説明

衝撃掘削機(percussionmole)

地熱ヒートポンプシステム用の地中ループ挿入装置が提供される。この装置は、衝撃掘削機(percussion mole)と、当該掘削機に接続され前記ヒートポンプシステムから地中へと熱交換流体を搬送するための第1の流体パイプと、前記掘削機に接続され前記ヒートポンプシステムに前記熱交換流体を戻すための第2の流体パイプとを具える。前記第1と第2の流体パイプの一方が、前記地中ループの挿入中に前記掘削機に駆動流体を配送する入口パイプを具え、流体パイプの他方が前記駆動流体用の排出パイプを具える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下パイプを敷設するための方法および装置に関する。特にパイプが、ヒートポンプ、すなわち、地熱、または地源、ヒートポンプシステムを用いる加熱または冷却システムの一部を形成するケースに関する。
【0002】
ヒートポンプベースの加熱システムは、加熱手段としてより一般的に普及してきた。システムは、例えば、建物や他の空間を温めたりするために地中から熱エネルギを抽出し、集中させて転送することにより運用される。システムを逆に働かせるために構成することも可能であり、これにより熱が建物から抽出されて地中に導かれる。別の構成において、熱エネルギは、地中に敷設されたパイプの熱伝導性ループを介して地中とポンプシステムとの間に移送される。パイプは流体を含み、この流体をポンプにより循環させ、熱エネルギをシステムの周りに移送する。一般的な閉ループシステムにおいて、流体は水溶液及び不凍液である。
【0003】
熱伝導性パイプは、現場へのアクセス、地面の種類、建物の近接性、または現場の境界を含む要因により様々な配置で地中に敷設されてもよい。パイプは、それらがほぼ水平となるように設置されてもよく、この場合パイプは、後で塞がれる開掘溝(open trench)に敷設されてもよい。若しくはパイプは、従来の衝撃掘削(percussion-moling)又はドリル技術により生成された地中の穴に配置されてもよい。この場合、例えば、その中に穴が生じる立坑によって穴の遠位端部へのアクセスが可能となる。水平ではない穴の中にパイプを配置し、かつ代わりに(いくつかの場合には縦下方の)角度で下向きに突出させるように、限定された現場の境界内に維持することが望まれる場合が多い。これらの穴は、かなりの深さであってもよく、100メートルを超え、一般に地上レベルの入口地点に配置されなければならない高価かつ厄介な機器を含むドリル技術により生成される。この場合、明らかに穴の他端部へのアクセスは不可能であり、したがって穴が準備された後、コンパクトな180度の連結により端部で連結された一対のパイプが穴に挿入されて、このようにして完成した加熱システムにおいて、流体を穴の中に循環させて再び戻すことができる。
【0004】
現在のところ、遠くない端部へのアクセスがある穴を生成するために用いられた方法は、高価で厄介なドリル及び掘削機の使用を必要とする。費用がとても高価であるか、あるいはドリル機械がアクセスできない場合が多い。一例として、密集した都会の立地は、加熱される現場周辺の露出した地面へのアクセスが殆どあるいは全くないかもしれないし、あるいは外の地面が全くないかもしれず、このように唯一現実的な解決方法は、(例えば、地下室を通り)建物自体の中から地中に入ることである。さらに、地中の状態は、ドリル装置の撤去後の掘った穴の部分的な崩落となりえ、このようにパイプループの挿入は困難か、あるいは不可能である。このような崩落を防ぐために、ドリルプロセスで穴の内径に同時にスリーブを付けることが一般的である。しかしながら後の伝熱管の設置は、システムが期待効率で運用されると、熱伝導性コーキングで塞がれなければならない空隙内にパイプを残したままとなる。
【0005】
(衝撃掘削機、または土壌撤去ハンマとしても知られる)衝撃掘削機は、最初に開溝を掘ることなく、パイプまたはケーブルを地下に敷設するのに必要とされる場合に用いる気圧式装置である。最も一般的には、道路又は同様の障害物の下を水平に通るように用いられ、衝撃掘削機は大抵、立坑側に配置され、出現するように意図される同じの深さの離れた立坑を目的としている。掘削機は圧縮空気で駆動し、近くに取り付けられた圧縮空気ホースに沿って実現される。大容量を有する内部ピストンは、掘削機の管状ケーシング内を急速に前方に進み、ケーシングの前方端部に当たりケーシングを前方に駆動し、プロセスにおいてケーシングを周りの地中に配置する。ケーシング内の前方に当たると、ピストンがわずかなエネルギでケーシングの後部に戻るように駆動され、この点で進行が阻止されるように内部バルブが配置される。次いで、排気が掘削機後部の穴の中に排出されて、このサイクルが繰り返される。内部ピストンの後方への進行中に放散されたエネルギ及びその後の逆戻りは、ケーシングとその周りの圧縮された地面との間の摩擦を乗り越えるには不十分であり、したがって、サイクルのこの間、ケーシングは後方には進まない。例えば、地下に進むことができるより洗練された種類や、抵抗不可能な障害物に遭遇すると後方に進むよう指令できる種類もある。簡単かつ後述の洗練された種類を含む従来型の掘削機は一般に、多くの別個のケーブル設置が実施される間、適切な寿命が設定される。すべての適用例において、ケーブル又はパイプを通すことができる空洞を作る目的が達成された後、掘削機は回収される。いくつかの場合、掘削機は空洞を作成すると同時に、ケーブル又はパイプを引き抜くように用いられる。
【0006】
本発明の一態様によると、地熱ヒートポンプシステム用の地中ループ挿入装置が提供され、これは衝撃掘削機(percussion mole)と、当該掘削機に接続され前記ヒートポンプシステムから地中へと熱交換流体を搬送するための第1の流体パイプと、前記掘削機に接続され前記ヒートポンプシステムに前記熱交換流体を戻すための第2の流体パイプとを具え、前記第1と第2の流体パイプの一方が、前記地中ループの挿入中に前記掘削機に駆動流体を配送する入口パイプを具え、流体パイプの他方が前記駆動流体用の排出パイプを具える。
【0007】
前記駆動流体は、衝撃掘削機用の動力を供給する加圧流体である。これは液圧型流体(すなわち液体)であってもよく、気圧駆動掘削機の場合には圧縮空気のような気体であってもよい。
【0008】
この器具は、非常に精密な場所に用いられるパイプの閉ループを挿入する低コストの手段を提供する。ヒートポンプシステムに用いるパイプの閉ループを設置するための端部の見えない(blind-ended)通路を形成するための犠牲的な(使い捨ての)衝撃掘削機を具える。このパイプのループは、第1と第2の流体パイプを具え、これらは掘削機により地中に入るように引っ張られる。このように、掘削機は穴を生成し、これがそうしたようにパイプループを挿入する。この方法により、穴をドリルまたは掘削し、パイプを挿入するという2つの作業が同時に実現する。速度と利便性の利点と同時に、穴の壁がドリルまたは掘削後であってパイプを挿入できるようになる前に部分的に崩落してしまう問題を防ぐ。同様に、穴にスリーブを並べて崩落を防ぐ必要がなくなる。その代わり、このため、本発明は、パイプの周囲、スリーブ内の隙間を熱伝導コーキングで充填する必要を排除する。さらに、単回使用の必要しかないため掘削機は小型で軽量な構造とすることができる。本発明の掘削装置は、各穴を形成した後に掘削機を回収する必要がないため、少なくとも一部の限られたアクセスしかない場合にも利用できる。その代わり、各穴に新たな掘削機が使用される。これにより複数の掘削機が現場で放棄されるが、単回使用の単純な構造により従来の掘削方法に比べて設備の合計コストが劇的に低減する。
【0009】
第1および第2の熱交換流体パイプはまた、駆動流体を供給するパイプを具え、これは掘削機に接続されるパイプまたは管の数を低減することにより、掘削装置の構造を単純化する。また、材料費も抑えられ、装置のどの部品も回収されないため、掘削機に接続されたパイプの長さはすべて地中に残される。このため、装置をできる限り単純かつ安価に抑えることが有利となる。挿入中、第1および第2の流体パイプの少なくとも一方を用いて、掘削機を駆動する圧縮空気(または他の駆動流体)を供給する。挿入後、駆動流体の供給は遮断され、第1および第2の流体パイプはヒートポンプシステムに接続され、通常運用に供される。
【0010】
他方のパイプ(すなわち、2つの流体パイプのうちの他方であって、駆動流体を供給しない方)は、駆動流体用の排出パイプを含む。
【0011】
圧縮空気は、気圧式掘削機から噴出して土壌に穴を開けることが知られている。しかしながら、排気ガスを地表に戻し、穴の壁や周囲の地面の潜在的な変動を避けるのが利益となる。掘削機を正しく運用するには、吸入および排出する空気に圧力差が存在しなければいけないことがある。従来型の掘削機では、掘削機の後の穴の全部または一部が詰まったり、地下水の圧力により排気出口が阻害されたら、掘削機の運転は阻害され、ときにはまったく動かない状態となる。さらに、気圧式掘削機の排気ガスは潤滑剤や他の汚染物質を含み、環境に有害となる場合がある。本発明によると、圧縮空気の排出は第1および第2の流体パイプの一方を介して地表に戻される。これにより、地中に排気する場合の問題が回避される。掘削機を液圧式とすることもできる。液圧流体は通常は周囲の地中に放出できず、閉鎖的なリターン流路が実践的に必須である。挿入プロセスの間に、第1および第2の熱交換流体パイプの一方が駆動流体の供給に用いられ、他方が駆動流体の排出に用いられるため、掘削機に接続する必要があるパイプまたは管の数は最小限となる。
【0012】
駆動流体が2本の熱交換流体パイプのうちの一方に受けられて、他方を通って排出されるため、掘削機自体は任意で密閉されていてもよい(2つのポート以外は)。これは、掘削機の外部に漏れる可能性がなく、地下水が浸入する可能性がなくなる。
【0013】
衝撃掘削機は、駆動流体を受け入れてパイプを地中へと駆動するのに適合した第1の構成と、第1の流体パイプを介して熱交換流体を受けて、第2の流体パイプを介して戻すのに適合した第2の構成をとりうる。
【0014】
第1の構成では、掘削機は挿入プロセスに適合しており、駆動流体は第1または第2の流体パイプを介して供給され、掘削機を地中へと進める動力となる。その後掘削機は第2の構成に切り替わり、ここでは第1および第2の流体パイプがヒートポンプシステムの熱交換流体用のループを形成する。装置は、第1から第2への切り替わりの制御を行う何らかの手段とともに、これらの2つの構成を実現するバルブアセンブリを具える。
【0015】
第2の構成では、掘削機は好適には熱交換流体から切り離されている。すなわち、第2の構成において熱交換流体の流路は、第1の構成における駆動流体の流路に比べて迂回されている。これは、熱交換流体が掘削機を構成するのに用いられた材料について腐食性である場合に望ましい。熱交換流体を長期にわたり隔離することもよくできる。これは、熱交換流体が周囲の土壌に漏れないとともに、地下水圧が地熱式加熱回路へ漏れ入らないことを意味する。
【0016】
本発明の第2の態様によると、地熱ヒートポンプシステムの地中ループ挿入用衝撃掘削機用のバルブアセンブリが提供され、これは前記ヒートポンプシステムからの熱交換流体を受ける熱交換流体入口と、ヒートポンプシステムへと熱交換流体を戻す熱交換流体出口とを具え、前記熱交換流体入口および前記熱交換流体出口の一方が、掘削機を液圧的に駆動する駆動流体を受けるための駆動流体入口を具え、他方が駆動流体の出口を具え、前記バルブは、駆動流体を受けてそれを掘削機に伝送するのに適合した第1の構成と、前記熱交換流体を前記熱交換流体入口を介して受けて前記流体を前記熱交換流体出口を介して戻すのに適合した第2の構成とを有する。
【0017】
バルブアセンブリは、本発明による完全な掘削装置を提供すべく、一方の側で掘削機に取り付けられ、他方の側で複数のパイプに取り付けられる。第1の構成において、バルブは掘削機に気圧式または液圧式に駆動された挿入を提供する。第2の構成において、バルブはヒートポンプシステムから熱交換流体を受けて戻すループを提供する。
【0018】
熱交換流体入口または熱交換流体出口は、駆動流体入口を具える。
【0019】
これによりポートの数が減少し、したがってバルブの複雑化が低減する。さらに、バルブを介して掘削機に接続しなければならないパイプの数の低減にも寄与する。
【0020】
(熱交換流体入口と熱交換流体出口のうちの)他方のポートは、駆動流体用の出口を具える。
【0021】
これにより、バルブ(そして掘削機)に接続されるパイプの数が減少し、同時に掘削機を駆動するのに用いられる駆動流体のリターン路を提供する。これがさらに、ヒートポンプシステムの利用時に地中ループのパイプと周囲の土壌の間の熱交換を向上させる。設置に用いられたが巡回路システムには役割を有しない地中に残るパイプは、土壌からの流体パイプの熱伝導を低減する。
【0022】
バルブは、駆動流体入口に注入される流体(body)を受けると反応して、不可逆的に第1の構成から第2の構成に切り替わるべく適合している。
【0023】
これは、バルブを第1から第2の構成に切り換える1つの単純で有益な手段を提供する。掘削機は一旦挿入された後は無活動となるため、この切り替えプロセスは逆転する必要がない。このため、不可逆性の切替機構を提供することにより構造を単純化することができる。加圧された駆動流体は物体を射出するのに利用可能であり、掘削機を駆動するのと同じ力が、バルブを挿入構造からヒートポンプシステムの一部として通常利用する構造へと切り替えるのに用いられる。複雑で付加的な制御機構を不要とすると、設計の単純化につながる。バルブが第2の構成となりヒートポンプシステムが使用されると、バルブに挿入される流体(body)は、掘削機の駆動構造を隔離するのを補助するのにも作用する。
【0024】
バルブアセンブリはさらにスプールを具え、このバルブはスプールの回転により第1の構成から第2の構成へと切り替え可能であってもよい。
【0025】
このような構造は単純で、したがって動作の信頼性が高く、また高品質で永久的なシールを提供し、ヒートポンプ巡回路を周囲の土やこれに含まれる地下水から隔離する。
【0026】
スプールは、バネ手段や空気圧手段、または双方の組み合わせにより回転させることができる。
【0027】
バルブは好適には第2の構成において滑らかなUベンド(U-bend)を提供する。
【0028】
熱交換流体の流れに滑らかなカーブを設けると、流体の巡回がより容易となる。これは、流体を圧送するのに要する力が小さくなることを意味し、したがって地熱ヒートポンプシステム全体がよりエネルギ効率のよいものとなる。
【0029】
バルブアセンブリは、非金属部品、好ましくはプラスチック部品で構成することができる。
【0030】
金属のバルブアセンブリは、ヒートポンプ回路内の熱交換流体または外側の地下水のいずれかに長く接触すると腐食してしまう。対照的に、非金属のバルブは、このような環境条件による劣化に耐性がある。プラスチックバルブ材料はまた、安価かつ信頼性が高く大量生産できる。地熱式地中ループのパイプは通常プラスチックパイプである。この場合、バルブアセンブリもプラスチック部品で構成される場合にパイプはバルブアセンブリに容易に融合できる。ポリエチレン(PE)は、パイプとバルブアセンブリに適切なプラスチックの有用な一例である。
【0031】
非金属部品の代替例として、バルブアセンブリはステンレススチールまたはガンメタルといった耐腐食金属または金属合金で構成してもよい。
【0032】
また、地熱ヒートポンプシステムの地中ループを挿入する装置が、衝撃掘削機とパイプを有する上記の装置と、上記のバルブアセンブリを具えてもよい。
【0033】
本発明の第3の態様によると、地熱ヒートポンプシステムの地中ループを挿入する方法が提供され、これは駆動流体を受けるのに適合する第1の構成と前記ヒートポンプシステムの熱交換流体を受けて戻すのに適合する第2の構成とを有する衝撃掘削機を用い、前記方法が、前記掘削機に駆動流体を供給して当該掘削機を地中へと駆動するステップと、前記掘削機が所望の距離移動したら、掘削機を前記第1の構成から前記第2の構成へと切り替えるステップとを具える。
【0034】
前記駆動流体は、前記掘削機が前記第2の構成にある場合に熱交換流体を受けて戻すのに適合するパイプを通して供給される。
【0035】
排出される駆動流体は、前記掘削機が第2の構成にあるときに熱交換流体を受けて戻すのに適合するパイプを通して前記掘削機から放出される。
【0036】
前記掘削機を第1の構成から第2の構成へと切り替えるステップは不可逆的であってもよく、前記駆動流体を掘削機に供給したのと同じ手段によって前記掘削機に流体(body)を注入するステップを有してもよい。
【0037】
前記方法はさらに、前記掘削機が地中へと駆動されるのに伴い前記パイプの周囲空間を塞ぐステップを具える。
【0038】
この方法で前記パイプをグラウチングまたはコーキングすると、前記ヒートポンプシステムの使用時に周囲の土壌と効率的に熱交換できる。
【0039】
前記パイプ周囲の空間は、粒状材料で塞ぐことが出来る。
【0040】
これにより、パイプが掘削機により地中に引き込まれる際の摩擦効果を低減することができる。摩擦が過大である場合、掘削機の前進がストールするか、パイプが伸びたり、破断したり、掘削機から脱着したりする場合がある。
【0041】
前記粒状材料は、ガラスを含むことが好ましい。
【0042】
ガラスは熱伝導特性を有する。粒状ガラスはまた、摩擦低減に非常に良好であり、効果的にパイプの挿入を滑らかにする。リサイクル粒状ガラスが利用可能であり、これらは環境に優しいが、パイプのグラウチングに効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
添付の図面を参照して、本発明を以下に例示的に説明する。
【図1】図1は、本発明の一実施例による一体型バルブを有する掘削機の斜視図を示す。
【図2】図2は、第1の構成における一体型バルブを有する図1の掘削機の断面図を示す。
【図3】図3は、第1の構成における一体型バルブの拡大断面図を示す。
【図4】図4は、第2の構成における一体型バルブの拡大断面図を示す。
【図5】図5は、第1の構成から第2の構成に切り替えるより詳細なトリガ又は開放機構を示す。
【0044】
これらの図は図表であり、必ずしも縮尺通りに記載される必要はないことに注目されたい。これらの図の部分の関連寸法と比率は、便宜上、寸法において過度に大きくしたり、または小さくしたりして示されている。
【0045】
以下の例は、発明の例示的な実施例に焦点があてられ、掘削機は気圧式であり、2つのパイプを具え、第1のパイプは、挿入中、圧縮空気の送達に用いられ、ヒートポンプシステムの使用中、熱交換流体を受け入れる。第2のパイプは、挿入中、掘削機から排出される圧縮空気を使うための排気管として用いられ、ヒートポンプシステムの使用中、熱交換流体用のリターン路である。
【0046】
例示的な実施例の掘削機が図1に示されている。掘削機には、2つの後方に突出するパイプ5、6が取り付けられており、これらはヒートポンプシステムに一般に用いられるタイプである。これらのパイプはまず、掘削機4に圧縮空気を提供するための経路及び掘削機4からの排気用に地中に戻る経路として用いられる。地中への穿刺の所定の深さで、オペレータは掘削機4の後部のバルブ3に、2本のパイプが掘削機に直接接続されている第1の状態から、2本のパイプが180度の連続ループを形成するようにつなげられて、掘削機4が隔てられている第2の状態に切り替えるように指令することができる。
【0047】
図2乃至図4は、掘削機4の後ろに配置されたバルブ体3の入口1及び出口2を示す。主接続パイプ5及び6は、パイプ連結器7及び8を用いて入口及び出口に固定されている。連結器は(本実施例の図に示されているような)バルブ体から離すことができ、例えば、連結器は一般に用いられる熱溶融タイプでありうる。若しくは連結器は、バルブ体自体の一体型部分でありうる。バルブスプール9はバルブ体3内に含まれる。バルブスプール9は、その軸が掘削機4の軸と整列する概ね円筒形である。第1の構成のバルブスプールは図2及び図3に示されており、これにより経路が入口1と掘削機4との間、及び掘削機4と出口2との間にも提供されている。バルブ体は、掘削機4に固定された覆い10により保護されている。
【0048】
バルブ体は2つのバルブ構成を提供しており、第1の構成(図3)は、第1のパイプ5から掘削機への高圧空気の直接経路と、掘削機から第2のパイプ6への排気の直接経路とを提供する。第2のバルブ構成(図4)は指令を受けると、滑らかな180度のUベンドで2本のパイプ5と6とを接続する。この第2の構成はまた、バルブ3の前方の掘削機4からパイプを分離させる。このようにバルブ3が第2の構成にあるとき、パイプは任意の従来型の設置の地熱ヒートポンプシステムにより提供されるものと実質的に同じ閉ループの巡回パイプを提供するよう供される。
【0049】
(給気が掘削機に提供される)第1の構成と(パイプが地表へ、及びそこからの閉じた経路となる)第2の構成との間のバルブ移行を制御する必要がある。本実施例において、バルブは圧縮空気の供給路において、本体15の挿入による切替構成となる。オペレータは、掘削機がその所望の深さに達すると給気を停止し、パイプの直径より小さい硬球15がパイプ5内に挿入される。給気は次いで再接続され、空気流(及び重力もまた、穴が垂直に掘られるまで)の影響下、ボールはバルブ入口まで進む。当業者には明らかであるように、システムは水平から垂直までの任意の角度で用いることができる。重力は挿入角度により増加部分を明らかに動く。何れの場合にも、たとえ設置が水平であったとしても、空気の流れはボールをパイプに沿って動かす。バルブ入口において、パイプはボールの通路を提供する直径に減少するが、その周りを通過する圧縮空気のための空間は小さく、今やボールはピストンとして働く。ボール15の後ろの空気圧は、レバー16を押し離してボールを穴の中に発射する。ボールは次いで、シール17に対向して置かれるようになる。レバー16は、バネ付勢されたピン18を置かれている凹部(図5を参照)から押し戻し、強いねじりバネ19の影響下、バルブスプール9を第2の位置に90度回転させることができる。この第2の構成において、ピン18は再び凹部(図示せず)に配置され、バルブスプール9を適所に固定する。スプールの第2の位置は、Uベンドの経路22を2つの入口パイプ5及び6に示され、このようにして熱交換流体のための巡回経路が完成される。
【0050】
第2の位置において、その回転端部が停止すると、バルブスプール9はそのシール17に対してボール15を付勢し、内部圧力及び外部圧力に対して良好なシールの維持を確保する。外部圧力は、バルブ外側の地下水からとなりうる。
【0051】
バルブ排気口は、その内部に閉じ込められた同様のボール20を有し、このようにバルブが第1の位置にあるとき、ボールは掘削機からボールの周りに自由な空気が通過できるように、バルブ体が広げられた位置へ空気を排出することにより付勢される。バルブが作動して(切り替えられて)第2の位置に回転するとき、ボール20はバルブの入口側と同様のシール21と接触するまで、バルブスプールから突出する斜面によりバルブ体内を下方に押し戻される。スプール9によりボール20をシールに閉じ込めた状態で、バルブは完全に掘削機から隔離されて内部圧力及び外部圧力と抵抗する。
【0052】
バルブ3の前方の掘削機4はもはや不要かつ回収不能である。掘削機がその使い捨てにおいて有限タスクを有すると、長期間の使用は必要ではなく、その構造は製造費を大いに削減するために簡素化することができる。
【0053】
覆い10は、好ましくは図5に示されているようなバルブ体3の後部と接触する2つのゴム緩衝装置23及び24を特徴付ける。バルブ体は各々のOリングシール13及び14を用いて2つの管11及び12により掘削機に接続されており、これがいくつかの軸の動きとなりうる。掘削機はそれ自体が動き、要するに積極的なステップは、滑り栓及び緩衝器がバルブとけん引型半剛性パイプとを隔離するように供給する。
【0054】
掘削機が地中へと駆動されると、パイプをその後ろに引っ張る。周りの土壌はけん引型パイプに摩擦力を与え、この摩擦力は掘削機の駆動力に対向する。摩擦の度合いは地中ループが挿入される土壌の種類による。しかしながら、効果は挿入の妨げとなる。最悪の場合、パイプは伸長されるか、掘削機から引き抜かれるか、あるいは破損するかもしれない。
【0055】
本実施例での摩擦の効力は、パイプ挿入の際にパイプに乾燥粒状材料をグラウチングすることにより減少する。この材料は再生ガラス粒子でできている。粒子はパイプと土壌との間の摩擦を減少させる。一旦設置が完成すると材料はグラウト材またはコークスとして働き、パイプの周りの任意の空間を塞いで土壌との良好な熱伝導性を確保する。挿入工程中(すなわち、パイプの地中への挿入の地点で)、粒子は掘削機によって作られた穴の入口に注がれる。ここで、パイプが地中にスライドするとき、粒子は自然に穴の中に引き込まれる。
【0056】
この例において、粒状材料は等級分けされたケイ酸ナトリウムガラス砂であり、容器のくずガラスから作られている。ガラス粒子は1乃至2mmの範囲の寸法を有する。すなわち、実施的にすべての粒子は2mmの開口を有するふるいを通過するが、他方、5%より小さい粒子は、1mmの開口を有するふるいを通過するであろう。これらのガラス粒子のための一般的な熱伝導性は1.3乃至1.5ワット毎メートル毎ケルビン(W/m k)の範囲である。
【0057】
様々な変更が当業者には明らかである。例えば、掘削機は液圧駆動式ではなく、気圧駆動式であってもよい。掘削機は一般に、掘削機を駆動する往復動の動作を実現するさらなる手段に必要とされるであろう。作動液は、気圧式システムの空気のように圧縮可能ではない。気圧式システムにおいて、空気の圧縮はピストンをその開始位置に戻すのを助ける弾性度を提供する。掘削機が液圧駆動式である場合、この弾性は、代わりに圧縮可能なガスの封入量又はケーシング内のばねにより提供されうる。
【0058】
衝撃掘削機が気圧駆動式である場合、当業者は暗に理解し、圧縮「空気」の参照は任意のガス、あるいはガスの混合を含めるためにとられるべきである。
【0059】
上述の実施例において、乾燥粒状材料はパイプの挿入を円滑にし、かつそれらをグラウト材として用いる。若しくは液体は、この目的のために用いられる。ある状況の下、ドリル流体又はドリル泥を用いることは効果的である。例えば、軽量鉱油に分散されたアニオン性アクリルアミドコポリマを含む液体ドリル流体ポリマは、従来のドリルでは周知である。乾燥粒状材料は、ある程度までは重力に依存しており、この力は浅い角度では小さいため、パイプが浅く挿入される角度である場合、このような製品を用いることは利便性がある。液体ドリル流体ポリマは水に添加されてもよいし、ベントナイト系に添加されてもよい。
【0060】
バルブアセンブリにおいて、切替機構を提供するための多くの異なる適した機構がある。
【0061】
本書に記載され、図面に示された実施例は、衝撃掘削機のバルブが第2の構成にあるとき滑らかなUベンドを提供し、このUベンドは2つの流体パイプを接続する。同様に、実施例はこの滑らかなUベンドを実現するためにバルブの回転スプールの使用を記載する。当業者には明らかなように、(例えば、熱交換流体の巡回の改善された快適さのために)滑らかなUベンドは有利であるが、必要不可欠ではない。同等に、回転スプールバルブは、第1の構成から第2の構成への切り替えを実現する唯一の手段ではない。
【0062】
同様に、圧縮空気の力を用いたボールの挿入は、バルブを第1の構成から第2の構成へと切り替えるために好適な様々な機構のうちの1つである。作動は、例えば、ソレノイド、熱溶融又はモータのような内蔵電気装置、あるいはコントロールケーブル又はコードによりなされてもよいし、あるいは別個の液圧式接続でなされてもよい。
【0063】
回転スプールバルブを用いるいくつかの実施例において、内部のねじりばねは省略することができ、空気圧がスプールを回転させるために用いられる。
【0064】
記載した種類の地熱ヒートポンプシステムは、地表または水の流体から熱を抽出し、建物を温めるために最も一般的に用いられるが、それらはもちろん他の適用例に用いることができる。例えば、それらのシステムは家庭用または(予め温められた)温水用や、あるいはスイミングプール用に用いることができる。同様に、それらのシステムは土壌の2つの物体間の熱、例えばより深い地下からの土から表面近くの土までの熱を運搬するために用いることができる。このことは、別の目的の間で、遊び場を凍らせないために実用的でありうる。当業者が十分に理解すると、本発明はこれらの適用例のすべてに等しく適用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地熱ヒートポンプシステム用の地中ループを挿入する装置であって、
衝撃掘削機と、
当該掘削機に接続され前記ヒートポンプシステムから地中へと熱交換流体を搬送するための第1の流体パイプと、
前記掘削機に接続され前記ヒートポンプシステムに前記熱交換流体を戻すための第2の流体パイプとを具え、
前記第1と第2の流体パイプの一方が、前記地中ループの挿入中に前記掘削機に駆動流体を配送する入口パイプを具え、流体パイプの他方が前記駆動流体用の排出パイプを具えることを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1の装置において、前記衝撃掘削機は、駆動流体を受け入れてパイプを地中へと駆動するのに適合した第1の構成と、前記熱交換流体を第1の流体パイプを介して受け第2の流体パイプを介して戻すのに適合した第2の構成を有することを特徴とする装置。
【請求項3】
地熱ヒートポンプシステムの地中ループを挿入するための衝撃掘削機用のバルブアセンブリであって、
前記ヒートポンプシステムからの熱交換流体を受ける熱交換流体入口と、
ヒートポンプシステムへと熱交換流体を戻す熱交換流体出口とを具え、
前記熱交換流体入口および前記熱交換流体出口の一方が、前記掘削機を駆動する駆動流体を受けるための駆動流体入口を具え、
前記熱交換流体入口および前記熱交換流体出口の他方が前記駆動流体の出口を具え、
前記バルブは、駆動流体を受けてそれを掘削機に伝送するのに適合した第1の構成と、前記熱交換流体を前記熱交換流体入口を介して受けて前記流体を前記熱交換流体出口を介して戻すのに適合した第2の構成とを有することを特徴とするバルブアセンブリ。
【請求項4】
請求項3のバルブアセンブリにおいて、前記駆動流体入口に注入される流体(body)を受けると反応して、不可逆的に第1の構成から第2の構成に切り替わるのに適合していることを特徴とするバルブアセンブリ。
【請求項5】
請求項3または4のバルブアセンブリにおいて、さらにスプールを具え、前記バルブは前記スプールの回転により前記第1の構成から前記第2の構成へと切り替え可能であることを特徴とするバルブアセンブリ。
【請求項6】
請求項5のバルブアセンブリにおいて、前記スプールは、バネ手段または空気圧手段により回転可能であることを特徴とするバルブアセンブリ。
【請求項7】
請求項3乃至6のいずれかのバルブアセンブリにおいて、前記バルブは、前記第2の構成において滑らかなUベンド(U-bend)を提供することを特徴とするバルブアセンブリ。
【請求項8】
請求項3乃至7のいずれかのバルブアセンブリにおいて、前記バルブが、非金属部品、好ましくはプラスチック部品で形成されていることを特徴とするバルブアセンブリ。
【請求項9】
地熱ヒートポンプシステム用の地中ループを挿入する装置において、
請求項1の装置と、
請求項3乃至8のいずれかのバルブアセンブリを具えることを特徴とする装置。
【請求項10】
地熱ヒートポンプシステムの地中ループを挿入する方法であって、
駆動流体を受けるのに適合する第1の構成と前記ヒートポンプシステムの熱交換流体を受けて戻すのに適合する第2の構成とを有する衝撃掘削機を用い、
前記方法が、前記掘削機に駆動流体を供給して当該掘削機を地中へと駆動するステップと、
前記掘削機が所望の距離駆動されたら、掘削機を前記第1の構成から前記第2の構成えと切り替えるステップとを具え、
前記駆動流体は、前記掘削機が前記第2の構成にある場合にそれぞれ熱交換流体を受けて戻す2本のパイプのうちの一方を通して供給され、
排出される駆動流体は、前記2本のパイプのうちの他方を通して前記掘削機から排出されることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10の方法において、前記掘削機を第1の構成から第2の構成へと切り替えるステップは不可逆的であり、前記駆動流体を前記掘削機に供給したのと同じ手段によって前記掘削機に流体(body)を注入するステップを有することを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項10または11の方法において、さらに、前記掘削機が地中へと駆動されるのに伴い前記パイプ周囲の空間を塞ぐステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12の方法において、前記空間は、粒状材料で塞がれることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項13の方法において、前記粒状材料は、ガラスを含むことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−520400(P2012−520400A)
【公表日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−553524(P2011−553524)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【国際出願番号】PCT/GB2010/050406
【国際公開番号】WO2010/103317
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(511216293)ジオ−モール リミテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】GEO−MOLE LIMITED
【Fターム(参考)】