血管形成を阻害し、血管形成関連疾患を処置する方法
本発明は、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含む組成物(例えば、タンパク質含有組成物)を投与することによって個体における血管形成を阻害する方法を提供する。この組成物は、血管形成を阻害するのに有効であって、ただしある実施形態では個体において有意な細胞毒性を誘発するには不十分な量である。本明細書に記載される方法は、血管形成関連疾患、例えば、加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症、関節リウマチ、乾癬およびガンを処置するために有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、血管形成を阻害し、血管形成関連疾患を処置する方法に関する。詳細には、本出願は、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含む組成物の有効量を投与することによって、血管形成を阻害し、血管形成関連疾患を処置する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血管形成は、新しい血管が形成される、高度に調節された生物学的な過程である。血管形成が制御されないことで、多くの疾患がもたらされる。このような疾患の1つは、加齢性黄斑変性症(「AMD」)であって、黄斑および網膜色素上皮のような眼の種々の構造への新しい血管の浸潤によって特徴付けられる。血管形成が関与する別の疾患は、関節リウマチであって、関節の滑膜裏層の血管は、血管形成を受ける。新規な血管網を形成するのに加えて、内皮細胞は、因子および反応性酸素種を放出して、これがパンヌス増殖および軟骨の破壊をもたらす。未制御の血管形成はまた、糖尿病性網膜症、乾癬、再狭窄および血管新生緑内障などの疾患を伴う。
【0003】
さらに、血管形成はまた、腫瘍形成および転移にも関与する。例えば、直径が約2ミリメートルより大きくなる腫瘍は、それ自体の血管供給を得なければならず、新しい毛細血管の増殖を誘導することによって血管供給を得ることが示されている。これらの新規な血管が、腫瘍中に組み込まれた後、それらは、腫瘍増殖に必須の栄養および成長因子をもたらして、腫瘍細胞の転移を容易にする。
【0004】
血管形成を特異的に標的する抗血管形成剤が、血管形成関連の疾患を処置するために開発されている。例えば、特許文献1;特許文献2;ならびに特許文献3および特許文献4を参照のこと。さらに、確立された脈管構造を標的する薬剤(いわゆる、「血管標的薬剤(Vascular Targeting Agents)」またはVTA)も開発されている。これらの薬剤は、内皮細胞の微小管細胞骨格を選択的に不安定化すること、最終的に血管の閉塞および血流の遮断をもたらす細胞の形状における顕著な変化を生じることによって機能すると考えられる。例えば、特許文献5を参照のこと。
【0005】
チオコルヒチン二量体は、以前に記載されている疎水性化合物である。例えば、特許文献6を参照のこと。これらの化合物は、二重の作用機序を有し、すなわち、この化合物は、抗微小管活性およびトポイソメラーゼI阻害性活性の両方を有する。Raspaglioら、Biochem.Pharmacol.2005,69(1):113〜21。チオコルヒチン二量体Nab−5405およびNab−5676のナノ粒子アルブミン結合処方物が、ガンを処置するための細胞毒性化学療法剤として開発されている。例えば、Bernackiら、Proc.Amer.Assoc.Cancer Res.,第46巻,2005#2390およびPCT特許出願第PCT/US2006/006167号を参照のこと。Nab−5404は、24mg/kg(qd×5)で静脈内投与される場合、完全な腫瘍退縮を誘導し得、A121卵巣腫瘍異種移植片では治癒させることが見出された。
【0006】
本明細書に言及される全ての刊行物、特許、特許出願および公開特許出願の開示は、その全体が参照によって本明細書に援用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,919,309号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0009412号明細書
【特許文献3】国際公開第04/027027号パンフレット
【特許文献4】国際公開第05/117876号パンフレット
【特許文献5】国際公開第05/113532号パンフレット
【特許文献6】米国特許第6,627,774号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は一局面では、個体における血管形成を阻害する方法であって、この個体に対してコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体(例えば、IDN5404)を含む組成物を投与することを包含する方法を提供し、この組成物は血管形成を阻害するのに有効な量であって、かつこの組成物の量は、個体において有意な細胞毒性を誘発する程、十分ではない。ある実施形態では、個体における血管形成を阻害する方法であって、この個体に対して、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体(例えば、IDN5404)を含む組成物の有効量を投与することを包含する方法が提供され、この組成物中におけるコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体(例えば、IDN5404)の量(すなわち、1投与あたりの量)は、体表面積1m2あたりおよそ2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15mg未満のいずれかである。ある実施形態では、個体において血管形成を阻害する方法であって、この個体に対してコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体(例えば、IDN5404)を含む組成物の有効量を投与することを包含する方法が提供され、この組成物中におけるコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体(例えば、IDN5404)の量は、ほぼ0.05、0.08、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5または0.6mg/kg未満のいずれかである。ある実施形態では、この組成物は、少なくともほぼ3週毎に1回、2週毎に1回、1週に1回、1週に2回、1週に3回、1週に4回、1週に5回、1週に6回、または毎日のいずれかで投与される。ある実施形態では、この組成物は、(中断の有無はあるが)、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12ヶ月またはより長い月数のいずれか投与される。ある実施形態では、この組成物は、静脈内、眼内、動脈内、口腔内、局所または吸入の経路のいずれかを介して投与される。
【0009】
本明細書に記載される方法で用いられる組成物は、キャリアタンパク質などの生体適合性ポリマーをさらに含んでもよい。例えば、ある実施形態では、個体における血管形成を阻害する方法であって、この個体に対してキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)およびコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体(例えば、IDN5404)を含む組成物を投与することを包含する方法が提供され、この組成物は血管形成を阻害するのに有効な量であって、かつこの組成物の量は、個体において有意な細胞毒性を誘発する程、十分ではない。ある実施形態では、個体における血管形成を阻害する方法であって、この個体に対して、キャリアタンパク質(例えば、アルブミン)およびコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体(例えば、IDN5404)を含む組成物の有効量を投与することを包含する方法が提供され、この組成物中におけるコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体(例えば、IDN5404)の量は、体表面積1m2あたりおよそ2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15mg未満のいずれかである。ある実施形態では、個体において血管形成を阻害する方法であって、この個体に対してキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)およびコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体(例えば、IDN5404)を含む組成物の有効量を投与することを包含する方法が提供され、この組成物中におけるコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体(例えば、IDN5404)の量は、ほぼ0.05、0.08、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5または0.6mg/kg未満のいずれかである。ある実施形態では、このキャリアタンパク質含有組成物は、実質的に界面活性剤を含まない(例えば、含まない)。ある実施形態では、この組成物は、少なくともほぼ3週毎に1回、2週毎に1回、1週に1回、1週に2回、1週に3回、1週に4回、1週に5回、1週に6回、または毎日のいずれかで投与される。ある実施形態では、この組成物は、(中断の有無はあるが)、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12ヶ月またはより長い月数のいずれか投与される。ある実施形態では、この組成物は、静脈内、眼内、動脈内、口腔内、局所または吸入の経路のいずれかを介して投与される。
【0010】
本明細書に記載される方法で用いられる組成物は、キャリアタンパク質(例えば、アルブミン)およびコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含む粒子(例えば、マイクロ粒子またはナノ粒子)を含んでもよい。例えば、ある実施形態では、個体において血管形成を阻害する方法であって、この個体に対してキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)およびコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体(例えば、IDN5404)を含むナノ粒子を含む組成物を投与することを包含する方法が提供され、この組成物は血管形成を阻害するのに有効な量であって、かつこの組成物の量は、個体において有意な細胞毒性を誘発する程、十分ではない。ある実施形態では、個体における血管形成を阻害する方法であって、この個体に対して、キャリアタンパク質(例えば、アルブミン)およびコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体(例えば、IDN5404)を含むナノ粒子を含む組成物の有効量を投与することを包含する方法が提供され、この組成物中におけるコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体(例えば、IDN5404)の量は、体表面積1m2あたりおよそ2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15mg未満のいずれかである。ある実施形態では、個体において血管形成を阻害する方法であって、この個体に対してキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)およびコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体(例えば、IDN5404)を含むナノ粒子を含む組成物の有効量を投与することを包含する方法が提供され、この組成物中におけるコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体(例えば、IDN5404)の量は、ほぼ0.05、0.08、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5または0.6mg/kg未満のいずれかである。ある実施形態では、この組成物は、少なくともほぼ3週毎に1回、2週ごとに1回、1週に1回、1週に2回、1週に3回、1週に4回、1週に5回、1週に6回、または毎日のいずれかで投与される。ある実施形態では、この組成物は、(中断の有無はあるが)、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12ヶ月以上の月数のいずれか投与される。ある実施形態では、この組成物は、静脈内、眼内、動脈内、口腔内、局所または吸入の経路のいずれかを介して投与される。
【0011】
ある実施形態では、組成物中の粒子は、約200nm以下の平均直径を有する。ある実施形態では、この粒子含有組成物は、実質的には界面活性剤を含まない(例えば、含まない)。ある実施形態では、組成物中のコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体に対するキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)の重量比は約18:1以下、例えば、約9:1以下である。ある実施形態では、このコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体は、キャリアタンパク質(例えば、アルブミン)でコーティングされる。ある実施形態では、この組成物中の粒子は、約200nm以下の平均直径を有し、この組成物は、実質的には界面活性剤を含まない(例えば、含まない)。ある実施形態では、この組成物中の粒子(特にナノ粒子)は、約200nm以下の平均直径を有し、このコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体は、タンパク質(例えば、アルブミン)でコーティングされる。上記の特徴の他の組み合わせも考慮される。ある実施形態では、この粒子組成物は、Nab−5404である。他のコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含む粒子組成物も、上記の特徴の1つ以上を備え得る。
【0012】
本明細書に記載されるコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体は、コルヒチン、チオコルヒチンまたはその誘導体の2つ(同じまたは異なる)のサブユニットを含む。いくつかの実施形態では、このコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体は、少なくとも1つのチオコルヒチンサブユニットを含む。ある実施形態では、このコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体は、2つのチオコルヒチンサブユニットを含む。ある実施形態では、このコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体は、式(I)の化合物:
【0013】
【化1】
を含み、
ここで、各々のサブユニットにおけるBは、メトキシ基またはメチルチオ基であり、B2はR3と一緒になる場合、メトキシ、ヒドロキシル、またはメチレンジオキシであり、R3はR2と一緒になる場合、メトキシ、ヒドロキシル、またはメチレンジオキシであり、かつXは連結基である。ある実施形態では、Xは、少なくとも1つの炭素原子を含む。
【0014】
ある実施形態では、このコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体は、式(II)の化合物:
【0015】
【化2】
であって、
ここで、B1は、メトキシ基またはメチルチオ基であり、B2はメトキシ基、またはメチルチオ基であり、nは0〜8の整数であり、YはCH2基であるか、またはnが1である場合は、式NHの基であってもよい。ある実施形態では、nは、0、1、2、3、4、5、6、7または8のいずれか(例えば、それからなる群より選択される)である。ある実施形態ではnは1である。いくつかの実施形態では、nは1であり、YはNHである。ある実施形態ではnは2である。
【0016】
ある実施形態では、B1およびB2は両方ともメトキシ基である。ある実施形態では、B1およびB2は両方ともメチルチオ基である。ある実施形態では、B1がメトキシ基であり、かつB2はメチルチオ基である。ある実施形態では、B1はメチルチオ基であり、かつB2がメトキシ基である。ある実施形態では、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体は、IDN5404、IDN5676、IDN5800およびIDN5801のいずれか(ある実施形態では、それからなる群より選択される)である。ある実施形態では、このコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体はIDN5404である。ある実施形態では、このコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体はIDN5676である。
【0017】
ある実施形態では、個体において血管形成を阻害する方法であって、この個体に対して、アルブミンならびにIDN5404、IDN5676、IDN5800およびIDN5801のいずれかを含むナノ粒子を含む組成物(本明細書において以降では、それぞれ、「Nab−5404」、「Nab−5676」、「Nab−5800」、および「Nab−5801」と命名される)を投与することを包含する。ある実施形態では個体において血管形成を阻害する方法であって、この個体に対して、Nab−5404(またはNab−5676、Nab−5800、およびNab−5801のいずれか)を投与することを包含する方法が提供され、ここでNab−5404(またはNab−5676、Nab−5800、およびNab−5801のいずれか)は、血管形成を阻害するのに有効な量であって、かつNab−5404(またはNab−5676、Nab−5800、およびNab−5801のいずれか)の量は、個体において有意な細胞毒性を誘発する程、十分ではない。ある実施形態では、個体における血管形成を阻害する方法であって、この個体に対して、Nab−5404(またはNab−5676、Nab−5800、およびNab−5801のいずれか)の有効量を投与することを包含する方法が提供され、このNab−5404(またはNab−5676、Nab−5800、およびNab−5801のいずれか)の量は、体表面積1m2あたりおよそ2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15mg未満のいずれかである。ある実施形態では、個体において血管形成を阻害する方法であって、この個体に対してNab−5404(またはNab−5676、Nab−5800、およびNab−5801のいずれか)の有効量を投与することを包含する方法が提供され、このNab−5404(またはNab−5676、Nab−5800、およびNab−5801のいずれか)の量は、ほぼ0.05、0.08、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5または0.6mg/kg未満のいずれかである。ある実施形態では、この組成物は、少なくともほぼ3週毎に1回、2週ごとに1回、1週に1回、1週に2回、1週に3回、1週に4回、1週に5回、1週に6回、または毎日のいずれかで投与される。ある実施形態では、この組成物は、(中断の有無はあるが)、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12ヶ月以上の月数のいずれか投与される。ある実施形態では、この組成物は、静脈内、眼内、動脈内、口腔内、局所または吸入の経路のいずれかを介して投与される。
【0018】
本明細書に記載される方法は一般には、血管形成関連の疾患の処置に有用である。ある実施形態では、この血管形成関連疾患は、非腫瘍性血管形成関連疾患であって、これには、例えば、眼の疾患(例えば、加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症、または血管新生緑内障)、循環器疾患(例えば、再狭窄またはアテローム性動脈硬化症)、皮膚疾患(例えば、乾癬)および関節炎(例えば、関節リウマチ)が挙げられる。
【0019】
例えば、ある実施形態では、個体における非腫瘍性血管形成関連疾患を処置する方法であって、この個体に対して、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含む組成物を投与することを包含する方法が提供され、この組成物は非腫瘍性血管形成関連疾患を処置するのに有効な量である。ある実施形態では、この組成物の量は、個体において有意な細胞毒性を誘発する程、十分ではない。ある実施形態では、個体における非腫瘍性血管形成関連疾患を処置する方法であって、この個体に対して、キャリアタンパク質(例えば、アルブミン)およびコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体(例えば、IDN5404)を含む組成物を投与することを包含する方法が提供され、この組成物は、個体において非腫瘍性血管形成関連疾患を処置するのに有効な量である。いくつかの実施形態では、この組成物の量は、個体において有意な細胞毒性を誘発する程、十分ではない。ある実施形態では、個体における非腫瘍性血管形成関連疾患を処置する方法であって、この個体に対して、キャリアタンパク質(例えば、アルブミン)およびコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体(例えば、IDN5404)を含む粒子(例えば、ナノ粒子)を含む組成物を投与することを包含する方法が提供され、ここで、この組成物は、非腫瘍性血管形成関連疾患を処置するのに有効な量である。ある実施形態では、この組成物の量は、個体において有意な細胞毒性を誘導するのには不十分である。ある実施形態では、個体において非腫瘍性血管形成関連疾患を処置する方法であって、この個体に対して、Nab−5404(またはNab−5676、Nab−5800、およびNab−5801)を投与することを包含する方法が提供され、ここでNab−5404(またはNab−5676、Nab−5800、およびNab−5801)は、非腫瘍性血管形成関連疾患を処置するのに有効な量である。ある実施形態では、Nab−5404(またはNab−5676、Nab−5800、およびNab−5801)の量は、個体において有意な細胞毒性を誘発する程、十分ではない。
【0020】
ある実施形態では、この血管形成関連疾患は、腫瘍関連疾患であって、これにはガンおよび良性腫瘍が挙げられる。本明細書に記載の方法によって処置され得るガンとしては限定はしないが、乳癌、結腸直腸癌、直腸癌、非小細胞肺癌、非ホジキンリンパ腫(NHL)、腎細胞癌、前立腺癌、肝臓癌、膵臓癌、軟部組織肉腫、カポジ肉腫、カルチノイド癌、頭頸部癌、黒色腫、卵巣癌、中皮腫、神経膠腫、神経芽肉腫および多発性骨髄腫が挙げられる。ある実施形態では、ガンとは固形腫瘍(例えば、転移性固形腫瘍)である。例えば、ガンを処置する方法はさらに下に記載される。
【0021】
例えば、ある実施形態では、個体におけるガンを処置する方法であって、この個体に対してコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含む組成物を投与することを包含する方法が提供され、この組成物はガンを処置するのに有効な量であり、かつこの組成物の量は、個体において有意な細胞毒性を誘発する程、十分ではない。ある実施形態では、個体におけるガンを処置する方法であって、この個体に対して、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含む組成物を投与することを包含する方法が提供され、この組成物は、ガンを処置するのに有効な量であり、かつこの組成物におけるコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体の量は、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体の対応する最大耐量(maximum tolerated dose)(「MTD」)の少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、11%、12%、13%、14%または15%未満のいずれかである。ある実施形態では、個体においてガンを処置する方法であって、キャリアタンパク質(例えば、アルブミン)およびコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体(例えば、IDN5404)を含む組成物をこの個体に対して投与することを包含する方法が提供され、ここで、この組成物は、ガンを処置するのに有効な量であり、かつこの組成物の量は、個体において有意な細胞毒性を誘導するのには不十分である。ある実施形態では、個体においてガンを処置する方法であって、この個体に対して、キャリアタンパク質(例えば、アルブミン)およびコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体(例えば、IDN5404)を含む組成物を投与することを包含する方法が提供され、ここで、この組成物は、このガンを処置するのに有効な量であって、かつこの組成物におけるコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体の量は、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体の対応するMTDの少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、11%、12%、13%、14%または15%未満のいずれかである。ある実施形態では、個体においてガンを処置する方法であって、個体に対してキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)およびコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体(例えば、IDN5404)を含む粒子(例えば、ナノ粒子)を含む組成物を投与することを包含する方法が提供され、ここで、この組成物は、ガンを処置するのに有効な量であり、この組成物の量は、個体において有意な細胞毒性を誘導するのには不十分である。ある実施形態では、個体においてガンを処置する方法であって、この個体に対して、キャリアタンパク質(例えば、アルブミン)およびコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体(例えば、IDN5404)を含む粒子(例えば、ナノ粒子)を含む組成物を投与することを包含する方法が提供され、ここで、この組成物におけるコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体の量は、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体の対応するMTDの約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、11%、12%、13%、14%または15%未満のいずれかである。ある実施形態では、個体においてガンを処置する方法であって、個体に対してNab−5404(またはNab−5676、Nab−5800、およびNab−5801)を投与することを包含する方法が提供され、ここでNab−5404(またはNab−5676、Nab−5800、もしくはNab−5801)は、ガンを処置するのに有効な量であり、かつNab−5404(またはNab−5676、Nab−5800、もしくはNab−5801)の量は、個体において有意な細胞毒性を誘発する程、十分ではない。ある実施形態では、個体においてガンを処置する方法であって、この個体に対して、Nab−5404(またはNab−5676、Nab−5800、もしくはNab−5801)を投与することを包含する方法が提供され、ここでNab−5404(またはNab−5676、Nab−5800、もしくはNab−5801)は、ガンを処置するのに有効な量であり、Nab−5404(またはNab−5676、Nab−5800、もしくはNab−5801)の量は、Nab−5404(またはNab−5676、Nab−5800、もしくはNab−5801)の対応するMTDの約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、11%、12%、13%、14%または15%未満のいずれかである。
【0022】
本明細書に記載の方法に有用である、薬学的組成物、単位用量、キットおよび製品も提供される。
【0023】
本明細書に記載される種々の実施形態の1つ、いくつか、または全ての特性を組み合わせて、本発明の他の実施形態を形成してもよいことが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1Aは、MX−1乳癌細胞を用いる微小管形成に対するNab−5404の影響を示す。図1Bは、MX−1乳癌細胞を用いる微小管形成に対するNab−5676の影響を示す。
【図2】図2A〜Cは、コントロールのビヒクル(PBS、2A)、0.6μg/mlのNab−5404(2B)およびμg/ml(Nab−5676)での処置後のMX−1細胞における染色された微小管網目状構造の顕微鏡写真を示す。
【図3】図3は、微小血管/小管形成によって評価した、Nab−5404、Nab−5676およびCA4Pの抗血管形成活性を示す。細胞を1日目に種々の化合物とインキュベートして、12日目に染色した。図3A〜Dは、コントロールのビヒクル(3C)、0.01μg/mlのNab−5404(3A)、0.01μg/mlのNab−5676(3B)および0.01μg/mlのCA4P(3D)での処置後の小管形成の顕微鏡写真を示す。
【図4】0.0〜100μg/mlの濃度範囲にまたがるNab−5404、Nab−5676およびCA4Pで処置された細胞についての小管の長さの比較を示す。
【図5】図5は、微小血管/小管の形成または破壊によって評価した、Nab−5404およびNab−5676の抗血管形成活性を示す。細胞を、8日目に種々の化合物とインキュベートして、11日目に染色した。図5A〜Cは、コントロールのビヒクル(5A)、0.01μg/mlのNab−5404(5B)および0.01μg/mlのNab−5676(5C)での処置後の小管形成の顕微鏡写真を示す。図5Dは、0.0〜100μg/mlの濃度範囲にまたがるNab−5404、およびNab−5676で処置された細胞についての小管の長さの比較を示す。
【図6】図6は、微小血管/小管の形成または破壊によって評価した、Nab−5404の抗血管形成活性を示す。細胞を11日目に種々の濃度の化合物とインキュベートして、12日目に染色した。図6A〜6Fは、コントロールのビヒクル(6A)、0.001μg/mlのNab−5404(6B)、0.01μg/mlのNab−5404(6C)、0.1μg/mlのNab−5404(6D)、1μg/mlのNab−5404(6E)および10.0μg/mlのNab−5404(6F)での処置後の小管形成および破壊の顕微鏡写真を示す。
【図7】図7は、微小血管/小管の形成または破壊によって評価した、Nab−5676の抗血管形成活性を示す。細胞を、11日目に種々の濃度の化合物とインキュベートして、12日目に染色した。図7A〜7Fは、コントロールのビヒクル(7A)、0.001μg/mlのNab−5676(7B)、0.01μg/mlのNab−5676(7C)、0.1μg/mlのNab−5676(7D)、1μg/mlのNab−5676(7E)および10.0μg/mlのNab−5676(7F)での処置後の小管形成および破壊の顕微鏡写真を示す。
【図8】図8は、微小血管/小管の形成または破壊によって評価した、CA4Pの抗血管形成活性を示す。細胞を、11日目に種々の濃度の化合物とインキュベートして、12日目に染色した。図8A〜8Cは、各々0.01μg/ml、0.1μg/mlおよび1.0μg/mlのCA4Pでの処置後の小管形成および破壊の顕微鏡写真を示す。
【図9】微小血管または小管の形成または破壊によって評価した、Nab−5404、Nab−5676およびCA4Pの抗血管形成活性の比較を示す。細胞を、11日目に化合物とインキュベートして、12日目に染色した。この図は、0.0〜10μg/mlの濃度範囲におよぶ各々の濃度で処置した細胞についての小管の長さを示す。
【図10】図10は、2サイクルの低用量/高用量スケジュールを用いる、異種移植片マウスモデルにおけるHT−29腫瘍増殖に対するNab−5404の影響を示す。第一のサイクルの用量は、1.7、2.5または3.4mg/kg(0〜14日)であって;第二のサイクルの用量は、20、30または40mg/kg(15〜30日)であった。図10Aは、0〜40日目の平均腫瘍容積(n=10)を示す。図10Bは、0〜40日におよぶマウスの平均の体重減少パーセントを示す。
【図11】図11は、2サイクルの低用量/高用量スケジュールを用いる、異種移植片マウスモデルにおけるHT−29腫瘍増殖に対するNab−5676の影響を示す。第一のサイクルの用量は、1.7、2.5または3.4mg/kg(0〜14日)であって;第二のサイクルの用量は、20、30または40mg/kg(15〜30日)であった。図11Aは、0〜40日目の平均腫瘍容積(n=10)を示す。図11Bは、0〜40日におよぶマウスの平均の体重減少パーセントを示す。
【図12】図12は、異種移植片マウスモデルにおけるHT−29腫瘍増殖に対するCA4Pの影響を示す。HT−29腫瘍は、900mm3の容積に達した後に100mg/kgで処置した。図12Aは、28日目〜41日目の平均腫瘍容積(n=10)を示す;四角=ビヒクルコントロール、ひし形=CA4P処置。図12Bは、28日〜41日におよぶマウスの平均の体重減少パーセントを示す;四角=ビヒクルコントロール、ひし形=CA4P処置。
【発明を実施するための形態】
【0025】
発明の詳細な説明
本発明は、チオコルヒチン二量体を含む組成物、詳細には、チオコルヒチン二量体のアルブミン含有ナノ粒子処方物、さらに詳細には、IDN−5404のアルブミン含有ナノ粒子処方物(「Nab−5404」)およびIDN−5676のアルブミン含有ナノ粒子処方物(「Nab−5676」)が、インビトロにおける微小血管形成の阻害および樹立された微小血管の破壊に有効であるという本発明者らの観察に部分的には基づく。Trieuら、第97回、AACR Annual Meeting,Abstract No.3823。これらの活性についてのIC50値は、組成物のインビトロ細胞毒性活性に必要な値よりも有意に低い。本発明者らは、チオコルヒチン二量体を含む組成物、詳細にはチオコルヒチン二量体のアルブミン含有ナノ粒子処方物(例えば、Nab−5404およびNab−5676)が、この組成物の対応する最大耐量(MTD)よりも有意に低い用量で、インビボにおいて腫瘍増殖を阻害するのに有効であるということをさらに観察した。これらの観察によって、チオコルヒチン二量体またはそのアナログを含む組成物(例えば、コルヒチン二量体)が、その細胞毒性効果とは独立して抗血管形成活性および血管標的活性を保有するということが示唆される。有効量および非細胞毒性量で投与されるとき、この組成物は、新しい血管の増殖を選択的に標的して、標的組織において有意な細胞死を生じることなしに血流をブロックし得る。
【0026】
コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体の有効かつ非細胞毒性の量(すなわち、有意な細胞毒性を誘導するのには不十分な量)が、化合物の細胞毒性効果を最小化するために非腫瘍性の抗血管形成関連疾患を処置するために所望される。有効かつ非細胞毒性という量はまた、ガンを処置するために有利である。細胞毒性剤での伝統的な化学療法は代表的には、この薬剤の細胞毒性効果を最大にするためにこの薬剤の最大耐量と同じかまたはそれに近い用量で行われる。しかし、この高用量のスケジュールには、正常なホストの細胞の回復を可能にするために長期の処置なしの期間を要する。その間に、腫瘍細胞はまた、処置なしの期間中、増殖を再開し得る。これによって、薬物耐性の腫瘍細胞が発現するというリスクが増大し得る。コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体の非細胞毒性の用量(すなわち、量)によって、処置サイクルにおける有意な中断なしに処置して、これによって薬物耐性が発現するリスクを低下させることが可能になる。さらに、非細胞毒性用量によって、明らかな全身の毒性(例えば、体重減少)および薬物によって誘発される副作用を発症する可能性が最小限になる。
【0027】
従って、本発明は、一局面では、個体において血管形成を阻害する(樹立された血管新生を標的することを含む)方法であって、この個体に対して、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含む組成物を投与することを包含する方法を提供し、この組成物は、血管形成を阻害するのに有効な量であり、かつこの組成物の量は、個体において有意な細胞毒性を誘導するのには不十分である。ある実施形態では、この方法は、キャリアタンパク質(例えば、アルブミン)およびコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含む組成物をこの個体に投与することを包含し、この組成物は、血管形成を阻害するのに有効な量であって、かつこの組成物の量は、この個体において有意な細胞毒性を誘導するのには不十分である。
【0028】
別の局面では、本発明は、個体において非腫瘍性血管形成関連疾患を処置する方法であって、この個体に対して、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含む組成物を投与することを包含する方法を提供し、この組成物は、非腫瘍性血管形成関連疾患を治療するのに有効な量である。ある実施形態では、この方法は、個体に対して、キャリアタンパク質およびコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含む組成物を投与することを包含し、この組成物は、非腫瘍性血管形成関連疾患を処置するのに有効な量である。
【0029】
別の局面では、この方法は、個体において腫瘍関連疾患を処置する方法であって、この個体に対して、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含む組成物を投与することを包含する方法を提供し、この組成物は、腫瘍関連疾患を処置するのに有効な量であり、かつこの組成物の量は、個体において有意な細胞毒性を誘導するのには不十分である。ある実施形態では、この方法は、この個体に対してキャリアタンパク質およびコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含む組成物を投与することを包含し、この組成物は、ガンを処置するのに有効な量であって、かつこの組成物の量は、個体において有意な細胞毒性を誘導するのには不十分である。
【0030】
また、本明細書に記載される方法に有用である、薬学的組成物、単位投薬量、キット、および製品も提供される。
【0031】
「組成物(単数)(the composition)」または「組成物(複数)(compositions)」という一般的な言及には、本発明の組成物を含み、かつそれに適用可能である。本発明はまた、本明細書に記載される成分を含む薬学的組成物を提供する。
【0032】
「個体」という用語は、ヒトを含む哺乳動物である。個体としては限定はしないが、ヒト、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、げっ歯類または霊長類が挙げられる。ある実施形態では、この個体はヒトである。ある実施形態では、個体とは、血管形成または血管形成関連の疾患(単数または複数)を研究するための実験動物モデルである。
【0033】
本開示は、エナンチオマーおよびジアステレオマーを含む、本明細書に言及される化合物の全ての立体異性体を含む。立体化学が構造中で明確に示されない限り、開示される構造は、全ての可能な立体化学改変体を包含するものとする。この開示は、開示された任意のキラル化合物の全てのエナンチオマーを、実質的に純粋な左旋性または右旋性の形態のいずれかで、またはラセミ混合物で、または任意の比のエナンチオマーで包含する。この開示は、上の式で言及される化合物の任意のジアステレオマーを、実質的に純粋なジアステレオマー型で、および全ての比の混合物の形態で包含する。この開示はまた、本明細書に言及される化合物の全ての溶媒和化合物を含み、これには、本明細書に言及される化合物の全ての水和物を含む。この開示はまた、全ての多形体を含み、これには、本明細書に言及される化合物の結晶型および非結晶型を包含する。この開示はまた、本明細書に言及される化合物の全ての塩、詳細には薬学的に受容可能な塩を包含する。本明細書に開示される化合物の代謝物およびプロドラッグもこの開示に包含される。本明細書に開示される化合物の全ての使用において、この開示はまた、記載される化合物の任意のまたは全ての立体化学、エナンチオマー、ジアステレオマー、溶媒和化合物、水和物、多形性、結晶、非結晶、塩、薬学的に受容可能な塩、代謝物およびプロドラッグのバリエーションの使用を包含する。
【0034】
本明細書に記載される本発明の局面および実施形態は、局面および実施形態「〜からなる(consisting)」および/または「本質的に〜なる(consisting essentially of)」を包含することが理解される。
【0035】
血管形成を阻害する方法
本発明は一局面では、コルヒチンまたはチオコルヒチンを含む組成物(例えば、キャリアタンパク質含有組成物)を投与することによって個体における血管形成を阻害する方法を提供する。この組成物は、血管形成を阻害するのに有効である量である。しかし、投与される組成物の量は、個体において有意な細胞毒性を誘発する程、十分ではない。
【0036】
本明細書で用いられる「血管形成」とは、組織または器官において新しい血管を発生させる過程をいう。血管形成は代表的には、内皮細胞および白血球によって放出される酵素による血管の基底膜の侵食で開始する。内皮細胞は、血管の管腔を裏打ちしており、次に基底膜を通じて突出する。血管形成の刺激は、侵食された基底膜を通じて内皮細胞が遊走するように誘導する。遊走する細胞は、親の血管から「芽(sprout)」を出し、この内皮細胞はここで有糸分裂および増殖を受ける。内皮の出芽はお互いと一緒になって、ループ状毛細血管を形成して、新しい血管を作製する。
【0037】
「血管形成の阻害」とは、例えば、眼の組織、心血管の組織、皮膚組織、関節組織および腫瘍組織を含む、個体における1つ以上の組織において血管形成を軽減、邪魔または抑制することをいう。血管形成の阻害は、血管形成の過程の1つ以上の段階に影響することによって、例えば、活性化された内皮細胞の遊走および生存を低減させること、親血管からの細胞の「出芽(sprouting)」を妨げること、および/または新しい血管の形成を妨げることによって達成され得る。微小血管密度の変化も、「血管形成の阻害」という用語内に包含される。「血管形成の阻害」という用語はまた、樹立された脈管構造を破壊することを包含する。「樹立された脈管構造を破壊する」とは、血管形成によって形成された既存の脈管構造を閉塞させるか、溶解させるか、そうでなければ影響する能力をいう。脈管構造の破壊は、可逆的であっても、または不可逆的であっても、部分的であってもまたは完全であってもよい。
【0038】
従って、本明細書で提供される方法は、以下の局面の1つ以上を包含する:内皮細胞遊走を阻害(例えば、軽減、邪魔または妨げる)こと、親血管からの内皮細胞の「出芽」を阻害(例えば、軽減、邪魔または妨げる)こと、新しい血管の形成を阻害(例えば、軽減、邪魔または妨げる)こと、および血管新生によって形成された樹立された脈管構造を標的(例えば、閉塞、崩壊または破壊する)こと。ある実施形態では、個体における血管形成を阻害(例えば、軽減、邪魔または妨げる)方法が提供される。ある実施形態では、樹立された脈管構造を破壊(例えば、閉塞、溶解、そうでなければ影響を及ぼす)方法が提供される。ある実施形態では、個体の組織における微小血管の密度を低減させる方法が提供される。
【0039】
「有効量」とは、個体に対する単回または複数回の投与の際に、その個体に所望の効果をもたらす組成物の量または用量をいう。例えば、この組成物は、個体における1つ以上の組織において血管形成(例えば、血管形成の1つ以上の局面)を軽減、邪魔または妨げるのにこの組成物の量が十分な場合に、「血管形成を阻害するのに有効な量」である。処置の文脈で用いられる「有効な量」という用語は、特定の障害、状態または疾患を処置する、例えばその症状のうちの1つ以上を寛解、緩和、低減および/または遅延するのに十分な化合物または組成物の量をさす。有効な量は、インビトロおよび/またはインビボで決定され得る。血管形成を阻害するための組成物の有効な量を決定する方法は当該分野で公知である。
【0040】
ある実施形態では、この組成物の量は、眼の組織において血管形成を阻害するのに有効である。ある実施形態では、この組成物の量は、心血管系の組織において血管形成を阻害するのに有効である。ある実施形態では、この組成物の量は、皮膚組織で血管形成を阻害するのに有効である。ある実施形態では、この組成物の量は、関節組織において血管形成を阻害するのに有効である。ある実施形態では、この組成物の量は、腫瘍組織で血管形成を阻害するのに有効である。ある実施形態では、この組成物の量は、新しい血管形成を阻害するのに有効である。ある実施形態では、この組成物の量は、親血管から内皮細胞の「出芽」を阻害するのに有効である。ある実施形態では、この組成物の量は、内皮細胞の遊走を阻害するのに有効である。ある実施形態では、この組成物の量は、樹立された脈管構造を破壊するのに有効である。ある実施形態では、この組成物の量は、血管形成(例えば、血管形成の任意の1つ以上の局面)を、少なくとも約5%、10%、20%、40%、50%またはそれ以上のいずれかまで阻害するのに有効である。
【0041】
組成物は、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体が個体において有意な細胞死を生じることを可能にするのにこの組成物の量が不十分である場合、「有意な細胞毒性を誘発するには不十分な量」(「非細胞毒性量」とも呼ばれる))である。細胞毒性は、以下の1つ以上によって測定され得る。例えば、非細胞毒性量は、インビトロの細胞生存度アッセイに基づいて決定され得る。この非細胞毒性量は、インビトロの細胞生存度アッセイにおいて約50%以上の細胞死を生じるには不十分な量であり得る。ある実施形態では、この組成物の量は、インビトロの細胞生存度アッセイにおいて約40%以上、30%以上、20%以上、10%以上、5%以上、4%以上、3%以上、2%以上、または1%以上のいずれかの細胞死を生じるには不十分である。ある実施形態では、この組成物の量は、インビトロの細胞生存度アッセイにおいて任意の測定可能な細胞死を生じるには不十分である。インビトロの細胞生存度アッセイに適切な細胞としては限定はしないが、腫瘍細胞(例えば、MX−1乳癌細胞株、HepG2肝細胞腫細胞株およびHT−29結腸癌細胞株)および正常細胞(例えば、一次ラット肝細胞腫)が挙げられる。非細胞毒性量はまた、薬物毒性のインビボアッセイに基づいて決定してもよい。例えば、非細胞毒性量は、インビトロの細胞毒性アッセイにおいて試験集団の約50%以上を殺傷するには不十分な量であり得る。ある実施形態では、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体の量は、インビトロの細胞毒性アッセイにおいて試験集団の約40%以上、30%以上、20%以上、10%以上、5%以上、4%以上、3%以上、2%以上、または1%以上のいずれかの細胞死を生じるには不十分である。ある実施形態では、この組成物の量は、インビトロの薬物毒性アッセイにおいて試験集団において死滅を生じさせるには不十分である。非細胞毒性量はまた、個体において明らかな全身の毒性(例えば、体重減少)を誘発するのに必要なコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体の量に基づいて決定され得る、すなわち、この薬物の量は、明らかな全身毒性を誘発しない場合に非細胞毒性である。例えば、ある実施形態では、非細胞毒性量とは、約15%未満(例えば、約10%、8%、5%以下のいずれか未満を含む)の体重減少を誘発する量である。
【0042】
ある実施形態では、各々の投与でのこの組成物中におけるコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体の量は、体表面積1m2あたりおよそ2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14および15mg未満のいずれかである。例えば、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体の量は、体表面積1m2あたり、約0.25mg/m2〜約15mg/m2、約0.25mg/m2〜約10mg/m2、約0.25mg/m2〜約8mg/m2、約0.25mg/m2〜約4mg/m2、および約0.25mg/m2〜約2mg/m2に及んでもよい。ある実施形態では、各々の投与でのこの組成物中におけるコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体の量は、約0.05、0.08、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5または0.6mg/kg未満のいずれかである。例えば、このコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体の量は、約0.05mg/kg〜約0.5mg/kg、約0.08mg/kg〜約0.3mg/kg、および約0.1mg/kg〜約0.2mg/kgに及んでもよい。
【0043】
ある実施形態では、このコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体は、中断の有無はあるが、長期の投与期間(例えば、6ヶ月以上)にわたって薬物耐性を誘発しない量である。ある実施形態では、このコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体は、個体において有意な副作用(例えば、代表的には化学療法に伴う副作用)を誘発しない量である。代表的には、化学療法に伴う副作用としては、例えば、脱水、下痢、悪心、嘔吐、失明または錯乱および貧血が挙げられる。
【0044】
組成物の投薬頻度としては、限定はしないが、少なくともほぼ3週毎に1回、2週毎に1回、1週に1回、1週に2回、1週に3回、1週に4回、1週に5回、1週に6回、または毎日のいずれかが挙げられる。ある実施形態では、各々の投与の間の間隔は、約1週未満、例えば、ほぼ6、5、4、3、2または1日未満のいずれかである。ある実施形態では、各々の投与の間の間隔は一定である。例えば、投与は、毎日、2日毎、3日毎、4日毎、5日毎、または毎週行ってもよい。ある実施形態では、この投与は、毎日2回、毎日3回、またはより高頻度で行ってもよい。
【0045】
組成物の投与は、長期間にわたって、例えば、約1ヶ月〜約3年まで延長されてもよい。例えば、投薬レジメンは、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、18、24、30および36ヶ月のいずれかの期間にわたって延長されてもよい。ある実施形態では、投薬レジメンには中断はない。ある実施形態では、各々の投与の間の間隔は、約1週以下である。
【0046】
本明細書に記載される組成物は、限定はしないが、静脈内、腹腔内、眼内、動脈内、肺内、口腔、膀胱内、筋肉内、気管内、皮下、眼内、くも膜下腔内、経皮、経胸膜内、動脈内、局所、吸入(例えば、スプレーのミスト)、経粘膜(例えば、鼻粘膜を介して)、皮下、経皮、胃腸管、関節内、嚢内、脳室内、直腸(すなわち、坐剤を介して)、膣(すなわち、ペッサリーを介して)、頭蓋内、尿道内、肝臓内、および腫瘍内を包含する当該分野の任意の経路を介して個体に投与されてもよい。ある実施形態では、この組成物は、全身に投与される。ある実施形態では、この組成物は、局所に投与される。ある実施形態では、この組成物は、静脈内、眼内、動脈内、口腔、局所または吸入の任意の経路を解して投与される。
【0047】
この方法が、眼の組織における血管形成の阻害に関する場合、この組成物は、眼または眼の組織に直接投与されてもよい。この組成物は、点眼のように、眼に局所的に投与されてもよい。この組成物はまた、眼に対して、または眼に関連する組織に対して注射によって投与されてもよい。この組成物は、眼内注射、眼の周囲の注射、網膜下注射、硝子体内注射、経中隔注射、強膜下注射、脈絡叢内注射、房内(intracameral)注射、結膜下注射、テノン嚢下(sub−Tenon)注射、球後注射、球周囲注射、または後強膜近傍の送達を介して投与されてもよい。この組成物は、例えば、硝子体、眼房水、強膜、結膜、強膜と結膜との間の領域、網膜脈絡膜組織、網膜黄斑、または個体の眼の中かもしくはその近傍の他の領域に対して投与されてもよい。網膜薬物送達のための例示的な眼の周囲の経路の説明に関しては、Periocular routes for retinal drug delivery,Raghavaら(2004),Expert Opin.Drug Deliv.1(1):99〜114を参照のこと。この組成物はまた、インプラントとして個体に投与されてもよい。好ましいインプラントは、ある期間にわたってこの化合物を徐々に放出する、生体適合および/または生物分解性の徐放性放出処方物である。薬物送達のための眼のインプラントは当該分野で周知である。例えば、米国特許第5,501,856号、同第5,476,511号、および同第6,331,313号を参照のこと。この組成物はまた、限定はしないが、米国特許第4,454,151号、ならびに米国特許出願公開第2003/0181531号および同第2004/0058313号に記載されるイオン泳動方法を包含する、イオン泳動を用いて個体に投与されてもよい。
【0048】
血管形成関連疾患を処置する方法
本明細書に記載される方法は一般には、血管形成関連疾患の処置のために有用である。「血管形成関連疾患」とは、血管形成が疾患の一局面である疾患または障害をいう。この血管形成関連疾患は、異常な血管形成によって生じ得る。ある実施形態では、この血管形成関連疾患は、血管形成によって少なくとも一部は媒介される。ある実施形態では、血管形成は、血管形成関連疾患の発達に必須である。血管形成関連疾患は、当該分野で公知であって、これには例えば、非腫瘍性血管形成関連疾患、例えば、黄斑変性症、糖尿病性網膜症、関節リウマチ、および本明細書に記載される他の疾患が挙げられる。ある実施形態では、この血管形成関連疾患は、ガンまたは良性腫瘍などの、腫瘍関連疾患である。
【0049】
本明細書において用いる場合、「処置」とは、有益なまたは所望の臨床結果を得るためのアプローチである。本発明の目的のためには、有益または所望される臨床結果としては限定はしないが、以下のうちいずれか1つ以上が挙げられる:1つ以上の症状の軽減、疾患の程度の退縮、疾患の安定化(すなわち、悪化しない)状態、疾患の広がりの予防または遅延、疾患の発症または再発の予防または遅延、疾患進行の遅延または緩徐化、疾患状態の改善、および寛解(部分的または全体のいずれか)。「処置」とはまた、血管形成関連疾患の病理的な帰結の軽減も包含する。本発明の方法は、処置のこれらの局面のいずれか1つ以上を考慮する。
【0050】
非腫瘍性の血管形成関連疾患の処置
本明細書に記載される方法は、非腫瘍性の血管形成関連疾患の処置に有用である。
【0051】
ある実施形態では、この方法は、眼の組織における、例えば、角膜、網膜、網膜黄斑および脈絡膜における、非腫瘍性の血管形成関連疾患の処置のために有用である。この方法は一般に、盲目(blindness)、失明(loss of vision)(例えば、視力または視野の喪失)、および/または種々の眼の疾患から生じる他の結果を防ぐために有用である。ある実施形態では、加齢性黄斑変性症(AMD)を含む黄斑変性症を処置するための方法が提供される。AMDは臨床的には、網膜黄斑と呼ばれる網膜の領域における光受容細胞に対する損傷の結果として生じる、中心視野の進行性の喪失によって特徴づけられる。AMDは広義には2つの臨床的な状態に分類されている:滲出型(wet form)および非滲出型(dry form)であって、ここで非滲出型は全症例の80〜90%を構成する。この非滲出型は、網膜色素上皮(RPE)とブランチ(Brunch)膜との間に局在して堆積する網膜黄斑ドルーゼの存在によって、および過剰な光受容器萎縮を有するRPE細胞死によって特徴づけられる地図状委縮によって臨床的には特徴づけられる。滲出型AMDは重篤な失明のほぼ90%を占めており、黄斑の領域における新血管新生およびこれらの新しい血管の漏出を伴う。血液および体液の蓄積は、網膜剥離を続いて、急速な光受容器変性および視覚喪失を生じ得る。AMDの滲出型には、非滲出型が先行して非滲出型から生じることが一般に認められている。
【0052】
本明細書に提供される方法は、滲出型の黄斑変性の処置または阻害に特に有用である。眼の組織における血管形成の阻害はまた、非滲出型の黄斑変性から滲出型の黄斑変性への移行を予防または遅らせる。従って、本発明はまた、非滲出型の黄斑変性の処置のための方法を提供する。本発明はまた、限定はしないが、光受容体細胞の喪失、視覚(例えば、視力および視野を含む)の喪失および網膜剥離を含む黄斑変性の1つ以上の局面または症状を処置または予防する方法を包含する。他の関連の局面、例えば、光受容体変性、RPE変性、網膜変性、脈絡網膜の変性、(網膜)錐体変性、網膜機能不全、網膜損傷、ブランチ(Brunch)膜への傷害、RPE機能の喪失、正常な黄斑の細胞および/または細胞外基質の組織構造の完全性の喪失、網膜における細胞の機能の喪失、ならびに光受容体のジストロフィーも包含される。
【0053】
本明細書に記載の方法によって処置され得る他の非腫瘍性血管形成関連の眼の疾患としては、限定はしないが、網膜の新血管新生、角膜の新血管新生(例えば、トラコーマ、感染、炎症、移植または外傷によって生じる)、糖尿病性網膜症、糖尿病性網膜浮腫、糖尿病性網膜黄斑浮腫、虚血性網膜症、高血圧性網膜症、閉塞性網膜症、未熟児網膜症、外傷に続く新血管新生、感染に続く新血管新生、移植に続く新血管新生、網膜剥離または網膜変性に続く新血管新生、血管新生緑内障、前房および/または前房隅角の新血管新生、脈絡膜血管新生(CNV)、網膜下血管新生、水晶体後部線維増殖症、眼のヒストプラズマ症症候群、近視性変性、網膜色素線条、ブドウ膜炎、ルベオーシス、水晶体後(部)線維増殖症、眼のヒストプラズマ症および特発性中心性漿液性網脈絡膜症が挙げられる。ある実施形態では、この眼の疾患は、糖尿病性網膜症である。ある実施形態では、眼の疾患は、血管新生緑内障である。
【0054】
ある実施形態では、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、アテロームおよび血管腫などの循環器疾患(心血管系疾患)を含む血管系の疾患を処置する方法が提供される。アテローム性動脈硬化症は、慢性の血管損傷の形態であって、ここでは動脈壁における正常な血管平滑筋(VSMC)のうちある程度がその性質を変えて、アテローム斑における毛細血管の高密度の網状構造を発達させる。これらの脆弱な毛細血管が出血を生じ得、これが血液凝固をもたらし、結果として心筋への血流の低下および心発作を伴う。再狭窄は代表的には、冠動脈バイパス手術、血管内膜切除および心移植後に、詳細には、心バルーン血管形成、アテレクトミー(アテローム切除術)、レーザー切断または血管内ステント後に生じる。これは、微小血管の広範な増殖に関与する。心血管組織における血管形成の阻害によって、本明細書に提供される方法は、これらの循環器疾患を処置するために有用である。
【0055】
ある実施形態では、この方法は、関節リウマチ(関節における血管は、血管形成を受けて、軟骨に進入して破壊する広範に血管新生された組織を形成する)の処置のために有用である。関節炎組織における血管形成の阻害によって、本明細書に提供される方法は、関節リウマチを処置するために有用である。血友病の関節を処置するための方法も提供される。
【0056】
ある実施形態では、この方法は、限定はしないが、乾癬、強皮症、感染(例えば、猫引っかき病、細菌性潰瘍など)の結果としての新血管新生、および他の皮膚障害を含む血管形成関連皮膚疾患を処置するために有用である。ある実施形態では、この方法は乾癬を処置するために有用である。乾癬は、慢性皮膚疾患であって、世界中の集団の約3%で生じている。電子顕微鏡を含む組織学的研究によって、皮膚の血管形成における変更は、乾癬の顕著な特徴であることが確立されている。従って、皮膚組織における血管形成の阻害は、乾癬を処置するために有用である。
【0057】
本発明の方法によって処置され得る他の血管形成関連疾患としては限定はしないが、オスラー・ウェーバー症候群、遺伝性出血性毛細管拡張症、プラーク新血管新生、末梢血管拡張、血管線維腫、血管腫、創傷肉芽形成、子宮内膜症などが挙げられる。さらに、本発明は、鼻ポリープ、特に嚢胞性線維症患者の処置に有用である。
【0058】
血管形成関連疾患を処置する以外に、本明細書に記載される方法はまた、血管形成に関連する正常な生理学的状態の発現を調節または予防するために有用であり得る。例えば、本発明の方法は、排卵に関連する新血管新生、胚の移植、胎盤形成などを減弱するために用いられ得、従って、受胎調節の目的に有用である。
【0059】
本明細書に提供されるのは、本明細書に記載される種々の疾患を処置する方法である。ある実施形態では、個体において非腫瘍性の血管形成関連の疾患を処置する方法が提供され、この方法は、この個体に対して、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含む組成物(例えば、キャリアタンパク質を含む組成物)を投与することを包含し、この組成物は、非腫瘍性の血管形成関連疾患を処置するのに有効な量である。ある実施形態では、個体において、血管形成関連の眼の疾患(例えば、黄斑変性症、糖尿病性網膜症、または血管新生緑内障を含む)を処置する方法が提供され、この方法は、この個体に対して、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含む組成物(例えば、キャリアタンパク質を含む組成物)を投与することを包含し、ここで、この組成物は、眼の疾患を処置するのに有効な量である。ある実施形態では、循環器疾患(心血管系疾患)(例えば、再狭窄およびアテローム性動脈硬化症)を処置する方法が提供され、この方法は、この個体に対して、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含む組成物(例えば、キャリアタンパク質を含む組成物)を投与することを包含し、ここでこの組成物は、循環器疾患を処置するのに有効な量である。ある実施形態では、血管形成関連の皮膚疾患(例えば、乾癬)を処置する方法が提供され、この方法は、この個体に対して、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含む組成物(例えば、キャリアタンパク質を含む組成物)を投与することを包含し、この組成物は、この皮膚疾患を処置するのに有効な量である。ある実施形態では、関節炎(例えば、関節リウマチ)を処置する方法が提供され、この方法は、この個体に対して、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含む組成物(例えば、キャリアタンパク質を含む組成物)を投与することを包含し、この組成物は、関節炎を処置するのに有効な量である。
【0060】
ある実施形態では、このコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体組成物は、少なくともほぼ3週毎に1回、2週毎に1回、1週に1回、1週に2回、1週に3回、1週に4回、1週に5回、1週に6回、または毎日のいずれかで投与される。ある実施形態では、各々の投与の間の間隔は、約1週未満、例えば、約6、5、4、3、2または1日未満のいずれかである。ある実施形態では、各々の投与の間の間隔は一定である。例えば、この投与は、毎日、2日毎、3日毎、4日毎、5日毎、または毎週行われてもよい。ある実施形態では、この投与は、毎日2回、毎日3回、またはより高頻度で行われてもよい。この組成物の投与は、約1ヶ月から約3年など、長期間にわたって(中断の有無はあるが)延長されてもよい。例えば、投薬レジメンは、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、18、24、30および36ヶ月のいずれかの期間にわたって延長されてもよい(中断の有無はある)。ある実施形態では、投薬スケジュールに中断はない。ある実施形態では、各々の投与の間の間隔は、約1ヶ月以下である。
【0061】
血管形成を阻害することによって腫瘍関連疾患を処置する方法
本明細書に記載される方法はまた、腫瘍組織における血管形成の阻害に、ならびにガンおよび良性腫瘍などの腫瘍関連疾患を処置するために有用である。
【0062】
血管形成を阻害すること(例えば、新しい血管形成を阻害することによる、または樹立された血管を標的することによる)で、腫瘍に対して十分な栄養および酸素が供給されることを妨げて、所定のサイズを超える増殖を抑制する。血管形成は、原発性の腫瘍増殖および転移の両方に関与するので、本明細書に提供される方法は、腫瘍の腫瘍性の増殖を原発性の部位で阻害すること、および腫瘍の転移を二次的な部位で妨げることの両方を可能にする。ある実施形態では、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体は、新しい血管の形成を阻害する。ある実施形態では、このコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体組成物は、樹立された腫瘍脈管構造を破壊する。例えば、この組成物は、選択性の閉塞、溶解に有効であってもよく、そうでなければ、可逆的もしくは不可逆的、部分的もしくは完全いずれであっても、腫瘍脈管構造に影響する(時には腫瘍脈管構造を増殖する)。
【0063】
本発明は、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含む組成物の有効量を投与することによって、腫瘍関連疾患を処置する方法を提供し、この組成物の量は、有意な細胞毒性を誘発する程、十分ではない(「非細胞毒性用量」とも呼ばれる)。細胞毒性剤での伝統的な化学療法は代表的には、この薬剤の細胞毒性効果を最大にするためにこの薬剤の最大耐量と同じかまたは近い用量で行う。しかし、この高用量スケジュールには、正常なホストの細胞の回復を可能にするために長期の処置なし期間を要する。この間に、腫瘍細胞はまた、処置なし期間中に増殖を再開し得る。これによって、薬物耐性の腫瘍細胞が発現するというリスクが増大し得る。コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体の非細胞毒性の用量によって、処置サイクルにおける有意な中断なしにガンを処置することが可能になり、これによって薬物耐性が発現するリスクが低下する。
【0064】
一例を挙げるために、ガンを処置する方法をさらに本明細書に記載する。この説明は一般には、良性腫瘍を含む全ての腫瘍関連疾患にあてはまることが理解される。
【0065】
ある実施形態では、個体においてガンを処置する方法が提供され、この方法は、この個体に対して、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含む組成物を投与することを包含し、この組成物は、ガンを処置するのに有効な量であり、かつ1投与あたりのこの組成物中のコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体の量は、同じもしくは類似の投薬スケジュール、または伝統的な投薬スケジュールに従う、同じ(または類似の)処方物中の同じ(または類似の)コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体についての対応するMTDの約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%。13%、14%または15%未満のいずれかである。ある実施形態では、1投与あたりのこの組成物中のコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体の量は、対応するMTDの約1%〜約15%であって、これには、例えば、この対応するMTDの約1%〜約12%、約1%〜約10%、約1%〜約8%、約1%〜約5%、約1%〜約3%のいずれかを含む。コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体についてのMTDは公知であるか、または当業者によって容易に決定され得る。例えば、毎週のスケジュールに従うNab−5404についてのMTDは、体表面積あたり約90〜100mg/m2である。
【0066】
ある実施形態では、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体組成物は、少なくともほぼ3週毎に1回、2週毎に1回、1週に1回、1週に2回、1週に3回、1週に4回、1週に5回、1週に6回、または毎日のいずれかで投与される。ある実施形態では、各々の投与の間の間隔は、約1週未満、例えば、約6、5、4、3、2または1日未満のいずれかである。ある実施形態では、各々の投与の間の間隔は一定である。例えば、この投与は、毎日、2日毎、3日毎、4日毎、5日毎、または毎週行われてもよい。ある実施形態では、この投与は、毎日2回、毎日3回、またはより高頻度で行われてもよい。この組成物の投与は、約1ヶ月から約3年など、長期間にわたって(中断の有無はあるが)延長されてもよい。例えば、投薬レジメンは、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、18、24、30および36ヶ月のいずれかの期間にわたって延長されてもよい(中断の有無はある)。ある実施形態では、投薬スケジュールに中断はない。ある実施形態では、各々の投与の間の間隔は、約1ヶ月以下である。
【0067】
本発明の方法によって処置され得るガンとしては限定はしないが、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病が挙げられる。このようなガンのさらに詳細な例としては、限定はしないが、扁平上皮細胞癌、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、および肺の扁平上皮癌を含む)、腹膜の癌、肝細胞癌、胃癌(gastric or stomach cancer)(胃腸の癌を含む)、膵臓癌、グリア芽細胞腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝細胞腫、乳癌、結腸癌、子宮内膜または子宮の癌、唾液腺癌、腎臓癌(kidney or renal cancer)、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝臓癌、頭頸部癌、B細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性の非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球性(SL)NHL、中悪性度/濾胞性のNHL、中悪性度広汎性NHL、高悪性度免疫芽細胞NHL、高悪性度リンパ芽球性NHL、高悪性度非開裂小細胞NHL、巨大病変NHL、マントル細胞リンパ腫、AIDS関連リンパ腫、およびヴァルデンストレームマクログロブリン血症)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性リンパ性白血病(ALL)、ヘアリー細胞白血病、慢性骨髄芽球性白血病、および移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)、ならびに母斑症(phakomatoses)に関連する異常な血管増殖、浮腫(例えば、脳腫瘍に関連する)、およびメーグス症候群が挙げられる。本明細書に記載される方法は、扁平細胞癌のような過度の血管形成に関与するガンを処置するために特に有用である。
【0068】
ある実施形態では、原発性腫瘍を処置する方法が提供される。ある実施形態では、転移性ガン(すなわち、原発性腫瘍から転移されているガン)を処置する方法が提供される。ある実施形態では、進行した段階のガンを処置する方法が提供される。ある実施形態では、乳癌(HER2陽性であっても、またはHER2陰性であってもよい)を処置する方法が提供され、このガンとしては、進行性乳癌、IV期乳癌、局所進行性乳癌および転移性乳癌が挙げられる。ある実施形態では、このガンは肺癌であって、これには、例えば、非小細胞肺癌(NSCLC、例えば、進行性NSCLC)、小細胞肺癌(SCLC、例えば、進行性SCLC)、および肺における進行性の固形悪性腫瘍が挙げられる。ある実施形態では、ガンは卵巣癌、頭頸部癌、胃の悪性腫瘍、黒色腫(転移性黒色腫を含む)、結腸直腸癌、膵臓癌および固形腫瘍(例えば、進行性の固形腫瘍)である。ある実施形態では、このガンは、乳癌、結腸直腸癌、直腸癌、非小細胞肺癌、非ホジキンリンパ腫(NHL)、腎臓細胞癌、前立腺癌、肝臓癌、膵臓癌、軟部組織肉腫、カポジ肉腫、カルチノイド癌、頭頸部癌、黒色腫、卵巣癌、中皮腫、神経膠腫、グリア芽細胞腫、神経芽細胞腫、および多発性骨髄腫のうちのいずれか(ある実施形態では、それらからなる群より選択される)である。ある実施形態では、このガンは固形腫瘍である。
【0069】
本明細書に記載される方法は、アジュバント設定で行ってもよい。「アジュバント設定(adjuvant setting)」とは、臨床設定であって、個体が、ガンの病歴を有し、一般には(必須ではないが)、手術(例えば、外科的切除)、放射線療法および化学療法を含むがこれに限定されない治療に応答性である臨床設定をいう。しかし、そのガンの既往のせいで、これらの個体は、疾患の発症のリスクにあると考えられる。「アジュバント設定」における処置または投与とは、処置の引き続く方式をいう。リスクの程度(すなわち、アジュバント設定における個体が「高リスク」または「低リスク」とみなされるとき)は、いくつかの要因、最も通常には最初に処置されるときの疾患の程度に依存する。本明細書に提供される方法は、ネオアジュバント設定で行われてもよく、すなわち、この方法は、一次治療/根治治療の前に行ってもよい。ある実施形態では、この個体は、以前に処置されている。ある実施形態では、この個体は、以前には処置されていない。ある実施形態では、この処置は、第一選択の治療である。
【0070】
本明細書に記載される方法は、ガン処置の他の方法と組み合わせて(例えば、治療設定と組み合わせて)用いられてもよい。例えば、ある実施形態では、この方法は、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含む組成物を投与することを包含する第一の治療と、第二の治療とを包含する。ある実施形態では、この二次治療は化学療法である。ある実施形態では、この二次治療は放射線療法である。ある実施形態では、この二次治療は、手術である。この第一および第二の治療は、同時または連続(すなわち、第一の治療が第二の治療の前かまたは後に行われる)のいずれで行ってもよい。ある実施形態では、この方法は、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含む組成物と、第二の化学療法剤とを個体に対して同時投与すること(同時または連続を含む)を包含し、この組成物は、個体において血管形成を阻害するのに有効であって、この組成物は、個体において細胞毒性を誘発するには不十分な量である。ある実施形態では、この第二の化学療法剤は細胞毒性剤である。
【0071】
コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含む組成物
コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体
本明細書で記載される方法は、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含む組成物の投与を包含する。本明細書で用いられる「コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体」とは、コルヒチン、チオコルヒチン、またはその誘導体の2つの(同じまたは異なる)サブユニットを含む化合物をいう。コルヒチンもしくはチオコルヒチンの「誘導体」としては、限定はしないが、コルヒチンもしくはチオコルヒチンに構造的に類似である化合物、またはコルヒチンもしくはチオコルヒチンと同じ一般的な化学クラスの化合物が挙げられる。一般には、コルヒチンまたはチオコルヒチンの誘導体またはアナログは、コルヒチンまたはチオコルヒチンの同様の生物学的、薬理学的、化学的、および/または物理的な特性(例えば、機能を含む)を保持する。ある実施形態では、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体は、少なくとも1つのチオコルヒチンサブユニットを含む。ある実施形態では、このコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体は、2つのチオコルヒチンサブユニット(本明細書において、以降では、「チオコルヒチン二量体」という)を含む。ある実施形態では、このコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体は、2つのチオコルヒチンサブユニット(本明細書において、以降では、「コルヒチン二量体」という)を含む。
【0072】
ある実施形態では、このコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体は、式(I):
【0073】
【化3】
の化合物であって、
ここで、各々のサブユニットのBは、メトキシまたはメチルチオ基であり、R2は、R3と一緒になる場合、メトキシ、ヒドロキシル、またはメチレンジオキシであり、R3は、R2と一緒になる場合、メトキシ、ヒドロキシル、またはメチレンジオキシであり、Xは連結基である。
【0074】
広汎な種々の架橋基を用いて、連結基Xを導入してもよい。当業者は、二量体のコルヒチンまたはチオコルヒチンの単量体成分は、単一の反応性アミノ基を有すると理解される;任意の他の反応性(求核性)基が中間体に存在する場合、それらは、当該分野で周知の基を用いて容易に保護され得る。保護基の例については、例えば、Greene、T.W.およびP.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis、第3版、Wiley:New York,1999(その内容が、その全体が参照によって本明細書に援用される)を参照のこと。従って、アミン官能基と反応性の広範な種々の架橋基が使用されてもよい。
【0075】
ある実施形態では、連結基Xは、少なくとも1つの炭素原子を含む。例えば、市販の(Sigma−Aldrich)試薬塩化マロニル、Cl−C(O)−CH2−C(O)−Clを用いて、X基が−CH2−であるコルヒチン二量体を形成してもよい。同様に、種々の長さの他のジアシル塩化物を用いて、所望の長さのX基を形成してもよい。例えば、式(II)では、n=8およびYがCH2である場合、市販の(Sigma−Aldrich)試薬ドデカンジオイル二塩化物、Cl−C(O)−(CH2)10−C(O)−Clを用いて、X基が−(CH2)10−である二量体を合成してもよい。YがNHでありn=1である基については、試薬3−イソシアナトプロパノイル塩化物(Organic Syntheses,Coll.第6巻、715頁(1988);第59巻、195頁(1979))を用いて、Xが−NH−CH2CH2−である場合、連結基Xを合成してもよい。他の周知の架橋試薬を用いて、Xリンカーを生成してもよい。当業者は、Wong,Shan S.,Chemistry of Protein Conjugation and Cross Linking,CRC Press:Boca Raton,1991、詳細には、アミノ基反応剤に関する、第2章、セクションIV(B)、第33〜38頁に;アミノ基反応剤架橋剤に関する、第4章、セクションII、第75〜103頁に、ならびにアミノ含有化合物を架橋するために適切な試薬および手順についての架橋試薬のための手順および分析に関する、第7章、209〜220頁に関する。上述のWongの引用文献の全内容、および詳細には列挙される特定のセクションは、参照によって本明細書に援用される。
【0076】
ある実施形態では、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体は、式(II)の化合物:
【0077】
【化4】
であって、
ここでB1は、メトキシ基またはメチルチオ基であり、B2はメトキシ基、またはメチルチオ基であり、nは0〜8の整数であり、YはCH2基であるか、またはnが1である場合は、式NHの基であってもよい。
【0078】
ある実施形態では、nは、0、1、2、3、4、5、6、7または8のいずれか(ある実施形態では、それからなる群より選択される)である。ある実施形態ではnは1である。ある実施形態では、nは1であり、YはNHである。ある実施形態ではnは2である。
【0079】
ある実施形態では、B1およびB2は両方ともメトキシ基である。ある実施形態では、B1およびB2は両方ともメチルチオ基である。ある実施形態では、B1はメトキシ基であり、かつB2がメチルチオ基である。ある実施形態では、B1はメチルチオ基であり、かつB2がメトキシ基である。ある実施形態では、このコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体は、IDN5404、IDN5676、IDN5800およびIDN5801のいずれか(ある実施形態では、それからなる群より選択される)である。
【0080】
ある実施形態では、この化合物は、チオコルヒチン二量体IDN5404である。IDN5404は、式(III):
【0081】
【化5】
の化合物である。
【0082】
ある実施形態では、この化合物は、チオコルヒチン二量体IDN5676である。IDN5676は、式(IV):
【0083】
【化6】
の化合物である。
【0084】
生体適合性ポリマーおよびキャリアタンパク質
ある実施形態では、本明細書に記載されるコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体組成物はさらに、キャリアタンパク質などの生体適合性ポリマーを含む。
【0085】
本明細書において用いる場合、「生体適合性」という用語は、その物質が導入される生物学的な系に対して、感知できるほど有害な方式で変更も影響もしない物質をいう。生体適合性のポリマーとしては、天然に存在するかまたは合成の生体適合性の物質、例えば、タンパク質、ポリヌクレオチド、ポリサッカライド(例えば、デンプン、セルロース、デキストラン、アルギン酸塩、キトサン、ペクチン、ヒアルロン酸など)、および脂質が挙げられる。適切な生体適合性ポリマーとしては例えば、天然に存在するかまたは合成のタンパク質、例えば、アルブミン、インスリン、ヘモグロビン、リゾチーム、免疫グロブリン、α−2−マクログロブリン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、フィブリノーゲン、カゼインなど、ならびにそれらの任意の2つ以上の組み合わせが挙げられる。合成のポリマーとしては、例えば、ポリアルキレングリコール(例えば、直鎖または分枝鎖)、ポリビニルアルコール、ポリアクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリアクリル酸、ポリエチルオキサゾリン、ポリアクリルアミド、ポリイソプロピルアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリラクチド/グリコリドなど、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0086】
「タンパク質」という用語は、任意の長さ(全長またはフラグメントを含む)のアミノ酸のポリペプチドもしくはポリマーであって、直鎖であっても、分枝であってもよく、修飾アミノ酸を含んでもよく、および/または非アミノ酸で中断されてもよいアミノ酸のポリペプチドもしくはポリマーをいう。この用語はまた、天然に、または介入によって修飾されているアミノ酸ポリマーを包含する;例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または任意の他の操作もしくは修飾。この用語内にはまた、例えば、アミノ酸の1つ以上のアナログ(例えば、天然でないアミノ酸などを含む)を含むポリペプチド、ならびに当該分野で公知の他の修飾も包含される。本明細書に記載されるタンパク質は、天然に存在してもよく、すなわち、天然の供給源(例えば、血液)から得られても、もしくは誘導されても、または合成されてもよい(例えば、化学的に合成されるか、または組み換えDNA技術によって合成される)。
【0087】
適切なキャリアタンパク質の例としては、血液または血漿で通常見出されるタンパク質が挙げられ、このタンパク質としては限定はしないが、アルブミン、IgAを含む免疫グロブリン、リポタンパク質、アポリポタンパク質B、α酸糖タンパク質、β−2−マクログロブリン、サイログロブリン、トランスフェリン、フィブロネクチン、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子などが挙げられる。ある実施形態では、このキャリアタンパク質は、非血液タンパク質、例えば、カゼイン、α−ラクトアルブミンおよびβラクトグロブリンである。キャリアタンパク質は、天然に由来してもよいし、または合成的に調製されてもいずれでもよい。ある実施形態では、このキャリアタンパク質は、アルブミン、例えば、血清アルブミンである。ヒト血清アルブミン(HSA)は、Mr65Kという高溶解性の球状タンパク質であって、585アミノ酸からなる。HSAは、血漿中で最も豊富なタンパク質であって、ヒト血漿の膠質浸透圧の70〜80%を占める。HSAのアミノ酸配列は、全部で17のジスルフィド架橋、1つの遊離のチオール(Cys34)、および単一のトリプトファン(Trp214)を含む。HSA溶液の静脈内使用は、乏血性(循環血液量減少性)ショックの予防および処置について(例えば、Tullis,JAMA,237,355〜360,460〜463,(1997))およびHouserら、Surgery,Gynecology and Obstetrics,150,811〜816(1980)を参照のこと)、および新生児高ビリルビン血症の処置において交換輸血と組み合わせて(Finlayson,Seminars in Thrombosis and Hemostasis,6,85〜120,(1980)を参照のこと)指示されている。ウシ血清アルブミンなどの他のアルブミンも考慮される。このような非ヒトアルブミンの使用は、例えば、獣医学の動物(家庭用ペットおよび畜産動物を含む)などの非ヒト動物において、これらの組成物の使用の状況で適切であり得る。
【0088】
ヒト血清アルブミン(HSA)は、複数の疎水性結合部位(脂肪酸について全部で8つ、HSAの内因性リガンド)を有し、多様なセットの薬物、特に中性および負に荷電された疎水性化合物に結合する(Goodmanら、The Pharmacological Basis of Therapeutics,第9版、McGraw−Hill New York(1996))。2つの高親和性結合部位が、HSAのサブドメインIIAおよびIIIAにおいて提唱されており、これは、極めて細長い疎水性のポケットであって、表面近くに荷電したリジンおよびアルギニン残基を有し、これが極性リガンドの特徴について付着ポイントとして機能する(例えば、Fehskeら、Biochem.Pharmacol.,30,687〜92(1981)、Vorum,Dan.Med.Bull.,46,379〜99(1999)、Kragh−Hansen,Dan.Med.Bull.,1441,131〜40(1990)、Curryら、Nat.Struct.Biol.,5,827〜35(1998),Sugioら、Protein.Eng.,12,439〜46(1999),Heら、Nature,358,209〜15(1992)、およびCarterら、Adv.Protein.Chem.,45,153〜203(1994)を参照のこと)。
【0089】
例として、キャリアタンパク質をさらに下に記載する。この説明は一般に生体適合性ポリマーにあてはまることが理解される。
【0090】
組成物中のキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)は一般に、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体のキャリアとして機能し、すなわち組成物中のキャリアタンパク質は、キャリアタンパク質を含まない組成物に比較して、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を水性媒体中により容易に懸濁可能にさせるか、または懸濁の維持を補助する。これによって、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を安定化するための毒性溶媒の使用が回避され得、それによって、それらの毒性溶媒によって生じる1つ以上の副作用が減少し得る。ある実施形態では、この組成物は、界面活性剤を実質的に含まず、すなわち、この組成物中の界面活性剤の量は、この組成物が個体に投与されるとき、その個体において1つ以上の影響を生じるには不十分である。ある実施形態では、この組成物は界面活性剤を含まない。
【0091】
ある実施形態では、キャリアタンパク質は、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体に会合され、すなわち、この組成物は、キャリアタンパク質会合したコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含む。「会合(association)」または「会合した、会合された(associated)」とは本明細書において一般的な意味で用いて、水性組成物におけるコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体の挙動および/または特性に影響するキャリアタンパク質をいう。例えば、このキャリアタンパク質およびコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体は、このキャリアタンパク質が、キャリアタンパク質なしの組成物に比較して、水性媒体中でコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体をさらに容易に懸濁可能にさせる場合、「会合した」状態であるとみなされる。別の例では、このキャリアタンパク質およびコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体は、このキャリアタンパク質が水性懸濁液中でコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を安定化させる場合、会合されている。例えば、キャリアタンパク質およびコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体は、本明細書にさらに記載される、粒子またはナノ粒子中に存在してもよい。
【0092】
コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体は、長期間にわたって、例えば、少なくとも約0.1、0.2、0.25、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、24、36、48、60または72時間のいずれかにわたって、水性媒体中に(例えば、可視の沈澱も沈降もなく)懸濁されたままである場合、水性懸濁液中で「安定である」。この懸濁液は一般には、ただし必須ではないが、個体(例えば、ヒト)に対する投与に適切である。懸濁液の安定性は一般には(ただし必須ではないが)貯蔵温度(例えば、室温(例えば、20〜25℃)または冷蔵条件(例えば、4℃))で向上される。例えば、懸濁液は、懸濁物の調製の約15分後に裸眼で、または1000倍の光学顕微鏡で見た場合、可視の凝結も粒子凝集も示さない場合、貯蔵温度で安定である。安定性は、約40℃より高い温度のような、加速された試験条件下で評価してもよい。
【0093】
この組成物中のキャリアタンパク質およびコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体は、種々の方式で会合されてもよい。例えば、ある実施形態では、このキャリアタンパク質は、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体と混合される。ある実施形態では、このキャリアタンパク質は、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体をカプセル化または封入する。ある実施形態では、このキャリアタンパク質は、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体に結合される(例えば、非供給結合される)。ある実施形態では、この組成物は、上記の局面のうち1つ以上を示し得る。
【0094】
ある実施形態では、この組成物は、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体およびキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)を含む(種々の実施態様では、本質的にそれからなる)粒子(例えば、マイクロ粒子またはナノ粒子)を含む。ある実施形態では、このコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体は、キャリアタンパク質(例えば、アルブミン)でコーティングされる。ある実施形態では、この組成物は、ほぼ900、800、700、600、500、400、300、200および100nm以下のいずれかなどの、ナノ粒子(すなわち、約1000ナノメートル(nm)以下の平均(averageまたはmean)直径を有する粒子)を含む。ある実施態様では、この組成物中のナノ粒子の平均直径は、約200nm以下である。ある実施形態では、この組成物中のナノ粒子の平均直径は、約20〜約400nmである。ある実施形態では、このナノ粒子の平均直径は、約40〜約200nmである。ある実施形態では、このナノ粒子は無菌濾過可能である。
【0095】
本明細書に記載される粒子(例えば、マイクロ粒子またはナノ粒子)は、乾燥処方物(例えば、凍結乾燥組成物)で存在してもよいし、または生体適合性媒体中に懸濁されてもよい。適切な生体適合性媒体としては限定はしないが、水、緩衝化水性媒体、生理食塩水、緩衝化生理食塩水、必要に応じて緩衝化されたアミノ酸の溶液、必要に応じて緩衝化されたタンパク質の溶液、必要に応じて緩衝化された糖の溶液、必要に応じて緩衝化されたビタミンの溶液、必要に応じて緩衝化された合成ポリマー溶液、脂質含有エマルジョンなどが挙げられる。
【0096】
本明細書に記載される組成物中のキャリアタンパク質の量は、組成物中の薬剤および他の成分に依存して変化する。ある実施形態では、この組成物は、例えば、安定なコロイド状懸濁液(例えば、マイクロ粒子またはナノ粒子の安定な懸濁液)の形態で、水性懸濁液中にコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を安定化するのに十分な量でキャリアタンパク質を含む。ある実施形態では、このキャリアタンパク質は、水性媒体中のコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体の沈降速度を減じる量である。粒子含有組成物については、キャリアタンパク質の量はまた、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体の粒子のサイズおよび密度に依存する。
【0097】
ある実施形態では、このキャリアタンパク質は、水性媒体中でコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を特定の濃度で安定化するのに十分な量で存在する。例えば、組成物中のコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体の濃度は、約0.01〜約100mg/mlであって、これには、例えば、約0.01〜約50mg/ml、約0.1〜約50mg/ml、約1〜約10mg/ml、約2〜約8mg/ml、約4〜約6mg/ml、約5mg/mlのいずれかを包含する。ある実施形態では、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体の濃度は、少なくとも約0.01mg/ml、0.03mg/ml、0.05mg/ml、0.08mg/ml、0.1mg/ml、0.3mg/ml、0.5mg/ml、0.8mg/ml、1mg/ml、1.3mg/ml、1.5mg/ml、2mg/ml、3mg/ml、4mg/ml、5mg/ml、6mg/ml、7mg/ml、8mg/ml、9mg/ml、10mg/ml、15mg/ml、20mg/ml、25mg/ml、30mg/ml、40mg/ml、および50mg/mlのいずれかである。ある実施形態では、このキャリアタンパク質は、界面活性剤の使用を回避する量で存在し、その結果この組成物は界面活性剤を含まないかまたは実質的に含まない。
【0098】
ある実施形態では、この組成物は、液体型であり、約0.1%〜約50%(w/v)(例えば、約0.5%(w/v)、約5%(w/v)、約10%(w/v)、約15%(w/v)、約20%(w/v)、約30%(w/v)、約40%(w/v)、または約50%(w/v))のキャリアタンパク質を含む。ある実施形態では、この組成物は、液体型で、約0.5%〜約5%(w/v)のキャリアタンパク質を含む。
【0099】
ある実施形態では、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体に対するキャリアタンパク質、例えば、アルブミンの重量比は、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体の十分な量が細胞に結合するか、または細胞によって輸送されるような比である。ある実施形態では、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体に対するキャリアタンパク質、例えば、アルブミンの重量比(w/w)は、約0.01:1〜約100:1、約0.02:1〜約50:1、約0.05:1〜約20:1、約0.1:1〜約20:1、約1:1〜約18:1、約2:1〜約15:1、約3:1〜約12:1、約4:1〜約10:1、約5:1〜約9:1、または約9:1である。ある実施形態では、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体に対するキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)の重量比(w/w)は、およそ18:1以下、15:1以下、14:1以下、13:1以下、12:1以下、11:1以下、10:1以下、9:1以下、8:1以下、7:1以下、6:1以下、5:1以下、4:1以下、および3:1以下のいずれかである。
【0100】
ある実施形態では、この組成物は、チオコルヒチン二量体(例えば、IDN5404またはIDN5676)およびアルブミンを含む(種々の実施形態では、本質的にそれからなる)粒子(例えば、マイクロ粒子またはナノ粒子)を含む。この粒子(例えば、マイクロ粒子またはナノ粒子)は、約10、9、8、7、6、5、4、3、2または1ミクロン以下という平均(averageまたはmean)直径を有してもよい。ある実施形態では、この粒子は、ナノ粒子、すなわち、約1000ナノメートル(nm)未満の粒子である。例えば、このナノ粒子は、約900、800、700、600、500、400、300、200および100nmのいずれか以下であってもよい。ある実施形態では、このナノ粒子の平均直径は、約200nm以下である。ある実施形態では、このナノ粒子の平均直径は、約20〜約400nmである。ある実施形態では、このナノ粒子の平均直径は、約40〜約200nmである。ある実施形態では、この粒子は滅菌濾過可能である。
【0101】
ある実施形態では、このチオコルヒチン二量体(例えば、IDN5404またはIDN5676)は、アルブミンでコーティングされる。ある実施形態では、チオコルヒチン二量体(例えば、IDN5404またはIDN5676)に対するアルブミンの重量比(w/w)は、約0.01:1〜約100:1、約0.02:1〜約50:1、約0.05:1〜約20:1、約0.1:1〜約20:1、約1:1〜約18:1、約2:1〜約15:1、約3:1〜約12:1、約4:1〜約10:1、約5:1〜約9:1、および約9:1のいずれかである。ある実施形態では、チオコルヒチン二量体に対するアルブミンの重量比は、およそ18:1以下、15:1以下、14:1以下、13:1以下、12:1以下、11:1以下、10:1以下、9:1以下、8:1以下、7:1以下、6:1以下、5:1以下、4:1以下、および3:1以下のいずれかである。
【0102】
ある実施形態では、チオコルヒチン二量体(例えば、IDN5404またはIDN5676)およびアルブミンを含む粒子(例えば、マイクロ粒子またはナノ粒子)は、水性媒体(例えば、アルブミン含有水性媒体)に懸濁される。例えば、この組成物は、チオコルヒチン二量体(例えば、IDN5404またはIDN5676)含有粒子(例えば、マイクロ粒子またはナノ粒子)のコロイド状懸濁液であってもよい。ある実施形態では、この組成物は、チオコルヒチン二量体(例えば、IDN5404またはIDN5676)含有粒子の水性懸濁液に再構成され得る乾燥組成物(例えば、凍結乾燥組成物)である。ある実施形態では、この組成物中のチオコルヒチン二量体(例えば、IDN5404またはIDN5676)の濃度は、約0.1〜約100mg/mlであって、これには、例えば、約0.1〜約50mg/ml、約0.1〜約20mg/ml、約1〜約10mg/ml、約2〜約8mg/ml、約4〜約6mg/ml、および約5mg/mlのいずれかを包含する。ある実施形態では、IDN5404またはIDN5676の濃度は、少なくとも約1.3mg/ml、1.5mg/ml、2mg/ml、3mg/ml、4mg/ml、5mg/ml、6mg/ml、7mg/ml、8mg/ml、9mg/ml、10mg/ml、15mg/ml、20mg/ml、25mg/ml、30mg/ml、40mg/ml、および50mg/mlのいずれかである。
【0103】
ある実施形態では、この組成物は、IDN5404またはIDN5676のナノ粒子処方物(本明細書において以降では、Nab−5404またはNab−5676という)を含む。Nab−5404およびNab−5676は、ヒト血清アルブミンによって安定化された、それぞれIDN5404およびIDN5676のナノ粒子処方物である。これらのナノ粒子処方物は、米国特許第5,916,596号および米国特許出願公開第2005/0004002号に記載の方法によって生成され得る。適切な水性媒体、例えば、0.9%塩化ナトリウム注射液または5%デキストロース注射液に分散させる場合、Nab−5404(またはNab−5676)は、チオコルヒチン二量体の安定なコロイド状懸濁液を形成する。コロイド状懸濁液中の粒子のサイズ(すなわち、平均直径)は、20nm〜8ミクロンにおよんでもよく、好ましい範囲は約20〜400nmである。HSAは水中で自由に溶解するので、Nab−5404(またはNab−5676)は、例えば、約2mg/ml〜約8mg/ml、約5mg/mlを含む、希(0.1mg/mlのIDN5404またはIDN5676)〜濃(20mg/mlのIDN5404またはIDN5676)におよぶ広範な濃度で再構成され得る。ある実施形態では、IDN5404またはIDN5676の濃度は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19および20mg/mlのいずれかである。
【0104】
薬学的組成物、単位用量およびキット
コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含む薬学的組成物も本明細書で提供される。この薬学的組成物は、例えば、全身または局所の投与を含む、本明細書で記載される種々の投与方式で適切であり得る。薬学的組成物は、点眼、注射溶液の形態でも、または吸入に適切な形態(口または鼻のいずれかを通じて)、または経口投与であってもよい。本明細書に記載される薬学的組成物は、単位投薬量であっても、または複数回の剤形でパッケージングされてもよい。ある実施形態では、この組成物は、ヒトへの投与に適切である。ある実施形態では、この組成物は、獣医学の状況、家庭内のペットおよび畜産動物においてのように、哺乳動物に対する投与に適切である。この組成物には広範な種々の適切な処方物がある(例えば、米国特許第5,916,596号および同第6,096,331号を参照のこと)。
【0105】
ある実施形態では、この薬学的組成物は、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体、キャリアタンパク質、および眼内注射に適切な薬学的に受容可能なキャリアを含む。ある実施形態では、この薬学的組成物は、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体、キャリアタンパク質および眼への局所適用に適切な薬学的に受容可能なキャリアを含む。ある実施形態では、薬学的組成物は、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体、キャリアタンパク質、および動脈内注射に適切な薬学的に受容可能なキャリアを含む。
【0106】
この薬学的組成物は一般に、無菌および実質的に等張性の組成物として処方される。注射のためには、この薬学的組成物は、溶液の形態中に、例えば、生理学的に適合する緩衝液、例えば、ハンクス液またはリンゲル液中にあってもよい。この薬学的組成物はまた、固体型であってもよく、使用の直前に再溶解または再懸濁されてもよい。凍結乾燥組成物も含まれる。
【0107】
経口投与については、薬学的組成物は、薬学的に受容可能な賦形剤、例えば、結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、ラクトース、微結晶性セルロースまたはリン酸水素カルシウム);潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、滑石またはシリカ);崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプンまたはデンプングリコール酸ナトリウム);または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)を用いて従来の方法によって調製された例えば、錠剤またはカプセルの形態をとってもよい。経口投与のための液体調製物は、例えば、溶液、シロップもしくは懸濁液の形態をとってもよく、またはそれらは、使用前に水または他の適切なビヒクルとの構成のための乾燥産物として与えられてもよい。このような液体調製物は、薬学的に受容可能な添加物、例えば、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体または水素化食用脂);乳化剤(例えば、レシチンまたはアカシア);非水性ビヒクル(例えば、アチオンド(ationd)オイル、油状エステル、エチルアルコール、または分画植物油);および防腐剤(例えば、メチルまたはプロピル−p−ヒドロキシベンゾエートまたはソルビン酸)を用いて従来の手段によって調製され得る。この調製物はまた、緩衝塩、香味料、着色料、および甘味料を必要に応じて含んでもよい。
【0108】
本発明は、ある実施形態では、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体、キャリアタンパク質、および眼への投与に適切な薬学的に受容可能なキャリアを含む組成物を提供する。このような薬学的なキャリアは、無菌液、例えば水およびオイルであってもよく、オイルとしては、石油、動物、植物または合成に由来する油、例えば、ピーナツ油、ダイズ油、鉱油、などの油が挙げられる。生理食塩水溶液および水性のデキストロース、ポリエチレングリコール(PEG)およびグリセロール溶液も、特に注射溶液のための液体キャリアとして使用されてもよい。適切な薬学的賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、モルト、コメ、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、グリセロール、プロピレン、水などが挙げられる。薬学的組成物は、必要に応じて、また、少量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝化剤を含んでもよい。この組成物の成分は、徐放性の分子を得るためにポリマーまたはフィブリン接着剤中に包み込まれてもよい。これらの組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、軟膏、ゲル、または他の固体もしくは半固体の組成物などの形態をとってもよい。この組成物は代表的には、4.5〜8.0の範囲のpHを有する。この組成物はまた、眼の眼房水および眼の組織と適合する浸透価を有するように処方されなければならない。このような浸透価は一般には、水1キログラムあたり約200〜約400ミリオスモル(「mOsm/kg」)の範囲であるが、好ましくは約300mOsm/kgである。
【0109】
ある実施形態では、この組成物は、静脈内、腹腔内、または硝子体内の注射に適した薬学的組成物として慣用的な手順に従って処方される。代表的には、注射用組成物は、無菌の等張性水性緩衝液中の溶液である。必要に応じて、この組成物はまた、安定化剤および注射部位への疼痛を緩和するリグノカインなどの局所麻酔薬を含んでもよい。一般には、この成分は、別々に、または単位剤形で一緒に混合されるかのいずれかで、例えば、乾燥された凍結乾燥粉末または水なしの濃縮物として、密閉してシールされた容器、例えば、アンプルまたは子袋(sachette)(活性剤の量を示す)中で供給される。この組成物がインフュージョンによって投与される場合、この組成物は、滅菌の薬学的等級の水または生理食塩水を含むインフュージョンボトルで分注されてもよい。この組成物が注射によって投与される場合、注射または生理食塩水のための滅菌水のアンプルは、この成分が投与前に混合され得るように提供され得る。
【0110】
この組成物はさらに、さらなる成分、例えば、防腐剤、緩衝液、等張化剤、抗酸化剤および安定化剤、非イオン性湿潤剤または清澄剤、増粘剤などを含んでもよい。
【0111】
溶液中での使用に適切な防腐剤としては、ポリクオタニウム−1、塩化ベンザルコニウム、チメロサール、クロロブタノール、メチルパラベン、プロピルパラベン、フェニルエチルアルコール、エデト酸二ナトリウム、ソルビン酸、塩化ベンゼトニウムなどが挙げられる。代表的には(ただし必須ではないか)このような防腐剤は、0.001%〜1.0重量%のレベルで使用される。
【0112】
適切な緩衝液は、ホウ酸、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸水素カリウム、ホウ酸ナトリウムおよびホウ酸カリウム、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウムなどを、pHを約pH6〜pH8、好ましくはpH7〜pH7.5に維持するのに十分な量で含む。
【0113】
適切な等張化剤は、眼科溶液の塩化ナトリウム当量が0.9±0.2%の範囲であるように、デキストラン40、デキストラン70、デキストロース、グリセリン、塩化カリウム、プロピレングリコール、塩化ナトリウムなどである。
【0114】
適切な抗酸化剤および安定化剤としては、亜硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、チオ尿素などが挙げられる。適切な湿潤剤および清澄剤としては、ポリソルベート80、ポリソルベート20、ポリオキサマー282およびチロキサポールが挙げられる。適切な増粘剤としては、デキストラン40、デキストラン70、ゼラチン、グリセリン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルプロピルセルロース、ラノリン、メチルセルロース、ペトロラタム、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。
【0115】
単純な水溶液の粘度よりも大きい粘度を有する局所組成物を得るための粘度増強剤の使用は、標的組織による活性な化合物の眼の吸収を増大するか、または眼での保持時間を延長するために所望され得る。このような粘度上昇剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、または当業者に公知の他の薬剤が挙げられる。このような薬剤は代表的には、0.01重量%〜2重量%のレベルで使用される。
【0116】
本明細書に記載される組成物はまた、組成物生物の特性を改善するために他の薬剤、賦形剤、または安定化剤を含んでもよい。例えば、ナノ粒子の負のゼータ電位を増大することによって安定性を増大するために、特定の負に荷電された成分を追加してもよい。このような負に荷電された成分としては限定はしないが、グリココール酸、コール酸、ケノデオキシコール酸、タウロコール酸、グリコケノデオキシコール酸、タウロケノデオキシコール酸、リトコール酸、ウルソデオキシコール酸、デヒドロコール酸などからなる胆汁酸の胆汁酸塩;以下のホスファチジルコリンを含むレシチン(卵黄)ベースのリン脂質を含むリン脂質が挙げられる:パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン、パルミトイルリノールオイルホスファチジルコリン、ステアロイルリノールオイルホスファチジルコリン、ステアロイルオレオイルホスファチジルコリン、ステアロイルアラキドイルホスファチジルコリンおよびジパルミトイルホスファチジルコリン。他のリン脂質としては、L−α−ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、水素化ソイホスファチジルコリン(HSPC)、および他の関連の化合物が挙げられる。負に荷電した界面活性剤または乳化剤、例えば、コレステリル硫酸ナトリウムなども、添加物として適切である。
【0117】
コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体の組成物の単位剤形、例えば、約0.1mg〜約50mg(例えば、約0.2mg〜約50mg、約0.5mg〜約30mg、約1mg〜約20mg、または約15mgを含む)のコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含む単位投薬量も提供される。「単位剤形」という用語は、個体にとって単位投薬量として適切な物理的に別個の単位であって、各々の単位が、適切な薬学的なキャリア、希釈剤または賦形剤と組み合わせて、所望の治療効果を生じるように計算された活性物質の所定の量を含む単位をいう。これらの単位剤形は、単一または複数の単位投薬量に適切なパッケージに保管されてもよく、そしてまたさらに滅菌されてシールされてもよい。ある実施形態では、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体および眼内注射に適切なキャリアタンパク質の単位剤形が提供される。ある実施形態では、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体および眼への局所適用に適切なキャリアタンパク質の単位剤形が提供される。ある実施形態では、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体および動脈内注射に適切なキャリアタンパク質の単位剤形が提供される。
【0118】
また、本明細書に記載される組成物を適切なパッケージに含む製品も提供される。本明細書に記載される組成物(例えば、眼科組成物)に適切なパッケージは当該分野で公知であって、これには、例えば、バイアル(例えば、密閉バイアル)、容器、アンプル、ボトル、ジャー、可塑性のパッケージ(例えば、密閉されたマイラー・バッグまたはプラスチックバッグ)などが挙げられる。これらの製品はさらに滅菌および/または密閉されてもよい。
【0119】
本発明はまた、本明細書に記載される組成物(あるいは単位剤形および/または製品)を含むキットを提供し、これはさらに本明細書に記載される使用などの、この組成物を用いる方法に対する指示(単数または複数)を備えてもよい。本明細書に記載されるキットはさらに、他の緩衝液、希釈液、フィルター、ニードル、シリンジおよび本明細書に記載の任意の方法を行うための指示を含む添付文書を含む、商業的および使用者の観点から所望される他の材料を備えてもよい。例えば、ある実施形態では、このキットは、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体、キャリアタンパク質、眼内注射に適切な薬学的に受容可能なキャリア、および以下の1つ以上を備える:緩衝液、希釈液、フィルター、ニードル、シリンジおよび眼内注射を行うための指示を含む添付文書。ある実施形態では、この薬学的組成物は、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体、キャリアタンパク質、眼内注射に適切な薬学的に受容可能なキャリア、および以下の1つ以上を備える:緩衝液、希釈液、フィルター、ニードル、シリンジおよび動脈内注射を行うための指示を含む添付文書。
【0120】
前述の発明は、理解を明確にする目的で図示および例によってある程度詳細に記載してきたが、特定のわずかな変化および改変が行われることが当業者には明白である。従って、この説明および実施例は、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0121】
(実施例1)
Nab−5404およびNab−5676のインビトロ細胞毒性活性
Nab−5404およびNab−5676の細胞毒性活性は、インビトロにおいて、MX−1乳癌、HepG2肝細胞腫、HT−29結腸癌の細胞株および正常な初代ラット肝細胞を用いて評価した。細胞を、ある範囲の漸増濃度にわたって37℃で72時間、Nab−5404およびNab−5676に曝した。生存度は、Cell Titer Blue細胞生存度アッセイ(Promega,Madison,WI)を用いて分析した。IC50は、Prismソフトウェア(GraphPad,San Diego,CA)を用いて単相指数関数的減衰式(one−phase exponential decay equation)で計算した。
【0122】
Nab−5404は、HepG2肝細胞腫細胞および初代ラット肝細胞に対して細胞毒性活性を示し、IC50はそれぞれ16および9μg/mlであった。Nab−5404およびNab−5676の両方ともMX−1細胞に対して中程度に細胞毒性であって、IC50はそれぞれ43および54μg/mlであった。HT−29細胞に対するNab−5404およびNab−5676の活性は低く、IC50はそれぞれ110および149μg/mlであった。Nab−5676は、HepG2細胞または初代ラット肝細胞において細胞毒性活性をほとんどまたは全く示さなかった。結果を表1にまとめる。
【0123】
【表1】
(実施例2)
Nab−5404およびNab−5676の抗微小管活性
Nab−5404およびNab−5676の微小管脱重合活性は、MX−1乳癌細胞株を用いて試験した。MX−1細胞を、カバースリップ上に播種して、Nab−5404またはNab−5676を用いて、0.01〜100μg/mlの濃度範囲にまたがって37℃で2時間処置した。インキュベーション後、その細胞を固定して、チューブリンおよびアクチンについて染色した。チューブリンは、モノクローナルの抗チューブリン抗体で染色し、アクチンはフルオレセイン標識ファロイジンで染色した。この微小管網目状構造を可視化して、ImagePro Software(MediaCybernetics,Inc.,Silver Spring MD)を用いて分析した。微小管脱重合活性に対するNab−5404およびNab−5676の活性についてのIC50は、Prismソフトウェア(GraphPad,San Diego,CA)を用いて計算した。
【0124】
Nab−5404およびNab−5676の両方とも強力な微小管脱重合活性を示し、算出されたIC50はそれぞれ、0.06μg/mlおよび0.12μg/mlであった(図1Aおよび図1B)。試験した最低濃度0.6μg/mlでさえ、微小管網目状構造は、Nab−5404またはNab−5676とのインキュベーションの2時間後に完全に破壊された(図2A〜図2C)。対照的に、アクチンの束は、どの薬物濃度でもNab−5404またはNab−5676によって影響されなかった。
【0125】
(実施例3)
Nab−5404およびNab−5676の抗血管形成活性
血管形成に対するNab−5404およびNab−5676の影響を研究するため、この化合物を、TCS Cell Works AngioKitモデル(TCS CellWorks Ltd.,Botolph Claydon,Buckingham UK)を用いて微小血管形成アッセイで評価した。このAngioKitモデルは、他のヒト細胞と同時培養したヒト内皮細胞を用いる。この内皮細胞は最初に、培養マトリックス内で小さい島を形成し、次に増殖をはじめ、次いで遊走期に入り、この間それらは、マトリックスから移動して、糸状の小管構造を形成する。これらは徐々に一緒になって、小管の網目状構造を形成し、これが毛細血管床を密接に模倣する(9〜11日目)。この小管は、フォン・ヴィレブランド因子、CD31(PECAM−1)およびICAM−2について陽性に染色する。
【0126】
Nab−5404およびNab−5676に加えて、公知の血管標的剤、コンブレスタチン4−リン酸塩(CA4P)を、インビトロの抗血管形成活性について試験した。TCS CellWorks AngioKitモデルを、製造業者の指示に従って用いた。上記で概説したとおり、ヒト内皮細胞を、24ウェルプレート中でヒト線維芽細胞とともに同時培養して、ある範囲の濃度(0.01〜100μg/ml)にまたがってNab−5404、Nab−5676またはCA4Pに曝した。インキュベーションの11または12日後、小管を、細胞を固定すること、およびCD31に対するモノクローナル抗体、二次抗体結合体および着色基質を用いて染色することによって可視化した。小管の長さを、ImageProソフトウェアを用いて分析して、各々の化合物のIC50を、Prismソフトウェアを用いて算出した。
【0127】
Nab−5404およびNab−5676の両方とも小管の形成を阻害し、樹立された小管を崩壊させ、このことは抗血管形成活性を示している。第一の実験では、細胞を、1日目に組成物で処置して、小管形成の阻害の分析のために12日目に染色した。第二の実験では、この細胞を8日目に処置して、11日目に染色したが、第三の実験では、細胞を11日目に処置して、12日目に染色して、樹立された小管の破壊の分析を可能にした。
【0128】
Nab−5404およびNab−5676の両方とも新しい微小血管の形成を阻害できた(図3および図4)。第二の実験ではNab−5404およびNab−5676の両方とも小管の形成を阻害、および/または樹立された小管を破壊できた(図5)。Nab−5404は、樹立された小管を破壊するのにNab−5676よりも強力であった(図6、7、および図9)。Nab−5404のIC50は、0.002μg/mlであると計算され、0.02μg/mlのIC50であるNab−5676よりも10倍強力であった。Nab−5404は、樹立された小管を破壊するのにCA4P(IC50=0.003μg/ml)と同じく有効であった(図6、図8および図9)。
【0129】
(実施例4)
Nab−5404およびNab−5676の抗腫瘍活性
Nab−5404およびNab−5676の抗腫瘍活性は、異種移植片マウスモデルで評価した。この化合物を、インビトロで2つのサイクル(第一が低投薬量スケジュール、続いて第二の高投薬量スケジュール)で、樹立されたHT−29結腸細胞腫瘍に対して試験した。イリノテカンを、この研究での陽性コントロールとして用いた。マウス(n=10)を、8つの群に分けて、Nab−5404およびNab−5676のマウスにこの化合物を静脈内注射で与えた。第一のサイクルは、0〜14日の間、4用量について3日毎にNab−5404またはNab−5676の投与からなり、続いて、第二のサイクルで、これは、15〜30日の間、4用量について3日毎にNab−5404またはNab−5676の投与からなった。イリノテカンは、4用量について3日ごとに60mg/kgの用量での静脈内注射で投与した。個々の群は、表2に示しており、ここで第一のサイクルとは、0〜14日目をいい、第二のサイクルとは15〜30日をいう。
【0130】
【表2】
図10および図11に示されるとおり、さらに低用量では、Nab−5404およびNab−5676の両方とも、Nab−5404の3.4、2.5および1.7mg/kgについては0.02、0.007、0.001というp値で、Nab−5676の3.4、2.5および1.7mg/kgについては0.04、0.003、および0.0004というp値で、腫瘍増殖を有意に阻害した。低用量でのNab−5404およびNab−5676の抗腫瘍活性によって、これらの化合物が抗血管形成活性を有することが示唆される。さらに高用量では、Nab−5676に比較してNab−5404での処置後に有意に大きい腫瘍退縮があった。体重減少データに基づいて、このモデルでのNab−5404のMTDは有意な腫瘍退縮を伴い約30mg/kgであった。
【0131】
コンブレスタチン4−リン酸塩(CA4P)も別の実験でHT−29腫瘍保有マウスに投与した。マウス(n=10)は、ビヒクルまたはCA4Pのいずれかを4用量について毎日のスケジュールで100mg/kgという報告されたMTDで用いて、腫瘍が一旦900mm3に達したとき処置した。CA4Pは、コントロールのビヒクルと相違なく、この腫瘍モデルで不活性であることが見出された(図12)。
【0132】
前述の本発明は、明確な理解という目的のために図および実施例によってある程度詳細に記載してきたが、特定のわずかな変化および改変が行われることが当業者には明らかである。従って、詳細な説明および実施例は、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【技術分野】
【0001】
本出願は、血管形成を阻害し、血管形成関連疾患を処置する方法に関する。詳細には、本出願は、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含む組成物の有効量を投与することによって、血管形成を阻害し、血管形成関連疾患を処置する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血管形成は、新しい血管が形成される、高度に調節された生物学的な過程である。血管形成が制御されないことで、多くの疾患がもたらされる。このような疾患の1つは、加齢性黄斑変性症(「AMD」)であって、黄斑および網膜色素上皮のような眼の種々の構造への新しい血管の浸潤によって特徴付けられる。血管形成が関与する別の疾患は、関節リウマチであって、関節の滑膜裏層の血管は、血管形成を受ける。新規な血管網を形成するのに加えて、内皮細胞は、因子および反応性酸素種を放出して、これがパンヌス増殖および軟骨の破壊をもたらす。未制御の血管形成はまた、糖尿病性網膜症、乾癬、再狭窄および血管新生緑内障などの疾患を伴う。
【0003】
さらに、血管形成はまた、腫瘍形成および転移にも関与する。例えば、直径が約2ミリメートルより大きくなる腫瘍は、それ自体の血管供給を得なければならず、新しい毛細血管の増殖を誘導することによって血管供給を得ることが示されている。これらの新規な血管が、腫瘍中に組み込まれた後、それらは、腫瘍増殖に必須の栄養および成長因子をもたらして、腫瘍細胞の転移を容易にする。
【0004】
血管形成を特異的に標的する抗血管形成剤が、血管形成関連の疾患を処置するために開発されている。例えば、特許文献1;特許文献2;ならびに特許文献3および特許文献4を参照のこと。さらに、確立された脈管構造を標的する薬剤(いわゆる、「血管標的薬剤(Vascular Targeting Agents)」またはVTA)も開発されている。これらの薬剤は、内皮細胞の微小管細胞骨格を選択的に不安定化すること、最終的に血管の閉塞および血流の遮断をもたらす細胞の形状における顕著な変化を生じることによって機能すると考えられる。例えば、特許文献5を参照のこと。
【0005】
チオコルヒチン二量体は、以前に記載されている疎水性化合物である。例えば、特許文献6を参照のこと。これらの化合物は、二重の作用機序を有し、すなわち、この化合物は、抗微小管活性およびトポイソメラーゼI阻害性活性の両方を有する。Raspaglioら、Biochem.Pharmacol.2005,69(1):113〜21。チオコルヒチン二量体Nab−5405およびNab−5676のナノ粒子アルブミン結合処方物が、ガンを処置するための細胞毒性化学療法剤として開発されている。例えば、Bernackiら、Proc.Amer.Assoc.Cancer Res.,第46巻,2005#2390およびPCT特許出願第PCT/US2006/006167号を参照のこと。Nab−5404は、24mg/kg(qd×5)で静脈内投与される場合、完全な腫瘍退縮を誘導し得、A121卵巣腫瘍異種移植片では治癒させることが見出された。
【0006】
本明細書に言及される全ての刊行物、特許、特許出願および公開特許出願の開示は、その全体が参照によって本明細書に援用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,919,309号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0009412号明細書
【特許文献3】国際公開第04/027027号パンフレット
【特許文献4】国際公開第05/117876号パンフレット
【特許文献5】国際公開第05/113532号パンフレット
【特許文献6】米国特許第6,627,774号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は一局面では、個体における血管形成を阻害する方法であって、この個体に対してコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体(例えば、IDN5404)を含む組成物を投与することを包含する方法を提供し、この組成物は血管形成を阻害するのに有効な量であって、かつこの組成物の量は、個体において有意な細胞毒性を誘発する程、十分ではない。ある実施形態では、個体における血管形成を阻害する方法であって、この個体に対して、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体(例えば、IDN5404)を含む組成物の有効量を投与することを包含する方法が提供され、この組成物中におけるコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体(例えば、IDN5404)の量(すなわち、1投与あたりの量)は、体表面積1m2あたりおよそ2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15mg未満のいずれかである。ある実施形態では、個体において血管形成を阻害する方法であって、この個体に対してコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体(例えば、IDN5404)を含む組成物の有効量を投与することを包含する方法が提供され、この組成物中におけるコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体(例えば、IDN5404)の量は、ほぼ0.05、0.08、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5または0.6mg/kg未満のいずれかである。ある実施形態では、この組成物は、少なくともほぼ3週毎に1回、2週毎に1回、1週に1回、1週に2回、1週に3回、1週に4回、1週に5回、1週に6回、または毎日のいずれかで投与される。ある実施形態では、この組成物は、(中断の有無はあるが)、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12ヶ月またはより長い月数のいずれか投与される。ある実施形態では、この組成物は、静脈内、眼内、動脈内、口腔内、局所または吸入の経路のいずれかを介して投与される。
【0009】
本明細書に記載される方法で用いられる組成物は、キャリアタンパク質などの生体適合性ポリマーをさらに含んでもよい。例えば、ある実施形態では、個体における血管形成を阻害する方法であって、この個体に対してキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)およびコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体(例えば、IDN5404)を含む組成物を投与することを包含する方法が提供され、この組成物は血管形成を阻害するのに有効な量であって、かつこの組成物の量は、個体において有意な細胞毒性を誘発する程、十分ではない。ある実施形態では、個体における血管形成を阻害する方法であって、この個体に対して、キャリアタンパク質(例えば、アルブミン)およびコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体(例えば、IDN5404)を含む組成物の有効量を投与することを包含する方法が提供され、この組成物中におけるコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体(例えば、IDN5404)の量は、体表面積1m2あたりおよそ2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15mg未満のいずれかである。ある実施形態では、個体において血管形成を阻害する方法であって、この個体に対してキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)およびコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体(例えば、IDN5404)を含む組成物の有効量を投与することを包含する方法が提供され、この組成物中におけるコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体(例えば、IDN5404)の量は、ほぼ0.05、0.08、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5または0.6mg/kg未満のいずれかである。ある実施形態では、このキャリアタンパク質含有組成物は、実質的に界面活性剤を含まない(例えば、含まない)。ある実施形態では、この組成物は、少なくともほぼ3週毎に1回、2週毎に1回、1週に1回、1週に2回、1週に3回、1週に4回、1週に5回、1週に6回、または毎日のいずれかで投与される。ある実施形態では、この組成物は、(中断の有無はあるが)、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12ヶ月またはより長い月数のいずれか投与される。ある実施形態では、この組成物は、静脈内、眼内、動脈内、口腔内、局所または吸入の経路のいずれかを介して投与される。
【0010】
本明細書に記載される方法で用いられる組成物は、キャリアタンパク質(例えば、アルブミン)およびコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含む粒子(例えば、マイクロ粒子またはナノ粒子)を含んでもよい。例えば、ある実施形態では、個体において血管形成を阻害する方法であって、この個体に対してキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)およびコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体(例えば、IDN5404)を含むナノ粒子を含む組成物を投与することを包含する方法が提供され、この組成物は血管形成を阻害するのに有効な量であって、かつこの組成物の量は、個体において有意な細胞毒性を誘発する程、十分ではない。ある実施形態では、個体における血管形成を阻害する方法であって、この個体に対して、キャリアタンパク質(例えば、アルブミン)およびコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体(例えば、IDN5404)を含むナノ粒子を含む組成物の有効量を投与することを包含する方法が提供され、この組成物中におけるコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体(例えば、IDN5404)の量は、体表面積1m2あたりおよそ2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15mg未満のいずれかである。ある実施形態では、個体において血管形成を阻害する方法であって、この個体に対してキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)およびコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体(例えば、IDN5404)を含むナノ粒子を含む組成物の有効量を投与することを包含する方法が提供され、この組成物中におけるコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体(例えば、IDN5404)の量は、ほぼ0.05、0.08、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5または0.6mg/kg未満のいずれかである。ある実施形態では、この組成物は、少なくともほぼ3週毎に1回、2週ごとに1回、1週に1回、1週に2回、1週に3回、1週に4回、1週に5回、1週に6回、または毎日のいずれかで投与される。ある実施形態では、この組成物は、(中断の有無はあるが)、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12ヶ月以上の月数のいずれか投与される。ある実施形態では、この組成物は、静脈内、眼内、動脈内、口腔内、局所または吸入の経路のいずれかを介して投与される。
【0011】
ある実施形態では、組成物中の粒子は、約200nm以下の平均直径を有する。ある実施形態では、この粒子含有組成物は、実質的には界面活性剤を含まない(例えば、含まない)。ある実施形態では、組成物中のコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体に対するキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)の重量比は約18:1以下、例えば、約9:1以下である。ある実施形態では、このコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体は、キャリアタンパク質(例えば、アルブミン)でコーティングされる。ある実施形態では、この組成物中の粒子は、約200nm以下の平均直径を有し、この組成物は、実質的には界面活性剤を含まない(例えば、含まない)。ある実施形態では、この組成物中の粒子(特にナノ粒子)は、約200nm以下の平均直径を有し、このコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体は、タンパク質(例えば、アルブミン)でコーティングされる。上記の特徴の他の組み合わせも考慮される。ある実施形態では、この粒子組成物は、Nab−5404である。他のコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含む粒子組成物も、上記の特徴の1つ以上を備え得る。
【0012】
本明細書に記載されるコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体は、コルヒチン、チオコルヒチンまたはその誘導体の2つ(同じまたは異なる)のサブユニットを含む。いくつかの実施形態では、このコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体は、少なくとも1つのチオコルヒチンサブユニットを含む。ある実施形態では、このコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体は、2つのチオコルヒチンサブユニットを含む。ある実施形態では、このコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体は、式(I)の化合物:
【0013】
【化1】
を含み、
ここで、各々のサブユニットにおけるBは、メトキシ基またはメチルチオ基であり、B2はR3と一緒になる場合、メトキシ、ヒドロキシル、またはメチレンジオキシであり、R3はR2と一緒になる場合、メトキシ、ヒドロキシル、またはメチレンジオキシであり、かつXは連結基である。ある実施形態では、Xは、少なくとも1つの炭素原子を含む。
【0014】
ある実施形態では、このコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体は、式(II)の化合物:
【0015】
【化2】
であって、
ここで、B1は、メトキシ基またはメチルチオ基であり、B2はメトキシ基、またはメチルチオ基であり、nは0〜8の整数であり、YはCH2基であるか、またはnが1である場合は、式NHの基であってもよい。ある実施形態では、nは、0、1、2、3、4、5、6、7または8のいずれか(例えば、それからなる群より選択される)である。ある実施形態ではnは1である。いくつかの実施形態では、nは1であり、YはNHである。ある実施形態ではnは2である。
【0016】
ある実施形態では、B1およびB2は両方ともメトキシ基である。ある実施形態では、B1およびB2は両方ともメチルチオ基である。ある実施形態では、B1がメトキシ基であり、かつB2はメチルチオ基である。ある実施形態では、B1はメチルチオ基であり、かつB2がメトキシ基である。ある実施形態では、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体は、IDN5404、IDN5676、IDN5800およびIDN5801のいずれか(ある実施形態では、それからなる群より選択される)である。ある実施形態では、このコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体はIDN5404である。ある実施形態では、このコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体はIDN5676である。
【0017】
ある実施形態では、個体において血管形成を阻害する方法であって、この個体に対して、アルブミンならびにIDN5404、IDN5676、IDN5800およびIDN5801のいずれかを含むナノ粒子を含む組成物(本明細書において以降では、それぞれ、「Nab−5404」、「Nab−5676」、「Nab−5800」、および「Nab−5801」と命名される)を投与することを包含する。ある実施形態では個体において血管形成を阻害する方法であって、この個体に対して、Nab−5404(またはNab−5676、Nab−5800、およびNab−5801のいずれか)を投与することを包含する方法が提供され、ここでNab−5404(またはNab−5676、Nab−5800、およびNab−5801のいずれか)は、血管形成を阻害するのに有効な量であって、かつNab−5404(またはNab−5676、Nab−5800、およびNab−5801のいずれか)の量は、個体において有意な細胞毒性を誘発する程、十分ではない。ある実施形態では、個体における血管形成を阻害する方法であって、この個体に対して、Nab−5404(またはNab−5676、Nab−5800、およびNab−5801のいずれか)の有効量を投与することを包含する方法が提供され、このNab−5404(またはNab−5676、Nab−5800、およびNab−5801のいずれか)の量は、体表面積1m2あたりおよそ2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15mg未満のいずれかである。ある実施形態では、個体において血管形成を阻害する方法であって、この個体に対してNab−5404(またはNab−5676、Nab−5800、およびNab−5801のいずれか)の有効量を投与することを包含する方法が提供され、このNab−5404(またはNab−5676、Nab−5800、およびNab−5801のいずれか)の量は、ほぼ0.05、0.08、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5または0.6mg/kg未満のいずれかである。ある実施形態では、この組成物は、少なくともほぼ3週毎に1回、2週ごとに1回、1週に1回、1週に2回、1週に3回、1週に4回、1週に5回、1週に6回、または毎日のいずれかで投与される。ある実施形態では、この組成物は、(中断の有無はあるが)、少なくとも約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12ヶ月以上の月数のいずれか投与される。ある実施形態では、この組成物は、静脈内、眼内、動脈内、口腔内、局所または吸入の経路のいずれかを介して投与される。
【0018】
本明細書に記載される方法は一般には、血管形成関連の疾患の処置に有用である。ある実施形態では、この血管形成関連疾患は、非腫瘍性血管形成関連疾患であって、これには、例えば、眼の疾患(例えば、加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症、または血管新生緑内障)、循環器疾患(例えば、再狭窄またはアテローム性動脈硬化症)、皮膚疾患(例えば、乾癬)および関節炎(例えば、関節リウマチ)が挙げられる。
【0019】
例えば、ある実施形態では、個体における非腫瘍性血管形成関連疾患を処置する方法であって、この個体に対して、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含む組成物を投与することを包含する方法が提供され、この組成物は非腫瘍性血管形成関連疾患を処置するのに有効な量である。ある実施形態では、この組成物の量は、個体において有意な細胞毒性を誘発する程、十分ではない。ある実施形態では、個体における非腫瘍性血管形成関連疾患を処置する方法であって、この個体に対して、キャリアタンパク質(例えば、アルブミン)およびコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体(例えば、IDN5404)を含む組成物を投与することを包含する方法が提供され、この組成物は、個体において非腫瘍性血管形成関連疾患を処置するのに有効な量である。いくつかの実施形態では、この組成物の量は、個体において有意な細胞毒性を誘発する程、十分ではない。ある実施形態では、個体における非腫瘍性血管形成関連疾患を処置する方法であって、この個体に対して、キャリアタンパク質(例えば、アルブミン)およびコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体(例えば、IDN5404)を含む粒子(例えば、ナノ粒子)を含む組成物を投与することを包含する方法が提供され、ここで、この組成物は、非腫瘍性血管形成関連疾患を処置するのに有効な量である。ある実施形態では、この組成物の量は、個体において有意な細胞毒性を誘導するのには不十分である。ある実施形態では、個体において非腫瘍性血管形成関連疾患を処置する方法であって、この個体に対して、Nab−5404(またはNab−5676、Nab−5800、およびNab−5801)を投与することを包含する方法が提供され、ここでNab−5404(またはNab−5676、Nab−5800、およびNab−5801)は、非腫瘍性血管形成関連疾患を処置するのに有効な量である。ある実施形態では、Nab−5404(またはNab−5676、Nab−5800、およびNab−5801)の量は、個体において有意な細胞毒性を誘発する程、十分ではない。
【0020】
ある実施形態では、この血管形成関連疾患は、腫瘍関連疾患であって、これにはガンおよび良性腫瘍が挙げられる。本明細書に記載の方法によって処置され得るガンとしては限定はしないが、乳癌、結腸直腸癌、直腸癌、非小細胞肺癌、非ホジキンリンパ腫(NHL)、腎細胞癌、前立腺癌、肝臓癌、膵臓癌、軟部組織肉腫、カポジ肉腫、カルチノイド癌、頭頸部癌、黒色腫、卵巣癌、中皮腫、神経膠腫、神経芽肉腫および多発性骨髄腫が挙げられる。ある実施形態では、ガンとは固形腫瘍(例えば、転移性固形腫瘍)である。例えば、ガンを処置する方法はさらに下に記載される。
【0021】
例えば、ある実施形態では、個体におけるガンを処置する方法であって、この個体に対してコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含む組成物を投与することを包含する方法が提供され、この組成物はガンを処置するのに有効な量であり、かつこの組成物の量は、個体において有意な細胞毒性を誘発する程、十分ではない。ある実施形態では、個体におけるガンを処置する方法であって、この個体に対して、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含む組成物を投与することを包含する方法が提供され、この組成物は、ガンを処置するのに有効な量であり、かつこの組成物におけるコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体の量は、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体の対応する最大耐量(maximum tolerated dose)(「MTD」)の少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、11%、12%、13%、14%または15%未満のいずれかである。ある実施形態では、個体においてガンを処置する方法であって、キャリアタンパク質(例えば、アルブミン)およびコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体(例えば、IDN5404)を含む組成物をこの個体に対して投与することを包含する方法が提供され、ここで、この組成物は、ガンを処置するのに有効な量であり、かつこの組成物の量は、個体において有意な細胞毒性を誘導するのには不十分である。ある実施形態では、個体においてガンを処置する方法であって、この個体に対して、キャリアタンパク質(例えば、アルブミン)およびコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体(例えば、IDN5404)を含む組成物を投与することを包含する方法が提供され、ここで、この組成物は、このガンを処置するのに有効な量であって、かつこの組成物におけるコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体の量は、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体の対応するMTDの少なくとも約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、11%、12%、13%、14%または15%未満のいずれかである。ある実施形態では、個体においてガンを処置する方法であって、個体に対してキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)およびコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体(例えば、IDN5404)を含む粒子(例えば、ナノ粒子)を含む組成物を投与することを包含する方法が提供され、ここで、この組成物は、ガンを処置するのに有効な量であり、この組成物の量は、個体において有意な細胞毒性を誘導するのには不十分である。ある実施形態では、個体においてガンを処置する方法であって、この個体に対して、キャリアタンパク質(例えば、アルブミン)およびコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体(例えば、IDN5404)を含む粒子(例えば、ナノ粒子)を含む組成物を投与することを包含する方法が提供され、ここで、この組成物におけるコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体の量は、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体の対応するMTDの約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、11%、12%、13%、14%または15%未満のいずれかである。ある実施形態では、個体においてガンを処置する方法であって、個体に対してNab−5404(またはNab−5676、Nab−5800、およびNab−5801)を投与することを包含する方法が提供され、ここでNab−5404(またはNab−5676、Nab−5800、もしくはNab−5801)は、ガンを処置するのに有効な量であり、かつNab−5404(またはNab−5676、Nab−5800、もしくはNab−5801)の量は、個体において有意な細胞毒性を誘発する程、十分ではない。ある実施形態では、個体においてガンを処置する方法であって、この個体に対して、Nab−5404(またはNab−5676、Nab−5800、もしくはNab−5801)を投与することを包含する方法が提供され、ここでNab−5404(またはNab−5676、Nab−5800、もしくはNab−5801)は、ガンを処置するのに有効な量であり、Nab−5404(またはNab−5676、Nab−5800、もしくはNab−5801)の量は、Nab−5404(またはNab−5676、Nab−5800、もしくはNab−5801)の対応するMTDの約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、11%、12%、13%、14%または15%未満のいずれかである。
【0022】
本明細書に記載の方法に有用である、薬学的組成物、単位用量、キットおよび製品も提供される。
【0023】
本明細書に記載される種々の実施形態の1つ、いくつか、または全ての特性を組み合わせて、本発明の他の実施形態を形成してもよいことが理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】図1Aは、MX−1乳癌細胞を用いる微小管形成に対するNab−5404の影響を示す。図1Bは、MX−1乳癌細胞を用いる微小管形成に対するNab−5676の影響を示す。
【図2】図2A〜Cは、コントロールのビヒクル(PBS、2A)、0.6μg/mlのNab−5404(2B)およびμg/ml(Nab−5676)での処置後のMX−1細胞における染色された微小管網目状構造の顕微鏡写真を示す。
【図3】図3は、微小血管/小管形成によって評価した、Nab−5404、Nab−5676およびCA4Pの抗血管形成活性を示す。細胞を1日目に種々の化合物とインキュベートして、12日目に染色した。図3A〜Dは、コントロールのビヒクル(3C)、0.01μg/mlのNab−5404(3A)、0.01μg/mlのNab−5676(3B)および0.01μg/mlのCA4P(3D)での処置後の小管形成の顕微鏡写真を示す。
【図4】0.0〜100μg/mlの濃度範囲にまたがるNab−5404、Nab−5676およびCA4Pで処置された細胞についての小管の長さの比較を示す。
【図5】図5は、微小血管/小管の形成または破壊によって評価した、Nab−5404およびNab−5676の抗血管形成活性を示す。細胞を、8日目に種々の化合物とインキュベートして、11日目に染色した。図5A〜Cは、コントロールのビヒクル(5A)、0.01μg/mlのNab−5404(5B)および0.01μg/mlのNab−5676(5C)での処置後の小管形成の顕微鏡写真を示す。図5Dは、0.0〜100μg/mlの濃度範囲にまたがるNab−5404、およびNab−5676で処置された細胞についての小管の長さの比較を示す。
【図6】図6は、微小血管/小管の形成または破壊によって評価した、Nab−5404の抗血管形成活性を示す。細胞を11日目に種々の濃度の化合物とインキュベートして、12日目に染色した。図6A〜6Fは、コントロールのビヒクル(6A)、0.001μg/mlのNab−5404(6B)、0.01μg/mlのNab−5404(6C)、0.1μg/mlのNab−5404(6D)、1μg/mlのNab−5404(6E)および10.0μg/mlのNab−5404(6F)での処置後の小管形成および破壊の顕微鏡写真を示す。
【図7】図7は、微小血管/小管の形成または破壊によって評価した、Nab−5676の抗血管形成活性を示す。細胞を、11日目に種々の濃度の化合物とインキュベートして、12日目に染色した。図7A〜7Fは、コントロールのビヒクル(7A)、0.001μg/mlのNab−5676(7B)、0.01μg/mlのNab−5676(7C)、0.1μg/mlのNab−5676(7D)、1μg/mlのNab−5676(7E)および10.0μg/mlのNab−5676(7F)での処置後の小管形成および破壊の顕微鏡写真を示す。
【図8】図8は、微小血管/小管の形成または破壊によって評価した、CA4Pの抗血管形成活性を示す。細胞を、11日目に種々の濃度の化合物とインキュベートして、12日目に染色した。図8A〜8Cは、各々0.01μg/ml、0.1μg/mlおよび1.0μg/mlのCA4Pでの処置後の小管形成および破壊の顕微鏡写真を示す。
【図9】微小血管または小管の形成または破壊によって評価した、Nab−5404、Nab−5676およびCA4Pの抗血管形成活性の比較を示す。細胞を、11日目に化合物とインキュベートして、12日目に染色した。この図は、0.0〜10μg/mlの濃度範囲におよぶ各々の濃度で処置した細胞についての小管の長さを示す。
【図10】図10は、2サイクルの低用量/高用量スケジュールを用いる、異種移植片マウスモデルにおけるHT−29腫瘍増殖に対するNab−5404の影響を示す。第一のサイクルの用量は、1.7、2.5または3.4mg/kg(0〜14日)であって;第二のサイクルの用量は、20、30または40mg/kg(15〜30日)であった。図10Aは、0〜40日目の平均腫瘍容積(n=10)を示す。図10Bは、0〜40日におよぶマウスの平均の体重減少パーセントを示す。
【図11】図11は、2サイクルの低用量/高用量スケジュールを用いる、異種移植片マウスモデルにおけるHT−29腫瘍増殖に対するNab−5676の影響を示す。第一のサイクルの用量は、1.7、2.5または3.4mg/kg(0〜14日)であって;第二のサイクルの用量は、20、30または40mg/kg(15〜30日)であった。図11Aは、0〜40日目の平均腫瘍容積(n=10)を示す。図11Bは、0〜40日におよぶマウスの平均の体重減少パーセントを示す。
【図12】図12は、異種移植片マウスモデルにおけるHT−29腫瘍増殖に対するCA4Pの影響を示す。HT−29腫瘍は、900mm3の容積に達した後に100mg/kgで処置した。図12Aは、28日目〜41日目の平均腫瘍容積(n=10)を示す;四角=ビヒクルコントロール、ひし形=CA4P処置。図12Bは、28日〜41日におよぶマウスの平均の体重減少パーセントを示す;四角=ビヒクルコントロール、ひし形=CA4P処置。
【発明を実施するための形態】
【0025】
発明の詳細な説明
本発明は、チオコルヒチン二量体を含む組成物、詳細には、チオコルヒチン二量体のアルブミン含有ナノ粒子処方物、さらに詳細には、IDN−5404のアルブミン含有ナノ粒子処方物(「Nab−5404」)およびIDN−5676のアルブミン含有ナノ粒子処方物(「Nab−5676」)が、インビトロにおける微小血管形成の阻害および樹立された微小血管の破壊に有効であるという本発明者らの観察に部分的には基づく。Trieuら、第97回、AACR Annual Meeting,Abstract No.3823。これらの活性についてのIC50値は、組成物のインビトロ細胞毒性活性に必要な値よりも有意に低い。本発明者らは、チオコルヒチン二量体を含む組成物、詳細にはチオコルヒチン二量体のアルブミン含有ナノ粒子処方物(例えば、Nab−5404およびNab−5676)が、この組成物の対応する最大耐量(MTD)よりも有意に低い用量で、インビボにおいて腫瘍増殖を阻害するのに有効であるということをさらに観察した。これらの観察によって、チオコルヒチン二量体またはそのアナログを含む組成物(例えば、コルヒチン二量体)が、その細胞毒性効果とは独立して抗血管形成活性および血管標的活性を保有するということが示唆される。有効量および非細胞毒性量で投与されるとき、この組成物は、新しい血管の増殖を選択的に標的して、標的組織において有意な細胞死を生じることなしに血流をブロックし得る。
【0026】
コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体の有効かつ非細胞毒性の量(すなわち、有意な細胞毒性を誘導するのには不十分な量)が、化合物の細胞毒性効果を最小化するために非腫瘍性の抗血管形成関連疾患を処置するために所望される。有効かつ非細胞毒性という量はまた、ガンを処置するために有利である。細胞毒性剤での伝統的な化学療法は代表的には、この薬剤の細胞毒性効果を最大にするためにこの薬剤の最大耐量と同じかまたはそれに近い用量で行われる。しかし、この高用量のスケジュールには、正常なホストの細胞の回復を可能にするために長期の処置なしの期間を要する。その間に、腫瘍細胞はまた、処置なしの期間中、増殖を再開し得る。これによって、薬物耐性の腫瘍細胞が発現するというリスクが増大し得る。コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体の非細胞毒性の用量(すなわち、量)によって、処置サイクルにおける有意な中断なしに処置して、これによって薬物耐性が発現するリスクを低下させることが可能になる。さらに、非細胞毒性用量によって、明らかな全身の毒性(例えば、体重減少)および薬物によって誘発される副作用を発症する可能性が最小限になる。
【0027】
従って、本発明は、一局面では、個体において血管形成を阻害する(樹立された血管新生を標的することを含む)方法であって、この個体に対して、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含む組成物を投与することを包含する方法を提供し、この組成物は、血管形成を阻害するのに有効な量であり、かつこの組成物の量は、個体において有意な細胞毒性を誘導するのには不十分である。ある実施形態では、この方法は、キャリアタンパク質(例えば、アルブミン)およびコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含む組成物をこの個体に投与することを包含し、この組成物は、血管形成を阻害するのに有効な量であって、かつこの組成物の量は、この個体において有意な細胞毒性を誘導するのには不十分である。
【0028】
別の局面では、本発明は、個体において非腫瘍性血管形成関連疾患を処置する方法であって、この個体に対して、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含む組成物を投与することを包含する方法を提供し、この組成物は、非腫瘍性血管形成関連疾患を治療するのに有効な量である。ある実施形態では、この方法は、個体に対して、キャリアタンパク質およびコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含む組成物を投与することを包含し、この組成物は、非腫瘍性血管形成関連疾患を処置するのに有効な量である。
【0029】
別の局面では、この方法は、個体において腫瘍関連疾患を処置する方法であって、この個体に対して、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含む組成物を投与することを包含する方法を提供し、この組成物は、腫瘍関連疾患を処置するのに有効な量であり、かつこの組成物の量は、個体において有意な細胞毒性を誘導するのには不十分である。ある実施形態では、この方法は、この個体に対してキャリアタンパク質およびコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含む組成物を投与することを包含し、この組成物は、ガンを処置するのに有効な量であって、かつこの組成物の量は、個体において有意な細胞毒性を誘導するのには不十分である。
【0030】
また、本明細書に記載される方法に有用である、薬学的組成物、単位投薬量、キット、および製品も提供される。
【0031】
「組成物(単数)(the composition)」または「組成物(複数)(compositions)」という一般的な言及には、本発明の組成物を含み、かつそれに適用可能である。本発明はまた、本明細書に記載される成分を含む薬学的組成物を提供する。
【0032】
「個体」という用語は、ヒトを含む哺乳動物である。個体としては限定はしないが、ヒト、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、げっ歯類または霊長類が挙げられる。ある実施形態では、この個体はヒトである。ある実施形態では、個体とは、血管形成または血管形成関連の疾患(単数または複数)を研究するための実験動物モデルである。
【0033】
本開示は、エナンチオマーおよびジアステレオマーを含む、本明細書に言及される化合物の全ての立体異性体を含む。立体化学が構造中で明確に示されない限り、開示される構造は、全ての可能な立体化学改変体を包含するものとする。この開示は、開示された任意のキラル化合物の全てのエナンチオマーを、実質的に純粋な左旋性または右旋性の形態のいずれかで、またはラセミ混合物で、または任意の比のエナンチオマーで包含する。この開示は、上の式で言及される化合物の任意のジアステレオマーを、実質的に純粋なジアステレオマー型で、および全ての比の混合物の形態で包含する。この開示はまた、本明細書に言及される化合物の全ての溶媒和化合物を含み、これには、本明細書に言及される化合物の全ての水和物を含む。この開示はまた、全ての多形体を含み、これには、本明細書に言及される化合物の結晶型および非結晶型を包含する。この開示はまた、本明細書に言及される化合物の全ての塩、詳細には薬学的に受容可能な塩を包含する。本明細書に開示される化合物の代謝物およびプロドラッグもこの開示に包含される。本明細書に開示される化合物の全ての使用において、この開示はまた、記載される化合物の任意のまたは全ての立体化学、エナンチオマー、ジアステレオマー、溶媒和化合物、水和物、多形性、結晶、非結晶、塩、薬学的に受容可能な塩、代謝物およびプロドラッグのバリエーションの使用を包含する。
【0034】
本明細書に記載される本発明の局面および実施形態は、局面および実施形態「〜からなる(consisting)」および/または「本質的に〜なる(consisting essentially of)」を包含することが理解される。
【0035】
血管形成を阻害する方法
本発明は一局面では、コルヒチンまたはチオコルヒチンを含む組成物(例えば、キャリアタンパク質含有組成物)を投与することによって個体における血管形成を阻害する方法を提供する。この組成物は、血管形成を阻害するのに有効である量である。しかし、投与される組成物の量は、個体において有意な細胞毒性を誘発する程、十分ではない。
【0036】
本明細書で用いられる「血管形成」とは、組織または器官において新しい血管を発生させる過程をいう。血管形成は代表的には、内皮細胞および白血球によって放出される酵素による血管の基底膜の侵食で開始する。内皮細胞は、血管の管腔を裏打ちしており、次に基底膜を通じて突出する。血管形成の刺激は、侵食された基底膜を通じて内皮細胞が遊走するように誘導する。遊走する細胞は、親の血管から「芽(sprout)」を出し、この内皮細胞はここで有糸分裂および増殖を受ける。内皮の出芽はお互いと一緒になって、ループ状毛細血管を形成して、新しい血管を作製する。
【0037】
「血管形成の阻害」とは、例えば、眼の組織、心血管の組織、皮膚組織、関節組織および腫瘍組織を含む、個体における1つ以上の組織において血管形成を軽減、邪魔または抑制することをいう。血管形成の阻害は、血管形成の過程の1つ以上の段階に影響することによって、例えば、活性化された内皮細胞の遊走および生存を低減させること、親血管からの細胞の「出芽(sprouting)」を妨げること、および/または新しい血管の形成を妨げることによって達成され得る。微小血管密度の変化も、「血管形成の阻害」という用語内に包含される。「血管形成の阻害」という用語はまた、樹立された脈管構造を破壊することを包含する。「樹立された脈管構造を破壊する」とは、血管形成によって形成された既存の脈管構造を閉塞させるか、溶解させるか、そうでなければ影響する能力をいう。脈管構造の破壊は、可逆的であっても、または不可逆的であっても、部分的であってもまたは完全であってもよい。
【0038】
従って、本明細書で提供される方法は、以下の局面の1つ以上を包含する:内皮細胞遊走を阻害(例えば、軽減、邪魔または妨げる)こと、親血管からの内皮細胞の「出芽」を阻害(例えば、軽減、邪魔または妨げる)こと、新しい血管の形成を阻害(例えば、軽減、邪魔または妨げる)こと、および血管新生によって形成された樹立された脈管構造を標的(例えば、閉塞、崩壊または破壊する)こと。ある実施形態では、個体における血管形成を阻害(例えば、軽減、邪魔または妨げる)方法が提供される。ある実施形態では、樹立された脈管構造を破壊(例えば、閉塞、溶解、そうでなければ影響を及ぼす)方法が提供される。ある実施形態では、個体の組織における微小血管の密度を低減させる方法が提供される。
【0039】
「有効量」とは、個体に対する単回または複数回の投与の際に、その個体に所望の効果をもたらす組成物の量または用量をいう。例えば、この組成物は、個体における1つ以上の組織において血管形成(例えば、血管形成の1つ以上の局面)を軽減、邪魔または妨げるのにこの組成物の量が十分な場合に、「血管形成を阻害するのに有効な量」である。処置の文脈で用いられる「有効な量」という用語は、特定の障害、状態または疾患を処置する、例えばその症状のうちの1つ以上を寛解、緩和、低減および/または遅延するのに十分な化合物または組成物の量をさす。有効な量は、インビトロおよび/またはインビボで決定され得る。血管形成を阻害するための組成物の有効な量を決定する方法は当該分野で公知である。
【0040】
ある実施形態では、この組成物の量は、眼の組織において血管形成を阻害するのに有効である。ある実施形態では、この組成物の量は、心血管系の組織において血管形成を阻害するのに有効である。ある実施形態では、この組成物の量は、皮膚組織で血管形成を阻害するのに有効である。ある実施形態では、この組成物の量は、関節組織において血管形成を阻害するのに有効である。ある実施形態では、この組成物の量は、腫瘍組織で血管形成を阻害するのに有効である。ある実施形態では、この組成物の量は、新しい血管形成を阻害するのに有効である。ある実施形態では、この組成物の量は、親血管から内皮細胞の「出芽」を阻害するのに有効である。ある実施形態では、この組成物の量は、内皮細胞の遊走を阻害するのに有効である。ある実施形態では、この組成物の量は、樹立された脈管構造を破壊するのに有効である。ある実施形態では、この組成物の量は、血管形成(例えば、血管形成の任意の1つ以上の局面)を、少なくとも約5%、10%、20%、40%、50%またはそれ以上のいずれかまで阻害するのに有効である。
【0041】
組成物は、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体が個体において有意な細胞死を生じることを可能にするのにこの組成物の量が不十分である場合、「有意な細胞毒性を誘発するには不十分な量」(「非細胞毒性量」とも呼ばれる))である。細胞毒性は、以下の1つ以上によって測定され得る。例えば、非細胞毒性量は、インビトロの細胞生存度アッセイに基づいて決定され得る。この非細胞毒性量は、インビトロの細胞生存度アッセイにおいて約50%以上の細胞死を生じるには不十分な量であり得る。ある実施形態では、この組成物の量は、インビトロの細胞生存度アッセイにおいて約40%以上、30%以上、20%以上、10%以上、5%以上、4%以上、3%以上、2%以上、または1%以上のいずれかの細胞死を生じるには不十分である。ある実施形態では、この組成物の量は、インビトロの細胞生存度アッセイにおいて任意の測定可能な細胞死を生じるには不十分である。インビトロの細胞生存度アッセイに適切な細胞としては限定はしないが、腫瘍細胞(例えば、MX−1乳癌細胞株、HepG2肝細胞腫細胞株およびHT−29結腸癌細胞株)および正常細胞(例えば、一次ラット肝細胞腫)が挙げられる。非細胞毒性量はまた、薬物毒性のインビボアッセイに基づいて決定してもよい。例えば、非細胞毒性量は、インビトロの細胞毒性アッセイにおいて試験集団の約50%以上を殺傷するには不十分な量であり得る。ある実施形態では、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体の量は、インビトロの細胞毒性アッセイにおいて試験集団の約40%以上、30%以上、20%以上、10%以上、5%以上、4%以上、3%以上、2%以上、または1%以上のいずれかの細胞死を生じるには不十分である。ある実施形態では、この組成物の量は、インビトロの薬物毒性アッセイにおいて試験集団において死滅を生じさせるには不十分である。非細胞毒性量はまた、個体において明らかな全身の毒性(例えば、体重減少)を誘発するのに必要なコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体の量に基づいて決定され得る、すなわち、この薬物の量は、明らかな全身毒性を誘発しない場合に非細胞毒性である。例えば、ある実施形態では、非細胞毒性量とは、約15%未満(例えば、約10%、8%、5%以下のいずれか未満を含む)の体重減少を誘発する量である。
【0042】
ある実施形態では、各々の投与でのこの組成物中におけるコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体の量は、体表面積1m2あたりおよそ2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14および15mg未満のいずれかである。例えば、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体の量は、体表面積1m2あたり、約0.25mg/m2〜約15mg/m2、約0.25mg/m2〜約10mg/m2、約0.25mg/m2〜約8mg/m2、約0.25mg/m2〜約4mg/m2、および約0.25mg/m2〜約2mg/m2に及んでもよい。ある実施形態では、各々の投与でのこの組成物中におけるコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体の量は、約0.05、0.08、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5または0.6mg/kg未満のいずれかである。例えば、このコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体の量は、約0.05mg/kg〜約0.5mg/kg、約0.08mg/kg〜約0.3mg/kg、および約0.1mg/kg〜約0.2mg/kgに及んでもよい。
【0043】
ある実施形態では、このコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体は、中断の有無はあるが、長期の投与期間(例えば、6ヶ月以上)にわたって薬物耐性を誘発しない量である。ある実施形態では、このコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体は、個体において有意な副作用(例えば、代表的には化学療法に伴う副作用)を誘発しない量である。代表的には、化学療法に伴う副作用としては、例えば、脱水、下痢、悪心、嘔吐、失明または錯乱および貧血が挙げられる。
【0044】
組成物の投薬頻度としては、限定はしないが、少なくともほぼ3週毎に1回、2週毎に1回、1週に1回、1週に2回、1週に3回、1週に4回、1週に5回、1週に6回、または毎日のいずれかが挙げられる。ある実施形態では、各々の投与の間の間隔は、約1週未満、例えば、ほぼ6、5、4、3、2または1日未満のいずれかである。ある実施形態では、各々の投与の間の間隔は一定である。例えば、投与は、毎日、2日毎、3日毎、4日毎、5日毎、または毎週行ってもよい。ある実施形態では、この投与は、毎日2回、毎日3回、またはより高頻度で行ってもよい。
【0045】
組成物の投与は、長期間にわたって、例えば、約1ヶ月〜約3年まで延長されてもよい。例えば、投薬レジメンは、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、18、24、30および36ヶ月のいずれかの期間にわたって延長されてもよい。ある実施形態では、投薬レジメンには中断はない。ある実施形態では、各々の投与の間の間隔は、約1週以下である。
【0046】
本明細書に記載される組成物は、限定はしないが、静脈内、腹腔内、眼内、動脈内、肺内、口腔、膀胱内、筋肉内、気管内、皮下、眼内、くも膜下腔内、経皮、経胸膜内、動脈内、局所、吸入(例えば、スプレーのミスト)、経粘膜(例えば、鼻粘膜を介して)、皮下、経皮、胃腸管、関節内、嚢内、脳室内、直腸(すなわち、坐剤を介して)、膣(すなわち、ペッサリーを介して)、頭蓋内、尿道内、肝臓内、および腫瘍内を包含する当該分野の任意の経路を介して個体に投与されてもよい。ある実施形態では、この組成物は、全身に投与される。ある実施形態では、この組成物は、局所に投与される。ある実施形態では、この組成物は、静脈内、眼内、動脈内、口腔、局所または吸入の任意の経路を解して投与される。
【0047】
この方法が、眼の組織における血管形成の阻害に関する場合、この組成物は、眼または眼の組織に直接投与されてもよい。この組成物は、点眼のように、眼に局所的に投与されてもよい。この組成物はまた、眼に対して、または眼に関連する組織に対して注射によって投与されてもよい。この組成物は、眼内注射、眼の周囲の注射、網膜下注射、硝子体内注射、経中隔注射、強膜下注射、脈絡叢内注射、房内(intracameral)注射、結膜下注射、テノン嚢下(sub−Tenon)注射、球後注射、球周囲注射、または後強膜近傍の送達を介して投与されてもよい。この組成物は、例えば、硝子体、眼房水、強膜、結膜、強膜と結膜との間の領域、網膜脈絡膜組織、網膜黄斑、または個体の眼の中かもしくはその近傍の他の領域に対して投与されてもよい。網膜薬物送達のための例示的な眼の周囲の経路の説明に関しては、Periocular routes for retinal drug delivery,Raghavaら(2004),Expert Opin.Drug Deliv.1(1):99〜114を参照のこと。この組成物はまた、インプラントとして個体に投与されてもよい。好ましいインプラントは、ある期間にわたってこの化合物を徐々に放出する、生体適合および/または生物分解性の徐放性放出処方物である。薬物送達のための眼のインプラントは当該分野で周知である。例えば、米国特許第5,501,856号、同第5,476,511号、および同第6,331,313号を参照のこと。この組成物はまた、限定はしないが、米国特許第4,454,151号、ならびに米国特許出願公開第2003/0181531号および同第2004/0058313号に記載されるイオン泳動方法を包含する、イオン泳動を用いて個体に投与されてもよい。
【0048】
血管形成関連疾患を処置する方法
本明細書に記載される方法は一般には、血管形成関連疾患の処置のために有用である。「血管形成関連疾患」とは、血管形成が疾患の一局面である疾患または障害をいう。この血管形成関連疾患は、異常な血管形成によって生じ得る。ある実施形態では、この血管形成関連疾患は、血管形成によって少なくとも一部は媒介される。ある実施形態では、血管形成は、血管形成関連疾患の発達に必須である。血管形成関連疾患は、当該分野で公知であって、これには例えば、非腫瘍性血管形成関連疾患、例えば、黄斑変性症、糖尿病性網膜症、関節リウマチ、および本明細書に記載される他の疾患が挙げられる。ある実施形態では、この血管形成関連疾患は、ガンまたは良性腫瘍などの、腫瘍関連疾患である。
【0049】
本明細書において用いる場合、「処置」とは、有益なまたは所望の臨床結果を得るためのアプローチである。本発明の目的のためには、有益または所望される臨床結果としては限定はしないが、以下のうちいずれか1つ以上が挙げられる:1つ以上の症状の軽減、疾患の程度の退縮、疾患の安定化(すなわち、悪化しない)状態、疾患の広がりの予防または遅延、疾患の発症または再発の予防または遅延、疾患進行の遅延または緩徐化、疾患状態の改善、および寛解(部分的または全体のいずれか)。「処置」とはまた、血管形成関連疾患の病理的な帰結の軽減も包含する。本発明の方法は、処置のこれらの局面のいずれか1つ以上を考慮する。
【0050】
非腫瘍性の血管形成関連疾患の処置
本明細書に記載される方法は、非腫瘍性の血管形成関連疾患の処置に有用である。
【0051】
ある実施形態では、この方法は、眼の組織における、例えば、角膜、網膜、網膜黄斑および脈絡膜における、非腫瘍性の血管形成関連疾患の処置のために有用である。この方法は一般に、盲目(blindness)、失明(loss of vision)(例えば、視力または視野の喪失)、および/または種々の眼の疾患から生じる他の結果を防ぐために有用である。ある実施形態では、加齢性黄斑変性症(AMD)を含む黄斑変性症を処置するための方法が提供される。AMDは臨床的には、網膜黄斑と呼ばれる網膜の領域における光受容細胞に対する損傷の結果として生じる、中心視野の進行性の喪失によって特徴づけられる。AMDは広義には2つの臨床的な状態に分類されている:滲出型(wet form)および非滲出型(dry form)であって、ここで非滲出型は全症例の80〜90%を構成する。この非滲出型は、網膜色素上皮(RPE)とブランチ(Brunch)膜との間に局在して堆積する網膜黄斑ドルーゼの存在によって、および過剰な光受容器萎縮を有するRPE細胞死によって特徴づけられる地図状委縮によって臨床的には特徴づけられる。滲出型AMDは重篤な失明のほぼ90%を占めており、黄斑の領域における新血管新生およびこれらの新しい血管の漏出を伴う。血液および体液の蓄積は、網膜剥離を続いて、急速な光受容器変性および視覚喪失を生じ得る。AMDの滲出型には、非滲出型が先行して非滲出型から生じることが一般に認められている。
【0052】
本明細書に提供される方法は、滲出型の黄斑変性の処置または阻害に特に有用である。眼の組織における血管形成の阻害はまた、非滲出型の黄斑変性から滲出型の黄斑変性への移行を予防または遅らせる。従って、本発明はまた、非滲出型の黄斑変性の処置のための方法を提供する。本発明はまた、限定はしないが、光受容体細胞の喪失、視覚(例えば、視力および視野を含む)の喪失および網膜剥離を含む黄斑変性の1つ以上の局面または症状を処置または予防する方法を包含する。他の関連の局面、例えば、光受容体変性、RPE変性、網膜変性、脈絡網膜の変性、(網膜)錐体変性、網膜機能不全、網膜損傷、ブランチ(Brunch)膜への傷害、RPE機能の喪失、正常な黄斑の細胞および/または細胞外基質の組織構造の完全性の喪失、網膜における細胞の機能の喪失、ならびに光受容体のジストロフィーも包含される。
【0053】
本明細書に記載の方法によって処置され得る他の非腫瘍性血管形成関連の眼の疾患としては、限定はしないが、網膜の新血管新生、角膜の新血管新生(例えば、トラコーマ、感染、炎症、移植または外傷によって生じる)、糖尿病性網膜症、糖尿病性網膜浮腫、糖尿病性網膜黄斑浮腫、虚血性網膜症、高血圧性網膜症、閉塞性網膜症、未熟児網膜症、外傷に続く新血管新生、感染に続く新血管新生、移植に続く新血管新生、網膜剥離または網膜変性に続く新血管新生、血管新生緑内障、前房および/または前房隅角の新血管新生、脈絡膜血管新生(CNV)、網膜下血管新生、水晶体後部線維増殖症、眼のヒストプラズマ症症候群、近視性変性、網膜色素線条、ブドウ膜炎、ルベオーシス、水晶体後(部)線維増殖症、眼のヒストプラズマ症および特発性中心性漿液性網脈絡膜症が挙げられる。ある実施形態では、この眼の疾患は、糖尿病性網膜症である。ある実施形態では、眼の疾患は、血管新生緑内障である。
【0054】
ある実施形態では、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、アテロームおよび血管腫などの循環器疾患(心血管系疾患)を含む血管系の疾患を処置する方法が提供される。アテローム性動脈硬化症は、慢性の血管損傷の形態であって、ここでは動脈壁における正常な血管平滑筋(VSMC)のうちある程度がその性質を変えて、アテローム斑における毛細血管の高密度の網状構造を発達させる。これらの脆弱な毛細血管が出血を生じ得、これが血液凝固をもたらし、結果として心筋への血流の低下および心発作を伴う。再狭窄は代表的には、冠動脈バイパス手術、血管内膜切除および心移植後に、詳細には、心バルーン血管形成、アテレクトミー(アテローム切除術)、レーザー切断または血管内ステント後に生じる。これは、微小血管の広範な増殖に関与する。心血管組織における血管形成の阻害によって、本明細書に提供される方法は、これらの循環器疾患を処置するために有用である。
【0055】
ある実施形態では、この方法は、関節リウマチ(関節における血管は、血管形成を受けて、軟骨に進入して破壊する広範に血管新生された組織を形成する)の処置のために有用である。関節炎組織における血管形成の阻害によって、本明細書に提供される方法は、関節リウマチを処置するために有用である。血友病の関節を処置するための方法も提供される。
【0056】
ある実施形態では、この方法は、限定はしないが、乾癬、強皮症、感染(例えば、猫引っかき病、細菌性潰瘍など)の結果としての新血管新生、および他の皮膚障害を含む血管形成関連皮膚疾患を処置するために有用である。ある実施形態では、この方法は乾癬を処置するために有用である。乾癬は、慢性皮膚疾患であって、世界中の集団の約3%で生じている。電子顕微鏡を含む組織学的研究によって、皮膚の血管形成における変更は、乾癬の顕著な特徴であることが確立されている。従って、皮膚組織における血管形成の阻害は、乾癬を処置するために有用である。
【0057】
本発明の方法によって処置され得る他の血管形成関連疾患としては限定はしないが、オスラー・ウェーバー症候群、遺伝性出血性毛細管拡張症、プラーク新血管新生、末梢血管拡張、血管線維腫、血管腫、創傷肉芽形成、子宮内膜症などが挙げられる。さらに、本発明は、鼻ポリープ、特に嚢胞性線維症患者の処置に有用である。
【0058】
血管形成関連疾患を処置する以外に、本明細書に記載される方法はまた、血管形成に関連する正常な生理学的状態の発現を調節または予防するために有用であり得る。例えば、本発明の方法は、排卵に関連する新血管新生、胚の移植、胎盤形成などを減弱するために用いられ得、従って、受胎調節の目的に有用である。
【0059】
本明細書に提供されるのは、本明細書に記載される種々の疾患を処置する方法である。ある実施形態では、個体において非腫瘍性の血管形成関連の疾患を処置する方法が提供され、この方法は、この個体に対して、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含む組成物(例えば、キャリアタンパク質を含む組成物)を投与することを包含し、この組成物は、非腫瘍性の血管形成関連疾患を処置するのに有効な量である。ある実施形態では、個体において、血管形成関連の眼の疾患(例えば、黄斑変性症、糖尿病性網膜症、または血管新生緑内障を含む)を処置する方法が提供され、この方法は、この個体に対して、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含む組成物(例えば、キャリアタンパク質を含む組成物)を投与することを包含し、ここで、この組成物は、眼の疾患を処置するのに有効な量である。ある実施形態では、循環器疾患(心血管系疾患)(例えば、再狭窄およびアテローム性動脈硬化症)を処置する方法が提供され、この方法は、この個体に対して、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含む組成物(例えば、キャリアタンパク質を含む組成物)を投与することを包含し、ここでこの組成物は、循環器疾患を処置するのに有効な量である。ある実施形態では、血管形成関連の皮膚疾患(例えば、乾癬)を処置する方法が提供され、この方法は、この個体に対して、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含む組成物(例えば、キャリアタンパク質を含む組成物)を投与することを包含し、この組成物は、この皮膚疾患を処置するのに有効な量である。ある実施形態では、関節炎(例えば、関節リウマチ)を処置する方法が提供され、この方法は、この個体に対して、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含む組成物(例えば、キャリアタンパク質を含む組成物)を投与することを包含し、この組成物は、関節炎を処置するのに有効な量である。
【0060】
ある実施形態では、このコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体組成物は、少なくともほぼ3週毎に1回、2週毎に1回、1週に1回、1週に2回、1週に3回、1週に4回、1週に5回、1週に6回、または毎日のいずれかで投与される。ある実施形態では、各々の投与の間の間隔は、約1週未満、例えば、約6、5、4、3、2または1日未満のいずれかである。ある実施形態では、各々の投与の間の間隔は一定である。例えば、この投与は、毎日、2日毎、3日毎、4日毎、5日毎、または毎週行われてもよい。ある実施形態では、この投与は、毎日2回、毎日3回、またはより高頻度で行われてもよい。この組成物の投与は、約1ヶ月から約3年など、長期間にわたって(中断の有無はあるが)延長されてもよい。例えば、投薬レジメンは、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、18、24、30および36ヶ月のいずれかの期間にわたって延長されてもよい(中断の有無はある)。ある実施形態では、投薬スケジュールに中断はない。ある実施形態では、各々の投与の間の間隔は、約1ヶ月以下である。
【0061】
血管形成を阻害することによって腫瘍関連疾患を処置する方法
本明細書に記載される方法はまた、腫瘍組織における血管形成の阻害に、ならびにガンおよび良性腫瘍などの腫瘍関連疾患を処置するために有用である。
【0062】
血管形成を阻害すること(例えば、新しい血管形成を阻害することによる、または樹立された血管を標的することによる)で、腫瘍に対して十分な栄養および酸素が供給されることを妨げて、所定のサイズを超える増殖を抑制する。血管形成は、原発性の腫瘍増殖および転移の両方に関与するので、本明細書に提供される方法は、腫瘍の腫瘍性の増殖を原発性の部位で阻害すること、および腫瘍の転移を二次的な部位で妨げることの両方を可能にする。ある実施形態では、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体は、新しい血管の形成を阻害する。ある実施形態では、このコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体組成物は、樹立された腫瘍脈管構造を破壊する。例えば、この組成物は、選択性の閉塞、溶解に有効であってもよく、そうでなければ、可逆的もしくは不可逆的、部分的もしくは完全いずれであっても、腫瘍脈管構造に影響する(時には腫瘍脈管構造を増殖する)。
【0063】
本発明は、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含む組成物の有効量を投与することによって、腫瘍関連疾患を処置する方法を提供し、この組成物の量は、有意な細胞毒性を誘発する程、十分ではない(「非細胞毒性用量」とも呼ばれる)。細胞毒性剤での伝統的な化学療法は代表的には、この薬剤の細胞毒性効果を最大にするためにこの薬剤の最大耐量と同じかまたは近い用量で行う。しかし、この高用量スケジュールには、正常なホストの細胞の回復を可能にするために長期の処置なし期間を要する。この間に、腫瘍細胞はまた、処置なし期間中に増殖を再開し得る。これによって、薬物耐性の腫瘍細胞が発現するというリスクが増大し得る。コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体の非細胞毒性の用量によって、処置サイクルにおける有意な中断なしにガンを処置することが可能になり、これによって薬物耐性が発現するリスクが低下する。
【0064】
一例を挙げるために、ガンを処置する方法をさらに本明細書に記載する。この説明は一般には、良性腫瘍を含む全ての腫瘍関連疾患にあてはまることが理解される。
【0065】
ある実施形態では、個体においてガンを処置する方法が提供され、この方法は、この個体に対して、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含む組成物を投与することを包含し、この組成物は、ガンを処置するのに有効な量であり、かつ1投与あたりのこの組成物中のコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体の量は、同じもしくは類似の投薬スケジュール、または伝統的な投薬スケジュールに従う、同じ(または類似の)処方物中の同じ(または類似の)コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体についての対応するMTDの約1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%。13%、14%または15%未満のいずれかである。ある実施形態では、1投与あたりのこの組成物中のコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体の量は、対応するMTDの約1%〜約15%であって、これには、例えば、この対応するMTDの約1%〜約12%、約1%〜約10%、約1%〜約8%、約1%〜約5%、約1%〜約3%のいずれかを含む。コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体についてのMTDは公知であるか、または当業者によって容易に決定され得る。例えば、毎週のスケジュールに従うNab−5404についてのMTDは、体表面積あたり約90〜100mg/m2である。
【0066】
ある実施形態では、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体組成物は、少なくともほぼ3週毎に1回、2週毎に1回、1週に1回、1週に2回、1週に3回、1週に4回、1週に5回、1週に6回、または毎日のいずれかで投与される。ある実施形態では、各々の投与の間の間隔は、約1週未満、例えば、約6、5、4、3、2または1日未満のいずれかである。ある実施形態では、各々の投与の間の間隔は一定である。例えば、この投与は、毎日、2日毎、3日毎、4日毎、5日毎、または毎週行われてもよい。ある実施形態では、この投与は、毎日2回、毎日3回、またはより高頻度で行われてもよい。この組成物の投与は、約1ヶ月から約3年など、長期間にわたって(中断の有無はあるが)延長されてもよい。例えば、投薬レジメンは、約2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、18、24、30および36ヶ月のいずれかの期間にわたって延長されてもよい(中断の有無はある)。ある実施形態では、投薬スケジュールに中断はない。ある実施形態では、各々の投与の間の間隔は、約1ヶ月以下である。
【0067】
本発明の方法によって処置され得るガンとしては限定はしないが、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、および白血病が挙げられる。このようなガンのさらに詳細な例としては、限定はしないが、扁平上皮細胞癌、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺の腺癌、および肺の扁平上皮癌を含む)、腹膜の癌、肝細胞癌、胃癌(gastric or stomach cancer)(胃腸の癌を含む)、膵臓癌、グリア芽細胞腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝細胞腫、乳癌、結腸癌、子宮内膜または子宮の癌、唾液腺癌、腎臓癌(kidney or renal cancer)、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、肝臓癌、頭頸部癌、B細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性の非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球性(SL)NHL、中悪性度/濾胞性のNHL、中悪性度広汎性NHL、高悪性度免疫芽細胞NHL、高悪性度リンパ芽球性NHL、高悪性度非開裂小細胞NHL、巨大病変NHL、マントル細胞リンパ腫、AIDS関連リンパ腫、およびヴァルデンストレームマクログロブリン血症)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、急性リンパ性白血病(ALL)、ヘアリー細胞白血病、慢性骨髄芽球性白血病、および移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)、ならびに母斑症(phakomatoses)に関連する異常な血管増殖、浮腫(例えば、脳腫瘍に関連する)、およびメーグス症候群が挙げられる。本明細書に記載される方法は、扁平細胞癌のような過度の血管形成に関与するガンを処置するために特に有用である。
【0068】
ある実施形態では、原発性腫瘍を処置する方法が提供される。ある実施形態では、転移性ガン(すなわち、原発性腫瘍から転移されているガン)を処置する方法が提供される。ある実施形態では、進行した段階のガンを処置する方法が提供される。ある実施形態では、乳癌(HER2陽性であっても、またはHER2陰性であってもよい)を処置する方法が提供され、このガンとしては、進行性乳癌、IV期乳癌、局所進行性乳癌および転移性乳癌が挙げられる。ある実施形態では、このガンは肺癌であって、これには、例えば、非小細胞肺癌(NSCLC、例えば、進行性NSCLC)、小細胞肺癌(SCLC、例えば、進行性SCLC)、および肺における進行性の固形悪性腫瘍が挙げられる。ある実施形態では、ガンは卵巣癌、頭頸部癌、胃の悪性腫瘍、黒色腫(転移性黒色腫を含む)、結腸直腸癌、膵臓癌および固形腫瘍(例えば、進行性の固形腫瘍)である。ある実施形態では、このガンは、乳癌、結腸直腸癌、直腸癌、非小細胞肺癌、非ホジキンリンパ腫(NHL)、腎臓細胞癌、前立腺癌、肝臓癌、膵臓癌、軟部組織肉腫、カポジ肉腫、カルチノイド癌、頭頸部癌、黒色腫、卵巣癌、中皮腫、神経膠腫、グリア芽細胞腫、神経芽細胞腫、および多発性骨髄腫のうちのいずれか(ある実施形態では、それらからなる群より選択される)である。ある実施形態では、このガンは固形腫瘍である。
【0069】
本明細書に記載される方法は、アジュバント設定で行ってもよい。「アジュバント設定(adjuvant setting)」とは、臨床設定であって、個体が、ガンの病歴を有し、一般には(必須ではないが)、手術(例えば、外科的切除)、放射線療法および化学療法を含むがこれに限定されない治療に応答性である臨床設定をいう。しかし、そのガンの既往のせいで、これらの個体は、疾患の発症のリスクにあると考えられる。「アジュバント設定」における処置または投与とは、処置の引き続く方式をいう。リスクの程度(すなわち、アジュバント設定における個体が「高リスク」または「低リスク」とみなされるとき)は、いくつかの要因、最も通常には最初に処置されるときの疾患の程度に依存する。本明細書に提供される方法は、ネオアジュバント設定で行われてもよく、すなわち、この方法は、一次治療/根治治療の前に行ってもよい。ある実施形態では、この個体は、以前に処置されている。ある実施形態では、この個体は、以前には処置されていない。ある実施形態では、この処置は、第一選択の治療である。
【0070】
本明細書に記載される方法は、ガン処置の他の方法と組み合わせて(例えば、治療設定と組み合わせて)用いられてもよい。例えば、ある実施形態では、この方法は、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含む組成物を投与することを包含する第一の治療と、第二の治療とを包含する。ある実施形態では、この二次治療は化学療法である。ある実施形態では、この二次治療は放射線療法である。ある実施形態では、この二次治療は、手術である。この第一および第二の治療は、同時または連続(すなわち、第一の治療が第二の治療の前かまたは後に行われる)のいずれで行ってもよい。ある実施形態では、この方法は、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含む組成物と、第二の化学療法剤とを個体に対して同時投与すること(同時または連続を含む)を包含し、この組成物は、個体において血管形成を阻害するのに有効であって、この組成物は、個体において細胞毒性を誘発するには不十分な量である。ある実施形態では、この第二の化学療法剤は細胞毒性剤である。
【0071】
コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含む組成物
コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体
本明細書で記載される方法は、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含む組成物の投与を包含する。本明細書で用いられる「コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体」とは、コルヒチン、チオコルヒチン、またはその誘導体の2つの(同じまたは異なる)サブユニットを含む化合物をいう。コルヒチンもしくはチオコルヒチンの「誘導体」としては、限定はしないが、コルヒチンもしくはチオコルヒチンに構造的に類似である化合物、またはコルヒチンもしくはチオコルヒチンと同じ一般的な化学クラスの化合物が挙げられる。一般には、コルヒチンまたはチオコルヒチンの誘導体またはアナログは、コルヒチンまたはチオコルヒチンの同様の生物学的、薬理学的、化学的、および/または物理的な特性(例えば、機能を含む)を保持する。ある実施形態では、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体は、少なくとも1つのチオコルヒチンサブユニットを含む。ある実施形態では、このコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体は、2つのチオコルヒチンサブユニット(本明細書において、以降では、「チオコルヒチン二量体」という)を含む。ある実施形態では、このコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体は、2つのチオコルヒチンサブユニット(本明細書において、以降では、「コルヒチン二量体」という)を含む。
【0072】
ある実施形態では、このコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体は、式(I):
【0073】
【化3】
の化合物であって、
ここで、各々のサブユニットのBは、メトキシまたはメチルチオ基であり、R2は、R3と一緒になる場合、メトキシ、ヒドロキシル、またはメチレンジオキシであり、R3は、R2と一緒になる場合、メトキシ、ヒドロキシル、またはメチレンジオキシであり、Xは連結基である。
【0074】
広汎な種々の架橋基を用いて、連結基Xを導入してもよい。当業者は、二量体のコルヒチンまたはチオコルヒチンの単量体成分は、単一の反応性アミノ基を有すると理解される;任意の他の反応性(求核性)基が中間体に存在する場合、それらは、当該分野で周知の基を用いて容易に保護され得る。保護基の例については、例えば、Greene、T.W.およびP.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis、第3版、Wiley:New York,1999(その内容が、その全体が参照によって本明細書に援用される)を参照のこと。従って、アミン官能基と反応性の広範な種々の架橋基が使用されてもよい。
【0075】
ある実施形態では、連結基Xは、少なくとも1つの炭素原子を含む。例えば、市販の(Sigma−Aldrich)試薬塩化マロニル、Cl−C(O)−CH2−C(O)−Clを用いて、X基が−CH2−であるコルヒチン二量体を形成してもよい。同様に、種々の長さの他のジアシル塩化物を用いて、所望の長さのX基を形成してもよい。例えば、式(II)では、n=8およびYがCH2である場合、市販の(Sigma−Aldrich)試薬ドデカンジオイル二塩化物、Cl−C(O)−(CH2)10−C(O)−Clを用いて、X基が−(CH2)10−である二量体を合成してもよい。YがNHでありn=1である基については、試薬3−イソシアナトプロパノイル塩化物(Organic Syntheses,Coll.第6巻、715頁(1988);第59巻、195頁(1979))を用いて、Xが−NH−CH2CH2−である場合、連結基Xを合成してもよい。他の周知の架橋試薬を用いて、Xリンカーを生成してもよい。当業者は、Wong,Shan S.,Chemistry of Protein Conjugation and Cross Linking,CRC Press:Boca Raton,1991、詳細には、アミノ基反応剤に関する、第2章、セクションIV(B)、第33〜38頁に;アミノ基反応剤架橋剤に関する、第4章、セクションII、第75〜103頁に、ならびにアミノ含有化合物を架橋するために適切な試薬および手順についての架橋試薬のための手順および分析に関する、第7章、209〜220頁に関する。上述のWongの引用文献の全内容、および詳細には列挙される特定のセクションは、参照によって本明細書に援用される。
【0076】
ある実施形態では、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体は、式(II)の化合物:
【0077】
【化4】
であって、
ここでB1は、メトキシ基またはメチルチオ基であり、B2はメトキシ基、またはメチルチオ基であり、nは0〜8の整数であり、YはCH2基であるか、またはnが1である場合は、式NHの基であってもよい。
【0078】
ある実施形態では、nは、0、1、2、3、4、5、6、7または8のいずれか(ある実施形態では、それからなる群より選択される)である。ある実施形態ではnは1である。ある実施形態では、nは1であり、YはNHである。ある実施形態ではnは2である。
【0079】
ある実施形態では、B1およびB2は両方ともメトキシ基である。ある実施形態では、B1およびB2は両方ともメチルチオ基である。ある実施形態では、B1はメトキシ基であり、かつB2がメチルチオ基である。ある実施形態では、B1はメチルチオ基であり、かつB2がメトキシ基である。ある実施形態では、このコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体は、IDN5404、IDN5676、IDN5800およびIDN5801のいずれか(ある実施形態では、それからなる群より選択される)である。
【0080】
ある実施形態では、この化合物は、チオコルヒチン二量体IDN5404である。IDN5404は、式(III):
【0081】
【化5】
の化合物である。
【0082】
ある実施形態では、この化合物は、チオコルヒチン二量体IDN5676である。IDN5676は、式(IV):
【0083】
【化6】
の化合物である。
【0084】
生体適合性ポリマーおよびキャリアタンパク質
ある実施形態では、本明細書に記載されるコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体組成物はさらに、キャリアタンパク質などの生体適合性ポリマーを含む。
【0085】
本明細書において用いる場合、「生体適合性」という用語は、その物質が導入される生物学的な系に対して、感知できるほど有害な方式で変更も影響もしない物質をいう。生体適合性のポリマーとしては、天然に存在するかまたは合成の生体適合性の物質、例えば、タンパク質、ポリヌクレオチド、ポリサッカライド(例えば、デンプン、セルロース、デキストラン、アルギン酸塩、キトサン、ペクチン、ヒアルロン酸など)、および脂質が挙げられる。適切な生体適合性ポリマーとしては例えば、天然に存在するかまたは合成のタンパク質、例えば、アルブミン、インスリン、ヘモグロビン、リゾチーム、免疫グロブリン、α−2−マクログロブリン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、フィブリノーゲン、カゼインなど、ならびにそれらの任意の2つ以上の組み合わせが挙げられる。合成のポリマーとしては、例えば、ポリアルキレングリコール(例えば、直鎖または分枝鎖)、ポリビニルアルコール、ポリアクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリアクリル酸、ポリエチルオキサゾリン、ポリアクリルアミド、ポリイソプロピルアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリラクチド/グリコリドなど、およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0086】
「タンパク質」という用語は、任意の長さ(全長またはフラグメントを含む)のアミノ酸のポリペプチドもしくはポリマーであって、直鎖であっても、分枝であってもよく、修飾アミノ酸を含んでもよく、および/または非アミノ酸で中断されてもよいアミノ酸のポリペプチドもしくはポリマーをいう。この用語はまた、天然に、または介入によって修飾されているアミノ酸ポリマーを包含する;例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または任意の他の操作もしくは修飾。この用語内にはまた、例えば、アミノ酸の1つ以上のアナログ(例えば、天然でないアミノ酸などを含む)を含むポリペプチド、ならびに当該分野で公知の他の修飾も包含される。本明細書に記載されるタンパク質は、天然に存在してもよく、すなわち、天然の供給源(例えば、血液)から得られても、もしくは誘導されても、または合成されてもよい(例えば、化学的に合成されるか、または組み換えDNA技術によって合成される)。
【0087】
適切なキャリアタンパク質の例としては、血液または血漿で通常見出されるタンパク質が挙げられ、このタンパク質としては限定はしないが、アルブミン、IgAを含む免疫グロブリン、リポタンパク質、アポリポタンパク質B、α酸糖タンパク質、β−2−マクログロブリン、サイログロブリン、トランスフェリン、フィブロネクチン、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、第X因子などが挙げられる。ある実施形態では、このキャリアタンパク質は、非血液タンパク質、例えば、カゼイン、α−ラクトアルブミンおよびβラクトグロブリンである。キャリアタンパク質は、天然に由来してもよいし、または合成的に調製されてもいずれでもよい。ある実施形態では、このキャリアタンパク質は、アルブミン、例えば、血清アルブミンである。ヒト血清アルブミン(HSA)は、Mr65Kという高溶解性の球状タンパク質であって、585アミノ酸からなる。HSAは、血漿中で最も豊富なタンパク質であって、ヒト血漿の膠質浸透圧の70〜80%を占める。HSAのアミノ酸配列は、全部で17のジスルフィド架橋、1つの遊離のチオール(Cys34)、および単一のトリプトファン(Trp214)を含む。HSA溶液の静脈内使用は、乏血性(循環血液量減少性)ショックの予防および処置について(例えば、Tullis,JAMA,237,355〜360,460〜463,(1997))およびHouserら、Surgery,Gynecology and Obstetrics,150,811〜816(1980)を参照のこと)、および新生児高ビリルビン血症の処置において交換輸血と組み合わせて(Finlayson,Seminars in Thrombosis and Hemostasis,6,85〜120,(1980)を参照のこと)指示されている。ウシ血清アルブミンなどの他のアルブミンも考慮される。このような非ヒトアルブミンの使用は、例えば、獣医学の動物(家庭用ペットおよび畜産動物を含む)などの非ヒト動物において、これらの組成物の使用の状況で適切であり得る。
【0088】
ヒト血清アルブミン(HSA)は、複数の疎水性結合部位(脂肪酸について全部で8つ、HSAの内因性リガンド)を有し、多様なセットの薬物、特に中性および負に荷電された疎水性化合物に結合する(Goodmanら、The Pharmacological Basis of Therapeutics,第9版、McGraw−Hill New York(1996))。2つの高親和性結合部位が、HSAのサブドメインIIAおよびIIIAにおいて提唱されており、これは、極めて細長い疎水性のポケットであって、表面近くに荷電したリジンおよびアルギニン残基を有し、これが極性リガンドの特徴について付着ポイントとして機能する(例えば、Fehskeら、Biochem.Pharmacol.,30,687〜92(1981)、Vorum,Dan.Med.Bull.,46,379〜99(1999)、Kragh−Hansen,Dan.Med.Bull.,1441,131〜40(1990)、Curryら、Nat.Struct.Biol.,5,827〜35(1998),Sugioら、Protein.Eng.,12,439〜46(1999),Heら、Nature,358,209〜15(1992)、およびCarterら、Adv.Protein.Chem.,45,153〜203(1994)を参照のこと)。
【0089】
例として、キャリアタンパク質をさらに下に記載する。この説明は一般に生体適合性ポリマーにあてはまることが理解される。
【0090】
組成物中のキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)は一般に、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体のキャリアとして機能し、すなわち組成物中のキャリアタンパク質は、キャリアタンパク質を含まない組成物に比較して、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を水性媒体中により容易に懸濁可能にさせるか、または懸濁の維持を補助する。これによって、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を安定化するための毒性溶媒の使用が回避され得、それによって、それらの毒性溶媒によって生じる1つ以上の副作用が減少し得る。ある実施形態では、この組成物は、界面活性剤を実質的に含まず、すなわち、この組成物中の界面活性剤の量は、この組成物が個体に投与されるとき、その個体において1つ以上の影響を生じるには不十分である。ある実施形態では、この組成物は界面活性剤を含まない。
【0091】
ある実施形態では、キャリアタンパク質は、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体に会合され、すなわち、この組成物は、キャリアタンパク質会合したコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含む。「会合(association)」または「会合した、会合された(associated)」とは本明細書において一般的な意味で用いて、水性組成物におけるコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体の挙動および/または特性に影響するキャリアタンパク質をいう。例えば、このキャリアタンパク質およびコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体は、このキャリアタンパク質が、キャリアタンパク質なしの組成物に比較して、水性媒体中でコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体をさらに容易に懸濁可能にさせる場合、「会合した」状態であるとみなされる。別の例では、このキャリアタンパク質およびコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体は、このキャリアタンパク質が水性懸濁液中でコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を安定化させる場合、会合されている。例えば、キャリアタンパク質およびコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体は、本明細書にさらに記載される、粒子またはナノ粒子中に存在してもよい。
【0092】
コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体は、長期間にわたって、例えば、少なくとも約0.1、0.2、0.25、0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、24、36、48、60または72時間のいずれかにわたって、水性媒体中に(例えば、可視の沈澱も沈降もなく)懸濁されたままである場合、水性懸濁液中で「安定である」。この懸濁液は一般には、ただし必須ではないが、個体(例えば、ヒト)に対する投与に適切である。懸濁液の安定性は一般には(ただし必須ではないが)貯蔵温度(例えば、室温(例えば、20〜25℃)または冷蔵条件(例えば、4℃))で向上される。例えば、懸濁液は、懸濁物の調製の約15分後に裸眼で、または1000倍の光学顕微鏡で見た場合、可視の凝結も粒子凝集も示さない場合、貯蔵温度で安定である。安定性は、約40℃より高い温度のような、加速された試験条件下で評価してもよい。
【0093】
この組成物中のキャリアタンパク質およびコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体は、種々の方式で会合されてもよい。例えば、ある実施形態では、このキャリアタンパク質は、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体と混合される。ある実施形態では、このキャリアタンパク質は、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体をカプセル化または封入する。ある実施形態では、このキャリアタンパク質は、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体に結合される(例えば、非供給結合される)。ある実施形態では、この組成物は、上記の局面のうち1つ以上を示し得る。
【0094】
ある実施形態では、この組成物は、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体およびキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)を含む(種々の実施態様では、本質的にそれからなる)粒子(例えば、マイクロ粒子またはナノ粒子)を含む。ある実施形態では、このコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体は、キャリアタンパク質(例えば、アルブミン)でコーティングされる。ある実施形態では、この組成物は、ほぼ900、800、700、600、500、400、300、200および100nm以下のいずれかなどの、ナノ粒子(すなわち、約1000ナノメートル(nm)以下の平均(averageまたはmean)直径を有する粒子)を含む。ある実施態様では、この組成物中のナノ粒子の平均直径は、約200nm以下である。ある実施形態では、この組成物中のナノ粒子の平均直径は、約20〜約400nmである。ある実施形態では、このナノ粒子の平均直径は、約40〜約200nmである。ある実施形態では、このナノ粒子は無菌濾過可能である。
【0095】
本明細書に記載される粒子(例えば、マイクロ粒子またはナノ粒子)は、乾燥処方物(例えば、凍結乾燥組成物)で存在してもよいし、または生体適合性媒体中に懸濁されてもよい。適切な生体適合性媒体としては限定はしないが、水、緩衝化水性媒体、生理食塩水、緩衝化生理食塩水、必要に応じて緩衝化されたアミノ酸の溶液、必要に応じて緩衝化されたタンパク質の溶液、必要に応じて緩衝化された糖の溶液、必要に応じて緩衝化されたビタミンの溶液、必要に応じて緩衝化された合成ポリマー溶液、脂質含有エマルジョンなどが挙げられる。
【0096】
本明細書に記載される組成物中のキャリアタンパク質の量は、組成物中の薬剤および他の成分に依存して変化する。ある実施形態では、この組成物は、例えば、安定なコロイド状懸濁液(例えば、マイクロ粒子またはナノ粒子の安定な懸濁液)の形態で、水性懸濁液中にコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を安定化するのに十分な量でキャリアタンパク質を含む。ある実施形態では、このキャリアタンパク質は、水性媒体中のコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体の沈降速度を減じる量である。粒子含有組成物については、キャリアタンパク質の量はまた、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体の粒子のサイズおよび密度に依存する。
【0097】
ある実施形態では、このキャリアタンパク質は、水性媒体中でコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を特定の濃度で安定化するのに十分な量で存在する。例えば、組成物中のコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体の濃度は、約0.01〜約100mg/mlであって、これには、例えば、約0.01〜約50mg/ml、約0.1〜約50mg/ml、約1〜約10mg/ml、約2〜約8mg/ml、約4〜約6mg/ml、約5mg/mlのいずれかを包含する。ある実施形態では、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体の濃度は、少なくとも約0.01mg/ml、0.03mg/ml、0.05mg/ml、0.08mg/ml、0.1mg/ml、0.3mg/ml、0.5mg/ml、0.8mg/ml、1mg/ml、1.3mg/ml、1.5mg/ml、2mg/ml、3mg/ml、4mg/ml、5mg/ml、6mg/ml、7mg/ml、8mg/ml、9mg/ml、10mg/ml、15mg/ml、20mg/ml、25mg/ml、30mg/ml、40mg/ml、および50mg/mlのいずれかである。ある実施形態では、このキャリアタンパク質は、界面活性剤の使用を回避する量で存在し、その結果この組成物は界面活性剤を含まないかまたは実質的に含まない。
【0098】
ある実施形態では、この組成物は、液体型であり、約0.1%〜約50%(w/v)(例えば、約0.5%(w/v)、約5%(w/v)、約10%(w/v)、約15%(w/v)、約20%(w/v)、約30%(w/v)、約40%(w/v)、または約50%(w/v))のキャリアタンパク質を含む。ある実施形態では、この組成物は、液体型で、約0.5%〜約5%(w/v)のキャリアタンパク質を含む。
【0099】
ある実施形態では、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体に対するキャリアタンパク質、例えば、アルブミンの重量比は、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体の十分な量が細胞に結合するか、または細胞によって輸送されるような比である。ある実施形態では、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体に対するキャリアタンパク質、例えば、アルブミンの重量比(w/w)は、約0.01:1〜約100:1、約0.02:1〜約50:1、約0.05:1〜約20:1、約0.1:1〜約20:1、約1:1〜約18:1、約2:1〜約15:1、約3:1〜約12:1、約4:1〜約10:1、約5:1〜約9:1、または約9:1である。ある実施形態では、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体に対するキャリアタンパク質(例えば、アルブミン)の重量比(w/w)は、およそ18:1以下、15:1以下、14:1以下、13:1以下、12:1以下、11:1以下、10:1以下、9:1以下、8:1以下、7:1以下、6:1以下、5:1以下、4:1以下、および3:1以下のいずれかである。
【0100】
ある実施形態では、この組成物は、チオコルヒチン二量体(例えば、IDN5404またはIDN5676)およびアルブミンを含む(種々の実施形態では、本質的にそれからなる)粒子(例えば、マイクロ粒子またはナノ粒子)を含む。この粒子(例えば、マイクロ粒子またはナノ粒子)は、約10、9、8、7、6、5、4、3、2または1ミクロン以下という平均(averageまたはmean)直径を有してもよい。ある実施形態では、この粒子は、ナノ粒子、すなわち、約1000ナノメートル(nm)未満の粒子である。例えば、このナノ粒子は、約900、800、700、600、500、400、300、200および100nmのいずれか以下であってもよい。ある実施形態では、このナノ粒子の平均直径は、約200nm以下である。ある実施形態では、このナノ粒子の平均直径は、約20〜約400nmである。ある実施形態では、このナノ粒子の平均直径は、約40〜約200nmである。ある実施形態では、この粒子は滅菌濾過可能である。
【0101】
ある実施形態では、このチオコルヒチン二量体(例えば、IDN5404またはIDN5676)は、アルブミンでコーティングされる。ある実施形態では、チオコルヒチン二量体(例えば、IDN5404またはIDN5676)に対するアルブミンの重量比(w/w)は、約0.01:1〜約100:1、約0.02:1〜約50:1、約0.05:1〜約20:1、約0.1:1〜約20:1、約1:1〜約18:1、約2:1〜約15:1、約3:1〜約12:1、約4:1〜約10:1、約5:1〜約9:1、および約9:1のいずれかである。ある実施形態では、チオコルヒチン二量体に対するアルブミンの重量比は、およそ18:1以下、15:1以下、14:1以下、13:1以下、12:1以下、11:1以下、10:1以下、9:1以下、8:1以下、7:1以下、6:1以下、5:1以下、4:1以下、および3:1以下のいずれかである。
【0102】
ある実施形態では、チオコルヒチン二量体(例えば、IDN5404またはIDN5676)およびアルブミンを含む粒子(例えば、マイクロ粒子またはナノ粒子)は、水性媒体(例えば、アルブミン含有水性媒体)に懸濁される。例えば、この組成物は、チオコルヒチン二量体(例えば、IDN5404またはIDN5676)含有粒子(例えば、マイクロ粒子またはナノ粒子)のコロイド状懸濁液であってもよい。ある実施形態では、この組成物は、チオコルヒチン二量体(例えば、IDN5404またはIDN5676)含有粒子の水性懸濁液に再構成され得る乾燥組成物(例えば、凍結乾燥組成物)である。ある実施形態では、この組成物中のチオコルヒチン二量体(例えば、IDN5404またはIDN5676)の濃度は、約0.1〜約100mg/mlであって、これには、例えば、約0.1〜約50mg/ml、約0.1〜約20mg/ml、約1〜約10mg/ml、約2〜約8mg/ml、約4〜約6mg/ml、および約5mg/mlのいずれかを包含する。ある実施形態では、IDN5404またはIDN5676の濃度は、少なくとも約1.3mg/ml、1.5mg/ml、2mg/ml、3mg/ml、4mg/ml、5mg/ml、6mg/ml、7mg/ml、8mg/ml、9mg/ml、10mg/ml、15mg/ml、20mg/ml、25mg/ml、30mg/ml、40mg/ml、および50mg/mlのいずれかである。
【0103】
ある実施形態では、この組成物は、IDN5404またはIDN5676のナノ粒子処方物(本明細書において以降では、Nab−5404またはNab−5676という)を含む。Nab−5404およびNab−5676は、ヒト血清アルブミンによって安定化された、それぞれIDN5404およびIDN5676のナノ粒子処方物である。これらのナノ粒子処方物は、米国特許第5,916,596号および米国特許出願公開第2005/0004002号に記載の方法によって生成され得る。適切な水性媒体、例えば、0.9%塩化ナトリウム注射液または5%デキストロース注射液に分散させる場合、Nab−5404(またはNab−5676)は、チオコルヒチン二量体の安定なコロイド状懸濁液を形成する。コロイド状懸濁液中の粒子のサイズ(すなわち、平均直径)は、20nm〜8ミクロンにおよんでもよく、好ましい範囲は約20〜400nmである。HSAは水中で自由に溶解するので、Nab−5404(またはNab−5676)は、例えば、約2mg/ml〜約8mg/ml、約5mg/mlを含む、希(0.1mg/mlのIDN5404またはIDN5676)〜濃(20mg/mlのIDN5404またはIDN5676)におよぶ広範な濃度で再構成され得る。ある実施形態では、IDN5404またはIDN5676の濃度は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19および20mg/mlのいずれかである。
【0104】
薬学的組成物、単位用量およびキット
コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含む薬学的組成物も本明細書で提供される。この薬学的組成物は、例えば、全身または局所の投与を含む、本明細書で記載される種々の投与方式で適切であり得る。薬学的組成物は、点眼、注射溶液の形態でも、または吸入に適切な形態(口または鼻のいずれかを通じて)、または経口投与であってもよい。本明細書に記載される薬学的組成物は、単位投薬量であっても、または複数回の剤形でパッケージングされてもよい。ある実施形態では、この組成物は、ヒトへの投与に適切である。ある実施形態では、この組成物は、獣医学の状況、家庭内のペットおよび畜産動物においてのように、哺乳動物に対する投与に適切である。この組成物には広範な種々の適切な処方物がある(例えば、米国特許第5,916,596号および同第6,096,331号を参照のこと)。
【0105】
ある実施形態では、この薬学的組成物は、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体、キャリアタンパク質、および眼内注射に適切な薬学的に受容可能なキャリアを含む。ある実施形態では、この薬学的組成物は、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体、キャリアタンパク質および眼への局所適用に適切な薬学的に受容可能なキャリアを含む。ある実施形態では、薬学的組成物は、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体、キャリアタンパク質、および動脈内注射に適切な薬学的に受容可能なキャリアを含む。
【0106】
この薬学的組成物は一般に、無菌および実質的に等張性の組成物として処方される。注射のためには、この薬学的組成物は、溶液の形態中に、例えば、生理学的に適合する緩衝液、例えば、ハンクス液またはリンゲル液中にあってもよい。この薬学的組成物はまた、固体型であってもよく、使用の直前に再溶解または再懸濁されてもよい。凍結乾燥組成物も含まれる。
【0107】
経口投与については、薬学的組成物は、薬学的に受容可能な賦形剤、例えば、結合剤(例えば、アルファ化トウモロコシデンプン、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(例えば、ラクトース、微結晶性セルロースまたはリン酸水素カルシウム);潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、滑石またはシリカ);崩壊剤(例えば、ジャガイモデンプンまたはデンプングリコール酸ナトリウム);または湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム)を用いて従来の方法によって調製された例えば、錠剤またはカプセルの形態をとってもよい。経口投与のための液体調製物は、例えば、溶液、シロップもしくは懸濁液の形態をとってもよく、またはそれらは、使用前に水または他の適切なビヒクルとの構成のための乾燥産物として与えられてもよい。このような液体調製物は、薬学的に受容可能な添加物、例えば、懸濁剤(例えば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体または水素化食用脂);乳化剤(例えば、レシチンまたはアカシア);非水性ビヒクル(例えば、アチオンド(ationd)オイル、油状エステル、エチルアルコール、または分画植物油);および防腐剤(例えば、メチルまたはプロピル−p−ヒドロキシベンゾエートまたはソルビン酸)を用いて従来の手段によって調製され得る。この調製物はまた、緩衝塩、香味料、着色料、および甘味料を必要に応じて含んでもよい。
【0108】
本発明は、ある実施形態では、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体、キャリアタンパク質、および眼への投与に適切な薬学的に受容可能なキャリアを含む組成物を提供する。このような薬学的なキャリアは、無菌液、例えば水およびオイルであってもよく、オイルとしては、石油、動物、植物または合成に由来する油、例えば、ピーナツ油、ダイズ油、鉱油、などの油が挙げられる。生理食塩水溶液および水性のデキストロース、ポリエチレングリコール(PEG)およびグリセロール溶液も、特に注射溶液のための液体キャリアとして使用されてもよい。適切な薬学的賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、スクロース、ゼラチン、モルト、コメ、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、グリセロール、プロピレン、水などが挙げられる。薬学的組成物は、必要に応じて、また、少量の湿潤剤もしくは乳化剤、またはpH緩衝化剤を含んでもよい。この組成物の成分は、徐放性の分子を得るためにポリマーまたはフィブリン接着剤中に包み込まれてもよい。これらの組成物は、溶液、懸濁液、エマルジョン、軟膏、ゲル、または他の固体もしくは半固体の組成物などの形態をとってもよい。この組成物は代表的には、4.5〜8.0の範囲のpHを有する。この組成物はまた、眼の眼房水および眼の組織と適合する浸透価を有するように処方されなければならない。このような浸透価は一般には、水1キログラムあたり約200〜約400ミリオスモル(「mOsm/kg」)の範囲であるが、好ましくは約300mOsm/kgである。
【0109】
ある実施形態では、この組成物は、静脈内、腹腔内、または硝子体内の注射に適した薬学的組成物として慣用的な手順に従って処方される。代表的には、注射用組成物は、無菌の等張性水性緩衝液中の溶液である。必要に応じて、この組成物はまた、安定化剤および注射部位への疼痛を緩和するリグノカインなどの局所麻酔薬を含んでもよい。一般には、この成分は、別々に、または単位剤形で一緒に混合されるかのいずれかで、例えば、乾燥された凍結乾燥粉末または水なしの濃縮物として、密閉してシールされた容器、例えば、アンプルまたは子袋(sachette)(活性剤の量を示す)中で供給される。この組成物がインフュージョンによって投与される場合、この組成物は、滅菌の薬学的等級の水または生理食塩水を含むインフュージョンボトルで分注されてもよい。この組成物が注射によって投与される場合、注射または生理食塩水のための滅菌水のアンプルは、この成分が投与前に混合され得るように提供され得る。
【0110】
この組成物はさらに、さらなる成分、例えば、防腐剤、緩衝液、等張化剤、抗酸化剤および安定化剤、非イオン性湿潤剤または清澄剤、増粘剤などを含んでもよい。
【0111】
溶液中での使用に適切な防腐剤としては、ポリクオタニウム−1、塩化ベンザルコニウム、チメロサール、クロロブタノール、メチルパラベン、プロピルパラベン、フェニルエチルアルコール、エデト酸二ナトリウム、ソルビン酸、塩化ベンゼトニウムなどが挙げられる。代表的には(ただし必須ではないか)このような防腐剤は、0.001%〜1.0重量%のレベルで使用される。
【0112】
適切な緩衝液は、ホウ酸、炭酸水素ナトリウムおよび炭酸水素カリウム、ホウ酸ナトリウムおよびホウ酸カリウム、炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウムなどを、pHを約pH6〜pH8、好ましくはpH7〜pH7.5に維持するのに十分な量で含む。
【0113】
適切な等張化剤は、眼科溶液の塩化ナトリウム当量が0.9±0.2%の範囲であるように、デキストラン40、デキストラン70、デキストロース、グリセリン、塩化カリウム、プロピレングリコール、塩化ナトリウムなどである。
【0114】
適切な抗酸化剤および安定化剤としては、亜硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、チオ尿素などが挙げられる。適切な湿潤剤および清澄剤としては、ポリソルベート80、ポリソルベート20、ポリオキサマー282およびチロキサポールが挙げられる。適切な増粘剤としては、デキストラン40、デキストラン70、ゼラチン、グリセリン、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルプロピルセルロース、ラノリン、メチルセルロース、ペトロラタム、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。
【0115】
単純な水溶液の粘度よりも大きい粘度を有する局所組成物を得るための粘度増強剤の使用は、標的組織による活性な化合物の眼の吸収を増大するか、または眼での保持時間を延長するために所望され得る。このような粘度上昇剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、または当業者に公知の他の薬剤が挙げられる。このような薬剤は代表的には、0.01重量%〜2重量%のレベルで使用される。
【0116】
本明細書に記載される組成物はまた、組成物生物の特性を改善するために他の薬剤、賦形剤、または安定化剤を含んでもよい。例えば、ナノ粒子の負のゼータ電位を増大することによって安定性を増大するために、特定の負に荷電された成分を追加してもよい。このような負に荷電された成分としては限定はしないが、グリココール酸、コール酸、ケノデオキシコール酸、タウロコール酸、グリコケノデオキシコール酸、タウロケノデオキシコール酸、リトコール酸、ウルソデオキシコール酸、デヒドロコール酸などからなる胆汁酸の胆汁酸塩;以下のホスファチジルコリンを含むレシチン(卵黄)ベースのリン脂質を含むリン脂質が挙げられる:パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン、パルミトイルリノールオイルホスファチジルコリン、ステアロイルリノールオイルホスファチジルコリン、ステアロイルオレオイルホスファチジルコリン、ステアロイルアラキドイルホスファチジルコリンおよびジパルミトイルホスファチジルコリン。他のリン脂質としては、L−α−ジミリストイルホスファチジルコリン(DMPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、水素化ソイホスファチジルコリン(HSPC)、および他の関連の化合物が挙げられる。負に荷電した界面活性剤または乳化剤、例えば、コレステリル硫酸ナトリウムなども、添加物として適切である。
【0117】
コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体の組成物の単位剤形、例えば、約0.1mg〜約50mg(例えば、約0.2mg〜約50mg、約0.5mg〜約30mg、約1mg〜約20mg、または約15mgを含む)のコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含む単位投薬量も提供される。「単位剤形」という用語は、個体にとって単位投薬量として適切な物理的に別個の単位であって、各々の単位が、適切な薬学的なキャリア、希釈剤または賦形剤と組み合わせて、所望の治療効果を生じるように計算された活性物質の所定の量を含む単位をいう。これらの単位剤形は、単一または複数の単位投薬量に適切なパッケージに保管されてもよく、そしてまたさらに滅菌されてシールされてもよい。ある実施形態では、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体および眼内注射に適切なキャリアタンパク質の単位剤形が提供される。ある実施形態では、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体および眼への局所適用に適切なキャリアタンパク質の単位剤形が提供される。ある実施形態では、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体および動脈内注射に適切なキャリアタンパク質の単位剤形が提供される。
【0118】
また、本明細書に記載される組成物を適切なパッケージに含む製品も提供される。本明細書に記載される組成物(例えば、眼科組成物)に適切なパッケージは当該分野で公知であって、これには、例えば、バイアル(例えば、密閉バイアル)、容器、アンプル、ボトル、ジャー、可塑性のパッケージ(例えば、密閉されたマイラー・バッグまたはプラスチックバッグ)などが挙げられる。これらの製品はさらに滅菌および/または密閉されてもよい。
【0119】
本発明はまた、本明細書に記載される組成物(あるいは単位剤形および/または製品)を含むキットを提供し、これはさらに本明細書に記載される使用などの、この組成物を用いる方法に対する指示(単数または複数)を備えてもよい。本明細書に記載されるキットはさらに、他の緩衝液、希釈液、フィルター、ニードル、シリンジおよび本明細書に記載の任意の方法を行うための指示を含む添付文書を含む、商業的および使用者の観点から所望される他の材料を備えてもよい。例えば、ある実施形態では、このキットは、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体、キャリアタンパク質、眼内注射に適切な薬学的に受容可能なキャリア、および以下の1つ以上を備える:緩衝液、希釈液、フィルター、ニードル、シリンジおよび眼内注射を行うための指示を含む添付文書。ある実施形態では、この薬学的組成物は、コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体、キャリアタンパク質、眼内注射に適切な薬学的に受容可能なキャリア、および以下の1つ以上を備える:緩衝液、希釈液、フィルター、ニードル、シリンジおよび動脈内注射を行うための指示を含む添付文書。
【0120】
前述の発明は、理解を明確にする目的で図示および例によってある程度詳細に記載してきたが、特定のわずかな変化および改変が行われることが当業者には明白である。従って、この説明および実施例は、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0121】
(実施例1)
Nab−5404およびNab−5676のインビトロ細胞毒性活性
Nab−5404およびNab−5676の細胞毒性活性は、インビトロにおいて、MX−1乳癌、HepG2肝細胞腫、HT−29結腸癌の細胞株および正常な初代ラット肝細胞を用いて評価した。細胞を、ある範囲の漸増濃度にわたって37℃で72時間、Nab−5404およびNab−5676に曝した。生存度は、Cell Titer Blue細胞生存度アッセイ(Promega,Madison,WI)を用いて分析した。IC50は、Prismソフトウェア(GraphPad,San Diego,CA)を用いて単相指数関数的減衰式(one−phase exponential decay equation)で計算した。
【0122】
Nab−5404は、HepG2肝細胞腫細胞および初代ラット肝細胞に対して細胞毒性活性を示し、IC50はそれぞれ16および9μg/mlであった。Nab−5404およびNab−5676の両方ともMX−1細胞に対して中程度に細胞毒性であって、IC50はそれぞれ43および54μg/mlであった。HT−29細胞に対するNab−5404およびNab−5676の活性は低く、IC50はそれぞれ110および149μg/mlであった。Nab−5676は、HepG2細胞または初代ラット肝細胞において細胞毒性活性をほとんどまたは全く示さなかった。結果を表1にまとめる。
【0123】
【表1】
(実施例2)
Nab−5404およびNab−5676の抗微小管活性
Nab−5404およびNab−5676の微小管脱重合活性は、MX−1乳癌細胞株を用いて試験した。MX−1細胞を、カバースリップ上に播種して、Nab−5404またはNab−5676を用いて、0.01〜100μg/mlの濃度範囲にまたがって37℃で2時間処置した。インキュベーション後、その細胞を固定して、チューブリンおよびアクチンについて染色した。チューブリンは、モノクローナルの抗チューブリン抗体で染色し、アクチンはフルオレセイン標識ファロイジンで染色した。この微小管網目状構造を可視化して、ImagePro Software(MediaCybernetics,Inc.,Silver Spring MD)を用いて分析した。微小管脱重合活性に対するNab−5404およびNab−5676の活性についてのIC50は、Prismソフトウェア(GraphPad,San Diego,CA)を用いて計算した。
【0124】
Nab−5404およびNab−5676の両方とも強力な微小管脱重合活性を示し、算出されたIC50はそれぞれ、0.06μg/mlおよび0.12μg/mlであった(図1Aおよび図1B)。試験した最低濃度0.6μg/mlでさえ、微小管網目状構造は、Nab−5404またはNab−5676とのインキュベーションの2時間後に完全に破壊された(図2A〜図2C)。対照的に、アクチンの束は、どの薬物濃度でもNab−5404またはNab−5676によって影響されなかった。
【0125】
(実施例3)
Nab−5404およびNab−5676の抗血管形成活性
血管形成に対するNab−5404およびNab−5676の影響を研究するため、この化合物を、TCS Cell Works AngioKitモデル(TCS CellWorks Ltd.,Botolph Claydon,Buckingham UK)を用いて微小血管形成アッセイで評価した。このAngioKitモデルは、他のヒト細胞と同時培養したヒト内皮細胞を用いる。この内皮細胞は最初に、培養マトリックス内で小さい島を形成し、次に増殖をはじめ、次いで遊走期に入り、この間それらは、マトリックスから移動して、糸状の小管構造を形成する。これらは徐々に一緒になって、小管の網目状構造を形成し、これが毛細血管床を密接に模倣する(9〜11日目)。この小管は、フォン・ヴィレブランド因子、CD31(PECAM−1)およびICAM−2について陽性に染色する。
【0126】
Nab−5404およびNab−5676に加えて、公知の血管標的剤、コンブレスタチン4−リン酸塩(CA4P)を、インビトロの抗血管形成活性について試験した。TCS CellWorks AngioKitモデルを、製造業者の指示に従って用いた。上記で概説したとおり、ヒト内皮細胞を、24ウェルプレート中でヒト線維芽細胞とともに同時培養して、ある範囲の濃度(0.01〜100μg/ml)にまたがってNab−5404、Nab−5676またはCA4Pに曝した。インキュベーションの11または12日後、小管を、細胞を固定すること、およびCD31に対するモノクローナル抗体、二次抗体結合体および着色基質を用いて染色することによって可視化した。小管の長さを、ImageProソフトウェアを用いて分析して、各々の化合物のIC50を、Prismソフトウェアを用いて算出した。
【0127】
Nab−5404およびNab−5676の両方とも小管の形成を阻害し、樹立された小管を崩壊させ、このことは抗血管形成活性を示している。第一の実験では、細胞を、1日目に組成物で処置して、小管形成の阻害の分析のために12日目に染色した。第二の実験では、この細胞を8日目に処置して、11日目に染色したが、第三の実験では、細胞を11日目に処置して、12日目に染色して、樹立された小管の破壊の分析を可能にした。
【0128】
Nab−5404およびNab−5676の両方とも新しい微小血管の形成を阻害できた(図3および図4)。第二の実験ではNab−5404およびNab−5676の両方とも小管の形成を阻害、および/または樹立された小管を破壊できた(図5)。Nab−5404は、樹立された小管を破壊するのにNab−5676よりも強力であった(図6、7、および図9)。Nab−5404のIC50は、0.002μg/mlであると計算され、0.02μg/mlのIC50であるNab−5676よりも10倍強力であった。Nab−5404は、樹立された小管を破壊するのにCA4P(IC50=0.003μg/ml)と同じく有効であった(図6、図8および図9)。
【0129】
(実施例4)
Nab−5404およびNab−5676の抗腫瘍活性
Nab−5404およびNab−5676の抗腫瘍活性は、異種移植片マウスモデルで評価した。この化合物を、インビトロで2つのサイクル(第一が低投薬量スケジュール、続いて第二の高投薬量スケジュール)で、樹立されたHT−29結腸細胞腫瘍に対して試験した。イリノテカンを、この研究での陽性コントロールとして用いた。マウス(n=10)を、8つの群に分けて、Nab−5404およびNab−5676のマウスにこの化合物を静脈内注射で与えた。第一のサイクルは、0〜14日の間、4用量について3日毎にNab−5404またはNab−5676の投与からなり、続いて、第二のサイクルで、これは、15〜30日の間、4用量について3日毎にNab−5404またはNab−5676の投与からなった。イリノテカンは、4用量について3日ごとに60mg/kgの用量での静脈内注射で投与した。個々の群は、表2に示しており、ここで第一のサイクルとは、0〜14日目をいい、第二のサイクルとは15〜30日をいう。
【0130】
【表2】
図10および図11に示されるとおり、さらに低用量では、Nab−5404およびNab−5676の両方とも、Nab−5404の3.4、2.5および1.7mg/kgについては0.02、0.007、0.001というp値で、Nab−5676の3.4、2.5および1.7mg/kgについては0.04、0.003、および0.0004というp値で、腫瘍増殖を有意に阻害した。低用量でのNab−5404およびNab−5676の抗腫瘍活性によって、これらの化合物が抗血管形成活性を有することが示唆される。さらに高用量では、Nab−5676に比較してNab−5404での処置後に有意に大きい腫瘍退縮があった。体重減少データに基づいて、このモデルでのNab−5404のMTDは有意な腫瘍退縮を伴い約30mg/kgであった。
【0131】
コンブレスタチン4−リン酸塩(CA4P)も別の実験でHT−29腫瘍保有マウスに投与した。マウス(n=10)は、ビヒクルまたはCA4Pのいずれかを4用量について毎日のスケジュールで100mg/kgという報告されたMTDで用いて、腫瘍が一旦900mm3に達したとき処置した。CA4Pは、コントロールのビヒクルと相違なく、この腫瘍モデルで不活性であることが見出された(図12)。
【0132】
前述の本発明は、明確な理解という目的のために図および実施例によってある程度詳細に記載してきたが、特定のわずかな変化および改変が行われることが当業者には明らかである。従って、詳細な説明および実施例は、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
個体における血管形成を阻害する方法であって、該個体に対して、キャリアタンパク質およびコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含む組成物を投与することを包含し、該組成物は血管形成を阻害するのに有効な量であって、かつ該組成物の量は、該個体において有意な細胞毒性を誘発する程、十分ではない、方法。
【請求項2】
個体における非腫瘍性血管形成関連疾患を処置する方法であって、該個体に対して、キャリアタンパク質およびコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含む組成物を投与することを包含し、該組成物は該非腫瘍性血管形成関連疾患を処置するのに有効な量である、方法。
【請求項3】
前記非腫瘍性血管形成関連疾患が眼の疾患である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記眼の疾患が、加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症、または血管新生緑内障である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記非腫瘍性血管形成関連疾患が循環器疾患である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記循環器疾患が再狭窄またはアテローム性動脈硬化症である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記非腫瘍性血管形成関連疾患が関節リウマチまたは乾癬である、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物の量が、前記個体において有意な細胞毒性を誘発する程、十分ではない、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
個体におけるガンを処置する方法であって、該個体に対して、キャリアタンパク質およびコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含む組成物を投与することを包含し、該組成物はガンを処置するのに有効な量であって、かつ該組成物の量は、該個体において有意な細胞毒性を誘発する程、十分ではない、方法。
【請求項10】
前記組成物中の前記コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体の量が前記コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体の対応するMTDの約15%未満である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ガンが固形腫瘍である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ガンが、転移性の固形腫瘍である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の方法であって、前記コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体が式(II):
【化7】
の化合物であり、
B1がメトキシ基またはメチルチオ基であり;
B2がメトキシ基またはメチルチオ基であり;
nが0〜8の整数であり;
YがCH2基であるか、またはnが1である場合は、式NHの基であり得る、
方法。
【請求項14】
YがCH2である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
nが1であり、かつYがNHである、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
B1およびB2が両方ともメチルチオ基である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記化合物がIDN5404である、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記化合物がIDN5676である、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記組成物中の前記コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体の量が約15mg/m2未満である、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記組成物が、週に1回投与される、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記組成物が、約3ヶ月を超えて中断なしに投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記組成物が実質的に界面活性剤を含まない、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記キャリアタンパク質がアルブミンである、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記アルブミン対コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体の比が約18:1未満である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記組成物が、前記キャリアタンパク質および前記コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含むナノ粒子を含む、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記キャリアタンパク質がアルブミンである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記アルブミン対前記コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体の比が約18:1未満である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記ナノ粒子が、200nm以下の平均直径を有する、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記組成物が、実質的に界面活性剤を含まない、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記組成物がNab−5404である、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
前記個体がヒトである、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項1】
個体における血管形成を阻害する方法であって、該個体に対して、キャリアタンパク質およびコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含む組成物を投与することを包含し、該組成物は血管形成を阻害するのに有効な量であって、かつ該組成物の量は、該個体において有意な細胞毒性を誘発する程、十分ではない、方法。
【請求項2】
個体における非腫瘍性血管形成関連疾患を処置する方法であって、該個体に対して、キャリアタンパク質およびコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含む組成物を投与することを包含し、該組成物は該非腫瘍性血管形成関連疾患を処置するのに有効な量である、方法。
【請求項3】
前記非腫瘍性血管形成関連疾患が眼の疾患である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記眼の疾患が、加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症、または血管新生緑内障である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記非腫瘍性血管形成関連疾患が循環器疾患である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記循環器疾患が再狭窄またはアテローム性動脈硬化症である、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記非腫瘍性血管形成関連疾患が関節リウマチまたは乾癬である、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物の量が、前記個体において有意な細胞毒性を誘発する程、十分ではない、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
個体におけるガンを処置する方法であって、該個体に対して、キャリアタンパク質およびコルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含む組成物を投与することを包含し、該組成物はガンを処置するのに有効な量であって、かつ該組成物の量は、該個体において有意な細胞毒性を誘発する程、十分ではない、方法。
【請求項10】
前記組成物中の前記コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体の量が前記コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体の対応するMTDの約15%未満である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記ガンが固形腫瘍である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ガンが、転移性の固形腫瘍である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれかに記載の方法であって、前記コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体が式(II):
【化7】
の化合物であり、
B1がメトキシ基またはメチルチオ基であり;
B2がメトキシ基またはメチルチオ基であり;
nが0〜8の整数であり;
YがCH2基であるか、またはnが1である場合は、式NHの基であり得る、
方法。
【請求項14】
YがCH2である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
nが1であり、かつYがNHである、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
B1およびB2が両方ともメチルチオ基である、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記化合物がIDN5404である、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記化合物がIDN5676である、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記組成物中の前記コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体の量が約15mg/m2未満である、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記組成物が、週に1回投与される、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記組成物が、約3ヶ月を超えて中断なしに投与される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記組成物が実質的に界面活性剤を含まない、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記キャリアタンパク質がアルブミンである、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記アルブミン対コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体の比が約18:1未満である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記組成物が、前記キャリアタンパク質および前記コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体を含むナノ粒子を含む、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項26】
前記キャリアタンパク質がアルブミンである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記アルブミン対前記コルヒチンまたはチオコルヒチン二量体の比が約18:1未満である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記ナノ粒子が、200nm以下の平均直径を有する、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記組成物が、実質的に界面活性剤を含まない、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
前記組成物がNab−5404である、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
前記個体がヒトである、請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2010−502603(P2010−502603A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526583(P2009−526583)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際出願番号】PCT/US2006/034365
【国際公開番号】WO2008/027055
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り
【出願人】(508061974)アブラクシス バイオサイエンス, エルエルシー (18)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際出願番号】PCT/US2006/034365
【国際公開番号】WO2008/027055
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り
【出願人】(508061974)アブラクシス バイオサイエンス, エルエルシー (18)
【Fターム(参考)】
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