説明

表皮材、その製造方法及び自動車内装用表皮材

【課題】板厚が均一であり、本革のようにやわらかく、触感が良い表皮材、その製造方法、及びそれを用いた自動車内装用表皮材を提供すること。
【解決手段】表皮材は、エラストマー層と、エラストマー層より表面側に配設される塗装膜層とを有する表皮材であって、エラストマー層の厚みに対する塗装膜層の厚みの比が0.004〜0.16であり、エラストマー層の発泡倍率が1.06〜3.0であり、塗装膜層が、平均粒径5〜50μmの微粒子パウダーを含み、微粒子パウダーが、塗装膜層の表面に1〜5%の投影面積割合で分散した状態で露出している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表皮材、その製造方法及び自動車内装用表皮材に係り、更に詳細には、板厚が均一であり、本革のようにやわらかく、触感が良い表皮材、その製造方法、及びそれを用いた自動車内装用表皮材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、塩化ビニル共重合体を含む組成物をカレンダー成形や押出成形してシートとしたものを真空成形して成る塩化ビニル共重合体系真空成形物(特許文献1参照。)やポリプロピレン樹脂とオレフィン系熱可塑性エラストマーとを含む材料からなるシートを、絞面を有した凹引き真空成形型にて成形することにより、表皮層を得るインストルメントパネルパッドの製造方法(特許文献2参照。)が提案されている。
また、最近では、粉状熱可塑性合成樹脂成形材料を用いてスラッシュ成形法により表皮体を製造する合成樹脂表皮体の製造法(特許文献3参照。)やポリオレフィン系樹脂とエチレン・α−オレフィン系共重合体ゴムとを含む熱可塑性エラストマーのパウダーが、シボ模様転写用金型の内表面に吹き付けられて該金型の内表面に溶融付着することにより、表面にシボ模様が形成されてなるシボ模様付熱可塑性エラストマー成型物やその製造方法(特許文献4参照。)、熱可塑性ポリウレタン系樹脂粉末を主体とする、粉末スラッシュ成型等に用いるための樹脂組成物において、成型温度で溶融しない粒径0.5〜200μmのマレイミド重合体微粒子粉末を含有する粉末成形用樹脂組成物やこれを素材とし、表面にしぼ模様を有し、艶消しされた樹脂成形品(特許文献5参照。)が提案されている。
更に、ウレタンエラストマーを使用したスプレー工法により形成された表皮材やその製造方法(特許文献6参照。)が提案されている。
【特許文献1】特公昭60−37784号公報
【特許文献2】特公昭63−4776号公報
【特許文献3】特公平2−12733号公報
【特許文献4】特許第2517073号公報
【特許文献5】特許第3637694号公報
【特許文献6】特表平10−500366号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載の表皮材では、真空成形によりシートが延ばされ、板厚が各部分で変化したり、また、エンボス加工した絞が延ばされ、絞の粒が大きくなったり、深さが浅くなったりして、その触感がばらついていた。
また、特許文献3〜5に記載の表皮材では、絞の模様はより再現されやすくなるものの、形状によりパウダーの付き方が変化し、均一な板厚が得られず、その触感も良いものではなかった。
更に、特許文献6に記載の表皮材では、絞の模様はより再現されやすくなるものの、狭い部位へスプレー塗布することが困難であり、材料が溜まったり、液だれにより板厚が安定せず、その触感も良いものではなかった。
【0004】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、板厚が均一であり、本革のようにやわらかく、触感が良い表皮材、その製造方法、及びそれを用いた自動車内装用表皮材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねたところ、エラストマー層と、エラストマー層より表面側に配設される塗装膜層とを有し、エラストマー層の厚みに対する塗装膜層の厚みの比を0.004〜0.16とし、エラストマー層の発泡倍率を1.06〜3.0とし、塗装膜層に、平均粒径5〜50μmの微粒子パウダーを含ませ、微粒子パウダーを、塗装膜層の表面に1〜5%の投影面積割合で分散した状態で露出させることなどにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明の表皮材は、エラストマー層と、該エラストマー層より表面側に配設される塗装膜層とを有する表皮材であって、該エラストマー層の厚みに対する該塗装膜層の厚みの比が0.004〜0.16であり、該エラストマー層の発泡倍率が1.06〜3.0であり、該塗装膜層が、平均粒径5〜50μmの微粒子パウダーを含み、該微粒子パウダーが、該塗装膜層の表面に1〜5%の投影面積割合で分散した状態で露出していることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の表皮材の第1の製造方法は、上記本発明の表皮材の製造方法の一例であって、少なくとも表皮材表面側形成用金型に、微粒子パウダーを含有する微粒子パウダー含有離型剤を所定量塗装して、微粒子パウダー含有離型剤層を形成し、次いで、塗装膜層形成用塗料を塗装して、塗装膜層を形成する工程(A1)と、該工程(A1)の後に実施され、表皮材裏面側形成用金型と該表皮材表面側形成用金型とにより型閉じして、密閉空間を形成し、次いで、該密閉空間内にエラストマー層形成用原料を射出し、反応させて、エラストマー層を形成し、しかる後、型開きして、表皮材を得る工程(A2)とを含むことを特徴とする。
【0008】
更に、本発明の表皮材の第2の製造方法は、上記本発明の表皮材の製造方法の他の例であって、少なくとも表皮材表面形成用金型に、微粒子パウダーを含有する微粒子パウダー含有塗装膜層形成用塗料を所定の厚みになるように塗装して、微粒子パウダー含有塗装膜層を形成する工程(B1)と、該工程(B1)の後に実施され、表皮材裏面側形成用金型と該表皮材表面側形成用金型とにより型閉じして、密閉空間を形成し、次いで、該密閉空間内にエラストマー層形成用原料を射出し、反応させて、エラストマー層を形成し、しかる後、型開きして、表皮材を得る工程(B2)とを含むことを特徴とする。
【0009】
更にまた、本発明の自動車内装用表皮材は、上記本発明の表皮材を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、エラストマー層と、エラストマー層より表面側に配設される塗装膜層とを有し、エラストマー層の厚みに対する塗装膜層の厚みの比を0.004〜0.16とし、エラストマー層の発泡倍率を1.06〜3.0とし、塗装膜層に、平均粒径5〜50μmの微粒子パウダーを含ませ、微粒子パウダーを、塗装膜層の表面に1〜5%の投影面積割合で分散した状態で露出させることなどとしたため、板厚が均一であり、本革のようにやわらかく、触感が良い表皮材、その製造方法、及びそれを用いた自動車内装用表皮材を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の表皮材について説明する。
上述の如く、本発明の表皮材は、エラストマー層と、エラストマー層より表面側に配設される塗装膜層とを有する表皮材であって、エラストマー層の厚みに対する塗装膜層の厚みの比が0.004〜0.16であり、エラストマー層の発泡倍率が1.06〜3.0であり、塗装膜層が、平均粒径5〜50μmの微粒子パウダーを含み、微粒子パウダーが、塗装膜層の表面に1〜5%の投影面積割合で分散した状態で露出しているものであり、自動車内装用表皮材に好適に用いることができるものである。
【0012】
上述の構成とすることにより、板厚が均一であり、本革のようにやわらかく、触感が良い表皮材となる。また、色数を増やして隠蔽性を向上させるよりも、生産効率を向上させることやコストを削減することが可能となる。
【0013】
ここで、エラストマー層の厚みに対する塗装膜層の厚みの比が0.004未満の場合には、本革のようにやわらかく、表皮材の感触が良いものとならず、また、現時点における金型を用いた工法では、均一な3次元形状の塗装膜層を安定して形成することができない。
一方、エラストマー層の厚みに対する塗装膜層の厚みの比が0.16を超える場合には、本革のようにやわらかく、表皮材の感触が良いものとならない。
このような観点から、上述した比は0.02〜0.075であることが好ましい。
なお、塗装膜層の厚みは、具体的には20〜80μmであることが好ましく、エラストマー層の厚みは、具体的には0.5〜5.0mmであることが好ましく、0.5〜1.5mmであることがより好ましい。
【0014】
また、エラストマー層の発泡倍率が1.06未満の場合には、やわらかさが十分でなく、触感が良い表皮材とならない。
一方、エラストマー層の発泡倍率が3.0を超える場合には、強度が十分でなく、離型やその他の製造工程において、破れが発生してしまうため、板厚が均一とならず、触感が良い表皮材を得ることができない。
【0015】
更に、塗装膜層の表面に露出する微粒子パウダーの平均粒径が5μm未満の場合には、人が触ったときに感知できる大きさ未満であるため、しっとり感を付与することができず、表皮材の触感が良いものとならない。
一方、塗装膜層の表面に露出する微粒子パウダーの平均粒径が50μmを超える場合には、しっとり感を付与するよりもざらつき感を付与する傾向があるため、表皮材の触感が良いものとならない。
【0016】
また、塗装膜層の表面に分散した状態で露出した微粒子パウダーの投影面積による割合が1%未満の場合や5%を超える場合には、触感が良い表皮材とならない。更に、5%を超える場合には、微粒子パウダー自体の色が与える影響が大きくなることがあり、表皮材の表面の色や艶が変化することがある。
【0017】
また、本発明においては、塗装膜層が、酸化防止剤及び紫外線吸収剤を含むアクリル系の塗装膜層形成用塗料のいずれか一方若しくは双方、並びに脂肪族イソシアネートを含むウレタン系の塗装膜層形成用塗料のいずれか一方又は双方により形成されていることが望ましい。
このような塗装膜層を有する表皮材は、高温、多湿、紫外線などに晒される環境で使用されるもの、例えば自動車内装などに好適に用いることができる。
【0018】
更に、本発明においては、エラストマー層が、微発泡ウレタンエラストマーを含むことが望ましい。また、エラストマー層が、微発泡ウレタンエラストマーであってもよい。
ここで、「微発泡ウレタンエラストマー」とは、発泡倍率が3.0以下であるウレタンエラストマーをいう。
エラストマー層が、微発泡ウレタンエラストマーを含むことによって、比較的薄くても、板厚が均一で、十分にやわらかく、触感が良い表皮材となる。
また、微発泡ウレタンエラストマーは、特に限定されるものではないが、反応射出成形で合成された非熱可塑性の微発泡ウレタンエラストマーであることが、板厚の薄さを均一に安定して生産でき、本革のようなソフト感を有し、触感が良い表皮材となり望ましい。
【0019】
更にまた、本発明においては、特に限定されるものではないが、微粒子パウダーとして、例えば籾殻、わら、竹、ケナフ若しくは麻、及びこれらの任意の組み合わせに係る植物由来素材から成る微粒子パウダー、革、シルク、ウール、キチン若しくはキトサン、及びこれらの任意の組み合わせに係る動物由来素材から成る微粒子パウダー、又は高分子吸収体、アクリルビーズ若しくはウレタンビーズ、及びこれらの任意の組み合わせに係る合成素材から成る微粒子パウダー、並びにこれらの任意の組み合わせに係る微粒子パウダーを用いることができる。
植物由来素材や動物由来素材から成る微粒子パウダーは、人に対する親和性に優れており、合成素材から成る微粒子パウダーは、その親水性が良い材料を選択することによって、しっとり感をより付与することができる。
【0020】
次に、本発明の表皮材の製造方法について説明する。
上述の如く、本発明の表皮材の第1の製造方法は、上述した本発明の表皮材の製造方法の一実施形態であって、少なくとも表皮材表面側形成用金型に、微粒子パウダーを含有する微粒子パウダー含有離型剤を所定量塗装して、微粒子パウダー含有離型剤層を形成し、次いで、塗装膜層形成用塗料を塗装して、塗装膜層を形成する工程(A1)と、工程(A1)の後に実施され、表皮材裏面側形成用金型と表皮材表面側形成用金型とにより型閉じして、密閉空間を形成し、次いで、密閉空間内にエラストマー層形成用原料を射出し、反応させて、エラストマー層を形成し、しかる後、型開きして、表皮材を得る工程(A2)とを含む製造方法である。これにより、所望の表皮材を得ることができる。
なお、型開きし、表皮材を離型する際に、塗装膜層の表面に微粒子パウダー含有離型剤層由来の微粒子パウダーを付着させることができる。
【0021】
ここで、少なくとも表皮材表面側形成用金型に、微粒子パウダーを含有する微粒子パウダー含有離型剤を塗装するに当たって、所定量とは、本革のようにやわらかく、触感が良い表皮材が得られれば特に限定されるものではないが、例えば、6.5〜17.5g/mであることが好ましく、10〜15g/mであることがより好ましく、12〜15g/mであることが更に好ましい。
また、少なくとも表皮材表面側形成用金型に、微粒子パウダーを含有する微粒子パウダー含有離型剤を所定量塗装して、微粒子パウダー含有離型剤層を形成するに際には、表皮材裏面側形成用金型に、同様の微粒子パウダー含有離型剤を塗装してもよく、微粒子パウダーを含有しない離型剤など組成の異なる離型剤を塗装してもよい。
更に、型閉じして、密閉空間を形成する際には、得ようとする表皮材の厚みを考慮して、表皮材裏面側形成用金型と表皮材表面側形成用金型とによりクリアランスを形成することができる。
【0022】
また、本発明の表皮材の第1の製造方法においては、工程(A2)の反応射出成形(RIM)において、エラストマー層形成用原料として、非熱可塑性微発泡ウレタンエラストマー層形成用原料を用いることが望ましい。これにより、エラストマー層が、非熱可塑性微発泡ウレタンエラストマーから成り、触感がより良い表皮材を得ることができる。更に、非熱可塑性の、換言すれば熱硬化性の微発泡ウレタンエラストマーを形成する原料としては、例えばイソシアネートとポリオールとの混合液を挙げることができる。
なお、上記イソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネート、上記ポリオールとしては、ポリエーテルポリオールなど従来公知のものを使用することができる。
【0023】
更に、本発明の表皮材の第1の製造方法においては、工程(A1)において、塗装膜層形成用塗料として、微粒子パウダーを含有する塗装膜層形成用塗料を用いることが望ましい。これにより、塗装膜層の表面に所定量の微粒子パウダーを容易に露出させることができ、触感が良い表皮材を容易に得ることができる。また、表皮材に着色するための顔料が添加されたものを用いることもできる。
【0024】
また、本発明の表皮材の第1の製造方法においては、工程(A1)において、塗装膜層形成用塗料として、酸化防止剤及び紫外線吸収剤のいずれか一方若しくは双方を含むアクリル系の塗装膜層形成用塗料、並びに脂肪族イソシアネートを含むウレタン系の塗装膜層形成用塗料のいずれか一方又は双方を用いることが望ましい。これにより、高温、多湿、紫外線などに晒される環境で使用される自動車内装などに好適に用いられる触感が良い表皮材を得ることができる。また、表皮材に着色するための顔料が添加されたものを用いることもできる。
【0025】
更に、本発明の表皮材の第1の製造方法においては、工程(A1)において、表皮材表面側形成用金型として、革の表面絞形状及びその形状を模して作製された表面絞形状のいずれか一方又は双方が反転された表皮材表面側形成用金型を用いることが望ましい。
このような表皮材表面側金型を用いることにより、本革のようにやわらかく、触感が良い表皮材が得られるだけでなく、本革のような表面形状を有する表皮材が得られる。
また、表皮材表面側形成用金型として、エンボス加工を施していない、自然のままの微細な絞を有する革の表面絞形状が反転された表皮材表面側形成用金型やその形状を模して作製された表面絞形状が反転された表皮材表面側形成用金型を用いることが望ましい。更に、エンボス加工を施してない、毛穴が残っている微細な絞を有する革の表面絞形状が反転された表皮材表面側形成用金型を用いることもできる。
なお、革としては、例えば牛革などを用いることができるが、これに限定されるものではないことは言うまでもない。例えば、豚革など動物由来の革を用いることができる。
【0026】
更にまた、本発明の表皮材の第1の製造方法においては、工程(A1)において、微粒子パウダー含有離型剤として、シリコーン系ワックス成分又はプロセスオイル系ワックス成分を含有する微粒子パウダー含有離型剤を用いることが、本発明の触感を得ることの観点から望ましい。しかしながら、金型用離型剤として、通常使用するものであって、例えばウレタンエラストマーと金型との接着を防止し得るものであればこれらに限定されるものではなく、例えば、フッ素系離型剤なども使用できる。
【0027】
本発明の表皮材の第1の製造方法を図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の表皮材の第1の製造方法の一実施形態を示す製造工程図である。
まず、同図(a)に示すように、微粒子パウダーを含有する微粒子パウダー含有離型剤110Aを表皮材表面側形成用金型100A、いわゆるキャビティ金型にスプレー塗布し、また、微粒子パウダーを含有しない無微粒子パウダー離型剤110Bを表皮材裏面側形成用金型100B、いわゆるコア金型にスプレー塗布して、図示しない微粒子パウダー含有離型剤層と無微粒子パウダー離型剤層とを形成する。
次いで、同図(b)に示すように、塗装膜層形成用塗料120を塗装して、塗装膜層20を形成する。
更に、同図(c)に示すように、表皮材裏面側形成用金型100Bと表皮材表面側形成用金型100Aとにより型閉じして、密閉空間を形成し、次いで、密閉空間内にエラストマー層形成用原料130を射出し、反応させ、固化させて、エラストマー層を形成する。
しかる後、同図(d)に示すように、型開きして、所望の表皮材1を得る。
なお、型開きし、表皮材1を離型する際に、表皮材の図示しない塗装膜層の表面には、微粒子パウダー含有離型剤層由来の微粒子パウダーが付着する(図示せず。)。
【0028】
図2は、本発明の表皮材の第1の製造方法の一実施形態における表皮材表面側形成用金型の近傍の模式的な断面状態を示す説明図である。
まず、微粒子パウダーを含有する微粒子パウダー含有離型剤を表面に絞の山谷がある表皮材表面側形成用金型に塗布し、同図(a)に示すように、微粒子パウダー10を含有する微粒子パウダー含有離型剤層40Aを表皮材表面側形成用金型100A上に形成する。
次いで、表皮材に着色するための顔料が添加された塗装膜層形成用塗料を塗装し、同図(b)に示すように、塗装膜層20を形成する。
更に、表皮材裏面側形成用金型と表皮材表面側形成用金型とにより型閉じして、密閉空間を形成し、次いで、密閉空間内にエラストマー層形成用原料を射出し、反応させ、固化させて、同図(c)に示すように、エラストマー層30を形成する。
しかる後、型開きして、表面の絞の山谷に沿って微粒子パウダーが露出した所望の表皮材1を得る。
なお、型開きし、表皮材1を離型する際に、塗装膜層20の表面には微粒子パウダー含有離型剤層40A由来の微粒子パウダー10が付着する。また、シリコーン系ワックス成分などの他の離型剤成分12が付着することもある。
本法によらないで、例えば微粒子パウダーを後から製品に塗布すると、微粒子パウダーがうまく表面に露出しなかったり、絞の谷が塗料で埋まってしまうため、触感を良くするために形成された絞形状の効果が十分に発揮されず、逆に触感が悪くなってしまうことがある。
【0029】
図3は、本発明の表皮材の第1の製造方法の他の実施形態における表皮材表面側形成用金型の近傍の模式的な断面状態を示す説明図である。
塗装膜層形成用塗料として、微粒子パウダーを更に含有したものを用い、これを塗装し、同図(b)に示すように、微粒子パウダー含有塗装膜層20Aを形成したこと以外は、上記実施形態と同様であるので、他の工程の説明は省略する。
これにより、微粒子パウダー含有離型剤層40A由来の微粒子パウダー10が十分でない場合にも、微粒子パウダー含有塗装膜層20A由来の微粒子パウダー10により補うことができ、より確実に表面に微粒子パウダーを露出させることができる。
【0030】
一方、上述の如く、本発明の表皮材の第2の製造方法は、上述した本発明の表皮材の製造方法の他の実施形態であって、少なくとも表皮材表面形成用金型に、微粒子パウダーを含有する微粒子パウダー含有塗装膜層形成用塗料を所定の厚みになるように塗装して、微粒子パウダー含有塗装膜層を形成する工程(B1)と、工程(B1)の後に実施され、表皮材裏面側形成用金型と表皮材表面側形成用金型とにより型閉じして、密閉空間を形成し、次いで、密閉空間内にエラストマー層形成用原料を射出し、反応させて、エラストマー層を形成し、しかる後、型開きして、表皮材を得る工程(B2)とを含む製造方法である。これにより、所望の表皮材を得ることができる。
【0031】
ここで、少なくとも表皮材表面側形成用金型に、微粒子パウダーを含有する微粒子パウダー含有塗装膜層形成用塗料を塗装するに当たって、所定の厚みとは、本革のようにやわらかく、触感が良い表皮材が得られれば特に限定されるものではないが、例えば、20〜80μmであることが好ましく、30〜60μmであることがより好ましい。また、塗装膜層における微粒子パウダーの濃度は、6.5〜17.5g/mであることが好ましく、10〜15g/mであることがより好ましく、12〜15g/mであることが更に好ましい。
また、型閉じして、密閉空間を形成する際には、得ようとする表皮材の厚みを考慮して、表皮材裏面側形成用金型と表皮材表面側形成用金型とによりクリアランスを形成することができる。
【0032】
また、本発明の表皮材の第2の製造方法においては、工程(B2)において、エラストマー層形成用原料として、非熱可塑性微発泡ウレタンエラストマー層形成用原料を用いることが、上記同様の理由から望ましい。
【0033】
更に、本発明の表皮材の第2の製造方法においては、工程(B1)において、微粒子パウダー含有塗装膜層形成用塗料を用い、微粒子パウダー含有塗装膜層を形成し、次いで、微粒子パウダーを含有しない無微粒子パウダー塗装膜層形成用塗料を用い、無微粒子パウダー塗装膜層を形成することが望ましい。塗装膜層の表面に微粒子パウダーを露出させやすいため、本革のようにやわらかく、触感が良い表皮材を、より生産性良く得ることができる。
なお、微粒子パウダー含有塗装膜層形成用塗料や無微粒子パウダー塗装膜層形成用塗料としては、表皮材に着色するための顔料が添加されたものを用いることもできる。
【0034】
また、本発明の表皮材の第2の製造方法においては、工程(B1)において、微粒子パウダー含有塗装膜層と無微粒子パウダー塗装膜層とを形成する場合であって、微粒子パウダー含有塗装膜層を形成するに当たり、微粒子パウダー含有塗装膜層形成用塗料を用い、微粒子パウダー含有塗装膜層の厚みが5〜10μmになるように塗装し、微粒子パウダー含有塗装膜層を形成することが望ましい。塗装膜層の表面に微粒子パウダーをより露出させやすいため、本革のようにやわらかく、触感が良い表皮材を、更に生産性良く得ることができる。
【0035】
更に、本発明の表皮材の第2の製造方法においては、工程(B1)において、微粒子パウダー含有塗装膜層形成用塗料として、酸化防止剤及び紫外線吸収剤のいずれか一方若しくは双方を含むアクリル系の微粒子パウダー含有塗装膜層形成用塗料、並びに脂肪族イソシアネートを含むウレタン系の微粒子パウダー含有塗装膜層形成用塗料のいずれか一方又は双方を用いることが、上記同様の理由から望ましい。
なお、微粒子パウダー含有塗装膜層形成用塗料や無微粒子パウダー塗装膜層形成用塗料として、表皮材に着色するための顔料が添加されたものを用いることもできる。
【0036】
更に、本発明の表皮材の第2の製造方法においても、工程(B1)において、表皮材表面側形成用金型として、革の表面絞形状及びその形状を模して作製された表面絞形状のいずれか一方又は双方が反転された表皮材表面側形成用金型を用いることが望ましい。このような表皮材表面側金型を用いることにより、板厚が均一で、本革のようにやわらかく、触感が良い表皮材が得られるだけでなく、本革のような表面形状を有する表皮材が得られる。
また、表皮材表面側形成用金型として、エンボス加工を施していない、自然のままの微細な絞を有する革の表面絞形状が反転された表皮材表面側形成用金型やその形状を模して作製された表面絞形状が反転された表皮材表面側形成用金型を用いることが望ましい。更に、エンボス加工を施してない、毛穴が残っている微細な絞を有する革の表面絞形状が反転された表皮材表面側形成用金型を用いることもできる。なお、革としては、上述のものと同様のものを用いることができる。
【0037】
一方、本発明の表皮材の第2の製造方法においては、工程(B1)の前に実施され、少なくとも表皮材表面側形成用金型に、離型剤を塗装して、離型剤層を形成する工程(B0)を更に含ませることができる。
これにより、金型とウレタンエラストマーなどとの接着を防止することができる。なお、金型とウレタンエラストマーなどとの接着を防止し得るだけの離型剤層が金型に形成されていればよいため、この工程は必ずしも必須ではない。また、離型剤層は連続層であっても非連続層であってもよい。
【0038】
また、本発明の表皮材の第2の製造方法においては、工程(B0)において、離型剤として、シリコーン系ワックス成分又はプロセスオイル系ワックス成分を含有する微粒子パウダー含有離型剤を用いることが、上記同様の理由から望ましい。
【0039】
本発明の表皮材の第2の製造方法を図面を用いて詳細に説明する。
図4は、本発明の表皮材の第2の製造方法の一実施形態における表皮材表面側形成用金型の近傍の模式的な断面状態を示す説明図である。
まず、微粒子パウダーを含有しない無微粒子パウダー離型剤を表面に絞の山谷がある表皮材表面側形成用金型に塗布し、同図(a)に示すように、表皮材表面側形成用金型100A上に無微粒子パウダー離型剤層40Bを形成する。
次いで、微粒子パウダー10と、表皮材に着色するための顔料とが添加された塗装膜層形成用塗料を塗装し、同図(b)に示すように微粒子パウダー10を含有する微粒子パウダー含有塗装膜層20Aを形成する。
更に、図示しないが、表皮材裏面側形成用金型と表皮材表面側形成用金型とにより型閉じして、密閉空間を形成し、次いで、密閉空間内にエラストマー層形成用原料を射出し、反応し、固化させて、同図(c)に示すように、エラストマー層30を形成する。
しかる後、型開きして、同図(d)に示すように、表面の絞の山谷に沿って微粒子パウダーが露出した所望の表皮材1を得る。
なお、型開きし、表皮材1を離型する際に、シリコーン系ワックス成分などの他の離型剤成分12が付着することもある。
例えば、微粒子パウダーを後から製品に塗布すると、微粒子パウダーがうまく表面に露出しなかったり、絞の谷が塗料で埋まってしまうため、触感を良くするために形成された絞形状の効果が十分に発揮されず、逆に触感が悪くなってしまうこともある。
【0040】
図5は、本発明の表皮材の第2の製造方法の他の実施形態における表皮材表面側形成用金型の近傍の模式的な断面状態を示す説明図である。
塗装膜層形成用塗料として、まず、微粒子パウダーを含有する微粒子パウダー含有塗装膜層形成用塗料を用い、これを塗装して、次いで、微粒子パウダーを含有しない無微粒子パウダー塗装膜層形成用塗料を用い、これを塗装して、同図(b1)及び(b2)に示すように、微粒子パウダー含有塗装膜層20Aと、無微粒子パウダー塗装膜層20Bとを形成したこと以外は、上記実施形態と同様であるので、他の工程の説明は省略する。
これにより、塗装膜層の厚みを確保しつつ、塗装膜層の表面に微粒子パウダーをより確実に露出させることができる。
【0041】
次に、本発明の自動車内装用表皮材について説明する。
上述の如く、本発明の自動車内装用表皮材は、上記本発明の表皮材を備えたものである。
このような構成とすることにより、板厚が均一であり、本革のようにやわらかく、触感が良い自動車内装用表皮材となる。
【0042】
また、本発明においては、表皮材の裏面側に配設される芯材を更に備え、表皮材と芯材とが、2層以上の層構造を形成し、芯材が、ポリプロピレン(PP)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)又はポリカーボネート(PC)/アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、及びこれらの任意の混合物を含有する熱可塑性樹脂から成るものであることが望ましい。
このような構成とすることにより、板厚が均一であり、本革のようにやわらかく、触感が良い自動車内装用表皮材となる。
また、芯材が上述した熱可塑性樹脂から成る場合には、3次元の複雑な形状を安定的に大量生産できるため、生産効率を向上させることやコストを削減することができる。
更に、このような自動車内装用表皮材の製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば表皮材と芯材とを別個に成形した後、ウレタン接着剤などの接着剤などを使用して、2つの部材を積層して層構造を形成したり、芯材を成形した後、金型内にその芯材を配置し、ウレタンエラストマー層の成形と一体で成形(一体成形)して、2つの部材を積層して層構造形成したりすることができる。
【0043】
更に、本発明においては、表皮材の裏面側に配設される発泡材と芯材とを更に備え、表皮材と発泡材と芯材とが、この順で3層以上の層構造を形成し、芯材が、ポリプロピレン(PP)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)又はポリカーボネート(PC)/アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、及びこれらの任意の混合物を含有する熱可塑性樹脂から成り、発泡材が、密度が100〜250kg/mである半硬質熱硬化性ウレタンフォームから成るものであることが望ましい。
このような構成とすることにより、板厚が均一であり、本革のようにやわらかく、触感が良い自動車内装用表皮材となる。
ここで、「半硬質熱硬化性ウレタンフォーム」とは、軟質熱硬化性ウレタンフォームと硬質熱硬化性ウレタンフォームの中間の硬度、特性を持つウレタンフォームをいう。
発泡材の密度が100kg/m未満の場合には、製造時や取り出し時のハンドリングで圧跡がつきやすいなどのためハンドリングが悪くなることがあり、250kg/mを超える場合には、中間層が固すぎて、表皮材のやわらかさに悪影響を及ぼすことがある。このような観点からは、発泡材の密度は120〜180kg/mの範囲であることがより好ましい。
【実施例】
【0044】
以下、本発明を実施例、比較例及び参考例などにより更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
まず、下記の要領で、平板金型の準備を準備した。
反転用の本革(300mm×400mm)を準備し、その反転モデルを作製し、これを基に表皮材表面側形成用金型である電鋳プレートを作製した。また、その電鋳プレートと合わさり、所定の板厚が確保できるような表皮材裏面側形成用金型を作製し、平板金型を作製した。
【0045】
(実施例1)
上記平板金型を80℃に加熱し、表皮材裏面側形成用金型に、シリコーンを含むワックス成分を含有した離型剤をスプレーガンで均一に塗布し、表皮材表面側形成用金型にシルクの微粒子パウダー(平均粒径20μm)と、金属石鹸系の分散剤とを添加したシリコーンを含むワックス成分とを含有した離型剤を、離型剤層における微粒子パウダー量が15g/mとなるようにスプレーガンで均一に塗布し、離型剤を乾燥させて、微粒子パウダー含有離型剤層を形成した。
次いで、表皮材表面側形成用金型に、黒色顔料を含有したアクリル系の塗装膜層形成用塗料を塗装膜層の厚みが40μmとなるようにスプレーガンで均一に塗装して、塗装膜層を形成した。
更に、平板金型を閉じ、エラストマー層の厚みが1mm、発泡倍率が1.3(ウレタンエラストマー比重:800kg/m)となるように、ポリウレタン高圧注入機によって、ウレタンエラストマー層形成用原料を注入し、反応させ、キュア硬化させて、ウレタンエラストマー層を形成した。
しかる後、平板金型を開け、本例の表皮材を得た。
【0046】
(実施例2)
塗装膜層の厚みが50μmとなるようにスプレーガンで均一に塗装して、塗装膜層を形成したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の表皮材を得た。
【0047】
(実施例3)
エラストマー層の発泡倍率が1.8となるように、ポリウレタン高圧注入機によって、ウレタンエラストマー層形成用原料を注入し、反応させ、キュア硬化させて、ウレタンエラストマー層を形成したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の表皮材を得た。
【0048】
(実施例4)
エラストマー層の厚みが1.5mmとなるように、ポリウレタン高圧注入機によって、ウレタンエラストマー層形成用原料を注入し、反応させ、キュア硬化させて、ウレタンエラストマー層を形成したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の表皮材を得た。
【0049】
(実施例5)
シルクの微粒子パウダー(平均粒径20μm)に代えて、シルクの微粒子パウダー(平均粒径10μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の表皮材を得た。
【0050】
(実施例6)
表皮材表面側形成用金型に離型剤層を形成する際に、シリコーンを含むワックス成分を含有した離型剤をスプレーガンで均一に塗布し、離型剤を乾燥させて、無微粒子パウダー離型剤層を形成し、次いで、表皮材表面側形成用金型に塗装膜層を形成する際に、シルクの微粒子パウダー(平均粒径20μm)と、金属石鹸系の分散剤とを添加した黒色顔料を含有したアクリル系の塗装膜層形成用塗料を塗装膜層における微粒子パウダー量が2g/m、且つ塗装膜層の厚みが40μmとなるようにスプレーガンで均一に塗装して、塗装膜層を形成したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の表皮材を得た。
【0051】
(実施例7)
表皮材表面側形成用金型に塗装膜層を形成する際に、シルクの微粒子パウダー(平均粒径20μm)と、金属石鹸系の分散剤とを添加した黒色顔料を含有したアクリル系の塗装膜層形成用塗料を塗装膜層における微粒子パウダー量が2g/m、且つ塗装膜層の厚みが40μmとなるようにスプレーガンで均一に塗装して、塗装膜層を形成したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の表皮材を得た。
【0052】
(比較例1)
シルクの微粒子パウダー(平均粒径20μm)に代えて、シルクの微粒子パウダー(平均粒径4μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の表皮材を得た。
【0053】
(比較例2)
シルクの微粒子パウダー(平均粒径20μm)に代えて、シルクの微粒子パウダー(平均粒55μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の表皮材を得た。
【0054】
(比較例3)
エラストマー層の発泡倍率が1.05(ウレタンエラストマー比重:990kg/m)となるように、ポリウレタン高圧注入機によって、ウレタンエラストマー層形成用原料を注入し、反応させ、キュア硬化させて、ウレタンエラストマー層を形成したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の表皮材を得た。
【0055】
(比較例4)
エラストマー層の発泡倍率が1.0(ウレタンエラストマー比重:1040kg/m)となるように、ポリウレタン高圧注入機によって、ウレタンエラストマー層形成用原料を注入し、反応させ、キュア硬化させて、ウレタンエラストマー層を形成したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の表皮材を得た。
【0056】
(比較例5)
離型剤層における微粒子パウダー量が5g/mとなるようにスプレーガンで均一に塗布し、離型剤を乾燥させて、微粒子パウダー含有離型剤層を形成したこと以外は、実施例1と同様の操作を繰り返して、本例の表皮材を得た。
【0057】
(比較例6)
微粒子パウダーを含有させなかったこと以外は、比較例4と同様の操作を繰り返して、本例の表皮材を得た。
【0058】
(比較例7)
微粒子パウダーを含有させなかったこと以外は、比較例5と同様の操作を繰り返して、本例の表皮材を得た。
【0059】
(従来例1)
特許文献1に記載されている塩化ビニル共重合体系真空成形物より成る表皮材(PVCシート)を用いた。
【0060】
(従来例2)
特許文献2に記載されているポリプロピレン樹脂とオレフィン系熱可塑性エラストマーを含む材料からなるシートを、絞面を有した凹引き真空成形型にて成形した表皮材(TPOシート)を用いた。
【0061】
(従来例3)
特許文献3に記載されている紛状熱可塑性合成樹脂成形材料を用いてスラッシュ成形法により得られる表皮材(TPUパウダースラッシュ)を用いた。
【0062】
(従来例4)
特許文献5に記載されているウレタンエラストマーを使用したスプレー工法により形成された表皮材(PU SPRAY)を用いた。
【0063】
(参考例1)
自動車用本革を用いた。
上記各例の仕様を表1に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
[性能評価]
(やわらかさ評価試験)
カートテック製のハンディー圧縮試験機(KES−G5)を使用し、圧子形状φ10mmにより、0.2kgで圧縮したときの圧縮進入量を測定した。得られた結果を表2に示す。
【0066】
(しっとり感評価試験)
カートテック製の摩擦感テスター(KES−SE)を使用し、静摩擦係数を測定した。得られた結果を表2に併記する。
【0067】
(触感評価試験)
恒温恒湿室にて、専門パネラー7名にて、下記評価基準にて、各例の表皮材の表面を無作為になでるように触り、評価点を付け、その平均を算出した。得られた結果を表2に併記する。
・とても良い触感…4.0点、よい触感…3.0点、どちらでもない…2.0点、悪い触感…1.0点、とても悪い触感…0.0点
【0068】
【表2】

【0069】
表2より、本発明の範囲に属する実施例1〜7の表皮材は、本発明外の比較例1〜7及び従来例1〜4と比較して、触感評価の結果が優れていることが分かる。
また、本発明の範囲に属する実施例1〜7の表皮材は、参考例1の自動車用本革と同等の又はそれより良い触感を有していることが分かる。
更に、圧縮進入量は、0.2mmを超えるとやわらかいこと、静摩擦係数は、0.2を超えるとしっとり感に優れることから、やわらかさ、しっとり感の両方の観点からは、実施例3が最も良好な結果をもたらすものと思われる。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本発明の表皮材の第1の製造方法の一実施形態を示す製造工程図である。
【図2】本発明の表皮材の第1の製造方法の一実施形態における表皮材表面側形成用金型の近傍の模式的な断面状態を示す説明図である。
【図3】本発明の表皮材の第1の製造方法の他の実施形態における表皮材表面側形成用金型の近傍の模式的な断面状態を示す説明図である。
【図4】本発明の表皮材の第2の製造方法の一実施形態における表皮材表面側形成用金型の近傍の模式的な断面状態を示す説明図である。
【図5】本発明の表皮材の第2の製造方法の他の実施形態における表皮材表面側形成用金型の近傍の模式的な断面状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0071】
1 表皮材
10 微粒子パウダー
12 他の離型剤成分
20 塗装膜層
20A 微粒子パウダー含有塗装膜層
20B 無微粒子パウダー塗装膜層
30 エラストマー層
40A 微粒子パウダー含有離型剤層
40B 無微粒子パウダー離型剤層
100A 表皮材表面側形成用金型
100B 表皮材裏面側形成用金型
110A 微粒子パウダー含有離型剤
110B 無微粒子パウダー離型剤
120 塗装膜層形成用塗料
130 エラストマー層形成用原料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマー層と、該エラストマー層より表面側に配設される塗装膜層と、を有する表皮材であって、
上記エラストマー層の厚みに対する上記塗装膜層の厚みの比が0.004〜0.16であり、
上記エラストマー層の発泡倍率が1.06〜3.0であり、
上記塗装膜層が、平均粒径5〜50μmの微粒子パウダーを含み、
上記微粒子パウダーが、上記塗装膜層の表面に1〜5%の投影面積割合で分散した状態で露出している、ことを特徴とする表皮材。
【請求項2】
上記塗装膜層が、酸化防止剤及び/若しくは紫外線吸収剤を含むアクリル系の塗装膜層形成用塗料並びに/又は脂肪族イソシアネートを含むウレタン系の塗装膜層形成用塗料により形成されている、ことを特徴とする請求項1に記載の表皮材。
【請求項3】
上記エラストマー層が、微発泡ウレタンエラストマーを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の表皮材。
【請求項4】
上記微発泡ウレタンエラストマーは、反応射出成形で合成された非熱可塑性の微発泡ウレタンエラストマーであることを特徴とする請求項3に記載の表皮材。
【請求項5】
上記微粒子パウダーは、籾殻、わら、竹、ケナフ及び麻から成る群より選ばれた少なくとも1種の植物由来素材から成る微粒子パウダー、革、シルク、ウール、キチン及びキトサンから成る群より選ばれた少なくとも1種の動物由来素材から成る微粒子パウダー、並びに高分子吸収体、アクリルビーズ及びウレタンビーズから成る群より選ばれた少なくとも1種の合成素材から成る微粒子パウダーから成る群より選ばれた少なくとも1種の微粒子パウダーであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つの項に記載の表皮材。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1つの項に記載の表皮材の製造方法であって、
少なくとも表皮材表面側形成用金型に、微粒子パウダーを含有する微粒子パウダー含有離型剤を所定量塗装して、微粒子パウダー含有離型剤層を形成し、次いで、塗装膜層形成用塗料を塗装して、塗装膜層を形成する工程(A1)と、
上記工程(A1)の後に実施され、表皮材裏面側形成用金型と上記表皮材表面側形成用金型とにより型閉じして、密閉空間を形成し、次いで、該密閉空間内にエラストマー層形成用原料を射出し、反応させて、エラストマー層を形成し、しかる後、型開きして、表皮材を得る工程(A2)と、
を含む、ことを特徴とする表皮材の製造方法。
【請求項7】
上記工程(A2)において、上記エラストマー層形成用原料として、非熱可塑性微発泡ウレタンエラストマー層形成用原料を用いることを特徴とする請求項6に記載の表皮材の製造方法。
【請求項8】
上記工程(A1)において、上記塗装膜層形成用塗料として、微粒子パウダーを含有する塗装膜層形成用塗料を用いる、ことを特徴とする請求項6又は7に記載の表皮材の製造方法。
【請求項9】
上記工程(A1)において、上記塗装膜層形成用塗料として、酸化防止剤及び/若しくは紫外線吸収剤を含むアクリル系の塗装膜層形成用塗料並びに/又は脂肪族イソシアネートを含むウレタン系の塗装膜層形成用塗料を用いる、ことを特徴とする請求項6〜8のいずれか1つの項に記載の表皮材の製造方法。
【請求項10】
上記工程(A1)において、上記表皮材表面側形成用金型として、革の表面絞形状及び/又はその形状を模して作製された表面絞形状が反転された表皮材表面側形成用金型を用いる、ことを特徴とする請求項6〜9のいずれか1つの項に記載の表皮材の製造方法。
【請求項11】
上記工程(A1)において、上記表皮材表面側形成用金型として、エンボス加工を施していない革の表面絞形状が反転された表皮材表面側形成用金型を用いる、ことを特徴とする請求項6〜10のいずれか1つの項に記載の表皮材の製造方法。
【請求項12】
上記工程(A1)において、上記微粒子パウダー含有離型剤として、シリコーン系ワックス成分又はプロセスオイル系ワックス成分を含有する微粒子パウダー含有離型剤を用いる、ことを特徴とする請求項6〜11のいずれか1つの項に記載の表皮材の製造方法。
【請求項13】
請求項1〜5のいずれか1つの項に記載の表皮材の製造方法であって、
少なくとも表皮材表面形成用金型に、微粒子パウダーを含有する微粒子パウダー含有塗装膜層形成用塗料を所定の厚みになるように塗装して、微粒子パウダー含有塗装膜層を形成する工程(B1)と、
上記工程(B1)の後に実施され、表皮材裏面側形成用金型と上記表皮材表面側形成用金型とにより型閉じして、密閉空間を形成し、次いで、該密閉空間内にエラストマー層形成用原料を射出し、反応させて、エラストマー層を形成し、しかる後、型開きして、表皮材を得る工程(B2)と、
を含む、ことを特徴とする表皮材の製造方法。
【請求項14】
上記工程(B2)において、上記エラストマー層形成用原料として、非熱可塑性微発泡ウレタンエラストマー層形成用原料を用いる、ことを特徴とする請求項13に記載の表皮材の製造方法。
【請求項15】
上記工程(B1)において、上記微粒子パウダー含有塗装膜層形成用塗料を用い、微粒子パウダー含有塗装膜層を形成し、次いで、微粒子パウダーを含有しない無微粒子パウダー塗装膜層形成用塗料を用い、無微粒子パウダー塗装膜層を形成する、ことを特徴とする請求項13又は14に記載の表皮材の製造方法。
【請求項16】
上記工程(B1)において、上記微粒子パウダー含有塗装膜層と上記無微粒子パウダー塗装膜層とを形成する場合であって、該微粒子パウダー含有塗装膜層を形成するに当たり、上記微粒子パウダー含有塗装膜層形成用塗料を用い、該微粒子パウダー含有塗装膜層の厚みが5〜10μmになるように塗装し、該微粒子パウダー含有塗装膜層を形成する、ことを特徴とする請求項15に記載の表皮材の製造方法。
【請求項17】
上記工程(B1)において、上記微粒子パウダー含有塗装膜層形成用塗料として、酸化防止剤及び/若しくは紫外線吸収剤を含むアクリル系の微粒子パウダー含有塗装膜層形成用塗料並びに/又は脂肪族イソシアネートを含むウレタン系の微粒子パウダー含有塗装膜層形成用塗料を用いる、ことを特徴とする請求項13〜16のいずれか1つの項に記載の表皮材の製造方法。
【請求項18】
上記工程(B1)において、上記表皮材表面側形成用金型として、革の表面絞形状及び/又はその形状を模して作製された表面絞形状が反転された表皮材表面側形成用金型を用いる、ことを特徴とする請求項13〜17のいずれか1つの項に記載の表皮材の製造方法。
【請求項19】
上記工程(B1)において、上記表皮材表面側形成用金型として、エンボス加工を施していない革の表面絞形状が反転された表皮材表面側形成用金型を用いる、ことを特徴とする請求項13〜18のいずれか1つの項に記載の表皮材の製造方法。
【請求項20】
上記工程(B1)の前に実施され、少なくとも上記表皮材表面側形成用金型に、離型剤を塗装して、離型剤層を形成する工程(B0)を更に含む、ことを特徴とする請求項13〜19のいずれか1つの項に記載の表皮材の製造方法。
【請求項21】
上記工程(B0)において、上記離型剤として、シリコーン系ワックス成分又はプロセスオイル系ワックス成分を含有する微粒子パウダー含有離型剤を用いる、ことを特徴とする請求項20に記載の表皮材の製造方法。
【請求項22】
請求項1〜5のいずれか1つの項に記載の表皮材を備えたことを特徴とする自動車内装用表皮材。
【請求項23】
上記表皮材の裏面側に配設される芯材を更に備え、
上記表皮材と上記芯材とが、2層以上の層構造を形成し、
上記芯材が、ポリプロピレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、及びポリカーボネート/アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂から成る群より選ばれた少なくとも1種を含有する熱可塑性樹脂から成る、ことを特徴とする請求項22に記載の自動車内装用表皮材。
【請求項24】
上記表皮材の裏面側に配設される発泡材と芯材とを更に備え、
上記表皮材と上記発泡材と上記芯材とが、この順で3層以上の層構造を形成し、
上記芯材が、ポリプロピレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂、及びポリカーボネート/アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂から成る群より選ばれた少なくとも1種を含有する熱可塑性樹脂から成り、
上記発泡材が、密度が100〜250kg/mである半硬質熱硬化性ウレタンフォームから成る、ことを特徴とする請求項22に記載の自動車内装用表皮材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−254332(P2008−254332A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−99381(P2007−99381)
【出願日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【出願人】(000113517)BASF INOACポリウレタン株式会社 (9)
【Fターム(参考)】