYYPLEEVLTAEYLLEEFRPDLIEMVLDKLRPENVRVAIVSKSFEGKTDRTEEWYGTQYKQEAIPDEVIKKWQNADLNGKFKLPTKNEFIPTNFEILPLEKEATPYPALIKDTAMSKLWFKQDDKFFLPKACLNFEFFSRYIYADPLHCNMTYLFIRLLKDDLKEYTYAARLSGLSYGIASGMNAILLSVKGYNDKQPILLKKIIEKMATFEIDEKRFEIIKEAYMRSLNNFRAEQPHQHAMYYLRLLMTEVAWTKDELKEALDDVTLPRLKAFIPQLLSRLHIEALLHGNITKQAALGIMQMVEDTLIEHAHTKPLLPSQLVRYREVQLPDRGWFVYQQRNEVHNNCGIEIYYQTDMQSTSENMFLELFCQIISEPCFNTLRTKEQLGYIVFSGPRRANGIQGLRFIIQSEKPPHYLESRVEAFLITMEKSIEDMTEEAFQKHIQALAIRRLDKPKKLSAECAKYWGEIISQQYNFDRDNTEVAYLKTLTKEDIIKFYKEMLAVDAPRRHKVSVHVLAREMDSCPVVGEFPCQNDINLSQAPALPQPEVIQNMTEFKRGLPLFPLVKPHINFMAAKL
【0180】
配列番号21
IDEタンパク質、変異体3、D947N。多型を下線で示す。
MRYRLAWLLHPALPSTFRSVLGARLPPPERLCGFQKKTYSKMNNPAIKRIGNHITKSPEDKREYRGLELANGIKVLLMSDPTTDKSSAALDVHIGSLSDPPNIAGLSHFCEHMLFLGTKKYPKENEYSQFLSEHAGSSNAFTSGEHTNYYFDVSHEHLEGALDRFAQFFLCPLFDESCKDREVNAVDSEHEKNVMNDAWRLFQLEKATGNPKHPFSKFGTGNKYTLETRPNQEGIDVRQELLKFHSAYYSSNLMAVCVLGRESLDDLTNLVVKLFSEVENKNVPLPEFPEHPFQEEHLKQLYKIVPIKDIRNLYVTFPIPDLQKYYKSNPGHYLGHLIGHEGPGSLLSELKSKGWVNTLVGGQKEGARGFMFFIINVDLTEEGLLHVEDIILHMFQYIQKLRAEGPQEWVFQECKDLNAVAFRFKDKERPRGYTSKIAGILHYYPLEEVLTAEYLLEEFRPDLIEMVLDKLRPENVRVAIVSKSFEGKTDRTEEWYGTQYKQEAIPDEVIKKWQNADLNGKFKLPTKNEFIPTNFEILPLEKEATPYPALIKDTVMSKLWFKQDDKKKKPKACLNFEFFSPFAYVDPLHCNMAYLYLELLKDSLNEYAYAAELAGLSYDLQNTIYGMYLSVKGYNDKQPILLKKIIEKMATFEIDEKRFEIIKEAYMRSLNNFRAEQPHQHAMYYLRLLMTEVAWTKDELKEALDDVTLPRLKAFIPQLLSRLHIEALLHGNITKQAALGIMQMVEDTLIEHAHTKPLLPSQLVRYREVQLPDRGWFVYQQRNEVHNNCGIEIYYQTDMQSTSENMFLELFCQIISEPCFNTLRTKEQLGYIVFSGPRRANGIQSLRFIIQSEKPPHYLESRVEAFLITMEKSIEDMTEEAFQKHIQALAIRRLDKPKKLSAECAKYWGEIISQQYNFDRDNTEVAYLKTLTKEDIIKFYKEMLAVAPRRHKVSVHVLAREMDSCPVVGEFPCQNDINLSQAPALPQPEVIQNMTEFKRGLPLFPLVKPHINFMAAKL
【0181】
配列番号22
IDEタンパク質、変異体4、多型E612K。多型を下線で示す。
MRYRLAWLLHPALPSTFRSVLGARLPPPERLCGFQKKTYSKMNNPAIKRIGNHITKSPEDKREYRGLELANGIKVLLMSDPTTDKSSAALDVHIGSLSDPPNIAGLSHFCEHMLFLGTKKYPKENEYSQFLSEHAGSSNAFTSGEHTNYYFDVSHEHLEGALDRFAQFFLCPLFDESCKDREVNAVDSEHEKNVMNDAWRLFQLEKATGNPKHPFSKFGTGNKYTLETRPNQEGIDVRQELLKFHSAYYSSNLMAVCVLGRESLDDLTNLVVKLFSEVENKNVPLPEFPEHPFQEEHLKQLYKIVPIKDIRNLYVTFPIPDLQKYYKSNPGHYLGHLIGHEGPGSLLSELKSKGWVNTLVGGQKEGARGFMFFIINVDLTEEGLLHVEDIILHMFQYIQKLRAEGPQEWVFQECKDLNAVAFRFKDKERPRGYTSKIAGILHYYPLEEVLTAEYLLEEFRPDLIEMVLDKLRPENVRVAIVSKSFEGKTDRTEEWYGTQYKQEAIPDEVIKKWQNADLNGKFKLPTKNEFIPTNFEILPLEKEATPYPALIKDTVMSKLWFKQDDKKKKPKACLNFEFFSPFAYVDPLHCNMAYLYLELLKDSLNEYAYAALAGLSYDLQNTIYGMYLSVKGYNDKQPILLKKIIEKMATFEIDEKRFEIIKEAYMRSLNNFRAEQPHQHAMYYLRLLMTEVAWTKDELKEALDDVTLPRLKAFIPQLLSRLHIEALLHGNITKQAALGIMQMVEDTLIEHAHTKPLLPSQLVRYREVQLPDRGWFVYQQRNEVHNNCGIEIYYQTDMQSTSENMFLELFCQIISEPCFNTLRTKEQLGYIVFSGPRRANGIQSLRFIIQSEKPPHYLESRVEAFLITMEKSIEDMTEEAFQKHIQALAIRRLDKPKKLSAECAKYWGEIISQQYNFDRDNTEVAYLKTLTKEDIIKFYKEMLAVDAPRRHKVSVHVLAREMDSCPVVGEFPCQNDINLSQAPALPQPEVIQNMTEFKRGLPLFPLVKPHINFMAAKL
【0182】
配列番号23
IDEタンパク質、変異体5、多型L298F。多型を下線で示す。
MRYRLAWLLHPALPSTFRSVLGARLPPPERLCGFQKKTYSKMNNPAIKRIGNHITKSPEDKREYRGLELANGIKVLLMSDPTTDKSSAALDVHIGSLSDPPNIAGLSHFCEHMLFLGTKKYPKENEYSQFLSEHAGSSNAFTSGEHTNYYFDVSHEHLEGALDRFAQFFLCPLFDESCKDREVNAVDSEHEKNVMNDAWRLFQLEKATGNPKHPFSKFGTGNKYTLETRPNQEGIDVRQELLKFHSAYYSSNLMAVCVLGRESLDDLTNLVVKLFSEVENKNVPLPEFPEHPFQEEHKQLYKIVPIKDIRNLYVTFPIPDLQKYYKSNPGHYLGHLIGHEGPGSLLSELKSKGWVNTLVGGQKEGARGFMFFIINVDLTEEGLLHVEDIILHMFQYIQKLRAEGPQEWVFQECKDLNAVAFRFKDKERPRGYTSKIAGILHYYPLEEVLTAEYLLEEFRPDLIEMVLDKLRPENVRVAIVSKSFEGKTDRTEEWYGTQYKQEAIPDEVIKKWQNADLNGKFKLPTKNEFIPTNFEILPLEKEATPYPALIKDTVMSKLWFKQDDKKKKPKACLNFEFFSPFAYVDPLHCNMAYLYLELLKDSLNEYAYAAELAGLSYDLQNTIYGMYLSVKGYNDKQPILLKKIIEKMATFEIDEKRFEIIKEAYMRSLNNFRAEQPHQHAMYYLRLLMTEVAWTKDELKEALDDVTLPRLKAFIPQLLSRLHIEALLHGNITKQAALGIMQMVEDTLIEHAHTKPLLPSQLVRYREVQLPDRGWFVYQQRNEVHNNCGIEIYYQTDMQSTSENMFLELFCQIISEPCFNTLRTKEQLGYIVFSGPRRANGIQSLRFIIQSEKPPHYLESRVEAFLITMEKSIEDMTEEAFQKHIQALAIRRLDKPKKLSAECAKYWGEIISQQYNFDRDNTEVAYLKTLTKEDIIKFYKEMLAVDAPRRHKVSVHVLAREMDSCPVVGEFPCQNDINLSQAPALPQPEVIQNMTEFKRGLPLFPLVKPHINFMAAKL
【0183】
配列番号24
IDEタンパク質、変異体6、多型E408G。多型を下線で示す。
MRYRLAWLLHPALPSTFRSVLGARLPPPERLCGFQKKTYSKMNNPAIKRIGNHITKSPEDKREYRGLELANGIKVLLMSDPTTDKSSAALDVHIGSLSDPPNIAGLSHFCEHMLFLGTKKYPKENEYSQFLSEHAGSSNAFTSGEHTNYYFDVSHEHLEGALDRFAQFFLCPLFDESCKDREVNAVDSEHEKNVMNDAWRLFQLEKATGNPKHPFSKFGTGNKYTLETRPNQEGIDVRQELLKFHSAYYSSNLMAVCVLGRESLDDLTNLVVKLFSEVENKNVPLPEFPEHPFQEEHLKQLYKIVPIKDIRNLYVTFPIPDLQKYYKSNPGHYLGHLIGHEGPGSLLSELKSKGWVNTLVGGQKEGARGFMFFIINVDLTEEGLLHVEDIILHMFQYIQKLRAEGPQWVFQECKDLNAVAFRFKDKERPRGYTSKIAGILHYYPLEEVLTAEYLLEEFRPDLIEMVLDKLRPENVRVAIVSKSFEGKTDRTEEWYGTQYKQEAIPDEVIKKWQNADLNGKFKLPTKNEFIPTNFEILPLEKEATPYPALIKDTVMSKLWFKQDDKKKKPKACLNFEFFSPFAYVDPLHCNMAYLYLELLKDSLNEYAYAAELAGLSYDLQNTIYGMYLSVKGYNDKQPILLKKIIEKMATFEIDEKRFEIIKEAYMRSLNNFRAEQPHQHAMYYLRLLMTEVAWTKDELKEALDDVTLPRLKAFIPQLLSRLHIEALLHGNITKQAALGIMQMVEDTLIEHAHTKPLLPSQLVRYREVQLPDRGWFVYQQRNEVHNNCGIEIYYQTDMQSTSENMFLELFCQIISEPCFNTLRTKEQLGYIVFSGPRRANGIQSLRFIIQSEKPPHYLESRVEAFLITMEKSIEDMTEEAFQKHIQALAIRRLDKPKKLSAECAKYWGEIISQQYNFDRDNTEVAYLKTLTKEDIIKFYKEMLAVDAPRRHKVSVHVLAREMDSCPVVGEFPCQNDINLSQAPALPQPEVIQNMTEFKRGLPLFPLVKPHINFMAAKL
【0184】
配列番号25
IDE−Fc(IgG4)融合タンパク質のアミノ酸配列(シグナル配列を含む)。配列番号19に記載されるIDE変異体。
METDTLLLWVLLLWVPGSTGDRYRLAWLLHPALPSTFRSVLGARLPPPERLCGFQKKTYSKMNNPAIKRIGNHITKSPEDKREYRGLELANGIKVLLMSDPTTDKSSAALDVHIGSLSDPPNIAGLSHFCEHMLFLGTKKYPKENEYSQFLSEHAGSSNAFTSGEHTNYYFDVSHEHLEGALDRFAQFFLCPLFDESCKDREVNAVDSEHEKNVMNDAWRLFQLEKATGNPKHPFSKFGTGNKYTLETRPNQEGIDVRQELLKFHSAYYSSNLMAVCVLGRESLDDLTNLVVKLFSEVENKNVPLPEFPEHPFQEEHLKQLYKIVPIKDIRNLYVTFPIPDLQKYYKSNPGHYLGHLIGHEGPGSLLSELKSKGWVNTLVGGQKEGARGFMFFIINVDLTEEGLLHVEDIILHMFQYIQKLRAEGPQEWVFQECKDLNAVAFRFKDKERPRGYTSKIAGILHYYPLEEVLTAEYLLEEFRPDLIEMVLDKLRPENVRVAIVSKSFEGKTDRTEEWYGTQYKQEAIPDEVIKKWQNADLNGKFKLPTKNEFIPTNFEILPLEKEATPYPALIKDTVMSKLWFKQDDKKKKPKACLNFEFFSPFAYVDPLHCNMAYLYLELLKDSLNEYAYAAELAGLSYDLQNTIYGMYLSVKGYNDKQPILLKKIIEKMATFEIDEKRFEIIKEAYMRSLNNFRAEQPHQHAMYYLRLLMTEVAWTKDELKEALDDVTLPRLKAFIPQLLSRLHIEALLHGNITKQAALGIMQMVEDTLIEHAHTKPLLPSQLVRYREVQLPDRGWFVYQQRNEVHNNCGIEIYYQTDMQSTSENMFLELFCQIISEPCFNTLRTKEQLGYIVFSGPRRANGIQSLRFIIQSEKPPHYLESRVEAFLITMEKSIEDMTEEAFQKHIQALAIRRLDKPKKLSAECAKYWGEIISQQYNFDRDNTEVAYLKTLTKEDIIKFYKEMLAVDAPRRHKVSVHVLAREMDSCPVVGEFPCQNDINLSQAPALPQPEVIQNMTEFKRGLPLFPLVKPHINFMAAKLESKYGPPCPSCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK
【0185】
配列番号26
ECE1タンパク質のアミノ酸配列
QYQTRSPSVCLSEACVSVTSSILSSMDPTVDPCHDFFSYACGGWIKANPVPDGHSRWGTFSNLWEHNQAIIKHLLENSTASVSEAERKAQVYYRACMNETRIEELRAKPLMELIERLGGWNITGPWAKDNFQDTLQVVTAHYRTSPFFSVYVSADSKNSNSNVIQVDQSGLGLPSRDYYLNKTENEKVLTGYLNYMVQLGKLLGGGDEEAIRPQMQQILDFETALANITIPQEKRRDEELIYHKVTAAELQTLAPAINWLPFLNTIFYPVEINESEPIVVYDKEYLEQISTLINTTDRCLLNNYMIWNLVRKTSSFLDQRFQDADEKFMEVMYGTKKTCLPRWKFCVSDTENNLGFALGPMFVKATFAEDSKSIATEIILEIKKAFEESLSTLKWMDEETRKSAKEKADAIYNMIGYPNFIMDPKELDKVFNDYTAVPDLYFENAMRFFNFSWRVTADQLRKAPNRDQWSMTPPMVNAYYSPTKNEIVFPAGILQAPFYTRSSPKALNFGGIGVVVGHELTHAFDDQGREYDKDGNLRPWWKNSSVEAFKRQTECMVEQYSNYSVNGEPVNGRHTLGENIADNGGLKAAYRAYQNWVKKNGAEHSLPTLGLTNNQLFFLGFAQVWCSVRTPESSHEGLITDPHSPSRFRVIGSLSNSKEFSEHFRCPPGSPMNPPHKCEVW
【0186】
配列番号27
ECE1−Fc(IgG4)融合タンパク質のアミノ酸配列(シグナル配列を含む)
METDTLLLWVLLLWVPGSTGDQYQTRSPSVCLSEACVSVTSSILSSMDPTVDPCHDFFSYACGGWIKANPVPDGHSRWGTFSNLWEHNQAIIKHLLENSTASVSEAERKAQVYYRACMNETRIEELRAKPLMELIERLGGWNITGPWAKDNFQDTLQVVTAHYRTSPFFSVYVSADSKNSNSNVIQVDQSGLGLPSRDYYLNKTENEKVLTGYLNYMVQLGKLLGGGDEEAIRPQMQQILDFETALANITIPQEKRRDEELIYHKVTAAELQTLAPAINWLPFLNTIFYPVEINESEPIVVYDKEYLEQISTLINTTDRCLLNNYMIWNLVRKTSSFLDQRFQDADEKFMEVMYGTKKTCLPRWKFCVSDTENNLGFALGPMFVKATFAEDSKSIATEIILEIKKAFEESLSTLKWMDEETRKSAKEKADAIYNMIGYPNFIMDPKELDKVFNDYTAVPDLYFENAMRFFNFSWRVTADQLRKAPNRDQWSMTPPMVNAYYSPTKNEIVFPAGILQAPFYTRSSPKALNFGGIGVVVGHELTHAFDDQGREYDKDGNLRPWWKNSSVEAFKRQTECMVEQYSNYSVNGEPVNGRHTLGENIADNGGLKAAYRAYQNWVKKNGAEHSLPTLGLTNNQLFFLGFAQVWCSVRTPESSHEGLITDPHSPSRFRVIGSLSNSKEFSEHFRCPPGSPMNPPHKCEVWESKYGPPCPSCPAPEFLGGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSQEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTYRVVSVLTVLHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPSSIEKTISKAKGQPREPQVYTLPPSQEEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPVLDSDGSFFLYSRLTVDKSRWQEGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSLGK
【0187】
配列番号28
IgG2のヒンジ領域
ERKCCVECPPCP
【0188】
配列番号29
IgG2 Fcドメインのアミノ酸配列
ASTKGPSVFPLAPCSRSTSESTAALGCLVKDYFPEPVTVSWNSGALTSGVHTFPAVLQSSGLYSLSSVVTVPSSNFGTQTYTCNVDHKPSNTKVDKTVERKCCVECPPCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPAPIEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0189】
配列番号30
ネプリライシン−Fc(IgG2)タンパク質のアミノ酸配列(シグナル配列を含む)
METDTLLLWVLLLWVPGSTGDYDDGICKSSDCIKSAARLIQNMDATTEPCTDFFKYACGGWLKRNVIPETSSRYGNFDILRDELEVVLKDVLQEPKTEDIVAVQKAKALYRSCINESAIDSRGGEPLLKLLPDIYGWPVATENWEQKYGASWTAEKAIAQLNSKYGKKVLINLFVGTDDKNSVNHVIHIDQPRLGLPSRDYYECTGIYKEACTAYVDFMISVARLIRQEERLPIDENQLALEMNKVMELEKEIANATAKPEDRNDPMLLYNKMTLAQIQNNFSLEINGKPFSWLNFTNEIMSTVNISITNEEDVVVYAPEYLTKLKPILTKYSARDLQNLMSWRFIMDLVSSLSRTYKESRNAFRKALYGTTSETATWRRCANYVNGNMENAVGRLYVEAAFAGESKHVVEDLIAQIREVFIQTLDDLTWMDAETKKRAEEKALAIKERIGYPDDIVSNDNKLNNEYLELNYKEDEYFENIIQNLKFSQSKQLKKLREKVDKDEWISGAAVVNAFYSSGRNQIVFPAGILQPPFFSAQQSNSLNYGGIGMVIGHEITHGFDDNGRNFNKDGDLVDWWTQQSASNFKEQSQCMVYQYGNFSWDLAGGQHLNGINTLGENIADNGGLGQAYRAYQNYIKKNGEEKLLPGLDLNHKQLFFLNFAQVWCGTYRPEYAVNSIKTDVHSPGNFRIIGTLQNSAEFSEAFHCRKNSYMNPEKKCRVWERKCCVECPPCPAPPVAGPSVFLFPPKPKDTLMISRTPEVTCVVVDVSHEDPEVQFNWYVDGVEVHNAKTKPREEQFNSTFRVVSVLTVVHQDWLNGKEYKCKVSNKGLPAPIEKTISKTKGQPREPQVYTLPPSREEMTKNQVSLTCLVKGFYPSDIAVEWESNGQPENNYKTTPPMLDSDGSFFLYSKLTVDKSRWQQGNVFSCSVMHEALHNHYTQKSLSLSPGK
【0190】
配列番号31
ATGCGGTACCGGCTAGCGTGGCT
【0191】
配列番号32
TCAGAGTTTTGCAGCCATGAAGTTA
【0192】
配列番号33
ATGGAGACAGACACACTCCTGCTATGGGTACTGCTGCTCTGGGTTCCAGGTTCCACTGGTGACCGGTACCGGCTAGCGTGGCTTCT
【0193】
配列番号34
AATACCGGTTCTAGACTCGAGTTTTGCAGCCATGAAGTTAAT
【0194】
配列番号35
ATTCTCGAGTCCAAATATGGTCCCCCATG
【0195】
配列番号36
AATACCGGTTCATTTACCCAGAGACAGGGAGAG
【0196】
配列番号37
GGGGACAAGTTTGTACAAAAAAGCAGGCTTCTATAACCATGGAGACAGACACACTCCTGC
【0197】
配列番号38
GGGGACCACTTTGTACAAGAAAGCTGGGTCTCATTTACCCAGAGACAGGGAGAG
【0198】
配列番号39
ATGGAGACAGACACACTCCTGCTATGGGTACTGCTGCTCTGGGTTCCAGGTTCCACTGGTGACCAGTACCAGACAAGATCCCCC
【0199】
配列番号40
AATACCGGTTCTAGAGAATTCGCACTTGTGAGGCGGGTT
【0200】
配列番号41
GCGAATTCTGGGAGTCCAAATATGGTCCCCCATG
【0201】
配列番号42
CCTCACAAGTGCGAAGTCTGGGAGTCCAAATATG
【0202】
配列番号43
CATATTTGGACTCCCAGACTTCGCACTTGTGAGG
【0203】
配列番号44
GGGGACAAGTTTGTACAAAAAAGCAGGCTTC
【0204】
配列番号45
GGCACTCGACACAACATTTGCGCTCCCAAACCCGGCACTTCTTTTC
【0205】
配列番号46
TCCAGAAAAGAAGTGCCGGGTTTGGGAGCGCAAATGTTGTGTCGA
【0206】
配列番号47
GGGGACCACTTTGTACAAGAAAGCTGGGTCTCATTTACCCGGAGACAGGGAGAGGCTCTTC
【0207】
配列番号48
GGGGACAAGTTTGTACAAAAAAGCAGGCTTC
【0208】
配列番号49
GGGGACCACTTTGTACAAGAAAGCTGGGTCTCACCAAACCCGGCACTTCTTTTC
【0209】
配列番号50
Asp Ala Glu Phe Arg His Asp Ser Gly Tyr Glu Val His His Gln Lys Leu Val Phe Phe Ala Glu Asp Val Gly Ser Asn Lys Gly Ala Ile Ile Gly Leu Met Val Gly Gly Val Val Ile Ala Thr
【0210】
配列番号51
Asp Ala Glu Phe Arg His Asp Ser Gly Tyr Glu Val His His Gln Lys Leu Val Phe Phe Ala Glu Asp Val Gly Ser Asn Lys Gly Ala Ile Ile Gly Leu Met Val Gly Gly Val Val Ile Ile Ala
【0211】
配列番号52
Arg Pro Gly Phe Ser Ala Phe Lys
【図面の簡単な説明】
【0212】
【図1】酵素活性または触媒活性を有するアミロイドβペプチド分解成分および主として融合タンパク質の血漿中での半減期を調節し融合タンパク質の安定性をも変化させる半減期調節成分を含む、本発明において記載される融合タンパク質の全体構造の概略を示す。二つの異なる成分の間にあるリンカーは任意であり、二つの成分を最適な幾何学的位置に配置するかまたは単に柔軟な様式でそれらを共有結合もしくは非共有結合により接続するよう設計することもできる。従って、それらは相互に直接接続できるから、二つの成分の直接的連結もまた任意である。直接的連結/接続は、アミロイドβペプチド分解成分の一部が半減期調節成分に接続されることを意味する。
【図2】アミロイドβペプチドが区画の間を自由に移動できる膜により隔てられた別の区画における遊離型のアミロイドβペプチドを分解することにより、ある区画におけるアミロイドβペプチドを低下させることが可能なアプローチを表すインビトロ実験を示す。二つの異なる区画は血漿およびCNSであり得、膜は血液脳関門(BBB)を反映する。
【図3】遊離型、プラーク形成、BBB通過、結合、および分解間のアミロイドβペプチドの分配を示す。重要なことは、血漿中でのアミロイドβペプチドの分解がCNSにおける遊離型のアミロイドβペプチドを低下させ、それによってアミロイドプラークの形成を抑制することである。同様の効果は、結合因子を用いた場合に得られる。
【図4】アミロイドβペプチドの結合と分解の間の主要な違いを示す。結合アプローチが使用される場合、アミロイドβペプチドの血漿中での潜在的な蓄積が起こる可能性があり、これは末梢系において負の作用を有し得る。結合はまた、アミロイドβペプチドの異化の自然プロセスと競合する。他方、本発明は、融合タンパク質が血漿中のアミロイドβペプチドを直接分解することおよびその分解がアミロイドβペプチドの異化の自然経路を補完することを記載する。
【図5】ヒトアミロイドベータA4タンパク質(前駆体)のアミノ酸配列を示す。アミロイドβペプチドは、この配列におけるアミノ酸672〜714、DAEFRHDSG YEVHHQKLVF FAEDVGSNKG AIIGLMVGGV VIAT、に対応する(アミノ酸1〜43)。アミロイドβペプチドの主要な形態には、このペプチドの任意の短縮型、特に1〜38、1〜40、および1〜42も含まれるがこれらの形態に限定されない。
【図6】文献で提唱され記載されたアミロイドβペプチド内の切断部位を示す。ネプリライシン(NEP)切断部位は文字cで示す。アミロイドβペプチドには13の潜在的なNEP切断部位が存在する。精製されたネプリライシンは、インビトロでアミロイドβペプチドを5箇所で切断することが報告されており(Howell et al.,1995)、Ab1-42に対して2.8mMのKmを有する(Takaki et al.,2000)。
【図7】分子の血漿中半減期を延長するための一般的に使用される修飾についてのいくつかの選択肢を示す。抗体のFc部分、ペグ化、およびグリコシル化は、三つの最も頻繁に使用されるアプローチであるが、本発明はこれらのアプローチに限定されない。
【図8】IgG抗体の全体構造を示す。軽鎖(VLおよびHL)はジスルフィド結合(−S−S−)を通じて重鎖(VH、CH1、CH2、およびCH3)に連結される。Fc領域はCH2およびCH3のドメインで構成される。IgG抗体は、本発明において融合タンパク質の血漿中半減期を調節するのに有用であると記載されている抗体のクラスの例であるが、他のクラスの抗体も使用できる。
【図9】IgGクラスが四つのサブクラス(γ1、γ2、γ3、γ4)に分類されることを示す。これらのサブクラスは、例えば補体の活性化をもたらすFc領域において異なる活性を有する。さらに、様々な免疫グロブリンは五つのクラス(IgG、IgM、IgA、IgE、IgD)に分類される。
【図10】血漿中半減期および濃度がそのタンパク質の設計に依存してどのように変化するかを図示する。ペグ化によって修飾されたタンパク質は、未修飾のタンパク質(例えば組換えタンパク質)よりも長い半減期を有する。この図はまた、調節因子としてFc部分(Fc融合)を用いた場合の血漿中半減期の延長を示す。いくつかの例においては、Fc融合タンパク質において見られたのと同一の血漿中半減期の延長が、ペグ化を用いて達成できる。グリコシル化もまた、血漿中半減期を延長するのに使用できる。これらの様々な技術またはアプローチは、当該分野で周知である。
【図11】小さい細胞内部分、膜貫通領域、および細胞外領域から構成されるネプリライシンの構造を示す。細胞外領域(アミノ酸52〜749)は、好ましくは、調節成分として使用され、調節成分に連結される。細胞外領域を表す正確なアミノ酸配列の領域は個別に異なり、膜領域に追加のアミノ酸を含む場合およびC末端領域に追加のアミノ酸を含む場合がある。
【図12】アミロイドβペプチド分解酵素がネプリライシンであり、血漿中半減期調節因子がFc成分である融合タンパク質の例を示す。ネプリライシンの細胞外部分はFc領域のN末端に直接的に連結される。これはネプリライシンのC末端がFc区画に連結されることを意味する。この融合タンパク質は、治療用途のために発現および精製され得る。
【図13】アミロイドβペプチド分解成分を、アミロイドβ結合成分と血漿中半減期調節因子と一緒に連結する様々な選択肢を示す。
【図14】アミロイドβペプチド分解成分がネプリライシンであり、アミロイドβペプチド結合成分がFabフラグメントであり、血漿中半減期調節成分がFc部分である、二機能性融合タンパク質の例を示す。
【図15】ネプリライシンの細胞外ドメインとIgG4のFcドメイン(IgG4のヒンジ領域を含む)の間の融合物をコードする遺伝子を構築するためのストラテジーを示す。オーバーラップPCRにより、ネプリライシンとIgG4 Fcが結合される。この遺伝子は、pGEMクローニングベクターに導入され、DNA配列分析に供される。
【図16】シグナルペプチドをコードする遺伝子を導入するためのストラテジーを示す。ネプリライシンの5’末端とシグナル配列の3’末端を融合するのに平滑末端制限酵素が使用される。完全フラグメントはGateway配列を含み、任意の発現ベクターへの再クローニングを容易にするようGatewayドナープラスミドに移される。
【図17】5Lバイオリアクターにおける酵素活性(実施例11に記載される産生および実施例18に記載されるように測定した活性)を示す。図17aは細胞培地中の活性を示し、図17bは酵素濃度についての補正後の比活性を示す。
【図18】実施例13に記載されるような、ビオチン化Nep特異的抗体およびストレプトアビジンセファロースを用いて細胞培地から抽出したネプリライシンの活性の測定を示す。
【図19】図19左ペイン:7日間の発現後のネプリライシン−Fcの発現を示すウェスタンブロット(最終レーン、Nepコントロール)。右ペイン:アフィニティクロマトグラフィで精製し低pHで溶出した、アフィニティ精製されたタンパク質ネプリライシン−Fc(IgG4)。
【図20】時間依存的なAβ1-40の分解を示す。5μg/mlのネプリライシンを、モルモット血漿と共に37℃で0〜360分間インキュベートした。実験の詳細については実施例19に記載される。
【図21】時間依存的なAβ1-42の分解を示す。5μg/mlのネプリライシンを、モルモット血漿と共に37℃で0〜360分間インキュベートした。実験の詳細については実施例19に記載される。
【図22】用量依存的なAβ40の分解を示す。0〜20μg/mlのネプリライシンを、モルモット血漿と共に37℃で210分間インキュベートした。実験の詳細については実施例19に記載される。
【図23】添加されたネプリライシンによるAβ40の分解が血漿への10μMのホスホラミドンの添加により阻害されることを示す。実験の詳細については実施例19に記載される。
【図24】緩衝系下の組換えヒトネプリライシンによるアミロイドβ1−40ペプチドの分解を示す。実験の詳細については実施例20に記載される。
【図25】精製されたIDE−FcのSDS−PAGEおよびウェスタンブロットによる分析を示す。ウェスタンブロットにおいて、IDE−FcはIDEに特異的な抗体を用いて検出した。レーン1および2:精製されたIDE−Fc、レーン3:可溶型IDE(0.1μg)。実験の詳細については実施例24に記載される。
【図26】精製されたIDE−Fc構築物の酵素活性を示す。パネルAはIDE−Fc活性を含む画分を示し;パネルBはパネルAにおいて○で囲んだサンプルの詳細を示す。バネルBにはいかなる酵素も添加しなかったコントロールも含まれる。活性の測定については実施例24に記載される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミロイドベータペプチドをそのアミノ酸配列内の一つまたはそれ以上の切断部位で分解できる、式A−L−M[ここでAはアミロイドベータペプチドを切断する成分であり;Mは血漿中半減期を調節する成分であり;LはAおよびMを接続する成分である]を有する融合タンパク質。
【請求項2】
LがAおよびMを共有結合により接続する、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
Aがプロテアーゼである、請求項1または2に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
Aが改良型プロテアーゼである、請求項3に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
Aがスカフォールドタンパク質である、請求項1または2に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
Aがヒトネプリライシンである、請求項1または2に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
ネプリライシンが細胞外ネプリライシンである、請求項6に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
配列番号1、2、3、または4のいずれか一つに記載のアミノ酸配列を含む、請求項7に記載の細胞外ネプリライシン。
【請求項9】
Aがインスリン分解酵素である、請求項1または2に記載の融合タンパク質。
【請求項10】
Mが抗体のFc部分である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項11】
MがIgG抗体由来のFc部分である、請求項10に記載の融合タンパク質。
【請求項12】
Mがペグ化またはグリコシル化から選択される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項13】
Lがペプチド、化学リンカー、およびAとMの間の直接接続から選択される、請求項1〜12のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項14】
Aがヒトネプリライシンであり;MがIgG抗体由来のFc部分であり;Lがペプチドである、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項15】
配列番号8に記載のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項16】
成分Lを通じて接続された成分Aおよび成分Mの組み合わせが、成分A単独よりも長い半減期を有する、請求項1〜15のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の融合タンパク質を投与することを含む、アミロイドβペプチド濃度を減少させる方法。
【請求項18】
アミロイドβペプチドの除去が血漿において達成される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
アミロイドβペプチドの除去がCSFにおいて達成される、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
アミロイドβペプチドの除去がCNSにおいて達成される、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
薬学的に許容される担体または賦形剤と共に、請求項1〜16のいずれか一項に記載の薬学的に許容される量の融合タンパク質を含む、アミロイドβペプチドを分解可能な薬学的組成物。
【請求項22】
アミロイドβペプチドの分解が有益である状態の予防および/または処置の方法であって、そのような予防および/または処置が必要なヒトを含む哺乳動物に、請求項1〜16のいずれか一項に記載の治療有効量の融合タンパク質を投与することを含む、方法。
【請求項23】
状態がアルツハイマー病または脳アミロイドアンギオパチー(CCA)である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
医学的療法のための、請求項1〜16のいずれか一項に記載の融合タンパク質の使用。
【請求項25】
アミロイドβベプチドの分解が有益である状態の予防および/または処置のための医薬の製造における、請求項1〜16のいずれか一項に記載の融合タンパク質の使用。
【請求項26】
状態がアルツハイマー病または脳アミロイドアンギオパチー(CCA)である、請求項25に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【公表番号】特表2009−509564(P2009−509564A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−534483(P2008−534483)
【出願日】平成18年10月2日(2006.10.2)
【国際出願番号】PCT/SE2006/001113
【国際公開番号】WO2007/040437
【国際公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【出願人】(391008951)アストラゼネカ・アクチエボラーグ (625)
【氏名又は名称原語表記】ASTRAZENECA AKTIEBOLAG
【Fターム(参考)】