説明

血管内皮細胞増殖因子結合性アプタマー

【課題】VEGFに対する結合親和性が高い、新規なアプタマーを提供すること。
【解決手段】特定の塩基配列から成るアプタマー、又は(2)該アプタマーの一端若しくは両端に他の塩基配列が付加されたアプタマーであって、血管内皮細胞増殖因子に対する結合親和性を有するアプタマーを提供する。また、本発明は、このアプタマーに、直接又はスペーサー配列を介して修飾物質が結合され、血管内皮細胞増殖因子に対する結合親和性を有する修飾アプタマーを提供する。また、本発明は、上記本発明のアプタマー又は該アプタマーに、耐ヌクレアーゼ性を付与する構造が結合され血管内皮細胞増殖因子に対する結合親和性を有する修飾アプタマーを有効成分として含有する血管内皮細胞増殖因子阻害剤を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管内皮細胞増殖因子(以下、「VEGF」と呼ぶことがある)に結合するアプタマーに関する。
【背景技術】
【0002】
VEGFとは、Vascular Endothelial Growth Factor (血管内皮細胞増殖因子)の略で、血管の内皮細胞に存在する受容体に結合し、内皮細胞の増殖を促すことで、血管新生を促進する一群のタンパク質である。VEGFを標的とした(阻害する)薬剤は、加齢黄斑変性症(眼底で病的な血管形成が生じる病気)の治療薬や、血管新生を阻害して腫瘍の成長を抑制する抗ガン剤として実用化されている。また、固形腫瘍患者の血清中でのVEGFの濃度上昇が報告されている。このため、VEGFに結合する物質が得られれば、血管新生を伴うさまざまな疾患の診断を行ううえで有用なセンサー素子となることが期待される。
【0003】
一方、アプタマーとは、特定の分子と特異的に結合する核酸分子(DNA又はRNA等)である。VEGFと特異的に結合し、その受容体への結合を阻害することにより、その機能を阻害するRNAアプタマーが公知であり、既に加齢黄斑変性症の治療、予防薬として実用化されている(特許文献1)。また、本願発明者らは、先にSELEX改良法により、VEGFに特異的に結合するDNAアプタマーを発明し、特許出願している(特許文献2、非特許文献1、非特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2007-501615号公報
【特許文献2】特開2008-237042号公報
【特許文献3】特開2009-124946号公報
【特許文献4】国際公開WO2005/049826号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】H. Hasegawa et al., 2008, Biotechnol lett, vol.30, pp.829〜834
【非特許文献2】K. Ikebukuro et al., 2008, Nucleic Acids Symposium Series, No.51, pp.399〜400
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、VEGFに対する結合親和性が高い、新規なアプタマーを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者らは、鋭意研究の結果、本願発明者らが先に発明した特許文献2に記載のアプタマーよりもVEGFに対する結合親和性が遥かに高く、VEGFの受容体結合部位に対して結合する新規なアプタマーを作出することに成功し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、(1) 配列番号16に示される塩基配列(ただし、4nt〜8ntの連続する5個のgのうち、1個はg以外の塩基であってもよく、一端又は両端の各1個又は2個の塩基が欠失していてもよい)から成るアプタマー、又は(2)該アプタマーの一端若しくは両端に他の塩基配列が付加されたアプタマーであって、血管内皮細胞増殖因子に対する結合親和性を有するアプタマーを提供する。また、本発明は、アプタマーに、、直接又はスペーサー配列を介して修飾物質が結合され、血管内皮細胞増殖因子に対する結合親和性を有する修飾アプタマーを提供する。また、本発明は、上記本発明のアプタマー又は該アプタマーに、耐ヌクレアーゼ性を付与する構造が結合され血管内皮細胞増殖因子に対する結合親和性を有する修飾アプタマーを有効成分として含有する血管内皮細胞増殖因子阻害剤を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、VEGFに対する結合親和性が高く、VEGFの受容体結合部位に対して結合する新規なアプタマーが提供された。本発明のアプタマーは、公知のVEGF結合性アプタマーとは塩基配列が全く異なる新規なものであり、下記実施例に具体的に記載するように、特許文献2記載のVEGF結合性アプタマーよりもVEGFに対する結合親和性が2桁高い(解離定数が2桁小さい)。また、下記実施例に具体的に記載するように、本発明のアプタマーは、VEGFの受容体結合部位に対して結合するので、VEGFの生理活性を阻害することができ、従って、血管内皮細胞増殖因子阻害剤としての用途を有する。また、本発明のアプタマーは、RNAよりも生体内の安定性が高いDNAにより構成することが可能であるので、血管内皮細胞増殖因子阻害剤として生体に適用する際の生体内安定性をRNAアプタマーよりも高くすることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施例で行ったSELEX法の結果を示す図である。5pmolのVEGF165を各ニトロセルロース膜上に固定化した。次に、FITCで修飾した500nMのDNA(Vap1〜Vap8、初期ライブラリー)をこれらの膜と共にインキュベートした。次にHRP-標識抗FITC抗体と共に膜をインキュベートした。最後に、HRPからの化学発光を測定してDNAとタンパク質の間の結合性を評価した。黒いスポットが各DNAとVEGF165との結合を示す。
【図2】実施例で行った、アプタマーとVEGFファミリーとの結合を示す図である。20pmolのVEGF121、5pmolのVEGF165及び20pmolのPQQGDHをニトロセルロース膜上に固定化した。次に、FITCで修飾した1μMのVap7をこれらの膜と共にインキュベートした。次に、HRP-標識抗FITC抗体と共に膜をインキュベートした。最後に、HRPからの化学発光を測定してVap7と各タンパク質の間の結合性を評価した。
【図3】実施例で行った、アプタマーの特異性の確認結果を示す図である。各5pmolのVEGF165とチログロビンとを同一の膜上に固定化した。次にFITCで修飾した100nMのアプタマーをこれらの膜と共にインキュベートした。次に、HRP-標識抗FITC抗体と共に膜をインキュベートした。最後に、HRPからの化学発光を測定してVap7と各タンパク質の間の結合性を評価した。
【図4】実施例で得られた、KClの存在下及び非存在下におけるVap7のSPRスペクトルを示す図である。10pmolのVEGF165を製品のマニュアルに記載された通り、センサーチップ上に固定化した。Vap7をTBSE緩衝液又はTBSE-KCl緩衝液で10μMの濃度に希釈した。次にVap7を加熱してフォールディングさせた。SPR測定に用いた被分析物を、フォールディング前に用いた上記バッファーで100nMの濃度に希釈した。●は、50mMのKClを含むTBSE中でフォールディングされたVap7のスペクトルを示す。_は、TBSE(KClなし)中でフォールディングされたVap7のスペクトルを示す。
【図5】実施例で得られた、Vap7のCDスペクトルを示す図である。Vap7をTBSE-KClで10μMに希釈した。次に、Vap7を加熱によりフォールディングした。フォールディングしたアプタマーを、円二色性スペクトル測定に用いた。
【図6】実施例で得られた、V7t1のCDスペクトルを示す図である。Vap7をTBSE-KClで10μMに希釈した。次に、Vap7を加熱によりフォールディングした。フォールディングしたアプタマーを、円二色性スペクトル測定に用いた。
【図7】実施例で得られた、アプタマーのSPR測定のセンサーグラムである。
【図8】実施例で得られた、Vap7の予測される二次構造を示す図である。M-fold(商品名、ソフトウェア)を、予測プログラムとして用いた。フォールディング条件のデータセットは以下の通りである。Vapのフォールディングは、25℃で行った。[Na+]=1.0M、[Mg2+]=0.0M。
【図9】実施例で得られた、QGRS mapperの結果を示す図である。下線を引いたGが、Gカルテット構造を形成すると予測される。Gスコアは、Gカルテット構造の構築のしやすさを意味する。
【図10】実施例で得られた、V7t1とVEGFの結合性を示す図である。20pmolのVEGF121と5pmolのVEGF165及び20pmolのPQQGDHをニトロセルロース膜上に固定化した。次に500nMのV7t1をこれらの膜と共にインキュベートした。最後に、化学発光を測定し、V7t1がこれらのタンパク質に結合したかどうかを調べた。黒いスポットがV7t1と各タンパク質との結合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
上記のとおり、本発明のアプタマーの1つは、配列番号16に示す塩基配列、すなわち、
ngngggggng gnngggnngg gnng
から成る。この塩基配列中、nは任意の塩基である。また、この塩基配列の5'末端から4番目(4nt、5'末端からN番目の塩基を「Nnt」と記載する)〜8ntの連続する5個のgのうち、1個はg以外の塩基であってもよい。さらに、配列番号16の一端又は両端の各1個又は2個の塩基が欠失していてもよい。配列番号16で表わされる塩基配列のうち、配列番号1、すなわち、tgtgggggng gnngggnngg gtag(ただし、4nt〜8ntの連続する5個のgのうち、1個はg以外の塩基であってもよい)で表わされるものが好ましい。
【0012】
配列番号16に示す塩基配列から成る上記アプタマーは、下記実施例に具体的に記載するように、標的物質として、VEGFの1種であるVEGF121(GenBank Accession No.EF424789、配列番号17)を用い、競合物質としてチログロビンを用いた改良SELEX法により作出されたものである。競合物質としてチログロビンを用い、VEGF121には結合するが、チログロビンには結合しないアプタマーを選択しながら、3ラウンドのSELEX法を行った。チログロビンは、癌の診断に用いられるマーカータンパク質の1つである。なお、SELEX法において、得られるアプタマーの標的物質に対する特異性をより高めるために、SELEX法において競合物質を用い、標的物質とは結合するが競合物質とは結合しないアプタマーを選択して増殖させていく手法は、本願発明者らが先に発明し、公知となっている手法である(特許文献3)。
【0013】
3ラウンドの改良SELEX法の結果、VEGFに対する高い結合親和性を有する、配列番号6に示す塩基配列から成るアプタマー(Vap7)が得られた。下記実施例に具体的に記載するように、Vap7は、SELEX法において標的物質として用いたVEGF121のみならず、他のVEGFの1種であるVEGF165(GenBank Accession No.AAM03108、配列番号18)とも結合することが確認された。従って、Vap7は、VEGF121とVEGF165に共通する領域である、受容体との結合部位に結合すると考えられる。従って、Vap7は、生体内に存在し、生理活性を発揮するVEGFファミリーのいずれとも結合すると考えられ、また、VEGFの受容体結合部位と結合することから、VEGFの生理活性を阻害すると考えられる。
【0014】
下記実施例に具体的に記載する方法により、Vap7の構造を詳細に検討した結果、Vap7はGカルテット構造(G-quadruplex structure)をとることが明らかになった。Gカルテット構造は、標的物質に結合するアプタマー構造の1種として周知のものである。Vap7のVEGFへの結合親和性は、Gカルテット構造によりもたらされることが明らかになったので、Gカルテット構造をとるために必要な領域及び必要なgを残したものが配列番号16、好ましくは配列番号1である。配列番号16中のnは、任意の塩基であってもGカルテット構造をとることができるので、nは任意の塩基でよい。また、配列番号16中の4nt〜8ntの連続する5個のgのうちの1個はg以外の塩基であってもGカルテット構造をとることができるので、g以外の任意の塩基であってもよい。また、一端又は両端の各1個又は2個の塩基が欠失していてもGカルテット構造をとることができるので、これらが欠失していてもよい。
【0015】
配列番号16で示される塩基配列から成るアプタマーであるV7t1(具体的な配列は、配列番号2に記載)を合成し、VEGF121及びVEGF165との結合親和性を調べたところ、いずれに対しても高い結合親和性を有し、すなわち、Vap7よりも10倍以上、結合親和性が高くなり(下記実施例に詳述するように、SPRで測定したVap7のVEGF165に対する解離定数は20nM、V7t1は1.4nM)、本発明のアプタマーの効果が確認された。
【0016】
一般に、アプタマーの標的物質に対する結合親和性は、アプタマーの立体構造によりもたらされるので、アプタマーが所定の立体構造をとり得るのであれば、アプタマーの一端又は両端に他の塩基配列が付加されていても標的物質に対する結合親和性は維持されることが周知である。従って、本発明は、配列番号16で示される塩基配列から成る上記した本発明のアプタマー(以下、便宜的に「第1のアプタマー」と呼ぶことがある)の一端若しくは両端、好ましくは一端に他の塩基配列が付加されたアプタマーであって、VEGFに対する結合親和性を有するアプタマーをも提供する。
【0017】
このようなアプタマーとして、上記した第1のアプタマーの一端又は両端、好ましくは一端に直接又はスペーサー配列を介して第2のアプタマーが連結されたものを挙げることができる。このような第2のアプタマーとして、先ず、VEGFに対する結合親和性を有する他のアプタマーを挙げることができる。上記のとおり、本願発明者らは、先にVEGFに対して結合親和性を有するアプタマーを発明しており(特許文献2)、VEGFに対する結合親和性を有する他のアプタマーとしては、これらの公知のアプタマーを好ましく採用することができる。すなわち、特許文献2に記載のVEGF結合性アプタマーは、配列番号3に示される塩基配列の4nt〜38ntの領域を含む一本鎖ポリヌクレオチド又は該ポリヌクレオチドの二次構造に含まれる、4nt〜6ntと20nt〜18ntとの塩基対合により形成される第1のステム部と、7nt〜17ntにより形成される第1のループ部と、22nt〜24ntと38nt〜36ntとの塩基対合により形成される第2のステム部と、25nt〜26ntと35ntにより形成される第2のループ部と、27nt〜28ntと34nt〜33ntとの塩基対合により形成される第3のステム部と、29nt〜32ntにより形成される第3のループ部とを具備する二次構造と同じ形状及びサイズの二次構造(ただし、各ステム部を構成する塩基対の数は1個又は2個多くてもよく、第1のループ部を構成する塩基数は±2個の範囲でもよく、第2及び第3のループ部を構成する塩基数は1個又は2個多くてもよく、第1のステム部と第2のステム部の間の塩基数は1個又は2個多くてもよい)を形成する領域を含むその欠失変異体から成るので、このアプタマーを第2のアプタマーとして好ましく用いることができる。この第2のアプタマーは、特許文献2に記載のとおり、好ましくは、
(1)配列番号3に示される塩基配列の4nt〜38ntの領域を含むポリヌクレオチド又は該ポリヌクレオチドの二次構造に含まれる、4nt〜6ntと18nt〜20ntとの塩基対合により形成される第1のステム部と、7nt〜17ntにより形成される第1のループ部と、22nt〜24ntと36nt〜38ntとの塩基対合により形成される第2のステム部と、25nt〜26ntと35ntにより形成される第2のループ部と、27nt〜28ntと33nt〜34ntとの塩基対合により形成される第3のステム部と、29nt〜32ntにより形成される第3のループ部とを具備する二次構造を形成する領域を含むものであり、さらに好ましくは、配列番号16に示される塩基配列の38ntの下流に39nt〜50ntの領域をさらに含むポリヌクレオチド又は前記二次構造が、43nt〜44ntと50nt〜49ntとの塩基対合により形成される第4のステム部と、45nt〜48ntにより形成される第4のループ部をさらに含む(ただし、第4のステム部を構成する塩基対の数は1個又は2個多くてもよく、第4のループ部を構成する塩基数は1個又は2個多くてもよく、第2のステム部と第4のステム部の間の塩基数は±2個の範囲にあってもよい)ものであり、さらに好ましくは、
(2)配列番号16に示される塩基配列の38ntの下流に39nt〜50ntの領域をさらに含むポリヌクレオチド又は前記二次構造が、43nt〜44ntと50nt〜49ntとの塩基対合により形成される第4のステム部と、45nt〜48ntにより形成される第4のループ部をさらに含むものであり、さらに好ましくは、
(3)前記第1のループ部がgtctattcaatから成り、前記第2のループ部がgtとtから成り、前記第3のループ部がgtatから成るものであり、さらに好ましくは、
(4)前記第4のループ部がggccから成るものであり、さらに好ましくは、
配列番号16に示される塩基配列の4nt〜50ntの領域を含むものであり、さらに好ましくは、
(5) 配列番号3の1nt〜50ntから成るもの(すなわち、配列番号4、del5-1)である。
【0018】
なお、第2のアプタマーは、上記した特許文献2に記載されたものに限定されるものではなく、他のVEGF結合性アプタマーであってもよい。
【0019】
下記実施例に具体的に記載するように、V7t1の3'末端に、スペーサー配列であるt10(tが10個)を介して配列番号4に記載される塩基配列から成る第2のアプタマーを結合したアプタマー(配列番号5、V7t1_del5-1)を実際に合成し、そのVEGFに対する結合親和性を測定したところ、VEGF165に対する結合親和性が、V7t1の約3倍に向上した。従って、VEGFに対する結合親和性を有する他のアプタマーを連結することにより、VEGFに対する結合親和性がより高められることが確認された。V7t1_del5-1のVEGFに対する結合親和性がV7t1よりもさらに高くなるのは、del5-1がV7t-1と同時にVEGFに結合できるVEGFの部位を認識して結合しているものと考えられる。このように、VEGF結合性の第2のアプタマーを第1のアプタマーの末端に結合する場合には、VEGFに対する結合親和性が第1のアプタマー単独の場合よりも高くなる第2のアプタマーを結合することが好ましい。特許文献2に記載の上記したアプタマーは、del5-1と類似しているので、いずれも第1のアプタマーのVEGFに対する結合親和性を高めるものと考えられる。
【0020】
第2のアプタマーとしては、また、他の機能を有するアプタマーであってもよい。他の機能としては、例えば、AES (Aptameric Enzyme Subunit)を挙げることができる。AESは、本願発明者らが先に発明し、特許出願している(特許文献4)もので、標的物質が存在した場合、その標的物質に対するアプタマーが結合すると、連結されている酵素制御アプタマーの構造に影響を及ぼし、その結果酵素活性に変化が生じるので、その変化を測定するというものである。このようなAESは、特許文献4に記載したような公知の方法により作出可能である。第2のアプタマーにAESアプタマーを連結すると、VEGFの測定(検出及び定量)に好都合である。
【0021】
第1のアプタマーに、第2のアプタマーを連結する場合、直接連結してもよいが各アプタマーの自由な運動を確保し、アプタマー同士が干渉することがないようにするためにスペーサー配列を介して連結することが好ましい。スペーサー配列は、2個のアプタマーのスペースを空けるだけのものであるので、各アプタマーの機能を妨害しない任意の配列であってよく、ポリt配列を好ましく採用することができる。スペーサー配列のサイズは何ら限定されないが、通常、5塩基〜20塩基程度、好ましくは7塩基から15塩基程度である。
【0022】
第1のアプタマーに他の塩基配列を結合する場合、アプタマーのサイズは、特に限定されないが、アプタマーのサイズがあまりに大きくなると合成が困難となるばかりではなく、結合親和性に影響が出る可能性があるので、アプタマーの全体のサイズは、150塩基以下が好ましく、100塩基以下がさらに好ましい。
【0023】
本発明のアプタマーは、DNAでもRNAでもよく、また、PNAのような人工核酸であってもよく、生体内での安定性が高いDNAが好ましい。
【0024】
本発明のアプタマーは、上記のとおり、VEGFの受容体結合部位に結合するので、VEGFの生理活性を阻害するものと考えられる。従って、本発明のアプタマーは、VEGF阻害剤としての用途を有する。本発明のアプタマーは、生体内に存在し、血管新生を促進する効果を発揮するVEGFファミリーの少なくともいずれか1つと結合するものであり、好ましくは下記実施例記載のもののように少なくともVEGF121及びVEGF165の両者と結合するものであり、これらは血管新生を促進する効果を発揮する他のVEGFとも結合するものと考えられる。VEGF阻害剤は、上記のとおり、既に医薬として実用化されており、加齢黄斑変性症、固形腫瘍、糖尿病性網膜症、血管新生緑内障、炎症生皮膚疾患、乾癬、リウマチ用関節炎、変形性関節炎、慢性気管支炎、粥状動脈硬化症、心筋梗塞等の治療及び/又は予防薬としての具体的な用途を有する。本発明のアプタマーをVEGF阻害剤として用いる場合、非経口投与が好ましく、特に患部に直接施すことが好ましい。すなわち、加齢黄斑変性症に適用する場合には、目薬として、また、固形腫瘍に適用する場合には、腫瘍又はその周辺部に注射等により施すことが好ましい。投与量は、アプタマーの性能、疾患の種類、患者の状態等により適宜設定されるが、加齢黄斑変性症に適用する場合、通常、1日当たり1 x 10-10mol〜1 x 10-4mol程度であり、固形腫瘍に適用する場合、通常、1日当たり1 x 10-8mol〜1 x 10-2mol程度である。また、剤形としては、液状が好ましく、本発明のアプタマーを、生理緩衝液等の、液薬に常用されている担体に溶解したものであってよい。
【0025】
本発明のアプタマーをVEGF阻害剤として生体に投与する場合、生体内での安定性を高めることが好ましい。すなわち、生体内には各種ヌクレアーゼが存在し、核酸医薬(アプタマー、sRNAi、デコイオリゴヌクレオチド等)は、これらのヌクレアーゼの作用を受けて分解されてしまうので、生体内での半減期をできるだけ長くして医薬としての効果を持続させる種々の方法が開発され、既に実用化されている(特許文献1)。本発明のアプタマーは、これらの耐ヌクレアーゼ性を高めるいずれの方法を適用したものであってもよく、これらの耐ヌクレアーゼ修飾を施したものも本願特許請求の範囲に規定される「アプタマー」の範囲に入る。
【0026】
「耐ヌクレアーゼ修飾」とは、ヌクレアーゼによる分解を天然のDNAよりも受けにくくする修飾のことを意味し、このようなDNAの修飾自体は周知である。耐ヌクレアーゼ修飾の例としては、ホスホロチオエート化(本明細書において「S化」と呼ぶことがある)、ホスホロジチオエート化、ホスホロアミデート化等を挙げることができる。これらのうち、S化が好ましい。S化は、隣接するヌクレオチド間のリン酸ジエステル結合を構成するリン原子に結合している2個の非架橋酸素原子のうちの1個をイオウ原子に変換することを意味する。任意の隣接するヌクレオチド間の結合をS化する手法自体は周知であり、S化オリゴヌクレオチドは商業的にも合成されている。なお、本明細書及び特許請求の範囲において、単なる塩基配列は、そうでないことが文脈上明らかな場合を除き、ヌクレオチド間の結合の一部又は全部がS化されているものも、全くS化されていないものをも包含する。
【0027】
耐ヌクレアーゼ修飾の他の例としては、ピリミジンヌクレオチドを2'-フルオロ体にする修飾、プリンヌクレオチドを2'-OMeにする修飾、ヌクレオチドのフラノース環内の酸素原子をイオウ原子に置換する修飾等を挙げることができる。これらはいずれも周知であり、これらの修飾を施した核酸も本発明のアプタマーに包含される。
【0028】
上記のとおり、アプタマーは、その構造が維持されれば標的物質との結合親和性を維持するので、上記した本発明のアプタマーの一端又は両端、好ましくは一端に修飾物質が結合されたものであっても、VEGFに対する結合親和性を有するものは、VEGF結合性アプタマーとして利用可能であり、本発明は、このような修飾アプタマーをも提供する。このような修飾物質としては、まず、例えば、耐ヌクレアーゼ性向上のために例えばポリエチレングリコール(PEG)鎖のような、他の構造を挙げることができる。PEG鎖をアプタマーの末端に結合することにより、アプタマーの耐ヌクレアーゼ性を高めることは周知であり、既に実用化されている(特許文献1)。PEG鎖のサイズは、特に限定されないが、通常、分子量1万〜3万程度、好ましくは分子量15000〜25000程度であり、また、PEG鎖の数は1本でも2本でもよいが2本が好ましい。このようなPEG鎖は、アプタマーの末端に周知のアミノリンカーを付加し、これを介して結合することができる。PEG鎖を2本結合する場合には、リジン化したアミノリンカー等の複数のアミノ基を持つアミノリンカーを用い、各アミノ基にPEG鎖を結合することができる。PEG鎖を付加することにより、耐ヌクレアーゼ性が高まるだけではなく、加齢黄斑変性症に目薬として適用する場合には、眼球内での滞留性を高めることもできる。
【0029】
また、修飾物質としては、標識を挙げることができる。標識としては、蛍光標識、放射標識、酵素標識、化学発光標識等、周知の標識を挙げることができる。これらの標識を直接又はスペーサー配列(スペーサー配列は上記と同様)を介してアプタマーの末端に結合しても、標的物質に対する結合親和性は維持されることは周知であり、下記実施例でも蛍光標識であるFITCを結合したアプタマーを用いている。これらの標識を付加したアプタマーは、VEGFの測定(検出又は定量)に用いることができる。標識アプタマーを用いた標的物質の測定方法自体はこの分野において周知であり、例えば標識抗体を用いる免疫測定法と同様に行うことができ、特許文献2等に記載されているし、下記実施例にもアプタマーブロッティングとして、1例が記載されている。
【0030】
さらに他の修飾物質としては、例えば、アプタマーを固相に結合するための周知の構造を挙げることができる。
【0031】
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0032】
材料
すべての合成オリゴヌクレオチドは、Invitrogen社から購入した。Sf21昆虫細胞中で発現された組換えヒトVEGF165及び大腸菌中で発現された組換えヒトVEGF121は、無担体凍結乾燥粉末の形態にあるものをR&D Systems社から購入した。これらのタンパク質は、TBSE (10 mM Tris/HCl, 100 mM NaCl, and 0.05 mM EDTA, pH 7.0)に再溶解した。
【0033】
方法
SELEXプロトコール
約30mer(28mer〜31mer)のランダム化領域と、両端に各18merのプライマー結合領域を含む、FITC-標識一本鎖DNAライブラリー(表1)を第1のスクリーニングライブラリーとして用いた。ライブラリーは、TBSEに溶解した。アプタマーの立体構造をフォールディングするために、ライブラリーを95℃で3分間加熱し、次いで2℃/分の速度で25℃までゆっくりと冷却した。5pmolのVEGF121をニトロセルロース膜上に固定化した。ニトロセルロースは、窒素原子上に陽イオン、酸素原子上に陰イオンを持つので、核酸はニトロセルロース膜に容易に結合する。次にニトロセルロース膜を、10%(v/v)のTBSTE(0.05%(v/v)のTween 20(商品名)を含むTBSE)中ヒト血清でブロッキングした。フォールディングされたDNAライブラリーと、ニトロセルロース膜上に固定化されたVEGF121を一緒に24℃で1時間インキュベートした。インキュベーション後、ニトロセルロース膜をTBSTEで2回洗浄した。次いでVEGF121に結合したDNAを抽出し、エタノールで沈殿させた。回収したDNAを、フォワードプライマー(Fw)及びリバースプライマー(Rev)(表1)並びにAmplitaq Gold (商品名、Applied Biosystems)を用いた40サイクルのPCRにより増幅した。増幅されたDNAを次のスクリーニングライブラリーとして用いた。
【0034】
【表1】

【0035】
DNAライブラリーのVEGF121に対する親和性は、アプタマーブロッティングアッセイ(Noma, T.; Ikebukuro, K.; Sode, K.; Ohkubo, T.; Sakasegawa, Y.; Hachiya, N.; Kaneko, K. Biotechnol Lett 2006, 28, 1377-1381.)により各ラウンドごとに測定した。この測定方法では、DNAライブラリーとインキュベーション及び洗浄後、膜を0.1 % (v/v) HRP-標識抗FITC抗体 (Dako Cytomation社製)と共に24℃で1時間インキュベートした。次いで、TBSTEで2回洗浄し、VEGF121にDNAが結合したことを示すスポットを、Immobilon Western chemiluminescent HRP substrate (商品名、Millipore社製)で可視化した。
【0036】
アプタマーブロッティングアッセイ
FITC-標識アプタマーをTBSEに溶解し、95℃で3分間加熱し、上記のとおりゆっくりと冷却した。VEGF165 又はVEGF121を標的タンパク質としてニトロセルロース膜上に固定化した。チログロビンとBSAも競合タンパク質として固定化した。次いで、アプタマーをこれらのタンパク質と共にTBSTE中でインキュベートした。次に、膜を0.1% (v/v)のHRP標識抗FITC抗体と共に24℃で1時間インキュベートした。次いでTBSTEで2回洗浄し、VEGF165 又はVEGF121にDNAが結合したことを示すスポットを、Immobilon Western chemiluminescent HRP substrate (商品名、Millipore社製)で可視化した。
【0037】
円二色性分光測定
アプタマーの構造は、円二色性分光測定により分析した。円二色性(CD)は、分光偏光計JASCO (J-725)(商品名)で測定し記録した。アプタマーをTBSEに溶解し、95℃で3分間加熱し、上記したフォールディングの際と同様にゆっくり冷却した。フォールディングしたアプタマー試料をCD測定に用いた。DNA濃度は10μMに固定した。
【0038】
表面プラズモン共鳴(SPR)による結合親和性の測定
VEGF165に対するアプタマーの結合親和性は、BIACORE X instrument(商品名、Biacore AB社製)を用いて24℃で測定した。400UのVEGF165(10mM酢酸緩衝液、pH6.0に溶解)を、商品説明書の指示通りにCM5センサーチップ(商品名、Biacore AB社製)上にアミンカップリングにより固定化した。次に種々の濃度のアプタマーを分析物として注入した。TBSEをランニング緩衝液として用いた(流速は20μL/ML)。KD値は、Biacore T100 evaluation software(商品名)を用い、会合速度と解離速度を合わせる(カーブフィッティング)ことにより1:1結合モデルを用いて測定した。
【0039】
結果
アプタマーのスクリーニング
VEGFファミリーに対するアプタマーは、SELEX法を用いて単離した。この選択において、VEGF121を膜上に固定化し、FITC-標識オリゴヌクレオチドを膜と一緒にインキュベートした。さらに、一本鎖DNAライブラリー中のオリゴヌクレオチドのVEGF121に対する結合性を、アプタマーブロッティングアッセイにより各ラウンドごとに測定した。3ラウンドの選択後、VEGF121に結合する8つのクローンを分析した(表2)。これらには重複した配列はなかった。VEGF特異的アプタマーを同定するために、VEGF165を固定化した膜を用いて全てのクローンについてアプタマーブロッティングアッセイを行った(図1)。その結果、Vap7が膜上のVEGF165によく結合した。また、Vap7がVEGF121に結合するかどうかをアプタマーブロッティングアッセイ(図2)及びSPR測定(表3)によりチェックした。
【0040】
【表2】

(表2には、ランダム配列部分のみを示す。全てのアプタマーには、このランダム配列の5'末端に、表1に示すフォワード側プライマー、3'側末端にリバース側プライマーの相補鎖が結合されている)
【0041】
得られたアプタマーの特徴付けと改良
Vap7の特異性を調べるために、競合物質と共にアプタマーブロッティングアッセイを行った。
【0042】
競合物質としてチログロビンを用いた。なぜなら、このタンパク質は、癌の診断に用いられるマーカータンパク質の1つであるからである。Vap7はチログロビンには結合せず、VEGF165に特異的に結合した(図3)。Vap7は、VEGF121とVEGF165の両方に結合するので、これら2種類のタンパク質の共通部分であるRBDを認識するものと考えられる。アプタマーブロッティングアッセイにおいては、Vap7のVEGF121に対する結合親和性は、VEGF165に対する結合親和性よりも低かった(図2)。これは、SPR測定の結果と異なっていた。これは、タンパク質の固定化の方法がアプタマーブロッティングアッセイとSPR測定とで異なっていることに起因するものと考えられる。アプタマーブロッティングでは、標的タンパク質は、膜上に固定化される。従って、固定化されたタンパク質は、自由に動けないかもしれない。一方、SPR測定では、タンパク質は、リンカーを介してベースに固定化される。リンカーがタンパク質の動きを妨害するとは考えにくい。
【0043】
標的分子に対するアプタマーの接近容易性(接近のしやすさ(accessibility))は、親和性と密接に関連する。アプタマーの構造を最適化することにより接近容易性が向上する可能性があると考えられる。アプタマーと標的分子間の結合に寄与しない余剰な配列を削除すれば、アプタマーは標的に対してよりスムースに接近できるかもしれない。従って、どの配列がアプタマーの親和性に重要であるのかを推測するために、Vap7の構造を調べた。
【0044】
m-foldソフトウェア(Zuker, M. Nucleic Acids Res 2003, 31, 3406-3415.)を用いて解析すると、Vap7は、ステム−ループ構造を含む2種類の二次構造をとることが予測された(図8)。また、QGRS Mapper(図9、Kikin, O.; D'Antonio, L.; Bagga, P. S. Nucleic Acids Research 2006, 34, W676-W682.)により、Vap7は、Gカルテット構造(G-quadruplex structure)を形成することが示唆された。どの構造がVap7の親和性に関係しているのかを決定するために、K+イオンの存在下及び非存在下における種々の条件下でフォールディングしたVap7の親和性を調べた。その結果、KCl含有TBSE中でフォールディングしたVap7は、KClを含まないTBSE中でフォールディングしたものよりもVEGF165に強く結合した。K+イオンは核酸のGカルテット構造を安定化できることが報告されている。これらの実験結果から、Vap7はGカルテット構造でVEGF165を認識しているものと考えられる。Vap7の親和性は、Gカルテット構造の安定化の結果改善されるものと考えられる。
【0045】
Vap7がGカルテット構造をとることが示唆されたので、Vap7のCD分光測定を行い、Vap7の構造を解析した。Gカルテット構造をとるDNAが特徴的なCD分光スペクトルを有することはよく知られている(Paramasivan, S.; Rujan, I.; Bolton, P. H. Methods 2007, 43, 324-331.)。Vap7のCD分光スペクトルを図5に示す。Vap7のCD分光スペクトルでは、240nmに1つのネガティブバンドと、220nm及び270nmに2つのポジティブバンドが見られる。このCD分光スペクトルの特徴は、報告されている平行Gカルテット構造のCD分光スペクトルの特徴(Paramasivan, S.; Rujan, I.; Bolton, P. H. Methods 2007, 43, 324-331.)と類似している。CD分光スペクトルの測定結果とQGRS mapperによる予測に基づき、Vap7の切断変異体であるV7t1を設計した。V7t1は、予測されるGカルテット構造を構成するために必要なすべての配列を含む(表4)。V7t1とVEGFとの結合を、アプタマーブロッティングアッセイ(図10)とSPR測定(表3、図7)とによりチェックした。これらの実験の結果、V7t1はVEGF121及びVEGF165に結合した。また、CDスペクトル(図6)を測定することにより、V7t1の構造を予測した。Vap7及びV7t1はいずれもVEGF165に結合できるが、V7t1のCDスペクトルは、Vap7のCDスペクトルとは異なっていた。アプタマーのネイティブな(すなわち、標的に結合していない状態での)構造が変化してもその親和性が維持されることは驚くべきことである。アプタマーの構造は容易に変化するので、アプタマーの構造が、結合状態と非結合状態で異なるのは不合理ではない。V7t1がVEGF165に対して十分な親和性を有していたので、V7t1を特定の同力学的試験に付した。
【0046】
Vap7とV7t1の詳細な特徴を研究するために、SPR測定を行った(表3、図7)。次いで、各アプタマーとVEGF165との相互作用の結合解離定数(KD)を測定した。Vap7とV7t1のVEGF165に対するKDは、それぞれ20nM及び1.4nMであった。
【0047】
【表3】

【0048】
【表4】

【実施例2】
【0049】
V7t1_del5-1の作製と評価
特許文献2に記載されている、VEGF結合性アプタマーであるdel5-1(配列番号4)が、V7t1の3'末端にt10のスペーサー配列を介して結合されたアプタマーであるV7t1_del5-1(配列番号5)を合成し、上記と同様にSPRによりVEGF165に対する結合解離定数を測定した。その結果、結合解離定数は、0.47nMであり、V7t1と比較してVEGF165に対する結合親和性は約3倍になった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)配列番号16に示される塩基配列(ただし、4nt〜8ntの連続する5個のgのうち、1個はg以外の塩基であってもよく、一端又は両端の各1個又は2個の塩基が欠失していてもよい)から成るアプタマー、又は
(2)該アプタマーの一端若しくは両端に他の塩基配列が付加されたアプタマーであって、血管内皮細胞増殖因子に対する結合親和性を有するアプタマー。
【請求項2】
前記配列番号16で示される塩基配列が、配列番号1で示される塩基配列(ただし、4nt〜8ntの連続する5個のgのうち、1個はg以外の塩基であってもよい)である請求項1記載のアプタマー。
【請求項3】
配列番号2で示される塩基配列から成るアプタマー又は該アプタマーの一端若しくは両端に他の塩基配列が付加されたアプタマーであって、血管内皮細胞増殖因子に対する結合親和性を有する請求項2記載のアプタマー。
【請求項4】
前記(2)のアプタマーが、前記(1)の塩基配列に直接又はスペーサー配列を介して第2のアプタマーが連結されたものである請求項1記載のアプタマー。
【請求項5】
前記第2のアプタマーが、血管内皮細胞増殖因子に対する結合親和性を有するアプタマーである請求項4記載のアプタマー。
【請求項6】
前記第2のアプタマーが、配列番号3に示される塩基配列の4nt〜38ntの領域を含む一本鎖ポリヌクレオチド又は該ポリヌクレオチドの二次構造に含まれる、4nt〜6ntと20nt〜18ntとの塩基対合により形成される第1のステム部と、7nt〜17ntにより形成される第1のループ部と、22nt〜24ntと38nt〜36ntとの塩基対合により形成される第2のステム部と、25nt〜26ntと35ntにより形成される第2のループ部と、27nt〜28ntと34nt〜33ntとの塩基対合により形成される第3のステム部と、29nt〜32ntにより形成される第3のループ部とを具備する二次構造と同じ形状及びサイズの二次構造(ただし、各ステム部を構成する塩基対の数は1個又は2個多くてもよく、第1のループ部を構成する塩基数は±2個の範囲でもよく、第2及び第3のループ部を構成する塩基数は1個又は2個多くてもよく、第1のステム部と第2のステム部の間の塩基数は1個又は2個多くてもよい)を形成する領域を含むその欠失変異体から成る請求項5記載のアプタマー。
【請求項7】
前記第2のアプタマーが、配列番号4に示される塩基配列から成る請求項6記載のアプタマー。
【請求項8】
前記スペーサー配列がポリt配列である請求項4記載のアプタマー。
【請求項9】
配列番号5で示される塩基配列から成る請求項7記載のアプタマー。
【請求項10】
DNAから成る請求項1〜9のいずれか1項に記載のアプタマー。
【請求項11】
サイズが150塩基以下である請求項1〜10のいずれか1項に記載のアプタマー。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のアプタマーに、直接又はスペーサー配列を介して修飾物質が結合され、血管内皮細胞増殖因子に対する結合親和性を有する修飾アプタマー。
【請求項13】
前記修飾物質が標識又は耐ヌクレアーゼ性を付与する構造である請求項12記載のアプタマー。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のアプタマー又は該アプタマーに、耐ヌクレアーゼ性を付与する構造が結合され血管内皮細胞増殖因子に対する結合親和性を有する修飾アプタマーを有効成分として含有する血管内皮細胞増殖因子阻害剤。

【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−92138(P2011−92138A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−251048(P2009−251048)
【出願日】平成21年10月30日(2009.10.30)
【出願人】(504132881)国立大学法人東京農工大学 (595)
【Fターム(参考)】