説明

衝撃電流検出装置

【課題】雷による衝撃電流の波尾部をも正確に測定、検出すること。
【解決手段】ロゴスキーコイル1に積分回路7を接続して積分回路7からの出力を検出する衝撃電流検出装置において、ロゴスキーコイル1からの出力と、ロゴスキーコイル1からの出力を積分回路7により積分した出力とを加算手段9により加算して出力するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型構築物への落雷による衝撃大電流を検出するのに適した検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
落雷時に発生するの衝撃大電流を検出するには、
(1)同軸シャント抵抗法
(2)クランプ型電流変成器法
(3)ロゴスキーコイル法
など3つの代表的な方法がある。
同軸シャント抵抗法は、直流から数MHzまでの周波数帯域を有するため、忠実な電流波形を検出できるものの、既存の構築物に適用が不可能であるばかりでなく、抵抗に大電流が流れるため、昇温による特性変化や、焼損の恐れがあるという問題がある。
電流変成器法は、既存の構築物に容易に装着できるものの、ピーク電流による磁界でも飽和が生じない磁性体が必要となり、高性能のものを製作しようとすると、大型になるなどの問題がある。
【0003】
ロゴスキーコイル法は、特許文献1、2に見られるように同軸ケーブルの外周に多数巻きのコイルを一定のピッチで巻回し、同軸ケーブルの導体と多数巻回コイルとの同一端部を接続するとともに、他端に積分器を接続し、積分出力を取り出すもので、既設の構築物への取り付けが容易で、かつクランプ型電流変成器に比較して軽量であるという利点を有するものの、外部に付加した積分器だけでは図7に示したように検出可能の周波数帯域が1000Hz以下の領域では微分特性が大きく、0.1Hz乃至1000Hzでは出力値が周波数に大きく依存する。もとより波尾部の継続時間が短い通常の雷による衝撃電流の測定には十分な特性を発揮する。
【0004】
一方、日本において風力発電機が設置される地域は、常時、風が吹いている地域で、その代表的な地域のひとつに日本海に面する北陸地方が挙げられるが、この地域では冬には雪雲による雷が多発して風力発電機の鉄塔に落雷する。この冬の雷は、夏場の積乱雲による雷とは異なって、雷サージのテール部(波尾部)の継続時間(波尾長)が、1秒にも及ぶものがあり、ピーク電流値だけではなく、直流に近いテール部の電流変化をも正確に観測することが雷対策を研究する上で重要な要件となる。
【特許文献1】特開平10-282154号公報
【特許文献2】特開2000-65866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、波頭部に比較して長時間継続する波尾部をも高い精度で検出することができる衝撃電流測定を装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を達成するために本発明は、ロゴスキーコイルに積分回路を接続して前記積分回路からの出力を検出する衝撃電流検出装置において、前記ロゴスキーコイルからの出力と、前記ロゴスキーコイルからの出力を積分回路により積分した出力とを加算手段により加算して出力するように構成されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ロゴスキーコイル自体の積分特性とロゴスキーコイルに接続された積分回路の積分特性を調整することにより、衝撃電流の波頭部に比較して周波数が極めて低く、かつ波頭部に比較して長時間継続する電流を含む衝撃電流全体を高い精度で検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は、本発明の衝撃電流検出装置の一実施例を示すものであって、ロゴスキーコイル1は、電気抵抗の小さい絶縁被覆線、例えばエナメル被覆の銅線を巻回したコイル2を、一部が切り欠かれて略円形を保持するように癖付けられた保護筒3に収容するとともに、好ましくは保護筒3に積分用内部抵抗4を収容してコイル2を短絡するとともに、端部からリード線5により信号を取り出すように外部に引き出されて構成されている。
【0009】
リード線5にはコイル2の抵抗を相対的に無視し得る程度の0.1乃至10Ω程度の検出抵抗6接続され、またこの検出抵抗6の端子は、直接に積分回路7と、バッファ8を介して加算器9の一方の入力端子に接続されている。加算器9の他方の入力端子には、バッファ10を介して積分回路7の出力端子が接続されている。
【0010】
図2は、上述の衝撃電流検出装置のロゴスキーコイルの電気的特性を模式的に表すとともに、検出回路部の具体例を示すもので、この実施例のロゴスキーコイル1の諸特性は、
コイルのインダクタンス分:500μH
コイルの直流抵抗分と内部積分用抵抗4との合計抵抗:1Ω
であり、また検出抵抗6は、2Ωで、図3(a)に示したように積分用内部抵抗4を含めたロゴスキーコイルの低域カットオフ周波数は1kHz程度ある。
【0011】
一方、積分回路7は、図3(b)に示したように高域カット周波数が1kHz程度となるように、つまりロゴスキーコイルの自己積分回路の低域カットオフ周波数とほぼ同一となるように調整されている。
【0012】
この実施例においてロゴスキーコイル1を弾性変形させて既設の構築物に装着する。この状態で構築物に落雷が生じて衝撃電流が流れると、衝撃電流の波頭部は、周波数が高いため、ロゴスキーコイル1自体のインダクタンス分とコイルの直流抵抗とにより形成される内部積分回路により周波数に依存せず、かつ波頭部の高周波衝撃電流値に比例した電圧として出力される。
【0013】
一方、上述したように波頭部の周波数が高いため、積分回路7は、検出抵抗6からの電圧に対してはカットオフ領域で機能することになる。
【0014】
したがって、加算器9からは衝撃電流の波頭部の電流値に比例した電圧信号が出力される。
【0015】
時間が経過して衝撃電流の波頭部が過ぎて衝撃電流の波尾部にさしかかると、波尾部は、波頭部に比較すると周波数が極めて低く、直流的であるため、ロゴスキーコイル1自体のインダクタンス分Lとコイルの直流抵抗分Rとにより形成される内部積分回路の低域カットオフ領域での変化となる。
【0016】
一方、波尾部の周波数が低いため、積分回路7は、その積分機能を十分に発揮して周波数に関わりなく衝撃電流の波尾部の電流値に比例した電圧信号を出力する。
【0017】
したがって、図3(c)に示したようにたとえ波尾部の継続時間が長い衝撃電流が発生しても、波頭部、及び波尾部、つまり0.1Hz乃至1MHzの周波数特性(ダイナミックレンジ7桁)を有する衝撃電流全体を正確に測定、検出することができる。
【0018】
なお、上述の実施例においてはロゴスキーコイル1を単一体として構成したが、ロゴスキーコイルを複数に分割するとともに、分割されたコイルの2つの端部にそれぞれ機械的固定手段と電気的接続とを兼ねるプラグとソケットを設け、1つの分割コイルのプラグと他の分割コイルのソケットとを接合して全体として環状に接続するように構成しても同様の作用を奏する。
【0019】
図4はその一実施例を示すものであって、弾性変形可能な材料からなる筒状のケース20に、絶縁線で構成されたコイル21と、こhのコイル21の内部空間に挿通された直線状の導体22とが収容されていて、コイル21の両端、及び導体22のそれぞれの端部、及びケース20がリード線23、24を介して3極のコネクタ25、26の各ピンに接続されて分割体27が構成されている。
【0020】
この分割体27は、一端側のコネクタ25と、他の分割体のコネクタ26とを接続するというようにして順番に必要個数、この実施例では4つの分割体27を3箇所で接続し、最後の1つのコネクタには、図5に示したようにその両端にやはり雌雄形状のコネクタ25’、26’を設けるとともに、必要に応じて上述の積分用内部抵抗4を収容したケーブル接続具28を接続すると、図6に示したように各分割体27のコイル21、及び導体22が直列に接続されて全体として衝撃電流の流れる対象物を取り囲む1つのロゴスキーコイルとして機能する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の衝撃電流検出装置の一実施例を示すブロック図である。
【図2】同上衝撃電流検出装置の一実施例を示す回路図である。
【図3】図(a)乃至(c)は、それぞれロゴスキーコイル自体の周波数特性、積分回路の周波数特性、及び加算器から出力される信号を示す線図である。
【図4】同上衝撃電流検出装置のロゴスキーコイルを分割体として構成した場合のコイル部の一実施例を示す図である。
【図5】同上分割体によりロゴスキーコイルを形成する場合にケーブル接続具の一実施例を示す図である。
【図6】同上分割体とケーブル接続具とにより構成されたロゴスキーコイルを示す図である。
【図7】従来の衝撃電流検出装置の周波数特性を示す線図である。
【符号の説明】
【0022】
1 ロゴスキーコイル 2 コイル 3 保護筒 4 積分用内部抵抗 6 検出抵抗 7 積分回路 8、10 バッファ 9 加算器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロゴスキーコイルに積分回路を接続して前記積分回路からの出力を検出する衝撃電流検出装置において、
前記ロゴスキーコイルからの出力と、前記ロゴスキーコイルからの出力を積分回路により積分した出力とを加算手段により加算して出力する衝撃電流検出装置。
【請求項2】
前記ロゴスキーコイル自体のカットオフ周波数と前記積分回路のカットオフ周波数が一致する請求項1に記載の衝撃電流検出装置。
【請求項3】
前記カットオフ周波数が略1kHzである請求項2に記載の衝撃電流検出装置。
【請求項4】
前記ロゴスキーコイルが抵抗体により接続されて自己積分回路が形成されている請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の衝撃電流検出装置。
【請求項5】
前記ロゴスキーコイルが複数の分割体として構成され、各分割体の端部に固定具と接続具を兼ねたコネクタが設けられている請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の衝撃電流検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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