説明

血漿濃縮装置

本発明に係る血漿濃縮装置(2)は、濃縮チャンバー(20)、濃縮ゲルビーズ(26)、フィルター(24)および攪拌機(12)を備えている。上記攪拌機は、下方端部から外側に広がる攪拌刃(34)を備えている。上記攪拌機の端部は濃縮チャンバー(20)の内部に配置されており、回転運動するために、攪拌機の中心軸の周囲に支持されており、往復運動するために、攪拌機の中心軸に沿って支持されている。本方法は、血漿中のフィブリノゲンを有意に変性させることなく、水を除去することによって血漿を濃縮する。血漿は、脱水された多数の濃縮ゲルビーズ(26)および上記攪拌機(12)を備える上記濃縮チャンバー(20)中に誘導される。その後、水は、血漿の局在化を防ぐためにビーズを攪拌し、攪拌機の攪拌中に形成されるビーズの塊を破壊している間に、血漿から除去される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、組織の封止剤(sealant)および止血剤として用いることができる血漿濃縮物を調製する装置および方法に関する。血漿濃縮物は、細胞から遊離していることが好ましい。
【0002】
〔背景技術〕
血液は分画することができ、血液の異なるフラクションは、それぞれ異なる医学的用途に使用することができる。重力または遠心力の影響下においては、血液は自然に三層に分離する。平衡状態では、最上層の低密度層は、血漿と呼ばれる淡黄色の透明な液体である。血漿は、塩、代謝産物、ペプチド、および小さな蛋白質(インスリン)から非常に大きな蛋白質(補体成分)までの多くの蛋白質の水溶液である。
【0003】
最下層の高密度層は、酸素輸送を専門に担う無核の赤色血液細胞(赤血球)からなる、深赤色の粘性流体である。その赤色と赤血球の高比重は、高濃度のキレート化された鉄またはヘムによるものである。ヘマトクリットと呼ばれる血液中の赤血球容積比は約37%〜約52%である。
【0004】
中間層は最も小さい。中間層は、赤血球層の上部であって血漿層の下部に、薄く白いバンドとして現れ、軟層と呼ばれる。軟層は、有核の白血球と、無核の血小板という2つの主成分を有する。白血球は免疫に関与し、残屑の捕捉に寄与している。血小板は、血管中の裂傷を封止して止血し、傷害された部位に増殖因子と創傷治癒因子(growth and wound healing factors)を運搬する。低速での遠心分離または短時間の遠心分離を行うことにより、血漿から赤血球および白血球を分離することができるが、血小板は血漿中に浮遊状態で残存し、血小板リッチな血漿(PRP)として回収される。
【0005】
創傷治癒および組織封止に用いるために全血液から血漿濃縮物を調製する主な進歩が、米国特許5,585,007号に開示されている。当該特許の内容は、全文が参考として本明細書に援用される。この装置は、医学の研究室や外科臨床室への設置を目的として設計されており、組織封止剤を調製するために、使い捨てのカートリッジを用いる一体型の(integral)遠心分離機を備えている。上記装置は、特に、血液中に自然存在する(autologous)組織封止剤を速く調製するのに適していた。手術室で患者の血液50mlから封止剤5mlを15分以下で、わずか1つの簡単な操作ステップで調製できる。工程は手術室で行えるので、トラッキングエラーのリスクがなかった。添加する試薬は、抗凝固剤(例;クエン酸)および塩化カルシウムに限定することができた。調製された産物の接着力と張力は、沈降法で調製した、貯蔵血液のフィブリン封止剤に匹敵するか、それ以上であった。この装置で調製された組織封止剤は、患者の血液に由来する天然のフィブリン溶解阻害剤を高濃度で含むので、(例えばアプロチニンのような)抗フィブリン溶解試薬を用いる必要はなかった。この新規組織封止剤は、また、患者の血小板と、創傷治癒を促進するその他の因子、市販のフィブリン封止剤中に存在しない治癒因子を含んでいてもよかった。
【0006】
上記特許装置は、運転するごとに、分離チャンバーと共に、新規の滅菌された使い捨てカートリッジを用いた。上記装置は通常の医療の場面で大出力を使って用いられるように設計されているので、長期間使用可能な耐久性、安全性および信頼性を持つよう設計された通常の部材は比較的重く、一般的な遠心分離機用モーターおよび付属品を用いていた。
【0007】
この発明に係るPRP濃縮に適した使い捨ての血漿濃縮装置は、同一譲受人に譲渡され、2003年3月21日に出願された同時係属出願である、出願番号10/394,828に開示されており、全文が以下に参考として援用される。細胞フリーの血漿画分は除去され、廃棄される。
【0008】
〔発明の要約〕
本発明の使い捨て可能な装置は、細胞フリーの血漿画分から非常に貴重な天然の(autologous)血漿濃縮物を調製するのに適している。
【0009】
濃縮は、簡単な手動操作(ゲルビーズの凝集を解くために、攪拌機のシャフトを往復運動させながら回転させること)のみで行うことができる。次に、脱水されたビーズから血漿濃縮物を分離するために、一般的な遠心分離機を用いて上記装置を回転させ、血漿濃縮物を濃縮ゾーンから血漿濃縮物貯蔵部に移動させる。血漿濃縮物は、血漿濃縮物貯蔵部から一般的なアプリケーターシリンジによって除去することができる。
【0010】
本発明の上記血漿濃縮装置は、濃縮チャンバー、濃縮チャンバー内の多数の濃縮ゲルビーズ、フィルターおよび攪拌機を備える。上記攪拌機は、上方攪拌端部と下方攪拌端部と、上記下方攪拌端部から外側に広がる攪拌刃とを備える。上記下方攪拌端部は、上記濃縮チャンバー中に配置され、回転運動するために、攪拌機の中心軸の周囲に載置または支持されており、往復運動するために、攪拌機の中心軸に沿って載置または支持されている。上記濃縮装置は、上方開口部を備えた天井を有しており、上記攪拌機の軸(the actuator stem)の上記上方端部が上記開口部を通っている。そして、上記濃縮装置は、上記フィルターが配置される下部開口部を有している。上記濃縮チャンバーは、円筒状の内壁を有していてもよく、上記攪拌刃は、上記内壁に近接して外刃を有していてもよい。外刃と内壁との間の間隔は、ゲルビーズの直径以下の間隔であることが好ましい。
【0011】
上記濃縮装置の上記上方開口部は、上記濃縮装置の天井から上記濃縮チャンバー内に伸びるストップスリーブを備えていてもよい。上記ストップスリーブは、下方接合部表面を有している。上記攪拌軸は、上記ストップスリーブの直径よりも大きい径を持つ停止突出部を備えていてもよく、上記停止突出部の上方の表面には、上記ストップスリーブの下方接合部表面と接触したときに、上記攪拌機の軸上方への動きを止めるように接合部表面が配置されて構成されている。
【0012】
上記フィルターは、上方表面を有しており、上記攪拌刃は下方部を有していてもよい。上記下方部は、上記フィルターの上記上方表面と接触し、上記攪拌機が回転している間、上記上方表面を清掃し、上記攪拌機が上記攪拌機の中心軸に沿って下方へ動いている間、上記上方表面に押し付けられるように配置される。上記攪拌機が往復運動している間は、上記攪拌刃の下方への動きは、上記フィルターの上記上方表面が備える接合部によって抑制することができる。
【0013】
上記フィルターは、周囲の重力条件下において(under ambient gravity conditions)血漿の流れを効果的にブロックするように選択され、10g(10g´s)以上で、少なくとも分離重力(the separation gravity)と同じ遠心力の下で、血漿濃縮物を通すことができる。
【0014】
上記血漿濃縮装置は、血漿濃縮物の出口となる導水管と、上記フィルターとつながっている上方開口部を備え、上記フィルターを通過した血漿濃縮物を受けるように配置される血漿濃縮物貯蔵部とを併せ持っていてもよい。上記血漿濃縮装置は、傾斜した床を有していてもよく、上記床の最も低い端部に貯留槽を有していてもよく、血漿濃縮物の出口となる導水管の一端は上記貯留槽と連結していてもよい。
【0015】
本発明に係る方法は、血漿中のフィブリノゲンを有意に変性させることなく水を除去することによって血漿を濃縮する方法であり、血漿を多数の脱水濃縮ゲルビーズおよび攪拌機を備えた濃縮チャンバー内に導入するステップを含む。次に、水を、上記血漿の蛋白質濃度が未処理の血漿の蛋白質濃度の1.5倍以上になるまで、上記血漿から除去する。
【0016】
水が除去されている間、血漿の局在化を低減するために、上記攪拌機を回転させることにより、上記ビーズを攪拌してもよいし、上記攪拌中に形成されるビーズの凝集を解くために上記攪拌機を動かしてもよい。次に、上記ビーズから上記血漿濃縮物の本質的部分を分離するのに十分な遠心力を、濃縮された血漿にかけてもよい。
【0017】
上記濃縮チャンバーが、攪拌機の下方端部から外側に広がる攪拌刃を有する攪拌機を備えている場合、上記攪拌機は、上記攪拌機の中心軸の周囲を回転できるように支持されており、上記攪拌機の中心軸に沿って往復運動できるように支持されている。上記攪拌機は、血漿の局在化を低減するために、上記ビーズが水を吸収している間、上記ビーズを攪拌すべく回転してもよいし、上記攪拌機は、上記攪拌中に形成されるビーズの凝集物を破壊するために上記中心軸に沿って往復運動してもよい。
【0018】
上記攪拌刃がフィルターの上記上方表面上に位置するならば、上記攪拌刃は、回転中に上記フィルターの上記上方表面を清掃し、上記攪拌機がその中心軸に沿って往復運動している間、上記フィルターの上記上方表面を押し付ける下方部を備えていてもよい。次に、上記攪拌機は、上記フィルターの上記上方表面を清掃するために回転してもよく、血漿の局在化を低減するために、フィルターの上に位置するビーズを攪拌しながら回転してもよいし、上記攪拌機は、上記フィルターの上記上方表面、および、上記攪拌中に上記上方表面上に形成されるビーズの凝集物を押し付けるように往復運動してもよい。
【0019】
上記フィルターが、周囲の重力環境下において血漿の流れを効果的にブロックする孔を持つ場合、10g以上で、分離重力までの遠心力下で、血漿および血漿濃縮物を上記孔に通すことができる。上記血漿は、水を除去している間、上記フィルターによって上記ビーズと接触を維持していてもよく、血漿濃縮物は、上記フィルターの方向に分離重力と同程度の遠心力をかけた場合、上記フィルターを通過させることができる。
【0020】
〔発明の詳細な説明〕
用語「分離重力」は、上記濃縮ゲルビーズの表面から血漿濃縮物を分離し、分離された結晶濃縮物に上記フィルターを通過させるのに十分な遠心力をいう。
【0021】
上記装置は、米国特許5,585,007号に開示された血漿分離装置および血漿濃縮装置の複合装置を改良する一部材である。同一人に譲受され、2003年3月21日に出願された同時係属出願である、出願番号10/394,828号に開示されたシンプルで使い捨て可能な装置は、一般的な医学実験室用の遠心分離機を用いて血液から血漿を迅速に分離する。本発明に係る装置は、血漿を、組織封止剤および止血剤として非常に有用な、血液中に自然存在する濃縮物に変換する。
【0022】
図1は、本発明に係る血漿濃縮装置の正面図であり、図2は、図1に示す血漿濃縮装置の上面図である。この小型でコンパクトな装置は、50mlまでの血漿の加工に適している。濃縮装置2は、上方濃縮ハウジング4と、下方濃縮物貯蔵ハウジング6を備える。上記上方濃縮ハウジング4は、ゲルビーズ攪拌機12(図3−5を参照)の攪拌軸10が伸長し、通過する天井8を備える。上記天井8はまた、血漿インレットポート14をも備える。上記血漿インレットポート14は、天井8を通って伸長し、上方濃縮ハウジング4によって囲まれている濃縮チャンバー20とつながっている(図3を参照)。血漿濃縮物アウトレットポート16は、図3に非常に詳細に示す血漿濃縮物導水管18とつながっている。
【0023】
図3は、図2のライン3−3に沿って図1に示す血漿濃縮装置を切断した横断面図である。図3は、本発明に係る血漿濃縮装置の内部を詳細に示すものである。上方濃縮ハウジング4は濃縮チャンバー20を囲んでいる。濃縮チャンバー20の床はフィルター24であり、フィルター24の上方表面は、脱水された濃縮ゲルビーズ26を支持する。
【0024】
脱水された濃縮ゲルビーズ26は、十分な量の水を吸収し、血漿中に好ましくない汚染物を導かないような、不溶性のビーズまたはディスクであってもよい。ゲルビーズ26は、市販のデキストラノマー(デブリサン;ファルマシア製)またはアクリルアミドヒドロゲル(バイオゲルP(登録商標);バイオラッドラボラトリー製)であってもよい。代わりに、例えばセファデックス(登録商標)吸水剤(ファルマシアより入手可)、シリカゲル、ゼオライト、架橋性アガロース等の他の濃縮剤を、不溶性の不活性ビーズを形成するために用いることができる。上記ビーズは脱水状態で用いられる。
【0025】
ボトムエッジ28を備えるゲルビーズ攪拌機12は、フィルター基板24の上表面に位置する。攪拌軸10は、ハウジングの天井8にある円筒形のストップスリーブ30を通って上方へ伸長している。上記ストップスリーブ30は、濃縮チャンバー20の内部へ下方に向かって伸長しており、上記攪拌軸が鉛直方向に向くよう支持する。上記ストップスリーブ30のボトムエッジ表面31は、下方接合部の表面を構成する。一体的な(Integral)突出部32は、上記攪拌軸10から上記ストップスリーブ30の内径より大きい直径まで放射状に外側に広がっている。上記突出部32の上方表面33は、上方接合部の表面を構成する。以下により詳細に述べるように、上記ゲルビーズ攪拌機は、鉛直方向の軸の周囲を回転し、水分除去工程の間、ゲルビーズ26を攪拌するために上下に往復運動する。上記攪拌刃またはパドル34が、上記軸10の往復垂直運動中に上昇し、下方接合部のエッジ31が上方の接合部表面33と接触すると、上記攪拌刃またはパドル34の上方への動きが制限される。
【0026】
図3−5に示すように、上記攪拌機は、中心チャンバー軸41から外側に放射状に広がる複数のパドル刃34を備える。上記攪拌刃の外側の垂直なエッジは、チャンバーハウジング4の内表面38をスライド可能なサイズに調整される(図3を参照)。攪拌機と攪拌機の壁表面との間に個々のゲルビーズが入り込まないようにするために、上記パドル34の外側のエッジと上記チャンバーハウジングの内表面38との間の距離は、個々のゲルビーズの直径よりも小さくあるべきである。中心軸の周囲を軸10が回転することにより、パドル34が回転し、ビーズ26が攪拌される。
【0027】
図4は、本発明に係る血漿濃縮装置の攪拌機の正面図であり、図5は、図4に示す攪拌機をライン5−5に沿って切断した横断面図である。
【0028】
軸10の上方端部は、任意の攪拌ハンドル(図示しない)と結合可能な複数の溝39、または、上記軸の手動回転を容易にする摩擦表面として機能しうる複数の溝39を備えていてもよい。
【0029】
図3に示すように、下方濃縮チャンバーハウジング6は、傾斜した底部41を備えた濃縮チャンバー40を囲んでいる。上記傾斜した底部41は、貯留槽または陥凹部42に導かれる。濃縮物導水管18は導水管端部44を備えている。上記導水管端部44は、上記
導水管18が減圧されたときに、濃縮物出口16まで液体濃縮物(図示せず)の大部分を引き込むために、陥凹部42の中に伸長している。
【0030】
フィルター24の構造と機能は図6に非常に詳細に開示されている。図6は、図3に示す血漿濃縮装置をライン6−6に沿って切断した横断面図である。
【0031】
フィルター24は、平坦な円形リング46と、平坦な放射状のスポーク48とによって支持されている。上記支持体の開口部は、遠心力の圧力下で液体が上記フィルターを通過するように設計されている。上記フィルターは、水分除去中、周囲の重力下においても、当該フィルター上に血漿を保持するものでなければならず、分離に用いられる遠心力の圧力下で、血漿濃縮物が当該フィルターを通過するようなものでなければならない。それゆえ、上記フィルターは、少なくとも圧力10gまで液体を保持し、分離重力で液体を通すことができるものであるべきである。上記分離重力は、本システムが遠心分離機内で攪拌され、遠心力が上記フィルターを通って軸方向に向けられたときに生み出される。血漿濃縮物の分離中に加わる遠心力が大きいほど、血漿濃縮物をより効果的に回収できる。
【0032】
濃縮工程は、血漿のフィブリノゲン成分を有意に変性させることなく、血漿から水分を分離することを重要な目的としている。フィブリノゲン成分は、血液を効果的に凝固させ、血漿濃縮物に封止効果、接着効果および止血効果を与える。
【0033】
上記工程は図7−9に説明されている。図7は、血漿が導入された後の、図3に示す血漿濃縮装置の横断面図である。図8は、ゲルビーズが血漿から水を除去して膨潤した後の、図7に示す血漿濃縮装置の横断面図である。図9は、図8に示す血漿濃縮装置の横断面図であって、遠心分離後に血漿濃縮物を血漿濃縮物貯蔵部の中に流した状態を示す図である。
【0034】
上記工程の第一のステップでは、血漿52(好ましくは細胞フリー)が血漿インレットポート14を介して濃縮チャンバー20の内部に導入される。チャンバー20に入った血漿52は、図7に示すように、血漿52がゲルビーズ26に接触する場所である、上記チャンバーの底部に流れる。
【0035】
ゲルビーズ26は血漿から水を除去するので、各ビーズの表面に接触している血漿が厚くなり、ゲルの局在化が発生して、ビーズによる水の吸収を妨げる。さらに、上記厚みのある血漿層は、より粘稠となるので、ビーズは凝固するようになる。各ビーズ上に形成される厚みのある血漿層を破壊するため、攪拌軸10は、攪拌軸10の中心軸の周囲を回転し、攪拌刃34をビーズの中で動かして、ビーズを攪拌する。ビーズの凝固物を破壊するために、攪拌刃34は、攪拌軸10の中心軸に沿った攪拌軸10の往復運動によって、上昇および下降させることが可能とされており、上記攪拌刃のボトムエッジ28(図3を参照)は、ビーズの凝固を解きながら、上記フィルターの表面にビーズの凝固物を強く押し付ける。上記攪拌刃の垂直方向への動きは、上記フィルター24の上方表面によって規定された範囲に制限され、上記垂直方向への動きは、チャンバーの床4、および、接合部31と接合部33との間の接触によって決定される。水で膨潤したビーズ53、および、濃縮された血漿54を図8に示す。この濃縮工程を通じて、上記血漿と上記血漿の成分を、元の濃度の1.5−3倍の濃度に濃縮することができる。
【0036】
次に、本発明に係る装置を、一般的な実験室用遠心分離機(図示しない)のカップレセプターに載置し、分離重力を発生する速度で回転した。すなわち、上記ゲルビーズの表面から血漿濃縮物を除去し、当該血漿濃縮物に上記フィルターを通過させる遠心力を発生する速度で回転した。上記フィルターは、10g以上の圧力をかけて液体を流すことができる構造であってもよい。上記遠心分離圧力によって、血漿濃縮物は、ビーズ表面からフィルター24を通過して、血漿濃縮物貯蔵部40へと流れる。かける遠心力を高くすればするほど、ゲルビーズ表面からの血漿濃縮物の剥離はより効果的に行われる。遠心分離完了後、上記装置を遠心分離機から取り出す。
【0037】
図9は、上記血漿濃縮物貯蔵部の中に血漿濃縮物を貯めた上記装置を示している。次に、上記血漿濃縮物は、血漿濃縮物貯蔵部から血漿濃縮物出口へ、導水管を介して運ばれる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に係る血漿濃縮装置の正面図である。
【図2】図1に示す血漿濃縮装置の上面図である。
【図3】図2のライン3−3に沿って図1に示す血漿濃縮装置を切断した横断面図である。
【図4】本発明に係る血漿濃縮装置の攪拌機の正面図である。
【図5】図4に示す攪拌機をライン5−5に沿って切断した横断面図である。
【図6】図3に示す血漿濃縮装置をライン6−6に沿って切断した横断面図である。
【図7】血漿が導入された後の、図3に示す血漿濃縮装置の横断面図である。
【図8】ゲルビーズが血漿から水を除去して膨潤した後の、図7に示す血漿濃縮装置の横断面図である。
【図9】図8に示す血漿濃縮装置の横断面図であって、遠心分離後に血漿濃縮物を血漿濃縮物貯蔵部の中に流した状態を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
濃縮チャンバーと、上記濃縮チャンバー内の多数の濃縮ゲルビーズと、フィルターと、攪拌機とを備える血漿濃縮装置であって、
上記攪拌機は、上方攪拌端部および下方攪拌端部を備える攪拌軸と、上記下方攪拌端部から外側に広がる攪拌刃と、上記濃縮チャンバー内に配置され、上記攪拌機の中心軸の周りの回転運動と、上記中心軸に沿った往復運動とが可能なように支持された上記下方攪拌端部と、を備え、
上記濃縮装置は、上記攪拌軸の上端が通過する上方開口部を持つ天井と、上記フィルターが配置される下方開口部とを備えることを特徴とする血漿濃縮装置。
【請求項2】
上記濃縮チャンバーは、円筒形の内壁と、攪拌刃とを有しており、当該攪拌刃は、上記内壁に近接する外刃とを有しており、当該外刃と上記内壁との間の間隔は、上記ゲルビーズの直径以下の間隔であることを特徴とする請求項1に記載の血漿濃縮装置。
【請求項3】
上記濃縮装置の上記上方開口部が、上記濃縮装置の天井から上記濃縮チャンバー内に伸びるストップスリーブを備えており、上記ストップスリーブは、下方接合部表面を有し、上記攪拌軸は、上記ストップスリーブの直径よりも大きい径を持つ停止突出部を有し、上記停止突出部の上方の表面には、上記ストップスリーブの上記下方接合部表面と接触したときに、上記攪拌機の軸上方への動きを止めるように接合部表面が配置されて構成されていることを特徴とする請求項1に記載の血漿濃縮装置。
【請求項4】
上記フィルターが、上方表面を有し、上記攪拌刃が、下方部を有している血漿濃縮装置であって、
上記下方部は、上記フィルターの上記上方表面と接触し、上記攪拌機が回転している間は、上記上方表面を清掃し、上記攪拌機が上記攪拌機の中心軸に沿って下方へ動いている間は、上記上方表面に押し付けられるように配置され、上記攪拌機が往復運動している間は、上記攪拌刃の下方への動きが、上記フィルターの上記上方表面が備える接合部によって抑制されることを特徴とする請求項3に記載の血漿濃縮装置。
【請求項5】
上記フィルターが、周囲の重力条件下において血漿の流れを効果的にブロックし、遠心力として分離重力をかけた場合に、自由に血漿濃縮物を通すことができることを特徴とする、請求項1に記載の血漿濃縮装置。
【請求項6】
上記分離重力が10g以上であることを特徴とする請求項5に記載の血漿濃縮装置。
【請求項7】
血漿濃縮物の出口となる導水管と、上記フィルターとつながっている上方開口部を備え、上記フィルターを通過した血漿濃縮物を受けるように配置される血漿濃縮物貯蔵部とを持つ血漿濃縮装置であって、傾斜した床を有し、当該床の最も低い端部に貯留槽を有し、上記導水管の一端が上記貯留槽と連結されていることを特徴とする請求項1に記載の血漿濃縮装置。
【請求項8】
血漿中のフィブリノゲンを有意に変性させることなく水を除去することによって血漿を濃縮する方法であって、以下のステップを含むことを特徴とする方法。
a)上記血漿を多数の脱水濃縮ゲルビーズおよび攪拌機を備えた濃縮チャンバー内に導入するステップ。
b)下記のi)およびii)を行う間に、水を、上記血漿の蛋白質濃度が未処理の血漿の蛋白質濃度の1.5倍以上になるまで、上記血漿から除去するステップ。
i)上記ビーズが上記血漿から水を吸収している間、血漿の局在化を低減するために、上記ビーズを攪拌するように上記攪拌機を動かすこと。
ii)上記攪拌中に形成されるビーズの凝集を解くために上記攪拌機を動かすこと。
d)上記ビーズから上記血漿濃縮物の本質的部分を分離するのに十分な遠心力を、濃縮された血漿にかけるステップ。
【請求項9】
上記濃縮チャンバーが、攪拌機の下方端部から外側に広がる攪拌刃を有する攪拌機を備えており、上記攪拌機は、上記攪拌機の中心軸の周囲を回転でき、上記攪拌機の中心軸に沿って往復運動できるように支持されており、
上記攪拌機は、血漿の局在化を低減するために、上記ビーズが上記血漿から水を吸収している間、上記ビーズを攪拌すべく回転し、上記攪拌機は、上記攪拌中に形成されるビーズの凝集物を破壊するために、上記中心軸に沿って往復運動することを特徴とする請求項8に記載の血漿を濃縮する方法。
【請求項10】
上記攪拌刃がフィルターの上記上方表面上に位置し、上記攪拌刃は、上記攪拌機が回転中に上記フィルターの上記上方表面を清掃し、上記攪拌機がその中心軸に沿って往復運動している間、上記フィルターの上記上方表面を押し付ける下方部を有し、
上記攪拌機は、上記フィルターの上記上方表面を清掃するために回転し、血漿の局在化を低減するために、上記フィルターの上に位置するビーズを攪拌し、上記攪拌機は、上記フィルターの上記上方表面、および、上記攪拌中に上記上方表面上に形成されるビーズの凝集物を押し付けるように往復運動することを特徴とする、請求項9に記載の血漿を濃縮する方法。
【請求項11】
上記フィルターが、周囲の重力条件下において血漿の流れを効果的にブロックする孔を持ち、分離重力下で、血漿および血漿濃縮物に上記孔を通過させることを特徴とする請求項10に記載の血漿を濃縮する方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−538082(P2008−538082A)
【公表日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−554192(P2007−554192)
【出願日】平成18年1月30日(2006.1.30)
【国際出願番号】PCT/US2006/003598
【国際公開番号】WO2006/086200
【国際公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【出願人】(507266369)ハヌマン リミテッド ライアビリティ カンパニー (7)
【出願人】(507266370)バイオメット バイオロジックス,インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】