説明

衛星測位システム

【課題】受信可能衛星を捕捉した後に、ユーザ端末の自己位置を算出するための演算処理を短時間で行うことにより、TTFFを十分に短縮する。
【解決手段】衛星測位システム10は、GPS測位信号を送信する複数のGPS衛星1と、受信した測位信号に基づいて生成した補強データを補強情報生成アップリンク局に送信する観測局2と、受信した補強データに基づいて補強メッセージを生成して補強衛星に送信する補強情報生成アップリンク局3と、受信した補強メッセージの補強情報に基づいて、測位信号の搬送波と同じ周波数を補強メッセージでPSK変調し、δr、ψ、λ、δi及びδnの5種類のパラメータを含む信号をGPS補強ユーザ端末に送信する、例えば、準天頂衛星から構成された補強衛星4と、測位信号を受信するとともに補強衛星4からの信号を受信する補強ユーザ端末5から構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、衛星測位システムに係り、詳しくは、GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)等の周回衛星を用い、この衛星に準天頂衛星等の補強衛星を組み合わせて用いて測位ユーザの位置を測定する衛星測位システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、GPS衛星を用いて全世界をカバーする衛星測位システムとして、GNSS(Global Navigation Satellite System:全地球衛星航法システム)が普及している。GPS衛星は地球の周囲の6つの軌道にそれぞれ4個ずつ計24個が基本的に配置されて、地球上のGPS受信機(測位ユーザ端末、以下単にユーザ端末とも称する)に測位信号を送信することで、GPS受信機は測位情報を得て2次元あるいは3次元の自己位置を測定する。
【0003】
GPS衛星は、L1と呼ばれる1、575.42MHzの搬送波をC/A(Coarse and Access)コードと呼ばれる擬似ランダムノイズ符号でスペクトラム拡散変調した信号を、GPS受信機向けに送信している。GPS受信機はこの信号を受信し、衛星位置情報、搭載原子時計の誤差情報、衛星健康データ等その他の航法データを取得する。また、C/Aコード信号を用いてGPS衛星からGPS受信機までの距離を測定し、さらに、これらの航法データ及び距離測定結果を基にGPS受信機の自己位置を算出する。GPS受信機の電源が投入されると、通常のGPS受信機はGPS信号に対して捕捉(サーチ)追尾を開始し、測位に必要な数のGPS衛星(例えば、3次元情報を得る場合では4個)が捕捉できると、捕捉演算を行って測位結果を算出する。このように捕捉演算を行う場合、一般のGPS衛星システムでは、周知のようにケプラー6要素及びその変化率を組み合わせた13種類のパラメータを30秒に1組、ユーザ端末が取得する必要がある。
【0004】
ここで、電源投入後最初の測位結果を出力するまでの時間はTTFF(Time To First Fix:初期位置算出時間)と呼ばれる。このTTFFを短縮することはユーザ端末の利便性を大きく向上させることになるので重要である。通常、GPS受信機は、測位動作中に測位に用いることができたGPS衛星の衛星識別番号、GPS衛星から得た最新の軌道情報、測位を行ったときのGPS受信機の位置等の各種情報をバックアップメモリに保存する。そして、次回電源を投入したときにはそれらの各種情報を利用して測位対象のGPS衛星を決定し、補足を開始することで上記のTTFFを大きく短縮させるようにしている。このような動作開始モードは、ウォームスタート又はホットスタートと呼ばれている。
【0005】
これに対して、GPS受信機が長時間使用されていなかった場合で、測位に利用可能な情報がない状態での動作開始モードをコールドスタートと呼んでいる。このようなコールドスタート時は、全GPS衛星について上記したような各種情報がない状態で電源を投入するので、GPS受信機は最初からGPS信号に対する捕捉追尾を開始して、測位に必要な数の衛星が捕捉できるまでサーチを繰り返さなければならず、上記したようなTTFFが長くなるのが避けられなくなる。このような観点からコールドスタート時には、静止衛星等の補強衛星を介して広範囲にGPS衛星補強情報を提供するようにしたSBAS(Satellite Based Augmentation System:静止衛星型衛星航法補強システム)と称される衛星測位システムが実用化されている。
【0006】
ここで、衛星測位システムにおいて上記のTTFFを短縮する方法として、2つの手段が考えられる。第1の手段は、GPS衛星からの信号の捕捉追尾を開始してから、測位に必要な数のGPS衛星を捕捉するまでの時間(サーチ時間)を短縮することである。第2の手段は、GPS衛星からの信号の捕捉追尾を開始し、測位に必要な数のGPS衛星を捕捉した後に、測位信号に基づいてユーザ端末の自己位置を算出する演算時間を短縮することである。例えば、特許文献1には、前者に対応したコールドスタート時のTTFFを短縮する方法が開示されている。
【0007】
特許文献1の衛星測位システム100は、図5に示したように、対象領域にて測位情報が受信できるGPS衛星を検出した結果を送信する地上局装置101と、GPS衛星からの測位情報の受信及び情報配信衛星としての準天頂衛星104からのGPS衛星情報の受信が可能で、コールドスタート時に全GPS衛星の中から測位情報が受信可能な移動端末装置200を備えている移動体102と、地上局装置101から送信されたGPS衛星情報を受信し、対象領域に向けてGPS衛星情報を配信する準天頂衛星104と、全GPS衛星のうち地上局装置101及び移動端末装置200で捕捉可能な5機のGPS衛星103a〜103eとから構成されている。
【0008】
このような構成の衛星測位システム100では、GPS衛星103a〜103eから送信された測位情報が地上局装置101に到達すると、地上局装置101は受信した測位情報の送信元である5個のGPS衛星103a〜103eを特定し、これらのGPS衛星103a〜103eを対象領域で測位情報の受信が可能なGPS衛星と認定して、準天頂衛星104に送信する。準天頂衛星104は受信したそれらのGPS衛星情報を対象領域に向けて送信する。対象領域に存在している移動体102の移動端末装置200では、コールドスタート時に準天頂衛星104からGPS衛星情報を受信すると、受信可能な5個のGPS衛星103a〜103eの中から測位情報を受信すべき少なくとも4個のGPS衛星を選択し、これらのGPS衛星から受信した測位情報を用いて自己位置の測位を行う。
【0009】
したがって、特許文献1に開示された衛星測位システム100によれば、地上局装置101が対象領域で測位情報が受信できるGPS衛星を受信可能GPS衛星として特定し、これら特定のGPS衛星だけを示すGPS衛星情報を準天頂衛星104を介して対象領域内の移動端末装置200に通知するため、移動端末装置200ではそれまで全GPS衛星について行っていたGPS衛星の捕捉処理をそれらの特定したGPS衛星についてのみ行えばよいので、受信可能GPS衛星を捕捉するサーチ時間を短くして、TTFFを短縮することができる。
【特許文献1】特開2004−028593号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、関連する衛星測位システムでは、測位情報が受信可能GPS衛星を地上局装置で特定して、この特定のGPS衛星だけを示すGPS衛星情報を準天頂衛星を介して移動端末装置に通知することによりGPS衛星の捕捉処理を短時間で行うようにしているが、この後にユーザ端末の自己位置を算出するための演算処理を、ケプラー6要素及びその変化率を組み合わせた13種類のパラメータを取得して行う必要があるので、TTFFを短縮するには一定の制約を受ける、という問題がある。
すなわち、特許文献1に開示されている衛星測位システム100は、前記の第1の手段を実現することで、受信可能GPS衛星を捕捉するサーチ時間を短くしてコールドスタート時のTTFFの短縮を図るようにしているが、受信可能衛星捕捉後にユーザ端末の自己位置を算出するための演算処理を行うには、関連技術一般に行われているケプラー6要素及びその変化率を組み合わせた13種類のパラメータを取得しなければならないので、結果的にTTFFを十分に短縮するのが難しくなる。
【0011】
この発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、受信可能衛星を捕捉した後に、衛星軌道情報を短時間で取得してユーザ端末の自己位置を算出するための演算処理を短時間で行うことにより、TTFFを十分に短縮することができるようにした衛星測位システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、この発明の構成は、周回衛星に補強衛星を組み合わせて測位ユーザ端末の自己位置を測定する衛星測位システムに係り、地球の周囲に配置され測位信号を送信する複数の前記周回衛星と、受信した前記測位信号に基づいて生成した補強データを補強情報生成部に送信する観測部と、受信した前記補強データに基づいて補強メッセージを生成して前記補強衛星に送信する補強情報生成部と、受信した前記補強メッセージの補強情報に基づいて、前記周回衛星から送信される前記測位信号の搬送波と同じ周波数を前記補強メッセージで変調し、少なくとも、相対地心距離δr、地心緯度ψ、地心経度λ、相対軌道傾斜角δi及び相対運動δnのパラメータを含む信号を補強ユーザ端末に送信する前記補強衛星と、前記測位信号を受信するとともに、前記補強衛星からの信号を受信する補強ユーザ端末とから構成されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
このように、この発明の構成によれば、関連技術では、ケプラー6要素とその変化率を含む13種類のパラメータを測位に必要なGPS衛星それぞれから受信していたのを、相対地心距離δr、地心緯度ψ、地心経度λ、相対軌道傾斜角δi、相対運動δnの少なくとも5種類のパラメータを補強衛星から受信し、しかもδr、ψ、λの3種類のパラメータは基準値である定数との差分をとり微少量としているので、測位演算に必要なデータ量を衛星あたり関連技術のそれの略1/3に低減することにより、受信可能衛星を捕捉した後に、ユーザ端末位置を算出するための衛星軌道情報を短時間で取得することができ、コールドスタート時のTTFFを十分に短縮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
衛星測位システム10は、地球の周囲に配置されGPS測位信号を送信する複数のGPS衛星1と、GPS衛星1から受信した測位信号に基づいて生成した補強データを補強情報生成アップリンク局に送信する観測局2と、観測局2から受信した補強データに基づいて補強メッセージを生成して補強衛星に送信する補強情報生成アップリンク局3と、補強情報生成アップリンク局3から受信した補強メッセージの補強情報に基づいて、GPS衛星1から送信される測位信号の搬送波と同じ周波数を補強メッセージでPSK変調し、相対地心距離δr、地心緯度ψ、地心経度λ、相対軌道傾斜角δi及び相対運動δnの5種類のパラメータを含む信号をGPS補強ユーザ端末に送信する、例えば、準天頂衛星から構成された補強衛星4と、GPS衛星1からの測位信号を受信するとともに、補強衛星4からの信号を受信するGPS受信機等から構成された補強ユーザ端末5から構成されている。
【実施形態1】
【0015】
図1は、この発明の実施形態1である衛星測位システムの概略構成を示す構成図、図2は図1の主要部である補強情報生成アップリンク局の具体的構成を示すブロック図、図3は本実施形態1の衛星測位システムの動作における補強メッセージを示すタイムチャート(a)及び関連技術における航法データを示すタイムチャート(b)である。
この実施形態1である衛星測位システム10は、地球の周囲に配置されGPS測位信号(単に測位信号と称する)を送信する複数のGPS衛星1と、GPS衛星1から受信した測位信号に基づいて生成した補強データ(GPSデータ)を補強情報生成アップリンク局に送信する観測局(観測部)2と、観測局2から受信した補強データに基づいて補強メッセージを生成して補強衛星に送信(アップリンク)する補強情報生成アップリンク局(補強情報生成部)3と、補強情報生成アップリンク局3から受信した補強メッセージの補強情報に基づいて、GPS衛星1から送信される測位信号の搬送波と同じ周波数を補強メッセージでPSK(Phase Shift Keying)変調し、相対地心距離δr、地心緯度ψ、地心経度λ、相対軌道傾斜角δi及び相対運動δnの少なくとも5種類のパラメータを含む信号をGPS補強ユーザ端末(補強ユーザ端末)に送信する、例えば、準天頂衛星から構成された補強衛星4と、GPS衛星1からの測位信号を受信するとともに、補強衛星4からの信号を受信するGPS受信機等から構成された補強ユーザ端末5から構成されている。ここで、補強ユーザ端末5は、補強衛星4から送信された信号の補強メッセージを使って高速測位計算を行う。
【0016】
ここで、補強情報生成アップリンク局3は、図2に示すように、GPSデータに基づいて補強メッセージを生成するデータ処理用計算機部11と、生成された補強メッセージを補強衛星4にアップリンクする補強メッセージアップリンク設備部12とから構成される。また、データ処理用計算機部11は、観測局2から受信したGPSデータの前処理を行う前処理部11Aと、前処理されたGPSデータの軌道時計誤差を推定する軌道時計推定処理部11Bと、前処理されたGPSデータの電離層遅延を推定する電離層遅延推定処理部11Cと、それぞれの推定処理されたGPSデータを補強メッセージの形式に編集するメッセージ生成処理部11Dと、補強メッセージを検証処理してパスさせるメッセージ検証処理部11Eとから構成されている。
【0017】
さらに、補強メッセージアップリンク設備部12は、アップリンク信号を生成する信号発生部12Aと、データ処理用計算機部12から出力された補強メッセージによりアップリンク信号の変調を行う変調部12Bと、変調された信号を必要な電力レベルまで増幅する電力増幅部12Cと、電力増幅部12Cから出力された変調信号を補強衛星4にアップリンクするアップリンク用アンテナ12Dとから構成されている。
【0018】
次に、本実施形態1の衛星測位システム10の動作について、補強情報生成アップリンク局3のデータ処理用計算機部11のメッセージ生成処理部11Dを参照して説明する。ここで、関連技術におけるGPS航法データのうち、測位演算に必要な衛星数は最低でも4個なので、必要なデータ量は3600ビット以上となる。一方、本実施形態1の衛星測位システム10における補強衛星4では、巡回符号CRC(Cyclic Redundancy Check)や順方向誤り訂正符号FEC(Forward Error Correction)を用いて、GPS衛星の航法データ(50ビット)の5倍の250ビットのデータ伝送速度を達成しているとはいえ、全く同じ形式でデータを送ったのでは、上記したTTFFの時間短縮の効果は期待できない。したがって、本実施形態1では、以下の新方式により1衛星あたりのデータ量を削減して時間短縮を図っている。
【0019】
本実施形態1では、図3(a)から明らかなように、5秒に1回軌道時計情報を送付するようにして、衛星の軌道の時間変化の詳細な情報を送ることを省略し、慣性系の衛星位置を表す局座標による位置情報を送信する。このための軌道情報定義時刻での衛星位置をr(地心距離)、ψ(地心緯度)、λ(地心経度)の3種類のパラメータで表現する。ここで、地心を原点とした地球固定座標系ECEF(Earth Centered Earth Fixed)を基準としたGPS衛星の軌道位置x、y、zは、式(1)、(2)、(3)で定義される。
【0020】
x=r・cosψ・cosλ ……(1)
【0021】
y=r・cosψ・sinλ ……(2)
【0022】
z=r・sinψ ……(3)
【0023】
ここで、GPS衛星の軌道は離心率が0に近く、平均的な地心距離と実際の地心距離との差δRを、衛星からの送信パラメータとして選ぶことによって、同じ精度を保ちながら有効桁数を減らすことが可能になる。このような変数を選択したのは、補強測位に必要なデータ量を削減するためである。すなわち、補強情報としての衛星から送る相対的な地心距離δrは、式(4)で定義される。
【0024】
δr=r−r ……(4)
ここで、rはGPS衛星の平均的な地心距離(定数)で、地心距離rと比較しても地心距離δrは絶対値が10000分の1以下の微小量のため、このような形式を採用することによってデータ量を削減することができる。また、その時点での軌道情報の定義時刻から次の軌道情報更新までの位置データについては、定義時刻の衛星位置を通るGPS衛星の標準ケプラー運動で近似する。すなわち、GPS衛星の軌道傾斜角iがわかれば、上記軌道位置x、y、zを通るGPS衛星の軌道面は一意に定義され、実際の平均軌道傾斜角iとの差δi(相対軌道傾斜角、式(5))を補強メッセージとしてユーザ端末に送信する。また、軌道面の運動に関しては、標準軌道の平均運動nに対して、実際の平均運動nとの差δn(相対運動、式(6))を補強メッセージとしてユーザ端末に送信する。
【0025】
δi=i−i ……(5)
【0026】
δn=n−n ……(6)
【0027】
本実施形態1の衛星測位システム10における補強メッセージを使って、測位演算に必要な軌道時計情報と電離層情報を取得するには、図3(a)から明らかなように、3〜5秒で終了する。すなわち、最長でも軌道時計情報は4秒で、電離層情報は1秒での計5秒で終了する。これに対して、関連技術では、測位演算に必要なパラメータのうち軌道時計情報を取得するだけでも、18〜30秒かかることになる。さらに、電離層情報を取得するには最長で12分30秒かかることになる。これは、電離層情報がサブフレーム4に25回に1回しか出現しないためである。
【0028】
すなわち、本実施形態1の衛星測位システム10によれば、新しい補強メッセージ方式による相対値送信と基準エポック認識,軌道位置情報高頻度送信によって、GPS衛星を用いた測位計算に必要な情報を高速高頻度で取得できるため、コールドスタート時にユーザ端末は迅速に自己位置を算出することができる。図3(a)、(b)のタイムチャートからわかるように、最良のタイミングでデータを取得し始めた場合に3秒(関連技術におけるGPS衛星測位では24秒)、最長の状態において5秒(関連技術では750秒)で必要なデータを補強衛星から受信することが可能となる。
【0029】
このように、本実施形態1の衛星測位システム10によれば、関連技術では、ケプラー6要素とその変化率を含む13種類のパラメータを測位に必要なGPS衛星それぞれから受信していたのを、相対地心距離δr、地心緯度ψ、地心経度λ、相対軌道傾斜角δi、相対運動δnの5種類のパラメータを補強衛星から受信し、しかもδr、ψ、λの3種類のパラメータは基準値である定数との差分をとり微少量としているので、測位演算に必要なデータ量を1衛星あたり関連技術のそれの略1/3に低減することにより、受信可能衛星を捕捉した後に、ユーザ端末位置を算出するための衛星軌道情報を短時間で取得することができ、コールドスタート時のTTFFを十分に短縮することができる。
【実施形態2】
【0030】
図4は、この発明の実施形態2である衛星測位システムの主要部である補強情報生成アップリンク局の他の具体的構成を示すブロック図である。この例の衛星測位システムの構成が、上述した実施形態2の構成と大きく異なるところは、測位対象地域を地球の周囲の一部に限定するようにした点である。
この実施形態2である衛星測位システムは、実施形態1における補強情報生成アップリンク局3のデータ処理用計算機部11のメッセージ生成処理部11Dが、軌道位置データ形式変換処理部13Aと、軌道速度データ形式変換処理部13Bと、ノミナル値からの差分データ算出処理部13Cと、補強メッセージ編集処理部13Dと、可視条件を考慮した衛星選択処理部13Eと、電離層補正情報生成処理部13Fとから構成される。
【0031】
このような構成の本実施形態2による衛星測位システムによれば、測位対象地域を地球の周囲の一部である例えば、日本全土に限定することにより、全GPS衛星の情報を衛星から送信するのではなく、対象地域から規定仰角以上の衛星のみの情報を選択的に送信することによって、さらにデータ量を削減することが可能となる。また、同時刻にGPS衛星から送信されている情報は、だぶって補強衛星から送信されることがないように配慮することができる。
【0032】
このように、本実施形態2の衛星測位システムによれば、測位対象地域を地球の周囲の一部に限定することにより、実施形態1と略同様な効果が得られるとともに、対象地域から規定仰角以上の衛星のみの情報を選択的に送信することによって、さらにデータ量を削減することが可能となる。
【0033】
以上、この発明の実施形態を図面により詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があってもこの発明に含まれる。例えば、測位衛星としてはGPS衛星を用いる例で説明したが同じように機能する衛星であればこれに限らずに、ロシアで実用化されているグロナス(GLONASS)衛星、あるいは欧州連合(EU)及び欧州宇宙機関で計画されているガリレオ(GALILEO)衛星等のその他の測位用衛星に適用することができる。また、補強衛星としては準天頂衛星を用いる例で説明したがこれに限らずに、他の周回衛星あるいは静止衛星等を利用するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】この発明の実施形態1である衛星測位システムの概略構成を示す構成図である。
【図2】図1の主要部である補強情報生成アップリンク局の具体的構成を示すブロック図である。
【図3】本実施形態1の衛星測位システムの動作における補強メッセージを示すタイムチャート(a)及び関連技術における航法メッセージを示すタイムチャート(b)である。
【図4】この発明の実施形態2である衛星測位システムの主要部である補強情報生成アップリンク局の他の具体的構成を示すブロック図である。
【図5】関連技術としての衛星測位システムの概略構成を示す構成図である。
【符号の説明】
【0035】
1 GPS衛星(周回衛星)
2 観測局(観測部)
3 補強情報生成アップリンク局(補強情報生成部)
4 補強衛星
10 衛星測位システム
11 データ処理用計算機部
11A 前処理部
11B 軌道時計推定処理部
11C 電離層遅延推定処理部
11D メッセージ生成処理部
11E メッセージ検証処理部
12 補強メッセージアップリンク設備部
12A 信号発生部
12B 変調部
12C 電力増幅部
12D アップリンク用アンテナ
13A 軌道位置データ形式変換処理部
13B 軌道速度データ形式変換処理部
13C ノミナル値からの差分データ算出処理部
13D 補強メッセージ編集処理部
13E 可視条件を考慮した衛星選択処理部
13F 電離層補正情報生成処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周回衛星に補強衛星を組み合わせて測位ユーザ端末の自己位置を測定する衛星測位システムであって、
地球の周囲に配置され測位信号を送信する複数の前記周回衛星と、
受信した前記測位信号に基づいて生成した補強データを補強情報生成部に送信する観測部と、
受信した前記補強データに基づいて補強メッセージを生成して前記補強衛星に送信する補強情報生成部と、
受信した前記補強メッセージの補強情報に基づいて、前記周回衛星から送信される前記測位信号の搬送波と同じ周波数を前記補強メッセージで変調し、少なくとも、相対地心距離δr、地心緯度ψ、地心経度λ、相対軌道傾斜角δi及び相対運動δnのパラメータを含む信号を補強ユーザ端末に送信する前記補強衛星と、
前記測位信号を受信するとともに、前記補強衛星からの信号を受信する補強ユーザ端末とから構成される、
ことを特徴とする衛星測位システム。
【請求項2】
前記補強情報生成部は、前記補強データに基づいて前記補強メッセージを生成するデータ処理用計算機部と、生成された前記補強メッセージを前記補強衛星に送信する補強情報生成設備部とから構成されることを特徴とする請求項1記載の衛星測位システム。
【請求項3】
前記データ処理用計算機部は、前記観測局から受信した前記補強データの前処理を行う前処理部と、前処理された前記補強データの軌道時計誤差を推定する軌道時計推定処理部と、前処理された前記補強データの電離層遅延を推定する電離層遅延推定処理部と、それぞれ推定処理された前記補強データを前記補強メッセージの形式に編集するメッセージ生成処理部と、前記補強メッセージを検証処理してパスさせるメッセージ検証処理部とから構成されることを特徴とする請求項2記載の衛星測位システム。
【請求項4】
前記メッセージ生成処理部は、軌道位置データ形式変換処理部と、軌道速度データ形式変換処理部と、ノミナル値からの差分データ算出処理部と、補強メッセージ編集処理部と、可視条件を考慮した衛星選択処理部と、電離層補正情報生成処理部とから構成されることを特徴とする請求項3記載の衛星測位システム。
【請求項5】
前記周回衛星は、GPS衛星から構成されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1に記載の衛星測位システム。
【請求項6】
前記周回衛星は、GLONASS衛星から構成されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1に記載の衛星測位システム。
【請求項7】
前記周回衛星は、GALILEO衛星から構成されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1に記載の衛星測位システム。
【請求項8】
前記補強衛星は、周回衛星又は静止衛星から構成されることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1に記載の衛星測位システム。
【請求項9】
前記周回衛星は、準天頂衛星であることを特徴とする請求項8記載の衛星測位システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−127715(P2010−127715A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−301562(P2008−301562)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】