説明

表示デバイスの色表示方式

表示デバイスにおいて、RGB表色系とXYZ表色系の変換を正確に実行する処理方式および当該性能を備えた表示装置を提供する。
図4は本発明による表示デバイスの色表示方式を示すブロック構成図である。図4における補正装置1は表示デバイスに固有の非線形等による歪誤差が最小になるように表示パラメータを設定し、XYZ→RGBの変換の補正処理を行なう。表示デバイス2は補正装置1から出力されるRGB表色系の画像信号を最小の歪で表示する。このような補正処理を行うことにより、あらゆる種類の表示装置で再生画像を最小の歪で表色できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示デバイスの色域内における色の表示方式に関し、特にその高確度表示方式に関する。
【背景技術】
【0002】
表色系にはRGB表色系とXYZ表色系がよく知られている。RGB表色系は実際に存在する単色光を原刺激として、それらの原刺激値の合成によって実在する色が定義されている。この表色系は物理的な発色物質と対応づけて表色できるが、次のような欠点がある。負の等色関数が存在する。負の等色関数は実際の光学機器の設計において不便である。色度座標上のg=G/(R+G+B)は広いが、r=R/(R+G+B)が狭い。
【0003】
そこで、RGB表色系の欠点を除去し、表色上の計算に便利なXYZ表色系がCIE−1931として定義されている。線形関係が成り立つと仮定すれば、RGB表色系とXYZ表色系との間には下記(10)式の関係が存在する。
(10)式から明らかなように、RGB表色系とXYZ表色系との間には線形な関係があると想定しているので、RGBとXYZの変換は輝度最高値、すなわち階調で255の値を使って0〜255として線形的に行っていた。

【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の方法では、中間調再現特性の非線形性や、温度変化、経年変化により三原色それぞれの角度(三刺激値の比)が変化する場合には、RGB表色系とXYZ表色系の変換を正確に行うことができないという欠点がある。したがって、従来の方法を有効とするためには、ディスプレイの三原色(RGB)のそれぞれに対する色度(C)を常に正しく一定にしておく必要がある。しかし、現実にはこれは不可能である。
そこで、本発明ではRGB表色系とXYZ表色系の変換を正確に実行する処理方式および装置を提供することが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明ではXYZ表色系の画像信号を入力したとき、非線形等による歪誤差が最小になるよう、XYZ表色系の入力階調値をRGB表色系へ正確に変換してRGB表色系の画像信号値を出力する高忠実色再現機能を備えたシステムを含む補正装置と、この補正装置から出力されるRGB表色系の画像信号を入力して画像を表示する表示デバイスとを具備して表示デバイスの色表示方式を構成する。
【0006】
前記補正装置は使用するデータのビット数をn とするとき、0〜(2n −1)の任意の階調値をとり得る色信号C(Xc ,Yc ,Zc )を前記表示デバイスのRGBそれぞれの最大階調値である(2n −1)に対応するXYZ値を用いてRGBリニア値に変換する手段と、
前記RGBリニア値に対応する前記表示デバイスの動作点dにおけるRd ,Gd ,Bd を測定値から求め、且つ対応する(Xrd,Yrd,Zrd),(Xgd,Ygd,Zgd),(Xbd,Ybd,Zbd)の値を事前に作成しておいた対応表から求め、Xc =aXrd+bXgd+cXbd
c =aYrd+bYgd+cYbd
c =aZrd+bZgd+cZbd
からa,b,cを求める演算手段と、
前記演算手段で求められたa,b,cがいずれも1に近い予め定めた許容範囲内であるかを判定し範囲内にあれば、Rd ,Gd ,Bd 値を入力色信号に対応するRGBの真値であるとして出力する判定手段と、
前記判定手段で範囲外と判定された場合は演算結果のa,b,cを帰還して再度前記演算手段による演算を実行させる帰還手段と、
を含む表示デバイスの色表示方式である。
【0007】
上記表示デバイスの色表示方式において、表示デバイスはCRT,LCD,あるいはPDPなど、あらゆる形式の表示デバイスである。
【発明の効果】
【0008】
XYZ表示系の値をRGB表示系に変換する際、表示デバイスへ入力される励起電圧(励起電流)と表示色の強さとの間の非線形性等の影響を除去するため、励起電圧(励起電流)の階調値を(2n −1)から出発し、計算により誤差が小さくなるように階調値を変えてゆき、最小誤差を求めることにより変換を実行する最適階調値を決定し、これにより最適RGB値を表示デバイスに供給できるという効果がある。
【0009】
上記効果により、本発明は表示輝度変化、経時変化、温度変化などにより原色の色度(三刺激値の比)が変化しても、その変化する値をデータとして備えているので、それをもとにして表示色を正確に再現することができる。また、本発明によれば、表示デバイスに対して厳密な校正の必要がないので、極めて簡便な方法で表示色を忠実に再現できるという効果がある。しかし、三刺激値の測定器には相応な確度が必要である。さらに、表示デバイスがLCDであるか、CRTであるか、あるいはPDPであるかを問わないので、加法混色が成り立つものであれば、構成原理にかかわりなくあらゆる種類の表示デバイスに本発明の方式が適用できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】RGBそれぞれの三刺激値について、RGB信号の表示デバイスへの入力値とXYZ表色系上のY刺激値(RLinear、Glinear、BLinearと記載)との関係を示す測定例である。
【図2】刺激値X,Y,Zの最大値が1になるように設定し、RGBとXYZの関係を正規化して両対数軸に示した説明図である。
【図3】表示色の色再現を高忠実に実行するシステムのフローチャートである。
【図4】高忠実色再現システムを実装した表示装置のブロック構成を示す系統図である。
【符号の説明】
【0011】
1 補正装置
2 表示デバイス
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。図1はRGBそれぞれの3刺激値について、RGB信号の表示デバイスへの入力値とXYZ表色系上の刺激値との関係を示す測定例を正規化したものである。図1で(a)はR(赤)、(b)はG(緑)、(c)はB(青)に対するものである。横軸上でn ビットのディジタル励起電圧(あるいは励起電流)は0〜(2n −1)まで1づつステップ状に変化する。図2は入力励起電圧の最小および最大の階調値を0および(2n −1)に設定し、かつ、刺激値X,Y,Zの最大値が1になるように設定してRGBとXYZの関係を正規化した例を示す説明図である。
縦軸上で各刺激値Xi ,Yi ,Zi,(i =R or G or B)は横軸上のディジタル励起値に対応して変化するが、必ずしもリニアに対応しているというわけではない。
【0013】
次の表1は入力励起電圧の値と、X,Y,Z刺激値、および輝度の関係を示す一例である。
【表1】

【0014】
ここで、励起電圧や励起電流などの励起値に対する刺激値の関係が線形であると仮定する。そこで、色(C)はこれが表示されたときの3原色のR(赤)、G(緑)、B(青)のそれぞれの三刺激値を使って、一般に次の(1)式のように表される。
C =XR +XG +XB
C =YR +YG +YB (1)
C =ZR +ZG +ZB
ここで、XR ,XG ,XB はそれぞれ刺激値XC のR,G,B成分、YR ,YG ,YB はそれぞれ刺激値YC のR,G,B成分、ZR ,ZG ,ZB はそれぞれ刺激値ZC のR,G,B成分である。
【0015】
実際の多くの表示デバイスでは励起電圧や励起電流などの励起値の階調によって原色の色度が変化するが、励起値の階調が0から(2n −1)まで、

の関係にしたがって、ディジタル的に変化する。このとき、a1 =a2 =a3 =・・・=an-1 =1であるならば、(Σaii-1 −1)=2n −1となる。このように変化しても原色の色度(C)が著しく線形関係から離脱しないように動作点を設定することは可能である。なぜならば、励振電圧(または電流)と輝度との関係は連続量であるため、上記(Σaii-1 −1)における係数ai には上限と下限が存在し、動作点の設定方式を適切に選べば、ai の変化量は十分小さくできる。このような状態を仮定すれば、R(赤)、G(緑)、B(青)のそれぞれについて励起値が(2n −1)のときの三刺激値(XYZ)を使って次の(2)式のように表される。
以下、(2)式〜(4)式において、(2n−1)は、(2n −1)の意味で用いている。
C =XR(2n-1) R+XG(2n-1) G+XB(2n-1)
C =YR(2n-1) R+YG(2n-1) G+YB(2n-1) B (2)
C =ZR(2n-1) R+ZG(2n-1) G+ZB(2n-1)
ここで、R,G,Bは色Cを表示したときの原色の輝度の割合を表し、それぞれ0から1の間のアナログ値である。今後、これをリニア値とも呼ぶ。
(2)式を行列形式で表すと次の(3)式のようになる。

あるいは、逆行列を使えば、次の(4)式が得られる。

【0016】
一般の表示デバイスでは、赤、緑、青、三原色それぞれにおける中間調階調再現特性において色度が変化するので、階調間の三刺激値の比は、
Xi:Yi:Zi≠Xj:Yj:Zjであり、上記の単純なマトリクス計算では色Cに対する励起値の正確な階調値を求めることができない。
【0017】
(1)式〜(2)式の説明で色Cに対して求められたリニアなR,G,Bの値を用い、最初に測定された中間調再現特性(図1)を使って、それぞれR(赤)、G(緑)、B(青)の励起値の階調を求める。これらは表示デバイスに固有の値であることからデバイスのRGBと呼び、(5)式によりRd,Gd,Bdと表す。
Rd← Rlinear
Gd← Glinear (5)
Bd← Blinear
【0018】
これらのデバイスR,G,Bに対する三組の三刺激値を測定結果から求める。
(Xrd,Yrd,Zrd)、(Xgd,Ygd,Zgd)、(Xbd,Ybd,Zbd)
もし、表示デバイスが理想的にリニアで励起の階調の値が異なっても三刺激値の値の比が変化しなければ、これらの三つの三刺激値から加算して求められる色の三刺激値は、(1)式に示された色Cの三刺激値と一致する比をもつはずである。しかし、実際には色度は励起の階調の値が異なると変化するために、こうして求められた各階調の値の三刺激値の和から求められた色Cと実際の色Cとは一致せず、このときの三刺激値は計算から求めたものと一致しない。
【0019】
ここで、R(赤)、G(緑)、B(青)の三刺激値をそれぞれa,b,c倍、例えばa=1.10,b=0.90,c=0.95とすることで任意の実測色Cの三刺激値とほぼ一致させることができる。すなわち、(6)式が得られる。
C ≒aXrd+bXgd+cXbd
C ≒aYrd+bYgd+cYbd (6)
C ≒aZrd+bZgd+cZbd
(6)式を行列形式で表すと次の(7),(8)式のようになる。

【0020】
(7)式は、色Cを表示するときの三原色について、それぞれの三刺激値に、より近づいた表示デバイスの三刺激値を使ってXc ,Yc ,Zc を求めるための関係式を表している。係数a,b,cはそのときのR,G,B原色の輝度比を表すので、修正されたリニア(Ra,Gb,Bc)と考えることができる。リニア関数が成立するときと同様に中間調再現特性からそれぞれに対する表示デバイスが取りうる階調の値を次の式(9)の関係に従って求める。
Rd’⇔Ra-linear
Gd’⇔Gb-linear (9)
Bd’⇔Bc-linear
こうして求められる色Cを表示したときの三原色それぞれに対する三刺激値は
(Xrd’,Yrd’,Zrd’)、(Xgd’,Ygd’,Zgd’)、(Xbd’,Ybd’,Zbd’)
となる。
【0021】
こうして得られる三刺激値の和は、リニア関係を仮定して求めた三刺激値の和より、実際の色Cの三刺激値に近づく。
しかし、未だ実測された色Cの三刺激値との違いが大きい場合には上述の操作を両者の値が近づくまで繰り返して実行する。両者の値がどれほど近づいたかは係数a,b,cの値を調べることにより判別できる。収束条件の理想値は、a,b,cがいずれも1であるときである。したがって、a,b,cのそれぞれが1に近いあらかじめ決められた値となるまで繰り返して実行することにより、求める精度の色度値が得られる。
【0022】
図3は上述の方式にしたがって表示色の色再現を高忠実に実行するシステムの動作フローチャートを示す図である。最初に色C(Xc ,Yc ,Zc )信号を表示デバイスの最大階調値である(2n −1)のときの3原色それぞれのX,Y,Zを使ってRGB表示系に変換し、このときのRGB表示系の値を求める。そこで、これらに対応する(Xrd,Yrd,Zrd)、(Xgd,Ygd,Zgd)、(Xbd,Ybd,Zbd)の値を求め、これらの値を使って(6)式からXc ,Yc ,Zc を計算する。再び得られたXc ,Yc ,Zc を使い、a,b,cが1に近いあらかじめ定められた値になるまで上の計算を繰り返す。
【0023】
図4はXc ,Yc ,Zc の表示値をもった画像信号を入力し、上記の高忠実色再現機能を備えたシステムを通過させた後、Rd ,Gd ,Bd の表示値をもった画像信号を表示する表示装置のブロック構成を示す画像表示の系統図である。図4において、1は高忠実色再現機能を備えたシステムを含む補正装置、2は表示デバイスである。補正装置1にXYZ表示系の画像信号を入力したとき、補正装置1はXYZ表色系の入力階調値をRGB表色系へ正確に変換してRGB表色系の画像信号を出力する高忠実色再現機能を備えたシステムを含む。表示デバイス2は、補正装置1から出力されるRGB表色系の画像信号を入力して画像を表示する。
【0024】
上述したように本発明の色表示方式はあらゆる形式の表示デバイスに適応できるので、CRTのみならず、LCDやPDPへの適用に適している。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明による表示デバイスの色表示方式は、多種類の表示装置に利用できる。そのため多種類の表示装置でいずれも高忠実色再現が求められる分野で広く利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
XYZ表色系の画像信号を入力したとき、非線形等による歪誤差が最小になるよう、XYZ表色系の入力階調値をRGB表色系へ正確に変換してRGB表色系の画像信号値を出力する高忠実色再現機能を備えたシステムを含む補正装置と、
前記補正装置から出力されるRGB表色系の画像信号を入力して画像を表示する表示デバイスとを備えた表示デバイスの色表示方式であって、
前記補正装置は使用するデータのビット数をn とするとき、0〜(2n −1)の間の任意の階調値

をとり得る色信号C(Xc ,Yc ,Zc )を前記表示デバイスのRGBそれぞれの最大階調値である(2n −1)に対応するXYZ値を用いてRGBリニア値に変換する手段と、
前記RGBリニア値に対応する前記表示デバイスの動作点dにおけるRd ,Gd ,Bd を測定値から求め、且つ対応する(Xrd,Yrd,Zrd),(Xgd,Ygd,Zgd),(Xbd,Ybd,Zbd)の値を事前に作成しておいた対応表から求め、Xc =aXrd+bXgd+cXbd
c =aYrd+bYgd+cYbd
c =aZrd+bZgd+cZbd
からa,b,cを求める演算手段と、
前記演算手段で求められたa,b,cがいずれも1に近い予め定めた許容範囲内であるかを判定し範囲内にあれば、Rd ,Gd ,Bd 値を入力色信号に対応するRGBの真値であるとして出力する判定手段と、
前記判定手段で範囲外と判定された場合は演算結果のa,b,cを帰還して再度前記演算手段による演算を実行させる帰還手段と、
を含む表示デバイスの色表示方式。
【請求項2】
前記表示デバイスはCRT,LCD,あるいはPDPである請求項1記載の表示デバイスの色表示方式。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【国際公開番号】WO2005/062628
【国際公開日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【発行日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−516521(P2005−516521)
【国際出願番号】PCT/JP2004/019312
【国際出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(304023318)国立大学法人静岡大学 (416)
【Fターム(参考)】