説明

血管内皮増殖因子の可溶性インヒビターおよびその使用

【課題】本発明は、ニューロピリン(NP)を産生する細胞から単離されるか、またはNPをコードするDNAから組換え操作された可溶性ニューロピリンタンパク質(sNP)をコードするcDNAに関する。
【解決手段】NP−1およびNP−2は好ましいNPであるが、構成要素が、上記のVEGF165R/NP−1およびVEGF165R/NP−2のいずれかと、少なくとも約85%の相同性を共有する場合、任意のニューロピリンまたはVEGFレセプター(VEGFR)である。より好ましくは、そのような構成要素は少なくとも90%の相同性を共有する。さらにより好ましくは、各構成要素は少なくとも95%の相同性を共有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(連邦政府委託研究に関する陳述)
本明細書に記載される研究は、一部、国立衛生研究所助成金CA37392お
よびCA45548により支援された。米国政府は、本発明に対して特定の権利
を有する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、血管内皮増殖因子(VEGF)に関する。より詳細には、本発明は
、VEGFの可溶性インヒビターおよびVEGFに関連する障害の処置における
それらインヒビターの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
血管は、酸素および栄養分が生組織に供給され、そして老廃物が生組織から除
去される手段である。新脈管形成とは、新たな血管を形成するプロセスをいう。
例えば、FolkmanおよびShing、J.Biol.Chem.267,
10931−10934(1992)、Dvorakら、J.Exp.Med.
、174、1275−1278(1991)による総説を参照のこと。従って、
適切な場合には、新脈管形成は重要な生物学的プロセスである。それは、生殖、
発生、および創傷修復に必須である。しかし、不適切な新脈管形成は、重篤なネ
ガティブな結果を有し得る。例えば、多くの固形腫瘍は新脈管形成の結果として
血管化されて初めて、それらの腫瘍は、十分な酸素および栄養分の供給を有し、
そのことによって腫瘍が急速に増殖しそして転移し得る。新脈管形成の速度の適
切な平衡状態での維持は、機能の範囲に対して重要であるから、それは、健康を
維持するために慎重に調節されなければならない。新脈管形成プロセスは、血管
内皮増殖因子(VEGF)および塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)のよう
な、マイトジェンにより活性化される内皮細胞(EC)から分泌されるプロテア
ーゼによる、基底膜の分解から始まると考えられる。その細胞は、移動しそして
増殖し、固形内皮細胞の出芽の形成を支質の空間内へもたらし、次いで血管ルー
プが形成され、そして毛細管が接着結合の形成および新たな基底膜の沈着を伴い
発生する。
【0004】
成体において、内皮細胞の増殖速度は、代表的に、身体の他の細胞型と比べて
低い。これらの細胞の代謝回転時間は、1000日を超え得る。新脈管形成が急
速な増殖を生じる生理学的例外は、代表的には、女性の生殖系および創傷治癒の
間に見出されるように、緊密な調節下で起こる。
【0005】
新脈管形成の速度は、微小血管増殖のポジティブレギュレーターとネガティブ
レギュレーターとの間の局所的な平衡状態での変化を含む。血管新生増殖因子の
治療的意味は、20年以上前に、Folkmanおよび共同研究者により最初に
記載された(Folkman,N.Engl.J.Med.、285:1182
−1186(1971))。体が新脈管形成の少なくともいくつかの制御を失う
場合、異常な新脈管形成が起こり、過度または不十分な血管増殖のいずれかを生
じる。例えば、潰瘍、発作、および心臓発作のような状態は、自然治癒に正常に
必要とされる新脈管形成の欠如から生じ得る。対照的に、過度の血管増殖は、腫
瘍増殖、腫瘍拡散、失明、乾癬、および慢性関節リウマチを生じ得る。
【0006】
従って、より高程度の新脈管形成が望ましい場合の例(血液循環の増加、創傷
治癒、および潰瘍治癒)が存在する。例えば、最近の研究では、線維芽細胞増殖
因子(FGF)ファミリー(Yanagisawa−Miwaら、Scienc
e、257:1401−1403(1992)およびBaffourら、J V
asc Surg、16:181−91(1992))、内皮細胞増殖因子(E
CGF)(Puら、J Surg Res、54:575−83(1993))
ならびに、より最近では、血管内皮増殖因子(VEGF)のような、心筋虚血お
よび後肢虚血の動物モデルにおける側副動脈の発生を促進および/または増強さ
せるための組換え血管新生増殖因子の使用の可能性が確証された(Takesh
itaら、Circulation、90:228−234(1994)および
Takeshitaら、J Clin Invest、93:662−70(1
994))。
【0007】
逆に、新脈管形成の阻害が望ましい場合の例も存在する。例えば、多くの疾患
は、制御されない持続的な新脈管形成によりもたらされ、また、それらは時々、
「新生血管形成」といわれる。関節炎において、新たな毛細血管は関節に侵入し
、そして軟骨を破壊する。糖尿病において、新たな毛細血管は硝子体に侵入し、
出血し、失明を引き起こす。眼球の新生血管形成は、失明の最も通常の原因であ
る。腫瘍の増殖および転移は、新脈管形成依存性である。腫瘍は、腫瘍自身が増
殖するために、新たな毛細血管の増殖を継続的に刺激しなければならない。
【0008】
VEGFが、新脈管形成の主要なレギュレーターであり得るという、増大する
証拠が存在する(Ferraraら、Endocr.Rev.、13、18−3
2(1992);Klagsbrunら、Curr.Biol.、3、699−
702(1993);Ferraraら、Biochem.Biophjs.R
es.Commun.、161、851−858(1989)に総説される)。
VEGFは、初めに、濾胞星状(folliculostellate)細胞の
馴化培地から(Ferraraら、Biochem.Biophjs.Res.
Commun.、161、851−858(1989)、そして種々の腫瘍細胞
株から(Myokenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、8
8:5819−5823(1991);Plouetら、EMBO.J.、8:
3801−3806(1991))精製された。VEGFは、同時にU937細
胞の馴化培地から精製された血管浸透性のレギュレーターである、血管浸透因子
と同一であることが見出された(Keckら、Science、246:130
9−1312(1989))。VEGFは、インビトロでは内皮細胞(EC)に
対する特異的マイトジェンであり、インビボでは強力な血管新生因子である。V
EGFの発現は、胚形成および女性の生殖周期の間に血管新生を受ける組織にお
いて、上方調節される(Brierら、Development、114:52
1−532(1992);Shweikiら、J.Clin.Invest.、
91:2235−2243(1993))。高レベルのVEGFは、正常組織で
は発現されないが、腫瘍誘導性低酸素に応答して、種々の型の腫瘍で発現される
(Shweikiら、Nature 359:843−846(1992);D
vorakら、J.Exp.Med.、174:1275−1278(1991
);Plateら、Cancer Res.、53:5822−5827;Ik
eaら、J.Biol.Chem.、270:19761−19766(198
6))。VEGFに対して指向されるモノクローナル抗体を用いる腫瘍の処置は
、腫瘍の新脈管形成の抑制に起因して、腫瘍質量の劇的な減少を生じた(Kim
ら、Nature、382:841−844(1993))。VEGFは、新生
血管形成に関与する多くの病理学的状態およびプロセスにおいて原則的な役割を
果すようである。従って、罹患した組織におけるVEGF発現の調節は、VEG
F誘導性の新生血管形成/新脈管形成の処置または予防において、鍵であり得る

【0009】
VEGFは、8つのエキソンを含む単一の遺伝子から選択的スプライシングに
より産生される多くの異なるアイソフォームで存在している(Ferraraら
、Endocr.Rev.、13:18−32(1992);Tischerら
、J.Biol.Chem.、806:11947−11954(1991);
Ferraraら、Trends Cardio Med.、3:244−25
0(1993);Polterakら、J.Biol.Chem.、272:7
151−7158(1997))。ヒトVEGFアイソフォームは、各々が活性
型ホモダイマーを作製し得る、121、145、165、189、および206
アミノ酸のモノマーからなる(Polterakら、J.Biol.Chem、
272:7151−7158(1997);Houckら、Mol.Endoc
rinol.、8:1806−1814(1991))。VEGF121およびV
EGF165アイソフォームが、最も豊富である。VEGF121は、ヘパリンに結合
せず、そして培養培地に完全に分泌される唯一のVEGFアイソフォームである
。VEGF165は、それがヘパリンおよび細胞表面ヘパリン硫酸プロテオグリカ
ン(HSPG)に結合し、そして部分的に培養培地に放出されるのみであるとい
う点で、VEGF121と機能的に異なる(Houckら、J.Biol.Che
m.、247:28031−28037(1992);Parkら、Mol.B
iol.Chem.、4:1317−1326(1993))。残りのアイソフ
ォームは、細胞表面および細胞外マトリックス質HSPGに全体的に関与する(
Houckら、J.Biol.Chem.、247:28031−28037(
1992);Parkら、Mol.Biol.Chem.、4:1317−13
26(1993))。
【0010】
VEGFレセプターチロシンキナーゼ、KDR/Flk−1および/またはF
lt−1は、ほとんどECにより発現される(Termanら、Biochem
.Biophys.Res.Commun.、187:1579−1586(1
992);Shibuyaら、Oncogene、5:519−524(199
0);De Vriesら、Science、265:989−991(199
2);Gitay−Goranら、J.Biol.Chem.、287:600
3−6096(1992);Jakemanら、J.Clin.Invest.
、89:244−253(1992))。分裂促進性、走化性および形態学的変
化の誘導のような、VEGF活性は、Flt−1ではなくKDR/Flk−1に
より媒介されるようである(たとえ、両方のレセプターが、VEGFの結合の際
にリン酸化を受けるとしても)(Millauerら、Cell、72:835
−846(1993);Waltenbergerら、J.Biol.Chem
.、269:26988−26995(1994);Seetharamら、O
ncogene、10:135−147(1995);Yoshidaら、Gr
owth Factors、7:131−138(1996))。最近、Sok
erらは、ECおよび乳癌由来のMDA−MB−231(231)細胞のような
種々の腫瘍由来の細胞株で発現される、新規なVEGFレセプターを同定した(
Sokerら、J.Biol.Chem.、271:5761−5767(19
96))。このレセプターは、VEGFアイソフォームがエキソン7にコードさ
れる部分を含むことを必要とする。例えば、VEGF121およびVEGF165の両
方は、KDR/Flk−1およびFlt−1に結合するが、VEGF165のみが
、その新規なレセプターに結合する。従って、これは、アイソフォーム特異的レ
セプターであり、VEGF165レセプター(VEGF165R)と名付けられた。そ
れはまた、189および206アイソフォームに結合する。VEGF165Rは、
約130kDaの分子量を有し、そしてそれは、約2×10-10MのKdで、V
EGF165に結合する(対してKDR/Flk−1に対しては、約5×10-12
で結合する)。構造機能解析において、VEGF165は、VEGF121に存在しな
いエキソン7にコードされるドメインを介してVEGF165Rに結合することが
直接示された(Sokerら、J.Biol.Chem.、271:5761−
5767(1996))。しかし、そのレセプターの機能は不明であった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
新脈管形成疾患の現在の処置は、不適切である。連続性の新脈管形成を防止す
る薬剤(例えば、薬物(TNP−470))、モノクローナル抗体、アンチセン
ス核酸およびタンパク質(アンギオスタチン(angiostatin)および
エンドスタチン(endostatin))が、現在試験されている。Batt
egay、J.Mol.Med.、73、333−346(1995);Han
ahanら、Cell、86、353−364(1996);Folkman、
N.Engl.J.Med.、333,1757−1763(1995)を参照
のこと。抗新脈管形成タンパク質を用いた予備的な結果は有望だが、新規な抗新
脈管形成治療の開発のために、新脈管形成に関与するリガンドおよびレセプター
をコードする遺伝子を、同定する必要が依然存在する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の要旨)
本発明者らは、VEGF165R遺伝子(配列番号1)をコードするcDNAを
単離し、そしてそのレセプターのアミノ酸配列(配列番号2)を推定した。本発
明者らは、この新規なVEGFレセプターが、Flt−1またはKDR/Flk
−1に構造的に関係なく、そして内皮細胞だけでなく、非内皮細胞(驚くことに
腫瘍細胞を含む)によっても、発現されるということを発見した。したがって、本発明は以下を提供する。
(1) VEGF165に特異的に結合し、そしてVEGF165媒介HU
VEC増殖を減少させる、単離された可溶性ニューロピリン。
(2) 前記ニューロピリンが、ニューロピリン−1またはニューロ
ピリン−2である、項目1に記載の可溶性ニューロピリン。
(3) 前記ニューロピリンが、ニューロピリン−1であり、そして
配列番号2のアミノ酸配列か、またはVEGF165媒介HUVEC増殖を減少さ
せるそのフラグメントを包含する、項目2に記載の可溶性ニューロピリン。
(4) 前記ニューロピリンが、ニューロピリン−2であり、そして
配列番号4のアミノ酸配列か、またはVEGF165媒介HUVEC増殖を減少さ
せるそのフラグメントを包含する、項目2に記載の可溶性ニューロピリン。
(5) 前記ニューロピリンが、ニューロピリン−1であり、そして
配列番号6のアミノ酸配列を包含する、項目2に記載の可溶性ニューロピリン

(6) 前記ニューロピリンが、ニューロピリン−2であり、そして
配列番号8のアミノ酸配列を包含する、項目2に記載の可溶性ニューロピリン

(7) 配列番号2のアミノ酸227〜587か、あるいはVEGF
165媒介HUVEC増殖を減少させるそのフラグメントまたは相同体を包含する
、単離された可溶性ニューロピリン−1。
(8) 配列番号4のアミノ酸277〜594か、あるいはVEGF
165媒介HUVEC増殖を減少させるそのフラグメントまたは相同体を包含する
、単離された可溶性ニューロピリン−2。
(9) 項目1〜8に記載の可溶性ニューロピリンおよび薬学的に
受容可能なキャリアを含有する、薬学的組成物。
(10) VEGF165に特異的に結合し、そしてVEGF媒介HU
VEC増殖を減少させる、可溶性ニューロピリンをコードする単離されたポリヌ
クレオチド。
(11) 前記ニューロピリンが、ニューロピリン−1またはニュー
ロピリン−2である、項目10に記載の単離されたポリヌクレオチド。
(12) 前記ニューロピリンが、配列番号2のアミノ酸配列227
〜587か、あるいはVEGF165媒介HUVEC増殖を減少させるそのフラグ
メントまたは相同体を包含する、項目11に記載の単離されたポリヌクレオチ
ド。
(13) 前記ニューロピリンが、配列番号4のアミノ酸配列277
〜594か、あるいはVEGF165媒介HUVEC増殖を減少させるそのフラグ
メントまたは相同体を包含する、項目12に記載の単離されたポリヌクレオチ
ド。
(14) 前記ニューロピリンが、ニューロピリン−1であり、そし
て配列番号6のアミノ酸配列を包含する、項目11に記載の単離されたポリヌ
クレオチド。
(15) 前記ニューロピリンが、ニューロピリン−2であり、そし
て配列番号8のアミノ酸配列を包含する、項目11に記載の単離されたポリヌ
クレオチド。
(16) 配列番号5または配列番号7のヌクレオチド配列を有する
、項目10に記載の単離されたポリヌクレオチド。
(17) 項目10〜16に記載のポリヌクレオチドを含有する、
ベクター。
(18) 項目17に記載のベクターを含有する、宿主細胞。
(19) 前記キャリアが、皮膚への局所的な適用に対して受容可能
である、項目9に記載の薬学的組成物。
(20) 前記キャリアが、眼への適用に対して受容可能である、請
求項9に記載の薬学的組成物。
(21) 前記組成物が、VEGFに関連する疾患または障害を有す
る被験体を処置する方法に使用するものである、項目9に記載の薬学的組成物

(22) 前記VEGFに関連する疾患または障害が、転移、不適切
な新脈管形成、慢性炎症、糖尿病性網膜症、および関節炎からなる群より選択さ
れる、項目21に記載の薬学的組成物。
(23) 前記疾患または障害が、固形腫瘍である、項目21に記
載の薬学的組成物。
(24) 前記組成物が、ニューロピリンを発現する腫瘍を処置する
方法において使用するためのものである、項目9に記載の薬学的組成物。
(25) VEGFに関連する疾患または障害を処置するための医薬
の調製における、項目10に記載の単離されたポリヌクレオチドの使用。
(26) VEGFに関連する疾患または障害を処置するための医薬
の調製における、項目1〜8に記載の単離された可溶性ニューロピリンの使用

【0013】
VEGF165Rの機能の確認において、本発明者らはさらに、このレセプター
が、ニューロン細胞誘導の細胞表面媒介物として同定されたことを発見し、そし
てニューロピリン−1(neuropilin−1)と呼んだ(Kolodki
nら、Cell 90:753−762(1997))。本発明者らは、このレ
セプターをVEGF165R/NP−1またはNP−1という。
【0014】
VEGF165R/NP−1 cDNAの発現クローニングに加え、本発明者ら
は、その推定アミノ酸配列が、VEGF165R/NP−1のアミノ酸配列と47
%の相同性であり、そして最近クローン化されたラットニューロピリン−2(N
P−2)(Kolodkinら、Cell 90、753−762(1997)
)と90%を超えて相同である、別のヒトcDNAクローンを単離した。
【0015】
本発明者らの結果は、これらのニューロピリンが内皮細胞および腫瘍細胞(乳
房、前立腺、および黒色腫を含む)の両方により発現されることを示す(図18
)。本発明者らは、KDRおよびVEGF165R/NP−1の両方を発現する内
皮細胞が、KDRのみを発現する内皮細胞と比べた場合、VEGF121でなく、
VEGF165に対して増大された走化性で反応することを示した。理論に縛られ
ることを望まないが、本発明者らは、VEGF165R/NP−1は、内皮細胞に
おいて、KDRに対するコレセプター(co−receptor)として細胞の
運動性を媒介するために機能すると考えている。
【0016】
本発明者らはまた、Boydenチャンバー運動性アッセイにおいて、VEG
165が、用量応答様式で、231乳癌細胞の運動性を刺激することを示した(
図15A)。VEGF121は、これらの細胞の運動性に対する効果を有さなかっ
た(図15B)。231細胞のような腫瘍細胞は、VEGFレセプター、KDR
またはFlt−1を発現しないため、理論に縛られることを望まないが、本発明
者らは、腫瘍細胞が、VEGF165R/NP−1を介してVEGF165に対して直
接的に応答性であると考えている。
【0017】
本発明者らはまた、Dunningラット前立腺癌細胞の2つの改変体、AT
2.1細胞(低運動性および低転移能のものである)、およびAT3.1細胞(
高運動性および高転移性である)を解析した。架橋およびノーザンブロット解析
により、AT3.1細胞が、VEGF165に結合可能な、大量のVEGF165R/
NP−1を発現し、対して、AT2.1細胞が、VEGF165R/NP−1を発
現しないことを示す(図18)。腫瘍切片の免疫染色により、AT3.1におけ
るVEGF165R/NP−1の発現は確認されたが、AT2.1腫瘍においては
確認されなかった。さらに、免疫染色により、皮下AT3.1およびPC3腫瘍
において、VEGF165R/NP−1を発現する腫瘍細胞が、腫瘍/真皮の境界
の侵襲前部で優先的に見出されることが示された。さらに、VEGF165R/N
P−1を過剰発現するAT2.1細胞の安定なクローンは、Boydenチャン
バーアッセイにおいて運動性を増強した。これらの結果は、ニューロピリンの発
現が、新脈管形成および運動性転移性癌細胞に関連し、したがって、抗新脈管形
成および抗癌治療に対する重要な標的であることを示す。
【0018】
本発明者らは、現在、C末端領域で切断されて可溶性ニューロピリン(sNP
)外部ドメインを産生する、いくつかのニューロピリンのアイソフォームを同定
し、そしてクローン化した(図19)。ノーザンブロット解析により、いくつか
の細胞株および組織が、選択的スプライシングにより明らかに生成された7kb
のニューロピリン−1(NP−1)および7kbのニューロピリン−2(NP−
2)に加えて、類似の転写物を発現することが明らかにされた後に、これらのア
イソフォームはクローン化された。インタクトなニューロピリンは、補体成分に
相同なaドメイン、凝固因子に相同なbドメイン、MAMに相同なcドメイン、
膜貫通ドメイン、および短い40アミノ酸の細胞質ドメインを有する(Kawa
kami Aら、(1995)J.Neurobiol.29:1−17)(図
19)。ニューロピリン−1のアイソフォームがクローン化され、それは、bド
メインのすぐ後でC末端が切断されていた。転写の間に、5’スプライス供与体
部位の読み過ごしが存在し、そのため、終結に続いてイントロン部分が発現され
、その結果、cドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインは、bドメイン
に続く、イントロンの3アミノ酸で置換された。さらに、ニューロピリン−2の
アイソフォームがクローン化され、その中では、C末端部分のbドメイン、cド
メイン、膜貫通ドメイン、および細胞質ドメインが、そのイントロンの8アミノ
酸で置換されていた。切断されたニューロピリン−1のcDNAは、COS細胞
内で発現され、そして馴化培地中のタンパク質を特異的な抗ニューロピリン−1
抗体を使用したウエスタンブロットにより解析した(図20)。切断されたニュ
ーロピリン−1cDNAのトランスフェクトにより産生された(ベクターコント
ロールのトランスフェクトでは産生されない)90kDaのタンパク質は、馴化
培地中に見出されたが、溶解産物中では見出されなかった。従って、ニューロピ
リン−1アイソフォームは、ニューロピリン−1の可溶性形態(sNP1)であ
る。
【0019】
本発明者らはまた、膜近傍ドメインのある部位での切断により、a、b、およ
びcドメインを含む、操作し切断した可溶化ニューロピリン−1外部ドメインレ
セプター(sNP1abcと名付けた)を発現させた。
【0020】
sNPは、VEGF165またはエキソン7(配列番号)を含むVEGFの任意
の形態に結合し得、従って、ニューロピリンとだけでなく、同様にKDR/Fl
k−1およびFlk−1とのVEGFの相互作用を阻害するために有用である。
さらに、sNPはまた、インタクトなニューロピリンレセプターとの二量体化に
より細胞内で発現される場合、ドミナントネガティブレセプターとして作用し得
る。本発明者らの結果は、sNP1タンパク質調製物が、PAE/NP1に対合
する125I−VEGF165結合の、およびVEGF媒介性HUVEC増殖の優れた
インヒビターであることを示した(図21)。
【0021】
従って、sNPまたはsNPをコードする核酸(例えば、DNAまたはRNA
)は、VEGFおよびNPの機能のインヒビターとして有用であり、VEGFに
関連する疾患,障害、または状態の処置に使用され得る。sNPはまた、単独で
使用され得るか、または例えば、VEGFを直接的に拮抗するもの(例えば、抗
VEGF抗体、可溶性VEGFレセプター細胞外ドメイン)またはVEGFレセ
プターに拮抗するもの(例えば、抗KDR抗体、KDRキナーゼインヒビター、
ドミナントネガティブなVEGFレセプター)を含む他の抗VEGF戦略との組
合せで使用され得る(Presta LGら、Cancer Res.57:4
593−4599(1997)、Kendall RLら、(1996)Bio
chem.Biophys.Res.Commun.226:324−328、
Goldman CKら、(1998)Proc.Natl.Acad.Sci
.USA 95:8795−8800、Strawn LMら、(1996)C
ancer Res.56:3540−3545、Zhu Zら、(1998)
Cancer Res.58:3209−3214、Witte Lら、(19
98)Cancer Metastasis Rev.17:155−161)

【0022】
VEGFに関連する疾患、障害、または状態としては、網膜新生血管形成、血
管腫、固形腫瘍増殖、白血病、転移、乾癬、血管新生緑内障、糖尿病性網膜症、
慢性関節リウマチ、変形性関節症、子宮内膜病、黄斑変性(mucular d
egeneration)および未熟児網膜症(ROP)が挙げられるが、これ
らに限定されない。
【0023】
さらに、本発明は、選択された組織中の天然に存在する可溶性ニューロピリン
の発現についてののスクリーニング方法に関する。発現は、RNAレベル(イン
トロン配列に対応する特異的プローブを用いたインサイチュハイブリダイゼーシ
ョン)で解析され得るか、またはタンパク質レベル(低分子量のウエスタンブロ
ット検出)で解析され得る。次いで、インタクトで、かつ切断されたニューロピ
リンアイソフォームの相対的分布が決定され得る。これらの技術は、細胞、組織
、および尿のような生物学的液体中のsNPの分布を解析するために使用され得
る。sNP1およびsNP2の両方は、インタクトなニューロピリンにおいて存
在しないC末端のイントロン配列を含む。sNP1は、そのcDNAにおいて、
3個のC末端イントロンアミノ酸(GIK)および28個のイントロンbpを有
する。sNP2は、そのcDNAにおいて、8個のC末端イントロンアミノ酸(
VGCSWRPL)および146個のイントロンbpを有する。従って、sNP
特異的プローブは、インサイチュハイブリダイゼーションのために、そして、イ
ンタクトなニューロピリンのバックグラウンドにおける、腫瘍および正常組織中
のsNPの分布について分析するために調製され得る。
【0024】
本発明の他の局面は、以下に開示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(発明の詳細な説明)
本発明は、可溶性のニューロピリンタンパク質(sNP)をコードするcDN
Aに関し、このcDNAはニューロピリン(NP)を産生する細胞から単離、ま
たはNPをコードするDNAから組換え操作される。NP−1およびNP−2は
、任意のニューロピリンまたはVEGFレセプター(VEGFR)以外の好まし
いNPであり、これらの構成要素は、上記のVEGF165R/NP−1およびN
P−2のどちらとも少なくとも約85%の相同性を有する。より好ましくは、こ
のような構成要素は少なくとも90%の相同性を有する。さらにより好ましくは
、各構成要素は少なくとも95%の相同性を有する。
【0026】
相同性は当該分野に周知の手段で測定される。例えば、%相同性は、相同性を
比較するために使用される任意の標準的なアルゴリズムにより決定され得る。こ
れらは、NIH(www.ncbi.nlm.nkh.gov/BLAST/n
ewblast.htmlを参照のこと)から入手可能なBLAST2.0(例
えば、BLAST2.0.4およびi2.0.5)(Altschul,S.F
.ら、Nucleic Acids Res.25:3389〜3402(19
97)およびDNASIS(Hitachi Software Engine
ering America,Ltd.)を含むが、これらに限定されない。こ
れらのプログラムは、好ましくは、相同性比較のための標準的な初期設定のよう
な自動設定に設定されるべきである。NIHにより説明されるように、ギャップ
のある結果は、ギャップのない結果よりもより生物学的な意義を有する傾向にあ
る。
【0027】
容易な参照のために、この開示は一般に、VEGF165R/NP−1およびN
P−2および/またはそれらの相同物について述べているが、全ての教示は上述
した相同物に適用可能である。
【0028】
本発明はさらに、単離および精製したsNPタンパク質に関する。本明細書で
使用されるsNPは、エキソン7(配列番号15)を含む、血管内皮細胞増殖因
子に特異的に結合し得るタンパク質(例えばVEGF165)をいい、例えばSo
kerら、J.Biol.Chem.272,31582〜31588(199
7)に記載のようにVEGF165を使用するヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)
増殖アッセイによって決定されるような、VEGFアンタゴニスト活性を有する
。好ましくは、このsNPは、HUVEC増殖を少なくとも25%減少し、より
好ましくは50%減少し、さらにより好ましくは75%減少し、最も好ましくは
95%減少する。
【0029】
sNPのVEGFアンタゴニスト活性はまた、標識化したVEGF165のVE
GF165Rへの結合の阻害(Sokerら、J.Biol.Chem.271,
5761〜5767(1996)に開示される)、または標識化したVEGF16
5のPAE/NP細胞への結合の阻害(実施例に記載される)によって決定され
得る。好ましくは、部分は、結合を少なくとも25%、より好ましくは50%、
最も好ましくは75%、阻害する。
【0030】
用語「単離された」は、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド(例えば、DN
A)が、その本来の環境から取り出されることを意味する。例えば、生存する動
物中に存在する天然に生じるポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、単離され
ていないが、天然の系中の共存物質のいくつかまたは全てから分離された同じポ
リヌクレオチドもしくはDNAまたはポリぺプチドは、単離されている。このよ
うなポリヌクレオチドはベクターの一部であり得、および/またはこのようなポ
リヌクレオチドまたはポリぺプチドは組成物の一部であり得、そしてなお、この
ようなベクターまたは組成物はその自然環境の一部ではないように単離され得る

【0031】
完全長のNP−1のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、それぞれ、配列
番号1および2として配列表に記載される。完全長のNP−2のヌクレオチド配
列およびアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号3および4として配列表に開示さ
れる。
【0032】
ヒトVEGF165R/NP−1またはNP−2をコードするDNA、および組
換えヒトVEGF165R/NP−1またはNP−2は、実施例に記載される方法
に従って産生され得る。
【0033】
NP−1またはNP−2を産生する哺乳動物細胞株は、MDA−MB−231
細胞(ATCC HTB−26)、PC3前立腺癌腫細胞およびヒト臍静脈内皮
細胞(HUVEC)(ATCC CRL 1730)を含むが、これらに限定さ
れない。
【0034】
他の細胞および細胞株もまた、sNPを単離するための使用に適切であり得る
。適切な細胞の選択は、細胞表面上または細胞抽出液もしくは馴化培地中のsN
P結合活性に対するスクリーニング、あるいはPCRまたはハイブリダイゼーシ
ョンによる遺伝子発現に対するスクリーニングによって実施され得る。可溶性の
レセプター活性を検出する方法は、当該分野で周知である(Duan,D−S.
R.ら、(1991)J.Biol.Chem.、266、413〜418頁)

【0035】
ヒトHUVEC細胞(American Type Culture Col
lection、ATCC CRL 1730)(Hoshi,H.およびMc
Keehan,W.L.、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A
.、(1984)81、6413〜6417頁)のような完全長のNPを産生す
る細胞は、ATCCの推奨培養条件に従って増殖させられる。インタクトなNP
ならびに細胞外領域(sNP−1およびsNP−2)を図8に示す。インタクト
なレセプターは、相補成分に相同なaドメイン、凝固因子に相同なbドメイン、
MAMに相同なcドメイン、膜貫通ドメイン(TM)、および40アミノ酸の短
い細胞質ドメイン(cyto)を有する。本発明の対象であるこのレセプターの
2つの阻害形態もまた図8に示し、そして配列番号6および8として配列表に記
載し、そしてこれらはcドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞質ドメインの全
てを欠く。本発明の好ましいsNPはさらにaドメインを欠く。
【0036】
ニューロピリン−1(配列番号2)のドメインは以下の通りである:a1(ア
ミノ酸22〜146)、a2(アミノ酸147〜273)、b1(アミノ酸275
〜430)、b2(アミノ酸431〜587)、c(アミノ酸646〜809)、
TM(アミノ酸857〜884)、cyto(アミノ酸885〜923)。
【0037】
ニューロピリン−2(配列番号4)のドメインは以下の通りである:a1(ア
ミノ酸24〜148)、a2(アミノ酸149〜275)、b1(アミノ酸277
〜433)、b2(アミノ酸434〜594)、c(アミノ酸642〜800)、
TM(アミノ酸865〜893)、cyto(アミノ酸894〜931)。
【0038】
任意の種々の手順が、sNP cDNAを分子クローン化するために使用され
得る。これらの方法としては、適切な発現ベクター系におけるsNP含有cDN
Aライブラリーの構築の後の、sNP遺伝子の直接的な機能的発現が挙げられる
が、これに限定されない。
【0039】
別の方法は、sNPの推定アミノ酸配列から設計した標識化したオリゴヌクレ
オチドプローブを用いて、バクテリオファージまたはプラスミドのシャトルベク
ター内に構築されたsNP含有cDNAライブラリーをスクリーニングすること
である。1つの方法は、完全長のNPタンパク質の少なくとも一部分をコードす
る、部分的なcDNAを用いて、バクテリオファージまたはプラスミドのシャト
ルベクター内に構築されたsNP含有cDNAライブラリーをスクリーニングす
る工程からなる。この部分的なcDNAを、完全長のNPをコードするDNAの
公知の配列からのオリゴヌクレオチドプライマーの設計を介して、sNP DN
Aフラグメントの特異的なPCR増幅によって得る。
【0040】
他の型のライブラリー、ならびに他の細胞または細胞型から構築されたライブ
ラリーが、sNPをコードするDNAの単離に有用であり得ることは、当業者に
容易に明らかである。さらに、適切なcDNAライブラリーは、sNP活性を有
する細胞または細胞株から調製され得る。sNP cDNAを単離するためのc
DNAライブラリーの調製に使用する細胞または細胞株の選択は、まず、本明細
書に記載される方法を使用して、分泌されたsNP活性を測定することによって
行われ得る。
【0041】
cDNAライブラリーの調製は、当該分野に周知の標準的な技術により実施さ
れ得る。周知のcDNAライブラリー構築技術は例えば、Molecular
Cloning,A Laboratory Manual(第2版、Samb
rook、FritschおよびManiatis、Cold Spring
Harbor、N.Y.1989)に見出され得る。
【0042】
sNPをコードするDNAはまた、適切なゲノムDNAライブラリーから単離
され得ることもまた、当業者に容易に明らかである。ゲノムDNAライブラリー
の構築は、当該分野に周知の標準的な技術により実施され得る。周知のゲノムD
NAライブラリー構築技術は、Sambrookら(前出)に見出し得る。
【0043】
sNP分子を得る別の手段は、NPの部分的または完全なアミノ酸配列(例え
ば、NP−1またはNP−2)をコードするDNAからそれらを組換え操作する
ことである。組換えDNA技術を使用して、有糸分裂誘発を刺激せずに、エキソ
ン7を含むVEGFに結合し得るNPの少なくとも一部分をコードするDNA分
子が構築される。Sambrookら(前出)に見出されるような標準的な組換
えDNA技術が使用される。
【0044】
本発明の好ましい方法の1つを使用して、sNPをコードするcDNAクロー
ンは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に基づく技術、およびcDNAライブラ
リースクリーニングを利用する2段階アプローチ(two−stage app
roach)において単離される。第1のステージにおいては、公知の完全長の
NPからの細胞外ドメイン配列情報に由来するDNAオリゴヌクレオチドを使用
して、sNP特異的DNAフラグメントの増幅のための縮重オリゴヌクレオチド
プライマーを設計する。第2のステージにおいては、これらのフラグメントを、
HUVEC細胞(ATCC CRL 1730)に由来する市販のλgt10
cDNAライブラリー(Clontech)から完全なsNP cDNAを単離
するためのプローブとして使用するためにクローン化する。
【0045】
別の方法を使用して、sNPをコードするDNAを、NPをコードするDNA
配列から構築する。説明のために、NP−1をコードするDNAを利用する。レ
セプターDNA配列を使用して、レセプターの細胞外ドメイン、すなわちVEG
F結合ドメインのみをコードするDNA分子を構築する。制限エンドヌクレアー
ゼの切断部位は、レセプターDNA内に同定され、そして細胞外コード部分を切
り出すために直接的に利用され得る。さらに、上述したようなPCR技術を利用
して、所望のDNA部分を産生し得る。当該分野において標準的な他の技術を利
用して、上述した技術に類似する様式においてsNP分子を産生し得ることは当
業者に容易に明らかである。このような技術は、例えば、Sambrookら(
前出)に見出される。
【0046】
好ましい方法において、sNP cDNAは、aドメインのN末端内のHis
ドメインでタグ化され、そしてpcDNA3.1哺乳動物発現プラスミドにサブ
クローン化される。各プラスミドをCHO−K1細胞にトランスフェクトし、G
418耐性クローンを単離する。馴化培地を回収し、そしてCon Aセファロ
ースカラムに供し、洗浄し、そしてCon A結合タンパク質を溶出する。この
溶出物をニッケルカラムに供し、洗浄し、そしてNi++結合sNPタンパク質を
溶出する。精製したsNPを、125I−VEGF165のPAE/NP細胞への結合
ならびにHUVECの増殖および運動性のVEGF165刺激を阻害する能力につ
いてアッセイする。より小さなフラグメントはPCRにより産生される。
【0047】
本発明者らの結果は、VEGFはニューロピリンのbドメインに結合し、そし
てaおよびcドメインを必要としないことを示す。図19を参照のこと。Nおよ
びC末端のますますより大きなセグメントを欠くbドメインのより小さな部分が
、適切なオリゴヌクレオチドプライマーを使用してPCRにより調製され得る。
次いで、増幅したcDNAは発現ベクターに連結され、COS細胞内で発現され
、そして馴化培地を、図21AでsNPについて示されるようにして125I−V
EGF165のPAE/NP1細胞への結合を阻害する能力について試験される。
【0048】
膜貫通領域を含む、さらなる短縮形態のNPが構築され得る。膜貫通の保持は
、標的細胞表面での阻害分子の配向を容易にし得る。膜貫通領域含有分子の構築
は、当該分野に公知の標準的な技術(本明細書に記載されるような簡便な制限エ
ンドヌクレアーゼ切断部位またはPCR技術の利用を含むがこれに限定されない
)により行われる。
【0049】
上述した方法により得られたクローン化sNP cDNAは、適切なプロモー
ターおよび適切な他の転写調節エレメントを含む発現ベクターへの分子クローニ
ングによって組換え発現しされ得、そして原核生物または真核生物の宿主細胞に
移行され、組換えsNPを産生し得る。このような操作のための技術は、Sam
brookら(前出)に十分に記載され、そして当該分野で周知である。
【0050】
発現ベクターは、適切な宿主内での遺伝子のクローン化コピーの転写、および
それらのmRNAの翻訳に必要とされるDNA配列として本明細書に定義される
。このようなベクターは、種々の宿主(例えば、細菌、藍藻、真菌細胞、酵母細
胞、植物細胞、昆虫細胞、および動物細胞)において真核生物遺伝子を発現する
ために使用され得る。
【0051】
特異的に設計したベクターは、宿主間(例えば、細菌細胞−酵母細胞、または
細菌細胞−動物細胞、あるいは細菌細胞−昆虫細胞)でのDNAシャトルを許容
する。適切に構築した発現ベクターは以下を含むべきである:宿主細胞内での自
律的な複製のための複製起点、選択可能マーカー、限定数の有用な制限酵素部位
、高いコピー数に対する潜在能力、および活性プロモーター。プロモーターは、
RNAポリメラーゼをDNAに結合させ、そしてRNA合成を開始させるように
指向されるDNA配列として定義される。強力なプロモーターは、mRNAを高
頻度に開始させるプロモーターである。発現ベクターには、クローニングベクタ
ー、改変クローニングベクター、特別に設計したプラスミドまたはウィルスが含
まれ得るが、これらに限定されない。
【0052】
種々の哺乳動物発現ベクターが、哺乳動物細胞において組換えsNPを発現す
るために使用され得る。組換えsVEGF−Rの発現に適し得る、市販の哺乳動
物発現ベクターとしては、pMC1neo(Stratagene)、pXT1
(Stratagene)、pSG5(Stratagene)、EBO−pS
V2−neo(ATCC 37593)pBPV−I(8−2)(ATCC 3
7110)、pdBPV−MMTneo(342−12)(ATCC 3722
4)、pRSVgpt(ATCC 37199)、pRSVneo(ATCC
37198)、pSV2−dhfr(ATCC 37146)、pUCTag(
ATCC 37460)、およびgZD35(ATCC 37565)が挙げら
れるが、これらに限定されない。
【0053】
sNPをコードするDNAはまた、組換え宿主細胞内での発現のために、発現
ベクター内にクローン化され得る。組換え宿主細胞は、原核生物または真核生物
であり得、細菌細胞、酵母細胞、哺乳動物細胞(ヒト、ウシ、ブタ、サル、およ
びげっ歯類起源の細胞株を含むが、これらに限定されない)、および昆虫細胞(
ショウジョウバエ、ガ、カ、およびアワヨトウの幼虫に由来する細胞株を含むが
、これらに限定されない)を含むが、これらに限定されない。適切であり得、か
つ市販の哺乳動物種に由来する細胞株としては、CV−1(ATCC CCL
70)、COS−1(ATCC CRL 1650)、COS−7(ATCC
CRL 1651)、CHO−K1(ATCC CCL 61)、3T3(AT
CC CCL 92)、NIH/3T3(ATCC CRL 1658)、He
La(ATCC CCL 2)、C127I(ATCC CRL 1616)、
BS−C−1(ATCC CCL 26)、およびMRC−5(ATCC CC
L 171)が挙げられるが、これらに限定されない。適切であり得、かつ市販
の昆虫細胞株としては、3M−S(ATCC CRL 8851)、ガ(ATC
C CCL 80)、カ(ATCC CCL 194、および195;ATCC
CRL 1660および1591)、およびアワヨトウの幼虫(Sf9,AT
CC CRL 1711)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
発現ベクターは、多数の技術(形質転換、トランスフェクション、リポソーム
またはプロトプラスト融合、およびエレクトロポレーションを含むがこれらに限
定されない)のうちの任意の1つにより、宿主細胞に導入され得る。発現ベクタ
ーを含む細胞はクローン的に増殖され、そして個々に分析されて、その細胞がs
NPタンパク質を産生するかどうかを決定する。sNP発現宿主細胞クローンの
同定は、いくつかの手段(抗sNP抗体を用いた免疫学的反応性、放射標識され
たVEGFへの結合、および宿主細胞分泌sNP活性の存在を含むが、これらに
限定されない)によって実施され得る。
【0055】
組換え宿主細胞におけるsNPの発現の後、sNPタンパク質は、有糸分裂誘
発を刺激せずにVEGFに結合し得る活性型のsNPを提供するために回収され
得る。いくつかのsNP精製手順が使用に適している。sNPは、塩分画、イオ
ン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタ
イト吸着クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、ヘパリンセファロース
クロマトグラフィー、VEGF165リガンドアフィニティークロマトグラフィ
ー、および疎水性相互作用クロマトグラフィーの種々の組み合わせ、または個々
の適用によって、細胞溶解物および細胞抽出液から、または馴化培養培地から精
製され得る。
【0056】
さらに、組換えsNPは、全長sNP、またはsNPのポリペプチドフラグメ
ントに対して特異的なモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を用いて作
製された免疫親和性カラムを使用することによって他の細胞タンパク質から分離
され得る。
【0057】
好ましくは、sNPは、DNA構築物を含むsNPをCOS細胞(一過性のト
ランスフェクション)およびCHO細胞(安定なトランスフェクタント)にトラ
ンスフェクトすることによって精製され得る。この使用される構築物は、例えば
、Hisタグおよびmycタグの両方でニューロピリン(neuropilin
)のN末端の近く(VEGF結合に必要とされないドメインにおける)で二重タ
グ化され得る。レクチンカラムクロマトグラフィーは、sNP精製の第1の工程
として有用である。この精製における第2の工程は、Hisタグ化タンパク質を
、必要な場合、抗myc抗体を結合するニッケルカラムを使用することである。
本発明者らは、細胞に対するVEGF結合を阻害する際に、タグ化sNPが完全
に活性であることを示した(図21A)。非タグ化sNPを精製するための、レ
クチンとVEGF親和性クロマトグラフィーとの組み合わせは、インタクトなニ
ューロピリン−1の精製についての実施例において示されるように十分である。
【0058】
次いで、精製sNPタンパク質は、VEGF媒介性内皮細胞(例えば、HUV
EC)遊走および増殖ならびにラットの大動脈環(インビトロ血管新生)からの
内皮細胞の遊走における効果について試験され得る。sNPタンパク質はまた、
ニワトリCAM、およびマウス角膜モデルにおけるVEGF媒介性血管新生の阻
害についてインビボで試験され得る。sNPと相互作用するはずのないFGF−
2は、コントロールとして使用され得る。精製sNPタンパク質およびこのタン
パク質をコードするDNAはまた、マウスモデル(特に、ヌードマウスへの皮下
または正常位に増殖したPC3腫瘍)で試験され、血管新生、腫瘍増殖および転
移の阻害を探し得る。
【0059】
本発明のインヒビターは、血管新生および腫瘍細胞移動性を含むVEGF媒介
性活性の阻害に対して使用され得る。このインヒビターは、局所または静脈内の
いずれかに使用され得る。局所適用については、この処方物は、約10ng〜約
1mg/cm2/dayの速度で直接的に適用される。静脈内適用については、
このインヒビターは、体重の約1mg〜約10mg/kg/dayの速度で使用
される。内部使用については、この処方物は、移植された遅放性ポリマー材料か
らかまたは遅放性ポンプからかあるいは反復注入のいずれかで、処置されるべき
領域に直接的に放出され得る。いずれかの場合における放出速度は、約100n
g〜約100mg/day/cm3である。
【0060】
非局所的な適用については、このインヒビターは、標準的な薬学的実務に従っ
て、薬学的組成物中において薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤(例えば
、リン酸緩衝液、生理食塩水、リン酸緩衝化生理食塩水、リンゲル溶液など)と
の組み合わせで投与される。局所適用については、種々の薬学的処方物が、本発
明の活性化合物の投与のために有用である。このような処方物は、以下を含むが
これらに限定されない:疎水性ワセリンまたはポリエチレングリコール軟膏剤の
ような軟膏剤;キサンタン(xanthan)ガムのようなガムを含み得るペー
スト剤;アルコール性溶液または水性溶液のような溶液;水酸化アルミニウムま
たはアルギン酸ナトリウムゲルのようなゲル;ヒトまたは動物アルブミンのよう
なアルブミン;ヒトまたは動物コラーゲンのようなコラーゲン;アルキルセルロ
ース、ヒドロキシアルキルセルロースおよびアルキルヒドロキシアルキルセルロ
ースのようなセルロース(例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロ
ース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、お
よびヒドロキシプロピルセルロース);Pluronic.RTM.F−127
により例示されるPluronic.RTM.Polyolのようなポリオキサ
マー;tetronic 1508のようなtetronics;ならびにアル
ギン酸ナトリウムのようなアルギン酸。
【0061】
本発明のsNPは、血管新生を負に調節する治療的に有効量の別の分子と組み
合わされ得、この分子は、TNP−470、血小板因子4、トロンボスポンジン
−1、メタロプロテアーゼの組織インヒビター(TIMP1およびTIMP2)
、プロラクチン(16−Kdフラグメント)、アンジオスタチン(プラスミノゲ
ンの38−Kdフラグメント)、エンドスタチン、bFGF可溶性レセプター、
トランスフォーミング増殖因子β、インターフェロンα、可溶性KDRおよびF
LT−1レセプター、ならびに胎盤プロリフェリン(proliferin)関
連タンパク質であり得るがこれらに限定されない。
【0062】
本発明のsNPはまた、化学療法剤と組み合わされ得る。
【0063】
本発明のsNPをコードするDNAは、遺伝子治療の型で使用され、そして当
業者に公知の任意の方法によって宿主に送達され、VEGFに関連する障害を処
置し得る。
【0064】
本発明の好ましい実施態様は、さらなる腫瘍増殖および最終的な転移を予防す
るために固形腫瘍の血管新生を阻害する方法に関する。この目標のために、遺伝
子移入が近づき得る任意の固形腫瘍または腫瘍を囲む領域が、開示された治療適
用の標的である。sNPをコードし、組換えウイルス性または非ウイルス性に基
づく遺伝子移入系の中に収容されるDNAは、当該分野で公知である任意の多数
の手順によりこの腫瘍の近傍内の標的細胞に指向され得る。この手順は、以下を
含むがこれらに限定されない(a)腫瘍内部の部位およびこの腫瘍の周囲の部位
に有効量のDNAを投与することと組み合わされる外科的手順(可能な場合、腫
瘍の一部または全体の最初の除去を含む);(b)この腫瘍の部位中または近接
部位への直接的な遺伝子移入ビヒクルの注入;ならびに、(c)当該分野で公知
である技術を使用する遺伝子移入ベクターおよび/または遺伝子産物の局在化送
達または全身的な送達。
【0065】
VEGFまたはニューロピリン発現細胞を含む任意の固形腫瘍は、処置のため
の潜在的な標的である。例えば、決して限定としては列挙しないが、遺伝子治療
適用に特に脆弱な固形腫瘍は、以下である;(a)神経膠芽細胞、星状細胞腫、
神経芽腫、髄膜細胞腫、上衣細胞腫を含むが必ずしもこれらに限定されない中枢
神経系の新生物;(b)本来の位置での癌髄様癌、管状腺癌、浸潤(浸潤する)
癌および粘液性癌腫を含むがその部位の癌に限定されない前立腺、精巣、子宮、
頸、卵巣乳房のような組織でのホルモン依存性癌;(c)皮膚および眼の黒色腫
を含むがこれらに限定されない黒色腫;(d)扁平上皮癌、紡錘体癌、小細胞癌
、腺癌および大細胞癌を少なくとも含む肺の癌;ならびに(e)少なくとも大腸
の腺癌を含む、食道、胃、小腸、結腸、結腸直腸、直腸、および肛門領域のよう
な胃腸管系の癌。
【0066】
sNPをコードするDNAフラグメントは、ウイルス性または非ウイルス性に
基づく方法によって、全身的にまたは哺乳動物宿主の固形腫瘍の近傍における標
的細胞に対してかのいずれかで送達され得る。本発明に利用され得るウイルスベ
クター系は、以下を含むがこれらに限定されない;(a)アデノウイルスベクタ
ー;(b)レトロウイルスベクター;(c)アデノ随伴ウイルスベクター;(d
)単純疱疹ウイルスベクター;(e)SV40ベクター;(f)ポリオーマウイ
ルスベクター;(g)パピローマウイルスベクター;(h)ピコナウイルスベク
ター;および(i)ワクシニアウイルスベクター。
【0067】
本発明のsNPをコードするDNAを含む組換えウイルスまたはベクターは、
好ましくは、固形腫瘍および/またはこの固形腫瘍に近接する静止状態の組織(
例えば、脂肪組織または筋組織)への直接注入によりこの宿主に投与される。も
ちろん、腫瘍細胞を標的とされる脂肪組織または筋組織の領域にトランスフェク
トすることは、有用である。これらの周囲の細胞におけるsNPの一過性発現は
、これらのタンパク質の局所的な細胞外増加を生じ、そしてVEGFとの結合を
促進し、これによりこのレセプターへのVEGFの結合を阻害する。
【0068】
また適切である非ウイルス性ベクターは、例えば、リポソーム媒介性またはリ
ガンド/ポリ−L−リジン結合体(例えば、アシアロ糖蛋白媒介性送達系のよう
なDNA脂質複合体を含む(例えば、Felgnerら、1994、J.Bio
l.Chem.269:2550〜2561;Derossiら、1995、R
estor.Neurol.Neuros.8:7〜10;およびAbcall
ahら、1995、Biol.Cell 85:1〜7を参照のこと)。「裸」
のDNAの直接注入もまた、使用され得る。
【0069】
本発明はまた、本発明の薬学的組成物の1つ以上の成分で充填された1つ以上
の容器を含む薬学的パックまたはキットを提供する。必要に応じて、薬学的また
は生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府機関による規定される形
態での通知は、このような容器に付随し得、この通知は、ヒト投与についての製
造機関、使用機関、または販売機関による認可を示す。
【0070】
以上または以下の引用される全ての参考文献は、本明細書中で参考として援用
される。
【実施例】
【0071】
本発明はさらに、以下の実施例を例証する。これらの例示は、本発明の理解を
目的に提供され、その限定として解釈されない。
【0072】
(実施例1)
(実験手順)
(材料)
トランスフェクションのための細胞培養培地、リポフェクチンおよびリポフェ
クタミン試薬をLife Technologiesから購入した。ヒト組換え
VEGF165およびVEGF121は、以前に記載されるようにヒトVEGF165
たはVEGF121のいずれかをコードする組換えバキュロウイルスベクターを用
いて感染されたSf−21昆虫細胞において産生された(Cohenら、Gro
wth Factors、7、131〜138(1992);Cohenら、J
.Biol.Chem.、270、11322〜11326(1995)。GS
T VEGFエキソン7+8融合タンパク質をE.coliにおいて調製し、そ
して以前に記載されるように精製した(Sokerら、J.Biol.Chem
.、271、5761〜5767(1996))。ヘパリン、ハイグロマイシン
BおよびプロテアーゼインヒビターをSigma(St.Louis、MO)か
ら購入した。125I−ナトリウム、32P−dCTP、およびGeneScree
n−Plusハイブリダイゼーション転移膜をDuPont NEN(Bost
on、MA)から購入した。ジスクシンイミジルスベリン酸(DSS)およびI
ODO−BEADSをPierce Chemical Co.(Rockfo
rd、IL)から購入した。Con AセファロースをPharmacia L
KB Biotechnology Inc.(Piscataway、NJ)
から購入した。RNAzol−BをTEL−TEST Inc.(Friend
swood、TX)から購入した。銀染色キットおよびTrans−Blot
PVDF膜をBio−Rad Laboratories(Hercules、
CA)から購入した。複数組織ノザンブロット膜をClontech(Palo
Alto、CA)から購入した。ポリA Tract mRNA単離キットを
Promega(Madison、WI)から購入した。RediPrime
DNA標識キットおよび分子量マーカーをAmersham(Arlingto
n Heights、IL)から購入した。プラスミド:pcDNA3.1をI
nvitrogen(Carlsbad、CA)から購入し、そしてCMVプロ
モーターを含み、かつハイグロマイシンBホスホリラーゼをコードするpCPh
ygroは、Dr.Urban Deutsch(Max Plank Ins
titute、Bad Nauheim、Germany)によって親切に提供
された。制限エンドヌクレアーゼおよびリガーゼをNew England B
iolabs,Inc.(Beverly、MA)から購入した。NT−B2写
真用エマルジョンおよびX線フィルムをEastman Kodak Comp
any(Rochester NY)から購入した。
【0073】
(細胞培養)
ヒト臍帯静脈EC(HUVEC)をAmerican Type Cultu
re Collection(ATCC)(Rockville、MD)から入
手し、そして20%ウシ胎児血清(FCS)ならびにグルタミン、ペニシリンお
よびストレプトマイシン混合物(GPS)を含むM−199培地中でのゼラチン
コートディッシュ上で増殖した。塩基性FGF(2ng/ml)を1日おきに培
養培地に添加した。親ブタ大動脈内皮(PAE)細胞およびKDRを発現するP
AE細胞(PAE/KDR)(Waltenbergerら、J.Biol.C
hem.269、26988〜26995(1994))は、Dr.Lena
Claesson−Welshにより親切に提供され、そして10%FCSおよ
びGPSを含むF12培地で増殖した。MDA−MB−231細胞およびMDA
−MB−453細胞を、ATCCから入手し、そして10%FCSおよびGPS
を含むDMEMで増殖した。ヒト黒色腫細胞株である、RU−mel、EP−m
elおよびWK−melは、Dr.Randolf Byer(Boston
University Medical School、Boston、MA)
から親切に提供され、そして2%FCS、8%ウシ血清およびGPSを含むDM
EMで増殖した。ヒト転移性前立腺癌であるLNCaP細胞および前立腺癌であ
るPC3細胞は、Dr.Michael Freeman(Children’
s Hospital、Boston、MA)から親切に提供され、そして5%
FCSおよびGPSを含むRPMI 1640で増殖した。
【0074】
(精製およびタンパク質配列決定)
150cmディッシュで増殖された約5×108MDA−MB−231細胞を
5mM EDTAを含むPBSで洗浄し、掻き取り、そして500gで5分間遠
心分離した。この細胞ペレットを150mlの20mM HEPES、pH8.
0、0.5%TritonX−100ならびに1mM AEBSF、5μg/m
lロイペプチンおよび5μg/mlアプロチニンを含むプロテアーゼインヒビタ
ーを用いて氷上で30分間溶解し、そしてこの溶解物を30,000×gで30
分間遠心分離した。MnCl2およびCaCl2を、各々1mMの最終濃度を得る
ように上清に添加した。この溶解物を、Con Aセファロースカラム(7ml
)に吸収し、そして結合タンパク質を、15mlの20mM HEPES、pH
8.0、0.2M NaCl、0.1%TritonX−100および1M メ
チル−α−D−マンノピラノシドを用いて0.2ml/minで溶出した。この
溶出物を30分間隔で二度さらに繰り返した。このCon Aカラム溶出物をプ
ールし、そして以前に記載されるように調製された、約150μgのVEGF16
5を含む0.5mlのVEGF165−セファロースビーズとともに4℃で12時間
インキュベートした(WilchekおよびMiron、Biochem.In
t.4、629〜635.(1982))。このVEGF165−セファロースビ
ーズを、50mlの20mM HEPES、pH8.0、0.2M NaClお
よび0.1%TritonX−100、次いで25mlの20mM HEPES
、pH8.0を用いて洗浄した。このビーズをSDS−PAGE緩衝液中で煮沸
し、結合タンパク質を6%SDS−PAGEによって分離した。セミドライ電気
ブロッター(Hoeffer Scientific)を使用して、タンパク質
をTransBlot PVDF膜に転移し、そしてこのPVDF膜を40%メ
タノール中の0.1%クマシーブリリアントブルーで染色した。130〜140
kDaダブレットにおける2つの顕著なタンパク質を別々に切り出し、Harv
ard Microchemistry施設(Cambrige、MA)のDr
.William Laneにより提供されるサービスとしてApplied
Biosystems model 477A微量配列決定機を使用してN末端
の配列決定をした。
【0075】
(発現クローニングおよびDNA配列決定)
相補的DNA(cDNA)を5μgの231mRNAから合成した。二本鎖c
DNAをEcoRIアダプターに連結し、そして5〜20%酢酸カリウム勾配で
サイズ分画した。2kbよりも大きいDNAフラグメントを真核生物発現プラス
ミドpcDNA3.1に連結した。このプラスミドライブラリーをE.coli
にトランスフェクトし、約1×107の個々のクローンの一次ライブラリーを生
じた。形質転換された細菌の一部を240プールに分割し、これら各々は、約3
×103の個々のクローンを表す。各プールから調製されたDNAを使用し、製
造業者の指示に従いリポフェクチン試薬を使用して12ウェルディッシュ中に播
種されたCOS−7細胞をトランスフェクトした。トランスフェクションの3日
後に、この細胞を1μg/mlヘパリンの存在下で125I−VEGF165(10n
g/ml)とともに氷上で2時間インキュベートし、洗浄し、PBS中の4%パ
ラホルムアルデヒドを用いて固定した。個々の細胞に結合する125I−VEGF1
65は、記載されるように、単層を写真用エマルジョン、NT−B2とともに重層
し、そして2日後にこのエマルジョンを現像することによって検出された(Ge
aringら、1989)。7つの陽性DNAプールを同定し、この陽性プール
のうちの1つからのDNAを使用し、E.coliを形質転換した。このE.c
oliを50の別々のプールにさらに分割し、各プールが約100クローンを表
す、50のLBアンピシリンディッシュ上に播種した。これらのプールから作製
されたDNAをCOS−7細胞にトランスフェクトし、上記のように125I−V
EGF165結合についてスクリーニングした。20の陽性プールをこの工程で検
出し、そしてそれらの対応するDNAを使用し、E.coliを形質転換した。
各プールを別々のLBアンピシリンディッシュ上に播種し、DNAを96の個々
のコロニーから調製し、そして上記のようにトランスフェクトされたCOS−7
細胞に対する125I−VEGF165結合について96ウェル二次元格子においてス
クリーニングした。7つの単独のクローンをこの工程の陽性として同定した。こ
の7つの陽性プラスミドクローンを増幅し、そしてそれらのDNAを制限酵素消
化によって分析した。6つのクローンは、消化の同一消化パターンを示し、そし
て1つは異なっていた。各々の群からの1つのクローンを自動化DNA配列決定
に供した。
【0076】
(ノザン分析)
製造業者の指示に従いRNAzolを使用して、培養中の細胞から総RNAを
調製した。20μgRNAのサンプルを1%ホルムアルデヒド−アガロースゲル
で分離し、そしてGeneScreen−Plus膜に転写した。この膜を、O
RF中のヌクレオチド63〜454に対応する、ヒトVEGF165R/NP−1
cDNAの32P標識フラグメントを用いて63℃で18時間ハイブリダイズし
た。この膜を洗浄し、そしてX線フィルムに18時間曝露した。市販の複数のヒ
ト成人組織のmRNAブロット(Clonetech、2μg/レーン)を、同
様の様式で、ヒトNP−1についてプローブした。この複数組織ブロットを0.
5%SDSの存在下で煮沸により剥がし、そしてこのORFのヌクレオチド28
41〜3251に対応するKDR cDNAの32P標識フラグメントを用いて再
プローブした(Termanら、Oncogene 6、1677〜1683(
1991))。
【0077】
(PAE細胞のトランスフェクション)
親PAE細胞およびKDRを発現するPAE細胞(PAE/KDR)(Wal
tenbergerら、1994)を、Lena Claesson−Wels
h博士から入手した。ヒトNP−1 cDNAを、XhoIおよびXbaI制限
酵素を用いて消化し、そしてpCPhygroの対応する部位にサブクローニン
グし、pCPhyg−NP−1を産生した。PAEおよびPAE/KDR細胞を
、6cmディッシュで増殖し、製造業者の指示に従いリポフェクタミンを使用し
て5μgのpCPhyg−NP−1をトランスフェクトした。細胞をさらに48
時間増殖させ、そしてこの培地を、200μg/mlのハイグロマイシンBを含
む新鮮な培地と交換した。2週間後、単離されたコロニー(5〜10×103
胞/コロニー)を48ウェルディッシュの別々のウェルに移し、そして200μ
g/mlハイグロマイシンBの存在下で増殖した。VEGF165R/NP−1(
PAE/NP−1)を発現するか、またはVEGF165R/NP−1およびKD
Rを共発現する(PAE/KDR/NP−1)安定なPAE細胞クローンを、12
5I−VEGF165の結合および架橋によってVEGF165レセプター発現につい
てスクリーニングした。一過性のトランスフェクションについては、PAE/K
DR細胞を、上記のようにVEGF165R/NP−1を用いてトランスフェクト
し、そして3日後に125I−VEGF165架橋分析を実行した。
【0078】
(VEGFの放射ヨウ素化、結合および架橋実験)
IODO−BEADSを使用するVEGF165およびVEGF121の放射ヨウ素
化を、以前に記載されるように実行した(Sokerら、J.Biol.Che
m.272、31582〜31588(1997))。この比活性は、40,0
00〜100,000cpm/ngタンパク質で変動した。125I−VEGF165
および125I−VEGF121を使用する結合および架橋実験を、以前に記載される
ように実行した(Gitay−Gorenら、J.Biol.Chem.267
、6093〜6098(1992);Sokerら、J.Biol.Chem.
271、5761〜5767(1996))。VEGF結合は、γカウンターで
細胞に関連する放射活性を測定することによって定量された(Beckman、
Gamma5500)。カウントは3ウェルの平均を表す。全ての実験を少なく
とも3回繰り返し、そして同様の結果を得た。結合実験の結果を、LIGAND
プログラム(MunsonおよびRodbard、1980)を使用するスキャ
ッチャードの方法によって分析した。125I−VEGF165および125I−VEG
121の架橋複合体を、6%SDS/PAGEによって分離し、そしてこのゲル
をX線フィルムに曝露した。その後、X線フィルムを、IS−1000デジタル
画像処理システム(Alpha Innotech Corporation)
を使用することによって走査した。
【0079】
(VEGF165Rの精製)
231細胞の細胞表面レセプターに対する125I−VEGF165の架橋は、16
5〜175kDa標識複合体の形成を生じる(Sokerら、J.Biol.C
hem.271、5761〜5767(1996))。これらの細胞は、約1〜
2×105VEGF165結合部位/細胞を有する。VEGF165とは対照的に、V
EGF121は、231細胞に結合せず、そしてリガンド−レセプター複合体を形
成しない(Sokerら、J.Biol.Chem.271、5761〜576
7(1996))。231細胞中の相対的に高いVEGF165Rの数および全く
検出可能なKDRまたはFlt−1 mRNAが欠乏すること(示さず)は、こ
れらの細胞がVEGF165R精製のために有用な供給源であることを示唆する。
予備的な特徴付けは、VEGF165Rが糖タンパク質であることを示した。従っ
て、約5×108細胞から調整された231細胞溶解物がCon Aセファロー
スカラムに吸収された。Con Aカラムから溶出される結合タンパク質を、V
EGF165セファロースとともにインキュベートし、そしてこのVEGF165親和
性精製タンパク質をSDS−PAGEおよび銀染色により分析した(図9、レー
ン2)。約130〜135kDaの分子量である顕著なダブレットが、検出され
た。このサイズは、約130〜135kDaのサイズであるレセプターに結合し
た40〜45kDaのVEGF165の165〜175kDa複合体の形成と一致
する(図9、レーン1)。この2つのバンドを別々に切り出し、そしてN末端ア
ミノ酸配列決定を実行した(図1、右)。上側および下側のバンドの両方は、同
様なN末端アミノ酸配列を有しており、この配列は、マウス(Kawasaki
ら、J.Neurobiol.29,1〜17(1995))およびヒトニュー
ロピリン−1(NP−1)(HeおよびTessier−Lavigne、Ce
ll 90739〜751(1997))のN末端領域における推定アミノ酸配
列に対して高度な配列相同性を示した。
【0080】
(231細胞由来mRNAからのVEGF165Rの発現クローニング)
この精製に伴って、VEGF165Rを発現クローニングによってクローン化し
た(AruffoおよびSeed、Proc.Natl.Acad.Sci.U
SA 84、8573〜8577(1987a);AruffoおよびSeed
、EMBO J.、6、3313〜3316(1987b);Gearingら
、EMBO J.8、3667〜3676(1989))。発現クローニングに
ついて、231細胞mRNAを使用し、真核細胞発現プラスミド中に約107
ローンのcDNAライブラリーを調製した。このプラスミドライブラリーで形質
転換されたE.coliをプールに分割した。各々のプールから調製されるDN
Aを別々のウェルのCOS−7細胞にトランスフェクトし、そして個々の細胞を
、写真用エマルジョンで重層された単層のオートラジオグラフィによって検出さ
れるように、125I−VEGF165に結合する能力についてスクリーニングした(
図2A)。サブプーリングおよびスクリーニングの3ラウンドの後に、7つの単
一陽性cDNAクローンを得た。図2Bは、これらの単一の陽性クローンのうち
の1つ(クローンA2)を用いてトランスフェクトされたCOS−7細胞に対す
125I−VEGF165の結合を示す。
【0081】
制限酵素分析は、7つの陽性単一クローンのうちの6つが同一の制限消化パタ
ーンを有するが、1つのクローンが異なる(示さず)パターンを有することを示
した。これらの同様のcDNAクローンのうちの1つ、クローンA2(図3)の
配列決定は、それがヒト発現配列タグデータバンク(dbEST)由来の配列と
同一であることを示した。この配列はまた、マウスニューロピリン、NP−1(
Kawakamiら、J.Neurobiol 29、1〜17(1995))
の配列に対して高い割合の相同性を示した。本発明者らが、ヒトVEGF165
をクローン化した後に、2つのグループがセマフォリン(semaphorin
)IIIのラットおよびヒトレセプターのクローニングを報告し、そしてそれら
がNP−1であると同定した(HeおよびTessier−Lavigne、C
ell90、739〜751(1997);Kolodkinら、Cell 9
0、753〜762(1997))。この231細胞由来VEGF165R cD
NA配列は、ヒトNP−1配列(HeおよびTessier−Lavigne、
Cell 90、739〜751(1997)と実際は同一である(例外につい
ての図説明文3を参照のこと)。きわめて、発現クローニングによって得られる
推定アミノ酸配列(図3)は、N末端配列決定によって決定された、NP−1と
してのVEGF165Rの同定を確認し(図1)、従って、本発明者らは、このV
EGFレセプターをVEGF165R/NP−1と命名した。
【0082】
ヒトVEGF165R/NP−1のcDNA配列は、推定シグナルペプチドおよ
び膜貫通ドメインを表す2つの疎水性領域を有する923アミノ酸のオープンリ
ーディングフレーム(ORF)を予測する(図3)。全体的に、この配列は、細
胞表面レセプターの構造と一致する外部ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞質
ドメインを予測する。図1に示されるように、タンパク質精製を介して得られた
このN末端配列は、21アミノ酸推定疎水性シグナルペプチドドメインの下流で
あり、従って、このシグナルペプチドドメインが切断され、そして除去されるこ
とを直接的に示す。40アミノ酸の短い細胞質の尾部は、231細胞の部分的な
トリプシン消化により放出される可溶性VEGF165R/NP−1がインタクト
なVEGF165R/NP−1と同じサイズであることを実証する結果と一致する
(示さず)。
【0083】
異なる制限酵素プロフィールを有した発現クローニングにより得られた1つの
クローンの配列分析は、VEGF165R/NP−1に対して約47%の相同性を
有する931アミノ酸のオープンリーディングフレームを予測した(図4)。こ
のヒトcDNAは、ラットニューロピリン−2(NP−2)と93%の配列相同
性を有し、そして最近クローン化されたヒトNP−2と同一である(Chenら
、Neuron、19、547〜559(1997))。
【0084】
(成人の細胞株および組織におけるVEGF165R/NP−1の発現)
NP−1遺伝子発現の報告は、今のところ発達している胚の神経系に限定され
ている(Takagiら、Dev.Biol.122、90〜100(1987
);Kawakamiら、J.Neurobiol.29、1〜17(1995
);Takagiら、Dev.Biol.170、207〜222(1995)
)。しかし、細胞表面VEGF165R/NP−1は、ECのような非ニューロン
性成人細胞型および種々の腫瘍由来細胞と関連する(Sokerら、J.Bio
l.Chem.271、5761〜5767(1996))。ノザンブロット分
析は、125I−VEGF165架橋された細胞がまた、VEGF165R/NP−1
mRNAを合成するか否かを決定するために実行された(図5)。VEGF165
R/NP−1 mRNAレベルは、231細胞およびPC3細胞で最も高かった
。VEGF165R/NP−1 mRNAは、HUVEC細胞、LNCaP細胞、
EP−mel細胞およびRU−mel細胞においてより少ない程度で検出された
。MDA−MB−453細胞およびWK−mel細胞中の発現は、あるとしても
ほとんど存在しなかった。このVEGF165R/NP−1遺伝子発現パターンは
、HUVEC細胞、231細胞、PC3細胞、LNCaP細胞、EP−mel細
胞およびRU−mel細胞が、細胞表面VEGF165R/NP−1に125I−VE
GF165を結合させるが、MDA−MB−453細胞およびWK−mel細胞が
そうではないこと示す、本発明者らの以前の結果と一致した(Sokerら、J
.Biol.Chem.271、5761〜5767(1996))。
【0085】
VEGF165R/NP−1遺伝子発現はまた、種々の成人組織において、KD
R遺伝子発現と比較するノザンブロットによって分析された(図6)。VEGF
165R/NP−1 mRNAレベルは成人の心臓および胎盤において比較的高く
、そして肺、肝臓、骨格筋、腎臓および膵臓において比較的中程度であった。比
較的低いレベルのVEGF165R/NP−1 mRNAは、成人の脳において検
出された。興味深いことに、マウスおよびニワトリ脳におけるNP−1遺伝子発
現の以前の分析は、この遺伝子が胚発生の間に主に発現され、そして出生後に大
きく減少することを示唆した(Kawakamiら、J.Neurobiol.
29、1〜17(1995);Takagiら、Dev.Biol.170、2
07〜222(1995))。KDR mRNAの組織分布は、心臓で高度に発
現しないという例外を伴うがVEGF165R/NP−1のmRNAの組織分布と
同様であった。これらの結果は、VEGF165R/NP−1が、心臓および胎盤
のように血管新生が生じる組織を含む、成人の非ニューロン組織において広く発
現されることを示す。
【0086】
(VEGF165R/NP−1に対するVEGF165結合の特徴付け)
VEGF165R/NP−1の結合性質を特徴付けるために、ブタ大動脈内皮(
PAE)細胞は、VEGF165R/NP−1のcDNAを用いてトランスフェク
トされた。このPAE細胞は、これらの発現研究のために選択された。なぜなら
ば、PAE細胞は、KDRも、Flt−1も(Waltenbergerら、J
.Biol.Chem.269、26988〜26995(1994))、VE
GF165Rのいずれも発現していないからである。VEGF165R/NP−1(P
AE/NP−1)を合成する安定な細胞株を確立し、そして125I−VEGF165
結合実験を実行した(図7)。PAE/NP−1細胞に対する125I−VEGF1
65結合は、用量依存性の様式で増加し、そして約30ng/mlで飽和に達した
。このことは、VEGF165R/NP−1が特異的VEGF165レセプターである
ことを実証する(図7A)。VEGF165結合のスキャッチャード分析は、約3
.2×10-10MのKdを有する1つのクラスのVEGF165結合部位、および1
細胞当たり約3×105125I−VEGF165結合部位を明らかにした(図7B
)。同様のKd値が、いくつかの独立して生成したPAE/NP−1クローンに
ついて得られたが、このレセプター数はクローン毎に変動した(示さず)。PA
E/NP−1細胞株に対する3×10-10MのKdは、HUVEC細胞および23
1細胞によって天然に発現されるVEGF165R/NP−1に対して得られる2
〜2.8×10-10MのKd値と一致する(Gitay−Gorenら、J.Bi
ol.Chem.267、6093〜6098(1992);Sokerら、J
.Biol.Chem.271、5761〜5767(1996))。PAE/
NP−1細胞に対する125I−VEGF165結合は、1μg/mlヘパリンによっ
て増強され(示さず)、このことは、ヘパリンが、HUVEC細胞および231
細胞上のVEGF165R/NP−1に対する125I−VEGF165結合を増強する
ことを示す以前の研究と一致した(Gitay−Gorenら、J.Biol.
Chem.267、6093〜6098(1992);Sokerら、J.Bi
ol.Chem.271、5761〜5767(1996))。
【0087】
(VEGF165R/NP−1を発現している細胞に対するVEGFのアイソフ
ォーム特異的結合)
VEGF165(VEGF121ではない)は、HUVEC細胞および231細胞上
のVEGF165R/NP−1に結合する(Gitay−Gorenら、J.Bi
ol.Chem.271、5519〜5523(1992);Sokerら、J
.Biol.Chem.271、5761〜5767(1996))。VEGF
165R/NP−1を用いてトランスフェクトされた細胞が、同一の結合特異性を
有するか否かを確認するために、PAE/NP−1細胞を、125I−VEGF165
または125I−VEGF121とともにインキュベートし、その後、架橋した(図8
)。125I−VEGF165は親PAE細胞に結合しなかったが(図8、レーン3)
、VEGF165R/NP−1を介してPAE/NP−1細胞に結合した(図8、
レーン4)。VEGF165R/NP−1を用いて形成された放射標識複合体は、
HUVEC細胞(図8、レーン1)およびPC3細胞(図8、レーン2)におい
て形成された複合体と同様のサイズであった。一方、125I−VEGF121は、親
PAE細胞(図8、レーン7)またはPAE/NP−1細胞(図8、レーン8)
のいずれに対しても結合しなかった。これらの結果は、内因性VEGF165R/
NP−1を発現している細胞(例えば、HUVEC細胞、231細胞およびPC
3細胞)で生じるVEGFアイソフォーム特異的結合を実証し、これらの結果が
、VEGF165R/NP−1 cDNAを用いてトランスフェクトされる細胞で
複製され得、そしてVEGF165RおよびNP−1が同一であるという知見を支
持し得る。
【0088】
(VEGF165R/NP−1およびKDRの同時発現が、KDRへのVEGF1
65の結合を変化させる)
VEGF165R/NP−1の発現が、VEGF165とKDRとの相互作用に何ら
かの影響を有するかどうかを決定するために、以前にKDRcDNAでトランス
フェクトして安定なPAE/KDR細胞のクローンを産生したPAE細胞(Wa
ltenbergerら、J.Biol.Chem.269、26988−26
995(1994))を、VEGF165R/NP−1 cDNAとトランスフェ
クトし、そして両方のレセプター(PAE/KDR/NP−1)を発現する安定
なクローンを得た。これらの細胞は、125I−VEGF165をKDR(図8、レー
ン6、上部の複合体)およびVEGF165R/NP−1(図8、レーン6、下部
複合体)へ結合し、HUVEC(図8、レーン1)と類似した架橋特性を産生し
た。一方、PAE/KDR/NP−1細胞は、VEGF121のVEGF165R/N
P−1と結合する能力がないことと一致し、125I−VEGF121に結合して、K
DRとの複合体のみを形成する(図8、レーン9および10)。
【0089】
細胞中でKDRおよびVEGF165R/NP−1(図8、レーン6)が同時発
現していることが明らかとなり、240kDaの125I−VEGF165−KDR複
合体形成の程度は、親のPAE/KDR細胞と比較して増強された(図8、レー
ン5)。これらの結果は再現性があり、そして異なるクローンでの240kDa
125I−VEGF165−KDRの複合体形成の程度は、VEGF165R/NP−
1の発現レベルと正の相関関係があった(データ示さず)。しかし、これらの異
なるKDR結合の結果は、おそらくトランスフェクション後のクローンの選択に
起因するということを決定的には除外することはできなかった。それゆえ、親の
PAE/KDR細胞を、VEGF165R/NP−1 cDNAとトランスフェク
トし、そして125I−VEGF165を、個々のクローンの間のKDR発現の何らか
の多様性を除くために、3日後に細胞に対して結合および架橋させた(図9)。
KDRを含む標識された240kDaの複合体が、親のPAE/KDR細胞で形
成され(図9、レーン1)、そしてPAE/KDR細胞中に発現ベクターと共に
トランスフェクトした(図9、レーン2)。しかし、125I−VEGF165を、V
EGF165R/NP−1を過渡的に発現しているPAE/KDR細胞と架橋した
場合、親のPAE/KDR細胞(図9、レーン1)および発現ベクターとトラン
スフェクトしたPAE/KDR細胞(図9、レーン2)と比較して、約4倍大き
いより強烈に標識された240kDaの複合体が観察された(図9、レーン3)
。これらの結果は、同じ細胞内におけるKDRおよびVEGF165R/NP−1
遺伝子の同時発現が、VEGF165のKDRへの結合能力を増強することを示唆
する。
【0090】
(GST−VEGFエキソン7+8融合タンパク質は、VEGF165のVEG
165R/NP−1およびKDRへの結合を阻害する)
本発明者らは、125I−VEGF165が、そのエキソン7にコードされたドメイ
ンを介してVEGF165R/NP−1に結合することを示した(Sokerら、
J.Biol.Chem.271、5761−5767(1996))。さらに
、VEGFエキソン7+8にコードされたペプチドを含むGST融合タンパク質
(GST−Ex7+8)は、231細胞およびHUVECに関連したVEGF16
5R/NP−1への125I−VEGF165の結合を完全に阻害する(Sokerら
、J.Biol.Chem.271、5761−5767(1996);Sok
erら、J.Biol.Chem.272、31582−31588(1997
))。PAE/NP−1細胞を添加した場合、融合タンパク質は、VEGF165
R/NP−1への結合を完全に阻害した(図10、レーン1と比較したレーン2
)。一方、125I−VEGF165のKDRへの結合は、全く阻害されなかった(図
10、レーン3と比較したレーン4)。従って、これらの結果は、GST−Ex
7+8が、VEGF165R/NP−1とは直接結合するが、KDRとは結合しな
いことを実証する。GST−Ex7+8の効果は異なっているが、細胞内におい
てVEGF165R/NP−1およびKDR(PAE/KDR/NP−1)の両方
を同時発現する。図8および9の結果と一致して、PAE/KDR/NP−1細
胞中の125I−VEGF165のKDRとの結合の程度(図10、レーン5)は、親
のPAE/KDR細胞よりも大きかった(図10、レーン3)。興味深いことに
、PAE/KDR/NP−1細胞において、GST−Ex7+8は、期待したよ
うに125I−VEGF165のVEGF165R/NP−1への結合を完全に阻害する
だけでなく、予期しなかったKDRへの結合もまた実質的に阻害した(図10、
レーン5と比較したレーン6)。GST−Ex7+8の存在下において、これら
の細胞内での125I−VEGF165のKDRへの結合は、VEGF165R/NP−
1を発現していない親のPAE/KDR細胞において見られたレベルに対して減
少した(図10、レーン3および4と比較したレーン6)。融合タンパク質は、
KDRに直接結合しないので、これらの結果は、125I−VEGF165のVEGF
165R/NP−1への直接的な結合を阻害することが、125I−VEGF165のK
DRへの間接的な結合を阻害することを示唆する。図8、9および10の結果を
組み合わせると、VEGF165とVEGF165R/NP−1との相互作用が、KD
RとVEGFの相互作用を増強することを示唆する。
【0091】
(ニューロピリン−1(neuropilin−1)は、アイソフォーム−特
異的VEGF165レセプターである)
最近、本発明者らは、VEGF165と結合するがVEGF121とは結合せず、従
って本発明者らがVEGF165Rと名づけた新規な130〜135kDaのVE
GF細胞表面レセプターを記載した(Sokerら、J.Biol.Chem.
271、5761−5767(1996))。本発明者らは、現在そのクローニ
ングしたcDNAを発現するVEGF165Rを精製し、そしてこれがヒトニュー
ロピリン−1(NP−1)と同一であることを示した(HeおよびTessie
r−Lavigne、Cell 90 739−751(1997))。VEG
165Rが、NP−1と同一であることの証拠およびNP−1が、VEGF165
レセプターとして機能することの証拠は、以下のようである:i)ヒトMDA−
MB−231(231)細胞からのVEGF165Rタンパク質の精製は、VEG
F親和性を用い、SDS−PAGEおよび銀染色法により130〜140kDa
の二重線を得た。両方のタンパク質のN末端配列決定から、マウスNP−1との
高い相同性が実証された、18のアミノ酸の同じN末端配列が得られた(Kaw
akamiら、J.Neurobiol.29、1〜17(1995));ii
)本発明者らは、ヒト231細胞からVEGF165Rを精製した後、ヒトNP−
1のクローニングを報告し(HeおよびTessier−Lavigne、Ce
ll 90、739−751(1997))、そしてヒトVEGF165RのN末
端配列が、ヒトNP−1のN末端領域の配列と同一であることを見出した;ii
i)231細胞cDNAライブラリーを用いた発現クローニングによりいくつか
のcDNAクローンを単離し、そしてそれらの配列は、ヒトNP−1cDNA配
列と同一であった(HeおよびTessier−Lavigne、Cell 9
0、739−751(1997))。精製および発現クローニングの組み合わせ
は、発現クローニングのみを用いた以前の研究よりも、NP−1タンパク質のN
末端の明白な同定を可能にする利点を有する(HeおよびTessier−La
vigne、Cell 90、739−751(1997);Kolodkin
ら、Cell 90、753−762(1997));iv)NP−1遺伝子発
現のノザンブロット分析は、以前の125I−VEGF165架橋実験と一致した(S
okerら、J.Biol.Chem.271、5761−5767(1996
))。VEGF165がVEGF165Rに結合した細胞は、比較的多量のNP−1
m RNAを合成したが、一方、たとえあるにしても非常に少量のVEGF165
結合を示す細胞は、たとえあるにしても大してNP−1 mRNAを合成しなか
った;v)NP−1がPAE細胞において発現された場合、親細胞ではないがト
ランスフェクトされた細胞が、VEGF121とは結合できないが、VEGF165
結合し得、このことは、前述のHUVECおよび231細胞が示した、アイソフ
ォームの結合特性と一致した(Sokerら、J.Biol.Chem.271
、5761−5767(1996))。さらに、NP−1を発現するPAEとの
125I−VEGF165結合のKdは、約3×10-10Mであり、以前の231細胞お
よびHUVECの結合Kd値である2〜2.8×10-10Mと一致した(Soke
rら、J.Biol.Chem.271、5761−5767(1996));
およびvi)VEGF165のNP−1ポスト−トランスフェクションを発現する
細胞との結合は、このリガンドのHUVECおよび231細胞への結合であるの
で、ヘパリンの存在下においてより効果的であった(Gitay−Gorenら
、J.Biol.Chem.267、6093−6098(1992);Sok
erら、J.Biol.Chem.271、5761−5767(1996))
。これらの結果を合わせると、VEGF165RがNP−1と同一であるというこ
とだけでなくアイソフォーム特異的な方法によって、VEGF165を結合する機
能的レセプターであるということを示す。従って、本発明者らは、このVEGF
レセプターをVEGF165R/NP−1と命名した。
【0092】
VEGF165R/NP−1 cDNAの発現クローニングに加えて、別のヒト
cDNAクローンを、単離した。これから予測されるアミノ酸配列は、VEGF
165R/NP−1のアミノ酸配列と47%相同性であり、そして最近クローニン
グされた、ラットニューロピリン−2(NP−2)と90%を超えて相同であっ
た(Kolodkinら、Cell 90、753−762(1997))。N
P−2は、コラプシン/セマフォリンファミリーのメンバーを選択的に結合する
(Chenら、Neuron 19、547−559(1997))。
【0093】
NP−1が、VEGF165のレセプターとして働くという発見は、NP−1は
、以前胚の発達中に神経系とのみ関連すると示されており(Kawakamiら
、J.Neurobiol.29、1−17(1995);Takagiら、D
ev.Biol.170、207−222(1995))、そしてごく最近、コ
ラプシン/セマファリンファミリーのメンバーのレセプターとして働くことが発
見された(HeおよびTessier−Lavigne、Cell 90、73
9−751(1997);Kolodkinら、Cell 90、753−76
2(1992))ために驚きであった。NP−1は、初めXenopusの視覚
系の発達において同定された、130〜140kDaの膜貫通糖タンパク質であ
る(Takagiら、Dev.Biol.122、90−100(1987);
Takagiら、Neuron 7、295−307(1991))。神経系に
おけるNP−1の発現は、発達中および特にアクソンが神経網を活発に形成して
いる場合、それらの発達段階に関連して、空間的および時間的に高く制御される
(Fujisawaら、Dev.Neurosci.17、343−349(1
995);Kawakamiら、J.Neurobiol.29、1−17(1
995);Takagiら、Dev.Biol.170、207−222(19
95))。NP−1タンパク質は、ニューロンのアクソンとは関連があるが、小
孔とは関連がない(Kawakamiら、J.Neurobiol.29、1−
17(1995))。機能的には、ニューロピリンは、インビトロにおいて視覚
神経繊維の神経突起成長の促進を示し(Hirataら、Neurosci.R
es.17、159−169(1993))、そして細胞の接着性の促進を示し
た(Tagakiら、Dev.Biol.170、207−222(1995)
)。標的化されたNP−1の破壊によって、末梢神経系の遠心性繊維の軌道に重
篤な異常を生じる(Kitsukawaら、Neuron 19、995−10
05(1997))。これらの研究にもとづいて、NP−1が、アクソンの成長
およびガイダンスにおいて神経細胞認識分子の役割を果たしていることが示唆さ
れた(Kawakamiら、J.Neurobiol.29、1−17(199
5);HeおよびTessier−Lavigne、Cell 90、739−
751(1997);Kitsukawaら、Neuron 19、995−1
005(1997);Kolodkinら、Cell 90、753−762(
1997))。
【0094】
本発明者らの結果は、最初、Xenopus、ニワトリ、およびマウスにおい
て発現しているNP−1が、発達および初期の出生後段階を制限していることを
示した初期の研究(Fujisawaら、Dev.Neurosci.17、3
43−349(1995);Kawakamiら、J.Neurobiol.2
9、1−17(1995);Takagiら、Dev.Biol.170、20
7−222(1995))とは逆に、VEGF165R/NP−1がまた、成体組
織においても発現していることを示した。例えば、マウスにおいてNP−1は、
発達中の神経系で9日目に背根神経節において発現され始め、15日目に中断さ
れる(Kawakamiら、J.Neurobiol.29、1−17(199
5))。本発明者らのヒト成体組織のノーザンブロット分析が、心臓、胎盤、肺
、肝臓、骨格筋、腎臓および膵臓において、VEGF165R/NP−1 mRN
A転写産物の相対的に高レベルを実証した。興味深いことに、マウス神経系の発
現の研究と一致して、成人の脳において非常に少ない相対的な発現がみられる(
Kawakamiら、J.Neurobiol.29、1−17(1995))
。VEGF165R/NP−1はまた、ECおよび種々の腫瘍由来の細胞を含む培
養された多くの非神経細胞株において発現される。これらの細胞におけるVEG
165R/NP−1の考えられる機能は、以下に考察される脈管形成を媒介して
いる可能性がある。
【0095】
さらに、NP−1は、ラットE14脊髄および背根神経節(DRG)組織から
得られたcDNAライブラリーの発現クローニングによりコラプシン/セマフォ
リンファミリーのレセプターとして同定された(HeおよびTessier−L
avigne、Cell 90、739−751(1997);Kolodki
nら、Cell 90、753−762(1997))。コラプシン/セマフォ
リン(コラプシン−D−1/セマIII/セムD)は、反発的な成長円錐および
アクソンガイダンスにおいて機能する膜貫通および分泌糖タンパク質の大きなフ
ァミリーを含む(Kolodkinら、Cell 75、1389−1399(
1993))。DRG細胞のセマIIIの反発的な効果は、抗NP−1抗体によ
りブロックされた(HeおよびTessier−Lavigne、Cell 9
0、739−751(1997);Kolodkinら、Cell 90、75
3−762(1997))。NP−1に結合しているセマIIIのKdは0.1
5〜3.25×10-10Mであり(HeおよびTessier−Lavigne
、Cell 90、739−751(1997);Kolodkinら、Cel
l 90、753−762(1997))、これは約3×10-10Mである、V
EGF165R/NP−1に結合するVEGF165の値と類似している。これらの結
果は、明らかに異なる生物学的活性を有する2つの構造的に異なるリガンド、一
方のEC移動および増殖のVEGF誘導刺激、および他方の神経細胞のセマII
I誘導相反化学斥力が、同じレセプターに結合し、類似した親和力を有すること
を示す。興味深い疑問は、2つのリガンドがVEGF165R/NP−1の同じ部
位に結合するか、または異なった部位に結合するかである。VEGF165R/N
P−1は、その外部ドメインに5つの別々のドメインを有し、そしてそれは、N
P−1のタンパク質モジュールのこの多様性は、NP−1のための複数の結合リ
ガンドの可能性と一致することが示唆されてきた(Takagiら、Neuro
n 7、295−307(1991);Feinerら、Neuron 19
539−545(1997);HeおよびTessier−Lavigne、C
ell 90、739−751(1997))。予備的な分析は、セマIIIと
VEGF165R/NP−1に結合するVEGFの原因であるVEGFエキソン7
との間の配列相同性で全く大きな値を示さなかった(Sokerら、J.Bio
l.Chem.271、5761−5767(1996))。しかし、それらは
、2つのリガンド間においていくつかの3次元構造が類似し得る。神経および血
管の両方が、分岐および方向性移動を示すので、VEGF165が、いくらかの神
経ガイダンス活性を示すのかどうか、およびセマIIIが、いくらかのEC成長
因子活性を有するのかどうかという疑問がまた生じる。これらの可能性は、いま
だ調べられていなかった。しかし、VEGFは、最適なEC成長因子活性のため
に2つのレセプター、KDRおよびNP−1を必要とし得(Sokerら、J.
Biol.Chem.272、31582−31588(1997))、そして
セマIIIは、NP−1およびまだ決定されていない最適な化学斥力活性のため
の高親和性レセプターを必要とし得(Feinerら、Neuron 19、5
39−545(1997);HeおよびTessier−Lavigne、Ce
ll 90、739−751(1997);Kitsukawaら、Neuro
n 19、995−1005(1997))、その結果、NP−1単独での存在
は、これらのリガンドの新規な生物学的活性を示すために十分ではあり得ない。
さらなる研究は、神経発生を制御するメカニズムと脈管形成を制御するメカニズ
ムとの間にいくらかの関係があるのかどうかについて決定する。
【0096】
(脈管形成におけるVEGF165R/NP−1の役割)
VEGF165R/NP−1は、VEGF165のKDRへの結合を制御し、マウス
でのKDRノックアウト実験によって確かめられた脈管形成の重要なレギュレー
ターであるRTKとの高い親和性を示す(Shalabyら、Nature 3
76、62−66(1995))。KDRのVEGF165に対する親和性は、V
EGF165R/NP−1に対する親和性よりも約50倍高い(Gitay−Go
renら、J.Biol.Chem.287、6003−6096(1992)
;Waltenbergerら、J.Biol.Chem.269、26988
−26995(1994))。VEGF165R/NP−1およびKDRが、同時
発現する場合、125I−VEGF165のKDRへの結合は、KDR単独を発現する
細胞発現と比較して約4倍まで増強される。結合の増強は、VEGF165R/N
P−1およびKDRを同時発現する安定したクローン(PAE/KDR/NP−
1細胞)においてそしてまた、過渡的にVEGF165R/NP−1クローンの選
択が起こらないcDNAとトランスフェクトしたPAE/KDR細胞において実
証され得る。逆に、PAE/KDR/NP−1細胞における125I−VEGF165
のVEGF165R/NP−1への結合が、VEGFエキソン7+8(GST−E
x7+8)を含むGST融合タンパク質によって、完全に阻害される場合、KD
Rへの結合は、実質的に阻害され、KDR単独を発現する細胞において観察され
るレベルに低下する。融合タンパク質は、VEGF165R/NP−1に直接結合
するが、KDRには直接結合することができない(Sokerら、J.Biol
.Chem.272、31582−31588(1997))。理論に束縛され
ることを望まないが、本発明者らは、VEGF165は、エキソン7にコードされ
たドメインを介してVEGF165R/NP−1に結合し、そしてVEGF165は、
エキソン4にコードされたドメインを介してKDRとの結合を促進すると考えて
いる(図11)。その比較的高いレセプター/細胞数(約0.2〜2×105
を有するVEGF165R/NP−1(Gitay−Gorenら、J.Biol
.Chem.287、6003−6096(1992);Sokerら、J.B
iol.Chem.271、5761−5767(1996))は、細胞表面上
のVEGF165を濃縮する役割を果たし、それゆえ、KDRとVEGF165のより
強い接近を提供するようである。あるいは、VEGF165R/NP−1との結合
により、VEGF165は、KDRとの結合を増強する構造変化をうける。最終的
な結果は、KDRシグナル伝達の上昇、およびVEGF活性の増加であった。本
発明者らは、KDRとの結合の増強を実証し得るが、現在までのところ、本発明
者らは、PAE/KDR細胞と比較した、PAE/KDR/NP−1細胞に対す
るVEGFの分裂促進性の増強は実証し得なかった。理由の1つは、これらの細
胞株が、HUVECが行なう場合のように、VEGFに応答して容易に増殖しな
いことである(Waltenbergerら、J.Biol.Chem.269
、26988−26995(1994))。それにもかかわらず、本発明者らは
、KDRおよびVEGF165R/NP−1の両方に結合するVEGF165が、KD
Rにのみ結合するVEGF121よりも、HUVECのよりよい分裂促進因子であ
ることを見出した(Keytら、J.Biol.Chem.271、5638−
5646(1996b);Sokerら、J.Biol.Chem.272、3
1582−31588(1997))。さらに、GST−Ex7+8によるHU
VECにおいてのVEGF165のVEGF165R/NP−1への結合阻害は、KD
Rへの結合を阻害し、そしてまた、VEGF165により誘導されたHUVEC増
殖を阻害し、VEGF121により誘導されたレベルよりも低くする(Soker
ら、J.Biol.Chem.272、31582−31588(1997))
。これらの結果を組み合わせると、VEGF165の媒介におけるVEGF165R/
NP−1の役割が示唆されるが、VEGF121の分裂促進因子活性における役割
は示唆しない。二重レセプターが、成長因子の結合および活性を制御するという
概念は、以前TGF−β、bFGFおよびNGFにおいて実証されている(Lo
pez−Casillasら、Cell 67、785−795(1991);
Yayonら、Cell 64、841−848(1991);Barbaci
d、Curr.Opin.Cell Biol. 7、148−155(199
5))。
【0097】
VEGF165R/NP−1と脈管形成との間の別の関連は、NP−1が、トラ
ンスジェニックマウスで局所的に過剰発現したという研究から明らかになる(K
itsuskawaら、Develop.121、4309−4318(199
5))。NP−1の過剰発現は、子宮内において、胎齢15.5日以前に胚の致
死およびマウスの死を引き起こし、そしてそのうち最も良く生き残ったものは、
NP−1が、低レベルで発現していた。NP−1を過剰発現するマウスは、血管
、心臓、および手足のような数の限られた非神経組織において形態学的な異常を
示した。NP−1は、ECおよびECの周囲の間葉細胞の両方において発現した
。胚は、正常な対応物と比較して、過剰なそして異常な毛細血管および血管を有
し、そしていくらかの場合において拡張した血管も同様に有していた。いくつか
のキメラマウスが、主に頭部や首に出血を示した。これらの結果は、VEGF16
5R/NP−1の局所的な過剰発現が、VEGF165の不適切な活性を引き起こし
、その結果、脈管形成の増強および/または異常を媒介する可能性と一致する。
NP−1と脈管形成との間の関連についての証拠の別の一部は、NP−1遺伝子
の破壊を標的化されたマウスにおいて胚が、末梢神経系の重篤な異常を有したが
、子宮内で10.5から12.5胎齢で死亡したのは、ほとんどがおそらく心臓
血管系における異常のためであるということを示す最近の報告に起因する(Ki
tsukawaら、Neuron 19、995−1005(1997))。
【0098】
(VEGF165R/NP−1は、腫瘍由来細胞と関連している)
本発明者らが今までに検出した最も高い程度のVEGF165R/NP−1発現
は、HUVECにおいて生じるよりもさらに、231乳癌細胞およびPC3前立
腺癌細胞のような腫瘍由来細胞において生じた。この腫瘍細胞は、大量なレベル
のVEGF165R/NP−1 mRNAおよび約200,000のVEGF165
セプター/細胞を発現する(Sokerら、J.Biol.Chem.271、
5761−5767(1996))。一方、これらの腫瘍細胞は、KDRまたは
Flt−1を発現せず、その結果、VEGF165R/NP−1は、これらの細胞
と関連する唯一のVEGFレセプターである。それゆえ、この腫瘍細胞は、VE
GF165R/NP−1が、KDRのバックグラウンドの欠如におけるVEGF165
の機能的なレセプターかどうかを試験するために有用である。現在までのところ
、本発明者らは、VEGF165R/NP−1が、レセプターチロシンのリン酸化
により測定された腫瘍由来細胞におけるVEGF165シグナルを媒介することを
示し得ない。それにもかかわらず、VEGF165は、生存、分化または、運動性
の増加のようなまだ活性を決定していないが、腫瘍細胞でいくらかの誘導による
効果を有し得る。最近の報告で、神経膠腫細胞が、VEGF165に結合するが、
VEGF121には十分に結合しない190kDaのタンパク質を発現することを
実証した(Omuraら、J.Biol.Chem.272、23317−23
322(1997))。チロシンリン酸化の刺激のないことは、このレセプター
へのVEGF165の結合において実証され得る。190kDaのアイソフォーム
特異的レセプターが、VEGF165R/NP−1と関連があるかどうかについて
は、まだ知られていない。
【0099】
VEGF165R/NP−1は、VEGF165のための保存機能および隔絶機能を
有し得る。VEGF165が、腫瘍細胞により産生され、そしてエキソン7にコー
ドされるドメインを介して細胞上のVEGF165R/NP−1に結合することが
想定され得る(Sokerら、J.Biol.Chem.271、5761−5
767(1996))。次いで、蓄えられたVEGF165は、パラクリン様式で
放出され腫瘍脈管形成を刺激し得る。あるいは、VEGF165R/NP−1は、
VEGF165が、エキソン7にコードされたドメインを介した腫瘍細胞上のVE
GF165R/NP−1に結合し、そしてまたをエキソン4にコードされたドメイ
ンを介して近傍のEC上のKDRに結合するジャクスタクリン効果を媒介し得る
(Keytら、J.Biol.Chem.271、5638−5646(199
6b))。そのようなメカニズムが、ECを誘引する腫瘍細胞のためにより効率
的な方法を生じ得、それにより、腫瘍脈管形成を増強する。
【0100】
要約すると、本発明者らは、独立した精製および発現クローニング方法により
、VEGFアイソフォーム特異的レセプターであるVEGF165Rが、神経系の
胚発生において役割を果たすとして、そしてコラプシン/セマフォリンのレセプ
ターであるとして以前に同定された細胞表面タンパク質である、NP−1と同一
であることを実証した。さらに、VEGF165R/NP−1への結合は、VEG
165の、ECおよび腫瘍細胞上のKDRへの結合を増強する。
【0101】
(実験の理論的根拠)
本発明者らは、腫瘍細胞ニューロピリン−1が、腫瘍細胞の運動性を媒介し、
そしてそれにより転移することを発見した。ボイデンチャンバー運動性アッセイ
において、VEGF165(50ng/ml)が、用量応答様式で最大で2倍の刺
激で231乳癌細胞の運動性を刺激する(図15A)。一方、VEGF121は、
これらの細胞の運動性に効果を有さなかった(図15B)。231細胞は、KD
RまたはFlt−1を発現しないことから、これらの結果は、腫瘍細胞が、直接
VEGF165と応答することを示唆し、そしてVEGF165が、ニューロピリン−
1を介したシグナル腫瘍細胞であり得ることを示唆する。癌細胞の運動性を誘導
するVEGF165を媒介するための可能性のある候補は、PI3−キナーゼ(P
I3−K)(Carpenterら、(1996)Curr.Opin.Cel
l Biol.8:153−158)である。231細胞は、KDRまたはFl
t−1を発現しないことから、これらの結果は、腫瘍細胞が直接VEGF165
応答することを示唆し、そしてVEGF165が、ニューロピリン−1を介したシ
グナル腫瘍細胞であり得ることを示唆する。
【0102】
他のタイプの証拠は、ニューロピリン−1発現が、腫瘍細胞の運動性と関連し
得るということである。本発明者らは、低い運動性および低い潜在的転移性を有
するAT2.1細胞、および高い運動性および転移性を有するAT3.1細胞と
いう、ダンニング(Dunning)ラット前立腺癌細胞の2つの改変体につい
て分析した。架橋分析およびノーザンブロット分析は、AT2.1細胞は、ニュ
ーロピリン−1を発現しないが、AT3.1細胞は、豊富にニューロピリン−1
を発現し、VEGF165と結合し得ることを示す(図16)。腫瘍切片の免疫染
色により、AT3.1におけるニューロピリン−1の発現を確かめたが、AT2
.1腫瘍では、確認できなかった。さらに、免疫染色は、皮下のAT3.1およ
びPC3腫瘍において、ニューロピリン−1を発現する腫瘍細胞が、腫瘍/真皮
の境界の前面に優先的に侵入するのが見出されることを示す。より直接的に、ニ
ューロピリン−1の発現が、運動性の増強と関係しているのかどうかを決定する
ために、ニューロピリン−1をAT2.1細胞において過剰発現させた(図17
)。ニューロピリン−1を過剰発現する3つの安定なAT2.1クローン細胞が
、ボイデンチャンバーアッセイにおいて運動性を増強した。これらの結果は、A
T2.1細胞におけるニューロピリン−1の過剰発現が、それらの運動性を増強
することを示す。合わせて考えると、腫瘍細胞上でのニューロピリン−1の発現
が、運動性、転移性の表現型に関係しているようである。
【0103】
(実施例2)
(NP−1およびsNP−2の構築)
ニューロピリン−1およびニューロピリン−2の可溶性形態をコードしている
cDNAを、PC3細胞mRNAから合成したオリゴdT−プライマーcDNA
ライブラリーからクローニングした。
【0104】
(可溶性ニューロピリン−1(sNP−1)のcDNAクローニング)
sNP−1のcDNAは、エキソンとエキソンの境の位置のアミノ酸641位
の後のb2とcドメインとの間の全長のNP−1 cDNAから逸脱する。sN
P−1クローンの3’末端は、3つの新規なアミノ酸および翻訳終止コドンをコ
ードする28bpのイントロン配列を有する。
【0105】
b1ドメイン中から設計された、オリゴヌクレオチド(GAAGTATACG
GTTGCAAGATA 配列番号16)を、sNP−1 cDNAの3’末端
をクローニングするために3’RACE(cDNA末端の急速な増幅)に用いた
。sNP−1 cDNAの全長を、sNP−1のオープンリーディングフレーム
(ORF)の5’末端(GCGTTCCTCTCGGATCCAGGC 配列番
号17)および3’末端(CAGGTATCAAATAAAATAC 配列番号
18)のプライマーを用いてRT−PCRによりPC3ライブラリーから続いて
クローニングした。sNP−1 cDNAを、sNP−1の43位と44位との
間のアミノ酸のa1ドメインのN末端におけるHisおよびc−mycドメイン
(アミノ酸 HHHHHHQQKLISQQNL 配列番号23)でタグ化した
。完全にタグ化したsNP−1 cDNAを、哺乳動物の発現プラスミドである
pcDNA3.1にサブクローニングした。sNP−1のヌクレオチド配列およ
びアミノ酸配列を、それぞれ配列番号5および6として配列表に示す。
【0106】
(可溶性ニューロピリン−2(sNP−2)cDNAクローニング)
sNP−2 cDNAが、エキソンとエキソンの境の位置の、アミノ酸547
位の後のb2ドメイン中のNP−2 cDNAの全長から逸脱する。sNP−2
クローンの3’末端が、8つの新規なアミノ酸および翻訳終止コドンをコードす
る146bpのイントロン配列を有する。
【0107】
b1ドメイン中から設計された、オリゴヌクレオチド(GGCTGCCGGG
TAACAGATGC 配列番号20)を、sNP−2 cDNAの3’末端を
クローニングするために3’RACE(cDNA末端の急速な増幅)に用いた。
sNP−2 cDNAの全長を、sNP−2のオープンリーディングフレーム(
ORF)の5’末端(ATGGATATGTTTCCTCTC 配列番号21)
および3’末端(GTTCTTGGAGGCCTCTGTAA 配列番号22)
のプライマーを用いてRT−PCRによりPC3ライブラリーから続いてクロー
ニングした。sNP−2 cDNAを、sNP−2の31位と32位との間のア
ミノ酸のa1ドメインのN末端におけるHisおよびc−mycドメイン(アミ
ノ酸 HHHHHHQQKLISQQNL 配列番号19)でタグ化した。完全
にタグ化されたsNP−2 cDNAを、哺乳動物の発現プラスミドであるpc
DNA3.1にサブクローニングした。sNP−2のヌクレオチド配列およびア
ミノ酸配列を、それぞれ配列番号7および8として配列表に示す。
【0108】
(実施例3)
(可溶性NP−1の調製(ドメインABおよびC))
1.BamHI部位(100塩基目)とXbaI部位(4687塩基目)との
間のNP−1の配列を、pBluscript II KS(+)(Strat
agene、La Jola CA)のBamHI部位とXbaI部位との間に
サブクローニングして、pBS−NP1を得た。
【0109】
2.PCRを、NP−1配列において以下のプライマーを用いて行なった:
プライマー1(正方向):NP−1の2200塩基目のNdeI部位(太字およ
び下線)
【0110】
【化1】


プライマー2(逆方向):6ヒスチジン(his−tag)およびXbaI部位
(太字および下線)を含むNP−1の2823塩基目の膜貫通膜ドメインの外
【0111】
【化2】


PCR DNA産物(およそ、600bp)を、NdeIおよびXbaIを用い
て消化し、そしてアガロースゲルから精製した。プラスミドpBS−NP1を、
NdeIおよびXbaIを用いて消化し、そしてNP−1の細胞外部位を含む大
きなフラグメントを、アガロースゲルから精製し、そしてベクターとして用いた
。上述のPCR産物およびベクターのライゲーションを行ない、そして得られた
プラスミドを、pBS−sNPhisと名づけた。
【0112】
3.プラスミドpBS−sNPhisを、BamHIおよびXbaIを用いて
消化し、そしてNP−1の細胞外部分を含むフラグメント(his−tag含む
)を、pCPhygro(上述の実施例およびSokerら、Cell 92:
735(1998)に記載)のBamHIおよびXbaI部位にサブクローニン
グしてpCPhyg−sNPhisを得た。
【0113】
4.プラスミドpCPhyg−sNPhisを、CHO細胞にトランスフェク
トし、そしてハイグロマイシン耐性クローンを選択し、そして可溶性NP−1の
発現を試験した。可溶性NP−1を、ニッケルセファロースビーズを用いて培地
より精製した。
【0114】
5.以下の手法により、クローンにおけるsNP−1の発現を試験した。培地
を、24時間馴化し、そして馴化した培地を、24時間レクチンConAと共に
インキュベートした。ConA結合原料をSDS−PAGEおよびニューロピリ
ン−1のAドメインに対する抗体を用いるウェスタンブロッティングによって分
析した。
【0115】
本明細書中を通して引用される参考文献は、本明細書中に参考として援用され
る。
【0116】
本発明は、特定の実施態様についての参照とともに記載されている。しかし、
この適用は、その添付の請求項の精神および範囲を逸脱せずに、当業者によって
なされ得るそれらの変更および置換を包含することが意図される。
(配列表)
【表1】


【表2】


【表3】


【表4】


【表5】


【表6】


【表7】


【表8】


【表9】


【表10】


【表11】


【表12】


【表13】


【表14】

【図面の簡単な説明】
【0117】
【図1】231細胞からのVEGF165Rの精製。125I−VEGF165(5ng/ml)を231細胞のレセプターに結合、かつ、架橋し、SDS−PAGEおよびオートラジオグラフィーにより分析した(レーン1)。VEGF165Rを、Con AおよびVEGF165アフィニティーカラムクロマトグラフィーで精製し、そしてSDS−PAGEおよび銀染色で分析した(レーン2)。二本の顕著なバンドが検出され(矢印)、そして別個にN末端を配列決定した。これらのN末端の18アミノ酸配列を矢印の右側に示した。公開されたヒトおよびマウスのニューロピリンのN末端配列(Kawakamiら、J.Neurobiol.、29、1−17(1995);HeおよびTessier−Lavigne、Cell 90、739−751 1997)を以下に示す(配列番号9および10)。
【図2A】発現クローニングによるVEGF165R cDNAの単離。125I−VEGF165に結合しているCOS7細胞の顕微鏡写真(暗視野照明)。トランスフェクトされたCOS7細胞に125I−VEGF165を結合させ、次いで洗浄、固定し、そして写真乳剤でオーバーレイし、実施例に記載されるようにして現像した。 (2A)COS7細胞を、約3×103クローンを示す主要プラスミドプール(231細胞ライブラリーの#55)でトランスフェクトし、そして第一ラウンドのスクリーニングにおいて、125I−VEGF165に結合している1つのCOS7細胞を示す。
【図2B】発現クローニングによるVEGF165R cDNAの単離。125I−VEGF165に結合しているCOS7細胞の顕微鏡写真(暗視野照明)。トランスフェクトされたCOS7細胞に125I−VEGF165を結合させ、次いで洗浄、固定し、そして写真乳剤でオーバーレイし、実施例に記載されるようにして現像した。 (2B)第3ラウンドのスクリーニング後に、125I−VEGF165に結合している、単一の陽性cDNAクローン(A2)でトランスフェクトされたいくつかのCOS7細胞。
【図3】ヒトVEGF165R/NP−1の推定アミノ酸配列(配列番号2)。VEGF165R/NP−1の読み取り枠(クローンA2(6.5kbの完全挿入片サイズ))の推定923アミノ酸配列を示す。推定のシグナルペプチド配列(アミノ酸1〜21)および推定の膜貫通領域(アミノ酸860〜883)を囲みで示す。N末端アミノ酸配列決定で得られたアミノ酸配列(図3、アミノ酸22〜39)を下線で示す。矢印は、精製したVEGF165R/NP−1のN末端配列とそのcDNA配列との比較に基づいて、切断および除去するシグナルペプチドを示している。本明細書で報告したヒトVEGF165R/NP−1の配列は、本発明者らが、Glu26よりもむしろLys26、ならびにGlu855よりもむしろAsp855を見い出すという点において、Heら(HeおよびTessier−Lavigne、Cell 90、739−751 1997)の報告したものと異なる。しかし、Lys26およびAsp855はマウスおよびラットのVEGF165R/NP−1において見出される(Kwakamiら、J.Neurobiol.29、1〜17(1995);HeおよびTessier−Lavigne,Cell 90,739〜751 1997)。
【図4A】図4Aおよび4Bは、ヒトVEGF165R/NP−1(配列番号2)およびNP−2(配列番号4)の推定アミノ酸配列の比較を示す。VEGF165R/NP−1およびNP−2の推定した読み取り枠のアミノ酸配列を、DNASISプログラムを使用して並べる。両方の読み取り枠に同一のアミノ酸配列を斜線で示す。2つの配列間の全体の相同性は43%である。
【図4B】図4Aおよび4Bは、ヒトVEGF165R/NP−1(配列番号2)およびNP−2(配列番号4)の推定アミノ酸配列の比較を示す。VEGF165R/NP−1およびNP−2の推定した読み取り枠のアミノ酸配列を、DNASISプログラムを使用して並べる。両方の読み取り枠に同一のアミノ酸配列を斜線で示す。2つの配列間の全体の相同性は43%である。
【図5】ヒトECおよび腫瘍由来細胞株におけるVEGF165R/NP−1発現のノザンブロット分析。HUVEC(レーン1)ならびに示されるような腫瘍由来乳ガン、前立腺ガンおよび黒色腫細胞株(レーン2〜8)から調製した全RNA試料を、1%アガロースゲルで分離し、GeneScreenナイロン膜にブロットした。その膜を、32P標識したVEGF165R/NP−1 cDNAでプローブし、そしてX線フィルムに露光した。ブロットする前にゲルをエチジウムブロマイド染色し、等量のRNAであることを明らかした。約7kbの主要な種のVEGF165R/NP−1 mRNAが、いくつかの細胞株で検出された。
【図6】成体ヒト組織におけるVEGF165R/NP−1およびKDR mRNAのノザンブロット分析。多数のヒトmRNA試料(Clonetech)を含む、先に作製したノザンブロット膜を図5に記載したようにして32P標識したVEGF165R/NP−1 cDNAでプローブし(上段)、次いで剥がし、そして32P標識したKDR cDNAで再プローブした(下段)。
【図7A】VEGF165R/NP−1へのVEGF165結合のスキャッチャード分析。(7A)48ウェルディッシュ内で、ヒトVEGF165R/NP−1 cDNAでトランスフェクトしたPAE細胞(PAE/NP−1細胞)のサブコンフルエントの培養物に、125I−VEGF165(0.1〜50ng/ml)増加量を加えた。非特異的な結合を、200倍の過剰の標識されていないVEGF165との競合により決定した。結合後、細胞を洗浄し、溶解し、そしてγカウンターを使用して細胞に会合する放射活性を決定した。
【図7B】VEGF165R/NP−1へのVEGF165結合のスキャッチャード分析。 (7B)7Aに示される結合データを、スキャッチャードの方法によって分析し、そしてLIGANDプログラム(Munson and Rodbard,1980)を用いて最も一致するプロットを得た。PAE/NP−1細胞は、1細胞あたり約3×105のVEGF165結合部位を発現し、125I−VEGF165を3.2×10-10MのKdで結合する。
【図8】VEGF165およびVEGF121の、VEGF165R/NP−1および/またはKDRを発現するPAE細胞への架橋。HUVEC(レーン1)、PC3(レーン2)、PAE(レーン3および7)、ヒトVEGF165R/NP−1 cDNAでトランスフェクトしたPAE細胞のクローン(PAE/NP−1)(レーン4および8)、KDRでトランスフェクトしたPAE細胞のクローン(PAE/KDR)(レーン5および9)、およびヒトVEGF165R/NP−1 cDNAでトランスフェクトしたPAE/KDR細胞のクローン(PAE/KDR/NP−1)(レーン6および10)のサブコンフルエント培養物に、125I−VEGF165(5ng/ml)(レーン1〜6)または125I−VEGF121(10ng/ml)(レーン7〜10)を結合させた。この結合は1μg/mlのヘパリン存在下で行った。2時間のインキュベートの終了時に、細胞表面に125I−VEGFの各アイソフォームを化学的に架橋させた。この細胞を溶解し、6%SDS−PAGEでタンパク質を分離した。このポリアクリルアミドゲルを乾燥し、X線フィルムに露光した。実線矢印は125I−VEGFおよびKDRを含む放射標識された複合体を示し、白の矢印は125I−VEGFおよびVEGF165R/NP−1を含む放射標識された複合体を示す。
【図9】VEGF165R/NP−1を一過性に同時発現するPAE/KDR細胞へのVEGF165の架橋。PAE/KDR細胞を、「実験手順」に記載したようにpCPhygroまたはpCPhyg−NP−1プラスミドでトランスフェクトし、6cmディッシュ中で3日間増殖させた。125I−VEGF165(5ng/ml)を、親のPAE/KDR細胞(レーン1)、pCPhygroベクターコントロールでトランスフェクトしたPAE/KDR細胞(V)(レーン2)、pCPhyg−VEGF165R/NP−1プラスミドでトランスフェクトしたPAE/KDR細胞(VEGF165R/NP−1)(レーン3)、およびHUVEC(レーン4)に結合させ、架橋した。この結合は1μg/mlのヘパリン存在下で行った。この細胞を溶解し、図8のようにして6%SDS−PAGEでタンパク質を分離した。実線矢印は125I−VEGF165およびKDRを含む放射標識された複合体を示す。白の矢印は125I−VEGF165およびVEGF165R/NP−1を含む放射標識された複合体を示す。
【図10】125I−VEGF165のVEGF165R/NP−1への結合の阻害は、125I−VEGF165のKDRへの結合に干渉する。125I−VEGF165(5ng/ml)を、35mmのディッシュ中で、ヒトVEGF165R/NP−1 cDNAでトランスフェクトしたPAE細胞(PAE/NP−1)(レーン1および2)、PAE/KDR細胞(レーン3および4)、およびヒトVEGF165R/NP−1 cDNAでトランスフェクトしたPAE/KDR細胞(PAE/KDR/NP−1)(レーン5および16)のサブコンフルエント培養物に結合させた。この結合は、25μg/ml GST−Ex7+8の存在下(レーン2、4、および6)、または非存在下(1、3、および5)で行った。ヘパリン(1μg/ml)を各々のディッシュに加えた。2時間のインキュベートの終了時に、細胞表面に125I−VEGF165を化学的に架橋させた。この細胞を溶解し、図9のようにして6%SDS−PAGEでタンパク質を分離した。実線矢印は125I−VEGF165およびKDRを含む放射標識された複合体を示し、白の矢印は125I−VEGF165およびVEGF165R/NP−1を含む放射標識された複合体を示す。
【図11】図11A〜C。VEGF165のKDRへの結合のVEGF165R/NP−1調節に関するモデル。(11A)KDRのみを発現する細胞。(11B)KDRおよびVEGF165R/NP−1を同時発現する細胞。(11C)GST−Ex7+8融合タンパク質存在下でKDRおよびVEGF165R/NP−1を同時発現する細胞。 1つのKDRレセプターまたは1つのKDR−VEGF165R/NP−1対を上部パネルに示す。いくつかのレセプターを示す拡大図を下部パネルに示す。VEGF165は、エキソン4を介してKDRに結合、およびエキソン7を介してVEGF165R/NP−1に結合する(Keytら、J.Biol.Chem.271,5638〜5646(1996b);Sokerら、J.Biol.Chem.271,5761〜5767(1996))。長方形のVEGF165分子は、KDRに効率的に結合しない、最適ではない高次構造を示すが、丸みを帯びたVEGF165分子は、結合部位により良好に一致する高次構造を示す。KDRのみを発現する細胞においては、VEGF165は最適でない様式でKDRに結合する。KDRおよびVEGF165R/NP−1を同時発現する細胞においては、VEGF165のKDRへの結合効率が増強される。VEGF165R/NP−1の存在は細胞表面のVEGF165の濃度を増加し得、その結果、KDRにより多く増殖因子を提示させ得る。あるいは、VEGF165R/NP−1は、KDRへのより良好な結合を許容するVEGF165の高次構造の変化を誘導し得るかまたは、両方が生じ得る。GST−Ex7+8の存在下においては、VEGF165のVEGF165R/NP−1への結合は競合的に阻害され、VEGF165のKDRへの結合は最適でない様式に戻る。
【図12】ヒトNP−2のアミノ酸配列(配列番号4)。
【図13A】ヒトNP−2のDNA配列(配列番号3)。
【図13B】ヒトNP−2のDNA配列(配列番号3)。
【図13C】ヒトNP−2のDNA配列(配列番号3)。
【図14A】VEGF165R/NP−1のヌクレオチド配列(配列番号1)およびアミノ酸配列(配列番号2)。ドメインが示される。
【図14B】VEGF165R/NP−1のヌクレオチド配列(配列番号1)およびアミノ酸配列(配列番号2)。ドメインが示される。
【図14C】VEGF165R/NP−1のヌクレオチド配列(配列番号1)およびアミノ酸配列(配列番号2)。ドメインが示される。
【図14D】VEGF165R/NP−1のヌクレオチド配列(配列番号1)およびアミノ酸配列(配列番号2)。ドメインが示される。
【図14E】VEGF165R/NP−1のヌクレオチド配列(配列番号1)およびアミノ酸配列(配列番号2)。ドメインが示される。
【図14F】VEGF165R/NP−1のヌクレオチド配列(配列番号1)およびアミノ酸配列(配列番号2)。ドメインが示される。
【図15A】MDA MB 231細胞の運動性のVEGF165刺激。(15A)VEGF165の運動活性の用量応答。(15B)VEGF165およびbFGFの両方は運動性を刺激するが、VEGF121は刺激しない。
【図15B】MDA MB 231細胞の運動性のVEGF165刺激。(15A)VEGF165の運動活性の用量応答。(15B)VEGF165およびbFGFの両方は運動性を刺激するが、VEGF121は刺激しない。
【図16A】図16A、16B、および16Cは、Dunningラット前立腺癌腫細胞株AT3.1細胞(高い運動性、高い転移能)およびAT2.1細胞(低い運動性、低い転移能)の運動性およびニューロピリン−1の発現を示している。(図16A)AT3.1細胞は、ボイデンチャンバーアッセイにおいてAT2.1細胞よりもより運動性である。(図16B)125I−VEGF165はAT3.1細胞のニューロピリン−1に架橋するが、AT2.1細胞には架橋しない。(図16C)AT2.1細胞ではなくAT3.1細胞は、ニューロピリン−1を発現するが、両方の細胞型はVEGFを発現する。
【図16B】図16A、16B、および16Cは、催促(Dunning)ラット前立腺癌腫細胞株AT3.1細胞(高い運動性、高い転移能)およびAT2.1細胞(低い運動性、低い転移能)の運動性およびニューロピリン−1の発現を示している。(図16A)AT3.1細胞は、ボイデンチャンバーアッセイにおいてAT2.1細胞よりもより運動性である。(図16B)125I−VEGF165はAT3.1細胞のニューロピリン−1に架橋するが、AT2.1細胞には架橋しない。(図16C)AT2.1細胞ではなくAT3.1細胞は、ニューロピリン−1を発現するが、両方の細胞型はVEGFを発現する。
【図16C】図16A、16B、および16Cは、催促(Dunning)ラット前立腺癌腫細胞株AT3.1細胞(高い運動性、高い転移能)およびAT2.1細胞(低い運動性、低い転移能)の運動性およびニューロピリン−1の発現を示している。(図16A)AT3.1細胞は、ボイデンチャンバーアッセイにおいてAT2.1細胞よりもより運動性である。(図16B)125I−VEGF165はAT3.1細胞のニューロピリン−1に架橋するが、AT2.1細胞には架橋しない。(図16C)AT2.1細胞ではなくAT3.1細胞は、ニューロピリン−1を発現するが、両方の細胞型はVEGFを発現する。
【図17】図17Aおよび17B。AT2.1細胞におけるニューロピリン−1の過剰発現。(17A)ウェスタンブロット。(17B)運動性活性。3つのAT2.1クローン(レーン4、5、および6)は、親のAT2.1細胞、またはAT2.1ベクター(AT2.1/V)コントロール、および類似するAT3.1細胞のニューロピリン−1レベルおよび運動性活性と比較して、ニューロピリン−1タンパク質をより多く発現し、より運動性である。
【図18】図18は、以下のプライマーを用いた逆転写酵素PCRを使用する、癌細胞株および内皮細胞におけるNP−1、NP−2、およびβ−アクチンの発現:ヒトNP−1:順方向(328〜351): 5’TTTCGCAACGATAAATGTGGCGAT3’(配列番号11)逆方向(738〜719): 5’TATCACTCCACTAGGTGTTG3’(配列番号12)ヒトNP−2順方向(513〜532): 5’CCAACCAGAAGATTGTCCTC3’(配列番号13)逆方向(1181〜1162): 5’GTAGGTAGATGAGGCACTGA3’(配列番号14)。
【図19】図19は、インタクトのニューロピリン(−1および−2)(上部)、ニューロピリン−1の外部ドメインをコードする新規のクローン化cDNA(中央)、およびニューロピリン−2の外部ドメインをコードする新規のクローン化cDNA(下部)の構造の模式図である。これらの2つの新規のcDNAは、選択的スプライシングされたアイソフォームを示している。
【図20】図20は、C末端を切断したニューロピリン−1アイソフォームをコードするcDNAを、COS細胞にトランスフェクトしたことを示す。可溶性の90kDaタンパク質(sNP1)が、ウェスタンブロットによって、ベクターコントロールではなくsNP1を発現している細胞の馴化培地において検出された。MDA MB 231細胞によって発現されたインタクトの130kDaニューロピリン−1を、第1のレーンに示す。
【図21A】図21Aおよび21Bは、可溶性ニューロピリン−1タンパク質の調製物の、125I−VEGF165のPAE/NP細胞への結合の阻害(図21A)、およびVEGF165が媒介するHUVEC増殖の阻害(右側)を示す。sABCは、膜近傍領域で切断された、操作された可溶性のニューロピリン−1である。sABは、c、TM、および細胞質ドメインを欠く、天然に存在するニューロピリン−1のアイソフォームである。この実験において、sNP1(図21B)は、実施例3で産生されたsABCである。
【図21B】図21Aおよび21Bは、可溶性ニューロピリン−1タンパク質の調製物の、125I−VEGF165のPAE/NP細胞への結合の阻害(図21A)、およびVEGF165が媒介するHUVEC増殖の阻害(右側)を示す。sABCは、膜近傍領域で切断された、操作された可溶性のニューロピリン−1である。sABは、c、TM、および細胞質ドメインを欠く、天然に存在するニューロピリン−1のアイソフォームである。この実験において、sNP1(図21B)は、実施例3で産生されたsABCである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図13C】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図14D】
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【図14E】
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【図14F】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21A】
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【図21B】
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【公開番号】特開2009−39133(P2009−39133A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−271420(P2008−271420)
【出願日】平成20年10月21日(2008.10.21)
【分割の表示】特願2000−524430(P2000−524430)の分割
【原出願日】平成10年12月9日(1998.12.9)
【出願人】(599086582)チルドレンズ・メディカル・センター・コーポレイション (9)
【氏名又は名称原語表記】Children’s Medical Center Corporation
【住所又は居所原語表記】300 Longwood Avenue, Boston, Massachusetts 02115, U.S.A.
【Fターム(参考)】