説明

血管造影用の様々なサイズの多染性粒子

本発明は、血流、血液関門漏出、および血管漏出を評価するための、様々なサイズの多染性粒子を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2006年7月6日出願の米国仮出願第60/806,711の優先権を主張し、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、血管造影に有用な組成物と、血管漏出および血流の検出のための方法とに関する。いくつかの実施形態では、本発明の組成物と方法は、血液網膜関門の完全性を評価するため、および/または、血液網膜関門における破壊の程度を定量化するために、使用することができる。従って、本発明の組成物は、二次元、三次元の画像化、および類似技術のための造影剤として使用することができる。
【背景技術】
【0003】
網膜血管造影は、眼の生理学的状態と病理学的状態の研究のために眼科学で使用される技術である。例えば、血管造影は、失明の主要原因のうちの二つである、糖尿病性網膜症、加齢性黄斑変性症などの網膜疾患の評価のために、研究や臨床領域で有用であることが証明されている。一般に、フルオレセインなどの蛍光物質が患者に静脈内投与され、患者の網膜が血管造影検査によって観察される。健康な眼では、眼関門が、網膜血管を通してフルオレセインが硝子体もしくは他の眼組織に漏出するのを防ぐ。しかしながら、罹患した眼では、血液網膜関門は壊れ、糖尿病性網膜症の場合には硝子体へ、もしくは加齢性黄斑変性症の場合は網膜下腔へ、フルオレセインの漏出が起こってしまう。
【0004】
一般に用いられる血管造影検査の一つの限界は、使用される蛍光物質が、漏出の存在を“全か無か”でしか評価しないこと、あるいは、最も好ましい場合でも、血液網膜関門破壊の主観評価しか与えないことである。血液網膜関門および血液脳関門における破壊の量の定量化は、疾患進行のよりよい評価を与え、適切な処置および投薬量を選択する我々の技能を改善し、そのような処置および投薬量の効果の監視を可能にする。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、異なるサイズの粒子、ビーズ、コロイド、もしくは標識の可溶性複合体に結合した、またはその中に吸収もしくは封入された、異なる標識もしくは染料を用いる、多染性血管造影(PCA)に関する。そのような粒子、ビーズ、コロイド、および標識/染料の可溶性複合体は、本明細書ではまとめて粒子と称する。あるサイズの粒子のセットは、その標識もしくは染料によって、異なるサイズの粒子の別のセットと区別することができる。血液関門の漏出もしくは破壊を特異的に検出および定量化するために、複数のセットの粒子の組み合わせを使用することができる。従って、血液関門から漏出する粒子のサイズは、血液関門破壊の程度の指標を与える。小さな粒子と大きな粒子が漏出する場合は、血液関門の大きな破壊もしくは機能不全が存在し、一方、非常に小さな粒子のみの漏出は、小さな破壊もしくは機能不全が存在することを示唆する(図4を参照)。
【0006】
従って、本発明の一態様は、一連の粒子群を含む組成物であり、各粒子群は、異なる平均径と、個別シグナルを与える個別標識(例えば、個別波長の光を吸収もしくは放射する個別フルオロフォア)を有する。
【0007】
一般に、組成物中の各粒子群の粒子は、水性環境で可溶性である。いくつかの実施形態では、生分解性粒子が粒子群で使用される。他の実施形態では、粒子は、非生分解性物質から作られるか、あるいは生分解性物質と非生分解性物質の組み合わせから作られる。例えば、粒子は、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド‐コ‐グリコリド)(PLGA)、ポリアルキレングリコール、ポロキサマー、ポリビニルピロリデン、メタ
クリレート、ペプチド、タンパク質、プロテイノイドミクロスフェア(proteinoid microspheres)、脂質、リポソーム、もしくは多糖類から作ることができる。本発明の粒子で使用され得る多糖類は、セルロースおよび誘導体化セルロース(例えば、様々な低級アルキル置換基を持つセルロース)、または、糖類、リンゴ酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、イソクエン酸塩、もしくはα-ケトグルタル酸、フマル酸塩などの他のポリマーを含む。また、粒子は、ヒドロキシプロピルメタクリレート、無水マレイン酸や無水コハク酸塩などのホモポリマーもしくは混合ポリマーといったポリマーも含むことができる。
【0008】
異なる粒子群の粒子は、異なる分子量もしくはサイズを持つ。例えば、粒子は500ダルトン、もしくは800ダルトン、もしくは1000ダルトン、もしくは5000ダルトン程度に小さくてもよい。また、粒子は、100,000,000ダルトンもしくは1,000,000,000ダルトン程度の大きな分子量も持ち得る。いくつかの実施形態では、粒子は最大で3マイクロメートルの直径を持つ。他の実施形態では、粒子は、例えば約3ピコメートルから約3マイクロメートル、もしくは約10ピコメートルから約2.5マイクロメートル、もしくは約100ピコメートルから約2マイクロメートル、もしくは約1ナノメートルから1マイクロメートルのサイズにわたる直径を持ち得る。場合によっては、粒子は少なくとも約10ピコメートル、少なくとも約100ピコメートル、少なくとも約1ナノメートル、および/または少なくとも約10ナノメートルのサイズである。
【0009】
異なる染料と標識が粒子群の粒子に使用される。従って粒子は、例えば、蛍光性、発光性、赤外線、磁性、放射性の標識、もしくはそれらの組み合わせの標識を持ち得る。蛍光標識の例は、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、インドシアニングリーン、ローダミンレッド、パシフィックブルー、テキサスレッド、alexa-532、ヒドロキシクマリン、アミノクマリン、メトキシクマリン、アミノメチルクマリン、カスケードブルー、ルシファーイエロー、P-フィコエリトリン、R-フィコエリトリン、リサミンローダミンB、アロフィコシアニン、オレゴングリーン、テトラメチルローダミン、ダンシル、モノクロロビマン(monochlorobimane)、蛍光タンパク質、カルセイン、または、それらに結合した、それらに吸収された、あるいはそれらの中に封入された他の染料もしくは標識を含む。他の実施形態では、少なくとも一つの粒子群の標識は、クロム(III)、マンガン(II)、鉄(III)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、ネオジム(III)、サマリウム(III)、イッテルビウム(III)、ガドリニウム(III)、バナジウム(II)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)、エルビウム(III)、ランタン(III)、金(III)、鉛(II)、ビスマス(III)、ヨウ素131、ヨウ素123、ヨウ素125、テクニシウム99、インジウム111、リン32、レニウム188、レニウム186、ガリウム67、硫黄35、銅67、イットリウム90、トリチウム3、もしくはアスタチン211である。
【0010】
本発明の別の態様は、(a)本発明の粒子組成物を哺乳類に投与すること、(b)シグナルが哺乳類の血管の外側にあるかどうかを観察すること、(c)シグナルが哺乳類の血管の外側に放射される場合、哺乳類の血管漏出を定量化するために、哺乳類の血管の外側に放射されるシグナルのタイプを決定すること、を含む、哺乳類において血管漏出を定量化するための方法である。いくつかの実施形態では、血管漏出は哺乳類の血液網膜関門を通る漏出を含む。例えば、血液網膜関門を通る血管漏出を観察もしくは定量化する際には、シグナルは蛍光シグナルであり得、放射されるシグナルのタイプの決定は、シグナルの吸収波長もしくは放射波長の決定を含み得る。他の実施形態では、血管漏出は哺乳類の血液脳関門を通る漏出を含み得る。血液脳関門を通る血管漏出を観察もしくは定量化する際には、シグナルは常磁性もしくは放射性シグナルであり得る。
【0011】
哺乳類において血管漏出を定量化するための方法は、漏出を引き起こす血管内の孔径を特定するために、シグナルを、そのシグナルを放射する粒子群のサイズ範囲と相関させる
こと、ならびに、その孔径に数値を割り当てることによって、血管漏出を定量化するステップもまた含み得る。
【0012】
本発明の別の態様は、(a)本発明の多染性粒子組成物を哺乳類に投与すること、(b)色シグナルが哺乳類の血管の外側に放射されるかどうかを観察すること、(c)色シグナルが放射される場合、哺乳類の血管漏出を定量化するために、色シグナルの吸収波長もしくは放射波長を決定すること、を含む、哺乳類において血管漏出を定量化するための方法であり、ここで多染性粒子組成物は一連の粒子群を含み、各粒子群は異なる平均径と個別の色シグナルを有する。色シグナルが哺乳類の血管の外側に放射される場合、一つ以上の色粒子が血管から浸出(すなわち漏出)していることになる。いくつかの実施形態では、例えば、血管漏出は哺乳類の血液脳関門を通る漏出を含む。他の実施形態では、例えば、血管漏出は哺乳類の血液網膜関門を通る漏出を含む。本発明の方法は、漏出を引き起こす血管内の孔径を特定するために、色シグナルの吸収波長もしくは放射波長を、その波長を放射する粒子群のサイズ範囲と相関させること、ならびに、その孔径に数値を割り当てることによって、血管漏出を定量化することをさらに含み得る。孔径を特定した後、適切な治療薬および/または治療手段が投与および/または実行され得る。
【0013】
本発明の別の態様は、(a)本発明の標識粒子組成物を哺乳類に投与すること、(b)哺乳類の血管内のシグナルを観察すること、(c)哺乳類において血流の速度および/または血管のサイズを特定するためにシグナルのタイプを決定すること、を含む、哺乳類において血管を通る血流を観察するための方法であり、ここで標識粒子組成物は一連の粒子群を含み、各粒子群は異なる平均径と個別標識もしくはシグナルを有する。本方法は、血管の部分的なもしくは完全な閉塞などの血流の問題の特定を可能にするために適応され得る。どのタイプの標識もしくはシグナルが血管内に存在するかを観察することによって、閉塞の程度、もしくは血管の直径が決定され得る。大きなサイズの粒子が特異な点において血管を流れないようになっていることを観察することにより、血管内の閉塞が特定され得る。
【0014】
本発明の別の態様は、各粒子群が個別の直径サイズ範囲と個別の標識もしくは染料(例えば個別波長の光を吸収もしくは放射するフルオロフォア)を有する、一連の粒子群を含む組成物、および、その組成物を使用するための説明書を含む、キットもしくは製品である。いくつかの実施形態では、説明書は、哺乳類において血管漏出を検出および/または定量化する方法を記載する。他の実施形態では、説明書は、血流、血管径、および/または血管閉塞(部分的な、もしくはほぼ完全な血管閉塞のいずれか)を検出する方法を記載する。キットは、注射器、針、スワブ(swab)、カテーテル、もしくは消毒液などの他の有用な道具も含み得る。
【0015】
本発明の別の態様は、本発明の組成物のうちの一つを哺乳類の血管に投与すること、および、血管内の組成物の少なくとも一つの粒子群から少なくとも一つのシグナルを検出すること、を含む、哺乳類の血管内の血流および/または血流速度を観察するための方法である。本方法は、血管の直径を特定するために、シグナルを、そのシグナルを放射する粒子群のサイズ範囲と相関させることもまた含み得る。加えて、本方法は、血管の長さに沿って血管の直径が変化するかどうか、もしくはしばらく経ってから血管の直径が変化するかどうか、を特定することを含み得る。そのような方法は、血管に部分的閉塞があるかどうかを特定することもまた含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1A】図1A−Dは、フルオレセイン(102)の分子量および有効サイズが376ダルトンである、現在利用可能な手順に従って、フルオレセインナトリウム(102)を用いて実行された網膜血管の血管造影の特性を図示する。フルオレセインナトリウム(102)は橙褐色で、492 nmの最大λabsと518 nmの最大λemを有する。網膜(106)は、外側網膜血管を含む脈絡膜を内側網膜血管から分離する。図1Aは、フルオレセインと血漿タンパク質(104)の混合物(100A)を示す図であり、フルオレセイン分子(102)の20-30%は結合しておらず、70-30%は血漿タンパク質(104)に結合している様を図示している。
【図1B】図1Bは、正常な網膜(100B)におけるフルオレセイン(102)の動態を図示し、自由フルオレセイン分子(102)が脈絡膜血管から脈絡膜中に漏出し、バックグラウンド蛍光を引き起こす様を示す。
【図1C】図1Cは、脈絡膜もしくは外側血液網膜関門(100C)からの漏出を示す。
【図1D】図1Dは、内側(100D)血液網膜関門からの漏出を示す。従って、図1CおよびDは、異なるフルオレセイン漏出パターンと、異なる程度の血液網膜関門機能不全を図示する。
【図2A】図2A−Dは、現在利用可能な手順に従ってインドシアニングリーン(202; ICG)によって実行された血管造影を図示し、有効サイズ(30-70 kDa)の概念を説明する。わずか775ダルトンの分子量を持つ小さなインドシアニングリーン分子(202)の98%が、大きなタンパク質であるリポタンパク質とリン脂質(204)に結合している。インドシアニングリーン(202)は、800 nmの最大λabsと825 nmの最大λemを持つ緑色を有することに留意すべきである。この図では、網膜(206)が、外側網膜血管を含む脈絡膜を内側網膜血管から分離している。図2Aは、インドシアニングリーン分子(202)と血漿タンパク質、および他の血漿粒子(204)の混合物(200A)を示し、インドシアニングリーン分子(202)のほとんど全てが血漿タンパク質と他の血漿粒子(204)に結合している様を図示する。
【図2B】図2Bに示される通り、これらの大きなタンパク質(204)は、通常、正常な網膜において血液網膜関門からのICG(202)の漏出を防ぐ。
【図2C】図2Cは、脈絡膜もしくは外側血液網膜関門(200C)からの漏出を示す。
【図2D】図2Dは、内側(200D)血液網膜関門からの漏出を示す。従って、図1CおよびDは、異なるフルオレセイン漏出パターンと、異なる程度の血液網膜関門機能不全を図示する。
【図3】図3は、本発明の一実施形態である、異なるサイズの粒子(302、312、314、316)に結合した一連のフルオロフォアを含む組成物(300B)を図示し、粒子は大きな白丸であらわされ、フルオロフォアは小さな点であらわされる(302、304、306、308)。図示される通り、最終組成物は、異なるフルオロフォア(302、304、306、308)と異なるサイズの粒子との一連の個々の混合物(300A)から作られる。混合してフルオロフォアを粒子(310)に結合させた後、三種のフルオロフォアが異なるサイズの粒子(たとえば約500ダルトンから1ミクロンにわたるサイズを持つ、312、314、316)に結合する。一種のフルオロフォア(302)は結合せず、最小粒子種を構成する。従って、組成物(300B)は多数の粒子種を含み、制御されたサイズの各々で、異なる標識(もしくはフルオロフォア)(302、312、314、316)を持ち、標識もしくはフルオロフォアのタイプは、ビーズのサイズを示す。
【図4】図4は、血管における機能不全の程度、もしくは、血液網膜関門などの様々な血液関門における機能不全の程度を評価するための本発明の組成物の有用性を図示する。利用される組成物(300B)は、図3で示されたものと同じである、この概略図で図示される同じ標識粒子(302、312、314、316)を有する。従って、健常な血管(400A)では、実質的に標識粒子は全く血管から漏れず、原則的に機能不全は全く存在せず、機能不全の程度は、例えばステージ0もしくは(機能不全無し)と標識され得る。最軽度機能不全が存在する場合(400B)は、非常に小さなビーズ(302)が血管から漏れる。これは、ある小さな程度の機能不全が存在することを示唆し、これは、例えば最軽度もしくはステージ1の機能不全と格付けされ得る。中等度の機能不全が存在する場合(400C)は、非常に小さな粒子だけでなく、やや大きなビーズ(302および312)が血管から漏れる。これは、いくらか大きな程度の機能不全が存在することを示唆し、これは、例えば、中等度もしくはステージ2の機能不全と標識され得る。重度の機能不全が存在する場合(400D)は、小さな前述の粒子(302および312)だけでなく、いくらか大きな粒子(314)が血管から漏れる。これは、より大きな程度の機能不全が存在することを示唆し、これは、例えば、重度もしくはステージ3の機能不全と標識され得る。最重度の機能不全が存在する場合(400E)は、小さな粒子(302、312、314)だけでなくかなり大きな粒子(316)が血管から漏れ、さらに大きな程度の機能不全が存在し、これは、例えば、最重度もしくはステージ4の機能不全と標識され得る。
【図5】図5は、異なる発色団を持つ、異なるサイズの粒子製剤の分離を示すin-vitro実験を図示し、分離は0.2ミクロンの孔径を持つ膜による濾過によって実現された。0.2ミクロン未満のサイズのPLGA粒子結合フルオレセインと、0.2ミクロンより大きなサイズのPLGA粒子結合インドシアニングリーン(ICG)、および両方のタイプの粒子の混合物から構成される三セットの染料/混合物が作られた。各セットを二分量に等分して試験した。一分量目は0.2ミクロンフィルタで濾過し、二分量目は濾過しなかった。画像の下列は、左から右に、無濾過フルオレセイン‐PLGA粒子、無濾過フルオレセイン‐PLGAおよびインドシアニングリーン‐PLGAの粒子混合物、および無濾過インドシアニングリーン‐PLGA粒子を示す。画像の上列は、左から右に、濾過フルオレセイン‐PLGA粒子(自由にフィルタを通過する)、フルオレセイン‐PLGA粒子は自由にフィルタを通過し、一方インドシアニングリーン‐PLGA粒子は捕捉された、濾過混合物、および、フィルタに完全に捕捉された、濾過インドシアニングリーン‐PLGA粒子を示す。このin vitro実験は、選択的漏出の概念を説明する。
【図6A】図6Aおよび6Bは、現在利用可能なインドシアニングリーン(ICG)の手順(図6A)、および、PLGA粒子結合インドシアニン(ICG)を用いる本発明の手順(図6B)を用いて得られる血管造影画像を比較する。図6Aでは、2.5 mgのICGを含む1 mlの生理食塩水がウサギに投与された。
【図6B】図6Bでは、2.5 mgのICG粒子(3.3% ICG負荷)を含む1 mlの生理食塩水がウサギに投与された。その後、ウサギ網膜における染料および/または粒子のin vivo動態が観察された。図6Bに示される通り、粒子結合ICGは、より明るく鮮明な画像を生じた。自由ICGは組織に結合するが、粒子結合ICGは組織に結合しないので、粒子結合ICGの使用は、改良された、鮮明で明確な血管画像をもたらす。
【図7A】図7Aおよび7Bは、現在利用可能な自由フルオレセイン血管造影(図7A)、もしくは、粒子結合フルオレセインを利用する本発明の手順(図7B)を用いて得られる血管造影画像を比較する。二種のフルオレセイン製剤がウサギに投与され、ウサギ網膜における染料/粒子のin vivo動態が観察された。
【図7B】示される通り、粒子結合フルオレセインは、有意なバックグラウンドのない画像を生じた。自由フルオレセインは組織に結合するが、粒子結合フルオレセインは組織に結合しないので、粒子結合フルオレセインの使用は、バックグラウンド蛍光のない、改良された、鮮明で明確な血管画像をもたらす。
【図8A】図8A−Fは、ウサギに組成物の混合物を投与した後の、網膜における異なるサイズの標識群の選択的漏出を図示する。図8A−Cは、ICG結合粒子と自由フルオレセインの混合物の投与後の健康な網膜血管の血管造影画像である。図8Aは、正常なウサギ網膜においてICG結合粒子と自由フルオレセインの両方から検出された蛍光を示す。
【図8B】図8Bでは、ICG結合粒子が検出された。
【図8C】図8Cでは、フルオレセイン結合粒子が検出された。
【図8D】図8D−Fは、ICG結合粒子と自由フルオレセインの混合物をウサギに投与した後の、軽度機能不全の網膜血液関門の血管造影画像である。軽度網膜血液関門機能不全は、LPS(リポ多糖類20ナノグラム)の硝子体内注射によりブドウ膜炎(Uvietis)を誘発することによってウサギに誘発された。図8Dは、軽度機能不全ウサギ網膜血液関門において、ICG結合粒子および自由フルオレセインの両方から検出された蛍光を示す。正常なウサギ網膜では(図8A−C)、染料は全く漏出せず、一方軽度機能不全血液網膜関門モデルでは、小さな非結合フルオレセイン粒子が網膜血管から漏出し(図8Dおよび8Fの緑色)、一方粒子結合ICG(図8Dおよび8Eの赤)は漏出しなかったことに留意すべきである。
【図8E】図8Eでは、ICG結合粒子が検出された。
【図8F】図8Fでは、自由フルオレセインが検出された。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、個別のサイズで、個別に標識化された粒子もしくはビーズの異なる群の組成物を含む。本発明の組成物は、血液関門の外側(例えば硝子体内)で見られる粒子のサイズを検出することによって、血液関門(例えば血液網膜関門)の完全性を定量的に評価する方法で使用され得る。粒子のサイズは、どのタイプの染料もしくは標識が血液関門の外側に存在するかを観察することによって特定される。本発明の組成物は、また、血管を流れる粒子の速度およびサイズを検出することによって、血管を通る血流を評価もしくは検出する方法でも使用され得る(例えば、全身性もしくは限局性の問題による、血流の部分的なもしくは完全な閉塞、あるいは血流速度の低下を特定する)。従って、血管を通過する粒子のサイズが突然変化するかどうかを観察することによって、血管の部分的閉塞が検出され得る。これらの発生(例えば、漏出、部分的閉塞)を検出するために、異なる染料もしくは標識が、異なるサイズの粒子に結合されるか、吸収されるか、もしくは負荷されて、本発明の組成物を作り出す。
【0018】
本発明に従って、大きな粒子が血液関門から漏れる程度を観察することによって、血液関門における破壊の程度が定量的に評価される。例えば、血液網膜関門(BRB)の軽度機能不全の場合には、小さな粒子のみが漏出し、一方BRB機能不全がより重度の場合、大きなサイズの粒子が漏出する。粒子のサイズは、どの標識もしくは染料が血液関門から漏れるかを観察することによって検出される。血液関門漏出もしくは機能不全の重篤度は、血液関門から漏出する粒子のサイズによって格付けされ得る。従って、漏出する粒子は血液関門の(複数の)孔径を反映する。組成物粒子のほとんどが血管内に存在することは、血管がほぼ無傷であることの証拠となる。従って、検出された程度の血管漏出を適切に処置するために、治療薬と治療手段を使用することができる。
【0019】
血管を通る血流(および血流における閉塞の可能性)もまた、本発明の粒子組成物を用いて評価することができる。従って、本発明の組成物を用いて血流を観察する際には、大きな血管では大きな粒子と小さな粒子の混合物が検出されるが、小さな血管では小さな粒子が観察され得る。しかしながら、大きな血管で閉塞が発生した場合は、粒子のサイズの変化が閉塞から下流で観察される。具体的には、閉塞の上流で観察されたよりも、より多くの割合の小さな粒子が閉塞の下流で観察される。
【0020】
[粒子]
上述の通り、本発明の組成物は様々なサイズの標識粒子を含む。具体的には、組成物は一連の粒子群を含み、各粒子群は組成物中の他の粒子群の平均径とは異なる平均径を有する。さらに、各粒子群は、組成物中の他の粒子群の標識/信号と容易に区別可能な独特のシグナルを放射する、個別標識を有する。
【0021】
粒子群のサイズは、血液関門もしくは血管の漏出の重篤度の評価が可能となるように選択される。従って様々なサイズが使用される。一般に、約2から約20もしくは約2から約10の異なる粒子群サイズが組成物で利用される。いくつかの実施形態では、約2から約8、もしくは約2から約6の異なる粒子群サイズが組成物で利用される。粒子サイズは、分子量によって、もしくはサイズ(例えば直径)によって異なり得る。例えば、粒子は、500ダルトン、もしくは800ダルトン、もしくは1000ダルトン、もしくは5000ダルトン程度に小さくてもよい。粒子はまた、100,000,000ダルトンもしくは1,000,000,000ダルトン程度の大きな分子量も持ち得る。いくつかの実施形態では、粒子は最大で約3マイクロメートル、もしくは最大で約2マイクロメートル、もしくは最大で約1マイクロメートルの直径を持つ
。他の実施形態では、粒子は、例えば約10ピコメートル、もしくは約100ピコメートル、もしくは約1ナノメートル程度に小さな直径を持ち得る。従って、例えば、ビーズは約10ピコメートルから約3マイクロメートル、もしくは約100ピコメートルから約2マイクロメートル、もしくは約1ナノメートルから約1マイクロメートルにわたるサイズであり得る。いくつかの実施形態では、粒子は直径で約10ピコメートルから900ナノメートル、もしくは約1ナノメートルから約1マイクロメートルに及び得る。
【0022】
例えば、本発明の組成物では、ある粒子群は約1-2マイクロメートルの平均径を持ち得、組成物中の別の粒子群は約400-600ナノメートルの平均径を持ち得、さらに別の粒子群は約100-200ナノメートルの平均径を持ち得、さらに別の粒子群は約40-60ナノメートルの平均径を持ち得、さらなる群は約5-20ナノメートルの平均径を持ち得、最後の群は自由標識で構成され得る。
【0023】
粒子は、生体の体内で徐々に溶解する生分解性物質から作られ得る。あるいは、粒子は、非生分解性物質、または、生分解性物質と非生分解性物質の組み合わせから作られ得る。さらに、本発明の粒子で使用される物質は、被験対象に対して、何らかの実質的な毒性や他の有害性を持たない。一般に、粒子および/または粒子で使用される物質は、組織および生体分子への吸収もしくは吸着をするのに十分に疎水性ではない。本発明の粒子は、好ましくは、本発明の診断法を実行するために必要な時間(例えば約6〜24時間)にわたって、標識/染料もしくはその構造的完全性をほぼ損なわずに、水溶液に容易に懸濁もしくは溶解する。
【0024】
適切な生分解性物質は、in vivoで(例えば酵素作用によって)分解し得るか、もしくは体の水性環境で溶解し得る。適切な生分解性物質の例は、多糖類、ポリアルキレングリコール、タンパク質、ペプチド、プロテイノイドミクロスフェアなどを含む。いくつかの実施形態では、ポリ(D,L‐ラクチド‐コ‐グリコリド)(PLGA)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、二乳酸、乳酸‐グリコール酸コポリマーが使用され、これらはPoly Sciences Incorporated, Moorington, PAもしくはBirmingham Polymers(Durect Corporation, Pelham, AL)から購入することができる。例えば、ポリアルキレングリコール(例えばポリエチレングリコール)、タンパク質、プロテイノイドミクロスフェア(アミノ酸の熱処理混合物)、リポソームなどの、他の生分解性ポリマーも使用することができる。
【0025】
本明細書に説明される通り、フルオレセインナトリウムとインドシアニングリーンを負荷したポリ(D,L‐ラクチド‐コ‐グリコリド)(PLGA)のナノ粒子がうまく作成され、血液網膜関門漏出を検出するために使用される。
【0026】
本発明の組成物中の異なる粒子群の濃度は、当業者の要求通り様々となり得る。いくつかの実施形態では、組成物は、粒子の数もしくは標識シグナルのいずれかによって評価される通りに、およそ同じ量の各粒子群を含む。従って、組成物は、各粒子群がおよそ同じ数の粒子を持つ粒子群を持ち得る。あるいは、様々な粒子群が異なるシグナル強度を持つ異なる標識を含む時には、粒子群の組成物は、各粒子群が粒子の数に関係なくおよそ同じ量のシグナルを放射するように調節され得る。
【0027】
[標識]
様々な標識を本発明の粒子に使用することができる。原則的にいかなるタイプの標識も使用することができる。しかしながら、単一の装置で全て検出可能な様々な粒子群に使用するための標識を選択することが適切となり得る。従って、例えば、異なるフルオロフォアもしくは発光分子が様々な粒子群に組み込まれ得るか、あるいは、異なる放射性同位体、または異なる金属、または異なる磁性原子もしくは常磁性原子、または異なる赤外線もしくは紫外線の吸収分子もしくは放射分子、または異なる酵素が、粒子と共に使用され得る。
【0028】
いくつかの実施形態では、異なるフルオロフォアが異なる粒子群に使用される。例えば、粒子群は、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、インドシアニングリーン、ローダミンレッド、パシフィックブルー、テキサスレッド、alexa-532、ヒドロキシクマリン、アミノクマリン、メトキシクマリン、アミノメチルクマリン、カスケードブルー、ルシファーイエロー、P-フィコエリトリン、R-フィコエリトリン、リサミンローダミンB、アロフィコシアニン、オレゴングリーン、テトラメチルローダミン、ダンシル、モノクロロビマン、カルセイン、および他のフルオロフォア標識を持ち得る。
【0029】
現在、網膜血管造影は、典型的には、フルオレセイン血管造影(FA)および/またはインドシアニングリーン血管造影(ICGA)を含む。FAで使用される染料であるフルオレセインナトリウムは、376.27 Dの橙褐色染料で、70-80%は血漿タンパク質に結合し、一方残りの20-30%は結合していない。フルオレセインの最大吸収波長は492 nmで、最大放射波長は518である。他方で、インドシアニングリーン(ICG)‐775 D‐の約98%は、血漿タンパク質、リポタンパク質、およびリン脂質に結合し、結合していない染料は最小量である。インドシアニングリーンの最大吸収波長と最大放射波長は、それぞれ800 nmと825 nmである。これら二種の染料の吸収スペクトルと放射スペクトルにおける違いは、血管造影においてその可視性を特徴付ける上で重要な役割を果たす。網膜色素上皮(RPE)層は、フルオレセインの短波長の発光を遮断 し、従って脈絡膜血管は見えず、網膜血管のみが見える。他方で、インドシアニングリーンはより長い発光スペクトルを持ち、RPE層によって遮断されない。これらの特性は、網膜血管に加えて、インドシアニングリーンを用いた脈絡血管の可視化を可能にする。
【0030】
二種の染料間の第二の違いは、その結合特性である。網膜における染料分布の速度論は、部分的にその有効サイズに依存し、特に、結合していない場合は分子のサイズに、あるいは、結合した染料の場合は粒子‐染料複合体のサイズに依存する。ICGはほとんど完全にタンパク質、リポタンパク質、およびリン脂質に結合するので、これらの粒子の分布に従う。他方で、フルオレセインは70-80%のみが血漿タンパク質に結合し、分子の残りの20-30%は結合せず、結合ICGが抜けることができない小さな孔を通って漏出する能力を持つ(例えば、ICGを通さない多孔性の脈絡膜毛細血管からのフルオレセインの漏出)。染料の結合は、その物理化学的構造に関連する。しかしながら、粒子に負荷されると、染料は血漿タンパク質に結合する能力を失う。従って、本発明の粒子に結合すると、高いバックグラウンドシグナルや、高用量の染料を使用する必要性を含む、染料の組織吸収に関する問題が解決される。
【0031】
蛍光標識は、フルオロフォアが光を吸収および放射することができるような位置にある血管の検出には有用であるが、多くの血管は、そのような蛍光シグナルを侵襲的手段を用いずに検出することができるように都合よく位置していない。従って、非蛍光の標識および染料も本発明の粒子に使用されてもよく、これらの非蛍光の標識および染料のシグナルは、X線撮影、超音波、磁気共鳴などといった、非侵襲的手段によって検出することができる。
【0032】
例えば、粒子は放射性標識、磁性標識、常磁性標識、造影剤で標識され得、および/またはガスが粒子の内腔に組み込まれ得る。
【0033】
常磁性イオンの場合には、当業者は、例えばクロム(III)、マンガン(II)、鉄(III)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、ネオジム(III)、サマリウム(III)、イッテルビウム(III)、ガドリニウム(III)、バナジウム(II)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)、およびエルビウム(III)
を使用することを選択してもよく、ガドリニウムが好まれる。X線画像化などの他の状況で有用なイオンは、ランタン(III)、金(III)、鉛(II)、および特にビスマス(III)を含むが、限定はされない。
【0034】
診断的用途のための放射性同位体の場合には、ヨウ素131、ヨウ素123、ヨウ素125、テクニシウム99、インジウム111、リン32、レニウム188、レニウム186、ガリウム67、硫黄35、銅67、イットリウム90、トリチウム3、もしくはアスタチン211を使用し得る。
【0035】
標識は、利用可能な方法によって、粒子に吸収されるか、もしくは共有結合され得る。いくつかの実施形態では、粒子は同時に形成および標識される。他の実施形態では、粒子が製造されて、後に標識が付加される。標識および染料は粒子に直接的に吸収もしくは結合され得るか、あるいは、標識および染料は、リンカーもしくは適切な結合基を介して間接的に結合され得る。
【0036】
従って、例えば、ナノ析出(nanoprecipitation)技術(Chorny et al., 2002, Journal of Controlled Release 83:389-400および401-414)もしくはその改良法を用いてナノ粒子が調製され得る。例えば、ポリマー(例えばポリ(D,L‐ラクチド‐コ‐グリコリド)(PLGA))および標識が溶媒混合物(例えばアセトン、エタノールおよびジクロロメタン)に溶解され得、その後、穏やかに攪拌して、1%ポリ酢酸ビニル(PVA)を含む濾過蒸留水の水相に流し込んだ。有機層を一晩蒸発させた後、懸濁液を濾過し遠心分離した。粒子のペレットは水中に再懸濁され、凍結乾燥されてもよい。粒子は、水もしくはリン酸緩衝生理食塩水などの適切な生理学的溶媒に再懸濁されてもよい。
【0037】
あるいは、適切な連結基が製造の最中に粒子に付加されてもよい。例えば、リンカーおよび/または標識および染料の結合のために官能基が使用されてもよい。共有結合を形成することができる官能基は、例えば、-COOHと-OH、-COOHと-NH2、および-COOHと-SHを含む。例えば、連結基は、1)アミド(-N(H)C(=O)-, -C(=O)N(H)-)、2)エステル(-OC(=O)-, -C(=O)O-)、3)エーテル(-O-)、4)チオエーテル(-S-)、5)スルフィニル(-S(O)-)、もしくは6)スルフォニル(-S(O)2)結合を介して、検出可能な標識もしくは染料に都合よく結合され得る。そのような結合は、当該技術分野で既知の合成法を用いて、適切な官能基を持つ出発物質から形成することができる。
【0038】
[血液関門機能不全の検出]
本発明に従って、哺乳類の血管からの粒子の漏れを観察することによって、哺乳類において血液関門機能不全を検出および定量化することができる。粒子上の異なる標識により、粒子の漏れの検出が可能になり、漏れる粒子のサイズが異なることにより、血液関門機能不全の程度の診断が可能になる。従って、血液関門の外側で検出される標識のタイプ、およびいくつかの実施形態ではその濃度が、そのような診断を容易にする。
【0039】
そのような機能不全を定量化するために、漏れる粒子のタイプに基づいて数値が割り当てられ得る。従って、原則的に全く粒子の漏れが検出されない場合は、血液関門はグレード0、もしくは機能不全無しの血液関門と見なされ得る。非常に小さな粒子が血管から漏れる場合は、血液関門はグレード1、もしくは軽度機能不全の血液関門と見なされ得る。わずかに大きな粒子が血管から漏れる場合は、血液関門はグレード2、もしくは中等度機能不全の血液関門と見なされ得る。いくらか大きな粒子が血管から漏れる場合は、血液関門はグレード3、もしくはいくらか重度の機能不全の血液関門と見なされ得る。さらに大きな粒子が血管から漏れる場合は、血液関門はグレード4、もしくは最重度機能不全の血液関門と見なされ得る、などとなる。
【0040】
血液関門から漏れる粒子は、任意の適切な手段によって検出することができる。例えば
、粒子の漏れは、断層撮影法、改良断層撮影法、改良光干渉断層法(OCT)、改良共焦点走査型レーザー検眼鏡(SLO)、改良組み合わせ装置(SLOIOCT)、もしくは、組織中の標識もしくは染料(例えばフルオロフォア)を検出することができる任意の他の装置を用いて検出することができる。
【0041】
血液関門機能不全は、様々な組織、例えば、眼、脳、および他の組織において検出され得る。いくつかの実施形態では、本発明の組成物と方法は、血液網膜関門の完全性および/または機能不全を検出するために使用される。
【0042】
多くのタイプの血液関門機能不全を、本発明の組成物と方法によって検出することができる。検出することができる血液関門機能不全の例は、例えば、糖尿病性網膜症、黄斑変性症、CMV眼感染症、網膜炎、脈絡膜虚血、“acute sectorial choroidal ischemia” 、虚血性視神経症、およびその他の疾患を含む。
【0043】
[方法]
上述の通り、本発明の一態様は、(a)多染性粒子組成物を哺乳類に投与すること、(b)色シグナルが哺乳類の血管の外側に放射されるかどうかを観察すること、(c)色シグナルが放射される場合、色シグナルが何かを決定し、それによって哺乳類において血管漏出を定量化すること、を含む、哺乳類において血管漏出を定量化するための方法であり、多染性粒子組成物は一連の粒子群を含み、各粒子群は、個別の直径サイズ範囲と、個別シグナルを与える個別発色団を有する。色シグナルが哺乳類の血管の外側に放射される場合、一つ以上の色粒子が血管から浸出(すなわち漏出)していることになる。
【0044】
本発明はさらに、血液関門の完全性を調節し得る薬剤を特定するための方法を提供する。そのような方法は、血液関門の完全性を改良する有用な薬剤を特定するためだけでなく、薬剤に毒性があるか、または血液関門機能不全を引き起こすかどうかを評価するためにも、使用することができる。
【0045】
従って、本発明の一態様は、哺乳類において血液関門の完全性を調節し得る薬剤を特定するための方法であり、検査薬および本発明の粒子組成物を哺乳類に投与すること、ならびに、本発明の粒子組成物のみ(検査薬なし)が哺乳類に投与される時に観察される粒子の漏れと比較して、哺乳類の血液関門からの粒子の漏れを定量化することを含む。粒子の漏れを増加する検査薬は毒性がある可能性がある。
【0046】
あるいは、粒子の漏れを減少させる検査薬は、血液関門機能不全や不適切な血管漏出の処置のために役立つ有用な治療薬となり得る。従って、いくつかの実施形態では、哺乳類は機能不全の血液関門(例えば機能不全の網膜血液関門)を持ち得、本方法は、血液関門機能を改善する(すなわち、粒子の漏れを抑制する)検査薬のスクリーニング検査で使用される。従って、本発明の別の態様は、哺乳類において血液関門の完全性を促進し得る薬剤を特定するための方法であり、検査薬と本発明の粒子組成物を哺乳類に投与すること、ならびに、本発明の粒子組成物のみ(検査薬なし)が哺乳類に投与される時に観察される粒子の漏れと比較して、哺乳類の血液関門からの粒子の漏れを定量化することを含み、哺乳類は機能不全の血液関門を持つ。本発明のスクリーニング方法では、機能不全の血液関門を持つ哺乳類は、血液関門からの粒子の漏れを示す。
【0047】
本発明の別の態様は、哺乳類において血管を通る血流を検出および/または監視する方法である。この方法は、本発明の粒子組成物を哺乳類に投与すること、ならびに、哺乳類において血管を流れる粒子の速度およびタイプを観察することを含む。
【0048】
光が(複数の)血管(例えば網膜血管)を通して吸収および放射され得る時には、粒子
は蛍光染料で標識され得るが、血管がそれ程容易に観察されない時には、非蛍光標識が使用され得る。従って、光は、侵襲的手段を用いずに、脳、心臓、付属器官、およびその他の組織において血管から容易に検出可能な方法で吸収および放射されない可能性がある。そのような侵襲的手段を避けるために、粒子は、放射性標識、磁性標識、常磁性標識、造影剤で標識され得、および/またはガスが粒子の内腔に組み込まれ得る。
【0049】
常磁性イオンの場合には、当業者は、例えばクロム(III)、マンガン(II)、鉄(III)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、ネオジム(III)、サマリウム(III)、イッテルビウム(III)、ガドリニウム(III)、バナジウム(II)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)、およびエルビウム(III)を使用することを選択してもよく、ガドリニウムが好まれる。X線画像化などの他の状況で有用なイオンは、ランタン(III)、金(III)、鉛(II)、および特にビスマス(III)を含むが、限定はされない。さらに、診断的用途のための放射性同位体の場合には、ヨウ素131、ヨウ素123、ヨウ素125、テクニシウム99、インジウム111、リン32、レニウム188、レニウム186、ガリウム67、硫黄35、銅67、イットリウム90、トリチウム3、もしくはアスタチン211を使用し得る。
【0050】
従って、本発明の組成物は、血管内の血流を評価もしくは監視するために使用することができる。例えば、心臓、脳、内臓器官(例えば、肝臓、腎臓、腸、胃)、および付属器官内の血流を監視することができる。加えて、本発明の組成物と方法を用いて、心臓、脳、内臓器官(例えば、肝臓、腎臓、腸、胃)および付属器官につながる血管内でも血流を監視することができる。
【0051】
検査、試験、もしくは診断され得る哺乳類は、ヒト、ならびに、ウサギ、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマなどの家畜および動物園の動物を含む。
【0052】
[組成物]
本発明の標識粒子組成物は血液関門の完全性および/または機能不全の分析を可能にするため、かつ/あるいは血流を監視するために投与される。
【0053】
分析を可能にするために、組成物は、典型的には、単回投与、もしくは二回投与、もしくは分割投与で投与される。投薬量は変更することができ、例えば、体重あたり粒子組成物が少なくとも約0.01 mg/kgから約500〜750 mg/kg、少なくとも約0.01 mg/kgから約300〜500 mg/kg、少なくとも約0.1 mg/kgから約100〜300 mg/kg、もしくは少なくとも約1 mg/kgから約50〜100 mg/kgであり得るが、他の投薬量も有益な結果をもたらし得る。投与量は、どのタイプの標識が粒子で使用されるか、投与経路、血液関門破壊の進行もしくは進行していないこと、患者の体重、血圧、体調、健康状態、年齢を含むが限定はされない、様々な要因によって異なる。そのような要因は、当該技術分野で利用可能な動物モデルもしくはその他の試験系を利用して、臨床医によって容易に決定され得る。
【0054】
組成物は、本明細書に記載の通り、もしくは当該技術分野で利用可能な手順によって調製され、必要性または要求に応じて精製される。粒子組成物は、その後凍結乾燥もしくは安定化され得る。その濃度を適切な量に調節することができ、他の薬剤を随意に付加することができる。単位用量に含まれる所定の粒子群もしくはそれらの組み合わせの絶対重量は大きく変化し得る。例えば、約0.01から約2 g、もしくは約0.1から約500 mgの少なくとも二種の粒子群が投与され得る。あるいは、単位用量は、少なくとも二種の粒子群が約0.01 gから約50 g、約0.01 gから約35 g、約0.1 gから約25 g、約0.5 gから約12 g、約0.5 gから約8 g、約0.5 gから約4 g、もしくは約0.5 gから約2 gまで変化し得る。
【0055】
薬学的に許容可能な担体が本発明の粒子群に含まれ得る。“薬学的に許容可能”である
とは、製剤の他の成分と適合し、その受け手 に有害でないような担体、希釈剤、賦形剤、および/または塩を意味する。本発明の組成物で有用な担体および/または希釈剤の非限定的な例は、水、糖水溶液、pH 7.0-8.0リン酸緩衝生理食塩溶液などの生理学的に許容可能な緩衝生理食塩溶液などを含む。
【0056】
本発明の組成物は、静脈内投与、動脈内投与、もしくは血管内投与用に製剤され得る。
【0057】
[キット]
本発明はさらに、血液関門の完全性および/または破壊を検出するため、もしくは血流を検出するためのキットもしくは他の容器などのパッケージ化された組成物に関する。キットもしくは容器は、一連の粒子群を含む組成物を保持し、各粒子群は異なる平均径と個別標識を有する。血液関門の完全性および/または血液関門の破壊を検出するためのキットもしくは容器に説明書が提供される。
【0058】
あるいは、キットは、血流を検出および/または監視するため、および血流の問題を検出するために作られ得る。キットもしくは容器は一連の粒子群を含む組成物を保持し、各粒子群は異なる平均径と個別標識を有する。血流を検出および/または監視するため、ならびに血流の問題を検出するためのキットもしくは容器に説明書が提供される。
【0059】
本発明のキットは、また、本発明の組成物を投与するために役立つ道具も含むことができる。そのような道具は、注射器、スワブ、カテーテル、消毒液などを含む。
【0060】
以下の実施例は、本発明をさらに説明するが、それらを限定することを意図していない。
【0061】
[実施例1:材料と方法]
材料:ポリ(D,L‐ラクチド‐コ‐グリコリド)(PLGA)、MW = 10,000 Da(固有粘度:0.17 dL/g)をBirmingham Polymers(Durect Corporation, Pelham, AL)から購入した。インドシアニングリーン、フルオレセインナトリウム、およびポリ(ビニル‐アルコール)(PVA)はSigma-Aldrich(St Louis, MO)から調達した。ジクロロメタンはAcros(Morris Plains, NJ)から調達した。他の全化学薬品は分析グレードのもので、現地の供給元から調達した。
【0062】
ナノ粒子製剤:PLGAナノ粒子は、いくらか改良を加えたナノ析出技術(Chorny et al.,
2002, Journal of Controlled Release)を用いて調製した。簡潔に言うと、ポリマー(70 mg)と、インドシアニングリーンもしくはフルオレセインのいずれか(30 mg)を、15.5 mlのアセトン、4 mlのエタノール、および0.5 mlのジクロロメタンの混合物に溶解し、穏やかに攪拌しながら、1% PVAを含む濾過蒸留水(40 ml)の水相に流し入れた。37℃の温水浴(Buchi Heat Bath B490)中でRotovap(Buchi Rotavapor R200, Buchi Analytical Inc., New Castle, DE)を用いて有機相を一晩蒸発させた後、懸濁液を0.2μmのフィルタ(Fisher Scientific, Pittsburgh, PA)を通して濾過した後、4℃で30分間35,000 gで遠心分離した。粒子のペレットを再蒸留水(20 ml)に再懸濁し、凍結乾燥させた。
【0063】
[ナノ粒子特性]
粒子サイズ分析:再蒸留水中の希薄粒子懸濁液を、粒子の再懸濁を促進するために高速でボルテックスした(Vortex Genie, Scientific Industries, Bohemia, NY)。動的光散乱法に基づく粒子サイズ分析器であるZeta-sizer(Brookhaven Instruments Co., Holtsville, NY)を用いて、粒子サイズ、サイズ分布、およびゼータ電位を決定した。
【0064】
薬物負荷:凍結乾燥させたインドシアニングリーンもしくはフルオレセイン負荷のPLGA
粒子1 mgに、ガラスKimble管中で、1 mlの塩化メチレンを加え、管を密封した。管を高速でボルテックスした(Vortex Genie, Scientific Industries, Bohemia, NY)。1時間のボルテックス後、塩化メチレン抽出物をN-Evapを用いて蒸発させた。残留物質を、5分間高速でボルテックスすることで、1 mlの再蒸留水にもどした 。その後、溶液をUV分光光度計もしくは蛍光光度計を用いて分析した。塩化メチレン中にポリマー有り、もしくは無しで等量の染料(インドシアニングリーンもしくはフルオレセイン)を含む対照にも、同じ処理を施したところ、溶質のほぼ完全な回収が保証された。
【0065】
[動物実験]
オスDutch Beltedウサギを動物実験に用いた。ウサギは、それぞれ35および5 mg/Kg体重のケタミンとキシラジンの組み合わせを用いて麻酔をかけた。各々のウサギの右眼を、トロピカミドとフェニレフリンを用いて拡張させた。その後、フルオレセイン、インドシアニングリーン、フルオレセイン‐PLGA、インドシアニングリーン‐PLGA、もしくはそれらの組み合わせを、耳介静脈を通して注入した。フルオレセインとインドシアニンの同時モジュールを用いて、HRAII走査型レーザー検眼鏡(Heidelberg Engineering, Heidelberg Germany)を用いて、静止画像と動画像を取り込み、記録した。場合によっては、Adobe
Photoshop (7.0)を用いて網膜血管造影写真の画質をさらに高めた。全動物は、Columbia
University Institutional Animal Care and Use CommitteeおよびAssociation of Research in Vision and Ophthalmologyの指針に従って取り扱った。
【0066】
[実施例2:血液網膜関門機能不全の検出]
この実施例は、異なるサイズ、異なる標識の粒子の組成物が血液網膜関門の破壊を検出するために使用され得ることを示す。
【0067】
[濾過実験が粒子の異なるサイズを説明する]
図5に示される通り、異なる発色団を持つ異なるサイズの粒子製剤が作られた。異なるサイズの粒子の分離および検出は、異なる孔径を持つ膜を通す濾過によって行った。従って、図5に示される通り(下列、右端)、二種の粒子群の組成物が調製された。この組成物は図5に示される(下列、中央)。組成物は、図5で分離された形で示されている(下列、左)小さなフルオレセイン標識PLGA粒子と、図5に示されている(下、右)大きなインドシアニングリーン‐PLGA粒子とを含んでいた。従って、組成物はフルオレセイン‐PLGAとインドシアニングリーン‐PLGAの混合物、およびインドシアニングリーン‐PLGAを含んでいた。
【0068】
図5の上列は、フルオレセイン標識粒子が小さな粒子であり、インドシアニングリーン標識粒子が大きな粒子であることを説明する。従って、フルオレセイン‐PLGA粒子は0.2ミクロンフィルタを通って自由に通過し(図5、上、左)、一方インドシアニングリーン‐PLGAは0.2ミクロンフィルタを通過しなかった(図5、上、右)。二種の粒子の混合物が濾過されると、インドシアニングリーン‐PLGAは通過しなかったが、フルオレセイン‐PLGAは通過した(図5、上、中央)。従って、インドシアニングリーン‐PLGA粒子は0.2ミクロンよりも大きな平均径を持ち、一方フルオレセイン‐PLGA粒子は0.2ミクロンよりも小さな平均径を持っていた。
【0069】
[本発明の組成物が血液網膜関門の機能不全を検出する]
現在利用可能な手順に対する、本発明の組成物と方法によって検出された健康なステージ0の血液網膜関門の画像の比較が図6に示される。図6Aは、現在利用可能な手順と自由インドシアニングリーン(ICG)を用いて得られた一連の血管造影画像を示す。図6Bは、PLGA粒子に結合したインドシアニン(ICG)を用いる本発明の手順を用いて得られた一連の血管造影画像を示す。二種のICG製剤は、ウサギの耳介静脈に投与され、ICG製剤のin vivo動態がウサギ網膜において観察された。示される通り、粒子結合ICGは、より明る
くより鮮明な画像を生じた。自由ICGは組織に結合するが、粒子結合ICGは組織に結合しないので、粒子結合ICGの使用は、明瞭で鮮明な改良された血管画像を提供する。
【0070】
図7は、現在利用可能な自由フルオレセイン血管造影(図7A)、もしくはフルオレセインが粒子に結合した本発明の組成物(図7B)を用いて得られた血管造影画像の比較を示す。二種のフルオレセイン製剤は、ウサギの耳介静脈に投与され、ウサギ網膜におけるin vivo動態が観察された。粒子結合フルオレセインは、ほとんどバックグラウンドのない画像を生じた(図7B)。自由フルオレセインは組織に結合するが、粒子結合フルオレセインは組織に結合しないので、粒子結合フルオレセインの使用は、バックグラウンド蛍光のない、改良された明瞭で鮮明な血管画像を提供する。
【0071】
図8A−Fは、ウサギに組成物の混合物を投与した後の、網膜における異なるサイズの標識群の選択的漏出を図示する。図8A−Cは、ICG結合粒子と自由フルオレセインの混合物の投与後の健康な網膜血管の血管造影画像である。図8Bでは、ICG結合粒子が検出され、一方図8Cではフルオレセイン結合粒子が検出された。図8Aは、正常なウサギ網膜においてICG結合粒子と自由フルオレセインの両方から検出された蛍光を示す。図8D−Fは、ウサギにICG結合粒子と自由フルオレセインの混合物を投与した後の、軽度機能不全の網膜血液関門の血管造影画像である。軽度網膜血液関門機能不全は、LPS(リポ多糖類20ナノグラム)の硝子体内注射によりブドウ膜炎を誘発することによってウサギに誘発された。図8EではICG結合粒子が検出され、一方図8Fでは自由フルオレセインが検出された。図8Dは、軽度機能不全ウサギ網膜血液関門において、ICG結合粒子と自由フルオレセインの両方から検出された蛍光を示す。正常なウサギ網膜(図8A−C)では染料は全く漏出せず、一方軽度機能不全の血液網膜関門モデルでは、小さな非結合フルオレセイン粒子が網膜血管から漏出し(図8Dおよび8Fにおける血管の外側の明るい範囲(原物では緑))、一方粒子結合ICG(図8DおよびEにおける明るい血管(原物では赤))は漏出しなかった。
【0072】
さらなる研究をウサギで行い、血液網膜関門におけるステージ3の機能不全を説明した。そのような機能不全は、自由フルオレセインのみ、もしくは、インドシアニングリーン‐PLGA粒子と自由フルオレセインの組み合わせで検出された。血液網膜関門の破壊は、LPS(リポ多糖類20ナノグラム)の硝子体内注射によりブドウ膜炎を誘発することによって誘発された。自由フルオレセインとインドシアニングリーン‐PLGA粒子が投与されると、自由な非結合フルオレセインのみが血液網膜関門を通して漏出し、一方インドシアニングリーン粒子は漏出しなかった。
【0073】
本明細書で参照された、もしくは言及された全ての特許および出版物は、本発明が属する技術分野の当業者の技術レベルを示し、そのような参照された特許もしくは出版物の各々は、参照によりその全体が個別に組み込まれているかのように、あるいはその全体が本明細書に説明されているかのように、参照により同程度に本明細書に組み込まれる。出願人は、そのような引用された特許もしくは出版物の任意のものから、ありとあらゆる資料および情報をこの明細書に物理的に組み込む権利を留保する。
【0074】
本明細書に記載の特定の方法および組成物は、好ましい実施形態を代表するものであり、例示であって、本発明の範囲についての限定としては意図されない。他の対象物、態様、および実施形態は、この明細書を検討することで当業者が思い当たるものであり、請求の範囲によって規定される本発明の精神の内に包含される。本発明の範囲と精神から逸脱することなく、本明細書に開示された発明に、様々な置換および変更がなされてもよいことが、当業者には容易に明らかとなるだろう。本明細書に例示的に記載された本発明は、不可欠なものとして本明細書に特に開示されていない、任意の要素(単数もしくは複数)または限定(単数もしくは複数)がなくても、適切に実行され得る。本明細書に例示的に記載された方法およびプロセスは、異なるステップの順序で適切に実行されてもよく、それらは本明細書で、もしくは請求項で示されたステップの順序に必ずしも限定されない。本明細書および添付の請求項で使用される通り、単数形“a”、“an”、および“the”は、文脈で他に明確な指示がない限り、複数形の言及を含む。従って、例えば、“宿主細胞”という言及は、そのような宿主細胞の複数(例えば、培養物もしくは集団)などを含む。いかなる状況においても、本特許出願は、本明細書で具体的に開示された特定の実施例もしくは実施形態もしくは方法に限定されるとは解釈されない。いかなる状況においても、本特許出願は、いかなる審査官、もしくは特許商標局のいかなる他の局員もしくは職員によってなされる、いかなる声明によっても、そのような声明が出願人による応答書類で具体的にかつ無制限もしくは無条件に明示的に採用されない限り、限定されるとは解釈されない。
【0075】
使用されている用語および表現は、限定ではなく説明の用語として使用され、そのような用語および表現の使用においては、示され記載された特徴のいかなる均等物もしくはそれらの一部を除外する意図はないが、請求された本発明の範囲内で様々な変更が可能であることが理解される。従って、本発明は好ましい実施形態と任意の特徴によって具体的に開示されているが、本明細書に開示された概念の変形および変更が当業者によって用いられてもよく、そのような変形および変更は、添付の請求項によって規定される本発明の範囲内にあると見なされることが理解されるだろう。
【0076】
本発明は本明細書に広く一般的に記載されている。一般的な開示に含まれる狭い種概念および下位類概念群 の各々も、本発明の一部を成す。これは、削除された構成要素が本明細書に具体的に列挙されているかどうかに関わらず、類概念から任意の対象を除去する条件もしくは消極的な限定付きで、本発明の一般的記述を含む。
【0077】
加えて、本発明の特徴もしくは態様がマーカッシュグループで記載される場合、当業者は、それによって本発明が、任意の独立メンバーもしくはマーカッシュグループのメンバーのサブグループに関しても記載されることがわかるだろう。
【0078】
他の実施形態は次の請求項の内にある。加えて、本発明の特徴もしくは態様がマーカッシュグループで記載される場合、当業者は、それによって本発明が、任意の独立メンバーもしくはマーカッシュグループのメンバーのサブグループに関しても記載されることがわかるだろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各粒子群が、個別シグナルを与える個別標識と、組成物中の他の粒子群と異なる平均径とを有する粒子を含む、一連の粒子群を含む組成物。
【請求項2】
少なくとも一つの粒子群が生分解性粒子を含む、請求項1の組成物。
【請求項3】
少なくとも一つの粒子群が非生分解性粒子を含む、請求項1の組成物。
【請求項4】
少なくとも一つの粒子群が非生分解性物質と生分解性物質の組み合わせを含む、請求項1の組成物。
【請求項5】
各粒子群が水性環境で可溶性である、請求項1−4のいずれか一項の組成物。
【請求項6】
前記標識が粒子に共有結合するか、粒子に吸収されるか、粒子内に封入されるか、もしくはそれらの組み合わせである、請求項1−5のいずれか一項の組成物。
【請求項7】
前記標識が、蛍光性、発光性、赤外線、磁性、放射性、もしくはそれらの組み合わせである、請求項1−6のいずれか一項の組成物。
【請求項8】
少なくとも一つの粒子群が、ポリ(ラクチド)、ポリ(グリコリド)、ポリ(ラクチド‐コ‐グリコリド)、ポリアルキレングリコール、ポロキサマー、ポリビニルピロリドン、ペプチド、タンパク質、プロテイノイドミクロスフェア、脂質、リポソーム、多糖類、もしくはそれらの組み合わせを含む、請求項1−7のいずれか一項の組成物。
【請求項9】
前記タンパク質がアルブミン である、請求項8の組成物。
【請求項10】
前記組成物が1ピコメートル から3マイクロメートルにわたるサイズの平均径を持つ粒子群を含む、請求項1−9のいずれか一項の組成物。
【請求項11】
前記組成物が10ピコメートルから900ナノメートルにわたるサイズの平均径を持つ粒子群を含む、請求項1−9のいずれか一項の組成物。
【請求項12】
前記組成物が1ナノメートルから1マイクロメートルにわたるサイズの平均径を持つ粒子群を含む、請求項1−9のいずれか一項の組成物。
【請求項13】
少なくとも一つの粒子群のための前記標識が、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、インドシアニングリーン、ローダミンレッド、パシフィックブルー、テキサスレッド、alexa-532、ヒドロキシクマリン、アミノクマリン、メトキシクマリン、アミノメチルクマリン、カスケードブルー、ルシファーイエロー、P-フィコエリトリン、R-フィコエリトリン、リサミンローダミンB、アロフィコシアニン、オレゴングリーン、テトラメチルローダミン、ダンシル、モノクロロビマン、カルセイン、蛍光タンパク質、もしくはそれらの組み合わせを含む、請求項1−12のいずれか一項の組成物。
【請求項14】
少なくとも一つの粒子群のための前記標識が常磁性イオンである、請求項1−13のいずれか一項の組成物。
【請求項15】
前記常磁性イオンが、クロム(III)、マンガン(II)、鉄(III)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、ネオジム(III)、サマリウム(III)、イッテルビウム(III)、ガドリニウム(III)、バナジウム(II)、テルビウム(III)、ジスプ
ロシウム(III)、ホルミウム(III)、もしくはエルビウム(III)である、請求項13の組成物。
【請求項16】
少なくとも一つの粒子群のための前記標識が、ランタン(III)、金(III)、鉛(II)、もしくはビスマス(III)である、請求項1−14のいずれか一項の組成物。
【請求項17】
少なくとも一つの粒子群のための前記標識が、ヨウ素131、ヨウ素123、ヨウ素125、テクニシウム99、インジウム111、リン32、レニウム188、レニウム186、ガリウム67、硫黄35、銅67、イットリウム90、トリチウム3、もしくはアスタチン211である、請求項1−14のいずれか一項の組成物。
【請求項18】
請求項1−17のいずれか一項の前記組成物と、哺乳類において血管漏出を定量化するために前記組成物を使用するための説明書とを含む、キットもしくは製品。
【請求項19】
請求項1−17のいずれか一項の前記組成物と、哺乳類において血流および/または血流速度を監視するために前記組成物を使用するための説明書とを含む、キットもしくは製品。
【請求項20】
注射器、針、スワブ、カテーテル、もしくは消毒液をさらに含む、請求項16もしくは17のキット。
【請求項21】
(a)請求項1−17のいずれか一項の前記組成物を哺乳類に投与するステップと、(b)シグナルが前記哺乳類の血管の外側にあるかどうかを観察するステップと、(c)シグナルが前記哺乳類の血管の外側に放射される場合、前記哺乳類の血管の外側に放射されるシグナルのタイプを決定し、前記哺乳類において血管漏出を定量化するステップとを含む、哺乳類において血管漏出を定量化するための方法。
【請求項22】
前記血管漏出が、哺乳類の血液網膜関門を通る漏出を含む、請求項21の方法。
【請求項23】
前記血管漏出が、哺乳類の脈絡膜、網膜色素上皮、もしくは内側血液網膜関門を通る漏出を含む、請求項21の方法。
【請求項24】
前記シグナルが、蛍光性、発光性、赤外線、磁性、放射性、もしくはそれらの組み合わせである、請求項21−23のいずれか一項の方法。
【請求項25】
少なくとも一つの粒子群のための前記標識が、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、インドシアニングリーン、ローダミンレッド、パシフィックブルー、テキサスレッド、alexa-532、ヒドロキシクマリン、アミノクマリン、メトキシクマリン、アミノメチルクマリン、カスケードブルー、ルシファーイエロー、P-フィコエリトリン、R-フィコエリトリン、リサミンローダミンB、アロフィコシアニン、オレゴングリーン、テトラメチルローダミン、ダンシル、モノクロロビマン、もしくはカルセインを含む、請求項21−24のいずれか一項の方法。
【請求項26】
放射された前記シグナルのタイプを決定するステップが、前記シグナルの吸収波長もしくは放射波長を決定するステップを含む、請求項21−25のいずれか一項の方法。
【請求項27】
前記血管漏出が、哺乳類の血液脳関門を通る漏出を含む、請求項21の方法。
【請求項28】
前記シグナルが常磁性もしくは放射性シグナルである、請求項21もしくは27の方法。
【請求項29】
少なくとも一つの粒子群のための前記標識は、クロム(III)、マンガン(II)、鉄(III)、鉄(II)、コバルト(II)、ニッケル(II)、銅(II)、ネオジム(III)、サマリウム(III)、イッテルビウム(III)、ガドリニウム(III)、バナジウム(II)、テルビウム(III)、ジスプロシウム(III)、ホルミウム(III)、エルビウム(III)、ランタン(III)、金(III)、鉛(II)、ビスマス(III)、ヨウ素131、ヨウ素123、ヨウ素125、テクニシウム99、インジウム111、リン32、レニウム188、レニウム186、ガリウム67、硫黄35、銅67、イットリウム90、トリチウム3、もしくはアスタチン211である、請求項21もしくは27の方法。
【請求項30】
前記方法は、前記漏出を引き起こす前記血管内の孔径を特定するために、前記シグナルを、そのシグナルを放射する前記粒子群のサイズ範囲と相関させること、および、その孔径に数値を割り当てることによって、前記血管漏出を定量化するステップをさらに含む、請求項21−29のいずれか一項の方法。
【請求項31】
(a)哺乳類に多染性蛍光粒子組成物を静脈内投与するステップと、(b)前記哺乳類の網膜内で蛍光が放射されるかどうかを観察するステップと、(c)蛍光が放射される場合、前記蛍光の吸収波長もしくは放射波長を決定して、前記哺乳類において血液網膜関門破壊を定量化するステップと、を含み、前記多染性粒子組成物は一連の粒子群を含み、各粒子群は個別の直径サイズ範囲と、個別波長の光を放射する個別フルオロフォアとを有する、哺乳類において血液網膜関門破壊を定量化するための方法。
【請求項32】
請求項1−17のいずれか一項の前記組成物を哺乳類の血管に投与するステップと、前記血管内の前記組成物の少なくとも一つの粒子群から少なくとも一つのシグナルを検出するステップと、を含む、哺乳類の血管において血流および/または血流速度を観察するための方法。
【請求項33】
前記血管の直径を特定するために、前記シグナルを、そのシグナルを放射する前記粒子群のサイズ範囲と相関させるステップをさらに含む、請求項32の方法。
【請求項34】
前記血管の前記直径が、前記血管の長さに沿って、もしくはしばらく経ってから変化するかどうかを特定するステップをさらに含む、請求項32もしくは33の方法。
【請求項35】
前記血管が部分的閉塞を有するかどうかを特定するステップをさらに含む、請求項32−34のいずれか一項の方法。
【請求項36】
各粒子群が、異なる平均径と、個別シグナルを与える個別標識とを有する粒子を含む、哺乳類において血液関門破壊を検出および/または定量化するための組成物の調製のための、一連の粒子群の使用。
【請求項37】
各粒子群が、異なる平均径と、個別シグナルを与える個別標識とを有する粒子を含む、哺乳類において血流を検出および/または定量化するための組成物の調製のための、一連の粒子群の使用。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図8D】
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【図8E】
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【図8F】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−542691(P2009−542691A)
【公表日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−518379(P2009−518379)
【出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【国際出願番号】PCT/US2007/015546
【国際公開番号】WO2008/005514
【国際公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(505346702)ザ トラスティーズ オブ コロンビア ユニヴァーシティ イン ザ シティ オブ ニューヨーク (12)
【出願人】(508221224)ボード オブ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ネブラスカ (10)
【Fターム(参考)】