説明

衛星搭載用中継器

【課題】 地上から送られてくる通信信号の周波数再配置行う衛星搭載用中継器において、チャネライザとコンバイナの間をスイッチマトリクスにより任意に接続してマルチキャスト送信を行う場合に、中継器を構成するディジタル回路の規模が増大するという問題があった。
【解決手段】 マルチキャスト送信の行われる回線が限られることから、これらの回線専用にマルチキャスト送信専用のスイッチマトリックスを設けることで、中継器のスイッチマトリックスの回路規模を削減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工衛星(以下、衛星)に搭載される衛星搭載用中継器に関する。
【背景技術】
【0002】
通信衛星は、地上に設置された地球局からの通信信号を受信し、受信した信号からフィルタにより通信信号のスペクトルを分離し、分離した各々のスペクトルについて、その周波数を変換し、周波数変換した通信信号を地上に設置された端末へ送出する。同様に、通信衛星では、地上に設置された端末からの通信信号を受信し、受信した信号からフィルタにより通信信号を分離し、その周波数を変換し、周波数変換した通信信号を地上に設置された地球局へ送出する。一般に、受信信号から通信信号を分離し、周波数変換する機器は、中継器と呼ばれる。従来、この中継器は、アナログフィルタやミキサ等のアナログ回路により構成されてきたが、中継器の高機能化の要請から、これらフィルタや周波数変換処理機能の一部を、ディジタル信号処理で行う中継器が望まれている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2006−516867号公報
【0004】
図5は、特許文献1に記載されるディジタル回路により構成された中継器の一部構成を示すブロック図である。以下では、地球局からのアップリンク信号を受信し、その信号を衛星に搭載された中継器を用いてダウンリンク信号として送出して、地上端末に中継する場合を例に、従来の中継器及び衛星ペイロードについてその構成例及び動作例を説明する。
【0005】
図5に示す中継器は、3つのマルチポートDSP(Digital Signal Processor)スライス112(112A−112C)を有する例である。従来の衛星に搭載された中継器213は、フィーダーリンク(衛星と地上との通信回線)を構成する地上局からの信号が、アンテナ、周波数変換器等のアナログ回路を経て、入力ポート101へ入力される。実際の衛星では、マルチポートDSP(Digital Signal Processor)スライス112の個数は任意の数となっている。
【0006】
図において、AD変換器102(102A−102C)は、入力ポート101の受信アナログ信号をディジタル信号に変換する。チャネライザ103(103A−103C)は、AD変換器102の出力であるディジタル信号を複数の周波数に分割するフィルタバンク機能を有する。ディジタル切替機構104(104A−104C)は、チャネライザ103で複数の周波数に分割された信号を、任意のディジタルコンバイナ105(105A−105C)へ接続するためのスイッチマトリックスである。ここで、複数のマルチポートDSPスライス112間でチャネライザ103の出力をコンバイナ105に接続(ルーチング)するため、中継器はスライス間の接続配線(バス)である相互接続線110、リターンパス111を有する。これらディジタル切替機構104、相互接続線110、及びリターンパス111を有することで、中継器は任意のチャネライザ103A−103Cの出力を、任意のコンバイナ105A−105Cへ接続することが可能である。コンバイナ105は、ディジタル切替機構104から入力される信号を周波数軸上に再配置する。周波数軸上に再配置された通信信号は、DA変換器106によりアナログ信号に変換される。DA変換器106の出力であるアナログ信号は出力ポート107(107A−107C)を介して、周波数変換器、増幅器やアンテナ等へ出力され、地上の端末へ送信される。
【0007】
図6は図5に示す中継器を用いた衛星ペイロードの構成例を示す図であり、以下では、図6を用いて衛星ペイロードの動作を説明する。図6においては、図5の符号102が図6の符号203に、図5の符号103が図6の符号204に相当し、図5の符号104、110、及び111が図6の符号206に相当する。更に、図5の符号105が図6の符号208に、図5の符号106が図6の符号209に相当する。
【0008】
複数のチャネルの信号が周波数軸上で多重化されたアップリンクの信号はアンテナ201で受信された後、周波数変換器202にて、中継器213で処理できる周波数帯に周波数変換(ダウンコンバート)される。ダウンコンバートされた信号は中継器213に入力される。ここで、中継器213は任意の数のアンテナ201、周波数変換器202が接続される。
【0009】
図6は3系統のアンテナ201、周波数変換器202を接続した例を示している。中継器213では、AD変換器203(203A−203C)により、受信信号を標本化及び量子化してディジタル信号を得る。このディジタル化された信号は、チャネライザによってチャネル単位で任意の周波数(サブバンド)に分割される。図6の符号205に示す太線ラインは、この周波数の分割された様子を模式的に示したものである。サブバンドに分割された信号は、スイッチマトリックス206により選択された任意の経路を通過し、コンバイナ208へ入力される。ここで符号207に示す太線ラインは、マトリックス206を通過した信号がコンバイナ208に入力される様子を模式的に示したものである。ここで、コンバイナ208(208A−208C)では、入力ポート207に入力された信号を、それぞれ異なる周波数に変換し合成して、各アンテナ211(211A−211C)から送信される信号を生成する。
【0010】
図6では、チャネライザ204Aの出力205Aは、コンバイナ208Aの入力207Aに接続されており、チャネライザ204Aの出力205Bは、コンバイナ208の複数のポートに接続されることで、異なる複数の周波数にてマルチキャスト送信(同報送信)する例を示している。また、チャネライザ204Aの出力205Cは、コンバイナ208Aと208Bに接続されており、異なったアンテナ(ビーム)間でマルチキャスト送信する例を示している。コンバイナ208は、入力された信号を周波数軸上で合成した結果を出力として、DA変換器209(209A−209C)へ送る。DA変換器209はコンバイナ208出力のディジタル信号をアナログ信号に変換する。変換されたアナログ信号は周波数変換器210(210A−210C)でダウンリンクの周波数へ変換した後に、ダウンリンク用のアンテナ211(211A−211C)から送信電波として送出される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
以上のように構成された従来の中継器では、チャネライザ204の任意の出力205を、ディジタル信号処理によってコンバイナ208の任意の入力207へ接続するため、スイッチマトリックス206のディジタル回路構成が複雑になるという課題がある。
【0012】
例えば入力Mポート(Mは正の整数)、出力Nポート(Nは正の整数)のスイッチマトリックスを構成する場合、M×N個のスイッチが必要となり、回路規模が大きくなる。
また、図5を用いて説明したとおり、スイッチマトリックスは、ディジタル切替機構104、及び相互接続線110、リターンパス111で構成され、更にディジタル切替機構104は、複数のASIC(Application Specific Integrated Circuit)で構成されるなど複雑な構成となっている。
【0013】
このため、回路規模の増大により製造コストや回路の実装面積が増えるとともに、回路構成の複雑化により中継器のシステム信頼性を低下させることにも繋がる。
【0014】
本発明は、係る課題を解決するためになされたものであり、スイッチマトリックスでの経路選択の自由度を制限することで、スイッチマトリックスの回路規模を削減した衛星搭載用中継器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明による衛星搭載用中継器は、受信したアナログ信号をディジタルデータに変換して出力するAD変換器と、上記AD変換器から出力されるディジタルデータを周波数分割し、周波数分割した信号をそれぞれ出力するチャネライザと、上記各入力ポートに入力される周波数の異なる信号を、周波数変換して合成するコンバイナと、上記チャネライザにより周波数分割された一部の複数の出力信号を、複数のスイッチにより接続先を切替えて、上記コンバイナの一部の複数の入力ポートにそれぞれ振り分けて入力するスイッチマトリックスと、上記コンバイナにより合成された信号をアナログ信号に変換するDA変換器と、上記チャネライザにより周波数分割された他の出力信号を、上記コンバイナの他の入力ポートに直接接続する直接接続経路とを備えたものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、チャネライザとコンバイナの間を直接接続する接続経路を設けることで、中継器のスイッチマトリックスの回路規模を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る実施の形態1による衛星搭載用中継器を用いた衛星通信用の衛星ペイロードの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る実施の形態1による衛星搭載用中継器の信号伝送経路を示すブロック図である。
【図3】本発明に係る実施の形態2による衛星搭載用中継器を用いた衛星通信用の衛星ペイロードの構成を示すブロック図である。
【図4】本発明に係る実施の形態2による衛星搭載用中継器の信号伝送経路を示すブロック図である。
【図5】従来の衛星搭載用中継器のディジタル回路構成を示すブロック図である。
【図6】従来の衛星搭載用中継器を用いた衛星通信用の衛星ペイロードの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施の形態1.
以下、本発明に係る実施の形態1による衛星搭載用中継器(以下、中継器)について説明する。
移動体衛星通信システムは、地球局からのアップリンクの通信信号を受信し、その信号を通信衛星に搭載された中継器を用いて、フィルタにより通信信号のスペクトルを分離し、分離した各々のスペクトルについて、その周波数を変換し、周波数変換した通信信号をダウンリンク信号として送出して、地上に設置された端末に中継する。
同様に、通信衛星では、地上に設置された端末からの通信信号を受信し、通信衛星に搭載された中継器を用いて、その受信した信号からフィルタにより通信信号を分離し、その周波数を変換し、周波数変換した通信信号を地上に設置された地球局へ送出する。
【0019】
一般的な移動体衛星通信システムでは、地球局から衛星の中継器を経て、端末へ伝送される信号は、個々の端末に向けた通信データを伝送する通信チャネルの信号以外に、端末の呼び出しやシステムの状態等の制御情報を全ての端末に報知するための制御チャネルの信号がある。
【0020】
この制御チャネルの信号は、一般的にビーム毎、若しくは、複数のビームで同一なものが用いられる。また、端末は、電源投入時等では、最初に制御チャネルを受信し、システムからの情報を取得するため、制御チャネルの構成や周波数は頻繁に変更されることは無く、中継器内で経路を変更することは殆ど無い。
一方、通信チャネルは、地球局と端末で通信が行われるたびに新たなチャネルが割り当てられたり、端末が異なるアンテナビームのエリアに移動したときは、新たなビームでチャネルが割り当てられるなど、中継器内で経路変更が生じる可能性の高いチャネルである。
【0021】
このように、中継器で伝送するチャネルの信号には、中継器内の経路変更を要するチャネルの信号と、経路変更を行わないチャネルの信号が混在している。このことを利用して、実施の形態1による中継器は、中継器内で経路変更を行わないチャネルについては、スイッチマトリックスを経ずに、チャネライザとコンバイナを専用の直接接続経路(配線)を介して接続することで、スイッチマトリックスの回路規模を削減する。
【0022】
図1は、実施の形態1による中継器313を用いた衛星通信用の衛星ペイロードの構成を示すブロック図である。図2は、実施の形態1による中継器の信号伝送経路を示すブロック図である。
図1、2において、衛星ペイロードは、地上局から衛星へのアップリンク用のアンテナ301(301A−301C)と、周波数変換器302(302A−302C)と、中継器313と、周波数変換器310(310A−310C)と、ダウンリンク用のアンテナ311によって構成される。アンテナ301、周波数変換器302、周波数変換器310、アンテナ311は、複数個設けられ、図の例ではそれぞれ3個づつとして3系統設けた例を示している。
【0023】
アンテナ301は、地上局から送信される、複数のチャネルの信号が周波数軸上で多重化されたアップリンクの送信信号を受信して、周波数変換器302に出力する。周波数変換器302は、アンテナ301で受けたアップリンクの受信信号を、中継器313で処理できる周波数へ変換(ダウンコンバート)して、中継器313に入力する。中継器313は、ダウンコンバートされたアップリンク信号から、フィルタにより通信信号を周波数分離した後、各アンテナ311に対応して分離した信号の振り分けを行い、周波数軸上で再配置してから合成した送信信号を、周波数変換器310に出力する。周波数変換器310は、中継器313からの出力をダウンリンクの送信周波数まで変換(アップコンバート)し、アンテナ311へ送出する。アンテナ311は、ダウンリンクの送信信号を地上の端末へ送信する。
【0024】
また、中継器313は、AD変換器303と、チャネライザ304と、スイッチマトリックス306と、コンバイナ308と、DA変換器309と、直接接続経路(配線)314から構成される。AD変換器303の後段にはチャネライザ304が接続され、チャネライザ304の出力ポートはスイッチマトリックス306の入力ポートに接続される。スイッチマトリックス306の出力ポートはコンバイナ308の入力ポートに接続され、コンバイナ308の後段にはDA変換器309が接続される。また、チャネライザ304とコンバイナ308の間は、スイッチマトリックス306と直接接続経路314によって接続されている。
【0025】
チャネライザ304、スイッチマトリックス306、コンバイナ308は、それぞれASICで構成され、図5で説明したものと同様、複数のマルチポートDSPスライスによって構成される。図1では、A系統(303A、304A、308A、309A)、B系統(303B、304B、308B、309B)、C系統(303C、304C、308C、309C)の3系統のマルチポートDSPスライスによって構成される例を示している。
【0026】
AD変換器303は、周波数変換器302によって周波数変換されたアップリンク信号を、標本化及び量子化してアナログ信号からディジタル信号に変換する。
チャネライザ304は、ディジタル化されたアップリンク信号から任意の複数の周波数(サブバンド)の信号に分割して切り出すフィルタバンクとして機能する。チャネライザで分割する周波数(サブバンド)は、単一のチャネルの帯域幅、若しくは、任意の数のチャネルをまとめた帯域幅となっている。チャネライザ304は、周波数(サブバンド)別に分割した信号を、それぞれ対応する出力ポートから出力する。符合305は、チャネライザの出力サブバンドを模式的に示したものである。
【0027】
スイッチマトリックス306は、チャネライザ304の各出力ポートの出力信号が入力ポートに入力されると、入力信号をコンバイナ308の入力ポート別に振り分けて出力ポートから出力し、出力信号をコンバイナ308の各入力ポートに入力するためのものである。スイッチマトリックス306は、入力ポートと出力ポート間の接続経路(配線)を切替える、複数個の論理回路からなるスイッチから構成される。
【0028】
コンバイナ308は、スイッチマトリックス306の各出力ポートからの出力信号が、入力ポートに入力されると、周波数変換してから入力信号を合成し、各ダウンリンク用のビームに対応した合成信号を出力する。符号307は各コンバイナの入力サブバンドを模式的に示したものである。DA変換器309は、各コンバイナ308の出力であるディジタル信号をアナログ信号へ変換する。
また、直接接続経路(配線)314は、チャネライザ304の出力を、ディジタルマトリックス306を経ずに、直接、コンバイナ308に接続するための直接接続経路(配線)である。直接接続経路(配線)314は、スイッチマトリックス306とは別の専用回線を構成している。
【0029】
スイッチマトリックス306は、図5で説明したものと同様、チャネライザ304の出力をコンバイナ308に接続(ルーチング)するため、複数のディジタル切替機構、スライス間の接続配線(バス)である複数の相互接続線及び複数のリターンパスを有している。これによって、任意のチャネライザ304A−304Cの出力を、任意のコンバイナ308A−308Cへ接続することが可能である。コンバイナ308は、スイッチマトリックス306のディジタル切替機構から入力される信号を周波数軸上に再配置してから周波数変換し、信号の合成を行う。
【0030】
なお、図1では、アップリンクのアンテナ301と周波数変換器302、AD変換器303、チャネライザ304が3系統、ダウンリンクのコンバイナ308、DA変換器309、周波数変換器310、アンテナ311が3系統の場合を示しているが、これ以外の系統数とすることも可能である。また、図1では、アップリンクとダウンリンクでこれらの系統数が同一の例を示しているが、アップリンクとダウンリンクでこれら系統数が異なる構成とすることも可能である。
【0031】
次に図2を用いて、実施の形態1の中継器313の動作について説明する。図2では、図1の中継器313において、説明の都合上で用いる信号経路の例を追記している。
図2において、チャネライザ304Aの出力305Aは、経路切替の無いチャネルの信号であり、コンバイナ308Aの入力307Aに接続されている。一方、チャネライザ304Aの出力305B〜305Eは、経路切替の発生する信号であり、それぞれ、コンバイナ308A〜308Cの入力307B〜307Eに接続されている。
【0032】
このような構成では、経路切替の必要な信号中で、305Bから307Bへ接続される信号の通信が終了し、新たに、305Bから307Fへの通信が発生した場合、スイッチマトリックス306のディジタル切替機構を、衛星内の制御機器から供給されるスイッチ制御信号(図示せず)により駆動し、スイッチ入出力の接続構成マトリクスを変更して、信号の接続経路(配線)を変更する。
【0033】
ここで、チャネライザ304A〜304Cの出力が合計M個(Mは正の整数)、コンバイナ308Aから308Cの入力が合計N個(Nは正の整数)として、チャネライザ304A〜304Cから、コンバイナ308Aから308Cへ固定的に割り当てられる経路がa個(aは正の整数)とする。このとき、スイッチマトリックス306は、(M−a)×(N−a)個のスイッチが必要となる。従って、図6に示す従来の中継器では、M×N個のスイッチが必要であるのに比べて、実施の形態1による中継器313では、スイッチマトリックス306を構成するスイッチの個数を、(a×M)+(a×N)−(a×a)個分だけ削減することができる。このため、回路規模を削減することが可能となる。
【0034】
以上説明したとおり、本実施の形態1による衛星搭載用中継器は、受信したアナログ信号をディジタルデータに変換して出力するAD変換器と、上記AD変換器から出力されるディジタルデータを周波数分割し、周波数分割した信号をそれぞれ出力するチャネライザと、上記各入力ポートに入力される周波数の異なる信号を、周波数変換して合成するコンバイナと、上記チャネライザにより周波数分割された一部の複数の出力信号を、複数のスイッチにより接続先を切替えて、上記コンバイナの一部の複数の入力ポートにそれぞれ振り分けて入力するスイッチマトリックスと、上記コンバイナにより合成された信号をアナログ信号に変換するDA変換器と、上記チャネライザにより周波数分割された他の出力信号を、上記コンバイナの他の入力ポートに直接接続する直接接続経路(配線)と、を備えたことを特徴とする。これによって、チャネライザとコンバイナの間を直接接続する接続経路を設けることで、中継器のスイッチマトリックスの回路規模を削減することができる。
【0035】
実施の形態2.
図3は、実施の形態2による中継器を用いた衛星通信用の衛星ペイロードの構成を示すブロック図である。図4は、実施の形態1による中継器の信号伝送経路を示すブロック図である。実施の形態2による中継器は、制御チャネル(サブバンド)が、ビーム間のマルチキャスト送信に対応した構成となっている。
なお、図3、4において、符号301から311の構成については、実施の形態1のものと同一であるので、説明を省略する。
【0036】
図3において、中継器313は、スイッチマトリクス306の後段に、マルチキャスト送信用のマルチキャスト用スイッチマトリックス315(315A−315C)が設けられている。チャネライザ304(304A−304C)とマルチキャスト用スイッチマトリックス315(315A)との間は、直接接続経路(配線)312(312A−312C)によって接続されている。
また、マルチキャスト用スイッチマトリックス315Aとマルチキャスト用スイッチマトリックス315Bの間は、それぞれ各直接接続経路(配線)312(312A−312C)に対応した接続経路(配線)350(350A−350C)によって接続されている。
同様に、マルチキャスト用スイッチマトリックス315Bとマルチキャスト用スイッチマトリックス315Cの間は、それぞれ各直接接続経路(配線)312(312A−312C)に対応した接続経路(配線)351(351A−351C)によって接続されている。
更に、各マルチキャスト用スイッチマトリックス315(315A−315C)は、それぞれ個別の接続経路(配線)352(350A−350C)によって、各コンバイナ308(308A−308C)にそれぞれ接続されている。
すなわち、チャネライザ304(304A−304C)とコンバイナ308(308A−308C)は、直接接続経路(配線)312(312A−312C)及びマルチキャスト用スイッチマトリックス315(315A)を介して、接続がなされている。
【0037】
ここで、チャネライザ304から、スイッチマトリックス306を経由せずに、マルチキャスト用スイッチマトリックス315に接続されるチャネル(サブバンド)数をaとする。この場合、マルチキャスト用スイッチマトリックス315Aから315Cの全体で、(a×a)個のスイッチが必要となる。
【0038】
図4は、実施の形態2の動作を説明するために、図3のブロック図に信号の経路を模式的に追記したものである。また、スイッチマトリックス306を経由する信号の流れについては、本発明の実施の形態1と同一であるため、説明を省略する。
【0039】
図4において、チャネライザ304Aの出力305Gは、各アンテナビーム間でマルチキャスト送信されるチャネル(サブバンド)とする。このマルチキャストされるチャネルは、マルチキャスト用スイッチマトリックス315A〜315Cによって、コンバイナ308A〜308Cの入力ポート307Gにそれぞれ同時に接続される。
また、チャネライザ304B、304Cの出力は、マルチキャスト用スイッチマトリックス315A〜315Cによって、コンバイナ308A〜308Cのいずれの入力ポートに対しても非接続となる。
なお、チャネライザ304B、304Cの出力についても、マルチキャスト送信用のスイッチマトリックス315A〜315Cの接続を切替えることによって、チャネライザ304Aと同様にして、コンバイナ308A〜308Cの入力ポート307Gにそれぞれ同時に接続することができる。
【0040】
これによって、異なるアンテナビーム(アンテナ311A−311C)間でのマルチキャスト送信を行うことができる。例えば、アンテナ301Aにより受信したマルチキャスト用の送信信号(例えば、同報放送情報や同報配信情報、同報制御情報)を、全てのアンテナ311A〜311Cから同報送信することができる。
【0041】
以上のように構成された中継器313では、スイッチマトリックス306及びマルチキャスト用スイッチマトリックス315を構成するために必要となるスイッチの数は、(M−a)×(N−a)+(a×a)となる。従って、図6に示す従来の中継器に比べて、実施の形態2による中継器313では、スイッチマトリックス306及びマルチキャスト送信用のスイッチマトリックス315を構成するスイッチの個数を、a×(M+N−2a)個分だけ削減することができるので、回路規模を削減することが可能となる。
【0042】
なお、図3、4においては、アップリンク系のアンテナ301、周波数変換器302、AD変換器303、及びチャネライザ304が3系統であり、ダウンリンク系のコンバイナ308、DA変換器309、周波数変換器310、及びアンテナ311が3系統である場合を図示したが、これ以外の系統数とすることも可能である。
【0043】
また、図3、4では、アップリンクとダウンリンクでこれらの系統数が同一の例を示したが、アップリンクとダウンリンクでこれら系統数が異なる構成とすることも可能である。また、図3、4では、マルチキャスト用マトリックス315全体として入力チャネル数a、出力チャネル数aの場合について説明したが、マルチキャスト用マトリックスの入力チャネル数と出力チャネル数が異なる構成とすることも可能である。
【0044】
以上説明したとおり、本実施の形態2による衛星搭載用中継器は、受信したアナログ信号をディジタルデータに変換して出力するAD変換器と、上記AD変換器から出力されるディジタルデータを周波数分割し、周波数分割した信号をそれぞれ出力するチャネライザと、上記各入力ポートに入力される周波数の異なる信号を、周波数変換して合成する複数のコンバイナと、上記チャネライザにより周波数分割された一部の複数の出力信号を、複数のスイッチにより接続先を切替えて、上記コンバイナの一部の複数の入力ポートにそれぞれ振り分けて入力するスイッチマトリックスと、上記コンバイナにより合成された信号をアナログ信号に変換するDA変換器と、上記チャネライザにより周波数分割された他の出力信号を、上記複数のコンバイナの他の入力ポートに同時接続してマルチキャスト送信するマルチキャスト用スイッチマトリックスと、上記チャネライザ及びコンバイナと、上記マルチキャスト用スイッチマトリックスの間を接続する接続経路(配線)とを備えたことを特徴とする。これによって、マルチキャスト送信が行われるチャネル(回線)専用に、マルチキャスト送信専用のスイッチマトリクスを設けることで、中継器のスイッチマトリックスの回路規模を削減することができる。
【符号の説明】
【0045】
301 アップリンク用受信アンテナ、302 アップリンク用周波数変換器(ダウンコンバータ)、303 AD変換器、304 チャネライザ、305 チャネライザ出力、306 スイッチマトリックス、307 コンバイナ入力、308 コンバイナ、309 DA変換器、310 ダウンリンク用周波数変換器(アップコンバータ)、311 ダウンリンク用アンテナ、313 中継器、315 マルチキャスト用スイッチマトリックス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信したアナログ信号をディジタルデータに変換して出力するAD変換器と、
上記AD変換器から出力されるディジタルデータを周波数分割し、周波数分割した信号をそれぞれ出力するチャネライザと、
上記各入力ポートに入力される周波数の異なる信号を、周波数変換して合成するコンバイナと、
上記チャネライザにより周波数分割された一部の複数の出力信号を、複数のスイッチにより接続先を切替えて、上記コンバイナの一部の複数の入力ポートにそれぞれ振り分けて入力するスイッチマトリックスと、
上記コンバイナにより合成された信号をアナログ信号に変換するDA変換器と、
上記チャネライザにより周波数分割された他の出力信号を、上記コンバイナの他の入力ポートに直接接続する直接接続経路と、
を備えた中継器。
【請求項2】
受信したアナログ信号をディジタルデータに変換して出力するAD変換器と、
上記AD変換器から出力されるディジタルデータを周波数分割し、周波数分割した信号をそれぞれ出力するチャネライザと、
上記各入力ポートに入力される周波数の異なる信号を、周波数変換して合成する複数のコンバイナと、
上記チャネライザにより周波数分割された一部の複数の出力信号を、複数のスイッチにより接続先を切替えて、上記コンバイナの一部の複数の入力ポートにそれぞれ振り分けて入力するスイッチマトリックスと、
上記コンバイナにより合成された信号をアナログ信号に変換するDA変換器と、
上記チャネライザにより周波数分割された他の出力信号を、上記複数のコンバイナの他の入力ポートに同時接続してマルチキャスト送信するマルチキャスト用スイッチマトリックスと、
上記チャネライザ及びコンバイナと、上記マルチキャスト用スイッチマトリックスの間を接続する接続経路と、
を備えた中継器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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