血管内皮増殖因子の可溶性インヒビターおよびその使用
【課題】可溶性ニューロピリン(sNP)タンパク質、および該タンパク質をコードするcDNAの提供。
【解決手段】VEGF165に特異的に結合し、そしてVEGF165媒介HUVEC増殖を減少させる、単離された可溶性ニューロピリン、NP−1およびNP−2。また、sNPをコードするポリヌクレオチド、および該ヌクレオチドを有する宿主細胞。更に、該sNPを含むVEGF関連疾患用の薬学的組成物。
【解決手段】VEGF165に特異的に結合し、そしてVEGF165媒介HUVEC増殖を減少させる、単離された可溶性ニューロピリン、NP−1およびNP−2。また、sNPをコードするポリヌクレオチド、および該ヌクレオチドを有する宿主細胞。更に、該sNPを含むVEGF関連疾患用の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(連邦政府委託研究に関する陳述)
本明細書に記載される研究は、一部、国立衛生研究所助成金CA37392およびCA45548により支援された。米国政府は、本発明に対して特定の権利を有する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、血管内皮増殖因子(VEGF)に関する。より詳細には、本発明は、VEGFの可溶性インヒビターおよびVEGFに関連する障害の処置におけるそれらインヒビターの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
血管は、酸素および栄養分が生組織に供給され、そして老廃物が生組織から除去される手段である。新脈管形成とは、新たな血管を形成するプロセスをいう。例えば、FolkmanおよびShing、J.Biol.Chem.267,10931−10934(1992)、Dvorakら、J.Exp.Med.、174、1275−1278(1991)による総説を参照のこと。従って、適切な場合には、新脈管形成は重要な生物学的プロセスである。それは、生殖、発生、および創傷修復に必須である。しかし、不適切な新脈管形成は、重篤なネガティブな結果を有し得る。例えば、多くの固形腫瘍は新脈管形成の結果として血管化されて初めて、それらの腫瘍は、十分な酸素および栄養分の供給を有し、そのことによって腫瘍が急速に増殖しそして転移し得る。新脈管形成の速度の適切な平衡状態での維持は、機能の範囲に対して重要であるから、それは、健康を維持するために慎重に調節されなければならない。新脈管形成プロセスは、血管内皮増殖因子(VEGF)および塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)のような、マイトジェンにより活性化される内皮細胞(EC)から分泌されるプロテアーゼによる、基底膜の分解から始まると考えられる。その細胞は、移動しそして増殖し、固形内皮細胞の出芽の形成を支質の空間内へもたらし、次いで血管ループが形成され、そして毛細管が接着結合の形成および新たな基底膜の沈着を伴い発生する。
【0004】
成体において、内皮細胞の増殖速度は、代表的に、身体の他の細胞型と比べて低い。これらの細胞の代謝回転時間は、1000日を超え得る。新脈管形成が急速な増殖を生じる生理学的例外は、代表的には、女性の生殖系および創傷治癒の間に見出されるように、緊密な調節下で起こる。
【0005】
新脈管形成の速度は、微小血管増殖のポジティブレギュレーターとネガティブレギュレーターとの間の局所的な平衡状態での変化を含む。血管新生増殖因子の治療的意味は、20年以上前に、Folkmanおよび共同研究者により最初に記載された(Folkman,N.Engl.J.Med.、285:1182−1186(1971))。体が新脈管形成の少なくともいくつかの制御を失う場合、異常な新脈管形成が起こり、過度または不十分な血管増殖のいずれかを生じる。例えば、潰瘍、発作、および心臓発作のような状態は、自然治癒に正常に必要とされる新脈管形成の欠如から生じ得る。対照的に、過度の血管増殖は、腫瘍増殖、腫瘍拡散、失明、乾癬、および慢性関節リウマチを生じ得る。
【0006】
従って、より高程度の新脈管形成が望ましい場合の例(血液循環の増加、創傷治癒、および潰瘍治癒)が存在する。例えば、最近の研究では、線維芽細胞増殖因子(FGF)ファミリー(Yanagisawa−Miwaら、Science、257:1401−1403(1992)およびBaffourら、J Vasc Surg、16:181−91(1992))、内皮細胞増殖因子(ECGF)(Puら、J Surg Res、54:575−83(1993))ならびに、より最近では、血管内皮増殖因子(VEGF)のような、心筋虚血および後肢虚血の動物モデルにおける側副動脈の発生を促進および/または増強させるための組換え血管新生増殖因子の使用の可能性が確証された(Takeshitaら、Circulation、90:228−234(1994)およびTakeshitaら、J Clin Invest、93:662−70(1994))。
【0007】
逆に、新脈管形成の阻害が望ましい場合の例も存在する。例えば、多くの疾患は、制御されない持続的な新脈管形成によりもたらされ、また、それらは時々、「新生血管形成」といわれる。関節炎において、新たな毛細血管は関節に侵入し、そして軟骨を破壊する。糖尿病において、新たな毛細血管は硝子体に侵入し、出血し、失明を引き起こす。眼球の新生血管形成は、失明の最も通常の原因である。腫瘍の増殖および転移は、新脈管形成依存性である。腫瘍は、腫瘍自身が増殖するために、新たな毛細血管の増殖を継続的に刺激しなければならない。
【0008】
VEGFが、新脈管形成の主要なレギュレーターであり得るという、増大する証拠が存在する(Ferraraら、Endocr.Rev.、13、18−32(1992);Klagsbrunら、Curr.Biol.、3、699−702(1993);Ferraraら、Biochem.Biophjs.Res.Commun.、161、851−858(1989)に総説される)。VEGFは、初めに、濾胞星状(folliculostellate)細胞の馴化培地から(Ferraraら、Biochem.Biophjs.Res.Commun.、161、851−858(1989)、そして種々の腫瘍細胞株から(Myokenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、88:5819−5823(1991);Plouetら、EMBO.J.、8:3801−3806(1991))精製された。VEGFは、同時にU937細胞の馴化培地から精製された血管浸透性のレギュレーターである、血管浸透因子と同一であることが見出された(Keckら、Science、246:1309−1312(1989))。VEGFは、インビトロでは内皮細胞(EC)に対する特異的マイトジェンであり、インビボでは強力な血管新生因子である。VEGFの発現は、胚形成および女性の生殖周期の間に血管新生を受ける組織において、上方調節される(Brierら、Development、114:521−532(1992);Shweikiら、J.Clin.Invest.、91:2235−2243(1993))。高レベルのVEGFは、正常組織では発現されないが、腫瘍誘導性低酸素に応答して、種々の型の腫瘍で発現される(Shweikiら、Nature 359:843−846(1992);Dvorakら、J.Exp.Med.、174:1275−1278(1991);Plateら、Cancer Res.、53:5822−5827;Ikeaら、J.Biol.Chem.、270:19761−19766(1986))。VEGFに対して指向されるモノクローナル抗体を用いる腫瘍の処置は、腫瘍の新脈管形成の抑制に起因して、腫瘍質量の劇的な減少を生じた(Kimら、Nature、382:841−844(1993))。VEGFは、新生血管形成に関与する多くの病理学的状態およびプロセスにおいて原則的な役割を果すようである。従って、罹患した組織におけるVEGF発現の調節は、VEGF誘導性の新生血管形成/新脈管形成の処置または予防において、鍵であり得る。
【0009】
VEGFは、8つのエキソンを含む単一の遺伝子から選択的スプライシングにより産生される多くの異なるアイソフォームで存在している(Ferraraら、Endocr.Rev.、13:18−32(1992);Tischerら、J.Biol.Chem.、806:11947−11954(1991);Ferraraら、Trends Cardio Med.、3:244−250(1993);Polterakら、J.Biol.Chem.、272:7151−7158(1997))。ヒトVEGFアイソフォームは、各々が活性型ホモダイマーを作製し得る、121、145、165、189、および206アミノ酸のモノマーからなる(Polterakら、J.Biol.Chem、272:7151−7158(1997);Houckら、Mol.Endocrinol.、8:1806−1814(1991))。VEGF121およびVEGF165アイソフォームが、最も豊富である。VEGF121は、ヘパリンに結合せず、そして培養培地に完全に分泌される唯一のVEGFアイソフォームである。VEGF165は、それがヘパリンおよび細胞表面ヘパリン硫酸プロテオグリカン(HSPG)に結合し、そして部分的に培養培地に放出されるのみであるという点で、VEGF121と機能的に異なる(Houckら、J.Biol.Chem.、247:28031−28037(1992);Parkら、Mol.Biol.Chem.、4:1317−1326(1993))。残りのアイソフォームは、細胞表面および細胞外マトリックス質HSPGに全体的に関与する(Houckら、J.Biol.Chem.、247:28031−28037(1992);Parkら、Mol.Biol.Chem.、4:1317−1326(1993))。
【0010】
VEGFレセプターチロシンキナーゼ、KDR/Flk−1および/またはFlt−1は、ほとんどECにより発現される(Termanら、Biochem.Biophys.Res.Commun.、187:1579−1586(1992);Shibuyaら、Oncogene、5:519−524(1990);De Vriesら、Science、265:989−991(1992);Gitay−Goranら、J.Biol.Chem.、287:6003−6096(1992);Jakemanら、J.Clin.Invest.、89:244−253(1992))。分裂促進性、走化性および形態学的変化の誘導のような、VEGF活性は、Flt−1ではなくKDR/Flk−1により媒介されるようである(たとえ、両方のレセプターが、VEGFの結合の際にリン酸化を受けるとしても)(Millauerら、Cell、72:835−846(1993);Waltenbergerら、J.Biol.Chem.、269:26988−26995(1994);Seetharamら、Oncogene、10:135−147(1995);Yoshidaら、Growth Factors、7:131−138(1996))。最近、Sokerらは、ECおよび乳癌由来のMDA−MB−231(231)細胞のような種々の腫瘍由来の細胞株で発現される、新規なVEGFレセプターを同定した(Sokerら、J.Biol.Chem.、271:5761−5767(1996))。このレセプターは、VEGFアイソフォームがエキソン7にコードされる部分を含むことを必要とする。例えば、VEGF121およびVEGF165の両方は、KDR/Flk−1およびFlt−1に結合するが、VEGF165のみが、その新規なレセプターに結合する。従って、これは、アイソフォーム特異的レセプターであり、VEGF165レセプター(VEGF165R)と名付けられた。それはまた、189および206アイソフォームに結合する。VEGF165Rは、約130kDaの分子量を有し、そしてそれは、約2×10-10MのKdで、VEGF165に結合する(対してKDR/Flk−1に対しては、約5×10-12Mで結合する)。構造機能解析において、VEGF165は、VEGF121に存在しないエキソン7にコードされるドメインを介してVEGF165Rに結合することが直接示された(Sokerら、J.Biol.Chem.、271:5761−5767(1996))。しかし、そのレセプターの機能は不明であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
新脈管形成疾患の現在の処置は、不適切である。連続性の新脈管形成を防止する薬剤(例えば、薬物(TNP−470))、モノクローナル抗体、アンチセンス核酸およびタンパク質(アンギオスタチン(angiostatin)およびエンドスタチン(endostatin))が、現在試験されている。Battegay、J.Mol.Med.、73、333−346(1995);Hanahanら、Cell、86、353−364(1996);Folkman、N.Engl.J.Med.、333,1757−1763(1995)を参照のこと。抗新脈管形成タンパク質を用いた予備的な結果は有望だが、新規な抗新脈管形成治療の開発のために、新脈管形成に関与するリガンドおよびレセプターをコードする遺伝子を、同定する必要が依然存在する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の要旨)
本発明者らは、VEGF165R遺伝子(配列番号1)をコードするcDNAを単離し、そしてそのレセプターのアミノ酸配列(配列番号2)を推定した。本発明者らは、この新規なVEGFレセプターが、Flt−1またはKDR/Flk−1に構造的に関係なく、そして内皮細胞だけでなく、非内皮細胞(驚くことに腫瘍細胞を含む)によっても、発現されるということを発見した。
したがって、本発明は以下を提供する。
(1) VEGF165に特異的に結合し、そしてVEGF165媒介HUVEC増殖を減少させる、単離された可溶性ニューロピリン。
(2) 前記ニューロピリンが、ニューロピリン−1またはニューロピリン−2である、項目1に記載の可溶性ニューロピリン。
(3) 前記ニューロピリンが、ニューロピリン−1であり、そして配列番号2のアミノ酸配列か、またはVEGF165媒介HUVEC増殖を減少させるそのフラグメントを包含する、項目2に記載の可溶性ニューロピリン。
(4) 前記ニューロピリンが、ニューロピリン−2であり、そして配列番号4のアミノ酸配列か、またはVEGF165媒介HUVEC増殖を減少させるそのフラグメントを包含する、項目2に記載の可溶性ニューロピリン。
(5) 前記ニューロピリンが、ニューロピリン−1であり、そして配列番号6のアミノ酸配列を包含する、項目2に記載の可溶性ニューロピリン。
(6) 前記ニューロピリンが、ニューロピリン−2であり、そして配列番号8のアミノ酸配列を包含する、項目2に記載の可溶性ニューロピリン。
(7) 配列番号2のアミノ酸227〜587か、あるいはVEGF165媒介HUVEC増殖を減少させるそのフラグメントまたは相同体を包含する、単離された可溶性ニューロピリン−1。
(8) 配列番号4のアミノ酸277〜594か、あるいはVEGF165媒介HUVEC増殖を減少させるそのフラグメントまたは相同体を包含する、単離された可溶性ニューロピリン−2。
(9) 項目1〜8に記載の可溶性ニューロピリンおよび薬学的に受容可能なキャリアを含有する、薬学的組成物。
(10) VEGF165に特異的に結合し、そしてVEGF媒介HUVEC増殖を減少させる、可溶性ニューロピリンをコードする単離されたポリヌクレオチド。
(11) 前記ニューロピリンが、ニューロピリン−1またはニューロピリン−2である、項目10に記載の単離されたポリヌクレオチド。
(12) 前記ニューロピリンが、配列番号2のアミノ酸配列227〜587か、あるいはVEGF165媒介HUVEC増殖を減少させるそのフラグメントまたは相同体を包含する、項目11に記載の単離されたポリヌクレオチド。
(13) 前記ニューロピリンが、配列番号4のアミノ酸配列277〜594か、あるいはVEGF165媒介HUVEC増殖を減少させるそのフラグメントまたは相同体を包含する、項目12に記載の単離されたポリヌクレオチド。
(14) 前記ニューロピリンが、ニューロピリン−1であり、そして配列番号6のアミノ酸配列を包含する、項目11に記載の単離されたポリヌクレオチド。
(15) 前記ニューロピリンが、ニューロピリン−2であり、そして配列番号8のアミノ酸配列を包含する、項目11に記載の単離されたポリヌクレオチド。
(16) 配列番号5または配列番号7のヌクレオチド配列を有する、項目10に記載の単離されたポリヌクレオチド。
(17) 項目10〜16に記載のポリヌクレオチドを含有する、ベクター。
(18) 項目17に記載のベクターを含有する、宿主細胞。
(19) 前記キャリアが、皮膚への局所的な適用に対して受容可能である、項目9に記載の薬学的組成物。
(20) 前記キャリアが、眼への適用に対して受容可能である、請求項9に記載の薬学的組成物。
(21) 前記組成物が、VEGFに関連する疾患または障害を有する被験体を処置する方法に使用するものである、項目9に記載の薬学的組成物。
(22) 前記VEGFに関連する疾患または障害が、転移、不適切な新脈管形成、慢性炎症、糖尿病性網膜症、および関節炎からなる群より選択される、項目21に記載の薬学的組成物。
(23) 前記疾患または障害が、固形腫瘍である、項目21に記載の薬学的組成物。
(24) 前記組成物が、ニューロピリンを発現する腫瘍を処置する方法において使用するためのものである、項目9に記載の薬学的組成物。
(25) VEGFに関連する疾患または障害を処置するための医薬の調製における、項目10に記載の単離されたポリヌクレオチドの使用。
(26) VEGFに関連する疾患または障害を処置するための医薬の調製における、項目1〜8に記載の単離された可溶性ニューロピリンの使用。
【0013】
VEGF165Rの機能の確認において、本発明者らはさらに、このレセプターが、ニューロン細胞誘導の細胞表面媒介物として同定されたことを発見し、そしてニューロピリン−1(neuropilin−1)と呼んだ(Kolodkinら、Cell 90:753−762(1997))。本発明者らは、このレセプターをVEGF165R/NP−1またはNP−1という。
【0014】
VEGF165R/NP−1 cDNAの発現クローニングに加え、本発明者らは、その推定アミノ酸配列が、VEGF165R/NP−1のアミノ酸配列と47%の相同性であり、そして最近クローン化されたラットニューロピリン−2(NP−2)(Kolodkinら、Cell 90、753−762(1997))と90%を超えて相同である、別のヒトcDNAクローンを単離した。
【0015】
本発明者らの結果は、これらのニューロピリンが内皮細胞および腫瘍細胞(乳房、前立腺、および黒色腫を含む)の両方により発現されることを示す(図18)。本発明者らは、KDRおよびVEGF165R/NP−1の両方を発現する内皮細胞が、KDRのみを発現する内皮細胞と比べた場合、VEGF121でなく、VEGF165に対して増大された走化性で反応することを示した。理論に縛られることを望まないが、本発明者らは、VEGF165R/NP−1は、内皮細胞において、KDRに対するコレセプター(co−receptor)として細胞の運動性を媒介するために機能すると考えている。
【0016】
本発明者らはまた、Boydenチャンバー運動性アッセイにおいて、VEGF165が、用量応答様式で、231乳癌細胞の運動性を刺激することを示した(図15A)。VEGF121は、これらの細胞の運動性に対する効果を有さなかった(図15B)。231細胞のような腫瘍細胞は、VEGFレセプター、KDRまたはFlt−1を発現しないため、理論に縛られることを望まないが、本発明者らは、腫瘍細胞が、VEGF165R/NP−1を介してVEGF165に対して直接的に応答性であると考えている。
【0017】
本発明者らはまた、Dunningラット前立腺癌細胞の2つの改変体、AT2.1細胞(低運動性および低転移能のものである)、およびAT3.1細胞(高運動性および高転移性である)を解析した。架橋およびノーザンブロット解析により、AT3.1細胞が、VEGF165に結合可能な、大量のVEGF165R/NP−1を発現し、対して、AT2.1細胞が、VEGF165R/NP−1を発現しないことを示す(図18)。腫瘍切片の免疫染色により、AT3.1におけるVEGF165R/NP−1の発現は確認されたが、AT2.1腫瘍においては確認されなかった。さらに、免疫染色により、皮下AT3.1およびPC3腫瘍において、VEGF165R/NP−1を発現する腫瘍細胞が、腫瘍/真皮の境界の侵襲前部で優先的に見出されることが示された。さらに、VEGF165R/NP−1を過剰発現するAT2.1細胞の安定なクローンは、Boydenチャンバーアッセイにおいて運動性を増強した。これらの結果は、ニューロピリンの発現が、新脈管形成および運動性転移性癌細胞に関連し、したがって、抗新脈管形成および抗癌治療に対する重要な標的であることを示す。
【0018】
本発明者らは、現在、C末端領域で切断されて可溶性ニューロピリン(sNP)外部ドメインを産生する、いくつかのニューロピリンのアイソフォームを同定し、そしてクローン化した(図19)。ノーザンブロット解析により、いくつかの細胞株および組織が、選択的スプライシングにより明らかに生成された7kbのニューロピリン−1(NP−1)および7kbのニューロピリン−2(NP−2)に加えて、類似の転写物を発現することが明らかにされた後に、これらのアイソフォームはクローン化された。インタクトなニューロピリンは、補体成分に相同なaドメイン、凝固因子に相同なbドメイン、MAMに相同なcドメイン、膜貫通ドメイン、および短い40アミノ酸の細胞質ドメインを有する(Kawakami Aら、(1995)J.Neurobiol.29:1−17)(図19)。ニューロピリン−1のアイソフォームがクローン化され、それは、bドメインのすぐ後でC末端が切断されていた。転写の間に、5’スプライス供与体部位の読み過ごしが存在し、そのため、終結に続いてイントロン部分が発現され、その結果、cドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインは、bドメインに続く、イントロンの3アミノ酸で置換された。さらに、ニューロピリン−2のアイソフォームがクローン化され、その中では、C末端部分のbドメイン、cドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞質ドメインが、そのイントロンの8アミノ酸で置換されていた。切断されたニューロピリン−1のcDNAは、COS細胞内で発現され、そして馴化培地中のタンパク質を特異的な抗ニューロピリン−1抗体を使用したウエスタンブロットにより解析した(図20)。切断されたニューロピリン−1cDNAのトランスフェクトにより産生された(ベクターコントロールのトランスフェクトでは産生されない)90kDaのタンパク質は、馴化培地中に見出されたが、溶解産物中では見出されなかった。従って、ニューロピリン−1アイソフォームは、ニューロピリン−1の可溶性形態(sNP1)である。
【0019】
本発明者らはまた、膜近傍ドメインのある部位での切断により、a、b、およびcドメインを含む、操作し切断した可溶化ニューロピリン−1外部ドメインレセプター(sNP1abcと名付けた)を発現させた。
【0020】
sNPは、VEGF165またはエキソン7(配列番号)を含むVEGFの任意の形態に結合し得、従って、ニューロピリンとだけでなく、同様にKDR/Flk−1およびFlk−1とのVEGFの相互作用を阻害するために有用である。さらに、sNPはまた、インタクトなニューロピリンレセプターとの二量体化により細胞内で発現される場合、ドミナントネガティブレセプターとして作用し得る。本発明者らの結果は、sNP1タンパク質調製物が、PAE/NP1に対合する125I−VEGF165結合の、およびVEGF媒介性HUVEC増殖の優れたインヒビターであることを示した(図21)。
【0021】
従って、sNPまたはsNPをコードする核酸(例えば、DNAまたはRNA)は、VEGFおよびNPの機能のインヒビターとして有用であり、VEGFに関連する疾患,障害、または状態の処置に使用され得る。sNPはまた、単独で使用され得るか、または例えば、VEGFを直接的に拮抗するもの(例えば、抗VEGF抗体、可溶性VEGFレセプター細胞外ドメイン)またはVEGFレセプターに拮抗するもの(例えば、抗KDR抗体、KDRキナーゼインヒビター、ドミナントネガティブなVEGFレセプター)を含む他の抗VEGF戦略との組合せで使用され得る(Presta LGら、Cancer Res.57:4593−4599(1997)、Kendall RLら、(1996)Biochem.Biophys.Res.Commun.226:324−328、Goldman CKら、(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:8795−8800、Strawn LMら、(1996)Cancer Res.56:3540−3545、Zhu Zら、(1998)Cancer Res.58:3209−3214、Witte Lら、(1998)Cancer Metastasis Rev.17:155−161)。
【0022】
VEGFに関連する疾患、障害、または状態としては、網膜新生血管形成、血管腫、固形腫瘍増殖、白血病、転移、乾癬、血管新生緑内障、糖尿病性網膜症、慢性関節リウマチ、変形性関節症、子宮内膜病、黄斑変性(mucular degeneration)および未熟児網膜症(ROP)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
さらに、本発明は、選択された組織中の天然に存在する可溶性ニューロピリンの発現についてののスクリーニング方法に関する。発現は、RNAレベル(イントロン配列に対応する特異的プローブを用いたインサイチュハイブリダイゼーション)で解析され得るか、またはタンパク質レベル(低分子量のウエスタンブロット検出)で解析され得る。次いで、インタクトで、かつ切断されたニューロピリンアイソフォームの相対的分布が決定され得る。これらの技術は、細胞、組織、および尿のような生物学的液体中のsNPの分布を解析するために使用され得る。sNP1およびsNP2の両方は、インタクトなニューロピリンにおいて存在しないC末端のイントロン配列を含む。sNP1は、そのcDNAにおいて、3個のC末端イントロンアミノ酸(GIK)および28個のイントロンbpを有する。sNP2は、そのcDNAにおいて、8個のC末端イントロンアミノ酸(VGCSWRPL)および146個のイントロンbpを有する。従って、sNP特異的プローブは、インサイチュハイブリダイゼーションのために、そして、インタクトなニューロピリンのバックグラウンドにおける、腫瘍および正常組織中のsNPの分布について分析するために調製され得る。
本発明の他の局面は、以下に開示される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】231細胞からのVEGF165Rの精製。125I−VEGF165(5ng/ml)を231細胞のレセプターに結合、かつ、架橋し、SDS−PAGEおよびオートラジオグラフィーにより分析した(レーン1)。VEGF165Rを、Con AおよびVEGF165アフィニティーカラムクロマトグラフィーで精製し、そしてSDS−PAGEおよび銀染色で分析した(レーン2)。二本の顕著なバンドが検出され(矢印)、そして別個にN末端を配列決定した。これらのN末端の18アミノ酸配列を矢印の右側に示した。公開されたヒトおよびマウスのニューロピリンのN末端配列(Kawakamiら、J.Neurobiol.、29、1−17(1995);HeおよびTessier−Lavigne、Cell 90、739−751 1997)を以下に示す(配列番号9および10)。
【図2A】発現クローニングによるVEGF165R cDNAの単離。125I−VEGF165に結合しているCOS7細胞の顕微鏡写真(暗視野照明)。トランスフェクトされたCOS7細胞に125I−VEGF165を結合させ、次いで洗浄、固定し、そして写真乳剤でオーバーレイし、実施例に記載されるようにして現像した。 (2A)COS7細胞を、約3×103クローンを示す主要プラスミドプール(231細胞ライブラリーの#55)でトランスフェクトし、そして第一ラウンドのスクリーニングにおいて、125I−VEGF165に結合している1つのCOS7細胞を示す。
【図2B】発現クローニングによるVEGF165R cDNAの単離。125I−VEGF165に結合しているCOS7細胞の顕微鏡写真(暗視野照明)。トランスフェクトされたCOS7細胞に125I−VEGF165を結合させ、次いで洗浄、固定し、そして写真乳剤でオーバーレイし、実施例に記載されるようにして現像した。 (2B)第3ラウンドのスクリーニング後に、125I−VEGF165に結合している、単一の陽性cDNAクローン(A2)でトランスフェクトされたいくつかのCOS7細胞。
【図3】ヒトVEGF165R/NP−1の推定アミノ酸配列(配列番号2)。VEGF165R/NP−1の読み取り枠(クローンA2(6.5kbの完全挿入片サイズ))の推定923アミノ酸配列を示す。推定のシグナルペプチド配列(アミノ酸1〜21)および推定の膜貫通領域(アミノ酸860〜883)を囲みで示す。N末端アミノ酸配列決定で得られたアミノ酸配列(図3、アミノ酸22〜39)を下線で示す。矢印は、精製したVEGF165R/NP−1のN末端配列とそのcDNA配列との比較に基づいて、切断および除去するシグナルペプチドを示している。本明細書で報告したヒトVEGF165R/NP−1の配列は、本発明者らが、Glu26よりもむしろLys26、ならびにGlu855よりもむしろAsp855を見い出すという点において、Heら(HeおよびTessier−Lavigne、Cell 90、739−751 1997)の報告したものと異なる。しかし、Lys26およびAsp855はマウスおよびラットのVEGF165R/NP−1において見出される(Kwakamiら、J.Neurobiol.29、1〜17(1995);HeおよびTessier−Lavigne,Cell 90,739〜751 1997)。
【図4A】図4Aおよび4Bは、ヒトVEGF165R/NP−1(配列番号2)およびNP−2(配列番号4)の推定アミノ酸配列の比較を示す。VEGF165R/NP−1およびNP−2の推定した読み取り枠のアミノ酸配列を、DNASISプログラムを使用して並べる。両方の読み取り枠に同一のアミノ酸配列を斜線で示す。2つの配列間の全体の相同性は43%である。
【図4B】図4Aおよび4Bは、ヒトVEGF165R/NP−1(配列番号2)およびNP−2(配列番号4)の推定アミノ酸配列の比較を示す。VEGF165R/NP−1およびNP−2の推定した読み取り枠のアミノ酸配列を、DNASISプログラムを使用して並べる。両方の読み取り枠に同一のアミノ酸配列を斜線で示す。2つの配列間の全体の相同性は43%である。
【図5】ヒトECおよび腫瘍由来細胞株におけるVEGF165R/NP−1発現のノザンブロット分析。HUVEC(レーン1)ならびに示されるような腫瘍由来乳ガン、前立腺ガンおよび黒色腫細胞株(レーン2〜8)から調製した全RNA試料を、1%アガロースゲルで分離し、GeneScreenナイロン膜にブロットした。その膜を、32P標識したVEGF165R/NP−1 cDNAでプローブし、そしてX線フィルムに露光した。ブロットする前にゲルをエチジウムブロマイド染色し、等量のRNAであることを明らかした。約7kbの主要な種のVEGF165R/NP−1 mRNAが、いくつかの細胞株で検出された。
【図6】成体ヒト組織におけるVEGF165R/NP−1およびKDR mRNAのノザンブロット分析。多数のヒトmRNA試料(Clonetech)を含む、先に作製したノザンブロット膜を図5に記載したようにして32P標識したVEGF165R/NP−1 cDNAでプローブし(上段)、次いで剥がし、そして32P標識したKDR cDNAで再プローブした(下段)。
【図7A】VEGF165R/NP−1へのVEGF165結合のスキャッチャード分析。(7A)48ウェルディッシュ内で、ヒトVEGF165R/NP−1 cDNAでトランスフェクトしたPAE細胞(PAE/NP−1細胞)のサブコンフルエントの培養物に、125I−VEGF165(0.1〜50ng/ml)増加量を加えた。非特異的な結合を、200倍の過剰の標識されていないVEGF165との競合により決定した。結合後、細胞を洗浄し、溶解し、そしてγカウンターを使用して細胞に会合する放射活性を決定した。
【図7B】VEGF165R/NP−1へのVEGF165結合のスキャッチャード分析。 (7B)7Aに示される結合データを、スキャッチャードの方法によって分析し、そしてLIGANDプログラム(Munson and Rodbard,1980)を用いて最も一致するプロットを得た。PAE/NP−1細胞は、1細胞あたり約3×105のVEGF165結合部位を発現し、125I−VEGF165を3.2×10-10MのKdで結合する。
【図8】VEGF165およびVEGF121の、VEGF165R/NP−1および/またはKDRを発現するPAE細胞への架橋。HUVEC(レーン1)、PC3(レーン2)、PAE(レーン3および7)、ヒトVEGF165R/NP−1 cDNAでトランスフェクトしたPAE細胞のクローン(PAE/NP−1)(レーン4および8)、KDRでトランスフェクトしたPAE細胞のクローン(PAE/KDR)(レーン5および9)、およびヒトVEGF165R/NP−1 cDNAでトランスフェクトしたPAE/KDR細胞のクローン(PAE/KDR/NP−1)(レーン6および10)のサブコンフルエント培養物に、125I−VEGF165(5ng/ml)(レーン1〜6)または125I−VEGF121(10ng/ml)(レーン7〜10)を結合させた。この結合は1μg/mlのヘパリン存在下で行った。2時間のインキュベートの終了時に、細胞表面に125I−VEGFの各アイソフォームを化学的に架橋させた。この細胞を溶解し、6%SDS−PAGEでタンパク質を分離した。このポリアクリルアミドゲルを乾燥し、X線フィルムに露光した。実線矢印は125I−VEGFおよびKDRを含む放射標識された複合体を示し、白の矢印は125I−VEGFおよびVEGF165R/NP−1を含む放射標識された複合体を示す。
【図9】VEGF165R/NP−1を一過性に同時発現するPAE/KDR細胞へのVEGF165の架橋。PAE/KDR細胞を、「実験手順」に記載したようにpCPhygroまたはpCPhyg−NP−1プラスミドでトランスフェクトし、6cmディッシュ中で3日間増殖させた。125I−VEGF165(5ng/ml)を、親のPAE/KDR細胞(レーン1)、pCPhygroベクターコントロールでトランスフェクトしたPAE/KDR細胞(V)(レーン2)、pCPhyg−VEGF165R/NP−1プラスミドでトランスフェクトしたPAE/KDR細胞(VEGF165R/NP−1)(レーン3)、およびHUVEC(レーン4)に結合させ、架橋した。この結合は1μg/mlのヘパリン存在下で行った。この細胞を溶解し、図8のようにして6%SDS−PAGEでタンパク質を分離した。実線矢印は125I−VEGF165およびKDRを含む放射標識された複合体を示す。白の矢印は125I−VEGF165およびVEGF165R/NP−1を含む放射標識された複合体を示す。
【図10】125I−VEGF165のVEGF165R/NP−1への結合の阻害は、125I−VEGF165のKDRへの結合に干渉する。125I−VEGF165(5ng/ml)を、35mmのディッシュ中で、ヒトVEGF165R/NP−1 cDNAでトランスフェクトしたPAE細胞(PAE/NP−1)(レーン1および2)、PAE/KDR細胞(レーン3および4)、およびヒトVEGF165R/NP−1 cDNAでトランスフェクトしたPAE/KDR細胞(PAE/KDR/NP−1)(レーン5および16)のサブコンフルエント培養物に結合させた。この結合は、25μg/ml GST−Ex7+8の存在下(レーン2、4、および6)、または非存在下(1、3、および5)で行った。ヘパリン(1μg/ml)を各々のディッシュに加えた。2時間のインキュベートの終了時に、細胞表面に125I−VEGF165を化学的に架橋させた。この細胞を溶解し、図9のようにして6%SDS−PAGEでタンパク質を分離した。実線矢印は125I−VEGF165およびKDRを含む放射標識された複合体を示し、白の矢印は125I−VEGF165およびVEGF165R/NP−1を含む放射標識された複合体を示す。
【図11】図11A〜C。VEGF165のKDRへの結合のVEGF165R/NP−1調節に関するモデル。(11A)KDRのみを発現する細胞。(11B)KDRおよびVEGF165R/NP−1を同時発現する細胞。(11C)GST−Ex7+8融合タンパク質存在下でKDRおよびVEGF165R/NP−1を同時発現する細胞。 1つのKDRレセプターまたは1つのKDR−VEGF165R/NP−1対を上部パネルに示す。いくつかのレセプターを示す拡大図を下部パネルに示す。VEGF165は、エキソン4を介してKDRに結合、およびエキソン7を介してVEGF165R/NP−1に結合する(Keytら、J.Biol.Chem.271,5638〜5646(1996b);Sokerら、J.Biol.Chem.271,5761〜5767(1996))。長方形のVEGF165分子は、KDRに効率的に結合しない、最適ではない高次構造を示すが、丸みを帯びたVEGF165分子は、結合部位により良好に一致する高次構造を示す。KDRのみを発現する細胞においては、VEGF165は最適でない様式でKDRに結合する。KDRおよびVEGF165R/NP−1を同時発現する細胞においては、VEGF165のKDRへの結合効率が増強される。VEGF165R/NP−1の存在は細胞表面のVEGF165の濃度を増加し得、その結果、KDRにより多く増殖因子を提示させ得る。あるいは、VEGF165R/NP−1は、KDRへのより良好な結合を許容するVEGF165の高次構造の変化を誘導し得るかまたは、両方が生じ得る。GST−Ex7+8の存在下においては、VEGF165のVEGF165R/NP−1への結合は競合的に阻害され、VEGF165のKDRへの結合は最適でない様式に戻る。
【図12】ヒトNP−2のアミノ酸配列(配列番号4)。
【図13A】ヒトNP−2のDNA配列(配列番号3)。
【図13B】ヒトNP−2のDNA配列(配列番号3)。
【図13C】ヒトNP−2のDNA配列(配列番号3)。
【図14A】VEGF165R/NP−1のヌクレオチド配列(配列番号1)およびアミノ酸配列(配列番号2)。ドメインが示される。
【図14B】VEGF165R/NP−1のヌクレオチド配列(配列番号1)およびアミノ酸配列(配列番号2)。ドメインが示される。
【図14C】VEGF165R/NP−1のヌクレオチド配列(配列番号1)およびアミノ酸配列(配列番号2)。ドメインが示される。
【図14D】VEGF165R/NP−1のヌクレオチド配列(配列番号1)およびアミノ酸配列(配列番号2)。ドメインが示される。
【図14E】VEGF165R/NP−1のヌクレオチド配列(配列番号1)およびアミノ酸配列(配列番号2)。ドメインが示される。
【図14F】VEGF165R/NP−1のヌクレオチド配列(配列番号1)およびアミノ酸配列(配列番号2)。ドメインが示される。
【図15A】MDA MB 231細胞の運動性のVEGF165刺激。(15A)VEGF165の運動活性の用量応答。(15B)VEGF165およびbFGFの両方は運動性を刺激するが、VEGF121は刺激しない。
【図15B】MDA MB 231細胞の運動性のVEGF165刺激。(15A)VEGF165の運動活性の用量応答。(15B)VEGF165およびbFGFの両方は運動性を刺激するが、VEGF121は刺激しない。
【図16A】図16A、16B、および16Cは、Dunningラット前立腺癌腫細胞株AT3.1細胞(高い運動性、高い転移能)およびAT2.1細胞(低い運動性、低い転移能)の運動性およびニューロピリン−1の発現を示している。(図16A)AT3.1細胞は、ボイデンチャンバーアッセイにおいてAT2.1細胞よりもより運動性である。(図16B)125I−VEGF165はAT3.1細胞のニューロピリン−1に架橋するが、AT2.1細胞には架橋しない。(図16C)AT2.1細胞ではなくAT3.1細胞は、ニューロピリン−1を発現するが、両方の細胞型はVEGFを発現する。
【図16B】図16A、16B、および16Cは、催促(Dunning)ラット前立腺癌腫細胞株AT3.1細胞(高い運動性、高い転移能)およびAT2.1細胞(低い運動性、低い転移能)の運動性およびニューロピリン−1の発現を示している。(図16A)AT3.1細胞は、ボイデンチャンバーアッセイにおいてAT2.1細胞よりもより運動性である。(図16B)125I−VEGF165はAT3.1細胞のニューロピリン−1に架橋するが、AT2.1細胞には架橋しない。(図16C)AT2.1細胞ではなくAT3.1細胞は、ニューロピリン−1を発現するが、両方の細胞型はVEGFを発現する。
【図16C】図16A、16B、および16Cは、催促(Dunning)ラット前立腺癌腫細胞株AT3.1細胞(高い運動性、高い転移能)およびAT2.1細胞(低い運動性、低い転移能)の運動性およびニューロピリン−1の発現を示している。(図16A)AT3.1細胞は、ボイデンチャンバーアッセイにおいてAT2.1細胞よりもより運動性である。(図16B)125I−VEGF165はAT3.1細胞のニューロピリン−1に架橋するが、AT2.1細胞には架橋しない。(図16C)AT2.1細胞ではなくAT3.1細胞は、ニューロピリン−1を発現するが、両方の細胞型はVEGFを発現する。
【図17】図17Aおよび17B。AT2.1細胞におけるニューロピリン−1の過剰発現。(17A)ウェスタンブロット。(17B)運動性活性。3つのAT2.1クローン(レーン4、5、および6)は、親のAT2.1細胞、またはAT2.1ベクター(AT2.1/V)コントロール、および類似するAT3.1細胞のニューロピリン−1レベルおよび運動性活性と比較して、ニューロピリン−1タンパク質をより多く発現し、より運動性である。
【図18】図18は、以下のプライマーを用いた逆転写酵素PCRを使用する、癌細胞株および内皮細胞におけるNP−1、NP−2、およびβ−アクチンの発現:ヒトNP−1:順方向(328〜351): 5’TTTCGCAACGATAAATGTGGCGAT3’(配列番号11)逆方向(738〜719): 5’TATCACTCCACTAGGTGTTG3’(配列番号12)ヒトNP−2順方向(513〜532): 5’CCAACCAGAAGATTGTCCTC3’(配列番号13)逆方向(1181〜1162): 5’GTAGGTAGATGAGGCACTGA3’(配列番号14)。
【図19】図19は、インタクトのニューロピリン(−1および−2)(上部)、ニューロピリン−1の外部ドメインをコードする新規のクローン化cDNA(中央)、およびニューロピリン−2の外部ドメインをコードする新規のクローン化cDNA(下部)の構造の模式図である。これらの2つの新規のcDNAは、選択的スプライシングされたアイソフォームを示している。
【図20】図20は、C末端を切断したニューロピリン−1アイソフォームをコードするcDNAを、COS細胞にトランスフェクトしたことを示す。可溶性の90kDaタンパク質(sNP1)が、ウェスタンブロットによって、ベクターコントロールではなくsNP1を発現している細胞の馴化培地において検出された。MDA MB 231細胞によって発現されたインタクトの130kDaニューロピリン−1を、第1のレーンに示す。
【図21A】図21Aおよび21Bは、可溶性ニューロピリン−1タンパク質の調製物の、125I−VEGF165のPAE/NP細胞への結合の阻害(図21A)、およびVEGF165が媒介するHUVEC増殖の阻害(右側)を示す。sABCは、膜近傍領域で切断された、操作された可溶性のニューロピリン−1である。sABは、c、TM、および細胞質ドメインを欠く、天然に存在するニューロピリン−1のアイソフォームである。この実験において、sNP1(図21B)は、実施例3で産生されたsABCである。
【図21B】図21Aおよび21Bは、可溶性ニューロピリン−1タンパク質の調製物の、125I−VEGF165のPAE/NP細胞への結合の阻害(図21A)、およびVEGF165が媒介するHUVEC増殖の阻害(右側)を示す。sABCは、膜近傍領域で切断された、操作された可溶性のニューロピリン−1である。sABは、c、TM、および細胞質ドメインを欠く、天然に存在するニューロピリン−1のアイソフォームである。この実験において、sNP1(図21B)は、実施例3で産生されたsABCである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(発明の詳細な説明)
本発明は、可溶性のニューロピリンタンパク質(sNP)をコードするcDNAに関し、このcDNAはニューロピリン(NP)を産生する細胞から単離、またはNPをコードするDNAから組換え操作される。NP−1およびNP−2は、任意のニューロピリンまたはVEGFレセプター(VEGFR)以外の好ましいNPであり、これらの構成要素は、上記のVEGF165R/NP−1およびNP−2のどちらとも少なくとも約85%の相同性を有する。より好ましくは、このような構成要素は少なくとも90%の相同性を有する。さらにより好ましくは、各構成要素は少なくとも95%の相同性を有する。
【0026】
相同性は当該分野に周知の手段で測定される。例えば、%相同性は、相同性を比較するために使用される任意の標準的なアルゴリズムにより決定され得る。これらは、NIH(www.ncbi.nlm.nkh.gov/BLAST/newblast.htmlを参照のこと)から入手可能なBLAST2.0(例えば、BLAST2.0.4およびi2.0.5)(Altschul,S.F.ら、Nucleic Acids Res.25:3389〜3402(1997)およびDNASIS(Hitachi Software Engineering America,Ltd.)を含むが、これらに限定されない。これらのプログラムは、好ましくは、相同性比較のための標準的な初期設定のような自動設定に設定されるべきである。NIHにより説明されるように、ギャップのある結果は、ギャップのない結果よりもより生物学的な意義を有する傾向にある。
【0027】
容易な参照のために、この開示は一般に、VEGF165R/NP−1およびNP−2および/またはそれらの相同物について述べているが、全ての教示は上述した相同物に適用可能である。
【0028】
本発明はさらに、単離および精製したsNPタンパク質に関する。本明細書で使用されるsNPは、エキソン7(配列番号15)を含む、血管内皮細胞増殖因子に特異的に結合し得るタンパク質(例えばVEGF165)をいい、例えばSokerら、J.Biol.Chem.272,31582〜31588(1997)に記載のようにVEGF165を使用するヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)増殖アッセイによって決定されるような、VEGFアンタゴニスト活性を有する。好ましくは、このsNPは、HUVEC増殖を少なくとも25%減少し、より好ましくは50%減少し、さらにより好ましくは75%減少し、最も好ましくは95%減少する。
【0029】
sNPのVEGFアンタゴニスト活性はまた、標識化したVEGF165のVEGF165Rへの結合の阻害(Sokerら、J.Biol.Chem.271,5761〜5767(1996)に開示される)、または標識化したVEGF165のPAE/NP細胞への結合の阻害(実施例に記載される)によって決定され得る。好ましくは、部分は、結合を少なくとも25%、より好ましくは50%、最も好ましくは75%、阻害する。
【0030】
用語「単離された」は、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド(例えば、DNA)が、その本来の環境から取り出されることを意味する。例えば、生存する動物中に存在する天然に生じるポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、単離されていないが、天然の系中の共存物質のいくつかまたは全てから分離された同じポリヌクレオチドもしくはDNAまたはポリぺプチドは、単離されている。このようなポリヌクレオチドはベクターの一部であり得、および/またはこのようなポリヌクレオチドまたはポリぺプチドは組成物の一部であり得、そしてなお、このようなベクターまたは組成物はその自然環境の一部ではないように単離され得る。
【0031】
完全長のNP−1のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号1および2として配列表に記載される。完全長のNP−2のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号3および4として配列表に開示される。
【0032】
ヒトVEGF165R/NP−1またはNP−2をコードするDNA、および組換えヒトVEGF165R/NP−1またはNP−2は、実施例に記載される方法に従って産生され得る。
【0033】
NP−1またはNP−2を産生する哺乳動物細胞株は、MDA−MB−231細胞(ATCC HTB−26)、PC3前立腺癌腫細胞およびヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)(ATCC CRL 1730)を含むが、これらに限定されない。
【0034】
他の細胞および細胞株もまた、sNPを単離するための使用に適切であり得る。適切な細胞の選択は、細胞表面上または細胞抽出液もしくは馴化培地中のsNP結合活性に対するスクリーニング、あるいはPCRまたはハイブリダイゼーションによる遺伝子発現に対するスクリーニングによって実施され得る。可溶性のレセプター活性を検出する方法は、当該分野で周知である(Duan,D−S.R.ら、(1991)J.Biol.Chem.、266、413〜418頁)。
【0035】
ヒトHUVEC細胞(American Type Culture Collection、ATCC CRL 1730)(Hoshi,H.およびMcKeehan,W.L.、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、(1984)81、6413〜6417頁)のような完全長のNPを産生する細胞は、ATCCの推奨培養条件に従って増殖させられる。インタクトなNPならびに細胞外領域(sNP−1およびsNP−2)を図8に示す。インタクトなレセプターは、相補成分に相同なaドメイン、凝固因子に相同なbドメイン、MAMに相同なcドメイン、膜貫通ドメイン(TM)、および40アミノ酸の短い細胞質ドメイン(cyto)を有する。本発明の対象であるこのレセプターの2つの阻害形態もまた図8に示し、そして配列番号6および8として配列表に記載し、そしてこれらはcドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞質ドメインの全てを欠く。本発明の好ましいsNPはさらにaドメインを欠く。
【0036】
ニューロピリン−1(配列番号2)のドメインは以下の通りである:a1(アミノ酸22〜146)、a2(アミノ酸147〜273)、b1(アミノ酸275〜430)、b2(アミノ酸431〜587)、c(アミノ酸646〜809)、TM(アミノ酸857〜884)、cyto(アミノ酸885〜923)。
【0037】
ニューロピリン−2(配列番号4)のドメインは以下の通りである:a1(アミノ酸24〜148)、a2(アミノ酸149〜275)、b1(アミノ酸277〜433)、b2(アミノ酸434〜594)、c(アミノ酸642〜800)、TM(アミノ酸865〜893)、cyto(アミノ酸894〜931)。
【0038】
任意の種々の手順が、sNP cDNAを分子クローン化するために使用され得る。これらの方法としては、適切な発現ベクター系におけるsNP含有cDNAライブラリーの構築の後の、sNP遺伝子の直接的な機能的発現が挙げられるが、これに限定されない。
【0039】
別の方法は、sNPの推定アミノ酸配列から設計した標識化したオリゴヌクレオチドプローブを用いて、バクテリオファージまたはプラスミドのシャトルベクター内に構築されたsNP含有cDNAライブラリーをスクリーニングすることである。1つの方法は、完全長のNPタンパク質の少なくとも一部分をコードする、部分的なcDNAを用いて、バクテリオファージまたはプラスミドのシャトルベクター内に構築されたsNP含有cDNAライブラリーをスクリーニングする工程からなる。この部分的なcDNAを、完全長のNPをコードするDNAの公知の配列からのオリゴヌクレオチドプライマーの設計を介して、sNP DNAフラグメントの特異的なPCR増幅によって得る。
【0040】
他の型のライブラリー、ならびに他の細胞または細胞型から構築されたライブラリーが、sNPをコードするDNAの単離に有用であり得ることは、当業者に容易に明らかである。さらに、適切なcDNAライブラリーは、sNP活性を有する細胞または細胞株から調製され得る。sNP cDNAを単離するためのcDNAライブラリーの調製に使用する細胞または細胞株の選択は、まず、本明細書に記載される方法を使用して、分泌されたsNP活性を測定することによって行われ得る。
【0041】
cDNAライブラリーの調製は、当該分野に周知の標準的な技術により実施され得る。周知のcDNAライブラリー構築技術は例えば、Molecular Cloning,A Laboratory Manual(第2版、Sambrook、FritschおよびManiatis、Cold Spring Harbor、N.Y.1989)に見出され得る。
【0042】
sNPをコードするDNAはまた、適切なゲノムDNAライブラリーから単離され得ることもまた、当業者に容易に明らかである。ゲノムDNAライブラリーの構築は、当該分野に周知の標準的な技術により実施され得る。周知のゲノムDNAライブラリー構築技術は、Sambrookら(前出)に見出し得る。
【0043】
sNP分子を得る別の手段は、NPの部分的または完全なアミノ酸配列(例えば、NP−1またはNP−2)をコードするDNAからそれらを組換え操作することである。組換えDNA技術を使用して、有糸分裂誘発を刺激せずに、エキソン7を含むVEGFに結合し得るNPの少なくとも一部分をコードするDNA分子が構築される。Sambrookら(前出)に見出されるような標準的な組換えDNA技術が使用される。
【0044】
本発明の好ましい方法の1つを使用して、sNPをコードするcDNAクローンは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に基づく技術、およびcDNAライブラリースクリーニングを利用する2段階アプローチ(two−stage approach)において単離される。第1のステージにおいては、公知の完全長のNPからの細胞外ドメイン配列情報に由来するDNAオリゴヌクレオチドを使用して、sNP特異的DNAフラグメントの増幅のための縮重オリゴヌクレオチドプライマーを設計する。第2のステージにおいては、これらのフラグメントを、HUVEC細胞(ATCC CRL 1730)に由来する市販のλgt10 cDNAライブラリー(Clontech)から完全なsNP cDNAを単離するためのプローブとして使用するためにクローン化する。
【0045】
別の方法を使用して、sNPをコードするDNAを、NPをコードするDNA配列から構築する。説明のために、NP−1をコードするDNAを利用する。レセプターDNA配列を使用して、レセプターの細胞外ドメイン、すなわちVEGF結合ドメインのみをコードするDNA分子を構築する。制限エンドヌクレアーゼの切断部位は、レセプターDNA内に同定され、そして細胞外コード部分を切り出すために直接的に利用され得る。さらに、上述したようなPCR技術を利用して、所望のDNA部分を産生し得る。当該分野において標準的な他の技術を利用して、上述した技術に類似する様式においてsNP分子を産生し得ることは当業者に容易に明らかである。このような技術は、例えば、Sambrookら(前出)に見出される。
【0046】
好ましい方法において、sNP cDNAは、aドメインのN末端内のHisドメインでタグ化され、そしてpcDNA3.1哺乳動物発現プラスミドにサブクローン化される。各プラスミドをCHO−K1細胞にトランスフェクトし、G418耐性クローンを単離する。馴化培地を回収し、そしてCon Aセファロースカラムに供し、洗浄し、そしてCon A結合タンパク質を溶出する。この溶出物をニッケルカラムに供し、洗浄し、そしてNi++結合sNPタンパク質を溶出する。精製したsNPを、125I−VEGF165のPAE/NP細胞への結合ならびにHUVECの増殖および運動性のVEGF165刺激を阻害する能力についてアッセイする。より小さなフラグメントはPCRにより産生される。
【0047】
本発明者らの結果は、VEGFはニューロピリンのbドメインに結合し、そしてaおよびcドメインを必要としないことを示す。図19を参照のこと。NおよびC末端のますますより大きなセグメントを欠くbドメインのより小さな部分が、適切なオリゴヌクレオチドプライマーを使用してPCRにより調製され得る。次いで、増幅したcDNAは発現ベクターに連結され、COS細胞内で発現され、そして馴化培地を、図21AでsNPについて示されるようにして125I−VEGF165のPAE/NP1細胞への結合を阻害する能力について試験される。
【0048】
膜貫通領域を含む、さらなる短縮形態のNPが構築され得る。膜貫通の保持は、標的細胞表面での阻害分子の配向を容易にし得る。膜貫通領域含有分子の構築は、当該分野に公知の標準的な技術(本明細書に記載されるような簡便な制限エンドヌクレアーゼ切断部位またはPCR技術の利用を含むがこれに限定されない)により行われる。
【0049】
上述した方法により得られたクローン化sNP cDNAは、適切なプロモーターおよび適切な他の転写調節エレメントを含む発現ベクターへの分子クローニングによって組換え発現しされ得、そして原核生物または真核生物の宿主細胞に移行され、組換えsNPを産生し得る。このような操作のための技術は、Sambrookら(前出)に十分に記載され、そして当該分野で周知である。
【0050】
発現ベクターは、適切な宿主内での遺伝子のクローン化コピーの転写、およびそれらのmRNAの翻訳に必要とされるDNA配列として本明細書に定義される。このようなベクターは、種々の宿主(例えば、細菌、藍藻、真菌細胞、酵母細胞、植物細胞、昆虫細胞、および動物細胞)において真核生物遺伝子を発現するために使用され得る。
【0051】
特異的に設計したベクターは、宿主間(例えば、細菌細胞−酵母細胞、または細菌細胞−動物細胞、あるいは細菌細胞−昆虫細胞)でのDNAシャトルを許容する。適切に構築した発現ベクターは以下を含むべきである:宿主細胞内での自律的な複製のための複製起点、選択可能マーカー、限定数の有用な制限酵素部位、高いコピー数に対する潜在能力、および活性プロモーター。プロモーターは、RNAポリメラーゼをDNAに結合させ、そしてRNA合成を開始させるように指向されるDNA配列として定義される。強力なプロモーターは、mRNAを高頻度に開始させるプロモーターである。発現ベクターには、クローニングベクター、改変クローニングベクター、特別に設計したプラスミドまたはウィルスが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0052】
種々の哺乳動物発現ベクターが、哺乳動物細胞において組換えsNPを発現するために使用され得る。組換えsVEGF−Rの発現に適し得る、市販の哺乳動物発現ベクターとしては、pMC1neo(Stratagene)、pXT1(Stratagene)、pSG5(Stratagene)、EBO−pSV2−neo(ATCC 37593)pBPV−I(8−2)(ATCC 37110)、pdBPV−MMTneo(342−12)(ATCC 37224)、pRSVgpt(ATCC 37199)、pRSVneo(ATCC 37198)、pSV2−dhfr(ATCC 37146)、pUCTag(ATCC 37460)、およびgZD35(ATCC 37565)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
sNPをコードするDNAはまた、組換え宿主細胞内での発現のために、発現ベクター内にクローン化され得る。組換え宿主細胞は、原核生物または真核生物であり得、細菌細胞、酵母細胞、哺乳動物細胞(ヒト、ウシ、ブタ、サル、およびげっ歯類起源の細胞株を含むが、これらに限定されない)、および昆虫細胞(ショウジョウバエ、ガ、カ、およびアワヨトウの幼虫に由来する細胞株を含むが、これらに限定されない)を含むが、これらに限定されない。適切であり得、かつ市販の哺乳動物種に由来する細胞株としては、CV−1(ATCC CCL 70)、COS−1(ATCC CRL 1650)、COS−7(ATCC CRL 1651)、CHO−K1(ATCC CCL 61)、3T3(ATCC CCL 92)、NIH/3T3(ATCC CRL 1658)、HeLa(ATCC CCL 2)、C127I(ATCC CRL 1616)、BS−C−1(ATCC CCL 26)、およびMRC−5(ATCC CCL 171)が挙げられるが、これらに限定されない。適切であり得、かつ市販の昆虫細胞株としては、3M−S(ATCC CRL 8851)、ガ(ATCC CCL 80)、カ(ATCC CCL 194、および195;ATCC CRL 1660および1591)、およびアワヨトウの幼虫(Sf9,ATCC CRL 1711)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
発現ベクターは、多数の技術(形質転換、トランスフェクション、リポソームまたはプロトプラスト融合、およびエレクトロポレーションを含むがこれらに限定されない)のうちの任意の1つにより、宿主細胞に導入され得る。発現ベクターを含む細胞はクローン的に増殖され、そして個々に分析されて、その細胞がsNPタンパク質を産生するかどうかを決定する。sNP発現宿主細胞クローンの同定は、いくつかの手段(抗sNP抗体を用いた免疫学的反応性、放射標識されたVEGFへの結合、および宿主細胞分泌sNP活性の存在を含むが、これらに限定されない)によって実施され得る。
【0055】
組換え宿主細胞におけるsNPの発現の後、sNPタンパク質は、有糸分裂誘発を刺激せずにVEGFに結合し得る活性型のsNPを提供するために回収され得る。いくつかのsNP精製手順が使用に適している。sNPは、塩分画、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイト吸着クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、ヘパリンセファロースクロマトグラフィー、VEGF165リガンドアフィニティークロマトグラフィー、および疎水性相互作用クロマトグラフィーの種々の組み合わせ、または個々の適用によって、細胞溶解物および細胞抽出液から、または馴化培養培地から精製され得る。
【0056】
さらに、組換えsNPは、全長sNP、またはsNPのポリペプチドフラグメントに対して特異的なモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を用いて作製された免疫親和性カラムを使用することによって他の細胞タンパク質から分離され得る。
【0057】
好ましくは、sNPは、DNA構築物を含むsNPをCOS細胞(一過性のトランスフェクション)およびCHO細胞(安定なトランスフェクタント)にトランスフェクトすることによって精製され得る。この使用される構築物は、例えば、Hisタグおよびmycタグの両方でニューロピリン(neuropilin)のN末端の近く(VEGF結合に必要とされないドメインにおける)で二重タグ化され得る。レクチンカラムクロマトグラフィーは、sNP精製の第1の工程として有用である。この精製における第2の工程は、Hisタグ化タンパク質を、必要な場合、抗myc抗体を結合するニッケルカラムを使用することである。本発明者らは、細胞に対するVEGF結合を阻害する際に、タグ化sNPが完全に活性であることを示した(図21A)。非タグ化sNPを精製するための、レクチンとVEGF親和性クロマトグラフィーとの組み合わせは、インタクトなニューロピリン−1の精製についての実施例において示されるように十分である。
【0058】
次いで、精製sNPタンパク質は、VEGF媒介性内皮細胞(例えば、HUVEC)遊走および増殖ならびにラットの大動脈環(インビトロ血管新生)からの内皮細胞の遊走における効果について試験され得る。sNPタンパク質はまた、ニワトリCAM、およびマウス角膜モデルにおけるVEGF媒介性血管新生の阻害についてインビボで試験され得る。sNPと相互作用するはずのないFGF−2は、コントロールとして使用され得る。精製sNPタンパク質およびこのタンパク質をコードするDNAはまた、マウスモデル(特に、ヌードマウスへの皮下または正常位に増殖したPC3腫瘍)で試験され、血管新生、腫瘍増殖および転移の阻害を探し得る。
【0059】
本発明のインヒビターは、血管新生および腫瘍細胞移動性を含むVEGF媒介性活性の阻害に対して使用され得る。このインヒビターは、局所または静脈内のいずれかに使用され得る。局所適用については、この処方物は、約10ng〜約1mg/cm2/dayの速度で直接的に適用される。静脈内適用については、このインヒビターは、体重の約1mg〜約10mg/kg/dayの速度で使用される。内部使用については、この処方物は、移植された遅放性ポリマー材料からかまたは遅放性ポンプからかあるいは反復注入のいずれかで、処置されるべき領域に直接的に放出され得る。いずれかの場合における放出速度は、約100ng〜約100mg/day/cm3である。
【0060】
非局所的な適用については、このインヒビターは、標準的な薬学的実務に従って、薬学的組成物中において薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤(例えば、リン酸緩衝液、生理食塩水、リン酸緩衝化生理食塩水、リンゲル溶液など)との組み合わせで投与される。局所適用については、種々の薬学的処方物が、本発明の活性化合物の投与のために有用である。このような処方物は、以下を含むがこれらに限定されない:疎水性ワセリンまたはポリエチレングリコール軟膏剤のような軟膏剤;キサンタン(xanthan)ガムのようなガムを含み得るペースト剤;アルコール性溶液または水性溶液のような溶液;水酸化アルミニウムまたはアルギン酸ナトリウムゲルのようなゲル;ヒトまたは動物アルブミンのようなアルブミン;ヒトまたは動物コラーゲンのようなコラーゲン;アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロースおよびアルキルヒドロキシアルキルセルロースのようなセルロース(例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびヒドロキシプロピルセルロース);Pluronic.RTM.F−127により例示されるPluronic.RTM.Polyolのようなポリオキサマー;tetronic 1508のようなtetronics;ならびにアルギン酸ナトリウムのようなアルギン酸。
【0061】
本発明のsNPは、血管新生を負に調節する治療的に有効量の別の分子と組み合わされ得、この分子は、TNP−470、血小板因子4、トロンボスポンジン−1、メタロプロテアーゼの組織インヒビター(TIMP1およびTIMP2)、プロラクチン(16−Kdフラグメント)、アンジオスタチン(プラスミノゲンの38−Kdフラグメント)、エンドスタチン、bFGF可溶性レセプター、トランスフォーミング増殖因子β、インターフェロンα、可溶性KDRおよびFLT−1レセプター、ならびに胎盤プロリフェリン(proliferin)関連タンパク質であり得るがこれらに限定されない。
【0062】
本発明のsNPはまた、化学療法剤と組み合わされ得る。
【0063】
本発明のsNPをコードするDNAは、遺伝子治療の型で使用され、そして当業者に公知の任意の方法によって宿主に送達され、VEGFに関連する障害を処置し得る。
【0064】
本発明の好ましい実施態様は、さらなる腫瘍増殖および最終的な転移を予防するために固形腫瘍の血管新生を阻害する方法に関する。この目標のために、遺伝子移入が近づき得る任意の固形腫瘍または腫瘍を囲む領域が、開示された治療適用の標的である。sNPをコードし、組換えウイルス性または非ウイルス性に基づく遺伝子移入系の中に収容されるDNAは、当該分野で公知である任意の多数の手順によりこの腫瘍の近傍内の標的細胞に指向され得る。この手順は、以下を含むがこれらに限定されない(a)腫瘍内部の部位およびこの腫瘍の周囲の部位に有効量のDNAを投与することと組み合わされる外科的手順(可能な場合、腫瘍の一部または全体の最初の除去を含む);(b)この腫瘍の部位中または近接部位への直接的な遺伝子移入ビヒクルの注入;ならびに、(c)当該分野で公知である技術を使用する遺伝子移入ベクターおよび/または遺伝子産物の局在化送達または全身的な送達。
【0065】
VEGFまたはニューロピリン発現細胞を含む任意の固形腫瘍は、処置のための潜在的な標的である。例えば、決して限定としては列挙しないが、遺伝子治療適用に特に脆弱な固形腫瘍は、以下である;(a)神経膠芽細胞、星状細胞腫、神経芽腫、髄膜細胞腫、上衣細胞腫を含むが必ずしもこれらに限定されない中枢神経系の新生物;(b)本来の位置での癌髄様癌、管状腺癌、浸潤(浸潤する)癌および粘液性癌腫を含むがその部位の癌に限定されない前立腺、精巣、子宮、頸、卵巣乳房のような組織でのホルモン依存性癌;(c)皮膚および眼の黒色腫を含むがこれらに限定されない黒色腫;(d)扁平上皮癌、紡錘体癌、小細胞癌、腺癌および大細胞癌を少なくとも含む肺の癌;ならびに(e)少なくとも大腸の腺癌を含む、食道、胃、小腸、結腸、結腸直腸、直腸、および肛門領域のような胃腸管系の癌。
【0066】
sNPをコードするDNAフラグメントは、ウイルス性または非ウイルス性に基づく方法によって、全身的にまたは哺乳動物宿主の固形腫瘍の近傍における標的細胞に対してかのいずれかで送達され得る。本発明に利用され得るウイルスベクター系は、以下を含むがこれらに限定されない;(a)アデノウイルスベクター;(b)レトロウイルスベクター;(c)アデノ随伴ウイルスベクター;(d)単純疱疹ウイルスベクター;(e)SV40ベクター;(f)ポリオーマウイルスベクター;(g)パピローマウイルスベクター;(h)ピコナウイルスベクター;および(i)ワクシニアウイルスベクター。
【0067】
本発明のsNPをコードするDNAを含む組換えウイルスまたはベクターは、好ましくは、固形腫瘍および/またはこの固形腫瘍に近接する静止状態の組織(例えば、脂肪組織または筋組織)への直接注入によりこの宿主に投与される。もちろん、腫瘍細胞を標的とされる脂肪組織または筋組織の領域にトランスフェクトすることは、有用である。これらの周囲の細胞におけるsNPの一過性発現は、これらのタンパク質の局所的な細胞外増加を生じ、そしてVEGFとの結合を促進し、これによりこのレセプターへのVEGFの結合を阻害する。
【0068】
また適切である非ウイルス性ベクターは、例えば、リポソーム媒介性またはリガンド/ポリ−L−リジン結合体(例えば、アシアロ糖蛋白媒介性送達系のようなDNA脂質複合体を含む(例えば、Felgnerら、1994、J.Biol.Chem.269:2550〜2561;Derossiら、1995、Restor.Neurol.Neuros.8:7〜10;およびAbcallahら、1995、Biol.Cell 85:1〜7を参照のこと)。「裸」のDNAの直接注入もまた、使用され得る。
【0069】
本発明はまた、本発明の薬学的組成物の1つ以上の成分で充填された1つ以上の容器を含む薬学的パックまたはキットを提供する。必要に応じて、薬学的または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府機関による規定される形態での通知は、このような容器に付随し得、この通知は、ヒト投与についての製造機関、使用機関、または販売機関による認可を示す。
【0070】
以上または以下の引用される全ての参考文献は、本明細書中で参考として援用される。
【実施例】
【0071】
本発明はさらに、以下の実施例を例証する。これらの例示は、本発明の理解を目的に提供され、その限定として解釈されない。
【0072】
(実施例1)
(実験手順)
(材料)
トランスフェクションのための細胞培養培地、リポフェクチンおよびリポフェクタミン試薬をLife Technologiesから購入した。ヒト組換えVEGF165およびVEGF121は、以前に記載されるようにヒトVEGF165またはVEGF121のいずれかをコードする組換えバキュロウイルスベクターを用いて感染されたSf−21昆虫細胞において産生された(Cohenら、Growth Factors、7、131〜138(1992);Cohenら、J.Biol.Chem.、270、11322〜11326(1995)。GST VEGFエキソン7+8融合タンパク質をE.coliにおいて調製し、そして以前に記載されるように精製した(Sokerら、J.Biol.Chem.、271、5761〜5767(1996))。ヘパリン、ハイグロマイシンBおよびプロテアーゼインヒビターをSigma(St.Louis、MO)から購入した。125I−ナトリウム、32P−dCTP、およびGeneScreen−Plusハイブリダイゼーション転移膜をDuPont NEN(Boston、MA)から購入した。ジスクシンイミジルスベリン酸(DSS)およびIODO−BEADSをPierce Chemical Co.(Rockford、IL)から購入した。Con AセファロースをPharmacia LKB Biotechnology Inc.(Piscataway、NJ)から購入した。RNAzol−BをTEL−TEST Inc.(Friendswood、TX)から購入した。銀染色キットおよびTrans−Blot PVDF膜をBio−Rad Laboratories(Hercules、CA)から購入した。複数組織ノザンブロット膜をClontech(Palo Alto、CA)から購入した。ポリA Tract mRNA単離キットをPromega(Madison、WI)から購入した。RediPrime DNA標識キットおよび分子量マーカーをAmersham(Arlington Heights、IL)から購入した。プラスミド:pcDNA3.1をInvitrogen(Carlsbad、CA)から購入し、そしてCMVプロモーターを含み、かつハイグロマイシンBホスホリラーゼをコードするpCPhygroは、Dr.Urban Deutsch(Max Plank Institute、Bad Nauheim、Germany)によって親切に提供された。制限エンドヌクレアーゼおよびリガーゼをNew England Biolabs,Inc.(Beverly、MA)から購入した。NT−B2写真用エマルジョンおよびX線フィルムをEastman Kodak Company(Rochester NY)から購入した。
【0073】
(細胞培養)
ヒト臍帯静脈EC(HUVEC)をAmerican Type Culture Collection(ATCC)(Rockville、MD)から入手し、そして20%ウシ胎児血清(FCS)ならびにグルタミン、ペニシリンおよびストレプトマイシン混合物(GPS)を含むM−199培地中でのゼラチンコートディッシュ上で増殖した。塩基性FGF(2ng/ml)を1日おきに培養培地に添加した。親ブタ大動脈内皮(PAE)細胞およびKDRを発現するPAE細胞(PAE/KDR)(Waltenbergerら、J.Biol.Chem.269、26988〜26995(1994))は、Dr.Lena Claesson−Welshにより親切に提供され、そして10%FCSおよびGPSを含むF12培地で増殖した。MDA−MB−231細胞およびMDA−MB−453細胞を、ATCCから入手し、そして10%FCSおよびGPSを含むDMEMで増殖した。ヒト黒色腫細胞株である、RU−mel、EP−melおよびWK−melは、Dr.Randolf Byer(Boston University Medical School、Boston、MA)から親切に提供され、そして2%FCS、8%ウシ血清およびGPSを含むDMEMで増殖した。ヒト転移性前立腺癌であるLNCaP細胞および前立腺癌であるPC3細胞は、Dr.Michael Freeman(Children’s Hospital、Boston、MA)から親切に提供され、そして5%FCSおよびGPSを含むRPMI 1640で増殖した。
【0074】
(精製およびタンパク質配列決定)
150cmディッシュで増殖された約5×108MDA−MB−231細胞を5mM EDTAを含むPBSで洗浄し、掻き取り、そして500gで5分間遠心分離した。この細胞ペレットを150mlの20mM HEPES、pH8.0、0.5%TritonX−100ならびに1mM AEBSF、5μg/mlロイペプチンおよび5μg/mlアプロチニンを含むプロテアーゼインヒビターを用いて氷上で30分間溶解し、そしてこの溶解物を30,000×gで30分間遠心分離した。MnCl2およびCaCl2を、各々1mMの最終濃度を得るように上清に添加した。この溶解物を、Con Aセファロースカラム(7ml)に吸収し、そして結合タンパク質を、15mlの20mM HEPES、pH8.0、0.2M NaCl、0.1%TritonX−100および1M メチル−α−D−マンノピラノシドを用いて0.2ml/minで溶出した。この溶出物を30分間隔で二度さらに繰り返した。このCon Aカラム溶出物をプールし、そして以前に記載されるように調製された、約150μgのVEGF165を含む0.5mlのVEGF165−セファロースビーズとともに4℃で12時間インキュベートした(WilchekおよびMiron、Biochem.Int.4、629〜635.(1982))。このVEGF165−セファロースビーズを、50mlの20mM HEPES、pH8.0、0.2M NaClおよび0.1%TritonX−100、次いで25mlの20mM HEPES、pH8.0を用いて洗浄した。このビーズをSDS−PAGE緩衝液中で煮沸し、結合タンパク質を6%SDS−PAGEによって分離した。セミドライ電気ブロッター(Hoeffer Scientific)を使用して、タンパク質をTransBlot PVDF膜に転移し、そしてこのPVDF膜を40%メタノール中の0.1%クマシーブリリアントブルーで染色した。130〜140kDaダブレットにおける2つの顕著なタンパク質を別々に切り出し、Harvard Microchemistry施設(Cambrige、MA)のDr.William Laneにより提供されるサービスとしてApplied Biosystems model 477A微量配列決定機を使用してN末端の配列決定をした。
【0075】
(発現クローニングおよびDNA配列決定)
相補的DNA(cDNA)を5μgの231mRNAから合成した。二本鎖cDNAをEcoRIアダプターに連結し、そして5〜20%酢酸カリウム勾配でサイズ分画した。2kbよりも大きいDNAフラグメントを真核生物発現プラスミドpcDNA3.1に連結した。このプラスミドライブラリーをE.coliにトランスフェクトし、約1×107の個々のクローンの一次ライブラリーを生じた。形質転換された細菌の一部を240プールに分割し、これら各々は、約3×103の個々のクローンを表す。各プールから調製されたDNAを使用し、製造業者の指示に従いリポフェクチン試薬を使用して12ウェルディッシュ中に播種されたCOS−7細胞をトランスフェクトした。トランスフェクションの3日後に、この細胞を1μg/mlヘパリンの存在下で125I−VEGF165(10ng/ml)とともに氷上で2時間インキュベートし、洗浄し、PBS中の4%パラホルムアルデヒドを用いて固定した。個々の細胞に結合する125I−VEGF165は、記載されるように、単層を写真用エマルジョン、NT−B2とともに重層し、そして2日後にこのエマルジョンを現像することによって検出された(Gearingら、1989)。7つの陽性DNAプールを同定し、この陽性プールのうちの1つからのDNAを使用し、E.coliを形質転換した。このE.coliを50の別々のプールにさらに分割し、各プールが約100クローンを表す、50のLBアンピシリンディッシュ上に播種した。これらのプールから作製されたDNAをCOS−7細胞にトランスフェクトし、上記のように125I−VEGF165結合についてスクリーニングした。20の陽性プールをこの工程で検出し、そしてそれらの対応するDNAを使用し、E.coliを形質転換した。各プールを別々のLBアンピシリンディッシュ上に播種し、DNAを96の個々のコロニーから調製し、そして上記のようにトランスフェクトされたCOS−7細胞に対する125I−VEGF165結合について96ウェル二次元格子においてスクリーニングした。7つの単独のクローンをこの工程の陽性として同定した。この7つの陽性プラスミドクローンを増幅し、そしてそれらのDNAを制限酵素消化によって分析した。6つのクローンは、消化の同一消化パターンを示し、そして1つは異なっていた。各々の群からの1つのクローンを自動化DNA配列決定に供した。
【0076】
(ノザン分析)
製造業者の指示に従いRNAzolを使用して、培養中の細胞から総RNAを調製した。20μgRNAのサンプルを1%ホルムアルデヒド−アガロースゲルで分離し、そしてGeneScreen−Plus膜に転写した。この膜を、ORF中のヌクレオチド63〜454に対応する、ヒトVEGF165R/NP−1 cDNAの32P標識フラグメントを用いて63℃で18時間ハイブリダイズした。この膜を洗浄し、そしてX線フィルムに18時間曝露した。市販の複数のヒト成人組織のmRNAブロット(Clonetech、2μg/レーン)を、同様の様式で、ヒトNP−1についてプローブした。この複数組織ブロットを0.5%SDSの存在下で煮沸により剥がし、そしてこのORFのヌクレオチド2841〜3251に対応するKDR cDNAの32P標識フラグメントを用いて再プローブした(Termanら、Oncogene 6、1677〜1683(1991))。
【0077】
(PAE細胞のトランスフェクション)
親PAE細胞およびKDRを発現するPAE細胞(PAE/KDR)(Waltenbergerら、1994)を、Lena Claesson−Welsh博士から入手した。ヒトNP−1 cDNAを、XhoIおよびXbaI制限酵素を用いて消化し、そしてpCPhygroの対応する部位にサブクローニングし、pCPhyg−NP−1を産生した。PAEおよびPAE/KDR細胞を、6cmディッシュで増殖し、製造業者の指示に従いリポフェクタミンを使用して5μgのpCPhyg−NP−1をトランスフェクトした。細胞をさらに48時間増殖させ、そしてこの培地を、200μg/mlのハイグロマイシンBを含む新鮮な培地と交換した。2週間後、単離されたコロニー(5〜10×103細胞/コロニー)を48ウェルディッシュの別々のウェルに移し、そして200μg/mlハイグロマイシンBの存在下で増殖した。VEGF165R/NP−1(PAE/NP−1)を発現するか、またはVEGF165R/NP−1およびKDRを共発現する(PAE/KDR/NP−1)安定なPAE細胞クローンを、125I−VEGF165の結合および架橋によってVEGF165レセプター発現についてスクリーニングした。一過性のトランスフェクションについては、PAE/KDR細胞を、上記のようにVEGF165R/NP−1を用いてトランスフェクトし、そして3日後に125I−VEGF165架橋分析を実行した。
【0078】
(VEGFの放射ヨウ素化、結合および架橋実験)
IODO−BEADSを使用するVEGF165およびVEGF121の放射ヨウ素化を、以前に記載されるように実行した(Sokerら、J.Biol.Chem.272、31582〜31588(1997))。この比活性は、40,000〜100,000cpm/ngタンパク質で変動した。125I−VEGF165および125I−VEGF121を使用する結合および架橋実験を、以前に記載されるように実行した(Gitay−Gorenら、J.Biol.Chem.267、6093〜6098(1992);Sokerら、J.Biol.Chem.271、5761〜5767(1996))。VEGF結合は、γカウンターで細胞に関連する放射活性を測定することによって定量された(Beckman、Gamma5500)。カウントは3ウェルの平均を表す。全ての実験を少なくとも3回繰り返し、そして同様の結果を得た。結合実験の結果を、LIGANDプログラム(MunsonおよびRodbard、1980)を使用するスキャッチャードの方法によって分析した。125I−VEGF165および125I−VEGF121の架橋複合体を、6%SDS/PAGEによって分離し、そしてこのゲルをX線フィルムに曝露した。その後、X線フィルムを、IS−1000デジタル画像処理システム(Alpha Innotech Corporation)を使用することによって走査した。
【0079】
(VEGF165Rの精製)
231細胞の細胞表面レセプターに対する125I−VEGF165の架橋は、165〜175kDa標識複合体の形成を生じる(Sokerら、J.Biol.Chem.271、5761〜5767(1996))。これらの細胞は、約1〜2×105VEGF165結合部位/細胞を有する。VEGF165とは対照的に、VEGF121は、231細胞に結合せず、そしてリガンド−レセプター複合体を形成しない(Sokerら、J.Biol.Chem.271、5761〜5767(1996))。231細胞中の相対的に高いVEGF165Rの数および全く検出可能なKDRまたはFlt−1 mRNAが欠乏すること(示さず)は、これらの細胞がVEGF165R精製のために有用な供給源であることを示唆する。予備的な特徴付けは、VEGF165Rが糖タンパク質であることを示した。従って、約5×108細胞から調整された231細胞溶解物がCon Aセファロースカラムに吸収された。Con Aカラムから溶出される結合タンパク質を、VEGF165セファロースとともにインキュベートし、そしてこのVEGF165親和性精製タンパク質をSDS−PAGEおよび銀染色により分析した(図9、レーン2)。約130〜135kDaの分子量である顕著なダブレットが、検出された。このサイズは、約130〜135kDaのサイズであるレセプターに結合した40〜45kDaのVEGF165の165〜175kDa複合体の形成と一致する(図9、レーン1)。この2つのバンドを別々に切り出し、そしてN末端アミノ酸配列決定を実行した(図1、右)。上側および下側のバンドの両方は、同様なN末端アミノ酸配列を有しており、この配列は、マウス(Kawasakiら、J.Neurobiol.29,1〜17(1995))およびヒトニューロピリン−1(NP−1)(HeおよびTessier−Lavigne、Cell 90739〜751(1997))のN末端領域における推定アミノ酸配列に対して高度な配列相同性を示した。
【0080】
(231細胞由来mRNAからのVEGF165Rの発現クローニング)
この精製に伴って、VEGF165Rを発現クローニングによってクローン化した(AruffoおよびSeed、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84、8573〜8577(1987a);AruffoおよびSeed、EMBO J.、6、3313〜3316(1987b);Gearingら、EMBO J.8、3667〜3676(1989))。発現クローニングについて、231細胞mRNAを使用し、真核細胞発現プラスミド中に約107クローンのcDNAライブラリーを調製した。このプラスミドライブラリーで形質転換されたE.coliをプールに分割した。各々のプールから調製されるDNAを別々のウェルのCOS−7細胞にトランスフェクトし、そして個々の細胞を、写真用エマルジョンで重層された単層のオートラジオグラフィによって検出されるように、125I−VEGF165に結合する能力についてスクリーニングした(図2A)。サブプーリングおよびスクリーニングの3ラウンドの後に、7つの単一陽性cDNAクローンを得た。図2Bは、これらの単一の陽性クローンのうちの1つ(クローンA2)を用いてトランスフェクトされたCOS−7細胞に対する125I−VEGF165の結合を示す。
【0081】
制限酵素分析は、7つの陽性単一クローンのうちの6つが同一の制限消化パターンを有するが、1つのクローンが異なる(示さず)パターンを有することを示した。これらの同様のcDNAクローンのうちの1つ、クローンA2(図3)の配列決定は、それがヒト発現配列タグデータバンク(dbEST)由来の配列と同一であることを示した。この配列はまた、マウスニューロピリン、NP−1(Kawakamiら、J.Neurobiol 29、1〜17(1995))の配列に対して高い割合の相同性を示した。本発明者らが、ヒトVEGF165Rをクローン化した後に、2つのグループがセマフォリン(semaphorin)IIIのラットおよびヒトレセプターのクローニングを報告し、そしてそれらがNP−1であると同定した(HeおよびTessier−Lavigne、Cell90、739〜751(1997);Kolodkinら、Cell 90、753〜762(1997))。この231細胞由来VEGF165R cDNA配列は、ヒトNP−1配列(HeおよびTessier−Lavigne、Cell 90、739〜751(1997)と実際は同一である(例外についての図説明文3を参照のこと)。きわめて、発現クローニングによって得られる推定アミノ酸配列(図3)は、N末端配列決定によって決定された、NP−1としてのVEGF165Rの同定を確認し(図1)、従って、本発明者らは、このVEGFレセプターをVEGF165R/NP−1と命名した。
【0082】
ヒトVEGF165R/NP−1のcDNA配列は、推定シグナルペプチドおよび膜貫通ドメインを表す2つの疎水性領域を有する923アミノ酸のオープンリーディングフレーム(ORF)を予測する(図3)。全体的に、この配列は、細胞表面レセプターの構造と一致する外部ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを予測する。図1に示されるように、タンパク質精製を介して得られたこのN末端配列は、21アミノ酸推定疎水性シグナルペプチドドメインの下流であり、従って、このシグナルペプチドドメインが切断され、そして除去されることを直接的に示す。40アミノ酸の短い細胞質の尾部は、231細胞の部分的なトリプシン消化により放出される可溶性VEGF165R/NP−1がインタクトなVEGF165R/NP−1と同じサイズであることを実証する結果と一致する(示さず)。
【0083】
異なる制限酵素プロフィールを有した発現クローニングにより得られた1つのクローンの配列分析は、VEGF165R/NP−1に対して約47%の相同性を有する931アミノ酸のオープンリーディングフレームを予測した(図4)。このヒトcDNAは、ラットニューロピリン−2(NP−2)と93%の配列相同性を有し、そして最近クローン化されたヒトNP−2と同一である(Chenら、Neuron、19、547〜559(1997))。
【0084】
(成人の細胞株および組織におけるVEGF165R/NP−1の発現)
NP−1遺伝子発現の報告は、今のところ発達している胚の神経系に限定されている(Takagiら、Dev.Biol.122、90〜100(1987);Kawakamiら、J.Neurobiol.29、1〜17(1995);Takagiら、Dev.Biol.170、207〜222(1995))。しかし、細胞表面VEGF165R/NP−1は、ECのような非ニューロン性成人細胞型および種々の腫瘍由来細胞と関連する(Sokerら、J.Biol.Chem.271、5761〜5767(1996))。ノザンブロット分析は、125I−VEGF165架橋された細胞がまた、VEGF165R/NP−1 mRNAを合成するか否かを決定するために実行された(図5)。VEGF165R/NP−1 mRNAレベルは、231細胞およびPC3細胞で最も高かった。VEGF165R/NP−1 mRNAは、HUVEC細胞、LNCaP細胞、EP−mel細胞およびRU−mel細胞においてより少ない程度で検出された。MDA−MB−453細胞およびWK−mel細胞中の発現は、あるとしてもほとんど存在しなかった。このVEGF165R/NP−1遺伝子発現パターンは、HUVEC細胞、231細胞、PC3細胞、LNCaP細胞、EP−mel細胞およびRU−mel細胞が、細胞表面VEGF165R/NP−1に125I−VEGF165を結合させるが、MDA−MB−453細胞およびWK−mel細胞がそうではないこと示す、本発明者らの以前の結果と一致した(Sokerら、J.Biol.Chem.271、5761〜5767(1996))。
【0085】
VEGF165R/NP−1遺伝子発現はまた、種々の成人組織において、KDR遺伝子発現と比較するノザンブロットによって分析された(図6)。VEGF165R/NP−1 mRNAレベルは成人の心臓および胎盤において比較的高く、そして肺、肝臓、骨格筋、腎臓および膵臓において比較的中程度であった。比較的低いレベルのVEGF165R/NP−1 mRNAは、成人の脳において検出された。興味深いことに、マウスおよびニワトリ脳におけるNP−1遺伝子発現の以前の分析は、この遺伝子が胚発生の間に主に発現され、そして出生後に大きく減少することを示唆した(Kawakamiら、J.Neurobiol.29、1〜17(1995);Takagiら、Dev.Biol.170、207〜222(1995))。KDR mRNAの組織分布は、心臓で高度に発現しないという例外を伴うがVEGF165R/NP−1のmRNAの組織分布と同様であった。これらの結果は、VEGF165R/NP−1が、心臓および胎盤のように血管新生が生じる組織を含む、成人の非ニューロン組織において広く発現されることを示す。
【0086】
(VEGF165R/NP−1に対するVEGF165結合の特徴付け)
VEGF165R/NP−1の結合性質を特徴付けるために、ブタ大動脈内皮(PAE)細胞は、VEGF165R/NP−1のcDNAを用いてトランスフェクトされた。このPAE細胞は、これらの発現研究のために選択された。なぜならば、PAE細胞は、KDRも、Flt−1も(Waltenbergerら、J.Biol.Chem.269、26988〜26995(1994))、VEGF165Rのいずれも発現していないからである。VEGF165R/NP−1(PAE/NP−1)を合成する安定な細胞株を確立し、そして125I−VEGF165結合実験を実行した(図7)。PAE/NP−1細胞に対する125I−VEGF165結合は、用量依存性の様式で増加し、そして約30ng/mlで飽和に達した。このことは、VEGF165R/NP−1が特異的VEGF165レセプターであることを実証する(図7A)。VEGF165結合のスキャッチャード分析は、約3.2×10-10MのKdを有する1つのクラスのVEGF165結合部位、および1細胞当たり約3×105の125I−VEGF165結合部位を明らかにした(図7B)。同様のKd値が、いくつかの独立して生成したPAE/NP−1クローンについて得られたが、このレセプター数はクローン毎に変動した(示さず)。PAE/NP−1細胞株に対する3×10-10MのKdは、HUVEC細胞および231細胞によって天然に発現されるVEGF165R/NP−1に対して得られる2〜2.8×10-10MのKd値と一致する(Gitay−Gorenら、J.Biol.Chem.267、6093〜6098(1992);Sokerら、J.Biol.Chem.271、5761〜5767(1996))。PAE/NP−1細胞に対する125I−VEGF165結合は、1μg/mlヘパリンによって増強され(示さず)、このことは、ヘパリンが、HUVEC細胞および231細胞上のVEGF165R/NP−1に対する125I−VEGF165結合を増強することを示す以前の研究と一致した(Gitay−Gorenら、J.Biol.Chem.267、6093〜6098(1992);Sokerら、J.Biol.Chem.271、5761〜5767(1996))。
【0087】
(VEGF165R/NP−1を発現している細胞に対するVEGFのアイソフォーム特異的結合)
VEGF165(VEGF121ではない)は、HUVEC細胞および231細胞上のVEGF165R/NP−1に結合する(Gitay−Gorenら、J.Biol.Chem.271、5519〜5523(1992);Sokerら、J.Biol.Chem.271、5761〜5767(1996))。VEGF165R/NP−1を用いてトランスフェクトされた細胞が、同一の結合特異性を有するか否かを確認するために、PAE/NP−1細胞を、125I−VEGF165または125I−VEGF121とともにインキュベートし、その後、架橋した(図8)。125I−VEGF165は親PAE細胞に結合しなかったが(図8、レーン3)、VEGF165R/NP−1を介してPAE/NP−1細胞に結合した(図8、レーン4)。VEGF165R/NP−1を用いて形成された放射標識複合体は、HUVEC細胞(図8、レーン1)およびPC3細胞(図8、レーン2)において形成された複合体と同様のサイズであった。一方、125I−VEGF121は、親PAE細胞(図8、レーン7)またはPAE/NP−1細胞(図8、レーン8)のいずれに対しても結合しなかった。これらの結果は、内因性VEGF165R/NP−1を発現している細胞(例えば、HUVEC細胞、231細胞およびPC3細胞)で生じるVEGFアイソフォーム特異的結合を実証し、これらの結果が、VEGF165R/NP−1 cDNAを用いてトランスフェクトされる細胞で複製され得、そしてVEGF165RおよびNP−1が同一であるという知見を支持し得る。
【0088】
(VEGF165R/NP−1およびKDRの同時発現が、KDRへのVEGF165の結合を変化させる)
VEGF165R/NP−1の発現が、VEGF165とKDRとの相互作用に何らかの影響を有するかどうかを決定するために、以前にKDRcDNAでトランスフェクトして安定なPAE/KDR細胞のクローンを産生したPAE細胞(Waltenbergerら、J.Biol.Chem.269、26988−26995(1994))を、VEGF165R/NP−1 cDNAとトランスフェクトし、そして両方のレセプター(PAE/KDR/NP−1)を発現する安定なクローンを得た。これらの細胞は、125I−VEGF165をKDR(図8、レーン6、上部の複合体)およびVEGF165R/NP−1(図8、レーン6、下部複合体)へ結合し、HUVEC(図8、レーン1)と類似した架橋特性を産生した。一方、PAE/KDR/NP−1細胞は、VEGF121のVEGF165R/NP−1と結合する能力がないことと一致し、125I−VEGF121に結合して、KDRとの複合体のみを形成する(図8、レーン9および10)。
【0089】
細胞中でKDRおよびVEGF165R/NP−1(図8、レーン6)が同時発現していることが明らかとなり、240kDaの125I−VEGF165−KDR複合体形成の程度は、親のPAE/KDR細胞と比較して増強された(図8、レーン5)。これらの結果は再現性があり、そして異なるクローンでの240kDaの125I−VEGF165−KDRの複合体形成の程度は、VEGF165R/NP−1の発現レベルと正の相関関係があった(データ示さず)。しかし、これらの異なるKDR結合の結果は、おそらくトランスフェクション後のクローンの選択に起因するということを決定的には除外することはできなかった。それゆえ、親のPAE/KDR細胞を、VEGF165R/NP−1 cDNAとトランスフェクトし、そして125I−VEGF165を、個々のクローンの間のKDR発現の何らかの多様性を除くために、3日後に細胞に対して結合および架橋させた(図9)。KDRを含む標識された240kDaの複合体が、親のPAE/KDR細胞で形成され(図9、レーン1)、そしてPAE/KDR細胞中に発現ベクターと共にトランスフェクトした(図9、レーン2)。しかし、125I−VEGF165を、VEGF165R/NP−1を過渡的に発現しているPAE/KDR細胞と架橋した場合、親のPAE/KDR細胞(図9、レーン1)および発現ベクターとトランスフェクトしたPAE/KDR細胞(図9、レーン2)と比較して、約4倍大きいより強烈に標識された240kDaの複合体が観察された(図9、レーン3)。これらの結果は、同じ細胞内におけるKDRおよびVEGF165R/NP−1遺伝子の同時発現が、VEGF165のKDRへの結合能力を増強することを示唆する。
【0090】
(GST−VEGFエキソン7+8融合タンパク質は、VEGF165のVEGF165R/NP−1およびKDRへの結合を阻害する)
本発明者らは、125I−VEGF165が、そのエキソン7にコードされたドメインを介してVEGF165R/NP−1に結合することを示した(Sokerら、J.Biol.Chem.271、5761−5767(1996))。さらに、VEGFエキソン7+8にコードされたペプチドを含むGST融合タンパク質(GST−Ex7+8)は、231細胞およびHUVECに関連したVEGF165R/NP−1への125I−VEGF165の結合を完全に阻害する(Sokerら、J.Biol.Chem.271、5761−5767(1996);Sokerら、J.Biol.Chem.272、31582−31588(1997))。PAE/NP−1細胞を添加した場合、融合タンパク質は、VEGF165R/NP−1への結合を完全に阻害した(図10、レーン1と比較したレーン2)。一方、125I−VEGF165のKDRへの結合は、全く阻害されなかった(図10、レーン3と比較したレーン4)。従って、これらの結果は、GST−Ex7+8が、VEGF165R/NP−1とは直接結合するが、KDRとは結合しないことを実証する。GST−Ex7+8の効果は異なっているが、細胞内においてVEGF165R/NP−1およびKDR(PAE/KDR/NP−1)の両方を同時発現する。図8および9の結果と一致して、PAE/KDR/NP−1細胞中の125I−VEGF165のKDRとの結合の程度(図10、レーン5)は、親のPAE/KDR細胞よりも大きかった(図10、レーン3)。興味深いことに、PAE/KDR/NP−1細胞において、GST−Ex7+8は、期待したように125I−VEGF165のVEGF165R/NP−1への結合を完全に阻害するだけでなく、予期しなかったKDRへの結合もまた実質的に阻害した(図10、レーン5と比較したレーン6)。GST−Ex7+8の存在下において、これらの細胞内での125I−VEGF165のKDRへの結合は、VEGF165R/NP−1を発現していない親のPAE/KDR細胞において見られたレベルに対して減少した(図10、レーン3および4と比較したレーン6)。融合タンパク質は、KDRに直接結合しないので、これらの結果は、125I−VEGF165のVEGF165R/NP−1への直接的な結合を阻害することが、125I−VEGF165のKDRへの間接的な結合を阻害することを示唆する。図8、9および10の結果を組み合わせると、VEGF165とVEGF165R/NP−1との相互作用が、KDRとVEGFの相互作用を増強することを示唆する。
【0091】
(ニューロピリン−1(neuropilin−1)は、アイソフォーム−特異的VEGF165レセプターである)
最近、本発明者らは、VEGF165と結合するがVEGF121とは結合せず、従って本発明者らがVEGF165Rと名づけた新規な130〜135kDaのVEGF細胞表面レセプターを記載した(Sokerら、J.Biol.Chem.271、5761−5767(1996))。本発明者らは、現在そのクローニングしたcDNAを発現するVEGF165Rを精製し、そしてこれがヒトニューロピリン−1(NP−1)と同一であることを示した(HeおよびTessier−Lavigne、Cell 90 739−751(1997))。VEGF165Rが、NP−1と同一であることの証拠およびNP−1が、VEGF165のレセプターとして機能することの証拠は、以下のようである:i)ヒトMDA−MB−231(231)細胞からのVEGF165Rタンパク質の精製は、VEGF親和性を用い、SDS−PAGEおよび銀染色法により130〜140kDaの二重線を得た。両方のタンパク質のN末端配列決定から、マウスNP−1との高い相同性が実証された、18のアミノ酸の同じN末端配列が得られた(Kawakamiら、J.Neurobiol.29、1〜17(1995));ii)本発明者らは、ヒト231細胞からVEGF165Rを精製した後、ヒトNP−1のクローニングを報告し(HeおよびTessier−Lavigne、Cell 90、739−751(1997))、そしてヒトVEGF165RのN末端配列が、ヒトNP−1のN末端領域の配列と同一であることを見出した;iii)231細胞cDNAライブラリーを用いた発現クローニングによりいくつかのcDNAクローンを単離し、そしてそれらの配列は、ヒトNP−1cDNA配列と同一であった(HeおよびTessier−Lavigne、Cell 90、739−751(1997))。精製および発現クローニングの組み合わせは、発現クローニングのみを用いた以前の研究よりも、NP−1タンパク質のN末端の明白な同定を可能にする利点を有する(HeおよびTessier−Lavigne、Cell 90、739−751(1997);Kolodkinら、Cell 90、753−762(1997));iv)NP−1遺伝子発現のノザンブロット分析は、以前の125I−VEGF165架橋実験と一致した(Sokerら、J.Biol.Chem.271、5761−5767(1996))。VEGF165がVEGF165Rに結合した細胞は、比較的多量のNP−1 m RNAを合成したが、一方、たとえあるにしても非常に少量のVEGF165結合を示す細胞は、たとえあるにしても大してNP−1 mRNAを合成しなかった;v)NP−1がPAE細胞において発現された場合、親細胞ではないがトランスフェクトされた細胞が、VEGF121とは結合できないが、VEGF165と結合し得、このことは、前述のHUVECおよび231細胞が示した、アイソフォームの結合特性と一致した(Sokerら、J.Biol.Chem.271、5761−5767(1996))。さらに、NP−1を発現するPAEとの125I−VEGF165結合のKdは、約3×10-10Mであり、以前の231細胞およびHUVECの結合Kd値である2〜2.8×10-10Mと一致した(Sokerら、J.Biol.Chem.271、5761−5767(1996));およびvi)VEGF165のNP−1ポスト−トランスフェクションを発現する細胞との結合は、このリガンドのHUVECおよび231細胞への結合であるので、ヘパリンの存在下においてより効果的であった(Gitay−Gorenら、J.Biol.Chem.267、6093−6098(1992);Sokerら、J.Biol.Chem.271、5761−5767(1996))。これらの結果を合わせると、VEGF165RがNP−1と同一であるということだけでなくアイソフォーム特異的な方法によって、VEGF165を結合する機能的レセプターであるということを示す。従って、本発明者らは、このVEGFレセプターをVEGF165R/NP−1と命名した。
【0092】
VEGF165R/NP−1 cDNAの発現クローニングに加えて、別のヒトcDNAクローンを、単離した。これから予測されるアミノ酸配列は、VEGF165R/NP−1のアミノ酸配列と47%相同性であり、そして最近クローニングされた、ラットニューロピリン−2(NP−2)と90%を超えて相同であった(Kolodkinら、Cell 90、753−762(1997))。NP−2は、コラプシン/セマフォリンファミリーのメンバーを選択的に結合する(Chenら、Neuron 19、547−559(1997))。
【0093】
NP−1が、VEGF165のレセプターとして働くという発見は、NP−1は、以前胚の発達中に神経系とのみ関連すると示されており(Kawakamiら、J.Neurobiol.29、1−17(1995);Takagiら、Dev.Biol.170、207−222(1995))、そしてごく最近、コラプシン/セマファリンファミリーのメンバーのレセプターとして働くことが発見された(HeおよびTessier−Lavigne、Cell 90、739−751(1997);Kolodkinら、Cell 90、753−762(1992))ために驚きであった。NP−1は、初めXenopusの視覚系の発達において同定された、130〜140kDaの膜貫通糖タンパク質である(Takagiら、Dev.Biol.122、90−100(1987);Takagiら、Neuron 7、295−307(1991))。神経系におけるNP−1の発現は、発達中および特にアクソンが神経網を活発に形成している場合、それらの発達段階に関連して、空間的および時間的に高く制御される(Fujisawaら、Dev.Neurosci.17、343−349(1995);Kawakamiら、J.Neurobiol.29、1−17(1995);Takagiら、Dev.Biol.170、207−222(1995))。NP−1タンパク質は、ニューロンのアクソンとは関連があるが、小孔とは関連がない(Kawakamiら、J.Neurobiol.29、1−17(1995))。機能的には、ニューロピリンは、インビトロにおいて視覚神経繊維の神経突起成長の促進を示し(Hirataら、Neurosci.Res.17、159−169(1993))、そして細胞の接着性の促進を示した(Tagakiら、Dev.Biol.170、207−222(1995))。標的化されたNP−1の破壊によって、末梢神経系の遠心性繊維の軌道に重篤な異常を生じる(Kitsukawaら、Neuron 19、995−1005(1997))。これらの研究にもとづいて、NP−1が、アクソンの成長およびガイダンスにおいて神経細胞認識分子の役割を果たしていることが示唆された(Kawakamiら、J.Neurobiol.29、1−17(1995);HeおよびTessier−Lavigne、Cell 90、739−751(1997);Kitsukawaら、Neuron 19、995−1005(1997);Kolodkinら、Cell 90、753−762(1997))。
【0094】
本発明者らの結果は、最初、Xenopus、ニワトリ、およびマウスにおいて発現しているNP−1が、発達および初期の出生後段階を制限していることを示した初期の研究(Fujisawaら、Dev.Neurosci.17、343−349(1995);Kawakamiら、J.Neurobiol.29、1−17(1995);Takagiら、Dev.Biol.170、207−222(1995))とは逆に、VEGF165R/NP−1がまた、成体組織においても発現していることを示した。例えば、マウスにおいてNP−1は、発達中の神経系で9日目に背根神経節において発現され始め、15日目に中断される(Kawakamiら、J.Neurobiol.29、1−17(1995))。本発明者らのヒト成体組織のノーザンブロット分析が、心臓、胎盤、肺、肝臓、骨格筋、腎臓および膵臓において、VEGF165R/NP−1 mRNA転写産物の相対的に高レベルを実証した。興味深いことに、マウス神経系の発現の研究と一致して、成人の脳において非常に少ない相対的な発現がみられる(Kawakamiら、J.Neurobiol.29、1−17(1995))。VEGF165R/NP−1はまた、ECおよび種々の腫瘍由来の細胞を含む培養された多くの非神経細胞株において発現される。これらの細胞におけるVEGF165R/NP−1の考えられる機能は、以下に考察される脈管形成を媒介している可能性がある。
【0095】
さらに、NP−1は、ラットE14脊髄および背根神経節(DRG)組織から得られたcDNAライブラリーの発現クローニングによりコラプシン/セマフォリンファミリーのレセプターとして同定された(HeおよびTessier−Lavigne、Cell 90、739−751(1997);Kolodkinら、Cell 90、753−762(1997))。コラプシン/セマフォリン(コラプシン−D−1/セマIII/セムD)は、反発的な成長円錐およびアクソンガイダンスにおいて機能する膜貫通および分泌糖タンパク質の大きなファミリーを含む(Kolodkinら、Cell 75、1389−1399(1993))。DRG細胞のセマIIIの反発的な効果は、抗NP−1抗体によりブロックされた(HeおよびTessier−Lavigne、Cell 90、739−751(1997);Kolodkinら、Cell 90、753−762(1997))。NP−1に結合しているセマIIIのKdは0.15〜3.25×10-10Mであり(HeおよびTessier−Lavigne、Cell 90、739−751(1997);Kolodkinら、Cell 90、753−762(1997))、これは約3×10-10Mである、VEGF165R/NP−1に結合するVEGF165の値と類似している。これらの結果は、明らかに異なる生物学的活性を有する2つの構造的に異なるリガンド、一方のEC移動および増殖のVEGF誘導刺激、および他方の神経細胞のセマIII誘導相反化学斥力が、同じレセプターに結合し、類似した親和力を有することを示す。興味深い疑問は、2つのリガンドがVEGF165R/NP−1の同じ部位に結合するか、または異なった部位に結合するかである。VEGF165R/NP−1は、その外部ドメインに5つの別々のドメインを有し、そしてそれは、NP−1のタンパク質モジュールのこの多様性は、NP−1のための複数の結合リガンドの可能性と一致することが示唆されてきた(Takagiら、Neuron 7、295−307(1991);Feinerら、Neuron 19 539−545(1997);HeおよびTessier−Lavigne、Cell 90、739−751(1997))。予備的な分析は、セマIIIとVEGF165R/NP−1に結合するVEGFの原因であるVEGFエキソン7との間の配列相同性で全く大きな値を示さなかった(Sokerら、J.Biol.Chem.271、5761−5767(1996))。しかし、それらは、2つのリガンド間においていくつかの3次元構造が類似し得る。神経および血管の両方が、分岐および方向性移動を示すので、VEGF165が、いくらかの神経ガイダンス活性を示すのかどうか、およびセマIIIが、いくらかのEC成長因子活性を有するのかどうかという疑問がまた生じる。これらの可能性は、いまだ調べられていなかった。しかし、VEGFは、最適なEC成長因子活性のために2つのレセプター、KDRおよびNP−1を必要とし得(Sokerら、J.Biol.Chem.272、31582−31588(1997))、そしてセマIIIは、NP−1およびまだ決定されていない最適な化学斥力活性のための高親和性レセプターを必要とし得(Feinerら、Neuron 19、539−545(1997);HeおよびTessier−Lavigne、Cell 90、739−751(1997);Kitsukawaら、Neuron 19、995−1005(1997))、その結果、NP−1単独での存在は、これらのリガンドの新規な生物学的活性を示すために十分ではあり得ない。さらなる研究は、神経発生を制御するメカニズムと脈管形成を制御するメカニズムとの間にいくらかの関係があるのかどうかについて決定する。
【0096】
(脈管形成におけるVEGF165R/NP−1の役割)
VEGF165R/NP−1は、VEGF165のKDRへの結合を制御し、マウスでのKDRノックアウト実験によって確かめられた脈管形成の重要なレギュレーターであるRTKとの高い親和性を示す(Shalabyら、Nature 376、62−66(1995))。KDRのVEGF165に対する親和性は、VEGF165R/NP−1に対する親和性よりも約50倍高い(Gitay−Gorenら、J.Biol.Chem.287、6003−6096(1992);Waltenbergerら、J.Biol.Chem.269、26988−26995(1994))。VEGF165R/NP−1およびKDRが、同時発現する場合、125I−VEGF165のKDRへの結合は、KDR単独を発現する細胞発現と比較して約4倍まで増強される。結合の増強は、VEGF165R/NP−1およびKDRを同時発現する安定したクローン(PAE/KDR/NP−1細胞)においてそしてまた、過渡的にVEGF165R/NP−1クローンの選択が起こらないcDNAとトランスフェクトしたPAE/KDR細胞において実証され得る。逆に、PAE/KDR/NP−1細胞における125I−VEGF165のVEGF165R/NP−1への結合が、VEGFエキソン7+8(GST−Ex7+8)を含むGST融合タンパク質によって、完全に阻害される場合、KDRへの結合は、実質的に阻害され、KDR単独を発現する細胞において観察されるレベルに低下する。融合タンパク質は、VEGF165R/NP−1に直接結合するが、KDRには直接結合することができない(Sokerら、J.Biol.Chem.272、31582−31588(1997))。理論に束縛されることを望まないが、本発明者らは、VEGF165は、エキソン7にコードされたドメインを介してVEGF165R/NP−1に結合し、そしてVEGF165は、エキソン4にコードされたドメインを介してKDRとの結合を促進すると考えている(図11)。その比較的高いレセプター/細胞数(約0.2〜2×105)を有するVEGF165R/NP−1(Gitay−Gorenら、J.Biol.Chem.287、6003−6096(1992);Sokerら、J.Biol.Chem.271、5761−5767(1996))は、細胞表面上のVEGF165を濃縮する役割を果たし、それゆえ、KDRとVEGF165のより強い接近を提供するようである。あるいは、VEGF165R/NP−1との結合により、VEGF165は、KDRとの結合を増強する構造変化をうける。最終的な結果は、KDRシグナル伝達の上昇、およびVEGF活性の増加であった。本発明者らは、KDRとの結合の増強を実証し得るが、現在までのところ、本発明者らは、PAE/KDR細胞と比較した、PAE/KDR/NP−1細胞に対するVEGFの分裂促進性の増強は実証し得なかった。理由の1つは、これらの細胞株が、HUVECが行なう場合のように、VEGFに応答して容易に増殖しないことである(Waltenbergerら、J.Biol.Chem.269、26988−26995(1994))。それにもかかわらず、本発明者らは、KDRおよびVEGF165R/NP−1の両方に結合するVEGF165が、KDRにのみ結合するVEGF121よりも、HUVECのよりよい分裂促進因子であることを見出した(Keytら、J.Biol.Chem.271、5638−5646(1996b);Sokerら、J.Biol.Chem.272、31582−31588(1997))。さらに、GST−Ex7+8によるHUVECにおいてのVEGF165のVEGF165R/NP−1への結合阻害は、KDRへの結合を阻害し、そしてまた、VEGF165により誘導されたHUVEC増殖を阻害し、VEGF121により誘導されたレベルよりも低くする(Sokerら、J.Biol.Chem.272、31582−31588(1997))。これらの結果を組み合わせると、VEGF165の媒介におけるVEGF165R/NP−1の役割が示唆されるが、VEGF121の分裂促進因子活性における役割は示唆しない。二重レセプターが、成長因子の結合および活性を制御するという概念は、以前TGF−β、bFGFおよびNGFにおいて実証されている(Lopez−Casillasら、Cell 67、785−795(1991);Yayonら、Cell 64、841−848(1991);Barbacid、Curr.Opin.Cell Biol. 7、148−155(1995))。
【0097】
VEGF165R/NP−1と脈管形成との間の別の関連は、NP−1が、トランスジェニックマウスで局所的に過剰発現したという研究から明らかになる(Kitsuskawaら、Develop.121、4309−4318(1995))。NP−1の過剰発現は、子宮内において、胎齢15.5日以前に胚の致死およびマウスの死を引き起こし、そしてそのうち最も良く生き残ったものは、NP−1が、低レベルで発現していた。NP−1を過剰発現するマウスは、血管、心臓、および手足のような数の限られた非神経組織において形態学的な異常を示した。NP−1は、ECおよびECの周囲の間葉細胞の両方において発現した。胚は、正常な対応物と比較して、過剰なそして異常な毛細血管および血管を有し、そしていくらかの場合において拡張した血管も同様に有していた。いくつかのキメラマウスが、主に頭部や首に出血を示した。これらの結果は、VEGF165R/NP−1の局所的な過剰発現が、VEGF165の不適切な活性を引き起こし、その結果、脈管形成の増強および/または異常を媒介する可能性と一致する。NP−1と脈管形成との間の関連についての証拠の別の一部は、NP−1遺伝子の破壊を標的化されたマウスにおいて胚が、末梢神経系の重篤な異常を有したが、子宮内で10.5から12.5胎齢で死亡したのは、ほとんどがおそらく心臓血管系における異常のためであるということを示す最近の報告に起因する(Kitsukawaら、Neuron 19、995−1005(1997))。
【0098】
(VEGF165R/NP−1は、腫瘍由来細胞と関連している) 本発明者らが今までに検出した最も高い程度のVEGF165R/NP−1発現は、HUVECにおいて生じるよりもさらに、231乳癌細胞およびPC3前立腺癌細胞のような腫瘍由来細胞において生じた。この腫瘍細胞は、大量なレベルのVEGF165R/NP−1 mRNAおよび約200,000のVEGF165レセプター/細胞を発現する(Sokerら、J.Biol.Chem.271、5761−5767(1996))。一方、これらの腫瘍細胞は、KDRまたはFlt−1を発現せず、その結果、VEGF165R/NP−1は、これらの細胞と関連する唯一のVEGFレセプターである。それゆえ、この腫瘍細胞は、VEGF165R/NP−1が、KDRのバックグラウンドの欠如におけるVEGF165の機能的なレセプターかどうかを試験するために有用である。現在までのところ、本発明者らは、VEGF165R/NP−1が、レセプターチロシンのリン酸化により測定された腫瘍由来細胞におけるVEGF165シグナルを媒介することを示し得ない。それにもかかわらず、VEGF165は、生存、分化または、運動性の増加のようなまだ活性を決定していないが、腫瘍細胞でいくらかの誘導による効果を有し得る。最近の報告で、神経膠腫細胞が、VEGF165に結合するが、VEGF121には十分に結合しない190kDaのタンパク質を発現することを実証した(Omuraら、J.Biol.Chem.272、23317−23322(1997))。チロシンリン酸化の刺激のないことは、このレセプターへのVEGF165の結合において実証され得る。190kDaのアイソフォーム特異的レセプターが、VEGF165R/NP−1と関連があるかどうかについては、まだ知られていない。
【0099】
VEGF165R/NP−1は、VEGF165のための保存機能および隔絶機能を有し得る。VEGF165が、腫瘍細胞により産生され、そしてエキソン7にコードされるドメインを介して細胞上のVEGF165R/NP−1に結合することが想定され得る(Sokerら、J.Biol.Chem.271、5761−5767(1996))。次いで、蓄えられたVEGF165は、パラクリン様式で放出され腫瘍脈管形成を刺激し得る。あるいは、VEGF165R/NP−1は、VEGF165が、エキソン7にコードされたドメインを介した腫瘍細胞上のVEGF165R/NP−1に結合し、そしてまたをエキソン4にコードされたドメインを介して近傍のEC上のKDRに結合するジャクスタクリン効果を媒介し得る(Keytら、J.Biol.Chem.271、5638−5646(1996b))。そのようなメカニズムが、ECを誘引する腫瘍細胞のためにより効率的な方法を生じ得、それにより、腫瘍脈管形成を増強する。
【0100】
要約すると、本発明者らは、独立した精製および発現クローニング方法により、VEGFアイソフォーム特異的レセプターであるVEGF165Rが、神経系の胚発生において役割を果たすとして、そしてコラプシン/セマフォリンのレセプターであるとして以前に同定された細胞表面タンパク質である、NP−1と同一であることを実証した。さらに、VEGF165R/NP−1への結合は、VEGF165の、ECおよび腫瘍細胞上のKDRへの結合を増強する。
【0101】
(実験の理論的根拠)
本発明者らは、腫瘍細胞ニューロピリン−1が、腫瘍細胞の運動性を媒介し、そしてそれにより転移することを発見した。ボイデンチャンバー運動性アッセイにおいて、VEGF165(50ng/ml)が、用量応答様式で最大で2倍の刺激で231乳癌細胞の運動性を刺激する(図15A)。一方、VEGF121は、これらの細胞の運動性に効果を有さなかった(図15B)。231細胞は、KDRまたはFlt−1を発現しないことから、これらの結果は、腫瘍細胞が、直接VEGF165と応答することを示唆し、そしてVEGF165が、ニューロピリン−1を介したシグナル腫瘍細胞であり得ることを示唆する。癌細胞の運動性を誘導するVEGF165を媒介するための可能性のある候補は、PI3−キナーゼ(PI3−K)(Carpenterら、(1996)Curr.Opin.Cell Biol.8:153−158)である。231細胞は、KDRまたはFlt−1を発現しないことから、これらの結果は、腫瘍細胞が直接VEGF165と応答することを示唆し、そしてVEGF165が、ニューロピリン−1を介したシグナル腫瘍細胞であり得ることを示唆する。
【0102】
他のタイプの証拠は、ニューロピリン−1発現が、腫瘍細胞の運動性と関連し得るということである。本発明者らは、低い運動性および低い潜在的転移性を有するAT2.1細胞、および高い運動性および転移性を有するAT3.1細胞という、ダンニング(Dunning)ラット前立腺癌細胞の2つの改変体について分析した。架橋分析およびノーザンブロット分析は、AT2.1細胞は、ニューロピリン−1を発現しないが、AT3.1細胞は、豊富にニューロピリン−1を発現し、VEGF165と結合し得ることを示す(図16)。腫瘍切片の免疫染色により、AT3.1におけるニューロピリン−1の発現を確かめたが、AT2.1腫瘍では、確認できなかった。さらに、免疫染色は、皮下のAT3.1およびPC3腫瘍において、ニューロピリン−1を発現する腫瘍細胞が、腫瘍/真皮の境界の前面に優先的に侵入するのが見出されることを示す。より直接的に、ニューロピリン−1の発現が、運動性の増強と関係しているのかどうかを決定するために、ニューロピリン−1をAT2.1細胞において過剰発現させた(図17)。ニューロピリン−1を過剰発現する3つの安定なAT2.1クローン細胞が、ボイデンチャンバーアッセイにおいて運動性を増強した。これらの結果は、AT2.1細胞におけるニューロピリン−1の過剰発現が、それらの運動性を増強することを示す。合わせて考えると、腫瘍細胞上でのニューロピリン−1の発現が、運動性、転移性の表現型に関係しているようである。
【0103】
(実施例2)
(NP−1およびsNP−2の構築)
ニューロピリン−1およびニューロピリン−2の可溶性形態をコードしているcDNAを、PC3細胞mRNAから合成したオリゴdT−プライマーcDNAライブラリーからクローニングした。
【0104】
(可溶性ニューロピリン−1(sNP−1)のcDNAクローニング)
sNP−1のcDNAは、エキソンとエキソンの境の位置のアミノ酸641位の後のb2とcドメインとの間の全長のNP−1 cDNAから逸脱する。sNP−1クローンの3’末端は、3つの新規なアミノ酸および翻訳終止コドンをコードする28bpのイントロン配列を有する。
【0105】
b1ドメイン中から設計された、オリゴヌクレオチド(GAAGTATACGGTTGCAAGATA 配列番号16)を、sNP−1 cDNAの3’末端をクローニングするために3’RACE(cDNA末端の急速な増幅)に用いた。sNP−1 cDNAの全長を、sNP−1のオープンリーディングフレーム(ORF)の5’末端(GCGTTCCTCTCGGATCCAGGC 配列番号17)および3’末端(CAGGTATCAAATAAAATAC 配列番号18)のプライマーを用いてRT−PCRによりPC3ライブラリーから続いてクローニングした。sNP−1 cDNAを、sNP−1の43位と44位との間のアミノ酸のa1ドメインのN末端におけるHisおよびc−mycドメイン(アミノ酸 HHHHHHQQKLISQQNL 配列番号23)でタグ化した。完全にタグ化したsNP−1 cDNAを、哺乳動物の発現プラスミドであるpcDNA3.1にサブクローニングした。sNP−1のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を、それぞれ配列番号5および6として配列表に示す。
【0106】
(可溶性ニューロピリン−2(sNP−2)cDNAクローニング)
sNP−2 cDNAが、エキソンとエキソンの境の位置の、アミノ酸547位の後のb2ドメイン中のNP−2 cDNAの全長から逸脱する。sNP−2クローンの3’末端が、8つの新規なアミノ酸および翻訳終止コドンをコードする146bpのイントロン配列を有する。
【0107】
b1ドメイン中から設計された、オリゴヌクレオチド(GGCTGCCGGGTAACAGATGC 配列番号20)を、sNP−2 cDNAの3’末端をクローニングするために3’RACE(cDNA末端の急速な増幅)に用いた。sNP−2 cDNAの全長を、sNP−2のオープンリーディングフレーム(ORF)の5’末端(ATGGATATGTTTCCTCTC 配列番号21)および3’末端(GTTCTTGGAGGCCTCTGTAA 配列番号22)のプライマーを用いてRT−PCRによりPC3ライブラリーから続いてクローニングした。sNP−2 cDNAを、sNP−2の31位と32位との間のアミノ酸のa1ドメインのN末端におけるHisおよびc−mycドメイン(アミノ酸 HHHHHHQQKLISQQNL 配列番号19)でタグ化した。完全にタグ化されたsNP−2 cDNAを、哺乳動物の発現プラスミドであるpcDNA3.1にサブクローニングした。sNP−2のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を、それぞれ配列番号7および8として配列表に示す。
【0108】
(実施例3)
(可溶性NP−1の調製(ドメインABおよびC))
1.BamHI部位(100塩基目)とXbaI部位(4687塩基目)との間のNP−1の配列を、pBluscript II KS(+)(Stratagene、La Jola CA)のBamHI部位とXbaI部位との間にサブクローニングして、pBS−NP1を得た。
【0109】
2.PCRを、NP−1配列において以下のプライマーを用いて行なった:プライマー1(正方向):NP−1の2200塩基目のNdeI部位(太字および下線)
【0110】
【化1】
プライマー2(逆方向):6ヒスチジン(his−tag)およびXbaI部位(太字および下線)を含むNP−1の2823塩基目の膜貫通膜ドメインの外
【0111】
【化2】
PCR DNA産物(およそ、600bp)を、NdeIおよびXbaIを用いて消化し、そしてアガロースゲルから精製した。プラスミドpBS−NP1を、NdeIおよびXbaIを用いて消化し、そしてNP−1の細胞外部位を含む大きなフラグメントを、アガロースゲルから精製し、そしてベクターとして用いた。上述のPCR産物およびベクターのライゲーションを行ない、そして得られたプラスミドを、pBS−sNPhisと名づけた。
【0112】
3.プラスミドpBS−sNPhisを、BamHIおよびXbaIを用いて消化し、そしてNP−1の細胞外部分を含むフラグメント(his−tag含む)を、pCPhygro(上述の実施例およびSokerら、Cell 92:735(1998)に記載)のBamHIおよびXbaI部位にサブクローニングしてpCPhyg−sNPhisを得た。
【0113】
4.プラスミドpCPhyg−sNPhisを、CHO細胞にトランスフェクトし、そしてハイグロマイシン耐性クローンを選択し、そして可溶性NP−1の発現を試験した。可溶性NP−1を、ニッケルセファロースビーズを用いて培地より精製した。
【0114】
5.以下の手法により、クローンにおけるsNP−1の発現を試験した。培地を、24時間馴化し、そして馴化した培地を、24時間レクチンConAと共にインキュベートした。ConA結合原料をSDS−PAGEおよびニューロピリン−1のAドメインに対する抗体を用いるウェスタンブロッティングによって分析した。
【0115】
本明細書中を通して引用される参考文献は、本明細書中に参考として援用される。
【0116】
本発明は、特定の実施態様についての参照とともに記載されている。しかし、この適用は、その添付の請求項の精神および範囲を逸脱せずに、当業者によってなされ得るそれらの変更および置換を包含することが意図される。
(配列表)
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
【技術分野】
【0001】
(連邦政府委託研究に関する陳述)
本明細書に記載される研究は、一部、国立衛生研究所助成金CA37392およびCA45548により支援された。米国政府は、本発明に対して特定の権利を有する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、血管内皮増殖因子(VEGF)に関する。より詳細には、本発明は、VEGFの可溶性インヒビターおよびVEGFに関連する障害の処置におけるそれらインヒビターの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
血管は、酸素および栄養分が生組織に供給され、そして老廃物が生組織から除去される手段である。新脈管形成とは、新たな血管を形成するプロセスをいう。例えば、FolkmanおよびShing、J.Biol.Chem.267,10931−10934(1992)、Dvorakら、J.Exp.Med.、174、1275−1278(1991)による総説を参照のこと。従って、適切な場合には、新脈管形成は重要な生物学的プロセスである。それは、生殖、発生、および創傷修復に必須である。しかし、不適切な新脈管形成は、重篤なネガティブな結果を有し得る。例えば、多くの固形腫瘍は新脈管形成の結果として血管化されて初めて、それらの腫瘍は、十分な酸素および栄養分の供給を有し、そのことによって腫瘍が急速に増殖しそして転移し得る。新脈管形成の速度の適切な平衡状態での維持は、機能の範囲に対して重要であるから、それは、健康を維持するために慎重に調節されなければならない。新脈管形成プロセスは、血管内皮増殖因子(VEGF)および塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)のような、マイトジェンにより活性化される内皮細胞(EC)から分泌されるプロテアーゼによる、基底膜の分解から始まると考えられる。その細胞は、移動しそして増殖し、固形内皮細胞の出芽の形成を支質の空間内へもたらし、次いで血管ループが形成され、そして毛細管が接着結合の形成および新たな基底膜の沈着を伴い発生する。
【0004】
成体において、内皮細胞の増殖速度は、代表的に、身体の他の細胞型と比べて低い。これらの細胞の代謝回転時間は、1000日を超え得る。新脈管形成が急速な増殖を生じる生理学的例外は、代表的には、女性の生殖系および創傷治癒の間に見出されるように、緊密な調節下で起こる。
【0005】
新脈管形成の速度は、微小血管増殖のポジティブレギュレーターとネガティブレギュレーターとの間の局所的な平衡状態での変化を含む。血管新生増殖因子の治療的意味は、20年以上前に、Folkmanおよび共同研究者により最初に記載された(Folkman,N.Engl.J.Med.、285:1182−1186(1971))。体が新脈管形成の少なくともいくつかの制御を失う場合、異常な新脈管形成が起こり、過度または不十分な血管増殖のいずれかを生じる。例えば、潰瘍、発作、および心臓発作のような状態は、自然治癒に正常に必要とされる新脈管形成の欠如から生じ得る。対照的に、過度の血管増殖は、腫瘍増殖、腫瘍拡散、失明、乾癬、および慢性関節リウマチを生じ得る。
【0006】
従って、より高程度の新脈管形成が望ましい場合の例(血液循環の増加、創傷治癒、および潰瘍治癒)が存在する。例えば、最近の研究では、線維芽細胞増殖因子(FGF)ファミリー(Yanagisawa−Miwaら、Science、257:1401−1403(1992)およびBaffourら、J Vasc Surg、16:181−91(1992))、内皮細胞増殖因子(ECGF)(Puら、J Surg Res、54:575−83(1993))ならびに、より最近では、血管内皮増殖因子(VEGF)のような、心筋虚血および後肢虚血の動物モデルにおける側副動脈の発生を促進および/または増強させるための組換え血管新生増殖因子の使用の可能性が確証された(Takeshitaら、Circulation、90:228−234(1994)およびTakeshitaら、J Clin Invest、93:662−70(1994))。
【0007】
逆に、新脈管形成の阻害が望ましい場合の例も存在する。例えば、多くの疾患は、制御されない持続的な新脈管形成によりもたらされ、また、それらは時々、「新生血管形成」といわれる。関節炎において、新たな毛細血管は関節に侵入し、そして軟骨を破壊する。糖尿病において、新たな毛細血管は硝子体に侵入し、出血し、失明を引き起こす。眼球の新生血管形成は、失明の最も通常の原因である。腫瘍の増殖および転移は、新脈管形成依存性である。腫瘍は、腫瘍自身が増殖するために、新たな毛細血管の増殖を継続的に刺激しなければならない。
【0008】
VEGFが、新脈管形成の主要なレギュレーターであり得るという、増大する証拠が存在する(Ferraraら、Endocr.Rev.、13、18−32(1992);Klagsbrunら、Curr.Biol.、3、699−702(1993);Ferraraら、Biochem.Biophjs.Res.Commun.、161、851−858(1989)に総説される)。VEGFは、初めに、濾胞星状(folliculostellate)細胞の馴化培地から(Ferraraら、Biochem.Biophjs.Res.Commun.、161、851−858(1989)、そして種々の腫瘍細胞株から(Myokenら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、88:5819−5823(1991);Plouetら、EMBO.J.、8:3801−3806(1991))精製された。VEGFは、同時にU937細胞の馴化培地から精製された血管浸透性のレギュレーターである、血管浸透因子と同一であることが見出された(Keckら、Science、246:1309−1312(1989))。VEGFは、インビトロでは内皮細胞(EC)に対する特異的マイトジェンであり、インビボでは強力な血管新生因子である。VEGFの発現は、胚形成および女性の生殖周期の間に血管新生を受ける組織において、上方調節される(Brierら、Development、114:521−532(1992);Shweikiら、J.Clin.Invest.、91:2235−2243(1993))。高レベルのVEGFは、正常組織では発現されないが、腫瘍誘導性低酸素に応答して、種々の型の腫瘍で発現される(Shweikiら、Nature 359:843−846(1992);Dvorakら、J.Exp.Med.、174:1275−1278(1991);Plateら、Cancer Res.、53:5822−5827;Ikeaら、J.Biol.Chem.、270:19761−19766(1986))。VEGFに対して指向されるモノクローナル抗体を用いる腫瘍の処置は、腫瘍の新脈管形成の抑制に起因して、腫瘍質量の劇的な減少を生じた(Kimら、Nature、382:841−844(1993))。VEGFは、新生血管形成に関与する多くの病理学的状態およびプロセスにおいて原則的な役割を果すようである。従って、罹患した組織におけるVEGF発現の調節は、VEGF誘導性の新生血管形成/新脈管形成の処置または予防において、鍵であり得る。
【0009】
VEGFは、8つのエキソンを含む単一の遺伝子から選択的スプライシングにより産生される多くの異なるアイソフォームで存在している(Ferraraら、Endocr.Rev.、13:18−32(1992);Tischerら、J.Biol.Chem.、806:11947−11954(1991);Ferraraら、Trends Cardio Med.、3:244−250(1993);Polterakら、J.Biol.Chem.、272:7151−7158(1997))。ヒトVEGFアイソフォームは、各々が活性型ホモダイマーを作製し得る、121、145、165、189、および206アミノ酸のモノマーからなる(Polterakら、J.Biol.Chem、272:7151−7158(1997);Houckら、Mol.Endocrinol.、8:1806−1814(1991))。VEGF121およびVEGF165アイソフォームが、最も豊富である。VEGF121は、ヘパリンに結合せず、そして培養培地に完全に分泌される唯一のVEGFアイソフォームである。VEGF165は、それがヘパリンおよび細胞表面ヘパリン硫酸プロテオグリカン(HSPG)に結合し、そして部分的に培養培地に放出されるのみであるという点で、VEGF121と機能的に異なる(Houckら、J.Biol.Chem.、247:28031−28037(1992);Parkら、Mol.Biol.Chem.、4:1317−1326(1993))。残りのアイソフォームは、細胞表面および細胞外マトリックス質HSPGに全体的に関与する(Houckら、J.Biol.Chem.、247:28031−28037(1992);Parkら、Mol.Biol.Chem.、4:1317−1326(1993))。
【0010】
VEGFレセプターチロシンキナーゼ、KDR/Flk−1および/またはFlt−1は、ほとんどECにより発現される(Termanら、Biochem.Biophys.Res.Commun.、187:1579−1586(1992);Shibuyaら、Oncogene、5:519−524(1990);De Vriesら、Science、265:989−991(1992);Gitay−Goranら、J.Biol.Chem.、287:6003−6096(1992);Jakemanら、J.Clin.Invest.、89:244−253(1992))。分裂促進性、走化性および形態学的変化の誘導のような、VEGF活性は、Flt−1ではなくKDR/Flk−1により媒介されるようである(たとえ、両方のレセプターが、VEGFの結合の際にリン酸化を受けるとしても)(Millauerら、Cell、72:835−846(1993);Waltenbergerら、J.Biol.Chem.、269:26988−26995(1994);Seetharamら、Oncogene、10:135−147(1995);Yoshidaら、Growth Factors、7:131−138(1996))。最近、Sokerらは、ECおよび乳癌由来のMDA−MB−231(231)細胞のような種々の腫瘍由来の細胞株で発現される、新規なVEGFレセプターを同定した(Sokerら、J.Biol.Chem.、271:5761−5767(1996))。このレセプターは、VEGFアイソフォームがエキソン7にコードされる部分を含むことを必要とする。例えば、VEGF121およびVEGF165の両方は、KDR/Flk−1およびFlt−1に結合するが、VEGF165のみが、その新規なレセプターに結合する。従って、これは、アイソフォーム特異的レセプターであり、VEGF165レセプター(VEGF165R)と名付けられた。それはまた、189および206アイソフォームに結合する。VEGF165Rは、約130kDaの分子量を有し、そしてそれは、約2×10-10MのKdで、VEGF165に結合する(対してKDR/Flk−1に対しては、約5×10-12Mで結合する)。構造機能解析において、VEGF165は、VEGF121に存在しないエキソン7にコードされるドメインを介してVEGF165Rに結合することが直接示された(Sokerら、J.Biol.Chem.、271:5761−5767(1996))。しかし、そのレセプターの機能は不明であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
新脈管形成疾患の現在の処置は、不適切である。連続性の新脈管形成を防止する薬剤(例えば、薬物(TNP−470))、モノクローナル抗体、アンチセンス核酸およびタンパク質(アンギオスタチン(angiostatin)およびエンドスタチン(endostatin))が、現在試験されている。Battegay、J.Mol.Med.、73、333−346(1995);Hanahanら、Cell、86、353−364(1996);Folkman、N.Engl.J.Med.、333,1757−1763(1995)を参照のこと。抗新脈管形成タンパク質を用いた予備的な結果は有望だが、新規な抗新脈管形成治療の開発のために、新脈管形成に関与するリガンドおよびレセプターをコードする遺伝子を、同定する必要が依然存在する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の要旨)
本発明者らは、VEGF165R遺伝子(配列番号1)をコードするcDNAを単離し、そしてそのレセプターのアミノ酸配列(配列番号2)を推定した。本発明者らは、この新規なVEGFレセプターが、Flt−1またはKDR/Flk−1に構造的に関係なく、そして内皮細胞だけでなく、非内皮細胞(驚くことに腫瘍細胞を含む)によっても、発現されるということを発見した。
したがって、本発明は以下を提供する。
(1) VEGF165に特異的に結合し、そしてVEGF165媒介HUVEC増殖を減少させる、単離された可溶性ニューロピリン。
(2) 前記ニューロピリンが、ニューロピリン−1またはニューロピリン−2である、項目1に記載の可溶性ニューロピリン。
(3) 前記ニューロピリンが、ニューロピリン−1であり、そして配列番号2のアミノ酸配列か、またはVEGF165媒介HUVEC増殖を減少させるそのフラグメントを包含する、項目2に記載の可溶性ニューロピリン。
(4) 前記ニューロピリンが、ニューロピリン−2であり、そして配列番号4のアミノ酸配列か、またはVEGF165媒介HUVEC増殖を減少させるそのフラグメントを包含する、項目2に記載の可溶性ニューロピリン。
(5) 前記ニューロピリンが、ニューロピリン−1であり、そして配列番号6のアミノ酸配列を包含する、項目2に記載の可溶性ニューロピリン。
(6) 前記ニューロピリンが、ニューロピリン−2であり、そして配列番号8のアミノ酸配列を包含する、項目2に記載の可溶性ニューロピリン。
(7) 配列番号2のアミノ酸227〜587か、あるいはVEGF165媒介HUVEC増殖を減少させるそのフラグメントまたは相同体を包含する、単離された可溶性ニューロピリン−1。
(8) 配列番号4のアミノ酸277〜594か、あるいはVEGF165媒介HUVEC増殖を減少させるそのフラグメントまたは相同体を包含する、単離された可溶性ニューロピリン−2。
(9) 項目1〜8に記載の可溶性ニューロピリンおよび薬学的に受容可能なキャリアを含有する、薬学的組成物。
(10) VEGF165に特異的に結合し、そしてVEGF媒介HUVEC増殖を減少させる、可溶性ニューロピリンをコードする単離されたポリヌクレオチド。
(11) 前記ニューロピリンが、ニューロピリン−1またはニューロピリン−2である、項目10に記載の単離されたポリヌクレオチド。
(12) 前記ニューロピリンが、配列番号2のアミノ酸配列227〜587か、あるいはVEGF165媒介HUVEC増殖を減少させるそのフラグメントまたは相同体を包含する、項目11に記載の単離されたポリヌクレオチド。
(13) 前記ニューロピリンが、配列番号4のアミノ酸配列277〜594か、あるいはVEGF165媒介HUVEC増殖を減少させるそのフラグメントまたは相同体を包含する、項目12に記載の単離されたポリヌクレオチド。
(14) 前記ニューロピリンが、ニューロピリン−1であり、そして配列番号6のアミノ酸配列を包含する、項目11に記載の単離されたポリヌクレオチド。
(15) 前記ニューロピリンが、ニューロピリン−2であり、そして配列番号8のアミノ酸配列を包含する、項目11に記載の単離されたポリヌクレオチド。
(16) 配列番号5または配列番号7のヌクレオチド配列を有する、項目10に記載の単離されたポリヌクレオチド。
(17) 項目10〜16に記載のポリヌクレオチドを含有する、ベクター。
(18) 項目17に記載のベクターを含有する、宿主細胞。
(19) 前記キャリアが、皮膚への局所的な適用に対して受容可能である、項目9に記載の薬学的組成物。
(20) 前記キャリアが、眼への適用に対して受容可能である、請求項9に記載の薬学的組成物。
(21) 前記組成物が、VEGFに関連する疾患または障害を有する被験体を処置する方法に使用するものである、項目9に記載の薬学的組成物。
(22) 前記VEGFに関連する疾患または障害が、転移、不適切な新脈管形成、慢性炎症、糖尿病性網膜症、および関節炎からなる群より選択される、項目21に記載の薬学的組成物。
(23) 前記疾患または障害が、固形腫瘍である、項目21に記載の薬学的組成物。
(24) 前記組成物が、ニューロピリンを発現する腫瘍を処置する方法において使用するためのものである、項目9に記載の薬学的組成物。
(25) VEGFに関連する疾患または障害を処置するための医薬の調製における、項目10に記載の単離されたポリヌクレオチドの使用。
(26) VEGFに関連する疾患または障害を処置するための医薬の調製における、項目1〜8に記載の単離された可溶性ニューロピリンの使用。
【0013】
VEGF165Rの機能の確認において、本発明者らはさらに、このレセプターが、ニューロン細胞誘導の細胞表面媒介物として同定されたことを発見し、そしてニューロピリン−1(neuropilin−1)と呼んだ(Kolodkinら、Cell 90:753−762(1997))。本発明者らは、このレセプターをVEGF165R/NP−1またはNP−1という。
【0014】
VEGF165R/NP−1 cDNAの発現クローニングに加え、本発明者らは、その推定アミノ酸配列が、VEGF165R/NP−1のアミノ酸配列と47%の相同性であり、そして最近クローン化されたラットニューロピリン−2(NP−2)(Kolodkinら、Cell 90、753−762(1997))と90%を超えて相同である、別のヒトcDNAクローンを単離した。
【0015】
本発明者らの結果は、これらのニューロピリンが内皮細胞および腫瘍細胞(乳房、前立腺、および黒色腫を含む)の両方により発現されることを示す(図18)。本発明者らは、KDRおよびVEGF165R/NP−1の両方を発現する内皮細胞が、KDRのみを発現する内皮細胞と比べた場合、VEGF121でなく、VEGF165に対して増大された走化性で反応することを示した。理論に縛られることを望まないが、本発明者らは、VEGF165R/NP−1は、内皮細胞において、KDRに対するコレセプター(co−receptor)として細胞の運動性を媒介するために機能すると考えている。
【0016】
本発明者らはまた、Boydenチャンバー運動性アッセイにおいて、VEGF165が、用量応答様式で、231乳癌細胞の運動性を刺激することを示した(図15A)。VEGF121は、これらの細胞の運動性に対する効果を有さなかった(図15B)。231細胞のような腫瘍細胞は、VEGFレセプター、KDRまたはFlt−1を発現しないため、理論に縛られることを望まないが、本発明者らは、腫瘍細胞が、VEGF165R/NP−1を介してVEGF165に対して直接的に応答性であると考えている。
【0017】
本発明者らはまた、Dunningラット前立腺癌細胞の2つの改変体、AT2.1細胞(低運動性および低転移能のものである)、およびAT3.1細胞(高運動性および高転移性である)を解析した。架橋およびノーザンブロット解析により、AT3.1細胞が、VEGF165に結合可能な、大量のVEGF165R/NP−1を発現し、対して、AT2.1細胞が、VEGF165R/NP−1を発現しないことを示す(図18)。腫瘍切片の免疫染色により、AT3.1におけるVEGF165R/NP−1の発現は確認されたが、AT2.1腫瘍においては確認されなかった。さらに、免疫染色により、皮下AT3.1およびPC3腫瘍において、VEGF165R/NP−1を発現する腫瘍細胞が、腫瘍/真皮の境界の侵襲前部で優先的に見出されることが示された。さらに、VEGF165R/NP−1を過剰発現するAT2.1細胞の安定なクローンは、Boydenチャンバーアッセイにおいて運動性を増強した。これらの結果は、ニューロピリンの発現が、新脈管形成および運動性転移性癌細胞に関連し、したがって、抗新脈管形成および抗癌治療に対する重要な標的であることを示す。
【0018】
本発明者らは、現在、C末端領域で切断されて可溶性ニューロピリン(sNP)外部ドメインを産生する、いくつかのニューロピリンのアイソフォームを同定し、そしてクローン化した(図19)。ノーザンブロット解析により、いくつかの細胞株および組織が、選択的スプライシングにより明らかに生成された7kbのニューロピリン−1(NP−1)および7kbのニューロピリン−2(NP−2)に加えて、類似の転写物を発現することが明らかにされた後に、これらのアイソフォームはクローン化された。インタクトなニューロピリンは、補体成分に相同なaドメイン、凝固因子に相同なbドメイン、MAMに相同なcドメイン、膜貫通ドメイン、および短い40アミノ酸の細胞質ドメインを有する(Kawakami Aら、(1995)J.Neurobiol.29:1−17)(図19)。ニューロピリン−1のアイソフォームがクローン化され、それは、bドメインのすぐ後でC末端が切断されていた。転写の間に、5’スプライス供与体部位の読み過ごしが存在し、そのため、終結に続いてイントロン部分が発現され、その結果、cドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインは、bドメインに続く、イントロンの3アミノ酸で置換された。さらに、ニューロピリン−2のアイソフォームがクローン化され、その中では、C末端部分のbドメイン、cドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞質ドメインが、そのイントロンの8アミノ酸で置換されていた。切断されたニューロピリン−1のcDNAは、COS細胞内で発現され、そして馴化培地中のタンパク質を特異的な抗ニューロピリン−1抗体を使用したウエスタンブロットにより解析した(図20)。切断されたニューロピリン−1cDNAのトランスフェクトにより産生された(ベクターコントロールのトランスフェクトでは産生されない)90kDaのタンパク質は、馴化培地中に見出されたが、溶解産物中では見出されなかった。従って、ニューロピリン−1アイソフォームは、ニューロピリン−1の可溶性形態(sNP1)である。
【0019】
本発明者らはまた、膜近傍ドメインのある部位での切断により、a、b、およびcドメインを含む、操作し切断した可溶化ニューロピリン−1外部ドメインレセプター(sNP1abcと名付けた)を発現させた。
【0020】
sNPは、VEGF165またはエキソン7(配列番号)を含むVEGFの任意の形態に結合し得、従って、ニューロピリンとだけでなく、同様にKDR/Flk−1およびFlk−1とのVEGFの相互作用を阻害するために有用である。さらに、sNPはまた、インタクトなニューロピリンレセプターとの二量体化により細胞内で発現される場合、ドミナントネガティブレセプターとして作用し得る。本発明者らの結果は、sNP1タンパク質調製物が、PAE/NP1に対合する125I−VEGF165結合の、およびVEGF媒介性HUVEC増殖の優れたインヒビターであることを示した(図21)。
【0021】
従って、sNPまたはsNPをコードする核酸(例えば、DNAまたはRNA)は、VEGFおよびNPの機能のインヒビターとして有用であり、VEGFに関連する疾患,障害、または状態の処置に使用され得る。sNPはまた、単独で使用され得るか、または例えば、VEGFを直接的に拮抗するもの(例えば、抗VEGF抗体、可溶性VEGFレセプター細胞外ドメイン)またはVEGFレセプターに拮抗するもの(例えば、抗KDR抗体、KDRキナーゼインヒビター、ドミナントネガティブなVEGFレセプター)を含む他の抗VEGF戦略との組合せで使用され得る(Presta LGら、Cancer Res.57:4593−4599(1997)、Kendall RLら、(1996)Biochem.Biophys.Res.Commun.226:324−328、Goldman CKら、(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 95:8795−8800、Strawn LMら、(1996)Cancer Res.56:3540−3545、Zhu Zら、(1998)Cancer Res.58:3209−3214、Witte Lら、(1998)Cancer Metastasis Rev.17:155−161)。
【0022】
VEGFに関連する疾患、障害、または状態としては、網膜新生血管形成、血管腫、固形腫瘍増殖、白血病、転移、乾癬、血管新生緑内障、糖尿病性網膜症、慢性関節リウマチ、変形性関節症、子宮内膜病、黄斑変性(mucular degeneration)および未熟児網膜症(ROP)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
さらに、本発明は、選択された組織中の天然に存在する可溶性ニューロピリンの発現についてののスクリーニング方法に関する。発現は、RNAレベル(イントロン配列に対応する特異的プローブを用いたインサイチュハイブリダイゼーション)で解析され得るか、またはタンパク質レベル(低分子量のウエスタンブロット検出)で解析され得る。次いで、インタクトで、かつ切断されたニューロピリンアイソフォームの相対的分布が決定され得る。これらの技術は、細胞、組織、および尿のような生物学的液体中のsNPの分布を解析するために使用され得る。sNP1およびsNP2の両方は、インタクトなニューロピリンにおいて存在しないC末端のイントロン配列を含む。sNP1は、そのcDNAにおいて、3個のC末端イントロンアミノ酸(GIK)および28個のイントロンbpを有する。sNP2は、そのcDNAにおいて、8個のC末端イントロンアミノ酸(VGCSWRPL)および146個のイントロンbpを有する。従って、sNP特異的プローブは、インサイチュハイブリダイゼーションのために、そして、インタクトなニューロピリンのバックグラウンドにおける、腫瘍および正常組織中のsNPの分布について分析するために調製され得る。
本発明の他の局面は、以下に開示される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】231細胞からのVEGF165Rの精製。125I−VEGF165(5ng/ml)を231細胞のレセプターに結合、かつ、架橋し、SDS−PAGEおよびオートラジオグラフィーにより分析した(レーン1)。VEGF165Rを、Con AおよびVEGF165アフィニティーカラムクロマトグラフィーで精製し、そしてSDS−PAGEおよび銀染色で分析した(レーン2)。二本の顕著なバンドが検出され(矢印)、そして別個にN末端を配列決定した。これらのN末端の18アミノ酸配列を矢印の右側に示した。公開されたヒトおよびマウスのニューロピリンのN末端配列(Kawakamiら、J.Neurobiol.、29、1−17(1995);HeおよびTessier−Lavigne、Cell 90、739−751 1997)を以下に示す(配列番号9および10)。
【図2A】発現クローニングによるVEGF165R cDNAの単離。125I−VEGF165に結合しているCOS7細胞の顕微鏡写真(暗視野照明)。トランスフェクトされたCOS7細胞に125I−VEGF165を結合させ、次いで洗浄、固定し、そして写真乳剤でオーバーレイし、実施例に記載されるようにして現像した。 (2A)COS7細胞を、約3×103クローンを示す主要プラスミドプール(231細胞ライブラリーの#55)でトランスフェクトし、そして第一ラウンドのスクリーニングにおいて、125I−VEGF165に結合している1つのCOS7細胞を示す。
【図2B】発現クローニングによるVEGF165R cDNAの単離。125I−VEGF165に結合しているCOS7細胞の顕微鏡写真(暗視野照明)。トランスフェクトされたCOS7細胞に125I−VEGF165を結合させ、次いで洗浄、固定し、そして写真乳剤でオーバーレイし、実施例に記載されるようにして現像した。 (2B)第3ラウンドのスクリーニング後に、125I−VEGF165に結合している、単一の陽性cDNAクローン(A2)でトランスフェクトされたいくつかのCOS7細胞。
【図3】ヒトVEGF165R/NP−1の推定アミノ酸配列(配列番号2)。VEGF165R/NP−1の読み取り枠(クローンA2(6.5kbの完全挿入片サイズ))の推定923アミノ酸配列を示す。推定のシグナルペプチド配列(アミノ酸1〜21)および推定の膜貫通領域(アミノ酸860〜883)を囲みで示す。N末端アミノ酸配列決定で得られたアミノ酸配列(図3、アミノ酸22〜39)を下線で示す。矢印は、精製したVEGF165R/NP−1のN末端配列とそのcDNA配列との比較に基づいて、切断および除去するシグナルペプチドを示している。本明細書で報告したヒトVEGF165R/NP−1の配列は、本発明者らが、Glu26よりもむしろLys26、ならびにGlu855よりもむしろAsp855を見い出すという点において、Heら(HeおよびTessier−Lavigne、Cell 90、739−751 1997)の報告したものと異なる。しかし、Lys26およびAsp855はマウスおよびラットのVEGF165R/NP−1において見出される(Kwakamiら、J.Neurobiol.29、1〜17(1995);HeおよびTessier−Lavigne,Cell 90,739〜751 1997)。
【図4A】図4Aおよび4Bは、ヒトVEGF165R/NP−1(配列番号2)およびNP−2(配列番号4)の推定アミノ酸配列の比較を示す。VEGF165R/NP−1およびNP−2の推定した読み取り枠のアミノ酸配列を、DNASISプログラムを使用して並べる。両方の読み取り枠に同一のアミノ酸配列を斜線で示す。2つの配列間の全体の相同性は43%である。
【図4B】図4Aおよび4Bは、ヒトVEGF165R/NP−1(配列番号2)およびNP−2(配列番号4)の推定アミノ酸配列の比較を示す。VEGF165R/NP−1およびNP−2の推定した読み取り枠のアミノ酸配列を、DNASISプログラムを使用して並べる。両方の読み取り枠に同一のアミノ酸配列を斜線で示す。2つの配列間の全体の相同性は43%である。
【図5】ヒトECおよび腫瘍由来細胞株におけるVEGF165R/NP−1発現のノザンブロット分析。HUVEC(レーン1)ならびに示されるような腫瘍由来乳ガン、前立腺ガンおよび黒色腫細胞株(レーン2〜8)から調製した全RNA試料を、1%アガロースゲルで分離し、GeneScreenナイロン膜にブロットした。その膜を、32P標識したVEGF165R/NP−1 cDNAでプローブし、そしてX線フィルムに露光した。ブロットする前にゲルをエチジウムブロマイド染色し、等量のRNAであることを明らかした。約7kbの主要な種のVEGF165R/NP−1 mRNAが、いくつかの細胞株で検出された。
【図6】成体ヒト組織におけるVEGF165R/NP−1およびKDR mRNAのノザンブロット分析。多数のヒトmRNA試料(Clonetech)を含む、先に作製したノザンブロット膜を図5に記載したようにして32P標識したVEGF165R/NP−1 cDNAでプローブし(上段)、次いで剥がし、そして32P標識したKDR cDNAで再プローブした(下段)。
【図7A】VEGF165R/NP−1へのVEGF165結合のスキャッチャード分析。(7A)48ウェルディッシュ内で、ヒトVEGF165R/NP−1 cDNAでトランスフェクトしたPAE細胞(PAE/NP−1細胞)のサブコンフルエントの培養物に、125I−VEGF165(0.1〜50ng/ml)増加量を加えた。非特異的な結合を、200倍の過剰の標識されていないVEGF165との競合により決定した。結合後、細胞を洗浄し、溶解し、そしてγカウンターを使用して細胞に会合する放射活性を決定した。
【図7B】VEGF165R/NP−1へのVEGF165結合のスキャッチャード分析。 (7B)7Aに示される結合データを、スキャッチャードの方法によって分析し、そしてLIGANDプログラム(Munson and Rodbard,1980)を用いて最も一致するプロットを得た。PAE/NP−1細胞は、1細胞あたり約3×105のVEGF165結合部位を発現し、125I−VEGF165を3.2×10-10MのKdで結合する。
【図8】VEGF165およびVEGF121の、VEGF165R/NP−1および/またはKDRを発現するPAE細胞への架橋。HUVEC(レーン1)、PC3(レーン2)、PAE(レーン3および7)、ヒトVEGF165R/NP−1 cDNAでトランスフェクトしたPAE細胞のクローン(PAE/NP−1)(レーン4および8)、KDRでトランスフェクトしたPAE細胞のクローン(PAE/KDR)(レーン5および9)、およびヒトVEGF165R/NP−1 cDNAでトランスフェクトしたPAE/KDR細胞のクローン(PAE/KDR/NP−1)(レーン6および10)のサブコンフルエント培養物に、125I−VEGF165(5ng/ml)(レーン1〜6)または125I−VEGF121(10ng/ml)(レーン7〜10)を結合させた。この結合は1μg/mlのヘパリン存在下で行った。2時間のインキュベートの終了時に、細胞表面に125I−VEGFの各アイソフォームを化学的に架橋させた。この細胞を溶解し、6%SDS−PAGEでタンパク質を分離した。このポリアクリルアミドゲルを乾燥し、X線フィルムに露光した。実線矢印は125I−VEGFおよびKDRを含む放射標識された複合体を示し、白の矢印は125I−VEGFおよびVEGF165R/NP−1を含む放射標識された複合体を示す。
【図9】VEGF165R/NP−1を一過性に同時発現するPAE/KDR細胞へのVEGF165の架橋。PAE/KDR細胞を、「実験手順」に記載したようにpCPhygroまたはpCPhyg−NP−1プラスミドでトランスフェクトし、6cmディッシュ中で3日間増殖させた。125I−VEGF165(5ng/ml)を、親のPAE/KDR細胞(レーン1)、pCPhygroベクターコントロールでトランスフェクトしたPAE/KDR細胞(V)(レーン2)、pCPhyg−VEGF165R/NP−1プラスミドでトランスフェクトしたPAE/KDR細胞(VEGF165R/NP−1)(レーン3)、およびHUVEC(レーン4)に結合させ、架橋した。この結合は1μg/mlのヘパリン存在下で行った。この細胞を溶解し、図8のようにして6%SDS−PAGEでタンパク質を分離した。実線矢印は125I−VEGF165およびKDRを含む放射標識された複合体を示す。白の矢印は125I−VEGF165およびVEGF165R/NP−1を含む放射標識された複合体を示す。
【図10】125I−VEGF165のVEGF165R/NP−1への結合の阻害は、125I−VEGF165のKDRへの結合に干渉する。125I−VEGF165(5ng/ml)を、35mmのディッシュ中で、ヒトVEGF165R/NP−1 cDNAでトランスフェクトしたPAE細胞(PAE/NP−1)(レーン1および2)、PAE/KDR細胞(レーン3および4)、およびヒトVEGF165R/NP−1 cDNAでトランスフェクトしたPAE/KDR細胞(PAE/KDR/NP−1)(レーン5および16)のサブコンフルエント培養物に結合させた。この結合は、25μg/ml GST−Ex7+8の存在下(レーン2、4、および6)、または非存在下(1、3、および5)で行った。ヘパリン(1μg/ml)を各々のディッシュに加えた。2時間のインキュベートの終了時に、細胞表面に125I−VEGF165を化学的に架橋させた。この細胞を溶解し、図9のようにして6%SDS−PAGEでタンパク質を分離した。実線矢印は125I−VEGF165およびKDRを含む放射標識された複合体を示し、白の矢印は125I−VEGF165およびVEGF165R/NP−1を含む放射標識された複合体を示す。
【図11】図11A〜C。VEGF165のKDRへの結合のVEGF165R/NP−1調節に関するモデル。(11A)KDRのみを発現する細胞。(11B)KDRおよびVEGF165R/NP−1を同時発現する細胞。(11C)GST−Ex7+8融合タンパク質存在下でKDRおよびVEGF165R/NP−1を同時発現する細胞。 1つのKDRレセプターまたは1つのKDR−VEGF165R/NP−1対を上部パネルに示す。いくつかのレセプターを示す拡大図を下部パネルに示す。VEGF165は、エキソン4を介してKDRに結合、およびエキソン7を介してVEGF165R/NP−1に結合する(Keytら、J.Biol.Chem.271,5638〜5646(1996b);Sokerら、J.Biol.Chem.271,5761〜5767(1996))。長方形のVEGF165分子は、KDRに効率的に結合しない、最適ではない高次構造を示すが、丸みを帯びたVEGF165分子は、結合部位により良好に一致する高次構造を示す。KDRのみを発現する細胞においては、VEGF165は最適でない様式でKDRに結合する。KDRおよびVEGF165R/NP−1を同時発現する細胞においては、VEGF165のKDRへの結合効率が増強される。VEGF165R/NP−1の存在は細胞表面のVEGF165の濃度を増加し得、その結果、KDRにより多く増殖因子を提示させ得る。あるいは、VEGF165R/NP−1は、KDRへのより良好な結合を許容するVEGF165の高次構造の変化を誘導し得るかまたは、両方が生じ得る。GST−Ex7+8の存在下においては、VEGF165のVEGF165R/NP−1への結合は競合的に阻害され、VEGF165のKDRへの結合は最適でない様式に戻る。
【図12】ヒトNP−2のアミノ酸配列(配列番号4)。
【図13A】ヒトNP−2のDNA配列(配列番号3)。
【図13B】ヒトNP−2のDNA配列(配列番号3)。
【図13C】ヒトNP−2のDNA配列(配列番号3)。
【図14A】VEGF165R/NP−1のヌクレオチド配列(配列番号1)およびアミノ酸配列(配列番号2)。ドメインが示される。
【図14B】VEGF165R/NP−1のヌクレオチド配列(配列番号1)およびアミノ酸配列(配列番号2)。ドメインが示される。
【図14C】VEGF165R/NP−1のヌクレオチド配列(配列番号1)およびアミノ酸配列(配列番号2)。ドメインが示される。
【図14D】VEGF165R/NP−1のヌクレオチド配列(配列番号1)およびアミノ酸配列(配列番号2)。ドメインが示される。
【図14E】VEGF165R/NP−1のヌクレオチド配列(配列番号1)およびアミノ酸配列(配列番号2)。ドメインが示される。
【図14F】VEGF165R/NP−1のヌクレオチド配列(配列番号1)およびアミノ酸配列(配列番号2)。ドメインが示される。
【図15A】MDA MB 231細胞の運動性のVEGF165刺激。(15A)VEGF165の運動活性の用量応答。(15B)VEGF165およびbFGFの両方は運動性を刺激するが、VEGF121は刺激しない。
【図15B】MDA MB 231細胞の運動性のVEGF165刺激。(15A)VEGF165の運動活性の用量応答。(15B)VEGF165およびbFGFの両方は運動性を刺激するが、VEGF121は刺激しない。
【図16A】図16A、16B、および16Cは、Dunningラット前立腺癌腫細胞株AT3.1細胞(高い運動性、高い転移能)およびAT2.1細胞(低い運動性、低い転移能)の運動性およびニューロピリン−1の発現を示している。(図16A)AT3.1細胞は、ボイデンチャンバーアッセイにおいてAT2.1細胞よりもより運動性である。(図16B)125I−VEGF165はAT3.1細胞のニューロピリン−1に架橋するが、AT2.1細胞には架橋しない。(図16C)AT2.1細胞ではなくAT3.1細胞は、ニューロピリン−1を発現するが、両方の細胞型はVEGFを発現する。
【図16B】図16A、16B、および16Cは、催促(Dunning)ラット前立腺癌腫細胞株AT3.1細胞(高い運動性、高い転移能)およびAT2.1細胞(低い運動性、低い転移能)の運動性およびニューロピリン−1の発現を示している。(図16A)AT3.1細胞は、ボイデンチャンバーアッセイにおいてAT2.1細胞よりもより運動性である。(図16B)125I−VEGF165はAT3.1細胞のニューロピリン−1に架橋するが、AT2.1細胞には架橋しない。(図16C)AT2.1細胞ではなくAT3.1細胞は、ニューロピリン−1を発現するが、両方の細胞型はVEGFを発現する。
【図16C】図16A、16B、および16Cは、催促(Dunning)ラット前立腺癌腫細胞株AT3.1細胞(高い運動性、高い転移能)およびAT2.1細胞(低い運動性、低い転移能)の運動性およびニューロピリン−1の発現を示している。(図16A)AT3.1細胞は、ボイデンチャンバーアッセイにおいてAT2.1細胞よりもより運動性である。(図16B)125I−VEGF165はAT3.1細胞のニューロピリン−1に架橋するが、AT2.1細胞には架橋しない。(図16C)AT2.1細胞ではなくAT3.1細胞は、ニューロピリン−1を発現するが、両方の細胞型はVEGFを発現する。
【図17】図17Aおよび17B。AT2.1細胞におけるニューロピリン−1の過剰発現。(17A)ウェスタンブロット。(17B)運動性活性。3つのAT2.1クローン(レーン4、5、および6)は、親のAT2.1細胞、またはAT2.1ベクター(AT2.1/V)コントロール、および類似するAT3.1細胞のニューロピリン−1レベルおよび運動性活性と比較して、ニューロピリン−1タンパク質をより多く発現し、より運動性である。
【図18】図18は、以下のプライマーを用いた逆転写酵素PCRを使用する、癌細胞株および内皮細胞におけるNP−1、NP−2、およびβ−アクチンの発現:ヒトNP−1:順方向(328〜351): 5’TTTCGCAACGATAAATGTGGCGAT3’(配列番号11)逆方向(738〜719): 5’TATCACTCCACTAGGTGTTG3’(配列番号12)ヒトNP−2順方向(513〜532): 5’CCAACCAGAAGATTGTCCTC3’(配列番号13)逆方向(1181〜1162): 5’GTAGGTAGATGAGGCACTGA3’(配列番号14)。
【図19】図19は、インタクトのニューロピリン(−1および−2)(上部)、ニューロピリン−1の外部ドメインをコードする新規のクローン化cDNA(中央)、およびニューロピリン−2の外部ドメインをコードする新規のクローン化cDNA(下部)の構造の模式図である。これらの2つの新規のcDNAは、選択的スプライシングされたアイソフォームを示している。
【図20】図20は、C末端を切断したニューロピリン−1アイソフォームをコードするcDNAを、COS細胞にトランスフェクトしたことを示す。可溶性の90kDaタンパク質(sNP1)が、ウェスタンブロットによって、ベクターコントロールではなくsNP1を発現している細胞の馴化培地において検出された。MDA MB 231細胞によって発現されたインタクトの130kDaニューロピリン−1を、第1のレーンに示す。
【図21A】図21Aおよび21Bは、可溶性ニューロピリン−1タンパク質の調製物の、125I−VEGF165のPAE/NP細胞への結合の阻害(図21A)、およびVEGF165が媒介するHUVEC増殖の阻害(右側)を示す。sABCは、膜近傍領域で切断された、操作された可溶性のニューロピリン−1である。sABは、c、TM、および細胞質ドメインを欠く、天然に存在するニューロピリン−1のアイソフォームである。この実験において、sNP1(図21B)は、実施例3で産生されたsABCである。
【図21B】図21Aおよび21Bは、可溶性ニューロピリン−1タンパク質の調製物の、125I−VEGF165のPAE/NP細胞への結合の阻害(図21A)、およびVEGF165が媒介するHUVEC増殖の阻害(右側)を示す。sABCは、膜近傍領域で切断された、操作された可溶性のニューロピリン−1である。sABは、c、TM、および細胞質ドメインを欠く、天然に存在するニューロピリン−1のアイソフォームである。この実験において、sNP1(図21B)は、実施例3で産生されたsABCである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(発明の詳細な説明)
本発明は、可溶性のニューロピリンタンパク質(sNP)をコードするcDNAに関し、このcDNAはニューロピリン(NP)を産生する細胞から単離、またはNPをコードするDNAから組換え操作される。NP−1およびNP−2は、任意のニューロピリンまたはVEGFレセプター(VEGFR)以外の好ましいNPであり、これらの構成要素は、上記のVEGF165R/NP−1およびNP−2のどちらとも少なくとも約85%の相同性を有する。より好ましくは、このような構成要素は少なくとも90%の相同性を有する。さらにより好ましくは、各構成要素は少なくとも95%の相同性を有する。
【0026】
相同性は当該分野に周知の手段で測定される。例えば、%相同性は、相同性を比較するために使用される任意の標準的なアルゴリズムにより決定され得る。これらは、NIH(www.ncbi.nlm.nkh.gov/BLAST/newblast.htmlを参照のこと)から入手可能なBLAST2.0(例えば、BLAST2.0.4およびi2.0.5)(Altschul,S.F.ら、Nucleic Acids Res.25:3389〜3402(1997)およびDNASIS(Hitachi Software Engineering America,Ltd.)を含むが、これらに限定されない。これらのプログラムは、好ましくは、相同性比較のための標準的な初期設定のような自動設定に設定されるべきである。NIHにより説明されるように、ギャップのある結果は、ギャップのない結果よりもより生物学的な意義を有する傾向にある。
【0027】
容易な参照のために、この開示は一般に、VEGF165R/NP−1およびNP−2および/またはそれらの相同物について述べているが、全ての教示は上述した相同物に適用可能である。
【0028】
本発明はさらに、単離および精製したsNPタンパク質に関する。本明細書で使用されるsNPは、エキソン7(配列番号15)を含む、血管内皮細胞増殖因子に特異的に結合し得るタンパク質(例えばVEGF165)をいい、例えばSokerら、J.Biol.Chem.272,31582〜31588(1997)に記載のようにVEGF165を使用するヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)増殖アッセイによって決定されるような、VEGFアンタゴニスト活性を有する。好ましくは、このsNPは、HUVEC増殖を少なくとも25%減少し、より好ましくは50%減少し、さらにより好ましくは75%減少し、最も好ましくは95%減少する。
【0029】
sNPのVEGFアンタゴニスト活性はまた、標識化したVEGF165のVEGF165Rへの結合の阻害(Sokerら、J.Biol.Chem.271,5761〜5767(1996)に開示される)、または標識化したVEGF165のPAE/NP細胞への結合の阻害(実施例に記載される)によって決定され得る。好ましくは、部分は、結合を少なくとも25%、より好ましくは50%、最も好ましくは75%、阻害する。
【0030】
用語「単離された」は、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド(例えば、DNA)が、その本来の環境から取り出されることを意味する。例えば、生存する動物中に存在する天然に生じるポリヌクレオチドまたはポリペプチドは、単離されていないが、天然の系中の共存物質のいくつかまたは全てから分離された同じポリヌクレオチドもしくはDNAまたはポリぺプチドは、単離されている。このようなポリヌクレオチドはベクターの一部であり得、および/またはこのようなポリヌクレオチドまたはポリぺプチドは組成物の一部であり得、そしてなお、このようなベクターまたは組成物はその自然環境の一部ではないように単離され得る。
【0031】
完全長のNP−1のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号1および2として配列表に記載される。完全長のNP−2のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号3および4として配列表に開示される。
【0032】
ヒトVEGF165R/NP−1またはNP−2をコードするDNA、および組換えヒトVEGF165R/NP−1またはNP−2は、実施例に記載される方法に従って産生され得る。
【0033】
NP−1またはNP−2を産生する哺乳動物細胞株は、MDA−MB−231細胞(ATCC HTB−26)、PC3前立腺癌腫細胞およびヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)(ATCC CRL 1730)を含むが、これらに限定されない。
【0034】
他の細胞および細胞株もまた、sNPを単離するための使用に適切であり得る。適切な細胞の選択は、細胞表面上または細胞抽出液もしくは馴化培地中のsNP結合活性に対するスクリーニング、あるいはPCRまたはハイブリダイゼーションによる遺伝子発現に対するスクリーニングによって実施され得る。可溶性のレセプター活性を検出する方法は、当該分野で周知である(Duan,D−S.R.ら、(1991)J.Biol.Chem.、266、413〜418頁)。
【0035】
ヒトHUVEC細胞(American Type Culture Collection、ATCC CRL 1730)(Hoshi,H.およびMcKeehan,W.L.、Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.、(1984)81、6413〜6417頁)のような完全長のNPを産生する細胞は、ATCCの推奨培養条件に従って増殖させられる。インタクトなNPならびに細胞外領域(sNP−1およびsNP−2)を図8に示す。インタクトなレセプターは、相補成分に相同なaドメイン、凝固因子に相同なbドメイン、MAMに相同なcドメイン、膜貫通ドメイン(TM)、および40アミノ酸の短い細胞質ドメイン(cyto)を有する。本発明の対象であるこのレセプターの2つの阻害形態もまた図8に示し、そして配列番号6および8として配列表に記載し、そしてこれらはcドメイン、膜貫通ドメイン、および細胞質ドメインの全てを欠く。本発明の好ましいsNPはさらにaドメインを欠く。
【0036】
ニューロピリン−1(配列番号2)のドメインは以下の通りである:a1(アミノ酸22〜146)、a2(アミノ酸147〜273)、b1(アミノ酸275〜430)、b2(アミノ酸431〜587)、c(アミノ酸646〜809)、TM(アミノ酸857〜884)、cyto(アミノ酸885〜923)。
【0037】
ニューロピリン−2(配列番号4)のドメインは以下の通りである:a1(アミノ酸24〜148)、a2(アミノ酸149〜275)、b1(アミノ酸277〜433)、b2(アミノ酸434〜594)、c(アミノ酸642〜800)、TM(アミノ酸865〜893)、cyto(アミノ酸894〜931)。
【0038】
任意の種々の手順が、sNP cDNAを分子クローン化するために使用され得る。これらの方法としては、適切な発現ベクター系におけるsNP含有cDNAライブラリーの構築の後の、sNP遺伝子の直接的な機能的発現が挙げられるが、これに限定されない。
【0039】
別の方法は、sNPの推定アミノ酸配列から設計した標識化したオリゴヌクレオチドプローブを用いて、バクテリオファージまたはプラスミドのシャトルベクター内に構築されたsNP含有cDNAライブラリーをスクリーニングすることである。1つの方法は、完全長のNPタンパク質の少なくとも一部分をコードする、部分的なcDNAを用いて、バクテリオファージまたはプラスミドのシャトルベクター内に構築されたsNP含有cDNAライブラリーをスクリーニングする工程からなる。この部分的なcDNAを、完全長のNPをコードするDNAの公知の配列からのオリゴヌクレオチドプライマーの設計を介して、sNP DNAフラグメントの特異的なPCR増幅によって得る。
【0040】
他の型のライブラリー、ならびに他の細胞または細胞型から構築されたライブラリーが、sNPをコードするDNAの単離に有用であり得ることは、当業者に容易に明らかである。さらに、適切なcDNAライブラリーは、sNP活性を有する細胞または細胞株から調製され得る。sNP cDNAを単離するためのcDNAライブラリーの調製に使用する細胞または細胞株の選択は、まず、本明細書に記載される方法を使用して、分泌されたsNP活性を測定することによって行われ得る。
【0041】
cDNAライブラリーの調製は、当該分野に周知の標準的な技術により実施され得る。周知のcDNAライブラリー構築技術は例えば、Molecular Cloning,A Laboratory Manual(第2版、Sambrook、FritschおよびManiatis、Cold Spring Harbor、N.Y.1989)に見出され得る。
【0042】
sNPをコードするDNAはまた、適切なゲノムDNAライブラリーから単離され得ることもまた、当業者に容易に明らかである。ゲノムDNAライブラリーの構築は、当該分野に周知の標準的な技術により実施され得る。周知のゲノムDNAライブラリー構築技術は、Sambrookら(前出)に見出し得る。
【0043】
sNP分子を得る別の手段は、NPの部分的または完全なアミノ酸配列(例えば、NP−1またはNP−2)をコードするDNAからそれらを組換え操作することである。組換えDNA技術を使用して、有糸分裂誘発を刺激せずに、エキソン7を含むVEGFに結合し得るNPの少なくとも一部分をコードするDNA分子が構築される。Sambrookら(前出)に見出されるような標準的な組換えDNA技術が使用される。
【0044】
本発明の好ましい方法の1つを使用して、sNPをコードするcDNAクローンは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に基づく技術、およびcDNAライブラリースクリーニングを利用する2段階アプローチ(two−stage approach)において単離される。第1のステージにおいては、公知の完全長のNPからの細胞外ドメイン配列情報に由来するDNAオリゴヌクレオチドを使用して、sNP特異的DNAフラグメントの増幅のための縮重オリゴヌクレオチドプライマーを設計する。第2のステージにおいては、これらのフラグメントを、HUVEC細胞(ATCC CRL 1730)に由来する市販のλgt10 cDNAライブラリー(Clontech)から完全なsNP cDNAを単離するためのプローブとして使用するためにクローン化する。
【0045】
別の方法を使用して、sNPをコードするDNAを、NPをコードするDNA配列から構築する。説明のために、NP−1をコードするDNAを利用する。レセプターDNA配列を使用して、レセプターの細胞外ドメイン、すなわちVEGF結合ドメインのみをコードするDNA分子を構築する。制限エンドヌクレアーゼの切断部位は、レセプターDNA内に同定され、そして細胞外コード部分を切り出すために直接的に利用され得る。さらに、上述したようなPCR技術を利用して、所望のDNA部分を産生し得る。当該分野において標準的な他の技術を利用して、上述した技術に類似する様式においてsNP分子を産生し得ることは当業者に容易に明らかである。このような技術は、例えば、Sambrookら(前出)に見出される。
【0046】
好ましい方法において、sNP cDNAは、aドメインのN末端内のHisドメインでタグ化され、そしてpcDNA3.1哺乳動物発現プラスミドにサブクローン化される。各プラスミドをCHO−K1細胞にトランスフェクトし、G418耐性クローンを単離する。馴化培地を回収し、そしてCon Aセファロースカラムに供し、洗浄し、そしてCon A結合タンパク質を溶出する。この溶出物をニッケルカラムに供し、洗浄し、そしてNi++結合sNPタンパク質を溶出する。精製したsNPを、125I−VEGF165のPAE/NP細胞への結合ならびにHUVECの増殖および運動性のVEGF165刺激を阻害する能力についてアッセイする。より小さなフラグメントはPCRにより産生される。
【0047】
本発明者らの結果は、VEGFはニューロピリンのbドメインに結合し、そしてaおよびcドメインを必要としないことを示す。図19を参照のこと。NおよびC末端のますますより大きなセグメントを欠くbドメインのより小さな部分が、適切なオリゴヌクレオチドプライマーを使用してPCRにより調製され得る。次いで、増幅したcDNAは発現ベクターに連結され、COS細胞内で発現され、そして馴化培地を、図21AでsNPについて示されるようにして125I−VEGF165のPAE/NP1細胞への結合を阻害する能力について試験される。
【0048】
膜貫通領域を含む、さらなる短縮形態のNPが構築され得る。膜貫通の保持は、標的細胞表面での阻害分子の配向を容易にし得る。膜貫通領域含有分子の構築は、当該分野に公知の標準的な技術(本明細書に記載されるような簡便な制限エンドヌクレアーゼ切断部位またはPCR技術の利用を含むがこれに限定されない)により行われる。
【0049】
上述した方法により得られたクローン化sNP cDNAは、適切なプロモーターおよび適切な他の転写調節エレメントを含む発現ベクターへの分子クローニングによって組換え発現しされ得、そして原核生物または真核生物の宿主細胞に移行され、組換えsNPを産生し得る。このような操作のための技術は、Sambrookら(前出)に十分に記載され、そして当該分野で周知である。
【0050】
発現ベクターは、適切な宿主内での遺伝子のクローン化コピーの転写、およびそれらのmRNAの翻訳に必要とされるDNA配列として本明細書に定義される。このようなベクターは、種々の宿主(例えば、細菌、藍藻、真菌細胞、酵母細胞、植物細胞、昆虫細胞、および動物細胞)において真核生物遺伝子を発現するために使用され得る。
【0051】
特異的に設計したベクターは、宿主間(例えば、細菌細胞−酵母細胞、または細菌細胞−動物細胞、あるいは細菌細胞−昆虫細胞)でのDNAシャトルを許容する。適切に構築した発現ベクターは以下を含むべきである:宿主細胞内での自律的な複製のための複製起点、選択可能マーカー、限定数の有用な制限酵素部位、高いコピー数に対する潜在能力、および活性プロモーター。プロモーターは、RNAポリメラーゼをDNAに結合させ、そしてRNA合成を開始させるように指向されるDNA配列として定義される。強力なプロモーターは、mRNAを高頻度に開始させるプロモーターである。発現ベクターには、クローニングベクター、改変クローニングベクター、特別に設計したプラスミドまたはウィルスが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0052】
種々の哺乳動物発現ベクターが、哺乳動物細胞において組換えsNPを発現するために使用され得る。組換えsVEGF−Rの発現に適し得る、市販の哺乳動物発現ベクターとしては、pMC1neo(Stratagene)、pXT1(Stratagene)、pSG5(Stratagene)、EBO−pSV2−neo(ATCC 37593)pBPV−I(8−2)(ATCC 37110)、pdBPV−MMTneo(342−12)(ATCC 37224)、pRSVgpt(ATCC 37199)、pRSVneo(ATCC 37198)、pSV2−dhfr(ATCC 37146)、pUCTag(ATCC 37460)、およびgZD35(ATCC 37565)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
sNPをコードするDNAはまた、組換え宿主細胞内での発現のために、発現ベクター内にクローン化され得る。組換え宿主細胞は、原核生物または真核生物であり得、細菌細胞、酵母細胞、哺乳動物細胞(ヒト、ウシ、ブタ、サル、およびげっ歯類起源の細胞株を含むが、これらに限定されない)、および昆虫細胞(ショウジョウバエ、ガ、カ、およびアワヨトウの幼虫に由来する細胞株を含むが、これらに限定されない)を含むが、これらに限定されない。適切であり得、かつ市販の哺乳動物種に由来する細胞株としては、CV−1(ATCC CCL 70)、COS−1(ATCC CRL 1650)、COS−7(ATCC CRL 1651)、CHO−K1(ATCC CCL 61)、3T3(ATCC CCL 92)、NIH/3T3(ATCC CRL 1658)、HeLa(ATCC CCL 2)、C127I(ATCC CRL 1616)、BS−C−1(ATCC CCL 26)、およびMRC−5(ATCC CCL 171)が挙げられるが、これらに限定されない。適切であり得、かつ市販の昆虫細胞株としては、3M−S(ATCC CRL 8851)、ガ(ATCC CCL 80)、カ(ATCC CCL 194、および195;ATCC CRL 1660および1591)、およびアワヨトウの幼虫(Sf9,ATCC CRL 1711)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0054】
発現ベクターは、多数の技術(形質転換、トランスフェクション、リポソームまたはプロトプラスト融合、およびエレクトロポレーションを含むがこれらに限定されない)のうちの任意の1つにより、宿主細胞に導入され得る。発現ベクターを含む細胞はクローン的に増殖され、そして個々に分析されて、その細胞がsNPタンパク質を産生するかどうかを決定する。sNP発現宿主細胞クローンの同定は、いくつかの手段(抗sNP抗体を用いた免疫学的反応性、放射標識されたVEGFへの結合、および宿主細胞分泌sNP活性の存在を含むが、これらに限定されない)によって実施され得る。
【0055】
組換え宿主細胞におけるsNPの発現の後、sNPタンパク質は、有糸分裂誘発を刺激せずにVEGFに結合し得る活性型のsNPを提供するために回収され得る。いくつかのsNP精製手順が使用に適している。sNPは、塩分画、イオン交換クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、ヒドロキシアパタイト吸着クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、ヘパリンセファロースクロマトグラフィー、VEGF165リガンドアフィニティークロマトグラフィー、および疎水性相互作用クロマトグラフィーの種々の組み合わせ、または個々の適用によって、細胞溶解物および細胞抽出液から、または馴化培養培地から精製され得る。
【0056】
さらに、組換えsNPは、全長sNP、またはsNPのポリペプチドフラグメントに対して特異的なモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体を用いて作製された免疫親和性カラムを使用することによって他の細胞タンパク質から分離され得る。
【0057】
好ましくは、sNPは、DNA構築物を含むsNPをCOS細胞(一過性のトランスフェクション)およびCHO細胞(安定なトランスフェクタント)にトランスフェクトすることによって精製され得る。この使用される構築物は、例えば、Hisタグおよびmycタグの両方でニューロピリン(neuropilin)のN末端の近く(VEGF結合に必要とされないドメインにおける)で二重タグ化され得る。レクチンカラムクロマトグラフィーは、sNP精製の第1の工程として有用である。この精製における第2の工程は、Hisタグ化タンパク質を、必要な場合、抗myc抗体を結合するニッケルカラムを使用することである。本発明者らは、細胞に対するVEGF結合を阻害する際に、タグ化sNPが完全に活性であることを示した(図21A)。非タグ化sNPを精製するための、レクチンとVEGF親和性クロマトグラフィーとの組み合わせは、インタクトなニューロピリン−1の精製についての実施例において示されるように十分である。
【0058】
次いで、精製sNPタンパク質は、VEGF媒介性内皮細胞(例えば、HUVEC)遊走および増殖ならびにラットの大動脈環(インビトロ血管新生)からの内皮細胞の遊走における効果について試験され得る。sNPタンパク質はまた、ニワトリCAM、およびマウス角膜モデルにおけるVEGF媒介性血管新生の阻害についてインビボで試験され得る。sNPと相互作用するはずのないFGF−2は、コントロールとして使用され得る。精製sNPタンパク質およびこのタンパク質をコードするDNAはまた、マウスモデル(特に、ヌードマウスへの皮下または正常位に増殖したPC3腫瘍)で試験され、血管新生、腫瘍増殖および転移の阻害を探し得る。
【0059】
本発明のインヒビターは、血管新生および腫瘍細胞移動性を含むVEGF媒介性活性の阻害に対して使用され得る。このインヒビターは、局所または静脈内のいずれかに使用され得る。局所適用については、この処方物は、約10ng〜約1mg/cm2/dayの速度で直接的に適用される。静脈内適用については、このインヒビターは、体重の約1mg〜約10mg/kg/dayの速度で使用される。内部使用については、この処方物は、移植された遅放性ポリマー材料からかまたは遅放性ポンプからかあるいは反復注入のいずれかで、処置されるべき領域に直接的に放出され得る。いずれかの場合における放出速度は、約100ng〜約100mg/day/cm3である。
【0060】
非局所的な適用については、このインヒビターは、標準的な薬学的実務に従って、薬学的組成物中において薬学的に受容可能なキャリアまたは希釈剤(例えば、リン酸緩衝液、生理食塩水、リン酸緩衝化生理食塩水、リンゲル溶液など)との組み合わせで投与される。局所適用については、種々の薬学的処方物が、本発明の活性化合物の投与のために有用である。このような処方物は、以下を含むがこれらに限定されない:疎水性ワセリンまたはポリエチレングリコール軟膏剤のような軟膏剤;キサンタン(xanthan)ガムのようなガムを含み得るペースト剤;アルコール性溶液または水性溶液のような溶液;水酸化アルミニウムまたはアルギン酸ナトリウムゲルのようなゲル;ヒトまたは動物アルブミンのようなアルブミン;ヒトまたは動物コラーゲンのようなコラーゲン;アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロースおよびアルキルヒドロキシアルキルセルロースのようなセルロース(例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびヒドロキシプロピルセルロース);Pluronic.RTM.F−127により例示されるPluronic.RTM.Polyolのようなポリオキサマー;tetronic 1508のようなtetronics;ならびにアルギン酸ナトリウムのようなアルギン酸。
【0061】
本発明のsNPは、血管新生を負に調節する治療的に有効量の別の分子と組み合わされ得、この分子は、TNP−470、血小板因子4、トロンボスポンジン−1、メタロプロテアーゼの組織インヒビター(TIMP1およびTIMP2)、プロラクチン(16−Kdフラグメント)、アンジオスタチン(プラスミノゲンの38−Kdフラグメント)、エンドスタチン、bFGF可溶性レセプター、トランスフォーミング増殖因子β、インターフェロンα、可溶性KDRおよびFLT−1レセプター、ならびに胎盤プロリフェリン(proliferin)関連タンパク質であり得るがこれらに限定されない。
【0062】
本発明のsNPはまた、化学療法剤と組み合わされ得る。
【0063】
本発明のsNPをコードするDNAは、遺伝子治療の型で使用され、そして当業者に公知の任意の方法によって宿主に送達され、VEGFに関連する障害を処置し得る。
【0064】
本発明の好ましい実施態様は、さらなる腫瘍増殖および最終的な転移を予防するために固形腫瘍の血管新生を阻害する方法に関する。この目標のために、遺伝子移入が近づき得る任意の固形腫瘍または腫瘍を囲む領域が、開示された治療適用の標的である。sNPをコードし、組換えウイルス性または非ウイルス性に基づく遺伝子移入系の中に収容されるDNAは、当該分野で公知である任意の多数の手順によりこの腫瘍の近傍内の標的細胞に指向され得る。この手順は、以下を含むがこれらに限定されない(a)腫瘍内部の部位およびこの腫瘍の周囲の部位に有効量のDNAを投与することと組み合わされる外科的手順(可能な場合、腫瘍の一部または全体の最初の除去を含む);(b)この腫瘍の部位中または近接部位への直接的な遺伝子移入ビヒクルの注入;ならびに、(c)当該分野で公知である技術を使用する遺伝子移入ベクターおよび/または遺伝子産物の局在化送達または全身的な送達。
【0065】
VEGFまたはニューロピリン発現細胞を含む任意の固形腫瘍は、処置のための潜在的な標的である。例えば、決して限定としては列挙しないが、遺伝子治療適用に特に脆弱な固形腫瘍は、以下である;(a)神経膠芽細胞、星状細胞腫、神経芽腫、髄膜細胞腫、上衣細胞腫を含むが必ずしもこれらに限定されない中枢神経系の新生物;(b)本来の位置での癌髄様癌、管状腺癌、浸潤(浸潤する)癌および粘液性癌腫を含むがその部位の癌に限定されない前立腺、精巣、子宮、頸、卵巣乳房のような組織でのホルモン依存性癌;(c)皮膚および眼の黒色腫を含むがこれらに限定されない黒色腫;(d)扁平上皮癌、紡錘体癌、小細胞癌、腺癌および大細胞癌を少なくとも含む肺の癌;ならびに(e)少なくとも大腸の腺癌を含む、食道、胃、小腸、結腸、結腸直腸、直腸、および肛門領域のような胃腸管系の癌。
【0066】
sNPをコードするDNAフラグメントは、ウイルス性または非ウイルス性に基づく方法によって、全身的にまたは哺乳動物宿主の固形腫瘍の近傍における標的細胞に対してかのいずれかで送達され得る。本発明に利用され得るウイルスベクター系は、以下を含むがこれらに限定されない;(a)アデノウイルスベクター;(b)レトロウイルスベクター;(c)アデノ随伴ウイルスベクター;(d)単純疱疹ウイルスベクター;(e)SV40ベクター;(f)ポリオーマウイルスベクター;(g)パピローマウイルスベクター;(h)ピコナウイルスベクター;および(i)ワクシニアウイルスベクター。
【0067】
本発明のsNPをコードするDNAを含む組換えウイルスまたはベクターは、好ましくは、固形腫瘍および/またはこの固形腫瘍に近接する静止状態の組織(例えば、脂肪組織または筋組織)への直接注入によりこの宿主に投与される。もちろん、腫瘍細胞を標的とされる脂肪組織または筋組織の領域にトランスフェクトすることは、有用である。これらの周囲の細胞におけるsNPの一過性発現は、これらのタンパク質の局所的な細胞外増加を生じ、そしてVEGFとの結合を促進し、これによりこのレセプターへのVEGFの結合を阻害する。
【0068】
また適切である非ウイルス性ベクターは、例えば、リポソーム媒介性またはリガンド/ポリ−L−リジン結合体(例えば、アシアロ糖蛋白媒介性送達系のようなDNA脂質複合体を含む(例えば、Felgnerら、1994、J.Biol.Chem.269:2550〜2561;Derossiら、1995、Restor.Neurol.Neuros.8:7〜10;およびAbcallahら、1995、Biol.Cell 85:1〜7を参照のこと)。「裸」のDNAの直接注入もまた、使用され得る。
【0069】
本発明はまた、本発明の薬学的組成物の1つ以上の成分で充填された1つ以上の容器を含む薬学的パックまたはキットを提供する。必要に応じて、薬学的または生物学的製品の製造、使用または販売を規制する政府機関による規定される形態での通知は、このような容器に付随し得、この通知は、ヒト投与についての製造機関、使用機関、または販売機関による認可を示す。
【0070】
以上または以下の引用される全ての参考文献は、本明細書中で参考として援用される。
【実施例】
【0071】
本発明はさらに、以下の実施例を例証する。これらの例示は、本発明の理解を目的に提供され、その限定として解釈されない。
【0072】
(実施例1)
(実験手順)
(材料)
トランスフェクションのための細胞培養培地、リポフェクチンおよびリポフェクタミン試薬をLife Technologiesから購入した。ヒト組換えVEGF165およびVEGF121は、以前に記載されるようにヒトVEGF165またはVEGF121のいずれかをコードする組換えバキュロウイルスベクターを用いて感染されたSf−21昆虫細胞において産生された(Cohenら、Growth Factors、7、131〜138(1992);Cohenら、J.Biol.Chem.、270、11322〜11326(1995)。GST VEGFエキソン7+8融合タンパク質をE.coliにおいて調製し、そして以前に記載されるように精製した(Sokerら、J.Biol.Chem.、271、5761〜5767(1996))。ヘパリン、ハイグロマイシンBおよびプロテアーゼインヒビターをSigma(St.Louis、MO)から購入した。125I−ナトリウム、32P−dCTP、およびGeneScreen−Plusハイブリダイゼーション転移膜をDuPont NEN(Boston、MA)から購入した。ジスクシンイミジルスベリン酸(DSS)およびIODO−BEADSをPierce Chemical Co.(Rockford、IL)から購入した。Con AセファロースをPharmacia LKB Biotechnology Inc.(Piscataway、NJ)から購入した。RNAzol−BをTEL−TEST Inc.(Friendswood、TX)から購入した。銀染色キットおよびTrans−Blot PVDF膜をBio−Rad Laboratories(Hercules、CA)から購入した。複数組織ノザンブロット膜をClontech(Palo Alto、CA)から購入した。ポリA Tract mRNA単離キットをPromega(Madison、WI)から購入した。RediPrime DNA標識キットおよび分子量マーカーをAmersham(Arlington Heights、IL)から購入した。プラスミド:pcDNA3.1をInvitrogen(Carlsbad、CA)から購入し、そしてCMVプロモーターを含み、かつハイグロマイシンBホスホリラーゼをコードするpCPhygroは、Dr.Urban Deutsch(Max Plank Institute、Bad Nauheim、Germany)によって親切に提供された。制限エンドヌクレアーゼおよびリガーゼをNew England Biolabs,Inc.(Beverly、MA)から購入した。NT−B2写真用エマルジョンおよびX線フィルムをEastman Kodak Company(Rochester NY)から購入した。
【0073】
(細胞培養)
ヒト臍帯静脈EC(HUVEC)をAmerican Type Culture Collection(ATCC)(Rockville、MD)から入手し、そして20%ウシ胎児血清(FCS)ならびにグルタミン、ペニシリンおよびストレプトマイシン混合物(GPS)を含むM−199培地中でのゼラチンコートディッシュ上で増殖した。塩基性FGF(2ng/ml)を1日おきに培養培地に添加した。親ブタ大動脈内皮(PAE)細胞およびKDRを発現するPAE細胞(PAE/KDR)(Waltenbergerら、J.Biol.Chem.269、26988〜26995(1994))は、Dr.Lena Claesson−Welshにより親切に提供され、そして10%FCSおよびGPSを含むF12培地で増殖した。MDA−MB−231細胞およびMDA−MB−453細胞を、ATCCから入手し、そして10%FCSおよびGPSを含むDMEMで増殖した。ヒト黒色腫細胞株である、RU−mel、EP−melおよびWK−melは、Dr.Randolf Byer(Boston University Medical School、Boston、MA)から親切に提供され、そして2%FCS、8%ウシ血清およびGPSを含むDMEMで増殖した。ヒト転移性前立腺癌であるLNCaP細胞および前立腺癌であるPC3細胞は、Dr.Michael Freeman(Children’s Hospital、Boston、MA)から親切に提供され、そして5%FCSおよびGPSを含むRPMI 1640で増殖した。
【0074】
(精製およびタンパク質配列決定)
150cmディッシュで増殖された約5×108MDA−MB−231細胞を5mM EDTAを含むPBSで洗浄し、掻き取り、そして500gで5分間遠心分離した。この細胞ペレットを150mlの20mM HEPES、pH8.0、0.5%TritonX−100ならびに1mM AEBSF、5μg/mlロイペプチンおよび5μg/mlアプロチニンを含むプロテアーゼインヒビターを用いて氷上で30分間溶解し、そしてこの溶解物を30,000×gで30分間遠心分離した。MnCl2およびCaCl2を、各々1mMの最終濃度を得るように上清に添加した。この溶解物を、Con Aセファロースカラム(7ml)に吸収し、そして結合タンパク質を、15mlの20mM HEPES、pH8.0、0.2M NaCl、0.1%TritonX−100および1M メチル−α−D−マンノピラノシドを用いて0.2ml/minで溶出した。この溶出物を30分間隔で二度さらに繰り返した。このCon Aカラム溶出物をプールし、そして以前に記載されるように調製された、約150μgのVEGF165を含む0.5mlのVEGF165−セファロースビーズとともに4℃で12時間インキュベートした(WilchekおよびMiron、Biochem.Int.4、629〜635.(1982))。このVEGF165−セファロースビーズを、50mlの20mM HEPES、pH8.0、0.2M NaClおよび0.1%TritonX−100、次いで25mlの20mM HEPES、pH8.0を用いて洗浄した。このビーズをSDS−PAGE緩衝液中で煮沸し、結合タンパク質を6%SDS−PAGEによって分離した。セミドライ電気ブロッター(Hoeffer Scientific)を使用して、タンパク質をTransBlot PVDF膜に転移し、そしてこのPVDF膜を40%メタノール中の0.1%クマシーブリリアントブルーで染色した。130〜140kDaダブレットにおける2つの顕著なタンパク質を別々に切り出し、Harvard Microchemistry施設(Cambrige、MA)のDr.William Laneにより提供されるサービスとしてApplied Biosystems model 477A微量配列決定機を使用してN末端の配列決定をした。
【0075】
(発現クローニングおよびDNA配列決定)
相補的DNA(cDNA)を5μgの231mRNAから合成した。二本鎖cDNAをEcoRIアダプターに連結し、そして5〜20%酢酸カリウム勾配でサイズ分画した。2kbよりも大きいDNAフラグメントを真核生物発現プラスミドpcDNA3.1に連結した。このプラスミドライブラリーをE.coliにトランスフェクトし、約1×107の個々のクローンの一次ライブラリーを生じた。形質転換された細菌の一部を240プールに分割し、これら各々は、約3×103の個々のクローンを表す。各プールから調製されたDNAを使用し、製造業者の指示に従いリポフェクチン試薬を使用して12ウェルディッシュ中に播種されたCOS−7細胞をトランスフェクトした。トランスフェクションの3日後に、この細胞を1μg/mlヘパリンの存在下で125I−VEGF165(10ng/ml)とともに氷上で2時間インキュベートし、洗浄し、PBS中の4%パラホルムアルデヒドを用いて固定した。個々の細胞に結合する125I−VEGF165は、記載されるように、単層を写真用エマルジョン、NT−B2とともに重層し、そして2日後にこのエマルジョンを現像することによって検出された(Gearingら、1989)。7つの陽性DNAプールを同定し、この陽性プールのうちの1つからのDNAを使用し、E.coliを形質転換した。このE.coliを50の別々のプールにさらに分割し、各プールが約100クローンを表す、50のLBアンピシリンディッシュ上に播種した。これらのプールから作製されたDNAをCOS−7細胞にトランスフェクトし、上記のように125I−VEGF165結合についてスクリーニングした。20の陽性プールをこの工程で検出し、そしてそれらの対応するDNAを使用し、E.coliを形質転換した。各プールを別々のLBアンピシリンディッシュ上に播種し、DNAを96の個々のコロニーから調製し、そして上記のようにトランスフェクトされたCOS−7細胞に対する125I−VEGF165結合について96ウェル二次元格子においてスクリーニングした。7つの単独のクローンをこの工程の陽性として同定した。この7つの陽性プラスミドクローンを増幅し、そしてそれらのDNAを制限酵素消化によって分析した。6つのクローンは、消化の同一消化パターンを示し、そして1つは異なっていた。各々の群からの1つのクローンを自動化DNA配列決定に供した。
【0076】
(ノザン分析)
製造業者の指示に従いRNAzolを使用して、培養中の細胞から総RNAを調製した。20μgRNAのサンプルを1%ホルムアルデヒド−アガロースゲルで分離し、そしてGeneScreen−Plus膜に転写した。この膜を、ORF中のヌクレオチド63〜454に対応する、ヒトVEGF165R/NP−1 cDNAの32P標識フラグメントを用いて63℃で18時間ハイブリダイズした。この膜を洗浄し、そしてX線フィルムに18時間曝露した。市販の複数のヒト成人組織のmRNAブロット(Clonetech、2μg/レーン)を、同様の様式で、ヒトNP−1についてプローブした。この複数組織ブロットを0.5%SDSの存在下で煮沸により剥がし、そしてこのORFのヌクレオチド2841〜3251に対応するKDR cDNAの32P標識フラグメントを用いて再プローブした(Termanら、Oncogene 6、1677〜1683(1991))。
【0077】
(PAE細胞のトランスフェクション)
親PAE細胞およびKDRを発現するPAE細胞(PAE/KDR)(Waltenbergerら、1994)を、Lena Claesson−Welsh博士から入手した。ヒトNP−1 cDNAを、XhoIおよびXbaI制限酵素を用いて消化し、そしてpCPhygroの対応する部位にサブクローニングし、pCPhyg−NP−1を産生した。PAEおよびPAE/KDR細胞を、6cmディッシュで増殖し、製造業者の指示に従いリポフェクタミンを使用して5μgのpCPhyg−NP−1をトランスフェクトした。細胞をさらに48時間増殖させ、そしてこの培地を、200μg/mlのハイグロマイシンBを含む新鮮な培地と交換した。2週間後、単離されたコロニー(5〜10×103細胞/コロニー)を48ウェルディッシュの別々のウェルに移し、そして200μg/mlハイグロマイシンBの存在下で増殖した。VEGF165R/NP−1(PAE/NP−1)を発現するか、またはVEGF165R/NP−1およびKDRを共発現する(PAE/KDR/NP−1)安定なPAE細胞クローンを、125I−VEGF165の結合および架橋によってVEGF165レセプター発現についてスクリーニングした。一過性のトランスフェクションについては、PAE/KDR細胞を、上記のようにVEGF165R/NP−1を用いてトランスフェクトし、そして3日後に125I−VEGF165架橋分析を実行した。
【0078】
(VEGFの放射ヨウ素化、結合および架橋実験)
IODO−BEADSを使用するVEGF165およびVEGF121の放射ヨウ素化を、以前に記載されるように実行した(Sokerら、J.Biol.Chem.272、31582〜31588(1997))。この比活性は、40,000〜100,000cpm/ngタンパク質で変動した。125I−VEGF165および125I−VEGF121を使用する結合および架橋実験を、以前に記載されるように実行した(Gitay−Gorenら、J.Biol.Chem.267、6093〜6098(1992);Sokerら、J.Biol.Chem.271、5761〜5767(1996))。VEGF結合は、γカウンターで細胞に関連する放射活性を測定することによって定量された(Beckman、Gamma5500)。カウントは3ウェルの平均を表す。全ての実験を少なくとも3回繰り返し、そして同様の結果を得た。結合実験の結果を、LIGANDプログラム(MunsonおよびRodbard、1980)を使用するスキャッチャードの方法によって分析した。125I−VEGF165および125I−VEGF121の架橋複合体を、6%SDS/PAGEによって分離し、そしてこのゲルをX線フィルムに曝露した。その後、X線フィルムを、IS−1000デジタル画像処理システム(Alpha Innotech Corporation)を使用することによって走査した。
【0079】
(VEGF165Rの精製)
231細胞の細胞表面レセプターに対する125I−VEGF165の架橋は、165〜175kDa標識複合体の形成を生じる(Sokerら、J.Biol.Chem.271、5761〜5767(1996))。これらの細胞は、約1〜2×105VEGF165結合部位/細胞を有する。VEGF165とは対照的に、VEGF121は、231細胞に結合せず、そしてリガンド−レセプター複合体を形成しない(Sokerら、J.Biol.Chem.271、5761〜5767(1996))。231細胞中の相対的に高いVEGF165Rの数および全く検出可能なKDRまたはFlt−1 mRNAが欠乏すること(示さず)は、これらの細胞がVEGF165R精製のために有用な供給源であることを示唆する。予備的な特徴付けは、VEGF165Rが糖タンパク質であることを示した。従って、約5×108細胞から調整された231細胞溶解物がCon Aセファロースカラムに吸収された。Con Aカラムから溶出される結合タンパク質を、VEGF165セファロースとともにインキュベートし、そしてこのVEGF165親和性精製タンパク質をSDS−PAGEおよび銀染色により分析した(図9、レーン2)。約130〜135kDaの分子量である顕著なダブレットが、検出された。このサイズは、約130〜135kDaのサイズであるレセプターに結合した40〜45kDaのVEGF165の165〜175kDa複合体の形成と一致する(図9、レーン1)。この2つのバンドを別々に切り出し、そしてN末端アミノ酸配列決定を実行した(図1、右)。上側および下側のバンドの両方は、同様なN末端アミノ酸配列を有しており、この配列は、マウス(Kawasakiら、J.Neurobiol.29,1〜17(1995))およびヒトニューロピリン−1(NP−1)(HeおよびTessier−Lavigne、Cell 90739〜751(1997))のN末端領域における推定アミノ酸配列に対して高度な配列相同性を示した。
【0080】
(231細胞由来mRNAからのVEGF165Rの発現クローニング)
この精製に伴って、VEGF165Rを発現クローニングによってクローン化した(AruffoおよびSeed、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 84、8573〜8577(1987a);AruffoおよびSeed、EMBO J.、6、3313〜3316(1987b);Gearingら、EMBO J.8、3667〜3676(1989))。発現クローニングについて、231細胞mRNAを使用し、真核細胞発現プラスミド中に約107クローンのcDNAライブラリーを調製した。このプラスミドライブラリーで形質転換されたE.coliをプールに分割した。各々のプールから調製されるDNAを別々のウェルのCOS−7細胞にトランスフェクトし、そして個々の細胞を、写真用エマルジョンで重層された単層のオートラジオグラフィによって検出されるように、125I−VEGF165に結合する能力についてスクリーニングした(図2A)。サブプーリングおよびスクリーニングの3ラウンドの後に、7つの単一陽性cDNAクローンを得た。図2Bは、これらの単一の陽性クローンのうちの1つ(クローンA2)を用いてトランスフェクトされたCOS−7細胞に対する125I−VEGF165の結合を示す。
【0081】
制限酵素分析は、7つの陽性単一クローンのうちの6つが同一の制限消化パターンを有するが、1つのクローンが異なる(示さず)パターンを有することを示した。これらの同様のcDNAクローンのうちの1つ、クローンA2(図3)の配列決定は、それがヒト発現配列タグデータバンク(dbEST)由来の配列と同一であることを示した。この配列はまた、マウスニューロピリン、NP−1(Kawakamiら、J.Neurobiol 29、1〜17(1995))の配列に対して高い割合の相同性を示した。本発明者らが、ヒトVEGF165Rをクローン化した後に、2つのグループがセマフォリン(semaphorin)IIIのラットおよびヒトレセプターのクローニングを報告し、そしてそれらがNP−1であると同定した(HeおよびTessier−Lavigne、Cell90、739〜751(1997);Kolodkinら、Cell 90、753〜762(1997))。この231細胞由来VEGF165R cDNA配列は、ヒトNP−1配列(HeおよびTessier−Lavigne、Cell 90、739〜751(1997)と実際は同一である(例外についての図説明文3を参照のこと)。きわめて、発現クローニングによって得られる推定アミノ酸配列(図3)は、N末端配列決定によって決定された、NP−1としてのVEGF165Rの同定を確認し(図1)、従って、本発明者らは、このVEGFレセプターをVEGF165R/NP−1と命名した。
【0082】
ヒトVEGF165R/NP−1のcDNA配列は、推定シグナルペプチドおよび膜貫通ドメインを表す2つの疎水性領域を有する923アミノ酸のオープンリーディングフレーム(ORF)を予測する(図3)。全体的に、この配列は、細胞表面レセプターの構造と一致する外部ドメイン、膜貫通ドメインおよび細胞質ドメインを予測する。図1に示されるように、タンパク質精製を介して得られたこのN末端配列は、21アミノ酸推定疎水性シグナルペプチドドメインの下流であり、従って、このシグナルペプチドドメインが切断され、そして除去されることを直接的に示す。40アミノ酸の短い細胞質の尾部は、231細胞の部分的なトリプシン消化により放出される可溶性VEGF165R/NP−1がインタクトなVEGF165R/NP−1と同じサイズであることを実証する結果と一致する(示さず)。
【0083】
異なる制限酵素プロフィールを有した発現クローニングにより得られた1つのクローンの配列分析は、VEGF165R/NP−1に対して約47%の相同性を有する931アミノ酸のオープンリーディングフレームを予測した(図4)。このヒトcDNAは、ラットニューロピリン−2(NP−2)と93%の配列相同性を有し、そして最近クローン化されたヒトNP−2と同一である(Chenら、Neuron、19、547〜559(1997))。
【0084】
(成人の細胞株および組織におけるVEGF165R/NP−1の発現)
NP−1遺伝子発現の報告は、今のところ発達している胚の神経系に限定されている(Takagiら、Dev.Biol.122、90〜100(1987);Kawakamiら、J.Neurobiol.29、1〜17(1995);Takagiら、Dev.Biol.170、207〜222(1995))。しかし、細胞表面VEGF165R/NP−1は、ECのような非ニューロン性成人細胞型および種々の腫瘍由来細胞と関連する(Sokerら、J.Biol.Chem.271、5761〜5767(1996))。ノザンブロット分析は、125I−VEGF165架橋された細胞がまた、VEGF165R/NP−1 mRNAを合成するか否かを決定するために実行された(図5)。VEGF165R/NP−1 mRNAレベルは、231細胞およびPC3細胞で最も高かった。VEGF165R/NP−1 mRNAは、HUVEC細胞、LNCaP細胞、EP−mel細胞およびRU−mel細胞においてより少ない程度で検出された。MDA−MB−453細胞およびWK−mel細胞中の発現は、あるとしてもほとんど存在しなかった。このVEGF165R/NP−1遺伝子発現パターンは、HUVEC細胞、231細胞、PC3細胞、LNCaP細胞、EP−mel細胞およびRU−mel細胞が、細胞表面VEGF165R/NP−1に125I−VEGF165を結合させるが、MDA−MB−453細胞およびWK−mel細胞がそうではないこと示す、本発明者らの以前の結果と一致した(Sokerら、J.Biol.Chem.271、5761〜5767(1996))。
【0085】
VEGF165R/NP−1遺伝子発現はまた、種々の成人組織において、KDR遺伝子発現と比較するノザンブロットによって分析された(図6)。VEGF165R/NP−1 mRNAレベルは成人の心臓および胎盤において比較的高く、そして肺、肝臓、骨格筋、腎臓および膵臓において比較的中程度であった。比較的低いレベルのVEGF165R/NP−1 mRNAは、成人の脳において検出された。興味深いことに、マウスおよびニワトリ脳におけるNP−1遺伝子発現の以前の分析は、この遺伝子が胚発生の間に主に発現され、そして出生後に大きく減少することを示唆した(Kawakamiら、J.Neurobiol.29、1〜17(1995);Takagiら、Dev.Biol.170、207〜222(1995))。KDR mRNAの組織分布は、心臓で高度に発現しないという例外を伴うがVEGF165R/NP−1のmRNAの組織分布と同様であった。これらの結果は、VEGF165R/NP−1が、心臓および胎盤のように血管新生が生じる組織を含む、成人の非ニューロン組織において広く発現されることを示す。
【0086】
(VEGF165R/NP−1に対するVEGF165結合の特徴付け)
VEGF165R/NP−1の結合性質を特徴付けるために、ブタ大動脈内皮(PAE)細胞は、VEGF165R/NP−1のcDNAを用いてトランスフェクトされた。このPAE細胞は、これらの発現研究のために選択された。なぜならば、PAE細胞は、KDRも、Flt−1も(Waltenbergerら、J.Biol.Chem.269、26988〜26995(1994))、VEGF165Rのいずれも発現していないからである。VEGF165R/NP−1(PAE/NP−1)を合成する安定な細胞株を確立し、そして125I−VEGF165結合実験を実行した(図7)。PAE/NP−1細胞に対する125I−VEGF165結合は、用量依存性の様式で増加し、そして約30ng/mlで飽和に達した。このことは、VEGF165R/NP−1が特異的VEGF165レセプターであることを実証する(図7A)。VEGF165結合のスキャッチャード分析は、約3.2×10-10MのKdを有する1つのクラスのVEGF165結合部位、および1細胞当たり約3×105の125I−VEGF165結合部位を明らかにした(図7B)。同様のKd値が、いくつかの独立して生成したPAE/NP−1クローンについて得られたが、このレセプター数はクローン毎に変動した(示さず)。PAE/NP−1細胞株に対する3×10-10MのKdは、HUVEC細胞および231細胞によって天然に発現されるVEGF165R/NP−1に対して得られる2〜2.8×10-10MのKd値と一致する(Gitay−Gorenら、J.Biol.Chem.267、6093〜6098(1992);Sokerら、J.Biol.Chem.271、5761〜5767(1996))。PAE/NP−1細胞に対する125I−VEGF165結合は、1μg/mlヘパリンによって増強され(示さず)、このことは、ヘパリンが、HUVEC細胞および231細胞上のVEGF165R/NP−1に対する125I−VEGF165結合を増強することを示す以前の研究と一致した(Gitay−Gorenら、J.Biol.Chem.267、6093〜6098(1992);Sokerら、J.Biol.Chem.271、5761〜5767(1996))。
【0087】
(VEGF165R/NP−1を発現している細胞に対するVEGFのアイソフォーム特異的結合)
VEGF165(VEGF121ではない)は、HUVEC細胞および231細胞上のVEGF165R/NP−1に結合する(Gitay−Gorenら、J.Biol.Chem.271、5519〜5523(1992);Sokerら、J.Biol.Chem.271、5761〜5767(1996))。VEGF165R/NP−1を用いてトランスフェクトされた細胞が、同一の結合特異性を有するか否かを確認するために、PAE/NP−1細胞を、125I−VEGF165または125I−VEGF121とともにインキュベートし、その後、架橋した(図8)。125I−VEGF165は親PAE細胞に結合しなかったが(図8、レーン3)、VEGF165R/NP−1を介してPAE/NP−1細胞に結合した(図8、レーン4)。VEGF165R/NP−1を用いて形成された放射標識複合体は、HUVEC細胞(図8、レーン1)およびPC3細胞(図8、レーン2)において形成された複合体と同様のサイズであった。一方、125I−VEGF121は、親PAE細胞(図8、レーン7)またはPAE/NP−1細胞(図8、レーン8)のいずれに対しても結合しなかった。これらの結果は、内因性VEGF165R/NP−1を発現している細胞(例えば、HUVEC細胞、231細胞およびPC3細胞)で生じるVEGFアイソフォーム特異的結合を実証し、これらの結果が、VEGF165R/NP−1 cDNAを用いてトランスフェクトされる細胞で複製され得、そしてVEGF165RおよびNP−1が同一であるという知見を支持し得る。
【0088】
(VEGF165R/NP−1およびKDRの同時発現が、KDRへのVEGF165の結合を変化させる)
VEGF165R/NP−1の発現が、VEGF165とKDRとの相互作用に何らかの影響を有するかどうかを決定するために、以前にKDRcDNAでトランスフェクトして安定なPAE/KDR細胞のクローンを産生したPAE細胞(Waltenbergerら、J.Biol.Chem.269、26988−26995(1994))を、VEGF165R/NP−1 cDNAとトランスフェクトし、そして両方のレセプター(PAE/KDR/NP−1)を発現する安定なクローンを得た。これらの細胞は、125I−VEGF165をKDR(図8、レーン6、上部の複合体)およびVEGF165R/NP−1(図8、レーン6、下部複合体)へ結合し、HUVEC(図8、レーン1)と類似した架橋特性を産生した。一方、PAE/KDR/NP−1細胞は、VEGF121のVEGF165R/NP−1と結合する能力がないことと一致し、125I−VEGF121に結合して、KDRとの複合体のみを形成する(図8、レーン9および10)。
【0089】
細胞中でKDRおよびVEGF165R/NP−1(図8、レーン6)が同時発現していることが明らかとなり、240kDaの125I−VEGF165−KDR複合体形成の程度は、親のPAE/KDR細胞と比較して増強された(図8、レーン5)。これらの結果は再現性があり、そして異なるクローンでの240kDaの125I−VEGF165−KDRの複合体形成の程度は、VEGF165R/NP−1の発現レベルと正の相関関係があった(データ示さず)。しかし、これらの異なるKDR結合の結果は、おそらくトランスフェクション後のクローンの選択に起因するということを決定的には除外することはできなかった。それゆえ、親のPAE/KDR細胞を、VEGF165R/NP−1 cDNAとトランスフェクトし、そして125I−VEGF165を、個々のクローンの間のKDR発現の何らかの多様性を除くために、3日後に細胞に対して結合および架橋させた(図9)。KDRを含む標識された240kDaの複合体が、親のPAE/KDR細胞で形成され(図9、レーン1)、そしてPAE/KDR細胞中に発現ベクターと共にトランスフェクトした(図9、レーン2)。しかし、125I−VEGF165を、VEGF165R/NP−1を過渡的に発現しているPAE/KDR細胞と架橋した場合、親のPAE/KDR細胞(図9、レーン1)および発現ベクターとトランスフェクトしたPAE/KDR細胞(図9、レーン2)と比較して、約4倍大きいより強烈に標識された240kDaの複合体が観察された(図9、レーン3)。これらの結果は、同じ細胞内におけるKDRおよびVEGF165R/NP−1遺伝子の同時発現が、VEGF165のKDRへの結合能力を増強することを示唆する。
【0090】
(GST−VEGFエキソン7+8融合タンパク質は、VEGF165のVEGF165R/NP−1およびKDRへの結合を阻害する)
本発明者らは、125I−VEGF165が、そのエキソン7にコードされたドメインを介してVEGF165R/NP−1に結合することを示した(Sokerら、J.Biol.Chem.271、5761−5767(1996))。さらに、VEGFエキソン7+8にコードされたペプチドを含むGST融合タンパク質(GST−Ex7+8)は、231細胞およびHUVECに関連したVEGF165R/NP−1への125I−VEGF165の結合を完全に阻害する(Sokerら、J.Biol.Chem.271、5761−5767(1996);Sokerら、J.Biol.Chem.272、31582−31588(1997))。PAE/NP−1細胞を添加した場合、融合タンパク質は、VEGF165R/NP−1への結合を完全に阻害した(図10、レーン1と比較したレーン2)。一方、125I−VEGF165のKDRへの結合は、全く阻害されなかった(図10、レーン3と比較したレーン4)。従って、これらの結果は、GST−Ex7+8が、VEGF165R/NP−1とは直接結合するが、KDRとは結合しないことを実証する。GST−Ex7+8の効果は異なっているが、細胞内においてVEGF165R/NP−1およびKDR(PAE/KDR/NP−1)の両方を同時発現する。図8および9の結果と一致して、PAE/KDR/NP−1細胞中の125I−VEGF165のKDRとの結合の程度(図10、レーン5)は、親のPAE/KDR細胞よりも大きかった(図10、レーン3)。興味深いことに、PAE/KDR/NP−1細胞において、GST−Ex7+8は、期待したように125I−VEGF165のVEGF165R/NP−1への結合を完全に阻害するだけでなく、予期しなかったKDRへの結合もまた実質的に阻害した(図10、レーン5と比較したレーン6)。GST−Ex7+8の存在下において、これらの細胞内での125I−VEGF165のKDRへの結合は、VEGF165R/NP−1を発現していない親のPAE/KDR細胞において見られたレベルに対して減少した(図10、レーン3および4と比較したレーン6)。融合タンパク質は、KDRに直接結合しないので、これらの結果は、125I−VEGF165のVEGF165R/NP−1への直接的な結合を阻害することが、125I−VEGF165のKDRへの間接的な結合を阻害することを示唆する。図8、9および10の結果を組み合わせると、VEGF165とVEGF165R/NP−1との相互作用が、KDRとVEGFの相互作用を増強することを示唆する。
【0091】
(ニューロピリン−1(neuropilin−1)は、アイソフォーム−特異的VEGF165レセプターである)
最近、本発明者らは、VEGF165と結合するがVEGF121とは結合せず、従って本発明者らがVEGF165Rと名づけた新規な130〜135kDaのVEGF細胞表面レセプターを記載した(Sokerら、J.Biol.Chem.271、5761−5767(1996))。本発明者らは、現在そのクローニングしたcDNAを発現するVEGF165Rを精製し、そしてこれがヒトニューロピリン−1(NP−1)と同一であることを示した(HeおよびTessier−Lavigne、Cell 90 739−751(1997))。VEGF165Rが、NP−1と同一であることの証拠およびNP−1が、VEGF165のレセプターとして機能することの証拠は、以下のようである:i)ヒトMDA−MB−231(231)細胞からのVEGF165Rタンパク質の精製は、VEGF親和性を用い、SDS−PAGEおよび銀染色法により130〜140kDaの二重線を得た。両方のタンパク質のN末端配列決定から、マウスNP−1との高い相同性が実証された、18のアミノ酸の同じN末端配列が得られた(Kawakamiら、J.Neurobiol.29、1〜17(1995));ii)本発明者らは、ヒト231細胞からVEGF165Rを精製した後、ヒトNP−1のクローニングを報告し(HeおよびTessier−Lavigne、Cell 90、739−751(1997))、そしてヒトVEGF165RのN末端配列が、ヒトNP−1のN末端領域の配列と同一であることを見出した;iii)231細胞cDNAライブラリーを用いた発現クローニングによりいくつかのcDNAクローンを単離し、そしてそれらの配列は、ヒトNP−1cDNA配列と同一であった(HeおよびTessier−Lavigne、Cell 90、739−751(1997))。精製および発現クローニングの組み合わせは、発現クローニングのみを用いた以前の研究よりも、NP−1タンパク質のN末端の明白な同定を可能にする利点を有する(HeおよびTessier−Lavigne、Cell 90、739−751(1997);Kolodkinら、Cell 90、753−762(1997));iv)NP−1遺伝子発現のノザンブロット分析は、以前の125I−VEGF165架橋実験と一致した(Sokerら、J.Biol.Chem.271、5761−5767(1996))。VEGF165がVEGF165Rに結合した細胞は、比較的多量のNP−1 m RNAを合成したが、一方、たとえあるにしても非常に少量のVEGF165結合を示す細胞は、たとえあるにしても大してNP−1 mRNAを合成しなかった;v)NP−1がPAE細胞において発現された場合、親細胞ではないがトランスフェクトされた細胞が、VEGF121とは結合できないが、VEGF165と結合し得、このことは、前述のHUVECおよび231細胞が示した、アイソフォームの結合特性と一致した(Sokerら、J.Biol.Chem.271、5761−5767(1996))。さらに、NP−1を発現するPAEとの125I−VEGF165結合のKdは、約3×10-10Mであり、以前の231細胞およびHUVECの結合Kd値である2〜2.8×10-10Mと一致した(Sokerら、J.Biol.Chem.271、5761−5767(1996));およびvi)VEGF165のNP−1ポスト−トランスフェクションを発現する細胞との結合は、このリガンドのHUVECおよび231細胞への結合であるので、ヘパリンの存在下においてより効果的であった(Gitay−Gorenら、J.Biol.Chem.267、6093−6098(1992);Sokerら、J.Biol.Chem.271、5761−5767(1996))。これらの結果を合わせると、VEGF165RがNP−1と同一であるということだけでなくアイソフォーム特異的な方法によって、VEGF165を結合する機能的レセプターであるということを示す。従って、本発明者らは、このVEGFレセプターをVEGF165R/NP−1と命名した。
【0092】
VEGF165R/NP−1 cDNAの発現クローニングに加えて、別のヒトcDNAクローンを、単離した。これから予測されるアミノ酸配列は、VEGF165R/NP−1のアミノ酸配列と47%相同性であり、そして最近クローニングされた、ラットニューロピリン−2(NP−2)と90%を超えて相同であった(Kolodkinら、Cell 90、753−762(1997))。NP−2は、コラプシン/セマフォリンファミリーのメンバーを選択的に結合する(Chenら、Neuron 19、547−559(1997))。
【0093】
NP−1が、VEGF165のレセプターとして働くという発見は、NP−1は、以前胚の発達中に神経系とのみ関連すると示されており(Kawakamiら、J.Neurobiol.29、1−17(1995);Takagiら、Dev.Biol.170、207−222(1995))、そしてごく最近、コラプシン/セマファリンファミリーのメンバーのレセプターとして働くことが発見された(HeおよびTessier−Lavigne、Cell 90、739−751(1997);Kolodkinら、Cell 90、753−762(1992))ために驚きであった。NP−1は、初めXenopusの視覚系の発達において同定された、130〜140kDaの膜貫通糖タンパク質である(Takagiら、Dev.Biol.122、90−100(1987);Takagiら、Neuron 7、295−307(1991))。神経系におけるNP−1の発現は、発達中および特にアクソンが神経網を活発に形成している場合、それらの発達段階に関連して、空間的および時間的に高く制御される(Fujisawaら、Dev.Neurosci.17、343−349(1995);Kawakamiら、J.Neurobiol.29、1−17(1995);Takagiら、Dev.Biol.170、207−222(1995))。NP−1タンパク質は、ニューロンのアクソンとは関連があるが、小孔とは関連がない(Kawakamiら、J.Neurobiol.29、1−17(1995))。機能的には、ニューロピリンは、インビトロにおいて視覚神経繊維の神経突起成長の促進を示し(Hirataら、Neurosci.Res.17、159−169(1993))、そして細胞の接着性の促進を示した(Tagakiら、Dev.Biol.170、207−222(1995))。標的化されたNP−1の破壊によって、末梢神経系の遠心性繊維の軌道に重篤な異常を生じる(Kitsukawaら、Neuron 19、995−1005(1997))。これらの研究にもとづいて、NP−1が、アクソンの成長およびガイダンスにおいて神経細胞認識分子の役割を果たしていることが示唆された(Kawakamiら、J.Neurobiol.29、1−17(1995);HeおよびTessier−Lavigne、Cell 90、739−751(1997);Kitsukawaら、Neuron 19、995−1005(1997);Kolodkinら、Cell 90、753−762(1997))。
【0094】
本発明者らの結果は、最初、Xenopus、ニワトリ、およびマウスにおいて発現しているNP−1が、発達および初期の出生後段階を制限していることを示した初期の研究(Fujisawaら、Dev.Neurosci.17、343−349(1995);Kawakamiら、J.Neurobiol.29、1−17(1995);Takagiら、Dev.Biol.170、207−222(1995))とは逆に、VEGF165R/NP−1がまた、成体組織においても発現していることを示した。例えば、マウスにおいてNP−1は、発達中の神経系で9日目に背根神経節において発現され始め、15日目に中断される(Kawakamiら、J.Neurobiol.29、1−17(1995))。本発明者らのヒト成体組織のノーザンブロット分析が、心臓、胎盤、肺、肝臓、骨格筋、腎臓および膵臓において、VEGF165R/NP−1 mRNA転写産物の相対的に高レベルを実証した。興味深いことに、マウス神経系の発現の研究と一致して、成人の脳において非常に少ない相対的な発現がみられる(Kawakamiら、J.Neurobiol.29、1−17(1995))。VEGF165R/NP−1はまた、ECおよび種々の腫瘍由来の細胞を含む培養された多くの非神経細胞株において発現される。これらの細胞におけるVEGF165R/NP−1の考えられる機能は、以下に考察される脈管形成を媒介している可能性がある。
【0095】
さらに、NP−1は、ラットE14脊髄および背根神経節(DRG)組織から得られたcDNAライブラリーの発現クローニングによりコラプシン/セマフォリンファミリーのレセプターとして同定された(HeおよびTessier−Lavigne、Cell 90、739−751(1997);Kolodkinら、Cell 90、753−762(1997))。コラプシン/セマフォリン(コラプシン−D−1/セマIII/セムD)は、反発的な成長円錐およびアクソンガイダンスにおいて機能する膜貫通および分泌糖タンパク質の大きなファミリーを含む(Kolodkinら、Cell 75、1389−1399(1993))。DRG細胞のセマIIIの反発的な効果は、抗NP−1抗体によりブロックされた(HeおよびTessier−Lavigne、Cell 90、739−751(1997);Kolodkinら、Cell 90、753−762(1997))。NP−1に結合しているセマIIIのKdは0.15〜3.25×10-10Mであり(HeおよびTessier−Lavigne、Cell 90、739−751(1997);Kolodkinら、Cell 90、753−762(1997))、これは約3×10-10Mである、VEGF165R/NP−1に結合するVEGF165の値と類似している。これらの結果は、明らかに異なる生物学的活性を有する2つの構造的に異なるリガンド、一方のEC移動および増殖のVEGF誘導刺激、および他方の神経細胞のセマIII誘導相反化学斥力が、同じレセプターに結合し、類似した親和力を有することを示す。興味深い疑問は、2つのリガンドがVEGF165R/NP−1の同じ部位に結合するか、または異なった部位に結合するかである。VEGF165R/NP−1は、その外部ドメインに5つの別々のドメインを有し、そしてそれは、NP−1のタンパク質モジュールのこの多様性は、NP−1のための複数の結合リガンドの可能性と一致することが示唆されてきた(Takagiら、Neuron 7、295−307(1991);Feinerら、Neuron 19 539−545(1997);HeおよびTessier−Lavigne、Cell 90、739−751(1997))。予備的な分析は、セマIIIとVEGF165R/NP−1に結合するVEGFの原因であるVEGFエキソン7との間の配列相同性で全く大きな値を示さなかった(Sokerら、J.Biol.Chem.271、5761−5767(1996))。しかし、それらは、2つのリガンド間においていくつかの3次元構造が類似し得る。神経および血管の両方が、分岐および方向性移動を示すので、VEGF165が、いくらかの神経ガイダンス活性を示すのかどうか、およびセマIIIが、いくらかのEC成長因子活性を有するのかどうかという疑問がまた生じる。これらの可能性は、いまだ調べられていなかった。しかし、VEGFは、最適なEC成長因子活性のために2つのレセプター、KDRおよびNP−1を必要とし得(Sokerら、J.Biol.Chem.272、31582−31588(1997))、そしてセマIIIは、NP−1およびまだ決定されていない最適な化学斥力活性のための高親和性レセプターを必要とし得(Feinerら、Neuron 19、539−545(1997);HeおよびTessier−Lavigne、Cell 90、739−751(1997);Kitsukawaら、Neuron 19、995−1005(1997))、その結果、NP−1単独での存在は、これらのリガンドの新規な生物学的活性を示すために十分ではあり得ない。さらなる研究は、神経発生を制御するメカニズムと脈管形成を制御するメカニズムとの間にいくらかの関係があるのかどうかについて決定する。
【0096】
(脈管形成におけるVEGF165R/NP−1の役割)
VEGF165R/NP−1は、VEGF165のKDRへの結合を制御し、マウスでのKDRノックアウト実験によって確かめられた脈管形成の重要なレギュレーターであるRTKとの高い親和性を示す(Shalabyら、Nature 376、62−66(1995))。KDRのVEGF165に対する親和性は、VEGF165R/NP−1に対する親和性よりも約50倍高い(Gitay−Gorenら、J.Biol.Chem.287、6003−6096(1992);Waltenbergerら、J.Biol.Chem.269、26988−26995(1994))。VEGF165R/NP−1およびKDRが、同時発現する場合、125I−VEGF165のKDRへの結合は、KDR単独を発現する細胞発現と比較して約4倍まで増強される。結合の増強は、VEGF165R/NP−1およびKDRを同時発現する安定したクローン(PAE/KDR/NP−1細胞)においてそしてまた、過渡的にVEGF165R/NP−1クローンの選択が起こらないcDNAとトランスフェクトしたPAE/KDR細胞において実証され得る。逆に、PAE/KDR/NP−1細胞における125I−VEGF165のVEGF165R/NP−1への結合が、VEGFエキソン7+8(GST−Ex7+8)を含むGST融合タンパク質によって、完全に阻害される場合、KDRへの結合は、実質的に阻害され、KDR単独を発現する細胞において観察されるレベルに低下する。融合タンパク質は、VEGF165R/NP−1に直接結合するが、KDRには直接結合することができない(Sokerら、J.Biol.Chem.272、31582−31588(1997))。理論に束縛されることを望まないが、本発明者らは、VEGF165は、エキソン7にコードされたドメインを介してVEGF165R/NP−1に結合し、そしてVEGF165は、エキソン4にコードされたドメインを介してKDRとの結合を促進すると考えている(図11)。その比較的高いレセプター/細胞数(約0.2〜2×105)を有するVEGF165R/NP−1(Gitay−Gorenら、J.Biol.Chem.287、6003−6096(1992);Sokerら、J.Biol.Chem.271、5761−5767(1996))は、細胞表面上のVEGF165を濃縮する役割を果たし、それゆえ、KDRとVEGF165のより強い接近を提供するようである。あるいは、VEGF165R/NP−1との結合により、VEGF165は、KDRとの結合を増強する構造変化をうける。最終的な結果は、KDRシグナル伝達の上昇、およびVEGF活性の増加であった。本発明者らは、KDRとの結合の増強を実証し得るが、現在までのところ、本発明者らは、PAE/KDR細胞と比較した、PAE/KDR/NP−1細胞に対するVEGFの分裂促進性の増強は実証し得なかった。理由の1つは、これらの細胞株が、HUVECが行なう場合のように、VEGFに応答して容易に増殖しないことである(Waltenbergerら、J.Biol.Chem.269、26988−26995(1994))。それにもかかわらず、本発明者らは、KDRおよびVEGF165R/NP−1の両方に結合するVEGF165が、KDRにのみ結合するVEGF121よりも、HUVECのよりよい分裂促進因子であることを見出した(Keytら、J.Biol.Chem.271、5638−5646(1996b);Sokerら、J.Biol.Chem.272、31582−31588(1997))。さらに、GST−Ex7+8によるHUVECにおいてのVEGF165のVEGF165R/NP−1への結合阻害は、KDRへの結合を阻害し、そしてまた、VEGF165により誘導されたHUVEC増殖を阻害し、VEGF121により誘導されたレベルよりも低くする(Sokerら、J.Biol.Chem.272、31582−31588(1997))。これらの結果を組み合わせると、VEGF165の媒介におけるVEGF165R/NP−1の役割が示唆されるが、VEGF121の分裂促進因子活性における役割は示唆しない。二重レセプターが、成長因子の結合および活性を制御するという概念は、以前TGF−β、bFGFおよびNGFにおいて実証されている(Lopez−Casillasら、Cell 67、785−795(1991);Yayonら、Cell 64、841−848(1991);Barbacid、Curr.Opin.Cell Biol. 7、148−155(1995))。
【0097】
VEGF165R/NP−1と脈管形成との間の別の関連は、NP−1が、トランスジェニックマウスで局所的に過剰発現したという研究から明らかになる(Kitsuskawaら、Develop.121、4309−4318(1995))。NP−1の過剰発現は、子宮内において、胎齢15.5日以前に胚の致死およびマウスの死を引き起こし、そしてそのうち最も良く生き残ったものは、NP−1が、低レベルで発現していた。NP−1を過剰発現するマウスは、血管、心臓、および手足のような数の限られた非神経組織において形態学的な異常を示した。NP−1は、ECおよびECの周囲の間葉細胞の両方において発現した。胚は、正常な対応物と比較して、過剰なそして異常な毛細血管および血管を有し、そしていくらかの場合において拡張した血管も同様に有していた。いくつかのキメラマウスが、主に頭部や首に出血を示した。これらの結果は、VEGF165R/NP−1の局所的な過剰発現が、VEGF165の不適切な活性を引き起こし、その結果、脈管形成の増強および/または異常を媒介する可能性と一致する。NP−1と脈管形成との間の関連についての証拠の別の一部は、NP−1遺伝子の破壊を標的化されたマウスにおいて胚が、末梢神経系の重篤な異常を有したが、子宮内で10.5から12.5胎齢で死亡したのは、ほとんどがおそらく心臓血管系における異常のためであるということを示す最近の報告に起因する(Kitsukawaら、Neuron 19、995−1005(1997))。
【0098】
(VEGF165R/NP−1は、腫瘍由来細胞と関連している) 本発明者らが今までに検出した最も高い程度のVEGF165R/NP−1発現は、HUVECにおいて生じるよりもさらに、231乳癌細胞およびPC3前立腺癌細胞のような腫瘍由来細胞において生じた。この腫瘍細胞は、大量なレベルのVEGF165R/NP−1 mRNAおよび約200,000のVEGF165レセプター/細胞を発現する(Sokerら、J.Biol.Chem.271、5761−5767(1996))。一方、これらの腫瘍細胞は、KDRまたはFlt−1を発現せず、その結果、VEGF165R/NP−1は、これらの細胞と関連する唯一のVEGFレセプターである。それゆえ、この腫瘍細胞は、VEGF165R/NP−1が、KDRのバックグラウンドの欠如におけるVEGF165の機能的なレセプターかどうかを試験するために有用である。現在までのところ、本発明者らは、VEGF165R/NP−1が、レセプターチロシンのリン酸化により測定された腫瘍由来細胞におけるVEGF165シグナルを媒介することを示し得ない。それにもかかわらず、VEGF165は、生存、分化または、運動性の増加のようなまだ活性を決定していないが、腫瘍細胞でいくらかの誘導による効果を有し得る。最近の報告で、神経膠腫細胞が、VEGF165に結合するが、VEGF121には十分に結合しない190kDaのタンパク質を発現することを実証した(Omuraら、J.Biol.Chem.272、23317−23322(1997))。チロシンリン酸化の刺激のないことは、このレセプターへのVEGF165の結合において実証され得る。190kDaのアイソフォーム特異的レセプターが、VEGF165R/NP−1と関連があるかどうかについては、まだ知られていない。
【0099】
VEGF165R/NP−1は、VEGF165のための保存機能および隔絶機能を有し得る。VEGF165が、腫瘍細胞により産生され、そしてエキソン7にコードされるドメインを介して細胞上のVEGF165R/NP−1に結合することが想定され得る(Sokerら、J.Biol.Chem.271、5761−5767(1996))。次いで、蓄えられたVEGF165は、パラクリン様式で放出され腫瘍脈管形成を刺激し得る。あるいは、VEGF165R/NP−1は、VEGF165が、エキソン7にコードされたドメインを介した腫瘍細胞上のVEGF165R/NP−1に結合し、そしてまたをエキソン4にコードされたドメインを介して近傍のEC上のKDRに結合するジャクスタクリン効果を媒介し得る(Keytら、J.Biol.Chem.271、5638−5646(1996b))。そのようなメカニズムが、ECを誘引する腫瘍細胞のためにより効率的な方法を生じ得、それにより、腫瘍脈管形成を増強する。
【0100】
要約すると、本発明者らは、独立した精製および発現クローニング方法により、VEGFアイソフォーム特異的レセプターであるVEGF165Rが、神経系の胚発生において役割を果たすとして、そしてコラプシン/セマフォリンのレセプターであるとして以前に同定された細胞表面タンパク質である、NP−1と同一であることを実証した。さらに、VEGF165R/NP−1への結合は、VEGF165の、ECおよび腫瘍細胞上のKDRへの結合を増強する。
【0101】
(実験の理論的根拠)
本発明者らは、腫瘍細胞ニューロピリン−1が、腫瘍細胞の運動性を媒介し、そしてそれにより転移することを発見した。ボイデンチャンバー運動性アッセイにおいて、VEGF165(50ng/ml)が、用量応答様式で最大で2倍の刺激で231乳癌細胞の運動性を刺激する(図15A)。一方、VEGF121は、これらの細胞の運動性に効果を有さなかった(図15B)。231細胞は、KDRまたはFlt−1を発現しないことから、これらの結果は、腫瘍細胞が、直接VEGF165と応答することを示唆し、そしてVEGF165が、ニューロピリン−1を介したシグナル腫瘍細胞であり得ることを示唆する。癌細胞の運動性を誘導するVEGF165を媒介するための可能性のある候補は、PI3−キナーゼ(PI3−K)(Carpenterら、(1996)Curr.Opin.Cell Biol.8:153−158)である。231細胞は、KDRまたはFlt−1を発現しないことから、これらの結果は、腫瘍細胞が直接VEGF165と応答することを示唆し、そしてVEGF165が、ニューロピリン−1を介したシグナル腫瘍細胞であり得ることを示唆する。
【0102】
他のタイプの証拠は、ニューロピリン−1発現が、腫瘍細胞の運動性と関連し得るということである。本発明者らは、低い運動性および低い潜在的転移性を有するAT2.1細胞、および高い運動性および転移性を有するAT3.1細胞という、ダンニング(Dunning)ラット前立腺癌細胞の2つの改変体について分析した。架橋分析およびノーザンブロット分析は、AT2.1細胞は、ニューロピリン−1を発現しないが、AT3.1細胞は、豊富にニューロピリン−1を発現し、VEGF165と結合し得ることを示す(図16)。腫瘍切片の免疫染色により、AT3.1におけるニューロピリン−1の発現を確かめたが、AT2.1腫瘍では、確認できなかった。さらに、免疫染色は、皮下のAT3.1およびPC3腫瘍において、ニューロピリン−1を発現する腫瘍細胞が、腫瘍/真皮の境界の前面に優先的に侵入するのが見出されることを示す。より直接的に、ニューロピリン−1の発現が、運動性の増強と関係しているのかどうかを決定するために、ニューロピリン−1をAT2.1細胞において過剰発現させた(図17)。ニューロピリン−1を過剰発現する3つの安定なAT2.1クローン細胞が、ボイデンチャンバーアッセイにおいて運動性を増強した。これらの結果は、AT2.1細胞におけるニューロピリン−1の過剰発現が、それらの運動性を増強することを示す。合わせて考えると、腫瘍細胞上でのニューロピリン−1の発現が、運動性、転移性の表現型に関係しているようである。
【0103】
(実施例2)
(NP−1およびsNP−2の構築)
ニューロピリン−1およびニューロピリン−2の可溶性形態をコードしているcDNAを、PC3細胞mRNAから合成したオリゴdT−プライマーcDNAライブラリーからクローニングした。
【0104】
(可溶性ニューロピリン−1(sNP−1)のcDNAクローニング)
sNP−1のcDNAは、エキソンとエキソンの境の位置のアミノ酸641位の後のb2とcドメインとの間の全長のNP−1 cDNAから逸脱する。sNP−1クローンの3’末端は、3つの新規なアミノ酸および翻訳終止コドンをコードする28bpのイントロン配列を有する。
【0105】
b1ドメイン中から設計された、オリゴヌクレオチド(GAAGTATACGGTTGCAAGATA 配列番号16)を、sNP−1 cDNAの3’末端をクローニングするために3’RACE(cDNA末端の急速な増幅)に用いた。sNP−1 cDNAの全長を、sNP−1のオープンリーディングフレーム(ORF)の5’末端(GCGTTCCTCTCGGATCCAGGC 配列番号17)および3’末端(CAGGTATCAAATAAAATAC 配列番号18)のプライマーを用いてRT−PCRによりPC3ライブラリーから続いてクローニングした。sNP−1 cDNAを、sNP−1の43位と44位との間のアミノ酸のa1ドメインのN末端におけるHisおよびc−mycドメイン(アミノ酸 HHHHHHQQKLISQQNL 配列番号23)でタグ化した。完全にタグ化したsNP−1 cDNAを、哺乳動物の発現プラスミドであるpcDNA3.1にサブクローニングした。sNP−1のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を、それぞれ配列番号5および6として配列表に示す。
【0106】
(可溶性ニューロピリン−2(sNP−2)cDNAクローニング)
sNP−2 cDNAが、エキソンとエキソンの境の位置の、アミノ酸547位の後のb2ドメイン中のNP−2 cDNAの全長から逸脱する。sNP−2クローンの3’末端が、8つの新規なアミノ酸および翻訳終止コドンをコードする146bpのイントロン配列を有する。
【0107】
b1ドメイン中から設計された、オリゴヌクレオチド(GGCTGCCGGGTAACAGATGC 配列番号20)を、sNP−2 cDNAの3’末端をクローニングするために3’RACE(cDNA末端の急速な増幅)に用いた。sNP−2 cDNAの全長を、sNP−2のオープンリーディングフレーム(ORF)の5’末端(ATGGATATGTTTCCTCTC 配列番号21)および3’末端(GTTCTTGGAGGCCTCTGTAA 配列番号22)のプライマーを用いてRT−PCRによりPC3ライブラリーから続いてクローニングした。sNP−2 cDNAを、sNP−2の31位と32位との間のアミノ酸のa1ドメインのN末端におけるHisおよびc−mycドメイン(アミノ酸 HHHHHHQQKLISQQNL 配列番号19)でタグ化した。完全にタグ化されたsNP−2 cDNAを、哺乳動物の発現プラスミドであるpcDNA3.1にサブクローニングした。sNP−2のヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を、それぞれ配列番号7および8として配列表に示す。
【0108】
(実施例3)
(可溶性NP−1の調製(ドメインABおよびC))
1.BamHI部位(100塩基目)とXbaI部位(4687塩基目)との間のNP−1の配列を、pBluscript II KS(+)(Stratagene、La Jola CA)のBamHI部位とXbaI部位との間にサブクローニングして、pBS−NP1を得た。
【0109】
2.PCRを、NP−1配列において以下のプライマーを用いて行なった:プライマー1(正方向):NP−1の2200塩基目のNdeI部位(太字および下線)
【0110】
【化1】
プライマー2(逆方向):6ヒスチジン(his−tag)およびXbaI部位(太字および下線)を含むNP−1の2823塩基目の膜貫通膜ドメインの外
【0111】
【化2】
PCR DNA産物(およそ、600bp)を、NdeIおよびXbaIを用いて消化し、そしてアガロースゲルから精製した。プラスミドpBS−NP1を、NdeIおよびXbaIを用いて消化し、そしてNP−1の細胞外部位を含む大きなフラグメントを、アガロースゲルから精製し、そしてベクターとして用いた。上述のPCR産物およびベクターのライゲーションを行ない、そして得られたプラスミドを、pBS−sNPhisと名づけた。
【0112】
3.プラスミドpBS−sNPhisを、BamHIおよびXbaIを用いて消化し、そしてNP−1の細胞外部分を含むフラグメント(his−tag含む)を、pCPhygro(上述の実施例およびSokerら、Cell 92:735(1998)に記載)のBamHIおよびXbaI部位にサブクローニングしてpCPhyg−sNPhisを得た。
【0113】
4.プラスミドpCPhyg−sNPhisを、CHO細胞にトランスフェクトし、そしてハイグロマイシン耐性クローンを選択し、そして可溶性NP−1の発現を試験した。可溶性NP−1を、ニッケルセファロースビーズを用いて培地より精製した。
【0114】
5.以下の手法により、クローンにおけるsNP−1の発現を試験した。培地を、24時間馴化し、そして馴化した培地を、24時間レクチンConAと共にインキュベートした。ConA結合原料をSDS−PAGEおよびニューロピリン−1のAドメインに対する抗体を用いるウェスタンブロッティングによって分析した。
【0115】
本明細書中を通して引用される参考文献は、本明細書中に参考として援用される。
【0116】
本発明は、特定の実施態様についての参照とともに記載されている。しかし、この適用は、その添付の請求項の精神および範囲を逸脱せずに、当業者によってなされ得るそれらの変更および置換を包含することが意図される。
(配列表)
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図14D】
【図14E】
【図14F】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21A】
【図21B】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13A】
【図13B】
【図13C】
【図14A】
【図14B】
【図14C】
【図14D】
【図14E】
【図14F】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【図16C】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21A】
【図21B】
【公開番号】特開2012−44994(P2012−44994A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−208142(P2011−208142)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【分割の表示】特願2008−271420(P2008−271420)の分割
【原出願日】平成10年12月9日(1998.12.9)
【出願人】(599086582)チルドレンズ・メディカル・センター・コーポレイション (9)
【氏名又は名称原語表記】Children’s Medical Center Corporation
【住所又は居所原語表記】300 Longwood Avenue, Boston, Massachusetts 02115, U.S.A.
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【分割の表示】特願2008−271420(P2008−271420)の分割
【原出願日】平成10年12月9日(1998.12.9)
【出願人】(599086582)チルドレンズ・メディカル・センター・コーポレイション (9)
【氏名又は名称原語表記】Children’s Medical Center Corporation
【住所又は居所原語表記】300 Longwood Avenue, Boston, Massachusetts 02115, U.S.A.
【Fターム(参考)】
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