説明

衣服、その上パターンおよび下パターン

【課題】 軽量化を図ることができる衣服を提供する。
【解決手段】 衣服1では、上パターン10と下パターン50とが、左衿口に達するラインL12とラインL12´、並びに右衿口に達するラインL22とラインL22´で縫着される。これにより、衣服1では、下パターン50のラインL32,L42が、衿口の一部を形成している。左衿付近のラインL12とラインL12´との縫着ラインは、衿部8の左衿部の衿口(ダーツD12とラインL41との略中間位置)から、被着者の左鎖骨に対応する位置付近を通って左袖ぐりまで達する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は衣服、並びに衣服に用いる上パターンおよび下パターンに関し、例えばスキー、ゴルフ等に使用するスポーツウェアー、背広、ジャケット、ジャンパー等のカジュアル・ウェアー、Tシャツ、さらにはコート等の衣服に適用可能である。
【背景技術】
【0002】
人体は動く立体構造体であり、衣服は人体を包むものであるから、立体的な動きを想定して設計される。
人の体の動作は前に動く傾向があるので、平面設計の衣服では、静止時はともかく、動作をしたときに背幅がきつい、身頃の脇が突っ張る、上腕を挙げたとき脇がつり上がるなど、上腕および体幹の動作を妨げてしまう。このように、安静立位のときの人体の形態と寸法で作られた衣服は、被着者の肩を中心にした体幹および上腕の動作を阻害するので、体に馴染みにくく、着用感も悪く、着にくいほかに、長時間の着用では疲労が蓄積され、作業性、安全性にも欠けるなどの問題もある。
【0003】
そのため、例えば背広、ジャケット、ブラウス等の衣服は、例えば上端に首ぐりを有する前身頃および後身頃と、一端を首ぐりの頸側部位に対応する部分に設けた肩を覆う肩布部と、該肩布部の左右に配設される袖部とを備えて立体設計されている。
具体的には、特許文献1に示されるように、従来の衣服は、左肩布部、左前身頃、左後身頃、左袖部、右肩布部、右前身頃、右後身頃および右袖部を、シームシーリング加工により、シームテープを用いて縫着して形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−299023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、衣服を軽量化したいという要請がある。特に、競技用の衣服には、このような要請が強い。
衣服を軽量化する方法として、例えば、素材自体を軽量化する方法があるが、それとは別に他の方法でも軽量化を図りたいという要請がある。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、軽量化を図ることができる衣服、並びにそのような衣服に用いられる上パターンおよび下パターンを提供することにある。
また、本発明の目的は、着用者の動作を阻害せず、動きやすく、かつ作業性、安全性にも優れており、着やすく、着心地の良い衣服、並びにそのような衣服に用いられる上パターンおよび下パターンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した従来技術の問題を解決し、上述した目的を達成するために、第1の観点の発明の衣服は、衿を形成する衿部、左袖部および右袖部を一体的に裁断して形成された上パターンと、前身頃および後身頃を一体的に裁断して形成された下パターンとを有する。また、前記上パターンの前記衿部は、左衿部と、当該左衿部と対称の右衿部とを有する。前記左衿部は、左前衿口の一部を形成する衿形成ライン(L11)と、当該衿形成ラインの端点(P11)と、当該端点を始点として前記左袖部に向けて滑らかに曲線を形成する第1の接合ライン(L12)とを有する。前記下パターンは、前記上パターンの前記左衿部の前記第1の接合ラインの一部と接合する第2の接合ライン(L12´)を有する左前身頃と、前記左前身頃と対称の右前身頃と、前記左前身頃と前記右前身頃との間に介在する前記後身頃とを有する。前記第1の接合ラインと前記第2の接合ラインとの接合部は、前記左衿部の左前衿口から前記左袖部の袖ぐり付近に達している。
【0008】
第2の観点の発明の下パターンは、上パターンと縫着されて衣服を構成するために用いられる下パターンであって、前記上パターンが、衿を形成する衿部と、左袖部と、右袖部とが一体的に裁断されており、前記衿部は、左衿部と、当該左衿部と対称の右衿部とを有し、前記左衿部は、左前衿口の一部を形成する衿形成ライン(L11)と、当該衿形成ラインの端点(P11)と、当該端点を始点として前記左袖部に向けて滑らかに曲線を形成する第1の接合ライン(L12)とを有する場合に、前記上パターンの前記左衿部の前記第1の接合ラインの一部と接合する第2の接合ライン(L12´)を有する左前身頃と、前記左前身頃と対称の右前身頃と、前記左前身頃と前記右前身頃との間に介在する後身頃とが一体的に裁断されている。また、前記第1の接合ラインと前記第2の接合ラインとの接合部は、前記左衿部の左前衿口から前記左袖部の袖ぐり付近に達している。
【0009】
第3の観点の発明の上パターンは、下パターンと縫着されて衣服を構成するために用いられる上パターンであって、前記下パターンが、前記上パターンの左衿部の第1の接合ラインの一部と接合する第2の接合ライン(L12´)を有する左前身頃と、前記左前身頃と対称の右前身頃と、前記左前身頃と前記右前身頃との間に介在する後身頃とを有する場合に、衿を形成する前記衿部と、左袖部と、右袖部とが一体裁断されており、前記衿部は、左衿部と、当該左衿部と対称の右衿部とを有する。前記左衿部は、左前衿口の一部を形成する衿形成ライン(L11)と、当該衿形成ラインの端点(P11)と、当該端点を始点として前記左袖部に向けて滑らかに曲線を形成する前記第1の接合ライン(L12)とを有する。前記第1の接合ラインと前記第2の接合ラインとの接合部は、前記左衿部の左前衿口から前記左袖部の袖ぐり付近に達している。
【0010】
第4の観点の発明の衣服は、左パターンと、前記左パターンと対称な右パターンとを有し、前記左パターンは、左衿部と、左前身頃と、左後身頃と、左袖部とを一体的に裁断して構成され、前記左前身頃は、前記右パターンの左前身頃と接合する第1の接合ラインと、前記左後身頃と接合する第2の接合ラインとを有する。前記左後身頃は、前記右パターンの右後身頃と接合する第3の接合ラインと、前記左前身頃の前記第2の接合ラインと接合する第4の接合ラインとを有する。前記左袖部は、前記第2の接合ラインと略直交し、且つ当該第2のラインと連結した第5の接合ラインと、前記第4の接合ラインと略直交し、且つ当該第4の接合ラインと連結し、前記第5の接合ラインと接合して袖部を形成する第6の接合ラインとを有する。
【0011】
好適には、第4の観点の発明の衣服は、前記左衿部の衿口を始点として前記左袖部に向かうダーツが形成されている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、軽量化を図ることができる衣服、並びにそのような衣服に用いられる上パターンおよび下パターンを提供することができる。
また、本発明によれば、着用者の動作を阻害せず、動きやすく、かつ作業性、安全性にも優れており、着やすく、着心地の良い衣服、並びにそのような衣服に用いられる上パターンおよび下パターンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の第1実施形態に係る衣服を構成する上パターンの正面図である。
【図2】図2は、図1に示す衣服を構成する下パターンの正面図である。
【図3】図3は、本発明の第1実施形態に係る衣服の正面図である。
【図4】図4は、本発明の第1実施形態に係る衣服の背面図である。
【図5】図5は、本発明の第1実施形態に係る衣服のダーツの機能を説明するための図である。
【図6】図6は、本発明の第1実施形態の衣服を用いたスキーウェアの正面図である。
【図7】図7は、本発明の第1実施形態の衣服を用いたスキーウェアの背面図である。
【図8】図8は、本発明の第2実施形態に係る衣服を構成する上パターンの正面図である。
【図9】図9は、本発明の第2実施形態に係る衣服を構成する下パターンの正面図である。
【図10】図7は、本発明の第2実施形態の衣服の背面図である。
【図11】図11は、本発明の第3実施形態に係る衣服を構成する上パターンの正面図である。
【図12】図12は、本発明の第3実施形態に係る衣服を構成する下パターンの正面図である。
【図13】図13は、本発明の第3実施形態の衣服の背面図である。
【図14】図14は、本発明の第4実施形態に係る衣服を構成する左パターンの正面図である。
【図15】図15は、本発明の第4実施形態に係る衣服の正面図である。
【図16】図16は、本発明の第4実施形態に係る衣服の背面図である。
【図17】図17は、本発明の第4実施形態に係る衣服を構成する左パターンの変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施形態の衣服としては、例えばスキーウェア等のウィンタースポーツウェアの衣服であるほか、図には示さないが例えばゴルフやジョギング等に使用するスポーツウェアー、背広、ジャケット、ジャンパー等のカジュアル・ウェアー、Tシャツ、ブラウス、セータ等のニット、さらにはコート等があげられる。
【0015】
<第1実施形態>
図1は本発明の第1実施形態に係る衣服1を構成する上パターン10の正面図、図2は図1に示す衣服1を構成する下パターン50の正面図である。
図3は本発明の第1実施形態に係る衣服1の正面図、図4は本発明の第1実施形態に係る衣服1の背面図である。
ここで、上パターン10が本発明の上パターンの一例であり、下パターン50が本発明の下パターンの一例である
【0016】
衣服1は、上パターン10および下パターン50の2個のパターンで構成されており、8個のパターンを使う従来の衣服に比べて、使用するパターン数を大幅に削減することができる。そのため、パターン間を縫着するためのシームテープの使用量を大幅に減らすことができ、軽量化を図ることができる。
【0017】
衿部8が本発明の衿部の一例であり、左袖部12が本発明の左袖部の一例であり、右袖部22が本発明の右袖部の一例である。
また、端点P11が本発明の端点の一例であり、ラインL11が本発明の衿形成ラインLの一例であり、ラインL12が本発明の第1の接合ラインの一例である。
また、ラインL12´が本発明の第2の接合ラインの一例であり、ラインL15が本発明の第3の接合ラインの一例である。
【0018】
第1実施形態の衣服1は、図1に示す上パターン10と図2に示す下パターン50とを立体形状にして、シームテープにより縫着して形成される。
上パターン10および下パターン50の素材としては、例えば木綿、絹、麻、羊毛等の天然繊維、また、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ポリアクリル繊維、ポリウレタン繊維、ポリスチレン繊維、ポリエチレン繊維等の合成繊維、またはこれらの半合成繊繊維により織成されるか、または編成されるほか、天然皮革、合成皮革の何れか、または前記群から選択される素材の2つ以上の組み合わせたものが用いられる。
また、本実施形態において、縫着は、シームテープにより、針穴を裏側から目止めして行われる。これにより、縫着箇所を介して、衣服1の外側から内側へ水が浸水することを防止する。
【0019】
以下、衣服1を構成する上パターン10および下パターン50について詳細に説明する。
[上パターン10]
図1に示すように、上パターン10は、例えば、衿部8、左袖部12、右袖部22を一体的に裁断して形成されている。
衿部8は、後衿部を形成するラインL10、左衿部を形成するラインL11、右衿部を形成するラインL21を有する。
ラインL11とラインL10との間にはダーツD12が形成されている。
ダーツD12は、衣服1の重量を左肩部の周囲に分散させて、衣服1の重量を感じさせないようにするためのものである。
ダーツD12は、図3に示すように、ラインL12の袖側およびラインL13と略平行する方向(ラインL11と略直交する方向)が深さ方向となるように形成されている。
ここで、ラインL12は、後述するように下パターン50のラインL12´と縫着される。ダーツD12を、上述したようにラインL12と略平行する方向が深さ方向となるように形成したことで、上パターン10のラインL12と下パターン50のラインL12´の縫着ラインと共に、被着者の肩付近の形状にフィットし、且つ所定の空間を形成することができる。
このような空間を形成することで、被着者は、その肩付近において、衣服1を着ていることを殆ど意識しないで済むようになる。また、衣服1が、必要以上に大きくなることを回避でき、運動の妨げにならない。
【0020】
ラインL21とラインL10との間にはダーツD22が形成されている。
ダーツD22は、ダーツD12と同様に、衣服1の重量を右肩部の周囲に分散させて、衣服1の重量を感じさせないようにするためのものである。
【0021】
また、ラインL11の端点P11を始点としてラインL11と略直交する方向にラインL12が形成されている。
また、ラインL12に対して図1中下向きに約15°傾斜してラインL13が形成されている。ラインL12とラインL13との間には、ダーツD10が形成されている。
ダーツD10は、被着者の肘付近に所定の空間を形成し、肘を中心に「くの字」に曲げることを可能にするためのものである。
ここで、ダーツD10と、ダーツD12とはその深さ方向が略直交している。このようにすることで、これらを直交させない場合に比べて、上パターン10全体として、より多くの種類の3次元空間を形成することが可能になる。
【0022】
また、ラインL13と略直角する向きにラインL14が形成されている。
また、ラインL14と略直角する向きにラインL15が形成されている。ラインL15は、ダーツD10に向けて滑らかに窪んでいる。
ラインL15は、ラインL12のダーツD10側の一部と、ラインL13と縫着され、左袖部を形成する。
ラインL15からラインL16、L18、L26が順に形成され、これらによって凹部が形成されている。
また、ラインL12の端点P11側の一部は、図2に示す下パターン50のラインL12´と縫着される。
また、端点P11は、下パターン50の端点P11´と接合する。
【0023】
ラインL16は、図2に示す下パターン50のラインL16´と縫着され、左袖の袖ぐりを形成する。
ラインL18は、下パターン50のラインL18´と縫着される。
【0024】
ラインL12,L13,L14,L15,L16によって左袖部12が構成される。
また、ラインL26,L25,L24,L23,L22によって、左袖部12と対称に右袖部22が構成される。
【0025】
[下パターン50]
図2に示すように、下パターン50は、L18´,L16´,L12´、L32,L41,L44,L41´,L42,L22´,L26´によって外郭が形成されている。
ラインL44には、左右対称の位置に4つのダーツD60,D61,D62,D63が図中上向きに形成されている。
ここで、ダーツD60,D63は、前身頃を体にフィットさせるために用いられる。ダーツD61,D62は、後身頃を体にフィットさせるために用いられる。
【0026】
前述したように衣服1において、下パターン50のラインL18´は上パターン10のラインL18と縫着され、下パターン50のラインL16´は上パターン10のラインL16と縫着され、下パターン50のラインL12´は上パターン10のラインL12の端点P11側の一部と縫着され、下パターン50のラインL22´は上パターン10のラインL22の端点P21側と縫着され、下パターン50のラインL26´は上パターン10のラインL26と縫着される。
また、下パターン50の端点P11´,P21´が、それぞれ上パターン10の端点P11,P21と接合する。
【0027】
また、下パターン50のラインL41は、ラインL41´とは、例えばファスナー等の留め具によって接合される。
下パターン50の端点P11´近傍が左前身頃となり、下パターン50の端点P21´近傍が右前身頃となり、ラインL18´近傍が後身頃となる。
【0028】
また、下パターン50のラインL32は、上パターン10のラインL11と一体となって左衿口の一部を形成する。下パターン50のラインL42は、上パターン10のラインL21と一体となって右衿口の一部を形成する。
【0029】
[ダーツD12,D22]
以下、上パターン10の衿部8に形成されたダーツD12,D22について、さらに詳細に説明する。
図1、図3および図5に示すように、衣服1は、左袖部12および右袖部22の肩部は、ダーツD12,D22により表面には凸の曲面部7L,7Rが形成され、曲面部7L,7Rの裏面には空間部8L,8Rが形成されることにより肩部は被着者の頸側部位aL,aR付近を支点部として支持され、被着者の肩KL,KRから浮き上がった状態に装用される。
そのため、被着者の左右の肩KL,KR全体で衣服1の重量を支えるものではなく、衣服1の重量は肩部の周囲に分散されて肩KL,KRにかかり、重量が軽減されるため、重量感を感ぜず、軽快にかつ着心地が良く衣服1を装用することができる。
【0030】
そして、被着者の頸側部位aL,aR付近を支点部として左右の肩部が支持される左右の肩部5L,5Rは、被着者の肩KL,KRから浮き上がった状態に装用され、しかも左右の肩布部5L,5Rの曲面部7L,7Rの裏面には空間部8L,8Rが形成されるので、被着者の肩KL,KRとの間に余裕の空間が形成されるため、歩行時、または運動時において肩KL,KRの回転、捻回、伸縮を拘束することなく、運動性をに優れるとともに、左右の肩布部5L,5Rは肩KL,KRの動きに対して引き連れが生ずることなく、窮屈感も覚えることはなく、爽快に装用が行える。
【0031】
すなわち、衣服1は、衿口からの切り込みによりダーツD12、D22を形成したことで、衣服1の重量を肩布部の周囲に分散させて、衣服1の重量を感じさせないようにすることができ、着心地が良く、窮屈感を感じない。また、運動をする時に、衣服1が身体の動きに追従して滑らかに動き易いため、引き連れや突っ張りを生ずることなく、運動性に優れるものが得られる。そして、衣服1の着崩れがなくなり、左右の肩部の不均衡もなくなり、外観的な見苦しさもなくなる。
また、衣服1は、肩パッドを用いないので、部品点数が多くならず、資材費も安価になるとともに肩パッドを衣服に取付けずに済むため、工程数が増えず、製作費も安価になる。
従って、例えばスキーウェアーのように、1/100秒のスピードを競うスポーツ競技における衣服1として装用した場合に、重量が軽減されて軽快に装用できるのと、肩K,K′の回転、捻回、伸縮を拘束することなく、運動性に優れるので最適である。
【0032】
そのうえ、左右の肩部5L,5Rは、凸の曲面部7L,7Rの裏面に形成される空間部8L,8Rにより大きな空間部を占めることにより多量の空気層となるので、冬期における保温に適し、夏期においては通気性を発揮し、発汗によるムレを防止することもできる。
【0033】
[衣服1の作用]
衣服1では、図3に示すように、上パターン10と下パターン50とが、左衿口に達するラインL12とラインL12´、並びに右衿口に達するラインL22とラインL22´で縫着される。これにより、衣服1では、下パターン50のラインL32,L42が、衿口の一部を形成する。
左衿付近のラインL12とラインL12´との縫着ラインは、衿部8の左衿部の衿口(ダーツD12とラインL41との略中間位置)から、左袖ぐりまで達する。
ここで、ラインL21とラインL42との長さは略同じである。すなわち、ラインL12の一端点P41は、左衿口の正面から見た略中間位置となる。
また、ラインL12の他端点は、ラインL12、ラインL13およびラインL15の接点P31となる。接点P31は、左袖ぐり付近の脇下点P32と、肩上点P33との略中間位置にある。
また、ラインL12とラインL12´との縫着ラインは、左衿部の衿口から約45°の角度で左斜め下向きにのび、一端点P41と接点P31との略中間位置で、ラインL12(左袖部12の長手方向と略平行する方向)と略平行になるように、滑らかに曲線を形成している。
右衿付近のラインL22、L22´、L11,L32は、上述した左衿付近と対称に形成されている。
【0034】
上述したように上パターン10と下パターン50との縫着ラインを形成したことで、被着者の運動時に大きな動きが生じる箇所である衿口から鎖骨下付近を通って袖口にのびる正面側の箇所に、衣服1を体にフィットさせた状態で、所望の形状の立体空間を形成することができる。
また、上述したように、下パターン50のラインL32,L42によって衿口の一部を形成するように構成したことで、ラインL12とラインL22とを衿口上のラインL41とラインL41´との接合点で接合させた場合のように衿口のための縫着と上下パターンの間の縫着とが重なり合って縫着が困難になってしまうことを回避できる。また、優れたデザインを提供できる。
【0035】
また、衣服1では、左袖部12のラインL12,L13とラインL15との縫着ラインが、ラインL12と下パターン50のラインL12´との縫着ラインとが、左袖ぐり付近の接点P31で連結し、衿部8の左衿口から左袖部12の袖口に一つの滑らかな縫着ラインを形成している。
これにより、2つの縫着ラインが、一体となって衣服1内に所望の空間を形成できる。
また、ミシンによる縫着作業およびシームテープの取り付け作業の各々において、衿部8の左衿口から左袖部12の袖口まで作業を止めることなく、連続的に行うことができ、作業効率を高めることができる。
また、ラインL15とラインL12,L13との縫着ラインを、正面側(前側)に形成したことで、肘を曲げるときに、縫着ラインが収縮する方向に力が働くようにでき、伸長する方向に力が働く背面側(後側)に形成する場合に比べて、縫着の糸が切れることを効果的に抑制できる
【0036】
また、衣服1では、上パターン10のラインL18と、下パターン50の後身頃のラインL18´とが、脇下より衿部8側の肩の位置周辺で接合している。
また、脇が位置する領域に沿って、上パターン10と下パターン50とを縫着するラインL16,L16´およびラインL26,26´が位置する。
このように構成したことで、運動時に大きな動きが生じる肩のライン付近に、体にフィットさせながら動きに合わせた所定の形状の空間を形成できる。
【0037】
上述したように、衣服1によれば、上述したように上パターン10と下パターン50との2つのパターンで、優れたデザイン性を発揮しながら、衣服1の基本立体形状を構成できる。そのため、従来に比べて、シームテープの量を大幅に削減でき、軽量化が図れる。また、衣服1を形成するための裁断および組付けが簡単になる。また、シームテープの使用箇所を少なくすることで、衣服1の防水性を高めることができると共に、ハードな(硬い)箇所を小さくできる。
【0038】
また、衣服1によれば、上パターン10および下パターン50の布地方向(図1および図2中の縦方向あるいは横方向)が、衣服1において、その縦方向あるいは横方向として現れる。そのため、デザイン性を損なうことなく、しかも、運動時に生じる斜め方向の力に対して伸び難くできる。
【0039】
なお、衣服1を基にした最終的な製品の外観は、例えば、図6および図7に示される。
【0040】
<第2実施形態>
図8は本発明の第2実施形態に係る衣服101を構成する上パターン110の正面図、図9は図8に示す衣服101を構成する下パターン150の正面図である。
【0041】
第2実施形態の衣服101は、図8に示す上パターン110と図9に示す下パターン150とを立体形状にして、シームテープにより縫着することによって形成される。
衣服101は、図8に示す上パターン110のラインL116,L118,L126と、図9に示す下パターン150のラインL116´,L118´,L126´との形状に特徴を有している。
上パターン110のラインL116と下パターン150のラインL116´とは縫着され、左脇下に位置する。上パターン110のラインL126と下パターン150のラインL126´とは縫着され、右脇下に位置する。
上パターン110のラインL118と、下パターン150のラインL118´とは、脇より下の位置で縫着される。
これにより、衣服101の背面の外観は、図10に示すようになり、第1実施形態の衣服1とは異なる背面デザインが得られる。
【0042】
図8に示す上パターン110のラインL110,L111,L112,L113,L114,L115,L125,L124,L123,L122,L121は、第1実施形態の図1に示す上パターン10のラインL10,L11,L12,L13,L14,L15,L25,L24,L23,L22,L21とそれぞれ対応しており、それらの機能も同じである。
また、図8に示す上パターン110のダーツD112、D110は、図1に示す上パターン10のダーツD12、D10とそれぞれ対応しており、それらの機能も同じである。
【0043】
図9に示す下パターン150のラインL112´,L132,L141,L144,L141´,L142,L122´は、図1に示す下パターン50のラインL12´,L32,L41,L44,L41´,L42,L22´とそれぞれ対応しており、それらの機能も同じである。
また、図9に示す下パターン150のダーツD160,D161,D162,D163は、図2に示す下パターン50のダーツD60,D61,D62,D63とそれぞれ対応しており、それらの機能も同じである。
【0044】
衣服101によっても、第1実施形態と同様な効果を、異なる背面デザインによって得られる。
【0045】
<第3実施形態>
図11は本発明の第3実施形態に係る衣服201を構成する上パターン210の正面図、図12は図11に示す衣服201を構成する下パターン250の正面図である。
【0046】
第3実施形態の衣服201は、図11に示す上パターン210と図12に示す下パターン250とを立体形状にして、シームテープにより縫着することによって形成される。
衣服201は、図11に示す上パターン210のラインL216,L218,L226と、図9に示す下パターン150のラインL216´,L218´,L226´との形状に特徴を有している。
上パターン110のラインL216と下パターン150のラインL216´とは縫着され、左脇下に位置する。上パターン110のラインL226と下パターン150のラインL226´とは縫着され、右脇下に位置する。
上パターン110のラインL218と、下パターン150のラインL218´とは、脇の位置で縫着される。
これにより、衣服101の背面の外観は、図13に示すようになり、第1および第2実施形態の衣服1,101とは異なる背面デザインが得られる。
【0047】
図8に示す上パターン110のラインL210,L211,L212,L213,L214,L215,L225,L224,L223,L222,L221は、第1実施形態の図1に示す上パターン10のラインL10,L11,L12,L13,L14,L15,L25,L24,L23,L22,L21とそれぞれ対応しており、それらの機能も同じである。
また、図8に示す上パターン110のダーツD212、D210は、図1に示す上パターン10のダーツD12、D10とそれぞれ対応しており、それらの機能も同じである。
【0048】
図12に示す下パターン250のラインL212´,L232,L241,L244,L241´,L242,L222´は、図1に示す下パターン50のラインL12´,L32,L41,L44,L41´,L42,L22´とそれぞれ対応しており、それらの機能も同じである。
また、図12に示す下パターン250のダーツD260,D261,D262,D263は、図2に示す下パターン50のダーツD60,D61,D62,D63とそれぞれ対応しており、それらの機能も同じである。
【0049】
衣服201によっても、第1実施形態と同様な効果を、異なる背面デザインによって得られる。
【0050】
<第4実施形態>
図14は、本発明の第4実施形態に係る衣服501を構成する左パターン502の正面図である。
図15は本発明の第4実施形態の衣服501の正面図、図16は本発明の第4実施形態の衣服501の背面図である。
【0051】
衣服501は、図14に示す左パターン502と、左パターン502と対称な右パターン522とを、図15および図16に示すように、シームテープにより縫着することによって形成される。
【0052】
左パターン502は、図14に示すように、左衿部503、左前身頃504、左後身頃505および左袖部506を一体裁断して形成される。
左衿部503には、ラインL511とL522との間に、左袖部506に向かうダーツD512が形成されている。ダーツD512は、第1実施形態のダーツD12と同等の機能を有する。
【0053】
また、左袖部506のラインL515とラインL561との間の位置にダーツD510が形成されている。
ダーツD510は、腕を肘を中心に「くの字」に曲げることを可能にするためのものである。
【0054】
左パターン502のラインL512は、右パターンの前身頃のラインと縫着される。
ラインL521は、右パターンの後身頃のラインと縫着される。
ラインL515とラインL516は、ラインL518と縫着され、左袖部を形成する。ラインL517は、左袖口を形成する。また、ラインL511は左前衿口を形成し、ラインL522は左後衿口を形成する。
【0055】
衣服501によれば、左パターン502と、それと対称な右パターンとを縫着するときに、縫着箇所が少なく、シームテープの使用箇所を少なくできる。そのため、軽量化が可能になる。
衣服501は、例えば、ポンチョ等に適している。
【0056】
なお、左パターン502は、第4の観点の発明の一例である。ここで、ラインL512が第4の観点の発明の第1の接合ラインの一例であり、ラインL514が第4の観点の発明の第2の接合ラインの一例であり、ラインL521が第4の観点の発明の第3の接合ラインの一例であり、ラインL519が第4の観点の発明の第4の接合ラインの一例であり、ラインL515,L516が第4の観点の発明の第5の接合ラインの一例である。
【0057】
図17は、図14に示す左パターン502の変形例に係る左パターン602の正面図である。
図17に示すように、左パターン602は、左前身頃504のラインL513に左衿部503に向けてダーツD531が形成されている。ダーツD531によって、左前身頃504と被着者の体との間にその体にフィットした形状の空間を形成できる。
また、左後身頃505のラインL520に左衿部503に向けてダーツD534が形成されている。ダーツD534によって、左後身頃505と被着者の体との間にその体にフィットした形状の空間を形成できる。
【0058】
また、ラインL514とラインL515との間に左衿部503に向けて延びるダーツD532が形成されている。
また、ラインL518とラインL519との間に左衿部503に向けて延びるダーツD533が形成されている。
【0059】
図17に示す左パターン602と、それと左右対称な右パターンとによって、図14に示す左パターン502を用いる場合に比べて、被着者の体によりフィットした形状の空間を形成できる。
【0060】
<意匠の説明>
図1、図2、図8、図9、図11、図12および図14は、衣服、上着を形成するための布帛(ふはく)をも示している。
図1、図8および図11は、衣服の衿部、左袖部、右袖部を形成するための布帛である。衿部から左袖部、右袖部に向けて肩付近に空間を作るための肩ダーツが形成されている。また、左袖部および右袖部には、肘を曲げるための空間を形成するダーツがそれぞれ形成されている。
図2、図9および図12は、衣服の左前身頃、後身頃、右前身頃を形成するための布帛である。左右対称に4本のダーツが形成されている。
【0061】
図14に示す布帛は、衣服の左側部分を形成するためのものであり、左右対称の布帛と縫着することで図15および図16に示すように衣服を形成する。図14に示す布帛は、左前身頃、左袖部および左後身頃を形成するものであり、左袖部には肘を曲げるための空間を形成するダーツが形成されている。
【0062】
本発明は上述した実施形態には限定されない。
すなわち、当業者は、本発明の技術的範囲またはその均等の範囲内において、上述した実施形態の構成要素に関し、様々な変更、コンビネーション、サブコンビネーション、並びに代替を行ってもよい。
上述した実施形態では、ダーツを備えた場合を例示したが、一部あるいは全てのダーツがない場合にも本発明は同様に適用可能である。例えば、サッカーやランニング等のウェアには、肘のダーツは不要である。
また、ダーツの幅と深さは、そのダーツが形成された箇所に対応した人体の運動範囲によって規定される。
【0063】
また、第1〜第3実施形態において、ラインL12,L12´等のパターンは一例であり、左前衿口(右前衿口)から左袖部(右袖部)の袖ぐり付近に達するものであれば、任意のパターンを用いることができる。
また、上述した実施形態では、縫着方法としてシームテープを用いる場合を例示したがが、その他の方法で縫着してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、軽量化の要求がある衣服に適用可能である。
【符号の説明】
【0065】
1,101,201,501…衣服
10,110,210…上パターン
50,150,250…下パターン
12,112,212…左袖部
22,122,222…右袖部
8,108,208…衿部
502…左パターン


【特許請求の範囲】
【請求項1】
衿を形成する衿部、左袖部および右袖部を一体的に裁断して形成された上パターンと、
前身頃および後身頃を一体的に裁断して形成された下パターンと
を有し、
前記上パターンの前記衿部は、左衿部と、当該左衿部と対称の右衿部とを有し、
前記左衿部は、左前衿口の一部を形成する衿形成ラインと、当該衿形成ラインの端点と、当該端点を始点として前記左袖部に向けて滑らかに曲線を形成する第1の接合ラインとを有し、
前記下パターンは、
前記上パターンの前記左衿部の前記第1の接合ラインの一部と接合する第2の接合ラインを有する左前身頃と、
前記左前身頃と対称の右前身頃と、
前記左前身頃と前記右前身頃との間に介在する前記後身頃と
を有し、
前記第1の接合ラインと前記第2の接合ラインとの接合部は、前記左衿部の左前衿口から前記左袖部の袖ぐり付近に達している
衣服。
【請求項2】
前記左袖部は、前記第1の接合ラインの一部と縫着され、左腕が収容される空間を形成する第3の接合ラインを有し、
前記第1の接合ラインと前記第2の接合ラインとを接合して形成されたラインと、前記第1の接合ラインと前記第3の接合ラインとを接合して形成されるラインとによって、前記左衿部の左前衿口から左袖口に達する滑らかな1ラインが形成されている
請求項1に記載の衣服。
【請求項3】
前記第1の接合ライン、前記第2の接合ラインおよび前記第3の接合ラインの接点は、袖ぐり付近の脇下点と肩上点との略中間位置にあり、
前記第1の接合ラインと前記第2の接合ラインとの接合部は、前記左衿部の左前衿口の正面側の略中間位置と、前記接点とを滑らかなラインで結んでいる
請求項2に記載の衣服。
【請求項4】
前記第1の接合ラインと前記第2の接合ラインとの接合部は、前記左衿部の左前衿口の正面側の略中間位置から約45°の角度で左斜め下向きにのび、当該中間位置と前記接点との間の略中間位置で、前記第1の接合ラインと前記第3の接合ラインとの接合部と略平行になるように滑らかな曲線を描いている
請求項3に記載の衣服。
【請求項5】
前記左袖部を肩から浮き上げるためのダーツが、前記左衿部の左前衿口から前記左袖部の袖口に向けて、前記第1の接合ラインと前記第3の接合ラインとを接合して形成されるラインと略平行に形成されている
請求項2に記載の衣服。
【請求項6】
前記下パターンの前記左前身頃は、前記左衿部の前記衿形成ラインの前記端点と接合する点と、前記右前身頃と接合する接合ラインとの間に、前記左衿部の前記衿形成ラインと一体となって前記左前衿口を形成するためのラインを有する。
請求項1に記載の衣服。
【請求項7】
前記上パターンと、前記下パターンの後身頃とが、被着者の肩甲骨に対応する位置付近で接合している
請求項1に記載の衣服。
【請求項8】
前記右袖部は、前記左袖部と対称であり、
前記上パターンの前記左袖部に、肘曲げ用空間を形成するためのダーツが形成されている
請求項1に記載の衣服。
【請求項9】
前記左袖部を肩から浮き上げるためのダーツが、前記左衿部の左前衿口から前記左袖部の袖口に向けて、前記第1の接合ラインと前記第3の接合ラインとを接合して形成されるラインと略平行に形成されており、
前記肘曲げ用空間を形成するためのダーツと、前記左袖部を肩から浮き上げるためのダーツとの深さ方向が直交する
請求項8に記載の衣服。
【請求項10】
前記下パターンには、左右の袖部の袖ぐりを形成するための凹部が形成されている
請求項1に記載の衣服。
【請求項11】
上パターンと縫着されて衣服を構成するために用いられる下パターンであって、
前記上パターンが、衿を形成する衿部と、左袖部と、右袖部とが一体的に裁断されており、前記衿部は、左衿部と、当該左衿部と対称の右衿部とを有し、前記左衿部は、左前衿口の一部を形成する衿形成ラインと、当該衿形成ラインの端点と、当該端点を始点として前記左袖部に向けて滑らかに曲線を形成する第1の接合ラインとを有する場合に、
前記上パターンの前記左衿部の前記第1の接合ラインの一部と接合する第2の接合ラインを有する左前身頃と、
前記左前身頃と対称の右前身頃と、
前記左前身頃と前記右前身頃との間に介在する後身頃と
が一体的に裁断されており、
前記第1の接合ラインと前記第2の接合ラインとの接合部は、前記左衿部の左前衿口から前記左袖部の袖ぐり付近に達している
下パターン。
【請求項12】
下パターンと縫着されて衣服を構成するために用いられる上パターンであって、
前記下パターンが、前記上パターンの左衿部の第1の接合ラインの一部と接合する第2の接合ラインを有する左前身頃と、前記左前身頃と対称の右前身頃と、前記左前身頃と前記右前身頃との間に介在する後身頃とを有する場合に、
衿を形成する前記衿部と、
左袖部と、
右袖部と
が一体裁断されており、
前記衿部は、左衿部と、当該左衿部と対称の右衿部とを有し、
前記左衿部は、左前衿口の一部を形成する衿形成ラインと、当該衿形成ラインの端点と、当該端点を始点として前記左袖部に向けて滑らかに曲線を形成する前記第1の接合ラインとを有し、
前記第1の接合ラインと前記第2の接合ラインとの接合部は、前記左衿部の左前衿口から前記左袖部の袖ぐり付近に達している
上パターン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2010−275662(P2010−275662A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−130066(P2009−130066)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(390025128)株式会社フェニックス (1)
【Fターム(参考)】