説明

表示システム及び表示制御方法

【課題】運転者の自車両周囲の視認性を妨げることなく、自車両周囲の運転者に対し視認性良くメッセージを表示できるようにする。
【解決手段】EL表示パネル11は、光透過面を有しており、表示情報に応じた当該光透過面上の対応位置の画素を繰り返し発光させて当該表示情報の表示を行う。また、光学シャッタ12は、EL表示パネル11の当該光透過面に重なる位置に光透過領域が配置されており、当該光透過領域の少なくとも一部を光遮断領域に切り替えることができるものである。制御装置20は、表示装置10を制御して、光学シャッタ12の当該光透過領域のうちの、少なくともEL表示パネル11の当該対応位置に対向している領域を、当該対応位置を発光させる期間に同期させて光遮断領域に切り替えさせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で議論する技術分野は、各種の情報を表示する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光シャッタ式メガネを用いた表示装置において、光シャッタ式メガネ着用者に対してのみ、表示画像の任意の一部分の領域を遮蔽するという技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−153123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
自動車のリアウインドウ(後部窓)付近に表示装置を設けて、他の自動車の運転者に対して、自己の自動車を車列に割り込ませてくれた謝意を表すメッセージや、ブレーキをかけていることを強調的に表すメッセージなどを表示することが考えられている。
【0005】
図1は、このような表示装置によるメッセージ表示の第一の例であり、自動車Aに設置した表示装置に、謝意を表すメッセージを表示している例である。
以前から、謝意を表す趣旨で、ハザードランプを数回点滅させるという手法も用いられていたが、ハザードランプを点灯させる本来の意味は「非常停止」であるため、この手法では意図が正しく伝わらずに、却って危険な状況をもたらすこともあった。これに対して、図1の自動車Aのように、後部窓に「ありがとう」と文字を表示するようにすれば、後続車両の運転者に正しい意図を伝えることができる。
【0006】
図2は、このような表示装置によるメッセージ表示の第二の例であり、自動車Aに設置した表示装置に、自動車Aの運転者が急ブレーキをかけた旨を表すメッセージを表示している例である。
【0007】
運転者がブレーキをかければ自動車Aのブレーキランプが点灯する。しかしながら、ブレーキのかけ具合はブレーキランプからは判別できないため、急ブレーキをかければ後続車が自車に追突する可能性がある。これに対して、図2の自動車Aのように、ブレーキのかけ具合に応じて後部窓に「急ブレーキ!!」などと文字を表示するようにすれば、後続車両の運転者に強い注意喚起を与えることかできるので、追突の可能性は低下する。
【0008】
しかしながら、このような表示を行うために、その自動車の運転者の後方視界を妨げることは好ましくない。
上述した問題に鑑み、本明細書で後述する表示システムは、運転者の自車両周囲の視認性を妨げることなく、自車両周囲の運転者に対し視認性良くメッセージを表示できるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書で後述する表示システムのひとつに、表示部及び光学シャッタを備える表示装置と、制御装置とを備えるというものがある。ここで、表示部は、光透過面を有しており、表示情報に応じた当該光透過面上の対応位置の画素を繰り返し発光させて当該表示情報の表示を行う。また、光学シャッタは、表示部の当該光透過面に重なる位置に光透過領域が配置されており、当該光透過領域の少なくとも一部を光遮断領域に切り替えることができるものである。そして、制御装置は、表示装置を制御して、光学シャッタの当該光透過領域のうちの、少なくとも表示部の当該対応位置に対向している領域を、当該対応位置を発光させる期間に同期させて光遮断領域に切り替えさせる。
【0010】
また、本明細書で後述する表示制御方法は、表示装置を制御する方法である。この表示装置は、表示部及び光学シャッタを備える。ここで、表示部は、光透過面を有しており、表示情報に応じた当該光透過面上の対応位置を繰り返し発光させて当該表示情報の表示を行う。また、光学シャッタは、表示部の当該光透過面に重なる位置に光透過領域が配置されており、当該光透過領域の少なくとも一部を光遮断領域に切り替えることができるものである。本明細書で後述する表示制御方法のひとつは、まず、表示部に当該表示情報の表示を行わせる。そして、この表示部での表示情報の表示のための繰り返しの発光における前述の対応位置を発光させる期間に同期させて、光学シャッタの当該光透過領域のうちの少なくとも当該対応位置に対向している領域を、光遮断領域に切り替えさせる。
【発明の効果】
【0011】
本明細書で後述する表示システムは、運転者の自車両周囲の視認性を妨げることなく、自車両周囲の車両の運転者に対し視認性良くメッセージを表示できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】自動車のリアウインドウ付近に設けた表示装置によるメッセージ表示の第一の例である。
【図2】自動車のリアウインドウ付近に設けた表示装置によるメッセージ表示の第二の例である。
【図3】表示システムの一実施例の機能ブロック図である。
【図4】表示システムの設置例を表した図である。
【図5】EL表示パネルの構造を図解した図である。
【図6】光学シャッタの構造を図解した図である。
【図7A】光学シャッタのEL表示パネルとの同期動作を説明する図(その1)である。
【図7B】光学シャッタのEL表示パネルとの同期動作を説明する図(その2)である。
【図8】コンピュータのハードウェア構成例である。
【図9】制御処理の処理内容を図解したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
まず図3について説明する。図3は、表示システムの一実施例の機能ブロック図である。
図3の表示システム1は、表示装置10と制御装置20とを備えている。また、図3の表示システム1では、照度センサ30を更に備えている。
【0014】
表示装置10は、EL表示パネル11、光学シャッタ12、及びシャッタ駆動部13を備えている。
EL表示パネル11は表示部の一例であり、光透過面を有していて、当該光透過面上における表示情報に応じた対応位置の画素を繰り返し発光させることによって当該表示情報の表示を行う。
【0015】
光学シャッタ12は、光透過性を有するシャッタ面(光透過領域)の少なくとも一部を光遮断領域に切り替えることができるものであり、このシャッタ面がEL表示パネル11におけるパネル面(光透過面)に重なる位置に配置されている。
以上のEL表示パネル11及び光学シャッタ12の構造の詳細は、後で説明する。
【0016】
シャッタ駆動部13は、制御装置20から送られてくる制御指示信号で示されている指示に応じて、光学シャッタ12のシャッタ面における当該指示に係る領域を、光透過領域と光遮断領域との間で切り替える。
【0017】
制御装置20は、表示指示部21、メッセージメモリ22、画像生成部23、及びシャッタコントローラ24を備えている。
表示指示部21は、表示装置10での表示情報(メッセージ)の選択の指示を行うと共に、EL表示パネル11及び光学シャッタ12への電力供給のオン・オフを切り替える。更に、表示指示部21は、EL表示パネル11を制御して後述する表示動作を行わせる。また、表示指示部21は、光学シャッタ12を制御して、光学シャッタ12の光透過領域のうちで、少なくともEL表示パネル11の発光位置に対向している領域を、この発光位置を発光させる期間に同期して光遮断領域に切り替えさせる。この同期動作を可能とするために、表示指示部21は、所定の動作タイミング信号を画像生成部23とシャッタコントローラ24とに送付する。
【0018】
メッセージメモリ22は、表示装置10で表示するメッセージのデータが複数予め格納されているメモリである。メッセージメモリ22に格納されている複数のメッセージのうちの1つを表示指示部21が選択すると、選択されたメッセージのデータがメッセージメモリ22から読み出されて画像生成部23に送られる。
【0019】
画像生成部23は、メッセージメモリ22から受け取ったメッセージのデータに基づいて当該メッセージを表している映像信号を生成し、表示指示部21から受け取る動作タイミング信号に応じたタイミングで、生成した映像信号をEL表示パネル11に渡す。
【0020】
シャッタコントローラ24は、表示指示部21から受け取る動作タイミング信号に応じたタイミングで、光透過領域のうちの、少なくともEL表示パネル11の発光位置に対向している領域を光遮断領域に切り替えさせる。
【0021】
以上のように、制御装置20は、表示装置10を制御して、光学シャッタ12の光透過領域のうちで、少なくともEL表示パネル11の前述の対応位置に対向している領域を、当該対応位置を発光させる期間に同期させて光遮断領域に切り替えさせる。
【0022】
なお、制御装置20は、更に、光学シャッタ12におけるEL表示パネル11の上述の対応位置に対向している領域以外の光透過領域のうちで、上述の期間に同期させて光遮断領域への切り替えを行う領域の面積を変化させる制御を表示装置10に対して行う。
【0023】
照度センサ30は、EL表示パネル11の周囲の環境の明るさ(照度)を検出し、照度の検出結果をシャッタコントローラ24に送付する。シャッタコントローラ24は、この照度の検出結果に基づいて、光学シャッタ12における上述の領域面積を変化させる。
【0024】
ここで図4について説明する。図4は、図3の表示システム1の設置例を図解したものである。
図4に図解されているように、表示システム1における表示装置10は、自動車40の車室内に、リアウインドウ41に内接するように設置される。より具体的には、表示装置10における、重ねて配置されているEL表示パネル11と光学シャッタ12とのうちのEL表示パネル11側が、自動車40の車外に向くように配置される。
【0025】
ルームミラー42は、リアウインドウ41、EL表示パネル11、及び光学シャッタ12を透過した光を反射して、その光の進む向きを自動車40の運転者に向ける。自動車40の後方の視野は、この反射光によって自動車40の運転者に提供される。
【0026】
なお、照度センサ30は、自動車40の車外のリアウインドウ41の近傍に設置されて、自動車40の車外の明るさの検出を行う。表示システム1における制御装置20のシャッタコントローラ24は、照度センサ30が検出した自動車40の車外の明るさに応じて、前述した、光遮断領域への切り替えを行う領域の面積を変化させる。
【0027】
次に、EL表示パネル11及び光学シャッタ12の構成の詳細について説明する。
EL表示パネル11は、エレクトロルミネッセンス(electroluminescence:電界発光効果)表示素子と透明電極とを用いて構成されていて、各種の表示を行うパネル面が光透過面になっており、パネル面の表面と裏面との間で光透過性を有している。このEL表示パネル11は、入力された表示対象の情報(表示情報)に応じた当該光透過面上の対応位置の画素を発光させて当該情報の表示を行う。
【0028】
図5は、EL表示パネル11の構造を図解したものである。EL表示パネル11の表面及び裏面のうちの一方の面には、透明電極線51が所定の方向に平行に配置されており、その他方の面には、当該所定の方向に直交する方向に透明電極線51が平行に配置されている。この2つの面の各々から透明電極線51を1本ずつ選択して所定の電圧が与えられると、パネル面から見て、選択された透明電極線51が交差している位置(発光点)の表示素子が発光する。このように、このEL表示パネル11はパッシブマトリクス型の表示素子である。
【0029】
このEL表示パネル11での情報表示は以下のようにして行う。
EL表示パネル11は、画像生成部23から送られてくる表示情報に応じ、まず、パネル面の最上行の画素をその左端から右端まで順次発光させ、続いて1つ下の行の画素をその左端から右端まで順次発光させ、同様の発光動作を一番下の行まで実行する。そして、その後はこの発光動作が最上行から繰り返される。本実施例では、この最上行から最下行までの発光動作を毎秒60回繰り返して発光の残像効果を得ることで、各発光点があたかも連続発光しているように見える。EL表示パネル11による当該情報の表示動作は、このようにして行われる。
【0030】
なお、本実施例では、EL表示パネル11に使用する発光素子として有機EL素子を使用するが、この代わりに無機EL素子を使用してもよい。また、この代わりにLED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)素子を使用してもよい。但し、LED素子を使用した場合には、LED素子部分の領域が不透明となり、パネル面の領域の全てを透明にすることはできないが、パネル面の全領域に対するLED素子部分の領域の比率を小さく抑えることで、パネル面を光透過面として用いることができる。
【0031】
図6は、光学シャッタ12の構造を図解したものである。
本実施例では、光学シャッタ12として液晶シャッタを使用する。この液晶シャッタは、電圧を与えていないときにはシャッタ面が透明である。
【0032】
この液晶シャッタには、複数の帯状透明電極52が、シャッタ面の表面側と裏面側とに並べられて配置されている。ここで、この2つの面の各々から、対向している一対の帯状透明電極52がシャッタコントローラ24によって選択されて所定の電圧が与えられると、当該シャッタ面における当該一対の帯状透明電極52に挟まれている領域が光遮断領域となる。また、当該一対の帯状透明電極52への所定の電圧の印加を中止すると、当該シャッタ面における当該一対の帯状透明電極52に挟まれている領域が、光遮断領域から光透過領域へと遷移する。
【0033】
次に、光学シャッタ12のEL表示パネル11との同期動作について、図7A及び図7Bを参照しながら説明する。
図7Aの例は、光学シャッタ12のシャッタ面が2つの領域(領域A及び領域B)に分割されている場合を表している。前述した帯状透明電極52は、このシャッタ面の表面と裏面とに2枚ずつ並べられており、領域A及び領域Bは、対向している一対の帯状透明電極52にそれぞれ挟まれている。
【0034】
前述したように、EL表示パネル11は、パネル面の最上行の画素をその左端から右端まで順次発光させ、続いて1つ下の行の画素をその左端から右端まで順次発光させ、同様の発光動作を一番下の行まで実行する。
【0035】
ここで、光学シャッタ12の領域Aに対向しているパネル面の領域、すなわち、パネル面の最上行から当該最上行と最下行との中間の行までの領域で発光動作が行われる期間は、当該領域Aがシャッタコントローラ24により選択されて光遮断領域に切り替えられる。なお、領域Bは、この期間においては光透過領域のままである。一方、光学シャッタ12の領域Bに対向しているパネル面の領域、すなわち、パネル面の当該中間の行から最下行までの領域で発光動作が行われる期間は、当該領域Bがシャッタコントローラ24により選択されて光遮断領域に切り替えられる。なお、領域Aは、この期間においては光透過領域に戻される。
【0036】
このような光学シャッタ12の開閉制御動作が、EL表示パネル11での表示動作のための発光に同期させて繰り返し行われる。従って、図4における自動車40の後方からの光の一部はEL表示パネル11及び光学シャッタ12を透過するが、EL表示パネル11の発光は光学シャッタ12によって遮断される。この結果、自動車40の運転者は、EL表示パネル11の発光を見ることはできないが、自動車40の後方の視野は得ることができ、その一方、自動車40の後続車の乗員は、EL表示パネル11の発光によって表示される情報を視認することができる。
【0037】
次に図7Bの例について説明する。図7Bの例は、光学シャッタ12のシャッタ面が、図7Aの例よりも多くの複数領域(領域A、領域B、領域C、…)に分割されている場合を表している。前述した帯状透明電極52は、このシャッタ面の表面と裏面とに、その分割数分ずつ並べられており、各領域A、B、C、…は、対向している一対の帯状透明電極52にそれぞれ挟まれている。
【0038】
この図7Bにおいては、光学シャッタ12の領域Aに対向しているパネル面の領域で発光動作が行われる期間は、当該領域Aがシャッタコントローラ24により選択されて光遮断領域に切り替えられ、その他の全領域は、光透過領域とされる。次に、光学シャッタ12の領域Bに対向しているパネル面の領域で発光動作が行われる期間は、当該領域Bがシャッタコントローラ24により選択されて光遮断領域に切り替えられ、その他の全領域(領域Aを含む)は、光透過領域とされる。光学シャッタ12の領域C以降の各領域についても同様の開閉制御がシャッタコントローラ24により行われる。
【0039】
このような光学シャッタ12の開閉制御動作が、EL表示パネル11での表示動作のための発光に同期させて繰り返し行われる。従って、図4における自動車40の後方からの光の一部はEL表示パネル11及び光学シャッタ12を透過するが、EL表示パネル11の発光は光学シャッタ12によって遮断される。この結果、自動車40の運転者は、EL表示パネル11の発光を見ることはできないが、自動車40の後方の視野は得ることができ、その一方、自動車40の後続車の乗員は、EL表示パネル11の発光によって表示される情報を視認することができる。
【0040】
なお、上述した光学シャッタ12の開閉制御動作では、光学シャッタ12のシャッタ面の複数の分割領域のうちの1つの領域のみを光遮断領域に切り替え、その他の全ての領域を光透過領域とする制御が行われる。このような制御に加え、本実施例では、シャッタコントローラ24が、更に、光学シャッタ12のシャッタ面のうちの光遮断領域に切り替える領域の数を、EL表示パネル11の周囲の環境の明るさに応じて変更して、光遮断領域の面積を変化させる制御を行う。すなわち、シャッタコントローラ24は、照度センサ30から受け取った自動車40の車外の照度の検出結果に基づき、光遮断領域に切り替える分割領域の数を決定し、光学シャッタ12のシャッタ面の分割領域を、その数だけ光遮断領域へ切り替えさせる。
【0041】
一般に、自動車40の車外が明るい場合には、車室内からは車外の景色は見易いが、車外からはEL表示パネル11での表示が見難い。その一方、自動車40の車外が暗い場合には、車室内からは車外の景色は見難いが、車外からはEL表示パネル11の表示が見易い。そこで、シャッタコントローラ24は、照度センサ30から受け取った自動車40の車外の照度の検出結果に基づき、当該照度が大きいほど、光透過領域から光遮断領域への切り替えを行う分割領域の数を多くするように当該数の決定を行う。
【0042】
このようにして、自動車40の車外が明るいほど、光学シャッタ12のシャッタ面の光遮断領域の面積を大きくすることで、EL表示パネル11での表示のコントラストが高くなり車外から見やすくなる。また、自動車40の車外が暗いほど、光学シャッタ12のシャッタ面の光遮断領域の面積を小さくすることで、自動車40の車室内から車外の景色が見易くなる。
【0043】
なお、光学シャッタ12のシャッタ面に設ける分割領域の数は任意であり、その数を大きくしてより細かな制御を行うようにしてもよく、また、その数を少なくして光学シャッタ12の構造を単純化にしてもよい。
【0044】
次に図8について説明する。図8には、図3の表示システム1における制御装置20として動作させることのできるコンピュータ60のハードウェア構成例が図解されている。
【0045】
このコンピュータ60は、MPU61、ROM62、RAM63、入力装置64、表示装置65、インタフェース装置66、及び記録媒体駆動装置67を備えている。なお、これらの構成要素はバスライン68を介して接続されており、MPU61の管理の下で各種のデータを相互に授受することができる。
【0046】
MPU(Micro Processing Unit)61は、このコンピュータ60全体の動作を制御する演算処理装置である。
ROM(Read Only Memory)62は、所定の制御プログラムや各種の定数値が予め記録されている読み出し専用半導体メモリである。MPU61は、この制御プログラムをコンピュータ60の起動時に読み出して実行することにより、このコンピュータ60の各構成要素の動作制御が可能となり、更に、後述する制御処理を行えるようにもなる。また、ROM62は、図3におけるメッセージメモリ22としても機能する。
【0047】
RAM(Random Access Memory)63は、MPU61が各種の制御プログラムを実行する際に、必要に応じて作業用記憶領域として使用する、随時書き込み読み出し可能な半導体メモリである。
【0048】
入力装置64は、例えばキーボード装置であり、コンピュータ60の使用者により操作されると、その操作内容に対応付けられている使用者からの各種情報の入力を取得し、取得した入力情報をMPU61に送付する。
【0049】
表示装置65は例えば液晶ディスプレイであり、MPU61から送付される表示データに応じて各種のテキストや画像を表示する。
インタフェース装置66は、このコンピュータ60に接続される各種機器との間での各種データの授受の管理を行う。より具体的には、インタフェース装置66は、照度センサ30による照度の検出結果の取り込みや、表示装置10のEL表示パネル11及び光学シャッタ12への各種駆動信号の出力等を行う。
【0050】
このように、コンピュータ60はごく標準的な構成を有するものである。
このような構成を有するコンピュータ60を制御装置20として機能させることができる。このためには、まず、後述する制御処理の処理内容をMPU61に行わせるための制御プログラムを作成する。作成した制御プログラムはROM62に予め格納しておく。そして、MPU61に所定の指示を与えてこの制御プログラムを読み出させて実行させる。こうすることで、MPU61が、図3に図解した制御装置20の各構成要素として機能するようになり、このコンピュータ60を用いて制御装置20を構成することが可能になる。
【0051】
なお、記録媒体駆動装置67は、可搬型記録媒体69に記録されている各種の制御プログラムやデータの読み出しを行う装置である。例えば、ROM62としてフラッシュメモリを使用し、MPU61が、可搬型記録媒体69に記録されている前述の制御プログラムを、記録媒体駆動装置67を介して読み出してROM62に格納するようにコンピュータ60を構成してもよい。この場合には、MPU61は、所定の実行開始指示を受けたときに、ROM62に格納した制御プログラムを読み出して実行するようにする。
【0052】
なお、可搬型記録媒体69としては、例えば、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD−ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)などの非一時的(non-transitory)な記録媒体が利用可能である。また、可搬型記録媒体69として、例えばUSB(Universal Serial Bus)規格のコネクタが備えられている半導体メモリも利用可能である。
【0053】
また、端末装置と、当該端末装置との間で各種データの授受を行うことのできるサーバ装置とからなるコンピュータシステムを用いて制御装置20を構成してもよい。このコンピュータシステムで制御装置20を構成する場合には、表示装置10及び照度センサ30を端末装置に接続して自動車40に設置する。一方、サーバ装置には、例えば図8のコンピュータ60の構成を備える。但し、インタフェース装置66には、端末装置の通信装置との間でのデータ通信を管理する通信装置を備える。そして、端末装置は、照度センサ30の検出結果をサーバ装置に送付する。一方、サーバ装置では、端末装置から受け取った検出結果に基づいて後述する制御処理を行い、この制御処理によって得られる駆動情報を端末装置に送付して表示装置10に転送させる。このようにすることで、制御装置20を上述のコンピュータシステムにより構成することができる。
【0054】
次に図9について説明する。図9は、図3の表示システム1における制御装置20で行われる制御処理の処理内容を図解したフローチャートである。なお、ここでは、光学シャッタ12は、シャッタ面が、図7Bの例のように複数領域に分割されているものとする。
【0055】
図9の制御処理は、運転者が自動車40の各種の操作部を操作して運転開始のための操作を行ったことが検出されると開始され、表示指示部21は、EL表示パネル11及び光学シャッタ12への電力供給を開始させる。
【0056】
この制御処理が開始されると、まず、S101において、表示装置10でのメッセージ表示をオンにする指示を自動車40の運転者から受け取ったか否かを判定する処理を表示指示部21が行う。ここで、当該指示を受け取ったと判定されたとき(判定結果がYesのとき)にはS102に処理が進み、当該指示を受け取っていないと判定されたとき(判定結果がNoのとき)にはS108に処理が進む。
【0057】
次に、S102では、メッセージのデータが予め格納されているメッセージメモリ22から、自動車40の運転者からの指示に対応するメッセージのデータを読み出して、画像生成部23に送付させる処理を表示指示部21が行う。
【0058】
次に、S103では、照度センサ30による、自動車40の車外の照度の検出結果を取得する処理をシャッタコントローラ24が行う。
次に、S104では、S103の処理で取得した照度に基づき、光学シャッタ12のシャッタ面に設けられている複数の分割領域のうちで光遮断領域に切り替える領域の数を決定する処理をシャッタコントローラ24が行う。
【0059】
次に、S105では、EL表示パネル11でのメッセージ表示動作を行わせる処理を画像生成部23が開始する。この処理において、画像生成部23は、まず、S102の処理でメッセージメモリ22から受け取ったデータで表現されているメッセージを表している映像信号を生成する処理を行う。そして次に、表示指示部21から送られてくる動作タイミング信号に応じたタイミングで、生成した映像信号をEL表示パネル11に渡して当該メッセージの表示を行わせる処理を行う。EL表示パネル11は、受け取った映像信号で表されているメッセージの表示動作を、前述のようにして行う。すなわち、EL表示パネル11は、パネル面の最上行の画素をその左端から右端まで順次発光させ、続いて1つ下の行の画素をその左端から右端まで順次発光させ、同様の発光動作を一番下の行まで実行して、当該メッセージの表示を行う。
【0060】
次に、S106では、EL表示パネル11での表示動作のための発光に同期した、前述の光学シャッタ12の開閉制御処理をシャッタコントローラ24が開始する。すなわち、シャッタコントローラ24は、EL表示パネル11での表示動作のための発光における発光点の発光期間に同期させて、当該発光点の対向位置を少なくとも含む光学シャッタ12の所定の分割領域を光透過領域から光遮断領域に切り替えさせる。この光遮断領域への切り替えにおいて同時に切り替える分割領域の数は、S104の処理で決定した数とする。
【0061】
なお、シャッタコントローラ24は、この光学シャッタ12の開閉制御をEL表示パネル11での表示動作と同期させるために、画像生成部23が当該表示動作のタイミングの設定に使用している、表示指示部21から送られてくる動作タイミング信号を使用する。
【0062】
次に、S107では、表示装置10でのメッセージ表示をオフにする指示を自動車40の運転者から受け取ったか否かを判定する処理を表示指示部21が行う。ここで、当該指示を受け取ったと判定されたとき(判定結果がYesのとき)にはS108に処理が進む。一方、当該指示を受け取っていないと判定されたとき(判定結果がNoのとき)には、S103に処理が戻って上述した処理が繰り返される。
【0063】
S108では、S105の処理で開始したEL表示パネル11でのメッセージ表示動作を終了させる処理を画像生成部23が行う。
S109では、S106の処理で開始した光学シャッタ12の開閉制御を終了させて、光学シャッタ12のシャッタ面を全て光透過領域とする処理をシャッタコントローラ24が行う。
【0064】
S110では、運転者が自動車40の各種の操作部を操作して運転終了のための操作を行ったことが検出されたか否かを判定する処理を表示指示部21が行う。ここで、当該操作が検出されたと判定されたとき(判定結果がYesのとき)には、図9の制御処理が終了し、表示指示部21は、EL表示パネル11及び光学シャッタ12への電力供給を停止させる。一方、ここで、当該操作が検出されないと判定されたとき(判定結果がNoのとき)には、S101に処理が戻って上述した処理が繰り返される。
【0065】
以上の制御処理を制御装置20が行うことにより、図3の表示システム1による、運転者の自車両周囲の視認性を妨げることがなく、自車両周囲の車両の運転者に対しては視認性の良いメッセージの表示が行われる。
【0066】
次に、図2の表示システム1を用いたメッセージ表示の実験結果について簡単に説明する。
実験では、EL表示パネル11として、縦16ドット×横80ドットの有機ELパネル(発光強度:100cd/m2 )を使用して自動車40の車室内のリアウインドウ41に内接させた。また、光学シャッタ12としては液晶シャッタを使用し、シャッタ面の分割領域の数を16とした。なお、EL表示パネル11での表示動作のための発光の繰り返しの速度は、毎秒60回とした。
【0067】
実験は照度環境0ルクスから10,000ルクスにかけて行った。なお、10,000ルクスは曇天の日の昼間の明るさに相当する。
このとき、700ルクス未満の環境では、液晶シャッタのシャッタ面における16枚の分割領域のうちの1枚のみを光遮断領域とし、他の15枚を光透過領域として、車外からの表示視認性と車室内からの外部視認性とをバランスさせた。その後、700ルクス明るくなる毎に光遮断領域とする分割領域の数を増やしていき、10,000ルクスでは、分割領域のうちの1枚のみを光透過領域とし、他の15枚を光遮断領域として、車外からの視認性と車室内からの視認性とをバランスさせた。
【0068】
なお、光遮断領域とする分割領域の選択手法は、以下のようにして行った。
まず、EL表示パネル11の発光点に対向する分割領域は必ず選択する。次に、当該発光点に対向する分割領域に隣接している分割領域のうち、下側の分割領域(すなわち、次に発光点に対向することとなる分割領域)を先に選択し、その次には上側の分割領域を選択する。以降、当該発光点に対向する分割領域に近い分割領域から同様に交互に選択する。このようにして光遮断領域とする分割領域の選択数を増やしていくと、液晶シャッタから漏れてくる有機ELパネルの光の量が確実に低減された。
【0069】
なお、以上の実験では、有機ELパネルの輝度の制限により、10,000ルクスより明るい環境では表示の視認性を確保できなかった。しかしながら、EL表示パネル11として、より輝度の高いもの(例えば、前述したLED素子を使用した表示パネル)を用いれば、より明るい車外の環境でも、高い外部視認性を得ることができるのは明らかである。
【0070】
図3の表示システム1は、以上のように動作するので、運転者の自車両周囲の視認性を妨げることなく、自車両周囲の車両の運転者に対し視認性良くメッセージを表示することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 表示システム
10 表示装置
11 EL表示パネル
12 光学シャッタ
13 シャッタ駆動部
20 制御装置
21 表示指示部
22 メッセージメモリ
23 画像生成部
24 シャッタコントローラ
30 照度センサ
40 自動車
41 リアウインドウ
42 ルームミラー
51 透明電極線
52 帯状透明電極
60 コンピュータ
61 MPU
62 ROM
63 RAM
64 入力装置
65 表示装置
66 インタフェース装置
67 記録媒体駆動装置
68 バスライン
69 可搬型記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過面を有しており、表示情報に応じた該光透過面上の対応位置の画素を繰り返し発光させて該表示情報の表示を行う表示部、及び
前記表示部の前記光透過面に重なる位置に光透過領域が配置されており、該光透過領域の少なくとも一部を光遮断領域に切り替えることができる光学シャッタ
を備える表示装置と、
前記表示装置を制御して、前記光学シャッタの前記光透過領域のうちの、少なくとも前記表示部の前記対応位置に対向している領域を、該対応位置を発光させる期間に同期させて光遮断領域に切り替えさせる制御装置と、
を備えることを特徴とする表示システム。
【請求項2】
前記制御装置は、更に、前記光学シャッタにおける前記表示部の前記対応位置に対向している領域以外の前記光透過領域のうちで、前記期間に同期させて前記光遮断領域への切り替えを行う領域の面積を変化させる制御を前記表示装置に対して行うことを特徴とする請求項1に記載の表示システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記面積を変化させる制御を、前記表示部の周囲の環境の明るさに応じて行うことを特徴とする請求項2に記載の表示システム。
【請求項4】
前記表示装置は、自動車の車室内に、前記表示部側を該自動車の車外に向けて配置され、
前記自動車の車外の明るさを検出するセンサを更に備え、
前記制御装置は、前記センサが検出した前記車外の明るさに応じて、前記面積を変化させる制御を行う、
ことを特徴とする請求項3に記載の表示システム。
【請求項5】
前記表示部は、エレクトロルミネッセンス表示素子と透明電極とを用いて構成されていることを特徴とする請求項1から4のうちのいずれか一項に記載の表示システム。
【請求項6】
請求項1から5のうちのいずれか一項に記載の表示システムを備えることを特徴とする自動車。
【請求項7】
光透過面を有しており、表示情報に応じた該光透過面上の対応位置を繰り返し発光させて該表示情報の表示を行う表示部、及び、該表示部の該光透過面に重なる位置に光透過領域が配置されており、該光透過領域の少なくとも一部を光遮断領域に切り替えることができる光学シャッタを備える表示装置を制御する方法であって、
前記表示部に前記表示情報の表示を行わせ、
前記表示部での前記表示情報の表示のための繰り返しの発光における前記対応位置を発光させる期間に同期させて、前記光学シャッタの前記光透過領域のうちの少なくとも該対応位置に対向している領域を、光遮断領域に切り替えさせる、
ことを特徴とする表示制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図7A】
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【図7B】
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【公開番号】特開2012−155146(P2012−155146A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−14337(P2011−14337)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】