説明

衛生薄葉紙

【課題】本発明は含ポリフェノール植物抽出物をシリコーンオイルに配合しても固化物が生じず、薄葉紙へ安定して付着させることができると共に、植物抽出物の効果を損なわない衛生薄葉紙を提供する。
【解決手段】ポリエーテル変性シリコーン0.5〜5質量%と、多価アルコールと、茶、オリーブ、ブドウ、リンゴ及びブルーベリーの群から選ばれる1種以上の含ポリフェノール植物抽出物とを担持してなる衛生薄葉紙である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ティシュペーパーやトイレットペーパー等の衛生薄葉紙に関し、より詳しくは、しっとり感や平滑感を与える成分を含む衛生薄葉紙に関する。
【背景技術】
【0002】
ティシュペーパーやトイレットペーパー等の衛生薄葉紙にしっとり感や平滑感を与え柔軟性を向上させるため、シリコーンオイルを含むローション成分を付与したローションペーパーやローショントイレットペーパーが知られている(特許文献1〜3参照)。特に、近年の花粉症の広まりを受けて、柔らかさを追及し、鼻かみに特化したローションティシューの需要が伸びている。このローション成分としては、しっとり感を与えるシリコーンオイル、グリセリンなどの多価アルコールからなる保湿剤や、第四級アンモニウム塩などの柔軟剤が配合されている。
しかしながら、重度のアレルギー性鼻炎患者の場合、一日の鼻かみ回数が多数に及ぶ為、ローションティシューを使用しても鼻及びその周辺部の赤化やヒリヒリとした刺激といった肌トラブルを完全に避けることが難しい。
そこで、肌トラブルを防止し、皮膚バリア機能を維持する目的で、アロエエキス、ヒアルロン酸等の保湿剤やコラーゲン等のケア成分をローションペーパーに配合することが行われている。又、消臭、酸化防止、制菌などの効果があるものとして、ポリフェノール類を多く含む植物由来のお茶エキス等が広く知られており(特許文献4)、これらのポリフェノール類をローションペーパーに配合すれば、消臭、制菌等の効果を付与できることが期待される。
【0003】
【特許文献1】特開平7-145596号公報
【特許文献2】特開平9-296389号公報
【特許文献3】特開2006-169690号公報
【特許文献4】特開2000-159670号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者らが検討したところ、ポリフェノール類を含む植物成分(お茶エキス等)を、シリコーンオイルに混合すると、混合溶液中に固化物やゲル化物が生じる場合があることが判明した。特に、広く使用されているシリコーンオイル(オルガノポリシロキサン)であるアミノ変性シリコーン乳化体やジメチルシリコーン乳化体の場合に、固化が顕著に生じることがわかった。アミノ変性シリコーン、ジメチルシリコーンには乳化剤が配合されており、固化の原因として乳化剤の影響も考えられる。
このように溶液中に固化が生じると、薄葉紙への塗布工程で操業性を悪化させたり、植物成分が沈殿してしまうために効果が低減するおそれがある。
又、皮膚バリア機能の維持を目的として、上記保湿剤等をローションペーパーに配合しても、鼻かみ回数が増えると、皮膚バリア機能の損傷を十分に防止することは難しい。皮膚バリアが損傷すると、細菌、ウイルス、刺激物質、アレルギー物質等の皮膚透過性が高まり、これらにより引き起こされるアレルギー反応が皮膚の赤みや痛みといった不快感の原因となる。
従って、本発明は含ポリフェノール植物抽出物をシリコーンオイルに配合しても固化物が生じず、薄葉紙へ安定して付着させることができると共に、植物抽出物の効果を損なわない衛生薄葉紙の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明の衛生薄葉紙は、ポリエーテル変性シリコーンと、多価アルコールと、含ポリフェノール植物抽出物とを担持してなる。
このようにポリエーテル変性シリコーンを用いると、含ポリフェノール植物抽出物と混合した時に固化物を生じず、操業性を低下させたり植物抽出物の効果を損なうことがない。
【0006】
前記含ポリフェノール植物抽出物が茶、オリーブ、ブドウ、リンゴ及びブルーベリーの群から選ばれる1種以上の抽出物であることが好ましい。
【0007】
前記含ポリフェノール植物抽出物は、エピガロカテキン-3-O-(3-O-メチル) ガレート、エピガロカテキン-3-O-(4-O-メチル) ガレート、エピカテキン-3-O-(3-O-メチル) ガレート、及びそれらの異性体からなる群から選ばれる1種以上を有効成分として含有することが好ましい。
上記有効成分は抗アレルギー作用を持つメチル化カテキンであり、鼻かみ等による皮膚バリア損傷に起因したアレルギー反応を抑制するため、薄葉紙の使用頻度が高くても快適な使用感が得られる。
【0008】
前記含ポリフェノール植物抽出物の含有割合が0.01〜0.5質量%であることが好ましい。
前記ポリエーテル変性シリコーンの含有割合が0.5〜5質量%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
この発明によれば、含ポリフェノール植物抽出物をシリコーンオイルに配合しても固化物が生じず、薄葉紙へ安定して付着させることができると共に、植物抽出物の効果を損なわない衛生薄葉紙が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の実施形態に係る衛生薄葉紙は、ポリエーテル変性シリコーンと、多価アルコールと、含ポリフェノール植物抽出物とを担持してなる。
薄葉紙原紙としては、ティシュペーパー、トイレットペーパー、紙タオル等が例示されるが特にこれらに限定されない。薄葉紙原紙は1プライの単層紙でもよく、吸水性等の点から2プライ以上の重ね紙としてもよい。薄葉紙原紙の坪量は例えば10〜60g/m2程度とすることができる。
そして、上記薄葉紙原紙に、以下のポリエーテル変性シリコーン、多価アルコール、及び含ポリフェノール植物抽出物を含有する処理液を塗布、含浸、又はスプレー等することにより、これらの成分が担持された衛生薄葉紙が得られる。
【0011】
<ポリエーテル変性シリコーン>
ポリエーテル変性シリコーンは、親水性のポリオキシアルキレンを疎水性のジオルガノポリシロキサンに導入したシリコーンであり、ポリオキシアルキレンの導入量によって溶解性を調整することができる。ポリオキシアルキレンが導入されるジオルガノポリシロキサンのシリコーン鎖は直鎖でも分岐していてもよい。
ポリエーテル変性シリコーンを用いることにより、含ポリフェノール植物抽出物と固化物を生じない理由は、親水性のポリオキシアルキレンを導入することによりシリコーンの溶解性を発現していると考えられる。
【0012】
上記処理液中のポリエーテル変性シリコーンの含有割合を0.5〜5質量%とすることが好ましい。ポリエーテル変性シリコーンの含有割合が0.5質量%未満であると、薄葉紙が平滑化し難くなり、5質量%を超えると含ポリフェノール植物抽出物との間に固化物が生じ易くなる傾向にある。
又、ポリエーテル変性シリコーンのHLB(Hydrophile-Lipophile Balance)値が8以上が好ましく、10以上がより好ましい。HLB値は0から20までの値を取り、数値が高いほど親水性が高く、水に溶け易い。ポリエーテル変性シリコーンのHLB値が8未満であると、含ポリフェノール植物抽出物と混合した処理液とした際に相溶性が低下してポリエーテル変性シリコーンが分離し易くなる傾向にある。
【0013】
ポリエーテル変性シリコーンとしては、例えば、下記式(1)
【化1】

で表される構造のものを好適に用いることができる。但し、式(1)において、Rは炭素原子数1〜20の炭化水素基;Rは水素原子又は炭素原子数1〜5の炭化水素基;m及びnは正の整数でありm+nは9以上;a及びbは0〜50の整数である。
【0014】
<多価アルコール>
多価アルコールは保湿剤として機能し、上記処理液中の主成分となる。多価アルコールは分子内に2個以上の水酸基を含み、例えば、グリセリン、ソルビトール等を用いることができる。又、多価アルコールとして、特開平7−145596号公報(段落0011)に記載されたものを用いてもよいがこれらに限定されない。
【0015】
<含ポリフェノール植物抽出物>
含ポリフェノール植物抽出物は、植物から抽出されポリフェノールを含むものであり、ポリフェノール類は分子内に複数のフェノール性ヒドロキシ基を有する化合物である。ポリフェノール類は、消臭、酸化防止、制菌などの効果があるものとして知られている。
含ポリフェノール植物抽出物としてはカテキン類を多く含むもの、例えば、茶、オリーブ、ブドウ、リンゴ及びブルーベリーの群から選ばれる1種以上の抽出物が挙げられる。
上記処理液中の含ポリフェノール植物抽出物の含有割合が0.01〜0.5質量%であることが好ましい。含ポリフェノール植物抽出物の含有割合が0.01質量%未満であると、消臭、酸化防止、制菌などの効果が生じ難く、0.5質量%を超えると変色や臭気の問題があると共に、ポリエーテル変性シリコーンと混合した時に固化物を生じてポリフェノールの効果を消失する傾向にある。
【0016】
前記含ポリフェノール植物抽出物は、エピガロカテキン-3-O-(3-O-メチル) ガレート、エピガロカテキン-3-O-(4-O-メチル) ガレート、エピカテキン-3-O-(3-O-メチル) ガレート、及びそれらの異性体からなる群から選ばれる1種以上を有効成分として含有することが好ましい。
上記有効成分は抗アレルギー作用を持つメチル化カテキンであり、鼻かみ等による皮膚バリア損傷に起因したアレルギー反応を抑制するため、薄葉紙の使用頻度が高くても快適な使用感が得られる。
エピガロカテキン-3-O-(3-O-メチル)ガレートは、下記式(2)
【化2】

で表される構造を有している。
エピガロカテキン-3-O-(4-O-メチル)ガレートは、下記式(3)
【化3】

で表される構造を有している。
エピカテキン-3-O-(3-O-メチル)ガレートは、下記式(4)
【化4】

で表される構造を有している。
【0017】
本発明者らは、エピガロカテキン-3-O-(3-O-メチル) ガレート、エピガロカテキン-3-O-(4-O-メチル) ガレートやエピカテキン-3-O-(3-O-メチル) ガレートが抗アレルギー作用を有する物質であることを、I型アレルギー反応の実験モデルであるヒスタミン遊離に対する抑制効果(in vitro 法),in vivo マウス腹壁法(AW法)やIV型アレルギー反応の実験モデルであるオキサゾロン誘導マウス耳介皮膚炎に対する抑制効果を指標にスクリーニングして見出した(特開2000-159670号公報、特開2007-186462号公報)。
エピガロカテキン-3-O-(3-O-メチル) ガレート、エピガロカテキン-3-O-(4-O-メチル) ガレート及びはエピカテキン-3-O-(3-O-メチル) ガレートは、茶葉、例えば「青心大ぱん」、「べにほまれ」、「べにふじ」、「べにふうき」などの茶葉(「べにふうき」は、種苗登録された茶の品種名である(茶農林44号))、好ましくは乾燥茶葉を水系溶剤で抽出して得られるポリフェノール画分から分離、採取することができる。
茶 (Camellia sinensis)は、非常に安全性の高い飲料であるため、茶葉からエピガロカテキン-3-O-(3-O-メチル) ガレート、エピガロカテキン-3-O-(4-O-メチル) ガレート、エピカテキン-3-O-(3-O-メチル) ガレートを抽出することが好ましい。
なお、エピガロカテキン-3-O-(3-O-メチル) ガレート、エピガロカテキン-3-O-(4-O-メチル) ガレート、エピカテキン-3-O-(3-O-メチル) ガレートの他、それらの異性体やエピガロカテキン-3-O-(3,5-O−ジメチル)ガレートなどのカテキン誘導体、又は上記した各化合物の混合物が含まれていてもよい。
【0018】
上記した抽出物の安全性を確保する点で、水,エタノールまたはこれらの混合物を溶剤として抽出に用いるのが好ましい。
抽出に際して原料の茶葉は、マイクロ波などを用いて乾燥したものが好適であり、この茶葉と溶剤との比率(重量比)は、茶葉1に対して溶剤5から100倍の割合が好ましい。抽出温度は、特に限定されるものではなく、通常は室温〜常圧下で溶剤の沸点の範囲が作業上都合がよい。抽出時間は、10分から6時間の範囲とするのが好ましい。
【0019】
<処理液>
上記ポリエーテル変性シリコーン、多価アルコール、及び含ポリフェノール植物抽出物を混合して処理液を調製し、上記薄葉紙原紙に塗布、含浸、又はスプレー等する。処理液の組成の大部分は多価アルコールである(通常、70質量%以上)。又、処理液に適宜紙力増強剤やその他の添加剤を配合してもよい。
処理液の薄葉紙原紙への付着量は、例えば5〜35質量%とすることができる。
実際の製造ラインでは、薄葉紙原紙ロールに例えばグラビア塗工(あるいはスプレー)で処理液を塗布した後、切断し、各紙を積層するか、必要に応じてV字折り等してポップアップ式としてもよい。
<実施例>
【0020】
以下、実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明は勿論これらの例に限定されるものではない。又、特に断らない限り、以下に記載する「部」及び「%」は、それぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。
【実施例1】
【0021】
<処理液の調製>
多価アルコールとして、グリセリン65%とソルビトール35%を混合した。この多価アルコールに対し、茶エキス(アサヒ飲料株式会社製)0.05%と、ポリエーテル変性シリコーン(側鎖変性タイプ(HLB=13))の所定量(表1の値)とを配合し処理液を調製した。
この処理液を105℃で2時間加熱し、外観変化を観察した。また、液体クロマトグラフ法を用いて、処理液中の茶エキスの主要成分であるカテキンの定量分析を行った。定量分析においては、エピカテキン(EC),エピガロカテキン(EGC),エピカテキンガレート(ECG),エピガロカテキンガレート(EGCG)の合計をカテキン量とした。
【0022】
<衛生薄葉紙の作製>
次に、調合した上記薬液を、坪量15g/m2のフェイシャルティシュ原紙に、ラボコーターにより原紙の乾燥重量に対して塗工量20%でグラビア塗工した。
【0023】
<比較例1>
処理液中のポリエーテル変性シリコーンの代わりにアミノ変性シリコーン(商品名SM8704C、東レ・ダウコーニング社製を添加したこと以外は、実施例1とまったく同様にして処理液を調製し、衛生薄葉紙を作製した。
【0024】
<比較例2>
処理液中のポリエーテル変性シリコーンの代わりにジメチルシリコーン(商品名BY22-874、東レ・ダウコーニング社製)を添加したこと以外は、実施例1とまったく同様にして処理液を調製し、衛生薄葉紙を作製した。
【0025】
<評価>
1. 衛生薄葉紙(シート)の強度
シートの縦及び横の引張強度を、JIS-S-3104に準じて測定し、次式
GMT=√ (乾燥縦引張強度×乾燥横引張強度)
で表される合成値で強度を総合的に評価した。GMTが110以上であれば実用上問題ない。
2.シートの風合い
パネラー7名による官能評価試験.(×、△、〇の3段階評価)の平均値を採用した。評価が○であれば実用上問題ない。
3.操業性
処理液をグラビア塗工した時の操業性(コーターのトラブルの有無)を判定した。固化物発生による塗工機の停止や減速のあったものを×とした。また塗工機の薬液配管内に固化物の発生が認められたものを△とした。評価が○であれば実用上問題ない。
【0026】
処理液の特性について得られた結果を説明する。
まず、2時間加熱後の処理液の外観変化については、実施例1の場合は殆ど外観が変化しなかったのに対し、比較例2の場合は液が変色し、比較例1の場合は液が著しく変色すると共に固形物が分離した。ジメチルシリコーン自体は化学的に安定であり、茶エキスとの反応や加熱による変質は考え難いことから、ジメチルシリコーンの乳化のために添加されている界面活性剤等が影響することが考えられる。
又、図1に示すように、比較例1,2の場合(それぞれ符号◆、■)、処理液中のカテキンの残存率が20%以下であり、処理液中のシリコーン配合量が5(質量)%で殆どカテキンが残存しなかった。これは、処理液中のシリコーン成分との間で固化することによりカテキンが取り込まれたためと考えられる。
一方、実施例(符号△)の場合、処理液中のシリコーン配合量を5%に増やしても約50%のカテキンが処理液中に残存した。
【0027】
次に、衛生薄葉紙及び操業性の結果を表1に示す。
【0028】
【表1】

【0029】
表1から明らかなように、実施例1の場合、操業性が優れているとともに、風合いが良い(表面の平滑感が向上する)ことがわかった。なお、GMTを110以上とするためには、実施例1におけるポリエーテル変性シリコーンの含有割合を5%以下とすることが必要であることが判明した。
一方、比較例1,2の場合、操業性が劣っていた。
以上のように、本発明の実施例1によれば、ポリエーテル変性シリコーンと含ポリフェノール植物抽出物(茶エキス)を混合することにより、衛生薄葉紙の表面の平滑性(スベスベ感)が高く、ポリフェノール(カテキン)の効果が消失することがなく、操業性にも優れている。これにより、天然抽出成分であるポリフェノール類の効果をローションティシューへ付加することが可能となった。
【実施例2】
【0030】
含ポリフェノール植物抽出物(茶エキス)として、エピガロカテキン-3-O-(3-O-メチル) ガレート、エピガロカテキン-3-O-(4-O-メチル) ガレート、及びエピカテキン-3-O-(3-O-メチル) ガレート、及びそれらの異性体のうち1種以上を有効成分として含有するものを用い、メチル化カテキンの安定性を調査した。
<処理液の調製>
多価アルコールであるグリセリン98.95%に対し、「べにふうき」茶エキス0.05%と、ポリエーテル変性シリコーン(側鎖変性タイプ(HLB=13))1.00%とを配合し処理液を調製した。
この処理液を25℃で48時間放置し、液体クロマトグラフ法を用いて、処理液中の茶エキスの主要成分であるメチル化カテキンの定量分析を行った。定量分析においては、エピカテキン(EC),エピガロカテキン(EGC),エピカテキンガレート(ECG),エピガロカテキンガレート(EGCG)の合計をカテキン量とした。
<「べにふうき」茶エキスの調製>
100gの粉砕「べにふうき」緑茶に50%エタノール500mlを添加し、50℃で30分抽出し、濾過した後、残さを集めて再度50%エタノール800mlで抽出した。濾過後、2回分の抽出液を1/10量まで濃縮してスプレードライした。100gの「べにふうき」粉末緑茶から28gの乾燥品を得た。本品のエピガロカテキン-3-O-(3-O-メチル) ガレート(EGCG3"Me)含量は、53.8mg/g、エピカテキン-3-O-(3-O-メチル) ガレート(ECG3"Me)含量は、22.56mg/g、エピガロカテキンガレート(EGCG)含量は、244.2mg/g、総カテキン含量は572.12mg/gであった。
【0031】
<比較例3>
処理液中にポリエーテル変性シリコーンを配合せず、グリセリンの配合量を99.95%に変更したこと以外は、実施例2とまったく同様にして処理液を調製し、メチル化カテキンの定量分析を行った。
【0032】
<比較例4>
処理液中にポリエーテル変性シリコーンを配合せず、その代わりにシリコーンエマルジョン(アミノ変性シリコーン)を1.00%配合したこと以外は、実施例2とまったく同様にして処理液を調製し、メチル化カテキンの定量分析を行った。
得られた結果を表2に示す。
【0033】
【表2】

【0034】
表2から明らかなように、実施例2の場合、「べにふうき」茶エキス中のメチル化カテキンが安定して処理液中に存在していた。
一方、グリセリンのみを処理液中に含む比較例3の場合、「べにふうき」茶エキス中のメチル化カテキンは安定して存在したが、そもそもシリコーンを含まないため、平滑感が得られない。
又、シリコーンエマルジョンを処理液中に含む比較例4の場合、「べにふうき」茶エキス中のメチル化カテキンが処理液中に残存しなかった。
【実施例3】
【0035】
含ポリフェノール植物抽出物(茶エキス)として、エピガロカテキン-3-O-(3-O-メチル) ガレート、エピガロカテキン-3-O-(4-O-メチル) ガレート、エピカテキン-3-O-(3-O-メチル) ガレート及びそれらの異性体のうち少なくとも1種を有効成分として含有するものを用い、処理液の薄葉紙への付着量を変化させた。
多価アルコールであるグリセリン98.95%に対し、実施例2で用いた「べにふうき」茶エキス0.05%と、ポリエーテル変性シリコーン(側鎖変性タイプ(HLB=13))1.00%とを配合し処理液を調製した。
この処理液を、坪量15g/m2のフェイシャルティシュ原紙に、ラボコーターにより原紙の乾燥重量に対し、それぞれ表3に示す塗工量でグラビア塗工した。なお、表3において、塗工前の薄葉紙100質量部に対する、処理液の塗工量を質量部で表している。
得られた衛生薄葉紙(シート)の強度として、GMTを実施例1と同様にして測定した。
又、シートのしっとり感及び平滑感を、パネラー7名による官能評価試験.(×、△、〇の3段階評価)の平均値で評価した。評価が△又は○であれば実用上問題ない。
得られた結果を表3に示す。
【0036】
【表3】

【0037】
表3から、処理液の薄葉紙への付着(塗工)量を15〜25部とすると好ましい。
【実施例4】
【0038】
含ポリフェノール植物抽出物(茶エキス)として、エピガロカテキン-3-O-(3-O-メチル) ガレート、エピガロカテキン-3-O-(4-O-メチル) ガレート、及びエピカテキン-3-O-(3-O-メチル) ガレート及びそれらの異性体のうち少なくとも1種を有効成分として含有するものを用い、処理液中の茶エキスの含有割合を変化させた。
多価アルコールであるグリセリンを表4に示す割合で配合し、これに対しポリエーテル変性シリコーン(側鎖変性タイプ(HLB=13))1.00%を配合し、さらに実施例2で用いた「べにふうき」茶エキスを表4に示す割合で配合し、処理液を調製した。
この処理液を、坪量15g/m2のフェイシャルティシュ原紙に、ラボコーターにより原紙の乾燥重量に対し、塗工量25%でグラビア塗工した。
得られた衛生薄葉紙(シート)の強度として、GMTを実施例1と同様にして測定した。
又、シートの使用感として、パネラー10名がそれぞれシートを用いて1日30回鼻かみを行ったときの肌の状態を評価した。茶エキスを含まないシートを使用した際の肌の状態を5点(標準)とし、悪い場合を最低1点、良い場合を最大10点として評価を行った。
さらに、得られた衛生薄葉紙(シート)の色調を目視判定し、黄変の有無を評価した。
得られた結果を表4に示す。
【0039】
【表4】

【0040】
表4から、処理液中の茶エキスの含有割合が0.05%を超えても肌の状態の改善効果が飽和すると共に、茶エキスの含有割合が0.5%を超えると、シートの黄変が生じてシートの美観を損なうことが判明した。
【0041】
なお、実施例2〜4で用いた「べにふうき」茶エキス中のカテキン類の、肌浸透性を測定した。ヒト3次元正常皮膚モデルを用い、表皮側から「べにふうき」茶エキスを添加し、真皮側から滲出してくるカテキン含量を液体クロマトグラフ法により測定して浸透率を算出した。
その結果、2時間後の浸透率は、EGCGが2.7%、エピガロカテキン-3-O-(3-O-メチル) ガレート(EGCG3"Me)が5.7%となり、従来の茶エキスに多く含まれているEGCGに比べ、メチル化カテキンの方が肌への浸透性が高く、抗アレルギー作用も高いことが判明した。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】処理液中のカテキンの残存率を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエーテル変性シリコーンと、多価アルコールと、含ポリフェノール植物抽出物とを担持してなる衛生薄葉紙。
【請求項2】
前記含ポリフェノール植物抽出物が茶、オリーブ、ブドウ、リンゴ及びブルーベリーの群から選ばれる1種以上の抽出物である請求項1記載の衛生薄葉紙。
【請求項3】
前記含ポリフェノール植物抽出物は、エピガロカテキン-3-O-(3-O-メチル) ガレート、エピガロカテキン-3-O-(4-O-メチル) ガレート、エピカテキン-3-O-(3-O-メチル) ガレート、及びそれらの異性体からなる群から選ばれる1種以上を有効成分として含有する請求項2記載の衛生薄葉紙。
【請求項4】
前記含ポリフェノール植物抽出物の含有割合が0.01〜0.5質量%である請求項1〜3のいずれか記載の衛生薄葉紙。
【請求項5】
前記ポリエーテル変性シリコーンの含有割合が0.5〜5質量%である請求項1〜4のいずれかに記載の衛生薄葉紙。

【図1】
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【公開番号】特開2009−150032(P2009−150032A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−207615(P2008−207615)
【出願日】平成20年8月12日(2008.8.12)
【出願人】(000183462)日本製紙クレシア株式会社 (112)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【Fターム(参考)】