説明

衛生用紙

【課題】優れた柔らかさ、紙力強度、消臭性及び抗菌性のみならず、優れた手触り感(すべすべ感)をも示す衛生用紙を提供する。
【解決手段】原紙に対して主成分として、レーザー回析散乱粒度分布による平均粒子径(D50)が0.05〜30μmの酸化チタンを10〜30重量%、紙用柔軟剤を3〜18重量%、及び保湿成分を60〜80重量%含むものである。さらに、ケン化ロジン、天然強化ロジン、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸、無水ステアリン酸等の紙力剤を含ませてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は衛生用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
ティッシュペーパーや、トイレットペーパーなどの衛生用紙は、通常、肌の清拭、鼻かみなどに用いられ、かかる使用時には肌と摺れることになるため、柔らかく、手触りのよいことが要求されていた。
そこで、例えば、衛生用紙の柔らかさや手触り感を高めるために、流動パラフィン等の油性物質や界面活性剤などを衛生用紙の表裏面にコーティングする(外添)、あるいは、原料パルプに添加して混合する(内添)、ことが行われてきた。
また、近年では、例えば、衛生的な環境に対する関心の高さから、肌と接触するパルプシートに抗菌性が求められるようになっている。たとえば、特許文献1には、填料の一例として酸化チタンを使用することを開示しているが、高吸油化粧用油取り紙であり、紙用柔軟剤や保湿成分を含む本発明に係る衛生用紙ではない。
【特許文献1】特開2003−38248号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明の主たる課題は、優れた抗菌性を示す衛生用紙を提供することにある。他の課題は、新たな知見に基づく、優れた手触り感(いわゆる「すべすべ感」)を示す衛生用紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決した本発明は次記のとおりである。
<請求項1記載の発明>
原紙に対して、レーザー回析散乱粒度分布による平均粒子径(D50)が0.05〜30μmの酸化チタンと、紙用柔軟剤と、保湿成分とを含み、前記酸化チタンは原紙に対し10〜30重量%含むことを特徴とする衛生用紙。
【0005】
(作用効果)
本発明においては、保湿成分を含むのでしっとり感を与える。紙用柔軟剤は柔軟効果を与える。さらに本発明においては、酸化チタンも使用している。酸化チタンは抗菌性を示す。また消臭効果もある。
さらに、驚くべきことに、酸化チタンを、紙用柔軟剤及びグリセリンなどの保湿成分とを併用する本発明の組成物系においては、さらさら感というよりむしろ優れた「すべすべ感」を示すものとなる。
本発明においては、特に所定範囲の平均粒子径をもつ酸化チタンを使用しているので、ざらつくことがないし、用紙から離脱して肌に転写することもない。
平均粒子径が過度に大きいとざらつくものとなる。他方で過度に小さいと、紙から離脱する量が多くなり、使用者に不快感を与える傾向がある。本発明の平均粒子径は0.05〜30μmである。
なお、本発明の酸化チタンはレーザー回析散乱粒度分布による平均粒子径(D50)の測定には、レーザー回析式粒度分布測定装置として、島津製作所社製「SALD−2000」を使用して測定したものである。
【0006】
<請求項2記載の発明>
さらに、紙力剤を含む請求項1記載の衛生用紙。
【0007】
(作用効果)
紙力剤、特に湿潤紙力剤を含むことで、保湿成分の添加に伴う湿潤紙力の低下を抑止できる。
【0008】
<請求項3記載の発明>
紙力剤が、ケン化ロジン、天然強化ロジン、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸及び無水ステアリン酸の群から選ばれたものである請求項2記載の衛生用紙。
【発明の効果】
【0009】
以上のとおり本発明によれば、優れた柔らかさ、紙力強度、消臭性及び抗菌性、並びにいわゆる「すべすべ感」を示すものとなる等の利点がもたらされる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について詳説する。
本発明の薄葉紙の原紙としては、公知のものを限定無く用いることができるが、特にパルプ原料におけるNBKP配合率(JIS P 8120)が30.0〜80.0%、特に40.0〜70.0%であるものが好適である。米坪(JIS P 8124)は、1プライ当たり10.0〜35.0g/m2が望ましい。紙厚(尾崎製作所製ピーコックにより測定)は2プライ(2枚重ね)で100〜300μm、1プライの場合はその半分であるのが望ましい。クレープ率(((製紙時のドライヤーの周速)−(リール周速))/(製紙時のドライヤーの周速)×100)は15.0〜26.0が望ましい。
【0011】
本発明の原紙としては、JIS P 8113に規定される乾燥引張強度(以下、乾燥紙力ともいう)が、2プライで縦方向130cN/25mm以上、特に280〜310cN/25mm、横方向40cN/25mm以上、特に60〜100cN/25mmのものを用いるのが好ましく、1プライの場合はその半分であるのが望ましい。原紙の乾燥紙力が低過ぎると、製造時に破れや伸び等のトラブルが発生し易くなり、高過ぎると使用時にごわごわした肌触りとなる。
【0012】
これらの紙力は公知の方法により調整でき、例えば、紙力剤を内添(ドライヤーパートよりも前の段階、例えばパルプスラリーに添加)する、パルプのフリーネスを低下(例えば30〜40ml程度低下)させる、NBKP配合率を増加(例えば50%以上に)する等の手法を適宜数組み合わせることができる。
【0013】
紙力としては湿潤紙力を確保することが重要であり、この湿潤紙力剤としては、紙力剤が、ケン化ロジン、天然強化ロジン、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸及び無水ステアリン酸の群から選ばれたものを使用できる。必要ならば、ポリアミド・エピクロルヒドリン樹脂、尿素樹脂、酸コロイド・メラミン樹脂、熱架橋性付与PAM等も用いることができる。湿潤紙力剤を内添する場合、その添加量はパルプスラリーに対する重量比で5〜20kg/t程度とすることができる。
【0014】
本発明では、原紙中に薬液が含有される。薄葉紙における薬液含有量は、原紙に対して5〜35重量%が望ましい。特に好ましい範囲は20〜30重量%である。薬液含有量が少な過ぎると効果が乏しくなるだけでなく、原紙に対する塗布量が安定しなくなり、多過ぎるとべとつくようになり、柔らか感や手触り感が阻害される。薬液を含有させるための方法としては、スプレー塗布、ロール塗布、浸漬等、公知の付与方法を用いることができる。
前記薬液は、60〜100重量%程度、特に80〜95重量%程度の有効成分と、0〜40重量%程度、特に5〜20重量%程度の水分等の非有効成分とで構成することができる。
【0015】
本発明では、前記有効成分中の主成分として、レーザー回析散乱粒度分布による平均粒子径(D50)が0.05〜30μm(特に望ましくは0.05〜15μm)の酸化チタンを、有効成分中に1〜35重量%を含むものが望ましく、原紙に対し10〜30重量%含み、特に12〜20重量%含むものが望ましい。なお、前記酸化チタンには、大きく分けて、ルチルタイプとアナターゼタイプとがあり、本発明では、これら単独で使用してもよいし、混合して使用することもでき、特に制限されるものではない。
また、有効成分中に、紙用柔軟剤を3〜18重量%、及び保湿成分を60〜80%含むものが望ましい。
【0016】
酸化チタンに対して、平均粒径が1〜30μm、特に3〜15μmの他のパウダー(特に粒状体のものが望ましい)と併用することもできる。併用する他のパウダーとして好適なのはタルクであり、酸化チタンに対しタルクは50重量%未満が望ましい。
また、酸化チタン及び併用する他のパウダーの配合比に関して酸化チタンが多過ぎ、併用する他のパウダーが少なすぎる場合、手触り感は向上するが、柔らか感に乏しくなる。反対に、酸化チタンが少な過ぎ、併用する他のパウダーが多過ぎる場合、柔らか感は向上するが、手触り感に乏しくなる。
【0017】
さらに、薬液中の酸化チタン含有量が多過ぎると、薬液の流動性が低下し、原紙への浸透性・定着性が悪くなる。また、酸化チタン含有量が少な過ぎると、パウダー添加による効果が乏しくなる。
【0018】
前記併用可能なタルク以外の他のパウダーとしては、カオリン、クレー、炭酸カルシウム等の無機物粉体や、金属石鹸(ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム等)、コーンスターチ、小麦粉、米デンプン、馬鈴薯澱粉、小麦粉タンパク質等の有機物粉体を単独または複数種組み合わせて用いることができる。このうち、澱粉が最適であり、例示の他のパウダーでは効果が顕著でない。
【0019】
薬液中に酸化チタンを含有させる場合、いわゆるローション剤中に酸化チタンを含有させて紙に転写方式によりローション剤共に紙に定着させることができる。
酸化チタンを含有させる場合、酸化チタンを原紙に定着させるために接着成分を用いることができるが、接着成分は酸化チタンの移動を阻害するので、使用時に肌が接触したとき酸化チタンにより肌を痛める恐れがある。それだけでなく、接着成分を含有することにより紙が硬くなるため、肌への刺激が増す。これに対して、接着成分を含有しないことにより、酸化チタンが紙に対して強固に接着せず、使用時に添加された酸化チタンが肌の上を転がる又は滑ることによって肌への刺激を減らすことができる。
【0020】
本発明において有効成分の主成分として、他に保湿剤を含有させる。保湿剤としては、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール、ソルビトール、グルコース、キシリトール、マルトース、マルチトール、マンニトール、トレハロース等の糖類、グルコール系薬剤およびその誘導体、セタノール(セチルアルコール)、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、オレイルアルコール等の高級アルコール(高級アルコールの中でも脂肪族アルコールに属するもの)、流動パラフィン、コラーゲン、加水分解コラーゲン、加水分解ケラチン、加水分解シルク、ヒアルロン酸若しくはその塩、セラミド等の1種以上を任意の組合せで用いることができる。保湿剤は、パウダーを除いた主成分中60〜80重量%、特に65〜75重量%含有するのが好ましい。
【0021】
保湿剤として、グリセリンを採用して、主成分中60〜80重量%含有させるのが特に望ましい。
他に有効な保湿剤としては、流動パラフィンがあるが、その量は保湿成分中に10%以下、特に0.5〜5%とするのが望ましい。
【0022】
さらに、保湿剤として、前掲中のうち炭素数14〜24(18〜22がより好ましい)の直鎖又は分岐鎖(直鎖が好ましい)のアルキル基又はアルケニル基を有する脂肪族アルコールが有効である。好ましくは、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコールが挙げられ、また、セチルアルコールとステアリルアルコールの混合物であるセトステアリルアルコールなどの脂肪族アルコールの混合物が挙げられる。特に、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコールが好ましい。この脂肪族アルコールの添加量としては、保湿成分中に10%以下、特に0.5〜5%とするのが望ましい。
【0023】
また、他の有効成分として、薬液中に油性成分、乳化成分、抗カビ成分、消泡成分などを含有させることができる。これらの成分としては、5重量%以下が望ましい。特に油性成分が多過ぎるとべたつき感が増し、乳化成分が多過ぎると泡立ち易くなるため、風合いの悪化や操業性の悪化という問題がある。
【0024】
油性成分としては、ワセリン等の石油若しくは鉱物油由来成分、ミンク油やラノリン油、スクワラン等の動物油由来成分、オリーブ油、ホホバ油、ローズヒップ油、アーモンド油、ユーカリ油、アボカド油、ツバキ油、大豆油、サフラワー油、ゴマ油、月見草油、ひまわり油等の植物由来成分、アルキルメチルシリコーン等のシリコーン油、流動パラフィンを用いることができる。特に流動パラフィンは好適である。
【0025】
さて、本発明においては紙用柔軟剤を使用する。紙用柔軟剤としては、有効成分中の主成分中に3〜18重量%使用するのが望ましい。
この紙用柔軟剤としては、アニオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤および両性イオン界面活性剤のなかから適宜選択して用いることができる。また、これらは消泡効果を示しエマルジョン安定性の点にも寄与する。
【0026】
アニオン系界面活性剤としては、カルボン酸塩系、スルホン酸塩系、硫酸エステル塩系、燐酸エステル塩系などを用いることができる。特にアルキル燐酸エステル塩が好ましい。
【0027】
非イオン界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、ジエチレングリコールモノステアレート、ジエチレングリコールモノオレエート、グリセリルモノステアレート、グリセリルモノオレート、プロピレングリコールモノステアレートなどの多価アルコールモノ脂肪酸エステル、N−(3−オレイロシキ−2−ヒドロキシプロピル)ジエタノールアミン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビット密ロウ、ポリオキシエチレンソルビタンセスキステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルなどを用いることができる。
【0028】
カチオン界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩、アミン塩、またはアミンなどをもちいることができる。
【0029】
また、両性イオン界面活性剤としては、カルボキシ、スルホネート、サルフェートを含有する第2級または第3級アミンの脂肪族誘導体、または複素環式第2級または第3級アミンの脂肪族誘導体などを用いることができる。
【0030】
前掲のなかで、柔軟効果が高いのはカチオン系界面活性剤である。特に第4級アンモニウム塩、とりわけ、下記一般式(A)で表される化合物(成分(A))が最適である。

(式中、R1は、炭素数6〜24の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基もしくはアルケニル基又はR3−O−R4−を示し、R2は、炭素数1〜6の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基又は炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基を示し、それぞれ異なっていても良い。R3は炭素数6〜24の直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基もしくはアルケニル基、R4は炭素数1〜6の直鎖のアルキレン基を示す。X-は陰イオンを示す。)
【0031】
成分(A)において、R1及びR2は以下に示すものが紙の柔らかさの観点から好ましい。
上記一般式(A)において、R1としては、炭素数6〜24であり、12〜24が好ましく、16〜22がより好ましく、20〜22がさらに好ましい。また、R1は、直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基もしくはアルケニル基又はR3−O−R4−であり、R1、R3は直鎖が好ましく、またアルキル基が好ましく、直鎖のアルキル基が特に好ましい。R2は、炭素数1〜6、好ましくは1〜3の直鎖又は分岐鎖のアルキル基若しくは炭素数1〜3のヒドロキシアルキル基であり、それぞれ異なっていても良い。R2は直鎖のアルキル基が好ましい。R4は炭素数1〜6の直鎖のアルキレン基であり、炭素数2〜4が好ましい。
【0032】
-としては、陰イオンであり、ハロゲンイオン、例えばフッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン又はヨウ素イオン、又は有機アニオン、例えば酢酸イオン、クエン酸イオン、乳酸イオン、グリコレート、リン酸イオン、硝酸イオン、スルホン酸イオン、硫酸イオン、並びにメチル硫酸イオン及びエチル硫酸イオン等のアルキル硫酸イオン等が挙げられ、ハロゲンイオン又はアルキル硫酸イオンが好ましく、特に塩素イオン、メチル硫酸イオン又はエチル硫酸イオンが好ましい。
【0033】
一般式(A)の化合物として、モノアルキルトリメチルアンモニウム塩、N−アルキル−N,N−ジヒドロキシエチル−N−メチルアンモニウム塩、モノアルキルトリエチルアンモニウム塩、モノアルケニルトリメチルアンモニウム塩、塩化炭化水素オキシアルキレントリメチルアンモニウム塩、などが挙げられる。具体的には、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムなどの臭化モノアルキルトリメチルアンモニウム、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化水素添加牛脂アルキルトリメチルアンモニウム、塩化硬化パーム油アルキルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、等の塩化モノアルキルトリメチルアンモニウム、エチル硫酸べヘニルトリメチルアンモニウム等のエチル硫酸モノアルキルトリメチルアンモニウムなどが挙げられる。また、塩化オレイルトリメチルアンモニウム等の塩化モノアルケニルトリメチルアンモニウム、塩化オクタデシロキシプロピルトリメチルアンモニウムクロライド等の塩化炭化水素オキシアルキレントリメチルアンモニウムなどが挙げられる(ここでの「炭化水素オキシアルキレン」は、基「R3−O−R4−」を意味する。)。
【0034】
上記成分(A)と、前記脂肪族アルコール(成分(B))とを併用すると、成分(A)の柔軟効果がより高まることが知見されている。
【0035】
さらに別の有効成分としては、柔軟剤、ビタミンC、ビタミンE等の各種ビタミン、グリシン、アスパラギン酸、アルギニン、アラニン、シスチン、システィンなどのアミノ酸、アロエエキス、アマチャエキス、アシタバエキス、カリンエキス、キュウリエキス、スギナエキス、トマトエキス、ノバラエキス、ヘチマエキス、ユリエキス、レンゲソウエキスなどの植物抽出エキス、キトサン、尿素、ハチミツ、ローヤルゼリー等を用いることができる。各種ビタミンや植物抽出エキス等の成分は、有効成分中0.000001〜0.001重量%含有されているのが好ましい。
【0036】
また、メントール、カンファー、シクロヘキサノールなどの昇華成分を有効成分中に3%以下の割合で添加することができる。
【0037】
他方、本発明の薄葉紙は製造方法によって限定されるものではないが、折り畳んで積層する製品形態、例えば箱詰め型のティッシュペーパーの場合、抄造した原紙に薬液を付与した後、インターフォルダ等の折り畳み装置で折り畳むよりも、折り畳み装置内で折り畳みのために原紙を搬送する過程で薬液を付与するようにすると、効率良く製造でき、また薬液や水分の蒸発も少なく、品質の安定した製品を製造できるようになるため好ましい。なお、後者の方法としては、本出願人による特願2004−251874号を例示することができる。
【0038】
いずれにしても、上述の成分は内添、外添あるいは転写などの方法によって原紙に含有させることができる。
【実施例】
【0039】
(実施例1〜16および比較例1〜6)
表1〜表3に示す各種の2プライティッシュペーパー(実施例1〜16および比較例1〜6)を製造し、各種物性の測定・算出および官能評価を行った。
使用した薬液原液は、パウダーを除いた有効成分92重量%及び水分8%からなり、有効成分中に、表中に記した保湿剤及び柔軟剤のほか、抗酸化剤1重量%及び乳化成分1.0重量%を含むものであった。
実施例1〜10及び比較例1〜6では、平均粒径7μmの酸化チタンを使用した。
使用した原紙は、米坪(1プライ)が19g/m2、NBKP配合率が50%、パルプフリーネスが650ml、内添紙力剤の使用量(対パルプスラリー)が15kg/t、縦方向乾燥紙力が298cN/25mm、横方向乾燥紙力が70cN/25mm、縦方向湿潤紙力が169cN/25mm、横方向湿潤紙力が50cN/25mmであった。
なお、物性の測定は、水分率を除いてJIS P 8111に規定される条件下で行った。
【0040】
(柔らかさ感の評価方法)
柔らかさ感の官能評価については、被験者30名により、紙の表面を手で触った際の柔らか感について4点満点(4点:柔らかい、3点:やや柔らかい、2点:やや硬い、1点:硬い)で点数をつけて平均点を算出し、その平均点が、3.5点以上の場合を「柔らかい(◎)」、3点以上3.5点未満の場合を「やや柔らかい(○)」、2点以上3点未満の場合を「やや硬い(△)」、2点未満の場合を「硬い(×)」とそれぞれ評価した。
【0041】
(手触り感の官能評価)
手触り感の官能評価(すべすべ感)については、被験者30名により、紙の表面を手で触った際のすべすべ感について4点満点(4点:滑らかさを感じる、3点:やや滑らかさを感じる、2点:ややざらざらしている、1点:ざらざらしている)で点数をつけて平均点を算出し、その平均点が、3.5点以上の場合を「滑らかさを感じる(◎)」、3点以上3.5点未満の場合を「やや滑らかさを感じる(○)」、2点以上3点未満の場合を「ややざらざらしている(△)」、2点未満の場合を「ざらざらしている(×)」とそれぞれ評価した。
【0042】
(消臭性の試験方法)
消臭性の評価は、実施例および比較例の試料を、臭気サンプル(一般に臭いが強いと言われている食品「くさや」を使用)と一緒に密閉容器内に60分間放置し、その後、実施例および比較例の試料及び臭気サンプルをそれぞれ取り出して、容器内の臭いを30人の被験者が評価した(官能評価)。臭いがないと感じた場合を「○」とし、臭いがあると感じた場合を「×」とする評価とした。
【0043】
(抗菌性の試験方法)
JIS L 1902抗菌試験に基づき、黄色ブドウ球菌を用いて、静菌活性値を計測。○が「抗菌性あり(静菌活性値2.2以上)」、×が「抗菌性なし(静菌活性値2.2未満)」を示す。
【0044】
(湿潤紙力の向上の試験方法)
湿潤状態として筆により濡らした状態におけるティッシュペーパーの縦(長手方向)及び横(短手方向)の引張強度値[N/25mm]を、JIS P8113に準じた方法に従って測定した。
【0045】
【表1】

【0046】
【表2】

【0047】
【表3】

【0048】
表1〜表3からも判るように、本発明に係る実施例1〜16は、比較例1〜6と異なり、優れた柔らかさ、紙力強度、消臭性及び抗菌性を示すばかりでなく、優れた手触り感(いわゆる「すべすべ感」)をも示す結果が得られた。特に、実施例11〜13では、手触り感(すべすべ感)がより優れていた。
【0049】
(実施例28〜32)
実施例1に用いた添加剤の塗布量を変えて、実施例1と同様の方法で被試験紙を製造し、紙の柔らかさと手触り感について実施例1等と同様に評価した。結果を表3に示す。なお、表3には、参照のため実施例1の結果も併記した。
【0050】
(実施例17)
下記組成の添加剤〔pH(25℃)5〕を、実施例13とほぼ同様の方法に沿って製造した。
(重量%)
塩化べヘニルトリメチルアンモニウム 6.3
塩化セチルトリメチルアンモニウム 13.3
セトステアリルアルコール 7.7
アルキルケテンダイマー(AKD) 0.03
モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン 2.0
安息香酸ナトリウム 0.5
クエン酸(50%) 適量
水 残部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
合計 100.0
【0051】
(実施例18)
下記組成の柔軟剤〔pH(25℃)5〕を、実施例13とほぼ同様の方法に沿って製造した。
(重量%)
塩化べヘニルトリメチルアンモニウム 6.3
塩化セチルトリメチルアンモニウム 13.3
セトステアリルアルコール 7.7
アルキルケテンダイマー(AKD) 0.03
モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン 2.0
グリセリン 25.0
安息香酸ナトリウム 0.5
クエン酸(50%) 適量
水 残部
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
合計 100.0
【0052】
実施例13で用いた広葉樹晒クラフトパルプ100%の紙に対して、実施例17及び18で製造した柔軟剤を用いて実施例5と同様の方法で処理した紙は、優れた紙力強度、消臭性及び抗菌性のみならず、柔らかさと手触り感(すべすべ感)がさらに優れていた。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、ティッシュペーパー、トイレットペーパー、キッチンペーパー、クレープ紙等の薄葉紙に適用可能なものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原紙に対して、レーザー回析散乱粒度分布による平均粒子径(D50)が0.05〜30μmの酸化チタンと、紙用柔軟剤と、保湿成分とを含み、前記酸化チタンは原紙に対し10〜30重量%含むことを特徴とする衛生用紙。
【請求項2】
さらに、紙力剤を含む請求項1記載の衛生用紙。
【請求項3】
紙力剤が、ケン化ロジン、天然強化ロジン、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸及び無水ステアリン酸の群から選ばれたものである請求項2記載の衛生用紙。

【公開番号】特開2008−88587(P2008−88587A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−269661(P2006−269661)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】